以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。また、以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
<1.基板処理システム100>
<1−1.構成>
基板処理システム100の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、基板処理システム100を模式的に示す概略平面図である。
基板処理システム100は、複数枚の基板9を、一枚ずつ、連続して処理するシステムである。以下の説明において、基板処理システム100で処理の対象とされる基板9は、例えば、円形の半導体ウェハであるとする。
基板処理システム100は、並設された複数のセル(処理ブロック)(具体的には、インデクサセル110および処理セル120)と、当該複数のセル110,120が備える各動作機構等を制御する制御部130と、を備える。
<インデクサセル110>
インデクサセル110は、装置外から受け取った未処理の基板9を処理セル120に渡すとともに、処理セル120から受け取った処理済みの基板9を装置外に搬出するためのセルである。インデクサセル110は、複数のキャリアCを載置するキャリアステージ111と、各キャリアCに対する基板9の搬出入を行う基板搬送装置(移載ロボット)IRと、を備える。
キャリアステージ111に対しては、未処理の基板9を収納したキャリアCが、装置外部から、OHT(Overhead Hoist Transfer)等によって搬入されて載置される。未処理の基板9は、キャリアCから1枚ずつ取り出されて装置内で処理され、装置内での処理が終了した処理済みの基板9は、再びキャリアCに収納される。処理済みの基板9を収納したキャリアCは、OHT等によって装置外部に搬出される。このように、キャリアステージ111は、未処理の基板9および処理済みの基板9を集積する基板集積部として機能する。なお、キャリアCの形態としては、基板9を密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)であってもよいし、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや、収納された基板9を外気に曝すOC(Open Cassette)であってもよい。
移載ロボットIRは、基板9を下方から支持することによって、基板9を水平姿勢(基板9の主面が水平な姿勢)で保持するハンド112と、ハンド112を駆動するハンド駆動機構113と、を備える。移載ロボットIRは、キャリアステージ111に載置されたキャリアCから未処理の基板9を取り出して、当該取り出した基板9を、基板受渡位置Pにおいて搬送ロボットCR(後述する)に渡す。また、移載ロボットIRは、基板受渡位置Pにおいて搬送ロボットCRから処理済みの基板9を受け取って、当該受け取った基板9を、キャリアステージ111上に載置されたキャリアCに収納する。
<処理セル120>
処理セル120は、基板9に処理を行うためのセルである。処理セル120は、複数の基板処理装置1と、当該複数の基板処理装置1に対する基板9の搬出入を行う基板搬送装置(搬送ロボットCR)と、を備える。ここでは、複数個(例えば、3個)の基板処理装置1が鉛直方向に積層されて、1個の基板処理装置群10を構成している。そして、複数個(図示の例では、4個)の基板処理装置群10が、搬送ロボットCRを取り囲むようにクラスタ状(房状)に設置される。
複数の基板処理装置1の各々は、内部に処理空間を形成する筐体11を備える。筐体11には、搬送ロボットCRのハンド121を筐体内部に挿入させるための搬出入口12が形成されており、基板処理装置1は、搬送ロボットCRが配置されている空間に、この搬出入口12を対向させるようにして配置される。基板処理装置1の具体的な構成については、後に説明する。
搬送ロボットCRは、基板9を下方から支持することによって、基板9を水平姿勢で保持するハンド121と、ハンド121を駆動するハンド駆動機構122と、を備える。ただし、上述したとおり、搬送ロボットCR(具体的には、搬送ロボットCRの基台)は、複数の基板処理装置群10に取り囲まれる空間の中央に配置される。搬送ロボットCRは、指定された基板処理装置1から処理済みの基板9を取り出して、当該取り出した基板9を、基板受渡位置Pにおいて移載ロボットIRに渡す。また、搬送ロボットCRは、基板受渡位置Pにおいて移載ロボットIRから未処理の基板9を受け取って、当該受け取った基板9を、指定された基板処理装置1に搬送する。
<制御部130>
制御部130は、移載ロボットIR、搬送ロボットCR、および、一群の基板処理装置1の各々を制御する。制御部130のハードウエアとしての構成は、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部130は、例えば、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク、等を備えている。制御部130において、プログラムに記述された手順に従って主制御部としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理システム100の各部を制御する各種の機能部が実現される。もっとも、制御部130において実現される一部あるいは全部の機能部は、専用の論理回路などでハードウエア的に実現されてもよい。
<1−2.動作>
基板処理システム100の全体動作について、引き続き図1を参照しながら説明する。基板処理システム100においては、制御部130が、基板9の搬送手順および処理条件等を記述したレシピにしたがって、基板処理システム100が備える各部を制御することによって、以下に説明する一連の動作が実行される。
未処理の基板9を収容したキャリアCがキャリアステージ111に載置されると、移載ロボットIRが、当該キャリアCから未処理の基板9を取り出す。そして、移載ロボットIRは、未処理の基板9を保持したハンド112を基板受渡位置Pまで移動させて、基板受渡位置Pにおいて、当該未処理の基板9を、搬送ロボットCRに渡す。ハンド121上に未処理の基板9を受け取った搬送ロボットCRは、当該未処理の基板9を、レシピにて指定された基板処理装置1に搬入する。なお、移載ロボットIRと搬送ロボットCRとの間の基板9の受け渡しは、ハンド112,121間で直接に行われてもよいし、基板受渡位置Pに設けられた載置部などを介して行われてもよい。
基板9が搬入された基板処理装置1においては、基板9に対して、定められた処理が実行される。基板処理装置1にて実行される処理の流れについては、後に説明する。
基板処理装置1において基板9に対する処理が終了すると、搬送ロボットCRは、処理済みの基板9を基板処理装置1から取り出す。そして、搬送ロボットCRは、処理済みの基板9を保持したハンド121を基板受渡位置Pまで移動させて、基板受渡位置Pにおいて、当該処理済みの基板9を、移載ロボットIRに渡す。ハンド112上に処理済みの基板9を受け取った移載ロボットIRは、当該処理済みの基板9を、キャリアCに格納する。
基板処理システム100においては、搬送ロボットCRおよび移載ロボットIRが、レシピにしたがって、上述した搬送動作を反復して行うとともに、各基板処理装置1が、レシピにしたがって、基板9に対する処理を実行する。これによって、基板9に対する処理が次々と行われていくことになる。
<2.基板9>
次に、基板処理装置1にて処理対象とされる基板9について、図2を参照しながら説明する。図2は、基板9の周縁部付近を示す断面図である。
基板処理装置1にて処理対象とされる基板9は、例えば、シリコン(Si)により構成される中心層901、中心層901の外側に成膜された下層膜902、および、下層膜902の外側に成膜された上層膜903、の三層構造を備える。下層膜902は、例えば、熱酸化膜(Th−SiO2)、あるいは、絶縁膜(例えば、Hf(ハフニューム)膜、または、酸化Hf膜、等)である。また、上層膜903は、例えば、バリアメタル膜(例えば、TiN膜、TaN膜、等)、あるいは、メタル膜(例えば、Al膜、W膜、NiSi膜、Cu膜、等)である。もっとも、基板処理装置1で処理対象とされる基板9は、例えば、中心層901と下層膜902との二層構造を備えるものであってもよいし、4層以上の構造を備えるものであってもよい。
以下において、基板9の主面のうちのデバイスパターンが形成される方の面を「表面91」という。また、表面91の反対側の面を「裏面92」という。さらに、表面91における、デバイスパターンが形成される領域を「デバイス領域90」という。また、表面91における、デバイス領域90よりも外側の周縁領域(具体的には、例えば、基板9の端面93から微小幅d(例えば、d=0.5mm〜3.0mm(ミリメートル))の環状の領域)を「表面周縁部911」という。また、裏面92における、端面93から微小幅dの環状の領域を「裏面周縁部921」という。
基板処理装置1は、上述されたような多層構造を備える基板9を処理対象として、その表面周縁部911および裏面92に対する処理(例えば、表面周縁部911および裏面92に形成されている薄膜を除去する処理)を行うことができる。
<3.基板処理装置1の構成>
基板処理装置1の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。図3は、基板処理装置1の概略斜視図であり、ガード部材60を構成する半円弧部材61,62、カップ31、および、周縁部用吐出ヘッド51が、各々の待避位置に配置されている状態が示されている。図4も、基板処理装置1の概略斜視図であるが、ここでは、ガード部材60、カップ31、および、周縁部用吐出ヘッド51が、各々の処理位置に配置されている状態が示されている。図5は、基板処理装置1の構成を説明するための模式図である。
なお、以下の説明において、「処理液」には、薬液処理に用いられる「薬液」と、薬液をすすぎ流すリンス処理に用いられる「リンス液」と、が含まれる。
基板処理装置1は、スピンチャック2、飛散防止部3、表面保護部4、周縁処理部5、液跳ね抑制部6、加熱処理部7、および、裏面処理部8を、備える。これら各部2〜8は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130からの指示に応じて動作する。
<スピンチャック2>
スピンチャック2は、基板9を、その表面91を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持する基板保持部であって、当該基板9を、その表面91の中心を通る鉛直な回転軸のまわりで回転させる。
スピンチャック2は、基板9より若干大きい円板状の部材であるスピンベース21を備える。スピンベース21の下面中央部には、回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置される。また、回転軸部22には、これをその軸線まわりに回転駆動する回転駆動部(例えば、モータ)23が接続される。回転軸部22および回転駆動部23は、筒状のケーシング24内に収容されている。また、スピンベース21の上面の周縁部付近には、適当な間隔をおいて複数個(例えば6個)の保持部材25が設けられている。保持部材25は、基板9の端面93と当接して基板9の水平方向の位置決めを行うとともに、スピンベース21の上面より僅かに高い位置で(すなわち、スピンベース21の上面から定められた間隔を隔てて)、基板9を略水平姿勢で保持する。
この構成において、保持部材25がスピンベース21の上方で基板9を保持した状態で、回転駆動部23が回転軸部22を回転すると、スピンベース21が鉛直方向に沿った軸心周りで回転され、これによって、スピンベース21上に保持された基板9が、その面内の中心を通る鉛直な回転軸のまわりで、回転される。
ただし、保持部材25および回転駆動部23は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、スピンベース21上に基板9を保持するタイミング、保持された基板9を開放するタイミング、および、スピンベース21の回転態様(具体的には、回転開始タイミング、回転終了タイミング、回転数(すなわち、回転速度)、等)は、制御部130によって制御される。
<飛散防止部3>
飛散防止部3は、スピンベース21に保持されて回転される基板9から飛散する処理液等を受け止める。
飛散防止部3は、カップ31を備える。カップ31は、上端が開放された筒形状の部材であり、スピンチャック2を取り囲むように設けられる。この実施の形態では、カップ31は、例えば、内部材311、中部材312、および、外部材313の3個の部材を含んで構成されている。
内部材311は、上端が開放された筒形状の部材であり、円環状の底部311aと、底部311aの内側縁部から上方に延びる円筒状の内壁部311bと、底部311aの外側縁部から上方に延びる円筒状の外壁部311cと、内壁部311bと外壁部311cとの間に立設された円筒状の案内壁311dと、を備える。案内壁311dは、底部311aから上方に延び、上端部付近は、内側上方に向かって湾曲している。内壁部311bの少なくとも先端付近は、スピンチャック2のケーシング24に設けられた鍔状部材241の内側空間に収容される。
底部311aには、内壁部311bと案内壁311dとの間の空間と連通する排液溝(図示省略)が形成される。この排液溝は、工場の排液ラインと接続される。また、この排液溝には、溝内を強制的に排気して、内壁部311bと案内壁311dとの間の空間を負圧状態とする排気液機構が接続されている。内壁部311bと案内壁311dとの間の空間は、基板9の処理に使用された処理液を集めて排液するための空間であり、この空間に集められた処理液は、排液溝から排液される。
また、底部311aには、案内壁311dと外壁部311cとの間の空間と連通する第1の回収溝(図示省略)が形成される。第1の回収溝は、第1の回収タンクと接続される。また、この第1の回収溝には、溝内を強制的に排気して、案内壁311dと外壁部311cとの間の空間を負圧状態とする排気液機構が接続されている。案内壁311dと外壁部311cとの間の空間は、基板9の処理に使用された処理液を集めて回収するための空間であり、この空間に集められた処理液は、第1の回収溝を介して、第1の回収タンクに回収される。
中部材312は、上端が開放された筒形状の部材であり、内部材311の案内壁311dの外側に設けられている。中部材312の上部は内側上方に向かって湾曲しており、その上端縁部は案内壁311dの上端縁部に沿って折曲されている。
中部材312の下部には、内周面に沿って下方に延びる内周壁部312aと、外周面に沿って下方に延びる外周壁部312bとが形成される。内周壁部312aは、内部材311と中部材312とが近接する状態(図5に示される状態)において、内部材311の案内壁311dと外壁部311cとの間に収容される。また、外周壁部312bの下端は、円環状の底部312cの内側縁部に着設される。底部312cの外側縁部からは、上方に延びる円筒状の外壁部312dが立設される。
底部312cには、外周壁部312bと外壁部312dとの間の空間と連通する第2の回収溝(図示省略)が形成される。第2の回収溝は、第2の回収タンクと接続される。また、この第2の回収溝には、溝内を強制的に排気して、外周壁部312bと外壁部312dとの間の空間を負圧状態とする排気液機構が接続されている。外周壁部312bと外壁部312dとの間の空間は、基板9の処理に使用された処理液を集めて回収するための空間であり、この空間に集められた処理液は、第2の回収溝を介して、第2の回収タンクに回収される。
外部材313は、上端が開放された筒形状の部材であり、中部材312の外側に設けられている。外部材313の上部は内側上方に向かって湾曲しており、その上端縁部301は、中部材312の上端縁部および内部材311の上端縁部より僅かに内方で下方に折曲されている。内部材311,中部材312、および、外部材313が近接する状態(図5に示される状態)において、中部材312の上端縁部および内部材311の上端縁部が、外部材313の折曲された部分によって、覆われる。
外部材313の下部には、内周面に沿って下方に延びるように内周壁部313aが形成される。内周壁部313aは、中部材312と外部材313とが近接する状態(図5に示される状態)において、中部材312の外周壁部312bと外壁部312dとの間に収容される。
カップ31には、これを昇降移動させるカップ駆動機構32が配設されている。カップ駆動機構32は、例えば、ステッピングモータにより構成される。この実施の形態では、カップ駆動機構32は、カップ31が備える3個の部材311,312,313を、独立して昇降させる。
内部材311、中部材312、および、外部材313の各々は、カップ駆動機構32の駆動を受けて、上方位置と下方位置との間で移動される。ここで、各部材311,312,313の上方位置は、当該部材311,312,313の上端縁部が、スピンベース21上に保持された基板9の側方に配置される位置である。一方、各部材311,312,313の下方位置は、当該部材311,312,313の上端縁部が、スピンベース21の上面よりも下方に配置される位置である。ただし、カップ駆動機構32は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、カップ31の位置(具体的には、内部材311、中部材312、および、外部材313各々の位置)は、制御部130によって制御される。
外部材313が下方位置に配置されている状態(すなわち、内部材311、中部材312、および、外部材313の全てが、下方位置に配置されている状態)を指して、以下「カップ31が待避位置にある」という。スピンベース21上に基板9が保持されていない間は、カップ31は、待避位置に配置される。つまり、スピンベース21上に基板9が保持されていない間は、カップ31は、その上端縁部(すなわち、外部材313の上端縁部)301がスピンベース21の上面よりも下方にくるような位置に配置される。
一方、外部材313が上方位置に配置されている状態を指して、以下「カップ31が処理位置にある」という。処理位置にあるカップ31の上端縁部(すなわち、外部材313の上端縁部301)は、スピンベース21上に保持された基板9の側方に配置されることになる。ただし、「カップ31が処理位置にある」状態には、以下の3つの状態が含まれる。第1の状態は、内部材311、中部材312、および、外部材313の全てが、上方位置に配置された状態である(図5に示される状態)。この状態では、スピンチャック2に保持されている基板9から飛散した処理液は、内部材311の内壁部311bと案内壁311dとの間の空間に集められて、排液溝から排液される。第2の状態は、内部材311が下方位置に配置されるとともに、中部材312および外部材313が上方位置に配置された状態である。この状態では、スピンチャック2に保持されている基板9から飛散した処理液は、内部材311の案内壁311dと外壁部311cとの間の空間に集められて、第1の回収タンクに回収される。第3の状態は、内部材311および中部材312が下方位置に配置されるとともに、外部材313が上方位置に配置された状態である。この状態では、スピンチャック2に保持されている基板9から飛散した処理液は、中部材312の外周壁部312bと外壁部312dとの間の空間に集められて、第2の回収タンクに回収される。
<表面保護部4>
表面保護部4は、スピンベース21上に保持された基板9の表面91の中央付近に対して、ガス(カバーガス)を供給して、デバイス領域90を、表面周縁部911等に供給された処理液の雰囲気等から保護する。
表面保護部4は、スピンベース21上に保持される基板9の表面91の中央付近に向けて、ガスを吐出するカバーガスノズル41を備える。カバーガスノズル41は、水平に延在するアーム42の先端部に取り付けられている。また、アーム42の基端部は、ノズル基台43に連結されている。ノズル基台43は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置されており、アーム42の基端部はノズル基台43の上端に連結されている。
ノズル基台43には、カバーガスノズル41を駆動する駆動部44が配設されている。駆動部44は、例えば、ノズル基台43をその軸線まわりに回転させる回転駆動部(例えば、サーボモータ)と、ノズル基台43をその軸線に沿って伸縮させる昇降駆動部(例えば、ステッピングモータ)と、を含んで構成される。駆動部44がノズル基台43を回動させると、カバーガスノズル41が、水平面内の円弧軌道に沿って移動し、駆動部44がノズル基台43を伸縮させると、カバーガスノズル41が、基板9と近接離間する方向に移動する。
カバーガスノズル41は、駆動部44の駆動を受けて、処理位置と待避位置との間で移動される。ここで、カバーガスノズル41の処理位置は、スピンベース21上に保持される基板9の上方の位置であって、表面91の中央付近と対向しつつ、表面91と非接触状態で近接した位置である。一方、カバーガスノズル41の待避位置は、基板9の搬送経路と干渉しない位置であり、例えば、上方から見て、カップ31の上端縁部301よりも外側の位置である。また、駆動部44は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、カバーガスノズル41の位置は、制御部130によって制御される。
カバーガスノズル41には、これにガス(ここでは、例えば、窒素(N2)ガス)を供給する配管系であるカバーガス供給部45が接続されている。カバーガス供給部45は、具体的には、例えば、窒素ガスを供給する供給源である窒素ガス供給源451が、開閉弁453が介挿された配管452を介して、カバーガスノズル41に接続された構成を備えている。この構成において、開閉弁453が開放されると、窒素ガス供給源451から供給される窒素ガスが、カバーガスノズル41から吐出される。なお、カバーガスノズル41に供給されるガスは、窒素ガス以外の気体(例えば、窒素ガス以外の各種の不活性ガス、乾燥空気、等)であってもよい。
カバーガスノズル41が処理位置に配置されている状態において、カバーガス供給部45からカバーガスノズル41にガスが供給されると、カバーガスノズル41から、スピンベース21上に保持される基板9の表面91の中央付近に向けて、ガス(カバーガス)が吐出される。ただし、カバーガス供給部45の開閉弁453は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で開閉される。つまり、カバーガスノズル41からのガスの吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。
<周縁処理部5>
周縁処理部5は、スピンベース21上に保持された基板9の表面周縁部911に対する処理を行う。
<i.全体構成>
周縁処理部5は、スピンベース21上に保持される基板9の表面周縁部911に向けて、流体(ここでは、処理液、および、ガス)を吐出する周縁部用吐出ヘッド51を備える。周縁部用吐出ヘッド51は、水平に延在するアーム52の先端部に取り付けられている。また、アーム52の基端部は、ノズル基台53に連結されている。ノズル基台53は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置されており、アーム52の基端部はノズル基台53の上端に連結されている。
ノズル基台53には、周縁部用吐出ヘッド51を駆動する駆動部54が配設されている。駆動部54は、例えば、ノズル基台53をその軸線まわりに回転させる回転駆動部(例えば、サーボモータ)と、ノズル基台53をその軸線に沿って伸縮させる昇降駆動部(例えば、ステッピングモータ)と、を含んで構成される。駆動部54がノズル基台53を回動させると、周縁部用吐出ヘッド51が、水平面内の円弧軌道に沿って移動し、駆動部54がノズル基台53を伸縮させると、周縁部用吐出ヘッド51が、基板9と近接離間する方向に移動する。
周縁部用吐出ヘッド51は、駆動部54の駆動を受けて、処理位置と待避位置との間で移動される。ここで、周縁部用吐出ヘッド51の処理位置は、スピンベース21上に保持される基板9の上方であって、表面周縁部911と対向しつつ、表面周縁部911と非接触状態で近接した位置である(図4に示される位置)。ただし、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分が、後述するガード部材60の内周壁601に形成された切り欠き605内に収容された状態となる。一方、周縁部用吐出ヘッド51の待避位置は、基板9の搬送経路と干渉しない位置であり、例えば、上方から見て、カップ31の上端縁部301よりも外側の位置である(図3に示される位置)。また、駆動部54は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、周縁部用吐出ヘッド51の位置は、制御部130によって制御される。
周縁部用吐出ヘッド51には、これに流体(具体的には、処理液およびガス)を供給する配管系である流体供給部55が接続されている。流体供給部55は、具体的には、例えば、酸系薬液供給源551a、アルカリ系薬液供給源551b、リンス液供給源551c、窒素ガス供給源551d、複数の配管552a,552b,552c,552d、および、複数の開閉弁553a,553b,553c,553dを、組み合わせて構成されている。
酸系薬液供給源551aは、酸性の薬液を供給する供給源である。ここでは、酸系薬液供給源551aは、例えば、希釈したフッ化水素酸(希フッ酸)(以下、「DHF」と示す)と、塩酸過酸化水素水(すなわち、塩酸(HCl)と過酸化水素(H2O2)と純水(DIW:脱イオン水)とが、定められた比率で混合された薬液であり、以下、「SC−2」と示す)とを、選択的に供給できる。酸系薬液供給源551aは、開閉弁553aが介挿された配管552aを介して、周縁部用吐出ヘッド51(より具体的には、後述する「第1薬液ノズル50a」)に接続されている。したがって、開閉弁553aが開放されると、酸系薬液供給源551aから供給される酸性の薬液(DHF、あるいは、SC−2)が、第1薬液ノズル50aから吐出される。もっとも、酸系薬液供給源551aは、必ずしもDHFおよびSC−2を選択的に供給するものに限らない。例えば、酸系薬液供給源551aは、DHF、SC−2、BDHF(バッファードフッ酸)、HF(フッ酸)、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、およびこれらの混合溶液、等のうちの少なくとも1つを供給するものであってもよい。
アルカリ系薬液供給源551bは、アルカリ性の薬液を供給する供給源である。ここでは、アルカリ系薬液供給源551bは、例えば、アンモニア過酸化水素水(すなわち、水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)と純水とが、定められた比率で混合された薬液であり、以下、「SC−1」と示す)を供給できる。アルカリ系薬液供給源551bは、開閉弁553bが介挿された配管552bを介して、周縁部用吐出ヘッド51(より具体的には、後述する「第2薬液ノズル50b」)に接続されている。したがって、開閉弁553bが開放されると、アルカリ系薬液供給源551bから供給されるアルカリ性の薬液(SC−1)が、第2薬液ノズル50bから吐出される。なお、アルカリ系薬液供給源551bから供給されるSC−1は、例えば、60℃〜80℃に温調されていることも好ましい。もっとも、アルカリ系薬液供給源551bは、SC−1以外の薬液(例えば、アンモニアの水溶液等)を供給するものであってもよい。
リンス液供給源551cは、リンス液を供給する供給源である。ここでは、リンス液供給源551cは、例えば、二酸化炭素(CO2)が溶融した純水(炭酸水)を、リンス液として供給する。リンス液供給源551cは、開閉弁553cが介挿された配管552cを介して、周縁部用吐出ヘッド51(より具体的には、後述する「リンス液ノズル50c」)に接続されている。したがって、開閉弁553cが開放されると、リンス液供給源551cから供給されるリンス液が、リンス液ノズル50cから吐出される。なお、リンス液として、純水、温水、オゾン水、磁気水、還元水(水素水)、各種の有機溶剤(イオン水、IPA(イソプロピルアルコール)、機能水、等が用いられてもよい。
窒素ガス供給源551dは、ガス(ここでは、例えば、窒素(N2)ガス)を供給する供給源である。窒素ガス供給源551dは、開閉弁553dが介挿された配管552dを介して、周縁部用吐出ヘッド51(より具体的には、後述する「ガスノズル50d」)に接続されている。したがって、開閉弁553dが開放されると、窒素ガス供給源551dから供給される窒素ガスが、ガスノズル50dから吐出される。もっとも、窒素ガス供給源551dは、窒素ガス以外のガス(例えば、窒素ガス以外の各種の不活性ガス、乾燥空気、等)を供給するものであってもよい。
周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置されている状態において、流体供給部55から周縁部用吐出ヘッド51に処理液(酸性の薬液(DHF、あるいは、SC−2)、アルカリ性の薬液(SC−1)、あるいは、リンス液)が供給されると、周縁部用吐出ヘッド51から、スピンベース21上に保持された基板9の表面周縁部911に向けて、当該処理液が吐出される。また、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置されている状態において、流体供給部55から周縁部用吐出ヘッド51にガスが供給されると、周縁部用吐出ヘッド51から、スピンベース21上に保持された基板9の表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される。また、流体供給部55が備える開閉弁553a,553b,553c,553dの各々は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で開閉される。つまり、周縁部用吐出ヘッド51からの流体の吐出態様(具体的には、吐出される流体の種類、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。
<ii.周縁部用吐出ヘッド51>
ここで、周縁部用吐出ヘッド51について図6を参照しながらより具体的に説明する。図6は、周縁部用吐出ヘッド51の斜視図である。なお、説明の便宜上、図6においては、ガード部材60およびカップ31は、図示省略されている。
周縁部用吐出ヘッド51は、複数個(ここでは、4個)のノズル50a〜50dと、当該複数個のノズル50a〜50dを一体的に支持する支持部500とを備える。
周縁部用吐出ヘッド51が備える一群のノズル50a〜50dには、表面周縁部911に向けて処理液を吐出する1以上(ここでは、3個)のノズル(以下「処理液ノズル」ともいう)50a,50b,50cと、表面周縁部911に向けてガス(ここでは、窒素ガス)を吐出するノズル(以下「ガスノズル」ともいう)50dと、が含まれる。特に、この周縁部用吐出ヘッド51は、処理液ノズル50a,50b,50cとして、薬液を吐出する2個のノズル(以下「薬液ノズル」ともいう)50a,50bと、リンス液を吐出するノズル(以下「リンス液ノズル」ともいう)50cと、を備える。特に、この周縁部用吐出ヘッド51は、薬液ノズル50a,50bとして、酸性の薬液を吐出するノズル(以下「第1薬液ノズル」ともいう)50aと、アルカリ性の薬液を吐出するノズル(以下「第2薬液ノズル」ともいう)50bと、を備える。
一群のノズル50a〜50dを一体的に支持する支持部500は、上述したアーム52に固定される。支持部500は、上方から見て、表面周縁部911に沿う弧状に湾曲した部材であり、一群のノズル50a〜50dは、弧状に湾曲した支持部500の延在方向に沿って、配列されている。したがって、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、一群のノズル50a〜50dが、基板9の表面周縁部911に沿って並んだ状態となる。このとき、基板9の回転方向AR9に沿って、上流側から、ガスノズル50d、第1薬液ノズル50a、リンス液ノズル50c、第2薬液ノズル50bの順で並べられている。
つまり、この周縁部用吐出ヘッド51では、ガスノズル50dが、処理液ノズル50a,50b,50cよりも、基板9の回転方向AR9の上流側に配置される。したがって、回転される基板9の表面周縁部911内の各位置は、まず、ガスノズル50dの下方を通過した後に、処理液ノズル50a,50b,50cの下方を通過することになる。この構成によると、回転される基板9の表面周縁部911内の各位置に、処理液ノズル50a,50b,50cから新たな処理液が供給されるのに先立って、当該位置にガスノズル50dからガスを供給する(すなわち、ガスを吹き付ける)ことができる。
基板9の表面状態等によっては、周縁部用吐出ヘッド51の下方に到達した表面周縁部911内の各位置に、一周前に処理液ノズル50a,50b,50cから供給されて、基板9が一周回転される間に振り切られなかった古い処理液が、付着している場合がある。そのような場合においても、この古い処理液を、ガスノズル50dから吐出されるガスで除去した後に、処理液ノズル50a,50b,50cから新たな処理液を供給することができる。この構成によると、表面周縁部911内の各位置に新たに供給された処理液が古い処理液と衝突して跳ねる、といった事態が生じにくい。これによって、処理液がデバイス領域90に進入することが抑制される。また、この構成によると、常に新鮮な処理液を基板9に作用させることができ、これによって処理効率を高めることができる。また、仮に、古い薬液が残存しているところに、新たな処理液がさらに供給されてしまうと、そこに保持される処理液の量が一時的に多くなるところ、古い薬液をガスで除去した後に新たな処理液を供給する構成とすれば、表面周縁部911内の各位置に一時的に多量の処理液が保持されるといった状況が生じにくい。その結果、処理液を作用させる領域の寸法を安定させることができる。例えば、エッチング用の薬液を作用させる領域の寸法、すなわち、端面93から基板9の内側に向かってエッチング除去される幅(以下、単に「エッチング幅」という)を安定させて、エッチング幅の制御精度を高めることができる。
また、別の見方をすると、この周縁部用吐出ヘッド51では、処理液ノズル50a,50b,50cが、ガスノズル50dよりも、基板9の回転方向AR9の下流側に配置される。したがって、回転される基板9の表面周縁部911内の各位置は、処理液ノズル50a,50b,50cの下方を通過した後、基板9がほぼ一周回転された後に、ガスノズル50dの下方に到達することになる。この構成によると、処理液ノズル50a,50b,50cから表面周縁部911上の各位置に供給された処理液の少なくとも一部が、基板9がほぼ一周回転される間、表面周縁部911上に留まり続けるので、表面周縁部911内の各位置に対して処理液を十分に作用させることができる。
また、周縁部用吐出ヘッド51では、酸性の薬液を吐出する第1薬液ノズル50aと、アルカリ性の薬液を吐出する第2薬液ノズル50bとの間に、リンス液を吐出するリンス液ノズル50cが配置される。この構成によると、例えば、一方の薬液ノズルから薬液を吐出している際に発生する雰囲気が、他方の薬液ノズル内に残留する薬液と反応するといった事態の発生を抑制できる。具体的には、例えば、第1薬液ノズル50aが酸性の薬液を吐出している際に発生する雰囲気が、第2薬液ノズル50b内に残留するアルカリ性の薬液と反応する、あるいは、第2薬液ノズル50bがアルカリ性の薬液を吐出している際に発生する雰囲気が、第1薬液ノズル50a内に残留する酸性の薬液と反応する、といった事態の発生を抑制できる。
<iii.ノズル50>
次に、周縁部用吐出ヘッド51が備える一群のノズル50a〜50dの各々の構成について、図7を参照しながら説明する。一群のノズル50a〜50dの各々は、ほぼ同様の構成を備えており、以下、これらのノズル50a〜50dを区別しない場合は、単に「ノズル50」ともいう。図7は、ノズル50の先端付近の構成を模式的に示す側断面図である。
ノズル50は、下端が細くなった長尺棒状の外形を呈するノズル本体部501を備える。ノズル本体部501は、その軸方向が鉛直方向に沿うとともに、その下面(以下、「吐出面」ともいう)502が水平姿勢となるように、支持部500に支持されている。したがって、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、吐出面502が、スピンベース21上に保持された基板9の表面91と平行な姿勢で、表面周縁部911と非接触状態で近接する。ただし、この状態において、吐出面502と表面周縁部911との離間距離mは、十分小さいもの(例えば、m=1mm程度)とされる。
ノズル本体部501の内部には、導入流路部503と、その下端と連通した吐出流路部504とが形成される。導入流路部503の上端には、上述した配管552a,552b,552c,552dのいずれかが接続されている。また、吐出流路部504の下端は、吐出面502に開口した吐出口505と、連通する。吐出口505は、例えば円形の貫通孔であり、その直径は、図2における基板9の端面93からの微小幅dよりも小さく、例えば、0.6mmである。したがって、配管から供給された流体は、まずは導入流路部503に保持されて、吐出流路部504に流入し、吐出口505から吐出される。
吐出流路部504は、途中で折れ曲がった形状となっている。具体的には、吐出流路部504は、鉛直流路部分5041と、これと連なる傾斜流路部分5042とを備える。鉛直流路部分5041は、ノズル本体部501の軸方向と平行に延在して、下端において傾斜流路部分5042と連通する。傾斜流路部分5042は、下方に行くにつれて基板9の内側(基板9の中心側)から外側(端面93側)に向かう斜め下向きに延在して、下端において吐出口505と連通する。
このノズル50においては、斜めに延在する傾斜流路部分5042を介して、吐出口505から流体が吐出されるため、ノズル50から基板9の表面周縁部911に向けて吐出された流体を、表面周縁部911において、基板9の外側に向かって流すことができる。したがって、例えば、ノズル50から表面周縁部911に向けて処理液が吐出される場合に、当該処理液がデバイス領域90に流入することを抑制できるとともに、処理液が作用する領域の寸法(例えば、エッチング用の薬液が作用する領域の寸法、すなわち、エッチング幅)を安定させて、その制御精度を高めることができる。また、例えば、ノズル50から表面周縁部911に向けてガスが吐出される場合に、表面周縁部911に、基板9の外側に向かう気流を形成することができる。この気流によって、表面周縁部911上の処理液や処理液のミストを、基板9の外側に吹き飛ばすことができる。
特に、このノズル50は、ノズル本体部501自体が傾斜姿勢で支持部500に支持されるのではなく、ノズル本体部501の内部に形成される吐出流路部504の一部分である傾斜流路部分5042が、傾斜している。仮に、ノズル本体部の内部に、その軸方向に沿って真っ直ぐ延在する流路を形成しつつ、ノズル本体部自体を傾斜姿勢としたとすると、吐出面が水平面に対して傾斜した姿勢となる。この場合、吐出面の最下端の付近に液溜まりが生じやすく、この液溜まりが、基板9上に滴下(ぼた落ち)してしまう虞がある。このような処理液のぼた落ちは、基板9上の、本来、処理液が供給されるべき位置よりも内側(基板9の中心側)の位置に生じてしまうため、ガスノズル50dから吐出されるガスでも除去することが難しい。これに対し、この実施の形態のように、ノズル本体部501ではなくその内部に形成される吐出流路部504の一部分を傾斜させる構成によると、吐出面502を水平姿勢におくことができるので、このような処理液のぼた落ちが生じにくい。
なお、処理液が作用する領域の幅(例えば、エッチング用の薬液が作用するエッチング幅)の制御精度を高めるためには、傾斜流路部分5042の延在方向が水平面となす角度(傾斜角度)θは、45度以上が好ましく、60度以上がさらに好ましい。
<iv.目標吐出位置>
いま、周縁部用吐出ヘッド51が備える一群のノズル50a〜50dの各々から流体が吐出されて基板9上に到達する到達位置を、当該ノズルの「目標吐出位置」とよぶことにする。以下において、一群のノズル50a〜50dの各々の目標吐出位置Qa〜Qdについて、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、各ノズル50a〜50dの目標吐出位置の一例を模式的に示す図である。図9、図10は、周縁部用吐出ヘッド51を、基板9の回転方向AR9の下流側から見た図である。ただし、図9では、周縁部用吐出ヘッド51から薬液とガスとが吐出されている状態が示されており、図10では、周縁部用吐出ヘッド51からリンス液とガスとが吐出されている状態が示されている。
周縁部用吐出ヘッド51が備える一群のノズル50a〜50dの各々の目標吐出位置Qa〜Qdは、基板9の径方向に互いにずれた位置とされる。すなわち、ガスノズル50dの目標吐出位置Qdは、処理液ノズル50a,50b,50cの目標吐出位置Qa,Qb,Qcよりも、基板9の径方向内側(中心側)とされる。さらに、リンス液ノズル50cの目標吐出位置Qcは、薬液ノズル50a,50bの目標吐出位置Qa,Qbよりも、基板9の径方向内側とされる。さらに、第1薬液ノズル50aの目標吐出位置Qaと、第2薬液ノズル50bの目標吐出位置Qbとは、径方向について同じ位置とされる。ただし、「径方向について同じ位置」とは、基板9の端面93からの離間距離が互いに等しい位置(すなわち、基板9の中心からの離間距離が等しい位置)を指す。つまり、ここでは、基板9の端面93から第1薬液ノズル50aの目標吐出位置Qaまでの離間距離と、基板9の端面93から第2薬液ノズル50bの目標吐出位置Qbまでの離間距離とが、等しい。
一例として、第1薬液ノズル50aの目標吐出位置Qaおよび第2薬液ノズル50bの目標吐出位置Qbは、いずれも、基板9の端面93から1.0mmだけ内側の位置である。また、ガスノズル50dの目標吐出位置Qdは、薬液ノズル50a,50bの目標吐出位置Qa,Qbよりもさらに0.5mmだけ基板9の内側の位置である。また、リンス液ノズル50cの目標吐出位置Qcは、基板9の端面93から1.0mm〜0.5mmの範囲内の位置である。
各ノズル50a,50b,50c,50dは、各々の目標吐出位置Qa,Qb,Qc,Qdに到達するように流体を吐出できるように、基板9の径方向に互いにずれた位置に配置されて、支持部500に支持される。すなわち、ガスノズル50dは、処理液ノズル50a,50b,50cよりも、基板9の径方向内側に配置されて、支持部500に支持される。また、リンス液ノズル50cは、薬液ノズル50a,50bよりも、基板9の径方向内側に配置されて、支持部500に支持される。また、第1薬液ノズル50aと、第2薬液ノズル50bとは、径方向について同じ位置に配置されて、支持部500に支持される。なお、各ノズル50a,50b,50c,50dの配置における互いのずれ量は、前述した傾斜流路部分5042の角度に応じて、各々の目標吐出位置Qa,Qb,Qc,Qdに流体が到達するように設定されている。
この周縁部用吐出ヘッド51では、ガスノズル50dの目標吐出位置Qdが、処理液ノズル50a,50b,50cの目標吐出位置Qa,Qb,Qcよりも、基板9の径方向内側とされるので、基板9の表面周縁部911において、処理液が吐出される位置よりも内側の位置に、ガスが供給されることになる。この構成によると、表面周縁部911に供給された処理液を、基板9の内側から外側に向けて、ガスによって吹き飛ばすことができる。これによって、表面周縁部911上の処理液がデバイス領域90に進入することを抑制できるとともに、処理液が作用する領域の寸法(例えば、エッチング用の薬液が作用する領域の寸法、すなわち、エッチング幅)を安定させて、その制御精度を高めることができる。
また、この周縁部用吐出ヘッド51では、リンス液ノズル50cの目標吐出位置Qcが、薬液ノズル50a,50bの目標吐出位置Qa,Qbよりも、基板9の径方向内側とされるので、基板9の表面周縁部911において、薬液が吐出される位置よりも内側の位置に、リンス液が吐出されることになる。この構成によると、表面周縁部911に供給された薬液を、基板9の内側から外側に向けて、リンス液によって押し流すことができる。これによって、デバイス領域90への薬液の進入を十分に抑制しつつ、薬液残渣を残すことなく薬液を十分にすすぎ流すことができる。
また、この周縁部用吐出ヘッド51では、第1薬液ノズル50aの目標吐出位置Qaと第2薬液ノズル50bの目標吐出位置Qbとが、基板9の径方向について同じ位置とされるので、基板9の表面周縁部911において、酸性の薬液が吐出される位置にアルカリ性の薬液を吐出できる。この構成によると、各薬液を、同じ領域に正確に作用させることができる。
<液跳ね抑制部6>
再び図3〜図5を参照する。基板処理装置1においては、スピンベース21上に保持された基板9の表面周縁部911に向けて、周縁部用吐出ヘッド51から処理液が吐出されるときに、表面周縁部911に供給された処理液の一部が基板9から飛散し、当該飛散した処理液の一部が、外部に配置された部材で跳ね返されるなどして、基板9に再付着する虞がある。液跳ね抑制部6は、基板9から飛散した処理液が、基板9に再付着することを抑制するための部材である。
<i.ガード部材60>
液跳ね抑制部6は、ガード部材60を備える。ガード部材60について、図3〜図5に加え、図11〜図13を参照しながら詳細に説明する。図11は、ガード部材60の斜視図である。図12は、カップ31、ガード部材60、および、周縁部用吐出ヘッド51が各々の処理位置に配置された状態を上方から見た平面図である。図13は、図12の矢印Kから見た側断面図である。
ガード部材60は、基板9の表面周縁部911の全周に沿うリング状の部材である。ガード部材60は、スピンベース21上に保持された基板9に対する処理が行われる間、上から見て、当該基板9と同心に配置され、当該基板9の表面周縁部911と非接触状態で近接した位置(処理位置)に配置される。ガード部材60における周方向と直交する断面は、矩形であることが好ましく、特に、正方形であることが好ましい。
ガード部材60の内径は、基板9の外径よりも僅かに小さい寸法とされる。したがって、処理位置に配置されているガード部材60を上方から見ると、ガード部材60の内周壁601は、基板9の端面93よりも内側(基板9の中心側)にあり、ガード部材60の下面602の少なくとも内周部分は、スピンベース21上に保持される基板9の表面周縁部911と対向して配置される。つまり、ガード部材60の内周壁601は、基板9の表面周縁部よりも内側(基板9の中心側)にあり、ガード部材60の下面602は基板9の表面周縁部911と部分的に近接して対向している。このとき、ガード部材60の下面602と、スピンベース21上に保持された基板9の表面91との離間距離hは、例えば、1mm以上かつ1.5mm以下である。
ガード部材60の外径は、基板9の外径よりも大きく、かつ、カップ31の上端縁部301の内径よりも僅かに小さい寸法とされる。したがって、処理位置に配置されているガード部材60を上方から見ると、ガード部材60の外周壁603は、基板9の端面93よりも外側にあり、かつ、カップ31の上端縁部301と非接触の状態で近接しつつ、上端縁部301の全周に沿って延在する。つまり、処理位置に配置されたカップ31は、スピンベース21上の基板9と、ガード部材60とを一括して取り囲む恰好となる。
上述した周縁部用吐出ヘッド51は、これが処理位置に配置された状態において、ガード部材60の内周壁601の側(すなわち、ガード部材60を挟んで、カップ31に対して反対側)に配置される。つまり、この状態において、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50は、ガード部材60を挟んでカップ31に対して反対側に配置される。ただし、ガード部材60の内周壁601には、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分を収容する切り欠き605が形成されており、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分(具体的には、例えば、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50の少なくとも一部分)が、この切り欠き605に収容された状態となる。これによって、周縁部用吐出ヘッド51が、ガード部材60と干渉することなく、表面周縁部911の上方の処理位置に配置される。ただし、切り欠き605における、下面602と連なる壁面部分6051は、上方から見て、基板9の端面93と面一、あるいは、端面93よりも内側(基板9の中心側)にあることが好ましい。
ガード部材60、周縁部用吐出ヘッド51、および、カップ31が各々の処理位置に配置された状態において、ガード部材60の下面602は、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50の吐出面502と、同じ高さ位置か、吐出面502よりも低い位置に配置されることが好ましい。また、壁面部分6051はノズル50から吐出される流体経路を妨げない位置まで低い位置に配置することができる。また、ガード部材60の下面602は、カップ31の上端縁部301の下面3011と、同じ高さ位置か、下面3011よりも低い位置に配置されることが好ましい。この実施の形態では、ガード部材60の下面602、周縁部用吐出ヘッド51の吐出面502、および、カップ31の上端縁部301の下面3011が、同じ高さ位置とされる。すなわち、3つの面602,502,3011が、同一の水平面上に配置される。
また、ガード部材60、および、カップ31が各々の処理位置に配置された状態において、ガード部材60の上面604は、カップ31の上端縁部301の上面3012と同じ高さに配置されることが好ましい。
<ii.処理液の再付着が抑制される理由>
表面周縁部911に向けて周縁部用吐出ヘッド51から処理液が吐出される間、ガード部材60が処理位置に配置されていることによって、基板9から飛散した処理液が、基板9に再付着することを抑制できる。以下において、その理由を説明する。
カップ31は、スピンベース21の上面よりも下方の待避位置まで移動できるように、その上端縁部301の内径が、スピンベース21の外径よりも大きな寸法とされている。スピンベース21の外径は基板9の外径よりも大きな寸法とされているため、上から見ると、スピンベース21上に保持された基板9の端面93と、カップ31の上端縁部301との間に、リング状の隙間空間が存在する。したがって、基板9の表面周縁部911と対向する処理位置に配置された周縁部用吐出ヘッド51と、カップ31の上端縁部301との間にも、隙間空間Vが存在することになる。この隙間空間Vは、基板9から飛散した処理液のミスト等が浮遊し得る空間であるところ、ここでは、この隙間空間Vの少なくとも一部分が、ガード部材60の一部分によって埋められる。この構成によると、基板9から飛散した処理液のミスト等が浮遊し得る空間が、ガード部材60によって埋められる空間分だけ小さくなり、当該空間が小さくなった分だけ、基板9の付近における処理液の浮遊量が少なくなる。その結果、処理液のミスト等が基板9に再付着する可能性が低減する。すなわち、基板9から飛散した処理液の一部が、基板9に再付着することを抑制できる。
特に、ここでは、ガード部材60の下面602の少なくとも一部分が、表面周縁部911と対向配置されるので、基板9から飛散した処理液が、ガード部材60の下面602に沿って、カップ31内へと導かれる。これによって、当該飛散した処理液が、基板9に再付着することを十分に抑制できる。
特に、ガード部材60の下面602を、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50の吐出面502と、同じ高さ位置か、吐出面502よりも低い位置に配置することによって、基板9から飛散した処理液が、基板9(特に、デバイス領域90)に付着することを特に有効に抑制できることが、発明者達によって確認されている。
また、ガード部材60の下面602を、カップ31の上端縁部301の下面3011と、同じ高さ位置か、当該下面3011よりも低い位置に配置することによっても、基板9から飛散した処理液が、基板9(特に、デバイス領域90)に付着することを特に有効に抑制できることが、発明者達によって確認されている。
さらに、ここでは、ガード部材60が、基板9の表面周縁部911の全周に沿うリング状の部材であるので、基板9から飛散した処理液が基板9に再付着することを、基板9の周方向の全体に亘って抑制できる。
<iii.半円弧部材61,62>
ガード部材60は、互いに別体に構成されている複数の弧状部材(ここでは、一対の半円弧部材61,62)が、その周方向の端面同士が互いに当接し合う状態とされることによって、形成されている。すなわち、一対の半円弧部材61,62の各々は、互いに等しい径の半円弧状の部材であり、弦方向を内側に向けるとともに、周方向の端面を互いに対向させて配置されている。もっとも、ガード部材60は、3個以上の弧状部材が、その周方向の端面同士が互いに当接し合う状態とされることによって、形成されてもよい。
一対の半円弧部材61,62の各々には、各半円弧部材61,62を駆動する半円弧部材駆動部63が配設されている。半円弧部材駆動部63は、これが接続されている半円弧部材61,62を、鉛直軸に沿って昇降移動させる昇降駆動部(例えば、ステッピングモータ)631と、当該半円弧部材61,62を、水平面内において他方の半円弧部材と近接離間する方向に進退移動させる進退駆動部632と、を含んで構成される。
各半円弧部材61,62は、スピンベース21上に基板9が保持されていない間は、他方の半円弧部材から離間して、基板9の搬出入経路の外側の位置(待避位置)に配置される。各半円弧部材61,62の待避位置は、具体的には、スピンベース21の上面よりも下側の位置(すなわち、各半円弧部材61,62の上面604が、スピンベース21の上面よりも下側にくる位置)であり、かつ、上方から見てカップ31の上端縁部301よりも外側の位置である(図3に示される位置)。
スピンベース21上に基板9が保持されると、昇降駆動部631が、待避位置に配置されている各半円弧部材61,62を、スピンベース21の上面よりも僅かに上方の位置まで上昇させ、続いて、進退駆動部632が、各半円弧部材61,62を、水平面内において他方の半円弧部材に近づける方向に移動させて、各半円弧部材61,62の周方向の端面同士が互いに当接し合う状態とする。これによって、リング状の部材であるガード部材60が、処理位置に配置された状態となる。
<iv.洗浄処理>
上述したとおり、スピンベース21上に基板9が保持されていない間は、各半円弧部材61,62およびカップ31は、各々の待避位置に配置される。ただし、上述したとおり、各半円弧部材61,62およびカップ31が各々の待避位置に配置された状態において、各半円弧部材61,62およびカップ31は、いずれも、スピンベース21の上面よりも下側に配置され、各半円弧部材61,62は、カップ31の上側において、カップ31の上面と非接触状態で近接した位置に配置される。
ところで、基板処理装置1においては、スピンベース21上に基板9が保持されていない状態において、定期的に(例えば、一定枚数の基板9が処理される毎に)、あるいは、不定期に(例えば、オペレータからの指示に応じて)、スピンベース21の洗浄処理が行われる。
スピンベース21の洗浄処理においては、基板9が保持されていない状態のスピンベース21の上面の中央付近に対して、洗浄用ノズル(図示省略)から洗浄液が供給されつつ、スピンベース21が回転される。そうすると、スピンベース21の回転に伴う遠心力によって、スピンベース21の上面の全体に洗浄液が広がり、これによって、スピンベース21の上面の全体が洗浄される。この洗浄液は、最終的には、スピンベース21の周縁部からスピンベース21の外に振り払われる。ここで、スピンベース21の洗浄処理が行われる間、各半円弧部材61,62およびカップ31の各々は、スピンベース21の上面よりも下の待避位置に配置されているため、スピンベース21の周縁部からスピンベース21の外に振り払われた洗浄液は、カップ31およびその上側にある半円弧部材61,62に到達する。これによって、カップ31、および、半円弧部材61,62が洗浄される。つまり、スピンベース21の洗浄処理において、スピンベース21だけでなく、カップ31、および、半円弧部材61,62も、まとめて洗浄される。
<加熱処理部7>
再び図3〜図5を参照する。加熱処理部7は、スピンベース21上に保持された基板9の裏面92に対して、スチーム(水蒸気)、特に好ましくは、過熱スチーム(過熱水蒸気)を供給して、基板9を加熱する。
加熱処理部7は、スピンベース21上に保持される基板9の裏面92に向けて、スチームを吐出するスチームノズル71を備える。スチームノズル71は、スピンベース21上に配置される。スチームノズル71の上面側には、複数個のスチーム吐出口(図示省略)が形成されている。当該複数個のスチーム吐出口のうちの少なくとも1個のスチーム吐出口は、スピンベース21上に保持される基板9の裏面周縁部921に対して選択的にスチームを供給する位置に形成されている。より好ましくは、裏面周縁部921と対向する位置に形成されている。また、このスチーム吐出口からは、他のスチーム吐出口よりも多量のスチームを吐出できるようになっている。この構成によって、スチームノズル71は、基板9の裏面92のうち、特に裏面周縁部921に向けて、重点的に、スチームを吐出できるようになっている。
スチームノズル71には、これにスチームを供給する配管系であるスチーム供給部72が接続されている。スチーム供給部72は、具体的には、例えば、スチームを供給する供給源であるスチーム供給源721が、開閉弁723が介挿された配管722を介して、スチームノズル71に接続された構成を備えている。この構成において、開閉弁723が開放されると、スチーム供給源721から供給されるスチームが、スチームノズル71から吐出される。
なお、スチームノズル71から吐出されるスチームは、十分高温(例えば、100℃以上かつ130℃以下)に加熱(過熱)された過熱スチーム(過熱水蒸気)であることが好ましい。このためには、例えば、スチーム供給源721を、純水などが加熱されることにより生成されたスチーム(水蒸気)を供給する供給源と、これと接続された配管と、当該配管の経路途中に介挿されたヒータと、を含んで構成すればよい(いずれも図示省略)。この場合、供給源から供給されるスチームは配管等を通過する際の温度低下を考慮して、ヒータは、供給源から供給されるスチームを、例えば、140℃〜160℃程度に加熱(過熱)することが好ましい。もっとも、基板9に供給されたスチーム(過熱スチーム)の一部が、基板9に熱を奪われて冷却され、基板9上で凝縮して水滴となったとしても、当該水滴は、基板9の回転に伴う遠心力によって、基板9の端面93から基板9の外に振り払われることになる。したがって、デバイス領域90に水滴が付着することはない。
スチーム供給部72からスチームノズル71にスチームが供給されると、スチームノズル71から、スピンベース21上に保持される基板9の裏面92に向けて、スチームが吐出され、これによって基板9が加熱されることになる。上述したとおり、この実施の形態に係るスチームノズル71は、裏面周縁部921に向けて重点的にスチームを吐出できるので、裏面周縁部921を特に重点的に加熱することができる。ただし、スチーム供給部72の開閉弁723は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で開閉される。つまり、スチームノズル71からのスチームの吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。
<裏面処理部8>
裏面処理部8は、スピンベース21上に保持された基板9の裏面92に対する処理を行う。具体的には、裏面処理部8は、スピンベース21上に保持された基板9の裏面92に処理液を供給する。
裏面処理部8は、スピンチャック2の回転軸部22の中空部に貫通して配置された供給管81を備える。供給管81の先端は、スピンベース21の上面に開口しており、この開口が、裏面側吐出口82を形成する。
供給管81には、これに処理液を供給する配管系である処理液供給部83が接続されている。処理液供給部83は、具体的には、SC−1供給源831a、DHF供給源831b、SC−2供給源831c、リンス液供給源831d、複数の配管832a,832b,832c,832d、および、複数の開閉弁833a,833b,833c,833dを、組み合わせて構成されている。
SC−1供給源831aは、SC−1を供給する供給源である。SC−1供給源831aは、開閉弁833aが介挿された配管832aを介して、供給管81に接続されている。したがって、開閉弁833aが開放されると、SC−1供給源831aから供給されるSC−1が、裏面側吐出口82から吐出される。
DHF供給源831bは、DHFを供給する供給源である。DHF供給源831bは、開閉弁833bが介挿された配管832bを介して、供給管81に接続されている。したがって、開閉弁833bが開放されると、DHF供給源831bから供給されるDHFが、裏面側吐出口82から吐出される。
SC−2供給源831cは、SC−2を供給する供給源である。SC−2供給源831cは、開閉弁833cが介挿された配管832cを介して、供給管81に接続されている。したがって、開閉弁833cが開放されると、SC−2供給源831cから供給されるSC−2が、裏面側吐出口82から吐出される。
リンス液供給源831dは、リンス液を供給する供給源である。ここでは、リンス液供給源831dは、例えば、二酸化炭素(CO2)が溶融した純水(炭酸水)を、リンス液として供給する。リンス液供給源831dは、開閉弁833dが介挿された配管832dを介して、供給管81に接続されている。したがって、開閉弁833dが開放されると、リンス液供給源831dから供給されるリンス液が、裏面側吐出口82から吐出される。なお、リンス液として、純水、温水、オゾン水、磁気水、還元水(水素水)、各種の有機溶剤(イオン水、IPA(イソプロピルアルコール)、機能水、などが用いられてもよい。
処理液供給部83から供給管81に処理液(SC−1、DHF、SC−2、あるいは、リンス液)が供給されると、裏面側吐出口82から、スピンベース21上に保持された基板9の裏面92の中央付近に向けて、当該処理液が吐出されることになる。ただし、処理液供給部83が備える開閉弁833a,833b,833c,833dの各々は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で開閉される。つまり、裏面側吐出口82からの処理液の吐出態様(具体的には、吐出される処理液の種類、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。
<4.基板処理装置1の動作>
次に、基板処理装置1の動作について説明する。基板処理装置1においては、制御部130の制御下で、以下に説明する一連の処理が実行される。もっとも、以下に説明するのは、基板処理装置1にて実行可能な処理の一例に過ぎない。
基板処理装置1では、例えば、1枚の基板9に対して、前処理(ステップS1)、表面周縁処理(ステップS2)、処理面切り替え処理(ステップS3)、裏面処理(ステップS4)、および、乾燥処理(ステップS5)が、この順で行われる(図14)。以下に、各処理について具体的に説明する。
<4−1.前処理>
前処理(ステップS1)について、図15、図16を参照しながら説明する。図15は、前処理の流れを示す図である。図16は、前処理を説明するための図であり、前処理における各処理工程を実行している状態の基板処理装置1の一部要素が、模式的に示されている。
まず、半円弧部材61,62、カップ31、周縁部用吐出ヘッド51、および、カバーガスノズル41が、各々の待避位置に配置されている状態において、搬送ロボットCRが、基板9を、その表面91が上を向く姿勢で、スピンベース21上に配置する。スピンベース21上に配置された基板9は、一群の保持部材25によって保持される(ステップS101)。これによって、スピンベース21上に、基板9が、略水平姿勢で保持された状態となる。
基板9がスピンベース21上に保持されると、ガード部材60が処理位置まで移動される(ステップS102)。具体的には、半円弧部材駆動部63の昇降駆動部631が、待避位置に配置されている各半円弧部材61,62を、スピンベース21の上面よりも僅かに上方の位置まで上昇させ、続いて、半円弧部材駆動部63の進退駆動部632が、各半円弧部材61,62を、水平面内において他方の半円弧部材に近づける方向に移動させて、各半円弧部材61,62の周方向の端面同士が互いに当接し合う状態とする。これによって、リング状の部材であるガード部材60が、処理位置に配置された状態となる。なお、処理位置に配置されたガード部材60は、スピンベース21が回転開始されても、回転されることなく静止状態のままとされる。
ガード部材60が処理位置に配置されると、続いて、待避位置に配置されているカップ31が上昇されて、処理位置に配置される(ステップS103)。これによって、カップ31が、スピンベース21上に保持された基板9とガード部材60とを一括して取り囲むように配置された状態となる。
カップ31が処理位置に配置されると、続いて、カバーガスノズル41が、待避位置から処理位置に移動される。そして、処理位置に配置されたカバーガスノズル41から、基板9の表面91の中央付近に向けて、カバーガスが吐出開始される(ステップS104)。ここで開始された、基板9の表面91の中央付近へのカバーガスの供給は、当該基板9に対する処理が終了するまで続行される。基板9の表面91の中央付近にカバーガスが供給され続けることによって、当該基板9に対する処理が行われる間、デバイス領域90が、表面周縁部911等に供給された処理液の雰囲気等に曝されることがない。つまり、デバイス領域90が、表面周縁部に供給された処理液の雰囲気等から保護され続ける。
なお、ここでは、カップ31が処理位置に配置された後に、カバーガスノズル41からのカバーガスの吐出を開始している。仮に、カップ31が処理位置まで上昇されるのを待たずに、カバーガスノズル41からのカバーガスの吐出を開始してしまうと、基板9の表面周縁部911付近の気流が乱れて巻き上がりが生じて、基板9にパーティクル等が付着する虞があるところ、カップ31が処理位置に配置された後にカバーガスの吐出を開始する構成とすれば、このような事態の発生を回避できる。
続いて、スピンベース21の回転が開始され、これによって、スピンベース21上に保持される基板9が、水平姿勢で回転開始される(ステップS105)。このときのスピンベース21の回転数(すなわち、基板9の回転数)は、例えば、600rpmである。この回転数は、表面周縁処理が行われる間、表面周縁部911に供給された処理液がデバイス領域90に進入することがなく、また、端部93の側に移動することもないような回転数(つまり、処理を施すべき表面周縁部911内の領域に、処理液が安定的に保持されるような回転数)に、適宜設定される。
続いて、スチームノズル71から、回転される基板9の裏面92に向けて、スチームが吐出される(プレスチーム)(ステップS106)。スチームが吐出開始されてから、所定時間(例えば、5秒)が経過すると、スチームノズル71からのスチームの吐出が停止される。このプレスチームによって、基板9が加熱される。基板9に対する薬液処理に用いられる薬液の多くは、温度が上がるほど反応が促進される薬液であるところ、基板9が、予めこのプレスチームにより加熱されることによって、薬液処理における、薬液と基板9との反応が促進される。その結果、薬液処理の処理時間が短縮されるとともに、薬液の使用量が抑えられる。
<4−2.表面周縁処理>
前処理(ステップS1)が終了すると、続いて、表面周縁処理(ステップS2)が行われる。表面周縁処理について、図17、図18を参照しながら説明する。図17は、表面周縁処理の流れを示す図である。図18は、表面周縁処理を説明するための図であり、表面周縁処理における各処理工程を実行している状態の基板処理装置1の一部要素が、模式的に示されている。
ただし、以下に説明する表面周縁処理が実行されている間、基板9は、一定の回転数(例えば、600rpm)で、回転され続けている。また、上述したとおり、表面周縁処理が実行されている間、基板9の表面91の中央付近に向けて、カバーガスノズル41からカバーガスが供給され続けており、これによって、デバイス領域90が、表面周縁部911に供給される処理液の雰囲気等から保護されている。
<アルカリ処理(SC−1)>
<i.薬液処理>
まず、基板9の表面周縁部911に対して、SC−1による薬液処理が行われる(ステップS201)。具体的には、まず、周縁部用吐出ヘッド51が、待避位置から処理位置に移動される。そして、処理位置に配置された周縁部用吐出ヘッド51の第2薬液ノズル50bから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、SC−1が吐出される。このときのSC−1の吐出流量は、例えば、20(mL/min)以上かつ50(mL/min)以下である。SC−1が吐出開始されてから所定時間(例えば、20秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのSC−1の吐出が停止される。
この薬液処理によって、基板9の表面周縁部911に形成されている薄膜が除去される(エッチング処理)。ただし、この薬液処理が行われている間、スチームノズル71から、基板9の裏面92に向けて、スチームが吐出される。このときのスチームの吐出流量は、例えば、500(mL/min)以上かつ2000(mL/min)以下である。また、吐出されるスチームの温度は、例えば、110℃以上かつ130℃以下である。SC−1は、温度が上がるほど反応が促進される薬液であるところ、SC−1により薬液処理される基板9が、スチームの供給を受けて加熱されることによって、基板9の表面周縁部911とSC−1との反応が促進される(すなわち、エッチングレートが高まる)(所謂、ヒートアシスト)。その結果、SC−1による薬液処理の処理時間が短縮されるとともに、SC−1の使用量が抑えられる。特に、ここでは、基板9の裏面周縁部921が重点的に加熱されるので、表面周縁部911とSC−1との反応を効果的に促進させることができる。
<ii.リンス処理>
続いて、リンス処理が行われる(ステップS202)。具体的には、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のリンス液ノズル50cから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、リンス液が吐出される。リンス液が吐出開始されてから所定時間(例えば、5秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのリンス液の吐出が停止される。このリンス処理によって、表面周縁部911に付着している処理液(ここでは、SC−1)が、すすぎ流される。
<iii.液振り切り処理>
続いて、液振り切り処理が行われる(ステップS203)。液振り切り処理は、表面周縁部911に残存している処理液(ここでは、ステップS202のリンス処理において基板9から振り切られずに、表面周縁部911に残存しているリンス液)を、基板9の端面93側に寄せて、端面93から基板9の外に振り切る処理である。端面93側に寄せられた処理液は、端面93およびその付近の非水平な面領域部分に保持された状態となるところ、非水平な面領域部分に保持された処理液は液切れを起こしにくいため、このような処理液は、まとまって、基板9の外に振り切られる。つまり、表面周縁部911に残存している処理液を、基板9の端面93側に寄せてから基板9の外に振り切ることによって、表面周縁部911に液残りをほとんど生じさせることなく、当該残存している処理液の大部分を基板9から除去することができる。
液振り切り処理は、具体的には、例えば、次のように行われる。まず、周縁部用吐出ヘッド51からの表面周縁部911に向けての流体(処理液およびガス)の吐出が停止された状態で、基板9が定められた時間だけ回転される(液寄せ工程)(ステップS2031)。これによって、表面周縁部911に残存している処理液が、基板9の回転に伴う遠心力を受けて、基板9の端面93に近づく方向に移動して、端面93およびその付近の非水平な面領域部分に保持された状態となる。続いて、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のガスノズル50dから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される(吹き飛ばし工程)(ステップS2032)。このときのガスの吐出流量は、例えば、14(L/min)である。これによって、非水平な面領域部分に保持されている処理液が、ガスの風圧と基板9の回転に伴う遠心力とを受けて、まとまって、基板9の外に振り切られる。周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が開始されてから所定時間(例えば、15秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が停止される。
この液振り切り処理によって、表面周縁部911に残存している処理液(すなわち、ステップS202のリンス処理において基板9から振り切られずに表面周縁部911に残存しているリンス液)の大部分が、基板9から振り切られる。
<第1の酸処理(SC−2)>
<i.薬液処理>
次に、基板9の表面周縁部911に対して、SC−2による薬液処理が行われる(ステップS204)。具体的には、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51の第1薬液ノズル50aから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、SC−2が吐出される。SC−2が吐出開始されてから所定時間(例えば、20秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのSC−2の吐出が停止される。
この薬液処理によって、基板9の表面周縁部911に付着しているメタル成分(例えば、Mo、Co、等)等が除去される(洗浄処理)。ただし、ここでは、この薬液処理に先立って、液振り切り処理が行われている(ステップS203)。このため、SC−2は、リンス液がほとんど残存しない表面周縁部911に向けて、吐出されることになる。仮に、ステップS203の液振り切り処理が行われていないとすると、リンス液が残存している表面周縁部911に向けてSC−2が吐出されることになり、当該吐出されたSC−2が、残存しているリンス液と衝突して跳ねて、デバイス領域90に進入する虞がある。しかしながら、ここでは、液振り切り処理によって、表面周縁部911は、リンス液がほとんど残存しない状態となっているので、このような処理液の衝突に起因するデバイス領域90への処理液の進入が生じにくい。また、仮に、ステップS203の液振り切り処理が行われていないとすると、表面周縁部911上で、残存しているリンス液と、供給されたSC−2とが混じり合う虞があるが、液振り切り処理が行われている場合は、このような事態が生じにくい。その結果、所期の濃度のSC−2を表面周縁部911に適切に作用させることができる。また、アルカリ性の薬液であるSC−1をすすぎ流したリンス液と酸性の薬液であるSC−2との混触も回避できる。
<ii.液振り切り処理>
続いて、液振り切り処理が行われる(ステップS205)。液振り切り処理の具体的な流れは、ステップS203にて説明したとおりである。すなわち、まず、表面周縁部911に向けての流体の吐出が停止された状態で、基板9が定められた時間だけ回転され(液寄せ工程)、その後、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のガスノズル50dから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される(吹き飛ばし工程)。周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が開始されてから所定時間(例えば、15秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が停止される。
この液振り切り処理によって、表面周縁部911に残存している処理液(すなわち、ステップS204の洗浄処理において基板9から振り切られずに、表面周縁部911に残存しているSC−2)の大部分が、基板9から振り切られる。ステップS204の洗浄処理において基板9から振り切られずに表面周縁部911に残存しているSC−2には、洗浄処理で基板9から除去されたメタル成分等の不純物が含まれているところ、洗浄処理の後に液振り切り処理が行われることによって、この不純物が、早い段階で、基板9から振り切られることになる。したがって、SC−2による薬液処理で基板9から除去された不純物が、基板9に再付着するリスクが低減される。
<iii.リンス処理>
続いて、リンス処理が行われる(ステップS206)。リンス処理の具体的な流れは、ステップS202の処理と同様である。すなわち、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のリンス液ノズル50cから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、リンス液が吐出される。リンス液が吐出開始されてから所定時間(例えば、5秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのリンス液の吐出が停止される。
このリンス処理によって、表面周縁部911に付着している処理液(ここでは、SC−2)が、すすぎ流される。ただし、ここでは、このリンス処理に先立って、液振り切り処理が行われている(ステップS205)ため、表面周縁部911は、SC−2がほとんど残存しない状態となっている。したがって、このリンス処理の処理時間は、液振り切り処理が行われない場合よりも短くてすむ。また、このリンス処理においては、リンス液は、SC−2がほとんど残存しない表面周縁部911に向けて、吐出されることになるため、処理液の衝突に起因するデバイス領域90への処理液の進入が生じにくい。
<iv.液振り切り処理>
続いて、液振り切り処理が行われる(ステップS207)。液振り切り処理の具体的な流れは、ステップS203にて説明したとおりである。すなわち、まず、表面周縁部911に向けての流体の吐出が停止された状態で、基板9が定められた時間だけ回転され(液寄せ工程)、その後、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のガスノズル50dから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される(吹き飛ばし工程)。周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が開始されてから所定時間(例えば、15秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が停止される。
この液振り切り処理によって、表面周縁部911に残存している処理液(すなわち、ステップS206のリンス処理において基板9から振り切られずに、表面周縁部911に残存しているリンス液)の大部分が、基板9から振り切られる。
<第2の酸処理(DHF)>
<i.薬液処理>
次に、基板9の表面周縁部911に対して、DHFによる薬液処理が行われる(ステップS208)。具体的には、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51の第1薬液ノズル50aから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、DHFが吐出される。このときのDHFの吐出流量は、例えば、20(mL/min)以上かつ50(mL/min)以下である。DHFが吐出開始されてから所定時間(例えば、10秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのDHFの吐出が停止される。
この薬液処理によって、基板9の表面周縁部911に形成されている薄膜が除去される(エッチング処理)。ただし、ここでは、この薬液処理に先立って、液振り切り処理が行われている(ステップS207)ため、DHFは、リンス液がほとんど残存しない表面周縁部911に向けて、吐出されることになる。したがって、処理液の衝突に起因するデバイス領域90への処理液の進入が生じにくい。また、表面周縁部911上で、DHFとリンス液とが混じり合うことがないので、所期の濃度のDHFを、表面周縁部911に適切に作用させることができる。
ただし、この薬液処理が行われている間は、周縁部用吐出ヘッド51のガスノズル50dから、表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される。このときのガスの吐出流量は、例えば、14(L/min)である。つまり、表面周縁部911内の各位置において、古いDHF(すなわち、一周前に第1薬液ノズル50aから供給されて、基板9が一周回転される間に振り切られなかった古いDHF)が、ガスノズル50dから吐出されるガスで除去された後に、当該位置に第1薬液ノズル50aから新たなDHFが供給される。この構成によると、上述したとおり、基板9が一周回転される間に振り切られなかった古い処理液と新しく供給された処理液との衝突に起因するデバイス領域90への処理液の進入を抑制できる。また、この構成によると、常に新鮮なDHFを基板9に作用させて、処理効率を高めることができる。また、この構成によると、表面周縁部911内の各位置に一時的に多量のDHFが保持されるといった状況を回避することができる。その結果、エッチング幅を安定させて、エッチング幅の制御精度を高めることができる。また、DHFが供給されると、表面周縁部911は撥水性となるため、表面周縁部911に保持される古い処理液が部分的に厚くなる場合がある。この状態で新しい処理液が供給されると、処理液が弾かれて跳ねやすい状態となる。そのため、古い処理液をガスノズル50dから吐出されるガスにより基板9の外側に向けて吹き飛ばすことによって、当該液滴等がデバイス領域90へ進入することが十分に抑制される。
<ii.リンス処理>
続いて、リンス処理が行われる(ステップS209)。リンス処理の具体的な流れは、ステップS202の処理と同様である。すなわち、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のリンス液ノズル50cから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、リンス液が吐出される。リンス液が吐出開始されてから所定時間(例えば、5秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのリンス液の吐出が停止される。
このリンス処理によって、表面周縁部911に付着している処理液(ここでは、DHF)が、すすぎ流される。ただし、このリンス処理が行われている間も、周縁部用吐出ヘッド51のガスノズル50dから、基板9の表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される。このときのガスの吐出流量は、例えば、14(L/min)である。つまり、表面周縁部911内の各位置において、古いリンス液(すなわち、一周前にリンス液ノズル50cから供給されて、基板9が一周回転される間に振り切られなかった古いリンス液)が、ガスノズル50dから吐出されるガスで除去された後に、当該位置にリンス液ノズル50cから新たなリンス液が供給される。この構成によると、上述したとおり、基板9が一周回転される間に振り切られなかった古い処理液と新しく供給された処理液との衝突に起因するデバイス領域90への処理液の進入を抑制できる。また、この構成によると、DHFを含む古いリンス液を、速やかに表面周縁部911から除去するとともに、DHFを含まない新たなリンス液を基板9に作用させることができるので、リンス処理の処理効率が高まる。また、この構成によると、上述したとおり、表面周縁部911で弾かれた処理液の液滴等が、ガスノズル50dから吐出されるガスによって形成される気流によって、基板9の外側に向けて吹き飛ばされるので、当該液滴等がデバイス領域90へ進入することが十分に抑制される。
<iii.液振り切り処理>
続いて、液振り切り処理が行われる(ステップS210)。液振り切り処理の具体的な流れは、ステップS203にて説明したとおりである。すなわち、まず、表面周縁部911に向けての流体の吐出が停止された状態で、基板9が定められた時間だけ回転され(液寄せ工程)、その後、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51のガスノズル50dから、回転される基板9の表面周縁部911に向けて、ガスが吐出される(吹き飛ばし工程)。周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が開始されてから所定時間(例えば、5秒)が経過すると、周縁部用吐出ヘッド51からのガスの吐出が停止される。
この液振り切り処理によって、表面周縁部911に残存している処理液(すなわち、ステップS209のリンス処理において基板9から振り切られずに、表面周縁部911に残存しているリンス液)の大部分が、基板9から振り切られる。
<4−3.処理面切り替え処理>
表面周縁処理(ステップS2)が終了すると、続いて、処理面切り替え処理(ステップS3)が行われる。処理面切り替え処理では、裏面処理(ステップS4)に備えて、スピンベース21の回転速度(すなわち、基板9の回転速度)が低減(低下)される(図19、図20参照)。すなわち、スピンベース21の回転速度が、表面周縁処理時の回転速度から、これより小さい回転速度(低速の回転速度)に切り替えられる。具体的には、スピンベース21の回転数が、表面周縁処理時の回転数である600rpmから、これより十分小さい低速の回転数(例えば、20rpm)に切り替えられる。
ただし、上述したとおり、処理面切り替え処理が実行されている間も、基板9の表面91の中央付近に向けて、カバーガスノズル41からカバーガスが供給され続けている。
<4−4.裏面処理>
処理面切り替え処理(ステップS3)が終了すると、続いて、裏面処理(ステップS4)が行われる。裏面処理について、図19、図20を参照しながら説明する。図19は、裏面処理の流れを示す図である。図20は、裏面処理を説明するための図であり、裏面処理における各処理工程を実行している状態の基板処理装置1の一部要素が、模式的に示されている。
ただし、上述したとおり、裏面処理が実行されている間も、基板9の表面91の中央付近に向けて、カバーガスノズル41からカバーガスが供給され続けており、これによって、デバイス領域90が、裏面92に供給される処理液の雰囲気等から保護されている。
裏面92に対する処理液の供給に先立って、スピンベース21の回転速度は、低速の回転数である20rpmに切り替えられている。ここでいう「低速の回転速度」とは、基板9が当該回転速度で回転されている状態において、基板9の裏面92に供給された処理液が、裏面92の全体に広がり、かつ、基板9の表面91まで回り込むことがないような速度であり、具体的には、例えば、20rpm以下の回転数に相当する回転速度である。
まず、基板9の裏面92に対して、SC−1による薬液処理が行われる(ステップS401)。具体的には、裏面側吐出口82から、低速の回転速度で回転される基板9の裏面92の中央付近に向けて、SC−1が吐出される。このときのSC−1の吐出流量は、例えば、500(mL/min)以上かつ2000(mL/min)以下である。裏面92の中央付近に供給されたSC−1は、基板9の回転に伴う遠心力によって裏面92の全体に広がり、これによって、基板9の裏面92に対して、SC−1による薬液処理が進行する。ここでは、SC−1による薬液処理によって、基板9の裏面92に形成されている薄膜が除去される(エッチング処理)。SC−1が吐出開始されてから所定時間(例えば、20秒)が経過すると、裏面側吐出口82からのSC−1の吐出が停止される。
続いて、リンス処理が行われる(ステップS402)。具体的には、基板9が低速の回転速度で回転された状態のままで、裏面側吐出口82から、基板9の裏面92の中央付近に向けて、リンス液が吐出される。裏面92の中央付近に供給されたリンス液は、基板9の回転に伴う遠心力によって裏面92の全体に広がり、これによって、裏面92に付着している処理液(ここでは、SC−1)が、すすぎ流される。リンス液が吐出開始されてから所定時間(例えば、20秒)が経過すると、裏面側吐出口82からのリンス液の吐出が停止される。
続いて、基板9の裏面92に対して、SC−2による薬液処理が行われる(ステップS403)。具体的には、基板9が低速の回転速度で回転された状態のままで、裏面側吐出口82から、基板9の裏面92の中央付近に向けて、SC−2が吐出される。裏面92の中央付近に供給されたSC−2は、基板9の回転に伴う遠心力によって裏面92の全体に広がり、これによって、裏面92に対して、SC−2による薬液処理が進行する。ここでは、SC−2による薬液処理によって、基板9の裏面92に付着しているメタル成分(例えば、Mo、Co、等)等が除去される(洗浄処理)。SC−2が吐出開始されてから所定時間(例えば、20秒)が経過すると、裏面側吐出口82からのSC−2の吐出が停止される。
続いて、リンス処理が行われる(ステップS404)。リンス処理の具体的な流れは、ステップS402の処理と同様である。すなわち、基板9が低速の回転速度で回転された状態のままで、裏面側吐出口82から、基板9の裏面92の中央付近に向けて、リンス液が吐出される。裏面92の中央付近に供給されたリンス液は、基板9の回転に伴う遠心力によって裏面92の全体に広がり、これによって、裏面92に付着している処理液(ここでは、SC−2)が、すすぎ流される。リンス液が吐出開始されてから所定時間(例えば、20秒)が経過すると、裏面側吐出口82からのリンス液の吐出が停止される。
続いて、基板9の裏面92に対して、DHFによる薬液処理が行われる(ステップS405)。具体的には、基板9が低速の回転速度で回転された状態のままで、裏面側吐出口82から、基板9の裏面92の中央付近に向けて、DHFが吐出される。このときのDHFの吐出流量は、例えば、500(mL/min)以上かつ2000(mL/min)以下である。裏面92の中央付近に供給されたDHFは、基板9の回転に伴う遠心力によって裏面92の全体に広がり、これによって、裏面92に対して、DHFによる薬液処理が進行する。ここでは、DHFによる薬液処理によって、基板9の裏面92に形成されている薄膜が除去される(エッチング処理)。DHFが吐出開始されてから所定時間(例えば、10秒)が経過すると、裏面側吐出口82からのDHFの吐出が停止される。
続いて、リンス処理が行われる(ステップS406)。リンス処理の具体的な流れは、ステップS402の処理と同様である。すなわち、基板9が低速の回転速度で回転された状態のままで、裏面側吐出口82から、基板9の裏面92の中央付近に向けて、リンス液が吐出される。裏面92の中央付近に供給されたリンス液は、基板9の回転に伴う遠心力によって裏面92の全体に広がり、これによって、裏面92に付着している処理液(ここでは、DHF)が、すすぎ流される。リンス液が吐出開始されてから所定時間(例えば、22.5秒)が経過すると、裏面側吐出口82からのリンス液の吐出が停止される。以上で、裏面処理が終了する。
<4−5.乾燥処理>
裏面処理(ステップS4)が終了すると、続いて、乾燥処理(ステップS5)が行われる。乾燥処理においては、基板9に向けての処理液の吐出が停止された状態で、スピンベース21の回転速度(すなわち、基板9の回転速度)が、裏面処理の実行時の低速の回転速度から、比較的高速の、乾燥時の回転速度に上げられる(図19、図20参照)。これによって、基板9の裏面92に付着しているリンス液が徐々に振り切られてゆき、最終的に、基板9が乾燥される。ただし、上述したとおり、乾燥処理が実行されている間も、基板9の表面91には、カバーガスノズル41からカバーガスが供給され続けており、これによって、デバイス領域90が処理液の雰囲気等から保護されている。
基板9が乾燥時の回転速度で回転開始されてから所定時間が経過すると、スピンベース21の回転が停止される。その後、カバーガスノズル41からのガスの吐出が停止されて、カバーガスノズル41が待避位置に移動される。また、周縁部用吐出ヘッド51、カップ31、および、半円弧部材61,62が、各々の待避位置に移動される。そして、一群の保持部材25が基板9を開放するとともに、搬送ロボットCRが、当該基板9を基板処理装置1から搬出する。以上で、当該基板9に対する一連の処理が終了する。
<5.効果>
上記の実施の形態によると、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50とカップ31との間の隙間空間Vの少なくとも一部分が、ガード部材60によって埋められる。この構成によると、基板9から飛散した処理液のミスト等が浮遊し得る空間が、ガード部材60によって埋められる空間分だけ小さくなり、当該空間が小さくなった分だけ、処理液のミスト等が基板9に再付着する可能性が低減する。すなわち、基板9から飛散した処理液の一部が、基板9に再付着することを抑制できる。
また、上記の実施の形態によると、ガード部材60の下面602の少なくとも一部分が、スピンベース21上に保持される基板9の表面周縁部911と対向して配置される。この構成によると、基板9から飛散した処理液が、ガード部材60の下面602に沿って、カップ31内へと導かれる。したがって、当該飛散した処理液が、基板9に再付着することを十分に抑制できる。
また、上記の実施の形態において、ガード部材60の下面602が、ノズル50における処理液の吐出面502と同じ高さ位置か、当該吐出面502よりも低い位置に配置される構成とすれば、基板9から飛散した処理液が、基板9に再付着することを、特に有効に抑制できる。
また、上記の実施の形態において、ガード部材60の下面602が、カップ31の上端縁部301の下面3011と同じ高さ位置か、当該下面3011よりも低い位置に配置される構成とすれば、基板9から飛散した処理液が、基板9に再付着することを、特に有効に抑制できる。
また、上記の実施の形態によると、ガード部材60が、基板9の表面周縁部911の全周に沿うリング状の部材である。この構成によると、基板9から飛散した処理液が基板9に再付着することを、基板9の周方向の全体に亘って抑制できる。
また、上記の実施の形態によると、ガード部材60が、互いに別体に構成されている一対の半円弧部材61,62が、その周方向の端面同士が互いに当接した状態とされることによって、形成される。そして、スピンベース21上に基板9が保持されていない間は、一対の半円弧部材61,62が互いに離間した状態とされて、基板9の搬出入経路の外側の待避位置に配置される。この構成によると、ガード部材60を、基板9の搬出入経路の外側に簡易に待避させることができる。
また、上記の実施の形態によると、スピンベース21上に基板9が保持されていない間は、カップ31および半円弧部材61,62が、スピンベース21の上面よりも下方の待避位置に配置される。この構成によると、基板9が保持されていないスピンベース21に洗浄液を供給しつつスピンベース21を回転させることによって、スピンベース21、カップ31、および、各半円弧部材61,62を、まとめて洗浄することができる。
また、上記の実施の形態によると、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50の少なくとも一部分が、ガード部材60の切り欠き605に収容される。この構成によると、ガード部材60とノズル50とを干渉させることなく、ノズル50を基板9の表面周縁部911の上方に配置させることができる。
<6.液跳ね抑制部6の変形例>
<6−1.第1の変形例に係る液跳ね抑制部6a>
第1の変形例に係る液跳ね抑制部6aは、ガード部材の構成において上記の実施の形態に係る液跳ね抑制部6と相違し、それ以外の構成は相違しない。液跳ね抑制部6aが備えるガード部材60aについて、図21〜図23を参照しながら詳細に説明する。図21は、ガード部材60aの斜視図である。図22は、カップ31、ガード部材60a、および、周縁部用吐出ヘッド51が各々の処理位置に配置された状態を上方から見た平面図である。図23は、図22の矢印K1から見た側断面図である。なお、以下の説明において、上記の実施の形態において説明した構成と同じ構成については、説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
ガード部材60aは、基板9の表面周縁部911の全周に沿うリング状の部材である本体部64と、本体部64の外周壁643から張り出す庇部65と、を備える。なお、ガード部材60aは、上記の実施の形態に係るガード部材60と同様、互いに別体に構成されている複数の弧状部材(図示の例では、一対の半円弧部材61a,62a)が、その周方向の端面同士が互いに当接し合う状態とされることによって、形成されている。
本体部64は、上記の実施の形態に係るガード部材60と同様の部材である。
庇部65は、平板リング状の部材であり、その内径は、本体部64の内径と等しい寸法とされ、その外径は、本体部64の外径よりも大きい寸法とされる。庇部65の下面652の少なくとも内周部分は、本体部64の上面に着設されており、これによって、庇部65と本体部64とが一体に形成されている。
庇部65の外径は、カップ31の上端縁部301の内径よりも大きい寸法とされる。したがって、処理位置に配置されているガード部材60aを上方から見ると、本体部64の外周壁643(すなわち、基板9の端面93よりも外側にあり、かつ、カップ31の上端縁部301と非接触の状態で近接しつつ、上端縁部301の全周に沿って延在する外周壁643)から張り出す庇部65の外周縁651が、カップ31の上端縁部301の外側において、上端縁部301の全周に沿って延在する。
ガード部材60aが処理位置に配置された状態において、庇部65の下面652における、本体部64の外側に張り出した部分は、庇部65の全周に亘って、カップ31(処理位置に配置されているカップ31)の上端縁部301の上面3012と当接する。つまり、庇部65の下面652とカップ31の上面3012とが隙間をあけずに当接し合う。これによって、本体部64とカップ31の上端縁部301との間の隙間(すなわち、上から見てリング状の隙間)が、庇部65によって覆われる(好ましくは、塞がれる)恰好となる。
この変形例に係るガード部材60aによると、カップ31の上端縁部301と本体部64の外周壁643との間の隙間が、庇部65によって覆われる。この構成によると、当該隙間を上方に流れて基板9に到達する、という処理液の飛散ルートが、庇部65によって遮られる。したがって、基板9から飛散した処理液が基板9に再付着することを、十分に抑制できる。
<6−2.第2の変形例に係る液跳ね抑制部6b>
第2の変形例に係る液跳ね抑制部6bについて、図24、図25を参照しながら説明する。図24は、カップ31、液跳ね抑制部6b、および、周縁部用吐出ヘッド51が各々の処理位置に配置された状態を上方から見た平面図である。図25は、図24の矢印K2から見た側断面図である。なお、以下の説明においても、上記の実施の形態において説明した構成と同じ構成については、説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
液跳ね抑制部6bは、基板9の表面周縁部911の一部分に沿う弧状に湾曲した弧状部材66を備える。この弧状部材66は、上記の実施の形態に係るガード部材60(あるいは、第1の変形例に係るガード部材60a)を、周方向の途中で切断して、弧状に切り出すことによって得られる部材である。弧状部材66の周方向に沿う長さは、好ましくは、周縁部用吐出ヘッド51の長さ(ノズル50の配列方向に沿う長さ)と同程度の長さか、周縁部用吐出ヘッド51の長さよりも僅かに長いものとされる。
弧状部材66は、周縁部用吐出ヘッド51に固定されている。具体的には、例えば、弧状部材66は、その上面664が、周縁部用吐出ヘッド51の支持部500の下面に着設されることによって、周縁部用吐出ヘッド51に固定されている。ただし、弧状部材66の内周壁661には、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分を収容する切り欠き665が形成されており、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分が、この切り欠き665に収容された状態となる。また、弧状部材66の下面662は、周縁部用吐出ヘッド51の吐出面502と、同じ高さ位置か、当該吐出面502よりも低い位置に配置されていることが好ましい。
弧状部材66は、周縁部用吐出ヘッド51に固定されているため、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置されると、これに固定された弧状部材66は、スピンベース21上に保持された基板9の表面周縁部911と非接触状態で近接した位置(処理位置)に配置されることになる。
処理位置に配置されている弧状部材66を上方から見ると、弧状部材66の外周壁663は、基板9の端面93よりも外側にあり、かつ、カップ31の上端縁部301に、これと非接触の状態で近接しつつ、上端縁部301に沿って延在する。また、処理位置に配置されている弧状部材66を上方から見ると、弧状部材66の内周壁661は、基板9の端面93よりも内側にあり、弧状部材66の下面662の少なくとも内周部分は、スピンベース21上に保持される基板9の表面周縁部911と対向して配置される。このとき、弧状部材66の下面662と、スピンベース21上に保持された基板9の表面91との離間距離は、例えば、1mm以上かつ1.5mm以下である。また、このとき、下面662は、処理位置に配置されているカップ31の上端縁部301の下面3011と、同じ高さ位置か、下面3011よりも低い位置に配置されることが好ましい。
この変形例によると、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、周縁部用吐出ヘッド51とカップ31の上端縁部301との間の隙間空間Vの少なくとも一部分が、弧状部材66によって埋められる。この構成によると、基板9から飛散した処理液のミスト等が浮遊し得る空間が、弧状部材66によって埋められる空間分だけ小さくなり、当該空間が小さくなった分だけ、基板9の付近における処理液の浮遊量が少なくなる。その結果、処理液のミスト等が基板9に再付着する可能性が低減する。すなわち、基板9から飛散した処理液の一部が、基板9に再付着することを抑制できる。
特に、ここでは、弧状部材66の下面662の少なくとも一部分が、表面周縁部911と対向配置されるので、基板9から飛散した処理液が、弧状部材66の下面662に沿って、カップ31内へと導かれる。したがって、当該飛散した処理液が、基板9に再付着することを十分に抑制できる。
特に、弧状部材66の下面662を、周縁部用吐出ヘッド51の吐出面502と、同じ高さ位置か、吐出面502よりも低い位置に配置することによって、基板9から飛散した処理液が、基板9(特に、デバイス領域90)に付着することを、特に有効に抑制できることが、発明者達によって確認されている。また、弧状部材66の下面662を、カップ31の上端縁部301の下面3011と、同じ高さ位置か、当該下面3011よりも低い位置に配置することによっても、基板9から飛散した処理液が、基板9(特に、デバイス領域90)に付着することを、特に有効に抑制できることが、発明者達によって確認されている。
また、この変形例によると、弧状部材66が周縁部用吐出ヘッド51に対して固定されているため、周縁部用吐出ヘッド51と一緒に弧状部材66を移動させることができる。したがって、弧状部材66を移動させるための駆動機構と、周縁部用吐出ヘッド51を移動させるための駆動機構とを、別々に設ける必要がなく、装置構成を簡易化できる。
<7.その他の変形例>
上記の実施の形態においては、SC−2による薬液処理(ステップS201)、および、DHFによる薬液処理(ステップS208)の際には、基板9の裏面92に対するスチームの供給(ヒートアシスト)は行われていない。すなわち、上記の実施の形態においては、SC−2による薬液処理は、エッチング処理ではなく洗浄処理を進行させる薬液処理であるため、ヒートアシストは省略されている。また、DHFは、ヒートアシストなしでも、比較的高いエッチングレートでエッチングが進行するため、DHFによる薬液処理時にもヒートアシストは省略されている。しかしながら、処理対象等によっては、SC−2による薬液処理、あるいは、DHFによる薬液処理が行われる間、基板9の裏面92に対するスチームの供給が行われてもよい。
また、上記の実施の形態においては、SC−1による薬液処理(ステップS201)、および、その後のリンス処理(ステップS202)、SC−2による薬液処理(ステップS204)、および、その後のリンス処理(ステップS206)の各処理においては、ガスノズル50dから表面周縁部911へのガスの供給は行われていない。SC−1あるいはSC−2が供給されると、表面周縁部911は親水性となるため、ここに供給された処理液の液膜が、基板の回転による遠心力のみで比較的安定的に周縁部に保持されるところ、このような状態の表面周縁部911にガスが供給されると、逆に液跳ねを生じさせてしまう虞があるからである。しかしながら、処理対象等によっては、上記の各処理が行われる間、表面周縁部911へのガスの供給が行われてもよい。
また、上記の実施の形態においては、SC−1による薬液処理後は、液振り切り処理は行われていない。上記の実施の形態では、SC−1による薬液処理で、基板9に対するエッチング処理が施されるところ、エッチング処理後に、液振り切り処理を行わずにリンス処理を行って、エッチングに供された薬液を速やかにすすぎ流すことによって、エッチング幅およびエッチング深さを良好に制御することができるからである。なお、SC−1が供給されると表面周縁部911は親水性となるため、SC−1による薬液処理が終了した時点で表面周縁部911に残存しているSC−1は、表面周縁部911上に薄く広がった状態となっている。このような状態の表面周縁部911に、次の処理液であるリンス液が供給されても液跳ねは比較的生じにくい。すなわち、SC−1による薬液処理後の液振り切り処理が省略されても、深刻な問題にはなりにくい。もっとも、処理対象等によっては、SC−1による薬液処理後が行われた後に、液振り切り処理が行われてもよい。例えば、SC−1による薬液処理で、エッチング処理ではなく洗浄処理(例えば、基板9の表面周縁部911に付着している有機物等を除去する洗浄処理)が基板9に施される場合、SC−1による薬液処理後に、液振り切り処理を行うことはむしろ好ましい。
また、上記の実施の形態においては、DHFによる薬液処理後も、液振り切り処理は行われていない。上記の実施の形態では、DHFによる薬液処理で、基板9に対するエッチング処理が施されるところ、上述したとおり、エッチング処理後に、液振り切り処理を行わずにリンス処理を行って、エッチングに供された薬液を速やかにすすぎ流すことによって、エッチング幅およびエッチング深さを良好に制御することができるからである。なお、DHFが供給されると表面周縁部911は撥水性となるため、表面周縁部911は処理液が残存しにくい状態となる。その上、上記の実施の形態においては、DHFによる薬液処理が行われる間、表面周縁部911に対してガスノズル50dからガスが供給されているために、表面周縁部911に供給された不要なDHFのほとんどが、基板9の端面93から除去されている。したがって、DHFによる薬液処理が完了した時点で(液振り切り処理を行うまでもなく)、基板9の表面周縁部911に、DHFがほとんど残存しない状態となっている。したがって、DHFによる薬液処理後に液振り切り処理を行う必要性は、特に乏しい。もっとも、処理対象等によっては、DHFによる薬液処理後が行われた後に、液振り切り処理が行われてもよい。
また、上記の実施の形態においては、表面周縁処理(ステップS2)および裏面処理(ステップS4)の各々において、3種類の薬液(SC−1、SC−2、および、DHF)を用いた薬液処理が、リンス処理等を挟みながら、順番に行われていたが、必ずしもこれら3種類の薬液を用いた薬液処理を行う必要はない。例えば、SC−1、SC−2、DHF、BDHF(バッファードフッ酸)、HF(フッ酸)、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸もしくはアンモニアなどの水溶液、または、それらの混合溶液、等のうちから選択された1以上の薬液を用いて、表面周縁部911あるいは裏面92に対する薬液処理が行われてもよい。
また、上記の実施の形態に係る流体供給部55は、フッ酸(例えば、49%のフッ酸)を供給するフッ酸供給源、塩酸を供給する塩酸供給源、過酸化水素を供給する過酸化水素供給源、水酸化アンモニウムを供給する水酸化アンモニウム供給源、純水を供給する純水供給源、二酸化炭素ガスを供給する二酸化炭素ガス供給源、窒素ガスを供給する窒素ガス供給源、配管、開閉弁、および、ミキシングバルブ等を組み合わせて構成されてもよい。この構成においては、例えば、フッ酸供給源からのフッ酸と純水供給源からの純水とが、ミキシングバルブ内において定められた比率で混合されることによりDHFが生成されて、これが周縁部用吐出ヘッド51(具体的には、第1薬液ノズル50a)に供給される。また、塩酸供給源からの塩酸と、過酸化水素供給源からの過酸化水素とが、ミキシングバルブ内において定められた比率で混合されることによりSC−2が生成されて、これが周縁部用吐出ヘッド51(具体的には、第1薬液ノズル50a)に供給される。また、水酸化アンモニウム供給源からの水酸化アンモニウムと、過酸化水素供給源からの過酸化水素と、純水供給源からの純水とが、ミキシングバルブ内において定められた比率で混合されることによりSC−1が生成されて、これが周縁部用吐出ヘッド51(具体的には、第2薬液ノズル50b)に供給される。また、純水供給源からの純水に、二酸化炭素が溶融されることによりリンス液が生成されて、これが周縁部用吐出ヘッド51(具体的には、リンス液ノズル50c)に供給される。
また、上記の実施の形態においては、加熱処理部7が、スチームを用いて基板9を加熱する構成としていたが、加熱処理部7は、他の加熱源(例えば、電熱線ヒータ、ランプヒータ、等)を用いて基板9を加熱してもよい。もっとも、スチームを用いて基板9を加熱する態様は、電熱線ヒータ、あるいは、ランプヒータで基板9を加熱する態様と比べて、基板9を局所的に短時間で加熱することができる(ひいては、良好なスループットを実現できる)ため、特に好ましい。
また、上記の実施の形態においては、液振り切り処理において、液寄せ工程(ステップS2031)と吹き飛ばし工程(ステップS2032)とが、順次に行われるものとしたが、液寄せ工程(ステップS2031)と吹き飛ばし工程(ステップS2032)とは、並行して行われてもよい。
また、液振り切り処理を行うタイミングは、上記の実施の形態において例示されタイミングに限られるものではない。例えば、SC−2による薬液処理の後の液振り切り処理が省略されてもよく、各リンス処理の後の液振り切り処理のうちの少なくとも1つが省略されてもよい。また、上述したとおり、SC−1による薬液処理の後に液振り切り処理が行われてもよく、DHFによる薬液処理の後に液振り切り処理が行われてもよい。
また、上記の実施の形態においては、基板処理装置1において、基板9の表面周縁部911および裏面92に対して処理が施されていたが、基板処理装置1においては、表面周縁部911のみ、あるいは、裏面92のみに対して処理が行われてもよい。また、基板処理装置1において、表面周縁部911および裏面92の少なくとも一方に対して、エッチング処理、洗浄処理以外の処理(例えば、成膜処理)が行われてもよい。
また、上記の実施の形態に係る周縁部用吐出ヘッド51においては、リンスノズル50cに対して、基板9の回転方向AR9の上流側に第1薬液ノズル50aが、下流側に第2薬液ノズル50bが、それぞれ配置されていたが、リンスノズル50cに対して、基板9の回転方向AR9の上流側に第2薬液ノズル50bが、下流側に第1薬液ノズル50aが、それぞれ配置されてもよい。
また、上記の実施の形態においては、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分が、ガード部材60の内周壁601に形成された切り欠き605内に収容された状態とされていたが、周縁部用吐出ヘッド51が処理位置に配置された状態において、周縁部用吐出ヘッド51の少なくとも一部分(具体的には、例えば、周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50の少なくとも一部分)が、例えば、ガード部材60の上面604から下面602に貫通する貫通孔内に収容された状態とされてもよい。つまり、処理位置に配置されている周縁部用吐出ヘッド51が備えるノズル50は、ガード部材60の一部を挟んで、カップ31に対して反対側に配置されてもよい。
また、上記の実施の形態においては、基板処理装置1において、基板9の表面周縁部911に対する処理が行われた後に、裏面92に対する処理が行われていたが、表面周縁部911に対する処理と裏面92に対する処理とが並行して行われてもよい。
また、上記の実施の形態において、基板9は、半導体ウェハであるとしたが、基板9は、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等であってもよい。
以上のとおり、本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。