JP2015059336A - コンクリート構造物の補修工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリートの再アルカリ剤を深くまで浸透させて中性化の進行を抑制するのみならず、浸透した後の亀裂をシリカあるいは樹脂の固結物で充填して水密性を付与し、さらに、コンクリート表面並びに割れ目を強固に被覆することで空気中のCO2や酸性雨が再度侵入することを防止するコンクリート構造物の補修工法、その急速施工法による劣化したコンクリートの補修工法、コンクリートの劣化予防法、並びに、急速施工システムを提供する。【解決手段】アルカリ液を含むコンクリート処理剤をコンクリート構造物の表面から浸透させて、劣化したコンクリートのアルカリ化を行うとともに、コンクリートの劣化を防止するコンクリート構造物の補修工法である。【選択図】なし

Description

本発明は劣化したコンクリート構造物の補修工法またはコンクリート構造物の劣化防止工法に関し、主として老朽化したコンクリートの再アルカリ化、水密化、ひび割れ閉塞と補強、その急速補修工法に関する。
近年の交通量の増大、酸性雨、塩害、アルカリ骨材反応等により、コンクリート構造物の劣化、コンクリートの剥落や、鉄筋の腐食の現象が全国的に見られ、ひび割れが発生する危険な状態となっており、その劣化はコンクリート構造物の地上部のみならず地下部にも及び、その防止対策が大きな課題となっている。
これらの問題に対し、コンクリート表面に有機系の塗料を塗布したり、ネットにより防護するなどの対策が行われている。しかし、コンクリート表面に塗装を行うと、コンクリート面が被覆されるので、ひび割れの進行を観察しながら構造物の健全度を把握する点検ができず、また、有機系材料が紫外線により劣化するために耐久性が期待しにくいという難点がある。また、ネットによるコンクリート表面の防護は、内部のコンクリートの中性化防止には役立たず、景観を損なうという問題を有している。また、地下部における劣化に対しても何らの方策も見出されてないのが実情である。
このような点から、通常の維持管理コストの範囲内で、コンクリートの耐久性の低下を抑制するために、リチウム化合物等の強アルカリ化剤の使用によるコンクリートの再アルカリ化が提案されている。また、工法については、構造物を傷つけることなく、コンクリート表面を現状のままに維持しつつ施工を終えることが望まれている。コンクリートの処理に係る従来技術としては、例えば、特許文献1〜3に記載されているものがある。
特開2009−107910号公報 特許第4484872号公報 特開2006−138171号公報
しかしながら、特許文献3に記載された技術では、コンクリートの亀裂からアルカリ剤を浸透させてアルカリ化を図っても、その亀裂からの浸透性が不十分であり、あるいは浸透しても再溶出したり、また、浸透させた後も残存している亀裂から、経時的に空気中のCOや酸性雨、排気ガスが侵入して再度中性化が進行するという問題があった。また、特許文献1,2に記載されているようなコンクリート用の処理剤も提案されているが、いずれも十分なものではなかった。また、その施工法に関しても実用性が低いものであった。
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、コンクリートの再アルカリ剤を深くまで浸透させて中性化の進行を抑制するのみならず、浸透した後の亀裂をシリカあるいは樹脂の固結物で充填して水密性を付与し、さらに、コンクリート表面並びに割れ目を強固に被覆することで空気中のCOや酸性雨が再度侵入することを防止するコンクリート構造物の補修工法、その急速施工法による劣化したコンクリートの補修工法、コンクリートの劣化予防法、並びに、急速施工システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、かかるコンクリート処理剤を道路や鉄道に面した橋梁やトンネル等に適用する場合にも、急速施工が可能であって、かつ、適用箇所近傍の道路やトンネル、鉄道を常時交通に供用させることが可能な劣化したコンクリート構造物の補修工法あるいは劣化予防方法を提供することにある。
さらに、本発明のさらに他の目的は、処理剤の使用材料がアルカリ材料であるところから、作業性や環境性の点からも安全性にも優れたコンクリート構造物の補修工法を提案するものである。
コンクリート構造物の劣化は交通荷重や頻度の増大、酸性雨、CO、塩害、アルカリ骨材反応が原因となり、その結果、ひび割れの発生、コンクリートの中性化、鉄筋の腐蝕、強度の低下等の現象が生ずる。劣化コンクリートの補修の要否に関するひび割れ幅の限度については、表1に示す値が知られている((社)日本コンクリート工学協会)。
本発明者らは、劣化コンクリートの補修には以下の総合的な手法が必要と考えた。
(1)ひび割れに再アルカリ剤を深く浸透させる。
(2)ひび割れに止水効果を付与する。
(3)ひび割れに固化材を充填して、ひび割れをブロックし、かつ、コンクリートを補強する。
(4)ひび割れへの浸透や充填に対しては、ひび割れの状態に応じて毛細管浸透や注入法を適用する。
(5)コンクリート表面を稠密化してCOや酸性雨や酸性地下水等の浸入を防止し、中性化を予防する。
ところで、コンクリート表面の亀裂は大気面に近いため、かつ、浸透性が悪いため、再アルカリ剤や止水材や固結材は表面に流出してしまって内部に浸透しにくい。また、地下水面下においても、劣化したコンクリート部の、その亀裂はコンクリート表面に近いため、亀裂が小さい場合、アルカリ剤の浸透が困難である。また、周辺の地盤中へのアルカリ剤の流出は地盤上好ましくない。その亀裂の大きさは微細亀裂では浸透性が小さく、また、劣化が既に進行して浸透性の大きい場合もある。このため、極めて少量ずつ低圧で浸透、または注入しなくてはならない。しかも、微細亀裂への浸透可能性の問題もある。また、施工能率が極めて低く、さらに、交通下で行われる作業性の問題がある。
以上の多様な課題を解決するため、本発明者らは、(1)補修材料としてアルカリ液とアルカリ液保持材の併用と、(2)微細亀裂への浸透手法として毛細管浸透と低吐出、低圧注入と、(3)割れ目およびコンクリート表面の充填被覆、コンクリート表面から周辺部へのアルカリ剤の漏出防止のためのアルカリ固定方法と、(4)作業性として多点同時注入、または多点連続注入による長距離急速施工システムと、を一体化した劣化したコンクリートの急速補修工法を開発した。
ここで、本発明においてアルカリ液保持材とは、微細亀裂に浸透したアルカリ液を微細亀裂内に固定して表面への溶出を抑えるとともに亀裂を填充して不透水性化し、補強し、かつコンクリート表面を被覆して稠密化して再中性化を防ぐ材料をいう。具体例としては、シリカ溶液、水ガラス(アルカリ金属のケイ酸塩)、シリカコロイド、微粒子セメント、極超微粒子セメント、超微粒子球状シリカ、スラグ、ホワイトカーボン、シリカフューム、フライアッシュ、シラン系溶液、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂の高分子系等がある。
地盤中でのコンクリート中性化防止方法の例としては、コンクリート表面の地盤中側の周辺部にポゾラン系注入材(例えば、スラグ、シリカヒューム、フライアッシュ、超微粒子球状シリカ等、焼成工程を経たシリカ粉末でアルカリの存在のもとに水和反応により固結する)を注入して、被覆しあるいは固化して拘束状態にして、その注入物とコンクリートの表面との間にアルカリ剤を注入してコンクリート亀裂部に低圧浸透させる方法等である。この場合、亀裂に浸透しきれなかったアルカリ剤は周辺のポゾラン中に浸透して、ポゾランを固化して吸収され、地下水へのアルカリの溶出を防ぐとともにアルカリ雰囲気の中にコンクリートが存在するようにしてコンクリートの再アルカリ化を促進するとともに、再中性化を防ぎ、かつ、その固化によって周辺から酸性地下水や海水等の塩分の浸透を防ぐ効果がある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特に、アルカリ溶液とシリカ溶液の併用における両者の混合液が極めて特異な挙動を示すことを見出し、その特異な挙動を施工システムと一体化することによって、コンクリートの再アルカリ化と中性化防止を可能にする劣化したコンクリートの急速補修工法を完成した。ここで、アルカリ剤とは、Li、K、Na等のアルカリ金属の水酸化物、モル比が2.8よりも低い低モル比を有するアルカリ金属の珪酸塩水溶液、Li、K、Naの水酸化物と珪酸塩水溶液をいう。
図10aに、アルカリ溶液(第1液)とシリカコロイド溶液(第2液)とを混合した場合の処理液の挙動を示す(水酸化リチウムとシリカコロイドの混合物の粘度変化、ケース7)。本発明者は種々の研究の結果、第1液と第2液とを混合した場合、直ちにゲル化を生じ、粘度が増大して、流動性がほとんどなくなること、この混合物は、そのまま静置しておけば流動せず、即ち可塑状となり、そのまま空気中に放置しておけば水分が蒸発してキセロゲルとなってガラス状になり、コンクリートに付着して剥がれ難い層を形成し、コンクリートの表面を緻密化してCOの侵入を防ぎ中性化を防止することを見出し、その流動特性の変化とコンクリートの微細間隙への浸透固結特性を効果的に注入システムと一体化して劣化したコンクリートの補修に適用して、劣化したコンクリート構造物の急速補修工法を完成した。
地盤注入の場合のシリカ溶液は、地下水面下で土を固化させることが目的であるから、反応剤によってシリカ溶液が水分を保持したままゲル化することを要求され、一度ゲル化すると流動性がなくなり、浸透性はなくなり固化する。一方、本発明の処理液は混合後ゲル化し、攪拌すると急速に粘度が低下して、ゾルとなりゲル化を生じず、優れた浸透性を持続する(図10a)。
本発明の処理液は、地上部のコンクリートの補修においては、空気中でコンクリートの亀裂へ浸透せしめるのであるから、時間とともに処理液の水分が空気中に蒸発されるという条件下で用いられる。コンクリートの亀裂中に浸透したゾルは、気乾状態でそのまま放置すれば水分が蒸発してコンクリートに付着し、キセロゲルとなってガラス状になり、コンクリートに付着してコンクリート表面のCa分と結合し剥がれ難い層を形成して、コンクリートの表面を緻密化してCOの侵入を防ぎ、中性化を防止する。
ところで、本発明の処理液が表1に示すようなひび割れに浸透しなくては、上記課題は解決できない。このため、本発明者らは、図13に示す微小間隙試験装置を用いて、超微粒子セメントとコロイダルシリカの浸透可能限界の比較を行ったところ、超微粒子セメント(平均粒径3〜5μm)は0.22mm、コロイダルシリカ(平均粒径10〜20nm)は0.05mmであることが判った。また、金属シリカ液やイオン交換処理して得られた微小コロイダルシリカ(平均粒径1〜10nm)は0.03mmであった。これより、コロイダルシリカは表1に示す補修を必要としないひび割れ幅の防水からみた割れ目まで浸透することが可能で、ひび割れ幅としての耐久性からみた場合も、防水性からみた場合もコロイダルシリカは充分浸透性があることが判った。
また、アルカリ剤としてLiOHの5N液を用いた場合は、水と殆ど同じ浸透性を示し、0.03mm以下でも浸透した。また、コロイダルシリカとLiOHの混合液を攪拌混合したあとの流動性が大きくなったアルカリ液も、超微粒子セメントからコロイダルシリカの間の浸透性(0.22mm〜0.05mm)を得た。また、両液を混合した直後のゲル化物は、そのままでは浸透性は得られず流動しないことがわかった。
セメント系グラウトが浸透しない微細間隙をマイクロクラックということにすると(0.22mm以下)、マイクロクラック中に浸透したコロイダルシリカは雨水に対して極めて止水性に優れている。この止水性の長期持続性を示すために、過剰条件(厳しい条件下)における促進テストとして、固結豊浦砂中に水圧をかけた場合の例を図15(a)に、また同じくシリカの溶解量を図14に示す。また、シリカコロイドのゲル化物が収縮は無視できるほど小さいことを示すデータを図15(b)に示す。これより、コロイダルシリカのマイクロクラック中に浸透固結したゲル化物が優れた止水効果と耐久性を有し、コンクリートの鉄筋中への雨水等や酸性雨や酸性水や海水等の腐食性の地下水等の浸入を防ぐこと、および、その効果の持続性が判る。
以上の挙動を、中性化したコンクリートの再アルカリ化および中性化防止に適用できる(図10b,10c,10d)。アルカリ溶液(第1液)をコンクリートの中性化した領域に浸透させた上で、シリカ溶液(第2液)とアルカリ溶液(第1液)との混合物、または、シリカ溶液(第2液)で浸透または表面処理を行うと、アルカリ溶液(第1液)が亀裂や中性化層に浸透し、コンクリートを再アルカリ化し、さらに、亀裂部やコンクリート表面をシリカで被覆してコンクリート表面を緻密化する機能を生ずることが判った(図10b,10c)。
上記においては、第1液と第2液との混合物を攪拌して低粘度にして、亀裂や中性化層に浸透させてもよいし、同時にコンクリート表面に浸透させてもよい。この場合、処理液がコンクリート中に浸透して、再アルカリ化したのち処理液は気乾するにつれ流動性を失い、空気の接触面で固化して、内部に浸透した処理液の表面への流出を抑えるとともに、亀裂やコンクリートの表面で強固な被覆を形成する。また、アルカリ溶液を浸透させた上でシリカ溶液を被覆すると、アルカリ溶液とシリカ溶液との接触面でゲル化を生じて、アルカリ溶液の表面への流失を抑えることになる。すなわち、ブロック化機能を持つ(図10e,10f)。
また、図16に、シリカコロイドのゲルと超微粒子セメントの固結物とを重ねて、その影響を調べた状況を示す。いずれも、互いに悪影響を生じないことが判った。これより、シリカコロイドを浸透させた上に超微粒子セメントをブロックして亀裂充填しても、耐久性が得られることが判った。
図10m〜図10n、図10oは地中コンクリートの補修の例を示す。
図10m,10nでは、コンクリート構造物の周辺の接触面に沿ってポゾラン系グラウト、例えば、スラグ系、フライアッシュ系、または、スラグセメント系グラウトを注入して、コンクリート周辺部を固化する。ポゾランはアルカリによって潜在水硬性を刺激され、水和反応により結晶構造を生成し、高強度固結体を形成する。アルカリとしてはアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の低モル比珪酸塩、セメント、重曹、重炭酸ソーダ、アルカリ金属のアルミン酸ソーダ等のアルカリ性塩が有効である。
したがって、スラグ系グラウト等を用いてコンクリート構造物に接する注入壁体を作った後、コンクリートとスラグ系グラウトの注入体との境界面に、上記アルカリ剤を注入すれば、周辺のスラグ系グラウトの固結物による拘束効果によって、アルカリ剤はコンクリートの微細亀裂に浸透することになる。また、微細亀裂に浸透しきれなかったアルカリ剤は、スラグ系グラウトに浸入してスラグの水和反応を促進させて吸収されて、周辺環境へアルカリの拡散を防ぐことができる。
図10oは、トンネルの補修の例の断面図を示す。トンネル内から削孔して注入孔を通し、裏込め材を注入して、大きな空洞を充填すると共に止水する。その上で空洞充填層とコンクリート構造物との境界に本処理液を注入すると、アルカリ剤はコンクリート中空部の方向の亀裂部に浸透して再アルカリ化する。また、酸性地下水や海水の浸入による再中性化を防ぐことができる。もちろん、トンネル内側におけるコンクリートの補修は、前述したように行えばよい。
上記において、本処理材の注入はアルカリ剤の注入後、シリカ溶液を注入してもよいし、両者の混合液を注入してもよい。
また、本発明は、このようなコンクリート処理剤が道路や鉄道に面した橋梁やトンネル等に適用されるところから、急速施工が可能で、かつ、道路等の交通が常時供用されることができる施工法を提供するものである。さらに、使用材料がアルカリ材料で用いられるところから、作業性や環境からも安全性にも優れた施工法を提案するものである。
アルカリ溶液とシリカ溶液とを混合するとゲル化して流動性がなくなるという特性から、コンクリートの補修工事において、天端や垂直面の補修に際しアルカリ溶液のみを浸透させた後、重力で表面に漏出してくる現象をこのゲル化物で被覆することにより、中性化領域にアルカリ剤を保持して再アルカリ化することができる(図10a〜10d)。
本発明におけるアルカリ溶液とシリカ溶液との混合物は、攪拌すると低粘度化して流動性を生じ、優れた浸透性を得るので、コンクリート中性化層に浸透させることができる(後述の実施例を参照)。
その上で、シリカ溶液とアルカリ溶液との混合液でコンクリート表面、または、攪拌液を浸透させた後の亀裂を被覆することにより、再アルカリ化と中性化防止とを行うことができる。さらに、その後に、注入孔をセメントやエポキシ樹脂、フッ素系、アクリル系、シラン系、シロキサン系、シラン系オリゴマー等の樹脂系固化材や撥水材(表2参照)でブロックしてもよい(図10d)。
また、アルカリ溶液とシリカ溶液は、アルカリ溶液の上にシリカ溶液を接触しただけでゲル化して流動性を失い、乾燥に伴いコンクリート表面に固着して強固な被覆層を形成する。このため、アルカリ溶液をコンクリートに浸透させた上からシリカ溶液で被覆してもよいし、アルカリ溶液とシリカ溶液との混合攪拌液を浸透させた上で、シリカ溶液で被覆してもよい(図10e,10f)。
また、この混合攪拌液をコンクリート表面や亀裂に浸透させておけば、表面の水分が蒸発したあと、コンクリート表面に強固な被覆が形成されてCOによる中性化を予防できる。なお、コンクリート表面にシリカコロイドのみや水ガラスのみを被覆した場合は、気乾状態になると剥がれてしまい、コンクリートと長期にわたって固着しない。しかし、アルカリ溶液の存在下ではコンクリート表面が活性化されてコンクリート表面のカルシウム分がシリカ分と反応してコンクリート表面に珪酸カルシウムの強固な被覆ができるためと思われる。
また、シリカ溶液としてシリカコロイドを用いた場合、水ガラスよりシリカコロイドの粒径(1〜5nm,5〜20nm)が大きく、その固化物の構造が強固になるものと思われる。
本発明者らは、以下の点を見出した。
(1)アルカリ溶液をコンクリート構造物に浸透させることによって、中性化が進行しているコンクリートの亀裂中に深く浸透し再アルカリ化する。
(2)アルカリ溶液とシリカ溶液とを併用するか、または、アルカリ溶液とシリカ溶液との混合物をコンクリート構造物に浸透させることにより、上記1)のようにアルカリ分が亀裂に浸透してコンクリートの再アルカリ化に寄与し、さらに、シリカ分が亀裂を填充被覆して、亀裂からのCOの侵入を防ぐ。
(3)アルカリ溶液とシリカ溶液との混合液を、コンクリート構造物に浸透させるか、または、この混合液により表面処理を行うことで、コンクリート表面を稠密化して、コンクリート表面からCOが浸透することを予防できる。これはコンクリート表面の中性化防止法にもなる。
(4)アルカリ剤としてNa,Kを含有するものは、アルカリ骨材反応によりコンクリートを劣化させる危険性があることがすでに知られている。このため、Liを含有するアルカリ剤が好ましい。また、アルカリ骨材反応の可能性が少ない場合は、Na、Kを含有するアルカリ剤を用いてもよい。
(5)大気に接しているコンクリート表面は、紫外線や雨水、温度変化、乾燥等の厳しい劣化要因にさらされている。単なるアルカリによるコンクリートの再アルカリ化のみでは、その後のコンクリート表面からの大気中のCOの侵入により、中性化が進んでしまう。これを防ぐためには、コンクリートを再アルカリ化した上で、コンクリート表面または亀裂の表面を被覆することが必要である。また、単に水ガラス(3号水ガラス等)やシリカコロイドや樹脂のみでコンクリート表面を被覆しても、大気中で表面が剥離してしまうため、コンクリート内部の中性化を防ぐことは難しい。
これに対し、コンクリートの亀裂にアルカリ溶液を浸透させた上で、亀裂に浸透または充填させたシリカ溶液、あるいは、アルカリ溶液とシリカとの混合液は、水分の蒸発に伴い、ゾルからゲルへ、さらに、気乾中ではゲルからキセロゲルへの過程を経て、アルカリが浸透したコンクリートの亀裂を被覆または充填して、コンクリート表面に強固な被覆層を形成する。この被覆層は、その後のCOの侵入を防ぎ、コンクリートの中性化を防ぐことができる。また、この場合も、シリカ溶液として水ガラス等を用いると、含まれるNa,Kによってアルカリ骨材反応を生ずる可能性があるが、シリカ溶液として特にシリカコロイドを用いることで、シリカコロイドにはNaやKがほとんど含まれないために、アルカリ骨材反応の問題は生じない。
しかし、コンクリート内部への浸透目的、シリカとともにコンクリート表面を被覆するときなどのように、アルカリ骨材反応の可能性が少ない場合、Na、K等の水酸化アルカリの適用も、その状況をみて可能である。
アルカリとしては、特にLiOHを用いることにより、アルカリ骨材反応を抑制できる。このため、水ガラスを用いる場合は、LiOHと一緒に用いることが好ましい。
(6)以上の理由により、アルカリ性シリカ溶液は、NaやK等のアルカリ金属をほとんど含まないシリカコロイド溶液や金属シリカやイオン交換処理シリカ液に水酸化リチウムを混合したものが望ましい。アルカリをほとんど含まないシリカ溶液の例としては、水ガラスをイオン交換膜やイオン交換樹脂などでイオン交換処理して得られる、pHが酸性値を呈し粒径が1〜10nmの小径のシリカ溶液、または、これに微量のアルカリ(水酸化ナトリウムや水酸化カリウムや、水酸化リチウム等)を加えてpHを8〜10程度に安定させたシリカ溶液、あるいは、さらに造粒して粒径が5〜100nmでpHが8〜10程度に安定化させたシリカコロイド等が挙げられる。なお、これらが解膠法や金属シリカから得られたものでも構わない。また、ここでアルカリ性シリカ溶液とは、アルカリ剤と上記シリカコロイドや金属シリカやイオン交換処理シリカ水溶液の混合物、モル比が2.8以下の低モル比珪酸塩水溶液、上記アルカリ剤とモル比が2.8より高い珪酸塩水溶液の混合物をいう。
下記表2にアルカリ液保持材の分類を示す。シリカコロイドについては、その粒径を示す。なお、自硬性シリカには超微粒子セメントと極超微粒子セメントなどがあり、粒径は1.5μm〜4μm程度である。
(7)コンクリート表面を被覆する表面被覆材としては、シリカコロイドとアルカリ剤との混合物、あるいは、シリコン系またはシラン系の樹脂(例えば、SKWイーストアジア(株)製)を用いることで、撥水や、発火防止、中性化遅延、凍結防止等の効果を得ることができる。また、上記樹脂は、吹き付けにより適用したり、ムース状に性状を変えて用いてもよい。また、アルカリ剤とシリカ溶液を併用し、コンクリート表面を処理した上で、更に他の固結材を表面被覆材として、更に表面処理をしてもよい。この場合の被覆材としては、上記樹脂、あるいはエポキシ樹脂等や塗料、または、セメント等の吹付けを用いてもよい(図10d)。また、これらの樹脂にセメントを加えたもので被覆してもよい。
マイクロクラックにアルカリ剤とコロイダルシリカを併用して浸透させた後の大きな割れ目に超微粒子セメントや極超セメントを注入充填することによって、割れ目をブロックすると共にコンクリートを補強することができる。
この場合、超微粒子セメントがコロイダルシリカの固化物を劣化させてはならないし、図16の長期試験によればコロイダルシリカは超微粒子セメントと重ね合わせて養生しても、7年間経ても安定性が得られることがわかった。これに対し、水ガラスに酸を加えたシリカゾルや他の水ガラスのゲルは、1週間以内に溶解してしまうことが判った。
(8)アルカリ溶液とシリカ溶液とを混合すると、ゲル化するが、ミキサー等でさらに撹拌することによってゲルがゾル状に戻り、流動性を得、コンクリート構造物の亀裂に浸透し、あるいは、表面を被覆して、乾燥に伴い、コンクリート表面にガラス状の強固なキセロゲルの被膜を作ることが分かった。このようにして得られた被覆は剥離しにくく、COのコンクリートへの侵入を遮断する(図10a)。アルカリ剤はコンクリートの内部に浸透して再アルカリ化に役立つのみならず、シリカ分とともに中性化が進行しているコンクリート表面を活性化して、コンクリート表面に珪酸カルシウムの強固な被覆を形成すると思われる。
(9)本発明におけるコンクリート表面の補修は、コンクリート処理剤の補修部分への注入や、毛細管現象による浸透(図17)、吹付けや塗布等によって行われる。コンクリート処理剤のコンクリート補修部への浸透は、透水性が低いために浸透に時間がかかるので、コンクリート処理剤用の保持体に処理剤を供給して、浸透せしめることが好ましい。保持体としては、不織布やウレタンフォームや水吸収膨張性繊維等、透水性でかつ保水性があるマット状のものを例に挙げることができる。これらを枠体で囲ってコンクリート表面に保持してもよい。
(10)アルカリ溶液とシリカ溶液との混合液を製造するに当たっては、アルカリ溶液が人体に危険であること、また、交通の多い都市内で作業が行われることから、安全性の確保が重要となる。また、上記(8)のゲル化の挙動を示す配合液を、人手に触れることなく全自動で、流動性をもつ配合液として製造するシステムが必要となる。さらに、道路に沿って、車両に搭載して移動できるコンパクトな車上プラントとして使用できる装置が必要である(図1)。このような製造システムの例を図9に示す。
(11)道路やトンネル等の長い距離を有するコンクリート構造物を対象とするのであるから、製造プラントから送液管を通して、広範囲の補修箇所に処理剤を同時に送れるシステムが要求される。中性化が著しいポイント毎に注入プラントを移動していたのでは、その都度交通を中断しなくてはならない。本発明によれば、長距離にわたる施工箇所を、広範囲にわたって移動させることなく複数のポイントに、同時に、または、連続的に、あらかじめ設置した管路で作業できるため、交通を止めることなく交通を続けながらコンクリートの補強作業を行うことができる(図1,図5〜図8)。
本発明者らは、これらの手法を用いることで上記問題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のコンクリート構造物の補修工法は、アルカリ液を含むコンクリート処理剤をコンクリート構造物の表面から浸透させて、劣化したコンクリートのアルカリ化を行うとともに、コンクリートの劣化を防止することを特徴とするものである。本発明のコンクリート構造物の補修工法においては、前記アルカリ液とアルカリ液保持材とを併用して、劣化したコンクリートの再アルカリ化を行うとともに、シリカコロイド等によりコンクリート表面に被膜を形成することで、コンクリート表面を稠密化して中性化を防止することができる。また、本発明のコンクリート構造物の補修工法においては、前記アルカリ液と前記アルカリ液保持材とを併用して、地盤中のコンクリートのアルカリ化を行うとともに、コンクリートの劣化を防止することができる。また、コンクリート構造物の周辺地盤に固結体を形成し、該コンクリート構造物と該固結体との接触面に、前記アルカリ液または該アルカリ液と前記アルカリ液保持材とを注入して、コンクリートのアルカリ化またはコンクリートの劣化防止を行うこともできる。
この際、本発明のコンクリート処理剤に、さらに、界面活性剤を含有させることで、よりコンクリートの亀裂に対し優れた浸透性を得ることができる。アルカリ溶液に界面活性剤を併用することにより、コンクリートの亀裂に浸透しやすくできることは知られている。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系があるが、本発明においては、ノニオン系が最も効果があることが分かった。また、アルカリ溶液とシリカコロイドとの混合物では、界面活性剤を使用する必要がないほどの浸透性が得られることが分かった(図12,図13,実験例後述)。
本発明においては、前記アルカリ液が、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有し、前記アルカリ液保持材が、シリカコロイド、珪酸塩水溶液、撥水材および樹脂系被覆材からなる群から選択される一種以上を含有することが好ましい。また、前記アルカリ液を含むコンクリート処理剤として、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の珪酸塩、または、これらの少なくともいずれか一種とシリカコロイドとの混合物を用いることが好ましく、前記アルカリ液と前記アルカリ液保持材とは、有効成分の純分比率が1:0.1〜100となるよう併用することが好ましい。
上記流動特性を用いて、本発明のコンクリート構造物の補修工法は、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、シリカコロイド、活性シリカおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とを併用して用いることを特徴とするものである。その併用としては、
(1)第1液と第2液とを混合して用いる方法、
(2)第1液と第2液とを、別々にまたは連続して用いる方法(いずれかを先行して用いる)、
(3)第1液と第2液との混合液と、第1液または第2液のいずれかとを、別々にまたは連続して用いる方法、
がある。
また、前記珪酸塩水溶液としては、モル比2.8以下の水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液を好適に用いることができる。
本発明者はアルカリ剤とシリカ溶液との混合液が図10aに示す流動特性を呈することを見出し、その特性をコンクリート再アルカリ化と中性化防止に適用し得ることを見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明の他のコンクリート表面処理剤は、前記アルカリ液としての、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、前記アルカリ液保持材としての、シリカコロイド、活性シリカおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とを用いて、該第1液と該第2液とを混合してゲル状物を得、該ゲル状物を攪拌してゾル状物とし、該ゾル状物をコンクリート構造物の表面に供給し浸透させ、その後、空気中で水分が蒸発して乾燥することで、該コンクリート構造物の表面にキセロゲルよりなる被覆物を形成することを特徴とするものである。
さらに、本発明のさらに他のコンクリート構造物の補修工法は、前記アルカリ液としての、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、前記アルカリ液保持材としての、シリカコロイド、活性シリカおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とを用いて、コンクリート構造物の内部に該第1液、または、該第1液と該第2液との混合物を浸透させた後、該コンクリート構造物の表面を該第2液、または、該第1液と該第2液との混合物により処理して稠密化を図って、中性化を予防することを特徴とするものである。
本発明のコンクリート構造物の補修工法では、まず、アルカリ溶液あるいはアルカリ溶液とシリカコロイド等との混合物からなる処理剤を、コンクリート構造物の表面に浸透させて、中性化が進行しているコンクリートを再アルカリ化した上で、その表面をシリカコロイド等により被覆することで、コンクリート構造物の表面を稠密化して、空気中のCOがコンクリート構造物の内部に侵入することを防ぐことを特徴とするものである。
ゆえに本発明は、単に中性化しているコンクリートの再アルカリ化のみならず、さらにコンクリート表面を稠密化して、COの侵入を防ぐことで、再中性化することを防止できる点に大きな特徴がある。
上記補修工法においては、再アルカリ化のためにアルカリ剤を用いることができる。また、再アルカリ化と中性化防止のためにモル比が2.8以下の低モル比の珪酸塩水溶液を含有するものを用いることができる。また、界面活性剤を用いて浸透性を向上させるためには非イオン系界面活性剤が望ましい。
さらにまた、本発明のさらに他のコンクリート構造物の補修工法は、コンクリート構造物の補修箇所にドリリングを行ってドリリング孔を形成し、ドリリングにより生ずるスライムの指示薬による色の変化によって該コンクリート構造物の中性化の深度および分布を把握し、中性化層に前記アルカリ液、または、該アルカリ液と前記アルカリ液保持材との混合物を浸透させて、再アルカリ化を行うことを特徴とするものである。
以下に、本発明者の発明によるコンクリートの表面処理のための施工法について述べる。図1b,図1c、図3に示す例は、コンクリート構造物の表面または内部をコンクリート処理剤で処理する施工法であって、コンクリート処理剤の製造装置からコンクリート補修箇所に至るまでの、該コンクリート処理剤の送液管路に、任意の径の孔が設けられたオリフィスを設けたことを特徴とするものである。これにより、複数の補修箇所に所定量の処理剤を供給することが可能となる(図3,図4,図5)。
また、図1dは、図9(b)に示す構成の装置を車両に搭載した例で、複数の補修箇所に同時に所定量の補修箇所に送液することができる。
上記補修工法においては、前記コンクリート処理剤の送液管路を複数設けて、前記コンクリート構造物の表面における複数の補修箇所に該コンクリート処理剤の注入を行うにあたり、前記オリフィスを該複数の送液管路ごとに設けて、該複数の補修箇所に、同時にまたは選択的に、該コンクリート処理剤を送液することができる(図1b,図1c,図3,図5b〜図5e,図8(b))。
さらにまた、本発明のさらに他のコンクリートの補修工法は、コンクリート処理剤の製造装置で製造された前記コンクリート処理剤を、複数のユニットポンプを経て、コンクリート構造物の表面における複数の補修箇所に送液し、該複数のユニットポンプの駆動をコントローラで一括管理することにより、該複数の補修箇所に、同時にまたは選択的に、該コンクリート処理剤を送液することを特徴とするものである(図7,図8(c))。
さらにまた、本発明のさらに他のコンクリートの補修工法は、コンクリート処理剤の製造装置で製造された前記コンクリート処理剤を、1つの送液ポンプを経て、送液管路から複数の分岐バルブを介して、コンクリート構造物の表面における複数の補修箇所に送液し、該複数の分岐バルブを作動させることにより、該複数の補修箇所に、連続的にまたは選択的に、該コンクリート処理剤を送液することを特徴とするものである(図1a,図5a,図6,図8(b)においてオリフィスのない場合)。
上記補修工法においては、コンクリート処理剤の製造装置から注入管路を延ばすことにより、一箇所にプラントを設置したまま、前記複数の補修箇所毎に該製造装置を移動させることなく、前記コンクリート構造物に面した交通の供用を可能にしながらコンクリート構造物の処理を行うことができるので、コンクリート処理剤を道路や鉄道に面した橋梁やトンネル等に適用する場合にも、急速施工が可能であって、かつ、適用箇所近傍の道路や鉄道を常時交通に供用させることが可能となる(図1,図5,図6,図7,図8)。
さらにまた、本発明のさらに他のコンクリートの補修工法は、コンクリート処理剤の製造装置を車両に搭載して、コンクリート構造物に沿って該車両を走行移動させながら、該コンクリート構造物の表面または内部を、該製造装置で製造された前記コンクリート処理剤を用いて処理することを特徴とするものである(図1,図9)。
さらにまた、本発明のさらに他のコンクリートの補修工法は、コンクリート処理剤を用いて、コンクリート構造物の中性化防止、または、該コンクリート構造物の表面の稠密化を行うコンクリート構造物の補修工法であって、該コンクリート構造物の表面を被覆するコンクリート処理剤用の保持体(または枠材)を設け、該保持体内に該コンクリート処理剤を供給することを特徴とするものである(図3,図5,図6,図7)。
上記補修工法においては、前記保持体を複数配置して、複数の送液管路を用いて該複数の保持体内に、同時にまたは選択的に、前記コンクリート処理剤を供給することができる。また、上記補修工法においては、前記コンクリート構造物の表面に浸透せずに該保持体内に残存した該コンクリート処理剤を、該吸入管を介して回収することが好ましい。これにより、前記吸入管から回収された前記コンクリート処理剤を再利用して、前記コンクリート構造物の処理に用いることができる。
この場合、前記コンクリート処理剤の回収と、回収された該コンクリート処理剤の再供給と、を繰り返して、該コンクリート処理剤を循環させることが好ましい。前記保持体としては、枠体または処理剤保持性マットを用いることができる。また、本発明において、前記コンクリート処理剤は、コンクリート表面の劣化状況や亀裂の大きさや深さに応じて、前記コンクリートの表面または内部に、毛細管現象による浸透、注入、吹付けおよび塗布のうちのいずれかにより適用することができる(図5、図6、図17)。
また、本発明のコンクリート構造物の補修工法においては、前記コンクリート構造物の補修箇所のいずれかに監視カメラおよび/または変位センサーを設置して施工管理を行うことが好ましいし、変位センサーは中性化により劣化したコンクリートが注入圧力で被覆することなく少量ずつ浸透させるように制御するために必要となる(図2)。監視カメラや変位センサーによる情報がコントローラに伝達されることで、この情報に基づき注入ポンプの作動や流路変換バルブの作動を行って、施工管理を行うことができる。
次に、本発明のコンクリート処理剤は、上記本発明のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート処理剤であって、前記アルカリ液が水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される一種以上であり、かつ、前記アルカリ液保持材がシリカコロイド、活性シリカおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上であることを特徴とするものである。
また、本発明のコンクリート処理剤は、上記本発明のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート処理剤であって、前記アルカリ液および/または前記アルカリ液保持材が、モル比2.8以下の水酸化リチウム、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムの水溶液、または、アルカリ金属の珪酸塩水溶液を含有することを特徴とするものである。
さらに、本発明のコンクリート処理剤は、上記本発明のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート処理剤であって、前記アルカリ液としての、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび珪酸アルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、前記アルカリ液保持材としての、シリカコロイドおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とからなり、該第1液と該第2液とを混合してゲル状物を得、該ゲル状物を攪拌してゾル状物とし、該ゾル状物をコンクリート構造物の表面に供給し浸透させ、その後、乾燥することで、該コンクリート構造物の表面にキセロゲルよりなる被覆物を形成することを特徴とするものである。
次に、本発明のコンクリート処理剤はアルカリ剤を用いることから、また交通量の多い現場で用いられるところから、コンクリート処理材の製造にあたって安全な全自動システムであることが好ましい。図9に一例を示す本発明のコンクリート処理剤の製造装置は、上記本発明のコンクリート構造物の補修工法に使用する、アルカリ液とアルカリ液保持材とを有効成分とする複数の原料液を混合してなるコンクリート処理剤の製造装置であって、前記コンクリート処理剤に含まれる複数の原料液をそれぞれ収容する複数の原料液槽と、該複数の原料液槽から複数の原料液をそれぞれ送液する複数の送液ポンプと、該複数の原料液を混合攪拌して該コンクリート処理剤を製造する混合液槽と、を備え、前記送液ポンプが、前記原料液を吸引しかつ吐出するシリンダーポンプよりなり、該複数のシリンダーポンプの吸引および吐出が同一時間内に同調するように制御する制御機構が設けられていることを特徴とするものである(図9)。また、これらのシリンダーポンプからの直接送液管に送液することもできる。上記装置はコンパクトで制御装置で処理液を製造できるため、車上プラントで安全に施工できる。
本発明者らは、アルカリ溶液にシリカ溶液、特にシリカコロイド液を含有するコンクリート処理剤を用いることで、コンクリート構造物の浸透を良くすることができることを見出した(実験5)。また、アルカリ剤に界面活性剤、中でも、非イオン系界面活性材を用いることにより、コンクリートの亀裂への侵入が深くなることを見出した(実験3)。また、アルカリ材とシリカコロイドとの混合液は、界面活性剤を使用しなくても充分な浸透性を得ることを見出した。また、アルカリ溶液を浸透させた後に、シリカ溶液、さらには、樹脂や後述する被覆材をコンクリート構造物に浸透させて、あるいは、表面に塗ったり吹付けたり表面処理を行うことで、コンクリート表面に被膜を形成し、または、処理剤を浸透させて、コンクリート表面を稠密化し、中性化を防止することができる(表4,表5)。
また、処理剤をコンクリートの亀裂に浸透させるために、実際のコンクリート構造物の形状に沿って柔軟なシートを被覆してシートを枠材で保持して、シートとコンクリート構造物との間に、アルカリ溶液とシリカ溶液を含む処理剤、さらには、界面活性剤や樹脂を含む処理剤を貯溜させ、あるいは、これらを吹き付けて、あるいは、コンクリート表面に不織布等の保水性および透水性を有するマットを被覆し、このマットに上記処理剤を含浸させることで、上記処理剤をコンクリートの亀裂等に浸透させることができる。このようにしてコンクリート表面をシリカ溶液で処理した場合、COの侵入による中性化を予防するのみならず、凍結、融解、塩害などを防ぎ、コンクリートの耐久性を向上させることができる(図5a,5d,5e,図6b,6c,図7)。この場合、アルカリ溶液またはアルカリ溶液とシリカ溶液との混合液(アルカリシリカ溶液)を自動製造し、かつ、広範囲に自動供給できれば、作業の安全性と施工作業性を向上することができる(図9)。
また、本発明によれば、このようなコンクリート処理剤が道路や鉄道に面した橋梁やトンネル等に適用されるところから、急速施工が可能であって、かつ、適用箇所近傍の道路や鉄道を常時交通に供用させることが可能なコンクリート構造物の補修工法を提供することができる(図1)。さらに、処理剤の使用材料がアルカリ材料であるところから、作業性や環境性の点からも安全性にも優れたコンクリート構造物の補修工法を提供することができる。
橋脚の補修例を示す説明図である。 橋脚の他の補修例を示す説明図である。 橋脚のさらに他の補修例を示す説明図である。 橋脚のさらに他の補修例を示す説明図である。 注入速度と注入圧による限界注入速度の関係を示す説明図である。 オリフィスによる表面処理材料の供給原理を示す説明図である。 送液圧力とノズル径と噴出量と浸透抵抗圧の関係を示す説明図である。 浸透抵抗圧P=0の場合の送液圧とノズル径と噴出量の関係を示すグラフである。 噴出量とノズル口径と差圧の関係を示すグラフである。 浸透抵抗圧とノズル径と噴出量の関係を示すグラフである。 送液圧と浸透抵抗圧と噴出量の関係を示すグラフである。 送液圧とノズル口径、ノズル数と噴出量の関係を示すグラフである。 基本的な送液システムの例を示す説明図である。 基本的な送液システムの他の例を示す説明図である。 基本的な送液システムのさらに他の例を示す説明図である。 基本的な送液システムのさらに他の例を示す説明図である。 基本的な送液システムのさらに他の例を示す説明図である。 複数の補修箇所に連続的または選択的に送液するシステムの例を示す説明図である。 複数の補修箇所に連続的または選択的に送液するシステムの他の例を示す説明図である。 複数の補修箇所に連続的または選択的に送液するシステムのさらに他の例を示す説明図である。 複数の補修ポイントに表面処理材料を同時にまたは選択的に送液するシステムを示す説明図である。 補修領域にドリリングした検査孔のスライムをフェノールフタレインによる赤変部まで中性化層の深度を把握して、コンクリート中に処理液を浸透させる施工法を示す説明図(図8(a))、および、送液システムと監視カメラや変位センサーによる施工管理システムを示す説明図(図8(b),(c))である。 処理液の全自動製造装置を示す説明図である。 アルカリ剤とシリカ溶液の混合液の流動性の挙動を示すグラフである。 トンネル等の天端部のドリリング孔からの処理剤の浸透状況の例を示す。 トンネル等の天端部のドリリング孔からの処理剤の浸透状況の他の例を示す。 トンネル等の天端部のドリリング孔からの処理剤の浸透状況のさらに他の例を示す。 直立した側壁における処理剤の浸透状況の例を示す説明図である。 直立した側壁における処理剤の浸透状況の他の例を示す説明図である。 直立した側壁における処理剤の浸透状況のさらに他の例を示す説明図である。 直立した側壁における処理剤の浸透状況のさらに他の例を示す説明図である。 直立した側壁における処理剤の浸透状況のさらに他の例を示す説明図である。 直立した側壁における処理剤の浸透状況のさらに他の例を示す説明図である。 トンネル等の天端部における処理剤の浸透状況の例を示す。 トンネル等の天端部における処理剤の浸透状況の他の例を示す。 地中コンクリートの補修の例を示す。 地中コンクリートの補修の他の例を示す。 地中コンクリートの補修の他の例を示す。 コンクリートブロックの再アルカリ化の試験の供試体の断面を示す説明図である。 中性化したコンクリートブロックに対する処理剤の浸透状況を示す。(a)〜(d)はケース5〜8の場合の浸透状態、(e),(f)はケース7の配合を撹拌せずに使用した様子を示す写真図である。 微小間隙試験装置を示す模式図である。 各種シリカグラウトによる固結豊浦砂の透水下におけるSiOの溶脱率を示すグラフである。 (a)は、動水勾配50で固結供試体を長期間透水し続けた場合の止水性を保った日数を示すグラフであり、(b)は、シリカコロイドのゲル化物の収縮の状態を示す説明図である。 シリカコロイドのゲルと超微粒子セメントの固結物とを重ねて、その影響を調べた状況を示す説明図である。 毛細管現象による浸透の状態を示す説明図である。 実施例に係る説明図である。 実施例に係る説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明においてはアルカリ液とアルカリ液保持材との混合物を、または、さらに界面活性剤を混合したものを、コンクリートに浸透させて再アルカリ化して、さらに、表面に被覆層を形成して、コンクリート表面を緻密化してコンクリートの中性化を予防する。
本発明における第一の発明は、アルカリ液をあらかじめ界面活性剤と混合した混合液をコンクリートに浸漬することにより中性化を抑制することである(実験2,実験3,実験5,表5)。アルカリ液としてはNa,K,Liの水酸化アルカリが挙げられる。このうち水酸化リチウムが特に優れている。中性化が進行しつつあるコンクリートにこれらの水酸化アルカリ剤を浸透させると、劣化しているコンクリートが再アルカリ化するものと思われる。アルカリ溶液は界面活性剤、特に、非イオン系界面活性剤の存在下で細かい亀裂中に深く浸透するため、その効果が著しくなる。また、アルカリ剤の中にシリカ溶液が溶存していると、コンクリート表面のセメントに起因するCaとシリカ溶液に起因するシリカ分とが反応してコンクリート亀裂中の細いコンクリート表面の亀裂に浸透し、シリカ分が亀裂を閉塞する。コンクリート表面にアルカリ剤を作用させるには、毛管現象によって亀裂に浸透させることが、作業性の点からも経済的にも優れている。界面活性剤としては、陽イオン系、非イオン系、陰イオン系、両性イオン系があるが、本発明者らの検討によれば、非イオン系が優れている。これは、亀裂のコンクリート表面との電気化学的理由によるものと思われる。本発明の処理剤に用いるシリカ溶液としては、シリカコロイドや活性シリカや、低モル比の珪酸塩水溶液が適している。
この場合、亀裂中に浸透したシリカ溶液は、亀裂を強固なCa−シリカからなるゲル化物で覆い、アルカリの存在下において、経時的にCa−SiOの結晶構造になって亀裂を強化するものと思われる。また、気乾中で水分を蒸発して強固なキセロゲルとなって、コンクリート表面や亀裂を被覆する効果がある。
アルカリ溶液とシリカ溶液とが接触すると瞬時にゲル化が起こる。このゲルを撹拌すると粘性が低下して、流動性に優れたゾルとなり、このゾル状にした液をコンクリートに浸透させる(図10a,図12)。
図9に示す例の処理剤の製造装置は小型で、かつ配合が正確で、かつ全自動型であるため、アルカリ剤を用いても作業が安全で、車両に搭載して、コンクリート構造物に沿って車両を走行移動させながら、使用することができる。また、製造装置から注入管路を延ばすことにより、コンクリート構造物における複数の補修箇所毎に、製造装置を移動させることなく処理剤を供給することができる。このため、コンクリート構造物に面した道路を交通に供用しながら作業できる(図1)。
実際の施工においては、コンクリート構造物に柔軟性なシートを張り付けて処理剤を貯蔵し、毛細管現象を利用して、コンクリート構造物の亀裂に浸透させるか、注入、または、吹付けを行って、表面を緻密化する(図1,図5,図6)。また、補修箇所に図3,図5,図6のような隔室を設けて、その内部で処理剤を浸透させてもよい。
以下に、本発明の特徴をまとめる。
(1)アルカリ溶液をコンクリート構造物の亀裂または表面に毛細管現象等により浸透させることにより、コンクリートの再アルカリ化、または、コンクリートの中性化の防止に有効である。
(2)アルカリ溶液と界面活性剤とを混合することにより、浸透しやすくなる。界面活性剤としては、非イオン系が優れている。しかし、アルカリ剤とシリカ溶液を混合攪拌した液は、アルカリ溶液に界面活性剤を用いた場合と同粘度に浸透性がよい。そしてシリカ分がアルカリの存在のもとにコンクリート表面や亀裂を強固に閉塞して、再中性化を防止する。
(3)アルカリ剤とシリカ溶液からなる、アルカリ性シリカ溶液を浸透させて表面を被覆することにより、コンクリート構造物の微細な亀裂にアルカリ性シリカが浸透し、コンクリート表面が緻密化されて中性化も抑制し、あるいは、新しいコンクリート表面を処理することによって表面を稠密化して、中性化を予防することができる。
(4)アルカリ溶液とシリカ溶液とが接触するとゲル化して、流動性が低下するが、撹拌するとゾル状に戻り、浸透性に優れた液として用いることができる。アルカリ剤とシリカ溶液を正確に連続合流して攪拌する製造装置は車両に搭載して使用できる(図1、図9,図10a)。
(5)アルカリ溶液としては水酸化リチウムが効果的である。なぜならば水酸化ナトリウムや水酸化ナトリウム等はアルカリ骨材反応を生ずる恐れがあるからである。
(6)シリカ溶液としては、NaやK等のアルカリをほとんど含有しないシリカ溶液が好ましい。このようなシリカ溶液としては、コロイダルシリカあるいは水ガラスをイオン交換処理して作られたシリカ溶液や金属シリカ等、微小コロイダルシリカやこれらのpHを弱アルカリ性(pHが8〜10)で安定化させたシリカゾル(コロイダルシリカ)が好ましい。
(7)アルカリ骨材反応を起こす心配がない場合は、アルカリ剤としてモル比が2.8以下の低モル比の珪酸塩水溶液、または、水ガラスにアルカリ剤を加えたアルカリ水ガラス液を用いることができる。
(8)単なる3号水ガラスやシリカコロイド等を、それ自体でコンクリート表面に被覆しても、コンクリート表面の乾燥によって水分が飛んでしまうと表面から剥がれやすくなる。アルカリの存在下で適用されたシリカは、水分が飛んでも表面に強固な被覆を形成する。これは、アルカリの存在下では乾燥とともにシリカがコンクリート表面と強固に反応するためと思われる。
本発明において、アルカリ溶液と界面活性剤の質量比率は、1〜5%、好ましくは2〜3%である。また、本発明においてアルカリ液とアルカリ液保持材との併用比率は、有効成分の純分比率で1:0.1〜100とすることが好ましい。
本発明におけるアルカリ溶液とは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、または、モル比が2.8以下、好ましくはモル比が1〜2.8の低モル比の珪酸塩水溶液をいう。
本発明における界面活性剤は、非イオン系界面活性剤が優れている。また、非イオン系界面活性剤は1種のみを用いてよく、他の界面活性剤とともに2種以上を併用してもよい。
また、本発明における処理液とは、微小コロイダルシリカ、コロイダルシリカや珪酸塩水溶液等のシリカ溶液や、アルカリ剤あるいはこれらを混合したアルカリシリカ溶液をいい、これらから選択される一種または複数種である。
シリカ溶液としては、水ガラスをイオン交換樹脂またはイオン交換膜を用いて、水ガラス中のアルカリ分を除去して得られるシリカ溶液、酸性水ガラスの酸根やアルカリ金属をイオン交換樹脂や、イオン交換膜で除去して得られる酸性シリカ溶液を9〜10程度のpHに調整した粒径1〜10nmのシリカコロイドや、シリカ溶液を濃縮し造粒して、pH9〜10を呈する粒径10〜20nmのシリカコロイドあるいは金属シリカから得られたシリカコロイド等が挙げられる。
水ガラスをイオン交換処理して得られたpH2〜4のシリカ溶液は、シリカ粒径が1〜10nmに成長して数日後にはゲル化するが、微量の苛性アルカリや水ガラスを加えて弱アルカリ性に安定化させることができる。また、シリカコロイドは上述のシリカ溶液を加熱することにより濃縮増粒し、pHを9〜10に調整して安定化して得られる。このようにして得られたシリカコロイドは、シリカ濃度が4質量%以上、通常は30質量%程度であり、また、粒径が1〜20nmである。
以下の実験では、水ガラスをイオン交換樹脂で処理してアルカリの大部分を除去し、造粒して得られた(株)ADEKA製の実験5に示す組成のシリカコロイドを使用した。
水ガラスをイオン交換処理して得られたシリカ溶液はpHが2〜4の酸性であるが、微量のアルカリ溶液または水ガラスを加えるとpHがアルカリに変わり、pHが9〜10で安定化する。
なお、コンクリート表面に単なるコロイダルシリカや微小コロイダルシリカ、3号水ガラス、高モル比水ガラスを被覆しても、気乾でバラバラになり、本発明の目的は得られない。然るに本発明による処理液を用いた場合、気乾、雨水、紫外線、凍結などの条件下で劣化することなく、コンクリート表面を長期にわたって強固に被覆する。アルカリ剤をシリカコロイドに加えたものは、ゲル化し透明な粘り気のあるゲルとなる。乾燥すると、コンクリート表面に強固に被覆し、耐候性のある被覆を形成する(図10,図12(e),(f))。
さらに、本発明では、コンクリート表面を後述するシリコン系またはシラン系の樹脂や撥水材で被覆することができる。この樹脂は撥水効果が優れており、かつ、コンクリート内部にも浸透し、表面を緻密化し、かつ、アルカリ化した亀裂を保護することができる。
なお、リチウムシリケートと、本発明に使用する水酸化リチウムとシリカコロイドとを混合したものとは製造方法が違い、性質も異なる。
また、本発明ではアルカリ溶液とシリカコロイドとを別々に用いることで、その流動特性の変化(図10a)を利用して、目的に応じて、その配合比率を変えることにより、目的に応じた最適の使用法を得ることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。なお、本発明がこれらの例によって制限されるものではないのはもちろんである。
<事前準備>
事前準備として、家庭化学工業(株)製のインスタントコンクリートに規定の水を加え、試験用コンクリートを作製した。コンテナ容器内で、インスタントコンクリート20kgに水2.6Lを少しずつ加えながら練り混ぜた。実験ケースに合わせ、それぞれ供試体を作製した。
<実験1>
外気に暴露されているコンクリートの中性化は、30年で15mm進むことが分かっている。これを模して、事前準備で作製したコンクリート供試体(100mm×100mm×100mmの立方体形状)をCOに半年間暴露して、中性化促進試験を行った。このコンクリートを半分に割り、割った面にフェノールフタレイン液をスプレーしたところ、図11に示すように、中心から側面まで厚さ25mmの範囲(図中の斜線部)が赤紫色に変色した。このことより、変色しなかった25mmのコンクリート部分が中性化していることが確かめられた。
<実験2>
中性化促進試験を行って中性化されたコンクリート供試体の上部に、水酸化リチウム水溶液(4.5N)に界面活性剤を添加した溶液または水酸化リチウムのみを、刷毛で塗布して浸透させた。養生1日後にコンクリート供試体を半分に割り、割った面にフェノールフタレイン液をスプレーして、浸透深さを調べ、比較した。水酸化リチウム(4.5N)に対して陰イオン系界面活性剤を10質量%添加し浸透液を作製し、用いた。コンクリート供試体への浸透結果は、刷毛で塗った表面のみフェノールフタレイン液に反応し、浸透性が確認できなかった。
次に、水酸化リチウム水溶液(4.5N)に非イオン系界面活性剤を10質量%添加した場合は、コンクリート上部の表面から5mmフェノールフタレイン液に反応した。浸透性を確認した。また、水酸化リチウム溶液(4.5N)に陽イオン系界面活性剤を10質量%添加した場合は、コンクリート上部の表面から2mmフェノールフタレイン液に反応した。浸透性を確認した。さらに、水酸化リチウム溶液(4.5N)に両性イオン系界面活性剤を10質量%添加した場合は、コンクリート上部の表面から1.5mmフェノールフタレイン液に反応した。浸透性を確認した。
実験2の結果から、非イオン系の界面活性剤がコンクリート供試体に対し浸透性が良いことが分かったので、この中で最も浸透深さが大きかった(株)ADEKA製の「アデカトールSO−105」を用いて、さらに実験を行った。
<実験3>
界面活性剤の添加の有無による浸透効果を確認するために、界面活性剤((株)ADEKA製,アデカトールSO−105)を3質量%添加したアルカリ溶液と、界面活性剤を添加していないアルカリ溶液とをそれぞれ入れた容器にコンクリート供試体を静置して、浸透状況を測定した。
具体的には、浸透した部分を確認するために、人工的に中性化させたコンクリートの供試体(50mm×50mm×20mm±5mm)にアルカリ溶液を浸透させて、再アルカリの程度を測定した。浸透方法としては、容器にアルカリ溶液を深さ2mm注ぎ、その中に供試体を載置して溶液を浸透させ、その後、容器から供試体を取り出し、供試体を割裂して、割裂面にフェノールフタレインを吹き付けて、赤く変色した部分の距離を測定した。なお、浸透中は、溶液の蒸発防止のために、密閉容器の中で養生した。
実験3に使用した供試液は、水酸化リチウム溶液(4.5N)97mlにアデカトールSO−105を3ml入れ、混合して作製した。この供試液を用いて3時間後、1日後、7日後、9日後、12日後と浸透した深さを測定した。3時間は27mm、1日目は36mm、7日目は36mm、9日目は37mm、12日目は37mm浸透した。
また、比較例として、水酸化リチウムのみを同様に浸透させた結果は、3時間は26mm、1日目は28mm、7日目は28mm、9日目は28mm、12日目は28mm浸透した。
上記の結果より、水酸化リチウムとアデカトールSO−105との組み合わせによれば、水酸化リチウム単独よりも浸透深さが30%向上することが確認された。
<実験4>
実験3と同様にして、人工的に中性化させたコンクリートの供試体(50mm×50mm×20mm±5mm)を用いて実験を行い、その効果を確認した。使用するアルカリ溶液としては、水酸化リチウム溶液(4.5N)、水酸化ナトリウム溶液(9質量%)および水酸化カリウム溶液(5質量%)を用いた。アルカリ溶液を各コンクリート供試体に浸透させて、再アルカリの程度を測定した。
浸透方法としては、実験3と同様に、容器にアルカリ溶液を深さ2mm注ぎ、その中に供試体を10日間おいて溶液を浸透させ、その後容器から供試体を取り出し、2日間大気中で養生をしてから供試体を割裂し、割裂面にフェノールフタレインを吹き付けて、赤く変色した範囲・濃度を確認した。
人工的に中性化させたコンクリート供試体では、供試体の中心付近が赤くなり、表面近傍は赤くならなかった。赤い部分は中性化しなかった範囲で、赤くない部分は中性化した範囲である。また、アルカリ溶液を浸透させたコンクリート供試体では、アルカリ溶液が、中性化した部分はもとより中性化してない部分にも浸透して、全体的に赤色に変色しており、全体的に再アルカリ化していることが確認された。
本発明において、再アルカリ化に用いるアルカリ溶液としては、アルカリシリカ反応の恐れがある構造物または部位には水酸化リチウム溶液を、恐れがない構造物または部位には安価な水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液を選択することができる。
<実験5>
材料としては、下記のものを用いた。
シリカコロイド:水ガラス水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して微量のアルカリを添加し、加熱して縮合重合して弱アルカリ領域で安定化せしめた粒径5〜20nmのシリカコロイド。
SiO:約30質量%、NaO:0.7質量%以下、比重(20℃):1.21〜1.22、pH:9〜10。
活性シリカ:JIS 3号水ガラスを水で希釈した液を陽イオン交換樹脂に通過して処理し、得られるpH2.7、比重1.03、SiO=4.0質量%、粒径1nm〜5nmの微小コロイダルシリカに微量のアルカリを加えてpH9〜10に調整。
5号水ガラス:比重(20℃)1.32、SiO:25.5質量%、NaO 7.03質量%、モル比3.75の5号水ガラスを用いた。
3号水ガラス:比重1.41、シリカ濃度29質量%、NaO9.5質量%、モル比3.17
低モル比珪酸ナトリウム(水ガラス):比重1.35、シリカ濃度21.59質量%、NaO 10.80質量%、モル比2.06
なお、本発明において低モル比珪酸塩における低モル比とは、モル比2.8〜1.0とする。
幅2cm×奥行き2cm×高さ10cmのコンクリート片を用いて、下記の表3〜5に示すケース1〜17まで、同様の試験を行った。A液またはA液とB液との混合液の供試液を500mlビーカーの中に入れ、ゲル状になったものは攪拌しゾル状に戻した(図10a,表3:ケース5〜9,表4:ケース7,表4:ケース14〜17,表5:ケース14)。その中にコンクリート片を真ん中に立たせ、コンクリートの浸透距離を測定した。浸透した部分は色が濃くなり、さらには白く結晶化したケースもあった。浸透距離は4辺ある中の一番長い浸透距離を測定した。
ケース7,8,9のシリカコロイドを用いた場合はA液のみと変わらない浸透性を保持することができた。
下記表4のケース14,15,16、17については、水酸化リチウム溶液とシリカコロイドの比率を変化させたときの浸透距離を測定した。
シリカコロイドが多すぎても少なすぎても浸透性の低下が生じる。
下表の表3および表4より、アルカリ剤、シリカ溶液の純分比率は1:0.1〜100が好ましいことが判る。この比率は、混合比率だけでなく、併用する場合も同様である。
なお、表4の結果から、水酸化リチウム水溶液とシリカコロイド(30%)の純分比率は1:0.1〜100が好ましいことが判る。
また、最も浸透性がよいのは1:0.5付近であった。また、浸透性が悪い場合でもコンクリート表面が稠密化された。
ケース5〜8の場合の浸透状態を、図12(a)〜(d)にそれぞれ示す。ケース5〜7では、白い固形物がコンクリート表面に密着し稠密化されている。ケース8では、半透明の固形物がコンクリート表面に密着し稠密化されている。
ケース7の配合について、A&D製の動粘度計を用いて粘度の測定を行った結果を、図10aに示す。水酸化リチウムとシリカコロイドを混合して配合した時は粘度が高い値を示すが、撹拌を行うとすぐに粘度が下がり、ゾル状に戻り、低粘度で、ゲル化しないまま維持されるため、浸透性に優れ長い時間の施工にも使用できる。もし、途中でコンクリート表面付近で流動性を低下させたいならば、合流したまま攪拌しないで補修部に供給すればよい。ケース5,6,8,9,14,15,16,17も同様な粘度を示した。撹拌を行わなかった配合は、ゲルのまま粘度を維持していた。即ち、図2に示すように低い送液速度で補修部に供給すれば、中性化されたまたは亀裂を生じた透水性の低いコンクリート内に割裂することなく、浸透してアルカリ化を図ることができる。また、この場合、図5〜図8の施工システムを用いると一箇所当り低流速(1〜5リットル/min)で複数の補修箇所へ急速施工が可能になる。
撹拌を行いゾル状に戻してコンクリートの内部に浸透注入させて、コンクリート表面には、撹拌を行わないでゲル状のまま被覆して用いることもできる。ゲル状のまま用いる利点は、先に浸透した処理液が表面に流出してこないようにブロック効果を生ずる(図8,図10)。また、コンクリート表面に留まって稠密化されるので効率が良い点であり、さらには、コンクリートの天井部や側面などの表面に被覆して内部の浸透した処理液が落下しないように、また、表面を稠密化するのに最適である。
図10dは、更に前述した固結材で被覆して表面強化を図ったものである。また、あらかじめ補修箇所の周辺の表面にセメントや樹脂等の固結材を吹付けや塗布してから補修材を低吐出量で注入すれば注入中表面に漏出させないで浸透させることができる。
図12(e),(f)は、ケース7の配合を攪拌液を浸透させたあと、撹拌せずに使用した様子である。コンクリート表面に保持し、ゲルが保持されている。
実際の施工において具体的に図7の送液システムで説明すると、第1液(アルカリ剤)または第1液と第2液の混合攪拌液を送液してアルカリ剤を浸透させてから第2液(シリカ溶液)を送液して、強いアルカリ液に接触させれば接触面でゲル化して流動性を失ってブロック化される(図10e,10f)。または、図9の装置を用いて攪拌液を作って、図7のシステムを用いて第1液で送液して浸透させたあと、第1液と第2液を送液して混合液でブロック化してもよい(図10e)。図1,図5,図6,図8の送液システムを用いても同様である。
<実験6>
使用する材料は、以下を用いた。
シリカコロイド(コロイダルシリカ)、微小コロイダルシリカ、5号水ガラス、低モル比珪酸ナトリウム:前記と同じもの。
樹脂:SKWイーストアジア(株)製 SITREN P750(変性シラン/シロキサンベース)
(ひび割れの閉塞・緻密化工法の実験)
コンクリート構造物は、再アルカリ化によって耐久性の向上を図れるが、ひび割れを閉塞することによって、コンクリートのCOによる再中性化を防ぎ、さらに耐久性を向上させることができる。本発明はアルカリ剤とシリカ溶液を併用することによって、このような機能を持つことは前述した通りであるが、以下に、コンクリートの供試体を用いて実験を行った。
コンクリート供試体(50mm×50mm×25mm)を半分に割裂してから、再び割裂面を合わせてガムテープで固定し、ひび割れ状態の供試体を作製し、水酸化リチウム水溶液(4.5N)を深さ2mmまで注いだ容器の中にこの供試体を置き、7日間水酸化リチウム水溶液を浸漬させた。その後、供試体を容器から取り出し、同様に各種シリカ溶液を深さ2mmまで注いだ容器の中に供試体を置き、7日間シリカ溶液を浸透させた。
シリカ溶液は供試体の割裂面全体に浸透し、割裂面上下を軽く手で引っ張っても離れないことを確認することで、ひび割れを閉塞できたことから、コンクリート同士が一体化されること、従ってコンクリート表面を緻密化されることが確認された(図12(e),(f))。
また、上記表5の実験結果から、アルカリ剤はシリカ溶液と併用すればその浸透は界面活性剤を用いなくても十分浸透している。したがって、優れた浸透性による再アルカリ化のみならず、シリカを併用することにより、コンクリートの表面は著しく緻密化されていることになる。さらにまた、シリカ溶液は、再アルカリ化に用いるアルカリ溶液と相性が良い。これは、シリカの一部がアルカリに溶解し、大きさの異なるシリカ溶液となるためと思われる。
また、シリカ溶液はアルカリによって低モル比のシリカ溶液になる。このため、シリカコロイドとアルカリとの混合液は、アルカリ雰囲気の中で大きな粒径のシリカコロイドと一部が低分子化した小さな粒径のシリカ粒子との複合シリカとなって、大きなシリカのネットの中に小さなシリカが組み込まれて、コンクリート表面のCa分と反応してコンクリート表面上で水分が蒸発して強固なゲル化物となる。
一方、コンクリートの表面は長年にわたって空気中のCOの作用、乾燥や雨水や高温、凍結等によって劣化要因にさらされる。
従って、シリカコロイドのように中性〜弱アルカリ付近のコロイドでは、気乾中で水分を失って粉状になりやすい。また、3号水ガラスや高モル比水ガラスは、空気中で水分を失って劣化し易い。しかし、アルカリの存在下では、コンクリートの表面においては水分が失われても、強固にコンクリートの表面に粘着性をもって付着し、歳月を経てもコンクリートの表面のCaやSiOと結合し、剥がれることがない。従って、高モル比水ガラスや3号水ガラスをシリカとして用いる場合は、アルカリと併用するのが望ましい。特に、シリカコロイドとアルカリとの混合物は、シリカコロイドの一部がアルカリで溶解して低分子シリカとシリカコロイドとの複合シリカとなり、コンクリート表面に大きなシリカのネットに小さなシリカが入り込みコンクリート表面のCaと結合して、実験によれば劣化しない被覆を形成し、あるいは、コンクリート表面の割れ目を閉塞して、稠密なシリカ−Ca被覆層を形成し、コンクリート表面を防護するものと思われる。
アルカリ剤を加えたシリカコロイドは、微細なコンクリート亀裂中でシリカコロイドが一部溶解して内部にはアルカリ分が浸透し、または亀裂の微細部分に浸透しコンクリート内部を再アルカリ化し、亀裂の大きな入り口に近い部分にはシリカコロイドの多い液が充填されるために、乾燥に伴い強固な防護被覆を形成すると思われる。
また、シリカコロイドにアルカリ溶液を少量添加することによって、コンクリート表面におけるシリカコロイドの硬化強度の発現を容易にすることが分かった。
さらに、施工においては、再アルカリ化した後、ひび割れ閉塞・緻密化工法が実施でき、低コストで施工できる(図10)。
(ひび割れの閉塞強度測定実験)
引張強度試験を行うコンクリートの供試体としては、事前準備にて作製したコンクリートを用いた。中性化促進試験を行ったコンクリートを20mm×50mm×70mm前後のサイズに調整し、真ん中で割れるように割裂させた。割裂させたコンクリート面を再度合わせ輪ゴムで固定しひび割れ状態の供試体を作製した。
割裂させ、輪ゴムで固定したコンクリートの亀裂面が垂直になるように置きアルカリ溶液をビーカーに20g入れ、浸透させたのちに各種シリカ溶液10gを浸透後に作製された。浸透させたコンクリート供試体を、10日間大気中に静置した後に、平型チャックに試験片の端を挟み、割裂面を引っ張れるように設置した。引張圧縮試験機は、(株)今田製作所のSDW2000T−SLを使用した。引張速度は10mm/1minで行った。測定した結果を、下記表6に示す。
上記の表6の結果から、実施例1〜4はひび割れ部に浸透して気中で硬化した。シリカ溶液の付着強度が強いことが分かった。シリカ溶液を浸透させなかった場合は、割裂面の接着が起きなかった。
また、アルカリ剤を浸透させずにシリカ溶液を浸透させた結果は、割裂面の接着が殆んど見られなかった。
次に、コンクリート構造物の再アルカリ化と中性化防止方法について説明する。
コンクリート構造物の中性化防止または再アルカリ化を行う工事は、通常、道路や鉄道に沿った橋梁、トンネル、道路等において行われ、その現場の特徴から以下の手法を用いることを本発明者らは見出した。
(1)補修延長が長いので、注入作業は長区間をプラントの移動をすることなく短時間で行えるか、または、プラント自体が走行することが望ましい。
(2)車や列車等の交通の供用中、または始発までの夜間の工事になるので急速施工が望ましい。
(3)アルカリ溶液を使用するため、通行人、または、労務者に対する安全性が要求されるので、施工の全自動化が望ましい。
(4)コンクリートの補修部分は透水性が小さいため、コンクリート処理剤は浸透性に優れるものを用い、かつ、浸透に長い時間をかけざるを得ないが、多数の補修箇所を一度にまたは連続的に行うことによって作業時間を短くできることが望ましい。
(5)浸透しきれなかった余剰液は、回収されて再度利用できるのが望ましい。
(6)コンクリートの中性化部分の再アルカリ化とコンクリート表面の稠密化による中性化の予防を一体とする方法が望ましい。
(7)処理液は気中におけるコンクリートに対する浸透性、特に、毛細管現象による浸透性に優れ、かつ、乾燥して表面がコンクリートに固着して剥がれにくく、空気中のCOを遮断して再中性化を防ぐことが望ましい。
(8)処理液によるコンクリートへの補修方法としては、補修面に処理液を塗布する方法、吹付ける方法、注入する方法、毛細管現象により浸透させる方法が用いられるが、補修箇所は直立面や天端面が多いため、処理液を処理面に保持して浸透させることが必要であり、特に毛細管現象で浸透させる方法が望ましい。
本発明者らは、これらを考慮したコンクリート処理剤およびコンクリート構造物の補修工法を研究開発したものである。
図1は、橋脚の補修例を示す。図は、車上プラントから、中性化が進行しているコンクリートの表面の複数の補修箇所に同時に、または連続的にコンクリート処理材を供給する例である。図中のプラントの例を、図9に示す。図1aに示す例では、補修領域(補修箇所)(Xi)は不織布で覆っている。Xiは処理液の分岐送液管からの供給ポイントである。不織布の代わりに表面を被覆した図3や図5に示すような枠体でもよいし、図8に示すような注入孔(Di)でもよい。コンクリート表面処理剤は、補修箇所に、浸透、注入または吹付けによって供給できる。または、処理剤を図8(a)の中性化層の表面に塗布してもよい。また、浸透は毛細管現象で自然浸透させてもよい。また、毛細管現象で浸透させるために枠体を設けて、枠体内に処理液を供給して天端コンクリート、または側面のコンクリートに毛細管現象で浸透させることができる。この枠体はビニールシートのように可撓性材料で覆われた状態にしてもよい。不透水性材料で作れば、浸透しきれなかった液や注入しきれなかった液は、図5,図6のように処理液を回収して循環させて浸透させることができる。毛細管現象による浸透は、図12のように下から上に浸透するため、図10のような天端や側壁の補修に効果的である。このプラント(図9)や送液システム(図5〜図8)は軽量でかつ簡便な全自動式であるため、車上搭載が可能で、道路上を走行しながら施工できるので、道路やトンネル等を交通供用しながら施工できる(図1)。
コンクリート表面の亀裂などに浸透させるために、コンクリートの補修部の透水係数は少なく、そのため少量の一か所当りの送液量が、少量で注入管理できなくてはならない。でなければ、コンクリート表面に処理液が溢れ出てしまうし、亀裂を大きくしてしまう。従って、低粘度の処理液をゆっくりと少量ずつ低圧で時間をかけて浸透させなくてはならない(図2)。このため、1補修箇所当り、少量の送液量で複数の補修箇所に同時に、或は連続的に送液する。そのための基本的な送液システムの例を図1,図5〜図8に示す。オリフィスによる表面処理材料の供給原理を、図3,図4a〜図4dに示す。オリフィスは通常、ポンプ圧0.01〜4MPa/cmで、0.5〜5mmの細孔から1孔当り0.5〜10リットル/minの噴出量を得るのに適している。従って、コンクリートの補修面を破壊することなく浸透させるのに適している。
図4は、オリフィスを設けた管路における送液圧力(P)とノズル径(a)と噴出量(リットル/min)と浸透抵抗圧(P)の関係を示す。
図4aは、その試験装置であり、ノズル径(a)を設けた管路を外管内に挿入してノズルの両側にパッカを設けて、外管からの管路に圧力調整弁を設け、圧力調整弁の開度を調整する構造である。
ポンプで管路内に送液して、圧力(P)と流量を計測する。圧力調整弁の開度を調整して、ノズル径(a)から噴出した噴出液の圧力と流量を計測する。その際の圧力Pが浸透抵抗圧であり、その時の流量が噴出量である。
図4bは、圧力調整弁が全開した場合、すなわち、気中で送液した場合の送液圧(P)とノズル径(a)と噴出量の関係を示す。ポンプ圧力Pが一定時ノズル径が小さい圧力が高く、ノズル径が大きい程噴出量は大きくなる。
図4cは、オリフィスのノズル口径aと差圧ΔPと毎分噴出量の関係を示す。差圧ΔPは、ポンプの送液圧量Pとオリフィス下流の抵抗力圧力Pの差をいう。差圧が大きい程、ノズル口径が大きい程、噴出量は大きい。抵抗圧Pが大きく、送液圧力Pに近づくにつれて、噴出量は0に近づく(図4d)。図5dの状態で抵抗圧力P≒0ならばΔP=Pであるが、図5a,図1bのようにコンクリート中に加圧浸透させる場合は、浸透抵抗が大きい場合はΔPが小さくなり、噴出量は小さくなる。しかし、図4dのように浸透抵抗圧Pが充分小さければ、抵抗圧に多少の変化があっても、噴出量はノズル口径によって値が一定値を得ることができる。コンクリート表面からの浸透について言えば、コンクリート表面の微細な亀裂からの毛細現象によるアルカリ剤の自然浸透を基本にするならば、抵抗圧力はほとんど0に近く、したがって加圧送液圧とオリフィスの径に対応した一定の噴出量を得ることがわかる。したがって、図4fに示すように、補修箇所におけるコンクリートの中性化の程度や亀裂の大きさに応じて、ノズル口径やノズル数や補修箇所の数を複数にして、補修箇所毎に所定の噴出量の材料を同時に供給することができる。
本発明では、オリフィスのほかにレギュレータ((有)光匠技研製)を用いることができる。レギュレータは、上流側の圧力に対応して下流側の圧力と流量をコントロールすることができ、かつ、複数の管路に設けて、同時に圧力・流量をコントロールできるが、本発明ではレギュレータは流量・圧力可変式・オリフィスとみなして、オリフィスの一種として取り扱う。
もちろん、本発明ではオリフィスを用いなくても、コントローラにより分岐バルブを作動することにより分岐バルブのみを操作して、順次所定の補修ポイントに材料を供給することができる(図5a,図6,図8(b))。図8(b)では、オリフィスを用いないで分岐バルブを作動して、Vを開いて他を閉じればVのみから処理液が注入され、Viを開いて他を閉じればViから処理液が注入されるため、連続的にかつ選択的に処理液を注入できる。また、オリフィスを用いれば全ての補修部に同時注入が可能になる。
また、図8(c)に示す複数のユニットポンプやバルブをコントローラにより一括管理して、複数の補修箇所への同時供給や選択的に供給をすることが容易になる。
なお、上記において、保持体により区画される隔室は、図5、図6cのように枠体を補修箇所毎に設けてもよいし、連続していてもよいし、図3のように独立していてもよい。また、隔室の上側は、解放されていて袋状になっていてもよい。さらに、隔室の代わりに、コンクリート処理剤を保持可能な、不織布のような保水性の繊維マットを補修箇所に被覆して、そのマットに表面処理剤を供給し、時間とともに毛細現象でコンクリート表面に浸透させるものでもよいし、また、隔室の中にこれらのマットを保持して、コンクリート表面に浸透させてもよい。さらにまた、枠体は、可撓性でコンクリート構造物の形状に順応するものでもよい。さらにまた、隔室の枠体がコンクリート面に接着テープで水密性に固定されていてもよいし、また、図6cのように隔室が水密性で、かつ、耐圧性に保たれていれば、処理剤をコンクリート面に加圧浸透させることができる。
図9は、複数のシリンダーポンプを用いて、1液(アルカリ溶液)と2液(シリカ溶液)とを合流させて、処理剤を調製し、補修箇所に供給して浸透させる装置の例である。
ユニットポンプは、コントローラで一括制御されているので、複数の所定の補修箇所に、所定の吐出量で、処理剤を同時に、または、選択的に供給できる。
本発明における図5の送液分岐管、図6、図7、図8の送液管はシンフレックスチューブのように直径0.5〜2.0cm程度のプラスチック製の可塑性チューブを用いることができ、処理液送液プラントを一箇所に設置して、補修箇所に注入孔(図6)や、図6の隔室や、図1の不織布を交通量の少ない夜間中に設けて、補修箇所からプラントまで送液管を伸ばして設置しておけば、交通の供用に支障を生じず、また供用中にも施工が可能になる(図5,図6,図7,図8)。
図1c、図5a,5d,5e、図6b,6c、図7は、コンクリート処理剤の、回収および再利用の循環システムを示す。
本発明では、コンクリートの表面から毛細管現象等や低吐出量の同等送液で浸透させることを基本にしているため、施工が容易であるが、一方、コンクリートの透水性は極めて小さく補修箇所の透水性は多様なため、供給した処理剤が全て補修箇所のコンクリートに浸透するとは限らず、通常、残余部が生ずる。この残余部を、吸水ポンプ等の吸入管によって回収するシステムの例を示したものである。吸水バルブや注入液の分岐バルブは、コントローラによって操作されて、送液および回収を繰り返して循環させることにより、浸透に充分な時間をかけて、処理を行うことができる。
図6bは、隔室Ai、処理剤の送液管路と回路変換バルブViと補修ポイントXiと回収液管路と、回収ポイントの吸水バルブZiとコントローラによる回路変換バルブの作動電気信号回路と回収管路バルブの作動電気信号回路を示す。
また、コンクリート構造物における補修箇所への処理液の浸透は浸透残液が生ずるし、図8の場合、処理液が溢れ出すことは避けられない。そのためには、補修箇所に監視カメラを設置して、監視カメラにより状況を把握し、その情報をコントローラに送信して、施工管理、安全施工を行うことが必要である。この場合、コントローラを作動して送液の調整や残余液の回収をしなくてはならない。そのためのシステムを図5,図6,図8に示す。
図9は、第1液と第2液との混合システムであって、コンパクトで全自動のシステムである。もちろん、第1液および第2液をY字管で合流して、ミキサー中で攪拌混合してもよい。図示する混合システムでは、処理剤に含まれる複数の原料液を収容する複数の原料液槽から送液ポンプを用いて原料液を混合液槽に送液し、複数の原料液を混合攪拌して、処理剤を製造する。この際、送液ポンプとして、原料液を吸引しかつ吐出するシリンダーポンプを用い、制御機構により、複数のシリンダーポンプの吸引および吐出が同一時間内に同調するように、具体的には、複数のシリンダーポンプのピストンのストロークが、複数の原料液の配合比率をもって同じ時間内で完了するように、複数のシリンダーポンプのピストンのストロークおよび速度を、制御する。
図10aは、上記ケース7の配合についてA&D製の動粘度計を用いて粘度の測定を行った結果を示す。水酸化リチウム水溶液とシリカコロイドを混合した配合時点では粘度が高い値を示すが、撹拌を行うとすぐに粘度が下がりゾル状に戻る。乾燥しなければ低粘度で維持されるため、長い時間の施工にも使用できる。ケース5,6,8,9,14,15,16も同様な粘度を示す。撹拌を行わなかった配合はゲルのまま粘度を維持している。
撹拌を行いゾル状に戻してコンクリートの内部に浸透注入をさせて用い、コンクリート表面には撹拌を行わないでゲル状の状態でコンクリート表面に塗布して用いることもできる(図10b)。ゲル状のまま用いる利点はコンクート表面に留まって稠密化をされるので効率が良いこと、さらにはコンクリートの天井部や側面などの表面に最適である。
図10bにおいて、補修箇所をドリリングして、そのスライムのpHを測定し、フェノールフタレインによる赤色反応の有無を調べ、赤色反応しない領域は中性化し、赤色反応をし始めた深度からは中性化していない領域であると判断できる。この検査に基づいて、赤色反応を生じた深さ迄ドリリングして、その孔内にアルカリ剤を浸透させて、アルカリ化を行う。複数の孔内に注入管を挿入して、送液ラインを連続させて図8の方法で同時または連続注入が可能になる。また、孔内に不織布等を挿入して、毛細管現象でアルカリ剤、あるいはアルカリシリカ溶液を浸透させることもできる。
図10cは、コンクリート表面から毛細管現象により、コンクリート表面処理剤を浸透被膜した例である。
図10dは、アルカリ剤を浸透させた上で、更に表面から表面処理剤を浸透させて、先行したアルカリ剤が逆流しないようにブロック化し、または、更にその表面に固結材を被覆した例を示す。
図10e,10fはケース7の配合を撹拌せずに使用した様子である。コンクリート表面に保持し、ゲルが保持されている。また、図10b〜10cは、本発明におけるコンクリートの中性化度の調査と補修を一体化した技術を提供する。
図10g〜10lは、補修領域は可撓性枠材(または隔室)やビニール製の被覆層(または袋状被覆)で覆い、その内部にコンクリート処理液を満たし、毛細管現象で浸透させる例を示す。
図10gは、アルカリ剤を浸透させたあと、アルカリ剤とシリカ溶液の混合液、またはシリカ溶液を浸透させる例を示す。
シリカ溶液は先行しているアルカリ液と反応して、表面に流動しにくいゲルを作り、水分の蒸発と共に強固なキセロゲルとなって、コンクリート表面を被覆する。
図10iは、先行してアルカリ液とシリカ溶液の混合液を枠材内に充填して、毛細管現象で浸透させた例である。
図10jは、図10iのあと、更にシリカ溶液を浸透させた例である。
図10kは天端の補修箇所にアルカリ液を浸透させたあと、シリカ溶液を浸透させた例である。
図10lでは、枠材の内部に不織布をコンクリート補修箇所に密着させて、コンクリート処理液(アルカリ液+シリカ溶液)を不織布に保持させて時間をかけてコンクリート表面に毛細管現象で浸透させる。コンクリート処理液は枠体内に保持され、それが毛細管現象で不織布に浸み込み、不織布から毛細管現象でコンクリート内に浸透する例である。
補修箇所に不織布をカバーし、その上にビニールを被覆し、その上を枠材で押さえて、かつ底部、または側面部から漏出しないようにシールしておき、上部からアルカリ剤を供給すれば、不織布がコンクリート面に垂直で敷設されていても、または、コンクリートの底面に敷設されていても、毛細管現象で不織布全面にアルカリ剤がゆきわたり、さらに、コンクリート亀裂に毛細管現象で浸透する。この際、枠材とビニール被覆の間に空気マットを挟んでおき、空気圧を加えれば不織布中のアルカリ剤は強制的に割れ目に浸透する。
毛管上昇高は、水が毛管中を上昇しうる高さの限度で、この高さh(m)は次式で表される(図17)。
(上記式中、T=表面張力(N/m(20℃))、θ=接触角(°)、ρ=液体の密度(kg/m)、g=重力加速度(m/s)、r=管の内径(半径)(m))
次に、図18(a)では、プラスチック容器の中にさらに、ろ紙容器を入れ、下記表7のB液をろ紙容器の中に入れて、スラグ系物質の強度を測定した。図18(b)では、プラスチック容器の中にさらに、ろ紙容器を入れ、下記表7のA液のアルカリ剤をろ紙容器の側面に入れ、ろ紙容器の中には下記表7のB液のスラグ系物質を入れて、スラグ系物質の強度を測定した。強度を測定する機器としては、軟岩ペネトロ計(針貫入試験器)SH−70((株)丸東製作所製)を使用した。
図18(a)の実験では、下記表7のケース1〜6のB液を配合し、B液のみの固化確認を行った。図18(b)の実験では、下記表7のA液はLiOH(4.5N)のみ、または、LiOH(4.5N)に対し体積比10%のコロイダルシリカを入れたものを用いた。下記表7のA液の作製液量はB液の体積の2倍とした。
ケース1,3、4、6は固化せず、ケース2,5は固化した。固化したケース2,5の28日強度を測定したところ、強度はそれぞれ3MN/mであった。
次に、A液を容器内に入れ、ろ紙の中にケース1,3、4、6のB液を注ぎ入れた。養生1日後はケース1,3、4、6のB液は固化した。A液を容器内にいれ、ろ紙の中にケース2のB液を注ぎいれた。養生28日後のB液の強度は、図18(a)の実験よりも30〜40%強度が増加した。
また、A液を容器内に入れ、ろ紙の中にケース2のB液を注ぎ入れた。養生28日後のB液の強度は図18(a)の実験よりも30〜40%強度が増加した。A液を容器内に入れ、ろ紙の中にケース5のB液を注ぎ入れた。養生28日後のB液の強度は、図18(a)の実験よりも30〜40%強度が増加した。
B液をA液に浸した場合は、B液にA液が浸透して、28日強度はそれぞれほぼ3〜4割程度増加することが分かった。
このような現象は、スラグ系のみならず、前述した焼成工程を経たシリカ粉末、すなわち、ポゾラン系材料であれば同様に、アルカリにより水硬性によって固化することが分かった。
図19は、図18に対応した注入モデルを示す。
図19(a)は、劣化したコンクリート構造物に接触した地盤にスラグ系グラウト(ポゾラン系グラウト)を注入したのち、その境界面に、上記アルカリ剤またはアルカリ剤とシリカ溶液との混合液を注入する例である。注入されたアルカリ剤は、ポゾラン系固結ゾーンによって遮断されて、劣化したコンクリートに浸透する。また、浸透しきれなかった残余は、ポゾラン系固結ゾーンを強化する。このようにアルカリ剤はポゾラン内部で消費されて、周辺地盤への流出を防ぐ効果がある。下記表8に、各アルカリ剤(a)〜(c)を注入した際の地下水のpHを測定した結果を示す。また同様に、図19(b)では、劣化したコンクリートに接して任意の注入材を注入して止水ゾーンを形成した上で、コンクリートの止水ゾーンの境界面にアルカリ剤を注入することによって、劣化したコンクリート内部にアルカリ剤を浸透させて、コンクリートの再アルカリ化をすることができる。下記表9に、各アルカリ剤を注入した際のコンクリート強度の経時的な測定結果を示す。

Claims (28)

  1. アルカリ液を含むコンクリート処理剤をコンクリート構造物の表面から浸透させて、劣化したコンクリートのアルカリ化を行うとともに、コンクリートの劣化を防止することを特徴とするコンクリート構造物の補修工法。
  2. 前記アルカリ液とアルカリ液保持材とを併用して、劣化したコンクリートの再アルカリ化を行うとともに、コンクリート表面を稠密化して中性化を防止する請求項1記載のコンクリート構造物の補修工法。
  3. 前記アルカリ液とアルカリ液保持材とを併用して、地盤中のコンクリートのアルカリ化を行うとともに、コンクリートの劣化を防止する請求項1または2記載のコンクリート構造物の補修工法。
  4. コンクリート構造物の周辺地盤に固結体を形成し、該コンクリート構造物と該固結体との接触面に、前記アルカリ液または該アルカリ液と前記アルカリ液保持材とを注入して、コンクリートのアルカリ化またはコンクリートの劣化防止を行う請求項3記載のコンクリート構造物の補修工法。
  5. 前記アルカリ液が、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有し、前記アルカリ液保持材が、シリカコロイド、珪酸塩水溶液、撥水材および樹脂系被覆材からなる群から選択される一種以上を含有する請求項2〜4のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  6. 前記アルカリ液を含むコンクリート処理剤として、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の珪酸塩、または、これらの少なくともいずれか一種とシリカコロイドとの混合物を用いる請求項1記載のコンクリート構造物の補修工法。
  7. 前記アルカリ液と前記アルカリ液保持材とを、有効成分の純分比率が1:0.1〜100となるよう併用する請求項2〜4のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  8. 前記アルカリ液としての、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、前記アルカリ液保持材としての、シリカコロイドおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とを用いて、コンクリート構造物の内部に該第1液、または、該第1液と該第2液との混合物を浸透させた後、該コンクリート構造物の表面を該第2液、または、該第1液と該第2液との混合物により処理して稠密化を図って、中性化を予防する請求項2〜7のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  9. 前記アルカリ液としての、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および珪酸アルカリ金属塩溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、前記アルカリ液保持材としての、シリカコロイドおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とを用いて、該第1液と該第2液とを混合してゲル状物を得、該ゲル状物を攪拌してゾル状物とし、該ゾル状物をコンクリート構造物の表面に供給し浸透させ、その後、乾燥することで、該コンクリート構造物の表面にキセロゲルよりなる被覆物を形成する請求項2〜7のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  10. コンクリート構造物の補修箇所にドリリングを行ってドリリング孔を形成し、ドリリングにより生ずるスライムの指示薬による色の変化によって該コンクリート構造物の中性化の深度および分布を把握し、中性化層に前記アルカリ液、または、該アルカリ液と前記アルカリ液保持材との混合物を浸透させて、再アルカリ化を行う請求項2〜7のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  11. コンクリート構造物の表面または内部を前記コンクリート処理剤で処理するコンクリート構造物の補修工法であって、コンクリート処理剤の製造装置からコンクリート補修箇所に至るまでの、該コンクリート処理剤の送液管路に、任意の径の孔が設けられたオリフィスを設けた請求項1〜10のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  12. 前記コンクリート処理剤の送液管路を複数設けて、前記コンクリート構造物の表面における複数の補修箇所に該コンクリート処理剤の注入を行うにあたり、前記オリフィスを該複数の送液管路ごとに設けて、該複数の補修箇所に、同時にまたは選択的に、該コンクリート処理剤を送液する請求項11記載のコンクリート構造物の補修工法。
  13. コンクリート処理剤の製造装置で製造された前記コンクリート処理剤を、複数のユニットポンプを経て、コンクリート構造物の表面における複数の補修箇所に送液し、該複数のユニットポンプの駆動をコントローラで一括管理することにより、該複数の補修箇所に、同時にまたは選択的に、該コンクリート処理剤を送液する請求項1〜12のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  14. コンクリート処理剤の製造装置で製造された前記コンクリート処理剤を、1つの送液ポンプを経て、送液管路から複数の分岐バルブを介して、コンクリート構造物の表面における複数の補修箇所に送液し、該複数の分岐バルブを作動させることにより、該複数の補修箇所に、連続的にまたは選択的に、該コンクリート処理剤を送液する請求項1〜12のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  15. コンクリート処理剤の製造装置から注入管路を延ばすことにより、前記複数の補修箇所毎に該製造装置を移動させることなく、前記コンクリート構造物に面した交通の供用を可能にしながらコンクリート構造物の処理を行う請求項1〜14のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  16. コンクリート処理剤の製造装置を車両に搭載して、コンクリート構造物に沿って該車両を走行移動させながら、該コンクリート構造物の表面または内部を、該製造装置で製造された前記コンクリート処理剤を用いて処理する請求項1〜15のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  17. コンクリート処理剤を用いて、コンクリート構造物の中性化防止、または、該コンクリート構造物の表面の稠密化を行うコンクリート構造物の補修工法であって、該コンクリート構造物の表面を被覆するコンクリート処理剤用の保持体を設け、該保持体内に該コンクリート処理剤を供給する請求項1〜16のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  18. 前記保持体を複数配置して、複数の送液管路を用いて該複数の保持体内に、同時にまたは選択的に、前記コンクリート処理剤を供給する請求項17記載のコンクリート構造物の補修工法。
  19. 前記コンクリート構造物の表面に浸透せずに該保持体内に残存した該コンクリート処理剤を、吸入管を介して回収する請求項17または18記載のコンクリート構造物の補修工法。
  20. 前記吸入管から回収された前記コンクリート処理剤を再利用して、前記コンクリート構造物の処理に用いる請求項19記載のコンクリート構造物の補修工法。
  21. 前記コンクリート処理剤の回収と、回収された該コンクリート処理剤の再供給と、を繰り返して、該コンクリート処理剤を循環させる請求項20記載のコンクリート構造物の補修工法。
  22. 前記保持体として、枠体または処理剤保持性マットを用いる請求項17〜21のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  23. 前記コンクリート処理剤を、前記コンクリート構造物の表面または内部に、毛細管現象による浸透、注入、吹付けおよび塗布のうちのいずれかにより適用する請求項1〜22のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  24. 前記コンクリート構造物の補修箇所のいずれかに監視カメラおよび/または変位センサーを設置して施工管理を行う請求項1〜23のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法。
  25. 請求項1〜3のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート処理剤であって、前記アルカリ液が水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される一種以上であり、かつ、前記アルカリ液保持材がシリカコロイド、活性シリカおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上であることを特徴とするコンクリート処理剤。
  26. 請求項1〜9のうちいずれか一項記載のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート処理剤であって、前記アルカリ液および/または前記アルカリ液保持材が、モル比2.8以下の水酸化リチウム、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムの水溶液、または、アルカリ金属の珪酸塩水溶液を含有することを特徴とするコンクリート処理剤。
  27. 請求項2〜9記載のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート処理剤であって、前記アルカリ液としての、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび珪酸アルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上を含有する第1液と、前記アルカリ液保持材としての、シリカコロイドおよび珪酸塩水溶液からなる群から選択される一種以上を含有する第2液とからなり、該第1液と該第2液とを混合してゲル状物を得、該ゲル状物を攪拌してゾル状物とし、該ゾル状物をコンクリート構造物の表面に供給し浸透させ、その後、乾燥することで、該コンクリート構造物の表面にキセロゲルよりなる被覆物を形成することを特徴とするコンクリート処理剤。
  28. 請求項2記載のコンクリート構造物の補修工法に使用する、アルカリ液とアルカリ液保持材とを有効成分とする複数の原料液を混合してなるコンクリート処理剤の製造装置であって、
    前記コンクリート処理剤に含まれる複数の原料液をそれぞれ収容する複数の原料液槽と、該複数の原料液槽から複数の原料液をそれぞれ送液する複数の送液ポンプと、該複数の原料液を混合攪拌して該コンクリート処理剤を製造する混合液槽と、を備え、
    前記送液ポンプが、前記原料液を吸引しかつ吐出するシリンダーポンプよりなり、該複数のシリンダーポンプの吸引および吐出が同一時間内に同調するように制御する制御機構が設けられていることを特徴とするコンクリート処理剤の製造装置。
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