JP2020016655A - イオンを分離及び分析する装置、化学的検出器、および化学的検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 改善されたイオンを分離及び分析する装置、および化学的検出方法を提供する。【解決手段】 イオンを分離及び分析する装置は、検出器と、検出器に結合され且つ幅を有する平面イオンドリフトチューブと、平面イオン源とを含む。平面イオン源は、検出器に対向するイオンドリフトチューブの端部でイオンドリフトチューブに結合され、イオンドリフトチューブの幅以上のスパンを有し、イオンドリフトチューブに入る前に、分析物ガスをイオン化して、分析物ガスイオンをフラグメント化する。化学的検出器及び化学的検出方法についても説明する。【選択図】図1
Description
(連邦研究声明)
本発明は、契約第FA8650−17−C09101号の下で米国空軍からの政府の支援を受けて作製された。政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明は、契約第FA8650−17−C09101号の下で米国空軍からの政府の支援を受けて作製された。政府は本発明に一定の権利を有する。
本開示は、分光法に関し、特に化学的検出装置及び方法の平面イオン源及びイオン移動度スペクトロメータに関する。
化学的検出は、ガスクロマトグラフ、イオン移動度スペクトロメータ、質量スペクトロメータ、微分型移動度スペクトロメータなどの様々な検出装置によって行われてもよい。これらの化学的検出器の多くは、検出成分に到達する前に、化学ガスサンプル(「サンプルガス」)をイオン源でイオン化する必要がある。イオン移動度スペクトロメータは、比較的低い電力要件や小型サイズなど、他の検出装置に比べて一定の利点がある。
従来のイオン移動度スペクトロメータの課題の1つは、例えば小型化などのサイズ縮小であり、典型的にはイオン移動度スペクトロメータのイオン化効率を低下させる。イオン化効率の低下は、一般に、サンプルガスを分析する際に検出器に送ることができるイオンが少ないことを意味する。検出器成分出力信号にはあるレベルのノイズが存在するため、少ないイオンはイオン移動度スペクトロメータの信号対ノイズ比が低下することを意味し、検出能力に悪影響を及ぼす。この効果は、従来のイオン移動度スペクトロメータの装置を携帯型にするのに十分な、またはいくつかのイオン移動度スペクトロメータにおいては、特定の化学的検出の使用において望ましい場合がある、携帯可能にするのに十分なサイズへの小型化を妨げる可能性がある。
そのような従来の方法及びシステムは、一般にそれらの意図された目的にとって満足できるものと考えられてきた。しかしながら、当技術分野において、改善されたイオン移動度スペクトロメータ用のイオン源、イオン移動度スペクトロメータ、及びイオン移動度スペクトロメータにおけるガスサンプルのイオン化方法が依然として必要とされている。本開示は、この必要性に対する解決策を提供する。
イオンを分離及び分析する装置は、検出器と、検出器に結合され且つ幅を有するイオンドリフトチューブと、平面イオン源とを含む。平面イオン源は、検出器に対向するイオンドリフトチューブの端部でイオンドリフトチューブに結合され、イオンドリフトチューブの幅以上のスパンを有し、イオンドリフトチューブに入る前に、分析物ガスをイオン化して、分析物ガスイオンをフラグメント化する。
特定の実施形態では、平面イオン源は円板体を有することができる。円板体は、平面イオン源と検出器との間でイオンドリフトチューブを通って延びるイオンドリフトチューブ軸に対して直角に配置することができる。平面イオン源は、ニッケルから形成することができる。放射性ニッケル被覆を検出器に面する平面イオン源の表面に配置することができる。平面イオン源は、約1.5センチメートル(約0.6インチ)の幅を有することができる。イオンドリフトチューブは、約3.5センチメートル(約1.4インチ)の長さを有することができる。イオンドリフトチューブは、単一ドリフトチューブであり得る。イオンドリフトチューブは第1のイオンドリフトチューブとすることができ、第2のイオンドリフトチューブは第1のイオンドリフトチューブと検出器との間に配置することができる。
特定の実施形態によれば、ドリフトチューブは大気圧に対して開放することができる。平面イオン源は、平面イオン源の中央で装置内に分析物ガス流を導入するための、中央に配置された分析物ガスポートを有することができる。平面イオン源とイオンドリフトチューブとの間にバッフルを配置して、平面イオン源と検出器との間でドリフトチューブを通って延びる軸に対して分析物ガスを半径方向外向きに向けることができる。バッファガスポートが平面イオン源に対向して、バッファガス流を装置内に導入することができる。さらなる実施形態によれば、平面イオン源は、平面イオン源の周辺部に配置された分析物ポートを有し、平面イオン源の周辺部に分析物ガス流を導入することができる。
特定の実施形態によれば、平面イオン源とドリフトチューブとの間にシャッタを配置することができると考えられる。分析物ガスのイオン化及び分析物ガスイオンのフラグメント化は、平面イオン源の近傍で、シャッタと平面イオン源との間で画定された共通のチャンバ内で、分析物イオン及びフラグメントイオンがドリフトチューブに入る前に起こり得る。
分析物ガス流及び/またはバッファガス流の流れは、検出器と平面イオン源との間に延びるドリフトセル軸に対して半径方向外向きであり得る。装置内に導入された分析物ガスは、平面イオン源の近傍での滞留時間が約2ミリ秒から約500ミリ秒の間であり得る。装置内に導入された分析物ガスは、平面イオン源の近傍での滞留時間が約500ミリ秒から約2秒の間であり得る。
装置が筐体を含み得ることもまた考えられる。筐体は、ドリフトチューブ、平面イオン源及び検出器を支持することができる。装置が例えばユーザの手のひら程度の大きさである携帯型になるように、筐体の大きさを決めることができる。装置はバッファガスモジュールを含むことができる。バッファガスモジュールは、平面イオン源と流体連通することができ、毎分約25ミリリットル(毎分約0.8液量オンス)のバッファガス流を供給するよう構成することができる。装置は分析物ガスモジュールを含むことができる。分析物ガスモジュールは、平面イオン源と流体連通することができ、毎分約5ミリリットル(毎分約0.2液量オンス)の分析物ガス流を供給するよう構成することができる。装置は電圧電極を含むことができる。電圧電極をイオンドリフトセルに接続し、イオンドリフトセル内に約300ボルト/センチメートルの電位を発生させるよう構成することができる。
化学的検出器は、内部を有する筐体を含む。上述のようにイオンを分離及び分析する装置は、筐体の内部に支持されている。筐体はユーザの手の中に収まる大きさである。平面イオン源は約1.5センチメートル(約0.6インチ)の幅を有し、ドリフトチューブは約3.5センチメートル(約1.4インチ)の長さを有する。装置に導入された分析物ガスは、平面イオン源の近傍での滞留時間が約500ミリ秒である。
化学的検出方法は、上記のような装置において、平面イオン源のスパンにわたって分析物ガスを流すことを含む。分析物ガスはイオン化され、分析物ガスイオンは平面イオン源の近傍でフラグメント化される。イオン化及びフラグメント化されたイオン化分析物ガスならびにフラグメント化された分析物ガスイオンは、イオンドリフトチューブに入って検出器に送られ、分析物ガスの組成を示す信号を生成する。
本開示のシステム及び方法のこれら及び他の特徴は、図面と共になされる以下の好ましい実施形態の詳細な説明から当業者にはより容易に明らかになるであろう。
主題の開示が関連する当業者が過度の実験なしに主題の開示の装置及び方法をどのように作成し使用するかを容易に理解するために、その実施形態は特定の図面を参照して以下に詳細に説明される。
ここで図面を参照するが、類似の参照番号は本開示の類似の構造的特徴または態様を特定する。限定ではなく説明及び例示の目的で、本開示によるイオンを分離及び分析する装置の例示的実施形態の部分図を図1A及び図1Bに示し、全体を通して参照符号100で示す。本開示によるイオンを分離及び分析する装置、イオンを分離及び分析する装置を有する化学的検出器ならびに化学的検出方法、またはそれらの態様の他の実施形態が、後述するように図2から図9に提供される。本明細書に記載のシステム及び方法は、携帯型化学的検出器用のイオン移動度スペクトロメータなどのイオン移動度スペクトロメータに使用することができるが、本開示は、一般に、携帯型化学的検出器にもイオン移動度スペクトロメータにも限定されるものではない。
図1A及び1Bを参照して、化学的検出器10が示されている。化学的検出器10は、内部106を有する筐体104と、イオンを分離及び分析する装置100と、検出電子機器108とを含む。化学的検出器10はまた、バッファガスモジュール110、分析物ガスモジュール112、及び電圧電極114を含む。筐体104は、化学的検出器102が携帯型であり得るように、すなわちユーザ4の手2の手のひらの中に収まることができるような大きさである。装置100、例えばイオン移動度スペクトロメータは、筐体104の内部106内に配置されている。これに関して、平面イオン源116(図2に示す)、イオンドリフトチューブ118(図2に示す)、及び検出器120(図2に示す)のうちの1つまたは複数が筐体104によって支持されている。特定の実施形態では、化学的検出器102の内部106は、筐体104の外部の環境、内部106内の圧力と平衡状態にある。
図2を参照すると、化学的検出器102が分解図で示されている。検出電子機器108は、検出器120と連通して配置され、化学的検出器102に対するイオン及びフラグメントイオンの衝突を表す信号を生成するよう構成される。電圧電極114は、イオンドリフトチューブ118を通って検出器120にイオン及びフラグメントイオンを送ることにより、イオンドリフトチューブ118内に電界を発生させるためにイオンドリフトチューブ118に接続される。本開示に鑑みて当業者には理解されるように、電位を端部からイオンドリフトチューブ及び検出器にわたって印加し、検出器は接地されている。分圧器は、検出器の方向に各電極に減少した電圧を印加することによって、イオンドリフトチューブの長さに沿って電圧勾配を作り出し、それにより電界を作り出す。特定の実施形態では、電圧電極114は、約1000ボルトから約3000ボルトの間の電圧をイオンドリフトチューブ118に印加するよう構成される。この範囲の電圧は、イオン移動度に基づくイオンの分離に適した電界を提供することができる。特定の実施形態によれば、電極114は、約300ボルトをイオンドリフトチューブ118に印加するよう構成されている。
バッファガスモジュール110は装置100と流体連通している。これに関して、バッファガスモジュール110は、平面イオン源116に向けられた装置100にバッファガス流12を供給するよう構成されている。特定の実施形態では、バッファガス流12は、毎分約10ミリリットルから約40ミリリットルの間である。この範囲内のバッファガス流量は、分析物分子及びイオンとの効果的な衝突をもたらすことができる。それはまた、分子及びイオンがイオン化領域の近傍で、イオン化及びフラグメント化に影響を与えるのに十分な時間を費やすことを確実にすることができる。
分析物ガスモジュール112は装置100と流体連通している。より具体的には、分析物ガスモジュール112は、平面イオン源116に向けられた装置100に分析物ガス流14を供給するよう構成される。特定の実施形態では、分析物ガス流14は、毎分約2ミリリットルから約20ミリリットルの間である。この範囲内の分析物ガス流は、バッファガスと効果的に混合することができる。それはまた、分子及びイオンがイオン化領域の前で、イオン化及びフラグメント化に影響を与えるのに十分な時間を費やすことを引き起こし得る。本開示に鑑みて当業者には理解されるように、分析物ガスはバッファガス流と協働してイオン化領域の前の分子及びイオンの滞留時間を制御する。特定の実施形態によれば、分析物ガス流14は毎分約10ミリリットルである。
図3を参照すると、装置100が示されている。装置100は、平面イオン源116、イオンドリフトチューブ118及び検出器120を含む。イオンドリフトチューブ118は検出器120に結合されており、幅122を有する。平面イオン源116は、検出器120に対向するイオンドリフトチューブ118の平面イオン源端部124でイオンドリフトチューブ118に結合され、イオンドリフトチューブ118の幅122以上のスパン127を有し、イオンドリフトチューブ118に入る前に、分析物ガス流14の分子をイオン化し、分析物ガス流14のイオンを分析物ガスフラグメントイオン16にフラグメント化する。
イオンドリフトチューブ118は、平面イオン源端部124と検出器端部126とを有する。検出器端部126と平面イオン源端部124との間に、イオンドリフトチューブ118は、複数の環状電極128を含む。複数の環状電極128は、平面イオン源端部124と検出器端部126との間に延びるドリフトチューブ軸130に沿って互いに軸方向に積み重ねられている。複数の環状電極128は、イオンドリフトチューブ118内に電界を発生させるために電圧電極114(図2に示す)と電気的に連通している。電界は、ドリフトチューブ軸130に沿って分析物ガスイオン18及び分析物ガスフラグメントイオン20を送り、イオンドリフトチューブ118に入ると検出器120に衝突するのに十分な強度及び極性を有する。イオンドリフトチューブ118は、約2センチメートルから約10センチメートルの間の軸方向長さを有すると考えられる。このサイズ範囲内の軸長は、代替の構成と比較してコンパクトさを提供でき、筐体104のサイズを制限し(図2に示される)、装置100の小型化を容易にする。特定の実施形態では、イオンドリフトチューブ118は、約3.5センチメートル(約1.4インチ)の軸長を有する。
シャッタ132は、平面イオン源端部124と検出器端部126との間のイオンドリフトチューブ118の内部134内に配置され、分析物ガスイオン18及び分析物ガスフラグメントイオン20をイオンドリフトチューブ118の内部134に入れる。シャッタ132は、検出器電子機器108(図1Bに示す)と動作可能に関連付けられている。特定の実施形態では、イオンドリフトチューブ118は、例えば外部環境10に開放する(すなわち流体連通する)ことによって、外部環境10と実質的に等しい圧力を保持するように配置され、これは装置100の配置を単純化し、小型化を促進して、封止及びその他の関連する絶縁構造の必要性を排除する。
検出器120は、イオンドリフトチューブ118の検出器端部126においてイオンドリフトチューブ軸130に沿って配置され、信号22を生成するために検出電子機器108(図3に示される)と連通して配置される。信号22は、検出器120に衝突する分析物ガスイオン18及び分析物ガスフラグメントイオン20を示す。図3に示す例示的実施形態では、検出器120はドリフトチューブ軸130に対して直交している。ドリフトチューブ軸130に対して直交するように検出器120を配置することは、代替の配置と比較してコンパクトさを提供し、筐体104(図2に示される)のサイズを制限し、装置100の小型化を容易にする。
平面イオン源116は、イオンドリフトチューブ118が平面イオン源116と検出器120との間に配置されるように、イオンドリフトチューブ118の平面イオン源端部124に配置され、平面イオン源116はイオンドリフトチューブ118の幅122にわたり、放射性被覆138はシャッタ132と対向している。図3に示すように、平面イオン源116は、ドリフトチューブ軸130に対して実質的に直交するように配置されている。ドリフトチューブ軸130に対して直交するように平面イオン源116を配置することは、代替の配置と比較してコンパクトさを同様に提供し、筐体104(図2に示される)のサイズを制限し、装置100の小型化を容易にする。
図4を参照すると、平面イオン源116が示されている。平面イオン源116は、円板体142と放射性被覆138を有する基部136とを含み、検出器120と対向してドリフトチューブ軸130に沿って配置されている。放射性被覆を有するものとして本明細書に記載されているが、非限定的な例として軟X線などの他のイオン化方法も使用できることを当業者は理解するであろう。
円板体142は、バッフル146を有する分析物ガスポート144を有し、ドリフトチューブ軸130に対して直角に配置され、図示のように円板体142の直径に対応するスパン127を画定する。スパン127は、約0.5センチメートルから約2.5センチメートルの間であると考えられる。このサイズ範囲内のスパンは、代替の構成と比較してコンパクトさを提供でき、筐体104のサイズを制限し(図2に示される)、装置100の小型化を容易にする。特定の実施形態では、平面イオン源116のスパン127は約1.5センチメートル(約0.6インチ)であり、これは本出願者が決定したが、平面イオン源116にわたる流体の流れと協働して、適切な検出感度を可能にするのに十分な密度で、分析物ガスイオン18(図3に示す)及び分析物ガスフラグメントイオン20(図3に示す)を生成するのに十分な表面積を提供する。本明細書では円形円板として記載されているが、非円形形状を有する平面イオン源も使用できることを理解し認識すべきである。
分析物ガスポート144は分析物ガスモジュール112(図1Bに示す)と流体連通しており、平面イオン源116の中心で装置100の内部106に分析物ガス流14を導入するために中央に配置されている。バッフル146は、平面イオン源116とイオンドリフトチューブ118(図3に示す)との間に配置されて、ドリフトチューブ軸130に対して半径方向外向きに分析物ガス流14を向ける。バッフル146は、平面イオン源116に接続され、バッフル146と平面イオン源116との間に延びる隔離絶縁器によって支持されると考えられる。バッファガスポート148は、平面イオン源116と対向する方向でバッファガス流12を装置100内に導入するために平面イオン源116と対向し、バッファガスモジュール110はこの目的のために、平面イオン源116(図1Bに示す)と流体連通する。図示の例示的実施形態では、バッフル146は、分析物ガスポート144の流れ領域の幅よりも大きいバッフルスパンを有し、寸法は分析物ガス流14の半径方向の再方向付けによるイオン化効率の増加が、バッフル146による平面イオン源116の部分的な陰から生じるイオン化効率の減少よりも重要であるように、バッフル146と放射性被覆140との間に重なりが生じるように選択され得る。
図5及び図6を参照すると、例示的な実施形態による装置100内の流体の流れの流れ図が示されている。本出願人は、適切なバッファガス質量流量及び分析物ガス質量流量の選択により、分子及びイオンが、同様のサイズの分光計では不可能であるイオン化効率を提供するのに十分な時間間隔で、放射性被覆138の近傍に滞留し得ることを決定した。本出願人は、選択された適切な質量流量で達成可能な延長された滞留時間は、分析物ガス流14中に存在する比較的多数の分子のイオン化を可能にすると考える。例えば、特定の実施形態では、2ミリ秒から約500ミリ秒の間の分析物ガス滞留時間を選択することができる。あるいは、特定の実施形態によれば、500ミリ秒から約2秒の間の分析物ガス滞留時間を選択することができる。さらに、延長された滞留時間は、分析物ガスイオンが分析物のより小さな独特の断片にフラグメント化するのに十分な時間を提供し、これらのフラグメントはイオンドリフトチューブ118の内部106に入り(シャッタ132を通して)、検出器120に到着する前に、分析物ガス流14の識別のための追加情報を提供する。
平面イオン源116及びシャッタ132は、分析物ガス流14及びバッファガス流12が分析物ガスポート144及びバッファガスポート148を通って導入される分離及びフラグメント化チャンバ152を互いに画定する。図5及び図6の等質量流量線に示すように、放射性被覆140の近傍でのガス滞留時間は、選択された質量流量によって調整することができ、質量流量の選択は、比較的高い滞留時間、例えばイオン移動度スペクトロメータのドリフト時間の50倍以上をもたらす。高い滞留時間は、次にイオン化効率が最大化され、その後のイオンフラグメント化に十分な時間が利用可能であることを確実にするが、滞留時間は分析物送達システムの過渡特性を低下させるほど高くはない。
分析物ガス流14は、比較的高速で分析物ガスポート144を通って、分離及びフラグメント化チャンバ152の左側から(図面に対して)入る。バッファガス流12は、分析物ガスポート144を通って分析物ガス流14に対向する向流として、分離及びフラグメント化チャンバ152の右側から入る。分析物ガス流14が平面イオン源116の円板体142を横断するとき、分析物ガス流14はバッフル146に遭遇し、バッフルは分析物ガス流14を半径方向外向き(ドリフトチューブ軸130に対して)に再方向付けする。半径方向に再方向付けされた分析物ガス流14が放射性被覆140の近傍で半径方向外向きに移動すると、分析物ガス流14はバッファガス流12と混合し、混合された分析物ガス流14及びバッファガス流12の流速は、分析物ガス流14の質量流量及びバッファガス流12の質量流量総計に従って遅くなる。分析物ガスのイオン化及び分析物ガスイオンのフラグメント化は、平面イオン源の近傍で、シャッタと平面イオン源との間で画定された共通のチャンバ内で、分析物イオン及びフラグメントイオンがドリフトチューブに入る前に起こり得ると考えられる。
図5に示すように、毎分10ミリリットルの総流量では、参照符号Aで示すように、平面イオン源116の近傍で約2秒の滞留時間が達成される。約2秒の滞留時間は、クロマトグラフ分析物発生器(図示せず)が分離した分析物化合物を順次時間的に分離して供給し、後続サンプルの到着前に、それぞれの化合物をイオン化して検出器に送り得るのに十分である。
分析物ガス源がイオン源106の近傍で費やす滞留時間は、イオン移動度スペクトロメータへの分析物ガス及び/またはバッファガスの総流量を調整することによって選択されると考えられる。例えば、図6に示すように、総流量を毎分30ミリリットル(毎分約1液量オンス)に増加させると、図5に示す流量に比べてイオン源106の近傍での滞留時間が減少し、これは特定の検出及び分析用途ではより適切であり得る。図6に示す例示的な流れ図では、毎分約5ミリリットルの分析物ガス流14と毎分約25ミリリットルのバッファガス流12とが協働して毎秒約15ミリメートル(毎秒約0.6インチ)の流量を生成し、総ガス流がバッフルと出口との間でイオン源106の表面を横断するときにイオン化及びイオンフラグメント化が起こる。毎秒約15ミリメートルの速度は、参照符号Cで示すように、平面イオン源116の近傍で約500ミリ秒の滞留時間を提供することができる。特に、本出願人は、イオン化効率が、単一ドリフトチューブ24(図3)を装置100に採用することができるようであり得ると決定した。このような単一ドリフトチューブは、タンデム型ドリフトチューブ配置と比較してコンパクトさを提供でき、それにより筐体104(図2に示される)のサイズを制限し、装置100の小型化を容易にする。
あるいは、図7に示されるように、本明細書に記載されるような平面イオン源は、タンデム型イオンドリフトチューブ配置226において使用され得る。これに関して装置200が示されている。装置200は装置100(図1Aに示す)と同様であり、平面イオン源216、検出器220、第1のドリフトチューブ222及び第2のドリフトチューブ224を含む。平面イオン源216、第1のイオンドリフトチューブ222、第2のイオンドリフトチューブ224及び検出器220はそれぞれドリフトチューブ軸230に沿って配置され、第2のイオンドリフトチューブ224は、第1のイオンドリフトチューブ222と検出器220との間に軸方向に配置される。本開示に鑑みて当業者には理解されるように、装置200及びタンデム型ドリフトチューブ配置226は、イオンフラグメント化用の追加の容積を介して追加のイオン化効率を提供することができ、装置200をイオン移動度分光法以外の分光用途に使用できる。
図8を参照すると、イオンをイオン化しフラグメント化するための装置300が示されている。装置300は装置100(図3に示す)と同様であり、さらに平面イオン源316を含む。平面イオン源316は平面イオン源116(図3に示す)と同様であり、さらに隣接している。これに関して、平面イオン源316は、円板体342の中央に配置された分析物ガスポートを含まない。平面イオン源316は、代わりに、平面イオン源316の周辺部354に配置された周辺分析物ガスポート344を有する。本開示に鑑みて当業者には理解されるように、平面イオン源316は、平面イオン源116と比較してより大きな分析物ガス移動距離を提供し、装置300の小型化を容易にする。
図9を参照すると、化学剤検出方法400が示されている。方法400は、ボックス410で示すように、平面イオン源にわたって半径方向に分析物ガスを流すこと、例えば平面イオン源116(図3に示す)にわたって分析物ガス流14(図3に示す)を流すことを含む。同様にボックス410で示されるように、分析物ガスは平面イオン源のスパン、例えばスパン127を横断すると考えられる。分析物ガス流は、例えば分析物ガスポート144(図4に示す)を通して中央に導入することができる。分析物ガス流は、例えば周辺分析物ガスポート344(図5に示す)を通して周辺部に導入できることも考えられる。
分析物ガス流が平面イオン源のスパンを横断すると、ボックス420で示すように分析物ガス分子がイオン化される。さらに、平面イオン源で比較的長い滞留時間が可能であるため、ボックス430で示すように、イオン化された分子の少なくとも一部がフラグメント化される。フラグメント化は、例えば、平面イオン源にわたる分析物ガス流の半径方向に関連する平面イオン源近傍での長期の滞留期間によるものであり得る。ボックス440に示すように、分析物ガス分子イオン及び分析物ガス分子フラグメントイオンはその後ドリフトチューブ、例えば単一イオンドリフトチューブ118(図3に示す)またはタンデム型ドリフトチューブ配置226のタンデム型イオンドリフトチューブ(図7に示す)に入る。ボックス450に示すように、ドリフトチューブに入ると、分析物ガス分子イオン及び分析物ガス分子フラグメントは検出器に送られ、分析物分子の組成を示す検出器応答信号、例えば信号22(図3に示す)を生成する。
イオン移動度スペクトロメータは化学物質用の強力な検出器であり、その小さいサイズ及び低い電力要求のために他の技術に対して特定の利点を提供する。しかしながら、イオン移動度スペクトロメータは小型化されると、一般的に検出能力が低下する。これは典型的には分析される分子のイオン化効率及びイオンフラグメント化の低下、ならびに化学的同定に利用できる情報の対応する減少の結果である。
本明細書に記載の実施形態では、源形状を有する平面イオン源は、小型化された形態で比較的高いイオン化効率をもたらす形状と共に開示される。特定の実施形態では、平面イオン源の形状は平面であり、円筒形平面イオン源などの代替の平面イオン源と比較して、比較的高いイオン化効率を提供する。他のイオン源と比較して、本明細書に記載のイオン源は大きな放射表面積を提供することができる。さらに、分析物及び/またはバッファガス流を減少させて分析物のイオン源への曝露時間を増大させることができ、分析物がイオン源を横断すると比較的多数のイオンが分析物から発生する結果を潜在的にもたらし、検出限界及び生成された情報を改善する。
本明細書に記載の平面イオン源は、このよう生成されたイオンのフラグメント化を増大させることも考えられる。比較的高いイオン化の結果として、分析物の同定のために比較的大量の情報を効率的に提供することができる。特定の実施形態によれば、情報は、化学兵器などにおける化学剤及び化学物質の検出に十分な量及び質で提供され得る。
本開示の方法及びシステムは、上で説明し図面に示したように、平面イオン源、イオンを分離及び分析する装置、及び小型(例えば携帯型)配置での高いイオン化効率を含む優れた特性を有する化学的検出方法を提供する。本開示の装置及び方法が好ましい実施形態を参照して示され説明されてきたが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく変更及び/または修正がなされ得ることを容易に理解するであろう。
Claims (20)
- イオンを分離及び分析する装置であって、
検出器と、
前記検出器に結合され、幅を有するイオンドリフトチューブと、
前記検出器に対向する前記イオンドリフトチューブの端部で前記イオンドリフトチューブに結合された平面イオン源であって、前記平面イオン源は前記イオンドリフトチューブの前記幅以上のスパンを有し、前記平面イオン源の近傍で、前記イオンドリフトチューブに入る前に、分析物ガスをイオン化して、分析物ガスイオンをフラグメント化する、前記平面イオン源と
を備える、装置。 - 前記平面イオン源は円板体を有する、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源はニッケルから形成され、前記イオンドリフトチューブに面する表面上に設けられた放射性ニッケル被覆を備える、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源は、平面イオン源の中央で前記装置内に分析物ガス流を導入するための、前記中央に配置された分析物ポートを有する、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源と前記検出器との間で前記ドリフトチューブを通って延びる軸に対して分析物ガスを半径方向外向きに向けるために、前記平面イオン源と前記イオンドリフトチューブとの間に配置されたバッフルをさらに備える、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源は、前記平面イオン源の周辺部に配置された分析物ポートを有し、前記平面イオン源の前記周辺部に分析物ガス流を導入する、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源に対向して、バッファガス流を前記装置内に導入するバッファガスポートをさらに備える、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源と前記ドリフトチューブとの間に配置されたシャッタであって、前記シャッタ及び前記平面イオン源が、前記平面イオン源の近傍で、分析物イオン及びフラグメントイオンが前記ドリフトチューブに入る前の、分析物ガスのイオン化及び前記分析物ガスイオンのフラグメント化のための共通のチャンバを互いに画定する、前記シャッタをさらに備える、請求項1に記載の装置。
- 前記分離チャンバ内の分析物ガス流及びバッファガス流は、前記検出器と前記平面イオン源との間に延びるドリフトセル軸に対して半径方向に向けられる、請求項8に記載の装置。
- 前記装置内に導入された分析物ガスは、前記イオン源での滞留時間を制御するために、前記平面イオン源の近傍での滞留時間が約500ミリ秒から約2秒の間である、請求項1に記載の装置。
- 前記装置が前記検出器と前記平面イオン源との間に配置された単一イオンドリフトチューブのみを含む、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源は約1.5センチメートル(0.6インチ)の幅を有し、前記ドリフトチューブは約3.5センチメートル(約1.4インチ)の長さを有する、請求項1に記載の装置。
- 前記イオンドリフトチューブは、第1のイオンドリフトチューブであり、かつ第2のイオンドリフトチューブをさらに備え、前記第2のイオンドリフトチューブは前記第1のイオンドリフトチューブと前記検出器との間に配置される、請求項1に記載の装置。
- 前記ドリフトチューブ、前記平面イオン源及び前記検出器のうちの少なくとも1つを支持する筐体をさらに備え、前記筐体は、ユーザの手の手のひらの中に収まる大きさである、請求項1に記載の装置。
- 前記平面イオン源と流体連通し、毎分約5ミリリットル(毎分約1液量オンス)のバッファガス流を供給するよう構成されたバッファガスモジュールと、
前記平面イオン源と流体連通し、毎分約25ミリリットル(毎分約0.8液量オンス)のバッファガス流を供給するよう構成された分析物ガスモジュールと、
前記イオンドリフトセルに接続され、前記イオンドリフトセルに約300ボルト/センチメートルを印加するよう構成された電圧電極と
をさらに備える、請求項1に記載の装置。 - 化学的検出器であって、
内部を有する筐体と、
前記筐体の前記内部に配置された請求項1に記載されたイオンを分離及び分析する装置と
を備え、
前記平面イオン源は約1.5センチメートルの幅を有し、前記ドリフトチューブは約3.5センチメートル(約1.4インチ)の長さを有し、
前記装置内に導入された分析物ガスは、前記平面イオン源の近傍での滞留時間が約500ミリ秒であり、
前記筐体は、ユーザの手の手のひらの中に収まる大きさである、化学的検出器。 - 化学的検出方法であって、
検出器と、前記検出器に結合され、幅を有するイオンドリフトチューブと、前記検出器に対向する前記イオンドリフトチューブの端部で前記イオンドリフトチューブに結合された、前記ドリフトチューブの前記幅以上のスパンを有する平面イオン源とを含む、イオンを分離及び分析する装置において、
前記平面イオン源の前記スパンにわたって分析物ガスを流すことと、
前記平面イオン源の近傍で前記分析物ガスをイオン化及びフラグメント化することと、
前記イオン化され、前記フラグメント化された前記分析物ガスを前記ドリフトチューブに入れることと、
前記イオン化され、前記フラグメント化された前記分析物ガスを前記検出器に送り、前記分析物ガスの組成を示す信号を生成することと
を含む、化学的検出方法。 - 分析物ガス流量を選択することによって、前記イオン源における滞留時間を選択することをさらに含む、請求項17に記載の化学的検出方法。
- 滞留時間が約2ミリ秒から約500ミリ秒の間である、請求項17に記載の化学的検出方法。
- 滞留時間が約500ミリ秒から約2秒の間である、請求項17に記載の化学的検出方法。
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