JP2015062373A - 遺伝子組換えウイルスによる微生物の迅速検出法 - Google Patents

遺伝子組換えウイルスによる微生物の迅速検出法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、微生物に対するウイルスの結合特異性を利用した、迅速且つ簡便に微生物を検出できる方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、微生物内で増殖するウイルスに標識酵素を発現する遺伝子を導入し、試料中の微生物に該ウイルスを感染させ、微生物内で産生した標識酵素と、添加した基質との反応に基づく色の変化により、試料中に微生物が存在するか否かを検出する方法、検出試薬及び検出キットを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、食品、飲料、河川、土壌、糞便等に存在する微生物、又は食中毒若しくは汚染の原因となる微生物、あるいはヒト、家畜又は植物に存在する微生物を簡便かつ迅速に検出する方法、検出試薬、及びキットに関する。より具体的には、本発明は、微生物(宿主)に対して特異的に感染するウイルスであって、標識酵素を発現するように形質転換した遺伝子組換えウイルスを利用した微生物の検出法を提供する。
食品製造・加工において、微生物(病原性微生物を含む)の検出は、食品の品質管理上、現在でも最優先の課題であるが、長時間にわたる煩雑な分離及び同定作業、場合により相当な熟練を必要とするため、これまでも迅速・簡便・正確に検出可能な方法の発明が長く期待されてきた。食品及び糞便などの試料からの食中毒菌の検査にはPCR法が汎用され、近年ではPCR産物に特異的に結合する蛍光色素プローブ、又は特異的なプライマーとサイバー・グリーンなどの核酸染色剤を用いたリアルタイムPCRが、検出に応用されるようになってきていた。例えば、TaqMan法に代表される蛍光色素プローブ法では、その反応特異性を利用して定量的かつ精度の高い食中毒菌の同定が可能である。しかしながら、リアルタイムPCRをおこなうための装置は高価であるという問題点があった。
わが国においては、病原性大腸菌O157の検出件数は毎年増加しており、感染による死亡者も報告されている。この感染症による被害を最小限に抑えるためには、食品や感染が疑われる患者の糞便からの病原菌の迅速な検出と、感染源の迅速な特定が必要である。大腸菌群を検出するにはβ−D−グルクロニドを含んだ培地を用いる培養法があるが、この方法では大腸菌以外の細菌が多く含まれ、また、大腸菌の中でも病原性の大腸菌O157を選択的に測定することは困難である。また、培養法を用いた大腸菌群の検出では、通常検出までに1日以上の長時間を要する。このため、病原性大腸菌O157を検出するための種々の方法が開発されてきた。例えば、病原性大腸菌固有の抗原に対する抗体を用いる方法が知られているが、精度の点で問題がある。また、病原性大腸菌のDNA中の、該大腸菌に特異的な特定の領域、具体的にはベロ毒素(Vt1、Vt2)をコードする遺伝子領域をPCRにより増幅して、その存在を検出する方法が知られているが、この方法では死菌と、検出したい生菌とが区別できないという欠点がある。
また、大腸菌を検出する方法として、免疫磁気分離法(IMS)も知られている(非特許文献3)。このIMSは、標的細菌の表面上の抗原に対する抗体で被覆された磁気ビーズを利用するものであり、例えば、大腸菌O157を分離することができる。しかしながら、磁気ビーズ上に該大腸菌が捕捉されているかについては、付加的な検出技術が必要であることに加えて、非常に高価な免疫磁気ビーズを必要とするために、一般的な検査法としては、費用の面からも適さない。
また、病原性大腸菌の検出には限定されないが、特定の細菌に対して特異的なウイルスの遺伝子に標識用タンパク質(例えば、GFPタンパク質)の遺伝子を組み込み、該ウイルスを細菌に感染させて、細菌中でウイルスの増加とともに、発現した標識用タンパク質を検出する方法が知られている(特許文献1及び2、非特許文献4)。しかしながら、この方法では、例えばGFPタンパク質などの蛍光タンパク質を利用するため、細菌の検出には蛍光顕微鏡などの所定の設備又は装置を要するという問題点がある。したがって、試料中の微生物を検出する方法として、迅速、簡便、かつ正確に測定でき、しかも高価な装置等を要しない検出法が望まれる。
特開2000−308486号公報 特開2002−45183号公報
Goodridge, L., et al., Int. J. Food Microbiol., 47, 43-50 (1999) Tanji, Y., et al., J. Biotechnol., 114, 11-20 (2004)
本発明は、微生物に対するウイルスの特異性を利用した、迅速、簡便かつ正確に微生物を廉価に検出できる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、微生物に対して特異的に感染するウイルスに、遺伝子組換えにより標識酵素を発現させ、該微生物への感染後、標識酵素に対する基質の添加により、顕著な色の変化に基づいて迅速かつ簡便に試料中の微生物の有無を検出できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]試料中の微生物を検出する方法であって、該方法は、
(a)微生物に特異的に結合し、該微生物内で増殖するウイルスに標識酵素を発現する遺伝子を導入する工程;
(b)試料と上記(a)で得られたウイルスを混合し、該試料中の微生物に該ウイルスを感染させる工程;
(c)該微生物内で、該遺伝子産物である標識酵素を産生する工程;
(d)該標識酵素に対する基質を添加する工程;及び
(e)基質に基づく色の変化により、試料中に該微生物が存在するか否かを検出する工程
を含む方法。
[2]前記微生物が、エスケリッチア属(Escherichia)、クロストリジウム属(Clostridium)、リステリア属(Listeria)、カンピロバクター属(Campylobactor)、サルモネラ属(Salmonella)、赤痢菌属(Shigella)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、ビブリオ属(Vibrio)、エルジニア属(Yersinia)、プレシモナス属(Plesimonas)、バチルス属(Bacilli)、及びアエロモナス属(Aeromonouos)からなる群から少なくとも1種選択される細菌;ストレプトミセス属(Streptomyces)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ビフィオバクテリウム属(Bifidobacterium)、及びサーモビフィダ(Thermobifida)属からなる群から少なくとも1種選択される放線菌;クルイベロミシス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、及びロドトルラ属(Rhodotorula)からなる群から少なくとも1種選択される酵母;ビソクラミス属(Byssochlamys)、フサリウム属(Fusarium)、ゲオトリクム属(Geotricum)、ペニシリウム属(Penicillium)、リゾクトニア属(rhizoctonia)、及びスコプラリオプシス属(Scopulariopsis)からなる群から少なくとも1種選択されるカビ類;クロレラ、スピルリナ、アナベナ属(Anabaena)、ミクロキスティス(Microcystis)、及びアレクランドリウム属(Alexandrium)からなる群から少なくとも1種選択される藻類;又はそれらの組み合わせから選択される、上記[1]に記載の方法。
[3]前記微生物が、大腸菌、サルモネラ菌、及び/又は赤痢菌である、上記[2]に記載の方法。
[4]前記ウイルスが、T4、PP01、P2、T2、T7、λ、MV−L2、PRD1、PM2、MV−L1、φX174、fd、MS2、φ6、FELIX01、及び/又はG47を含む群又はそれらからなる群から選択される、上記[1]〜[3]に記載の方法。
[5]前記標識酵素が、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素及び/又はリガーゼである、上記[1]〜[4]に記載の方法。
[6]前記標識酵素が、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ、グリコシダーゼ、及び/又はムタロターゼである、上記[5]に記載の方法。
[7]上記[1]〜[6]に記載の方法において使用される、試料中の微生物に特異的に結合し、該微生物内で増殖するウイルスを含む検出試薬であって、ここで、該ウイルスが、検出に使用される基質に対する標識酵素を発現する遺伝子が導入されている検出試薬。
[8]上記[7]に記載の検出試薬、標識酵素に対する基質、及び使用説明書を含む、試料中の微生物を検出するためのキット。
本発明は、標識酵素を発現するように形質転換した遺伝子組換えウイルスを利用することにより、食品、飲料、河川、土壌、糞便等に存在する微生物、又は食中毒若しくは汚染の原因となる微生物、あるいはヒト、家畜又は植物に存在する微生物の簡便かつ迅速な検出を可能にする。
図1Aは、大腸菌K12株に対してT4ceファージを感染させ、DAB(基質)を添加後の溶液の色の変化を経時的に測定した結果を示す。黒四角は、T4ceを用いて大腸菌を検出した結果であり、黒丸は、野生型T4ファージを用いた対照を示す。図1Bは、基質を添加し、1時間後の溶液を撮影した画像を示す。左が野生型T4ファージ(対照)であり、右がT4ceファージによる画像である。 図2Aは、大腸菌O157:H7に対してPP01ceファージを感染させ、チトクロームc(基質)を添加後の溶液の色の変化を経時的に測定した結果を示す。黒四角は、PP01ceを用いて大腸菌を検出した結果であり、黒丸は、野生型PP01ファージを用いた対照であり、黒三角は、いずれのファージも含まない非感染系の対照である。図2Bは、基質を添加し、0分から3分後の溶液の色の変化を撮影した画像を示す。いずれも左がPP01ceファージであり、右が野生型PP01ファージ(対照)の画像である。 大腸菌O157:H7を添加し、人工的に微生物汚染させたリンゴジュースにおけるPP01ceファージによる大腸菌の検出結果を示す。黒四角は、PP01ceを用いて大腸菌を検出した結果であり、黒丸は、野生型PP01ファージを用いた対照であり、黒三角は、いずれのファージも含まない非感染系の対照である。
以下、本発明の説明のために、好ましい実施形態を詳述する。
前述の通り、本発明は、試料中の微生物を検出する方法であって、該方法は、
(a)微生物に特異的に結合し、該微生物内で増殖するウイルスに標識酵素を発現する遺伝子を導入する工程;
(b)試料と上記(a)で得られたウイルスを混合し、該試料中の微生物に該ウイルスを感染させる工程;
(c)該微生物内で、該遺伝子産物である標識酵素を産生する工程;
(d)該標識酵素に対する基質を添加する工程;及び
(e)基質に基づく色の変化により、試料中に該微生物が存在するか否かを検出する工程
を含む方法、該方法において使用されるウイルスを含む検出試薬、並びに該検出試薬、標識酵素に対する基質、及び使用説明書等を含むキットに関する。
ウイルスは、特定の宿主に感染するという高い特異性を有している。例えば、大腸菌へのウイルスの感染においては、ウイルスが大腸菌の表面抗原に特異的に吸着し、その後、ウイルス中のDNAが菌体内に注入される。菌体内ではウイルスのDNAが複製されるとともに、ウイルスの外殻タンパク質などのファージ粒子の形成に必要なタンパク質が合成され、それらが集合してファージ粒子が形成され、菌体が溶菌して多数のファージ粒子が放出されるという感染サイクルが知られている。本発明は、このようなウイルスの感染サイクルを利用するものである。より具体的には、本発明の検出方法は、所定の標識酵素遺伝子を感染前のウイルスに組み込み、特定の微生物への感染後にウイルスのDNA複製に伴って、該標識酵素遺伝子の増幅及び翻訳による標識酵素の産生、さらには菌体外への標識酵素の放出を利用することにより、該標識酵素に対する基質の添加によって、該酵素と基質の反応に基づいた色の変化(例えば、発色、着色、脱色、退色、色調の変化)を観察し、試料(例えば、食品、糞便、土壌、河川、貯水池、コンポスト、メタン発酵液)における特定の微生物の有無を検出するものである。なお、当業者であれば、本発明において、検査対象とする試料は、ウイルスを感染させる前に、特段の処理を必要としないが、適宜、リン酸緩衝生理食塩水又は培養液で希釈してもよいことは容易に理解され得る。
本発明によれば、食中毒又は汚染の原因となる有害微生物(例えば、病原性大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌)を検出することができるが、一方で、土壌及び水質の浄化、温暖化ガス抑制に寄与する有効微生物(例えば、バチルス属細菌、パントエア属(Pantoea)細菌、レクレルシア属(Leclercia)細菌)も検出することができる。これに関連して、本発明の検出方法は、コンポスト、メタン発酵(バイオガス発酵)、又はバイオレメディエーションにおいて所望の有効微生物の定着を確認するために用いることができる。例えば、コンポストにおける有効微生物の例としては、コンポストを高速に作製するために接種する菌、コンポスト化の過程で悪臭を低減する菌などが挙げられる。また、メタン発酵における有効微生物の例としては、セルロースを分解する菌、グリセロールを分解する菌が挙げられる。バイオレメディエーションにおける有効微生物の例としては、石油分解菌が挙げられる。また、本発明によれば、生体の腸環境などの複数の微生物が複雑な相互作用を及ぼしながら共存する複合微生物系において、定着が望まれる有効微生物(プロバイオティクス)の確認も可能にする。
本発明の検出方法は、上記試料中の特定の微生物を検出するために使用されるだけでなく、ヒト、家畜若しくは植物に存在する有効菌又は病原菌の検出にも使用することができる。したがって、本発明の検出方法は、ヒト及び家畜において病原菌を特定することができるため、ある疾患に対するそれらの治療及び予防に最適な医薬品を選択するためにも使用可能である。また、植物の場合にも同様に、植物の栽培及び生育時の病害対策における農薬の選定において、本発明の検出方法を利用することができる。
一実施形態において、本発明の検出方法は、試料に含まれる特定の微生物を定量することができる。簡単には、試料を所定量のウイルスに感染させ、該試料を所定時間培養後、10倍希釈系列を作製し、微生物が検出されなくなった時点の希釈率から元の試料中に存在していたであろう微生物を定量する。例えば、試料を10倍希釈した場合に微生物を検出できないとすれば、元の試料には微生物が10匹以下であったとして定量され得る。
本発明の検出方法及び検出試薬によって検出可能な対象は、ウイルスが特異的に感染し得る微生物であれば限定されないが、例えば、エスケリッチア属、クロストリジウム属、リステリア属、カンピロバクター属、サルモネラ属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、ビブリオ属、エルジニア属、プレシモナス属、バチルス属、及びアエロモナス属からなる群から少なくとも1種選択される細菌;ストレプトミセス属、アクチノミセス属、ビフィオバクテリウム属、及びサーモビフィダ属からなる群から少なくとも1種選択される放線菌;クルイベロミシス属、ピキア属、サッカロミケス属、カンジダ属、及びロドトルラ属からなる群から少なくとも1種選択される酵母;ビソクラミス属、フサリウム属、ゲオトリクム属、ペニシリウム属、リゾクトニア属、及びスコプラリオプシス属からなる群から少なくとも1種選択されるカビ類;クロレラ、スピルリナ、アナベナ属、ミクロキスティス、及びアレクランドリウム属からなる群から1種選択される藻類;又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。本発明の検出方法及び検出試薬によって検出可能な対象としては、大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌が好ましい。
本発明に用いるウイルスとしては、微生物に特徴的な抗原を認識して感染するウイルスであれば、特に限定されない。当業者であれば、検出対象とする特定の微生物(宿主)に特異的に感染するウイルスを適宜選することができる。一般的に知られているウイルス(ファージ)としては、PP01、T4、P2、T2、T7、λ、MV−L2、PRD1、PM2、MV−L1、φX174、fd、MS2、φ6、FELIX01、G47等が挙げられる。また、ウイルスの宿主特異性は高く、例えば、病原性大腸菌を宿主として感染するウイルス(ファージ)の例としては、限定されないが、下記の表1に示されるものが挙げられる。
本発明の検出方法を用いて大腸菌を検出するために使用されるウイルスとしては、PP01、T4が好ましい。これらのウイルスは、ATCC(American Type Culture Collection)等から入手可能である。
また、病原性大腸菌以外の微生物を宿主として感染するウイルス(ファージ)の例としては、限定されないが、下記の表2に示されるものが挙げられる。
上記ウイルスに導入される「標識酵素遺伝子」とは、所望の標識酵素をコードする遺伝子を指す。ここで、本明細書において使用するとき、「標識酵素」とは、標識酵素に対する基質の存在下で反応を受け、検出可能な産物を作り出す酵素を意味する。本発明の検出方法において使用される標識酵素としては、限定されないが、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素、リガーゼが挙げられる。標識酵素としては、好ましくは、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−マンノシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、ムタロターゼを用いることができる。一方、これらの酵素に対する基質は多種にわたって知られ、例えば、ペルオキシダーゼについては、限定されないが、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、チトクロームC等を利用することができる。アルカリホスファターゼについては、限定されないが、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル/ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(BCIP/NBT)、ファーストレッド、ニューフクシン等を利用することができる。
標識酵素遺伝子をウイルス内に導入する方法は、特に限定されず、一般的な遺伝子組換え技術により容易に行うことができる。なお、本明細書において使用するとき、「標識酵素遺伝子をウイルス内に導入する」とは、導入された標識酵素遺伝子が、該ウイルスが特定の微生物に感染した際に、微生物内で標識酵素を発現するように、ウイルスのゲノムに該標識酵素の遺伝子を機能的に組み込むことを意味する。上記のような導入法としては、標識酵素遺伝子をプラスミドベクターでサブクローニングを行い、続いて、標識酵素遺伝子を各種の微生物に特異的なウイルスにフレームが合うように挿入し、標識酵素遺伝子発現ファージを調製する方法等を挙げることができる。本発明においては、後述する実施例1及び2に記載したように、はじめに、市販のクローニングベクター(pCR2.1−TOPOなど)に所望の標識酵素遺伝子を導入する。この際、ウイルスのゲノムの所定の位置に該標識酵素遺伝子を、例えば、相同組換えによって導入するために、予め、導入する所定の位置を基準として、その上流及び下流の適切な長さを有する塩基配列(以下、「フランキング配列」という)をプラスミドベクターに、導入される標識酵素遺伝子を挟むように組み込んでおくことが好ましい。得られたプラスミドベクターを宿主(例えば、大腸菌)に導入し、該宿主に対して特異的なウイルスを感染させる。その後、宿主内に導入されたプラスミドベクターとウイルスとの間で、各フランキング配列を介した相同組換えにより、ウイルスのゲノム中に標識酵素遺伝子を導入することができる。このようにして得られた遺伝子組換えウイルスは、試料中の微生物の有無を酵素−基質反応を利用した検出に用いることができる。なお、所望の標識酵素遺伝子が、ウイルスのゲノムの所定の位置に導入れたことを確認するための手段としては、限定されず、当業者が通常用いている手段、例えば、プラークハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法、DNAシークエンシング法が挙げられる。
本発明においては、試料中に微生物が存在する場合、上記の通り、該微生物に特異的な上記遺伝子組換えウイルスが感染し、その後、発現する標識酵素に対する基質を試料に添加することによって、微生物の存在を基質の色の変化により、例えば視覚的に検出することができる。このような色の変化は、分光光度計を用いて観察することもできるが、本発明においては、対照(例えば、ウイルスを添加していない系)と比較した色の変化(例えば、着色、脱色、色の濃さの変化など)を肉眼で確認することができるという利点を有する(実施例1及び2参照)。また、色の変化が確認できるまでの時間、即ち、試料中に微生物が存在することを確認できるまでの時間は、使用される酵素及び基質に依存するが、例えば、基質を添加した後の3時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、3分以内、2分以内、1分以内、又は30秒以内である。なお、微生物に感染したウイルスが微生物外に放出されるまでの時間(感染サイクルの時間)は約30分〜約1時間であることが知られているため、試料中に微生物の有無を検出し得る時間は、ウイルスを感染後、全体として30分〜4時間程度である。
本発明によれば、試料中の微生物の検出は、例えば、以下のようにして行うことができる。試料を培養液(例えば、LB培地)又は生理緩衝食塩水等で希釈し、その一部(例えば、1mL)を試験管に採取する(調製溶液)。次に、適切な濃度の遺伝子組換えウイルス液を、例えば1:1の容量比で上記調製溶液に添加し、混合する。対照として、例えば、調製溶液に遺伝子組換えウイルスを含まない溶液、又は遺伝子組換えを行っていない野生型のウイルスを用いた溶液を用意する。この混合液を25℃にて、例えば約10分間放置し、該ウイルスを微生物の表面に吸着させ、感染させる。次に、標識酵素に対応した基質溶液を適切な濃度で混合液中に添加し、37℃にて振とうしながら、反応溶液の色の変化を観察する。対照と比較して、肉眼で、色の変化、例えば発色、脱色等が観察された場合、調製溶液、即ち、試料中に微生物が存在していたと判断することができる。また、肉眼ではなく、分光光度計を用いても、調製溶液と対照の色の変化を相対比較することができる。標識酵素としてペルオキシダーゼを用いて検出した場合、基質の種類に応じて450〜550nm程度の波長を有する可視光の吸光により測定が可能である。
別の実施形態において、試料中の微生物を検出するための検出試薬及びキットが提供される。本発明によれば、上記の実施形態において説明した本発明の方法において使用される遺伝子組換えウイルスを検出試薬として用いることができる。該検出試薬を試料又は希釈後の試料に添加することにより、試料中の微生物の有無を判断するために用いることができる。また、本発明によれば、検出試薬、希釈剤、緩衝液、及び検出するためのプロトコール等を記載した使用説明書を含むキットが提供される。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上述した説明は、試料中の単一の微生物の検出にのみ限定したものではなく、当業者であれば、複数種類の微生物を一度に検出することも可能であることは理解できよう。即ち、特定の微生物に感染するウイルスの種類によって、導入する標識酵素遺伝子の種類を変化させることにより、一度に複数の微生物を検出(さらには同定)することができる。
実施例1:組換えT4ファージによる大腸菌K12株の検出
(1)標識酵素を有するベクター(T4ce)の作製
遺伝子組換えにより、標識酵素としてペルオキシダーゼを発現するT4ファージを作製した。具体的には、野生型T4ファージのゲノム上のsoc遺伝子とmrh2遺伝子のN末端に対応するDNA断片(T4soc−mrh2)を以下のプライマー:
配列1:5’-TTCCGGAATTCCATGGCTAGTACTCGCGG-3’(配列番号1)(下線はEcoRIの制限部位を示す);
配列2:3’-TTAGGGCCCGGTTTAATCCAACGATTTAACAT-5’(配列番号2)(下線はApaIの制限部位を示す)
を用いて、野生型T4ファージの溶解物を鋳型として増幅した。この増幅断片をEcoRI/ApaIにより消化後、pCR2.1−TOPOクローニングベクター(Invitrogen,CA,USA)のEcoRI/ApaI部位に挿入し、プラスミドベクターpCR2.1−reg.1を得た。次に、野生型T4ファージのゲノムから以下のプライマー:
配列3:5’-CGGGGTACCAGAAAAATCATATGAAGTTGA-3’(配列番号3)(下線はKpnIの制限部位を示す);
配列4:3’-TTGCGAGCTCCTCCTTTATTTAAATTACATG-5’(配列番号4)(下線はSacIの制限部位を示す)
を用いてg69遺伝子を増幅した。この断片をKpnI/SacI消化後、ペルオキシダーゼ遺伝子が組み込まれた上記ベクターのKpnI/SacI部位に挿入した(pCR2.1−reg.1−reg.2ベクター)。続いて、ペルオキシダーゼ遺伝子を以下のプライマー:
配列5:5’-TTGCGAGCTCATGACACCGCTCGTTCATGT-3’(配列番号5)(下線はSacIの制限部位を示す);
配列6:3’-TTCCGGAATTCCTATAAACCTTGTTCCTC-5’(配列番号6)(下線はEcoRIの制限部位を示す)
を用いて増幅し、SacI/EcoRI消化後、上記pCR2.1−reg.1−reg.2ベクターのSacI/EcoRI部位に挿入し、pCR2.1−reg.1−ce−reg.2ベクターを得た。
(2)標識酵素遺伝子を有する組換えT4ファージ(T4ce)の構築
上記で作製したpCR2.1−reg.1−ce−reg.2ベクターを用いて、ペルオキシダーゼ遺伝子を相同組換えにより野生型T4ファージのゲノムに導入した。具体的には、Gene Pulser II(Bio−Rad,CA,USA)を用いたエレクトロポレーション(1.8kV、25μF、200Ω)によって、pCR2.1−reg.1−ce−reg.2ベクターを大腸菌K12株にトランスフェクトし、形質転換体を得た。この形質転換体を50mg/Lアンピシリン含有のLB培地中で培養した。OD600が0.1に達したときに、野生型T4ファージを感染多重度(M.O.I)を0.1にして添加した。37℃、120rpmにて4時間インキュベーション後、培養物を0.45μmの濾過フィルター(Advantec,Tokyo,Japan)を通過させて濾過し、ファージ溶解物を得た。このファージ溶解物をSMバッファー(100mMのNaCl、10mMのMgSO、0.01%ゼラチン、50mMのTris−HCl、pH=7.5)で希釈した。希釈された溶解物を0.7%寒天中でK12株と混合し、LBプレートに重ねた。標識酵素遺伝子を有する組換えT4ファージ(T4ce)は、ジゴキシゲニン(DIG)標識プローブを用いたプラークハイブリダイゼーションによって単離した。プラークハイブリダイゼーションは、フィルターハイブリダイゼーション用のDIGアプリケーションマニュアル(Roche,Upper Bavaria,Germany)に従って行われた。DIG標識されたceプローブを用いたハイブリダイゼーションを37℃にて6時間行った。NBT/BCIPストック溶液(Rhoche,Upper Bavaria,Germany)を用いた発色アッセイにより、プローブ−標的ハイブリッドを検出した。また、得られた組換えT4ファージ(T4ce)のゲノム中に所望の標識酵素遺伝子が組み込まれていることを確認するために、プライマー(配列1〜6)を用いて対応する遺伝子断片の増幅をおこない、アガロースゲル上で遺伝子断片を分離後、検出されたバンドを野生型T4のバンドと比較することによって、標識酵素遺伝子を確認した(データ示さず)。
(3)T4ceファージによる大腸菌K12株の検出
T4ceファージによって生成される標識酵素の活性を評価した。OD600が0.5(約1×10CFU/mL)に達するまで、大腸菌K12株を37℃にて培養した。次に、この培養物を2つに分注し、それぞれ5.0のM.O.IでT4ceファージ及び野生型T4ファージ溶液のいずれかと混合した。これらの培養物を37℃にて1時間培養し、0.45μmのメンブレンフィルターを通過させ、濾過物を得た。次に、過酸化水素水(最終濃度18.75mM)及びペルオキシダーゼに対する発色基質として3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)(Sigma-Aldrichから入手)の溶液(最終濃度3.0mM)を上記培養物に添加し、発色させた。DABは、ペルオキシダーゼと反応して茶褐色に発色する。反応溶液を分光光度計で測定し、450nmでの吸光度の変化を経時的に観察した(図1A)。吸光度の変化は、T4ceファージ(黒四角)及び野生型T4ファージ(黒丸)のいずれの添加系においても見られたが、標識酵素が遺伝子導入されたT4ceファージを用いた反応系において、大腸菌K12株を顕著に検出することができた。また、これらの反応溶液の発色の差は肉眼で容易に観察することができた(図1B)。
実施例2:組換えPP01ファージによる非病原性大腸菌O157:H7の検出
(1)標識酵素を有するベクター(PP01ce)の作製
遺伝子組換えにより、標識酵素としてチトクロームcペルオキシダーゼを発現するPP01ファージを作製した。具体的には、野生型PP01ファージのゲノム上のsoc遺伝子とmrh2遺伝子のN末端に対応するDNA断片(PP01socmrh2)を以下のプライマー:
配列7:5’-TTCCGGAATTCCATGGCTAGTACTCGCGG-3’(配列番号7)(下線はEcoRIの制限部位を示す);
配列8:5’-TTAGGGCCCGGTTTAATCCAACGATTTAACAT-3’(配列番号8)(下線はApaIの制限部位を示す)
を用いて、野生型PP01ファージの溶解物を鋳型として増幅した。この増幅断片をEcoRI/ApaIにより消化後、pCR2.1−TOPOクローニングベクター(Invitrogen,CA,USA)のEcoRI/ApaI部位に挿入し、プラスミドベクターpCR2.1pp−reg.1を得た。次に、野生型PP01ファージのゲノムから以下のプライマー:
配列9:5’-CGGGGTACCGAAGAAATCTTTAAACTTTATTATCTG-3’(配列番号9)(下線はKpnIの制限部位を示す);
配列10:5’-GGACTAGTTCTCCTTTTATTTAAATTACATGAC-3’(配列番号10)(下線はSpeIの制限部位を示す)
を用いてg56遺伝子を増幅した。この断片をKpnI/SpeI消化後、チトクロームcペルオキシダーゼ遺伝子が組み込まれた上記ベクターのKpnI/SpeI部位に挿入した(pCR2.1pp−reg.1−reg.2ベクター)。続いて、チトクロームcペルオキシダーゼ遺伝子を以下のプライマー:
配列11:5’-GGACTAGTATGACACCGCTCGTTCATGT-3’(配列番号11)(下線はSpeIの制限部位を示す);
配列12:5’-TTCCGGAATTCCTATAAACCTTGTTCCTC-3’(配列番号12)(下線はEcoRIの制限部位を示す)
を用いて増幅し、SpeI/EcoRI消化後、上記pCR2.1pp−reg.1−reg.2ベクターのSpeI/EcoRI部位に挿入し、pCR2.1pp−reg.1−ce−reg.2ベクターを得た。
(2)標識酵素遺伝子を有する組換えPP01ファージ(PP01ce)の構築
上記で作製したpCR2.1pp−reg.1−ce−reg.2ベクターを用いて、ペルオキシダーゼ遺伝子を相同組換えにより野生型PP01ファージのゲノムに導入した。具体的には、Gene Pulser II(Bio−Rad,CA,USA)を用いたエレクトロポレーション(1.8kV、25μF、200Ω)によって、pCR2.1pp−reg.1−ce−reg.2ベクターを大腸菌K12株にトランスフェクトし、形質転換体を得た。この形質転換体を50mg/Lアンピシリン含有のLB培地中で培養した。OD600が0.1に達したときに、野生型PP01ファージを感染多重度(M.O.I)を0.1にして添加した。37℃、120rpmにて4時間インキュベーション後、培養物を0.45μmの濾過フィルター(Advantec,Tokyo,Japan)を通過させて濾過し、ファージ溶解物を得た。このファージ溶解物をSMバッファー(100mMのNaCl、10mMのMgSO、0.01%ゼラチン、50mMのTris−HCl、pH=7.5)で希釈した。希釈された溶解物を0.7%寒天中でK12株と混合し、LBプレートに重ねた。標識酵素遺伝子を有する組換えT4ファージ(T4ce)は、ジゴキシゲニン(DIG)標識プローブを用いたプラークハイブリダイゼーションによって単離した。プラークハイブリダイゼーションは、フィルターハイブリダイゼーション用のDIGアプリケーションマニュアル(Roche,Upper Bavaria,Germany)に従って行われた。DIG標識されたceプローブを用いたハイブリダイゼーションを37℃にて6時間行った。NBT/BCIPストック溶液(Rhoche,Upper Bavaria,Germany)を用いた発色アッセイにより、プローブ−標的ハイブリッドを検出した。また、得られた組換えPP01ファージ(T4ce)のゲノム中に所望の標識酵素遺伝子が組み込まれていることを確認するために、上記(1)において利用した制限部位に対応する制限酵素によりPP01ceファージを制限処理し、プライマー(配列7〜12)を用いて対応する遺伝子断片の増幅をおこない、アガロースゲル上で遺伝子断片を分離後、検出されたバンドを野生型PP01のバンドと比較することによって、標識酵素遺伝子を確認した(データ示さず)。
(3)PP01ceファージによる大腸菌O157:H7の検出
PP01ceファージによって生成される標識酵素の活性を評価した。OD600が0.5(約1×10CFU/mL)に達するまで、大腸菌O157:H7を37℃にて培養した。次に、この培養物を2つに分注し、5.0のM.O.IでPP01ceファージ又は野生型PP01ファージ溶液のいずれかと混合した。これらの培養物を37℃にて1時間培養し、0.45μmのメンブレンフィルターを通過させ、濾過物を得た。次に、過酸化水素水(最終濃度360μM)及びチトクロームcペルオキシダーゼに対する発色基質としてウマ心臓由来のチトクロームc(Sigma-Aldrichから入手)の溶液(最終濃度19μM)を上記培養物に添加し、色の変化を観察した。チトクロームcは、ペルオキシダーゼと反応して赤褐色が退色する。反応溶液を分光光度計で測定し、550nmでの吸光度の変化を経時的に観察した(図2A)。吸光度の変化は、T4ceファージ(黒四角)及び野生型PP01ファージ(黒丸)のいずれの添加系においても見られたが、標識酵素が遺伝子導入されたPP01ceファージを用いた反応系において、大腸菌O157:H7を顕著に検出することができた。また、これらの反応溶液の色の差は肉眼で容易に観察することができた(図2B)。
実施例3:人工的に汚染させた果汁飲料における大腸菌の検出
市販の果汁飲料に非病原性大腸菌O157:H7を植菌し、果汁飲料中の大腸菌を実施例2で作製した遺伝子組換えウイルスによって検出できることを実証した。具体的には、市販のリンゴジュース0.425mLに、大腸菌O157:H7培養液(約1×10CFU/mL)を2.575mL添加し、混合した。次に、この果汁飲料を3つに分注し、そのうち2つには、5.0のM.O.IでPP01ceファージ及び野生型PP01ファージ溶液のいずれかと混合した。3つ目の果汁飲料は、ファージを添加しないブランクとして使用した。これらの果汁飲料を37℃にて1時間培養し、0.45μmのメンブレンフィルターを通過させ、濾過物を得た。次に、実施例2と同様に、過酸化水素水(950μM)及びチトクロームcペルオキシダーゼに対する基質としてウマ心臓由来のチトクロームcの溶液を上記培養物に添加し、色の変化を観察した。大腸菌を含む果汁飲料では赤褐色が退色し、基質の添加から約1分で、対照と比較して顕著な差が肉眼で観察され、550nmでの吸光度を測定した場合にも上記の色の差が顕著に現れた(図3)。このように、本発明の遺伝子組換えウイルスを用いた場合、飲料又は食品が微生物によって汚染されているかどうかを数分〜1時間以内で検出することができることが示唆された。

Claims (8)

  1. 試料中の微生物を検出する方法であって、該方法は、
    (a)微生物に特異的に結合し、該微生物内で増殖するウイルスに標識酵素を発現する遺伝子を導入する工程;
    (b)試料と上記(a)で得られたウイルスを混合し、該試料中の微生物に該ウイルスを感染させる工程;
    (c)該微生物内で、該遺伝子産物である標識酵素を産生する工程;
    (d)該標識酵素に対する基質を添加する工程;及び
    (e)基質に基づく色の変化により、試料中に該微生物が存在するか否かを検出する工程
    を含む方法。
  2. 前記微生物が、エスケリッチア属(Escherichia)、クロストリジウム属(Clostridium)、リステリア属(Listeria)、カンピロバクター属(Campylobactor)、サルモネラ属(Salmonella)、赤痢菌属(Shigella)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、ビブリオ属(Vibrio)、エルジニア属(Yersinia)、プレシモナス属(Plesimonas)、バチルス属(Bacilli)、及びアエロモナス属(Aeromonouos)からなる群から少なくとも1種選択される細菌;ストレプトミセス属(Streptomyces)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ビフィオバクテリウム属(Bifidobacterium)、及びサーモビフィダ(Thermobifida)属からなる群から少なくとも1種選択される放線菌;クルイベロミシス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、及びロドトルラ属(Rhodotorula)からなる群から少なくとも1種選択される酵母;ビソクラミス属(Byssochlamys)、フサリウム属(Fusarium)、ゲオトリクム属(Geotricum)、ペニシリウム属(Penicillium)、リゾクトニア属(rhizoctonia)、及びスコプラリオプシス属からなる群から少なくとも1種選択されるカビ類;クロレラ、スピルリナ、アナベナ属(Anabaena)、ミクロキスティス(Microcystis)、及びアレクランドリウム属(Alexandrium)からなる群から少なくとも1種選択される藻類;又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物が、大腸菌、サルモネラ菌、及び/又は赤痢菌である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記ウイルスが、T4、PP01、P2、T2、T7、λ、MV−L2、PRD1、PM2、MV−L1、φX174、fd、MS2、φ6、FELIX01、及び/又はG47を含む群又はそれらからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記標識酵素が、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素及び/又はリガーゼである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記標識酵素が、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ、グリコシダーゼ、及び/又はムタロターゼである、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において使用される、試料中の微生物に特異的に結合し、該微生物内で増殖するウイルスを含む検出試薬であって、ここで、該ウイルスが、検出に使用される基質に対する標識酵素を発現する遺伝子が導入されている検出試薬。
  8. 請求項7に記載の検出試薬、標識酵素に対する基質、及び使用説明書を含む、試料中の微生物を検出するためのキット。
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