JP2015074768A - ペースト組成物 - Google Patents
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例えば、チップ部品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)の場合、特許文献3では、有機ビヒクルの樹脂成分である疎水性エチルヒドロキシエチルセルロース誘導体に対して、有機溶媒としてジヒドロターピネオールアセテート等を用いて導電性ペーストの経時による粘度変化を抑制することが提案されている。
このような状況下、製造工程において、外界からのペースト中への水分の影響を極小化させ、ペースト製品を使用する際にも厳密な湿度管理が要求されず、製造コストを抑制しながら、粘度を安定化しうるペースト組成物が必要とされていた。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記の高分子樹脂の含有量が、0.5〜10重量%であることを特徴とするペースト組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、前記の固体粉末が、さらに、チタン酸バリウム系あるいはジルコン酸ストロンチウム系からなる群より選ばれる1種以上の酸化物粉末を含むことを特徴とするペースト組成物が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、前記の固体粉末の含有量が、30〜70重量%であることを特徴とするペースト組成物が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1の発明において、前記非水溶性の溶媒の含有量が、30〜70重量%であることを特徴とするペースト組成物が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1の発明において、前記誘電率60以上の有機溶媒の含有量が、0.5〜3.0重量%であることを特徴とするペースト組成物が提供される。
また、このペースト組成物は、品質が安定しているので、小型化する半導体デバイス、チップ部品への使用時にも信頼性を向上することができる。
以下、本発明において用いられる各成分、得られるペースト組成物などについて、詳細に説明する。
本発明に用いられる金属粉末を含む固体粉末は、要求される特性に応じて、公知の金属粉末、酸化物粉末などを適宜選択して用いることができる。また、これらの固体粉末は、単独または混合して用いてもよい。
金属粉末は、製造方法によって限定されず、例えば、塩化物蒸気を水素ガス中で気相から直接析出させる方法、溶融金属からのアトマイズ法、水溶液を使った噴霧熱分解法等が適用できる。
また、金属粉末の平均粒径は、種類によって異なり、0.05〜5μmとすることができるが、例えば、Ni粉末の場合0.05〜3μmとすることが好ましい。3μmを超えると内部電極表面の凹凸が激しくなり、コンデンサの電気的特性を劣化させることがあり、また0.05μmより小さくなるとハンドリングが極めて困難になり、自然発火等の危険性も生じやすい。
酸化物粉末の種類は適宜選択できるが、強誘電体のペロブスカイト型酸化物、中でもチタン酸バリウム(BaTiO3、以下BTと称す場合がある)が望ましい。また、このチタン酸バリウムを主成分とし、酸化物(例えばMn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物)を副成分として含むセラミック粉末、チタン酸バリウム(BaTiO3)のBa原子やTi原子を他原子、Sn、Pb、Zrなどで置換したようなペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末も使用できる。さらには積層セラミックデバイスのグリーンシートを形成するセラミック粉末であるZnO、フェライト、PZT、BaO、Al2O3、Bi2O3、R(希土類元素)2O3、TiO2、Nd2O3などの酸化物粉末も選択できる。
導電ペーストにおける金属粉末を含む固体粉末の含有量は、導電性の観点から、ペースト組成物全重量に対して、30〜70重量%、より好ましくは42〜60重量%であり、特に金属粉末の含有量は、好ましくは40−50重量%、金属酸化物粉末の含有量は好ましくは2〜10重量%である。
高分子樹脂は、ペースト組成物を印刷する際、適度な粘調性と粘着性を発揮し、印刷性、乾燥特性などを向上させる。
本発明においては、OH基を有する公知の高分子樹脂を用いることができ、なかでも、セルロース系及び/又はブチラール系樹脂の少なくとも一種以上から選択することが好ましい。
ここで一例として、エチルセルロースの化学構造式を次の式1に示す。
エトキシ基化率を表す尺度として、分子中に含まれるエトキシ基重量%(エトキシ基層分子量をエチルセルロースの分子量で割り100倍した値)がエトキシシ度と称されており、この数値によって有機溶剤への溶解性を凡そ判断できるが、この定義によれば理論上エトキシ化度の理論最大値は約55%となる。このとき置換可能なOH基が100%エトキシ基に置換したことを意味し、下限値は、0.5重量%である。本発明において、OH基の量は1〜10重量%が好ましい。
配合割合は、セルロース系樹脂/(ポリビニルブチラール+セルロース系樹脂)の重量比で0〜1の範囲であり、一般にはペースト組成物を塗布する基板がセラミック、金属のようなリジットな固体の場合は、この比を1〜0.9にすることが好ましい。一方、塗布される基板が有機フィルムのような柔軟性がある場合は、この比率を低くして、MLCCのようなPETフィルム上にペースト組成物を印刷する場合は1〜0.7、好ましくは1〜0.5程度にすることが望ましい。
上記金属粉末を含む固体粉末を高分子樹脂などに分散せしめ、ペーストとしての粘度を調整し、流動性、印刷性、乾燥特性などを付与するために、溶剤が使用される。本発明では、溶剤として、沸点が150℃から250℃程度の有機溶剤、テルペン系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、あるいはアルコール類など各種公知の有機溶媒(非水溶性溶媒)を用いることができる。
ところが、かかるOH基を有する高分子樹脂は、前記したように、分子中のOH基の存在により、大気中の水分を取り込みやすく、これによりペーストの粘度性状を不安定にしてしまう。この傾向は分子にOH基を有する高分子樹脂の場合に顕著である。
そのため本発明では、誘電率が高い有機溶媒をペーストの粘度性状安定剤として配合している。高誘電率の有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状ケトン系溶媒、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、およびN−メチルプロパンアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、誘電率がいずれも60以上、好ましくは64以上であり、誘電率が高くなるほど作用効果が高くなる傾向にある。
誘電率が60以上の有機溶媒をペーストに配合すると粘度性状安定剤として機能するが、その理由はまだ十分には解明されていない。ただ、誘電率が60未満の有機溶媒、例えば、アミルアルコール(誘電率 35.5)、グリセリン(誘電率 50)では、所期の効果が得られないので、少なくとも60以上の高誘電率とすることが必要と推測される。
また、誘電率が60以上の有機溶媒の含有量は、非水溶性の溶媒100重量%に対して、好ましくは0.15〜16重量%、より好ましくは0.85〜7.5重量%含有される。
本発明のペースト組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて消泡剤、可塑剤、増粘剤、キレート剤、分散剤、チクソ剤などの公知の添加物を1種以上、添加してもよい。
本発明のペースト組成物(以下、単にペーストともいう)は、製造方法によって特に限定されず、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、上記材料をミキサー、ボールミル、ニーダ、ロールミルなどの分散機で混練し、スラリー化することにより製造される。
なお、粘度は、ブルックフィールド粘度計にて25℃、10rpmの条件にて測定した値である。
本発明のペースト組成物は、誘電率が高い有機溶媒がペーストの粘度性状安定剤として配合されているので、比較的湿度が高い雰囲気下で調製しても、水分による影響を受けにくく、防湿など特殊な設備が必要とされず、また除湿などの特殊な前工程を付加する必要もない。
なお、ペースト組成物は、次の材料を用いて調製した。なお、有機溶媒の誘電率は、20(25)℃における誘電率を示す。また得られたペースト組成物は、下記に示した要領で、粘度および粘度変化率を測定した。
金属酸化物系の固体粉末:チタン酸バリウム粉(平均粒径:0.3μm、堺化学社製、商品名:BT−01)、
OH基を有する高分子樹脂:エチルセルロース樹脂(粘度:150−250cps、OH基の量:約3−4重量%、アクアロン社製、商品名:N−200)、ブチラール樹脂(OH基の量:約22mol%、積水化学社製、商品名:BM−S)、
非水溶性溶媒:ターピネオール(日本テルペン工業、商品名:α−ターピネオール)、デカノール(昭和化学株式会社製、商品名:1−デカノール)、トリデカン(関東化学社製、商品名:n−トリデカン)、
誘電率が60以上の有機溶媒:プロピレンカーボネート(誘電率64.4、キシダ化学社製、商品名:プロピレンカーボネート)、エチレンカーボネート(誘電率95.3、三菱化学社製、商品名:エチレンカーボネート)、
誘電率が60未満の水溶性溶媒:グリセロール(誘電率47.2、関東化学社製、商品名:グリセロール)、アミルアルコール(誘電率35.5、関東化学社製、商品名:n−ペンチルアルコール)
製造したペーストを密閉状態で25℃恒温室に保管し、1日、7日、14日、30日経過後に粘度を25℃でブルックフィールド粘度計にて10rpmの条件にて測定し、下記式で定義された粘度変化率を算出した。
製造時の湿度が変わっても、30日間に渡り、粘度変化が小さく、−5%を越えなければ粘度特性が「良好」であり、−2%を越えるものがなければ「非常に良好」な粘度特性である。
ηx:X日後の10rpm粘度
η1:1日後の10rpm粘度
金属粉末を含む固体粉末として前記のニッケル粉(平均粒径:0.4μm);金属酸化物系の固体粉末としてチタン酸バリウム粉(平均粒径:0.3μm);OH基を有する高分子樹脂としてエチルセルロース樹脂、ブチラール樹脂;非水溶性溶媒としてターピネオール、デカノール、またはトリデカン;誘電率が60以上の有機溶媒としてプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートを用意した。
次に、これらを表1に記載された配合で、25℃、相対湿度35%、50%、70%の環境下、各1Kgロールミルでペーストを作製した。
こうして得られたペースト組成物の粘度および粘度変化率を測定し、結果を表2に示す。
実施例で用いた誘電率が60以上の有機溶媒の代わりに、誘電率が60未満の水溶性溶媒としてグリセロール、アミルアルコールを用いた以外は実施例と同様の成分を用いて、表3に記載されている配合で、実施例1と同様な方法によりペースト作製した。
上記実施例、比較例の結果を示す表2,4から次のことが分かる。すなわち、実施例1〜11のペーストにおいては、誘電率が60以上の有機溶媒を特定量含有するために、製造時の湿度が変わっても、30日間に渡り、粘度変化が−2%越えるものはなく非常に安定した粘度特性を示している。
また、比較例10のペーストにおいては、有機溶媒の誘電率が60以上で粘度変化は抑えられたが、その含有量が3.0重量%を超えていたため、粘度が低くなったため印刷性が悪くなってしまった。比較例11のペーストにおいては、有機溶媒の誘電率が60以上であったが、その含有量が0.1重量%未満であったため、本発明の効果が得られず、粘度変化が大きくなってしまった。
Claims (11)
- 金属粉末を含む固体粉末とOH基を有する高分子樹脂と非水溶性の溶媒とを含むペースト組成物であって、誘電率が60以上の有機溶媒を0.1〜5.0重量%含有することを特徴とするペースト組成物。
- 前記の誘電率60以上の有機溶媒が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、およびN−メチルプロパンアミドからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記の高分子樹脂が、セルロース系樹脂及びブチラール系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記の高分子樹脂の含有量が、0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記の固体粉末が、Ni、Cu、Ag、Pd、Au、Pt粉末、あるいはこれらの合金粉末からなる群より選ばれる1種以上の金属粉末を含むことを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記の固体粉末が、さらに、チタン酸バリウム系あるいはジルコン酸ストロンチウム系からなる群より選ばれる1種以上の酸化物粉末を含むことを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記の固体粉末の含有量が、30〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記非水溶性の溶媒が、沸点150℃から250℃の有機溶剤、テルペン系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤及びアルコール類からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記非水溶性の溶媒の含有量が、30〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 前記誘電率60以上の有機溶媒の含有量が、0.5〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
- 25℃で保管し、30日経過後に粘度をブルックフィールド粘度計にて25℃、10rpmの条件にて測定したとき、粘度変化率が−5%以下であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
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