JP2015059388A - 段差被覆材及び段差構造 - Google Patents

Abstract

【課題】段差被覆材の上面被覆部に降った雨水等が立ち上がり面被覆部の下端まで流下するのを阻止し、立ち上がり面被覆部に筋状の水垂れ線が生じないように図った段差被覆材と、この段差被覆材で段差を被覆した段差構造を提供する。
【解決手段】段差の立ち上がり面２１とコーナー２２と上面２３をそれぞれ被覆する立ち上がり面被覆部１とコーナー被覆部２と上面被覆部３とを備えた略Ｌ字形状の段差被覆材１１であって、立ち上がり面被覆部１の前面に、段差被覆材の幅方向に連続する水受け凸条４を形成した構成の段差被覆材１１とする。段差構造は、段差被覆材１１で段差２０の立ち上がり面２１とコーナー２２と上面２３を被覆した構造とする。上面被覆部３に降った雨水等がコーナー被覆部２を経て立ち上がり面被覆部１に流下する途中で水受け凸条４によって受け止め、立ち上がり面被覆部１の下端まで流下し難くして水垂れ線の発生を防止する。
【選択図】図２

Description

本発明は段差被覆材及び段差構造に関し、更に詳しくは、段差の立ち上がり面を被覆する立ち上がり面被覆部に水垂れ線が生じないように改良した段差被覆材と、この段差被覆材で段差を被覆した段差構造に関する。

屋外などの雨が降りかかるところに存在する段差、例えば、屋外階段や、集合住宅のバルコニーの面台などにおいては、防滑性や美観の向上、昇降時や歩行時の防音、転倒時の怪我の防止などを目的として、合成樹脂製やゴム製の段差被覆材を段差の表面［段差の立ち上がり面からコーナーを経て上面（踏み面）に至るまでの面］に貼着することが盛んに行われている。これらの段差被覆材は、段差の上面（踏み面）を被覆する上面被覆部や、段差のコーナーを被覆するコーナー被覆部に、防滑性を向上させる凹凸の形成や表面処理が施され、安全性の向上に寄与している。

その一方で、段差被覆材の上面被覆部に降った雨水は、コーナー被覆部に形成された防滑用凹凸部分の凹部を通って、段差の立ち上がり面を被覆する段差被覆材の立ち上がり面被覆部を流れ落ちることになるため、この状況が継続すると、雨水に含まれる汚れやミネラル分が付着、固定化して、段差被覆材の立ち上がり面被覆部に筋状の水垂れ線が生じ、美観が損なわれるという問題があった。
また、段差被覆材のコーナー被覆部に防滑用の凹凸部分が形成されていなくても、コーナー被覆部から立ち上がり面被覆部に流れ落ちる雨水に所謂水道が形成されると、その部分に筋状の水垂れ線が発生するという問題があった。

このため、本出願人は、階段の踏み面部と段鼻部と蹴上げ部の一部もしくは全部にそれぞれ配設される水平部と屈曲部と前垂れ部とを有する略Ｌ字形状の床材であって、該床材の前垂れ部の表面に水平方向に連続する水切り突起を形成した階段用床材を提案した（特許文献１）。
この階段用床材は、水切り突起の先端から雨水が滴下するため、前垂れ部の水切り突起より下側部分に雨水が流れ落ちることがないものであるが、風の影響等をうけると、水切り突起の先端から滴下する雨水が前垂れ部の下側部分に掛かって、水垂れ線が発生する虞れがあった。

特開２００７−０５６５４９号公報

本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、段差被覆材の上面被覆部に降った雨水等が立ち上がり面被覆部の下端まで流下するのを阻止し、立ち上がり面被覆部に筋状の水垂れ線が生じないように図った段差被覆材と、この段差被覆材で段差を被覆した段差構造を提供することにある。

上記課題を解決するため、本発明に係る段差被覆材は、段差の立ち上がり面とコーナーと上面（踏み面）をそれぞれ被覆する立ち上がり面被覆部とコーナー被覆部と上面被覆部とを備えた略Ｌ字形状の段差被覆材であって、上記立ち上がり面被覆部の前面に、段差被覆材の幅方向に連続する水受け凸条が形成されていることを特徴とするものである。

本発明の段差被覆材においては、前記立ち上がり面被覆部の前面に、前記水受け凸条の上側に隣接して水保持凹溝が形成されていることが望ましい。
また、本発明の段差被覆材においては、前記コーナー被覆部に、溝下端が前記水受け凸条に臨む排水溝が形成されていることが望ましく、この排水溝の前記水受け凸条に臨む下端側が下広がり状に形成されていることが望ましい。
更に、本発明の段差被覆材においては、前記コーナー被覆部の表面に複数の隆起部が段差被覆材の幅方向に間隔をあけて形成され、これらの隆起部の相互間が前記排水溝になっており、前記水受け凸条の突出寸法がこれらの隆起部の隆起寸法よりも大きくなっていることが望ましい。
また、本発明の段差被覆材においては、前記水受け凸条の上側面の前端側に水保持堰が形成されていることが望ましい。

一方、本発明に係る段差構造は、上記の段差被覆材で、段差の立ち上がり面とコーナーと上面を被覆したことを特徴とするものである。

本発明に係る段差被覆材のように、立ち上がり面被覆部の前面に、段差被覆材の幅方向に連続する水受け凸条が形成されていると、上面被覆部に降った雨水や掃除に使用した水がコーナー被覆部を経て立ち上がり面被覆部を流下する途中で水受け凸条によって受け止められ、水受け凸条の上側面を伝いながら該凸条の端部まで移行して下方に流れ落ちる。従って、雨水等が段差被覆材の立ち上がり面被覆部の下端まで流下し難いので、水垂れ線が生じ難くなり、美観を損なう虞れがほぼ解消される。
通常、建物の雨掛り部分には、降った雨水などを排水するため、水平に対して０．５／１００〜２／１００程度の水勾配が設けられることが多く、また、このように積極的に水勾配を設けない場合であっても施工誤差等によって自然勾配が形成されることになる。このような状況のもと、水受け凸条によって受け止められた水は、水下側にある段差の端部まで運ばれるのである。また、勾配が小さく水の搬送能力が不足しているような場合であっても、若干なりとも水下側に運ばれてから流下するので、同じ個所を水が流下することがなく、筋状の水垂れ線の発生が緩和される。

そして、本発明の段差被覆材において、立ち上がり面被覆部の前面に、水受け凸条の上側に隣接して水保持凹溝が形成されているものは、水受け凸条によって受け止められた雨水等が、水受け凸条の上側面を伝って端部から流れ落ちるだけでなく、水保持凹溝にも流入して一時的に保持されるため、雨水等が段差被覆材の立ち上がり面被覆部の下端まで一層流下し難くなり、水垂れ線の防止効果がより顕著になる。

また、本発明の段差被覆材において、コーナー被覆部に、溝下端が前記水受け凸条に臨む排水溝が形成されているものは、上面被覆部からコーナー被覆部を経て立ち上がり面被覆部へ流れる雨水等が排水溝に集水されて整流され、この整流された雨水等が水受け凸条によって受け止められることになるので、水受け凸条による雨水等の受け止め作用がより的確に行われるようになる。
そして、この排水溝の前記水受け凸条に臨む下端側が下広がり状に形成されているものは、排水溝を流れる雨水等が下広がり状の下端側で両側に広がって水受け凸条に受け止められ、該凸条の端部に向かってスムーズに移行することになるので、水受け凸条による雨水等の受け止め作用と移行作用が向上する利点がある。

更に、本発明の段差被覆材において、コーナー被覆部の表面に複数の隆起部が段差被覆材の幅方向に間隔をあけて形成され、これらの隆起部の相互間が前記排水溝になっており、水受け凸条の突出寸法がこれらの隆起部の隆起寸法よりも大きくなっているものは、隆起部相互間の排水溝を流下する雨水等が、隆起部よりも前方に大きく突き出す水受け凸条によって受け止められるので、水受け凸条による雨水等の受け止め作用がより的確に発揮されることになる。

また、本発明の段差被覆材において、水受け凸条の上側面の前端側に水保持堰が形成されているものは、水受け凸条で受け止めた雨水等が該凸条の上側面の前端から流れ落ちないように水保持堰で堰き止めて保持しながら、該凸条の端部まで移行させて流落させることができる。

そして、本発明に係る段差構造のように、上述した本発明の段差被覆材で段差の立ち上がり面とコーナーと上面を被覆したものは、段差被覆材の上面被覆部に降った雨水等がコーナー被覆部を経て立ち上がり面被覆部を流下する途中で水受け凸条によって受け止められ、水受け凸条の上側面を伝いながら該凸条の端部まで移行して下方に流れ落ちるため、雨水等が段差被覆材の立ち上がり面被覆部の下端まで流下し難くなり、従って、段差被覆材の立ち上がり面被覆部や段差の立ち上がり面の露出部分に水垂れ線が生じ難くなるので、美観が損なわれる心配をほぼ解消することができる。

本発明の一実施形態に係る段差被覆材の斜視図である。 同段差被覆材の断面図である。 図２の円で囲んだ部分の拡大図である。 同段差被覆材の部分正面図である。 排水溝の形態が異なる段差被覆材の部分正面図である。 排水溝の形態が更に異なる段差被覆材の部分正面図である。 （ａ）、（ｂ）はいずれも水受け凸条の形態が異なる段差被覆材の部分断面図である。 本発明の他の実施形態に係る段差被覆材の断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る段差被覆材の断面図である。 本発明の一実施形態に係る段差構造の断面図である。

以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。

図１は本発明の一実施形態に係る段差被覆材の斜視図、図２は同段差被覆材の断面図、図３は図２の円で囲んだ部分の拡大図、図４は同段差被覆材の部分正面図、図５は排水溝の形態が異なる段差被覆材の部分正面図、図６は排水溝の形態が更に異なる段差被覆材の部分正面図、図７の（ａ）、（ｂ）はいずれも水受け凸条の形態が異なる段差被覆材の部分断面図、図８は本発明の他の実施形態に係る段差被覆材の断面図、図９は本発明の更に他の実施形態に係る段差被覆材の断面図、図１０は本発明の一実施形態に係る段差構造の断面図である。

図１〜図４に例示の段差被覆材１１は、図２に示すように、段差２０の立ち上がり面２１を被覆する立ち上がり面被覆部１と、段差２０のコーナー２２を被覆するＬ形に屈曲したコーナー被覆部２と、段差２０の上面２３（踏み面）を被覆する上面被覆部３とを備えた略Ｌ字形状の段差被覆材であって、この実施形態のものは、塩化ビニル樹脂やオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂で成形されている。段差被覆材１１の材質は熱可塑性樹脂に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、ゴム、金属、木材などで製造してもよい。

この段差被覆材１１の立ち上がり面被覆部１の前面には、段差被覆材１１の幅方向（左右方向）に連続する水受け凸条４が形成されている。この水受け凸条４は、段差被覆材１１の上面被覆部３からコーナー被覆部２を経て立ち上がり面被覆部１に流下する雨水等を受け止めるもので、この実施形態では、立ち上がり面被覆部１の前面から略直角に前方に向かって突出する方形の断面形状を備えた凸条とされており、その平坦な上側面４ａが水受け面になっている。

この水受け凸条４の突出寸法Ａ（図３に示す立ち上がり面被覆部１の前面から該凸条４の前端までの寸法）は２〜１０ｍｍであることが好ましく、該凸条４の幅寸法Ｂ（図３に示す該凸条４の前端面の上下寸法）は２〜２０ｍｍであることが好ましい。水受け凸条４の突出寸法Ａが２〜１０ｍｍの範囲にあると、その上側面４ａで雨水等を適切に受け、上側面４ａを伝わせて雨水等を水受け凸条４の端部まで移行させるこができる。突出寸法Ａが２ｍｍより小さくなると、雨水等を適切に受けて水受け凸条４の端部まで移行させることが難しくなり、１０ｍｍよりも大きくなると、歩行時の邪魔になったり、汚れが水受け凸条４の上側面４ａに堆積する懸念が生じる。

水受け凸条４を形成する高さ位置は、上面被覆部３の表面から５〜３０ｍｍ下方の位置であることが好ましく、かかる高さ位置に水受け凸条４を形成すると、上面被覆部３からコーナー被覆部２を経て立ち上がり面被覆部１に流下する雨水等の流下速度が遅いので、流下した雨水等を水受け凸条４の上側面４ａで的確に受け止めることができる。

水受け凸条４は、この実施形態のように、段差被覆材１１の幅方向の全長さに亘って連続していることが好ましいが、ある程度の長さ、具体的には３０ｃｍ〜１ｍ程度の長さで連続し、それらの連続する水受け凸条の相互間に切れ目部分（水受け凸部が存在しない部分）があってもよい。このような場合は、雨水等が切れ目部分から立ち上がり面被覆部１の下部に流下するので、該下部に水垂れ線が部分的に生じる虞れがあるものの、立ち上がり面被覆部１の全域で水垂れ線が生じることはないので、美観を保つことができる。
但し、後述するように、溝下端が水受け凸条４に臨む排水溝６がコーナー被覆部２に形成される場合は、水受け凸条４の上記切れ目部分が排水溝６の下方に位置しないように、切れ目部分の位置をずらせて、排水溝６から流下する雨水等が水受け凸条４で確実に受け止められるようにすることが重要である。

水受け凸条４の材質は、段差被覆材１１の材質と同じものでもよいし、異なるものでよい。そして、この水受け凸条４は、段差被覆材１１と一体に形成してもよいし、別個に形成して例えば接着、粘着、溶着、溶接等の接合手段や、係合、嵌合などの機械的手段で結合させてもよい。但し、生産性や耐久性の観点から、段差被覆材１１と同じ材料で一体に形成することが望ましい。

また、この実施形態では、水受け凸条４の上側面４ａを平坦な水平面に形成しているが、図７（ａ）に示すように、水受け凸条４の上側面４ａの前端側に水保持堰４ｂを水受け凸条４の全長に亘って形成してもよいし、図７（ｂ）に示すように、水受け凸条４の上側面４ａを前端に近づくほど高くなるように傾斜させ、この傾斜した上側面４ａの前端部を水保持堰４ｂとしてもよい。
このような水保持堰４ｂが形成されていると、水受け凸条４で受け止めた雨水等を該凸条４の上側面４ａの前端から流れ落ちないように水保持堰４ｂで堰き止めて保持しながら、該凸条４ａの端部まで移行させて流落させることができる利点がある。
なお、水保持堰４ｂの好ましい高さ（水受け凸条４の上側面４ａの最深部から水保持堰４ｂの上端まで寸法）は、３〜１０ｍｍである。

この実施形態における水受け凸条４は、段差被覆材１１の幅方向に水平となるように、換言すれば上面被覆部３と平行になるように、立ち上がり面被覆部１の前面に形成されているが、水受け凸条４の上側面４ａで受け止めた雨水等が該凸条４の端部に向かってスムーズに移行するように、段差被覆材１１の幅方向のいずれか一端側から他端側に向かって、或いは、幅方向の中央部から両端に向かって、若干の流れ勾配（０．５／１００〜３／１００程度の流れ勾配）を付けて水受け凸条４を形成してもよい。この流れ勾配は、水受け凸条４それ自体を若干傾斜させて付けるようにしてもよいし、水受け凸条４の上側面４ａのみを若干傾斜させて付けるようにしてもよい。

もっとも、この実施形態のように水受け凸条４が水平に形成されていても、前記したように、段差２０の上面２３が施工時の誤差等で幅方向に僅かに傾斜している場合が多く、そのような段差２０を段差被覆材１１で被覆すると水受け凸条４に僅かな流れ勾配が自然に付くので、水受け凸条４で受け止められた雨水等は該凸条４の水下側ないし端部に向かってスムーズに移行する。

この段差被覆材１１のＬ形に屈曲したコーナー被覆部２の表面には、図１，図２，図４に示すように、Ｌ形に屈曲した隆起部５が段差被覆材１１の幅方向に間隔をあけて複数形成されており、これらの隆起部５の下端部と後端部は、立ち上がり面被覆部１と上面被覆部３の方に延長して設けられている。そして、これらの隆起部５の相互間には、溝下端が水受け凸条４に臨む排水溝６が形成されており、図３に示すように、水受け凸条４の突出寸法Ａは隆起部５の隆起寸法Ｃよりも大きく設定されている。このため、上面被覆部３からコーナー被覆部２を経て立ち上がり面被覆部１へ流れる雨水等は、上記排水溝６に集水されて整流され、整流された雨水等が水受け凸条４で受け止められるので、水受け凸条４による雨水等の受け止め作用がより的確に行われるようになっている。

この隆起部５の相互間に形成される排水溝６の深さ、換言すれば、隆起部５の高さは、２〜１０ｍｍであることが好ましく、排水溝６の幅は、２〜１０ｍｍであることが好ましい。この程度の深さと幅があれば、雨水等を両側に溢れないように集水して適切に整流しながら流下させることができる。また、排水溝６の好ましいピッチ間隔は３０〜１００ｍｍであり、かかるピッチ間隔となるように隆起部５の横幅寸法を設定することが好ましい。
なお、排水溝６の深さは、隆起部相互間の立ち上がり面被覆部１、コーナー被覆部２、上面被覆部１３のそれぞれの表面を凹ませて更に深くしてもよい。

この排水溝６の前記水受け凸条４に臨む下端側は、図４に示すように、隣り合う隆起部５，５の下端角部にアールＲ，Ｒを設けることで、下広がり状に形成されている。このように排水溝６の下端側が下広がり状に形成されていると、排水溝６を流下する雨水等が下広がり状の下端側で両側に広がって水受け凸条４に受け止められ、該凸条４の端部に向かってスムーズに移行することになるので、水受け凸条４による雨水等の受け止め作用と移行作用が向上する利点がある。上記Ｒの寸法は、３〜１０ｍｍとすることが好ましい。

また、図５に示すように、隣り合う隆起部５，５の対向する側辺５ａ，５ａを斜めに切り欠くことで、排水溝６の下端側を下広がり状に形成してもよく、更に、図６に示すように、下広がり状に形成された排水溝６の下端側に、二等辺三角形の分水用凸部７を形成してもよい。このような分水用凸部７を形成すると、排水溝６を流下する雨水等が分水用凸部７で両側に分水されて水受け凸条４に受け止められ、該凸条４の上側面４ａを両側（左右）に分かれてスムーズに移行することになるので、水受け凸条４による雨水等の受け止め作用と移行作用が更に向上するようになる。なお、隆起部５の側辺５ａの好ましい切り欠き寸法は、３〜１０ｍｍである。

立ち上がり面被覆部１の前面には、水受け凸条４の上側に隣接して水保持凹溝８が形成されており、この実施形態では、水受け凸条４と隆起部５との間の凹部が水保持凹溝８となっている。このような水保持凹溝８が形成されていると、水受け凸条４によって受け止められた雨水等が、水受け凸条４の上側面４ａを伝って端部から流れ落ちるだけでなく、水保持凹溝８にも流入して一時的に保持されるため、雨水等が立ち上がり面被覆部１の下端まで一層流下し難くなり、水垂れ線の防止効果がより顕著になる。

水保持凹溝８は、図９に示すように、立ち上がり面被覆部１を凹設することによって水受け凸条４の上側に隣接して形成してもよく、また、水受け凸条４を立ち上がり面被覆部１の上端部に形成する場合には、コーナー被覆部２の下端部を凹設することによって水受け凸条４の上側に隣接して水保持凹溝８を形成してもよい。更に、水受け凸条４を隆起部５の下端に接して立ち上がり面被覆部１の前面に形成する場合は、隆起部５の下端部を凹設することによって水保持凹溝８を形成してもよい。このように立ち上がり面被覆部１や、コーナー被覆部２の下端部や、隆起部５の下端部を凹設して形成される水保持凹溝８の断面形状は、図９に示すような半円形でもよいし、方形でもよい。

水保持凹溝８の好ましい幅寸法（上下方向の幅寸法）は２〜５ｍｍであり、好ましい深さ寸法は２〜５ｍｍである。この程度の幅寸法と深さ寸法を有する水保持凹溝８を形成すると、水受け凸条４で受け止めた雨水等を充分保持して、立ち上がり面被覆部１の下端まで雨水等が流下するのをほぼ確実に阻止できるため、水垂れ線の防止効果が一層顕著になる。

Ｌ形に屈曲した各隆起部５の上面被覆部３側に延びる水平部の表面には、図１，図２に示すように、段差被覆材１１の幅方向に細長い複数の防滑用線状凸部９が互いに平行に形成されている。そして、上面被覆部３にも、段差被覆材１１の幅方向に細長い互いに平行な複数の防滑用線状凸部９を表面に形成した矩形凸部１０が、それぞれの隆起部５の後方に位置して平行に複数形成されている。従って、この段差被覆材１１で被覆された段差２０を昇降又は歩行する際には、上記の防滑用線状凸部９によって良好な滑り止め作用が発揮されるので、滑ったり転んだりする心配が激減し、安全性が大幅に向上する。
なお、段差被覆材１１の上面被覆部３やコーナー被覆部２の表面に、防滑用粒子を埋設したり、防滑剤を塗布するなどの防滑処理を施して、安全性を高めるようにしてもよい。

この実施形態の段差被覆材１１では、立ち上がり面被覆部１の前面に水受け凸条４を１条だけ形成しているが、場合によっては、複数の水受け凸条４を上下平行に形成してもよい。その場合は、上側の水受け凸条４の突出寸法Ａよりも下側の水受け凸条４の突出寸法Ａを大きくし、先ず上側の水受け凸条４で雨水等を受け止め、受け止めきれずに上側の水受け凸条４の前面から溢れ落ちる雨水等を下側の水受け凸条４で受け止めるようにすることが好ましい。このように二段階で雨水等を受け止めるようにすると、水垂れ線の防止効果が更に顕著になる。

前記の隆起部５、排水溝６、水保持凹溝８、防滑用線状凸部９、矩形凸部１０などは好ましくは形成されるものであるから、省略しても勿論よい。
図８に示す段差被覆材１２は、そのように隆起部、排水溝、水保持凹溝、防滑用線状凸部、矩形凸部などを全て省略し、立ち上がり面被覆部１とコーナー被覆部２と上面被覆部３とを備えた略Ｌ字形状の段差被覆材の該立ち上がり面被覆部１の前面に、段差被覆材１２の幅方向に連続する水受け凸条４を１条形成しただけの最も簡素な構成の段差被覆材である。

また、図９に示す段差被覆材１３は、立ち上がり面被覆部１とコーナー被覆部２と上面被覆部３とを備えた略Ｌ字形状の段差被覆材の該立ち上がり面被覆部１の前面に、段差被覆材１２の幅方向に連続する水受け凸条４を形成すると共に、半円形の断面形状を有する水保持凹溝８を水受け凸条４の上側に隣接して形成したものであって、これ以外の隆起部などを全て省略した簡素な構成の段差被覆材である。

以上のような段差被覆材１１，１２，１３は、使用する材料に応じて種々の製造手段を採用して製造することが可能であり、例えば、熱可塑性樹脂を用いて製造する場合は、押出成形してロールでエンボス成形する押出エンボス成形、粉体やペレットを積層した後に加熱・プレスする熱圧成形、射出成形など、様々な公知の手段を採用して製造することができる。

図１０は本発明の一実施形態に係る段差構造の断面図であって、この段差構造は、前述した本発明の段差被覆材１１を使用し、この段差被覆材１１のコーナー被覆部２を段差２０のコーナー２２に位置合わせすると共に、接着剤や粘着剤や両面粘着テープなどの貼着剤３０を介して、段差２０の立ち上がり面２１とコーナー２２と上面（踏み面）２３を、段差被覆材１１の立ち上がり面被覆部１とコーナー被覆部２と上面被覆部３で被覆、貼着したものである。
なお、段差被覆材１１については既に詳細に説明したので、図１０において各部に前記と同じ符合を付すだけにとどめ、重複する説明は省略する。

この本発明の段差構造のように、段差２０の立ち上がり面２１とコーナー２２と上面２３を本発明の段差被覆材１１で被覆すると、段差被覆材１１の上面被覆部３に降った雨水等がコーナー被覆部２を経て立ち上がり面被覆部１に流下する際に、段差被覆材１１の排水溝６に集水されて整流され、この整流された雨水等が水受け凸条４で受け止められて、水受け凸条４の上側面４ａを伝いながら該凸条４の端部まで移行して段差２０の下方に流れ落ちると共に、水受け凸条４で受け止められた雨水の一部が水保持凹溝８に一時的に保持されるため、雨水等が段差被覆材１１の立ち上がり面被覆部１の下端まで流下し難くなる。従って、段差被覆材１１の立ち上がり面被覆部１や、段差２０の立ち上がり面２１の露出部分に水垂れ線が生じ難くなるので、美観が損なわれる心配をほぼ解消することができる。また、防滑用線状凸部９によって防滑効果も発揮されるので、転倒の虞れが激減して安全性も向上する。

１ 立ち上がり面被覆部
２ コーナー被覆部
３ 上面被覆部
４ 水受け凸条
４ａ 水受け凸条の上側面
４ｂ 水保持堰
５ 隆起部
６ 排水溝
Ｒ アール
７ 分水用凸部
８ 水保持凹溝
９ 防滑用線状凸部
１１，１２，１３ 段差被覆材
２０ 段差
２１ 立ち上がり面
２２ コーナー
２３ 上面（踏み面）
３０ 貼着剤
Ａ 水受け凸条の突出寸法
Ｃ 隆起部の隆起寸法

Claims (7)

1. 段差の立ち上がり面とコーナーと上面をそれぞれ被覆する立ち上がり面被覆部とコーナー被覆部と上面被覆部とを備えた略Ｌ字形状の段差被覆材であって、
   上記立ち上がり面被覆部の前面に、段差被覆材の幅方向に連続する水受け凸条が形成されていることを特徴とする段差被覆材。
2. 前記立ち上がり面被覆部の前面に、前記水受け凸条の上側に隣接して水保持凹溝が形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の段差被覆材。
3. 前記コーナー被覆部に、溝下端が前記水受け凸条に臨む排水溝が形成されていることを特徴とする、請求項１又は請求項２に記載の段差被覆材。
4. 前記排水溝の前記水受け凸条に臨む下端側が下広がり状に形成されていることを特徴とする、請求項３に記載の段差被覆材。
5. 前記コーナー被覆部の表面に複数の隆起部が段差被覆材の幅方向に間隔をあけて形成され、これらの隆起部の相互間が前記排水溝になっており、前記水受け凸条の突出寸法がこれらの隆起部の隆起寸法よりも大きくなっていることを特徴とする、請求項３又は請求項４に記載の段差被覆材。
6. 前記水受け凸条の上側面の前端側に水保持堰が形成されていることを特徴とする、請求項１ないし請求項５のいずれかに記載の段差被覆材。
7. 請求項１ないし請求項６のいずれかに記載の段差被覆材で、段差の立ち上がり面とコーナーと上面を被覆したことを特徴とする段差構造。

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