JP2015075348A - イオン移動度分光計 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドリフト領域へイオンを導入するシャッタゲートグリッドを通過するイオンのパルス幅を狭めてスペクトルの時間分解能を向上させることができるイオン移動度分光計を提供する。【解決手段】シャッタゲートグリッドを構成する一対のグリッド電極へそれぞれパルス電圧を印加する増幅部にオフセット電圧調整部を設ける。オフセット電圧を調整するとパルス電圧の振幅、パルス幅が保たれたまま電圧軸方向にシフトするので、シャッタゲートグリッド開放時に前段グリッド電極及び後段グリッド電極に印加される電圧に電位差を与えることができる。この電位差により、一対のグリッド電極間の空間にイオンを加速する電場が形成されるため、シャッタゲートグリッドが閉鎖状態から開放状態に切り替わった直後に、イオンの移動を促進し、イオンのパルス幅を狭めることができる。【選択図】図4

Description

本発明はイオン移動度分光計に関する。
試料分子から生成した分子イオンを電場の作用により媒質気体(又は液体)中で移動させるとき、該イオンは電場の強さやその分子の大きさなどで決まる移動度に比例した速度で移動する。イオン移動度分光測定法(Ion Mobility Spectrometry=IMS)は、試料分子の分析のためにこの移動度を利用した測定法である。図5は特許文献1、2などに開示されている一般的なイオン移動度分光計の概略構成図である。
イオン移動度分光計は、試料中の成分分子をイオン化するイオン化領域10とイオンの移動度を測定するためのドリフト領域11と、ドリフト領域11中を飛行してきたイオンを検出する検出器14と、を備える。また、イオン化領域10において生成されたイオンをごく短い時間幅に限定してパルス的にドリフト領域11へと送り込むために、イオン化領域10とドリフト領域11との境界にシャッタゲートグリッド12を備える。
シャッタゲートグリッド12は、イオン通過方向に所定の間隔dだけ離して設けられた一対のグリッド電極12a、12bからなる。図6(a)はそれぞれのグリッド電極12a、12bをイオン導入方向から見たときの概略図である。この例において、グリッド電極12a、12bは、円環状のホルダ121にそれぞれ多数の導電性ワイヤ122を同一平面上で且つ平行に張設したものである。前段グリッド電極12aにおける隣接する2本の導電性ワイヤ122のちょうど中間位置に後段グリッド電極12bにおける導電性ワイヤ122が張設されているため、一対のグリッド電極12a、12bをイオンの導入方向から見ると、図6(b)に示すように、導電性ワイヤ122は略等間隔で並び、その隣接する導電性ワイヤ122間が、イオンが通過可能であるスリット状の開口となる。
上記イオン移動度分光計では、イオン化領域10及びドリフト領域11に配置されている多数の円環状の電極13にそれぞれ印加されている直流電圧により、ドリフト領域11中にはイオン進行方向に下り電位勾配を示す電場(イオンを加速する電場)が形成される。ごく短い時間幅の期間だけイオンがシャッタゲートグリッド12を通過してドリフト領域11中に導入されると、イオンはこの下り電位勾配に沿って進む。また、図示しないが、ドリフト領域11中にはイオンの進行方向とは逆方向の拡散ガスの流れが形成されており、イオンはこの拡散ガスに衝突しつつ移動する。この移動の過程で、イオンはその大きさ等に応じて分離され、異なる大きさのイオンは時間差を有して検出器14に到達する。イオン移動度分光測定の分解能はシャッタゲートグリッド12を通過する際のイオンの時間幅(パルス幅)に大きく依存するため、分解能を向上させるためには、シャッタゲートグリッド12におけるイオンのパルス幅をできるだけ短くする必要がある。
図7は一対のグリッド電極12a、12bに印加される電圧とイオン光軸方向の電位勾配の概略図である。なお、この例では、正極性のイオンを想定している。前段グリッド電極12a及び後段グリッド電極12bに同一電圧(Vref)が印加されるときシャッタゲートグリッド12は実質的に開放状態となり、イオンはシャッタゲートグリッド12を通過してドリフト領域11に流入する。一方、後段グリッド電極12bの電位が前段グリッド電極12aの電位よりも数百V程度高くなるような電圧がそれぞれのグリッド電極12a、12bに印加されると、この電位障壁によってシャッタゲートグリッド12は実質的に閉鎖状態となり、イオンはシャッタゲートグリッド12で遮断される。一般に、シャッタゲートグリッド12の開放時間は数百μsec〜数msecであり、開放の周期は数十msec程度である。
図7から明らかなように、シャッタゲートグリッド12が閉鎖状態であるときには、前段グリッド電極12a付近に深い電位の溝が形成されるため、イオンはこの電位の溝にたまり易い。こうした状態から一対のグリッド電極12a、12bが同電位とされることでシャッタゲートグリッド12が開放されても、電位の溝にたまっていたイオンは速やかに移動するわけではなく、イオンがグリッド電極12a、12b間の空間を通過する時間にはばらつきが生じてしまう。この時間的なばらつきは、同一移動度を有するイオンが検出器14に到達する時間の拡がりの要因となり、スペクトルの時間分解能の低下をもたらすことになる。
特許第2733750号公報 特開2005−174619号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、シャッタゲートグリッドを通してイオンをドリフト領域に導入するイオン移動度分光計において、スペクトルの時間分解能を向上させることをその目的としている。
上記課題を解決するために成された本発明は、試料成分由来のイオンを生成させるイオン化部と、該イオン化部で生成されたイオンを移動度に応じて分離するために移動させるドリフト領域と、を有するイオン移動度分光計において、
a)イオンを短時間パルス的に切り出して前記ドリフト領域へ送り込むために、前記イオン化部と前記ドリフト領域との間にイオン移動方向に所定距離離れて配置された、前段グリッド電極と後段グリッド電極とからなるシャッタゲートグリッドと、
b)イオンを前記シャッタゲートグリッドで遮断する際には、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間にイオンに対する電位障壁が形成されるように、前記後段グリッド電極に前記前段グリッド電極よりも高い電圧を印加する一方、イオンが前記シャッタゲートグリッドを通過する際には、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間にイオンを加速する電場が形成されるように、前記前段グリッド電極に前記後段グリッド電極よりも高い電圧を印加するゲートグリッド制御部と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係るイオン移動度分光計において、イオン化部は、与えられた試料中の成分分子を適宜のイオン化法によりイオン化するイオン源のほか、試料成分から生成されたイオンを衝突誘起解離などにより開裂させることでプロダクトイオンを生成する手段も含む。イオン化の際のイオン化法は特に限定されない。
また、本発明に係るイオン移動度分光計は、ドリフト領域においてイオン移動度に応じて分離されたイオンを直接、イオン検出器に導入して検出する構成であってもよいが、イオン移動度に応じて分離されたイオンを四重極マスフィルタなどの質量分離器に導入して質量電荷比に応じてさらに分離して検出するイオン移動度分光測定−質量分析装置(IMS−MS)の構成であってもよい。
上述したように従来のイオン移動度分光計では、シャッタゲートグリッドを開放状態としてイオンを通過させる際に、前段グリッド電極と後段グリッド電極とを同電位としている。即ち、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間には実質的な電場は形成されず、この空間ではイオンを加速も減速もしない。これに対し、本発明に係るイオン移動度分光計では、シャッタゲートグリッドを開放状態とする際に、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間にイオンを加速する電場が形成されるように、前段グリッド電極に後段グリッド電極よりも高い電圧が印加される。なお、当然のことながら、イオンの極性によってグリッド電極やドリフト領域中に配設される電極などに印加される電圧の極性は異なる。したがって、本発明に係るイオン移動度分光計における高い「電圧」とは絶対値で表される電圧のことをいう。
本発明に係るイオン移動度分光計では、シャッタゲートグリッドが閉鎖状態から開放状態に変化したときに、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間にイオンを加速する電場が形成されるため、前段グリッド電極の手前にたまっていたイオンは電場の作用で移動が促進される。それにより、シャッタゲートグリッドが短時間開放している間に該ゲートグリッドを通過するイオンのパルス幅が広がらず、短い時間幅のイオンパケットがドリフト領域に導入されることになる。その結果、同一の移動度を有するイオンはほぼ同時にドリフト領域を通過することになり、高い時間分解能を達成することができる。
ただし、イオンがシャッタゲートグリッドを通過する際に与えられる運動エネルギが大きすぎると、ドリフト領域中でのイオン移動度に応じたイオンの分離性能が低下するおそれがある。そのため、シャッタゲートグリッドを開放状態とする際に、一対のグリッド電極に与える電位差をあまり大きくしすぎるのは好ましくなく、またこの電位差を調整できるようにしておくことが望ましい。
そこで、本発明に係るイオン移動度分光計において、好ましくは、上記ゲートグリッド制御部は、上記前段グリッド電極と上記後段グリッド電極にそれぞれ印加するパルス電圧を生成する回路を含み、該前段グリッド電極又は後段グリッド電極の少なくとも一方に印加されるパルス電圧のオフセット電圧を調整することで、上記前段グリッド電極に上記後段グリッド電極よりも高い電圧を印加する際の電圧差の調整を可能とした構成とするとよい。なお、オフセット電圧の調整は、従来一般に行われているように、可変抵抗器などを用いて行えるようにしておけばよい。
この構成によれば、例えばドリフト領域の出口端に配置されたイオン検出器により得られた検出信号を分析者が確認しながらオフセット電圧を適宜調整することで、例えば同じ移動度を有するイオンに対する信号幅が最も小さくなるように調整することができる。それによって、時間分解能を極力高めるような調整が可能である。もちろん、オフセット電圧のみならず、パルス電圧のパルス幅や振幅も調整できるようにしておくとよい。
また、本発明に係るイオン移動度分光計において、好ましくは、上記ゲートグリッド制御部は、パルス信号を入力とし該パルス信号を増幅して上記前段グリッド電極に供給する第1増幅部と、上記パルス信号を入力とし該パルス信号を増幅して上記後段グリッド電極に供給する第2増幅部と、基準パルス信号を発生するパルス信号発生部と、外部からの指示に応じ、上記パルス信号発生部で発生した基準バルス信号の極性をそのまま維持して又は反転して上記パルス信号として上記第1及び第2増幅部へ供給する極性切替部と、を含む構成とするとよい。
イオン移動度分光計では、分析対象である試料成分などによって、分析対象であるイオンは正極性である場合と負極性である場合とがあるが、上述した従来のイオン移動度分光計では、分析対象であるイオンの極性を切り替える際に、グリッド電極へ電圧を印加するための配線の繋ぎ換えが必要であった。これに対し、本発明に係るイオン移動度分光計における上記構成では、分析対象であるイオンの極性に対応して、極性切替部に指示を与え、基準バルス信号の極性をそのまま維持して又は反転して第1及び第2増幅部へと供給することにより、前段グリッド電極及び後段グリッド電極に印加される電圧の極性を切り替えることができる。これにより、分析対象であるイオンの極性切替が簡単に且つ短時間で行える。
また上記構成のイオン移動度分光計では、上記第1増幅部及び上記第2増幅部それぞれがオフセット電圧調整部を有する構成とするとよい。これにより、イオンの極性を切り替えるときでもオフセット電圧の再調整を要せず、一旦オフセット電圧を調整すれば正負いずれの極性のイオンに対しても高い時間分解能での分析を行うことができる。
本発明に係るイオン移動度分光計によれば、パルス的にドリフト領域に導入するイオンパケットのパルス幅を狭めることで、スペクトルの時間分解能を向上させることができる。
本発明の一実施例であるイオン移動度分光計の概略構成図。 本実施例のイオン移動度分光計におけるゲートグリッド制御部の回路構成図。 図2に示した回路におけるオフセット電圧を調整したときの電圧波形のシミュレーション結果を示す図。 本実施例のイオン移動度分光計と従来のイオン移動度分光計におけるグリッド電極への印加電圧波形の比較、及びシャッタゲートグリッド開放時のイオン光軸上の電位勾配の模式図。 一般的なイオン移動度分光計の概略構成図。 図5中のグリッド電極をイオンの導入方向から見たときの概略図。 従来のイオン移動度分光計におけるグリッド電極への印加電圧波形とイオン光軸上の電位勾配の模式図。
以下、本発明に係るイオン移動度分光計の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例であるイオン移動度分光計の概略構成図、図2は本実施例のイオン移動度分光計におけるゲートグリッド制御部の回路構成図である。
本実施例のイオン移動度分光計の基本的な構成は図5に示したものと同じである。即ち、本実施例のイオン移動度分光計は、イオン化領域10とドリフト領域11とを有し、イオン化領域10とドリフト領域11との境界にシャッタゲートグリッド12を備える。イオン化領域10及びドリフト領域11には、複数の円環状の電極13がイオン光軸Cに沿って配列されており、電源部16で生成される所定の直流電圧+HVがラダー抵抗15により抵抗分割されることで得られる電圧が各電極13に印加され、これによってイオン化領域10及びドリフト領域11には電場が形成される。
本実施例のイオン移動度分光計の主たる特徴は、一対のグリッド電極12a、12bにそれぞれ電圧を印加するゲートグリッド制御部17の回路構成にある。この回路構成について図2により説明する。
パルス発生部170において生成されたパルス信号は抵抗R1を経て、第1スイッチ171により、第1フォトカプラ172又は第2フォトカプラ173の一方の入力端に選択的に供給される。フォトカプラ172、173はいずれも波形整形用のシュミットトリガ内蔵フォトデテクタが搭載されており、第1フォトカプラ172は反転出力タイプ、第2フォトカプラ173は正転出力タイプである。したがって、フォトカプラ172、173に入力されるパルス信号は同じでも、それら2つのフォトカプラ172、173の出力に現れるパルス信号の論理(つまりは「H」、「L」又は「1」、「0」)は互いに反転したものとなる。
2つのフォトカプラ172、173の出力は第2スイッチ174により選択されて、非反転増幅部175と反転増幅部177の両方に共通に入力される。非反転増幅部175は、オペアンプOP1、抵抗R2、R3、R4、コンデンサC1を含んで構成され、入力されたパルス信号を所定の増幅率で以て増幅する。一方、反転増幅部177は、オペアンプOP2、抵抗R7、R8、コンデンサC2を含んで構成され、入力されたパルス信号の論理を反転させたうえで所定の増幅率で以て増幅する。非反転増幅部175の出力は前段グリッド電極12aに供給され、反転増幅部177の出力は後段グリッド電極12bに供給される。また、非反転増幅部175には、抵抗R5、R6、可変抵抗VR1を含むオフセット電圧調整部176が付設され、同様に反転増幅部177には、抵抗R9、R10、可変抵抗VR2を含むオフセット電圧調整部178が付設されている。
図2において、+Vrは正極性の電源電圧、−Vrは負極性の電源電圧、Vrefは基準電圧である。フォトカプラ172、173によって、その入力側と出力側とは電気的に絶縁されており、フォトカプラ172、173の入力側はGND(接地)が電位の基準点であるのに対し、フォトカプラ172、173の出力側は基準電圧Vrefが電位の基準点となっている。
制御部18からパルス発生部170に供給される制御信号に基づいて、バルス発生部170は所定幅のパルス信号を所定の周期で発生する。このときのパルス幅がシャッタゲートグリッド12の開放時間になるから、パルス幅を変更することでシャッタゲートグリッド12の開放時間を調整することができる。第1スイッチ171、第2スイッチ174は制御部18から供給される極性切替信号Polに応じて連動して切り替わる。例えば、分析対象のイオンが正イオンである場合に、極性切替信号Polにより、第1、第2スイッチ171、174はいずれも図2中に記載のように上側を、つまり第1フォトカプラ172を選択する。このとき、パルス発生部170から出力されたパルス信号は第1フォトカプラ172を通る際にその論理が反転され、非反転増幅部175及び反転増幅部177に入力される。
非反転増幅部175に入力されたパルス信号はその論理が反転された振幅が増幅されるが、オペアンプOP1の反転入力端に与えられている電位がその増幅の基準電位となる。そのため、可変抵抗VR1を調整することによりオペアンプOP1の反転入力端に与えられている電位が変化すると、非反転増幅部175の出力のパルス電圧のオフセットが変化し、振幅は維持されたまま電圧軸方向に信号波形がシフトする。他方、反転増幅部177に入力されたパルス信号は論理はそのままで振幅が増幅されるが、オペアンプOP2の正転入力端に与えられている電位がその増幅の基準電位となる。そのため、可変抵抗VR2を調整することによりオペアンプOP2の正転入力端に与えられている電位が変化すると、反転増幅部177の出力のパルス電圧のオフセットが変化し、振幅は維持されたまま電圧軸方向に信号波形がシフトする。
図3は図2に示した回路におけるオフセット電圧を調整したときの電圧波形のシミュレーション結果を示す図である。図3に示すように、可変抵抗VR1(又はVR2)の抵抗値を変化させることにより、グリッド電極12a(又は12b)に印加されるパルス電圧のオフセット電圧の調整が可能であることが分かる。
図4は本実施例のイオン移動度分光計と従来のイオン移動度分光計におけるグリッド電極12a、12bへの印加電圧波形の比較、及びシャッタゲートグリッド開放時のイオン光軸上の電位勾配の模式図である。上述したように従来のイオン移動度分光計では、シャッタゲートグリッド12を開放する際にグリッド電極12a、12bは同電位である。これは、図4(a)に示すように、本実施例のイオン移動度分光計のゲートグリッド制御部17においてオフセット電圧を0としたときの状態であり、前段グリッド電極12aに印加されるパルス電圧の論理「H」に対応する電圧値と後段グリッド電極12bに印加されるパルス電圧の論理「L」に対応する電圧値とは一致している。
これに対し、本実施例のイオン移動度分光計では、上述したようにオフセット電圧調整部176における可変抵抗VR1、オフセット電圧調整部178における可変抵抗VR2を調整することで、グリッド電極12a、12bに印加されるパルス電圧が電圧軸方向にシフトする。したがって、可変抵抗VR1、VR2を適宜に調整することで、図4(b)に示すように、前段グリッド電極12aに印加されるパルス電圧の論理「H」に対応する電圧値が、後段グリッド電極12bに印加されるパルス電圧の論理「L」に対応する電圧値よりも所定電圧だけ高くなるようにすることができる。このとき、イオン光軸に沿った電位勾配は図4(b)右に示すように、前段グリッド電極12aから後段グリッド電極12bに緩やかに下傾するものとなり、前段グリッド電極12aと後段グリッド電極12bとの間の空間にはイオンを加速する電場が形成される。
シャッタゲートグリッド12が閉鎖し、図7(c)に示すようにシャッタゲートグリッド12付近に電位障壁が形成されている状態から、シャッタゲートグリッド12が開放されたとき、図4(b)に示したようにシャッタゲートグリッド12付近に加速電場が形成されると、電位障壁の手前に溜まっていたイオンの移動が促進され、速やかにシャッタゲートグリッド12を通過してドリフト領域11へ導入される。それにより、シャッタゲートグリッド12をイオンが通過する際のイオンのパルス幅が狭くなり、スペクトルの時間分解能が向上する。
ただし、前段グリッド電極12aと後段グリッド電極12bとの間の空間の電位勾配が大きすぎると、ここを通過する際にイオンに与えられる運動エネルギが大きくなりすぎ、ドリフト領域11中での移動度に応じたイオンの分離特性が低下してしまう。もちろん、前段グリッド電極12aと後段グリッド電極12bとの間の空間の電位勾配が小さすぎると、シャッタゲートグリッド12におけるイオンのパルス幅を狭める効果が十分に得られない。そこで、オフセット電圧調整部176における可変抵抗VR1、及び、オフセット電圧調整部178における可変抵抗VR2の調整による、シャッタゲートグリッド12開放時の一対のグリッド電極12a、12bの電位差は、予め分析者等が適宜に調整しておくとよい。
具体的には分析者は例えば標準試料など、既知の成分を含む試料の分析を実行し、イオン検出器14で得られるイオン検出信号を観測しながら、目的成分由来のイオンに対するスペクトルの時間幅ができるだけ小さくなるように可変抵抗VR1、VR2を調整するとよい。これによって、シャッタゲートグリッド12開放時の一対のグリッド電極12a、12bの電位差を、最適又は最適に近い状態にすることができる。
なお、図4(b)から明らかなように、シャッタゲートグリッド12開放時に一対のグリッド電極12a、12bに電位差が生じるようにオフセット電圧が与えられると、シャッタゲートグリッド12閉鎖時の電位差は小さくなり、電位障壁は低くなる。しかしながら、もともとこの電位障壁を形成する電位差はオフセット電圧により生じる電位差と比べると十分に大きいので、実用上何ら問題は起こらない。また、必要に応じて、非反転増幅部175及び反転増幅部177の増幅率を調整可能としておくことで、パルス電圧の振幅を大きくできるようにしてもよい。
分析対象であるイオンが負イオンである場合には、制御部18から供給される極性切替信号Polにより、第1、第2スイッチ171、174はいずれも図2において下側に切り替わり、第2フォトカプラ173を選択する。このとき、パルス発生部170から出力されたパルス信号はその論理が維持されたまま第2フォトカプラ172を通り、非反転増幅部175及び反転増幅部177に入力される。つまり、正イオン分析時とは正負の論理が反転したパルス信号が非反転増幅部175及び反転増幅部177に入力される。非反転増幅部175及び反転増幅部177ではいずれも基準電圧Vrefが増幅動作の基準点となっているから、上述した正イオン分析時とはこの基準電圧Vrefを中心に正負が反転したパルス電圧が生成される。したがって、このときにも、前段グリッド電極12aと後段グリッド電極12aとの間の空間には、イオン(この場合には負イオン)が加速される電場が形成され、これによってシャッタゲートグリッド12をイオンが通過する際のイオンのパルス幅は狭くなる。また、このとき、前段グリッド電極12aと後段グリッド電極12aとの電位差は正イオン分析時と同じであるので、可変抵抗VR1、VR2によるオフセット電圧の再調整は不要である。
なお、上述したように、バルス発生部170で生成されるパルス信号のパルス幅がシャッタゲートグリッド12の開放時間になるから、このパルス幅を変更することでシャッタゲートグリッド12の開放時間を調整してもよい。また、グリッド電極12a、12bに印加されるパルス電圧の振幅は、非反転増幅部175、反転増幅部177の増幅率を調整(例えば帰還抵抗R3、R8の抵抗値を調整)すればよい。
また、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
例えば上記実施例のイオン移動度分光計におけるイオン化領域の構成は適宜に変更することができ、例えば質量分析装置で用いられているような各種のイオン化法によるイオン源に置き換えることができる。
また、イオン化された試料分子の移動度を計測するのではなく、例えば衝突誘起解離や光誘起解離などにより開裂したプロダクトイオンをドリフト領域に導入して移動度を計測してもよい。
さらにまた、ドリフト領域で移動度に応じて分離したイオンを四重極マスフィルタなどに導入し、質量電荷比に応じてさらに分離したあとに検出するイオン移動度分光測定−質量分析装置に本発明が適用可能であることも明らかである。
10…イオン化領域
11…ドリフト領域
12…シャッタゲートグリッド
12a…前段グリッド電極
12b…後段グリッド電極
13…円環状電極
14…イオン検出器
15…ラダー抵抗
16…電源部
17…ゲートグリッド制御部
170…パルス発生部
171、174…スイッチ
172、173…フォトカプラ
175…非反転増幅部
177…反転増幅部
176、178…オフセット電圧調整部
R1〜R10…抵抗
VR1、VR2…可変抵抗
C1、C2…コンデンサ
OP1、OP2…オペアンプ
18…制御部

Claims (4)

  1. 試料成分由来のイオンを生成させるイオン化部と、該イオン化部で生成されたイオンを移動度に応じて分離するために移動させるドリフト領域と、を有するイオン移動度分光計において、
    a)イオンを短時間パルス的に切り出して前記ドリフト領域へ送り込むために、前記イオン化部と前記ドリフト領域との間にイオン移動方向に所定距離離れて配置された、前段グリッド電極と後段グリッド電極とからなるシャッタゲートグリッドと、
    b)イオンを前記シャッタゲートグリッドで遮断する際には、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間にイオンに対する電位障壁が形成されるように、前記後段グリッド電極に前記前段グリッド電極よりも高い電圧を印加する一方、イオンが前記シャッタゲートグリッドを通過する際には、前段グリッド電極と後段グリッド電極との間の空間にイオンを加速する電場が形成されるように、前記前段グリッド電極に前記後段グリッド電極よりも高い電圧を印加するゲートグリッド制御部と、
    を備えることを特徴とするイオン移動度分光計。
  2. 請求項1に記載のイオン移動度分光計であって、
    前記ゲートグリッド制御部は、前記前段グリッド電極と前記後段グリッド電極にそれぞれ印加するパルス電圧を生成する回路を含み、該前段グリッド電極又は後段グリッド電極の少なくとも一方に印加されるパルス電圧のオフセット電圧を調整することで、前記前段グリッド電極に前記後段グリッド電極よりも高い電圧を印加する際の電圧差の調整を可能としたことを特徴とするイオン移動度分光計。
  3. 請求項2に記載のイオン移動度分光計であって、
    前記ゲートグリッド制御部は、パルス信号を入力とし該パルス信号を増幅して前記前段グリッド電極に供給する第1増幅部と、前記パルス信号を入力とし該パルス信号を増幅して前記後段グリッド電極に供給する第2増幅部と、基準パルス信号を発生するパルス信号発生部と、外部からの指示に応じ、前記パルス信号発生部で発生した基準バルス信号の極性をそのまま維持して又は反転して前記パルス信号として前記第1及び第2増幅部へ供給する極性切替部と、を含むことを特徴とするイオン移動度分光計。
  4. 請求項3に記載のイオン移動度分光計であって、
    前記第1増幅部及び前記第2増幅部それぞれがオフセット電圧調整部を有することを特徴とするイオン移動度分光計。
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