JP2015058845A - 車高調整装置、車高調整方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】変位することで車両の車両本体と車輪との相対的な位置を変更可能な複数のフロントフォーク、リヤサスペンションと、複数のフロントフォーク、リヤサスペンションの変位量を変更することで車体フレームの高さである車高を調整する制御装置と、を備え、制御装置は、複数のフロントフォーク、リヤサスペンション内のいずれかの装置が故障した場合には、故障した装置の変位量に基づいて、故障していない装置の変位量を制御する。
【選択図】図16
Description
そして、例えば、特許文献1に記載の車高調整装置は、自動二輪車の車速に応答して自動的に車高を変え、車速が設定速度になったら自動的に車高を高くし、車速が設定速度以下になると自動的に車高を低くする。
本発明は、複数の変更手段のいずれかに故障が生じた場合でも、車両の姿勢を整えることができる車高調整装置を提供することを目的とする。
また、前記複数の変更手段は、変位量が大きくなるに従って前記車高を高め、前記制御手段は、前記複数の変更手段内の少なくとも2つ以上の変更手段が故障した場合には、前記故障していない変更手段の変位量が、故障した2つ以上の変更手段の変位量の内、車高に寄与する成分が最も小さい変更手段の変位量に応じて予め定められた変位量となるように当該故障していない変更手段を制御してもよい。
また、前記複数の変更手段は、前記車両本体と前輪との相対的な位置である前輪側相対位置を変更可能な複数の前輪側変更手段と、当該車両本体と後輪との相対的な位置である後輪側相対位置を変更可能な複数の後輪側変更手段と、を有し、前記制御手段は、前記複数の後輪側変更手段の内のいずれかの後輪側変更手段が故障した場合には、前記後輪側相対位置を把握し、把握した当該後輪側相対位置に基づいて、前記複数の前輪側変更手段の移動量を制御してもよい。
また、前記制御手段は、前記複数の後輪側変更手段の内のいずれかの後輪側変更手段が故障した後に前記複数の前輪側変更手段の内のいずれかの前輪側変更手段が故障した場合には、前記前輪側相対位置および前記後輪側相対位置の内、車高に寄与する成分が大きい方の相対位置が、車高に寄与する成分が小さい方の相対位置に応じて予め定められた相対位置となるように故障していない変更手段を制御してもよい。
また、前記複数の変更手段は、流体の流通経路上に設けられて、供給される電力に応じた開度に調整される電磁弁を有し、当該電磁弁の開度に応じて当該流体の圧力が変化することで変位し、前記制御手段は、前記電磁弁の開度が任意の開度となるように当該電磁弁に印加する電圧をPWM制御してもよい。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る自動二輪車1の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、図1に示すように、車体フレーム11と、この車体フレーム11の前端部に取り付けられているヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12に設けられた2つのフロントフォーク13と、この2つのフロントフォーク13の下端に取り付けられた前輪14と、を有している。2つのフロントフォーク13は、前輪14の左側と右側にそれぞれ1つずつ配置されている。図1では、右側に配置されたフロントフォーク13のみを示している。このフロントフォーク13の具体的構成については後で詳述する。
また、自動二輪車1は、フロントフォーク13の上部に取り付けられたハンドル15と、車体フレーム11の前上部に取り付けられた燃料タンク16と、この燃料タンク16の下方に配置されたエンジン17および変速機18と、を有している。
また、自動二輪車1は、フロントフォーク13の後述する前輪側電磁弁270およびリヤサスペンション22の後述する後輪側電磁弁170の開閉を制御することで自動二輪車1の車高を制御する制御手段の一例としての制御装置50を備えている。制御装置50には、上述した前輪回転検出センサ31、後輪回転検出センサ32、荷重検出センサ33などからの出力信号が入力される。
図2は、リヤサスペンション22の断面図である。
リヤサスペンション22は、自動二輪車1の車両本体の一例としての車体フレーム11と後輪21との間に取り付けられている。そして、リヤサスペンション22は、自動二輪車1の車重を支えて衝撃を吸収する後輪側懸架スプリング110と、後輪側懸架スプリング110の振動を減衰する後輪側ダンパ120と、を備えている。また、リヤサスペンション22は、後輪側懸架スプリング110のバネ力を調整することで車体フレーム11と後輪21との相対的な位置である後輪側相対位置を変更可能な後輪側相対位置変更装置140と、この後輪側相対位置変更装置140に液体を供給する後輪側液体供給装置160と、を備えている。また、リヤサスペンション22は、このリヤサスペンション22を車体フレーム11に取り付けるための車体側取付部材184と、リヤサスペンション22を後輪21に取り付けるための車軸側取付部材185と、車軸側取付部材185に取り付けられて後輪側懸架スプリング110における中心線方向の一方の端部(図2においては下部)を支持するばね受け190と、を備えている。リヤサスペンション22は、車体フレーム11と後輪21との相対的な位置を変更する変更手段の一例として機能する。
後輪側液体供給装置160は、後輪側ダンパ120の上蓋124に中心線方向に延びるように固定された円筒状のパイプ161を有している。パイプ161は、円筒状のピストンロッド127の内部であるポンプ室162内に同軸的に挿入されている。
以上のように構成された後輪側液体供給装置160は、自動二輪車1が走行してリヤサスペンション22が路面の凹凸により力を受けると、ピストンロッド127がシリンダ125およびパイプ161に進退する伸縮動によりポンピング動作する。このポンピング動作により、ポンプ室162が加圧されると、ポンプ室162内の液体が吐出用チェック弁163を開いて後輪側相対位置変更装置140のジャッキ室142側へ吐出され(図3(a)参照)、ポンプ室162が負圧になると、シリンダ125の第2油室132内の液体が吸込用チェック弁164を開いてポンプ室162に吸い込まれる(図3(b)参照)。
後輪側電磁弁170が全開状態から少しでも閉じた状態のときに、後輪側液体供給装置160によりジャッキ室142内に液体が供給されるとジャッキ室142内に液体が充填され、支持部材141が油圧ジャッキ143に対して中心線方向の一方の端部側(図4(a)では下側)に移動し、後輪側懸架スプリング110のバネ長が短くなる(図4(a)参照)。他方、後輪側電磁弁170が全開になるとジャッキ室142内の液体は液体溜室143aに排出され、支持部材141が油圧ジャッキ143に対して中心線方向の他方の端部側(図4(b)では上側)に移動し、後輪側懸架スプリング110のバネ長が長くなる(図4(b)参照)。
なお、後輪側電磁弁170は、制御装置50によりその開閉が制御される。
また、後輪側電磁弁170が開いたときに、ジャッキ室142に供給された液体を排出する先は、シリンダ125内の第1油室131および/または第2油室132であってもよい。
図5は、車高が維持されるメカニズムを示す図である。
戻し路121aにより、後輪側電磁弁170が全閉しているときにジャッキ室142内に液体が供給され続けても、供給された液体がシリンダ125内に戻されるので油圧ジャッキ143に対する支持部材141の位置、ひいてはシート19の高さ(車高)が維持される。
図6は、フロントフォーク13の断面図である。
フロントフォーク13は、車体フレーム11と前輪14との間に取り付けられている。そして、フロントフォーク13は、自動二輪車1の車重を支えて衝撃を吸収する前輪側懸架スプリング210と、前輪側懸架スプリング210の振動を減衰する前輪側ダンパ220と、を備えている。また、フロントフォーク13は、前輪側懸架スプリング210のバネ力を調整することで車体フレーム11と前輪14との相対的な位置である前輪側相対位置を変更可能な前輪側相対位置変更装置240と、この前輪側相対位置変更装置240に液体を供給する前輪側液体供給装置260と、を備えている。また、フロントフォーク13は、このフロントフォーク13を前輪14に取り付けるための車軸側取付部285と、フロントフォーク13をヘッドパイプ12に取り付けるためのヘッドパイプ側取付部(不図示)と、を備えている。フロントフォーク13は、車体フレーム11と前輪14との相対的な位置を変更する変更手段の一例として機能する。
また、前輪側ダンパ220は、内シリンダ222における中心線方向の一方の端部側(図6では下部側)に固定されるとともに、ピストンロッド227の円筒状部227aの外周に対して摺動可能なピストン226を備えている。ピストン226は、ピストンロッド227の円筒状部227aの外周面に接触し、シリンダ225内の液体(本実施の形態においてはオイル)が封入された空間を、ピストン226よりも中心線方向の一方の端部側の第1油室231と、ピストン226よりも中心線方向の他方の端部側の第2油室232とに区分する。
前輪側液体供給装置260は、前輪側ダンパ220の覆い部材230に中心線方向に延びるように固定された円筒状のパイプ261を有している。パイプ261は、後述する前輪側相対位置変更装置240の支持部材241の下側円筒状部241aの内部であるポンプ室262内に同軸的に挿入されている。
以上のように構成された前輪側液体供給装置260は、自動二輪車1が走行してフロントフォーク13が路面の凹凸により力を受けて、ピストンロッド227が内シリンダ222に進退すると、パイプ261が前輪側相対位置変更装置240の支持部材241に進退することによりポンピング動作する。このポンピング動作により、ポンプ室262が加圧されると、ポンプ室262内の液体が吐出用チェック弁263を開いて前輪側相対位置変更装置240のジャッキ室242側へ吐出され(図7(a)参照)、ポンプ室262が負圧になると、油溜室233内の液体が吸込用チェック弁264を開いてポンプ室262に吸い込まれる(図7(b)参照)。
前輪側電磁弁270が全開状態から少しでも閉じた状態のときに、前輪側液体供給装置260によりジャッキ室242内に液体が供給されるとジャッキ室242内に液体が充填され、支持部材241が油圧ジャッキ243に対して中心線方向の一方の端部側(図8(a)では下側)に移動し、前輪側懸架スプリング210のバネ長が短くなる(図8(a)参照)。他方、前輪側電磁弁270が全開になるとジャッキ室242内の液体は油溜室233に排出され、支持部材241が油圧ジャッキ243に対して中心線方向の他方の端部側(図8(b)では上側)に移動し、前輪側懸架スプリング210のバネ長が長くなる(図8(b)参照)。
なお、前輪側電磁弁270は、制御装置50によりその開閉が制御される。
また、前輪側電磁弁270が開いたときに、ジャッキ室242に供給された液体を排出する先は、第1油室231および/または第2油室232であってもよい。
油圧ジャッキ243の外周面には、図9に示すように、支持部材241が油圧ジャッキ243に対して中心線方向の一方の端部側(図8(a)および図8(b)では下側)に予め定められた限界位置まで移動したときに、ジャッキ室242内の液体を油溜室233内まで戻す戻し路(不図示)が形成されている。
戻し路により、前輪側電磁弁270が閉弁しているときにジャッキ室242内に液体が供給され続けても、供給された液体が油溜室233内に戻されるので油圧ジャッキ243に対する支持部材241の位置、ひいてはシート19の高さ(車高)が維持される。
図10(a)は、前輪側電磁弁270の概略構成を示す図であり、図10(b)は、後輪側電磁弁170の概略構成を示す図である。
前輪側電磁弁270は、いわゆるノーマルオープンタイプの電磁弁であり、図10(a)に示すように、コイル271を巻いたボビン272と、ボビン272の中空部272aに固定された棒状の固定鉄心273と、コイル271とボビン272と固定鉄心273を支持するホルダ274と、固定鉄心273の先端(端面)に対応して配置され、固定鉄心273に吸引される略円板状の可動鉄心275と、を備えている。また、前輪側電磁弁270は、可動鉄心275の先端中央に固定された弁体276と、ホルダ274と組み合わされるボディ277と、ボディ277に形成され、弁体276が配置される弁室278と、ボディ277に形成された開口部を覆うとともにボディ277と協働して弁室278を形成する覆い部材279と、弁体276と覆い部材279との間に配置されたコイルスプリング280と、を備えている。また、前輪側電磁弁270は、ボディ277に形成され、弁体276に対応して弁室278に配置された弁座281と、ボディ277に形成され、ジャッキ室242(図9参照)から弁室278に流体を導入する導入流路282と、ボディ277に形成され、弁室278から弁座281を経由して油溜室233の方へ流体を導出する導出流路283と、を備えている。
図11は、制御装置50のブロック図である。
制御装置50は、CPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を備えている。制御装置50には、上述した前輪回転検出センサ31、後輪回転検出センサ32、前輪側相対位置検出部295および後輪側相対位置検出部195などからの出力信号が入力される。
また、後輪側移動量把握部54は、後輪21の左側に配置されたリヤサスペンション22の後輪側相対位置変更装置140の支持部材141の油圧ジャッキ143に対する移動量(以下では、「左後輪側移動量Llr」と称す。)と、後輪21の右側に配置されたリヤサスペンション22の後輪側相対位置変更装置140の支持部材141の油圧ジャッキ143に対する移動量(以下では、「右後輪側移動量Lrr」と称す。)と、を把握する。
これら前輪回転速度演算部51、後輪回転速度演算部52、前輪側移動量把握部53、後輪側移動量把握部54、車速把握部56および電磁弁制御部57は、CPUがROMなどの記憶領域に記憶されたソフトウェアを実行することにより実現される。
図12は、電磁弁制御部57のブロック図である。
電磁弁制御部57は、前輪側移動量Lfの目標移動量である前輪側目標移動量を決定する前輪側目標移動量決定部571と、後輪側移動量Lrの目標移動量である後輪側目標移動量を決定する後輪側目標移動量決定部572と、を有する目標移動量決定部570を有している。また、電磁弁制御部57は、前輪側相対位置変更装置240の前輪側電磁弁270および後輪側相対位置変更装置140の後輪側電磁弁170に供給する目標電流を決定する目標電流決定部510と、目標電流決定部510が決定した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部520とを有している。
図13は、車高調整スイッチ34の外観図である。
車高調整スイッチ34は、図13に示すように、所謂ダイヤル式のスイッチであり、ユーザがつまみを回転させることにより、「低」と、「中」と、「高」とを選択できるように構成されている。そして、車高調整スイッチ34は、例えばスピードメータの近傍に設けられている。
目標移動量決定部570は、自動二輪車1が走行開始後、車速把握部56が把握した車速Vcが予め定められた上昇車速Vuよりも小さいときには目標移動量を零に決定し、車速Vcが上昇車速Vuより小さい状態から上昇車速Vu以上となった場合には、目標移動量を、車高調整スイッチ34の操作位置に応じて予め定められた値に決定する。より具体的には、前輪側目標移動量決定部571は、図14(a)に示すように、車速Vcが上昇車速Vuより小さい状態から上昇車速Vu以上となった場合には、前輪側目標移動量を、車高調整スイッチ34の操作位置に応じて予め定められた所定前輪側目標移動量Lf0に決定する。他方、後輪側目標移動量決定部572は、図14(b)に示すように、車速Vcが上昇車速Vuより小さい状態から上昇車速Vu以上となった場合には、後輪側目標移動量を、車高調整スイッチ34の操作位置に応じて予め定められた所定後輪側目標移動量Lr0に決定する。以降、車速把握部56が把握した車速Vcが上昇車速Vu以上である間は、前輪側目標移動量決定部571,後輪側目標移動量決定部572は、前輪側目標移動量,後輪側目標移動量を、所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0に決定する。車高調整スイッチ34の操作位置と、この操作位置に応じた所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0との関係は、予めROMに記憶しておく。前輪側移動量Lfと後輪側移動量Lrとに応じて自動二輪車1の車高が定まることから、車高調整スイッチ34の操作位置に応じて自動二輪車1の車高の目標値である目標車高を定め、この目標車高に応じた所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0を予め定め、ROMに記憶しておくことを例示することができる。なお、車高調整スイッチ34が「高」の位置であるときに、所定前輪側目標移動量Lf0,所定後輪側目標移動量Lr0は、フロントフォーク13,リヤサスペンション22が最大状態となる移動量に設定されることを例示することができる。
また、目標移動量決定部570は、車速把握部56が把握した車速Vcが下降車速Vdよりも大きい場合であっても、急ブレーキなどで自動二輪車1が急減速した場合には、目標移動量を零に決定する。つまり、前輪側目標移動量決定部571,後輪側目標移動量決定部572は、前輪側目標移動量,後輪側目標移動量を零に決定する。自動二輪車1が急減速したかどうかは、車速把握部56が把握した車速Vcの単位時間当たりの減少量が予め定められた値以下であるか否かで把握することができる。
前輪側目標電流決定部511は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、前輪側目標移動量と前輪側目標電流との対応を示すマップに、前輪側目標移動量決定部571が決定した前輪側目標移動量を代入することにより前輪側目標電流を決定する。
後輪側目標電流決定部512は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、後輪側目標移動量と後輪側目標電流との対応を示すマップに、後輪側目標移動量決定部572が決定した後輪側目標移動量を代入することにより後輪側目標電流を決定する。
後輪側作動制御部540は、後輪側目標電流決定部512が決定した後輪側目標電流と、後輪側検出部544が検出した実際の電流(後輪側実電流)との偏差に基づいてフィードバック制御を行う後輪側フィードバック(F/B)制御部541と、後輪側電磁弁170をPWM制御する後輪側PWM制御部542とを有している。
前輪側検出部534は、前輪側電磁弁駆動部533に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から前輪側電磁弁270に流れる実電流の値を検出する。後輪側検出部544は、後輪側電磁弁駆動部543に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から後輪側電磁弁170に流れる実電流の値を検出する。
次に、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに故障が生じた場合の、制御装置50の電磁弁制御部57が行う後輪側電磁弁170および前輪側電磁弁270の開閉制御処理について詳しく説明する。
2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに、前輪側電磁弁270,後輪側電磁弁170を全閉にしたとしても最大状態とはならない故障(以下、「最大化不能故障」と称す。)が生じることが考えられる。フロントフォーク13の最大化不能故障の原因としては、例えば、油圧ジャッキ243の外周面あるいは支持部材241の上側円筒状部241bにジャッキ室242内の液体を油溜室233に戻してしまう孔が、最大状態に維持する戻し路よりも下方の位置に形成されたことを例示することができる。一方、リヤサスペンション22の最大化不能故障の原因としては、例えば、外シリンダ121にジャッキ室142内の液体をシリンダ125内まで戻してしまう孔が戻し路121aよりも上方の位置に形成されたことを例示することができる。この最大化不能故障が生じた場合には、前輪側電磁弁270,後輪側電磁弁170を全閉にしたとしても液体がこの孔から油溜室233,シリンダ125内まで戻されることから最大状態とはならずにその孔の位置で移動量が維持される。以下では、最大化不能故障時に前輪側電磁弁270,後輪側電磁弁170を全閉にした場合に維持される移動量をそれぞれ「前輪側故障時移動量」、「後輪側故障時移動量」と称し、「前輪側故障時移動量」、「後輪側故障時移動量」となる前輪側電磁弁270,後輪側電磁弁170の開度をそれぞれ「前輪側故障開度」、「後輪側故障開度」と称す。
図16は、第1の実施形態に係る制御装置50の電磁弁制御部57が行う故障時処理の手順を示すフローチャートである。電磁弁制御部57は、この故障時処理を予め定めた期間毎に繰り返し実行する。
先ず、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに故障が生じているか否かを判断する(S1501)。これは、RAMに記憶された、左前輪側移動量Llf、右前輪側移動量Lrf、左後輪側移動量Llrおよび右後輪側移動量Lrrを読み込み、これらの値が目標移動量(目標移動量に所定の幅を持たせた範囲でもよい)になっていない期間が予め定められた期間を経過した場合に故障が生じていると判断する処理である。
また、本実施の形態に係る制御装置50の電磁弁制御部57は、実際の移動量が、決定した目標移動量となるようにPWM制御を行うため、左前輪側移動量Llf、右前輪側移動量Lrf、左後輪側移動量Llrおよび右後輪側移動量Lrrを無段階に変更することができる。そのため、故障した装置の前輪側故障時移動量,後輪側故障時移動量に応じた移動量に故障していない装置の移動量を調整することができる。ゆえに、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに故障が生じたとしても、自動二輪車1の高さを可能な範囲で高く維持することができる。つまり、もし、前輪側電磁弁270,後輪側電磁弁170を開く(OFFにする)か、閉じる(ONにする)かを切り替えるだけであるならば、いずれかの装置が故障した場合には、故障していない装置の電磁弁を開く(OFFにする)ことでしか調整できないため、限られた範囲でしか車高調整をすることができず、車高調整の自由度が低い。これに対して、本実施形態に係る制御装置50の電磁弁制御部57によれば、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに故障が生じたとしても自動二輪車1の高さを高くしつつ、姿勢を安定させることができる。
第2の実施形態に係る自動二輪車1においては、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに故障が生じた場合に、故障が生じていない装置の移動量をどのように定めるかが第1の実施形態に係る自動二輪車1とは異なる。以下では、第1の実施形態に係る制御装置50と異なる事項についてのみ説明し、同じ事項についての説明は省略する。
例えば、2つのフロントフォーク13の一方が、前輪側電磁弁270を閉じたとしても移動量が零となる故障(以下、「移動不能故障」と称す。)が生じた場合には、故障したフロントフォーク13は最小状態となる。他方、故障していない方のフロントフォーク13の液圧は維持されるためデューティ比に応じた移動量となる。そして、中心線方向に生じる荷重を2つのフロントフォーク13で略均等に受けるため、前輪側相対位置は、2つのフロントフォーク13がともに最小状態であるときの前輪側相対位置と、2つのフロントフォーク13がともに、故障していない方のフロントフォーク13のデューティ比であった場合の移動量であるときの前輪側相対位置との間の中間位置となる。例えば、故障していない方のフロントフォーク13が最大状態である場合には、前輪側相対位置は、2つのフロントフォーク13がともに最小状態であるときの前輪側相対位置と2つのフロントフォーク13がともに最大状態であるときの前輪側相対位置との間の中間位置となる。
このように、2つのフロントフォーク13それぞれの移動量と前輪側相対位置との間には相関関係がある。この相関関係を予め経験則に基づいて作成してマップ化しておき、このマップに、センサにて検出した2つのフロントフォーク13それぞれの移動量を代入することにより前輪側相対位置を把握することが可能となる。
同様に、2つのフロントフォーク13の移動量を調整する手法としては、2つのフロントフォーク13それぞれの移動量が同じになるように調整してもよいし、一方のフロントフォーク13のみの移動量を変えてもよい。一方のフロントフォーク13のみの移動量を変えることで予め定められた前輪側相対位置にする手法としては、予め作成しROMに記憶しておいた前輪側相対位置と1つのフロントフォーク13の移動量との対応関係を示すマップに、前輪側相対位置を代入することにより1つのフロントフォーク13の移動量を把握し、把握した移動量となるように前輪側電磁弁270の開度を制御することを例示することができる。
例えば、2つのフロントフォーク13が共に故障した場合には、前輪側相対位置を把握し、その高さに対応するように、2つのリヤサスペンション22の移動量を調整する。前輪側相対位置を把握する手法および2つのリヤサスペンション22の移動量を調整する手法は上述した手法と同じであることを例示することができる。ただし、2つのフロントフォーク13に移動不能故障が生じた場合には、車高調整を終了する。移動不能故障の原因としては、フロントフォーク13のジャッキ室142内から外部へ液体(本実施の形態においてはオイル)が漏れることが考えられる。液体が外部へ漏れる場合には、前輪側電磁弁270を閉じていたとしてもジャッキ室142内の液圧が高くならないことから移動量が零になる。移動不能故障であるか否かは、前輪側電磁弁270を閉じたとしても前輪側移動量把握部53が左前輪側移動量Llf、右前輪側移動量Lrfを零と把握することを例示することができる。
また、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内の3つの装置が故障した場合も上述したのと同じ手法で、故障が生じていない装置の移動量を調整する。
図17−1および図17−2は、第2の実施形態に係る制御装置50の電磁弁制御部57が行う故障時処理の手順を示すフローチャートである。電磁弁制御部57は、この故障時処理を予め定めた期間毎に繰り返し実行する。
先ず、電磁弁制御部57は、2つのフロントフォーク13および2つのリヤサスペンション22の内のいずれかに故障が生じているか否かを判断する(S1601)。これは、RAMに記憶された、左前輪側移動量Llf、右前輪側移動量Lrf、左後輪側移動量Llrおよび右後輪側移動量Lrrを読み込み、これらの値が目標移動量(目標移動量に所定の幅を持たせた範囲でもよい)になっていない期間が予め定められた期間を経過した場合に故障が生じていると判断する処理である。
第3の実施形態に係る自動二輪車1においては、前輪側相対位置変更装置240の前輪側電磁弁270および後輪側相対位置変更装置140の後輪側電磁弁170が、いわゆるノーマルクローズタイプの電磁弁である点が第1の実施形態および第2の実施形態に係る自動二輪車1と異なる。そして、この前輪側電磁弁270,後輪側電磁弁170のタイプの相違に応じて、第3の実施形態に係る電磁弁制御部57がコイルに印加するデューティ比が、第1の実施形態および第2の実施形態に係る電磁弁制御部57がコイルに印加するデューティ比と反比例する。
Claims (9)
- 変位することで車両の車両本体と車輪との相対的な位置を変更可能な複数の変更手段と、
前記複数の変更手段の変位量を変更することで前記車両本体の高さである車高を調整する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の変更手段内のいずれかの変更手段が故障した場合には、故障した変更手段の変位量に基づいて、故障していない変更手段の変位量を制御する
ことを特徴とする車高調整装置。 - 前記制御手段は、前記複数の変更手段内のいずれかの変更手段が故障した場合には、前記故障していない変更手段の変位量が、前記故障した変更手段の変位量に応じて予め定められた変位量となるように当該故障していない変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車高調整装置。 - 前記複数の変更手段は、変位量が大きくなるに従って前記車高を高め、
前記制御手段は、前記複数の変更手段内の少なくとも2つ以上の変更手段が故障した場合には、前記故障していない変更手段の変位量が、故障した2つ以上の変更手段の変位量の内、前記車高に寄与する成分が最も小さい変更手段の変位量に応じて予め定められた変位量となるように当該故障していない変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車高調整装置。 - 前記複数の変更手段は、前記車両本体と前輪との相対的な位置である前輪側相対位置を変更可能な複数の前輪側変更手段と、当該車両本体と後輪との相対的な位置である後輪側相対位置を変更可能な複数の後輪側変更手段と、を有し、
前記制御手段は、前記複数の前輪側変更手段の内のいずれかの前輪側変更手段が故障した場合には、前記前輪側相対位置を把握し、把握した当該前輪側相対位置に基づいて、前記複数の後輪側変更手段の移動量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車高調整装置。 - 前記複数の変更手段は、前記車両本体と前輪との相対的な位置である前輪側相対位置を変更可能な複数の前輪側変更手段と、当該車両本体と後輪との相対的な位置である後輪側相対位置を変更可能な複数の後輪側変更手段と、を有し、
前記制御手段は、前記複数の後輪側変更手段の内のいずれかの後輪側変更手段が故障した場合には、前記後輪側相対位置を把握し、把握した当該後輪側相対位置に基づいて、前記複数の前輪側変更手段の移動量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車高調整装置。 - 前記制御手段は、前記複数の前輪側変更手段の内のいずれかの前輪側変更手段が故障した後に前記複数の後輪側変更手段の内のいずれかの後輪側変更手段が故障した場合には、前記前輪側相対位置および前記後輪側相対位置の内、車高に寄与する成分が大きい方の相対位置が、車高に寄与する成分が小さい方の相対位置に応じて予め定められた相対位置となるように故障していない変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の車高調整装置。 - 前記制御手段は、前記複数の後輪側変更手段の内のいずれかの後輪側変更手段が故障した後に前記複数の前輪側変更手段の内のいずれかの前輪側変更手段が故障した場合には、前記前輪側相対位置および前記後輪側相対位置の内、車高に寄与する成分が大きい方の相対位置が、車高に寄与する成分が小さい方の相対位置に応じて予め定められた相対位置となるように故障していない変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の車高調整装置。 - 前記複数の変更手段は、流体の流通経路上に設けられて、供給される電力に応じた開度に調整される電磁弁を有し、当該電磁弁の開度に応じて当該流体の圧力が変化することで変位し、
前記制御手段は、前記電磁弁の開度が任意の開度となるように当該電磁弁に印加する電圧をPWM制御する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車高調整装置。 - 変位することで車両の車両本体と車輪との相対的な位置を変更可能な複数の変更手段の変位量を変更することで当該車両本体の高さである車高を調整する車高調整方法であって、
前記複数の変更手段内のいずれかの変更手段が故障した場合には、故障した変更手段の変位量に基づいて、故障していない変更手段の変位量を制御する
ことを特徴とする車高調整方法。
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