JP6128235B2 - イオン移動度分析装置及び質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン移動度分析装置及び該装置を用いた質量分析装置に関する。
試料分子から生成した分子イオンを電場の作用により媒質気体(又は液体)中で移動させるとき、該イオンは電場の強さやその分子の大きさなどで決まる移動度に比例した速度で移動する。イオン移動度分光測定法(Ion Mobility Spectrometry=IMS)は、試料分子の分析のためにこの移動度を利用した測定法である。図8(a)は一般的なイオン移動度分析装置の概略構成図である(特許文献1など参照)。
このイオン移動度分析装置は、試料中の成分分子をイオン化するイオン源1と、図示しない例えば円筒形状のハウジング内に設けられた、イオン移動度を測定するためのドリフト領域4と、ドリフト領域4中を移動してきたイオンを検出する検出器5と、を備える。また、イオン源1において生成されたイオンをごく短い時間幅に限定してパルス的にドリフト領域4へと送り込むために、ドリフト領域4の入口端にシャッタゲート3を備える。ハウジング内は大気圧雰囲気又は100[Pa]程度の低真空雰囲気であり、ドリフト領域4に配置されているドリフト電極群2に含まれる多数の円環状の電極2aにそれぞれ印加されている直流電圧により、ドリフト領域4中にはイオン移動方向に下り電位勾配を示す(イオンを加速する)一様電場が形成される。図8(b)はドリフト領域4におけるイオン光軸C上のポテンシャル分布を示す概略図である。一方、この電場による加速方向とは逆方向に中性の拡散ガスの流れが形成されている。
イオン源1で生成されたイオンはドリフト領域4の入口端に設けられたシャッタゲート3で一旦堰き止められ、シャッタゲート3がパルス的に開放されると、イオンはパケット状にドリフト領域4中に導入される。導入されたイオンはドリフト領域4において拡散ガスと衝突しながら、下り電位勾配に沿って進む。イオンはその大きさ、立体構造、電荷などに依存するイオン移動度によって時間的に分離され、異なるイオン移動度を持つイオンは時間差を有して検出器5に到達する。ドリフト領域4中の電場が一様である場合には、イオンがドリフト領域4を通過するのに要するドリフト時間から、イオン-拡散ガス間の衝突断面積を見積もることが可能である。
一方、特許文献2には、ドリフト領域中の電場を一様とせず、イオン軌道の半径方向の集束を行えるようにイオン光軸上のポテンシャル分布を調整する方法が提案されている。この場合には、イオン-拡散ガス間の衝突断面積の見積もりはかなり困難であるものの、イオンの拡散による損失を抑えてより多くの量のイオンを検出器に到達させることができるので、高感度化を達成することができる。
一般に、イオン移動度分析装置の分解能は、図8(c)に示したような、ドリフト時間を横軸、信号強度を縦軸としたスペクトル上において[ドリフト時間]/[ピーク幅]により定義される。したがって、分解能を向上するには、ドリフト時間を大きくするか或いはピーク幅を小さくするような工夫が必要である。ドリフト時間を大きくするにはドリフト領域を長くする必要があり、装置のサイズやコストの面での制約が大きい。また、拡散ガスとの衝突による拡散のために、イオンパケットは長く飛行するほど発散していくため、ドリフト時間が長くなるのに伴ってピーク幅は広がってしまう。そのため、ドリフト領域を長くすることでドリフト時間を大きくしても、同時にピーク幅も広がるために性能向上の程度は小さい。即ち、ドリフト領域を長くして分解能を上げるという方法は、コストが増加し装置が大形化するというデメリットが大きい反面、性能向上は小さく、あまり有効であるとはいえない。
特開2005−174619号公報 中国特許公開102954995号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、装置の小形化、低コスト化を図りつつ、分解能等の性能を向上させることができるイオン移動度分析装置及び該装置を用いた質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、パケット状のイオンをドリフト領域中に導入し飛行させることで、イオンをイオン移動度に応じて分離するイオン移動度分析装置において、
a)前記ドリフト領域中に加速電場を形成するためにイオン光軸に沿って配設された円環状又は円筒状である複数の電極と、
b)前記複数の電極の中心軸上のポテンシャル分布の下り勾配がイオンの移動方向に漸減する電場が前記加速電場の少なくとも一部で形成されるように定められた電圧を、前記複数の電極のそれぞれに印加する電圧印加部と、
c)前記加速電場における加速方向にイオンを圧縮する作用を調整するために、前記複数の電極のそれぞれに印加する電圧を変更するように前記電圧印加部を制御する制御部と、
を備え、分解能を優先させる高分解能測定モードと感度を優先させる高感度測定モードとを切り替え可能であり、前記制御部は、高分解能測定モードが指定されたときに、複数の電極の中心軸上のポテンシャル分布の下り勾配がイオンの移動方向に漸減する電場が前記加速電場の少なくとも一部で形成されるような電圧を前記複数の電極のそれぞれに印加し、高感度測定モードが指定されたときには、前記ポテンシャル分布の電位勾配が一様である電場となるような電圧を前記複数の電極のそれぞれに印加することを特徴としている。
上述したように従来の一般的なイオン移動度分析装置では、イオン移動方向のイオン光軸上における軸上ポテンシャル分布(axial potential distribution)が直線的な下り勾配となるように、複数の電極への印加電圧が設定されている。これにより、加速電場は一様電場となる。
これに対し、本発明に係るイオン移動度分析装置では、軸上ポテンシャル分布φが、加速電場の少なくとも一部の範囲で∂2φ/∂Z2>0となるように各電極への印加電圧が設定される。これは、下向きの勾配が徐々に小さくなるような軸上ポテンシャル分布である。このようなポテンシャル分布を持つ加速電場においては、ドリフト領域への導入時点でかたまっている(パケット状になっている)イオンが移動に伴ってイオン光軸方向に広がると、その広がりの中で遅れているイオンには先行しているイオンに比べて、より大きな加速度が付与される。即ち、この加速度によりイオンに作用する力は同一イオン移動度を有するイオンのイオン光軸上での広がりを圧縮する力であり、それによって同一イオン移動度を有するイオンのドリフト時間のばらつきは縮小する。その結果、例えばドリフト時間を横軸としたときのスペクトル上で観測されるピークの幅が、加速電場が一様電場である場合に比べて狭くなり、それによって分解能が向上する。
よく知られているように、電場における空間的な電位分布はラプラス方程式により規定されるが、軸対称座標系におけるラプラス方程式の規定から、軸上ポテンシャル分布が∂2φ/∂Z2>0である電場中では、イオンは径方向に拡大されるような力を受ける。そのため、こうした電場中をイオンが通過すると、そのイオン軌道は半径方向に発散することとなり、一部のイオンは電極に接触して消滅したりドリフト領域の出口端におけるイオン受容範囲を逸脱したりして、感度が低下するおそれがある。ちなみに、特許文献2に記載の装置では、加速電場の軸上ポテンシャル分布が∂2φ/∂Z2<0となるように印加電圧を調整し、これによってイオンを径方向に押す力を生じさせることでイオンをイオン光軸の付近に収束させるようにしている。
上述したように、軸上ポテンシャル分布を∂2φ/∂Z2>0とすると径方向へのイオンの拡がりを促進することになるため、測定感度の点では加速電場を一様電場とした場合よりも不利である。
そこで、本発明に係るイオン移動度分析装置では、加速電場における加速方向にイオンを圧縮する作用を調整するために、前記複数の電極のそれぞれに印加する電圧を変更するように前記電圧印加部を制御する制御部を備えている。

本発明に係るイオン移動度分析装置において、分解能測定モードが指定されたとき、上述したように加速電場の少なくとも一部でイオンパケットは加速方向に圧縮されるので、同一イオン移動度を持つイオンの加速方向の広がりは小さくなり、高い分解能を達成することができる。一方、高感度測定モードが指定されたときには、従来通り、ドリフト領域に一様加速電場が形成される。それによって、高分解能測定モードよりは分解能が下がるものの、径方向へのイオンの拡がりは抑制されるためイオンの損失は少なくて済み、高分解能測定モードよりも高い分析感度を達成できる。このように、感度重視又は分解能重視の明確な測定の切り替えが可能であるので、分析目的に応じた的確な結果を得ることができる。
また、本発明に係るイオン移動度分析装置によれば、制御部による制御によって、高感度測定モードと高分解能測定モードとの切替えを短時間で行うことができるので、例えば液体クロマトグラフで成分分離された特定の成分が導入されている比較的短い時間中に、高分解能測定と高感度測定とを切り替えて、それぞれの測定に対する結果を得ることも可能である。
また、従来知られているイオン移動度-質量分析装置と同様に、上記本発明に係るイオン移動度分析装置を、質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する質量分析装置に利用することもできる。
即ち、本発明に係る質量分析装置は、
試料由来のイオンを生成するイオン源と、イオンを質量電荷比に応じて分離する質量分離部との間に上記本発明に係るイオン移動度分析装置を配設し、該イオン移動度分析装置においてイオン移動度に応じて分離されたイオンを質量分離部によりさらに分離して検出することを特徴としている。
本発明に係る質量分析装置によれば、特定の質量電荷比を有し、且つ特定のイオン移動度を有するイオンを高い分解能で検出することができる。
本発明に係るイオン移動度分析装置及び質量分析装置によれば、ドリフト領域を長くすることなく、加速のための電極に印加する電圧を変更するだけで、分解能を向上させることができる。そのため、装置コストの増加や装置の大形化を回避しつつ、高性能化を達成することができる。
本発明の一実施例であるイオン移動度分析装置の概略構成図。 本実施例のイオン移動度分析装置におけるドリフト領域内の軸上ポテンシャル分布を示す概略図。 本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン軌道のシミュレーションのための電極モデルを示す図。 本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン軌道のシミュレーション計算の際の軸上ポテンシャル分布を示す図。 本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン軌道のシミュレーション結果を示す図。 本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン軌道のシミュレーションにより求まるスペクトルを示す図。 本発明に係るイオン移動度分析装置を用いた質量分析装置の一実施例の概略構成図。 一般的なイオン移動度分析装置の概略構成図(a)、該装置のドリフト領域におけるイオン光軸上のポテンシャル分布を示す概略図(b)、及び該装置で得られるスペクトルの一例を示す図(c)。
本発明に係るイオン移動度分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のイオン移動度分析装置の概略断面図である。図8(a)によりすでに説明したイオン移動度分析装置と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を付してある。
図1に示すように、本実施例のイオン移動度分析装置において、ドリフト領域4の入口端に配置されたシャッタゲート3、ドリフト領域4中に配置された円環状又は円筒状の複数の電極2aを含むドリフト電極群2、及びドリフト領域4の出口端後方に配置された検出器5などの構成要素は、従来装置と同じである。ドリフト電極群2の複数の電極2aには、ドリフト電圧発生部7からそれぞれ所定の電圧が印加される。また、シャッタゲート3には、シャッタ電圧発生部6から所定のタイミングでパルス状の電圧が印加される。制御部8は機能ブロックとして測定モード切替部81を含み、電圧発生部6、7をそれぞれ制御する。また、制御部8には入力部9が接続されており、ユーザは入力部9から測定モードの指定などを行うことができる。
本実施例のイオン移動度分析装置と従来装置との大きな相違点は、イオンをイオン移動度に応じて分離する際に、ドリフト電圧発生部7から各電極2aに印加される電圧である。本実施例の装置では、ドリフト電極群2の中心軸、つまりイオン光軸C上のポテンシャル分布を適切に調整することによって、イオンパケットを進行方向に圧縮し、分解能の向上を実現している。
一般に、イオン移動度分析装置におけるドリフト領域の動作圧力範囲では、イオンは拡散ガスとの衝突により、1[mm]以下の長さを飛行する間に、その拡散ガスの温度にまで冷却される。仮に、ハウジング内部が室温であるとすると、冷却後のイオンのエネルギは0.01[eV]のオーダーとなり、電場により与えられるエネルギと比較して無視できる程度に小さい。このため、イオンの巨視的なドリフト速度vは、イオン種に応じたイオン移動度Kと電場強度Eとにより、v=KEで与えられることが知られている。いま、或る時点t0で、ドリフト領域4中のイオン光軸C上でその延伸方向(つまりZ軸方向)に、中心位置z0、幅Δzのイオンパケットが存在する場合を想定する。
0から微小時間Δt経過後のイオンパケットのサイズΔz’は、拡散を考慮しない場合、次の(1)式で与えられる。
Δz'=Δz+K{E(z0+Δz/2)−E(z0−Δz/2)}Δt …(1)
Δzがごく微小であるとすると、Δz'は2次近似により次の(2)式となる。
Δz'=Δz{1−K(∂2φ/∂z2)Δt} …(2)
ここで、E=−∇φを用いた。これより、∂2φ/∂z2>0となる領域ではΔz' <Δzとなり、イオンパケットは電場により進行方向に圧縮されることが分かる。即ち、軸上ポテンシャル分布を、従来装置のような直線勾配(つまりは∂2φ/∂z2=0)ではなく、∂2φ/∂z2>0となるように調整することで、イオンパケットを進行方向に圧縮し、高分解能化を達成することができる。この軸上ポテンシャル分布は、複数の電極2aに印加する電圧値を変更することで適宜に調整することができる。
図2は、本実施例のイオン移動度分析装置と従来装置とで複数の電極2aにそれぞれ印加される電圧の比較を示す概略図である。なお、これは分析対象が正イオンである場合の例である。
図2に示すように、従来は、加速方向(つまりZ軸方向)に直線的な下向き勾配となるような電圧が、等間隔で設けられた各電極2aに印加されている。こうした加速電圧によって形成される加速電場の軸上ポテンシャル分布も、加速方向に直線状に下向き勾配となる。つまり、軸上ポテンシャル分布φは原理的には、∂2φ/∂Z2=0となり、加速電場は加速度の変化がない一様電場である。これに対し、本実施例のイオン移動度分析装置では、加速方向に下向きの勾配が徐々に縮小するような電圧が、等間隔で設けられた各電極2aに印加される。そのため、加速電場の軸上ポテンシャル分布φは、ドリフト領域4全体に亘り、∂2φ/∂Z2>0となる。
なお、静電場である加速電場におけるイオンの挙動はラプラス方程式に基づく制約を受けることがよく知られているが、この理論に従えば、上述したように∂2φ/∂Z2>0である軸上ポテンシャル分布を持つ加速電場は、その半径方向(イオン光軸Cに直交する方向)にイオンパケットを拡大させる作用を有する。そのため、イオンパケットはその進行方向には圧縮されるが、半径方向には拡がってしまい、拡がりが大きくなりすぎるとイオンが電極2aに接触して消滅したり検出器5のイオン検出面に入らずに無駄になったりするおそれがある。そこで、本実施例のイオン移動度分析装置では、分解能をそれほど重視せず、測定感度が重要である場合には、従来通り、加速電場を一様電場としてイオン進行方向へのイオンパケットの圧縮を実施しないようにしている。この点はあとで詳しく述べる。
上記のようなイオンパケット圧縮作用を確認するために行ったイオン軌道シミュレーションについて説明する。図3はイオン軌道のシミュレーションのための電極モデルを示す図、図4は本実施例のイオン移動度分析装置及び従来装置における軸上ポテンシャル分布を示す図である。図5(a)は本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン軌道のシミュレーション結果を示す図、(b)は従来装置におけるイオン軌道のシミュレーション結果を示す図である。なお、このシミュレーション計算では、拡散ガスの流れは想定せず拡散ガスとの衝突のみを考慮している。
図3に示すように、シミュレーション計算では、電極2aは8段の円筒電極とし、その全体のZ軸方向の長さは0.125[m]、半径は0.02[m]である。また、イオンパケットの初期条件は、進行方向の初期幅(拡がり)を0とし、半径5[mm]の円状に分布させドリフト領域4の入口端に配置している。さらにまた、大気圧下でのシミュレーションでは、拡散ガスとの衝突頻度が高く計算時間が長くなりすぎるため、ドリフト領域4内の圧力を1000[Pa]としている。このとき、イオンの平均自由行程は約6[μm]となる。
8段の電極2aにそれぞれ、イオン進行方向に沿って順に、4049.4[V]、3197.5[V]、2444.4[V]、1790.1[V]、1234.6[V]、777.8[V]、419.8[V]、160.5[V]を印加したとき、軸上ポテンシャル分布は、図4に示すように、ドリフト領域のほぼ全体に亘り、∂2φ/∂Z2>0である。一方、8段の電極2aにそれぞれ、イオン進行方向に沿って順に、4444.4[V]、3888.9[V]、3333.3[V]、2777.8[V]、2222.2[V]、1666.7[V]、1111.1[V]、555.6[V]を印加したとき、軸上ポテンシャル分布はドリフト領域のほぼ全体に亘り、∂2φ/∂Z2=0である。
図5(a)に示すように、従来装置における一様な加速電場中のイオンの移動では、イオンパケットは拡散によりイオン進行方向に広がってしまう一方である。これに対し、本実施例の装置では図5(b)に示すように、イオンパケットは進行するに伴いその進行方向に圧縮されており、イオンパケットの進行方向への広がりは常に小さく抑えられている。また、図6に示したスペクトル上でのドリフト時間ピークの幅から、本実施例の装置では、従来装置に比べて高い分解能が得られることが分かる。
ただし、図5(b)から明らかなように、本実施例の装置では、半径方向にはイオン軌道が発散していく。そのため、感度の点では不利であり、電極2aへの印加電圧の変更による高分解能測定モードと高感度測定モードとのモード切替えが有効であることが、このシミュレーション結果からも理解できる。
上述したようなシミュレーション計算や実機による実験などにより、或る程度十分な感度を維持しつつ高分解能が実現できる、適切な電圧値を求めることができる。そこで、本実施例のイオン移動度分析装置において、制御部8に設けられたメモリなどに、高分解測定モード、高感度測定モードそれぞれに対応した電圧値の情報を記憶させておく。分析実行時に、例えばユーザが入力部9から高分解測定モード、高感度測定モードいずれかの選択を指示したうえで分析の実行を指示すると、測定モード切替部81は指示された測定モードに対応した電圧値情報をメモリから読み出し、その電圧値情報に基づきドリフト電圧発生部7を制御する。それにより、ドリフト電圧発生部7はドリフト電極群2に含まれる各電極2aにそれぞれ所定の電圧を印加し、ドリフト領域4にはイオンの進行方向に加速度が減じる加速電場又は一様加速電場が形成される。このようにして本実施例のイオン移動度分析装置では、分析目的等に応じて分解能又は感度のいずれかを重視した測定を行うことができる。
なお、ドリフト領域4における軸上ポテンシャル分布によってイオンパケットの進行方向の圧縮度合いや径方向の拡がり度合いは変わるから、上述したような二つの測定モードの切替えのみならず、分析目的等に応じて、軸上ポテンシャル分布をより細かく調整するように印加電圧を設定できるようにしてもよい。
また、ドリフト領域4全体ではなく、イオン光軸Cに沿った少なくとも一部の領域で軸上ポテンシャル分布φが∂2φ/∂Z2>0となるような電場を形成し、他の部分では軸上ポテンシャル分布φが∂2φ/∂Z2=0となるような一様電場としてもよい。このようにして、ドリフト領域4全体として目標とする仕様(分解能や感度)が達成されるように性能の調整を行えばよい。これにより、従来に比べて柔軟に、目標仕様を達成する装置を設計することができ、装置設計の自由度が向上し装置コストの低減にも繋がる。
上述したイオン移動度分析装置は、それ単体の分析装置として用いることもできるが、質量分析装置に組み込むことで、より利用価値の高い分析装置を構成することができる。図7は上記イオン移動度分析装置を利用した質量分析装置(IMS−MS装置)の一実施例の概略構成図である。
この例では、ドリフト領域4においてイオン移動度に応じて分離したイオンを、差動排気のための中間真空室10に導入する。そして、該中間真空室10内に配置されたイオンガイド11でイオンを収束し、真空度の高い分析室12へと送り込む。分析室12内には四重極マスフィルタ13と検出器14とが配置されており、イオン移動度に応じて分離されたイオンをさらに質量電荷比に応じて分離したあとに、検出器14により検出する。
例えば元素組成が同じであり質量電荷比は同一であっても、立体構造が異なる複数の化合物A、B由来のイオンのイオン移動度は相違する。そこで、イオン源1においてこうした複数の化合物A、Bから略同時に生成したイオンをドリフト領域4に導入して飛行させると、イオン移動度の相違によって、化合物A由来のイオンと化合物B由来のイオンとのドリフト時間は相違する。そのため、化合物A由来のイオンと化合物B由来のイオンとは、時間差を以て四重極マスフィルタ13に入射する。四重極マスフィルタ13への印加電圧をこれらイオンが通過可能な条件に定めておくと、化合物A由来のイオンと化合物B由来のイオンとはいずれも四重極マスフィルタ13を通過し検出器14に達する。一方、そのほかの質量電荷比を持つイオンは四重極マスフィルタ13を通過せずに除去される。化合物A由来のイオンと化合物B由来のイオンとは時間差を以て検出器14に入射するから、クロマトグラムを作成すると、化合物A由来のイオンに対応するピークと化合物B由来のイオンに対応するピークとが異なる時間位置に現れ、そのピークの面積値などからそれぞれの化合物A、Bを定量することができる。
また、四重極マスフィルタの代わりに、他の質量分離器、例えば飛行時間型質量分析装置を用いて質量分離を行ってもよい。また、上記のような質量分析装置の前段に液体クロマトグラフを接続することでLC−IMS−MS装置とすることができ、上記質量分析装置の前段にガスクロマトグラフを接続することでGC−IMS−MS装置とすることができる。
さらにまた、コリジョンセルやイオントラップにおいてイオンを解離させるイオン解離部を加えた構成としてもよい。例えば、イオン移動度に応じてイオンを分離したあとに、そのイオンをコリジョンセルに導入して解離させ、解離により生成されたプロダクトイオンを質量分析する構成としてもよい。これにより、上述したように同一質量電荷比を有しながらイオン移動度の相違する複数の化合物に対するMS2スペクトルを取得することができ、それら化合物の構造解析に有用である。さらにまた、コリジョンセルやイオントラップにおいて解離により生成されたプロダクトイオンをドリフト領域に導入してイオン移動度を計測したり、イオン移動度に応じてプロダクトイオンを分離したあとに質量分析したりしてもよい。また、イオンをイオン移動度に応じて分離したあとに、Q−TOF装置に導入してもよい。
このように上記実施例は本発明の一例に過ぎないから、上記実施例や上記各種変形例に限らず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…イオン源
2…ドリフト電極群
2a…電極
3…シャッタゲート
4…ドリフト領域
5、14…検出器
6…シャッタ電圧発生部
7…ドリフト電圧発生部
8…制御部
81…測定モード切替部
9…入力部
10…中間真空室
11…イオンガイド
12…分析室
13…四重極マスフィルタ

Claims (2)

  1. パケット状のイオンをドリフト領域中に導入し飛行させることで、イオンをイオン移動度に応じて分離するイオン移動度分析装置において、
    a)前記ドリフト領域中に加速電場を形成するためにイオン光軸に沿って配設された円環状又は円筒状である複数の電極と、
    b)前記複数の電極の中心軸上のポテンシャル分布の下り勾配がイオンの移動方向に漸減する電場が前記加速電場の少なくとも一部で形成されるように定められた電圧を、前記複数の電極のそれぞれに印加する電圧印加部と、
    c)前記加速電場における加速方向にイオンを圧縮する作用を調整するために、前記複数の電極のそれぞれに印加する電圧を変更するように前記電圧印加部を制御する制御部と、
    を備え、分解能を優先させる高分解能測定モードと感度を優先させる高感度測定モードとを切り替え可能であり、前記制御部は、高分解能測定モードが指定されたときに、複数の電極の中心軸上のポテンシャル分布の下り勾配がイオンの移動方向に漸減する電場が前記加速電場の少なくとも一部で形成されるような電圧を前記複数の電極のそれぞれに印加し、高感度測定モードが指定されたときには、前記ポテンシャル分布の電位勾配が一様である電場となるような電圧を前記複数の電極のそれぞれに印加することを特徴とするイオン移動度分析装置。
  2. 請求項1に記載のイオン移動度分析装置を用いた質量分析装置であって、
    試料由来のイオンを生成するイオン源と、イオンを質量電荷比に応じて分離する質量分離部との間に前記イオン移動度分析装置を配設し、該イオン移動度分析装置においてイオン移動度に応じて分離されたイオンを質量分離部によりさらに分離して検出すること特徴とする質量分析装置。
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