JP2015077405A - ゴルフボール - Google Patents

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Abstract

【解決手段】本発明は、コアと、少なくとも1層のカバーとを具備するゴルフボールであって、上記コアの断面硬度において、コアの半径をR(mm),コア中心のJIS−C硬度をA,コア中心からR/3mm離れた位置のJIS−C硬度をB,コア中心からR/1.8mm離れた位置のJIS−C硬度をC,コア中心からR/1.3mm離れた位置のJIS−C硬度をDとすると共に、コア表面のJIS−C硬度をEとする場合、(1)D−C≧7、(2)C−B≰7、(3)(D−C)−(C−B)≧7、及び(4)E−A≧16の数式を満たすゴルフボールを提供する。【効果】本発明のゴルフボールは、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離、I#6等のミドルアイアンの飛距離を満足させると共に、繰り返し打撃時の割れ耐久性に優れるものである。【選択図】図1

Description

本発明は、コアと、少なくとも1層からなるカバーとを具備するゴルフボールに関し、更に詳述すると、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離、ミドルアイアンの飛距離の両方を満足させると共に、繰り返し打撃時の割れ耐久性についても優れたゴルフボールに関するものである。
ソリッドゴルフボールの内部構造は、コアとカバーとの比較的単純な構造ではあるが、ゴルフボールの反発性、打感、アプローチスピン及び耐久性等の諸特性は、コアとカバーとの相乗効果に因るところが大きい。コアの断面硬度を細かく特定することにより、ボールの反発性や打感、更にはアプローチスピンに適量化を図った技術が多数提案されている。例えば、特開2011−136020号公報(対応する米国特許出願公開第2011/0159999号明細書)、特開2011−136021号公報(対応する米国特許出願公開第2011/0159998号明細書)、特開2007−152090号公報(対応する米国特許第7273425号明細書)、特開2008−194473号公報(対応する米国特許第7481722号明細書)、特開2010−214105号公報(対応する米国特許第7909710号明細書)などの技術文献に記載されている。
また、コア用ゴム組成物において、ゴム配合の面からコアの硬度分布を特定した技術が多数提案されている。例えば、特開2006−312044号公報(対応する米国特許第7278929号明細書)には、コアの中心と表面との硬度差を一定以上に大きくするために粉末硫黄を添加する技術が記載されている。その他、コアの硬度分布を調整するためにゴム配合を工夫した技術文献としては、例えば、特開2006−167452号公報(対応する米国特許第7276560号明細書)、特開2006−289074号公報(対応する米国特許第7381776号明細書)、特開2002−000765号公報(対応する米国特許第6679791号明細書)、特開2010−188199号公報(対応する米国特許第6679791号明細書)、特開2007−167257号公報、特開2008−68077号公報(対応する米国特許第7335115号明細書)、特開2008−119461号公報(対応する米国特許第7300362号明細書)などが挙げられる。
しかしながら、従来のゴム配合やコア硬度分布については一定の改善効果は期待できるが、更なる飛距離増大や耐久性の改善が望まれている。即ち、近年ではゴルフボールの研究開発は熾烈を極め、ゴルフボールによる競技上の優位性を確保するためには、ボール物性全体のレベルアップが望まれている。
特開2011−136020号公報 米国特許出願公開第2011/0159999号明細書 特開2011−136021号公報 米国特許出願公開第2011/0159998号明細書 特開2007−152090号公報 米国特許第7273425号明細書 特開2008−194473号公報 米国特許第7481722号明細書 特開2010−214105号公報 米国特許第7909710号明細書 特開2006−312044号公報 米国特許第7278929号明細書 特開2006−167452号公報 米国特許第7276560号明細書 特開2006−289074号公報 米国特許第7381776号明細書 特開2002−000765号公報 米国特許第6679791号明細書 特開2010−188199号公報 特開2007−167257号公報 特開2008−68077号公報 米国特許第7335115号明細書 特開2008−119461号公報 米国特許第7300362号明細書
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離、ミドルアイアンの飛距離の両方を満足させると共に、繰り返し打撃時の割れ耐久性に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、コアの断面硬度分布において、コア中心から所定度離れた位置までの断面硬度は、比較的軟らかく、かつ大きな硬度変動は無いが、それ以降のコア表面までの断面硬度は、急勾配に増加し、実施例の図3〜7に示すような断面硬度を有するコアを開発した。このような断面硬度を有するコアを具備したゴルフボールは、特に、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離、6番アイアン(I#6)等のミドルアイアンの飛距離の両方を満足させると共に、繰り返し打撃時の割れ耐久性も改善し得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
特に、最近のゴルフボールは、プロや上級者が使用するボールとして、ウレタンカバーを主体としたスリーピースソリッドゴルフボールやフォーピースソリッドゴルフボールが広く用いられている。本発明は、上記のボールのコアの内部硬度形状を最適化することによって、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離だけではなく、6番アイアン(I#6)等のミドルアイアンの飛距離を更に伸ばすことを目的として改良を重ねた結果なし得たものである。また、本発明は、飛距離性能の改善と同時に、繰り返し打撃時の割れ耐久性も優れており、過酷な使用条件においても耐え得るボールを提供するものである。
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
[1]コアと、少なくとも1層のカバーとを具備するゴルフボールであって、上記コアの断面硬度において、コアの半径をR(mm),コア中心のJIS−C硬度をA,コア中心からR/3mm離れた位置のJIS−C硬度をB,コア中心からR/1.8mm離れた位置のJIS−C硬度をC,コア中心からR/1.3mm離れた位置のJIS−C硬度をDとすると共に、コア表面のJIS−C硬度をEとする場合、下記の(1)〜(4)の数式 (1)D−C≧7
(2)C−B≦7
(3)(D−C)−(C−B)≧7
(4)E−A≧16
を満足することを特徴とするゴルフボール。
[2]ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重5,880N(600kgf)を負荷したときまでのたわみ量が7mm〜10mmである[1]記載のゴルフボール。
[3]上記カバーが、最外層と、該最外層と上記コアとの間に介在される中間層とを含むものであり、上記コアを上記中間層で被覆した球体の表面におけるJIS−C硬度が90以上である[1]又は[2]記載のゴルフボール。
[4]上記カバーの最外層の基材樹脂がポリウレタン材料からなり、該ポリウレタン材料の硬度がショアDで40〜60である[1]、[2]又は[3]記載のゴルフボール。
[5]コアの直径が32mm〜41mmである[1]〜[4]のいずれか1項記載のゴルフボール。
[6]コアが単層からなる[1]〜[5]のいずれか1項記載のゴルフボール。
[7]トルエン膨潤試験に基づいて計測される架橋密度であって、コア表面の架橋密度とコア中心の架橋密度の差が9×102mol/m3以上である[1]〜[6]のいずれか1項記載のゴルフボール。
[8]測定温度−12℃、周波数15Hzの条件でコア中心部の損失正接を測定したとき、動歪み1%での損失正接をtanδ1、動歪み10%での損失正接をtanδ10としたとき、これらのtanδの傾き:[(tanδ10−tanδ1)/(10%−1%)]の値が0.002以下である[1]〜[7]のいずれか1項記載のゴルフボール。
本発明のゴルフボールは、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離、I#6等のミドルアイアンの飛距離を満足させると共に、繰り返し打撃時の割れ耐久性に優れるものである。
本発明の一実施例に係るゴルフボールを示す断面図である。 本発明の実施例及び比較例で使用したディンプルを示す平面図である。 実施例1で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 実施例2で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 実施例3で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 実施例4で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 実施例5で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 比較例1で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 比較例2で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 比較例3で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 比較例4で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。 比較例5で使用したコアの断面硬度分布を示すグラフである。
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、コアと、少なくとも1層のカバーとを具備する構造を有する。上述したように、コアは単層のほか、2層以上の複数層に形成することができるが、本発明においては、コアは単層であることが好ましい。また、本発明において、上記の「カバー」とは、コアよりも外側に形成される層の総称を意味し、少なくとも1層からなる。即ち、カバーが複数層からなる場合には、カバーの最外層のほか、最外層とコアとの間に介在される中間層が含まれるものであり、従って、内側から順に、中間層、最外層からなる2層のカバーとすることができる。更に、コアと中間層との間に包囲層を設けることができ、この場合は、内側から順に、包囲層、中間層、最外層からなる3層のカバーとすることができる。なお、通常、カバーの最外層の外表面には多数のディンプルが形成される。
本発明で使用するコアについて説明すると、上記コアは、ゴム材を主材とするゴム組成物を加硫することにより得られる。このゴム組成物として、特に制限はなく、好適な実施形態としては、例えば、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、硫黄、有機硫黄化合物、充填材及び老化防止剤を含有するゴム組成物を用いて形成することが挙げられる。そして、このゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好ましい。
上記ゴム成分のポリブタジエンは、シス−1,4−結合を60%(質量%、以下同じ)以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有するものであることが必要である。シス−1,4−結合が少なすぎると反発性が低下する。また、1,2−ビニル結合の含有量が2%以下、より好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下であることが好ましい。
上記ポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、好ましくは30以上、好ましくは35以上、上限として好ましくは100以下、より好ましくは90以下である。
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、いずれも回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
上記ポリブタジエンとしては、良好な反発性を有するゴム組成物の加硫成形物を得る観点から、希土類元素系触媒又はVIII族金属化合物触媒で合成されたものであることが好ましい。
上記の希土類元素系触媒としては、特に限定されるものではないが、ランタン系列希土類元素化合物を用いたものを好適に使用することができる。また、必要に応じて、ランタン系列希土類元素化合物に有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、及びルイス塩基を組み合わせて使用することができる。上記で例示した各種化合物は、特開平11−35633号公報、特開平11−164912号公報、特開2002−293996号公報に記載されているものを好適に採用することができる。
上記の希土類元素系触媒の中でも、ランタン系列希土類元素であるネオジム、サマリウム、ガドリニウムを用いた触媒が好適であり、特にネオジム系触媒を使用することが推奨され、この場合、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得ることができる。
上記ポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.3以上であり、上限としては、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下であることが好ましく、Mw/Mnが小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下する場合がある。
基材ゴムとして上記ポリブタジエンを用いるものであるが、この場合、ゴム全体に占めるポリブタジエンの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、基材ゴムの100質量%が上記ポリブタジエンであってもよく、98質量%以下が好ましく、より好ましくは95質量%以下である。
具体的には、シス−1,4−ポリブタジエンゴムとしては、日本合成ゴム社製(JSR社製)の高シスBR01、BR11、BR02、BR02L、BR02LL、BR730、BR51等を用いることができる。
なお、上記基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
共架橋剤としては、本発明では、特に制限はないが、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては、具体的には、上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。これらの不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、上限としては、好ましくは45質量部以下、より好ましくは43質量部以下、更に好ましくは41質量部以下である。
架橋開始剤としては、有機過酸化物を使用することが好適である。具体的には、熱分解温度が比較的高温な有機過酸化物を使用することが好適であり、具体的には、1分間半減期温度が約165℃〜185℃の高温な有機過酸化物を使用するものであり、例えば、ジアルキルパーオキサイド類を挙げることができる。ジアルキルパーオキサイド類として、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。半減期は、有機過酸化物の分解速度の程度を表す指標の一つであり、もとの有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が1/2になるまでに要する時間によって示される。コア用ゴム組成物における加硫温度は、通常、120〜190℃の範囲内であり、その範囲内では、1分間半減期温度が約165℃〜185℃と高温な有機過酸化物は比較的遅く熱分解する。本発明のゴム組成物によれば、加硫時間の経過と共に増加する遊離ラジカルの生成量を調整することにより特定の内部硬度形状を有するゴム架橋物であるコアを得るものである。
架橋開始剤は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、上限として、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、最も好ましくは2.0質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感となると共に、割れ耐久性も大きく低下する。逆に、配合量が少なすぎると、軟らかくなりすぎて耐え難い打感となる共に、大きく生産性が低下する場合がある。
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上とすることができる。また、配合の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
また、本発明では、老化防止剤をゴム組成物に配合するものであり、例えば、ノクラックNS−6、同NS−30、同200(大内新興化学工業(株)製)等の市販品を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
上記ゴム組成物には、必要に応じて硫黄を配合することができる。具体的には、商品名「サルファックス−5」(鶴見化学工業社製)等が例示される。硫黄の配合量は、0超とすることができ、好ましくは上記基材ゴム100質量部に対して0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下とすることができる。硫黄の添加によりコアの硬度差を大きくすることができる。なお、硫黄の配合量が多すぎた場合、加熱成形の際、ゴム組成物が爆発するなどの不具合を生じたり、反発性が大きく低下したりするおそれがある。
更に、上記ゴム組成物には、優れた反発性を付与するために有機硫黄化合物を配合することができ、具体的には、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.07質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、上限として5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下配合する。配合量が多すぎると硬さが軟らかくなりすぎてしまい、少なすぎると反発性の向上が見込めない。
更に詳述すれば、上記のコア材料に直接的に水(水を含む材料)を配合することにより、コア配合中の有機過酸化物の分解を促進することができる。また、コア用ゴム組成物中の有機過酸化物は、温度によって分解効率が変化することが知られており、ある温度よりも高温になるほど分解効率が上がる。温度が高すぎると、分解したラジカル量が多くなりすぎてしまい、ラジカル同士で再結合や不活性化してしまうことになる。その結果、架橋に有効に働くラジカルが減ることになる。ここで、コア加硫の際に有機過酸化物が分解することで分解熱が発生するとき、コア表面付近は加硫モールドの温度とほぼ同程度を維持しているが、コア中心付近は外側から分解していった有機過酸化物の分解熱が蓄積されるため、モールド温度よりもかなり高温になる。コアに直接的に水(水を含む材料)を配合した場合、水は有機過酸化物の分解を助長する働きがあるため、上述したようなラジカル反応をコア中心とコア表面において変化させることができる。即ち、コア中心付近では有機過酸化物の分解が更に助長され、ラジカルの不活性化がより促されることで有効ラジカル量が更に減少するため、コア中心とコア表面との架橋密度が大きく異なるコアを得ることができ、かつコア中心部の動的粘弾性特性の異なるコアを得ることができる。
そして、上記のコアを有するゴルフボールは、低スピン化を実現すると共に、耐久性に優れ、反発性の経時変化が少ないゴルフボールを提供することができる。
上記のコア材料に配合される水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限としては、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下である。
また、上記の水を適量配合することにより、加硫前のゴム組成物における水分含有率が1000ppm以上となることが好ましく、より好ましくは1500ppm以上である。上限としては、好ましくは8500ppm以下であり、より好ましくは8000ppm以下である。上記ゴム組成物の水分含有率が小さすぎると、適切な架橋密度・Tanδを得ることが困難となり、エネルギーロスが少なく低スピン化を図ったゴルフボールを成形することが困難となる場合がある。上記ゴム組成物の水分含有率が大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎてしまい、適切なコア初速を得ることが困難となる場合がある。
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100℃〜200℃、10〜40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させ、製造することができる。
コアの直径としては、特に制限はないが、好ましくは32mm以上、より好ましくは33mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの割れ耐久性が著しく低下したり、ボールの初速が低くなったりする場合がある。
上記コアの断面硬度については、コアの半径をR(mm),コア中心のJIS−C硬度をA,コア中心からR/3mm離れた位置のJIS−C硬度をB,コア中心からR/1.8mm離れた位置のJIS−C硬度をC,コア中心からR/1.3mm離れた位置のJIS−C硬度をDとすると共に、コア表面のJIS−C硬度をEとする場合、下記の(1)〜(4)の数式
(1)D−C≧7
(2)C−B≦7
(3)(D−C)−(C−B)≧7
(4)E−A≧16
を満足することを要する。上記(1)〜(4)のようにコアの断面硬度を調整すること、概念的には、コア中心から所定度離れた位置までの断面硬度が比較的軟らかく、かつ大きな硬度変動は無いが、それ以降のコア表面までの断面硬度が急勾配に増加する硬度分布に仕上げることにより、ドライバー、ミドルアイアンのフルショットでのコアの過度な変形を抑制し、コアの変形を最適化し、初速のロス及びスピンの増加を抑制することができる。その結果、プロや上級者が使用するドライバーの飛距離、I#6等のミドルアイアンの飛距離を満足させることができ、また、繰り返し打撃時の割れ耐久性を改善させることができる。
上記式(1)について、D−Cの値が小さすぎると、十分な低スピン効果が得られず、狙った飛距離が出なくなる場合がある。D−Cの値の好ましい値として、下限値は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、上限値としては、好ましくは25以下、より好ましくは24以下である。
また、上記式(2)について、C−Bの値が大きすぎると、十分な低スピン効果が得られず所望の飛距離が出ない場合がある。C−Bの値の好ましい値として、上限値は、好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下であり、下限値としては、好ましくは−1以上、より好ましくは0以上である。
更に、上記式(3)について、(D−C)−(C−B)の値が大きすぎると、十分な低スピン効果が得られず、狙った飛距離が出なくなる場合がある。(D−C)−(C−B)の好ましい値として、下限値は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、上限値としては、好ましくは25以下、より好ましくは24以下である。
また、上記式(4)について、E−Aの値、即ち、コア表面とコア中心とのJIS−C硬度差は、下限値として、好ましくは16以上、より好ましくは17以上、更に好ましくは18以上であり、上限値として、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、更に好ましくは40以下である。E−Aの値が大きすぎると、初速が出なくなったり、耐久性が悪くなることがある。逆に、E−Aの値が小さすぎると、過度にスピンが増えて飛距離が出なくなったり、打感が硬くなったりする場合がある。なお、コア中心のJIS−C硬度について、特に制限はないが、下限値として、好ましくは50以上、より好ましくは52以上、更に好ましくは54以上であり、上限値として、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、更に好ましくは66以下である。一方、コア表面のJIS−C硬度について、特に制限はないが、下限値として、好ましくは75以上、より好ましくは77以上、更に好ましくは79以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは98以下、更に好ましくは96以下である。
コアを上記(1)〜(4)の数式を満たすようにするための、断面硬度を調整する方法については特に制限はないが、コアのゴム配合並びに加硫温度及び時間を適宜調整することにより所望の断面硬度を有するコアが得られるものである。例えば、上述した有機過酸化物の種類及び配合量を調整することや加硫条件を調整することにより、上記(1)〜(4)の数式を満たすコアが得られる。具体的には、コアに高温で分解可能な有機過酸化物及び硫黄をゴム配合成分として使用することで本発明の所望の断面硬度が得られやすい。
次に、コアの架橋密度について説明する。
本発明においては、コア中心の架橋密度が、好ましくは6.0×102mol/m3以上、より好ましくは7.0×102mol/m3以上、更に好ましくは8.0×102mol/m3以上であり、上限値としては、好ましくは15.0×102mol/m3以下、より好ましくは14.0×102mol/m3以下、更に好ましくは13.0×102mol/m3以下である。一方、コア表面の架橋密度については、好ましくは13.0×102mol/m3以上、更に好ましくは14.0×102mol/m3以上、15.0×102mol/m3以上であり、上限値としては、好ましくは30.0×102mol/m3以下、より好ましくは28.0×102mol/m3以下、更に好ましくは26.0×102mol/m3以下である。なお、コア中心とコア表面との架橋密度の差[(コア表面の架橋密度)−(コア中心の架橋密度)の値]が、好ましくは9.0×102mol/m3以上であり、上限値としては、好ましくは30.0×102mol/m3以下である。上記のコア中心又はコア表面の架橋密度が上記範囲を逸脱すると、加硫時にゴム組成物中の水が有機過酸化物の分解に十分に寄与していない可能性があり、その結果、ボールの十分な低スピン効果を得られない場合がある。
上記の架橋密度は、具体的には、以下の手順により測定することができる。
コアをその幾何学的中心を通るように厚さ2mmの円状平板に切り出す。そして、上記の円状平板において、コア中心及びコア表面に相当する各部位から内側に4mm以内となる測定箇所を打ち抜き器でφ3mmに打ち抜いてサンプルとし、小数点2桁の単位(mg)で測定可能な電子天秤でサンプル重量を測定する。10mlのバイアル瓶に上記サンプルとトルエン8mlを加え、栓をして密閉のうえ、72時間以上静置し、その後、溶液を廃棄し、浸漬後のサンプル重量を測定する。膨潤前後のサンプル重量からFlory-Rehnerの式を用いて、ゴム組成物の架橋密度を計算する。
ν=−(ln(1−vr)+vr+χvr 2)/VS(vr 1/3−vr/2)
[ν:架橋密度、vr:膨潤中のゴム容積分率、χ:相互作用定数、VS:トルエンのモル容積]
r=VBR/(VBR+VT
BR=(wf−wff)/ρ
T=(ws−wf)/ρT
[VBR:ゴム組成物中のBRの体積、VT:膨潤したトルエンの体積、vf:ゴム組成物中の充填剤の重量分率、ρ:ゴム組成物の密度、wf:浸漬前のサンプル重量、ws:浸漬後のサンプル重量、ρT:トルエンの密度]
なお、Vsは0.1063×10-33/mol、ρTは0.8669、χは文献(Macromolecules 2007, 40, 3669-3675)をもとに0.47にて計算を行う。
コア表面とコア中心との架橋密度の差[(コア表面の架橋密度)−(コア中心の架橋密度)の値]P(mol/m3)と、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までのコアのたわみ量E(mm)の積(P×E)の技術的意義は次のようである。一般的にコア硬度が硬い、即ち、コアのたわみ量E(mm)の値が小さいほど、上記の架橋密度の差P(mol/m3)は大きくなる傾向がある。従って、上記のようにPにEを掛けることにより、コア硬度の影響を打ち消すことができるため、低スピン化の指標としてP×Eの値を用いることが可能となる。上記のP×Eの値は、26×102mol/m3・mm以上であることが好ましく、より好ましくは27×102mol/m3・mm以上、更に好ましくは28×102mol/m3・mm以上である。上述のように、コア中心とコア表面に架橋密度の違いが生まれることにより、低スピンであると共に、耐久性が高くなると共に、長期間使用しても初速度が低下することのないゴルフボールを得ることができる。
次に、コアの動的粘弾性の測定法について説明する。
一般的には、ゴム材料の粘弾性は、ゴム製品の性能に大きな影響を与えることが知られており、また、損失正接tanδが貯蔵するエネルギーに対する損失するエネルギーの比を表すものであり、tanδが小さいほどゴムは弾性成分の寄与が大きく、tanδが大きいほど粘性成分の寄与が大きくなることが知られている。本発明において、コア中心における加硫ゴムの動的粘弾性試験において、測定温度−12℃、周波数15Hzの条件で、動歪み1%での損失正接をtanδ1、動歪み10%での損失正接をtanδ10としたとき、これらのtanδの傾き:[(tanδ10−tanδ1)/(10%−1%)]の値が0.003以下であることが好ましく、より好ましくは0.002以下である。上記tanδの値が大きくなると、コアのエネルギーロスが大きくなりすぎてしまい、十分な反発性及び低スピン効果を得ることが難しくなることがある。コアの動的粘弾性特性の計測には種々の方法を採用することができる。例えば、カバーを被覆したコアをその幾何学的中心を通るように厚さ2mmの円状平板に切り出し、これをサンプルとし、更に測定箇所を打ち抜き器でφ3mmに打ち抜く。そして、動的粘弾性装置(例えば、GABO社、製品名「EPLEXOR500N」)を使用し、圧縮試験用ホルダーを用いて、初期歪35%、測定温度−12℃、周波数15Hzの条件により、動歪み0.01〜10%歪時のtanδを測定し、その測定結果に基づいて傾きを求めることができる。
一方、本発明に使用されるカバーのうち最外層の材料については、例えば、アイオノマー又はポリウレタン等が挙げられる。
最外層の材料は、コントロール性と耐擦過傷性の観点からポリウレタンを使用することが好適であり、その中でも熱可塑性ポリウレタンエラストマーを採用することが量産性の観点から好適である。
また、最外層の材料が熱可塑性ポリウレタンエラストマーの場合、(A)熱可塑性ポリウレタン及び(B)ポリイソシアネート化合物を主成分とする樹脂配合物からなる1種類の樹脂ペレットを用い、この樹脂ペレットが、射出成形直前に射出成形機内に投入される際、一分子中の全てのイソシアネート基が未反応状態で残存してなるポリイソシアネート化合物が少なくとも一部に存在することが好ましい。このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるゴルフボールは、反発性、スピン性能、耐擦過傷性に優れたものとなる。
本発明の効果を十分有効に発揮させるためには、必要十分量の未反応のイソシアネート基が最外層の樹脂材料中に存在すればよく、具体的には、上記の(A)成分と(B)成分とを合わせた合計質量が、最外層全体の質量の60%以上であることが推奨されるものであり、より好ましくは70%以上である。上記(A)成分及び(B)成分については以下に詳述する。
上記(A)熱可塑性ポリウレタンについて述べると、その熱可塑性ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物からなるハードセグメントとを含む。ここで、原料となる長鎖ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、反発弾性率が高く低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタンを合成できる点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
上記のポリエーテルポリオールとしては、例えば、環状エーテルを開環重合して得られるポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができる。ポリエーテルポリオールとしては1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、ポリ(テトラメチレングリコール)及び/又はポリ(メチルテトラメチレングリコール)が好ましい。
これらの長鎖ポリオールの数平均分子量としては1,500〜5,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量を有する長鎖ポリオールを使用することにより、上記した反発性や生産性などの種々の特性に優れた熱可塑性ポリウレタン組成物からなるゴルフボールを確実に得ることができる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,700〜4,000の範囲内であることがより好ましく、1,900〜3,000の範囲内であることが更に好ましい。
なお、上記の長鎖ポリオールの数平均分子量とは、JIS K−1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。鎖延長剤としては、1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鎖延長剤としては、これらのうちでも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブチレングリコールがより好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−(又は)2,6−トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。但し、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明においては生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
上記(A)成分の熱可塑性ポリウレタンとして最も好ましいものは、長鎖ポリオールとしてポリエーテルポリオール、鎖延長剤として脂肪族ジオール、ポリイソシアネート化合物として芳香族ジイソシアネートを用いて合成される熱可塑性ポリウレタンであって、上記ポリエーテルポリオールが数平均分子量1,900以上のポリテトラメチレングリコール、上記鎖延長剤が1,4−ブチレングリコール、上記芳香族ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのものであるが、特にこれらに限られるものではない。
また、上記ポリウレタン形成反応における活性水素原子:イソシアネート基の配合比は、上記した反発性、スピン性能、耐擦過傷性及び生産性などの種々の特性がより優れた熱可塑性ポリウレタン組成物からなるゴルフボールを得ることができるよう、好ましい範囲にて調整することができる。具体的には、上記の長鎖ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤を反応させて熱可塑性ポリウレタンを製造するに当たり、長鎖ポリオールと鎖延長剤とが有する活性水素原子1モルに対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が0.95〜1.05モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。
上記(A)成分の熱可塑性ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、長鎖ポリオール、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
具体的な(A)成分の熱可塑性ポリウレタンとし、市販品を用いることもでき、例えば、パンデックスT8295,同T8290,同T8283,同T8260(いずれもディーアイシーバイエルポリマー社製)などが挙げられる。
次に、上記(B)成分として用いられるポリイソシアネート化合物については、特に制限はないが、各種のイソシアネートを採用することができ、具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−(又は)2,6−トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。上記のイソシアネートの群のうち、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートを採用することが、(A)成分の熱可塑性ポリウレタンとの反応に伴う粘度上昇等による成形性への影響と、得られるゴルフボールの最外層材料の物性とのバランスとの観点から好適である。
上記(A)及び(B)成分に、任意成分として、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマー〔(C)成分〕を配合することができる。この(C)成分を上記樹脂配合物に配合することにより、樹脂配合物の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等、ゴルフボールの最外層材として要求される諸物性を高めることができる。
上記(C)成分として、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーとして、具体的には、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレンブロックエラストマー、水添スチレンブタジエンゴム、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体又はその変性物、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体又はその変性物、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体又はその変性物、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレン及びナイロン樹脂から選ばれ、その1種又は2種以上を用いることができる。特に、生産性を良好に維持しつつ、イソシアネート基との反応により、反発性や耐擦過傷性が向上することなどの理由から、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー及びポリアセタールを採用することが好適である。
上記(A)、(B)及び(C)成分の組成比については、特に制限はないが、本発明の効果を十分に有効に発揮させるためには、質量比で(A):(B):(C)=100:2〜50:0〜50であることが好ましく、更に好ましくは、(A):(B):(C)=100:2〜30:8〜50とすることである。
本発明では、(A)成分と(B)成分、更に加えて(C)成分を混合して樹脂配合物を作成するが、その際、ポリイソシアネート化合物のうち、少なくとも一部に、全てのイソシアネート基が未反応状態で残存するポリイソシアネート化合物が存在するような条件を選択する必要がある。例えば、窒素ガス等の不活性ガスや真空状態で混合すること等の処置を講ずる必要がある。この樹脂配合物は、その後に金型に配置されたコア周囲に射出成形されることになるが、その取り扱いを円滑かつ容易に行う理由から、長さ1〜10mm、直径0.5〜5mmのペレット状に形成することが好ましい。この樹脂ペレット中には、未反応状態のイソシアネート基が残存しており、コアに射出成形している間やその後のアニーリング等の後処理により、未反応イソシアネート基は(A)成分や(C)成分と反応して架橋物を形成する。
上記最外層を成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の樹脂配合物を供給し、コアの周囲に溶融した樹脂配合物を射出することにより最外層を成形することができる。この場合、成形温度としては熱可塑性ポリウレタン等の種類によって異なるが、好ましくは150〜250℃の範囲である。
なお、射出成形を行う場合、樹脂供給部から金型内に至る樹脂経路の一部又は全ての個所において、窒素等の不活性ガス又は低露点ドライエア等の低湿度ガスによるパージ又は真空処理等により低湿度環境下で成形を行うことが望ましいが、これに限定されるものではない。また、樹脂搬送時の圧送媒体としても、低露点ドライエア又は窒素ガス等の低湿度ガスが好ましいが、これらに限定されるものではない。上記の低湿度環境下で成形を行うことにより、樹脂が金型内部に充填される前のイソシアネート基の反応の進行を抑制し、ある程度イソシアネート基が未反応状態の形態のポリイソシアネートを樹脂成形物に含めることにより、不要な粘度上昇等の変動要因を減少させ、また、実質的な架橋効率を向上させることができる。
なお、コア周囲に射出成形する前の樹脂配合物中における未反応状態のポリイソシアネート化合物の存在を確認する手法としては、該ポリイソシアネート化合物のみを選択的に溶解させる適当な溶媒により抽出し、確認する手法等が考えられるが、簡便な方法としては不活性雰囲気下での示差熱熱重量同時測定(TG−DTA測定)により確認する手法が挙げられる。例えば、本発明で用いられる樹脂配合物(最外層材料)を窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minにて加熱していくと、約150℃程度から緩やかなジフェニルメタンジイソシアネートの質量減少を確認することができる。一方、熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート混合物との反応を完全に行った樹脂サンプルでは約150℃からの質量減少は確認されず、230〜240℃程度からの質量減少を確認することができる。
上記のように樹脂配合物を成形した後、アニーリングを行って架橋反応を更に進行させ、ゴルフボールの最外層としての特性を更に改良することも可能である。アニーリングとは、一定環境下で一定期間熟成させることをいう。
更に、本発明における最外層材料には、上記樹脂分に加えて、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、離型剤、可塑剤、無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン、タングステン等)等を挙げることができる。
次に、本発明の最外層の厚さについては、特に制限はないが、0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、上限として、好ましくは1.4mm以下、より好ましくは1.2mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。最外層が上記範囲よりも厚すぎると、W#1打撃時に反発が足りなくなり、又はスピン量が多くなり、飛距離が出なくなることがある。最外層が上記範囲よりも薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなり、又はプロや上級者でもコントロール性が不足することがある。
最外層の材料硬度は、ショアD硬度としては、特に制限はないが、好ましくは34以上、より好ましくは37以上、更に好ましくは40以上であり、上限として、好ましくは66以下、より好ましくは63以下、更に好ましくは60以下である。このショアD硬度が低いと、フルショット時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。また、上記のショアD硬度が高すぎると、アプローチでスピンがかからずにプロや上級者でもコントロール性が不足することがある。なお、上記の最外層の材料硬度は、所定厚のシート状に成型した場合の硬度を言い、以下、「中間層」及び「包囲層」の材料硬度についても同じように定義される。
本発明のゴルフボールには、空気力学的性能の点から、最外層の表面に多数のディンプルが設けられる。上記最外層表面に形成されるディンプルの個数については、特に制限はないが、空気力学的性能を高め飛距離を増大させる点から、好ましくは250個以上、より好ましくは270個以上、更に好ましくは290個以上、最も好ましくは300個以上であり、上限値として、好ましくは400個以下、より好ましくは380個以下、更に好ましくは360個以下である。
本発明では、ボール構造を更に多層化することにより、特にプロや上級者の要望に応えたボール性能を改善させることができるが、例えば、上記コアと上記最外層との間に中間層を介在することができるが、本発明はこの構造に制限されるものではない。
上記の場合、中間層の材料硬度は、ショアD硬度としては、特に制限はないが、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは60以上であり、上限値としては、好ましくは70以下、より好ましくは66以下、更に好ましくは63以下である。中間層の材料硬度が低すぎると、フルショット時にボール全体にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。逆に、中間層の材料硬度が高すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなり、又は、パターやショートアプローチ実施時の打感が硬くなりすぎることがある。
中間層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、更に好ましくは0.9mm以上であり、上限値としては、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.7mm以下である。中間層の厚さが上記範囲よりも厚すぎると、W#1にて低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。また、中間層が薄すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性や低温時の耐久性が悪くなることがある。
中間層の材料については、特に制限はないが、例えば、公知のアイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー等を好適に使用することができる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。中間層材料として、特に好ましくはアイオノマー樹脂を基材樹脂として使用することが好適である。この場合、アイオノマー樹脂組成物の配合としては、亜鉛イオン(Zn2+)中和型のアイオノマー樹脂及びナトリウムイオン(Na+)中和型のアイオノマー樹脂の混合物を採用することが望ましい。この混合比率については、亜鉛イオン(Zn2+)中和型のアイオノマー樹脂(I)/ナトリウムイオン(Na+)中和型のアイオノマー樹脂(II)が質量%で25/75〜75/25であることが好ましく、より好ましくは、35/65〜65/35、更に好ましくは45/55〜55/45である。(I)/(II)の樹脂の比率が上記範囲を満足しないと、ボール全体の反発性が小さくなる可能性があり、このため所望の飛び性能が得られなくなるおそれがある。また、常温での繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなり、更には、低温(零下)での割れ耐久性も悪くなるおそれがある。
なお、上記中間層については、その外側にある最外層との密着性を高めるために、中間層表面に研磨処理を施すことが望ましい。更には、上記の研磨処理の後、その表面にプライマーを塗布することもできる。又は、中間層材料に密着強化材を添加することにより密着性を高めることもできる。
本発明では、更に、上記中間層に加えて、コアと中間層との間に包囲層を設けることができる。この場合には、図1に示されるように、内側から順に、コア1、包囲層2、中間層3、及び表面に多数のディンプルDを有する最外層4により構成された4層構造のマルチピースソリッドゴルフボールGが示される。
上記の場合、包囲層の材料硬度は、ショアD硬度としては、特に制限はないが、好ましくは40以上、より好ましくは42以上、更に好ましくは44以上であり、上限値としては、好ましくは61以下、より好ましくは59以下、更に好ましくは57以下である。包囲層の材料硬度が低すぎると、フルショット時にボール全体にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。逆に、包囲層の材料硬度が高すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなり、又は、打感が硬くなりすぎることがある。
包囲層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上であり、更に好ましくは1.4mm以上であり、上限値としては、好ましくは4.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.0mm以下である。包囲層の厚さが上記範囲よりも厚すぎると、ドライバーで打撃してもボールの初速が足りずに所望の飛距離が出なくなることがある。また、包囲層が薄すぎると、低スピン化が足りずに所望の飛距離が出なくなることがある。
包囲層の材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、公知のアイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー等を好適に使用することができる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
包囲層の材料としては、特に、(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0〜0:100になるように配合した(f)ベース樹脂と、(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとの樹脂成分[(f)+(e)]100質量部に対して、(c)分子量が228〜1,500の脂肪酸及び/又はその誘導体5〜80質量部と、及び(d)上記ベース樹脂及び(c)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性金属化合物0.1〜17質量部とを配合した混合物を用いることが好適である。この場合、上記(f)ベース樹脂と上記(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0〜100:100の範囲内で調整すること、及び上記(f)成分、(c)成分及び(d)成分の混合物とすることが好ましく、更には、上記(c),(d),(e)及び(f)成分の全てを用いることが好ましく、これによりボール反発性及び飛び性能を更に向上することができる。
本発明の(a)成分と(b)成分のベース樹脂は、市販品を使用してもよく、例えば、(a)成分のランダム共重合体として、ニュクレル1560、同1214、同1035(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ESCOR5200、同5100、同5000(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等を、(b)成分のランダム共重合体として、例えば、ニュクレルAN4311、同AN4318(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ESCOR ATX325、同ATX320、同ATX310(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等を挙げることができる。
また、(a)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同AM7311(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン7930(米国デュポン社製)、アイオテック3110、同4200(EXXONMOBIL CHEMICAL社製)等を、(b)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同8320、同9320、同8120(いずれも米国デュポン社製)、アイオテック7510、同7520(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等をそれぞれ挙げることができる。上記ランダム共重合体の金属イオン中和物として好適な亜鉛中和型アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1706、同1557、同AM7316等を挙げることができる。
上記(c)成分は、分子量228以上1,500以下の脂肪酸又はその誘導体であり、上記ベース樹脂と比較して分子量が極めて小さく、混合物の溶融粘度を適度に調整し、特に流動性の向上に寄与する成分である。本発明の(c)成分は、比較的高含量の酸基(誘導体)を含み、反発性の過度の損失を抑制できる。上記(c)成分の脂肪酸として、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸などが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、更に好ましくはベヘニン酸を挙げることができる。
上記(d)成分の塩基性金属化合物としては塩基性無機金属化合物を用いることができ、その中の金属イオンは、例えば、Li+、Na+、K+、Ca++、Mg++、Zn++、Al+++、Ni++、Fe++、Fe+++、Cu++、Mn++、Sn++、Pb++、Co++等を挙げることができる。塩基性無機金属化合物としては、これら金属イオンを含む公知の塩基性無機充填剤を使用することができ、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等を挙げることができるが、特に水酸化物、又は一酸化物であることが推奨され、より好ましくはベース樹脂との反応性の高い水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、更に好ましくは水酸化カルシウムであることが推奨される。
上記(e)成分として具体的には、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることができ、反発性を更に高めることができる点から、特にオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーを好適に使用することができる。上記(e)成分は、市販品を使用してもよく、例えば、オレフィン系エラストマーとして、ダイナロン(JSR社製)、ポリエステル系エラストマーとして、ハイトレル(東レ・デュポン社製)等を挙げることができる。
また、上記熱可塑性樹脂中には、必要に応じて種々の添加剤を配合し得、このような添加剤として、具体的には、顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。このような添加剤として、より具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等の無機充填剤を挙げることができる。
なお、上記材料は、上述した各成分を加熱混合して得ることができ、例えば、混練型二軸押出機、バンバリーミキサー及びニーダー等の公知の混練機を用いて150〜250℃の加熱温度で混練することにより得ることができる。また、市販品を直接使用することができ、具体的には、Dupont社製の商品名「HPF 1000」、「HPF 2000」、「HPF AD1027」、実験用「HPF SEP1264−3」等を挙げることができる。
上述したコア、包囲層、中間層及び最外層の各層を積層して形成されるマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の射出成形法等の常法により行うことができる。例えば、先ず、コアを所定の射出成形用金型内に配備した後、包囲層材料を射出成形して第1の中間球状体を作成した後、該球状体を別の射出成形用金型内に配備して中間層材を射出成形することにより第2の中間球状体を作成する。次いで、この第2の中間球状体を、更に別の射出成形用金型内に配備して最外層材を射出成形し、これと同時に最外層表面にディンプルを成形することにより、マルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、上記の各部材の材料を射出成形する方法とは別に、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップで上記の各中間球状体を包み加熱加圧成形する方法を採用することも可能である。
本発明のゴルフボールの直径としては、42mm以上、好ましくは42.3mm以上、より好ましくは42.6mm以上であり、上限としては、44mm以下、好ましくは43.8mm以下、より好ましくは43.5mm以下、更に好ましくは43mm以下である。
また、ゴルフボールの重さは、44.5g以上であることが好適であり、より好ましくは44.7g以上、更に好ましくは45.1g以上、最も好ましくは45.2g以上であり、上限としては、好ましくは47.0g以下、より好ましくは46.5g以下、更に好ましくは46.0g以下である。
ゴルフボールを荷重負荷した時のたわみ量、即ち、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重5,880N(600kgf)を負荷したときまでのたわみ量は7mm〜10mmであることが好適であり、下限値としては、好ましくは7.1mm以上、より好ましくは7.2mm以上、更に好ましくは7.3mm以上である。このボールのたわみ量が小さすぎると、打感が硬くなったり、スピン量が過度に増加して所望の飛距離が出なくなる場合がある、逆に、上記のたわみ量が大きすぎると、初速が出なかったり、耐久性が悪くなったりする場合がある。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜5、比較例1〜5]
下記表1に示すように実施例及び比較例の各例におけるゴム配合によりコア組成物を調製した後、表中の加硫条件により加硫成形することによりコアを作成した。なお、比較例5のコアについては、加硫成形後のコアをアクリル酸含浸液に含浸させて硬度分布の変化を図ったものである。
Figure 2015077405
なお、上記材料の内容は下記の通りである。
・ポリブタジエンA…JSR社製の商品名「BR730」
・ポリブタジエンB…JSR社製の商品名「BR51」
・ポリブタジエンC…JSR社製の商品名「BR01」
・ポリイソプレンゴム…JSR社製の商品名「IR2200」
・過酸化物(1)…ジクミルパーオキサイド、日油社製の商品名「パークミルD」
・過酸化物(2)…1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、日油社製の商品名「パーヘキサC−40」
・老化防止剤…2,2−メチレンビス(4−メチル−6−ブチルフェノール)、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラックNS−6」
・ステアリン酸亜鉛…日油社製の商品名「ジンクステアレートG」
・硫黄…鶴見化学工業社製の商品名「サルファックス−5」
・蒸留水…和光純薬工業社製
次いで、表2に示す樹脂材料をそれぞれ使用し、上記コアに、包囲層、中間層、最外層を順に射出成形により形成し、3層のカバー層を形成した。なお、実施例2については、コアに、中間層及び最外層を順に射出成形して2層のカバー層を形成したものである。ディンプルについては、共通のディンプル種I(338個、模様は図2の平面図)を用いた。ディンプルは、最外層の射出成形時に、金型のキャビティー球面に設けられた多数のディンプル形成用突起に型付けられることにより形成される。
Figure 2015077405
上記材料の内容は下記の通りである。
・HPF1000:Dupont社製アイオノマー
・ハイミラン:三井デュポンポリケミカル社製のアイオノマー
・ニュクレル:三井デュポンポリケミカル社製
・酸化マグネシウム:協和化学工業社製「キョーワマグMF150」
・T8925、T8290、T8283:DIC Bayer Polymer社製の商標「パンデックス」、MDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン
・ポリエチレンワックス:「サンワックス161P」(三洋化成社製)
・イソシアネート化合物:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
得られた実施例1〜5及び比較例1〜5の各ゴルフボールにつき、各層及びボールの硬度等の物性、W#1及びI#6の両方の飛び性能(キャリー)、繰り返し打撃耐久性を下記の基準で評価した。結果を表3及び表4に示す。なお、下記(1)〜(9)については23±1℃の環境下で測定した。
(1)ゴルフボールのたわみ量
ゴルフボールを、23±1℃の温度で、500mm/minの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重5,880N(600kgf)に負荷した時までの、ゴルフボールのたわみ量(mm)を計測した。
(2)コアの中心硬度
コアを半球状にカットして断面を平面にして中心部分に硬度計の針を垂直に押し当てて測定した。JIS−C(JIS K6301−1975規格、以下同様に定義)の硬度の値で示される。
(3)コアの表面硬度
球状のコアの表面部分に垂直になるように硬度計をセットしてJIS−C硬度規格に基づいて硬度を計測した。JIS−C硬度の値で示される。
(4)コアの断面硬度
コアをファインカッターにてカットし、コアの半径をR(mm)として、コア中心からR/3mm離れた位置のJIS−C硬度をB,コア中心からR/1.8mm離れた位置のJIS−C硬度をC,コア中心からR/1.3mm離れた位置のJIS−C硬度をDとし、これらの各部分のJIS−C硬度値を計測した。そして、各実施例及び比較例のコア断面硬度分布を図3〜12のグラフに示した。
(5)コアの架橋密度(トルエン膨潤試験)
段落[0046]の記載に従ってコアの架橋密度を計算した。
(6)コアの動的粘弾性特性
段落[0048]の記載に従ってコアの動的粘弾性特性を測定した。
(7)包囲層及び中間層の各層の材料硬度
包囲層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に作成し、ASTM−D2240規格のデュロメータ「タイプD」により測定した。
(8)中間層を被覆した球体の表面硬度
球面である中間層表面に硬度計の針がほぼ垂直になるようにセットし、JIS−C硬度により計測した。
(9)最外層の材料硬度
上記(7)と同じ測定方法である。
(10)飛び試験
ドライバー(W#1)として、ブリヂストンスポーツ社製「TOURSTAGE X-DRIVE 703」(ロフト角8.5°)を打撃ロボットに装着し、ヘッドスピード(HS)50m/sで打撃した時のキャリー(m)を測定した。その評価については下記の基準を用いた。なお、スピン量は打撃直後のボールを初期条件計測装置により測定した値である。
○:キャリー 246m以上
×:キャリー 246m未満
(11)ミドルアイアン(I#6)
ミドルアイアンとして、ブリヂストンスポーツ社製「X-BLADE CB」(6番アイアン)を用い、HS44m/sにて打撃した時のキャリー(m)を測定した。その評価については下記の基準を用いた。
○:キャリー 150m以上
×:キャリー 150m未満
(12)繰り返し打撃耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ゴルフボールの耐久性を評価した。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sとした。ゴルフボールが割れるまでに要した発射回数を測定した。その評価については下記の基準を用いた。
○:割れるまでの発射回数が150回以上
×:割れるまでの発射回数が150回未満
Figure 2015077405
Figure 2015077405
上記表4に示されるように、本実施例のゴルフボールは、W#1及びI#6を使用して打撃した際の飛び性能に優れており、耐久性も良好なものである。これに対して、比較例1〜5は、W#1又はI#6の使用時の飛び性能に劣り、或いは耐久性に劣るものであった。
1 コア
2 包囲層
3 中間層
4 最外層
D ディンプル
G マルチピースソリッドゴルフボール

Claims (8)

  1. コアと、少なくとも1層のカバーとを具備するゴルフボールであって、上記コアの断面硬度において、コアの半径をR(mm),コア中心のJIS−C硬度をA,コア中心からR/3mm離れた位置のJIS−C硬度をB,コア中心からR/1.8mm離れた位置のJIS−C硬度をC,コア中心からR/1.3mm離れた位置のJIS−C硬度をDとすると共に、コア表面のJIS−C硬度をEとする場合、下記の(1)〜(4)の数式
    (1)D−C≧7
    (2)C−B≦7
    (3)(D−C)−(C−B)≧7
    (4)E−A≧16
    を満足することを特徴とするゴルフボール。
  2. ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重5,880N(600kgf)を負荷したときまでのたわみ量が7mm〜10mmである請求項1記載のゴルフボール。
  3. 上記カバーが、最外層と、該最外層と上記コアとの間に介在される中間層とを含むものであり、上記コアを上記中間層で被覆した球体の表面におけるJIS−C硬度が90以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
  4. 上記カバーの最外層の基材樹脂がポリウレタン材料からなり、該ポリウレタン材料の硬度がショアDで40〜60である請求項1、2又は3記載のゴルフボール。
  5. コアの直径が32mm〜41mmである請求項1〜4のいずれか1項記載のゴルフボール。
  6. コアが単層からなる請求項1〜5のいずれか1項記載のゴルフボール。
  7. トルエン膨潤試験に基づいて計測される架橋密度であって、コア表面の架橋密度とコア中心の架橋密度の差が9×102mol/m3以上である請求項1〜6のいずれか1項記載のゴルフボール。
  8. 測定温度−12℃、周波数15Hzの条件でコア中心部の損失正接を測定したとき、動歪み1%での損失正接をtanδ1、動歪み10%での損失正接をtanδ10としたとき、これらのtanδの傾き:[(tanδ10−tanδ1)/(10%−1%)]の値が0.002以下である請求項1〜7のいずれか1項記載のゴルフボール。
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