JP2015074855A - ポリビニルアルコール系コンポジット繊維およびその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系コンポジット繊維およびその製造方法 Download PDF

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貢 上島
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智 石橋
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Abstract

【課題】機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維、および、当該PVA系コンポジット繊維の効率的な製造方法を提供する。【解決手段】カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含み、カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.20<(3σ/Av)<0.60の関係を満たすポリビニルアルコール系コンポジット繊維。カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含む紡糸溶液を冷却によりゲル化させて紡糸ゲル状原糸を得る工程と、紡糸ゲル状原糸を延伸する工程とを含み、カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが0.20<(3σ/Av)<0.60の関係を満たすポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と称することがある。)系のコンポジット繊維およびその製造方法に関し、特に、カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称することがある。)を含有するポリビニルアルコール系コンポジット繊維および当該ポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法に関するものである。
PVA系繊維は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維等と比較して、強度、弾性率、耐アルカリ性に優れており、タイヤコード、ベルト、ホースなどの補強材や、繊維強化プラスチックなどの産業資材に利用されている。
特に最近では、PVA系繊維は、アスベスト代替繊維材料、或いは、建造物の耐震性能向上のためのセメント補強繊維のような産業資材用繊維として、高い注目を集めている。そのため、安価で且つ高い強度を有するPVA系繊維が求められている。
そこで、例えば特許文献1では、安価で且つ引張強度に優れるPVA系繊維として、カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコール系ポリマーと、有機溶媒とを含む紡糸溶液を冷却によりゲル化させて得た紡糸ゲル状原糸を延伸してなるPVA系コンポジット繊維が提案されている。
特開2010−216018号公報
ここで、特許文献1に記載のPVA系コンポジット繊維では、紡糸ゲル状原糸の延伸によりCNTを力のかかる方向(繊維軸方向)と平行に配列させることができるので、ポリマーマトリックスから伝達される応力を受け止められる状態でCNTを分散させて引張強度を高めることができる。
しかし、上記従来のPVA系コンポジット繊維には、繊維の機械的特性(例えば、引張強度や引張弾性率など)を更に高めるという点において、更なる改善の余地があった。
そこで、本発明は、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維、および、当該PVA系コンポジット繊維の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成することを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、平均直径と直径分布とが所定の関係を満たすカーボンナノチューブを用いることにより、PVA系コンポジット繊維の機械的特性を向上し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維は、カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含み、前記カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが、関係式:0.20<(3σ/Av)<0.60を満たすことを大きな特徴の1つとする。このように、平均直径に対する直径分布の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満のカーボンナノチューブを使用すれば、引張強度や引張弾性率などの機械的特性を向上させることができる。
ここで、本発明において、「直径分布(3σ)」とは、カーボンナノチューブの直径の標本標準偏差(σ)に3を乗じたものを指す。そして、本発明において、「カーボンナノチューブの平均直径(Av)」および「カーボンナノチューブの直径の標本標準偏差(σ)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いてカーボンナノチューブ100本の直径を測定して求めることができる。なお、繊維中のカーボンナノチューブの直径は、繊維からカーボンナノチューブを取り出して測定してもよいし、繊維を任意の位置で切断して断面を観察することにより測定してもよい。
ここで、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維は、前記カーボンナノチューブの比表面積が600m/g以上であることが好ましい。カーボンナノチューブの比表面積が600m/g以上であれば、機械的特性を更に向上させることができるからである。
なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定したBET比表面積を指す。
また、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維は、前記ポリビニルアルコールの重合度が少なくとも1500であり、引張強度が2.5GPa以上であることが好ましい。
更に、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維は、前記ポリビニルアルコールの重合度が少なくとも1500であり、引張弾性率が45GPa以上であることが好ましい。
なお、本発明において、「ポリビニルアルコールの重合度」とは、JIS K6726に準拠して測定した平均重合度を指す。更に、本発明において、ポリビニルアルコール系コンポジット繊維の「引張強度」および「引張弾性率」は、引張試験機を使用し、温度20℃、相対湿度65%、引張速度100%/minの条件下で引張試験を行うことにより、求めることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法は、カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含む紡糸溶液を冷却によりゲル化させて紡糸ゲル状原糸を得る工程と、前記紡糸ゲル状原糸を延伸する工程とを含み、前記カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが、関係式:0.20<(3σ/Av)<0.60を満たすことを特徴とする。このように、平均直径に対する直径分布の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満のカーボンナノチューブを使用し、ゲル紡糸法を用いてPVA系コンポジット繊維を調製すれば、引張強度や引張弾性率などの機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を容易に得ることができる。
本発明によれば、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を提供することができる。また、本発明によれば、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のPVA系コンポジット繊維は、例えば本発明のPVA系コンポジット繊維の製造方法を用いて製造することができる。そして、本発明のPVA系コンポジット繊維は、特に限定されることなく、タイヤコード、ベルト、ホースなどの補強材や、繊維強化プラスチック、アスベスト代替繊維材料、セメント補強繊維などの産業資材用繊維として用いることができる。
(ポリビニルアルコール系コンポジット繊維)
本発明のPVA系コンポジット繊維は、カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含む。そして、本発明のPVA系コンポジット繊維は、カーボンナノチューブとして、平均直径(Av)に対する直径分布(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満のカーボンナノチューブを使用することを大きな特徴の1つとする。
ここで、本発明のPVA系コンポジット繊維は、CNTを含有しているので、PVA単体よりなる繊維と比較して、優れた機械的特性を発揮することができる。また、本発明のPVA系コンポジット繊維は、3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTを使用しているので、3σ/Avが0.20以下のCNTや3σ/Avが0.60以上のCNTを使用した場合と比較して、引張強度や引張弾性率などの機械的特性を十分に向上させることができる。
なお、機械的特性を高める観点からは、本発明のPVA系コンポジット繊維に含まれるCNTは、繊維軸方向に配向されていることが好ましい。ここで、「CNTが繊維軸方向に配向されている」には、繊維中の全てのCNTが繊維軸方向と平行に配列されている場合の他に、延伸などの操作により繊維中のCNTの大部分が繊維軸方向に向かって配列されている場合も含まれる。
<カーボンナノチューブ>
PVA系コンポジット繊維に含有させるCNTは、3σ/Avが0.20超0.60未満であることが必要であり、3σ/Avが0.25以上であることが好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTを使用すれば、CNTの配合量が少量であっても、PVA系コンポジット繊維の機械的特性を十分に向上させることができる。ここで、3σ/Avが0.20以下の場合、CNTが分散し難く、PVAと良好に複合化させることが困難であるためCNTの凝集塊を含む繊維となり、高い機械的特性が得られない。また、3σ/Avが0.60以上の場合、繊維中の単位体積あたりのCNT濃度が不均一となり、均一な機械的特性が得られない。
なお、CNTの平均直径(Av)および直径分布(3σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
本発明において、CNTは、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
また、CNTは、関係式:0.20<(3σ/Av)<0.60を満たすCNTであれば、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブであっても良いし、多層カーボンナノチューブであってもよいが、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、PVA系コンポジット繊維の機械的特性を更に向上させることができる。
更に、CNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、CNTの配合量が少量であっても、PVA系コンポジット繊維の機械的特性を十分に向上させることができる。
更に、CNTの平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、CNTの凝集を抑制してPVA系コンポジット繊維中でのCNTの分散性を高め、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を得ることができる。また、CNTの平均直径(Av)が15nm以下であれば、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を得ることができる。
また、CNTの比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることが更に好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることが更に好ましい。更に、CNTが主として開口したものにあっては、比表面積が1300m/g以上であることが好ましい。CNTの比表面積が600m/g以上であれば、PVA系コンポジット繊維の機械的特性を十分に向上させることができる。また、CNTの比表面積が2500m/g以下であれば、CNTの凝集を抑制してPVA系コンポジット繊維中でのCNTの分散性を高め、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を得ることができる。
更に、CNTは、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(CNT配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、CNTの質量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm以下であれば、CNT同士の結びつきが弱くなるので、CNTを均質に分散させ、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を得ることができる。また、質量密度が0.002g/cm以上であれば、CNTの一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
また、CNTは、合成時における構造体の長さが100μm以上5000μm以下であることが好ましい。
更に、CNTは、複数の微小孔を有することが好ましい。CNTは、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。CNTが上記のようなマイクロ孔を有することで、CNTの凝集が抑制され、PVA系コンポジット繊維中でのCNTの分散性が高まり、機械的特性に優れたPVA系コンポジット繊維を非常に効率的に得ることができる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、CNTの調製方法および調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、CNTの液体窒素温度(77K)での窒素吸脱着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cmである。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
なお、上述した性状を有するCNTは、例えば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりカーボンナノチューブを合成する際に、系内に微量の酸化剤を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行い、アセチレンを主成分とする原料ガス(例えば、アセチレンを50質量%以上含むガス)を用いることにより、効率的に製造することができる。得られたCNTの集合体(CNT配向集合体)は、例えば、物理的、化学的または機械的な剥離方法、具体的には、電場、磁場、遠心力または表面張力を用いて剥離する方法や、ピンセットやカッターブレードを用いて機械的に直接剥ぎ取る方法や、真空ポンプによる吸引等の圧力や熱により剥離する方法などにより、基材から剥離し、バルク状態または粉体状態で用いる。
以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
<ポリビニルアルコール>
PVA系コンポジット繊維に用いるPVAとしては、特に限定されることなく、重合度が1000以上4000以下のPVAを挙げることができる。
ここで、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を得る観点からは、PVAの重合度は、少なくとも1500であることが好ましく、2000以下であることが好ましい。
また、PVAのケン化度については、特に大きな制限はないが、ゲル紡糸法によりPVA系コンポジット繊維を調製する場合には、冷却によるゲル化を速やかに進行させる観点から90モル%以上が好ましい。また、PVA系コンポジット繊維の耐熱性、耐水性の観点からは、ケン化度は99モル%以上であることが更に好ましい。
なお、PVA系コンポジット繊維に用いるPVAは、他のビニル基を有する単量体単位を若干含んでいてもよく、例えば酢酸ビニル由来の単量体単位、エチレン由来の単量体単位、ポリエチレングリコール由来の単量体単位などを含んでいてもよい。
<ポリビニルアルコール系コンポジット繊維の性状>
ここで、PVA系コンポジット繊維中のCNTの含有量は、PVA100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることが更に好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることが更に好ましく、0.5質量部以下であることが特に好ましい。CNTが0.01質量部未満であると機械的特性の向上効果が観察されにくく、5質量部より高いと、製造コストを押し上げる他、CNTの分散性が低下する。
また、PVA系コンポジット繊維中のCNTは、凝集直径が20nm以下で分散していることが好ましい。
そして、上述した構成を有するPVA系コンポジット繊維は、高い引張強度および引張弾性率を有している。好適には、PVA系コンポジット繊維は、引張強度が例えば2.5GPa以上である。また、PVA系コンポジット繊維は、引張弾性率が例えば45GPa以上である。
なお、上述した引張強度および引張弾性率は、例えば、重合度が少なくとも1500のPVAと、上述したCNTとを用いることにより容易に達成することができる。
(ポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法)
上述したポリビニルアルコール系コンポジット繊維は、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法を用いて調製することができる。そして、本発明のポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法は、カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含む紡糸溶液を冷却によりゲル化させて紡糸ゲル状原糸を得る工程と、紡糸ゲル状原糸を延伸する工程とを含み、カーボンナノチューブとして、平均直径(Av)に対する直径分布(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満のカーボンナノチューブを使用することを特徴とする。
<紡糸溶液の調製>
PVA系コンポジット繊維の製造に用いる紡糸溶液は、3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTと、PVAと、溶媒とを含有する。なお、紡糸溶液は、CNTおよびPVAの分散性を阻害しない範囲において、各種アルコール類、多糖類、界面活性剤などを含んでいてもよい。
ここで、CNTとしては、前述したCNT、例えば前述したSGCNTを用いることができる。また、PVAとしては、前述したPVAを用いることができる。
また、上記溶媒は、PVAを溶解でき、かつCNTを高度に分散させることが容易なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、溶媒としては、DMSO(ジメチルスルホキシド)、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシド等の有機溶媒や、水が挙げられる。これらの中でも、特にジメチルスルホキシドが、PVAの良溶媒であり且つCNTとの親和性が高いため、好ましい溶媒である。すなわち、紡糸溶液の溶媒は、ジメチルスルホキシド、或いは、一部がジメチルスルホキシドであることが好ましい。
なお、上記の各種溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
そして、紡糸溶液は、例えば下記(1)〜(3)の何れかの方法を用いて調製することができる。
(1)PVA溶液にCNTを添加する方法
(2)PVA溶液と、CNTの溶媒分散液とを混合する方法
(3)CNTの溶媒分散液に固体のPVAを添加し、PVAを溶解させる方法
なお、紡糸溶液中でCNTを均一に分散させることによりPVA系コンポジット繊維中でのCNTの分散性を高め、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を得る観点からは、紡糸溶液の調製方法としては、上記(1)または(2)の方法が好ましく、上記(1)の方法が更に好ましい。
ここで、上記(1)または(2)の方法を用いて紡糸溶液を調製する場合、紡糸溶液中でのCNTの分散性を向上させる観点からは、調製する紡糸溶液のPVA濃度よりもPVA濃度の低い低濃度PVA溶液に対してCNTまたはCNTの溶媒分散液を添加し、CNTを分散させた後に、固体のPVAまたは紡糸溶液よりもPVA濃度の高い高濃度PVA溶液を更に添加して紡糸溶液とすることが好ましい。
なお、分散効率を確保しつつ良好な分散性を得る観点からは、低濃度PVA溶液のPVA濃度は、1質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下が更に好ましい。また、生産性および得られる原糸の延伸性の観点からは、紡糸溶液のPVA濃度は、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
また、紡糸溶液の調製において、液中にCNTを分散させる場合、分散方法としては、超音波処理や各種攪拌方法を用いることができる。それらの中でも、キャビテーション効果が得られる分散方法を用いることが好ましい。
キャビテーション効果が得られる分散方法とは、液体に高エネルギーを付与した際に液中に生じる真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。キャビテーション効果が得られる分散方法を用いることにより、CNTの特性を損なうことなく液中にCNTを分散させることが可能となる。
キャビテーション効果が得られる分散方法の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌による分散処理が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数を組み合わせて行なってもよい。より具体的には、CNTの分散処理には、例えば超音波ホモジナイザー、ジェットミルおよび高剪断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
CNTの分散に超音波ホモジナイザーを用いる場合には、超音波ホモジナイザーを使用してCNT含有溶液に超音波を照射すればよい。照射する時間は、CNTの量および分散剤の種類等により適宜設定すればよく、例えば、3分以上が好ましく30分以上がより好ましく、また、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。また、例えば、出力は100W以上、500W以下、温度は15℃以上、50℃以下が好ましい。
CNTの分散にジェットミルを用いる場合には、CNT含有溶液をジェットミルにより処理すればよい。処理回数は、CNTの量および分散剤の種類等により適宜設定すればよく、例えば、2回以上が好ましく5回以上がより好ましく、100回以下が好ましく50回以下がより好ましい。また、例えば、圧力は20MPa〜250MPa、温度は15℃〜50℃が好ましい。また、ジェットミルを用いる場合には分散剤として界面活性剤を使用してもよい。
なお、ジェットミルとしては、高圧湿式ジェットミルを挙げることができ、具体的には、「ナノメーカー」(アドバンストナノテクノロジー社製)、「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、「ナノマイザー」(吉田機械興業社製)、「ナノジェットパル(登録商標)」(常光社製)等が挙げられる。
CNTの分散に高剪断撹拌を用いる場合には、CNT含有溶液を高剪断撹拌装置により処理すればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。また、例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分以上、4時間以下、周速は5m/s以上、50m/s以下、温度は15℃以上、50℃以下が好ましい。また、高剪断撹拌装置を用いる場合には分散剤として多糖類を使用することが好ましい。多糖類溶液は粘度が高く、剪断応力が強くかかりやすいため、分散がより促進される。
なお、高剪断撹拌装置としては、例えば、「エバラマイルダー」(荏原製作所社製)、「キャビトロン」(ユーロテック製)、「DRS2000」(IKA製)等に代表される攪拌装置;「クレアミックス(登録商標)CLM−0.8S」(エム・テクニック社製)に代表される攪拌装置;「TKホモミキサー」(特殊機化工業社製)に代表されるタービン型撹拌機;「TKフィルミックス」(特殊機化工業社製)に代表される攪拌装置等が挙げられる。
CNTの分散状態としては、上述した装置を用いて分散させたものであれば特に限定されないが、特に、目視での凝集塊が存在せず、均一であり、分散処理開始前からのCNTのG/D比の減少幅がより少ない分散状態であることがより好ましい。
<紡糸ゲル状原糸の調製>
紡糸ゲル状原糸を得る工程では、上述した紡糸溶液を冷却し、ゾルからゲルへ転移させて紡糸ゲル状原糸を得る。
なお、紡糸ゲル状原糸を得る工程では、紡糸溶液中のCNTは、ノズルやエアギャップから紡糸溶液を吐出させて紡糸する際に生じる流動や剪断により、繊維軸方向に配向する。
ここで、紡糸溶液をゾルからゲルへ転移させる、すなわちゲル化させる手法としては、紡糸溶液を冷却によって速やかにゲル化できる任意の手法を用いることができる。具体的には、ゲル紡糸法において一般的な手法である、冷却液体の入った固化浴に紡糸溶液を吐出させる方法を用いて紡糸ゲル状原糸を得てもよいし、冷却気体の吹きつけなどの乾式によるゲル化を用いて紡糸ゲル状原糸を得てもよい。ただし、速やかな凝固のためには、0℃以下に冷却した液体、例えばメタノールなどを用いて紡糸ゲル状原糸を得ることが好ましい。
なお、PVAを含む紡糸溶液は、室温付近では高粘度であり、場合によってはゲル化することもある。従って、紡糸ゲル状原糸を調製する際には、曳糸性を付与することを目的として紡糸溶液を70℃以上に加温し、溶液粘度を下げて完全なゾル(溶液)状態で紡糸を行うことが望ましい。
<紡糸ゲル状原糸の延伸>
紡糸ゲル状原糸を延伸する工程では、紡糸ゲル状原糸を延伸する前工程として、紡糸ゲル状原糸の脱溶媒・乾燥を行う。脱溶媒・乾燥は、得られた紡糸ゲル状原糸をメタノールなどの有機溶媒中に浸漬して脱溶媒を進めた後に風乾あるいは減圧乾燥することにより行ってもよいし、有機溶媒を使用せずに紡糸ゲル状原糸をそのまま風乾あるいは減圧乾燥することにより行ってもよい。
延伸は、紡糸ゲル状原糸を脱溶媒・乾燥して得た乾燥原糸を100〜250℃の雰囲気温度中、乾熱延伸することにより行う。この際、延伸雰囲気はPVAの酸化劣化を抑制するために窒素などの不活性ガス雰囲気としてもよい。また、より高倍率に延伸を施すために延伸温度の異なる条件で2段以上の乾熱多段延伸を行ってもよい。
なお、高強度のPVA系コンポジット繊維を容易に得るためには、全延伸倍率を15倍以上とするのが好ましく、20倍以上にすることが更に好ましい。また、任意に、延伸後に加熱ロール等を用いて熱処理を行ってもよい。
そして、紡糸ゲル状原糸を延伸する工程では、延伸時に原糸中のCNTが繊維軸方向に更に配向され、機械的特性に優れたPVA系コンポジット繊維が得られる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
重合度1500、ケン化度99.9モル%のPVA 3gを27gのDMSOに加え、約120℃でポリマーが完全に溶解するまで撹拌し、溶解させた。得られたPVA溶液(PVA濃度:10質量%)に対し、平均直径(Av)が3.3nm、直径分布(3σ)が1.9nm、比表面積が1000m/g、マイクロ孔容積が0.44mL/gの単層CNTを0.0015g加えて、ジェットミル(常光社製、製品名「JN−20」)を用い、室温下、圧力60MPaにて20回処理して分散液を得た。得られた分散液を透過型電子顕微鏡(倍率:25万倍)で観察し、単層CNTが良好に分散し、ナノメートルレベルで分散されていることを確認した。この分散液に、PVA濃度が20質量%のPVA溶液を更に加えて、最終的にPVA濃度が15質量%の紡糸溶液を調製した。なお、使用した単層CNTは、スーパーグロース法において基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行い、アセチレンを主成分とする原料ガスを用いて調製した。
得られた紡糸溶液を、内径150μmの吐出口が800個ある直径120mmの口金から吐出させ、約−10℃のメタノール中に押し出して冷却によりゲル化させて紡糸ゲル状原糸を得た。さらに当該紡糸ゲル状原糸をメタノール中に浸漬してDMSOを抽出した後、乾燥して巻き取った。次いで、得られた乾燥原糸を、220℃に加熱したオーブン中で、原長に対して約25倍に延伸し、加熱ロールで熱固定してPVA系コンポジット繊維を得た。得られたPVA系コンポジット繊維について、テンシロンを用いて引張試験(測定条件:温度20℃、相対湿度65%、引張速度100%/min)を行い、引張強度、引張伸度および引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
紡糸溶液にCNTを含有させなかった以外は、実施例1と同様にして紡糸ゲル状原糸の調製、乾燥、延伸を行い、PVA系繊維を得た。そして、得られたPVA系繊維について、実施例1と同様にして引張試験を行い、引張強度、引張伸度および引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1の単層CNTに変えて、平均直径(Av)が1.1nm、直径分布(3σ)が0.2nm、比表面積が450m/g、マイクロ孔容積が0.34mL/gの単層CNTを0.009g使用し、ジェットミルに変えてホモジナイザー(エスエムテー製、PH91型、処理時間:10分、回転数:2万回転/分、攪拌温度:95℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして紡糸ゲル状原糸の調製、乾燥、延伸を行い、PVA系コンポジット繊維を得た。なお、使用した単層CNTは、特許文献1(特開2010−216018号公報)に記載のe−DIPS法を用いて調製した。そして、得られたPVA系コンポジット繊維について、実施例1と同様にして引張試験を行い、引張強度、引張伸度および引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2015074855
表1より、実施例1のPVA系コンポジット繊維は、比較例1のPVA系繊維および比較例2のPVA系コンポジット繊維と比較し、引張強度および引張弾性率が非常に高いことが分かる。なお、実施例1のPVA系コンポジット繊維の引張強度および引張弾性率は、高強度繊維として知られているアラミド繊維と同等のレベルである。
本発明によれば、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を提供することができる。また、本発明によれば、機械的特性に優れるPVA系コンポジット繊維を効率的に製造することができる。

Claims (5)

  1. カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含み、
    前記カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが、関係式:
    0.20<(3σ/Av)<0.60
    を満たす、ポリビニルアルコール系コンポジット繊維。
  2. 前記カーボンナノチューブの比表面積が600m/g以上である、請求項1に記載のポリビニルアルコール系コンポジット繊維。
  3. 前記ポリビニルアルコールの重合度が少なくとも1500であり、
    引張強度が2.5GPa以上である、請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系コンポジット繊維。
  4. 前記ポリビニルアルコールの重合度が少なくとも1500であり、
    引張弾性率が45GPa以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコール系コンポジット繊維。
  5. カーボンナノチューブと、ポリビニルアルコールとを含む紡糸溶液を冷却によりゲル化させて紡糸ゲル状原糸を得る工程と、
    前記紡糸ゲル状原糸を延伸する工程と、
    を含み、
    前記カーボンナノチューブは、平均直径(Av)と直径分布(3σ)とが、関係式:
    0.20<(3σ/Av)<0.60
    を満たす、ポリビニルアルコール系コンポジット繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113481630A (zh) * 2021-08-12 2021-10-08 浙江理工大学绍兴柯桥研究院有限公司 导电玻璃纤维及其制备方法
CN114775093A (zh) * 2022-04-10 2022-07-22 青岛大学 解拉链碳纳米管锚固镧络合物的复合纤维及其制备方法

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