JP2015064346A - 構造物劣化診断システム - Google Patents
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Abstract
【課題】構造物の取付状態の劣化を、検査員よる定期検査を必要とせずに、定量的に診断する。【解決手段】センサヘッドから取得した加速度情報に基づく特徴量として、傾き情報および固有振動数情報の少なくとも一方の情報を抽出する特徴量抽出手段(S201)と、特徴量抽出手段により抽出された特徴量に関して、正常状態における基準用確率密度分布と、劣化診断時における診断用確率密度分布を算出する確率密度分布算出手段(S204)と、確率密度分布算出手段で算出された基準用確率密度分布と診断用確率密度分布との間で確率分布の距離を算出し、所定量以上の確率分布の距離を有する場合には、構造物の取付状態に異常が発生していると判定する判定手段(S205、S206)とを備える。【選択図】図2
Description
本発明は、例えば、トンネル内の吊り下げ構造物、あるいは張り出し構造物のような構造物の取付状態の劣化を、長期にわたってモニタすることのできる構造物劣化診断システムに関する。
構造物の劣化状態を検出する方法としては、検査員による定期検査により、目視あるいは何らかの計器を用いて行われることが主流であった。また、劣化診断対象であるトンネルなどの構造物に経年的に発生する亀裂に関して、定量的な検査を、簡単かつ迅速に行う従来技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1では、紫外線または青色系可視光などの励起光によって発光する蛍光色素を、劣化診断対象である構造物にあらかじめ混入させている。そして、この構造物に紫外線または青色系可視光などを発光する光源を照射し、目視あるいはCCDカメラ等による撮像画像の解析処理により、亀裂の発生を定量的に判断している。
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1では、定量的な劣化診断を可能にしてはいるものの、あくまでも、検査員による定期検査を基本としている。さらに、劣化診断対象の構造物に対して、蛍光色素をあらかじめ混入させておく必要があった。
一方、近年では、構造物の劣化診断を定期検査よりも短い周期で、検査員を介さずに無人で行うことのできる劣化診断システムが望まれている。また、トンネル等においては、トンネル自身の壁面や天井の劣化状態以外にも、トンネル内の吊り下げ構造物、あるいは張り出し構造物のような構造物の取付状態の劣化を、定量的に診断する必要性がある。さらに、新規の構造物だけでなく、既存の構造物に対しても、容易に対応できることが望まれる。
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、構造物の取付状態の劣化を、検査員よる定期検査を必要とせずに、定量的に診断することのできる構造物劣化診断システムを得ることを目的とする。
本発明に係る構造物劣化診断システムは、固定面に取り付けられ、劣化診断対象である構造物に設置されたセンサヘッドから出力される構造物の加速度情報に基づいて、構造物の取付状態が正常か否かを診断するセンサコントローラを備えた構造物劣化診断システムにおいて、センサコントローラにより実行される構造物劣化診断システムであって、センサヘッドから取得した加速度情報に基づく特徴量として、構造物の傾き情報および固有振動数情報の少なくとも一方の情報を抽出する特徴量抽出手段と、特徴量抽出手段により抽出された特徴量に関して、正常状態における基準用確率密度分布と、劣化診断時における診断用確率密度分布を算出する確率密度分布算出手段と、確率密度分布算出手段で算出された基準用確率密度分布と診断用確率密度分布との間に所定量以上の確率分布の距離を有する場合には、構造物の取付状態に異常が発生していると判定する判定手段とを備えるものである。
本発明によれば、加速度情報に基づく特徴量から算出された確率密度分布の変化度合を確率分布の距離として検出することで、定量的な劣化診断を可能とすることにより、構造物の取付状態の劣化を、検査員よる定期検査を必要とせずに、定量的に診断することのできる構造物劣化診断システムを得ることができる。
以下、本発明の構造物劣化診断システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本発明は、劣化診断対象である構造物に取り付けられたセンサから得られる加速度情報に基づいて、構造物の傾きあるいは固有振動数に関する特徴量の確率密度分布を求め、正常時における確率密度分布と劣化診断時における確率密度分布との間に有意差がある場合には、取付状態に何らかの劣化が発生していると判断することを技術的特徴としている。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における構造物劣化診断システムの構成図である。本実施の形態1における構造物劣化診断システムは、センサコントローラ10、およびN個(Nは、2以上の整数)のセンサヘッド20(1)〜20(N)を備えて構成されている。
図1は、本発明の実施の形態1における構造物劣化診断システムの構成図である。本実施の形態1における構造物劣化診断システムは、センサコントローラ10、およびN個(Nは、2以上の整数)のセンサヘッド20(1)〜20(N)を備えて構成されている。
なお、本実施の形態1における構造物劣化診断システムでは、最低限、1個のセンサヘッド20を設けておけば、劣化診断を実施することが可能である。また、複数用いる場合のN個のセンサヘッドのそれぞれの機能は、全て共通である。そこで、以下の説明では、それぞれのセンサヘッドを区別する必要がない場合には、(1)〜(N)の添字を用いずに、単にセンサヘッド20と記載する。
N個のセンサヘッド20のそれぞれは、センサ部21と、加速度情報出力部22を有しており、劣化診断対象である構造物の異なる位置に設置されている。ここで、構造物の具体例としては、トンネル内の吊り下げ構造物、あるいは張り出し構造物が挙げられ、本発明の構造物劣化診断システムによって、長期にわたって構造物の取付状態の劣化診断が行われることとなる。
このような構造物としては、トンネル内に設置されるジェットファン、情報板、標識等が対象とされ、トンネルを形成する躯体のコンクリートから吊り下げまたは張り出される重量物が挙げられる。そして、構造物に対してセンサヘッド20が好ましくは2個設置され、各々を構造物に対して両端となる部分に設置することで、構造物の変位をいずれかが大きく捕らえることとなる。
そのため、N個のセンサヘッド20は、構造物の変位を大きく捕らえるために、設置面の方向に対して、各々が離れる位置に設置される。さらに、センサヘッド20は、交換を容易にするため、2個等の複数個を2組としてもよく、1組ごとで交換することにより、監視状態を継続することができる。
センサ部21は、例えば、応答性に優れ、測定範囲がDC〜数十Hz程度の加速度を測定可能な3軸加速度センサである。加速度のうち、DC成分は重力加速度の方向、即ち傾きを表し、AC成分は振動を表す。このように、加速度センサに3軸のセンサを用いることにより、水平出しが不要となり、傾きや振動の方向に関わらず、センサ出力を行うことができる。したがって、水平出しを行うなど、傾きの方向などが特定できる場合には、2軸や1軸であってもよい。
また、加速度情報出力部22は、センサヘッドの設置箇所における構造物の3軸の加速度に関するアナログ信号を、所定のサンプリングレート(例えば、50Hzのサンプリングレート)でデジタル信号に変換し、加速度情報としてセンサコントローラ10へ送信する。なお、加速度情報出力部22は、一例として、CANやRS232C等の通信I/Fを介して、デジタル信号である加速度情報をセンサコントローラ10に送信することができる。
また、センサコントローラ10は、構造物近傍のN個のセンサヘッド20に配線が届く位置に設置され、N個のセンサヘッド20のそれぞれから取得した加速度情報に基づいて、構造物の取付状態が正常か否かを判断する。具体的には、センサコントローラ10は、加速度情報に基づいて、傾き情報を第1の特徴量として抽出し、構造物の取付状態の劣化診断を行う第1の劣化診断部11と、加速度情報に基づいて、固有振動数情報を第2の特徴量として抽出し、構造物の取付状態の劣化診断を行う第2の劣化診断部12を有している。
また、センサコントローラ10は、診断結果、あるいは診断に用いたデータ等を、図示しない制御装置に送信できるようにするために、例えば、イーサネット(登録商標)等の大容量通信I/Fを備えることができる。
構造物としてジェットファン等が設けられるトンネル設備の場合、詳細に示さないが、トンネル内の情報は、トンネル近傍に設けられた、いわゆる電気室内に設置される制御装置に集約され、さらに、監視者の居る遠方監視制御装置に移報されて、双方で情報が共有される。後述する劣化診断の処理に従い、劣化が生じていると判定された結果が、上記各制御装置に表示や警報音等で報知される。このような判定結果は、別途劣化診断システムの設備業者や点検業者のセンタ装置に送られてもよく、異常発生時に迅速な対応を可能にできる。
また、劣化を判定するレベルを次のように細分し、そのレベルに応じて対応を変えてもよい。例えば、劣化の判定レベルは、
レベル1:「定期点検等で詳細に点検する必要有り(確認レベル)」
レベル2:「現場を確認し、今後の改良計画等を検討する必要あり(計画レベル)」
レベル3:「速やかに改善を必要とする事態で、至急現場へ急行する必要有り(改善レベル)」
レベル4:崩落を含む緊急事態(緊急レベル)」
とレベル分けし、レベル1、2は、各制御装置の盤面で簡単に表示するだけとし、レベル3、4の段階になって、詳細な警報表示や警報音鳴動等を行うようにしてもよい。
レベル1:「定期点検等で詳細に点検する必要有り(確認レベル)」
レベル2:「現場を確認し、今後の改良計画等を検討する必要あり(計画レベル)」
レベル3:「速やかに改善を必要とする事態で、至急現場へ急行する必要有り(改善レベル)」
レベル4:崩落を含む緊急事態(緊急レベル)」
とレベル分けし、レベル1、2は、各制御装置の盤面で簡単に表示するだけとし、レベル3、4の段階になって、詳細な警報表示や警報音鳴動等を行うようにしてもよい。
さらに、業者のセンタ装置で常時判定に用いるデータを収集し、別途、多面的に分析を行い、例えば、レベル3に達するまでの時期予測などを行ってもよい。トンネルは、遠方監視制御装置によって、常時監視員に監視されていることが多いが、そうでない場合もあり、日常の管理設備が十分でない場合は、業者のセンタ装置を介して、緊急時の一次対応として現場を確認し、状況を報告する対応を、業者の係員に行わせることも可能である。
そして、第1の劣化診断部11および第2の劣化診断部12は、いずれも、監視対象である構造物の正常時における確率密度分布と、劣化診断時における確率密度分布とを比較し、有意差が生じたことで構造物の劣化を検出する点では共通している。ただし、傾き情報を特徴量として劣化診断を行う第1の劣化診断部11と、固有振動数情報を特徴量として劣化診断を行う第2の劣化診断部12とでは、具体的な信号処理方法が異なっており、以下において、詳細に説明する。
(1)第1の劣化診断部11による傾き情報に基づく劣化診断の処理の流れについて
図2は、本発明の実施の形態1における第1の劣化診断部11による劣化診断処理の流れを示すフローチャートである。この図2のフローチャートに基づいて、傾き情報に基づいた第1の劣化診断部11による具体的な劣化診断処理について説明する。
(1)第1の劣化診断部11による傾き情報に基づく劣化診断の処理の流れについて
図2は、本発明の実施の形態1における第1の劣化診断部11による劣化診断処理の流れを示すフローチャートである。この図2のフローチャートに基づいて、傾き情報に基づいた第1の劣化診断部11による具体的な劣化診断処理について説明する。
まず始めに、ステップS201において、第1の劣化診断部11は、センサヘッド20内の加速度情報出力部22から取得した加速度情報に基づいて、傾き情報の抽出を行う。具体的には、第1の劣化診断部11は、例えば、50HzのサンプリングレートでX、Y、Z軸の加速度情報を取得する。そして、第1の劣化診断部11は、この加速度情報を用いて、各軸毎にディジタルフィルタによるローパスフィルタ処理を行う。ローパスフィルタのカットオフ周波数は、例えば、0.1Hz程度とする。
ここで、DC成分を含む3軸加速度の低周波成分は、傾き情報と等価である。そして、ローパスフィルタ処理された傾き情報は、急速に変化する高周波成分を含まない。このため、劣化検出のための傾きデータのサンプリングレートを遅くしても、情報は欠損しない。具体的には、カットオフ周波数の2倍を超えたサンプリングレートがあれば、標本化定理を満たすことができ、0.1Hz未満のカットオフ周波数に対しては0.2Hzのサンプリング周波数、すなわち、5秒間隔のサンプリングでよい。
図3は、本発明の実施の形態1における3軸分の傾き情報の収集に関する具体例を示した図である。図3に示すように、第1の劣化診断部11は、サンプリング間隔ΔTごとに、3軸分の傾き情報を収集することとなる。なお、本発明での「傾き情報とは」、ある基準方向を0度として規定した際の、180度から−180度までの範囲の傾きを意味しており、図3の縦軸に示した「傾き情報」は、基準方向に対する180度から−180度までの傾きを、1から−1として正規化して示したものである。
次に、第1の劣化診断部11は、ステップS202において、センサヘッド20の取り付け方向の修正を行う。具体的には、第1の劣化診断部11は、センサヘッド20の取り付け方向のキャリブレーションデータ(アフィン変換の行列の要素)と、先のステップS201で得られたサンプリングデータを行列演算することで、それぞれのセンサヘッド20の座標軸を一致させるように、取り付け方向の誤差修正を行う。
このステップS202は、センサヘッド20の取付方向に依存せず座標軸を揃えることが目的であり、センサヘッド20が3軸で方向に関わらず傾きや振動を検出できることから、センサ出力をそのまま用いる場合には、なくてもよい。
次に、第1の劣化診断部11は、ステップS203において、センサヘッド20の取り付け方向の誤差修正後の傾き情報に対して、対数化処理(デシベル化)を行う。微小な傾き情報の計測のために、例えば、1/100万[G]単位の分解能を元にして、後述する確率密度分布を得ようとすれば、そのために必要となる記憶領域は、膨大となる。そこで、本実施の形態1の第1の劣化診断部11は、加速度を対数化(デシベル化)し、デシベルデータに基づいた分類により確率密度分布を求めることで、効率のよい量子化を行っている。
次に、第1の劣化診断部11は、ステップS204において、傾き情報に基づく劣化診断を行うために、確率密度分布の生成処理を行う。第1の劣化診断部11は、例えば、先のステップS203でデシベル化された傾き情報を用いて、0.5デシベル単位で累積度数分布を作成し、これに局所平滑化処理を施すことで、確率密度分布を生成する。なお、平滑化処理としては、例えば、ガウス関数を適用することができる。
なお、設置時の初期学習データとしての確率密度分布は、例えば、1ケ月程度のデータを用いて生成される。一方、劣化診断時の現在のデータとして作成する確率密度分布のデータ数は、例えば、過去3時間〜24時間程度のデータに基づいて生成される。
また、基準データとなる正常時における学習データとしては、必ずしも設置時に取得したデータを継続して使用する必要はない。長期にわたって劣化診断を行うため、劣化診断を行う過程で、継続的に学習データを更新することも可能である。そして、劣化監視時に継続学習データとして採用する確率密度分布は、例えば、過去数時間〜数週間程度のデータに基づいて生成される。
図4は、本発明の実施の形態1における3軸分の傾き情報に関する確率密度分布の具体例を示した図である。各軸の1次元の確率密度分布は、傾きなしの中点に対して、正方向の傾きおよび負方向の傾きが大きくなるに従って、中点から両側に広がるような分布として表される。
次に、第1の劣化診断部11は、ステップS205において、劣化診断時に求めた各軸の確率密度分布(診断時データに相当)から、学習時に求めた各軸の確率密度分布(基準データに相当)との確率分布の距離を計算し、それぞれの軸について確率分布の距離データを生成する。なお、基準データとしては、初期設定時のデータ以外に、継続学習データにより更新された学習データを採用することもできる。
図5は、本発明の実施の形態1における、確率分布の距離を示した図である。より具体的には、ある1軸の傾き情報に関する確率密度分布間の距離を示した説明図で、劣化診断時に求めた確率密度分布(現在の確率密度分布に相当)と、初期設定時あるいは学習時に求めた確率密度分布(正常状態の確率密度分布に相当)の両分布間の距離の一例を示している。
第1の劣化診断部11は、図5に示したように、各軸について算出された傾きに関する確率密度分布間の距離を求め、劣化診断のための評価値とする。このような分布間距離の算出の代表的な具体例としては、以下の3つが挙げられる。
(1−1)カルバックライブラー距離
現在の確率密度分布をp(x)、正常状態の確率密度分布をp’(x)とした場合のカルバックライブラー距離KL(p‖p’)は、下式(1)を用いて算出することができる。
現在の確率密度分布をp(x)、正常状態の確率密度分布をp’(x)とした場合のカルバックライブラー距離KL(p‖p’)は、下式(1)を用いて算出することができる。
(1−2)ピアソン距離
現在の確率密度分布をp(x)、正常状態の確率密度分布をp’(x)とした場合のピアソン距離PE(p‖p’)は、下式(2)を用いて算出することができる。
現在の確率密度分布をp(x)、正常状態の確率密度分布をp’(x)とした場合のピアソン距離PE(p‖p’)は、下式(2)を用いて算出することができる。
(1−3)L2距離
現在の確率密度分布をp(x)、正常状態の確率密度分布をp’(x)とした場合のL2距離L2(p‖p’)は、下式(3)を用いて算出することができる。
現在の確率密度分布をp(x)、正常状態の確率密度分布をp’(x)とした場合のL2距離L2(p‖p’)は、下式(3)を用いて算出することができる。
また、このような確率分布の距離の算出については、その他に、f距離、あるいは相対ピアソン距離等の算出式を用いることも可能である。
そして、最後に、ステップS206において、第1の劣化診断部11は、確率分布の距離が、3軸すべてにおいてあらかじめ設定した所定の劣化判定の基準値未満であるならば正常とし、いずれか1軸でも基準値を超える分布間距離が存在する場合には、劣化が生じていると判定する。
なお、劣化診断に当たっては、第1の劣化診断部11は、例えば、あらかじめ設定した所定の基準値を超える分布間距離が所定時間連続して検出された場合、あるいは基準値を超える分布間距離が所定回数以上検出された場合に、劣化が生じていると判定することもできる。
以上の内容を整理すると、傾き情報に関する確率密度分布を利用して、構造物の取付状態の劣化診断を実施するに当たっては、以下の処理を行うことを特徴としている。
[特徴1]加速度情報の低周波成分を抽出することで、傾き情報を取得する。
[特徴2]傾き情報のサンプリングレートは、情報が欠損しない程度に遅くでき、例えば、5秒間隔でデータ収集を行うことができる。
[特徴3]取り付け方向の修正がなされた傾きデータをデシベル化することで、記憶容量を削減した上で、効率的な量子化を行っている。
[特徴4]所定のデシベル単位に基づいて、学習時および劣化診断時の確率密度分布を算出し、3軸の学習時と劣化診断時の確率分布の距離(分布間距離)をそれぞれ求め、劣化診断のための評価値としている。
[特徴5]あらかじめ設定した所定の基準値を超える評価値がある場合には、センサヘッド20が設置された部分で、構造物の傾きが許容できないレベルに達していると判断し、劣化状態を定量的に判断する。
[特徴1]加速度情報の低周波成分を抽出することで、傾き情報を取得する。
[特徴2]傾き情報のサンプリングレートは、情報が欠損しない程度に遅くでき、例えば、5秒間隔でデータ収集を行うことができる。
[特徴3]取り付け方向の修正がなされた傾きデータをデシベル化することで、記憶容量を削減した上で、効率的な量子化を行っている。
[特徴4]所定のデシベル単位に基づいて、学習時および劣化診断時の確率密度分布を算出し、3軸の学習時と劣化診断時の確率分布の距離(分布間距離)をそれぞれ求め、劣化診断のための評価値としている。
[特徴5]あらかじめ設定した所定の基準値を超える評価値がある場合には、センサヘッド20が設置された部分で、構造物の傾きが許容できないレベルに達していると判断し、劣化状態を定量的に判断する。
(2)第2の劣化診断部12による固有振動数情報に基づく劣化診断の処理の流れについて
次に、第2の劣化診断部12による具体的な処理内容を説明する。
次に、第2の劣化診断部12による具体的な処理内容を説明する。
図6は、本発明の実施の形態1における第2の劣化診断部12による劣化診断処理の流れを示すフローチャートである。この図6のフローチャートに基づいて、固有振動数情報に基づいた第2の劣化診断部12による具体的な劣化診断処理について説明する。
まず始めに、ステップS601において、第2の劣化診断部12は、センサヘッド20内の加速度情報出力部22から取得した加速度情報に基づいて、振動数情報の抽出を行う。いかなる構造物も、材料、重量、形状、支持構造に応じた固有振動数を持つ。センサヘッド20からは、例えば、50HzのサンプリングレートでX、Y、Z軸の加速度情報が出力されている。しかしながら、常に大きな振動が発生している訳ではない。一方、周波数解析を行うに当たっては、高いサンプリングレートが必要であり、常時、データを取得するためには、膨大な記憶領域を要する。
そこで、本実施の形態1における第2の劣化診断部12は、取得した3軸の加速度情報のうち、少なくとも1軸において、あらかじめ設定した所定の基準レベルを超えた加速度が得られた場合には、過去から未来に亘るデータを2nの一定数(例えば512個)取得している。
図7は、本発明の実施の形態1における3軸分の振動数情報の収集に関する具体例を示した図である。図7においては、X軸において測定された加速度データが、基準レベルを超えた際に、その時点をイベントトリガとして、3軸分それぞれに過去データと未来データからなる一定数のデータを記憶する場合を例示している。
次に、第2の劣化診断部12は、ステップS602において、センサヘッド20の取り付け方向の修正を行う。具体的には、第2の劣化診断部12は、センサヘッド20の取り付け方向のキャリブレーションデータ(アフィン変換の行列の要素)と、先のステップS601で得られた一定数のデータのそれぞれを行列演算することで、それぞれのセンサヘッド20の座標軸を一致させるように、取り付け方向の誤差修正を行う。
次に、第2の劣化診断部12は、ステップS603において、誤差修正された3軸データに対し、FFT処理によりパワースペクトルを算出し、固有振動数を求める。図8は、本発明の実施の形態1における3軸分のパワースペクトルの算出結果を示した図である。加速度データには、直流成分(傾き成分)が含まれる。そこで、第2の劣化診断部12は、パワースペクトルから低周波成分を取り除き、残ったスペクトルの中から最大の極大値(図8中のf1x、f1y、f1zに相当)、および第2の極大値(図8中のf2x、f2y、f2zに相当)を求め、これをそれぞれ、各軸の第1固有振動数、第2固有振動数とする。
次に、第2の劣化診断部12は、ステップS604において、第1固有振動数と第2固有振動数のそれぞれについて、累積度数分布を作成し、これらに局所平滑化処理を施すことで、第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の確率密度分布を生成する。具体的には、第2の劣化診断部12は、例えば、先のステップS601でのイベントトリガごとに、先のステップS603で得られた第1固有振動数および第2固有振動数で規定されるそれぞれの累積度数分布を作成し、これらの累積度数分布のそれぞれに局所平滑化処理を施すことで、第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の確率密度分布を生成する。なお、平滑化処理としては、例えば、ガウス関数を適用することができる。
なお、設置時の初期学習データとしての確率密度分布は、例えば、1ケ月程度のデータを用いて生成される。一方、劣化診断時の現在のデータとして作成する確率密度分布のデータ数は、例えば、過去3時間〜24時間程度のデータに基づいて生成される。
また、基準データとなる正常時における学習データとしては、必ずしも設置時に取得したデータを継続して使用する必要はない。長期にわたって劣化診断を行うため、劣化診断を行う過程で、継続的に学習データを更新することも可能である。劣化監視時に継続学習データとして採用する確率密度分布は、例えば、過去数時間〜数週間程度のデータに基づいて生成される。
次に、第2の劣化診断部12は、ステップS605において、劣化診断時に求めた各軸の第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の確率密度分布(診断時データに相当)と、学習時に求めた各軸の第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の確率密度分布(基準データに相当)のそれぞれの確率分布の距離を計算し、それぞれの軸について第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の分布間距離データを生成する。なお、基準データとしては、初期設定時のデータ以外に、継続学習データにより更新された学習データを採用することもできる。
固有振動数情報に関する確率密度分布間の距離に関しては、先の図5で示した傾き情報に関する確率密度分布間の距離と同様の概念である。従って、より具体的には、第2の劣化診断部12は、第1の劣化診断部11と同様に、上式(1)〜(3)を用いることで、第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の分布間距離データを算出することができる。
そして、最後に、ステップS606において、第2の劣化診断部12は、分布間距離が、3軸すべてにおいてあらかじめ設定した所定の劣化判定の基準値未満であるならば正常とし、いずれか1つでも基準値を超える分布間距離が存在する場合には、劣化が生じていると判定する。
なお、劣化診断に当たっては、第2の劣化診断部12は、例えば、あらかじめ設定した所定の基準値を超える分布間距離が所定時間連続して検出された場合、あるいは基準値を超える分布間距離が所定回数以上検出された場合に、劣化が生じていると判定することもできる。また、劣化診断において使用する確率密度分布は、第1固有振動数と第2固有振動数の両方の分布を使用する、あるいはいずれか一方の分布を使用することも可能である。
以上の内容を整理すると、固有振動数情報に関する確率密度分布を利用して、構造物の取付状態の劣化診断を実施するに当たっては、以下の処理を行うことを特徴としている。
[特徴1]加速度情報に関して、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点を含む一定数の加速度データを抽出することで、固有振動数情報を取得する。
[特徴2]固有振動数情報は、その後の周波数解析に用いられるため、センサヘッド20からの出力レートをダウンサンプリングすることは、適切でない。そこで、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点をイベントトリガとして、過去データと未来データからなる一定数の加速度データを抽出して固有振動数情報を記憶させることで、記憶容量の低減を図っている。
[特徴3]取り付け方向の修正がなされた固有振動数情報について周波数解析を行ってパワースペクトルを算出し、パワースペクトルから低周波成分を取り除いた残りのスペクトルの中から、最大の極大値および第2の極大値を求めることで、各軸の第1固有振動数、第2固有振動数を算出する。
[特徴4]イベントトリガごとに算出された第1固有振動数、第2固有振動数のそれぞれについて作成した各軸の累積度数分布から、学習時および劣化診断時の第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の確率密度分布を算出し、さらに、3軸それぞれの学習時と劣化診断時の分布間距離を求め、劣化診断のための評価値とする。
[特徴5]あらかじめ設定した所定の基準値を超える評価値がある場合には、センサヘッド20が設置された部分で、構造物の振動が許容できないレベルに達していると判断し、劣化状態を定量的に判断する。
[特徴1]加速度情報に関して、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点を含む一定数の加速度データを抽出することで、固有振動数情報を取得する。
[特徴2]固有振動数情報は、その後の周波数解析に用いられるため、センサヘッド20からの出力レートをダウンサンプリングすることは、適切でない。そこで、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点をイベントトリガとして、過去データと未来データからなる一定数の加速度データを抽出して固有振動数情報を記憶させることで、記憶容量の低減を図っている。
[特徴3]取り付け方向の修正がなされた固有振動数情報について周波数解析を行ってパワースペクトルを算出し、パワースペクトルから低周波成分を取り除いた残りのスペクトルの中から、最大の極大値および第2の極大値を求めることで、各軸の第1固有振動数、第2固有振動数を算出する。
[特徴4]イベントトリガごとに算出された第1固有振動数、第2固有振動数のそれぞれについて作成した各軸の累積度数分布から、学習時および劣化診断時の第1固有振動数と第2固有振動数に関する個別の確率密度分布を算出し、さらに、3軸それぞれの学習時と劣化診断時の分布間距離を求め、劣化診断のための評価値とする。
[特徴5]あらかじめ設定した所定の基準値を超える評価値がある場合には、センサヘッド20が設置された部分で、構造物の振動が許容できないレベルに達していると判断し、劣化状態を定量的に判断する。
以上のように、実施の形態1によれば、劣化診断対象の構造物から得られた加速度情報に基づいて、傾きに関する第1の特徴量および固有振動数に関する第2の特徴量を抽出している。そして、それぞれの特徴量に関して、正常時の基準データに相当する学習時の確率密度分布と、劣化診断時の測定結果に基づく確率密度分布との比較により分布間距離を算出し、有意差が検出された場合には、劣化が発生していると判断している。この結果、構造物の取付状態の劣化診断を、長期にわたって定量的に実施することを可能としている。
なお、上述した実施の形態1では、傾きに関する第1の特徴量に基づく劣化診断と、固有振動数に関する第2の特徴量に基づく劣化診断について説明したが、これら2つの診断は、いずれか1つのみを行うことによっても、劣化診断を長期にわたって定量的に実施することが可能である。
また、上述した実施の形態1による劣化診断は、最小限の構成として、センサヘッドを1個用いた場合にも、劣化診断が可能である。ただし、センサヘッドを設置した箇所では劣化が発生していなくても、他の場所で劣化が発生しているおそれはある。そこで、センサヘッドを複数箇所に設置し、いずれかのセンサヘッドで劣化状態が検出されたときに、構造物の取付劣化が発生したと判断することで、検出精度の向上が期待できる。
さらに、2つのセンサヘッドのデータを活用できる場合には、個々の診断結果に加え、傾きに関しては、2つのセンサヘッドの傾きの差として、振動数に関しては、2つのセンサヘッドの振動の位相差として、確率密度分布に基づく劣化診断を行うことができ、さらなる検出精度の向上が期待できる。なお、振動数に関しては、位相差として行うだけでなく、振幅差として同様に劣化診断を行うこともできる。
また、上述した実施の形態1においては、トンネル内の吊り下げ構造物、あるいは張り出し構造物を劣化診断対象の一例として挙げたが、本発明は、これに限定されない。固定面に取り付けられ、経年的に取付状態が変化してしまうおそれのある構造物であれば、長期にわたって定量的に劣化診断を行うことができる。また、既存の構造物に対して、センサヘッドを後付けすることによっても、センサヘッドの設置以降において、構造物の取付状態の経年的変化を、定量的に診断することができる。
また、上述した実施の形態1においては、正常時の基準データとして、初期段階で学習する場合と、劣化診断時における学習により更新する場合について説明したが、本発明は、これに限定されない。正常であることを判断するための確率密度分布は、唯一である必要はなく、例えば、時間帯毎に個別の基準データを設ける、あるいは構造物に発生する事象毎に別個の基準データを設けることもできる。さらに、経年変化を考慮して、初期段階での確率密度分布と、劣化診断時の学習により得られた新たな確率密度分布を併用することも可能である。
実施の形態2.
先の実施の形態1では、確率密度分布間の距離に着目して劣化診断を行う場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、確率密度分布間の距離による異常判定とは別の手法として、学習時に求めた各軸の確率密度分布に基づいて、分布が存在しない領域を劣化判定領域と設定しておき、劣化診断時に求めた各軸の確率密度分布の中に、劣化判定領域に含まれるデータが存在する場合に劣化が発生していると判断する手法について説明する。
先の実施の形態1では、確率密度分布間の距離に着目して劣化診断を行う場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、確率密度分布間の距離による異常判定とは別の手法として、学習時に求めた各軸の確率密度分布に基づいて、分布が存在しない領域を劣化判定領域と設定しておき、劣化診断時に求めた各軸の確率密度分布の中に、劣化判定領域に含まれるデータが存在する場合に劣化が発生していると判断する手法について説明する。
なお、この手法は、傾き情報に関する確率密度分布、および固有振動数情報に関する確率密度分布について共通であり、以下では、単に両者に共通の「確率密度分布」に基づく劣化診断として説明する。
図9は、本発明の実施の形態2における劣化判定領域に基づく劣化診断手法の説明図である。ここで、図9に示した確率密度分布は、正常状態における確率密度分布を示しており、初期設定時あるいは学習時において、先の実施の形態1における図2のステップS201〜S204によって得られる傾き情報に関する確率密度分布、あるいは先の実施の形態1における図6のステップS601〜S604によって得られる固有振動数情報に関する確率密度分布に相当する。
図9に示したように、本実施の形態2においては、「劣化判定領域」を、正常状態の確率密度分布に基づいて、正常状態では発生していない(あるいは発生はするものの、発生しにくい)確率密度分布の領域として設定している。
図10は、先の実施の形態1における確立密度分布間の距離による劣化診断と、本実施の形態2における確率密度分布が存在しない領域による劣化診断との比較を説明するための図である。図10(a)は、初期設定時あるいは学習時の確率密度分布と、劣化診断時の確率密度分布が、それぞれ異なる分布は示すものの、分布の範囲は同一の場合を例示している。一方、図10(b)は、初期設定時あるいは学習時の確率密度分布に対して、劣化診断時の確率密度分布には左端(図10(b)中の0〜5の範囲)に特異な分布が含まれている場合を例示している。
図10(a)のような分布の場合には、本実施の形態2のように「劣化判定領域」により劣化を診断することはできない。しかしながら、先の実施の形態1のように、「分布間距離」により劣化を診断することが可能となる。実際に、この図10(a)の分布に対してL2距離を求めると0.0284となり、閾値を適切に設定することで、「分布間距離」に基づく劣化診断が可能となる。
一方、図10(b)のような分布の場合には、2つの分布はほとんど同じであるため、先の実施の形態1のように「分布間距離」により劣化を診断することが困難となる。実際に、この図10(b)の分布に対してL2距離を求めると0.00002となり、「分布間距離」に基づく劣化診断は困難であることがわかる。しかしながら、本実施の形態2のように「劣化判定領域」により劣化を診断することが可能となる。
なお、劣化診断に当たっては、第1の劣化診断部11あるいは第2の劣化診断部12は、例えば、「劣化判定領域」に存在する分布が所定時間連続して検出された場合、あるいは「劣化判定領域」に存在する分布が所定回数以上検出された場合に、劣化が生じていると判定することもできる。
以上のように、実施の形態2によれば、「分布間距離」により劣化ではないと判断されるような確率密度分布に対しても、「劣化判定領域」による劣化診断を行うことで、特異な確率分布が生じた際の劣化を的確に検出することが可能となる。
すなわち、実施の形態2によれば、劣化診断対象の構造物から得られた加速度情報に基づいて、傾きに関する第1の特徴量および固有振動数に関する第2の特徴量を抽出し、それぞれの特徴量に関して、正常時の基準データに相当する学習時の確率密度分布から、特徴量が取りえない領域にある場合には、劣化が発生していると判断している。この結果、構造物の取付状態の劣化診断を、早期に診断することを可能としている。
換言すると、確率密度分布を求めることは、判定に時間を要するが、図9に示したように、学習時の確率密度分布から、高い確率密度を示す領域は高い確率で傾き情報あるいは固有振動数情報が取り得る値を示し、逆に低い確率密度を示す領域は取りにくい値となる。したがって、正常な状態の確率密度分布(学習時)から、正常な値の範囲として正常判定領域とし、正常ならば取り得ない値を劣化判定領域として設定し、傾き情報が劣化判定領域にある場合に、劣化が生じていると判定する。この判定方式は、先の実施の形態1による分布間距離の算出に基づく判定よりも、傾き情報取得あるいは固有振動数情報取得から判定までが簡便であり、発生してすぐの劣化を検出することを可能とする。
なお、先の実施の形態1における確立密度分布間の距離による劣化診断と、本実施の形態2における確率密度分布が存在しない領域による劣化診断を併用することで、図10(a)と図10(b)のいずれの確率密度分布に対しても、異常状態の判別が可能になる。
また、実施の形態1、2以外の手法として、学習時の確率密度分布と劣化診断時の確率密度分布との比である確率密度比を求めることで、劣化診断を行うことも可能である。より具体的には、3軸の確率密度比のユークリッド距離としてベクトル長を求め、学習時のデータから求めたベクトル長を基準値とし、劣化診断時のデータから求めたベクトル長が基準値を超えることで劣化が発生したと判断することができる。
また、実施の形態1、2の手法について、第1の劣化診断部11は、ステップS203において、センサヘッド20の取り付け方向の誤差修正後の傾き情報に対して、対数化処理(デシベル化)を行うこととしたが、必ずしも対数化しなくても良い。
また、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点を含む一定数の加速度データを抽出することで、固有振動数情報を取得することとしたが、すべてのデータについて加速度データを抽出して固有振動数情報を取得しても良い。
また、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点を含む一定数の加速度データを抽出することで、固有振動数情報を取得することとしたが、すべてのデータについて加速度データを抽出して固有振動数情報を取得しても良い。
実施の形態3.
上述した実施の形態1、2は、3軸加速度センサであるセンサ部21を用いて構造物の長期劣化診断を行う装置であって、静的加速度から傾きを測定し、動的加速度から固有振動数を測定し、その時間変化を検出することで構造物の劣化を診断している。3軸加速度センサを利用する利点は、設置時の姿勢に関わらず傾きの変化を検出可能な点である。加速度センサに印加される静的加速度(直流成分)を測定すれば、重力方向を知ることができる。3軸加速度センサから得られる加速度情報は3軸の3つの成分を持ち、いわゆるアフィン変換行列のαを適切に設定することにより、いかなる姿勢で取り付けても常に重力方向をZ軸としたセンサ出力を得ることができる。
上述した実施の形態1、2は、3軸加速度センサであるセンサ部21を用いて構造物の長期劣化診断を行う装置であって、静的加速度から傾きを測定し、動的加速度から固有振動数を測定し、その時間変化を検出することで構造物の劣化を診断している。3軸加速度センサを利用する利点は、設置時の姿勢に関わらず傾きの変化を検出可能な点である。加速度センサに印加される静的加速度(直流成分)を測定すれば、重力方向を知ることができる。3軸加速度センサから得られる加速度情報は3軸の3つの成分を持ち、いわゆるアフィン変換行列のαを適切に設定することにより、いかなる姿勢で取り付けても常に重力方向をZ軸としたセンサ出力を得ることができる。
このような3軸加速度センサを用いて長期劣化診断を継続していくと、やがては機器として寿命を迎えることになるが、3軸加速度センサの寿命が構造物よりも短い場合、古い3軸加速度センサ(旧センサ)の測定データと、交換により新たに設置する3軸加速度センサ(新センサ)の測定データを一致させる必要がある。
このとき、旧センサと新センサを隣接して互いにランダムな姿勢で取り付けた場合、重力加速度の印加のみでは、Z軸方向を一致させることができても、他の軸方向を一致させることができず、そのため、他の方向からの加速度の印加が必要になる。すなわち、重力加速度の印加と周期振動の印加が計測される条件、例えば、ジェットファンの取付状態の場合など、2つのセンサの位置決めを正確に行うことができることになる。
しかし、3軸加速度センサが明確な周期振動が印加されない構造物に設置される場合、外部からの加速度情報のみでは、2つのセンサ姿勢を一致させることができない。このような環境下での2つのセンサの姿勢のキャリブレーションには、旧センサと新センサが同一平面上に位置するという拘束条件を設けることにより、キャリブレーションが可能となる。
そこで、本実施の形態3では、旧センサと新センサを同一平面上に設置可能なベースを用いることによって、監視時は一方のみ、キャリブレーション時には両方に旧センサおよび新センサを取付け、所定時間の重力加速度方向を測定し、誤差分の補正を行うことができる。
10 センサコントローラ、11 第1の劣化診断部、12 第2の劣化診断部、20 センサヘッド、21 センサ部、22 加速度情報出力部。
Claims (5)
- 固定面に取り付けられ、劣化診断対象である構造物に設置されたセンサヘッドから出力される前記構造物の加速度情報に基づいて、前記構造物の取付状態が正常か否かを診断するセンサコントローラを備えた構造物劣化診断システムであって、
前記センサヘッドから取得した前記加速度情報に基づく特徴量として、前記構造物の傾き情報および固有振動数情報の少なくとも一方の情報を抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量抽出手段により抽出された前記特徴量に関して、正常状態における基準用確率密度分布と、劣化診断時における診断用確率密度分布を算出する確率密度分布算出手段と、
前記確率密度分布算出手段で算出された前記基準用確率密度分布と前記診断用確率密度分布との間に所定量以上の確率分布の距離を有する場合には、前記構造物の取付状態に異常が発生していると判定する判定手段と
を備えた構造物劣化診断システム。 - 請求項1または2に記載の構造物劣化診断システムにおいて、
前記センサヘッドからは、3軸の加速度情報が出力され、
前記特徴量抽出手段は、3軸分の傾き情報および3軸分の固有振動数情報の少なくとも一方の情報を抽出する
構造物劣化診断システム。 - 請求項3に記載の構造物劣化診断システムにおいて、
前記センサコントローラにおいて、前記傾き情報を前記特徴量として抽出することで劣化診断を行う場合には、
前記特徴量抽出手段は、前記センサヘッドから取得した前記3軸の加速度情報のそれぞれについて低周波成分を抽出することで、3軸に対する前記傾き情報を取得し、
前記確率密度分布算出手段は、前記特徴量抽出手段で取得されたそれぞれの軸の前記傾き情報をデシベル化し、所定のデシベル単位に基づいて、学習時および劣化診断時の確率密度分布を算出し、
前記判定手段は、3軸のそれぞれについて、劣化診断時の確率密度分布を前記診断用確率密度分布とし、学習時の確率密度分布を前記基準用確率密度分布として前記分布間距離を求め、劣化診断のための評価値とし、前記評価値が許容傾き基準値を超える場合には、前記構造物の傾きが許容できないレベルに達していると判断する
構造物劣化診断システム。 - 請求項3に記載の構造物劣化診断システムにおいて、
前記センサコントローラにおいて、前記固有振動数情報を前記特徴量として抽出することで劣化診断を行う場合には、
前記特徴量抽出手段は、前記センサヘッドから取得した前記3軸の加速度情報に関して、いずれかの軸で基準レベルを越えた加速度データが得られた時点を含む一定数の加速度データを抽出することで、固有振動数情報を取得し、
前記確率密度分布算出手段は、前記特徴量抽出手段で取得された前記固有振動数情報について周波数解析を行ってパワースペクトルを算出し、前記パワースペクトルが最も大きい周波数に相当する第1固有振動数と、前記パワースペクトルが2番目に大きい周波数に相当する第2固有振動数を算出し、前記第1固有振動数および前記第2固有振動数のそれぞれに関する学習時および劣化診断時の確率密度分布を算出し、
前記判定手段は、3軸のそれぞれの前記第1固有振動数および前記第2固有振動数について、劣化診断時の確率密度分布を前記診断用確率密度分布とし、学習時の確率密度分布を前記基準用確率密度分布として前記分布間距離を求め、劣化診断のための評価値とし、3軸のうちの少なくともいずれか1つの軸において、前記評価値が許容振動基準値を超える場合には、前記構造物の振動が許容できないレベルに達していると判断する
構造物劣化診断システム。
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