JP2015068631A - ボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な作業と管理方法によって特に小型貫流ボイラにおける缶水の低pHと高溶存酸素濃度問題を解決できる、長期保存安定性に優れたボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1)で表されるN−アルキル置換ヒドロキシルアミンから選択される1種以上と、(B)多価フェノール誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される1種以上と、(C)アルカリ金属水酸化物から選択される1種以上を有効成分として含有し、最終pHを12以上とすることを特徴とするボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法。
(一般式(1)中、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1から3のアルキル基を示す。ただし、R1とR2が同時に水素原子とはならない。)
【選択図】なし
【解決手段】(A)一般式(1)で表されるN−アルキル置換ヒドロキシルアミンから選択される1種以上と、(B)多価フェノール誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される1種以上と、(C)アルカリ金属水酸化物から選択される1種以上を有効成分として含有し、最終pHを12以上とすることを特徴とするボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法。
(一般式(1)中、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1から3のアルキル基を示す。ただし、R1とR2が同時に水素原子とはならない。)
【選択図】なし
Description
本発明は主に中低圧ボイラに対して適用する、長期保存安定性に優れたボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法に関する。本発明は特に小型貫流ボイラなどの低圧ボイラの防食に好適に適用することができる。
溶存酸素を含有する水溶液は鉄や鋼を容易に酸化し腐食を発生させるため、ボイラの水処理ではボイラ水系からの溶存酸素除去が缶水のpH管理と共にボイラ防食方法の中心技術である。このボイラ水系からの溶存酸素除去を目的とする脱酸素剤として従来ヒドラジンや亜硫酸ソーダが主に使用されてきた。特にヒドラジンは極めて有効な脱酸素剤であるが、人体に対する安全性に疑問があるため、ヒドラジン代替の脱酸素剤としてカルボヒドラジド、オキシム化合物、ヒドロキシルアミン化合物等が提案されている。
しかしながら、これらの代替脱酸素剤にはそれぞれ問題点があり、例えばヒドロキシルアミン化合物であるジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)は特に100℃以下の低温では脱酸素速度が遅く、充分な脱酸素効果が得られない等の欠点がある。そのため、ヒドロキシルアミン化合物の脱酸素速度を上げるための活性化剤(「触媒」とも称される)として三価フェノール類及びその誘導体、ナフトキノン類及びその誘導体並びにアントラキノン類及びその誘導体から選ばれた一種又は二種以上を併用する溶存酸素除去法が提案されている(特許文献1)。
ヒドラジンの代替としてヒドロキシルアミン化合物と活性化剤を併用した前記の溶存酸素除去法では、ヒドロキシルアミン化合物と活性化剤を個別にボイラ水系に添加することもできるが、使用前に両成分を適切な割合で混合し、その組成物をボイラに添加する方が添加装置や添加作業を簡易にできる。
しかしながら、ヒドロキシルアミン化合物と活性化剤を配合した組成物中ではヒドロキシルアミン化合物の分解が進むため、保存中に脱酸素性能が低下し分解生成物が沈殿するという組成物の長期保存安定性が劣る問題があった。
一方、小型貫流ボイラは使用圧力が1Mpa以下で伝熱面積が10m2以下の貫流ボイラで、熱効率が95%以上と高く、炉筒煙管ボイラなどに比べて保有水量が少なく、着火から蒸気発生までの時間が極めて短いという特徴がある。また、法定開放点検が不要なため、管理の省力化や運転費用の低減が可能となり、加えて、取り扱いにボイラ技士免許が不要であるなどの利点のため、中小工場、学校、病院だけでなく、大規模な工場や各種施設においても、大容量のボイラの代替として小型貫流ボイラを多数設置して一体管理し、きめ細かな台数制御によって負荷変動に対応する利用方法が見られ、最近では国内における新設ボイラの大半を占めている。
しかし、小型貫流ボイラでは、大型の炉筒煙管ボイラや水管ボイラに比べて、ボイラ水管に対する熱負荷が高く、かつ、ボイラ水の循環比が低いため、給水が直接流入する缶底部(下部ヘッダー)はボイラ水の濃縮度が低くpH上昇は期待できず、溶存酸素濃度が高く、かつ腐食性の高い低温域にあるため、腐食が発生し易く問題となっている。また、給水系にエコノマイザーがある場合は、エコノマイザー部は缶底部よりもさらにpHが低く、溶存酸素濃度が高いため腐食が多く問題となっている。
一般に、2MPa以下の低圧ボイラの給水には、軟化水が用いられるが、軟化水には、塩素イオン、硫酸イオンなどの、金属類(鉄、鋼など)の腐食を促進する成分が含まれており、腐食がさらに促進される。
このように、ボイラ技士免許が不要であって多数の小型ボイラを設置して一体管理し、きめ細かな台数制御によって負荷変動に対応する小型貫流ボイラのシステムでは、より簡易な作業と管理方法によって前記の低pHと高溶存酸素濃度問題を解決することが求められているが、ヒドラジンに替わる脱酸素剤であるヒドロキシルアミン化合物に活性化剤を配合した一液性の液体組成物は前述の通り長期保存安定性が劣るため、ヒドロキシルアミン化合物と活性化剤の2点をボイラ水系に個別添加する、あるいは、前記の組成物を調製後短期間のうちに使用する等の使用方法を強いられ、要望されている簡易な作業と管理方法を達成することができなかった。
本発明の課題は、簡易な作業と管理方法によって特に小型貫流ボイラにおける缶水の低pHと高溶存酸素濃度問題を解決できる、長期保存安定性に優れたボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法を提供することである。
本発明者らは、前記の課題を解決するために、人体に対する安全性に疑問があるヒドラジン以外の脱酸素剤としてN−アルキル置換ヒドロキシルアミン類を含有し、活性化剤として多価フェノール誘導体やキノン誘導体を配合する組成物について鋭意研究した。特許文献1には、三価フェノール類及びその誘導体、ナフトキノン類及びその誘導体並びにアントラキノン類及びその誘導体から選ばれる「本発明の活性化剤はいかなるpHに於いてもその活性化作用は認められるが、特に中性乃至アルカリ性に於いてその作用は大である。」との記載があり、ヒドロキシルアミン類と前記活性化剤を含有する組成物においても、組成物のpHがアルカリ性であるとヒドロキシルアミン類の活性化が促進され、その分解が進行すると予想されるところ、本発明者らは特定のN−アルキル置換ヒドロキシルアミンに多価フェノール誘導体、キノン誘導体から選択される1種以上の活性化剤を併用した組成物に更にアルカリ金属水酸化物を加えて製品pHを12以上としたところ、予想に反してN−アルキル置換ヒドロキシルアミンの分解が抑制され、長期保存安定性に優れた一液性の液体組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の長期保存安定性に優れた液体組成物は脱酸素剤に加えてアルカリ金属水酸化物が配合されているため、この一液性の組成物を適用するだけで、小型貫流ボイラにおける缶水の低pHと高溶存酸素濃度問題を一挙に解決できるという目覚ましい効果を有する。
すなわち、請求項1に係る発明は、(A)一般式(1)で表されるN−アルキル置換ヒドロキシルアミンから選択される1種以上と、(B)多価フェノール誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される1種以上と、(C)アルカリ金属水酸化物から選択される1種以上を有効成分として含有し、最終pHを12以上とすることを特徴とするボイラ防食用液体組成物である。
(一般式(1)中、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1から3のアルキル基を示す。ただし、R1とR2が同時に水素原子とはならない。)
請求項2に係る発明は、前記液体組成物中の前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が0.01〜0.2の範囲であり、且つ、前記(A)成分に対する前記(C)成分の重量比が10以下である請求項1記載のボイラ防食用液体組成物である。
請求項3に係る発明は、(A)一般式(2)で表されるN−アルキル置換ヒドロキシルアミンから選択される1種以上と、(B)多価フェノール誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される1種以上と、(C)アルカリ金属水酸化物から選択される1種以上を有効成分として含有し、最終pHを12以上とすることを特徴とするボイラ防食用液体組成物をボイラ水系に添加するボイラ防食方法である。
(一般式(2)中、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1から3のアルキル基を示す。ただし、R1とR2が同時に水素原子とはならない。)
請求項4に係る発明は、前記液体組成物中の前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が0.01〜0.2の範囲であり、且つ、前記(A)成分に対する前記(C)成分の重量比が10以下である請求項3記載のボイラ防食用液体組成物をボイラ水系に添加するボイラ防食方法である。
本発明の液体組成物だけを適用するという簡易な作業と管理によって、小型貫流ボイラにおける缶水の低pHと高溶存酸素濃度問題を一挙に解決できる。また本発明の液体組成物は長期保存安定性に優れており、保存中に脱酸素性能が低下し分解生成物が沈殿するという問題が発生する可能性は小さいため、保存中の性能低下を心配することなく使用でき、ボイラの安定操業に寄与する。
本発明の液体組成物が有効成分として含有する(A)N−アルキル置換ヒドロキシルアミンは、前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表され、式中、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1から3のアルキル基である。ただし、R1とR2が同時に水素原子とはならない。
具体的には、N−メチルヒドロキシルアミン、N−エチルヒドロキシルアミン、N−n−プロピルヒドロキシルアミン、N−イソプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−n−ジプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジイソプロピルヒドロキシルアミン、N−メチル−N−エチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。好ましくはN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)である。
本発明の液体組成物中の(A)成分の配合量には特に定めは無いが、好ましくは0.5〜20重量%であり、更に好ましくは1〜15重量%である。本発明の液体組成物中の(A)成分の配合量が0.5重量%より少ない場合は、ボイラ水系に対する本発明の液体組成物の添加量が多量となるため、大容量の薬品注入設備が必要となり経済的ではない。また、本発明の液体組成物中の(A)成分の配合量が20重量%より多い場合は、該液体組成物の長期保存安定性が低下する場合がある。
本発明の液体組成物が有効成分として含有する(B)多価フェノール誘導体及びキノン誘導体からなる群のうち、多価フェノール誘導体の好ましい例としては、3−メチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコールなどの置換カテコール類、没食子酸、ピロガロールなどの3価フェノール誘導体、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノンなどの多価ベンゾフェノン類、プルプロガリン(別名:2,3,4,6−テトラヒドロキシ−5H−ベンゾシクロヘプテン−5−オン)、イノシトール(別名:1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサオール)ならびにその立体異性体、タンニン酸、ミモザタンニン、チェストナットタンニン、タラタンニン、ミラボラムタンニンなどのタンニン類などが挙げられる。また、キノン誘導体の好ましい例としては、2−メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、3−メチル−1,2−ベンゾキノン、4−メチル−1,2−ベンゾキノン、p−トルキノン、3−メトキシ−1,2−ベンゾキノン、4−メトキシ−1,2−ベンゾキノン、2−メトキシ−p−ベンゾキノン、2−ヒドロキシ−p−キノン、2,5−ジヒドロキシ−p−キノン、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、キニザリンなどが挙げられる。
本発明の液体組成物中の(A)成分に対する(B)成分の重量比は0.01〜0.2の範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜0.1の範囲である。(A)成分に対する(B)成分の重量比が0.01より小さい場合は、ボイラ水系に添加した本発明の液体組成物中の(A)成分による脱酸素速度が遅くなり、充分な脱酸素効果が得られない場合がある。また、(A)成分に対する(B)成分の重量比が0.2より大きい場合は、該液体組成物の長期保存安定性が低下する場合がある。
本発明の液体組成物が有効成分として含有する(C)アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムから選択される1種以上であり、本発明の液体組成物の最終pHが12以上になるように(C)成分の配合量を調整する。より好ましい本発明の液体組成物の最終pHは12.5以上である。
本発明の液体組成物中の(C)成分の配合量は本発明の液体組成物の最終pHが12以上になる範囲であれば特に制限は無いが、一般的に(A)成分に対する(C)成分の配合上限は重量比として10以下が好ましく、より好ましくは5以下である。(A)成分に対する(C)成分の重量比が10よりも大きい場合は、通常、本発明の液体組成物の最終pHが12を大幅に超過するが、本発明の液体組成物中に沈殿を生じる場合がある。
本発明の液体組成物は、通常、水に対して所定量の(A)成分、(B)成分、(C)成分を加えて、均一になるまで撹拌する。各成分の添加順序には特に制限が無いが、(B)成分は中性よりもアルカリ性の水溶液に溶解しやすいので、(A)成分や(C)成分を加えた後に(B)成分を添加する順序が好ましい。組成物の最終pHを測定し、12未満の場合は(C)成分を追加添加して最終pHが12以上になるように調整する。本発明の液体組成物は常温で製造でき、加熱・加温や特別な撹拌などは通常は必要としない。尚、本発明の液体組成物の製造において使用する水は軟化水又はイオン交換水を用いる。
本発明のボイラ防食方法は、前記(A)一般式(2)で表されるN−アルキル置換ヒドロキシルアミンから選択される1種以上と、(B)多価フェノール誘導体及びキノン誘導体からなる群から選択される1種以上と、(C)アルカリ金属水酸化物から選択される1種以上を有効成分として含有し、最終pHを12以上とすることを特徴とするボイラ防食用液体組成物をボイラ水系に添加するボイラ防食方法であり、即ち、本発明の液体組成物をボイラ水系に添加することによってボイラの防食を達成する方法である。
本発明の液体組成物の添加量は、給水中の溶存酸素の1モルに対して通常、0.2〜5モルの(A)成分に相当する量を添加するのが好ましい。ここで給水中の溶存酸素濃度は実測値を用いるか、あるいは脱気器がないボイラでは給水温度における酸素の飽和溶解濃度の理論値を用いる。給水中の溶存酸素濃度は脱気器がある場合は通常1〜500μg/L、脱気器がない場合は給水の温度によって異なるが通常1〜10mg/Lの範囲である。
また、(A)成分の給水中あるいはボイラ水中の残留濃度を測定し、その残留濃度が10〜1000μg/Lになるように本発明の液体組成物の添加量を調整することが好ましい。
(A)成分の残留濃度は例えば、FerroZine iron reagent(化合物名:3-(2-Pyridyl)-5,6-diphenyl-1,2,4-triazine-p,p′-disulfonic acid
monosodium salt hydrate)が2価の鉄イオンと反応して赤色キレート化合物を生成する反応を利用して定量することができる。すなわち、(A)成分に3価の鉄イオンを加えて、(A)成分の量に比例して生成した2価の鉄イオンに対して、FerroZine iron reagentを加えて赤色キレート化合物を生成させて、吸光度や着色の程度を分光光度計や簡易比色計により測定し、予め作成しておいた濃度対吸光度などの検量線より、(A)成分の濃度を求めることができる。
monosodium salt hydrate)が2価の鉄イオンと反応して赤色キレート化合物を生成する反応を利用して定量することができる。すなわち、(A)成分に3価の鉄イオンを加えて、(A)成分の量に比例して生成した2価の鉄イオンに対して、FerroZine iron reagentを加えて赤色キレート化合物を生成させて、吸光度や着色の程度を分光光度計や簡易比色計により測定し、予め作成しておいた濃度対吸光度などの検量線より、(A)成分の濃度を求めることができる。
本発明の液体組成物の添加量は、ボイラ水のpHが所定の値になるように調整することが好ましい。本発明の液体組成物には(C)成分のアルカリ金属水酸化物が配合され、液体組成物の最終pHは12以上であるので、殆どの場合、追加のpH調整剤は不要であり、薬品の注入管理が容易である。
ボイラ水のpHは通常8.5〜12.0の範囲に調整されるが、pHがこの範囲を外れると腐食が発生し易くなる。補給水として腐食性イオン濃度が高い軟化水を使用しているボイラ蒸気圧が2MPa以下のボイラではボイラ水のpHは11.0〜12.0程度に調整するのが好ましい。一方、ボイラの蒸気圧が2MPaを超えるボイラではpHは8.5〜11.0程度に調整するのが好ましいが、アルカリ腐食の防止のため蒸気圧が高いボイラほどpHの上限値を低く抑えることが好ましい。使用圧力別のボイラ水pHの適正値は、例えばJIS B8223:1999「ボイラの給水及びボイラ水の水質」に規定されている。
本発明の液体組成物の添加方法は、特に限定されるものではなく、一般的な薬注ポンプを用いて通常はボイラ給水に連続添加される。ただし、本発明の液体組成物の添加は、ボイラの給水以外にもボイラ缶水に直接添加しても良く、またボイラ本体だけでなく給水系統の腐食抑制が必要な場合は、給水系統の上流側に添加するのが好ましい。
本発明のボイラ防食用液体組成物は、さらに重量平均分子量が1,000〜3,000の末端修飾ポリアクリル酸を含有してもよく、ここで末端修飾ポリアクリル酸とは、イソプロピルアルコール修飾ポリアクリル酸、スルホン酸修飾ポリアクリル酸、及びチオエーテル修飾ポリアクリル酸から選択される1種以上である。このような末端修飾ポリアクリル酸の具体例は、特開2007−239064号公報に開示されている。
この末端修飾ポリアクリル酸は、アクリル酸以外にアクリル酸と共重合が可能な他の不飽和モノマーとの共重合体であっても良く、アクリル酸と共重合が可能な他の不飽和モノマーの例としてマレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸等のモノエチレン性不飽和カルボン酸およびその水溶性塩、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸等のモノエチレン性不飽和スルホン酸およびその水溶性塩、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸等のモノエチレン性不飽和ホスホン酸およびその水溶性塩、(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレートエステル、アルキル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートエステル、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルアルコール等の非イオン性のモノエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。末端修飾ポリアクリル酸中のアクリル酸の重合比が低下すると腐食抑制効果とスケール抑制効果が低下するため、アクリル酸と共重合が可能な他の不飽和モノマーの比率はモノマー全体に対して30重量%以下であることが好ましい。
アクリル酸と共重合可能な不飽和モノマーの好ましい例は、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルから選択されるヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートエステルの1種以上、および/またはアリルオキシ−2−ヒドロキシエチル、アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル、メタリルオキシ−2−ヒドロキシエチル、メタリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルから選択されるヒドロキシ置換アルキル(メタ)アリルエーテルの1種以上である。
末端修飾ポリアクリル酸の添加量は、対象とするボイラシステム水系の水質及び目的とする腐食抑制効果の程度を考慮して適宜決定されるものであり、一律に定めることはできないが、通常、給水に対して0.05〜10mg/L、ボイラ水に対して0.5〜200mg/L、好ましくはボイラシステム水系中のカルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛の合計量の1重量部に対して2〜30重量部の末端修飾ポリアクリル酸量である。
本発明の液体組成物は、清缶剤、スケール抑制剤や分散剤、給復水系防食剤、消泡剤として公知の化合物を組成物中に含有してもよく、あるいはこれらの化合物を併用してボイラ給水等に別途添加してもよく、または薬品注入用容器中でこれらの化合物と希釈水とともに混合してから添加してもよい。
本発明の液体組成物と併用可能な給復水系防食剤として、アミノメチルプロパノール、シクロへキシルアミン、モルホリン、ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メトキシプロピルアミンなどが挙げられる。
本発明の液体組成物は、小型貫流ボイラ以外にも炉筒煙管ボイラなどの丸ボイラ、水管ボイラ、排熱ボイラなどの他の種類のボイラにも適用できる。本発明の液体組成物をボイラシステムに適用する場合は給水へ添加することができるが、補給水へ添加することが望ましい。本発明の液体組成物を適用するボイラの補給水や給水は、軟化水以外にイオン交換水、逆浸透膜処理水、蒸気凝縮水、純水などの水も使用できる。
本発明の液体組成物は、稼動停止の繰り返しの多いボイラにも適用可能であり、例えば停止期間が1週間以内であれば通常の水位で、通常のボイラ水のままで保管することができる。また、停止期間が1週間を超える場合は、運転停止時に通常のボイラ水に本発明の液体組成物を高濃度で添加した給水を加えて満水として保管するのが好ましい。さらに停止期間が2〜3週間を超える場合は、ボイラ水を全量排出した後、エリソルビン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、没食子酸などを100〜500mg/L添加し、アルカリ金属水酸化物でpHを11〜12に調整した水で満水保管するのが好ましい。
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[長期保存安定性試験―1]
イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、没食子酸、及び水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、液体組成物B−1、B−2、A−1〜A−5を調製した。各液体組成物中の、(A)成分であるDEHA配合量は3重量%、(B)成分である没食子酸配合量は0.6重量%であり、B−1、B−2、A−1〜A−3では、(C)成分であるNaOHを表1に示した各液体組成物の最終pHになるようにそれぞれ添加した。また、A−4では、NaOHを30重量%((C)/(A)重量比=10)配合し、A−5ではNaOHを36重量%((C)/(A)重量比=12)配合した。
各組成物を50℃恒温槽内に静置し、1ヶ月後、1.5ヶ月後、及び2ヶ月後の外観を目視判定し、結果を表1に示した。表中、○印は外観に変化が無く、×印は分離や沈殿が認められたことを示す。
[長期保存安定性試験―1]
イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、没食子酸、及び水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、液体組成物B−1、B−2、A−1〜A−5を調製した。各液体組成物中の、(A)成分であるDEHA配合量は3重量%、(B)成分である没食子酸配合量は0.6重量%であり、B−1、B−2、A−1〜A−3では、(C)成分であるNaOHを表1に示した各液体組成物の最終pHになるようにそれぞれ添加した。また、A−4では、NaOHを30重量%((C)/(A)重量比=10)配合し、A−5ではNaOHを36重量%((C)/(A)重量比=12)配合した。
各組成物を50℃恒温槽内に静置し、1ヶ月後、1.5ヶ月後、及び2ヶ月後の外観を目視判定し、結果を表1に示した。表中、○印は外観に変化が無く、×印は分離や沈殿が認められたことを示す。
表1の結果では、最終pHが12以上の液体組成物(A−1〜A−5)では1ヶ月後でも外観に変化が無かったが、最終pHが12未満の液体組成物(B−1、B−2)では1ヶ月後に分離や沈殿が認められた。また、最終pHが12以上の液体組成物の中でも、最終pHが12.5以上のA−2〜A−4では、2ヶ月後でも外観に変化が無かったが、(C)/(A)重量比が12であるA−5では、該重量比が10であるA−4に比べて、液体組成物の最終pHは同じ14であったにもかかわらず、2ヶ月後に分離や沈殿が認められた。
以上の結果より、本発明の液体組成物の最終pHは12以上であることが必要であり、好ましくは12.5以上であること、及び(C)/(A)重量比が10以下の本発明の液体組成物は該重量比が10を超えた液体組成物に比べて保存安定性がやや良好であることが示された。
(実施例2)
[長期保存安定性試験―2]
イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、タンニン酸、及び水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、液体組成物A−6〜A−11を調製した。各液体組成物中の、(A)成分であるDEHA配合量は8重量%、(C)成分であるNaOH配合量は8重量%であり、(B)成分であるタンニン酸は表2に示された量をそれぞれ配合した。各液体組成物の最終pHはいずれも12以上であった。尚、表3のタンニン配合%は重量%である。
各組成物を50℃恒温槽内に静置し、1ヶ月後及び1.5ヶ月後の外観を目視判定し、結果を表2に示した。表中、○印は外観に変化が無く、×印は分離や沈殿が認められたことを示す。
[長期保存安定性試験―2]
イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、タンニン酸、及び水酸化ナトリウム(NaOH)を加えて、液体組成物A−6〜A−11を調製した。各液体組成物中の、(A)成分であるDEHA配合量は8重量%、(C)成分であるNaOH配合量は8重量%であり、(B)成分であるタンニン酸は表2に示された量をそれぞれ配合した。各液体組成物の最終pHはいずれも12以上であった。尚、表3のタンニン配合%は重量%である。
各組成物を50℃恒温槽内に静置し、1ヶ月後及び1.5ヶ月後の外観を目視判定し、結果を表2に示した。表中、○印は外観に変化が無く、×印は分離や沈殿が認められたことを示す。
表2の結果では、いずれの液体組成物も1ヶ月後の外観には変化が無かったが、A−10、A−11では1.5ヶ月後に分離や沈殿が認められた。このことから、(B)/(A)重量比が0.2以下の本発明の液体組成物は該重量比が0.2を超えた液体組成物に比べて保存安定性がやや良好であることが示された。
(実施例3)
[長期保存安定性試験―3]
表3に示す配合で、イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、各種の多価フェノール誘導体またはキノン誘導体、及び水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)を加えて、液体組成物A−12〜A−26を調製した。また、表3に示す配合で、イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)及び各種の多価フェノール誘導体またはキノン誘導体を加えて、液体組成物B−3〜B−17を調製した。液体組成物A−12〜A−26の最終pHはいずれも12以上であり、液体組成物B−3〜B−17の最終pHはいずれも10程度であった。尚、表3の配合%はいずれも重量%である。
[長期保存安定性試験―3]
表3に示す配合で、イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)、各種の多価フェノール誘導体またはキノン誘導体、及び水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)を加えて、液体組成物A−12〜A−26を調製した。また、表3に示す配合で、イオン交換水にN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)及び各種の多価フェノール誘導体またはキノン誘導体を加えて、液体組成物B−3〜B−17を調製した。液体組成物A−12〜A−26の最終pHはいずれも12以上であり、液体組成物B−3〜B−17の最終pHはいずれも10程度であった。尚、表3の配合%はいずれも重量%である。
液体組成物A−12〜A−26及び液体組成物B−3〜B−17を−5℃、25℃、50℃の各温度の恒温槽内で静置し、1ヶ月後の外観を目視判定した。結果を表4に示した。表中、○印は外観に変化が無く、×印は分離や沈殿が認められたことを示す。また、DEHA残留率(%)をヨウ素滴定法により測定し、その結果も表4に示した。
表4の結果によれば、液体組成物A−12〜A−26はいずれの温度においても外観に変化が無く優れた保存安定性を示すが、液体組成物B−3〜B−17はいずれの温度においても分離沈殿を生じ、保存安定性が劣った。また、DEHA残留率も液体組成物A−12〜A−26の方が液体組成物B−3〜B−17よりも高く、本発明の組成物はDEHAの分解を良好に抑制していることが示された。
(実施例4)
[脱酸素性能比較試験]
表3に示した液体組成物A−12〜A−26と液体組成物B−3〜B−17の脱酸素性能を、水中の溶存酸素の残留率の変化によって比較した。
A.試験装置
(1)溶存酸素計:飯島電子工業(株)製「B−100S」
(2)溶存酸素センサー:飯島電子工業(株)製溶存酸素測定電極「ワグニットGU−Y」を同社製の撹拌翼付き電極ホルダー「ワグニットホルダーPH−5」に取り付けたセンサー。
B.試験方法
下記の試験方法に基づいて溶存酸素濃度を測定した。
(1)40℃まで加温したイオン交換水を空気で曝気して飽和酸素溶液を調製する。
(2)その飽和酸素溶液を100mLフラン瓶に満杯になるまで加える。
(3)直ちに溶存酸素センサーをフラン瓶に差し込み、そのフラン瓶を40℃の恒温水槽内に静置する。
(4)速やかに撹拌翼を作動させて撹拌を開始し、溶存酸素濃度が10mg/L以下で安定するまで30分程度継続する。
(5)一度、溶存酸素センサーをフラン瓶から抜き、供試液体組成物を対試験溶液濃度300mg/Lになるように速やかに添加後、再び素早く溶存酸素センサーをフラン瓶に差し込むと同時に溶存酸素濃度の測定を開始する。
(6)測定開始0、0.5、1、2、3、4、5分経過後における溶存酸素濃度を溶存酸素計の表示から読み取る。
(7)読み取った溶存酸素濃度から溶存酸素残留率(%)を算出し、各液体組成物の脱酸素性能を比較した。溶存酸素残留率(%)は次式によって算出した。
溶存酸素残留率(%)=(経過時間後の溶存酸素濃度/0分時の溶存酸素濃度)×100
溶存酸素残留率が小さいほど、脱酸素反応が進行したことを示している。その結果を表5に示した。
[脱酸素性能比較試験]
表3に示した液体組成物A−12〜A−26と液体組成物B−3〜B−17の脱酸素性能を、水中の溶存酸素の残留率の変化によって比較した。
A.試験装置
(1)溶存酸素計:飯島電子工業(株)製「B−100S」
(2)溶存酸素センサー:飯島電子工業(株)製溶存酸素測定電極「ワグニットGU−Y」を同社製の撹拌翼付き電極ホルダー「ワグニットホルダーPH−5」に取り付けたセンサー。
B.試験方法
下記の試験方法に基づいて溶存酸素濃度を測定した。
(1)40℃まで加温したイオン交換水を空気で曝気して飽和酸素溶液を調製する。
(2)その飽和酸素溶液を100mLフラン瓶に満杯になるまで加える。
(3)直ちに溶存酸素センサーをフラン瓶に差し込み、そのフラン瓶を40℃の恒温水槽内に静置する。
(4)速やかに撹拌翼を作動させて撹拌を開始し、溶存酸素濃度が10mg/L以下で安定するまで30分程度継続する。
(5)一度、溶存酸素センサーをフラン瓶から抜き、供試液体組成物を対試験溶液濃度300mg/Lになるように速やかに添加後、再び素早く溶存酸素センサーをフラン瓶に差し込むと同時に溶存酸素濃度の測定を開始する。
(6)測定開始0、0.5、1、2、3、4、5分経過後における溶存酸素濃度を溶存酸素計の表示から読み取る。
(7)読み取った溶存酸素濃度から溶存酸素残留率(%)を算出し、各液体組成物の脱酸素性能を比較した。溶存酸素残留率(%)は次式によって算出した。
溶存酸素残留率(%)=(経過時間後の溶存酸素濃度/0分時の溶存酸素濃度)×100
溶存酸素残留率が小さいほど、脱酸素反応が進行したことを示している。その結果を表5に示した。
表5の結果より、本発明の液体組成物A−12〜A−26は高い脱酸素性能を示し速やかな脱酸素が行われるため、溶存酸素残留率は1分経過後から5分経過後でほぼゼロになるが、液体組成物B−3〜B−17では、ほとんどの組成物が5分経過後でも高い溶存酸素残留率を示し、脱酸素反応速度が遅いことが判る。
(実施例5)
[防食性能比較試験]
400番研磨紙で研磨仕上げした、寸法が1×13×75mmの炭素鋼製試験片(材質:JIS G3141 SPCC−SB)をアセトンで脱脂し乾燥後、試験前の質量を測定した。表6に示す液体組成物を1000mg/L添加した試験液100mLと試験片1枚をステンレス鋼製オートクレーブに入れ、温度180℃、蒸気圧0.7MPaを3日間維持した。試験水のカルシウム硬度は10mg/L、炭酸イオンと重炭酸イオン濃度の合計は300mgCaCO3/L、シリカは150mg/L、塩化物イオンは100mg/L、硫酸イオンは100mg/Lであった。また、液体組成物を添加しない無添加の試験も行った。
オートクレーブを冷却後、試験片を取り出して付着物の付着程度を目視判定し、その付着物を除去後、試験後の質量を測定し、次式より腐食速度を計算した。
腐食速度(mdd)=(W0−W1)/(S×T)
W0:試験前の質量(mg)
W1:試験後の質量(mg)
S:試験片の表面積(dm2)
T:試験期間(day)
結果を表7に示した。尚、液体組成物A−27〜A−32、B−21、B−22の最終pHは12以上であり、B−18〜B−20の最終pHは10程度であった。
[防食性能比較試験]
400番研磨紙で研磨仕上げした、寸法が1×13×75mmの炭素鋼製試験片(材質:JIS G3141 SPCC−SB)をアセトンで脱脂し乾燥後、試験前の質量を測定した。表6に示す液体組成物を1000mg/L添加した試験液100mLと試験片1枚をステンレス鋼製オートクレーブに入れ、温度180℃、蒸気圧0.7MPaを3日間維持した。試験水のカルシウム硬度は10mg/L、炭酸イオンと重炭酸イオン濃度の合計は300mgCaCO3/L、シリカは150mg/L、塩化物イオンは100mg/L、硫酸イオンは100mg/Lであった。また、液体組成物を添加しない無添加の試験も行った。
オートクレーブを冷却後、試験片を取り出して付着物の付着程度を目視判定し、その付着物を除去後、試験後の質量を測定し、次式より腐食速度を計算した。
腐食速度(mdd)=(W0−W1)/(S×T)
W0:試験前の質量(mg)
W1:試験後の質量(mg)
S:試験片の表面積(dm2)
T:試験期間(day)
結果を表7に示した。尚、液体組成物A−27〜A−32、B−21、B−22の最終pHは12以上であり、B−18〜B−20の最終pHは10程度であった。
表6の組成欄に略称で表示された化合物の内容は次の通りである。
DEHA:ジエチルヒドロキシルアミン
PAA−HEMA:β−メルカプトプロピオン酸で末端チオエーテル修飾したアクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの共重合体(共重合比85:15重量%、重量平均分子量約3000)
PAA−HPA:β−メルカプトプロピオン酸で末端チオエーテル修飾したアクリル酸とアクリル酸2−ヒドロキシプロピルの共重合体(共重合比85:15重量%、重量平均分子量約3000)
PAA:末端イソプロピルアルコール修飾したポリアクリル酸重合体(重量平均分子量約3000)
DEHA:ジエチルヒドロキシルアミン
PAA−HEMA:β−メルカプトプロピオン酸で末端チオエーテル修飾したアクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの共重合体(共重合比85:15重量%、重量平均分子量約3000)
PAA−HPA:β−メルカプトプロピオン酸で末端チオエーテル修飾したアクリル酸とアクリル酸2−ヒドロキシプロピルの共重合体(共重合比85:15重量%、重量平均分子量約3000)
PAA:末端イソプロピルアルコール修飾したポリアクリル酸重合体(重量平均分子量約3000)
表7の結果によれば、本発明の液体組成物であるA−27〜A−32の腐食速度はいずれも低く、付着物量も「なし」か「少量」であった。一方、本発明の液体組成物を構成する(A)〜(C)成分のいずれかが欠けているB−18〜B−22の液体組成物の腐食速度は高く、付着物量も「中程度」であった。以上のことより、本発明の液体組成物は優れた防食性能を有することが示された。
以上の実施例の結果から、本発明の液体組成物では、従来技術の問題点であるDEHAと活性化剤の一液組成物の保存安定性を、アルカリ金属水酸化物を加えて最終pHを12以上とする思わぬ方法で大幅に改善できることが示され、更に、該液体組成物は迅速な脱酸素性能と良好な防食性能を有することが確認された。従って、該液体組成物をボイラ水系に添加することによって良好な防食効果が期待できる。特に、小型貫流ボイラでは、通常は該液体組成物の一液を添加するだけの簡易な作業と管理によって缶水の低pHと高溶存酸素濃度問題の解決が期待でき、大幅な作業性向上とボイラの安定操業を図ることが可能であることが示された。
本発明の液体組成物をボイラ水系に適用することにより、簡易な作業と管理方法によって特に小型貫流ボイラにおける缶水の低pHと高溶存酸素濃度問題を解決でき、また、本発明の液体組成物は長期保存安定性が優れており、高温でも脱酸素剤成分の劣化が少ないため、長期にわたって防食性能を維持することができ、ボイラの安定操業に寄与できる。
Claims (4)
- 前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が0.01〜0.2の範囲であり、且つ、前記(A)成分に対する前記(C)成分の重量比が10以下である請求項1記載のボイラ防食用液体組成物。
- 前記(A)成分に対する前記(B)成分の重量比が0.01〜0.2の範囲であり、且つ、前記(A)成分に対する前記(C)成分の重量比が10以下である請求項3記載のボイラ防食用液体組成物をボイラ水系に添加するボイラ防食方法
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013206245A JP2015068631A (ja) | 2013-10-01 | 2013-10-01 | ボイラ防食用液体組成物及びそれを用いたボイラ防食方法 |
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---|---|---|---|---|
WO2021181723A1 (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-16 | 栗田工業株式会社 | ボイラにおける蒸発管の腐食疲労の抑制方法 |
WO2021181722A1 (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-16 | 栗田工業株式会社 | ボイラにおける蒸発管の腐食疲労の抑制方法 |
-
2013
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WO2021181723A1 (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-16 | 栗田工業株式会社 | ボイラにおける蒸発管の腐食疲労の抑制方法 |
WO2021181722A1 (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-16 | 栗田工業株式会社 | ボイラにおける蒸発管の腐食疲労の抑制方法 |
JP2021143793A (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-24 | 栗田工業株式会社 | ボイラにおける蒸発管の腐食疲労の抑制方法 |
JP2021143792A (ja) * | 2020-03-12 | 2021-09-24 | 栗田工業株式会社 | ボイラにおける蒸発管の腐食疲労の抑制方法 |
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