JP2015074781A - 撥水撥油性複合材料の製造方法、及び撥水撥油性複合材料 - Google Patents

撥水撥油性複合材料の製造方法、及び撥水撥油性複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】高い撥水性を有するとともに、撥水効果が長期間にわたって持続する撥水撥油性複合基材及びその製造方法を提供する。【解決手段】撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が基材に付着してなる撥水撥油性複合材料を製造する方法は、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を製造する工程、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物を作製する工程、前記分散物を基材に付着させる工程、及び前記分散物が付着した基材の表面を処理し前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っている前記バインダーの一部を除去し、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を露出させる工程を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、撥水撥油性複合材料の製造方法、及び撥水撥油性複合材料に関し、詳しくは撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を付着させ、その表面を露出させることにより高い撥水撥油性を発揮する撥水撥油性複合材料を製造する方法、及び前記方法によって得られた撥水撥油性複合材料に関するものである。
従来から、繊維製品からなる衣料用品、産業資材用品等に撥水性を付与するために、フッ素系化合物等の撥水剤を繊維製品等の表面に付着させる処理が行われている。フッ素系化合物等の撥水剤を繊維製品等の表面に付着させ、繊維製品等に撥水性を付与する方法として、撥水剤を含有する液を繊維製品等にスプレーする方法、撥水剤を含有する処理浴中に繊維製品等を浸漬させる方法等が知られている(例えば、特開2006−200082号公報(特許文献1)、特開2006−291372号公報(特許文献2)参照)。
しかしながら、撥水剤を含有する液をスプレーして繊維製品等に付着させる方法は、撥水剤の付着力が低いため十分な耐久性が得られず、短期間で撥水効果が低下してしまう。また、繊維製品等を浸漬させて撥水剤を付着させる方法は、スプレー法に比べて耐久性は高いものの、長期間使用する間にはやはり撥水効果が低下してしまうとともに、繊維製品等に含まれる単糸同士が撥水剤により凝集密着してしまい、ソフトな風合いが損なわれるという問題がある。
特開2012−107370号(特許文献3)は、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、フッ素を有するダイヤモンド微粒子、並びにケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子からなる群から選ばれた少なくとも一種を繊維に付着又は含有させてなる撥水撥油性繊維を開示しており、この撥水撥油性繊維は撥水効果が長期間にわたって持続すると記載している。しかしながら、特許文献3に記載のケイ素等を有するダイヤモンド微粒子を付着させてなる撥水撥油性繊維は、より厳しい条件で洗濯適性をテストしたところ、撥水性の低下が見られた。またケイ素等を有するダイヤモンド微粒子を繊維中に含有させてなる撥水撥油性繊維は、前記ケイ素等を有するダイヤモンド微粒子がほとんど表面に露出していないため、十分な撥水性を得るためには大量の前記ケイ素等を有するダイヤモンド微粒子を使用する必要がある。
一方で、近年、市場が増大している携帯用の情報端末への入力装置として、ディスプレイ画面を直接指、ペン等で触れることによってデータを入力するタッチパネルが利用されている。タッチパネルには、耐擦傷性向上のため、通常、透明保護層及びハードコート層が形成されている。このようなハードコート層は、透明保護層の表面に紫外線硬化型材料や熱硬化型樹脂からなる硬化材料液を塗布し、光照射又は加熱し、硬化させて形成する。ハードコート層の耐擦傷性や耐摩耗性をさらに改良するとともに、指紋の付着を防止し、指紋の拭き取り性を向上させるために、ハードコート層に様々なフィラーを添加する技術の開発が行われている。
特開2012−22047号(特許文献4)は、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、フッ素を有するダイヤモンド微粒子、並びにケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むハードコートフィルムを開示しており、耐擦傷性や耐摩耗性に優れるとともに、指紋が付着しにくく、また付着した指紋を容易に拭き取ることができると記載している。しかしながら、特許文献4に記載のケイ素等を有するダイヤモンド微粒子を含むハードコートフィルムは、前記ケイ素等を有するダイヤモンド微粒子がほとんど表面に露出していないため、十分な撥水性を得るためには大量の前記ケイ素等を有するダイヤモンド微粒子を使用する必要がある。
特開2006−200082号公報 特開2006−291372号公報 特開2012−107370号公報 特開2012−22047号公報
従って、本発明の目的は、高い撥水撥油性を有するとともに、撥水撥油効果が長期間にわたって持続する撥水性基材を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとからなる分散物を、繊維、フィルム等の基材に付着させた後で、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っているバインダーを除去し、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を露出させる処理を行うことにより、高い撥水撥油性を基材に付与することができ、かつ撥水撥油効果が長期間にわたって持続することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が基材に付着してなる撥水撥油性複合材料を製造する本発明の方法は、
前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を製造する工程、
前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物を作製する工程、
前記分散物を基材に付着させる工程、及び
前記分散物が付着した基材の表面を処理し前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っている前記バインダーの一部を除去し、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を露出させる工程
を有することを特徴とする。
前記基材の表面処理方法は、プラズマ処理法、コロナ処理法、エキシマUV光照射法、及び紫外線照射法からなる群から選ばれた少なくとも一種の方法であるのが好ましい。
前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子は、フッ素及び/又はケイ素を有するダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。
前記バインダーは、水性樹脂又は水溶性樹脂からなるのが好ましい。
前記バインダーは、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂ラテックス、グリオキザール樹脂、イソシアネート系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたダイヤモンド微粒子を、ケイ素化処理及び/又はフッ素化処理して得られたものであるのが好ましい。前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48g/cmの比重を有するのが好ましい。
前記基材は、シート状又は繊維状であるのが好ましい。
前記シート状基材がポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるフィルムであるのが好ましい。
前記繊維状基材は、木綿、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンベルグ、レーヨン、テンセル、羊毛及び絹からなる群から選ばれた少なくとも一種の繊維であるのが好ましい。
本発明の撥水撥油性複合材料は、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子がバインダーによって基材に付着してなり、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の一部が、前記基材の表面を覆っている前記バインダーから露出しており、純水に対する接触角が110°以上であることを特徴とする。
前記基材は、繊維状であるのが好ましい。
前記基材は、シート状であるのが好ましい。
前記バインダーは、ハードコート層を形成するものであるのが好ましい。
本発明の撥水撥油性複合材料は、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が繊維、フィルム等の基材に表面に露出して、かつ強固に固定されているので、高い撥水撥油性を有するとともに、撥水撥油効果が長期間にわたって持続する。
繊維を基材として得られた撥水撥油性繊維は、繰り返し洗濯しても容易に撥水撥油効果が低下しない。このため、スポーツウエア、肌着、スーツ、雨具、靴、等の衣料用品、手術用ガウン、シーツ、シューズカバー、キャップ、エプロン等の医療材、紙おむつ等の衛生材、各種保護具、包装材等の工業資材、風呂敷などの包装材、ランドリー袋等の収納用品、エプロン、鞄、カーテン、カーペット等の家庭用材等の様々な繊維製品用途として好適である。
ハードコートフィルムを基材として得られた撥水撥油性ハードコートフィルムは、耐擦傷性、耐摩耗性に優れ、指紋が付着しにくく、また付着した指紋を容易に拭き取ることができるので、タッチパネル、各種ディスプレイ等の保護用に好適である。
本発明の撥水撥油性複合材料の一例を示す模式断面図である。 本発明の撥水撥油性複合材料の他の一例を示す模式断面図である。 本発明の撥水撥油性複合材料のさらに他の一例を示す模式断面図である。
[1]撥水撥油性複合材料
(1)構造
本発明の撥水撥油性複合材料1は、図1及び図2に示すように、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2がバインダー3によって基材4に付着してなり、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2の一部が前記基材4の表面を覆っている前記バインダー3から露出していることを特徴とする。ここで、図1はシート状の基材に撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を付着させた例であり、図2は繊維状の基材に撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を付着させた例である。
前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子は、図3に示すように、基材4表面に塗布されたバインダー3中に全体が埋もれて存在する粒子2aと、一部がバインダー3中に埋もれて存在し、他の部分が前記バインダー3表面に露出して存在する粒子2bとがある。前記バインダー3中に全体が埋もれて存在する粒子2aは、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2の表面を修飾するフッ素原子が露出していないので、撥水撥油効果に対してほとんど寄与しない。一方、バインダー3表面に一部が露出して存在する粒子2bは撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2の表面を修飾するフッ素原子が露出しているので、撥水撥油効果に対して大きく寄与するとともに、一部がバインダー3中に埋もれて存在するため、バインダー3を介して基材4に強固に固定されており、容易に剥離することがない。
高い撥水撥油効果を発揮させるためには、できるだけ多くの撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2がバインダー3表面から露出させて存在するように撥水撥油性複合材料1を構成するのが好ましい。そのためには、図1(b)又は図2(b)に示すように、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2を基材4に固着するためのバインダー3をできるだけ少ない量で使用するのが好ましい。
本発明の撥水撥油性複合材料は、純水に対する接触角が110°以上である。接触角の測定方法は液適法によって行い、純水を滴下して0.5秒後の接触角で評価することができる。撥水撥油性複合材料の純水に対する接触角は120°以上であるのが好ましく、130°以上であるのがより好ましい。
(a)撥水撥油性シート又はフィルム
シート状の基材に撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子をバインダーによって付着させることにより、図1に示すように、撥水撥油性を有するシート又はフィルムとすることができる。撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の付着は、シート状の基材の片面であっても良いし、両面であっても良い。さらに前記バインダーとして、ハードコート層を形成する材料を使用して、撥水撥油性を有するハードコート層を形成してもよい。これらの撥水撥油性シート又はフィルムは、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子がバインダーによって強固にシート又はフィルムに固定されているため、容易に剥離することがない。そのため、撥水撥油性効果が容易に低下しないので、指紋の付着防止効果、指紋の拭き取り性が長期間持続し、例えばタッチパネル、各種ディスプレイ等の保護用に好適である。
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の含有量は、撥水撥油性の効果が発揮されるような量であれば良く特に限定されないが、1つの面について1mあたり0.1mg〜10gであるのが好ましく、0.5〜1000mgであるのがより好ましく、1〜500mgであるのが最も好ましい。従って、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子をシート状の基材の両面に付着させる場合は、シートあたりの付着量の好ましい範囲は前記1面あたりの量の2倍になる。バインダーに対する撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の含有量は、特に限定されないが、バインダーに対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜2質量%であるのがより好ましい。
前記ハードコート層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験で「4H」以上の硬度を示す高硬度の層であり、硬化材料(ハードコート剤)により形成されるもの、又は基材とハードコート層とを共押出しにより積層して形成されるものが好ましい。
ハードコート層中の撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の含有量は、特に限定されないが、ハードコート層を形成する材料に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜2質量%であるのがより好ましい。ハードコート層の厚さは、0.1〜50μm程度であるのが好ましく、1〜30μmであるのがより好ましい。
(b)撥水撥油性繊維
繊維状の基材に撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子をバインダーによって付着させることにより、図2に示すように、撥水撥油性を有する繊維とすることができる。この撥水撥油性繊維は、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子がバインダーによって強固に繊維に固定されているため、容易に剥離することがない。そのためこの撥水撥油性繊維を使用した衣類、寝具等の繊維製品は、繰り返し洗濯しても容易に撥水撥油効果が低下しない洗濯耐性を有する。
前記洗濯耐性は、例えばJIS L1096Gで規定されている家庭用洗濯機法によって繰り返し洗濯したときにどれだけ撥水撥油効果が低下するかを評価することによって行う。撥水撥油効果は、接触角を測定することによって評価することができる。前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子をバインダーによって付着させてなる繊維からなる布は、前記JIS L1096G法によって100回洗濯した後の接触角が、110°以上であるものが好ましい。
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の含有量は、撥水撥油性の効果が発揮されるような量であれば良く特に限定されないが、繊維1kgあたり0.01mg〜10gであるのが好ましく、0.1mg〜5gであるのがより好ましく、1mg〜2gであるのが最も好ましい。撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の含有量が、繊維1kgあたり0.01mg未満である場合、撥水効果が不十分であり、1gを越える場合、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子がバインダー表面又はバインダー中で凝集を起こし、繊維表面から脱落したり、バインダーを脆性させたりする場合がある。バインダーに対する撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の含有量は、特に限定されないが、バインダーに対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜2質量%であるのがより好ましい。
(2)基材
撥水撥油性複合材料で用いる基材としては、特に限定されないが、シート状又は繊維状のものが好ましい。
(a)シート状基材
シート状基材としては、プラスチック、ガラス、金属、セラミックス等、目的に応じて選択することができる。プラスチック製の基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系フィルム、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式構造含有重合体等のポリオレフィン系フィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。
これらのシート状基材の中で、タッチパネル用や各種ディスプレイの表面保護用フィルム等の光学用フィルムの基材としては、性能及び経済性の面からポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム及びポリオレフィン系フィルムが好適であり、特に耐熱性が要求される用途には、脂環式構造含有ポリオレフィン系フィルム等が好ましく用いられる。基材フィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
シート状基材の厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜250μmの範囲である。これらのシート状基材は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、コロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられ、また、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は透明基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から、好ましく用いられる。
(b)繊維状基材
繊維状基材としては、従来から使用されているものがいずれも使用可能である。例えば、木綿等のセルロース繊維、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維、ベンベルグ、レーヨン、テンセル(登録商標)等の再生繊維、及び羊毛や絹等のタンパク質繊維等が挙げられる。これらの繊維は、単独で用いても良いし、2種以上を混紡、混織、交撚、交編織等で混用しても良いし、2種以上をコンジュゲート繊維(複合繊維)や混合繊維としても良い。2種以上の繊維を前記の方法により使用する場合、少なくとも1種の繊維は撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を有する繊維とする。全ての成分を、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を有する繊維としてもよい。これらの繊維は、フィラメント、ステーブル、編み物、織物、不織布、縫製品等の任意の形態で使用することができる。
(3)撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子としては、例えば、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子が挙げられる。ケイ素を有するダイヤモンド微粒子は、10〜500nm程度のダイヤモンド微粒子の表面に、ケイ素原子又はケイ素原子を含有する基を結合させることによって得られたケイ素修飾ダイヤモンド粒子であり、同様に、フッ素を有するダイヤモンド微粒子は、フッ素原子又はフッ素原子を含有する基を結合させたフッ素修飾ダイヤモンド粒子である。ケイ素原子、ケイ素原子を含有する基、フッ素原子、及びフッ素原子を含有する基は、ダイヤモンド微粒子の表面に存在するsp炭素、sp炭素、−COOH、−OH等の親水性官能基等に共有結合により結合するため、容易にダイヤモンド微粒子から分離することはない。これらの撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の一部がバインダー中に埋もれてアンカーの役割を担うことで、バインダーを介して基材と強固に結合することが可能となり、撥水撥油性の効果を長期間持続させることができる。撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子は、前記ケイ素のみ又はフッ素のみを有するダイヤモンド微粒子であってもよいし、ケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子であってもよい。特に、フッ素を有するダイヤモンド微粒子が撥水撥油性の効果が大きいので好ましい。
ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子中のケイ素原子の量は、特に限定されないが、ダイヤモンド微粒子に対して、0.1〜25質量%であるのが好ましく、0.2〜20質量%であるのがより好ましい。フッ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子中のフッ素原子の量は特に限定されないが、ダイヤモンド微粒子に対して、0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.2〜15質量%であるのがより好ましい。
撥水撥油性基を修飾するためのダイヤモンド微粒子としては、前記粒径を有していれば、天然のものであっても人工のものであってもよい。なかでも爆射法で得られたナノダイヤモンドが修飾のしやすさや、溶媒等への分散性の観点から好ましい。
(4)バインダー
バインダーは、特に限定されず、水性又は水溶性の樹脂、油溶性の樹脂等、基材の材質・形状に応じて適宜選択することができる。
シート状基材を使用する場合、バインダーとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等、又はシリコーン樹脂系ハードコート剤、有機樹脂系ハードコート剤等が挙げられる。なかでもハードコート剤を用いてハードコートを形成するのが好ましい。繊維状基材を使用する場合、バインダーとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、洗濯耐性の観点から、アクリル樹脂及びウレタン樹脂が好ましい。
[2]製造方法
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が基材に付着してなる撥水撥油性複合材料は、
(1)前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を製造する工程、
(2)前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物を作製する工程、
(3)前記分散物を基材に付着させる工程、及び
(4)前記分散物が付着した基材の表面を処理し前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っている前記バインダーの一部を除去し、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を露出させる工程
を有する。
前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っている前記バインダーの一部を除去する方法は、プラズマ処理法(低温プラズマ、高温プラズマ、大気圧プラズマ)、コロナ処理法、エキシマUV光照射法、紫外線照射法等が好ましい。一般に、これらの方法で物質の表面処理を行うと、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基等の親水性官能基が形成され、物質の表面が親水化される。しかしながら、本発明においては、高い撥水撥油性を有する修飾ダイヤモンド微粒子をバインダーによって基材に付着しているため、これらの方法で表面処理を施すことにより、前記修飾ダイヤモンド微粒子を覆っているバインダーが除去され、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が露出するため高い撥水撥油性の効果を発揮するようになる。
上記工程を有する製造方法により、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の一部が、前記基材の表面を覆っている前記バインダーから露出して存在する撥水撥油性複合材料が得られる。
(1)撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を製造する工程
(a)爆射法によるダイヤモンド微粒子の合成
撥水撥油性基を修飾するためのダイヤモンド微粒子の一例として、爆射法でダイヤモンド微粒子を製造する方法を説明する。爆射法としては、水及び/又は氷の存在下で爆薬を爆発させて行うウエット法、水及び/又は氷を使用しないで気流によって冷却するドライ法等があるが、本発明では爆射法であればどの方法を採用しても良い。
これらの爆射法としては、Science,Vol.133,No.3467(1961),pp1821−1822、特開平1−234311号、特開平2−141414号、Bull.Soc.Chem.Fr.Vol.134(1997),pp.875−890、Diamond and Related materials Vol.9(2000),pp861−865、Chemical Physics Letters,222(1994),pp.343−346、Carbon,Vol.33,No.12(1995),pp.1663−1671、Physics of the Solid State,Vol.42,No.8(2000),pp.1575−1578、K.Xu.Z.Jin,F.Wei and T.Jiang,Energetic Materials,1,19(1993)、特開昭63−303806号、特開昭56−26711報、英国特許第1154633号、特開平3−271109号、特表平6−505694号(WO93/13016号)、炭素,第22巻,No.2,189〜191頁(1984)、Van Thiei.M. & Rec.,F.H.,J.Appl.Phys.62,pp.1761〜1767(1987)、特表平7−505831号(WO94/18123号)、米国特許第5861349号及び特開2006−239511号等に記載の方法を用いることができる。
爆射法で得られたダイヤモンド微粒子(以下、「爆射法で得られたダイヤモンド微粒子」のことを「ナノダイヤモンド」と言う)は、sp構造のナノサイズのダイヤモンド粒子の表面を、sp構造のグラファイトを含む炭素(以下、グラファイト系炭素という。)が覆ったコア/シェル構造を有しており、未精製の状態では黒く着色している。前記sp構造のダイヤモンド粒子とsp構造のグラファイト系炭素とは一部共有結合によって強固に結合されている。未精製のナノダイヤモンドをこのまま用いても良いが、より着色の少ない撥水撥油性複合材料を得るためには、未精製のナノダイヤモンドを酸化処理し、グラファイト相の一部を除去して用いるのが好ましい。また、ナノダイヤモンド中に含まれる鉄等の不純物は、ダイヤモンドの酸化を促進するので、できるだけ除去するのが好ましい。
未精製のナノダイヤモンドは、約2.55g/cmの比重を有し、200〜250nm程度のメジアン径(動的光散乱法)を有する。この未精製のナノダイヤモンドを酸化処理等の方法で精製したダイヤモンド微粒子は2〜10nm程度のダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径150〜250nm程度の二次粒子である。ダイヤモンド微粒子は、分散度を高め散乱を低減させるためさらにメディア分散等の方法によりできるだけ凝集を解いて使用するのが好ましく、そのメジアン径は10〜200nmであるのが好ましく、20〜150nmであるのがより好ましい。
ダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48g/cmの比重を有するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子の比重は、ナノダイヤモンドの精製度(グラファイト系炭素の除去率)に伴って増加するので、比重から粒子中のダイヤモンド含率(粒子表面に存在するグラファイト系炭素の量)を求めることができる。すなわち、比重が2.55g/cmの場合のダイヤモンド含率は24体積%、比重が3.48g/cmの場合のダイヤモンド含率は98体積%である。
ダイヤモンド微粒子の比重が2.55g/cm未満、すなわち酸化処理を行わない場合であっても、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有しているが、さらに酸化処理を施すことによって、それらの数を増加させることができる。また過剰に酸化処理を施した場合、ナノダイヤモンドのシェル部分のグラファイト系炭素がほとんど除去されるため、逆にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が少なくなってしまう。その結果、水、アルコール等の親水的な溶剤への分散性が低下することがあるので、比重は3.48g/cmを越えない程度であるのが好ましい。また必要に応じて溶剤への分散性を高める効果を有する官能基で表面修飾を行うのが好ましい。前記比重は、3.0g/cm(ダイヤモンド84体積%)以上3.46g/cm(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38g/cm(ダイヤモンド90体積%)以上3.45g/cm(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、ダイヤモンドの比重3.50g/cm及びグラファイトの比重2.25g/cmを用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した値である。
爆射法で得られた未精製のダイヤモンドの酸化処理方法としては、(a)硝酸等の共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(b)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(c)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、(d)380〜450℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)等が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組み合せて行っても良い。酸化処理を組み合せる場合は、未精製のナノダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子は、前記未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理して得られたナノダイヤモンドを、ケイ素化処理又はフッ素化処理することによって得られる、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子は、前記ナノダイヤモンド表面に存在するsp炭素、sp炭素、−COOH、−〇H等の親水性官能基にケイ素原子、ケイ素原子を有する基、フッ素原子、フッ素原子を有する基等が共有結合したものである。
(b)ケイ素を有するダイヤモンド微粒子の製造
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理して得られたナノダイヤモンドに、シリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等を反応させることによりナノダイヤモンドの表面にある水酸基等の親水性基を、ケイ素を含む有機基に置換することができる。ケイ素化処理は、シリル化剤を用いるのが好ましい。
好ましいシリル化剤としては、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、2−トリメチルシロキシペント−2−エン−4−オン、n−(トリメチルシリル)アセトアミド、2−(トリメチルシリル)酢酸、n−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルプロピオレート、ノナメチルトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t−ブチルジメチルシラノール、ジフェニルシランジオール等が挙げられる。本発明に用いられるシリル化剤は、これらの化合物に限定されない。
シリル化剤溶液の溶媒はへキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の炭化水素類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物が好ましい。
シリル化剤の種類や濃度にもよるが、シリル化反応は10〜40℃で十分攪拌しながら進行させるのが好ましい。10℃未満では反応が進行しにくく、40℃超ではナノダイヤモンド表面に均一にシリル化されなくなる。例えば、トリエチルクロロシランのヘキサン溶液をシリル化剤として使用した場合、10〜40℃で10〜40時間程度攪拌しながら反応させると、ナノダイヤモンド表面の水酸基が十分にシリル修飾される。
(c)フッ素を有するダイヤモンド微粒子の製造
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理により得られたナノダイヤモンドは、(i)フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法、(ii)フルオロアルキルアゾ化合物を用いた方法、(iii)フッ素ガスと直接反応させる方法、(iv)ClF、ClF3、ClF5等のハロゲンフッ化物を反応させる方法、(v)フッ素プラズマによる方法等により、その表面をフッ素又はフッ素を有する基で修飾することができる。
フッ素を有するダイヤモンド微粒子は、酸素とフッ素との元素比(O/F)を0.06〜0.2とすることにより、エタノール等のアルコール類への高い分散性を付与することができるとともに、粒子同士の凝集を防止することができる。前記酸素とフッ素との元素比は、X線光電子分光(XPS)測定によって得られる酸素及びフッ素に帰属されるピークの、積分強度比によって算出される値である。O/Fが0.06未満では、フッ素を有するダイヤモンド微粒子とアルコールとの親和性が低下し、アルコールとの溶媒和が形成されず分散性が低下する。一方、O/Fが0.2を超える場合、フッ素を有するダイヤモンド微粒子同士の凝集を防止する効果が小さくなる。
(i)フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法
高分子主鎖の両末端にフルオロアルキル基が直接炭素−炭素結合により導入された高分子界面活性剤(含フッ素オリゴマー)は、水溶液中又は有機溶媒中において自己組織化したナノレベルの分子集合体を形成することが知られている。このフルオロアルキル基が末端に導入された含フッ素オリゴマーを用いることにより、フルオロアルキル基で修飾したナノダイヤモンドを形成することができる。
フルオロアルキル基で修飾したナノダイヤモンドは、爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理により得られたナノダイヤモンドを、一般式(A)で表される含フッ素オリゴマーで処理することによって得ることができる。
Figure 2015074781
ここで、Rはフルオロアルキル基であり、具体的には、−CF(CF)OC、−CF(CF)OCFCF(CF)OC等の基が好ましい。Rは置換基であり、−N(CH、−〇H、−NHC(CHCHC(=O)CH、−Si(OCH、−COOH等の基が好ましい。nは5〜2000であるのが好ましい。
ナノダイヤモンドと一般式(A)で表される含フッ素オリゴマーとをメタノール、エタノール等のアルコール溶媒中で混合し、室温〜80℃で2〜48時間撹拌することによりナノダイヤモンド表面にフルオロアルキル基(R)が修飾された複合粒子を高い収率で得ることができる。反応を促進させるために、アンモニア等の塩基を使用してもよい。
(ii)フルオロアルキルアゾ化合物を用いた方法
下記反応式に記載したように、ナノダイヤモンドの存在下で、パーフルオロヘキサンに溶解したアゾビスパーフルオロオクチル1に、Xeエキシマランプにより波長172nmの光を室温で照射することによりナノダイヤモンドにパーフルオロオクチルを付加させることができる。この反応はアルゴン気流下で行い、前記照射時間は10分〜2時間程度である。なお、この方法に用いるナノダイヤモンドは、パーフルオロヘキサンに分散しやすいようにあらかじめ疎水化処理を行うのが好ましい。
Figure 2015074781
(iii)フッ素ガスと直接反応させる方法
フッ素ガスと直接反応させる方法は、ナノダイヤモンドを入れた反応管(ニッケル製等)に、フッ素ガスとアルゴン等の不活性ガスとの混合ガスを300〜500℃で10〜500時間流すことにより行う。
また、フッ素ガスと反応させる他の方法として、ナノダイヤを入れた反応炉に、150℃、で3〜4時間不活性ガス中で加熱し、その後反応炉にフッ素ガス及びフッ化水素(3:1)を入れ、150℃のまま48時間加熱することによりフッ素化を行う方法がある。不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴンが使用でき、又は真空で処理しても良い。
フッ素化ダイヤモンド微粒子のフッ素含有量は0.1〜20wt%であるのが好ましく、0.2〜15wt%であるのが好ましい。フッ素含有量が0.1wt%未満であると、フッ素含有の高分子樹脂を用いたとき、樹脂との相溶性が低下する。フッ素含有量が20wt%以上であると、非フッ素系の溶剤や添加剤との相溶性が低下する。
(2)分散物を作製する工程
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物は、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の親疎水性、バインダーの種類、基剤の種類、分散物の塗布方法等に応じて、水系分散物、又は有機溶剤系分散物を適宜選択することができる。取り扱い性を考慮すると、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の分散媒は、水、アルコール等の親水的な溶剤が好ましい。分散液中の撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の濃度は、特に限定されないが、2%以下であるのが好ましく、1%以下であるのがより好ましく、0.5%以下であるのが最も好ましい。撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物に、さらに分散剤を添加しても良い。分散剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が使用できる。
特にフッ素を有するダイヤモンド微粒子を水に分散させる場合、フッ素を有するダイヤモンド微粒子の疎水性が比較的高いので、フッ素系の界面活性剤を分散剤として使用するのが好ましい。フッ素系の界面活性剤としては、スルホン酸、カルボン酸、4級アンモニウム、ポリオキシエチレンエーテル等を親水性基として有するフルオロアルキル、フルオロアルケン等の構造を有するものが好ましい。フッ素系の界面活性剤としては、株式会社ネオス製のフタージェント(登録商標)、日油株式会社のディスパノール(登録商標)等が好ましい。フタージェント(登録商標)としてはフタージェント150、フタージェント320、フタージェント710FL、フタージェント212M、フタージェント215M、フタージェント250が挙げられ、ディスパノール(登録商標)としては、ディスパノールWI−133、WI−115等が挙げられる。
その他、分散物には必要に応じて増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が使用できる。
(3)分散物を基材に付着させる工程
撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物を基材に付着させるには、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法で分散物を塗布することによって行う。これらの方法は、塗装される基材となる成形品の形状に応じて適宜選択する。特にシート状基材に塗布する場合は、ディップコート法、フローコート法、及びスピンコート法が好ましく、繊維状基材に塗布する場合は、ディップコート法、及びスプレーコート法が好ましい。塗布した分散物は、常温又は加熱して乾燥する。
バインダーの塗布量を少なくし、形成されるバインダー層を薄くすれば、その表面に突出する撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の数が多くなり、基材の撥水撥油性をより高めることができる。従って接着強度の強いバインダーを使用して、バインダー層がなるべく薄く形成されるような条件で塗布するのが好ましい。
シート状基材に撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とハードコート材とを含むハードコート層を形成してもよい。ハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤等が挙げられる。
シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合を持った硬化樹脂層を形成するものであり、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物等)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくはさらに4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物等)を含む部分加水分解縮合物、さらにこれらにコロイダルシリカ等の金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物等が挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤はさらに2官能性のシロキサン単位及び1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)等が含まれるが、さらに必要に応じて任意の有機溶剤、水、又はこれらの混合物に溶解又は分散させてもよい。前記有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類等が挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためシロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤等の各種界面活性剤を添加してもよい。
有機樹脂系ハードコート剤としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料、二液混合型硬化型樹脂等が挙げられる。
熱硬化型樹脂とは、熱の作用を受けて分子間架橋による硬化反応を起こし、不溶不融性の三次元網目構造をとる樹脂であり、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
紫外線硬化型材料及び電子線硬化型材料としては、光重合性の官能基を2個以上、特に3〜6個有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。前記モノマー又はオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリレートモノマー、シリコンアクリレート等が挙げられる。紫外線硬化型材料とは、前記モノマー又はオリゴマーのうち、紫外線照射により重合や架橋を起すものであり、電子線硬化型材料とは、前記モノマー又はオリゴマーのうち、電子線照射により重合や架橋を起すものである。前記モノマーやオリゴマーは一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
二液混合型硬化型樹脂としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
これらハードコート剤のうち長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤、又は処理が比較的簡便でかつ良好なハードコート層が形成される紫外線硬化型のアクリル樹脂等が好ましい。
シリコーン樹脂系ハードコート剤はプライマー層とトップ層から構成されるいわゆる2コートタイプ、又は1層のみから形成されるいわゆる1コートタイプのいずれも選択できる。プライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分及びポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレート等の各種多官能アクリル樹脂等を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも好ましくはアクリル樹脂、多官能アクリル樹脂が50重量%、より好ましくは50重量%以上含有するものを挙げることができ、特にアクリル樹脂及びウレタンアクリレートからなるものが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
ハードコート層のコート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材となる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。なかでも複雑な成形品形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、及びスプレーコート法が好ましい。
ハードコート層には、さらに必要に応じて、アニオン、カチオン性やノニオン性界面活性剤、光安定剤や紫外線吸収剤、触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤、添加助剤等を含むことができる。
(4)撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を露出させる工程
バインダー表面に存在する撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2bは、図3(a)に示すように、バインダー3の表面から突出してはいるが、その粒子表面はバインダー3bにより薄く覆われているため、撥水撥油生を十分に発揮できない。この撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2bの表面を薄く覆っているバインダー3bを除去することにより、撥水撥油性複合材料は高い撥水撥油性の効果を発揮するようになる。前記バインダー3bを除去するための表面処理方法としては、プラズマ処理法、コロナ処理法、エキシマUV光照射法、紫外線照射法等の方法が挙げられる。特にプラズマ処理法及びコロナ処理法が好ましい。またシート状の基材にハードコート層を設ける態様の場合には、プラズマ処理法が好ましい。
これらの表面処理を施すことにより、図3(b)に示すように、バインダー表面に存在する撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2bを薄く覆っているバインダー3bが除去され、撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子2bが表面に露出し、その結果、高い撥水撥油性の効果を発揮するようになる。しかしながら、前記表面処理方法は、一方でバインダー3表面に親水性基(−C=O、−COOH、−OH等)を生成させるため、処理時間を長くしすぎたり、照射強度を高くしすぎたりすると逆に基材表面が親水的になり過ぎて、撥水撥油性の効果が減少してしまう。
(i)プラズマ処理
プラズマ処理の方法としては、(a)前記分散物を付着させた基材を酸素含有ガス雰囲気に設置し、プラズマ放電することにより行う直接法、又は(b)酸素含有ガスにプラズマ放電して得られたプラズマガスを、前記分散物を付着させた基材に吹き付けることにより行う間接法(ダウンフロー法等)が好ましい。酸素含有ガスとしては、酸素、空気、10〜50体積%の酸素と窒素以外の不活性ガスとの混合ガス等が挙げられるが、酸素が好ましい。直接法及び間接法のいずれを用いる場合でも、プラズマ処理は大気圧下で行っても、減圧下で行ってもよいが、処理の簡便さから大気圧プラズマが好ましい。
直接法を用いる場合、対向する上部電極及び下部電極を有する平行平板型のプラズマ放電装置を用いるのが好ましい。前記分散物を付着させた基材を下部電極上に配置し、プラズマ放電する。高周波電源の発振周波数は13.56MHzであるのが好ましい。プラズマ放電の時間は60〜1,000秒が好ましい。減圧下でプラズマ放電する場合、1〜40Pa、好ましくは1〜30Paの圧力まで減圧して、前記酸素含有ガスを供給しながら行うのが好ましく、酸素供給時の圧力は20〜80Paであるのが好ましく、30〜70Paがより好ましい。放電中の基材の温度は20〜200℃が好ましい。
間接法を用いる場合、高圧ボンベからプラズマガス発生装置に前記酸素含有ガスを送給し、発生装置で生じたプラズマガスを、ノズル、ブロワー等により前記分散物を付着させた基材に吹き付けるのが好ましい。
(ii)コロナ処理
コロナ処理は、空気中で行うのが好ましい。コロナ処理時における圧力は、特に限定されず、例えば常圧又はその近傍とすることができる。また、コロナ放電の照射量は、通常、1mあたり200〜2000W・minであるのが好ましい。照射量が200W・min/m未満であるとバインダーの除去効果がほとんど得られず、2000W・min/m超になるとバインダー表面に精製した親水性基が多くなり撥水撥油性の効果が減少してしまう。コロナ放電の照射量は、より好ましくは300〜1000W・minである。
(iii)エキシマUV光照射法、及び紫外線照射法
エキシマUV光照射法、及び紫外線照射法は高エネルギー光の照射により、バインダーを構成する原子間の共有結合を切断し、バインダーの表面を除去する方法である。これらの処理により、高い撥水撥油性の効果を発揮するようになる。これらの方法においては、エキシマUV光、紫外線等の照射によりオゾンが発生し、水素原子源や酸素原子と反応して活性水素又は活性酸素を発生させる。これらの活性種は前記バインダーに作用して、バインダー表面に親水性基を生成させ、撥水撥油性を低下させるので、あまり長時間の照射は好ましくない。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65kgの爆発物を3mの爆発チャンバー内で爆発させて、生成するナノダイヤモンドを保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こし未精製のナノダイヤモンドを合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末)の比重は2.55g/cm、メジアン径(動的光散乱法)は220nmであった。この未精製のナノダイヤモンドは、比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
この未精製のナノダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、未精製のナノダイヤモンドからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、ナノダイヤモンドの粉末を得た。このナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38g/cmであり、メジアン径は120nm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
(2)ケイ素化処理
得られたナノダイヤモンドの粉末をメチルイソブチルケトンに3質量%の濃度で分散させ、トリメチルクロロシランのメチルイソブチルケトン溶液(濃度7.5質量%)を1:1の容量で加え、48時間撹拌してナノダイヤモンドをトリメチルシランで修飾した。得られた分散物をメチルイソブチルケトンで洗浄後、乾燥し、トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末を得た。
(3)ハードコートフィルムの作製
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、O−PET、75μm)の表面にスパッタリングで20nmのITO層を形成させたシートを上部電極として得た。この上部電極の表面固有抵抗は300Ω/cmであった。
ハードコート剤として、多官能アクリレート(大日精化社製、EXF37)100重量部と、コロイダルシリカ(東芝シリコーン社製、UVHC−1105)10重量部と、得られたトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末5質量部との混合溶液を、トルエンで上記混合溶液分が40%になるように希釈し調整した。前記ITO層を形成させたシートの上部電極を有しない側に、バーコーターによって、上記ハードコート剤を塗工し、加熱乾燥した後、300MJ/cmで紫外線ランプを照射し、厚さ5μmのハードコート層を作製した。得られたハードコートフィルムの表面に、プラズマクリーナー(型番:PDC210、ヤマト科学株式会社製)を用いて、12Paに減圧した状態で、酸素を80mL/minで供給しながら、300Wの出力でRF(Radio Frequency)を照射し、3分間プラズマ処理した。得られたハードコートフィルム表面の接触角を測定(水滴を滴下後0.5秒後の値)したところ159°であった。
実施例2
プラズマ処理の代わりに、600Wmin/mの放電量でコロナ処理を行った後、ハードコートフィルム表面の接触角を実施例1と同様にして測定したところ125°であった。
実施例3
(1)フッ素化処理
実施例1で作製したナノダイヤモンドの粉末を3質量%の濃度でメタノールに分散させ、下記式:
Figure 2015074781
(Rは−CF(CF)OC基、Rは−OH基、nは約800である。)表される含フッ素オリゴマー、及び28質量%アンモニア水を、ナノダイヤモンド分散物100質量部に対してそれぞれ50質量部及び10質量部加え、80℃で20時間撹拌して反応させた。得られた分散物を中和、洗浄及び乾燥し、フルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を得た。
(2)ハードコートフィルムの作製
トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末の代わりに、フルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。得られたハードコートフィルム表面の接触角を測定(水滴を滴下後0.5秒後の値)したところ163°であった。
実施例4
ハードコートフィルムの作製
トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末の代わりに、実施例1で作製したトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末、及び実施例3で作製したフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を6:4の質量比となるように混合した粉末を使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。得られたハードコートフィルム表面の接触角を測定(水滴を滴下後0.5秒後の値)したところ160°であった。
実施例5
(1)ケイ素化及びフッ素化
実施例1で作製したトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド分散物を用いて、実施例3と同様にして、ナノダイヤモンド表面をフルオロアルキル基で修飾し、ナノダイヤモンド表面がトリメチルシラン及びフルオロアルキル基で修飾されたダイヤモンド微粒子(トリメチルシラン及びフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド)を得た。
(2)ハードコートフィルムの作製
トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末の代わりに、トリメチルシラン及びフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。得られたハードコートフィルム表面の接触角を測定(水滴を滴下後0.5秒後の値)したところ161°であった。
実施例6
(1)撥水撥油性繊維からなる織物の作製
ポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント56dtex/24fil(延伸糸、帝人ファイバー(株)製)を経糸に配し、一方、ポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント86dtex/36fil(延伸糸、帝人ファイバー(株)製)を緯糸に配し、通常の織機でタフタ織物(平組織織物)を製織した。この織物を、通常の液流染色機(ノズル径80mm)を使用して、0.8g/Lのトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド微粒子及び1g/Lの濃度のバインダー(アクリル樹脂)を含む水分散液中(35℃)に5分間浸漬し、引き上げた後でニップロールで絞り、80℃で乾燥することにより、トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド微粒子を付着させた撥水撥油性繊維からなる織物を作製した。得られた織物は、繊維1kgあたり2.0gのトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末が付着していた。
得られた織物に、表1に示すように、21〜3075Wmin/mの放電量でコロナ処理を行った後、接触角を測定した。接触角は純水を滴下し0.5秒後の値である。さらにこれらの試料の洗濯耐性を、JIS L 1096 Gで規定されている家庭用洗濯機法によって100回繰り返し洗濯したときにどれだけ撥水撥油効果が低下するかを評価することによって行った。撥水撥油効果は、50回洗濯した後の接触角及び100回洗濯した後の接触角で評価した。結果を表1に示す。表1から、試料No.603〜605の織物は、優れた撥水性及び洗濯耐性を有していることが分かる。
Figure 2015074781
実施例7
(1)撥水撥油性繊維からなる織物の作製
実施例6で用いたトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド微粒子を含む水分散液の代わりに、0.4g/Lのフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド微粒子(実施例3で作製したもの)、20g/Lのディスパノール(登録商標)WI−133(日油株式会社製)、1g/Lの濃度のバインダー(アクリル樹脂)を含む水分散液を用いた以外は実施例6の織物と同様にして、フルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド微粒子の付着した織物を作製した。
得られた織物に、表2に示すように、21〜3075Wmin/mの放電量でコロナ処理を行った後、実施例6と同様にして接触角を測定した。さらにこれらの試料の洗濯耐性を、実施例6と同様にして評価した。結果を表2に示す。表2から、試料No.703〜705の織物は、優れた撥水性及び洗濯耐性を有していることが分かる。
Figure 2015074781
実施例8
(1)撥水撥油性繊維からなる織物の作製
実施例6で用いたトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド微粒子を含む水分散液の代わりに、0.6g/Lのトリメチルシラン及びフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド微粒子(実施例5で作製したもの)、10g/Lのディスパノール(登録商標)WI−133(日油株式会社製)、1g/Lの濃度のバインダー(アクリル樹脂)を含む水分散液を用いた以外は実施例6の織物と同様にして、トリメチルシラン及びフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド微粒子の付着した織物を作製した。
得られた織物に、表3に示すように、21〜3075Wmin/mの放電量でコロナ処理を行った後、実施例6と同様にして、接触角を測定した。さらにこれらの試料の洗濯耐性を、実施例6と同様にして評価した。結果を表3に示す。表3から、試料No.803〜805の織物は、優れた撥水性及び洗濯耐性を有していることが分かる。
Figure 2015074781
1・・・撥水撥油性複合材料
2・・・撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子
2a・・・バインダー中に全体が埋もれて存在する粒子
2b・・・バインダー表面に存在する粒子
3・・・バインダー
3b・・・撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っているバインダー
4・・・基材

Claims (14)

  1. 撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が基材に付着してなる撥水撥油性複合材料を製造する方法であって、
    前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を製造する工程、
    前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子とバインダーとを含む分散物を作製する工程、
    前記分散物を基材に付着させる工程、及び
    前記分散物が付着した基材の表面を処理し前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を覆っている前記バインダーの一部を除去し、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子を露出させる工程
    を有することを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  2. 請求項1に記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記基材の表面処理方法が、プラズマ処理法、コロナ処理法、エキシマUV光照射法、及び紫外線照射法からなる群から選ばれた少なくとも一種の方法であることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が、フッ素及び/又はケイ素を有するダイヤモンド微粒子であることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記バインダーが、水性樹脂又は水溶性樹脂からなることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  5. 請求項4に記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記バインダーが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂ラテックス、グリオキザール樹脂、イソシアネート系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が、爆射法で得られたダイヤモンド微粒子を、ケイ素化処理及び/又はフッ素化処理して得られたものであることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子が、2.55〜3.48g/cmの比重を有することを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記基材が、シート状又は繊維状であることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  9. 請求項8に記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記シート状基材がポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるフィルムであることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  10. 請求項8に記載の撥水撥油性複合材料の製造方法において、前記繊維状基材が木綿、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンベルグ、レーヨン、テンセル、羊毛及び絹からなる群から選ばれた少なくとも一種の繊維であることを特徴とする撥水撥油性複合材料の製造方法。
  11. 撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子がバインダーによって基材に付着してなる撥水撥油性複合材料であって、前記撥水撥油性基を有するダイヤモンド微粒子の一部が、前記基材の表面を覆っている前記バインダーから露出しており、純水に対する接触角が110°以上であることを特徴とする撥水撥油性複合材料。
  12. 請求項11に記載の撥水撥油性複合材料において、前記基材が、繊維状であることを特徴とする撥水撥油性複合材料。
  13. 請求項11に記載の撥水撥油性複合材料において、前記基材が、シート状であることを特徴とする撥水撥油性複合材料。
  14. 請求項13に記載の撥水撥油性複合材料において、前記バインダーがハードコート層を形成するものであることを特徴とする撥水撥油性複合材料。
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