1979年に、Meyerによって、液晶でも強誘電性が発現することが発見された(図6)。強誘電性は、キラルスメクチックC相(以下、SmC*相と云う。)で発現する。1981年にClarkとLagerwallによって、表面安定化強誘電性液晶(以下、SSFLCと略す。)によるデバイスの提案がされた。このデバイスでは、強誘電性液晶がバルクで自発的に発生する螺旋構造を、材料を薄いギャップ(=1〜2μm)のセルに注入することにより、そのセルの表面の効果で、螺旋構造を解くことによってデバイスとして使われる。本SSFLCでは、基板界面に水平配向処理を施し(=これにより液晶分子は基板に平行に配向しようとする)、基板に垂直な電界により駆動する。薄いギャップのセルを使い基板の螺旋構造を解いたことにより、双安定(分子が右に傾くか左に傾くか)の状態がメモリー性をもって発現するが、大きな問題は双安定のため、明暗の2値しか得られず、グレースケールが得られないことである。
別の表示モードとして、DH−FLCモードが知られている。これは螺旋構造を保ったまま、垂直配向で分子を配向し、横電界(IPSと同じ)で螺旋構造を電圧で解くことにより駆動するものである。螺旋構造が十分短く、可視光を反射しなくなると、螺旋状態では、良好な暗状態(黒表示)が得られ、電圧の印加と共に螺旋構造がほどけるので少しずつ明るくなり、グレースケール表示が可能となる。
問題は、良好な黒を得ようとすると螺旋構造を短くすることが必要であり、ピッチと呼ばれる周期を紫外領域にすることが必要である。しかしながら、強い螺旋構造(=短いピッチ)の材料は、その螺旋構造を解くために高い電圧が必要となり、そのため、駆動電圧が高くなるという欠点があった。
そこで、なぜ駆動電圧が高くなるかの原因をつきとめ、その原因を取り除く方策をとれば、強い螺旋構造(=短いピッチ)の材料でも、低い駆動電圧で駆動ができるようになる。
本発明の第一は外部電界の変化により応動する第一の液晶分子および第二の液晶分子を含む液晶成分と、前記第一の液晶分子および前記第二の液晶分子のそれぞれの運動を円滑にする潤滑成分と、を含有する液晶組成物である。
異なる方向に運動する液晶ドメイン同士間に潤滑成分が存在すると当該潤滑成分がいわゆる“ころ”の役割を果たすため異なる液晶ドメインに存在する分子同士の運動衝突を抑制できるため、高速応答性を備えた液晶組成物を示すことができると考えられる。
換言すると、上記特許文献1や非特許文献1のような、液晶層(液晶分子の集合状態)が概ね均一であると、液晶分子がある程度ランダムな方向に配列しているため、当該状態に電圧を印加すると、例えば、ある分子は右回転し、当該ある分子と隣接する分子は左回転することにより、両分子がぶつかり合うような応答挙動を示すため、液晶層全体としての、応答速度が遅くなる。そこで、液晶層における集合状態の均一性を変えることにより、均一に存在する液晶分子同士の衝突による応答速度の低減の問題を解決することができる。
液晶分子が常態の配向方向が相違している場合には、その相違するお互いのドメイン(例えば、VA表示モードで視野角特性を良くするために作られた分子の常態での配向方向が異なる複数のドメイン)間に、分子運動が均一でない、言い換えればお互いに異なる向きに運動しようとする分子が相対する領域が発生する。この領域に分子運動を円滑にする潤滑成分を導入すれば、分子の運動は容易になり、低電圧駆動・高速応答が達成できる。
あるいは、液晶分子が常態で略同一方向に配向しており電極構成の影響により電圧印加時に分子の運動方向が異なるドメインを形成する場合にはそのドメイン間の領域に潤滑成分を導入することにより同様に低電圧駆動・高速応答が達成できる。この例としては、IPS,FFS,VA−DHFLCなどがあげられる。なお、常態の配向方向が略同一であるということは、常態でのダイレクターの向きがほとんど同一方向に均一にそろっていることを意味し、あるいは、キラルの導入によりダイレクターがツイストの変形をする場合は、そのツイスト変形の強さと掌性がほとんど同じであることを意味する。境界領域は、slippyな界面にすることが好ましい。
「液晶成分」
本発明に係る液晶成分において、第一の液晶ドメインと第二の液晶ドメインとの常態の配向方向が相違することが好ましい。
本発明に係る液晶成分において、第一の液晶ドメインと第二の液晶ドメインとの常態の配向方向が略同一であることが好ましい。
本発明に係る液晶成分は、ネマチック液晶、コレステリック液晶およびスメチック液晶からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ネマチック液晶組成物、コレステリック液晶組成物およびスメチック液晶組成物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。スメクチック液晶では、特に、強誘電性、フェリ誘電性、あるいは反強誘電性を示すものがこのましく、その中でも、スメクチックC(SmC)相あるいはSmC派生相(SmC−ヴァリアント)であることが好ましい。
本発明に係る液晶成分は、室温で液晶相を示すことが好ましい
本発明に係る液晶成分の透明点が60℃以上であることが好ましい。
本発明に係る液晶成分が少なくとも2種以上の液晶性化合物を含有することが好ましい。
前記液晶性化合物としては以下の化合物が挙げられる。
本発明に係る液晶性化合物としては、下記の一般式
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO2−、−SO2−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(Ra)−、−N(Ra)−CO−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(Ra)−又は−N(Ra)−CO−におけるRaは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Aは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH2−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO2基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、nは1、2、3、4又は5である。)で表される液晶性化合物が好ましい。
また、下記の一般式
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO2−、−SO2−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(Ra)−、−N(Ra)−CO−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(Ra)−又は−N(Ra)−CO−におけるRaは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、Xは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、−CF3、又は−OCF3を表し、nは各々独立に0〜4の整数を表し、n1、n2、n3及びn4は、各々独立に0又は1を表すが、n1+n2+n3+n4=1〜4であり、Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−I)〜(LC−III)が好ましい。
ここで、Cycloはシクロヘキサン(シクロへキシレン基)であることが好ましく、例えば下記一般式
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO2−、−SO2−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(Ra)−、−N(Ra)−CO−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(Ra)−又は−N(Ra)−CO−におけるRaは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、Xは各々独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF3基、又はOCF3基を表し、nは各々独立に0〜4の整数を表し、n1、n2、n3及びn4は、各々独立に0又は1を表すが、n1+n2+n3+n4=1〜4である。)で表される液晶性化合物(LC−I′)〜(LC−III′)が好ましい。
液晶性を発現するためには、環に対して1,4−置換であることが好ましい。すなわち該液晶性化合物に含まれる環式2価基が1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2,5−ピリミジンジイル基などであることが好ましい。
例えば下記一般式
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、X11〜X22は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF3基、又はOCF3基を表し、L11〜L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、a1、b1、c1、d1は各々独立に0又は1の整数を表すが、a1+b1+c1+d1は1、2又は3であり、a1が0の場合はd1は0であり、a1が1の場合はc1は0であり、c1が1の場合はa1は0であり、b1=c1=1の場合はa1=d1=0であり、Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−Ia)〜(LC−IIIa)が好ましい。
また、下記一般式
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、環A1は各々1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF3基、OCF3基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、環B1は1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF3基、OCF3基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基を表し、環C1は1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF3基、OCF3基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、a1は0、1、又は2を表し、b1、及びc1は0、1、又は2の整数を表し、a1、b1及びc1の合計は1、2または3を表す。)で表される液晶性化合物(LC−IV)、
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R21とR22が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、X21〜X27は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF3基、又はOCF3基を表し、L21〜L24は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、a2、b2、c2及びd2は各々独立に0又は1の整数を表すが、a2+b2+c2+d2は1、2又は3であり、a2が0の場合はd2は0であり、a2が1の場合はc2は0であり、b2=c2=1の場合はa2=d2=0である。)で表される液晶性化合物(LC−V)が好ましい。フェニルピリミジン系化合物のうち、強誘電性の発現に必要な傾いたスメクチック相を得るため、あるいは、分子の傾き角を大きくするため、もしくは融点を低下させるためには分子の環の部分に置換基として、少なくとも1つ以上のフッ素原子、CF3基、あるいはOCF3基が導入されることが好ましい。置換基としては形状の小さなフッ素を導入することが、液晶相を安定に保ち、また、高速応答性も保持する面で好ましい。置換基の数は1〜3が好ましい。粘度が低く高速応答するため、環をつなぐ連結基(−Z−Y−Z−、又は−Y−L−Y−)としては、単結合、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2CH2−、−CH=CH−、又は、−C≡C−からなるより選択されることが好ましく、特に、単結合であることが好ましい。分子の局部的な分極を抑制しスイッチング挙動への悪影響を少なくする面でも単結合が好ましい。一方、層構造の安定性を保つための材料としては粘度が高い方が好ましく、その場合には、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−からなるより選択されることが好ましく用いられ、特に、−CO−O−、−O−CO−が好ましく用いられる。
一方、融点を低下させる効果を大きくするという点では、側鎖(R、R11、R12、R21、R22)の一方または両方に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、イソプロピル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルオキシ基を用いることが好ましい。
Δnを大きくするのに適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子、又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH2−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO2−、−SO2−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、X21〜X24は各々独立に水素原子、ハロゲン、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF3基、又はOCF3基を表し、環A1はフェニレン基またはシクロヘキシレン基を示し、Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、a1は0、1、又は2を表し、b1、及びc1は0、1、又は2の整数を表し、a1+b1+c1の合計は1又は2を表し、a1=1のときc1=0であり、c1=1のときa1=0である)で表される液晶性化合物(LC−VI)が好ましい。
上記一般式(LC−I)〜(LC−VI)におけるYは、好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜7のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
TFT駆動に適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
(式中、e1は0又は1を示し、X21〜X26は各々独立に水素原子、又はフッ素原子基を表すが、e1が0のときX21〜X24の少なくとも1つはフッ素原子で、e1が1のときX21〜X26の少なくとも1つはフッ素原子であり、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つの−CH2−基が−O−で置き換えられてもよく、L25は単結合、−CH2O−、又は−OCH2−を表し、環A1はフェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。)で表される液晶性化合物(LC−VII)が特に好ましい。
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる液晶性化合物は、上記の(LC−0)、(LC−I)〜(LC−III)、(LC−IV)、(LC−V)、(LC−VI)、(LC−VII)等のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
<キラル化合物>
本発明の強誘電性液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、不斉原子をもつ化合物、軸不斉をもつ化合物、面不斉をもつ化合物、アトロプ異性体のいずれでもよく、該キラル化合物は重合性基を有するものでも、重合性基を有しないものでもよい。
不斉原子をもつ化合物において、不斉原子は不斉炭素原子であると立体反転が起こりにくく好ましいが、ヘテロ原子が不斉原子となっていてもよい。不斉原子は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていてもよい。
該強誘電性液晶組成物が、不斉原子をもつ化合物として、一般式(IV)
(式(IV)中、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH2−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、R1及びR2のうちいずれか一方又は両方が不斉原子をもつ基であり、Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(Ra)−、−N(Ra)−CO−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(Ra)−又は−N(Ra)−CO−におけるRaは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、A1及びA2は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH2−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO2基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、mは1、2、3、4又は5である。)で表される光学活性化合物が好ましい。
上記一般式(IV)においてR1及びR2の両方がキラルな基である、ジキラル化合物がより好ましい。ジキラル化合物の具体例として、下記一般式(IV−a1)から(IV−a11)で表される化合物が挙げられる。
一般式(IV−a1)から(IV−a11)において、R3は、各々独立に炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH2−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよい。重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
また、X3及びX4は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、フェニル基(該フェニル基の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF3、−OCF3で置換されていてもよい。)、メチル基、メトキシ基、−CF3、又は−OCF3であることが好ましい。ただし、一般式(IV−a3)及び(IV−a8)において、*を付した位置が不斉原子となるためには、X4はX3と異なる基が選択される。
また、n3は0〜20の整数である。
一般式(IV−a4)及び(IV−a9)におけるR5は、水素原子又はメチル基が好ましい。
一般式(IV−a5)及び(IV−a10)におけるQは、メチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などの二価の炭化水素基が挙げられる。
一般式(IV−a11)におけるkは、0〜5の整数である。
より好ましい例示として、R3=C4H9,C6H13,C8H17などの炭素原子数4〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基が挙げられる。また、X3としてはCH3が好ましい。
一般式(IV)及び(IV−a1)〜(IV−a11)における部分構造式、−A1−(Z−A2)m−は、より好ましくは、
(式中、環A、B、Cは、各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基又はナフタレンジイル基であり、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF3、−OCF3で置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)であり、さらに好ましくは、
(ただし、これらの式においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF3、−OCF3で置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)が挙げられる。信頼性の面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環よりもベンゼン環やシクロヘキサン環の方が好ましい。誘電率異方性を大きくするという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きく、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の炭化水素環である場合には、化合物の持つ分極性が低い。このため、キラル化合物の分極性に応じて、適切な含有量を選択することが好ましい。
また、本発明の強誘電性液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、軸不斉を有する化合物又はアトロプ異性体を用いることもできる。
軸不斉とは、下記に示すアレン誘導体や、
下記に示すビフェニル誘導体など、
結合軸の回転が妨げられている化合物中、軸の一端側で置換基Xa及びYaが互いに異なり、軸のもう一端側でも置換基Xb及びYbが互いに異なることで発現する。なお、ビフェニル誘導体など、結合軸の回転が立体障害などの影響によって妨げられる場合をアトロプ異性という。
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる軸不斉をもつ化合物としては、例えば、
式(IV−c1)及び(IV−c2)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH2、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
E61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。
また、式(IV−c1)において、R61及びR62は、各々独立に、アルキル基、アルコキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、R66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
また、本発明の強誘電性液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、面不斉を有する化合物を用いることもできる。
面不斉を有する化合物としては、例えば下記に示すヘリセン(Helicene)誘導体
(式中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH2、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
E61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。)
が挙げられる。このようなヘリセン誘導体においては、前後に重なり合う環の前後関係が自由に変換することができないため、環が右向きの螺旋構造をとる場合と左向きの螺旋構造をとる場合とが区別され、キラリティーを発現する。
液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、螺旋構造のピッチが小さくなるように、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。特に400nm以下となる螺旋ピッチの短いDH−FLCを調整する際は、ねじり力が大きい化合物を使用することが好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、原料コストの高いキラル化合物を最小限に抑えることができ、コスト削減の観点から好ましい。この観点から、好ましいキラル化合物として、不斉原子を有する化合物である、
や、軸不斉を有する化合物である、
が挙げられる。式(IV−d1)〜(IV−d5)中、R71及びR72は各々独立に、水素、ハロゲン、シアノ(CN)基、イソシアネート(NCO)基、イソチオシナネート(NCS)基又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、このアルキル基中の任意の1つ又は2つ以上の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、A71及びA72は各々独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、又は、炭素原子数9以上の縮合環を表すが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素原子数1〜3のアルキル基又はハロアルキル基で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH2−は−O−、−S−、又は−NH−で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、
Z71及びZ72は各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基を表すが、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;X71及びX72は各々独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、又は−CH2CH2−を表し、m71及びm72は各々独立に1〜4の整数を表す。ただし、式(IV−d5)におけるm71及びm72のいずれか一方は0でもよい。
式(IV−d2)中、Ar71及びAr72は各々独立にフェニル基又はナフチル基を表し、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF3、−OCF3で置換されていてもよい。
本発明の強誘電性液晶組成物においては、メソゲンを有するキラル化合物を用いることもできる。このようなキラル化合物として、例えば
が挙げられる。式(IV−e1)〜(IV−e3)中、
R81、R82、R83及びY81は、各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH2−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、Z81、Z82、Z83、Z84及びZ85は各々独立に炭素原子数が1〜40個であるアルキレン基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上のCH2基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CF2−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
X81、X82及びX83は、各々独立に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、又は単結合を表し、A81、A82及びA83は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH2−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO2基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、m81、m82、m83はそれぞれ0又は1であり、m81+m82+m83は1、2又は3である。CH*81及びCH*82は各々独立にキラルな2価の基を表し、CH*83はキラルな3価の基を表す。
ここで、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価の基としては、不斉原子を有する次の2価基
や、軸不斉を有する次の2価基
が好ましい。ただし、CH*81及びCH*82に用いられるこれらの2価基において、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF3、−OCF3で置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。
CH*83に用いられるキラルな3価の基としては、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価基の任意の位置に、−X83(Z83A83)m83R83が結合できることにより3価の基となればよい。
さらに好ましくは、キラルな2価基としてイソソルビド骨格を有する、次の化合物が挙げられる。
式中、R91及びR92は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH2−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
Z91及びZ92は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(Ra)−、−N(Ra)−CO−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(Ra)−又は−N(Ra)−CO−におけるRaは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
<重合性化合物>
本発明の強誘電性液晶組成物は、重合性化合物を添加して、高分子安定化液晶組成物とすることもできる。
<重合性化合物(I)>
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる重合性化合物(I)は、一般式(I−a)
(式(I−a)中、A1は水素原子又はメチル基を表し、A2は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、A3及びA6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から17のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、A4及びA7はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、kは1から40を表し、B1、B2及びB3は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個もしくは2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い)、又は一般式(I−b)
(式(I−b)中、A9は水素原子又はメチル基を表し、A8は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)で表される基を表す。ただし、2k+1個あるB1、B2及びB3のうち前記一般式(I−b)で表される基となるものの個数は0〜3個である。)で表される重合性化合物が好ましい。また、該重合性化合物の重合物のガラス転移温度が−100℃から25℃であることが好ましい。
なお、本願発明において、「アルキレン基」とは、特に断りのない場合、脂肪族直鎖炭化水素の両端の炭素原子から水素原子各1個を除いた二価の基「−(CH2)n−」(ただしnは1以上の整数)を意味するものとし、その水素原子からハロゲン原子もしくはアルキル基への置換、又はメチレン基から酸素原子、−CO−、−COO−もしくは−OCO−への置換がある場合は、その旨を特に断るものとする。また、「アルキレン鎖長」とは、「アルキレン基」の一般式「−(CH2)n−」におけるnをいうものとする。
非液晶性モノマー(I)は、一般式(I−a)で表されるものの中で複数、主鎖長やアルキル側鎖長の異なるものを含有させても良い。
一般式(I−a)で表される重合性化合物(I)の好ましい構造として、下記一般式(I−c)
(式(I−c)中、A11及びA19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、A12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、A13及びA16はそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、A14及びA17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、A15は炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表す。)で表される化合物、一般式(I−d)
(式(I−d)中、A21及びA22はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、aは、6〜22の整数を表す。)で表される化合物、一般式(I−e)
(式(I−e)中、A31及びA32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、b及びcはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜6の整数を表す。)で表される化合物、及び一般式(I−f)
(式(I−f)中、A41及びA42はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、m,n,p及びqはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、式(I−c)で表される化合物を含むことが好ましい。
一般式(I−c)で表される重合性化合物の好ましい構造として、A11及びA19はいずれも水素原子であることが好ましい。これらの置換基A11,A19がメチル基である化合物においても本願発明の効果は発現するが、水素原子である化合物は重合速度がより速くなる点で有利である。
A12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。二つの重合性官能基間距離は、A12及びA18とA15とで独立的にそれぞれ炭素数の長さを変えて調整することができる。一般式(I−c)で表される化合物の特徴は、重合性官能基間の距離(架橋点間の距離)が長いことであるが、この距離があまりに長いと重合速度が極端に遅くなって相分離に悪い影響が出てくるため、重合性官能基間距離には上限がある。一方、A13及びA16の二つの側鎖間距離も主鎖の運動性に影響がある。すなわちA13及びA16の間の距離が短いと側鎖A13及びA16がお互いに干渉するようになり、運動性の低下をきたす。従って、一般式(I−c)で表される化合物において重合性官能基間距離はA12、A18、及びA15の和で決まるが、このうちA12とA18を長くするよりはA15を長くした方が好ましい。
一方、側鎖であるA13,A14,A16,A17においては、これらの側鎖の長さが次のような態様を有することが好ましい。
一般式(I−c)において、A13とA14は主鎖の同じ炭素原子に結合しているが、これらの長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA13と呼ぶものとする(A13の長さとA14の長さが等しい場合は、いずれが一方をA13とする)。同様に、A16の長さとA17の長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA16と呼ぶものとする(A16の長さとA17の長さが等しい場合は、いずれが一方をA16とする)。
このようなA13及びA16は、本願においてはそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)とされているが、
好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数2から18の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数3から15の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
側鎖は主鎖に比べて運動性が高いので、これが存在することは低温での高分子鎖の運動性向上に寄与するが、前述したように二つの側鎖間で空間的な干渉が起こる状況では逆に運動性が低下する。このような側鎖間での空間的な干渉を防ぐためには側鎖間距離を長くすること、及び、側鎖長を必要な範囲内で短くすることが有効である。
さらにA14及びA17については、本願においてはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)とされているが、好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から7のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、さらに好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から3のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
このA14及びA17についても、その長さが長すぎることは側鎖間の空間的な干渉を誘起するため好ましくない。この一方でA14及びA17が短い長さを持ったアルキル鎖である場合、高い運動性を持った側鎖になり得ること、及び隣接する主鎖同士の接近を阻害する働きを有することが考えられ、高分子主鎖間の干渉を防ぐ作用があり主鎖の運動性を高めているものと考えられ、アンカリングエネルギーが低温で増加して行くことを抑制することができ、高分子安定化液晶光学素子の低温域における特性を改善する上で有効である。
二つの側鎖間に位置するA15は、側鎖間距離を変える意味からも、架橋点間距離を広げてガラス転移温度を下げる意味からも、長い方が好ましい。しかしながらA15が長すぎる場合は一般式(I−c)で表される化合物の分子量が大きくなりすぎ液晶組成物との相溶性が低下してくること、及び重合速度が遅くなりすぎて相分離に悪影響が出ること等の理由から自ずとその長さには上限が設定される。
よって、本願発明においてA15は、炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であることが好ましい。
すなわち、本願発明においてA15のアルキレン鎖長は炭素原子数9から16であることが好ましい。A15は構造上の特徴として、アルキレン基中の水素原子が炭素原子数1から10のアルキル基で置換された構造を有する。アルキル基の置換数は1個以上5個以下であるが、1個から3個が好ましく、2個又は3個置換されていることがより好ましい。置換するアルキル基の炭素原子数は、1個から5個が好ましく、1個から3個がより好ましい。
一般式(I−a)で表される化合物は、Tetrahedron Letters,Vol.30,pp4985、Tetrahedron Letters,Vol.23,No6,pp681−684、及び、Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34,pp217−225等の公知の方法で合成することができる。
例えば、一般式(I−c)において、A14及びA17が水素である化合物は、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するアクリル酸やメタクリル酸等の重合性化合物とを反応させ、水酸基を有する重合性化合物を合成し、次に、飽和脂肪酸と反応させることにより得ることができる。
更に、複数のエポキシ基を有する化合物と飽和脂肪酸とを反応させ、水酸基を有する化合物を合成し、次に水酸基と反応し得る基を有するアクリル酸塩化物等の重合性化合物とを反応させることにより得ることができる。
またラジカル重合性化合物が、例えば、一般式(I−c)のA14及びA17がアルキル基であり、A12及びA18が炭素原子数1であるメチレン基である場合は、オキセタン基を複数有する化合物と、オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法や、オキセタン基を一つ有する化合物と、オキセタン基と反応し得る多価の脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法等により得ることができる。
また、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数3であるアルキレン基(プロピレン基;−CH2CH2CH2−)の場合は、オキセタン基の代わりにフラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。更に、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数4であるアルキレン基(ブチレン基;−CH2CH2CH2CH2−)の場合は、オキセタン基の代わりにピラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。
<重合性液晶化合物(II)>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる重合性液晶化合物(II)は、下記一般式(II−a)
(式(II−a)中、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、C4及びC5はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、Z3及びZ5はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、Z4は、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2O−、−OCH2CH2−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−又は−OCO−を表し、n2は、0、1又は2を表す。ただし、n2が2を表す場合、複数あるC4及びZ4は同じであっても異なっていても良い。)、
一般式(II−b)
(式(II−b)中、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、C6は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、C7はベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z6及びZ8はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、Z7は、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2O−、−OCH2CH2−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−又は−OCO−を表し、n3は、0、1又は2を表す。ただし、n3が2を表す場合、複数あるC6及びZ7は同じであっても異なっていても良い。)、
及び一般式(II−c)
(式(II−c)中、R7は水素原子又はメチル基を表し、6員環T1、T2及びT3はそれぞれ独立的に、
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、n4は0又は1の整数を表し、Y0、Y1及びY2はそれぞれ独立して単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CHCH2CH2−又は−CH2CH2CH=CH−を表し、Y3は単結合、−O−、−COO−、又は−OCO−を表し、R8は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数1から20のアルケニル基、炭素原子数1から20のアルコキシ基、又は炭素原子数1から20の炭化水素基を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性化合物(II)である。
より具体的には、一般式(II−d)及び(II−e)
(式(II−d)及び(II−e)中、m1は、0又は1を表し、Y11及びY12はそれぞれ独立して単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y13及びY14はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、Y15及びY16はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、r及びsはそれぞれ独立して2〜14の整数を表す。式中に存在する1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)のいずれかで表される化合物を用いると、機械的強度や耐熱性に優れた光学異方体が得られるので好ましい。
一般式(II−a)で表される化合物の具体例を以下の(II−1)から(II−10)に挙げることができる。
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
また、一般式(II−d)及び(II−e)のいずれかで表される化合物の具体例を以下の(II−11)から(II−20)に挙げることができる。
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
<カイラル性を示す光重合性モノマー>
光重合性モノマー(重合性化合物)としては、上述のようなアキラルな物質に限らず、カイラルな物質を用いてもよい。カイラル性を示す光重合性モノマーとしては、例えば、下記の一般式(II−x)、又は(II−y)で表される重合性化合物を用いることができる。
上記式(II−x)、及び式(II−y)において、Xは水素原子又はメチル基を表す。また、n4は0又は1の整数を表し、n5は、0、1又は2の整数を表す。ただし、n5が2を表す場合、複数あるT4及びY4は同じであっても異なっていても良い。
また、6員環T1,T2,T3,T4は、1,4−フェニレン基、trans−1,4−シクロヘキシレン基等の6員環構造を有する置換基を表す。ただし、6員環T1,T2,T3は、これらの置換基にのみ限定されるものではなく、下記構造
を有する置換基のうち、何れか一種の置換基を有していればよく、互いに同じであっても異なっていても構わない。なお、上記置換基において、mは1〜4の整数を示す。
また、式(II−y)におけるT5は、ベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基などの環式3価基を表す。
また、式(II−x)及び式(II−y)におけるY1、Y2、及びY4は、それぞれ独立的に、炭素原子数が1〜10である直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基であり、この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は、−O−、−S−、−CO−O−又は−O−CO−により置き換えられていてもよく、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CHCH2CH2−、又は−CH2CH2CH=CH−を含んでいてもよい。また、不斉炭素原子を含んでいてもよく、含まなくても良い。すなわち、Y1及びY2は、上記したいずれかの構造を有していれば、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
また、Y0及びY3は、単結合、−O−、−OCO−、−COO−を表す。
Z1は、不斉炭素原子を持ちかつ分枝鎖構造を含む炭素原子数3〜20のアルキレン基を表す。
Z2は、炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、不斉炭素原子を含んでいてもよく、含まなくても良い。
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる重合性化合物は、上記の(I)、(II)、(II−x)、(II−y)のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
本発明の強誘電性液晶組成物が重合性化合物を含有する場合の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;
ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
本発明においては、重合性液晶化合物(II)のほかに多官能液晶性モノマーを添加することもできる。この多官能液晶性モノマーとしては、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH2=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO−(ここでRは塩素、フッ素、又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表す)が挙げられるが、これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基が特に好ましく、アクリロイルオキシ基が最も好ましい。
多官能液晶性モノマーの分子構造としては、2つ以上の環構造を有することを特徴とする液晶骨格、重合性官能基、さらに液晶骨格と重合性官能基を連結する柔軟性基を少なくとも2つ有するものが好ましく、3つの柔軟性基を有するものがさらに好ましい。柔軟性基としては、−(CH2)n−(ここでnは整数を表す)で表されるようなアルキレンスペーサー基や−(Si(CH3)2−O)n−(ここでnは整数を表す)で表されるようなシロキサンスペーサー基を挙げることができ、この中ではアルキレンスペーサー基が好ましい。これらの柔軟性基と液晶骨格、もしくは重合性官能基との結合部分には、−O−、−COO−、−CO−のような結合が介在していても良い。
液晶組成物の応答速度の向上、配向安定性の向上、閾値電圧の低下、低温での応答速度低下の改善、レイヤー構造の安定化等の目的として、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子等のナノ粒子を添加することもできる。有機粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシアクリレート、ジビニルベンゼン等のポリマー粒子が挙げられる。無機粒子としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、SiO2、TiO2、Al2O3等の酸化物や、Au、Ag、Cu、Pd等の金属が挙げられる。有機粒子や無機粒子は、表面を他の材料でコーティングしたハイブリッド粒子であってもよく、無機粒子の表面を有機材料でコーティングした有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。無機粒子の表面に付与する有機物が液晶性を示すと、周囲の液晶分子が配向しやすくなり、好ましい。
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。また、二軸性化合物や、イオン及び極性化合物のトラップ材料等を含有するものとすることもできる。
二軸性化合物において二軸性を示す分子構造としては、板状構造、円盤と棒を組み合わせた構造、半円盤と棒を組み合わせた構造、バナナ型液晶などの折れ曲がった構造、Lateral connection(分子側鎖で連結した構造)などが好ましく、具体的な二軸性化合物としてはJ. Mater. Chem., 2010, 20, 4263−4294、The Chemical Record, Vol. 4, 10−22 (2004)などの文献に記載されている化合物などが挙げられる。
強誘電性液晶組成物は不純物等を除去したり、又は比抵抗値を更に高くしたりする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。液晶組成物の比抵抗値としては、THTで駆動するためには、1011Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1013Ω・cm以上がより好ましい。また、液晶組成物中に不純物として存在するカチオンの影響を防止する方法として、クラウンエーテル、ポダンド、コロナンド、又はクリプタンド等のカチオン包接化合物を添加することもできる。
低温環境下でも液晶光学素子の性能を維持できるようにするため、強誘電性液晶組成物が低温保存安定性を有することが好ましい。液晶組成物の低温保存安定性は、0℃以下、24時間以上の環境でSmC*を維持することが好ましく、より好ましくは−20℃以下、500時間以上、さらに好ましくは−30℃以下、700時間以上の環境でSmC*を維持することが好ましい。
(ネマチック組成物)
本発明に係る液晶成分としては、ネマチック組成物が好ましい。当該ネマチック組成物としては以下の液晶化合物を含むことが好ましい。
液晶としては、下記一般式(LC)で表される化合物を含有することが好ましい。
(一般式(LC)中、RLCは炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、ALC1及びALC2は、それぞれ独立して、
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)、
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)、及び
(c)1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はクロマン−2,6−ジイル基、
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ、F、Cl、CF3又はOCF3で置換されていてもよく、ZLCは単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−、−CF2O−、−COO−又は−OCO−を表し、YLCは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、及び炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CF2O−、−OCF2−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよく、aは1〜4の整数を表すが、aが2、3又は4を表し、ALC1が複数存在する場合、複数存在するALC1は、同一であっても異なっていても良く、ZLCが複数存在する場合、複数存在するZLCは、同一であっても異なっていても良い。)
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC1)及び一般式(LC2)
(式中、RLC11及びRLC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよく、ALC11、及びALC21はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
(該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH2基は酸素原子で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はF、Cl、CF3又はOCF3で置換されていてもよい。)を表し、XLC11、XLC12、XLC21〜XLC23はそれぞれ独立して水素原子、Cl、F、CF3又はOCF3を表し、YLC11及びYLC21はそれぞれ独立して水素原子、Cl、F、CN、CF3、OCH2F、OCHF2又はOCF3を表し、ZLC11及びZLC21はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−、−CF2O−、−COO−又は−OCO−を表し、mLC11及びmLC21はそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、ALC11、ALC21、ZLC11及びZLC21が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
RLC11及びRLC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましく、直鎖状であることが更に好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましい。
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
ALC11及びALC21はそれぞれ独立して下記の構造が好ましい。
YLC11及びYLC21はそれぞれ独立してF、CN、CF3又はOCF3が好ましく、F又はOCF3が好ましく、Fが特に好ましい。
ZLC11及びZLC21は単結合、−CH2CH2−、−COO−、−OCO−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−又は−CF2O−が好ましく、単結合、−CH2CH2−、−OCH2−、−OCF2−又は−CF2O−が好ましく、単結合、−OCH2−又は−CF2O−がより好ましい。
mLC11及びmLC21は1、2又は3が好ましく、低温での保存安定性、応答速度を重視する場合には1又は2が好ましく、ネマチック相上限温度の上限値を改善するには2又は3が好ましい。
一般式(LC1)は、下記一般式(LC1−a)から一般式(LC1−c)
(式中、RLC11、YLC11、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるRLC11、YLC11、XLC11及びXLC12と同じ意味を表し、ALC1a1、ALC1a2及びALC1b1は、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し、XLC1b1、XLC1b2、XLC1c1〜XLC1c4はそれぞれ独立して水素原子、Cl、F、CF3又はOCF3を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
RLC11はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましい。
XLC11〜XLC1c4はそれぞれ独立して水素原子又はFが好ましい。
YLC11はそれぞれ独立してF、CF3又はOCF3が好ましい。
また、一般式(LC1)は、下記一般式(LC1−d)から一般式(LC1−m)
(式中、RLC11、YLC11、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるRLC11、YLC11、XLC11及びXLC12と同じ意味を表し、ALC1d1、ALC1f1、ALC1g1、ALC1j1、ALC1k1、ALC1k2、ALC1m1〜ALC1m3は、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し、XLC1d1、XLC1d2、XLC1f1、XLC1f2、XLC1g1、XLC1g2、XLC1h1、XLC1h2、XLC1i1、XLC1i2、XLC1j1〜XLC1j4、XLC1k1、XLC1k2、XLC1m1及びXLC1m2はそれぞれ独立して水素原子、Cl、F、CF3又はOCF3を表し、ZLC1d1、ZLC1e1、ZLC1j1、ZLC1k1、ZLC1m1はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−、−CF2O−、−COO−又は−OCO−を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であるのが好ましい。
RLC11はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましい。
XLC11〜XLC1m2はそれぞれ独立して水素原子又はFが好ましい。
YLC11はそれぞれ独立してF、CF3又はOCF3が好ましい。
ZLC1d1〜ZLC1m1はそれぞれ独立して−CF2O−、−OCH2−が好ましい。
一般式(LC2)は、下記一般式(LC2−a)から一般式(LC2−g)
(式中、RLC21、YLC21、XLC21〜XLC23はそれぞれ独立して前記一般式(LC2)におけるRLC21、YLC21、XLC21〜XLC23と同じ意味を表し、XLC2d1〜XLC2d4、XLC2e1〜XLC2e4、XLC2f1〜XLC2f4及びXLC2g1〜XLC2g4はそれぞれ独立して水素原子、Cl、F、CF3又はOCF3を表し、ZLC2a1、ZLC2b1、ZLC2c1、ZLC2d1、ZLC2e1、ZLC2f1及びZLC2g1はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−、−CF2O−、−COO−又は−OCO−を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であるのが好ましい。
RLC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましい。
XLC21〜XLC2g4はそれぞれ独立して水素原子又はFが好ましく、YLC21はそれぞれ独立してF、CF3又はOCF3が好ましい。
ZLC2a1〜ZLC2g4はそれぞれ独立して−CF2O−、−OCH2−が好ましい。
また、前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC3)〜一般式(LC5)
(式中、RLC31、RLC32、RLC41、RLC42、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよく、ALC31、ALC32、ALC41、ALC42、ALC51及びALC52はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
(該構造中シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH2基は酸素原子で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はCl、CF3又はOCF3で置換されていてもよい。)のいずれかを表し、ZLC31、ZLC32、ZLC41、ZLC42、ZLC51及びZLC51はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−COO−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−又は−CF2O−を表し、Z5はCH2基又は酸素原子を表し、XLC41は水素原子又はフッ素原子を表し、mLC31、mLC32、mLC41、mLC42、mLC51及びmLC52はそれぞれ独立して0〜3を表し、mLC31+mLC32、mLC41+mLC42及びmLC51+mLC52は1、2又は3であり、ALC31〜ALC52、ZLC31〜ZLC52が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
RLC31〜RLC52は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましく、
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
ALC31〜ALC52はそれぞれ独立して下記の構造が好ましく、
ZLC31〜ZLC51はそれぞれ独立して単結合、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CF2O−、−OCF2−又は−OCH2−が好ましい。
一般式(LC3)は、下記一般式(LC3−a)及び一般式(LC3−b)
(式中、RLC31、RLC32、ALC31及びZLC31はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31、RLC32、ALC31及びZLC31と同じ意味を表し、XLC3b1〜XLC3b6は水素原子又はフッ素原子を表すが、XLC3b1及びXLC3b2又はXLC3b3及びXLC3b4のうちの少なくとも一方の組み合わせは共にフッ素原子を表し、mLC3a1は1、2又は3であり、mLC3b1は0又は1を表し、ALC31及びZLC31が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
ALC31は、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すことが好ましく、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基を表すことがより好ましい。
ZLC31は単結合、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
一般式(LC3−a)としては、下記一般式(LC3−a1)〜一般式(LC3−a4)を表すことが好ましい。
(式中、RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31及びRLC32と同じ意味を表す。)
RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、RLC31が炭素原子数1〜7のアルキル基を表し、RLC32が炭素原子数1〜7のアルコキシ基を表すことがより好ましい。
一般式(LC3−b)としては、下記一般式(LC3−b1)〜一般式(LC3−b12)を表すことが好ましく、一般式(LC3−b1)、一般式(LC3−b6)、一般式(LC3−b8)、一般式(LC3−b11)を表すことがより好ましく、一般式(LC3−b1)及び一般式(LC3−b6)を表すことがさらに好ましく、一般式(LC3−b1)を表すことが最も好ましい。
(式中、RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31及びRLC32と同じ意味を表す。)
RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、RLC31が炭素原子数2又は3のアルキル基を表し、RLC32が炭素原子数2のアルキル基を表すことがより好ましい。
一般式(LC4)は下記一般式(LC4−a)から一般式(LC4−c)、一般式(LC5)は下記一般式(LC5−a)から一般式(LC5−c)
(式中、RLC41、RLC42及びXLC41はそれぞれ独立して前記一般式(LC4)におけるRLC41、RLC42及びXLC41と同じ意味を表し、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して前記一般式(LC5)におけるRLC51及びRLC52と同じ意味を表し、ZLC4a1、ZLC4b1、ZLC4c1、ZLC5a1、ZLC5b1及びZLC5c1はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−COO−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−又は−CF2O−を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であるのがより好ましい。
RLC41、RLC42、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
ZLC4a1〜ZLC5c1はそれぞれ独立して単結合、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC6)
(式中、RLC61及びRLC62はそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン置換されていてもよく、ALC61〜ALC63はそれぞれ独立して下記
(該構造中シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH2CH2基は−CH=CH−、−CF2O−、−OCF2−で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)のいずれかを表し、ZLC61及びZLC62はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−COO−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−又は−CF2O−を表し、miii1は0〜3を表す。ただし、一般式(LC1)〜一般式(LC6)で表される化合物を除く。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物が好ましい。
RLC61及びRLC62は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましく、
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
ALC61〜ALC63はそれぞれ独立して下記の構造が好ましく、
ZLC61及びZLC62はそれぞれ独立して単結合、−CH2CH2−、−COO−、−OCH2−、−CH2O−、−OCF2−又は−CF2O−が好ましい。
一般式(LC6)は、一般式(LC6−a)から一般式(LC6−m)
(式中、RLC61及びRLC62はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であるのがより好ましい。
<重合性化合物>
本発明のネマチック液晶組成物は、重合性化合物を添加して、高分子安定化液晶組成物とすることもできる。高分子安定化液晶組成物は、ネマチック液晶組成物にポリマー成分の前駆体であるモノマーとして添加することが好ましい。モノマーとしては、強誘電性液晶組成物に用いられる重合性化合物と同様のものを用いることができる。
「潤滑成分」
本発明に係る液晶組成物において、潤滑成分の配向秩序度が液晶成分の配向秩序度と異なることが好ましい。
本発明において、境界領域とは、液晶組成物中において、液晶ドメイン同士の配向方向が互いに異なる境界線(または面)を含む領域(いわゆる不均一な相)をいい、当該境界領域の好ましい状態は以下の3つの状態が例示される。
(状態1)
境界領域に液晶成分と潤滑成分とが混在しており、液晶ドメイン1あるいは液晶ドメイン2の液晶の秩序度より境界領域に混在する液晶成分の秩序度が低い状態。
(状態2)
境界領域に液晶成分と潤滑成分とが混在していても混在していなくてもよく、境界領域に存在する潤滑成分の秩序度が液晶ドメイン1あるいは液晶ドメイン2の液晶の秩序度より高くても低くてもよく、潤滑成分と液晶ドメイン1あるいは液晶ドメイン2の液晶(分子)との相互作用が、液晶ドメイン1あるいは液晶ドメイン2における液晶間の相互作用よりも弱い状態。
(状態3)
境界領域に液晶成分と潤滑成分とが混在していても混在していなくてもよく、潤滑成分と液晶ドメイン1あるいは液晶ドメイン2の液晶との相互作用が強くても弱くても良く、潤滑成分の秩序度が液晶ドメイン1あるいは液晶ドメイン2の液晶の秩序度より低い状態
本発明に係る潤滑成分の配向秩序度が前記液晶成分の配向秩序度以下であることがより好ましく、潤滑成分の配向秩序度が前記液晶成分の配向秩序度より低いことがさらにより好ましい。
配向秩序度Sは下記数式(1)で表される。
ここで、数式(1)において、<>は熱平均、P2(θ)は2次のルジャンドル多項式、θはそれぞれの分子の長軸が配向ベクトルnとなす角度、f(θ)は分布関数であり、f(θ)dΩは微小立体角dΩ中に分子を見出す確率である。また、当該配向秩序度Sは、NMRや偏光吸収法などで測定できる。液体と液晶とでは、配向秩序度が異なる。液晶は配向秩序度を有しているのに対して、液体は等方性なので配向秩序を有しない。潤滑成分としては、液晶成分より配向秩序度の小さな液晶化合物であってもよいが、等方性の液体として存在し得る化合物が好ましい。液晶成分に微粒子あるいはポリマー等を添加することで、配向秩序を乱した状態にすること等により、液晶ドメインの間を区画する境界領域を形成することもできる。
本発明に係る潤滑成分は、液晶性を示してもよい。その場合、当該潤滑成分が、液晶成分の機能を奏するため、本発明に係る液晶組成物においては液晶性を示す潤滑成分のみで構成されてもよい。例えば本発明に係る潤滑成分として、光応答性のアゾ系化合物(式(Ia−1))を選択する場合、当該アゾ系化合物は液晶性を示し、かつ光に応答して溶解性が変化する。そのため、本発明に係る液晶組成物として(式(Ia−1))を一対の基板からなる液晶セルに充填し、当該セル充填されている液晶組成物の一部に光を照射すると、照射された領域の(式(Ia−1))の化合物は、その化学構造変化により溶解性が変化する。これにより、光が照射された領域が本発明に係る境界領域となり、当該光が照射された領域である本発明に係る境界領域を境にして、第一の液晶ドメインと第二の液晶ドメインに区画することができる。これにより光を照射することで境界領域を形成し、かつ当該境界領域を境に第一の液晶ドメインおよび第二の液晶ドメインを形成し、これらのドメイン間において電場印加に応動する液晶分子の運動による衝突を軽減できる。
本発明の好ましい実施形態の一つは、外部刺激により化学構造が変化する刺激応答性物質を含む潤滑成分の少なくとも一部に外部刺激を与える工程と、前記外部刺激に応答して活性化された刺激応答性物質を含む領域を起点となり少なくとも2つ以上の配向方向が異なる液晶ドメインを形成する工程と、を備える、潤滑成分を含む液晶組成物の高速応答化処理方法である。
光、磁場、または電場などの外部刺激を局地的に刺激応答性物質に与えることで、当該刺激応答性物質を含む潤滑成分の化学構造の変化などに伴う溶解性の変化や相分離などを引き起こし、活性化された刺激応答性物質を含む領域が形成される。するとこの領域を起点(いわゆる境界領域やslippy界面とも称する。)として少なくとも2つ以上の配向方向が異なる液晶ドメインが形成される。これにより、当該活性化された刺激応答性物質を含む領域が境界領域となるため、外部電圧を印加すると異なる配向方向を有する液晶ドメイン中のそれぞれの液晶分子の運動を円滑にすることができると考えられる。
本発明に係る潤滑成分と本発明に係る液晶成分とは相分離することが好ましい。
本発明に係る潤滑成分は、光応答性材料、溶媒、ポリマー、微粒子、ゲルおよびパーフルオロアルキル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明に係る光応答性材料としては、光異性化可能な化合物として、例えば、アゾベンゼン誘導体、スチルベン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロベンゾピラン誘導体、α − アリール− β − ケト酸誘導体、α − ヒドラゾノ− β − ケト酸誘導体、カルコン誘導体、アゾ化合物誘導体、ベンジリデンフタルイミデン誘導体、ヘミチオインジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、スピロオキサジン誘導体、シンナムアルデヒド誘導体、レチナール誘導体、フルギド誘導体、ジアリールエテン誘導体、ポリメチン系化合物、ベンゾチアゾリノスピロピラン誘導体、ベンゾキオピラン系ピロピラン誘導体並びにそれらの異性体及びヘテロ元素置換体から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
また、光異性化可能な化合物として一般式(Ia−1)
(式中、Laは重合性基又は水素原子を表し、Saはスペーサー単位を表し、Pは光化学的に異性化可能であり、かつ光化学的に架橋されない部位を表す。)
で表される化合物を用いることができる。
一般式(Ia−1)において、Pが、下記一般式(VI)
(式中、破線はSaへの結合を表すが、一方の破線のみで結合している場合はもう一方の破線は水素原子に結合しており;A1、A2、A3、A4及びA5は、それぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基、−NR1R2(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)又は炭素原子数1から10の直鎖若しくは分岐アルキル基によって置換されていても良く、該アルキル基は非置換であるか、又はフッ素原子で置換されていても良く、
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立して0又は1を表すが、0<q+r+s+tを表す。)
で表される構造であることが好ましく、A1、A2、A3、A4及びA5は、それぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていることが好ましく、A1、A2、A3、A4及びA5は、それぞれ独立して2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていることがより好ましく、q+r+s+tは1以上2以下がより好ましく、A1、A2、A3、A4及びA5は、それぞれ独立して2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか、又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基で置換されていることが特に好ましく、p及びq+r+s+tは1であることが特に好ましい。
液晶配向性を改善するためにはA1、A2、A3、A4及びA5はそれぞれ独立してピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。又、ポリマーの溶解性を改善するためには、A1、A2、A3、A4及びA5はそれぞれ独立して1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−チオフェニレン基又は2,5−フラニレン基が好ましい。又、液晶を配向させるために必要な光照射量を少なくするためにはA1、A2、A3、A4及びA5はピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましく、q+r+s+tは1から2が好ましい。又、より長波長での光配向を行うためにはA1、A2、A3、A4及びA5はピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,5−フラニレン基が好ましく、q+r+s+tは1から3が好ましい。
一般式(VI)には多くの化合物が含まれるが、具体的には以下の一般式(P−a−1)〜一般式(P−e−7)
で表される化合物が特に好ましい。
中でも一般式(P−a−1)〜(P−a−9)、一般式(P−b−1)〜(P−b−8)、一般式(P−c−1)又は一般式(P−e−5)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(Ia−1)において、Saは、一般式(Ia−3)中のScと同様の基を表すことが好ましい。
本発明に係る溶媒は極性溶媒であることが好ましい。本発明の潤滑成分が極性溶媒である、疎水性を示す液晶成分と容易に相分離を形成することができる。また当該極性溶媒としては、水系溶媒であっても有機溶媒であってもよく、さらに水系溶媒である場合は、公知の塩や緩衝塩、金属イオンなどを含む水溶液を使用しても良い。当該極性溶媒の一例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;グリセリン、ポリエチレングリコール、THF、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の他の溶媒が挙げられる。また、本発明に係る溶媒は、極性溶媒を単独で使用してもまたは2種以上混合して使用してもよい。
本発明に係るポリマーとしては、ポリアルキレン系樹脂,ポリスチレン系樹脂,ビニル系樹脂,ビニリデン系樹脂,アクリル系樹脂,熱可塑性ポリウレタン,アセタール樹脂,ポリカーボネート,フッ素樹脂,ケイ素樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリイミド系樹脂,PPO樹脂(ポリフェニレンオキサイド),ノリル樹脂,ポリスルフオン,ポリジフェニルエーテル,ポリエーテル,ポリユリア樹脂,ポリエチレンオキサイド,ポリビスジエン樹脂,ポリパラフェニルエーテル,ポリチアゾール,ポリオキシチアゾール,ポリトリアゾール,TPX樹脂(4−メチルペンチン−1樹脂),フェノキシ樹脂,ポリフェニレン,ポリベンゾシクロブテン,ポリキノリン,ポリベンゾオキサゾール,ポリヒダントイン,ポリヒドラジッド,ロジン樹脂,合成ゴム,アイオノマー,糖鎖,ポリペプチド,等及びこれらの誘導体あるいは共重合体があげられる。熱硬化性樹脂として,フェノール樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,キシレン樹脂,フラン樹脂,ジアリルフタレート樹脂,ポリエステル,アルキド樹脂,エポキシ樹脂,アニリン樹脂,ポリウレタン,ポリイミド,アルキルベンゼン樹脂,グアナミン樹脂等があげられる。ポリエステル,アルキド樹脂として,不飽和ポリエステル,グリプタル系樹脂,イソフタル酸系樹脂,テレフタル酸系樹脂,脂肪族ポリエステル,ポリカーボネート等があげられる。ポリアルキレン系樹脂とは,ポリプロピレン,ポリエチレン,ニチレン酢酸ビニル共重合樹脂,エチレンアクリル酸エチル共重合樹脂等があげられる。
ポリスチレン系樹脂とは,ポリスチレン及びその共重合樹脂であり,ポリスチレン,ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂),ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂),鎖状ポリエステル,AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂),ACS樹脂(アクリロニトリル−ビニルクロライドースチレン共重合樹脂)等があげられる。合成ゴムとしては,ブタジエン系合成ゴム,オレフイン系合成ゴム,多硫化系合成ゴム等があげられる。ビニル系樹脂としては,酢酸ビニル樹脂,塩化ビニル樹脂,塩化酢酸ビニル樹脂,ポリビニルアルコール,ポリビニルホルマール,ポリビニルアセトアセタール,ポリビニルブチラール,ポリビニルエーテル,ポリビニルシンナメート,ポリビニルアセタール,等の他,ビニル系樹脂,ビニリデン系樹脂,アクリルニトリル樹脂,エチレン系樹脂,アクリル系樹脂,スチレン系樹脂,等との共重合樹脂があり,例として,塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂,塩化ビニル塩化ビニリデン共重合樹脂,塩化ビニルアクリロニトリル共重合体樹脂,エチレン塩化ビニル共重合樹脂,塩化ビニルアクリル酸エステル共重合樹脂,塩化ビニルメタクリル酸エステル共重合樹脂,プロピレン塩化ビニル共重合樹脂等があげられる。ビニリデン系樹脂には,塩化ビニリデン樹脂,フッ化ビニリデン樹脂等があげられる。アクリル系樹脂とは,メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルの重合体であり,メタクリル酸エステル,アクリル酸エステルには,メタクリル酸メチルのようなメチルエステルの他エチルエステル,n−プロピルエステル,イソプロピルエステル,ブチルエステル,等があげられる。
ポリアミド系樹脂としては,各種ナイロン,ポリアミド酸,ポリアミドイミド,アミドエポキシ樹脂,等があげられる。各種ナイロンには,ナイロン6,ナイロン8,ナイロン11,ナイロン66,ナイロン610等があげられる。ポリイミド系樹脂としては,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリベンツイミダゾール,ポリエーテルイミド,ポリエステルイミド,ポリイソイミド,等があげられる。
フッ素樹脂としては,ポリ4フッ化エチレン,ポリフッ化塩化エチレン,ポリフッ化ビニリデン等があげられる。ケイ素樹脂には,シラン鎖を持つものと,シロキサン鎖を持つものとがあり,用いる原料によって,鎖状構造を持つ高分子と網状構造を持つ高分子とがある。シロキサン鎖を持つものとしては,ポリジメチルシロキサン等があげられる。アイオノマーとは,高分子の側鎖にカルボキシル基等の有機酸基が入り、その間に金属イオン等が介在した結合によって,網状に結合した構造を持つ高分子である。
糖鎖としては,セルロース系樹脂,アルギン酸,デンプン等があげられる。セルロース系樹脂としては,セルロース,セルロースエステル及びセルロースエーテルがあげられる。セルロースエステルとしては,ニトロセルロース,アセチルセルロース,アセチルブチルセルロース,等があげられる。セルロースエーテルとしては,メチルセルロース,エチルセルロース,セルロースエステル,セルロースエーテル等があげられる。
本発明の液晶組成物は、液晶組成物と高分子を混合して調製してもよいが、まず、液晶組成物重合性化合物とを混合した重合性化合物含有液晶組成物を調製した後、当該重合性化合物含有液晶組成物中の重合性基を有する化合物を重合させることによって製造することが好ましい。すなわち、ポリマーは、重合性基を持つモノマーを液晶組成物に添加しておき、後ほど、重合して作ることが好ましい。
液晶組成物と複合させる高分子材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などが挙げられる。光硬化性樹脂としては、光硬化性アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂などが挙げられる。(熱又は光)硬化性樹脂を用いる場合、外場を印加する際は未硬化の液状樹脂又は重合性化合物(モノマー)であり、所望の配向状態が得られた後に該樹脂を硬化させることができる。
例えばアクリル樹脂の場合、アクリレートを主成分とする狭義のアクリル樹脂でも、メタクリレートを主成分とするメタクリル樹脂でもよく、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル類(アクリレート又はメタクリレート。以下、両者を総称して「(メタ)アクリレート」という。)の1種からなる単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートからなる共重合体、1種以上の(メタ)アクリレートと1種以上の他のコモノマーからなる共重合体が挙げられる。重合性化合物(モノマー)としては、例えば次のものが挙げられる。
1分子に重合性官能基を1つ有する、単官能性(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;その他の脂肪族(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2
−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
1分子に重合性官能基を2つ有する、二官能性(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;その他の脂肪族ジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール類またはそのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサイド(PO)等)変性体のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
1分子に重合性官能基を3つ以上有する、多官能性アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
他のコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
モノマーとしては、一般式(Ia−3)
(式中、Lcは重合性基を表し、Scはスペーサー単位を表し、VcはVcは側鎖部位を表す。)
一般式(Ia−3)において、Scが、下記一般式(IV)
(式中、破線はLc、又はVcへの結合を表すが、一方の破線のみで結合している場合はもう一方の破線は水素原子に結合しており、
Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して単結合、−(CH2)u−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH2−、−CH2O−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH2基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、
A1及びA2は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていてもよく、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。)
で表される構造であることが好ましく、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して単結合、−(CH2)u−(式中、uは1〜12を表し、非隣接のCH2基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−を表し、Rは水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH2−、−CH2O−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF2O−、−OCF2−又は−C≡C−が好ましく、A1及びA2は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが好ましく、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して単結合、−(CH2)u−(式中、uは1〜10を表し、非隣接のCH2基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、Rは水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH2−、−CH2O−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、又は−C≡C−がより好ましく、A1及びA2は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることがより好ましく、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立して単結合、−(CH2)u−(式中、uは1〜6を表し、非隣接のCH2基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−を表す。)、−OCH2−、−CH2O−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、又は−C≡C−が特に好ましく、A1及びA2は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが特に好ましい。
一般式(IV)には多くの化合物が含まれるが、具体的には以下の一般式(S−a−1)〜一般式(S−ad−9)
で表される化合物が特に好ましい。
これらの中でも、一般式(S−a−6)〜(S−a−16)、一般式(S−b−3)〜(S−b−10)、一般式(S−c−3)〜(S−c−10)、一般式(S−d−3)〜(S−d−12)、一般式(S−k−4)〜(S−k−7)、一般式(S−l−13)〜(S−l−17)、一般式(S−o−3)〜(S−o−14)、一般式(S−p−2)〜(S−p−13)、一般式(S−s−1)〜(S−s−8)、一般式(S−t−1)〜(S−t−8)、一般式(S−y−1)〜(S−y−9)及び一般式(S−aa−1)〜(S−aa−9)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(Ia−3)において、Vcが、下記一般式(V)
(式中、破線はScへの結合を表し;
Z4、Z5、Z6及びZ7は、それぞれ独立して単結合、−(CH2)u−(式中、uは1〜20を表す。)、−OCH2−、−CH2O−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2CF2−又は−C≡C−を表すが、これらの置換基において非隣接のCH2基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2―、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)で置換することができ、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、2,5−チオフェニレン基、2,5−フラニレン基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良く、r、s、t及びuは、それぞれ独立して0又は1を表し、R2は水素、フッ素、塩素、シアノ基又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、1つのCH2基又は2以上の非隣接CH2基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い。)
で表される構造であることが好ましい。
Z4、Z5、Z6及びZ7はそれぞれ独立して単結合、−(CH2)u−(式中、uは1〜12を表し、非隣接のCH2基の一つ以上は独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−又は−O−CO−O−を表し、Rは独立して水素、メチル基又はエチル基を表す。)、−OCH2−、−CH2O−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF2O−、−OCF2−又は−C≡C−が好ましく、A3、A4、A5及びA6はそれぞれ独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は1,4−フェニレン基を表し、これらは無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基によって置換されていることが好ましく、r、s、t及びuはr+s+t+uが0以上3以下であることが好ましく、R2は水素、フッ素、塩素、シアノ基又は炭素数1〜18のアルキル基(該アルキル基中の1つのCH2基又は2以上の非隣接CH2基は−O−、−CO−O−、−O−CO−及び/又は−CH=CH−で置換されていても良い。)で表される構造であることが好ましい。
一般式(V)には多くの化合物が含まれるが、具体的には以下の一般式(V−a−1)〜一般式(V−q−10)
で表される化合物が特に好ましい。
中でも一般式(V−a−1)〜(V−a−15)、一般式(V−b−11)〜(V−b−15)、一般式(V−c−1)〜(V−c−11)、一般式(V−d−10)〜(V−d−15)、一般式(V−f−1)〜(V−f−10)、一般式(V−g−1)〜(V−g−10)、一般式(V−h−1)〜(V−h−10)、一般式(V−j−1)〜(V−j−9)、一般式(V−l−1)〜(V−l−11)又は一般式(V−m−1)〜(V−m−11)がさらに好ましい。
本発明に係るゲルとしては、化学ゲルでも物理ゲルでもよく、高分子ゲルでも低分子ゲルでもよく、有機ゲルでも無機ゲルでも有機・無機ゲルでもよく、水素結合性ゲル・非水素結合性ゲルでも良い。
本発明に係る微粒子としては、材質としては特に限定されず、有機質微粒子でも無機質微粒子でもよく、有機質固体粒子や無機質固体粒子等を用いることができる。有機質固体粒子としては、スチレン系、アクリル系等の有機材料で形成された固体状の微粒子であれば特に限定されるものではない。また、無機質固体粒子としては、無機材料で形成された固体状の微粒子であれば特に限定されるものではない。
上記固体粒子とは、微粒子の中で、液体状の微粒子を除くものであり、例えば、互いに混ざり合わない2液相間で、一方が他方の相に微粒子状に分散している乳濁液におけるミセルにより形成される微粒子を除くものである。
上記微粒子の好ましい形態としては、例えば、(1) 有機質固体粒子、(2) 無機酸化物で形成されたもの、(3) フラーレン及び/又はカーボンナノチューブで形成されたものが挙げられる。これらの中でも、ナノサイズの微粒子であるものを用いることが好ましい。
上記有機質固体粒子としては、例えば、ポリスチレンビーズ、ポリメチルメタクリレートビーズ、ポリヒドロキシエチルアクリレートビーズ、ジビニルベンゼンビーズ等のポリマービーズの形態の微粒子を用いるのが好適である。これらは、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。
上記無機酸化物で形成された微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)で形成された微粒子や金属元素の酸化物により形成された微粒子が好適である。また、ガラスビーズ、シリカビーズや、チタニア、アルミナ等の無機質ビーズの形態の微粒子を用いるのが好適である。これらの微粒子は、親水性でもよく、疎水性でもよい。また、ビーズの形態の微粒子は、そのまま用いてもよく、加熱処理したものや、ビーズ表面に有機物を付与したものを用いてもよい。
上記フラーレンとしては、炭素原子を球殻状に配置したものであればよく、例えば、炭素原子数nが24〜96の安定した構造のものが好適である。このようなフラーレンとしては、炭素原子60個からなるC60の球状閉殻炭素分子群等が挙げられる。
上記カーボンナノチューブとしては、例えば、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒形状のナノチューブ等が好適である。
上記微粒子の形状としては特に限定されず、例えば、球状、楕円体状、塊状、柱状、錐状や、これらの形状に突起を持った形態、これらの形状に穴があいている形態等が挙げられる。また、上記微粒子の表面形態としては特に限定されず、例えば、平滑でもよく、凹凸や孔、溝を有していてもよい。
また、ナノ粒子でもよい。ナノ粒子は、純物質であってもよく、混合物であってもよい。さらに、純物質は、単体であってもよく、化合物であってもよい。また、ナノ粒子は、気体、液体、固体のいずれであってもよいが、好ましくは液体又は固体である。ナノ粒子は、金属、半金属、無機酸化物、半導体,磁性体,有機物などの幅広い材料を単独でまたは複数種類を組み合わせて適用することができる。
金属としては、例えば、金,銀,銅,白金,パラジウム,アルミニウム,タングステン,鉛,亜鉛,コバルト,ニッケル,インジウム,アルミニウム,鉄,ロジウム,マンガン,クロム,モリブデン,カドミウム,チタン,ルテニウム,オスミウムなどが挙げられる。
半金属としては、例えば、ビスマス,テルルなどが挙げられる。
無機酸化物としては、例えば、Al2O3,MgO,MoO3,Nb2O5,SiO2,SnO2,BaTiO3,TiO2,UO2,V2O5,WO3,ZrO2,Fe2O3,CuO,CdO,In2O3,Co3O4,HfO2 などが挙げられる。
半導体としては、例えば、ZnS,CdS,ZnSe,ZnTe,CdTe,CdSeなどが挙げられる。
磁性体としては、FePt,CoPt,MPt,Mpdなどが挙げられる。
有機物としては、C60系、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
本発明の潤滑成分は、パーフルオロアルキル基を有する化合物を含むことが好ましい。
パーフルオロアルキル基は、直鎖状あるいは、分岐状・環状等の非直鎖状のアルキル基の水素原子がフッ素原子に置き換わったものであり、アルキル基の水素原子の全てあるいは一部が置き換わったものを含む。アルキル基の水素原子の2つ以上がフッ素原子に置き換わったものが好ましく、3つ以上が置き換わったものがさらに好ましい。
パーフルオロアルキル基を有する化合物は液晶性を示しても示さなくても良い。液晶性を示すものとしては、日本液晶学会誌「液晶」第4巻第4号337頁(2000年)竹中・岡本著に記載の化合物が例示される。液晶性を示さないものとしては以下に例示を挙げる。
本発明に係るパーフルオロアルキル基を有する化合物は、低分子やモノマーであってもポリマーであってもよい。
本発明に係るパーフルオロアルキル基を有する化合物がポリマーの場合は、例えば以下のフポリマー化合物を使用することができる。前記パーフルオロアルキル基を有するポリマー化合物は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル〔VF〕、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン〔HFIB〕、CH2=CX1(CF2)nX2(式中、X1はH又はF、X2はH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で表されるモノマー、CF2=CF−ORf1(式中、Rf1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF2=CF−OCH2−Rf2(式中、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、及び、テトラフルオロイソブテンからなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素単量体に基づく重合単位を有することが好ましい。また前記ポリマー化合物は、TFE、HFP、PAVE、CTFE、VdFおよびVF残基からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来のユニットを含むポリマーであることがより好ましい。
また、前記パーフルオロアルキル基を有する化合物は、5〜12の炭素原子を有するパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素、パーフルオロブチルメチルエーテルおよび類似のHFEなどが挙げられる。
さらに、前記パーフルオロアルキル基を有する化合物は、以下の一般式(F)で表されるモノマーまたは当該モノマーを重合してなる重合体であってもよい。
一般式(F):
[上記一般式(F)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ同一又は異なってもよく、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、式:CmHnFp(前記式中、mは1〜10の整数、nは、1〜2mの整数、pは2m+1−nである)で表される炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基、炭素数6〜18のパーフルオロアリール基又は炭素数6〜18のポリフルオロアリール基であり、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つは、フッ素原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、一般式:CmHnFp(式中、mは1〜10の整数、nは、1〜2mの整数、pは2m+1−nである)で表される炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基、炭素数6〜18のパーフルオロアリール基又は炭素数6〜18のポリフルオロアリール基である。]
前記パーフルオロアルキル基としては、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、ジフルオロメチル基、2H−パーフルオロエチル基、3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、6H−パーフルオロヘキシル基、ペンタフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、フルオロアントラニル基などが挙げられる。
本発明に係る潤滑成分は、潤滑成分として機能し得る添加量(しこみ量)として、液晶組成物において、0.001〜90質量%含有することが好ましく、0.005〜90質量%含有することがより好ましく、0.01〜50質量%含有することがより好ましく、0.03〜40質量%含有することがより好ましく、0.05〜20質量%含有することがより好ましく、0.08〜10質量%含有することがより好ましく、0.1〜5質量%含有することがより好ましい。
「光学素子」
本発明の第二は、少なくとも一方の基板に電極を有する一対の基板と、前記一対の基板間に充填される液晶組成物と、を備える光学素子であって、前記液晶組成物は、外部電界の変化により応動する第一の液晶分子および第二の液晶分子を含む液晶成分と、前記第一の液晶分子および前記第二の液晶分子のそれぞれの運動を円滑にする潤滑成分と、を含有する、上述のいずれかの液晶組成物である光学素子である。
本発明の光学素子は、slippy界面を形成することができるので、高速応答性が可能である。
本発明に係る潤滑成分は、液晶ドメインを形成する液晶成分の配向秩序度よりも低い配向秩序度を有する材料が、液晶成分と接している液体界面を形成していることが好ましい。なお、配向秩序度については、前述したとおりであるのでここでは省略する。
本発明に係る潤滑成分は、電極近傍に、該液体界面を形成していることが好ましい。本発明に係る潤滑成分は、電極近傍に、第一の液晶ドメインと第二の液晶ドメインとの間を区画する境界領域にて液体界面を形成していることが好ましい。
本発明に係る液晶成分において、第一の液晶ドメインおよび第二の液晶ドメインの常態の配向方向がそれぞれ相違することが好ましい。
本発明に係る液晶成分において、第一の液晶ドメインおよび第二の液晶ドメインの常態の配向方向がそれぞれ略同一であることが好ましい。
また、本発明の光学素子は、潤滑成分を光応答性物質とし、その光応答性物質の屈折率が空間的・領域的に変調あるいは分布することにより、異方性分子である第一の液晶分子および第二の液晶分子の配向を光によって制御することで、光学的な機能を発現することができる。本発明の光学素子は、屈折率分布を利用する光学素子(例えば、レンズ、プリズム、ミラー、フィルター等)に特に制限なく適用可能であり、また、液晶表示素子、ホログラム用素子、位相差フィルム等の位相差素子、3Dプリンター用素子等として使用することができる。
<液晶表示素子>
本発明に係る液晶組成物を用いた液晶表示素子は、TN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、FFS(フリンジフィールドスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等のあらゆる型の表示素子に有用であるが、外部電圧により応動する方向がそれぞれ異なる第一の液晶ドメインおよび第二の液晶ドメインを有する液晶組成物を有する型となる表示素子に特有であり、具体的には、VA型、IPS型、FFS型、FLC表示素子に有用である。
ここでは、本発明の光学素子として、図29に示す液晶表示素子10を例示する。
液晶表示素子10は、2枚の基板11,12と、これらの基板の間に封入された、光応答性物質13および異方性分子14を含有する光応答性組成物15とから概略構成されている。
本発明の光学素子が液晶表示素子10の場合、基板11,12としては、例えば、ガラス基板が用いられる。
また、一方の基板11における、他方の基板12と対向する面11aには、シランカップリング剤により垂直配向処理が施された配向膜16が設けられている。同様に、他方の基板12における、一方の基板11と対向する面12aには、シランカップリング剤により垂直配向処理が施された配向膜17が設けられている。
また、本発明の光学素子としては、基板と、該基板上に形成された光応答性物質および異方性分子を含有する光応答性組成物層(光応答性組成物からなる層)とから概略構成される光学素子(すなわち、基板が1枚のみの素子)により構成されていてもよい。このような光学素子は、基板上に、光応答性物質および異方性分子を含有する塗液を塗布することにより得られる。
光学素子が液晶表示素子10の場合、液晶表示素子10に使用される液晶セルの2枚の基板はガラスまたはプラスチックのような柔軟性をもつ透明な材料を用いることができる。また、2枚の基板の一方はシリコン等の不透明な材料でもよい。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法または、染色法等によって作製することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作製方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱または光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作製することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
また、前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させて、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる液晶層の厚さが2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。また、2枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラストが良好になるように調整することもできる。さらに、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等からなる柱状スペーサー等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱し、シール剤を熱硬化させる。
以下に、強誘電性液晶表示素子の一例を説明する。
<強誘電性液晶表示素子>
強誘電性液晶光学素子においては、基板に対して押圧力が加わっても、該強誘電性液晶組成物を基板に挟持した際のSmC*相のレイヤーノーマル方向が該基板面に対して80°以上90°以下であることが好ましい。またSSFLCでみられるようなジグザク欠陥やシェブロン構造をもたず、安定な配向となり得る。これにより、圧力が加わって一時的に表示が乱れることがあったとしても、圧力から解放された後に表示が復元する表示復元能力を有するものとなる。このため、タッチパネルなど表示画面上で押圧による操作を行う機器に好適である。
液晶光学素子は、0.2mm2あたり1kg(9.8N)以下の圧力に対して表示復元能力を有することができる。
本発明の強誘電性液晶を用いた表示用の光学素子は、偏光面が互いに直交する二枚の偏光板を配置した一対の基板の少なくとも一方に、一対の画素電極と共通電極を有し、該一対の基板間に本発明の強誘電性液晶組成物が挟持されていることが好ましい。表示素子中に印加される電界はレイヤーノーマルに水平方向に印加されることが好ましく、このような電界を実現する電極構造として、IPS(In−Plaine Switching)方式などの櫛型構造をもった電極構造が好ましい。S−IPS(Super IPS)、AS−IPS(Advanced Super IPS)、IPS−Pro(IPS−Provectus)など、櫛型電極の構造を屈曲させることによって、レイヤーノーマルの水平方向に印加する横電界の向きを制御することは、駆動電圧の低下、高画質化、高輝度化、超高輝度化などの観点から好ましい。櫛形電極は、金属電極を用いることが可能であるが、電極部分の光の利用効率を上げるためには、ITO、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)、グラフェンなどの透明電極を用いることが好ましい。表示素子ないで電界強度の分布を少なくすることは、駆動電圧の低下、応答速度の向上、高コントラスト化、高画質化の観点から好ましい。電界強度の分布を少なくする方法として、一対の基板の両方に、一対の画素電極と共通電極を有する構成とすることもできる。
具体的には、次のような方法がある。
一対の基板の両方にIPS、S−IPS、AS−IPS、IPS−Pro電極を設けることが好ましく、電極は平滑であるよりもセル内部に突起した電極である方が、セル内部での電界強度分布が低下しにくい素子となり好ましい。突起した電極構造としては、球状、半球状、立方状、直方状、三角状、台形状、円柱状、円錐状、3〜20角柱状、3〜20角錐状、非対称な形状でもよく、表面は平滑でも凹凸があってもよく、それぞれの電極の角は曲線からなる角部でも直線からなる角部でもよく、突起の高さは、セルギャップの1/100、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/2、3/4以上でもよく、あるいは突起部分が対向基板と接してもよく、突起した電極は基板に直接設置あるいは樹脂、絶縁物、誘電体、半導体あるいはこれらの複合体などの土台の上に設置されてもよく、画素電極は土台の上部、中部、下部の何れにあってもよい。
さらに具体的な突起した電極構造としては、第1基板と、第1基板の板厚方向に突起した形状を有し、互いに離間して上記第1基板の一方面側に設けられる一対の電極と、一方面側が上記第1基板の一方面側と対向するように配置される第2基板を有する構造(特開2007−171938)、第1の基板と強誘電性液晶層との間に設けられる画素電極層(第1の電極層)及び共通電極層(第2の電極層)を重ならないように配置し、画素電極層は第1の基板の強誘電性液晶層側の面から液晶層に突出して設けられたリブ状の第1の構造体の上面側面を覆って形成され、共通電極層は第1の基板の強誘電性液晶層側の面から強誘電性液晶層に突出して設けられたリブ状の第2の構造体の上面側面を覆って形成する構造(特開2011−133876)、強誘電性液晶層を対向する開口パターン(スリット)を有する第1の共通電極層及び第2の共通電極層と、開口パターンを有する画素電極層とで挟持し、画素電極層は第1の基板の強誘電性液晶層側の面から強誘電性液晶層に突出して設けられた構造体の上部に形成され、強誘電性液晶層中において画素電極層は第1の共通電極層と第2の共通電極層との間に配置する構造(特開2011−133874)、少なくとも一対の電極は、最大電界領域が、上記基板界面から離間した位置に形成されるように設けられていることを特徴とする構造(特開2005−227760)、第1の電極層(画素電極層)上に第1の構造体、同様に第2の電極層(共通電極層)上に第2の構造体を設ける構成とする。第1の構造体及び第2の構造体は、液晶層に用いられる液晶材料の誘電率より高い誘電率を有する絶縁体であり、液晶層に突出するように設ける構造(特開2011−8241)、などが使用できる。
また、基板に窪みを設けることで、結果として画素電極が突起することと同義となる構造も利用できる。例えば、Double−penetrating Fringe Field(Journal of Display Thecnology, 287−289, Vol. 6, 2010)などを利用できる。上記の他に駆動電圧を低下する方法としては、電極間にある強誘電性液晶を小さな樹脂空間に封じ込めた形状となるConfined geometry(Lee,S.−D.、2009、IDW ‘09−Proceeding of the 16th International Display Workshots 1、pp.111−112)を利用する方法や、periodic corrugated electrodes(Appl. Phys. Lett. 96, 011102 (2010))を利用したり、一対の基板の片方または両方にFFS(Fringe−Field Switching)電極を設けたりすることができる。
液晶セルの2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。大型テレビなどで臨場感を高めるためには、アモルファスシリコンに比べて電子の動きの指標である電子移動度が1ケタ大きい酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)を用いることが好ましい。
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
境界領域の直上にブラックマトリクスを設けることが好ましい。液晶ドメインがぶつかりあう境界領域では、光散乱が生じ、コントラスト低下を招くと予想されるので、境界領域の直上にブラックマトリクスを設けることにより、光散乱による影響を抑えることができる。
境界領域の直上に、凸構造もしくは凹構造を設けることも好ましい。液晶ドメインがぶつかりあう境界領域を、凸構造もしくは凹構造を設けることにより、あらかじめ正確にまたは強制的に決めておくことで、光散乱が生じてしまう境界領域を限定して、その影響を抑えることができる。
基板は、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られるセルの厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。セル厚は、1〜10μmが更に好ましく、2〜4μmがなお好ましい。
二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積(Δnd)を調整することが好ましい。また、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。
2枚の基板間に強誘電性液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。この時、高分子安定化強誘電性液晶組成物は、各種成分が相溶していれば良く、均一なアイソトロピック状態か、又は(キラル)ネマチック相であることが好ましい。
液晶を挟持する基板面には、配向膜を設けることができる。配向膜としては、一般的なポリイミド等の配向膜や光配向膜が使用できる。
配向膜としては、TN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、IPS(イン・プレーン・スイッチング)型、またはFFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型等のスイッチングモードを使用する場合には水平配向性を有する配向膜が好ましく、VA(垂直配向)型、Deformed Helix FLC(略DH−FLC)型等のスイッチングモードを使用する場合にには垂直配向性を有する配向膜が好ましい。
垂直配向性を有するポリイミド系の配向膜が好ましく、具体的にはアルキル長鎖もしくは脂環基が置換した酸無水物、アルキル長鎖もしくは脂環基が置換したジアミンを酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸、又は該ポリアミック酸を脱水開環して得られるポリイミドが挙げられる。このような嵩高い基を有するポリイミド、ポリアミド又はポリアミック酸からなる液晶配向剤を基板上で膜形成することにより、垂直配向性を有する液晶配向膜を製造することができる。
酸無水物としては、例えば次の一般式(VII−a1)〜(VII−a3)で表される化合物が挙げられる。また、ジアミンとしては、例えば次の一般式(VII−b1)〜(VII−b3)で表される化合物が挙げられる。
式(VII−a1)〜(VII−a3)及び(VII−b1)〜(VII−b3)中、R301、R302、R303及びR304は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH2−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、Z301、Z302、Z303及びZ304は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、A301及びA302は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH2−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO2基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、n301及びn302は各々独立に0又は1を表し、n303は0〜5の整数を表す。
また、一般式(VII−a2)〜(VII−a3)及び(VII−b2)〜(VII−b3)において、ステロイド骨格の−CH2−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、ステロイド骨格が任意の位置に1つ又は2つ以上の不飽和結合(C=C)を有していてもよい。
電界を横方向に印加する横電界型液晶表示素子においては、配向膜の好ましい態様として、式(VII−c1)及び(VII−c2)で表される構造を有するポリアミック酸又はポリイミドを液晶配向剤として用いたものであると、優れた残像特性を有し、電界無印加時の暗状態における光線透過率が低減される点で好ましい。
式(VII−c1)中、R121は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R122は各々独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表し、n121は1〜10の整数を表し、n122は各々独立に0〜4の整数を表し、「*」は結合手であることを表す。
式(VII−c2)中、R123は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R124、R125は各々独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表し、n123は0〜5の整数を表し、n124は0〜4の整数を表し、n125は0〜3の整数を表し、「*」は結合手であることを表す。
分子内の少なくとも一部に式(VII−c1)で表される構造と式(VII−c2)で表される構造をともに有するポリアミック酸は、例えば式(VII−c1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物と式(VII−c2)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を、ジアミンとを反応させるか、あるいは式(VII−c1)で表される構造を有するジアミンと式(VII−c2)で表される構造を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることにより得ることができる。
(VII−c1)又は式(VII−c2)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、「*」で表される結合手を有する両末端のベンゼン環が、各々無水フタル酸基である化合物が挙げられる。
(VII−c1)又は式(VII−c2)で表される構造を有するジアミンとしては、具体的には、「*」で表される結合手を有する両末端のベンゼン環が、各々アニリン基である化合物が挙げられる。
また、光配向膜としては、アゾベンゼン、スチルベン、α−ヒドラゾノ−β−ケトエステル、クマリン等の構造を有し、光異性化を用いる光配向膜;アゾベンゼン、スチルベン、ベンジリデンフタルジイミド、シンナモイルの構造を有し、光幾何異性化を用いる光配向膜;スピロピラン、スピロオキサジン等の構造を有し、光開閉環反応を用いる光配向膜;シンナモイル、カルコン、クマリン、ジフェニルアセチレン等の構造を有し、光二量化を用いる光配向膜;可溶性ポリイミド、シクロブタン型ポリイミド等の構造を有し、光照射による光分解を用いる光配向膜;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル(BPDA/DPE)を反応させて得られるポリイミドに光照射してなる光配向膜などが挙げられる。
光配向膜は、光配向性基を有する化合物を含有する塗膜に異方性を有する光を照射して、光配向性基を配列させ、光配向状態を固定化することにより、製造することができる。
光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、液晶配向能を付与する光照射処理の後に重合を行うことが好ましい。重合方法は光重合、熱重合のいずれでも良い。光重合の場合は、光配向剤に光重合開始剤を添加し、光照射処理後に、例えば異なる波長の光を照射することで光重合反応を行う。一方、熱重合の場合は光配向剤に熱重合開始剤を添加し、光照射処理後に加熱することで熱重合反応を行う。
光配向膜において光配向状態を固定化するためには、光架橋性高分子を用いてもよい。光架橋性高分子光配向膜としては、次に記載する化合物が挙げられる。
(式中、R201及びR202は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH2−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−NH−、−N(CH3)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO2−、−SO2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH3)2−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、Z201及びZ202は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(Ra)−、−N(Ra)−CO−、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(Ra)−又は−N(Ra)−CO−におけるRaは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、A201及びA202は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH2−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO2基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、n201及びn202は各々独立に1〜3の整数を表し、P201及びP202は各々独立に、シンナモイル、クマリン、ベンジリデンフタルジイミド、カルコン、アゾベンゼン、スチルベン等の光配向性基を表し、P201は1価基、P202は2価基である。
より好ましい化合物として、シンナモイル基を有する式(VII−c)、クマリン基を有する式(VII−d)、ベンジリデンフタルジイミド基を有する式(VII−e)の化合物が挙げられる。
式(VII−c)、(VII−d)、及び(VII−e)中、R201、R202、A201、A202、Z201、Z202、n201及びn202の定義は式(VII−a)及び(VII−b)におけるのと同じであり、R203、R204、R205、R206及びR207は各々独立にハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF3、−OCF3、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基を表し、n203は0〜4の整数を表し、n204は0〜3の整数を表し、n205は0〜1の整数を表し、n206は0〜4の整数を表し、n207は0〜5の整数を表す。
液晶表示素子の光源は、特に限定されるものではないが、低消費電力であることからLEDが好ましい。LEDは液晶表示素子の長辺よりも短辺に設置することが好ましく、LEDの設置は2辺よりは1辺が好ましく、さらに液晶表示素子の角のみに設置することがより好ましい。さらに消費電力を抑制するため、点滅制御(暗い領域の光量を下げたり消灯したりする技術)や、マルチフィールド駆動技術(駆動周波数を、動画を表示する場合と静止画を表示する場合とで区別する技術)、屋内と屋外あるいは夜間と昼間で光量のモード切り替えを行う技術、液晶表示素子のメモリー性を利用して駆動を一時停止する技術等を用いることが好ましい。また、反射型表示素子では、機器に光源を備えなくとも外部の照明(日光や室内光など)を利用できるため、好ましい。光源の光のロスを防ぐためには、導光板やプリズムシートを用いることが好ましい。導光板やプリズムシートは同盟樹脂を用いることが好ましく、透明樹脂としては、例えばメタクリル樹脂(PMMA等)、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、ポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
コントラストの向上に関しては、点滅制御(暗い領域の光量を下げたり消灯したりする技術)や、開口率が50%以上である素子、高配向性の配向膜やアンチグレア膜を用いたり、フィールドシーケンシャル方式(カラーフィルターを用いずにRGB3色のLEDを、人間の目の時間的分解能以下の短時間で順次点灯させ、色を認識させるカラー化方式)を用いることが好ましい。開口率を高くするためには能動素子を小さくすることが好ましく、600cm2/Vs以上の移動度の高い半導体を用いることで能動素子を小さくすることが好ましい。
高速応答性のためには、オーバードライブ機能(階調を表現する際の電圧を、立ち上がり時に高く、立ち下がり時は低くする)を用いたり、基板にプレチルトを付与したり、負の誘電異方性をもつ強誘電性液晶を用いたりすることが好ましい。
本発明の液晶表示素子は、タブレットPC用途に用いるタッチパネル表示素子にも用いることが可能で、その場合には耐衝撃性、耐振動性、撥水・撥油性、防汚性、耐指紋性を有することが好ましく、ATM(自動預金支払機)、自動販売機、自動券売機、トイレ用モニター、コピー機、公衆電話など不特定多数の人が利用する用途や医療・介護・乳幼児用途ではインフルエンザウイルス、ノロウイルス、RSウイルスなどのウイルスに対する耐ウイルス性、サルモネラ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌などに対する抗菌性を有することが好ましく、より好ましくは表示素子の殺菌などの洗浄で目的に対する耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性を有することが好ましく、倉庫、運輸・流通、製造、整備工場、工事現場、海洋調査、消防や警察、救命(レスキュー)、防災などの用途では防塵性、防水性、耐塩性、防爆性、耐放射線の性能を有することが好ましく、より好ましくは欧州防爆規格(ATEX Zone2 Category3)、防水防塵規格(IP65)、米軍用規格(MIL−STD−810F)を満たすことが好ましい。
耐衝撃性は、コンクリート上での3フィート落下をクリアする表示素子に用いることが好ましく、表示素子のケースには耐衝撃性マグネシウム合金またはマルチレイヤマグネシウム合金を用いることが好ましく、耐衝撃性・耐振動性の確保のため、ストレージにはSSDを用いることが好ましい。直射日光の屋外でも視認性を高めるためには、Dual−Mode AllVue(TM) Xtremeテクノロジーを用いることが好ましい。
汚れによる表示品質の低下を抑制するため、撥水・撥油性、防汚性、耐指紋性、消指紋性などを有するフィルムを使用することが好ましく、フィルムの基材材料としては透明基材フィルムが好ましく、透明基材フィルムを形成する樹脂材料として具体的には、ポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)・ジアセチルセルロース・セロファン等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン・ポリ塩化ビニル・ポリイミド・ポリビニルアルコール・ポリカーボネート・エチレンビニルアルコール等の有機高分子、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン等の共重合系樹脂等が挙げられる。それらの中でも、汎用性などの観点からトリアセテートセルロース(TAC)系樹脂及びポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が好ましい。
耐擦傷性を高めるため、フィルムにハードコート性あるいは自己修復性塗膜を付与することが好ましい。ハードコート層形成用組成物に含まれる樹脂としては、公知の樹脂を用いることができるが、表面硬度を向上させることを考慮すると、電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート等が挙げられる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。上記のうち、表面硬度を向上させることを考慮すると、多官能(メタ)アクリルモノマーを用いることが好ましい。ここで、多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物が好ましい。その他には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものや、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。また、メラミンやイソシアヌル酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いることができる。
また、本発明の多官能(メタ)アクリルモノマーは、オリゴマーであっても構わない。市販されている多官能アクリル系モノマーとしては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、ナガセケムテックス株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村化学工業株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
また、他の電離放射線硬化性樹脂としては、重合性基を有する含フッ素化合物が挙げられる。ハードコート層形成用組成物が重合性基を有する含フッ素化合物を含むことにより、そのハードコート層形成用組成物により形成されたハードコート層表面に防汚特性を付与することができる。重合性基を有しないフッ素系添加剤を用いる場合、添加剤がハードコート層表面に浮いて存在する状態となるため、布等で拭くことでハードコート表面から取り去られてしまうこととなる。このことから、一度布等で表面を拭取ってしまうと、防汚性が無くなるという欠点を有している。
そこで、防汚特性を有するフッ素化合物に重合性基を持たせることで、ハードコート層形成時にフッ素系添加剤も合せて重合することとなり、布等で表面を拭いても防汚特性が維持されるという利点を有している重合性基を有する含フッ素化合物として、さらに好ましくは、この重合性基が(メタ)アクリレート基を有する化合物である。これは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと共重合することも可能となり、電離放射線によるラジカル重合によって高硬度化が図れるためである。重合性基を有する含フッ素化合物として、さらに好ましくは、この重合性基が(メタ)アクリレート基を有する化合物である。これは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと共重合することも可能となり、電離放射線によるラジカル重合によって高硬度化が図れるためである。このような重合性基を有する含フッ素化合物としては、オプツールDAC(ダイキン工業(株)製)、SUA1900L10、SUA1900L6(新中村化学(株)製)、UT3971(日本合成(株)製)、ディフェンサTF3001、ディフェンサTF3000、ディフェンサTF3028(大日本インキ(株)製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学(株)製)、KNS5300(信越シリコーン(株)製)、UVHC1105、UVHC8550(GE東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。重合性基を有する含フッ素化合物の使用量は、ハードコート層形成用組成物の多官能(メタ)アクリルモノマーに対して、0.01重量%以上10重量%以下が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は、十分な防汚特性を発現せず、表面エネルギーも20mN/mよりも大きい値を示し、10重量%を超える場合は、重合性モノマー、溶剤との相溶性が良くないために、塗液の白濁化、沈殿発生が起こってしまい、塗液・ハードコート層の欠陥発生などの不都合を招く場合がある。
ハードコート層形成用組成物は、上記電離放射線硬化型樹脂の重合反応を開始するための光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、電離放射線を照射することで、ラジカルを発生し、電離放射線硬化型樹脂の重合反応を開始する。光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成用組成物の上記電離放射線硬化型樹脂に対して、0.01重量%以上10重量%以下が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は電離放射線を照射した際に十分な硬化反応が進行せず、10重量%を超える場合はハードコート層下部まで十分に電離放射線が届かなくなってしまう。
ハードコート層形成用組成物は、必要に応じて、上述した各成分の他にも、電離放射線による反応を損なわない範囲内で、ハードコート層の特性を改良するための改質剤や、ハードコートフィルムの製造時の熱重合や、ハードコート層形成用組成物の貯蔵時の暗反応を防止するための熱重合防止剤を含有してもよい。改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これら改質剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分100重量%中、0.01重量%以上5重量%以下が好ましい。熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物の固形分100重量%中、0.005重量%以上0.05重量%以下が好ましい。
また、ハードコート層形成用組成物は、ハードコート層に防眩性の機能を付与するために、各種粒子を含んでもよい。粒子としては、例えば、アクリル粒子、アクリルスチレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、メラミン粒子といった有機粒子や、シリカ粒子タルク、各種アルミノケイ酸塩、カオリンクレー、MgAlハイドロタルサイト、などの無機粒子から適宜選択される。上記粒子の平均粒子経としては、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、このときのハードコート層の平均膜厚は、2μm以上20μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒子径が0.5μmに満たない場合、ハードコート層の表面に凹凸を形成することが困難となる。一方、粒子の平均粒子径が10μmを超えるような場合、得られるハードコートフィルムの質感が粗くなってしまい、高精細なディスプレイ表面に適さないハードコートフィルムとなってしまうことがある。また、ハードコート層の平均膜厚が2μmに満たない場合、ディスプレイ表面に設けられるだけの十分な耐擦傷性を得ることができなくなってしまうことがある。一方、ハードコート層の平均膜厚が20μmを超えるような場合、製造されるハードコートフィルムのカールの度合いが大きくなってしまい、取り扱いが困難となることがある。
耐擦傷性の点では、自己修復機能をもつフィルムなどを付与することも好ましく、傷をつけてもフィルムの弾性によって自己修復することが好ましく、例えば「マジックフィルム」(サンクレスト)などが付与できる。
抗ウイルス、抗菌性に対しては、光触媒やAg粒子を用いる手法が好ましく、光触媒は酸化チタンなどの無機粒子が好ましく、Ag粒子はナノ粒子であることがさらに好ましく、抗ウイルス性にはe+(アースプラス)などのセラミックス複合材料で光分解能力をもつものが好ましく、これらの抗ウイルス、抗菌性を示すコーティングまたはフィルムは透明でない場合には表示部以外に付与することが好ましく、透明である場合には表示素子全体に付与することが好ましい。
防指紋性に対しては、脂質をはじく性質をもった化合物をフィルム添加することが好ましく、パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物などのフッ素置換あるいはパーフルオロ基をもつ化合物をフィルムに添加することが好ましい。あるいは「クリアタッチ」(日油化学)、消指紋(登録商標)Film(ツジデン)などの機能性フィルムを表示素子に付与することもできる。
本発明の表示素子が具備する機能としては、3軸ジャイロ、加速度センサー、環境光センサー、Wi−Fi、3Gなどの携帯電話通信、デジタルコンパス、GPS機能を有することが好ましい。
本発明の表示素子を用いたタブレットPCに用いるUPUとしては、低消費電力で発熱が少なく演算回数が多い方が好ましく、シングルコア、デュアルコアが好ましく、より好ましくは、クアッドコア、8−コア、12−コア、24−コア、48−コア、96−コア、192−コアが好ましい。
また、本発明の表示素子は、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、モニター、計器、家庭のエアコン、テレビ、洗濯機、炊飯器、コンポ、携帯型音楽プレーヤー、家庭用太陽電池、家庭用燃料電池などの家電製品、ハイブリッド自動車、電気自動車、介護用ロボット、介護用ボディースーツ、地震、火災、水害、土砂崩れ、噴火、火砕流、土石流、ゲリラ豪雨、原子炉事故、原子炉事象などの災害時に使われるロボット、観測機器をコントロールする通信機能を有することが好ましく、通信はWi−Fi、3G、第四世代通信、第五世代通信、第六世代通信などの無線LAN、高速通信網、電話回線、インターネット、ブルートゥース、赤外線によって行うことが好ましく、スマートグリッド、スマートシティ、スマートタウンなど、火力・原子力発電などの「集中型発電」と需要地の近くに分散配置して発電を行う「分散型発電」を最新のIT技術を駆使し効率的に管理する次世代送電システムなどをコントロールする機能をもつことが好ましく、火力発電、水力発電、原子力発電、風力発電、地熱発電、太陽電池発電、地熱発電、燃料電池発電、海流発電、波浪発電、圧電発電、再生可能エネルギーなどによって発電された電気と、この電気を使用して稼働する自動車、電車、工場、住宅、病院、学校、役所、照明、空調、機械、装置、家電製品などをいつでもどこでもコントロールするための情報末端として利用できることが好ましい。また、電子書籍、電子教科書、電子カルテ、電子ノートなどに利用することも好ましく、指やペン入力など押圧力が加わるタッチパネル方式であることが最も好ましい。
押圧力としては0.2mm2のシャープペンシルやタブレットPC用のスタイラスタペンなどの尖った先端で表示素子の表面を1kg以下の圧力で押さえつけても表示が復元することが好ましく、人差し指や親指などで表示素子の表面を押さえつけても表示が復元することが好ましく、指の面積として4×3cm2以下で2kg以下の圧力でも表示が復元することが好ましく、繰り返し耐性が1万回以上、10万回以上、10万回以上が好ましく、より好ましくは1000万回以上の耐性があることが好ましい。
本発明の表示素子は、デスクトップパソコンや、大中小型制御装置、自動販売装置など、据え置きタイプの表示素子に用いることができるが、この他にも、デジタルサイネージ(電子看板)、Pint of purchase advertising(POP)、電子時刻表、電子掲示板、電子値札、電子黒板、計器表示などに利用することができ、表示面が片面、両面、sea−throughディスプレイでもよく、特に好ましくは指やペン入力など押圧力が加わるタッチパネル方式であることが最も好ましい。いつでもどこでも手軽に利用するためには、ノートパソコン、タブレットPC、スマートフォンや携帯電話のような形態が好ましく、特に好ましくは、指やペン入力など押圧力が加わるタッチパネル方式である表示素子が最も好ましい。
液晶表示素子はフレキシブル表示素子でもよく、その場合の電極基板は、プラスチック基板や薄膜ガラス基板等のフレキシブル基板を使用することが好ましい。電極としては、グラフェン(炭素の単原子層からなるシート)や有機半導体など、フレキシブルな電極材料を用いることが好ましい。
有機TFTの構造は,トップコンタクト、ボトムコンタクトか好ましく、より好ましくはボトムゲート・ボトムコンタクト型が好ましく、中核となる有機半導体は、金属(Cu,Pb,Ni)フタロシアニン誘導体、金属ポルフィリン誘導体、ペンタセン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、アントラジチオフェン誘導体、ヘキサベンゾコロネン誘導体、ルブレン誘導体などの多環芳香族化合物や、テトラシアノジキメタンなどの低分子化合物、ポリアセチレンやポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリピロールなどのポリマー、ポリチオフェン誘導体、ペリレンテトラカルボキシルジイミド誘導体(PTCDI)、ペリレンテトラカルボン酸二無水物誘導体(PTCDA)、フッ素置換フタロシアニン誘導体、カーボンナノチューブ、ポリアニリン誘導体、グラフェン、ナフタレンテトラカルボニル化合物、ペリレンテトラカルボニル化合物、クアテリレンテトラカルボニル化合物、フラーレン化合物、ヘテロ5員環化合物(オリゴチオフェン、TTF類縁体)などが好ましく、より好ましくはペンタセンが好ましい。
またこれらの有機半導体にはドーピングすることが可能であり、ヨウ素をドーピングしたポリピロールや、ヨウ素をドープしたポリアセチレンなどが好ましい。有機半導体化合物の特性を向上させるためには、分子の配向性を高めることが好ましく、上記の化合物に液晶性を付与した有機半導体化合物を用いることが好ましい。これらの液晶性有機半導体化合物は、低分子系、高分子系、超分子系でもよく、電子やホールを輸送するためにはカラムナー構造やレイヤー構造をもつことが好ましい。
グラフェン材料の製造は、トップダウンでもボトムアップでもよく、トップダウンでは、スコッチテープ法、Modified Hummers法、超臨界法でもよく、ボトムアップでは、熱CVD法、SiC上グラフェン成長法でもよく、グラフェンを利用したトランジスタの作製は、剥離・転写法、CVD・転写法、SiC表面熱分解法が好ましく、低温で製造する場合には、650℃と低い温度で絶縁基板上にグラフェンをCVD形成し、グラフェントランジスタを基板全面に直接形成する技術が好ましい(富士通研究所)。単層であり,かつキャリアのモビリティの高い大面積のグラフェンシートを得るためには、薄いCuフィルム上にCVDによるグラフェン膜を作り、それを他の基板に転写する方法が好ましく、具体的には、直径8インチ以上の円筒形の石英チューブ内にCuフィルムを貼付け,その上でCVDを行い取り出し,ポリマーフィルムと密着させた後に剥がす(ロール・ツー・ロール方式)という手法が好ましい(X. Li et al., Science, 324, 1312−1314 (2010))。
ゲート電極には金,ソースとドレイン電極には白金/金を,ゲート絶縁膜とパッシベーション膜にはポリマー材料が好ましく、パッシベーション膜を除いた全ての層を形成した後に,ペンタセン膜を蒸着によって形成することがより好ましい。有機TFTの性能向上には,ペンタセンと有機ゲート絶縁膜および電極との界面を制御することが重要であり,有機絶縁膜中にシランカップリング剤を添加して撥水性とすることによって移動度を高めたり,ソース・ドレイン電極とペンタセンの間の接触抵抗を下げるために積層構造の電極とするなどの工夫を加えることが好ましい。有機TFTをトップエミッション構造の有機ELと高精細に集積化することが表示素子として好ましい。
さらに、有機半導体を用いた表示素子の作製方法は、印刷方式(プリンタブルエレクトロニクス)が好ましく、印刷方式によって作製されたグラフェンのトランジスタを用いることが好ましい。フレキシブル表示素子に用いる印刷配線には、ナノ銀粒子、ナノ銅粒子などの金属ナノ粒子材料を用いることも好ましい。また、アモルファスシリコンを超える有機半導体を得る印刷方式としては、有機半導体を溶かしたインクと、有機半導体の結晶化を促すインクの2種類を交互に滴下する「ダブルショット」印刷法も好ましく、この場合の半導体インクには、C8−BTBT(ジオクチルベンゾチエノベンゾチオフェン)が好ましい(Nature 475, 364−367, 21 July 2011)。
液晶表示素子は、フィールドシーケンシャル方式等の時間分割、偏光方式、視差バリア方式、インテグラルイメージング方式等のスペース分割、分光方式やアナグリフ等の波長分割、FPSモード等により、3D表示を行うことも可能である。
液晶表示素子の部品削減(コスト削減)や外部回路との接続箇所が減少することによる耐振動性や耐衝撃性を向上させるためには、SOG(System on Glass)が好ましい。ガラス基板に載せる回路としては、ICやLSIとして供給されているDACやパワーアンプ、論理回路、マイクロプロセッサ、メモリを載せたもの、液晶制御回路や電源回路、入出力インターフェイス回路、信号処理回路、パワーアンプなどを、1つのガラス基板上に載せることでシステム化した周辺回路をガラス基板上に形成したものなどが好ましい。
以下、本発明の好ましい形態の一例であるDH−FLCへの適用について説明する。
カイラリティを持つ分子の作るSmC*相では強誘電性(SmC*相)が発現することが、R.B.Meyerにより1978年に予言され、同時に分子設計されて実現された。さらに1981年に、N.A.ClarkとJ.P.Lagerwallは、2枚ガラス板からなる水平配向の薄膜液晶セルにSmC*相を封入することにより、螺旋構造を解凍して双安定な2つの安定状態間を実現できること、および、ガラス板垂直方向の有極性の電場により液晶分子を方位角方向に回転させ、メモリ性のある高速(〜10msec)な表示素子として応用できることを提唱した。その後1990年を中心に応用化の研究が、大学・研究所・企業などで極めて精力的に行われた。しかし、一様な水平配向を達成することができず、また階調表示に関する原理的困難さもあって、SmC*相は現在では、微小な表示素子のみで用いられているに過ぎない。
一方、インプレーン電場によるネマティック液晶表示法(IPS)の研究が進むにつれ、垂直配向で螺旋が保持された状態から、水平電場で分子配向の偏在を起こす(Deformed Helix FLC:略DH−FLC)方法が考案された。垂直配向セルの場合は、SmC*相が持つ元来の対称性と良く整合しているため、一様な配向が容易に実現できる。しかしながら逆に、この方法ではしきい値電場の高さが実用上の壁となっている。特に、十分な黒状態を実現する短いピッチ長の試料では、しきい値電場が非常に高くなるため実用には適さない。すなわちSmC*相は、実用上極めて魅力的な高速性を原理的に有しているにもかかわらず、発明から35年経った現在でも本格的な応用法の目処が立っていないのである。特にDH−FLCの駆動電圧を低減することができれば、グレースケール表示可能で黒レベルの良い、高速応答液晶モードとして有望であると考えられている。
例えばDH−FLCの駆動電圧を低減する技術に関する文献として、文献1(High−speed infrared phase modulators using short helical pitch ferroelectric liquid crystals Lee, J.−H., Kim, D.−W., Wu, Y.−H., Yu, C.−J., Lee, S.−D., Wu, S.−T. 2005 Optics Express 13 (20), pp. 7732−7740)がある。
当該文献1には、両面IPSにより、セル内部の電界を均一化して低電圧化する方法が開示されている。その他の技術としては、文献2(A ferroelectric liquid crystal display with low operation voltage in a pixel−confined geometry Na, J.−H., Keum, C., Na, Y.−J., Lee, S.−D. 2009 IDW ‘09 − Proceedings of the 16th International Display Workshops 1, pp.111−112)に、電極は片面IPSで、液晶分子の周りをポリマーで固めて閉じ込めた構造(micro−confinmetn channels structure)を作製することによって低電圧駆動を達成する方法が開示されている。
上記文献1や2のような構成では、液晶集合状態が概ね均一である。そのため、分子がぶつかり合うような応答挙動の場合、応答速度が遅くなる。そこで、液晶の集合状態の均一性を変えることにより、文献1や2の問題を解決することができる。特に、DH−FLCの駆動電圧を低減することができれば、グレースケール表示可能で黒レベルの良い、高速応答液晶モードとして有望である。
発明者たちは当初、垂直配向で螺旋構造を保持したSmC*相に、IPS用電極(10mmピッチ)を用いて、層平行方向の電場に対する電気光学応答挙動(DH−FLCモード)を調べていた。この過程で、SmC*相の電気光学応答は、一様にホメオトロピック(垂直)配向した状態では高い閾値特性を示すが、一旦高電圧を印加して電極エッジに層配向の乱れが生じると、低電圧でも容易に配向回転が誘起され閾値電圧が低下することを不思議に思った。そこで我々は、層平行方向の「構造」の存在と、その「構造」とSmC*相との界面の間が「Slippyな界面」として振舞うことが、電気光学応答特性に重要な関係があることに気がついた。ただし一般的には、層平行な方向は層が連続的に存在し、構造がない状態が最良と考えてられている。ここでは、Slippyな界面を、液晶セル内に積極的に設計して実現する方法には様々な方法があり、界面を生成するための共存相にも、様々な状態を考えることができる。本報告では、その1つの方法として巨視的な相分離と電極へのぬれ現象(界面を隠蔽するため)を用いたプロセスを提唱し、Slippyな界面の導入による閾値低減効果を実証し、かつ、その物理的なメカニズムを説明する。特に、Slippyな界面を適切に試料内に生成・配置するためのプロセスとして以下の方法を紹介する。(1)Azo色素分子を溶媒分子とし、UV誘起相分離により誘起される液体相分離ドメインと、(2)極性の強い溶媒を用いて、コレステリック(Ch)‐SmC*の1次相転移により誘起される液体相分離ドメインである。これにより、SmC*相の実用化に、ある種のブレークスルー原理を提供できる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。実施例中、測定した特性および評価は以下の通りである。
「Azo色素混合SmC*:UV光照射によるSlippyな界面生成前後の電気光学応答」
(実施例1)
以下に示すDIC社の強誘電性液晶混合系(FY8004:透明点は106℃)
に、以下のアゾ色素分子(Azo−Acrylate)
を3wt%程度混合して試料を調整した。垂直配向剤で垂直配向処理を施したIPS電極ガラス2枚(正極負極の間隔は10μm。電極の幅はそれぞれ10μm。正極負極の材質として不透明なクロムメタルを用いた。)の間に5μmの厚みで試料を封入し、試験用液晶セルとした。ここで、垂直配向剤での垂直配向処理は、垂直配向剤としてDIC社製「サーフィン150」の0.05%水溶液を用いて、これにガラス基板を浸漬してから引き上げ、乾燥することにより垂直配向処理を施した。試料の封入直後、UV光照射前は、液体は存在せず、相分離していない、均質な液晶相であった。UV光照射前、電極に1Hz、±10Vの正弦波電圧を印加した場合の、偏光顕微鏡写真を図1(a)、電圧‐透過光強度のグラフを図2(点線)、および図3(点線)に示した。当該図1および図2に示す実験データによれば、カノ(Cano)の楔にあたる模様が電圧の変化に伴って大きく併進運動し、輝度は弱く(写真は加工して輝度を上げてある)閾値が高いことが確認される。
次に、試験用液晶セルをUV光照射(オムロン社製UVランプZUV-C30H、波長365nm、照射強度0.5mW/cm2、60秒)後、電極に1Hz、±10Vの正弦波電圧を印加した場合の、偏光顕微鏡写真を図1(b)、電圧‐透過光強度のグラフを図2(破線)および図3(破線)に示した。試験用液晶セルにUV光を照射すると、10Vで70%以上の透過光強度を示し、応答性が1桁以上も鋭く向上した(図2および図3参照)(図1(b)偏光顕微鏡写真参照)。
UV光照射により、液体状の相分離ドメインが発生し、シス体アゾ分子特有の高極性のため、電極面下部(電極近傍)にぬれているのが確認された。アゾベンゼンにUV光を照射すると、トランス→シス異性化を起こすことが良く知られている。また、シス体は、分子が屈曲した構造を有し、周りの液晶の配列と相いれなくなるため、液晶相が不安定化して液体になる場合があることが知られている。このような事実から、液体が現れて濡れが生じたのは、液晶組成物中のアゾ色素分子がシス異性化を起こして液体に変化したものであると推論できる。これが、我々発明者達の設計した「Slippyな界面」の役割を担う構造である。閾値については1桁以上の向上が確実である。しかしこの状態で高電圧を印加すると、液体界面が電極間で接続し、透過度や応答性を崩すので注意が必要である。
(実施例2)
実施例1で用いたアゾ色素分子に変えて、11−[4−(4−Butylphenylazo)−phenoxy]undecyl Metahacrylate(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、試験用液晶セルを作製し、実施例1と同様にして電極に1Hz、±10Vの正弦波電圧を印加した場合の、UV光照射前後の偏光顕微鏡写真を撮影し、また、電圧‐透過光強度を測定した。
UV光照射により、液体状の相分離ドメインが発生し、シス体アゾ分子特有の高極性のため、電極面下部にぬれているのが確認された。
「極性溶媒混合SmC*相:Ch−SmC*1次相転移によるSlippyな界面生成と電気光学応答」
(実施例3)
以下に示すDIC社製FY8011強誘電性液晶混合系(透明点は72℃)
に、極性溶媒であるHexyl Acrylateを4%程度混合し、Ch−SmC*相転移を経由して、Slippyな相分離ドメインを生成し、そのぬれ性を利用して電極下に配置した。FY8011はFY8004に比べて溶媒非相溶性が強く、Ch−SmC*の1次転移を有するため、アゾ成分は添加していなくとも、Azo色素と同じ液体相分離ドメインを自発的に生成し、Slippyな界面を実現できる。図1(c)に偏光顕微鏡写真を、図2および図3の実線で電圧‐透過光強度依存性を示した。前項同様、10Vで75%程度、AM変調でも同じ程度の高い輝度が得られる(図1(c)の偏光顕微鏡写真を参照)。
「Slippyな界面によるしきい値電圧低減の機構」
分子が自身の位置の周りで回転するのではなく並進移動を伴って回転するか、またはピッチの変化に伴うCanoの楔模様の並進移動を伴って液晶分子が回転することを表している。このような運動が閾値上昇の起源となっていると理解できる。すなわち我々が、電極下に濡れ性を利用して、恣意的に配置した液体相分離ドメインと液晶の界面は、「Slippyな界面」として、分子の電場による回転運動を自由に開放するための重要な役割を担っている(図4参照)。これらの機構は、多辺らによって報告されている、Free−standing filmにおける分子回転駆動と、物質の並進移動とも深い関連がある。
「応答速度」
試験用液晶セルに、50Hz、3段(+10V→0V→−10V→0V)の3段の矩形波形を印加することで、応答速度を評価したところ(図5)、同様の電圧を印加した場合、FY8004はUV光照射前後で5msec程度と変化はなく(点線と破線)、FY8011は極性溶媒混合によるSlippy界面導入後も約3msec(実線)であり、この速度は、同一温度・同一電圧における材料本来の応答速度であり、Slippy界面の導入は応答速度にシリアスな影響を与えず、良好な高速応答を保持できることがわかった。
上記実施例等で得られた実験データ及び考察を図7A〜図28により詳細にまとめた。
(実施例4〜9)
図7Aの左下は、実施例1の強誘電性液晶混合系のうち、キラル成分(添加量30%の化合物)の光学純度を、実施例4:(a)100%[螺旋ピッチ400nm程度]、実施例5:(b)88%、実施例6:(c)80%[螺旋ピッチ600nm程度]、実施例7:(d)78%、実施例8:(e)75%、実施例9:(f)71%とし、アゾ色素分子を添加せずに作成した液晶セルについて、印加電圧と透過率の関係を表したグラフである。これを図7Bに拡大して示す。プライム(’)のないものは、電圧上昇時の測定、プライム(’)のあるものは、電圧降下時の測定データである。
図7Aの左下の図では、螺旋ピッチの長い液晶セル(実施例8及び9)は10Vの印加で透過率が10%程度まで増加する(図中、V型の谷の深い線が対応する)のに対して、螺旋ピッチが可視光程度(実施例4及び5)まで短くなると、同じく10Vの印加で透過率が2%までしか増加しない。すなわち、螺旋ピッチを可視光の波長より短くして暗状態の黒を確保しようとすると、閾値が高くなり、高い透過率を得られないということがわかる。なお、螺旋ピッチは、実施例1の組成物のキラル化合物の添加量を変えることにより、変化させた。添加量を増やすと短い螺旋ピッチ、減らすと長い螺旋ピッチが得られる。
図7Aの右下の図では、図1と同様なセルで、電界を印加したときのテクスチャーを偏光顕微鏡でみたものである。筋状に黒く見える部分が電極でその間に液晶があり電極間に電圧を印加したときのテクスチャーである。テクスチャー観察により、電場の印加により分子が、応動の一種類として、回転するが、その結果として螺旋のピッチが変化し、Canoの楔セルで螺旋構造の巻きの回数が変わる部分にみられるような欠陥が観察される。電圧の印加により、この欠陥が並進移動を起こすことが観察され、このようないわば螺旋構造の並進移動があると、応答は遅くなることを発見した。潤滑成分は電極のところに相分離しているが、電極が不透明なため、電極から液体の粒としてはみ出してきた分のみ観察することができる。黒線部分は不透明な電極を示しているので、そこには、液晶と潤滑成分があり、白線部分は電極間であり電界が印加されたために液晶成分の異方性が発現し、複屈折性のため明るく見えている。
本発明の概念の重要な要素であるSlippy(スリッピー、Slippery)界面について図8を用いて説明する。通常の界面では、液晶分子は界面に吸着し、吸着した液晶分子は動くことができず、バルクの液晶分子の配向を強制したり制御したりしている(図8左図)。Slippy界面とは、例えば液晶分子をはじくような(撥水(分子))界面であったり、液体界面が挙げられる。液体界面では界面が液体の性質を有するので、分子がたとえ吸着していても固体界面とは違って相手(=界面成分)と一緒に動けるので、回転・並進運動が自由にできる(図8右図)。図8では、液晶成分において、第一の液晶分子を含む第一の液晶ドメインと、第二の液晶分子を含む第二の液晶ドメインは、その境界領域にスリッピーな界面(潤滑成分)が存在することにより、第一の液晶分子及び第二の液晶分子のそれぞれの回転運動・Canoの楔模様の並進移動等の運動が円滑になる。そのため、UV光照射後の実施例1〜3のように液晶相分離ドメインによりスリッピーな界面の境界領域を実現した液晶セルは、スリッピーな界面を形成していないセル(例えば、実施例1のUV光照射前)に比べて、より低電圧で配向回転が誘起される、すなわち、より低電圧で分子が応答することがわかった。液体界面とは、純粋な液体からなる界面である必要はなく、吸着した液晶分子の回転・並進運動を自由にする状態からなる界面であればよく、例えば、ゲルなどは巨視的には固体であるが、ミクロ(分子)では液体であるので、それらも液体界面とみなせるので、ゲルの添加も有効である。また、例えば、バルクの液晶分子の秩序よりも低い秩序である状態を有する界面も液体界面として同等の機能を発現する。秩序を低くするためには、液晶に、ポリマー、オリゴマー、微粒子等を添加することが有効である。また、液晶分子と分子形状の異なる物質(モノマーを含む)を添加することが有効である。光応答により分子形状を棒状(=液晶分子と同様な形状)から、屈曲形状(=液晶分子とは異なる形状)に変化する光応答性物質(アゾベンゼン等)を添加し、光を照射することにより、秩序の低い状態、あるいは、液体の状態を作ることも可能で、その状態を液体界面として使用することができる。アゾ化合物が形状の効果以外の、例えば液晶との親和性そのものが悪い場合には、光照射をする必要もなく、液体界面を形成することも可能である。また、液体界面を形成するために、液晶と相分離を起こす性質を内在する材料を添加することは有効であり、そのような材料として溶媒、あるいは、液晶成分と非相溶性を有する材料が挙げられる。非相溶性を有する材料としては、親水性の物質、あるいは、液晶との非相溶性を示す程度にフッ素が導入された、例えば、アルキル鎖の一部あるいは全部の水素が液晶との非相溶性を示す程度にフッ素で置換されたアルキル基(=パーフルオロアルキル基と呼ぶことにする)が挙げられる。これらの添加剤は、全て、液体界面の形成に役立っており、その液体界面の機能の面から、潤滑成分であると認識できる。
図8では、水平電極モードでのFLCの液晶分子のCダイレクターの運動を例にとって説明をしたが、本スリッピー界面の効果は、このようなモード、このような材料、このようなダイレクターの種類、に限定されるものではない。例えば、ネマチック液晶のn−ダイレクター(あるいは、単にダイレクターと呼ばれる)の応動の際にも、n−ダイレクターの運動を潤滑することが必要な場合には当てはまる原理である。n−ダイレクターの運動性の違い(速さや向き、静止部分と動的部分など)がある場合、スリッピー界面によりその応動を潤滑することは、機能の向上に有益であり、そのような潤滑作用をもつ液晶組成物、及び/または素子構成も、本発明に含まれる。このような、n−ダイレクターの運動性の違いを有し、本発明の対象となるモードとしては、例えば、VA(垂直配向)型,IPS(インプレーンスイッチング)型,FFS(フリンジフィールドスイッチング)型、TN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、GH(ゲスト・ホスト)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型等がある。
一方、液体界面をつくるためには、界面に、その界面と接する液晶を液体化するあるいは秩序を低下する性質を導入することも有効である。そのような界面としては、例えば、ランダム表面な形状を導入してその界面と接する液晶の配向秩序を融解する機能を持たせた界面があり、フラクタル性の導入で連続的に融解するような界面も含む。また、そのような界面としては、液晶の秩序を低下するための前記添加剤を界面に導入した界面がある。この場合、添加剤としては界面との親和性の強いものが、液体界面をつくるためには好ましい。あるいは、そのような界面としては、前記添加剤を界面と結合させた界面がある。例えば、高分子をグラフトさせた界面がある。高分子の多分散性を利用することにより、秩序を連続的に変化することも可能である。
潤滑成分の効果を作り出す、すなわち、液体界面を形成する方法について、図9を用いていくつか説明する。図9の左図が実施例1についての説明、図9の右図が実施例3についての説明である。液晶にアゾ化合物を添加した系(実施例1)では、前述したように、光照射あるいは/及び温度の変化と、添加濃度により、液晶との相分離領域が図9の左図のとおり発現する。相分離領域では液体が液晶から相分離した状態になるので、液体界面を形成することができる。このタイプの相分離は、例えば、高分子溶液における二相共存として知られているもので、例えば、「ソフトマターのための熱力学」、田中文彦著、裳華房(2009)135頁、図4.20に示されている。図9の右図は、液晶に溶媒を添加した系(実施例3)で、温度と濃度の条件により相分離領域が発生する様子を表したもので、この相分離領域が発生する条件下で液体界面の形成が期待される。このタイプの相分離は、例えば、PHOSPHOLIPID BILAYERS, CEVC,MARSH共著JOHN WILEY & SONS (1987)373頁、Fig.13.2に示されている。
図10は、液晶にアゾ化合物を添加した系で光照射により、液体界面が形成され、その結果、閾値電界が低下し、高い透過率が得られている様子を表したものである。図10は実施例1に記載の液晶混合系を用いた結果であり、図10中の左上及び右下の図は、それぞれ図1(a)及び図1(b)と同じ図になる。
図10の左上の図は光照射する前の明状態を示したもので、輝度が低い(透過率が低い)ことがわかる。UV光を照射し、添加されたアゾ化合物のトランス−シス(Trans-Cis)転移を起こすことにより、アゾ化合物の相溶性が変化し、液晶に相溶しにくくなり相分離することによって、電極近傍(電極下)に液体が存在するようになり液体界面が形成される。その結果、同じ電圧を印加した場合でも、図10の右下に示すように高輝度な(透過率の高い)状態を得ることができた。
図10の左上の図では、トランス型のアゾ化合物が、液晶成分と相溶しているので、潤滑成分としての機能を果たすことができない。そのため、15Vの電圧印加では液晶分子は十分な応答をしないので、光学素子として機能しない、すなわち暗くみえる。セルは偏光顕微鏡で観察しており、2枚の直交した偏光板に挟まれた状態である。液晶分子が応答することにより複屈折性が発現し、明るくなっている。UV光照射によりアゾ化合物がシス型に変化すると、シス型のアゾ化合物と液晶成分とは相分離する。
図10の右下の図では、黒線部分が電極部であって、その部分にシス型のアゾ化合物が偏在しているので、その部分に潤滑成分が存在する。ある電極の隣の電界が印加されている液晶領域(第一の液晶ドメイン)と、その電極の反対側の隣の電界が印加されている液晶領域(第二の液晶ドメイン)が応答する際に、電極近傍でその方向がぶつかり合うように分子が動くが、潤滑成分がそこに存在するため、潤滑機能がはたらく。従って、図10の右下の図でも、図10の左上の図と同じく、15Vの電圧を印加しているにもかかわらず、潤滑機能があるため、液晶分子が容易に応答し、その結果、大きな複屈折性を生じて明るく見える。
図11は図10の結果を定量的に表したもので、図2(図2中の破線及び点線)と対応する図になる。UV光照射する前は10Vの印加で透過率は2%と低いが、UV光照射によりスリッピー界面(液体界面)を導入すると、透過率は50%まで向上する。なお、図中の透過率変化の曲線は、ヒステリシスを示すために、高透過率の場合に2本の線として明確に分離している。このヒステリシスは図7Aの右下の図の第二段落で述べた螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)のため発生することがわかっている。従って、高速応答、及び/あるいは、ヒステリシスのない応答を達成するためには、螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)を抑制した状況を、材料の選定及び/あるいは、駆動方法の適正化により達成することが重要であることを発見した。
図12は、実施例3について、相分離により、液滴(液体の領域)が発生し、その領域が電極とのぬれ性が高いため電極下(電極近傍)で縞状あるいは団子状に液体領域を形成することによりスリッピー界面を形成したことを示した図である。UV光照射後、数秒〜20秒経過した後、電圧を印加しながらの観察である。
その結果、電圧印加により高い透過率を達成していることがわかる。
相分離がおこる要因として、(a)電極上は電界が生じないので、電極間で分子が運動するために、液体部分が分子の動かない電極上に集約される効果はあると予測される。一方で、(b)液体が電極との親和性が強く、電極に集まってくることも考えられる。相分離が(b)の静的な親和力差によって生じているとしても、電圧をかけることにより、(a)の動的な相分離選択構造は生じるものと考えられる。
図13は図12の結果を定量的に表したもので、図2(図2中の実線)と対応する図になる。実施例3の組成物はコレステリック(Ch)相から温度を低下すると直接キラルスメクチック(SmC*)相(=FLC相(強誘電性液晶相)となる)に転移するので、一次相転移をすることになり、図9の右図に表したように、相分離領域を発生することができ、スリッピー界面を形成することができる。FY8011は高速で応答するため、ヒステリシスもほとんど見られていないことがわかる。また、この結果は、水平電界を印加するためのくし型電極を、基板の片面ではなく両面に形成しており、片面にくし型電極を形成したものに比べ、セルの内部まで、効率よく水平電界を供与することができるので、10Vの印加で、70%という高い透過率を達成した。
図14は、実施例3の結果についての説明する図である。実施例3に記載の組成物について、図12の液晶セルに、サイン波の電圧を印加しても(図14の左上図)、AM変調で電圧を印加しても(図14の右上図:図14の右上図は図1(c)と同じ図になる。)、矩形波の電圧を印加しても(下図)、高い透過率を得ることができた。
図15は、閾値低下について、その機構と効果をまとめたものである。UV光照射によりトランスーシス異性化を起こし、形状の変化により液晶に非相溶化したアゾ分子がマクロ相分離することがスリッピー界面を創製する。スリッピー界面が電極近傍に形成される理由は、電極上は分子がスイッチング(回転、あるいは、応動)を起こさないので、それら運動を阻害しない電極部分に析出する(動的な相分離選択構造)、及び/あるいは、相分離領域の親和性が、ガラスより電極により親和であるため電極部分に発現する(静的な親和力差)。電極近傍(電極端、電極下)に、液体領域が存在することによって分子の回転をスムーズにし、閾値の低下につながっている。
図16は、実施例1の組成物を用いてスリッピー界面あり(実施例1のUV照射後)の場合となしの場合(実施例1のUV照射前)の応答時間を測定した結果である。図を詳細に解析した結果、スリッピー界面を有する場合(低いしきい値の場合)も、スリッピー界面(潤滑成分)を有さない場合も、応答速度は500μsecと高速であった。
図17は、実施例3の組成物を用いてスリッピー界面(潤滑成分)ありの場合となしの場合の応答時間を測定した結果である。図を詳細に解析した結果、スリッピー界面を有する場合(低いしきい値の場合)も、スリッピー界面(潤滑成分)を有さない場合も、応答速度は200μsecと高速であった。
(実施例10〜15)
図18Aは、実施例1の強誘電性液晶混合系のうち、キラル成分(添加量30%の化合物)の光学純度を、実施例10:(a)100%[螺旋ピッチ400nm程度]、実施例11:(b)88%、実施例12:(c)80%[螺旋ピッチ600nm程度]、実施例13:(d)78%、実施例14:(e)75%、実施例15:(f)71%とし、実施例1と同様にアゾ色素分子を添加して作成した液晶セルについて、印加電圧と透過率の関係を表したグラフである。これを図18Bに拡大して示す。プライム(’)のないものは、電圧上昇時の測定、プライム(’)のあるものは、電圧降下時の測定データである。なお、実線の一群は、UV光照射してスリッピー界面を発生させたもの、図下部の点線の一群は、こられに対応したUV光照射前の(スリッピー界面が発現していない)ものである。
図7Aの右下の図で述べた螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)のため、低周波にて駆動すると、ヒステリシスが発生する。ヒステリシスのない応答を達成するためには、螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)を抑制するため、高速応答の材料を選定することが有効である。この場合でも、スリッピー界面の導入により閾値は低下し、同じ電圧印加で、透過率は高く、好ましいものとなっている。図18Aには、実施例1のキラルの添加量を変えて螺旋ピッチの長さを種々変化させたものの結果をまとめて記載してある。スリッピー界面を導入したものは実線で、導入していないものは、点線で図18A中に記載してある。
図7Aの右下の図において説明したように、螺旋構造自体の運動は低速であり、螺旋構造の並進移動があると、液晶分子の応答は遅くなる。本発明では、図8において説明したように、スリッピー界面を形成することにより、並進移動・分子の回転運動が行いやすくなることがわかった(図19)。
螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)によるヒステリシスの発生については、駆動方法で改善することができることを見出した。AM変調駆動(図20の右図)を行うことにより、早い電場反転により螺旋の運動が抑制される、すなわち、螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)を抑制することができるので、ヒステリシスは小さくなる。なお、図20の左図は図11と同じである。図10、図11と同じく、実施例1に記載の液晶混合系を用いた結果である。
図21は、図18Aに記載の結果(図21の左図)で得られた大きなヒステリシスが、AM変調により、そのヒステリシスが小さくなっている結果(図21の右図)を示している。このように、AM変調駆動において、早い電場反転により螺旋の運動が抑制される、すなわち、螺旋構造の並進移動(ピッチの運動)を抑制することができるので、ヒステリシスが小さくなるというのは、材料によらず普遍的である、ということがいえる。
高いコントラストを得るためには、しっかりとした黒表示(消光)と明るい明表示(高い透過率)が必要である(図22)。しっかりとした黒表示を得るためには、短いピッチ(UV波長の領域の短ピッチ)の螺旋構造が必要であるが、ピッチが短くなると高い閾値特性を示してしまう。スリッピー界面の導入により、閾値低下することができることを見出したが、さらに詳細な効果を検討するため、スリッピー界面の有無で、ピッチと閾値の関係がどのように変化するかを調べた。
図23は、温度(60℃、70℃、80℃、90℃、100℃)ごとの電圧(横軸)vs透過率(縦軸)の図である。キラル成分の光学純度を100%〜71%に変えた実施例10〜15の液晶セルについて、UV光照射前(=点線表示)と、UV光照射後(=スリッピー界面あり=実線表示)について表示したものである。図23の各線の傾きに相当する値(ガンマ)を読み取り(=図24の縦軸)、光学純度(=図24の横軸)に対してプロットして図24にまとめてある。ガンマは、感受率と呼んでよく、電圧に対してどのくらい駆動しやすいかを示す物理量である。図24には、光学純度とガンマの関係を各温度について、プロットしてある。図24の上のほうにあるプロット(の一群)は、UV光照射後のもの、下のほうの一群はUV光照射前のものである。上の一群、下の一群について、それぞれフィッティングによる解析を行うと、上の一群はガンマが光学純度のマイナス一乗に比例し、下の一群はガンマが光学純度のマイナス三乗に比例することがわかった。光学純度は波数q(とよばれる物理量で、キラルの力に比例する)と比例するので、上の一群はガンマがqのマイナス一乗に比例し、下の一群はガンマがqのマイナス三乗に比例することがわかったといってよい。ところが、駆動力はqに比例するので、感受率ガンマをqで除して規格化して解析する必要がある。その結果が図25に示してある。その結果、UV光照射によりスリッピーな界面を発現した系では、規格化したガンマはqのマイナス二乗に比例していることがわかり、qの増大によるねじれ弾性の結果、駆動しにくくなるという関係を示している。しかし、UV光照射をせず、スリッピーな界面を発現していない系(図25の下の一群のプロットに相当)では、規格化したガンマはqのマイナス4乗に比例しており、qの増大とともに、ねじれ弾性以外の効果による動きにくさも発現している。このことをまとめたのが図26である。
FLCスイッチング改善の発明として、詳細な実験的検討が行われたものとして、UV光照射による相分離によるスリッピー界面の創製、電極端での液体の相分離によるスリッピー界面の創製、AM変調によるヒステリシスの低減があり、また、原理的に効果が明確な発明、あるいは、一定の実験によりその効果が発現した発明として、可視光照射によるアゾ化合物のトランス体の部分的な復活、ゲル導入による信頼性の高いスリッピー界面の創製、高分子安定化による螺旋構造の凍結による高速応答の実現、界面へのポリマー鎖導入によるSmC*からSmAの転移誘導による黒レベルの向上がある(図27)。
反強誘電性液晶として知られているMHPOBC(4-(1-methy1-hepty1oxycarbony1) phenyl-4'-octy1oxybiphenyl-4-carboxy1ate 下記式)について、反強誘電性液晶相(SmCA相)で50Vの電圧印加では透過率が低く、明るい表示が得られなかった(図28の左図)。しかし、一度、100Vという高電圧を印加してから、再び、50Vの電圧を印加すると、高い透過率を得ることができた(図28の右図)。この状態では、高い電圧を印加したため、電極近傍の配向が乱れ、その秩序度が低下したスリッピー界面が形成されたためと考えられる。これは、潤滑成分の添加、あるいは、電極界面の工夫ではなく、材料が変質したために生じたスリッピー界面の例である。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。