JP2015068434A - 断熱材ユニット及びこれを使用した伸縮継手並びに断熱材保持用可動ピン及びこれを使用した伸縮継手。 - Google Patents

断熱材ユニット及びこれを使用した伸縮継手並びに断熱材保持用可動ピン及びこれを使用した伸縮継手。 Download PDF

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Abstract

【課題】伸縮継手に用いられる断熱材ユニットの断熱材が熱変性により破断・粉化しても、これらを飛散させることなく保持し、前記断熱材ユニットの柔軟性と耐久性の維持を図り、更に前記断熱材ユニットを伸縮継手に収納した場合に、熱変性に伴う伸縮が有っても、前記断熱材ユニットを断裂させる事無く伸縮継手内で保持すること及びこれらの機能を備えた伸縮継手を提供する。
【解決手段】断熱材をメリヤス編みにした無機質繊維素材130で被覆することにより断熱材ユニット100を構成すると共に、前記断熱材ユニットを伸縮継手400内部に積層して配設し、前記積層した前記断熱材ユニットの少なくとも一層を、前記伸縮継手内部において、軸体310と、伸縮方向と平行に長孔を設けたピン保持部材320と、ワッシャー部材330とからなる断熱材保持用可動ピン300により保持した。
【選択図】図6

Description

本発明は、発電用ガスタービンから排気ダクトへの連結部等に採用される高温伸縮継手に関し、上記高温伸縮継手に使用される断熱材ユニットの構造、及び、上記断熱材ユニットを使用した高温伸縮継手、並びに、伸縮継手に用いられる断熱材ユニットの柔軟性および伸び変形性を最大限活用できる断熱材保持用可動ピン及び上記断熱材保持用可動ピンが使用された高温伸縮継手に係るものである。
従来から、発電用ガスタービンに接続される排気ダクト等の、高温の流体が通流する配管系の配管相互の結合部には、内部を通流する高温の流体による当該配管の熱膨張と収縮とを考慮して、伸縮性のある継手(伸縮継手)が用いられている。
そして、上記伸縮継手には配管内を流れる流体に対するシール性を確保するために、上記排気ダクト等の配管を構成する円筒等の構造の外周周りの接続箇所に、フッ素ゴムシートやPTFEシート等のシール部材を配置している。
しかし、上記接続箇所は極めて高温の流体が存在する過酷な環境下にあり、例えば発電用ガスタービンの排気ダクト等では600℃前後の高温環境にあることから、前記シール部材を許容耐熱温度以下に低減するため、流体とシール部材との間には、耐熱性のある、ガラス繊維系、シリカ繊維系又はセラミック繊維系等の無機質繊維系ブランケット状断熱材が用いられている。
このような構造を有した伸縮継手には、例えば特許文献1のような形状をしたものが存在している。そして、当該特許文献1の伸縮継手は、部材間に配置されるブーツと、当該ブーツを前記部材間に支持する2つの支持部と、これらブーツと2つ支持部とに囲まれた領域内に断熱材を充填し、上記断熱材を前記領域内に密封する密閉材とからなる構造を有している。
しかし、上記のように用いられるブランケット状断熱材には、配管内の温度変化による伸縮挙動によって当該断熱材を構成している繊維の折れや粉化が生じる上に、ダクト内の高速流体による負圧の影響を受けて、粉化した繊維が飛散して断熱材が欠損に至るという問題がある。
そこで、このような損傷を防止するために、特許文献2に記載されるように、ブランケット状断熱材をガラス繊維やシリカ等の無機質繊維系の織布部材によって被覆したユニット状の部材とした上で、必要に応じてそれらを単層および積層化して、円環状の鋼製伸縮継手の本体構造内に配置することが行われている。
しかし、上記特許文献2に記載されたような断熱材ユニットを構成している織布部材は、無機質の繊維を撚り糸状に加工したものを縦糸と横糸とし、これを平面的に直行させて織り込んだ織布形状のものが採用されており、ガスタービンの起動、停止に伴う収縮挙動により局部的に曲率の大きな屈曲が発生した場合には、前記縦糸と横糸とにより構成される繊維には大きな曲げ応力が発生する。そのため、そのような繰り返し伸縮挙動が発生することにより、繊維の折れにより損傷が発生する可能性が高いため、耐久性の低下という問題が懸念されていた。
また、上記のように600℃程度の高温の流体の晒された伸縮継手の、鋼鉄等により構成される本体部分は、接続された配管と同様に、熱膨張率に相当した熱伸びが、当該伸縮継手が接続された配管の軸線方向のみならず、これを取り巻く伸縮継手の外周方向にも発生する。この熱伸び量は例えば直径約5mの円環形状の伸縮継手では前記本体部分の材質によっては100mm程度に達する。また、前記伸縮継手内に収納された断熱材ユニット自体にも、その構成する素材自体が持つ熱膨張率によって、対応する温度に相当する熱伸びが発生する。
また、このような高温環境下で使用される前記断熱材ユニットを構成する無機質繊維等の前記織布部材は、その耐熱温度は高いが強度や破断時伸び率に温度依存性がある。具体的には、高温状態では強度が低下すると同時に、高温履歴を受けた素材は、当該素材が硬化する傾向にあるため、破断時の伸び率は低下する。
また、前記断熱材ユニットが、伸縮継手の収縮挙動により前記本体部分の内部空間の体積が縮小することに伴う高い圧縮状態にある場合には、上記断熱材ユニット自身が周囲の断熱材と相互的に強く拘束された状態になる領域(拘束領域)が、前記伸縮継手の外周上にわたって単数または複数箇所発生する可能性がある。こうした場合、当該拘束領域部分の断熱材ユニットには断熱材ユニット相互の摩擦抵抗力により、外周方向に対して本来は対応することが可能な、温度相当の熱伸びが発生しにくい状況となっている。
よって、前記拘束領域とは異なり、相対的に拘束を受けない領域(無拘束領域)部分での断熱材ユニットには、伸縮継手本体部分の外周方向の熱伸び挙動への追従量がより一層多く必要となる。そのため、上記無拘束領域において、断熱材ユニットが有する許容伸び率以上の伸びが発生した箇所では、織布繊維の破断面が円環周直角方向となる直線的な損傷が断熱材ユニットを構成する織布全幅にわたって生じ内部の断熱材が露出して、粉化や欠損に至る損傷を引き起こすことが問題となる。
更に、熱伸びをする伸縮継手本体上又は前記配管上に溶接固定されたピンによって断熱材ユニットが保持されている場合には、前記拘束領域内においてその外周方向のピン配置間隔が上記伸縮継手本体の熱伸び相当分増加するため、前記拘束領域内の断熱材ユニットの熱伸び量と相対的に大きな伸び差が発生することになる。そのため、この伸び差に起因して、ピン周辺の断熱材ユニットがあたかもピンに引っ張られるような損傷を受ける可能性があり、問題がある。
特開2008−25532号公報 特開2001−349485号公報
本発明は、上記の各問題の解決を目的としており、発電用ガスタービンから排気ダクトへの連結部等に採用される高温伸縮継手の断熱材ユニットに関して、上記断熱材ユニットの、熱伸縮に伴う構成物の飛散の防止と柔軟性の維持を、耐久性の向上を図りつつ有効に実現することを課題とする。
また、上記発電用ガスタービンから排気ダクトへの連結部等に採用される高温伸縮継手に関して、断熱材ユニットの構成物の飛散を防止し柔軟性を維持しつつ耐久性の向上した高温伸縮継手を実現することを課題とする。
さらに、上記高温圧縮継手に関し、上記高温伸縮継手の外周方向、すなわち、前記配管の外周が構成する閉曲線の径を拡大させる方向の伸縮にも、有効に対応が可能な断熱材ユニットを使用した高温伸縮継手の実現、及び、上記断熱材ユニットが熱履歴を受けて、上記断熱材ユニット内部に、周囲の断熱材と相互的に強く拘束された状態になる領域ができた場合であっても、織布繊維の破断が生じ内部断熱材が露出して、粉化や欠損に至る損傷を引き起こすことが無いような構造の実現、並びに、上記断熱材ユニットが熱履歴を受けて一様に伸縮しない場合であっても、上記断熱材ユニットの柔軟性および伸び変形性を最大限活用できる、当該断熱材ユニットの保持具を提供する事を課題とする。
上記課題を解決するために、第1の発明として、断熱材と、前記断熱材を被覆する繊維部材とから構成される断熱材ユニットであって、前記繊維部材は、無機質繊維素材を用いた編物により構成したことを特徴とする断熱材ユニットを提供する。
また、上記課題を解決するために、第2の発明として、前記断熱材と前記繊維部材とは、耐熱性のある縫製糸を用いて縫い合わせることにより一体化された、前記第1発明に記載の断熱材ユニット提供する。
また、上記課題を解決するために、第3の発明として、少なくとも2つの配管の接続に用いられる伸縮継手であって、前記伸縮継手は、少なくとも、一方の配管の外周側を取り巻くように立設された第1支持部と、他方の配管の外周側を取り巻くように立設された第2支持部と、前記第1支持部と前記第2支持部とに接続され、前記第1支持部と前記第2支持部とを外周側から取り巻くように形成されたブーツと、前記一方の配管と前記第1支持部との接合部側と前記他方の配管と前記第2支持部との接合部側との間で、前記2つの配管の外周を取り巻くように配設された断熱材ユニットサポート部材とを備え、前記第1支持部、前記第2支持部、前記ブーツ、及び前記断熱材ユニットサポート部材との間に形成される断熱材領域の内部に、前記第1発明又は前記第2発明に係る断熱材ユニットを前記配管の軸線方向とは垂直に積層して配設することを特徴とする伸縮継手を提供する。
また、上記課題を解決するために、第4の発明として、少なくとも2つの配管の接続に用いられ、ブランケット状又はフェルト状の断熱材を積層して用いる伸縮継手に使用される断熱材保持用可動ピンであって、前記断熱材保持用可動ピンは、軸状に形成される軸体と、前記軸体の一端側を配管側に保持するためのピン保持部材と、前記軸体の他端側に配設されると共に前記伸縮継手に使用される断熱材を保持するワッシャー部材とから成り、前記ピン保持部材には前記軸体の一端側を前記軸体の軸線とは平行な方向に移動することを可能とするための長孔が設けられており、前記ワッシャー部材は、中央部に前記軸体の他端側を貫通させるための孔を有することを特徴とする断熱材保持用可動ピンを提供する。
また、上記課題を解決するために、第5の発明として、前記第3発明に係る伸縮継手において、前記積層して配設した少なくとも一層の断熱材ユニットについて、前記第4発明に係る断熱材保持用可動ピンにより保持した伸縮継手であって、前記断熱材保持用可動ピンの前記ピン保持部材は、前記断熱材サポート部材と前記配管との間に配設されて配管側に固定されると共に、前記ピン保持部材に設けられた長孔は前記配管の外周に沿った方向に設けられ、前記軸体の一端は前記ピン保持部材に保持されると共に、他端は前記断熱材サポート部材側から前記断熱材ユニットを貫通して前記断熱材ユニットの前記断熱材サポート部材側とは反対側に突出しており、前記ワッシャー部材は、前記軸体の前記突出した側から、前記軸体にはめ込まれて前記断熱材ユニットを保持することを特徴とする伸縮継手を提供する。
本発明に係る断熱材ユニットによれば、前記断熱材ユニットを構成する断熱材が、無機質繊維材を用いた編物により被覆されているため、縦糸と横糸とを直行させて構成される織布とは異なり、熱変化による繰り返し伸縮挙動が加わった場合でも、編み構造による柔軟性により低応力状態で追従する事が可能である。そのため、前記断熱材ユニットに生ずる損傷可能性を低減させ、長寿命化が可能であり、断熱材を構成する材料の破断・粉化があった場合でも、これらの飛散を有効に防止する事が可能である。
また、本発明に係る前記断熱材ユニットを使用した伸縮継手によれば、前記断熱材ユニットの採用により、伸縮継手内の温度変化により、断熱材を構成する物質が破断・粉化した場合であっても、これら構成物の飛散を防止しつつ、断熱材ユニットの破断が妨げられ、耐久性も向上し、高温環境にも対応できる伸縮継手を実現することが可能である。
また、本発明に係るブランケット状又はフェルト状の断熱材を積層して用いる伸縮継手に使用される断熱材保持用可動ピンによれば、当該伸縮継手に使用される断熱材が、伸縮継手内で熱変動により伸縮し、又は、熱変性により伸縮性に部分的な差異を生じた場合であっても、断熱材の破断や断裂を生じる事無く、前記断熱材を保持する事が可能である。
さらに、本発明の前記断熱材ユニットを積層して配し、その保持のために、前記断熱材保持用可動ピンを使用した本発明に係る伸縮継手によれば、配管の軸線方向の伸縮のみならず、前記配管の外周を構成する閉曲線の径を拡大させる方向の伸縮が生じた場合であっても、前記断熱材ユニットに生ずる損傷可能性が低減され、断熱材を構成する物質が破断・粉化した場合であってもこれらの構成物が飛散する事が無く、前記断熱材保持用可動ピンにより、これら断熱材ユニットに断裂を生じさせる事なく保持する事が可能であるため、更に耐久性が向上し、高温環境にも対応できる伸縮継手を実現することが可能である。
図1は、本発明の第1発明に係る断熱材ユニット100の外観図であり、図1(A)は、その斜視図、図1(B)は、図1(A)のI−I線に沿った断面図である。 図2は、繊維部材120の一部を拡大した図である。 図3は、本発明の第2発明に係る断熱材ユニット150の外観図であり、図1(A)は、その斜視図、図3(B)は、図3(A)のI−I線に沿った断面図、図3(C)は図3(B)とは縫い方の異なる、同じく図3(A)のI−I線に沿った断面図である。 図4は、本発明の第3発明に係る伸縮継手の実施形態における要部の縦断側面図である。 図5は、本発明の第4発明に係る断熱材保持用可動ピンの斜視図であり、図5(A)はこれをワッシャー部材方向から見た斜視図、図5(B)はこれをピン保持部材方向から見た斜視図である。 図6は、本発明の第5発明に係る伸縮継手の実施形態における要部の縦断側面図である。 図7は、伸縮継手の熱膨張の説明図であり、図7(A)はその概略の説明図、図7(B)は図7(A)で示した領域Sの部分を例とした説明図である。 図8は、伸縮継手の熱膨張の説明図であり、図8(A)はピン止めが無い場合の説明図、図8(B)は従来型のピン止めがある場合の説明図である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において構成が重複する部分については、適宜説明を省略し、図面中の重複する部分については、適宜表記を省略する。
図1、図2は、本発明のうち、請求項1に記載した第1発明の実施形態である、断熱材ユニット100の構成を示したものである。ここで、図1(A)は、その基本構成を示す斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のI−I線に沿った断面図である。また、図2は、繊維部材120の一部を拡大した図である。
本実施形態の断熱材ユニット100は、図1(A)、(B)及び図2で示したように、断熱材110と、前記断熱材110を被覆する繊維部材120とから構成されており、前記繊維部材120は、無機質繊維素材130を用いた編物により構成したことを特徴としている。
ここで、前記断熱材ユニット100の外形は、図1(A)に示すように、概ね平板状に構成されており、その厚さは、6〜200mm程度であるが、特に限定されるものではなく、断熱材ユニットとして使用する機械・器具・装置等への取付場所や、使用方法、熱環境等に合わせて、円環状や長方形状に形成する等、厚さや形状も任意に構成して使用する事が可能である。
また、断熱材110は、ガラス繊維系、シリカ繊維系、セラミック繊維系の耐熱性のある無機質繊維系ブランケット状断熱材を用いているが、ロックウールやフェルト状断熱材等、前記無機質繊維系ブランケット状断熱材同様に用いられるものでも良い。
また、繊維部材120は、上記のように、前記断熱材110を被覆する無機質繊維素材130を用いた編物により構成されている。このうち、前記無機繊質維素材130の材質としては、ガラス繊維、高強度ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などを用いるが、耐熱性があり繊維をメリヤス等の編み糸として加工できる材質であれば特に限定を設けるものではなく、同一の繊維素材又は異なる繊維素材を用いて構成しても良い。また、上記編み糸の太さについては、本発明の趣旨に応じて選択する事が可能であり、例えば、9μm程度のファイバー径を有する素材を800本程度撚って一本の糸としたものなどを使用しても良い。
また、上記の編物とは、糸を編む事によって構成される布である。図2の繊維部材120の一部拡大図で前記無機質繊維素材130の編み編成の一例を示したように、編物は、糸で形成された輪奈(ループ)の中に、他の糸で形成したループを通し、ループ同士を相互に連結することによってつくられる。そして、当該連結方法を変えることにより、各種の編物が得られ、工業的な編機を使用して生産される編物はメリヤスやニットと呼ばれている。
前記図2に示した本実施形態の無機質繊維素材130の編み構造は、よこ編に大別される編物の一例であり、当該よこ編は布の幅方向に供給された糸にループを形成し、これを順次長さ方向に連結させる事で布を形成するものである。そして、図2に示したように、編物では、布の長さ方向Wの編目列をウェールといい、幅方向Cの編目列をコースと呼称されている。
本発明では、前記無機質繊維素材130の編み方は、たて編でもよこ編でもよく、更に、用いる場所や温度環境等に応じ、丸編、ゴム編、平編、両面編、パール編、シングルアトラス編、シングルトリコット編、シングルコード編、プレーントリコット編、ハーフトリコット編、クイーンズコード編等何れでも良いが、前記無機質繊維素材130は、熱伸縮に対応して、前記断熱材110を被覆してその伸長に対応するものであるため、前記断熱材ユニット100を取り付ける部分の熱環境に応じた編み方を選択する事が望ましい。また、編み糸の密度は少なくとも10〜15本/25mm、目付け量は100〜700g/m2程度が望ましいが、上記同様に、前記断熱材ユニット100を取り付ける部分の熱環境に応じた選択をする事が望ましい。
また、上記編物の伸びは、編目を構成する糸のループの変形と相互のずれ、糸の伸びによって生ずるが、一般的には、上記図2に示したようなコース方向Cの伸びが、ウェール方向Wの伸びよりも大きい。したがって、上記断熱材ユニット100に用いる場合には、より多く伸縮が予想される方向にコース方向Cをあわせる事が望ましいが、それに限らず、前記断熱材ユニット100が長方形状に構成される場合には、その長手方向にウェール方向Wを合わせて構成する事も可能である。
上記のように構成した本発明に係る断熱材ユニットによれば、前記断熱材ユニット100を構成する断熱材110が、無機質繊維素材130を用いた編物により構成される繊維部材120により被覆されている。そのため、前記繊維部材120に熱変動による繰り返し伸縮挙動が加わった場合でも、前記繊維部材120を構成する無機質繊維素材130の編み構造による柔軟性により、低応力状態で、そうした挙動に追従する事が可能である。
したがって、前記繊維部材120に、熱変動による収縮挙動により局部的に曲率の大きな屈曲が発生し、前記無機質繊維素材130に大きな曲げ応力が発生した場合にも、当該繊維素材130の折れにより損傷が発生する可能性が低くなり、耐久性を向上させることが可能である。
また、このように前記繊維部材120が構成されている結果、前記断熱材110が熱変動を受ける事により、その構成材に断裂や粉化が生じた場合であっても、前記繊維部材120が効果的に前記断熱材110を被覆するため、前記断熱材110を構成する物質の飛散を有効に防止する事が可能である。
次に本発明のうち、請求項2に記載した第2発明に係る断熱材ユニットの実施形態である断熱材ユニット150について説明する。
図3は、上記断熱材ユニット150の外観を現したものであり、上記第1発明として記載した断熱材ユニット100と基本的な構成は同様である。したがって、本断熱材ユニット150も、断熱材110とこれを被覆する繊維部材120とからなり、前記繊維部材120は無機質繊維素材130による編物により構成されている。
しかし、本断熱材ユニット150では、さらに、前記断熱材110と繊維部材120とは、前記断熱材ユニット150を構成する平板の表面と裏面において、図1(A)に示すように、耐熱性のある縫製糸160により、適当な間隔をおいて、ユニット全体の伸縮を阻害しないようなソーイング処理により一体化されている。ここで、耐熱性のある縫製糸には、例えばステンレス製金属繊維素材や無機質繊維素材などを用いる事もでき、また、上記縫製糸の太さは、本発明の趣旨に応じて選択が可能であるが、例えば、ファイバー径12μm程度の素材を撚って一本の糸とした、太さ0.33mm、目付量0.32g/m程度のものを用いても良い。
また、ソーイング処理による縫製の縫目形式としては、本縫い、単環縫い、二重環縫い、縁かがり縫い、安全縫い、扁平縫い等いずれを用いても良いが、編目構造を有する繊維素材130により形成される繊維部材120の柔軟性を生かす縫製方法を採用する事が望ましい。
そして、前記ソーイング処理は繊維部材120の表面乃至裏面に、あらかじめ皺やダブつきまたは過度な伸びが発生しないよう適切に行われる。
また、前記断熱材110と繊維部材120との上記縫製による一体化は、図3(B)に示したように、縫製糸160を上記断熱材ユニット150の表面と裏面との間に貫通させる事によって行っても良いが、貫通させずに、図3(C)に示すように、断熱材110の上記表面乃至裏面付近の部分とそこに面した繊維部材120だけを当該表面乃至裏面付近のみで縫い合わせて構成しても良い。
このように構成された、本第2発明の断熱材ユニット150によれば、上記断熱材110と繊維部材120とを耐熱性のある縫製糸160を用いて縫製により一体化させることより、上記断熱材110と繊維部材120とが伸縮する場合の追従性を向上させ、相互の寸法変動に対する対応性を向上させることが可能であり、断熱材110の破断が生じた場合であっても、その影響を最小限に抑えることが可能である。
次に、本発明のうち、請求項3に記載した第3発明に係る伸縮継手の実施形態である、伸縮継手200について説明する。
図4は、上記第3発明に係る伸縮継手の実施形態における要部の縦断側面図を示したものである。なお、ここで、縦方向とは前記伸縮継手が接続する配管の軸線方向をいい、上記縦断面図は、この軸線方向の断面を採ったものであり、上記要部は、軸線に沿って対象に得られる断面図の一方を示している。
本第3発明に係る伸縮継手200は、図4に一部のみ示した、2つの配管500Aと500Bとの接続に用いられる。これらの配管には、例えば、火力発電所や製鉄所、各種プラント施設等における排ガスダクト等がある。本図4に示す場合には、配管内部の流体は、配管500A側から配管500B側に通流している。
また、前記伸縮継手200には、連結する一方の配管500Aの外周側を取り巻くように第1支持部210が立設され、同様に、他方の配管500Bの外周側を取り巻くように第2支持部220立設されている。これら第1支持部210と第2支持部220とは鋼や耐熱性合金などの素材で形成されており、更に、図4では配管表面に対して傾斜をつけて設けられているが、垂直に設けても構わない。
また、前記第1支持部210と前記第2支持部220との外周側には、それぞれ接続部217と接続部227とが設けられ、これらの接続部を介して、これら前記第1支持部210と前記第2支持部220とを外周側から取り巻くように形成され、上記伸縮継手200をシールする、ブーツ230が接続されている。ここで、ブーツ230の構成材には、シール性を確保することが可能であり、伸縮性と耐久性がある材質のものが望ましいため、フッ素ゴムシートやPTFEが用いられる。
さらに、前記一方の配管500Aと前記第1支持部210との接合部側215と前記他方の配管500Bと前記第2支持部220との接合部側225との間には、前記2つの配管500Aと500Bとの連結部の外周を取り巻くように配設された、断熱材ユニットサポート部材240が備えられている。
前記断熱材ユニットサポート部材240は、前記第1支持部210、前記第2支持部220、前記ブーツ230、と共に、これら内部に空間(断熱材領域)を形成しており、前記断熱材領域の内部に、本発明のうち、請求項1に記載された第1発明(又は請求項2に記載された第2発明)に係る断熱材ユニット100(又は150)が配設された場合には、これを前記断熱材領域内に配管側から保持する。そのため、前記断熱材サポート部材240の素材には、耐熱性金属メッシュや金属箔等を用いている。
また、前記断熱材領域内部には、上述したように、請求項1に記載された第1発明(又は、図示しないが請求項2に記載された第2発明)に係る断熱材ユニット100(又は、図示しないが150)を前記配管500A乃至500Bの軸線方向とは垂直方向に積層して配設する。上記断熱材ユニット100(又は150)の積層は、配管内部を通流する流体からブーツ230への到達温度を所定の温度まで低減させるために行われる。そして、図4に示す本伸縮継手200の場合には5層としているが、積層数は温度条件等により適宜最適なものを選択する。
また、上記のように断熱材ユニット100(又は150)を積層して、前記断熱材領域の内部に収納する場合には、その層間に前記断熱材ユニット100(又は150)相互間の拘束力による摩擦力低減のため、アルミやステンレス又はインコネルのような耐熱性のある金属箔を敷設することで、損傷を更に低減する事が可能である。
また、前記第1支持部210が立設されている前記配管500Aの内周側には、前記配管500Bの方向に向かって、前記断熱材サポート部材240が流路側に対面しないように、フローライナー270が配設されており、流体の流路をガイドする構成としている。
上記のように構成される伸縮継手200は、上記断熱材ユニット100(又は150)を使用する事により、従来型の伸縮継手に対して、次のような更に有益な作用を有する。
図7は、ダクト等の配管が円管である場合に、当該円管の周囲に設けられた従来型の伸縮継手の、当該円管の軸線方向に垂直な断面から見た熱膨張の説明図であり、図7(A)はその概略を示す説明図、図7(B)は図7(A)の一部であるS領域を例として熱膨張時の熱伸び差を説明する説明図である。そして、図中で伸縮継手をEJ、断熱ユニットをHU、熱により膨張する方向と大きさとを矢印で示している。
図7(A)に示すように、従来型の伸縮継手が用いられる配管が円管である場合には、当該伸縮継手もそれを囲むように円形に構成される。
また、上記のような配管内を、例えば600℃程度の高温流体が通流した場合、前記伸縮継手の耐熱性を高めるために構成材をSUS系(熱膨張率:約10〜17×10−6/℃)の材料を用いた場合であっても、上述したように直径約5mの円環状の伸縮継手の場合、円周が100mm程度増加し、その増加量は、高温流体に接触する円周内側部分が最も大きく、円周外側になるにつれて、断熱及び放熱による温度低下のために小さくなる。
一方、従来型の伸縮継手の断熱材として良く採用されるシリカ(S)の熱膨張率は1×10−6/℃未満であり、上記のような伸縮継手本体の熱膨張率とは大きな差異があり、加えて熱履歴を受けた断熱材は熱依存性により強度が劣化するため、破断時のひずみが小さくなる。
そのため、熱膨張時の熱伸び量の差は、図7(B)で示したように伸縮継手EJ本体と断熱材ユニットHUとの接触面で大きく異なる事になる。
こうした場合、従来型の断熱材ユニットに用いられる一般的な繊維部材が破断するケースは、図8に示す説明図のように、図8(A)のピン止めが無い場合と、図8(B)の従来型のピン止めがある場合に分けられる。そしてここで、ピン止めが用いられない場合については、次のように考えることが可能である。(なお、図8において、断熱材ユニットHUの外周に沿って離して設けた線は、当該断熱材ユニットHUの内部に形成される拘束領域と無拘束量域とを仮定して表したものである。)
すなわち、図8(A)に示すように、ピン止めがない場合には、温度変動により、前記伸縮継手EJの円周方向の長さが短縮する場合には、内部の断熱材ユニットHUがお互いに強く圧縮される状態になるが、その度合いによっては、断熱材ユニットHU内部に、その圧縮力や摩擦力により熱伸びが大きく制限される拘束領域が発生する可能性がある。
そして、当該拘束領域部分では熱伸びが抑制されるため、上記収縮後に更に温度環境が変化し、加熱されることにより熱伸びが生ずる場合には、断熱材内部の上記拘束領域以外 (無拘束領域)の部分でその分の熱伸びを補う必要がある。しかし、上記断熱材ユニットHU内部の当該無拘束領域での熱伸び量は、本来的には許容可能な小さい状態から、さらに引き延ばされて増加することになるため、素材の破断時ひずみ量を上回ると前記繊維部材が破断する結果となり、これに伴い、当該断熱材ユニットHUにも断裂が生ずる事となる。
これに対して、上記のように構成される本第3発明に係る伸縮継手200によれば、前記断熱材領域の内部に第1発明(又は第2発明)による前記断熱材ユニット100(又は150)を充填したことにより、温度変化により伸縮継手が伸縮し、前記断熱材ユニット100(又は150)を構成する断熱材110の構成物質が破断・粉化した場合であっても、前記無機質繊維材130が編物により構成されているため、上記断熱材110の外部を被覆する繊維部材120が断裂する事が無いため、前記断熱材110を構成する物質の飛散を防止しつつ、断熱材ユニット100(又は150)の断裂が妨げられ、耐久性も向上し、高温環境にも対応できる伸縮継手を実現することが可能である。
また、上記断熱材ユニット100(又は150)を積層することで、更に断熱性が向上し、火力発電所や製鉄所、各種プラント施設等における排ガスダクト等の連結部に使用される高温伸縮継手として機能することが可能である。
次に、本発明の請求項4に記載した第4発明に係る少なくとも2つの配管の接続に用いられ、ブランケット状又はフェルト状の断熱材を積層して用いる伸縮継手に使用される断熱材保持用可動ピンの実施形態300について説明する。
図5は、上記第4発明に係る断熱材保持用可動ピンの実施形態300の斜視図を示したものであり、図5(A)は上記実施形態300の軸体310をワッシャー部材330の方向から見た斜視図であり、図5(B)は上記軸体310をピン保持部材320の方向から見た斜視図である。
本断熱材保持用可動ピン300は、鋼若しくは耐熱性合金等を素材に用いて形成され、図5に示すように、軸状に形成される軸体310と、前記軸体310の一端側を配管側に保持し断熱材を一方の面から保持するためのピン保持部材320と、前記軸体310の他端側に配設されると共に前記伸縮継手に使用される断熱材を他方の面から保持するワッシャー部材330とから成り、前記ピン保持部材320には前記軸体の一端側を前記軸体の軸線とは平行な方向に移動することを可能とするための長孔325が設けられており、前記ワッシャー部材330は、中央部に前記軸体310の他端側を貫通させるための孔335を有している。
また、前記軸体310の一端側は、前記ピン保持部材320に設けられた長孔325を貫通していると共に、その末端には、前記ピン保持部材320からの抜け防止部313が形成されている。そして、前記軸体310の他端側は上記ワッシャー部材330の孔335を貫通していると共に、その末端は、先細に形成されており、当該先細部分と貫通させたワッシャー部材330側との間には、ワッシャー抜け防止突起315が設けられていて、上記孔335の外縁上に設けられた、前記ワッシャー抜け防止突起を貫通させるための切り欠き部(図示しない)を通じて前記ワッシャー抜け防止突起315を通過させないと、前記軸体310がワッシャー部材330を貫通できないように構成されている。
また、前記ピン保持部材320は、断面が概ね「コ」の字状に形成されており、前記「コ」の字状を構成する辺の中央部分に上記長孔325が設けられており、前記「コ」の字状を構成する辺に三方を囲まれる側に前記軸体310の一端側に設けられた前記抜け防止部313が配置されるように構成されている。
上記のように構成された断熱材保持用可動ピン300により、伸縮継手に積層して充填された断熱材を保持する場合には、前記ピン保持部材320の「コ」の字を形成する辺の開放端側を配管又は伸縮継手に溶接等により接続し、前記ピン保持部材320と前記ワッシャー部材330との間に、前記伸縮継手内に積層して充填されたブランケット状又はフェルト状等の断熱材をその中に挟みこむように配設して、上記軸体310を貫通させて保持する。
その際、前記ピン保持部材320に設けられた長孔325は、前記挟み込む断熱材の伸張が予想される方向と同一方向を向けて置くことが望ましい。また、前記挟み込む断熱材の層は、積層された層の全部でも良いが、特に伸縮率の大きい配管側に近い層に限定して、より伸縮の大きい断熱材の保持を行なう事としても良い。
そして、上記のように、断熱材保持用可動ピン300により挟み込まれた、上記ブランケット状又はフェルト状等の断熱材が、前記伸縮継手内の温度変動によって伸縮した場合には、上記断熱材の伸縮に応じて、断熱材を貫通して保持する前記軸体310が、前記ピン保持部材320の長孔325の孔の方向に沿って、前記断熱材を保持したまま平行移動する。そのため、伸縮継手において、温度変化によりその内部に充填された断熱材が伸縮した場合であっても、上記断熱材保持用可動ピン300により、上記断熱材を、伸縮に伴う断裂を生じせる事無く保持することが可能である。
次に、本発明の請求項5に記載した第5発明の実施形態である、伸縮継手400について説明する。
上記伸縮継手400の基本構造は、図6に示したように、請求項3に記載された第3発明の伸縮継手200において、前記積層して配設した少なくとも一層の前記請求項1に記載した第1発明(又は図示しないが前記請求項2に記載した第2発明)の断熱材ユニット100(又は図示しないが150)を、請求項4に記載した第4発明の断熱材保持用可動ピン300により保持したものとなっている。なお、ここで、上記保持する断熱材ユニット100(又は150)の層は、上記伸縮継手400の配管側から外周側にかけて一層・二層・・・と起算する。
そして、前記断熱材保持用可動ピン300の前記ピン保持部材320は、前記断熱材サポート部材240と前記配管(500A、500B)との間に配設されて前記配管側に固定されると共に、前記ピン保持部材320に設けられた長孔325は前記配管の外周に沿った方向(図6の紙面に垂直な方向)に設けられる。
更に、前記軸体310の一端は前記ピン保持部材320に保持されると共に、他端は前記断熱材サポート部材240の側から前記断熱材ユニット100(又は150)を貫通して前記断熱材ユニット100(又は150)の前記断熱材サポート部材側とは反対側に突出しており、前記ワッシャー部材330は、前記軸体310の前記突出した側から、前記軸体310にはめ込まれて前記断熱材ユニット100(又は150)を保持している。なお、本伸縮継手400の場合には、前記断熱材ユニット100(又は150)を五層設けているが、温度環境等に応じて、設ける層は調整可能であり、また、一層だけ、前記断熱材保持用可動ピン300により保持しているが、当該保持する層の数も、熱環境等により調整することが望ましい。
上記のように構成される本第5発明に係る伸縮継手400は、次のように、従来型の伸縮継手とは異なり、上記第1発明から第4発明により得られる効果に加え、これらの相乗効果により、断熱材内部の破断や紛化が生じても、断熱材を被覆する繊維部材の高柔軟化とこれを保持する可動ピンの採用により、更に耐久性を備えた高温環境にも対応可能な伸縮継手として機能することが可能である。
すなわち、前記第3発明の伸縮継手200において説明した、図7に示すような在来型の伸縮継手において、従来型のピン止めPが使用されている場合に、一般的に使用される繊維部材が破断するケースは、図8(B)に示す説明図のようになる。(なお、ここで、従来型の断熱材保持用のピン止めをPと表す。)
上記、図8(B)に示すように、従来型のピン止めPがある場合には、伸縮継手EJ本体に溶接固定された従来型のピン止めPは当該伸縮継手EJの熱伸びに追従して間隔が広くなるが、上記拘束領域内に上記従来型のピン止めPがある場合には、当該ピン止めPの間隔の拡大(図では強制変位領域と表現)に断熱材ユニットHUの熱伸び量の増加が追従できずに、あたかも上記従来型のピン止めPによって引き裂かれるような破断が生じる可能性がある。
これに対して、本第5発明では、断熱材の被覆に用いられる従来型の繊維部材とは異なり、編物により構成される更に柔軟な繊維部材120を用いているため、上記のような破断に対する耐性が高く構成されている。更に、断熱材110内部に上記のような拘束領域が出来たことにより、伸縮継手400内部に収納された断熱材ユニット100(又は150)に、部分的に大きな伸縮が生じた場合であっても、当該伸縮に応じて断熱材保持用可動ピン300が上記伸縮方向に沿って平行移動し、当該伸縮に追従することが可能である。そのため、上記断熱材ユニット100(又は150)及び断熱材保持用可動ピン300を用いた伸縮継手400を構成することにより、更に耐久性を備えた、高温環境にも対応可能な伸縮継手として機能させることが可能である。
本発明の請求項1に記載した第1発明(又は、請求項2に記載した第2発明)の断熱材ユニット100(又は150)について、被覆材として適用する無機質繊維素材130のうち、通常のガラス繊維と比較してSiOおよびAlO等の含有比率を増加させた高強度ガラス繊維糸を採用してメリヤス編みを行った生地を実施例として、これに対して屈曲性能試験および伸び性能試験を実施した。
屈曲性能試験については、糸の密度が縦糸横糸とも13本/25mm、目付け量680g/m2、 幅25mm、厚さ0.8mmのメリヤス編みをした生地状試験体を小型電気炉にて650℃×3時間×2サイクルの大気雰囲気による加熱処理を実施後、室温にてチャック間20mm、運動距離15mmの試験機にセットして、毎分40回の往復運動で試験体を屈曲させ、2000回屈曲後の試験体状況を観察をした。
伸び性能試験については、上記同様の、幅25mm、厚さ0.8mmのメリヤス編みをした生地状試験体を小型電気炉にて650℃×3時間×2サイクルの大気雰囲気による加熱処理を実施後、室温にてチャック間120mmの試験機にセットして引張速度50mm/分で試験体を伸長させ、試験体破断時のチャック間距離を測定することで破断時伸び率の算定をした。
比較例1として、Eガラス繊維を用いて縦糸、横糸を交互に織り込んだ厚さ1.7mmの平織りの織布について同様の加熱条件にて、屈曲性能試験および伸び性能試験を実施した。
また、比較例2として、シリカ成分が95%以上のシリカ繊維を用いて縦糸、横糸を交互に織り込んだ厚さ0.5mmの平織りの織布について同様の加熱条件にて、屈曲性能試験および伸び性能試験を実施した。
表1に屈曲性能試験結果および伸び性能試験における試験体破断時の伸び率算定結果を示す。表内の伸び性能試験値は今回の実施例の破断時伸び率を100とした場合の比較例の破断時伸び率の相対数値を示している。数値は各々3試験体の平均値である。

表1から明らかなように、屈曲性能試験におけるメリヤス編みをした編物は従来用いられている各織布素材と比較して高温履歴を受けた状態においても、外観上繊維には特に異常は見受けられず高い屈曲性能があることが確認された。
また、表1から明らかなように、メリヤス編みをした編物は従来用いられている各織布素材と比較して高温履歴を受けた状態においても約3〜5倍の伸び性能を有しており、高い伸び性能があることが確認された。
よって、メリヤス編みを採用した布状編物によって断熱材110を被覆して断熱材ユニット100(又は150)を形成することで、メリヤス構造が有する高い屈曲性能や伸び性能が収縮時に生じる屈曲や円環円周方向への熱伸び追従性に寄与して断熱材ユニット110の損傷を低減する効果があることが確認された。
100 第1発明に係る断熱材ユニット
110 断熱材
120 繊維部材
130 無機質繊維素材
150 第2発明に係る断熱材ユニット
160 縫製糸
200 第3発明に係る伸縮継手
210 第1支持部
217 接続部
220 第2支持部
227 接続部
230 ブーツ
240 断熱材ユニットサポート部材
270 フローライナー
300 断熱材保持用可動ピン
310 軸体
313 抜け防止部
315 ワッシャー抜け防止突起
320 ピン保持部材
325 長孔
330 ワッシャー部材
335 孔
400 第5発明に係る伸縮継手
500A 配管
500B 配管
HU 断熱材ユニット
EJ 伸縮継手
P 従来型のピン止め
図1、図2は、本発明のうち、第1発明の実施形態である、断熱材ユニット100の構成を示したものである。ここで、図1(A)は、その基本構成を示す斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のI−I線に沿った断面図である。また、図2は、繊維部材120の一部を拡大した図である。
次に本発明のうち、第2発明に係る断熱材ユニットの実施形態である断熱材ユニット150について説明する。
次に、本発明のうち、第3発明に係る伸縮継手の実施形態である、伸縮継手200について説明する。
前記断熱材ユニットサポート部材240は、前記第1支持部210、前記第2支持部220、前記ブーツ230、と共に、これら内部に空間(断熱材領域)を形成しており、前記断熱材領域の内部に、本発明のうち、第1発明(又は第2発明)に係る断熱材ユニット100(又は150)が配設された場合には、これを前記断熱材領域内に配管側から保持する。そのため、前記断熱材サポート部材240の素材には、耐熱性金属メッシュや金属箔等を用いている。
また、前記断熱材領域内部には、上述したように、第1発明(又は、図示しないが第2発明)に係る断熱材ユニット100(又は、図示しないが150)を前記配管500A乃至500Bの軸線方向とは垂直方向に積層して配設する。上記断熱材ユニット100(又は150)の積層は、配管内部を通流する流体からブーツ230への到達温度を所定の温度まで低減させるために行われる。そして、図4に示す本伸縮継手200の場合には5層としているが、積層数は温度条件等により適宜最適なものを選択する。
次に、本発明の第4発明に係る少なくとも2つの配管の接続に用いられ、ブランケット状又はフェルト状の断熱材を積層して用いる伸縮継手に使用される断熱材保持用可動ピンの実施形態300について説明する。
次に、本発明の第5発明の実施形態である、伸縮継手400について説明する。
上記伸縮継手400の基本構造は、図6に示したように、第3発明の伸縮継手200において、前記積層して配設した少なくとも一層の前記第1発明(又は図示しないが前記第2発明)の断熱材ユニット100(又は図示しないが150)を、第4発明の断熱材保持用可動ピン300により保持したものとなっている。なお、ここで、上記保持する断熱材ユニット100(又は150)の層は、上記伸縮継手400の配管側から外周側にかけて一層・二層・・・と起算する。
本発明の第1発明(又は、第2発明)の断熱材ユニット100(又は150)について、被覆材として適用する無機質繊維素材130のうち、通常のガラス繊維と比較してSiOおよびAl等の含有比率を増加させた高強度ガラス繊維糸を採用してメリヤス編みを行った生地を実施例として、これに対して屈曲性能試験および伸び性能試験を実施した。



Claims (5)

  1. 断熱材と、前記断熱材を被覆する繊維部材とから構成される断熱材ユニットであって、前記繊維部材は、無機質繊維素材を用いた編物により構成したことを特徴とする断熱材ユニット。
  2. 前記断熱材と前記繊維部材とは、耐熱性のある縫製糸を用いて縫い合わせることにより一体化された、請求項1に記載の断熱材ユニット。
  3. 少なくとも2つの配管の接続に用いられる伸縮継手であって、
    前記伸縮継手は、少なくとも、一方の配管の外周側を取り巻くように立設された第1支持部と、他方の配管の外周側を取り巻くように立設された第2支持部と、
    前記第1支持部と前記第2支持部とに接続され、前記第1支持部と前記第2支持部とを外周側から取り巻くように形成されたブーツと、
    前記一方の配管と前記第1支持部との接合部側と前記他方の配管と前記第2支持部との接合部側との間で、前記2つの配管の外周を取り巻くように配設された断熱材ユニットサポート部材とを備え、
    前記第1支持部、前記第2支持部、前記ブーツ、及び前記断熱材ユニットサポート部材との間に形成される断熱材領域の内部に、請求項1又は2に記載の断熱材ユニットを前記配管の軸線方向とは垂直に積層して配設することを特徴とする伸縮継手。
  4. 少なくとも2つの配管の接続に用いられ、ブランケット状又はフェルト状の断熱材を積層して用いる伸縮継手に使用される断熱材保持用可動ピンであって、
    前記断熱材保持用可動ピンは、軸状に形成される軸体と、
    前記軸体の一端側を配管側に保持するためのピン保持部材と、
    前記軸体の他端側に配設されると共に前記伸縮継手に使用される断熱材を保持するワッシャー部材とから成り、
    前記ピン保持部材には前記軸体の一端側を前記軸体の軸線とは平行な方向に移動することを可能とするための長孔が設けられており、
    前記ワッシャー部材は、中央部に前記軸体の他端側を貫通させるための孔を有することを特徴とする断熱材保持用可動ピン。
  5. 請求項3に記載の伸縮継手において、前記積層して配設した少なくとも一層の前記断熱材ユニットについて、請求項4に記載の断熱材保持用可動ピンにより保持した伸縮継手であって、
    前記断熱材保持用可動ピンの前記ピン保持部材は、前記断熱材サポート部材と前記配管との間に配設されて配管側に固定されると共に、前記ピン保持部材に設けられた長孔は前記配管の外周に沿った方向に設けられ、
    前記軸体の一端は前記ピン保持部材に保持されると共に、他端は前記断熱材サポート部材側から前記断熱材ユニットを貫通して前記断熱材ユニットの前記断熱材サポート部材側とは反対側に突出しており、
    前記ワッシャー部材は、前記軸体の前記突出した側から、前記軸体にはめ込まれて前記断熱材ユニットを保持することを特徴とする伸縮継手。
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