セクションの概要
I.) 定義
II.)158P1D7ポリヌクレオチド
II.A.)158P1D7ポリヌクレオチドの使用
II.A.1.)遺伝的異常のモニタリング
II.A.2.)アンチセンスの具体例
II.A.3.)プライマー及びプライマー対
II.A.4.)158P1D7をコード化する核酸分子の単離
II.A.5.)組換え核酸分子及び宿主‐ベクター系
III.)158P1D7関連タンパク質
III.A.)モチーフ含有タンパク質の態様
III.B.)158P1D7関連タンパク質の発現
III.C.)158P1D7関連タンパク質の修飾
III.D.)158P1D7関連タンパク質の用途
IV.)158P1D7抗体
V.)158P1D7細胞性免疫応答
VI.)158P1D7トランスジェニック動物
VII.)158P1D7の検出方法
VIII.)158P1D7関連遺伝子及びその産物のモニター方法
IX.)158P1D7と相互作用する分子の同定
X.)治療方法及び組成物
X.A.)抗癌ワクチン
X.B.)抗体に基づく治療の標的としての158P1D7
X.C.)細胞性免疫応答の標的としての158P1D7
X.C.1.ミニ遺伝子ワクチン
X.C.2.CTLペプチドとヘルパーペプチドとの組合わせ
X.C.3.CTLペプチドとT細胞プライミング剤との組合わせ
X.C.4.CTL及び/又はHTLペプチドでパルスしたDCを含んで
なるワクチン組成物
X.D.)養子免疫治療
X.E.)治療又は予防を目的とするワクチンの投与
XI.)158P1D7の診断及び予測の態様
XII.)158P1D7タンパク質機能の阻害
XII.A.)細胞内抗体による158P1D7の阻害
XII.B.)組み換えタンパク質による158P1D7の阻害
XII.C.)158P1D7の転写又は翻訳の阻害
XII.D.)治療戦略の一般的考察
XIII.)158P1D7モジュレーターの同定、特徴付け、及び、使用
XIV.)RNAi及び低分子干渉RNA(siRNA)の治療的使用
XV.)キット
I.) 定義
別に定義されていない場合、ここで使用される全ての技術用語、表記法、及び、他の科学用語若しくは用語法は、本発明が属する技術分野の当業者によって、一般に理解されている意味を有することを意図するものである。幾つかの場合には、一般に使用されている用語を、この中で、明瞭さのために及び/又は手早い参照(ready reference)のために定義し、並びに、この中でのそのような定義の包含は、必ずしも当業者に一般に理解されている事柄との間の相当の差異を表すために説明されるものではない。この中で説明又は参照される多くの技術及び手順は、当業者によって、よく理解され通常使用される常套的な方法論―例えば、Sambrook et al.によるMolecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.中で記載されている広範に使用されている分子クローニングの方法論―である。適切な、市販されているキット及び試薬の使用を含む手順としては、他に記載されていなければ一般的には製造業者の規定したプロトコール及び/又はパラメータに従って行われる。
用語「浸潤性膀胱癌(invasive bladder cancer)」は、膀胱筋肉壁内へ広がった膀胱癌を意味し、そして、ステージT2‐T4を含むこと及びTNM(腫瘍、結節、転移)系の下にある疾病を意味する。一般的には、これらの患者では、非浸潤性癌の患者と比較して、好ましい成果が得られることが少ない。胆嚢切除の後、50%又はそれ以上の浸潤性癌の患者が転移を起こしている(Whittmore. Semin Urol 1983; 1:4-10)。
「天然型糖修飾パターンの改変(altering the native glycosylation pattern)」とは、天然型158P1D7配列内に見出された1以上の糖質成分の欠失(内在性糖修飾部位の除去或いは化学的及び/又は酵素学的方法による糖修飾の削除)及び/又は、天然型158P1D7配列内に存在しない1以上の糖修飾の付加を、意味することをここでの目的のために意図している。さらに、この言い回しは、天然型タンパク質の糖修飾における質的変化を含む(種々の糖成分の性質及び比率の変化を含む)。
用語「類似体(analog)」とは、もう一つの分子(例えば、158P1D7関連タンパク質)と、構造的に類似した、又は、類似な若しくは相当する特性を共有する分子のことを言う。例えば、158P1D7タンパク質の類似体は、158P1D7タンパク質と特異的に結合する抗体又はT細胞によって、特異的に結合され得る。
用語「抗体」は、最も広義な意味で用いている。そのため、「抗体」は、自然に生成することも、又、従来のハイブリドーマ技術によって生産されたモノクローナル抗体のようなヒトによる作成も可能である。坑158P1D7抗体は、158P1D7タンパク質、又はそのフラグメントと結合し、そして、モノクローナル及びポリクローナル抗体と同様に抗原結合領域及び/又は1以上のこれらの抗体の相補性決定領域も含む。
「抗体フラグメント(antibody fragment)」は、少なくともイムノグロブリン分子のその標的に結合する可変領域の部分すなわち抗原結合領域として定義される。一つの態様においては、一つの坑158P1D7抗体及びそのクローン(作用物質、拮抗物質、及び、中和抗体を含む)及びポリエピトープに特異性(polyepitopic specificity)がある坑158P1D7抗体組成物を包含する。
用語「コドン最適化配列」とは、使用頻度が20%より少ない、より好ましくは30%又は40%よりも少ない、あるコドンを任意の1以上のコドンで置換することにより、特定の宿主の種に最適化された核酸配列のことを言う。配列は、20%より少ない、より好ましくは凡そ30%又は40%よりも少ない使用頻度のコドンを全く含まないように、「完全に最適化(completely optimized)」されていてもよい。コドンの最適化に加え、偽のポリアデニル化部位の除去、エクソン/イントロンスプライシングシグナルの除去、トランスポゾン様リピートの除去、及び/又は、GC含量の最適化によって、特定の宿主種の中での発現に対し最適化された核酸配列を、ここでは、「発現増強配列(expression enhanced sequences)」と呼ぶ。
用語「細胞毒性薬剤(cytotoxic agent)」とは、一つ以上の細胞機能を抑制若しくは阻害する物質、及び/又は、細胞破壊を惹起する物質を言う。本用語は、放射性同位元素化学療法剤、並びに、細菌、真菌、植物若しくは動物組織の小分子毒素若しくは酵素的に活性化する毒素のような毒素(それらのフラグメント及び/又は変異体を含む)を含むことを意図している。細胞毒性薬剤の例として、マイタンシノイドス(maytansinoids)、イットリウム、ビスマス、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、キソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシ アントラシン ジオン、アクチノマイシン、ジフテリアトキシン、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α‐サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロスズ、カリケアミシン、サパオナリア公定インヒビター(sapaonaria officinalis inhibitor)、及び、グルココルチコイド、及びその他の化学療法剤と同様に、 211 At、 131 I、 125 I、 90 Y、 186 Re、 188 Re、 153 Sm、 212 Bi、 32 P及びLuの放射性同位元素のような放射性同位元素を含むが、これらに限定されるものではない。抗体は、また、プロドラックをその活性化型に転換可能な坑癌プロドラック活性化酵素と結合してもよい。
用語「相同体(homolog)」とは、他の分子に対して、例えば、対応する位置で同一か類似である化学残基の配列を有することによって、相同性を示す分子を言う。
「ヒト白血球抗原」又は「HLA」は、ヒト主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI又はクラスIIタンパク質である(例えば、Stites, et al., IMMUNOLOGY, 8th ED., Lange Publishing, Los Altos, CA (1994)を参照)。
用語「ハイブリダイズ(hybridize)」、「ハイブリダイジング(hybridizing)」、「ハイブリダイジズ(hybridizes)」などは、ポリヌクレオチドの文脈で使用され、通常のハイブリダイゼーション条件、好ましくは、50%ホルムアミド/6×SSC/0.1%SDS/100μg/ml ssDNA中で、ここでハイブリダイゼーション中の温度は37℃以上、そして0.1×SSC/0.1%SDSで洗浄中の温度は55℃以上であるハイブリダイゼーションであるような条件を意味する。
「単離された(isolated)」又は「生物学的に純粋な(biologically pure)」という表現は、その自然状態で見られる時に通常その物質に付随する成分が実質的または本質的に含まれていない物質を言う。よって、本発明に従って単離されたペプチドは、好ましくは、in situの環境下のペプチドと共に通常結合している又は存在している物質を含まない。例えば、ポリヌクレオチドは、158P1D7遺伝子産物又はそのフラグメントとは違った158P1D7のそれ又はポリペプチドをコードするそれとは違った核酸に相当する又は相補的なポリヌクレオチド夾雑物から、実質的に分離された時に、「単離された」と言われる。熟練した技術者は、単離された158P1D7ポリヌクレオチドを得るために即座に核酸単離手順を使用出来る。例えば、物理的及び/又は化学的方法が、通常、該タンパク質と共に結合しているか存在している細胞の構成物質から158P1D7タンパク質を移すために使用された場合、タンパク質は「単離された」と言われる。熟練した技術者は、単離された158P1D7タンパク質を得るために、即座に、標準的な精製法を使用可能である。或いは、単離されたタンパク質は、合成又は化学的方法によっても調製可能である。
用語「哺乳動物(mammal)」とは、哺乳動物として分類される任意の生物を意味し、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒトを含む。本発明の一つの態様において、哺乳動物はマウスである。本発明のもう一つの態様においては、哺乳動物はヒトである。
用語「転移性膀胱癌(metastatic bladder cancer)」及び「転移性疾患(metastatic disease)」とは局所リンパ節又は離れた部位に広がった膀胱癌を意味し、TNM系の下でステージTxNxM+を意味する。膀胱癌転移で最も普通に見られるのが、リンパ節である。他に転移が普通に見られるのは、肺、骨、及び、肝臓である。
用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた一つの抗体を意味する―すなわち集団を構成する抗体が同一(自然発生的に起こり得る少数の変異を除く)である。
158P1D7関連タンパク質の生物学的モチーフにおける「モチーフ(motif)」とは、タンパク質の一次配列の部分を形成するアミノ酸の任意のパターンを言う―すなわち特定の機能(例えば、タンパク質‐タンパク質相互作用、タンパク質‐DNA相互作用など)又は修飾(例えば、リン酸化される、糖修飾される、又は、アミド化される)又は局在化(例えば分泌性配列、核移行配列など)又は液性若しくは細胞性いずれかの免疫原性に関連した配列である。モチーフは、一般的に一定の機能又は特性と関連した特定の位置と隣接するか又はアライメント(aligned)する能力を有しうる。HLAモチーフの文脈中では「モチーフ」は、規定された長さのペプチドにおける残基のパターンを言い、通常、クラスI HLAモチーフについては凡そ8から凡そ13アミノ酸からなるペプチド、そしてクラスII HLAモチーフについては凡そ6から凡そ25アミノ酸からなるペプチドで、それらは特定のHLA分子によって認識される。HLA結合のためのペプチドモチーフは、典型的には各ヒトHLAアレルによってコード化された各タンパク質毎に異なっており、そして、1次及び2次アンカー残基のパターンにおいて差がある。
「医薬賦形剤(pharmaceutical excipient)」には、アジュバント、キャリアー、pH-調整及び緩衝剤、浸透圧調整剤(tonicity adjusting agent)、湿潤剤、防腐剤などのような物質を含む。
「医薬的に許容し得る(Pharmaceutically acceptable)」とは、無毒、不活性、及び/又は、ヒトのような哺乳動物に生理学的に適合性のある組成物を意味する。
用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10塩基の核酸の重合体、或いは、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドの何れか又は何れかの型の核酸の修飾型である長さのある塩基対を意味し、且つ、DNA及び/又はRNAの一重及び二重鎖型を意味する。本技術分野においては「オリゴヌクレオチド」は凡そ50ヌクレオチドより少ないポリヌクレオチドの下位集団を呼ぶために使用されるにもかかわらず、この用語は、しばしば、「オリゴヌクレオチド」と置き換え可能なように使用されている。ポリヌクレオチドは、この中で開示されたヌクレオチド配列を含む事が出来るが、ここで、例えば示されているようにチミジン(T)がウラシル(U)であることも可能;この定義はDNAとRNAとの化学構造における違い(特にRNAの4つの主要な塩基の一つがチミジン(T)からウラシル(U)に置き換わっているという知見)に関係している。
用語「ポリペプチド」は、少なくとも凡そ4、5、6、7、又は8アミノ酸の重合体を意味する。明細書を通して、アミノ酸表記のために標準的な3文字又は1文字表記を用いる。本技術分野において、この用語は、しばしば、「タンパク質」又は「ペプチド」と置き換え可能なように使用されているので、「ペプチド」は凡そ50アミノ酸より少ないポリペプチドの下位集団を呼ぶために使用されてよい。
HLA「一次(プライマリー)アンカー残基(primary anchor residue)」とは、免疫原ペプチドとHLA分子との接触点を提供するものと理解されているペプチド配列に沿った特異的な位置にあるアミノ酸である。1から3、普通は2の、限定された長さのペプチド内の一次アンカー残基は、免疫原ペプチドに関する「モチーフ」と定義される。これらの残基は、HLA分子のペプチド結合溝(groove)と、結合溝の特異的ポケット内に埋め込まれる側鎖と共に密に接触するものと理解されている。一つの態様では、例えば、HLAクラスI分子に対する一次アンカー残基は、本発明に従うと、ペプチドエピトープのアミノ末端から2位の位置、及び、カルボキシ末端から8、9、10、11、又は12位の位置にある。もう一つの態様において、例えば、HLAクラスII分子に結合するペプチドの一次アンカー残基は、ペプチド末端(該ペプチドは少なくとも9アミノ酸の長さである)からではなく、各々が互いに相対的な間隔を有している。各モチーフに対する一次アンカー残基は、表4で説明する。例えば、類似体ペプチド(analog peptides)は、表4に示した一次(primary)及び/又は二次(secondary)アンカー位置内の特定残基の存在若しくは不存在を変えることにより創出できる。そのような類似体は、特定のHLAモチーフ若しくはスパーモチーフを含むペプチドの、結合親和性、及び/又は、集合範囲(population coverage)を調節するために使用される。
「組換え(recombinant)」DNA又はRNA分子とは、in vitroにおいて分子操作を受けたDNA又はRNA分子である。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー(stringency)」は、本技術分野の通常の技術を有する者により即座に決定可能であり、一般的には、プローブ長、洗浄温度、及び、塩濃度に依存して経験的に予想される。一般に、適切なアニーリングのためには、短いプローブでは低い温度が必要なのに対し、長いプローブは高い温度が要求される。ハイブリダイゼーションは、相補鎖がその融解温度以下の環境で存在する場合には、一般的には、再アニーリングするための変性核酸配列の能力に依存する。プローブとハイブリダイズされる配列との所望のホモロジーの程度が高ければ、より高い相対的温度を使用し得る。結果として、より高い相対温度は反応条件をよりストリンジェントにし、一方でより低い温度はストリンジェンシーを低める傾向があることが分かる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーについての更に詳細な説明は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照。
ここで定義されたような「ストリンジェントな条件(stringent conditions)」又は「高ストリンジェンシーな条件(high stringency conditions)」を、以下により確認するが、これらに限定されるものではない:(1)洗浄中の低イオン強度及び高温、例えば50℃中で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);(2)ハイブリダイゼーションの間、ホルムアミドのような変性剤を使用する、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと共に、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムでpH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液;又は、(3)42℃にて50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M塩化ナトリウム、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%デキストラン硫酸にて処理し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42oCにて及び50%ホルムアミド中にて55oCにて洗浄し、続いて、55oCにてEDTA含有0.1×SSCで高ストリンジェンシーな洗浄をする。「中程度のストリンジェントな条件(moderately stringent conditions)」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989中にて記述されているがこれに限定されるものではなく、そして上述したものよりも低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度、及び、%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェントな条件の一つの例としては、以下の溶液中で37℃で終夜インキュベートする:20%ホルムアミド、5×SSC(150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸、及び、20mg/mLの変性し剪断されたサケ精子DNA、続いて、凡そ37‐50oCにて1×SSC中でフィルターを洗浄する。熟練した技術者であれば、プローブ長などのような要因を適応させるのに必要な、温度、イオン強度その他を、どのように調整するかについて認識している。
HLA「スーパーモチーフ(supermotif)」とは、2以上のHLAアレルによってコード化されたHLA分子によって結合特異性が共有(shared)されるペプチドである。
「トランスジェニック動物」(例えばマウス又はラット)とは、導入遺伝子を含む細胞を有する動物であり、該導入遺伝子は該動物又は該動物の出生前(例えば胎児期)にその祖先に導入される。「導入遺伝子(transgene)」とは、トランスジェニック動物がそれから発生するための細胞のゲノム内に組み込まれるべきDNAを言う。
ここでのHLA又は細胞性免疫反応の使用における、「ワクチン」とは、本発明の1以上のペプチドを含むか又はコード化する組成物である。そのようなワクチンの多数の態様、すなわち、1以上の単一ペプチドのカクテル;一つのポリエピトープ性ペプチドを含む1以上の本発明のペプチド;又は、そのような単一ペプチド若しくはポリペプチドをコード化する核酸(例えばポリエピトープ性ペプチドをコード化するミニ遺伝子)のような態様がある。「1以上のペプチド(one or more peptides)」は、1‐150又はそれ以上の任意の整数単位、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145若しくは150又はそれ以上の本発明のペプチドを含むことが可能である。ペプチド又はポリペプチドは、脂質化(lipidation)、ターゲティング又はその他の配列の付加によるなどして、任意的に修飾されることも可能である。本発明のHLAクラスIペプチドは、細胞障害性Tリンパ球及びヘルパーTリンパ球の両者の活性化を促進するために、HLAクラスIIペプチドに混合又は結合させることが可能である。HLAワクチンは、またペプチドパルスした抗原提示細胞たとえば樹状細胞を含むことも可能である。
用語「変異体(variant)」とは、記述された型又は標準からの変異が存在する分子を言い、例えば、具体的に記述されたタンパク質(例えば図2又は図3で示した158P1D7タンパク質)の相当する位置に1以上の異なるアミノ酸残基を有するタンパク質である。類似体は変異体タンパク質の一つの例である。
158P1D7関連タンパク質は、ここで具体的に同定(identify)されたタンパク質と同様に、アレル変異体、保存された置換変異体、類似体及びホモログ(それらは、ここで概説される又は本技術分野における容易で有効な方法に従って、過度の実験を伴うこと無く、単離/生成、及び特徴づけがなされ得る)を含む。異なる158P1D7タンパク質又はそのフラグメントの一部を組み合わせた融合タンパク質、と同様に、158P1D7タンパク質と異種ポリペプチドとの融合タンパク質をも、また含む。そのような158P1D7タンパク質を、集合的に、158P1D7関連タンパク質、本発明のタンパク質、又は、158P1D7と呼ぶ。
用語158P1D7関連タンパク質とは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25若しくは25以上のアミノ酸、又は、少なくとも凡そ30、35、40、45、50、55、60、65、70、80、85、90、95、100若しくは100以上のアミノ酸からなるポリペプチドフラグメント又は158P1D7タンパク質配列を言う。
II.)158P1D7ポリヌクレオチド
本発明の一側面においては、158P1D7遺伝子、mRNA、及び/又は、コーディング配列の全部若しくは一部に相当するか若しくは相補性であるポリヌクレオチドを、好ましくは単離した形状で提供する;該ポリヌクレオチドは158P1D7関連タンパク質及びそのフラグメントをコード化するポリヌクレオチド、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド及び関連分子、158P1D7遺伝子若しくはmRNA配列又はその一部に相補性のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド、及び158P1D7遺伝子若しくはmRNA配列に、又は、158P1D7をコード化するポリヌクレオチド(総括的に「158P1D7ポリヌクレオチド」)にハイブリダイズするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを包含する。このセクションで言及するすべての場合において、図2のTはUであってもよい。
158P1D7ポリヌクレオチドの態様は以下のとおりである:図2に示した配列を有する158P1D7ポリヌクレオチド;図2に示した158P1D7のヌクレオチド配列(ただし、TはUである);図2に示した配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも連続する10ヌクレオチド;図2に示した配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも連続する10ヌクレオチド(ただし、TはUである)。例えば、158P1D7ヌクレオチドの態様は、制限されるものではないが、以下を包含する:
(a)図2で示される配列を含んでなるか、又はそれから構成されるポリヌクレオチド(ただし、TはUであってもよい);
(b)図2で示される配列を含んでなるか、又はそれから構成されるポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド残基番号23からヌクレオチド残基番号2548までのポリヌクレオチド(ただし、TはUであってもよい);
(c)アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに受託番号PTA−3662として2001年8月22日に寄託されているプラスミド名p158P1D7−ターボ(Turbo)/3PXに含有されるcDNAによりその配列がコード化される158P1D7関連タンパク質をコード化するポリヌクレオチド(2001年8月20日にFederal Expressにより送った);
(d)図2で示される全アミノ酸配列に少なくとも90%相同(homologous)である158P1D7関連タンパク質をコード化するポリヌクレオチド;
(e)図2で示される全アミノ酸配列に少なくとも90%同一(identical)である158P1D7関連タンパク質をコード化するポリヌクレオチド;
(f)表5〜18に示す少なくとも1個のペプチドをコード化するポリヌクレオチド;
(g)図11の親水性プロフィールが0.5を超える値を有するアミノ酸位置を含み、841まで任意の整数で増加する図3の少なくとも5アミノ酸のペプチド領域をコード化するポリヌクレオチド;
(h)図12の疎水性親水性プロフィールが0.5未満の値を有するアミノ酸位置を含み、841まで任意の整数で増加する図3の少なくとも5アミノ酸のペプチド領域をコード化するポリヌクレオチド;
(i)図13のパーセント接触可能残基プロフィールが0.5を超える値を有するアミノ酸位置を含み、841まで任意の整数で増加する図3の少なくとも5アミノ酸のペプチド領域をコード化するポリヌクレオチド;
(j)図14の平均可撓性プロフィールが0.5を超える値を有するアミノ酸位置を含み、841まで任意の整数で増加する図3の少なくとも5アミノ酸のペプチド領域をコード化するポリヌクレオチド;
(k)図15のベータ−ターンプロフィールが0.5を超える値を有するアミノ酸位置を含み、841まで任意の整数で増加する図3の少なくとも5アミノ酸のペプチド領域をコード化するポリヌクレオチド;
(l)(a)〜(k)の何れか1項に記載のポリヌクレオチドと完全に相補的であるポリヌクレオチド;
(m)(a)〜(l)のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド;
(n)(a)〜(k)の何れかがコード化するペプチド;及び
(o)医薬添加剤と共存するか及び/又はヒトの単位投与形状にある(a)〜(m)の何れかのポリヌクレオチド又は(n)のペプチド。
本明細書にて使用する場合、範囲は、その全整数単位の位置を具体的に開示するものと理解される。
本明細書に開示された発明の代表的な態様は、158P1D7mRNA配列(及びかかる配列に相補的な配列)の特定の位置をコード化する158P1D7ポリヌクレオチド、例えば、該タンパク質とそのフラグメント、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50,55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825又は841の連続アミノ酸をコード化するポリヌクレオチドである。
例えば、本明細書に開示した本発明の代表的な態様は:図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸1からアミノ酸10近傍をコード化するポリヌクレオチド及びそのコード化されたペプチドそれ自体、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸10からアミノ酸20近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸20からアミノ酸30近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸30からアミノ酸40近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸40からアミノ酸50近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸50からアミノ酸60近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸60からアミノ酸70近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸70からアミノ酸80近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸80からアミノ酸90近傍をコード化するポリヌクレオチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸90からアミノ酸100近傍をコード化するポリヌクレオチドなどであり、凡そ10アミノ酸区切りで、図2又は図3に示すカルボキシル末端アミノ酸で終結する。
従って、158P1D7タンパク質のカルボキシル末端のアミノ酸までのアミノ酸100の(凡そ10アミノ酸の)アミノ酸配列の部分をコード化するポリヌクレオチドは本発明の態様である。この場合、それぞれ特定のアミノ酸の位置は、その位置のプラスマイナス5アミノ酸残基を開示すると理解される。
158P1D7タンパク質の比較的長い部分をコード化するポリヌクレオチドもまた本発明の範囲内である。例えば、図2又は図3に示した158P1D7タンパク質のアミノ酸1近傍(又は20又は30又は40など)からアミノ酸20近傍(又は30又は40又は50など)までをコード化するポリヌクレオチドは、技術上既知の様々な技法により生成させることができる。これらのポリヌクレオチドフラグメントは図2又は図3に示した158P1D7配列の何れの部分をも包含し得る。
本明細書に開示した本発明のさらなる説明のための態様は、158P1D7タンパク質配列内に含まれる生物学的モチーフの1つ以上(例えば、表5〜18に示した158P1D7タンパク質の1つ以上のモチーフ含有配列)をコード化する158P1D7ポリヌクレオチドフラグメントを包含する。もう一つの態様において、本発明の典型的なポリヌクレオチドフラグメントは、既知分子に相同性を有する158P1D7の1つ以上の領域をコード化する。本発明のもう一つの態様において、典型的なポリヌクレオチドフラグメントは、158P1D7 N−グリコシル化部位、cAMP及びcGMP依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位、カゼインキナーゼIIリン酸化部位、又は、N−ミリストイル化部位及びアミド化部位の1つ以上をコード化し得る。
II.A.)158P1D7ポリヌクレオチドの使用
II.A.1.)遺伝的異常のモニタリング
前項のポリヌクレオチドは、多数の、異なる特別な用途を有する。ヒトの158P1D7遺伝子は実施例3に示す染色体上の場所に位置付けられている。例えば、158P1D7遺伝子はこの染色体上に位置付けられているので、158P1D7タンパク質の異なる領域をコード化するポリヌクレオチドは、この染色体位置における細胞遺伝学的異常(種々の癌と関連があるとして同定された異常など)を特徴づけるために使用される。ある種の遺伝子では、再配列を含む様々な染色体異常が、多種の癌において、頻度の高い細胞遺伝学的異常として同定されている(参照例:Krajinovic et al., Mutat. Res. 382(3-4): 81-83(1998); Johansson et al., Blood 86(10): 3905-3914(1995) 及び Finger et al., P.N.A.S. 85(23): 9158-9162 (1988))。従って、158P1D7タンパク質の特定の領域をコード化するポリヌクレオチドは、悪性表現型に寄与し得る158P1D7をコード化する染色体領域における細胞遺伝学的異常について、これまで可能であったものよりも遥かに正確に描写するために使用することの可能な新規手段を提供する。これに関連して、これらのポリヌクレオチドは、より細かい、あまり共通性のない染色体異常を同定するために、染色体スクリーニングの感度を拡張する技術においてその必要性を満足する(参照例:Evans et al., Am.J. Obstet. Gynecol 171(4): 1055-1057 (1994))。
さらに、158P1D7は膀胱癌及びその他の癌において高度に発現されることが示されたので、158P1D7ポリヌクレオチドは、正常組織対癌性組織における158P1D7遺伝子産物の状態を評価する方法に使用される。典型的には、158P1D7タンパク質の特定の領域をコード化するポリヌクレオチドは、158P1D7遺伝子の特定の領域(1つ以上のモチーフを含むかかる領域など)における撹乱(欠失、挿入、点突然変異、又は抗原の喪失に至る変化など)の存在を評価するために使用される。例示としてのアッセイ法は、RT−PCRアッセイ及び1本鎖高次構造多型(SSCP)分析(参照例:Marrogi et al., J. Cutan. Pathol. 26(8): 369-378 (1999))の両者を含み、この両者によって、これらタンパク質内の領域を調べるために、タンパク質の特定領域をコード化するポリヌクレオチドを利用される。
II.A.2.)アンチセンスの具体例
本明細書に開示した本発明の他の具体的に考慮される核酸関連の態様は、ゲノムDNA、cDNA、リボザイム及びアンチセンス分子、並びに天然資源由来若しくは合成による代替骨格に基づく核酸分子(又は代替塩基を含む)であり、また、158P1D7のRNA又はタンパク質発現を阻害し得る分子を含む。例えば、アンチセンス分子はRNAであっても他の分子であってもよく、塩基対依存性に特異的にDNA又はRNAに結合するペプチド核酸(PNA)又はホスホロチオアート誘導体などの非核酸分子を包含する。当業者は158P1D7ポリヌクレオチド及び本明細書に開示したポリヌクレオチド配列を用いて、これらの部類の核酸分子を容易に得ることができる。
アンチセンス法は細胞内に位置する標的ポリヌクレオチドに結合する外来オリゴヌクレオチドの投与を必要とする。用語「アンチセンス」は、かかるオリゴヌクレオチドがその細胞内標的(例えば、158P1D7)に相補的であるという事をいう。参照例:Jack Cohen, Oligodeoxynucleotides, Antisense Inhibitors of Gene Expression (オリゴデオキシヌクレオチド、遺伝子発現のアンチセンスインヒビター), CRC Press, 1989; 及び Synthesis 1:1-5 (1988)。本発明の158P1D7アンチセンスオリゴヌクレオチドは、S−オリゴヌクレオチド(ホスホロチオアート誘導体又はS−オリゴ体、参照:上記のJack Cohen)などの誘導体を含み、癌細胞増殖阻害作用が強化されたものである。S−オリゴ体(ヌクレオシドホスホロチオアート)はオリゴヌクレオチド(O−オリゴ)の等電類似体であり、そのリン酸基の非架橋酸素原子がイオウに置き換わったものである。
本発明のS−オリゴ体は対応するO−オリゴ体をイオウ転移試薬である3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシドで処理することにより調製可能である。参照:Iyer, R.P. et al., J. Org. Chem. 55: 4693-4698 (1990); 及びIyer, R.P. et al., J. Am. Chem. Soc., 112: 1253-1254 (1990)。本発明の、さらなる158P1D7アンチセンスオリゴヌクレオチドは、技術上既知のモルホリノ・アンチセンスオリゴヌクレオチドである(参照例:Partridge et al., 1996, Antisense & Nucleic Acid Drug Development 6: 169-175)。
本発明の158P1D7アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、158P1D7ゲノム配列の5’の最初の100コドン若しくは3’の最後の100コドン又はその対応するmRNAに相補的であり及び安定的にハイブリダイズするRNA又はDNAであり得る。絶対的相補性は必要としないが、高度の相補性が好ましい。この領域に相補的なオリゴヌクレオチドの使用は、158P1D7mRNAに対する選択的なハイブリダイズを可能とするが、タンパク質キナーゼの他の調節サブユニットを特定するmRNAにはハイブリダイズしない。一態様において、本発明の158P1D7アンチセンスオリゴヌクレオチドは、158P1D7mRNAにハイブリダイズする配列をもつアンチセンスDNA分子の15ないし30マーのフラグメントである。任意的には、158P1D7アンチセンスオリゴヌクレオチドは、158P1D7の、最初の10の5’コドン又は最後の10の3’コドンの領域に相補的である30マーのオリゴヌクレオチドである。あるいは、該アンチセンス分子は、158P1D7発現の阻害にリボザイムを採用するために修飾される;参照例:L.A. Couture & D.T. Stinchcomb; Trends Genet 12: 510-515 (1996)。
II.A.3.)プライマー及びプライマー対
本発明のこのヌクレオチドのさらに具体的な態様は、本発明のポリヌクレオチド又はそれらの任意の特定部分の特異的増幅を可能とするプライマー及びプライマー対、並びに、本発明の核酸分子又はそれらの任意の部分に選択的又は特異的にハイブリダイズするプローブを包含する。プライマーはまたプローブとしても使用可能であり、検出可能なマーカー、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート形成剤又は酵素などで標識し得る。かかるプローブ及びプライマーは、サンプル中の158P1D7ポリヌクレオチドの存在を検出するために、また158P1D7タンパク質を発現する細胞の検出手段として使用される。
かかるプローブの例は、図2に示したヒト158P1D7cDNA配列の全部又は一部からなるポリペプチドを含む。158P1D7mRNAを特異的に増幅し得るプライマー対の例は、実施例にも記載する。当業者も理解するように、非常に多くの異なるプライマーとプローブが本明細書において提供した配列に基づき調製可能であり、それらを効果的に使用して158P1D7mRNAを増幅及び/又は検出することができる。本発明の好適なプローブは、本発明に開示した158P1D7核酸に見出される凡そ9個、凡そ12個、凡そ15個、凡そ18個、凡そ20個、凡そ23個、凡そ25個、凡そ30個、凡そ35個、凡そ40個、凡そ45個、及び、凡そ50個、以上の連続するヌクレオチドからなるポリヌクレオチドである。
本発明の158P1D7ポリヌクレオチドは、多様な目的において有用であるが、これらに限定されるものではない:例えば、158P1D7遺伝子、mRNA又はそのフラグメントの増幅及び/又は検出用のプローブ及びプライマーとして;膀胱癌及びその他の癌の診断及び/又は予測用の試薬として;158P1D7ポリペプチドの発現を指向し得るコーディング配列として;158P1D7遺伝子の発現及び/又は158P1D7転写物の翻訳を修飾又は阻害する手段として;及び、治療剤として、有用である。
II.A.4.)158P1D7をコード化する核酸分子の単離
本明細書に記載された158P1D7cDNA配列は、158P1D7遺伝子産物をコード化する他のポリヌクレオチドの単離、並びに、158P1D7遺伝子産物相同体、選択的にスプライシングされたアイソフォーム、対立遺伝子変異体、及び158P1D7遺伝子産物の突然変異体型をコード化するポリヌクレオチド並びに158P1D7関連タンパク質の類似体をコード化するポリヌクレオチドの単離を、可能とする。158P1D7遺伝子をコード化する全長cDNAを単離するため採用し得る様々な分子クローニング法は周知である(参照例:Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(分子クローニング:実験室マニュアル), 2d edition, Cold Spring Harbor Press, New York, 1989; Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., Eds., Wiley and Sons, 1995)。例えば、ラムダ・ファージ・クローニング法を、市販品として入手可能なクローニングシステム(例:ラムダZAPエキスプレス、ストラタジーン)を用いて、簡便に採用し得る。158P1D7遺伝子cDNAを含むファージクローンは、標識された158P1D7cDNA又はそのフラグメントで探索することにより、同定し得る。例えば、一態様において、158P1D7cDNA(図2)又はその一部を合成し、158P1D7遺伝子に対応する重複した全長cDNAを回収するためのプローブとして使用することができる。158P1D7遺伝子それ自体は、158P1D7DNAプローブ又はプライマーにより、ゲノムDNAライブラリー、バクテリア人工染色体ライブラリー(BAC)、酵母人工染色体ライブラリー(YAC)などを、スクリーニングして単離し得る。
本発明はヒト又は他の哺乳動物などの天然資源から158P1D7又は158P1D7関連核酸配列を同定単離するための本明細書記載の任意のプローブの使用、並びに、プローブの使用により見出した配列の全部又はその大部分からなる単離された核酸配列それ自体の使用を、包含する。
II.A.5.)組換え核酸分子及び宿主‐ベクター系
本発明はまた、158P1D7ポリヌクレオチドを含有する組換えDNA又はRNA分子、そのフラグメント、類似体若しくは相同体(例えば、限定されるものではないが、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC、BAC、及び、技術上周知の種々のウイルス性若しくは非ウイルス性ベクターを含む)、並びに、かかる組換えDNA又はRNA分子で形質転換又は形質移入された細胞を、提供する。かかる分子を生成させる方法は周知である(参照例:Sambrook et al., 1989, 上記)。本発明はさらに適切な原核又は真核宿主細胞中に、158P1D7ポリヌクレオチド、そのフラグメント、類似体若しくは相同体を含有する組換えDNA分子を含んでなる宿主‐ベクター系を提供する。適切な真核宿主細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、又は、哺乳動物細胞若しくは昆虫細胞(例:Sf9若しくはハイファイブ細胞などのバキュロウイルス感染性細胞)などの動物細胞である。適切な哺乳動物細胞の例は、種々の膀胱癌細胞株、例えば、SCaBER、UM−UC3、HT1376、RT4、T24、TCC−SUP、J82及びSW780;その他の形質移入又は形質導入可能な膀胱癌細胞株;並びに、組換えタンパク質の発現に常套的に使用する多くの哺乳動物細胞(例:COS、CHO、293、293T細胞)を含む。より詳しくは、158P1D7のコーディング配列を含んでなるポリヌクレオチド又はそのフラグメント、類似体若しくは相同体は、本技術分野で日常的に使用されよく知られている多数の宿主‐ベクター系の使用により、158P1D7タンパク質又はそのフラグメントを生成するのに使用され得る。
158P1D7タンパク質又はそのフラグメントの発現に適した広範な宿主‐ベクター系が利用可能である;参照例:Sambrook et al., 1989, 上記;Current Protocols in Molecular Biology, 1995, 上記。哺乳動物発現用の好適なベクターは、限定されるものではないが、pcDNA3.1 myc−His−tag(インビトロジェン)及びレトロウイルスベクターpSRαtkneo (Muller et al., 1991, MCB 11: 1785)である。これらの発現ベクターを使用して、数種の膀胱癌細胞株及び非膀胱細胞株、例えば、SCaBER、UM−UC3、HT1376、RT4、T24、TCC−SUP、J82及びSW780などにより158P1D7を発現させることができる。本発明の宿主‐ベクター系は158P1D7タンパク質又はそのフラグメントの生産に有用である。かかる宿主‐ベクター系は158P1D7及び158P1D7突然変異体若しくは類似体の機能的性質の研究に採用し得る。
組換えヒト158P1D7タンパク質又はその類似体若しくは相同体若しくはフラグメントは、158P1D7関連ヌクレオチドをコード化する構築物で形質移入した哺乳動物細胞により生産することができる。例えば、293T細胞は158P1D7又はそのフラグメント、類似体若しくは相同体をコード化する発現プラスミドで形質移入することができ、158P1D7タンパク質又は関連タンパク質は293T細胞中で発現され、また、組換え158P1D7タンパク質は標準的な精製方法により単離する(例:抗158P1D7抗体を使用するアフィニティ精製)。もう一つの態様において、158P1D7コーディング配列を、レトロウイルスベクターpSRαMSVtkneoにサブクローニングし、158P1D7発現細胞株を樹立するためにNIH3T3、TsuPr1,293及びrat−1などの種々の哺乳動物細胞株に感染させるのに使用する。技術上周知の様々な他の発現系もまた採用し得る。158P1D7コーディング配列にインフレームで結合するリーダーペプチドをコード化する発現構築物は、分泌型の組換え158P1D7タンパク質の生成に使用することができる。
本明細書にて考察するように、遺伝暗号の重複性が158P1D7遺伝子配列の変化を可能とする。とりわけ、特定の宿主種はしばしば特定のコドン優先性を有し、その結果、開示された配列を所望の宿主に対して好適であるとして適合させ得ることは既知である。例えば、好適な類似のコドン配列は、一般に稀なコドン(すなわち、所望の宿主の既知配列において凡そ20%未満の使用頻度をもつコドン)を有し、高頻度のコドンと置換されている。特定種に対するコドンの優先性は、例えば、URLなどのインターネット上で利用可能なコドン使用表を利用することにより計算する;URL:dna.affrc.go.jp/~nakamura/codon.html。
配列のさらなる修飾は、細胞性の宿主におけるタンパク質発現を上昇させることが知られている。これらの修飾は、擬似ポリアデニル化シグナル、エクソン/イントロンのスプライス部位シグナルをコード化する配列、トランスポゾン様の反復、及び/又は、遺伝子発現に有害な他のこのようなよく特性化されている配列を除去することを含む。該配列のGC含量は、宿主細胞で発現される既知遺伝子を参考にして計算し、任意の細胞性の宿主における平均レベルに調整する。可能な場合には、該配列の修飾により、予測されるヘアピン二次mRNA構造を回避する。その他の有用な修飾は、オープン・リーディング・フレームの開始点に、翻訳開始共通(コンセンサス)配列を付加することである;記載例:Kozak, Mol. Cell Biol., 9: 5073-5080 (1989)。真核細胞リボソームがもっぱら5’近位AUGコドンで翻訳を開始するという一般則は、稀な条件下でのみ棄却されることを当業者なら理解している(参照例:Kozak PNAS 92(7): 2662-2666, (1995) 及び Kozak NAR 15(20):8125-8148 (1987))。
III.)158P1D7関連タンパク質
本発明のもう一つの側面では158P1D7関連タンパク質を提供する。158P1D7タンパク質の具体的態様は、図2又は図3に示したように、ヒト158P1D7のアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチドを含んでなる。あるいは、158P1D7タンパク質の態様は、図2又は図3に示す158P1D7のアミノ酸配列に変更を有する変異体、相同体又は類似体ポリペプチドを含んでなる。
一般に、ヒト158P1D7の天然に存在する対立遺伝子変異体は、高度の構造同一性と相同性をもつ(例:90%以上の相同性)。典型的には、158P1D7タンパク質の対立遺伝子変異体は、本明細書に記載した158P1D7配列内に保存されたアミノ酸置換を含むか、又は158P1D7相同体に相当する位置からのアミノ酸置換を含む。一群の158P1D7対立遺伝子変異体は、特定の158P1D7アミノ酸配列の少なくとも小さな領域と高度の相同性をもつタンパク質であるが、しかし、さらに該配列から離脱した遊離基、例えば、非保存置換、末端切除、挿入又はフレームシフトを含む。タンパク質配列を比較すると、類似性、同一性、及び相同性という用語は、それぞれが遺伝学分野で評価される明瞭な意味をもつ。さらに、パラロジー(paralogy)及びオルソロジー(orthology)は、一つの生物の所定のタンパク質ファミリーのメンバーと他の生物の同じファミリーのメンバーとの関係を記載する重要な概念であり得る。
アミノ酸の略号を表2に提供する。タンパク質の保存されたアミノ酸置換は、多くの場合タンパク質のコンホメーション(高次構造)又は機能の何れも変えることなしに実施し得る。本発明のタンパク質は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれ以上の保存された置換を包含し得る。かかる変更は、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びロイシン(L)の何れかをこれらの疎水性アミノ酸の他のものの代わりに用い;アスパラギン酸(D)をグルタミン酸(E)の代わりに、又はその逆を;グルタミン(Q)をアスパラギン(N)の代わりに、又はその逆を;また、セリン(S)をトレオニン(T)の代わりに、又はその逆を置換に用いる。他の置換は、特定アミノ酸の環境及びそのタンパク質の三次元構造での役割により、保存的とも考え得る。例えば、グリシン(G)及びアラニン(A)は多くの場合相互交換可能であり、アラニン(A)とバリン(V)も同様である。比較的疎水性であるメチオニン(M)は多くの場合、ロイシン及びイソロイシンと交換可能であり、場合によりバリンと交換可能である。リジン(K)及びアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であるような位置において、高頻度に交換可能であり、これら2つのアミノ酸残基のpKの違いは有意ではない。さらに他の変化は特定の環境において「保存的」であると考え得る(参照例:本明細書の表3;pages 13-15 “Biochemistry” 2nd ED. Lubert Stryer ed (スタンフォード大学);Henikoff et al., PNAS 1992 Vol 89 10915-10919; Lei et al., J Biol Chem 1995 May 19: 270(20):11882-6)。
本明細書に開示された本発明の態様は、158P1D7タンパク質の、広範な種類の技術的に許容される変異体又は類似体、例えば、アミノ酸挿入、欠失及び置換を有するポリペプチドなどを含む。158P1D7変異体は、部位特異的変異誘発方、アラニンスキャニング、及び、PCR‐変異誘発法などの技術上既知の方法を用いて実施し得る。部位指向性変異誘発(Carter et al., Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987))、カセット変異誘発法(Wells et al., Gene, 34: 315 (1985))、制限選択変異誘発法(restriction selection mutagenesis )(Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986))又は他の既知の技法をクローン化DNA上で実施し、158P1D7変異体DNAを生産し得る。
アミノ酸スキャニング解析もまた、タンパク質−タンパク質相互作用などの特定の生物活性に関与する連続する配列中の1個以上のアミノ酸を同定するために採用し得る。スキャンしたアミノ酸の中で好適なのは、比較的小さな中性アミノ酸である。かかるアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインである。アラニンは典型的にこの群の中での好適なアミノ酸であるが、その理由はベータ炭素の先の側鎖が除かれており、変異体の主鎖のコンホメーションをあまり変化させるとは思えないからである。アラニンはまた最もありふれたアミノ酸なので、一般的に好適である。さらに、アラニンは埋没した位置及び露出した位置の両方にしばしば見出される(Creighton, The proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976))。もしアラニン置換が十分量の変異体を生じないならば、立体的等価のアミノ酸を使用することができる。
本明細書に定義するように、158P1D7変異体、類似体又は相同体は、図2のアミノ酸配列を有する158P1D7タンパク質と「交差反応性」である少なくとも1個のエピトープをもつという識別可能な属性をもつ。本文で使用する場合、「交差反応性」とは158P1D7変異体に特異的に結合する抗体又はT細胞が、図2のアミノ酸配列をもつ158P1D7タンパク質にも特異的に結合するということを意味する。ポリペプチドは、158P1D7タンパク質と特異的に結合する抗体又はT細胞によって認識され得るエピトープをもはや含まない場合、図2に示すタンパク質の変異体ではなくなる。タンパク質を認識する抗体が種々の大きさのエピトープに結合し、そして、凡そ4又は5個程度の連続した又は連続していないアミノ酸の集まりが、最小エピトープにおける典型的なアミノ酸数とみなされるということを、当業者は理解している。参照例:Nair et al., J. Immunol 2000 165(12): 6949-6955; Hebbes et al., Mol Immunol (1989) 26(9): 865-73; Schwartz et al., J Immunol (1985) 135(4): 2598-608。
158P1D7関連タンパク質変異体のもう一つのクラスは、図2のアミノ酸配列又はそのフラグメントと70%、75%、80%、85%又は90%以上の類似性をもつ。もう一つの特定のクラスの158P1D7タンパク質変異体又は類似体は、本明細書に記載の158P1D7生物学的モチーフ又は現在技術的に既知のモチーフを1個以上含んでなる。従って、元のフラグメントから相対的に変化した機能的性質(例えば、免疫原性)を有する158P1D7フラグメント(核酸又はアミノ酸)の類似体は、本発明に包含される。現在のモチーフ又は技術の一部となるモチーフは、図2又は図3の核酸又はアミノ酸配列に適用されるべきことが認識される。
本明細書にて考察するように、特許請求した本発明の態様は、図2又は図3に示す158P1D7タンパク質の全アミノ酸よりも少ない配列を含むポリペプチドを、包含する。例えば、本発明の代表的態様は、図2又は図3に示す158P1D7タンパク質の、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれ以上の連続するアミノ酸を有するペプチド/タンパク質を含んでなる。
さらに、本明細書に開示した本発明の代表的態様は、158P1D7アミノ酸配列全体を通して、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸1ないしアミノ酸10近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸10ないしアミノ酸20近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸20ないしアミノ酸30近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸30ないしアミノ酸40近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸40ないしアミノ酸50近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸50ないしアミノ酸60近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸60ないしアミノ酸70近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸70ないしアミノ酸80近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸80ないしアミノ酸90近傍からなるポリペプチド、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸90ないしアミノ酸100近傍からなるポリペプチドなどである。さらに、図2又は図3に示される158P1D7タンパク質のアミノ酸1(又は20又は30又は40など)近傍ないしアミノ酸20(又は130、又は140又は150など)近傍からなるポリペプチドも本発明の態様である。本項において開始位置と停止位置は、特定した位置並びにその特定した位置のプラスマイナス5個の残基をいうものと認識する。
158P1D7関連タンパク質は、標準のペプチド合成法を用いるか、又は、技術上既知の化学的開裂方法(chemical cleavage method)を用いて生成させる。あるいは、組換え方法を用いて158P1D7関連タンパク質をコード化する核酸分子を生成させることもできる。一態様において、核酸分子は158P1D7タンパク質(又は、その変異体、相同体若しくは類似体)の所定のフラグメントを生成させる手段を提供する。
III.A.)モチーフ含有タンパク質の態様
本明細書に開示する本発明のさらなる説明の態様は、図2又は図3に示す158P1D7ポリペプチド配列内に含まれる1個以上の生物学的モチーフのアミノ酸残基を含んでなる158P1D7ポリペプチドを包含する。様々なモチーフが技術分野で既知であり、タンパク質を、公的に利用可能な多数のインターネットサイトにより、かかるモチーフの存在について評価し得る(参照例:URLアドレス:pfam.wustl.edu/; searchlauncher.bcm.tmc.edu/seq-search/struc-predict.html; psort.ims.u-tokyo.ac.jp/; URL:cbs.dtu.dk/;ebi.ac.uk/interpro/scan.html; expasy.ch/tools/scnpsit1.html; EpimatrixTM and EpimerTM, Brown University, brown.edu/Research/TB-HIV_Lab/epimatrix/epimatrix.html; 及び BIMAS, bimas,dcrt.nih.gov/.)。
158P1D7タンパク質のモチーフ含有配列を表19に示し、確認する。
表20はpfamサーチ(参照:URLアドレス pfam.wustl.edu/)に基づいて、数種のしばしば出現するモチーフを示す。表20の各欄は(1)モチーフ名略号;(2)モチーフファミリーの異なるメンバーの中に見出されるパーセント同一性;(3)モチーフ名又は説明;及び、(4)最も共通の機能;位置情報はモチーフが位置に関連する場合に含めた。
上に考察した158P1D7モチーフを1以上含んでなるポリペプチドは、上に考察した158P1D7モチーフが増殖制御不全と関わりがあるという知見の観点より、また、158P1D7が特定の癌で過剰発現されるという理由で、悪性表現型の特別の性質を解明する上で有用である(参照例:表1)。カゼインキナーゼII、cAMP及びcamp依存性タンパク質キナーゼ、並びに、プロテインキナーゼCは、例えば、悪性表現型の進展と関連することが分かっている酵素である(参照例:Chen et al., Lab Invest., 78(2): 165-174 (1998); Gaiddon et al., Endocrinology 136(10): 4331-4338 (1995); Hall et al., Nucleic Acids Research 24(6): 1119-1126 (1996); Peterziel et al., Oncogene 18(46): 6322-6329 (1999) 及びO’Brian, Oncol. Rep. 5(2): 305-309 (1998))。さらに、グリコシル化とミリストイル化の両方は、癌、及び、癌の進行にも関連するタンパク質修飾である(参照例:Dennis et al., Biochem. Biophys. Acta 1473(1): 21-34 (1999); Raju et al., Exp. Cell Res. 235(1): 145-154 (1997))。アミド化も、癌、及び、癌の進行に関連するもう一つのタンパク質修飾である(参照例:Treston et al., J. Natl. Cancer Inst. Monogr. (13): 169-175 (1992))。
もう一つの態様において、本発明のタンパク質は表5〜13に示すペプチドなど、技術的に認められている方法に従って同定される1以上の免疫反応性エピトープを含んでなる。CTLエピトープは、特定されたHLA対立遺伝子に最適に結合し得る158P1D7タンパク質内のペプチドを同定するための特別のアルゴリズムを用いて決定し得る(例:表4;EpimatrixTM and EpimerTM, Brown University,URL: brown.edu/Research/TB-HIV_Lab/epimatrix/epimatrix.html; 及び BIMAS, URL: bimas,dcrt.nih.gov/.)。さらに、HLA分子に対し十分な結合親和性をもつエピトープを同定する方法であって、免疫原性エピトープであることと関連させる方法は、技術上周知であり、過度な実験をせずとも実施し得る。加えて、免疫原性エピトープであるペプチドを同定する方法は技術上周知であり、過度な実験をせずともインビトロ又はインビボの何れでも実施し得る。
また、免疫原性を調節させるために、かかるエピトープの類似体を創製する原理も技術上既知である。例えば、CTL又はHTLモチーフを含有するエピトープから開始する(参照例:表4のHLAクラスI及びHLAクラスII モチーフ/スーパーモチーフ)。該エピトープは、一ヶ所の特定の位置で一つのアミノ酸を取り除き、それをその特定の位置で他の一つのアミノ酸と置き換えることにより類似体化する。例えば、表4に規定した好適な残基など他の残基を選定して、有害な(deleterious)残基を置き換える;表4に規定した好適な残基と、あまり好ましくない残基とを置き換える;又は表4に規定した他の好適な残基と当初に存在する好適な残基とを置き換えることができる。置換はペプチドの一次アンカー位置又は他の位置で起こり得る;参照、例えば、表4。
様々な文献が、対象とするタンパク質及びその類似体におけるエピトープの同定と生成についての技術を示している。参照例:WO9733602(Chesnut et al.); Sette, Immunogenetics 1999 50(3-4): 201-212; Sette et al., J. Immunol. 2001 166(2): 1389-1397; Sidney et al., Hum. Immunol. 1997 58(1): 12-20; Kondo et al., Immunogenetics 1997 45(4): 249-258; Sidney et al., J. Immunol. 1996 157(8): 3480-90; 及び Falk et al., Nature 351: 290-6 (1991); Hunt et al., Science 255: 1261-3 (1992); Parker et al., J. Immunol. 149: 3580-7 (1992); Parker et al., J. Immunol. 152: 163-75 (1994); Kast et al., 1994 152(8): 3904-12; Borras-Cuesta et al., Hum. Immunol. 2000 61(3): 266-278; Alexander et al., J. Immunol. 2000 164(3): 1625-1633; Alexander et al., PMID: 7895164, UI: 95202582; O’Sullivan et al., J. Immunol. 1991 147(8): 1663-2669; Alexander et al., Immunity 1994 1(9): 751-761 及び Alexander et al., Immunol. Res. 1998 18(2): 79-92。
本発明の関連する態様は、表19に示す異なるモチーフ、及び/又は、表5ないし表18の予測した1種以上のCTLエピトープ、及び/又は、技術分野で既知の1種以上のT細胞結合モチーフの組合せからなるポリペプチドを含む。好適な態様は、該ポリペプチドのモチーフ又は介在配列内に、挿入、欠失又は置換を含まない。加えて、これらモチーフの両側に、多くのN末端及び/又はC末端アミノ酸残基を含む態様が望ましい(例えば、該モチーフが位置するポリペプチド構築物のより大きな部分を含むために)。典型的には、モチーフの両側上のN末端及び/又はC末端アミノ酸残基の数は、凡そ1個ないし凡そ100個のアミノ酸残基、好ましくは5個ないし凡そ50個のアミノ酸残基の間である。
158P1D7関連タンパク質は、具体的には、多くの形状で存在するが、好ましくは単離された形状で存在する。精製した158P1D7タンパク質分子は、抗体、T細胞又は他のリガンドと158P1D7が結合するのを妨げる他のタンパク質又は分子を、実質的に含まない。単離精製の性質と度合いは、意図する用途に左右される。158P1D7関連タンパク質の態様は、精製した158P1D7関連タンパク質及び機能的な可溶性158P1D7関連タンパク質を包含する。一態様において、機能的な可溶性158P1D7タンパク質又はそのフラグメントは、抗体、T細胞又は他のリガンドを結合させる能力を保持する。
本発明はまた、図2又は図3に示す158P1D7アミノ酸配列の生物学的に活性なフラグメントを含んでなる158P1D7タンパク質を提供する。かかるタンパク質は158P1D7タンパク質の性質、例えば、158P1D7タンパク質と会合するエピトープに特異的に結合する抗体の生成をもたらす能力;かかる抗体を結合させる能力;HTL又はCTLの活性化をもたらす能力;及び/又は、HTL又はCTLに認識させる能力;などを示す。
特に対象とする構造を含む158P1D7関連ポリペプチドは、技術上周知の様々な分析法、例えば、チョウ−ファスマン(Chou-Fasman)、ガミエル−ロブソン(Gamier-Robson)、カイト−ドーリットル(Kyte-Doolittle)、アイゼンベルグ(Eisenberg)、カープラス−シュルツ(Karplus-Schultz)、又は、ジェイムソン−ウオルフ(Jameson-Wolf)解析の方法を用い、或いは、免疫原性に基づき、予測及び/又は同定することができる。かかる構造を含むフラグメントは、サブユニット特異的抗158P1D7抗体若しくはT細胞の生成に、又は、158P1D7に結合する細胞性因子の同定に特に有用である。
CTLエピトープは、特定したHLA対立遺伝子に最適に結合し得る158P1D7タンパク質内のペプチドを同定するための特別のアルゴリズムを用いて決定し得る(例:ワールドワイド・ウエブのSYFPEITHIサイトを使用することによる。URL syfpeithi.bmi-heidelberg.com/; 表4(A)−(E)に掲載;EpimatrixTM and EpimerTM, Brown University, URL (URL: brown.edu/Research/TB-HIV_Lab/epimatrix/epimatris.html); 及び BIMAS, URL;bimas.dcrt.nih.gov/)。これを説明すると、ヒトMHCクラスI分子HLA−A1、A2、A3、A11、A24、B7及びB35の状況において、提示される158P1D7からペプチドエピトープが予測された(表5〜13)。具体的には、158P1D7タンパク質の完全アミノ酸配列を、上記のウエブサイト、バイオインフォマティクス・アンド・モレキュラー・アナリシス・セクション(BIMAS)に見出したHLAペプチド・モチーフ・サーチ・アルゴリズムに入力した。HLAペプチド・モチーフ検索アルゴリズムはパーカー博士(Dr. Ken Parker)が開発したもので、HLAクラスI分子の溝、特にHLA−A2における特異的ペプチド配列の結合に基づくものである(参照例:Falk et al., Nature 351: 290-6 (1991); Hunt et al., Science 255: 1261-3 (1992); Parker et al., J. Immunol. 149: 3580-7 (1992); Parker et al., J. Immunol. 152: 163-75 (1994))。このアルゴリズムは、HLA−A2及び多くの他のHLAクラスI分子に対し予測される結合について、完全なタンパク質配列から8マー、9マー及び10マーペプチドの位置と順位を提供する。多くのHLAクラスI結合ペプチドは8、9、10又は11マーである。例えば、クラスIのHLA−A2については、エピトープは、好ましくは、ロイシン(L)又はメチオニン(M)を位置2に、また、バリン(V)又はロイシン(L)をC末端に含む(参照例:Parker et al., J. Immunol. 149: 3580-7 (1992))。158P1D7予測結合ペプチドの選択結果を本明細書の表5〜13に示す。表5〜13に、各ファミリーメンバーについての上位50位の候補、9マー及び10マーを、それらの位置、各特異的ペプチドのアミノ酸配列、及び、予測される結合スコアとともに示す。結合スコアは37℃、pH6.5での該ペプチドを含む複合体が解離する推定半減時間に相当する。最高の結合スコアをもつペプチドは、細胞表面のHLAクラスIに、最長時間、最も堅固に結合することが予測され、従って、T細胞認識のための最良の免疫原標的を示すものである。
HLA対立遺伝子に対するペプチドの実際の結合は、抗原プロセシング欠損細胞株T2上での、HLA発現の安定化により評価し得る(参照例:Xue et al., Prostate 30: 73-8 (1997) 及び Peshwa et al., Prostate 36: 129-38 (1998))。特異ペプチドの免疫原性は、樹状細胞などの抗原提示細胞の存在下、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の刺激によりインビトロで評価し得る。
評価すべきことは、BIMASサイト、EpimerTM及びEpimatrixTMサイトにより予測される何れのエピトープ、或いは、技術的に利用可能な又は表4に示すように技術の一部となる(又はワールドワイド・ウエブサイト URL syfpeithi.bmi-heidelberg.com/を使用して決定される)HLAクラスI又はクラスIIのモチーフにより特定された何れのエピトープも、158P1D7タンパク質に対して「適用される」べきことである。この文脈で使用する場合、「適用される」とは158P1D7タンパク質を、例えば、関連分野の当業者が評価するように、目視にて、又はコンピュータに基づくパターン・ファインディング法により評価する。HLAクラスIモチーフを含有する8、9、10、又は11のアミノ酸残基の158P1D7のサブ配列、又は、HLAクラスIIモチーフを含有する9以上のアミノ酸残基のサブ配列は、何れも本発明の範囲内である。
III.B.)158P1D7関連タンパク質の発現
以下の例に記載する態様において、158P1D7は、C末端6×HisとMYCタグ(pcDNA3.1/mycHIS、インビトロジェン、又は、Tag5、ジェンハンターコーポレーション(GenHunter Corporation)ナッシュビル、TN)とともに158P1D7をコード化するCMV駆動ベクターなどの市販品として入手し得る発現ベクターにより形質移入した細胞(293T細胞など)で簡便に発現し得る。Tag5ベクターは形質移入細胞中で分泌された158P1D7タンパク質の生産を容易にするために使用されるIgGK分泌シグナルを提供する。培地中で分泌されたHISタグ標識−158P1D7は、例えば、標準法によりニッケルカラムを用いて精製し得る。
III.C.)158P1D7関連タンパク質の修飾
共有結合修飾などの158P1D7関連タンパク質の修飾は、本発明の範囲内に含まれる。共有結合修飾の一つのタイプは、158P1D7ポリペプチドの標的アミノ酸残基と158P1D7の選択された側鎖又はN若しくはC末端残基と反応し得る有機誘導化剤との反応である。本発明の範囲に包含される158P1D7ポリペプチドのもう一つのタイプの共有結合修飾は、本発明タンパク質の本来のグリコシル化パターンを変化させることからなる。158P1D7のもう一つのタイプの共有結合修飾は、様々な非タンパク質ポリマーの一つ、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンなどに、米国特許(USP4,640,835;4,496,689;4,301,144;4,670,417;4,791,192又は4,179,337)に開示された方法により、158P1D7ポリペプチドを結合させることからなる。
本発明の158P1D7関連タンパク質はまた、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合した158P1D7を含んでなるキメラ分子を形成するように、修飾することができる。かかるキメラ分子は、化学的に又は組換えにより合成し得る。キメラ分子は、本発明のタンパク質が別の腫瘍関連抗原又はそのフラグメントと融合したものを、持ち得る。あるいは、本発明によるタンパク質は、158P1D7配列(アミノ酸又は核酸)のフラグメントの融合を含んでなり、その結果、分子はその全長で図2又は図3に示されるアミノ酸又は核酸配列に直接相同ではないものとして創製される。かかるキメラ分子は158P1D7の複数の同じサブ配列を含み得る。キメラ分子は、158P1D7関連タンパク質と、ポリヒスチジンエピトープタグ(固定化されたニッケルが選択的に結合し得るエピトープを提供する)、サイトカイン、又は、増殖因子、との融合物を含んでなる。エピトープタグは一般に、158P1D7の、アミノ又はカルボキシル末端に設置する。代わり得る態様において、キメラ分子は158P1D7関連タンパク質と免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定の領域との融合物を含んでなる。キメラ分子の二価形状(「イムノアドヘシン」ともいう)の場合、かかる融合物はIgG分子のFc領域に対し得る。Ig融合物は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、158P1D7ポリペプチドの可溶性(膜透過性ドメインの欠失又は不活化)形状との置換を含む。好適な態様において、免疫グロブリン融合物は、IgGl分子のヒンジCH2及びCH3を、又は、ヒンジCH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の生産についての参照例:米国特許5,428,130(1995年6月27日発行)。
III.D.)158P1D7関連タンパク質の用途
本発明のタンパク質は多くの異なる用途を有する。158P1D7は膀胱癌及び他の癌で高度に発現されるので、158P1D7関連タンパク質は正常組織とそれに対する癌組織中での158P1D7遺伝子産物の状態を評価し、それによって悪性表現型を解明する方法に使用する。典型的には、158P1D7タンパク質の特定領域からのポリペプチドは、これら領域(1個以上のモチーフを含む領域など)の変異(perturbation)(欠失、挿入、点突然変異など)の存在を評価するために使用する。模範となるアッセイ法では、正常組織とそれに対する癌組織中でのこの領域の特性を評価するために、又は、エピトープに対する免疫応答を惹起するために、158P1D7ポリペプチド配列内に含まれる1個以上の生物学的モチーフのアミノ酸残基を含んでなる158P1D7関連タンパク質を標的とする抗体又はT細胞を利用する。別法としては、158P1D7タンパク質の1以上の生物学的モチーフのアミノ酸残基を含む158P1D7関連タンパク質を、158P1D7の当該領域と相互作用する因子をスクリーニングするために使用する。
158P1D7タンパク質フラグメント/サブ配列は、158P1D7又はその特定の構造ドメインに結合する物質又は細胞性因子を同定するために、ドメイン特異的抗体(例えば、158P1D7タンパク質の細胞外又は細胞内エピトープを認識する抗体)の生成及び特徴付けに特に有用であり、また種々の治療及び診断状況、例えば、限定されるものではないが、診断アッセイ、癌ワクチン及びかかるワクチンの製造法に有用である。
158P1D7遺伝子がコード化するタンパク質、又は、その類似体、相同体若しくはフラグメントがコード化するタンパク質は、様々な用途を有する;例えば、限定されるものではないが、158P1D7遺伝子産物に結合する抗体の生成、並びに、リガンド及びその他の物質及び細胞性成分を同定する方法などである。158P1D7タンパク質又はそのフラグメントに対する抗体は、表1に掲載したような158P1D7タンパク質の発現により特徴づけられるヒトの癌の管理における診断及び予知のアッセイ並びに画像化方法に有用である。かかる抗体は細胞内で発現可能であり、かかる癌をもつ患者の治療方法に使用し得る。158P1D7関連の核酸又はタンパク質もまた、HTL又はCTL反応を生成させる際に使用する。
158P1D7タンパク質の検出に有用な種々の免疫学的アッセイ法が使用される;例えば、限定されるものではないが、種々タイプのラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光検定法(ELIFA)、免疫細胞化学法などである。抗体は標識して、158P1D7発現細胞を検出し得る免疫学的画像形成剤として使用し得る(例:ラジオシンチグラフ画像化法にて)。158P1D7タンパク質はまた、さらに本明細書に記載するように、癌ワクチンの生成に特に有用である。
IV.)158P1D7抗体
本発明のもう一つの側面は、158P1D7関連タンパク質に結合する抗体を提供する。好適な抗体は158P1D7関連タンパク質に特異的に結合し、158P1D7関連タンパク質ではないペプチド又はタンパク質には結合しない(結合してもわずかである)。例えば、158P1D7に結合する抗体は、158P1D7関連タンパク質、例えばその相同体又は類似体、に結合する。
本発明の158P1D7抗体は、膀胱癌の診断及び予測のアッセイにおいて並びに画像化方法において、特に有用である。同様に、かかる抗体は、158P1D7が他の癌にも発現又は過剰発現される限りにおいて、それらの癌の治療、診断、及び/又は予測において、特に有用である。さらに、細胞内で発現される抗体(例:一本鎖抗体)は、進行又は転移した膀胱癌など、158P1D7の発現が関与する癌の治療において、治療上有用である。
本発明は、158P1D7及び突然変異158P1D7関連タンパク質の検出と定量に有用な種々の免疫学的アッセイ法をも提供する。かかるアッセイ法は、適切な場合、158P1D7関連タンパク質を認識及び結合し得る1種以上の158P1D7抗体を含み得る。これらのアッセイは技術上周知の種々の免疫学的アッセイ形式に基づいて実施する;該方法は限定されるものではないが、種々タイプのラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光検定法(ELIFA)などである。
本発明の免疫学的な非抗体アッセイは、T細胞免疫原性アッセイ(阻害性又は刺激性)及び主要組織適合性複合体(MHC)結合アッセイをも含む。
加えて、158P1D7を発現する膀胱癌及びその他の癌を検出し得る免疫学的画像化法もまた本発明により提供される;かかる方法は限定されるものではないが、標識した158P1D7を使用するラジオシンチグラフ画像化法である。かかるアッセイ法は、膀胱癌などの158P1D7を発現する癌の検出、モニター、及び、予測において臨床的に有用である。
158P1D7抗体はまた、158P1D7関連タンパク質の精製法、並びに、158P1D7相同体及び関連分子の単離方法にも、使用される。例えば、158P1D7関連タンパク質の精製法は、固体マトリックスに結合されている158P1D7抗体を、158P1D7抗体が158P1D7関連タンパク質と結合することが可能な条件下で、158P1D7関連タンパク質を含む溶出液又はその他の溶液とインキュベートし;該固体マトリックスを洗浄して不純物を除き;結合した抗体から158P1D7関連タンパク質を溶出することからなる。本発明の158P1D7抗体のその他の用途は、158P1D7タンパク質を模倣(mimic)する抗イディオタイプ抗体の生成を含む。
様々な抗体調製法が技術上周知である。例えば、単離された形状の又は免疫コンジュゲート形状の158P1D7関連タンパク質、ペプチド又はフラグメントを用い、適当な哺乳動物宿主を免疫することにより、抗体を調製し得る(Antibodies: A Laboratory Manual (抗体:実験室マニュアル)、CSH Press, Eds., Harlow, and Lane (1988); Harlow, Antibodies, Cold Spring Harbor Press, NY (1989))。加えて、158P1D7の融合タンパク質、例えば、158P1D7 GST融合タンパク質なども使用し得る。特定の態様においては、図2又は図3のアミノ酸配列の全部又は大部分を含んでなるGST融合タンパク質を製造し、それを免疫原として使用し、適切な抗体を生成する。もう一つの態様においては、158P1D7関連タンパク質を合成し、免疫原として使用する。
加えて、技術上既知の、裸のDNA(naked DNA)免疫化技法は、コード化された免疫原に免疫応答を生じさせるために(精製した158P1D7関連タンパク質又は158P1D7発現細胞とともに又は不存在下に)使用される(参照総説:Donnelly et al., 1997, Ann. Rev. Immunol. 15:617-648)。
図2又は図3に示す158P1D7のアミノ酸配列を分析して、抗体を生成させるための158P1D7タンパク質の特異的領域を選択することができる。例えば、158P1D7アミノ酸配列の疎水性及び親水性分析を用いて、158P1D7構造中の親水性領域を同定する(参照例:標題「抗原性プロフィール」の実施例)。免疫原構造を示す158P1D7タンパク質の領域、並びに、その他の領域及びドメインを、技術上既知のその他の種々の方法を用いて容易に同定し得る;例えば、チョウ−ファスマン(Chou-Fasman)、ホップとウッズ(Hopp and Woods)、カイト−ドーリットル(Kyte-Doolittle)、ジャニン(Janin)、バスカランとポヌスワミイ(Bhaskaran and Ponnuswamy)、デリージとロー(Deleage and Roux)、ガミエル−ロブソン(Gamier-Robson)、アイゼンベルグ(Eisenberg)、カープラス−シュルツ(Karplus-Schultz)、又は、ジェイムソン−ウオルフ(Jameson-Wolf)分析などである。従って、これらのプログラム又は方法の何れかにより同定される各領域は、本発明の範囲内である。158P1D7抗体を生成させる方法については、本明細書中に提供した実施例の方法によりさらに説明する。免疫原として使用するタンパク質又はポリペプチドの調製法は技術上周知である。BSA、KLH又はその他の担体タンパク質などの担体と、タンパク質との免疫原抱合体の調製法も、また技術上周知である。ある場合には、例えば、カルボジイミド試薬を用いる直接抱合を用いる;他の場合にはピアス・ケミカル(ロックフォード、IL)が供給するような連結試薬が有効である。158P1D7免疫原の投与は、しばしば適当な時間間隔の注射により実施し、技術上理解されるように、適当なアジュバントと共に使用する。免疫化スケジュールの期間に、抗体形成の適正を確認するために、抗体力価を測定し得る。
158P1D7モノクローナル抗体は技術的に周知の種々の手段により製造し得る。例えば、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化した細胞は、一般的に知られているように、コーラーとミルシュタイン(Kohler and Milstein)の標準的ハイブリドーマ法、又は、抗体産生B細胞を不死化するような修飾、を用いて調製する。所望の抗体を分泌する不死化細胞株は、抗原が158P1D7関連タンパク質である免疫学的検定(イムノアッセイ)によりスクリーニングする。適切な不死化細胞培養が同定された場合、該細胞培養を拡張し、インビトロ培養系又は腹水液から坑体を産生させ得る。
本発明の一態様はマウスモノクローナル抗体を産生するマウスハイブリドーマであり、X68(2)18(a.k.a.M15-68(2)18.1.1)と命名し、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託した(P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108;2004年2月6日;受託番号PTA−5801)。
本発明の抗体又はフラグメントは、組換えの手法によっても製造し得る。キメラの又は相補性決定領域(CDR)を移植された、多種由来の抗体の状態において、158P1D7タンパク質の所望の領域に特異的に結合する領域を製造することもできる。ヒト化又はヒトの158P1D7抗体もまた製造可能であり、治療における使用に好ましい。1種以上の非ヒト抗体CDRを対応するヒト抗体配列と置換することにより、マウス又はその他の非ヒト抗体を、ヒト化する方法は周知である(参照例:Jones et al., 1986, Nature 321: 522-525; Riechmann et al., 1988, Nature 332: 323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science 239: 1534-1536)。Carter et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 及び Sims et al., 1993, J. Immunol. 151: 2296 も参照。
完全ヒトモノクローナル抗体の製造法は、ファージディスプレイ及びトランスジェニック法を含む(参照総説:Vaughan et al., 1998, Nature Biotechnology 16: 535-639)。完全ヒト158P1D7モノクローナル抗体は、大規模ヒトIg遺伝子コンビナトリアルライブラリーを用いたクローニング技法(すなわち、ファージディスプレイ)により生成させ得る(Griffiths and Hoogenboom, Building an in vitro immune system: human antibodies from phage display libraries (インビトロ免疫系の構築:ファージディスプレイライブラリイからのヒト抗体). Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man (ヒトにおける予防及び治療適用抗体分子のタンパク質エンジニアリング), Clark, M.(Ed.), Nottingham Academic, pp45-64 (1993); Burton and Barbas, Human Antibodies from combinatorial libraries (コンビナトリアルライブラリーからのヒト抗体), Id., pp65-82)。完全ヒト158P1D7モノクローナル抗体もまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように設計したトランスジェニックマウスを用いて製造することができる;記載例は1997年12月3日公開されたKucherlapati及びJakobovitsらによるPCT特許出願WO98/24893(また、Jakobovits, 1998, Exp. Opin. Invest. Drugs 7(4): 607-614; 米国特許6,162,963(2000年12月19日発行);USP6,150,584(2000年11月12日発行);及び、6,114,598(2000年9月5日発行)も参照)。この方法は、ファージディスプレイ技法で必要なインビトロ操作を回避し、効率的に高親和性で真正のヒト抗体を産生する。
158P1D7抗体の158P1D7関連タンパク質との反応性は、多くの既知の方法、例えば、158P1D7関連タンパク質、158P1D7発現細胞又はその抽出物を適切に使用した、ウエスタンブロット、免疫沈降法、ELISA及びFACS分析により立証可能である。158P1D7抗体若しくはそのフラグメントは検出可能なマーカーで標識するか、又は、第二分子に抱合させ得る。適当な検出可能マーカーは、限定されるものではないが、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート又は酵素である。さらに、2つ以上の158P1D7エピトープに特異的な二重特異性抗体は、技術上一般に知られた方法を用いて生成させる。ホモダイマー抗体もまた、技術上既知の架橋法により生成させ得る(例:Wolff et al., Cancer Res. 53: 2560-2565)。
V.)158P1D7細胞性免疫応答
T細胞が抗体を認識するメカニズムについて、(詳細が)描写されてきている。本発明の有効なペプチドエピトープワクチン組成物は、世界的な集団の非常に広範な部分において、治療的又は予防的な免疫反応を誘導する。細胞性免疫応答を誘発する本発明組成物の価値及び有効性を理解するために、免疫学関連技法の簡潔な概説が提供されている。
HLA分子とペプチド抗原の複合体は、HLA制限T細胞により認識されるリガンドとして作用する(Buus, S. et al., Cell 47: 1071, 1986; Babbitt, B.P. et al., Nature 317: 359, 1985; Townsend, A. and Bodmer, H., Annu. Rev. Immunol. 7:601, 1989; Germain, R.N., Annu. Rev. Immunol. 11:403, 1993)。単一アミノ酸置換の抗原類似体の研究、及び、内因性に結合する天然に作用するペプチドの配列決定を経て、HLA抗原分子に特異的に結合するために必要なモチーフに対応する重要な(決定的な)残基が同定されており、それを表4に示す(参照例:Southwood, et al., J. Immunol. 160: 3363, 1998; Rammensee, et al., Immunogenetics 41: 178, 1995; Rammensee et al., SYFPEITHI, access via World Wide Web at URL syfpeithi,bmi-heidelberg.com/; Settem A. and Sidney, J. Curr. Opin. Immunol. 10:478, 1998; Engelhard, V.H., Curr. Opin. Immunol. 6:13, 1994; Sette, A. and Grey, H.M., Curr. Opin. Immunol. 4:79, 1992; Sinigaglia, F. and Hammer, J. Curr. Biol. 6: 52, 1994; Ruppert et al., Cell 74: 929-937, 1993; Kondo et al., J. Immunol. 155: 4307-4312, 1995; Sidney et al., J. Immunol. 157: 3480-3490, 1996; Sidney et al., Human Immunol. 45: 79-93, 1996; Sette, A. and Sidney, J. Immunogenetics 1999 Nov; 50(3-4): 201-12, 総説)。
さらに、HLA−ペプチド複合体のX線結晶解析により、ペプチドリガンドが保持する残基をアレル特異的様式で収容するHLA分子の該ペプチドが結合する割れ目/溝の中に、ポケットがあることが明らかになった;結果として、これらの残基が、これらの残基を有するペプチドのHLA結合能を決定する(参照例:Madden, D.R. Annu. Rev. Immunol. 13:587; Smith, et al., Immunity 4:203, 1996; Fremont et al., Immunity 8:305, 1998; Stern et al., Structure 2:245, 1994; Jones, E.Y. Curr. Opin. Immunol. 9:75, 1997; Brown, J.H. et al., Nature 364:33, 1993; Guo, H.C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8053,1993; Guo, H.C. et al., Nature 360:364,1992; Silver, M.L. et al., Nature 360:367, 1992; Matsumura, M. et al., Science 257:927, 1992; Madden et al., Cell 70:1035, 1992; Fremont, D.H. et al., Science 257:919, 1992; Saper, M.A., Bjorkman, P.J. and Wiley, D.C., J. Mol. Biol. 219:277, 1991)。
従って、クラスI及びクラスIIアレル特異的HLA結合モチーフ、又は、クラスI若しくはクラスIIスーパーモチーフを限定することで、特定のHLA抗原に対する結合と(相関)関係にあるタンパク質内領域を、同定することが可能となる。
従って、HLAモチーフの同定によって、エピトープに基づくワクチンの候補が同定されている;かかる候補はHLA−ペプチド結合アッセイによりさらに評価し、該エピトープ及びその相当するHLA分子の結合親和性及び/又は会合時間を決定することができる。さらなる確認作業は、これらのワクチン候補の中で、集団の適用範囲の点で、及び/又は、免疫原性の点で、好適な特性をもつエピトープを選択するために実施し得る。
細胞性の免疫原性を評価するためには、以下の様々な戦略を利用し得る:
1)正常個体からの一次T細胞培養物の評価(参照例:Wentworth, P.A. et al., Mol. Immunol. 32:603, 1995; Celis, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2105, 1994; Tsai, V. et al., J. Immunol. 158:1796, 1997; Kawashima, I. et al., Human Immunol. 59:1, 1998)。この手法は、正常被験者からの末梢血リンパ球(PBL)を、抗原提示細胞の存在下にインビトロでテストペプチドにより数週間にわたり刺激することからなる。該ペプチドに特異的なT細胞はこの期間に活性化されることとなり、例えば、リンホカイン又は51Cr放出アッセイ(ペプチド感作標的細胞を含む)により検出する。
2)HLAトランスジェニックマウスの免疫化(参照例:Wentworth, P.A. et al., J. Immunol. 26:97, 1996; Wentworth, P.A. et al., Int. Immunol. 8:651, 1996; Alexander, J. et al., J. Immunol. 159:4753, 1997)。例えば、かかる方法では、不完全フロインドアジュバント中のペプチドをHLAトランスジェニックマウスに皮下投与する。免疫の数週間後、脾細胞を取り出し、テストペプチドの存在下に約1週間培養する。ペプチド特異的T細胞は、例えば、51Cr放出アッセイ(ペプチド感作標的細胞及び内因性に生成される抗原を発現する標的細胞を含む)により、検出する。
3)効果的にワクチン接種した免疫個体からの、及び/又は、慢性段階IIIの患者からのリコールT細胞応答の証明(参照例:Rehermann, B. et al., J. Exp. Med. 181;1047, 1995; Doolan, D.L. et al., Immunity 7:97, 1997; Bertoni, R. et al., J. Clin. Invest. 100:503, 1997; Threlkeld, S.C. et al., J. Immunol. 159:1648, 1997; Diepolder, H.M. et al., J. Virol. 71:6011, 1997)。従って、病気のため該抗原に接触し結果として免疫応答を「自然に」生じた被験者からの、又は、該抗原に対しワクチン接種した患者からのPBLを培養することにより、リコール応答は検出される。被験者からのPBLは、テストペプチドと抗原提示細胞(APC)の存在下に1〜2週間インビトロで培養することにより、「メモリー」T細胞の活性化(「ナイーブ」T細胞に比較して)が可能となる。培養終了時点において、51Cr放出(ペプチド感作標的を含む)、T細胞増殖、又はリンホカイン放出を含むアッセイにより、T細胞活性を検出する。
VI.)158P1D7トランスジェニック動物
158P1D7関連タンパク質をコード化する核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物の生成にも使用し得るが、該動物は結果として治療的に有用な試薬の開発及びスクリーニングにおいて有用である。確立された技法に従い、158P1D7をコード化するcDNAは、158P1D7をコード化するゲノムDNAのクローニングに使用し得る。クローン化ゲノム配列は、次いで158P1D7をコード化するDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を生成させるために使用し得る。トランスジェニック動物、特にマウス又はラットなどの動物についての生成方法は技術上常套のものとなっており、例えば、米国特許4,736,866(1988年4月12日発行)及び4,870,009(1989年9月26日発行)に記載されている。典型的には、特定の細胞が、組織特異的エンハンサーを含む158P1D7導入遺伝子の標的となろう。
158P1D7をコード化する導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物を使用して、158P1D7をコード化するDNAの発現増加の効果を試験することができる。かかる動物は、例えば、その過剰発現と関連する病理学的症状から保護すると考えられる試薬についての試験動物として、使用し得る。本発明のこの側面によると、動物を試薬で処理し、該導入遺伝子を含有する未処置動物に比較して病理学的症状の発生率が低下している場合、その病理学的症状に対する潜在的な治療的介在があったとする。
あるいは、158P1D7の非ヒト相同体は、158P1D7「ノックアウト」動物を構築するために使用し得る;ノックアウト動物は158P1D7をコード化する内在性遺伝子と、その動物の胚細胞に導入した158P1D7をコード化する改変ゲノムDNAとの間の相同的組み換えの結果として、158P1D7のコード化に欠陥のある遺伝子又は改変された遺伝子をもつ動物である。例えば、158P1D7をコード化するcDNAを用い、確立された技法に従って158P1D7をコード化するゲノムDNAをクローン化することができる。158P1D7をコード化するゲノムDNAの一部は削除するか、又は組込みをモニターするために使用し得る選択可能なマーカーをコード化する遺伝子などの別の遺伝子と置き換え得る。典型的には、数キロベースの未変化末端切除DNA(5’及び3’両末端)が該ベクターに含まれている(参照例:相同的組み換えベクターの説明 Thomas and Capecchi, Cell, 51:503 (1987))。該ベクターは胚性幹細胞株に導入し(例えば、エレクトロポレーションにより)、導入したDNAが内在性DNAと相同性に組み換った細胞を選択する(参照例:Li et al., Cell, 69:915 (1992))。選択した細胞は、次いで動物(例:マウス又はラット)の胚盤胞に注入し、集合キメラを形成させる(参照例:Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach (奇形癌腫及び胚性幹細胞:実用法)、E.J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp.113-152)。キメラ胚は次いで適当な偽妊娠メス里子哺育動物に移植し、該胚が「ノックアウト」動物を創生する条件とする。その幹細胞に相同的組み換えDNAを保持する子孫は標準的技法により同定可能であり、その動物の細胞すべてが相同的組み換えDNAを含む動物に繁殖するために使用することができる。ノックアウト動物は、例えば、ある種の病理学的症状に対しての防御能力、又は、158P1D7ポリペプチドの存在しないことによる病理学的症状の発症において、特徴付けることができる。
VII.)158P1D7の検出方法
本発明のもう一つの側面は、158P1D7ポリヌクレオチドとポリペプチド及び158P1D7関連タンパク質の検出方法、並びに158P1D7を発現する細胞の同定方法に関する。158P1D7の発現プロフィールは転移性疾患の診断マーカーとなる。従って、158P1D7遺伝子産物の状態は、疾患のステージが進行する可能性、進行速度、及び/又は、腫瘍攻撃性などを含む種々の因子を予測するために有用な情報を提供する。本明細書で詳細に考察するように、患者サンプル中の158P1D7遺伝子産物の状態は、技術上周知の様々なプロトコール、例えば、免疫組織化学分析、in situ ハイブリダイゼーションなどの様々なノーザンブロッティング、RT−PCR分析(例えば、レーザー捕捉顕微解剖サンプル)、ウエスタンブロット分析、及び組織アレイ分析などにより分析し得る。
より詳しくは、本発明は、生体サンプル、例えば、尿、血清、骨、前立腺液、組織、精液、細胞調製品など中の158P1D7ポリヌクレオチドを検出するアッセイ法を提供する。検出可能な158P1D7ポリヌクレオチドは、例えば、158P1D7遺伝子又はそのフラグメント、158P1D7mRNA、選択的スプライス変異体158P1D7mRNA、及び、158P1D7ポリヌクレオチドを含む組換えDNA若しくはRNA分子である。158P1D7ポリヌクレオチドの存在を、増幅及び/又は検出する多くの方法が技術上周知であり、本発明のこの局面の実施に採用し得る。
一態様において、生体サンプル中の158P1D7mRNAを検出する方法は、少なくとも1種のプライマーを用い、逆転写によりサンプルからcDNAを生産し、そのように生産したcDNAを、センス及びアンチセンスプライマーとしての158P1D7ポリヌクレオチドにより増幅して、サンプル中の158P1D7cDNAを増幅し、次いで増幅した158P1D7cDNAの存在を検出することからなる。任意的に、増幅した158P1D7cDNAの配列を決定し得る。
もう一つの態様において、生体サンプル中の158P1D7遺伝子を検出する方法は、先ずサンプルからゲノムDNAを分離すること;センス及びアンチセンスプライマーとして158P1D7ポリヌクレオチドを用い、単離したゲノムDNAを増幅すること;及び増幅した158P1D7遺伝子の存在を検出すること;からなる。いくつもの適切なセンス及びアンチセンスプローブの組合せを、158P1D7用に提供されるヌクレオチド配列(図2)から設計し、この目的に使用し得る。
本発明はまた、組織又は他の生体サンプル、例えば、尿、血清、精液、骨、前立腺、細胞調製品など中の158P1D7タンパク質の存在を検出するアッセイ法を提供する。158P1D7関連タンパク質を検出する方法もまた周知であり、例えば、免疫沈降法、免疫組織化学分析、ウエスタンブロット分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFAなどを含む。例えば、生体サンプル中の158P1D7関連タンパク質の存在を検出する方法は、先ずサンプルを158P1D7抗体、その158P1D7反応性フラグメント、又は158P1D7抗体の抗原結合領域を含む組換えタンパク質と接触させること;次いでサンプル中の158P1D7関連タンパク質の結合を検出すること;からなる。
158P1D7を発現する細胞の同定法もまた、本発明の範囲内である。一態様において、158P1D7遺伝子を発現する細胞の同定アッセイ法は、細胞中の158P1D7mRNAの存在を検出することからなる。細胞中の特定のmRNAの検出方法は周知であり、例えば、相補性DNAプローブを用いるハイブリダイゼーションアッセイ(標識した158P1D7リボプローブを用いるin situ ハイブリダイゼーション、ノーザンブロット及び関連技法など)及び種々の核酸増幅アッセイ法(158P1D7に特異的な相補性プライマーを用いるRT−PCR、及び他の増幅型検出法、例えば、分枝DNA、SISBA、TMAなど)を含む。あるいは、158P1D7遺伝子を発現する細胞の同定アッセイ法は、細胞中の、又は細胞が分泌する158P1D7関連タンパク質の存在を検出することからなる。様々なタンパク質検出法が技術的に周知であり、158P1D7関連タンパク質の検出及び158P1D7関連タンパク質を発現する細胞の検出に採用される。
158P1D7発現分析はまた158P1D7遺伝子発現を調節する薬剤の同定及び評価用の手段としても有用である。例えば、158P1D7発現は膀胱癌で有意に上方制御され、表1に掲載した組織の癌において発現される。癌細胞中で158P1D7発現又は過剰発現を阻害する分子又は生物学的物質の同定には治療上の価値がある。例えば、かかる物質はRT−PCR、核酸ハイブリダイゼーション又は抗体結合により158P1D7の発現を定量するスクリーニングを用いることにより同定することができる。
VIII.)158P1D7関連遺伝子及びその産物のモニター方法
発癌は多段階プロセスであることが知られており、細胞増殖が進行性に制御不全となり、細胞が正常の生理的状態から前癌状態、さらには癌状態にまで進行する(参照例:Alers et al., Lab Invest. 77(5):437-438 (1997) 及び Isaacs et al., Cancer Surv. 23:19-32 (1995))。この状況下で、制御不全細胞増殖を証明するために生体サンプルを調べることにより(癌における異常な158P1D7発現など)、治療選択のさらに限定される段階及び/又は予後の悪化する段階へと癌が進行するような病的状態になる前に、かかる異常な生理状態の初期検出が可能となる。かかる試験においては、対象の生体サンプルの状態を、例えば、対応する正常サンプル(例:病理学的影響を受けていない個体あるいは別の個体からのサンプル)中の158P1D7の状態と比較することができる。生体サンプル中の158P1D7の状態の変化は(正常サンプルと比較した場合)、制御不全細胞増殖の証拠を提供する。正常サンプルとして病理学的に影響を受けていない生体サンプルを使用することに加えて、mRNA発現を予め決定した正常レベルなど予め決定した基準値を、サンプル中の158P1D7の状態を比較するために使用することもできる(参照例:Grever et al., J. Comp. Neurol. 1996 Dec 9:376(2):306-14 及び米国特許5,837,501)。
この状況下、用語「状態」はその技術的に受け入れられている意味に従って使用され、また遺伝子及びその産物の条件又は状態をいう。一般的に、当業者は多くのパラメーターを使用し、遺伝子及びその産物の条件又は状態を評価する。これらは、限定されるものではないが、発現された遺伝子産物の位置(158P1D7発現細胞の位置を含む)並びにそのレベル、及び発現された遺伝子産物の生物活性(158P1D7mRNA、ポリヌクレオチド及びポリペプチドなど)を含む。一般的に、158P1D7の状態の変化は、158P1D7及び/又は158P1D7発現細胞の位置における変化、及び/又は158P1D7mRNA及び/又はタンパク質発現の増加からなる。
サンプル中の158P1D7の状態は、技術上周知の多くの手段により分析し得る;その手段は限定されるものではなく、免疫組織化学的分析、in situ ハイブリダイゼーション、レーザー捕捉顕微解剖サンプル上のRT−PCR分析、ウエスタンブロット分析、及び組織アレイ分析などを含む。158P1D7遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価する代表的なプロトコールは、例えば、以下の文献に見出される;Ausubel et al., eds. 1995, Current Protocols in Molecular Biology, Unite 2 (ノーザンブロッティング)、4 (サザーンブロッティング)、15 (免疫ブロッティング)及び18(PCR分析)。従って、生体サンプル中の158P1D7の状態は、当業者が利用する様々な方法によって評価される;かかる方法は、限定されるものではないが、ゲノム・サザーン分析(例えば、158P1D7遺伝子の変異(perturbation)を試験するため)、158P1D7mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析(例えば、158P1D7mRNAのポリヌクレオチド配列又は発現レベルの変化を試験するため)、及びウエスタン及び/又は免疫組織化学分析(例えば、ポリペプチド配列の変化、サンプル内のポリペプチド位置の変化、158P1D7タンパク質の発現レベルの変化及び/又は158P1D7タンパク質とポリペプチド結合パートナーとの会合を試験するため)などを含む。検出可能な158P1D7ポリヌクレオチドは、例えば、158P1D7遺伝子又はそのフラグメント、158P1D7mRNA、選択スプライス変異体、158P1D7mRNA、及び158P1D7ポリヌクレオチドを含む組換えDNA又はRNA分子である。
158P1D7の発現プロフィールは、それを局所及び/又は転移疾患に対する診断マーカーとし、生体サンプルの増殖又は発癌の潜在能力についての情報を提供する。特に、158P1D7の状態は特定疾患の病期、進行、及び/又は腫瘍攻撃性を予測するために有用な情報を提供する。本発明は158P1D7の状態を決定し、表1に掲載した組織の癌など、158P1D7を発現する癌を診断する方法及びアッセイ法を提供する。例えば、158P1D7mRNAは、正常膀胱組織に比較して、膀胱癌、その他の癌においてかなり高度に発現されるので、生体サンプル中の158P1D7mRNA転写物又はタンパク質のレベルは、158P1D7制御不全と関連する疾患の診断に使用することが可能であり、適切な治療選択肢を決定する際に有用な予後情報を提供し得る。
158P1D7の発現状態は、形成異常、前癌及び癌状態の存在、段階及び位置などについての情報、疾患が種々の段階へ進行する可能性を予測する情報、及び/又は、腫瘍攻撃性を正確に測定するための情報を提供する。さらに、発現プロフィールは、それを転移疾患用の画像化剤として有用なものとする。結果として、本発明の一つの側面は、癌などの制御不全細胞増殖を特徴とする病態に罹患している個体又は罹患している疑いのある個体からのサンプルなど、生体サンプル中の158P1D7の状態を試験するための種々の分子レベルの予測法及び診断法を目指すものである。
上述のように、生体サンプル中の158P1D7の状態は、技術上周知の多くの手法により試験することができる。例えば、身体の特定部分から採取した生体サンプル中の158P1D7の状態は、158P1D7発現細胞(例:158P1D7mRNA又はタンパク質を発現する細胞)の存在又は不存在についてサンプルを評価することにより試験し得る。この試験において、例えば、158P1D7発現細胞が、通常かかる細胞を含まない生体サンプル(リンパ節など)に見出される場合、制御不全細胞増殖の証拠を提供し得る;その理由は生体サンプル中の158P1D7の状態のかかる変化が、しばしば制御不全細胞増殖と関連するからである。具体的には、制御不全細胞増殖の一指標は、元の臓器(膀胱など)から身体の異なる領域(リンパ節など)への癌細胞の転移である。例によると、制御不全細胞増殖の証拠は、潜在性のリンパ節転移が前立腺癌の相当数の患者の集団に検出されるので重要であり、かかる転移は疾患進行の既知予測因子と関連する(参照例:Murphy et al., Prostate 42(4): 315-317 (2000); Su et al., Semin. Sur. Oncol. 18(1): 17-28 (2000) 及び Freeman et al., J Urol 1995 Aug 154(2 Pt 1): 474-8)。
一側面において、本発明は158P1D7遺伝子産物をモニターする方法を提供するが、該方法は制御不全細胞増殖(過形成又は癌など)と関連する疾患をもつ疑いのある個体からの細胞が発現する158P1D7遺伝子産物の状態を決定し、そのように決定した状態を、相当する正常サンプル中の158P1D7遺伝子産物の状態と比較することからなる。正常サンプルに比較して、テストサンプル中に異常な158P1D7遺伝子産物が存在する場合、これはその個体の細胞内に制御不全細胞増殖の存在を示すものとなる。
もう一つの側面において、本発明は個体に癌の存在することを決定する際の有用なアッセイ法を提供するが、該アッセイ法はテスト細胞又は組織における158P1D7mRNA又はタンパク質発現が、相当する正常細胞又は組織における発現レベルと比較して、有意な増大のあることを検出することからなる。158P1D7mRNAの存在は、例えば、表1に掲載した組織に限定されるものではないが、該組織サンプル中で評価し得る。これら組織の何れかにおける有意な158P1D7発現の存在は、癌の発生、存在及び/又は重篤度を示すために有用であるが、その理由は相当する正常組織が158P1D7mRNAを発現しないか又は低レベルでしか発現しないからである。
関連する態様において、158P1D7の状態は核酸レベルよりもむしろタンパク質レベルで決定される。例えば、かかる方法はテスト組織サンプル中の細胞が発現する158P1D7タンパク質のレベルを決定し、そのように決定されたレベルを相当する正常サンプル中で発現される158P1D7のレベルと比較することからなる。一態様において、158P1D7タンパク質の存在は、例えば、免疫組織化学的方法により評価する。158P1D7タンパク質発現を検出し得る158P1D7抗体又は結合パートナーは、この目的のために技術上周知の様々なアッセイ形式で使用される。
さらなる態様においては、これら分子構造の変異(perturbation)を同定するために、生体サンプル中の158P1D7ヌクレオチド及びアミノ酸配列の状態を評価することができる。これらの変異(perturbation)は挿入、欠失、置換などを含むことが出来る。かかる評価は、ヌクレオチド及びアミノ酸配列の変異(perturbation)が、増殖制御不全表現型と関連する多くのタンパク質に観察されるため有用である(参照例:Marrogi et al., 1999, J. Cutan. Pathol. 26(8):369-378)。例えば、158P1D7の配列内における突然変異は、腫瘍の存在又は促進を示すものであり得る。従って、かかるアッセイ法は158P1D7の突然変異は、機能の潜在的な喪失又は腫瘍増殖の増大を示す場合、診断的又は予後的価値を有する。
ヌクレオチド及びアミノ酸配列における変異(perturbation)を観察するための幅広いアッセイ法は、技術上周知である。例えば、158P1D7遺伝子産物の核酸及びアミノ酸配列のサイズ及び構造は、本明細書にて考察したノーザン、サザーン、ウエスタン、PCR及びDNA配列決定プロトコールにより観察される。加えて、1本鎖高次構造多型など、ヌクレオチド及びアミノ酸配列における変異(perturbation)を観察するためのその他の方法は、技術上周知である(参照例:米国特許5,382,510(1999年9月7日発行)及びUSP5,952,170(1995年1月17日発行))。
さらには、生体サンプル中の158P1D7遺伝子のメチル化状態を試験し得る。遺伝子5’制御領域におけるCpGアイランドの異常な脱メチル化及び/又は過剰メチル化が不死化及び形質転換細胞に起こり、結果として種々の遺伝子の発現に変化を起こし得る。例えば、DBCCR1、PAX6及びAPC遺伝子の過剰メチル化されたプロモーターが膀胱癌に検出されており、これが該遺伝子の異常発現を導いている(Esteller et al., Cancer Res 2001; 61:3225-3229)。遺伝子のメチル化状態を試験する様々な方法が技術上周知である。例えば、サザーンハイブリダイゼーション法では、CpGアイランドのメチル化状態を評価するために、メチル化CpG部位を含む配列を切断することのできないメチル化感受性制限酵素を利用することができる。加えて、MSP(メチル化特異的PCR)は、所定の遺伝子のCpGアイランドに存在するすべてのCpG部位のメチル化状態の概略を迅速に描き出すことができる。この手法では、重亜硫酸ナトリウムにより最初にDNAを修飾(すべての非メチル化シトシンをウラシルに変換する)、次いでメチル化DNAと非メチル化DNAの各々に特異的なプライマーを用いて増幅することからなる。メチル化干渉に関わるプロトコールはまた、例えば、文献に見出される(Current Protocols in Molecular Biology, Unit 12, Frederick M. Ausubel el al., eds., 1995)。
遺伝子増幅は158P1D7の状態を評価するさらなる方法である。サンプル中における遺伝子増幅を直接測定する;例えば、本明細書に提供した配列に基づき、適切に標識したプローブを用い、mRNA転写を定量する常套のサザーンブロッティング若しくはノーザンブロッティング(Thomas, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205)、ドットブロッティング(DNA分析)、又は、in situ ハイブリダイゼーションによる。あるいは、特異的二重鎖、例えば、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA−RNA二重鎖又はDNA−タンパク質二重鎖を認識する抗体を採用する。該抗体を次に標識し、二重鎖が表面に結合している場合、アッセイを実施し、その結果、表面の二重鎖の形成に基づき、二重鎖に結合した抗体の存在を検出し得る。
生検組織又は末梢血は、158P1D7の発現を検出するために、例えば、ノーザン、ドットブロット又はRT−PCR分析を用い、癌細胞の存在について簡便にアッセイすることができる。RT−PCRで増幅可能な158P1D7mRNAの存在は、癌の存在を示すものとなる。RT−PCRアッセイは技術上周知である。末梢血腫瘍細胞のRT−PCR検出アッセイについては、多くのヒトの固形腫瘍の診断及び管理に使用するために、現在評価されつつある。
本発明のさらなる側面は、癌の発生について、個体が有する罹患率を評価することである。一態様において、罹患率を予測する方法は、組織サンプル中の158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質を検出することからなり、その存在は癌に罹患可能性であることを示し、その場合、158P1D7mRNA発現の度合いは、罹患可能性の度合いと相関する。具体的な態様において、膀胱又はその他の組織における158P1D7の存在を試験し、サンプル中に158P1D7が存在する場合は、膀胱癌の罹患可能性(又は膀胱腫瘍の発生又は存在)を示すものとする。同様に、挿入、欠失、置換などのこれら分子の構造における変異(perturbation)を同定するために、生体サンプル中の158P1D7ヌクレオチドとアミノ酸配列の完全性を評価し得る。サンプル中の158P1D7遺伝子産物に1つ以上の変異(perturbation)の存在する場合は、癌の罹患可能性(又は腫瘍の発生又は存在)を示している。
本発明はまた腫瘍攻撃性を正確に測定する方法を含んでなる。一態様において、腫瘍の攻撃性を正確に測定する方法は、腫瘍細胞が発現する158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質のレベルを決定し、そのように決定したレベルと、同じ個体から採取した対応する正常組織又は正常組織対照サンプルにて発現される158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質のレベルとを比較することからなり、その際、腫瘍サンプル中の158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質の、正常サンプルに比較した発現度によって、攻撃度を示すものとする。特定の態様において、腫瘍の攻撃性は腫瘍細胞中で158P1D7がどの程度発現されるかを決定し、発現レベルが高いほど、より攻撃性の腫瘍であるとする。もう一つの態様では、挿入、欠失、置換などのこれら分子構造の変異(perturbation)を確認するために、生体サンプル中の158P1D7ヌクレオチド及びアミノ酸配列の完全性を評価する。1つ以上の変異(perturbation)の存在は、腫瘍がより攻撃的であることを示す。
本発明のもう一つの態様は、個体の悪性度の進行を経時的に観察する方法を指向する。一態様において、個体の悪性度の進行を経時的に観察する方法は、腫瘍細胞が発現する158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質のレベルを決定し、そのように決定したレベルと、同じ個体から異なる時間に採取した等価の組織サンプルにて発現される158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質のレベルとを比較することからなるが、その際、腫瘍サンプル中の158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質の経時的な発現度が、癌進行に関する情報を提供する。特定の態様において、癌の進行は腫瘍細胞中の158P1D7の発現を経時的に測定することにより評価するが、その際、発現が経時的に増大しているならば、癌が進行しているとする。また、挿入、欠失、置換などのこれら分子構造の変異(perturbation)を確認するために、生体サンプル中の158P1D7ヌクレオチド及びアミノ酸配列の完全性を評価するが、その場合、1つ以上の変異(perturbation)の存在は、癌が進行していることを示す。
上記の診断方法は、技術上既知の様々な予測及び診断プロトコールの何れか1つと組合わせることができる。例えば、本発明のもう一つの態様は、組織サンプルの状態を診断及び予測する手段として、158P1D7遺伝子及び158P1D7遺伝子産物の発現(又は、158P1D7遺伝子及び158P1D7遺伝子産物の変異(perturbation))及び悪性度と関連する因子の間の同時発生を観察する方法を目的とする。悪性度と関連する多様な因子、例えば、悪性度と関連する遺伝子発現(例:PSCA、H−rasand p53 発現など)並びに肉眼による細胞学的観察(参照例:Bocking et al., 1984, Anal. Quant. Cytol. 6(2):74-88; Epstein, 1995, Hum. Pathol. 26(2):223-9; Thorson et al.,1998, Mod. Pathol. 11(6):543-51; Baisden et al., 1999, Am. J. Surg. Pathol. 23(8):918-24)が利用し得る。158P1D7遺伝子及び158P1D7遺伝子産物の発現(又は、158P1D7遺伝子及び158P1D7遺伝子産物の変異(perturbation))及び悪性度と関連するもう1つの因子の間の同時発生を観察する方法は、例えば、疾患と同時に生じる1セットの因子の存在が組織サンプルの状態を診断し、予測するために決定的な情報を提供するので有用である。
一態様において、158P1D7遺伝子及び158P1D7遺伝子産物の発現(又は158P1D7遺伝子及び158P1D7遺伝子産物の変異(perturbation))及び悪性度と関連するもう1つの因子の間の同時発生を観察する方法は、組織サンプル中の158P1D7mRNA若しくはタンパク質の過剰発現を検出すること、組織サンプル中のBLCA−4AmRNA若しくはタンパク質の過剰発現(又はPSCA発現)を検出すること、及び158P1D7mRNA若しくはタンパク質及びBLCA−4mRNA若しくはタンパク質の過剰発現(又はPSCA発現)の同時発生を観察することを必要とする(Amara et al., 2001, Cancer Res 61:4660-4665; Konety et al., Clin Cancer Res. 2000, 6(7):2618-2625)。特定の態様において、膀胱組織における158P1D7及びBLCA−4mRNAの発現を試験するが、その場合、サンプル中の、158P1D7及びBLCA−4mRNAの過剰発現の同時発生は、膀胱癌の存在、膀胱癌の罹患可能性又は膀胱腫瘍の発生若しくは状態を示す。
158P1D7mRNA又はタンパク質の発現を検出し、定量する方法は本明細書に記載され、標準的核酸とタンパク質の検出及び定量法は、技術上周知である。158P1D7mRNAの標準的検出及び定量法は、標識した158P1D7リボプローブを用いるin situ ハイブリダイゼーション、158P1D7ポリヌクレオチドプローブを使用するノーザンブロット及び関連技法、158P1D7に特異的なプライマーを用いるRT−PCR分析、及びその他の増幅型検出法、例えば、分枝DNA、SISBA、TMAなどを含む。特定の態様において、半定量的RT−PCRは、158P1D7mRNAの発現を検出及び定量するために使用される。158P1D7を増幅し得る数種のプライマーがこの目的に使用し得る;プライマーは制限されるものではないが、本明細書に具体的に記載した種々のプライマーセットを含む。特定の態様において、野生型の158P1D7タンパク質と特異的に反応するポリクローナル又はモノクローナル抗体が、剖検組織の免疫組織化学アッセイに使用し得る。
IX.)158P1D7と相互作用する分子の同定
本明細書に開示した158P1D7タンパク質及び核酸配列は、158P1D7と相互作用するタンパク質、小分子及びその他の物質並びに158P1D7が活性化する経路を、技術的に受け容れられている種々のプロトコールの何れか一つにより当業者が同定することを可能とする。例えば、いわゆる相互作用トラップシステム(「ツーハイブリッドアッセイ」ともいう)の一つを利用する。かかるシステムにおいては、分子同士が作用し合い、レポーター遺伝子の発現を指示する転写因子を再構築し、それによってレポーター遺伝子の発現をアッセイする。他のシステムでは、真核細胞転写活性化因子の再構築を介してインビボでタンパク質−タンパク質相互作用を同定する;参照例:米国特許5,955,280(1999年9月21日発行)、USP5,925,523(1999年7月20日発行)、USP5,846,722(1998年12月8日発行)、及び、USP6,004,746(1999年12月21日発行)。アルゴリズムも、タンパク質機能のゲノムに基づく予測のために、技術的に利用し得る(参照例:Marcotte, et al., Nature 402:4 November 1999, 83-86)。
あるいは、158P1D7タンパク質配列と相互作用する分子を同定するために、ペプチドライブラリーをスクリーニングすることができる。かかる方法において、158P1D7に結合するペプチドを、ランダム又は調整されたコレクションのアミノ酸をコード化するライブラリーをスクリーニングすることにより同定する。該ライブラリーがコード化するペプチドは、バクテリオファージコートタンパク質の融合タンパク質として発現されるので、158P1D7タンパク質に対してバクテリオファージ粒子をスクリーニングする。
従って、治療、予測又は診断薬などの多様な用途をもつペプチドは、予想されるリガンド又はレセプター分子の構造に関する事前の情報がなくても、このように同定される。158P1D7タンパク質配列と相互作用する分子を同定するために使用し得る代表的なペプチドライブラリー及びスクリーニング方法は、例えば、米国特許5,723,286(1998年3月3日発行)及びUSP5,733,731(1998年3月31日発行)に開示されている。
あるいは、158P1D7を発現する細胞株は、158P1D7が介在するタンパク質−タンパク質相互作用を同定するために使用する。かかる相互作用は免疫沈降法を用いて試験し得る(参照例:Hamilton BJ, et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1999, 261:646-51)。158P1D7タンパク質は、抗158P1D7抗体を用いて158P1D7発現細胞株から免疫沈降させ得る。あるいは、Hisタグに対する抗体は、158P1D7とHisタグの融合物を発現するように調製した細胞株中で使用し得る(上記ベクター)。免疫沈降複合体は、ウエスタンブロッティング、タンパク質の35S−メチオニン標識化、タンパク質マイクロシークエンシング、銀染色及び二次元ゲル電気泳動などの手法により、タンパク質会合について試験し得る。
158P1D7と相互作用する小分子及びリガンドは、かかるスクリーニングアッセイの関係する態様を介して同定し得る。例えば、タンパク質機能に干渉する小分子は同定可能であり、リン酸化と脱リン酸化、細胞周期の調節を示すものとしてのDNA又はRNA分子との相互作用、センカンドメッセンジャーシグナル伝達又は腫瘍形成を仲介する158P1D7の能力に干渉する小分子である。同様に、158P1D7関連イオンチャンネル、タンパク質ポンプ、又は、158P1D7の細胞間コミュニケーション機能を調節する小分子を同定し、158P1D7を発現する癌を有する患者の治療に使用する(参照例:Hille, B., Ionic Channels of Excitable Membranes(興奮性膜のイオンチャンネル)2nd Ed., Sinauer Assoc., Sunderland, MA, 1992)。さらに、158P1D7の機能を調節するリガンドを、158P1D7と結合しレポーター構築物を活性化する能力に基づいて、同定し得る。代表的な方法は、例えば、米国特許5,928,868(1999年7月27日発行)に考察されており、少なくとも1個のリガンドが小分子であるハイブリッドリガンドを形成する方法を含む。実例となる態様においては、158P1D7とDNA結合タンパク質の融合タンパク質を発現するように調製した細胞を用い、ハイブリッドリガンド/小分子とcDNAライブラリー転写活性化因子タンパク質の融合タンパク質を同時発現する。該細胞はさらにレポーター遺伝子を含み、その発現が第一と第二融合タンパク質の近傍上で条件付け、その事象はハイブリッドリガンドが両ハイブリッドタンパク質上の標的部位に結合した場合にのみ起こる。レポーター遺伝子を発現するこれらの細胞が選択され、未知小分子又は未知リガンドが同定される。この方法は、158P1D7を活性化するか又は阻害するモジュレーターを同定する手段を提供する。
本発明の態様は、図2又は図3に示す158P1D7アミノ酸配列と相互作用する分子をスクリーニングする方法を包含し、該方法は分子集団と158P1D7アミノ酸配列とを接触させる工程、該分子集団と158P1D7アミノ酸配列とが容易に相互作用する条件下で相互作用させる工程、158P1D7アミノ酸配列と相互作用する分子の存在を決定する工程、及び、続いて158P1D7アミノ酸配列と相互作用しない分子を相互作用する分子から分離する工程からなる。特定の態様において、該方法はさらに158P1D7アミノ酸配列と相互作用する分子を精製、特徴づけ及び同定する工程を含んでなる。同定した分子は、158P1D7が果たす機能を調節するために使用し得る。好適な態様において、158P1D7アミノ酸配列はペプチドライブラリーと接触させる。
X.)治療方法及び組成物
限定された一群の組織において正常に発現されるが、膀胱癌及びその他の癌でも発現されるタンパク質として158P1D7を同定することは、かかる癌の治療において多くの治療方法の道を開く。本明細書で注目するように、158P1D7は腫瘍促進遺伝子の活性化又は腫瘍発生を遮断する遺伝子の抑制に関与する転写因子として機能する。
従って、158P1D7タンパク質の活性を阻害する治療方法は、158P1D7を発現する癌罹患患者にとって有用である。これらの治療方法は一般に、2種類に分けられる。1つの種類は158P1D7タンパク質とその結合パートナー又は他のタンパク質との結合又は会合を阻害する種々の方法からなる。もう一つの種類は158P1D7遺伝子の転写又は158P1D7mRNAの翻訳を阻害する種々の方法からなる。
X.A.)抗癌ワクチン
本発明は158P1D7関連タンパク質又は158P1D7関連核酸を含んでなる癌ワクチンを提供する。158P1D7を発現するという観点で、癌ワクチンは158P1D7を発現する癌を予防及び/又は治療するが、非標的組織に対しては影響が無いか又は殆ど無い。体液性及び/又は細胞仲介免疫応答を生じるワクチンにおいて腫瘍抗原を、抗癌療法に使用することは技術上周知である(参照例:Hodge et al., 1995, Int. J. Cancer 63:231-237; Fong et al., 1997, J. Immunol. 159:3113-3117)。
かかる方法は158P1D7関連タンパク質を採用することにより、又は158P1D7エンコーディング核酸分子及び158P1D7免疫原(一般的には多くの抗体又はT細胞エピトープを含んでなる)を発現・提示し得る組換えベクターを採用することにより、容易に実施し得る。当業者も理解するように、免疫反応性エピトープを送達するための多様なワクチン系が技術上既知である(参照例:Heryln et al., Ann Med 1999 Feb 31(1):66-78; Maruyama et al., Cancer Immunol Immunother 2000 Jun 49(3):123-32)。簡単に説明すると、哺乳動物で(体液性及び/又は細胞仲介などの)免疫応答を生成するかかる方法は、哺乳動物免疫系を免疫反応性エピトープ(例:図2に示す158P1D7タンパク質又はその類似体若しくは相同体に存在するエピトープ)に接触させる工程、結果として該哺乳動物がそのエピトープに特異的な免疫応答を生じる(例えば、そのエピトープを特異的に認識する抗体を生じる)工程からなる。好適な方法において、158P1D7免疫原は生物学的モチーフを含む;例えば、表5〜18、又は、図11、図12、図13、図14、及び図15に示す158P1D7からのサイズ範囲のペプチドを参照されたい。
全158P1D7タンパク質、その免疫原性領域又はエピトープを組合わせ、種々の手段で送達する。かかるワクチン組成物は、例えば、リポペプチド(例:Vitiello, A. et al., J. Clin. Invest. 95:341, 1995)、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLG」)微粒子のカプセルに詰めたペプチド組成物(参照例:Eldridge, et al., Molec. Immunol. 28:287-294, 1991; Alonso et al., Vaccine 12:299-306, 1994; Jones et al., Vaccine 13:675-681, 1995)、免疫刺激複合体(ISCOMS)に含まれるペプチド組成物(参照例:Takahashi et al., Nature 344:873-875, 1990; Hu et al., Clin Exp Immunol. 113:235-243, 1998)、多重抗原ペプチド系(MAP)(参照例:Tam, J.P., Pro. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5409-5413, 1988; Tam, J.P., J. Immunol. Methods 196:17-32, 1996)、多価ペプチドとして調製したペプチド;射出送達系に使用するペプチド、典型的な結晶化ペプチド、ウイルス送達ベクター(Perkus, M.E. et al.,In: Concepts in vaccine development (ワクチン開発の概念) Kaufmann, S.H.E., ed., p,379, 1996; Chakrabarti, S. et al., Nature 320:535,1986; Hu, S.L. et al., Nature 320:537, 1986; Kieny, M.-P. et al., AIDS Bio/Technology 4:790, 1986; Top, F.H. et al., J. Infect. Dis. 124:148, 1971; Chanda, P.K. et al., Virology 175:535, 1990)、ウイルス又は合成起源の粒子(例:Kofler, N. et al., J. Immunol. Methods, 192:25, 1996; Eldridge, J.H. et al., Sem. Hematol. 30:16, 1993; Falo, L.D., Jr. et al., Nature Med. 7:649, 1995)、アジュバント(Warren, H.S., Vogel, F.R., and Chedid, L.A. Annu. Rev. Immunol. 4:369, 1986; Gupta, R.K. et al., Vaccine 11:293, 1993)、リポソーム(Reddy, R. et al., J. Immunol. 148:1585, 1992; Rock, K.L., Immunol. Today 17:131, 1996)、裸又は粒子吸収cDNA(Ulmer, J.B. et al., Science 259:1745, 1993; Robinson, H.L., Hunt, L.A., and Webster, R.G., Vaccine 11:957, 1993; Shiver, J.W. et al., Concepts in vaccine development, Kaufmann, S.H.E., ed., p.423, 1996; Cease, K.B., and Berzofsky, J.A., Annu. Rev. Immunol. 12:923, 1994 and Eldridge, J.H. et al., Sem. Hematol. 30:16, 1993)を、包含する。レセプター仲介標的化としても知られる毒素標的化送達法、例えば、アバント・イムノセラピューティックス・インク(Avant Immunotherapeutics, Inc.)(ニーダム、マサチューセッツ)のものも、また使用し得る。
本発明のワクチン組成物はまた、158P1D7関連癌の患者において、癌に使用される他の治療法、例えば、手術、化学療法、薬物療法、放射線療法などと共に使用し得るし、IL−2、IL−12、GM−CSFなどの免疫補助剤との組合わせでも使用し得る。
細胞性ワクチン
CTLエピトープは、対応するHLAアレルに結合する158P1D7タンパク質内のペプチドを同定するための特別のアルゴリズムを用いて決定し得る(参照例:
表4;EpimerTM and EpimatrixTM, Brown University (URL brown.edu/Research/TB-HIV_Lab/epimatrix/epimatrix.html); 及び BIMAS,(URL. bimas,dcrt.nih.gov/; SYFPEITHI at URL syfpeithi.bmi-heidelberg.com/)。好適な態様において、158P1D7免疫原は表5〜18に示した配列など、技術上周知の技法を用いて同定した1つ以上のアミノ酸配列、又はHLAクラスIモチーフ/スーパーモチーフにより特定される8、9、10又は11個のアミノ酸のペプチド(例:表4(A)、表4(D)、又は表4(E))及び/又はHLAクラスIIモチーフ/スーパーモチーフを含んでなる少なくとも9個のアミノ酸のペプチド(例:表4(B)又は表4(C))を含む。技術上認められているように、HLAクラスI結合の溝は本質的に閉じた終末であり、その結果、特定サイズ範囲のペプチドのみがその溝に嵌合し、結合することができる;一般にHLAクラスIのエピトープは、8、9、10、又は11個のアミノ酸の長さである。対して、HLAクラスIIの結合溝は本質的に開放された終末である;従って、約9個以上のアミノ酸のペプチドがHLAクラスII分子と結合することができる。HLAクラスI及びII間の結合溝の差のために、HLAクラスIモチーフは鎖長特異的である、すなわち、クラスIモチーフの位置2は該ペプチドのアミノからカルボキシルの方向に2番目のアミノ酸である。クラスIIモチーフにおけるアミノ酸位置は、ペプチド全体ではなく互いに対してのみの関係である、すなわち、追加されたアミノ酸は、モチーフ含有配列のアミノ及び/又はカルボキシル末端に付着することができる。HLAクラスIIエピトープは、多くの場合、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のアミノ酸の長さであるか、又は25個を超えるアミノ酸長である。
抗体に基づくワクチン
哺乳動物において免疫応答を生じさせる多様な方法が技術上既知である(例えば、ハイブリドーマ生成における第一ステップとして)。哺乳動物において免疫応答を生成させる方法は、哺乳動物の免疫系を、タンパク質(例:158P1D7タンパク質)上の免疫原エピトープに接触させ、その結果として、免疫応答を生じさせる。典型的な態様は宿主中に158P1D7に対する免疫応答を生じさせる方法からなり、該方法は該宿主を十分量の少なくとも1種の158P1D7 B細胞若しくは細胞傷害性T細胞エピトープ又はその類似体と接触させること、そしてその後、少なくとも一定の期間間隔で該宿主を158P1D7 B細胞若しくは細胞傷害性T細胞エピトープ又はその類似体と再接触させることからなる。特定の態様は、158P1D7関連タンパク質又は人工的多重エピトープペプチドに対して免疫応答を生じさせる方法からなる;該方法はワクチン製剤中の158P1D7免疫原(例:158P1D7タンパク質又はそのペプチドフラグメント、158P1D7融合タンパク質又は類似体など)をヒト又は別の哺乳動物に投与することからなる。一般的に、かかるワクチン製剤はさらに適切なアジュバント(参照例:米国特許6,146,635)又はPADRETMペプチド(エピミューン・インク(Epimmune Inc.)、サンディエゴ、CA)などの普遍性ヘルパーエピトープを含む(参照例:Alexander et al., J.Immunol. 2000 164(3):1625-1633; Alexander et al., Immunity 1994 1(9): 751-761 及び Alexander et al., Immunol. Res. 1998 18(2): 79-92)。代替方法は158P1D7免疫原に対し個体に免疫応答を生じさせることからなるが、該方法は個体身体の筋肉又は皮膚に、158P1D7免疫原をコード化するDNA配列を含んでなるDNA分子をインビボ投与することによる;該DNA配列はDNA配列の発現を制御する調節配列に有効に結合している;DNA分子が細胞に取り込まれると、そのDNA配列は細胞内で発現し、該免疫原に対して免疫応答を生じる(参照例:米国特許5,962,428)。選択肢として、遺伝子ワクチン促進因子、例えば、アニオン性脂質;サポニン;レクチン;エストロゲン化合物;ヒドロキシル化低級アルキル;ジメチルスルホキシド;及び尿素なども投与する。
核酸ワクチン
本発明のワクチン組成物は核酸仲介様式のものである。本発明のタンパク質をコード化するDNA又はRNAを患者に投与し得る。遺伝子免疫化法は、158P1D7発現癌細胞に対して予防的又は治療的体液性及び細胞性免疫応答を生じさせるために採用し得る。158P1D7関連タンパク質/免疫原及び適切な調節配列をコード化するDNAを含んでなる構築物は、個体の筋肉又は皮膚に直接注射することができ、その結果、筋肉又は皮膚の細胞は該構築物を取り込み、コード化された158P1D7タンパク質/免疫原を発現する。あるいは、ワクチンは158P1D7関連タンパク質を含んでなる。158P1D7関連タンパク質免疫原の発現は、結果として158P1D7タンパク質を含有する細胞に対して予防的又は治療的体液性及び細胞性免疫を生じさせる。技術上既知の予防的及び治療的遺伝子免疫化法が使用し得る(概説については、インターネットアドレス URL: genweb.com で公開されている情報及び文献参照)。核酸に基づく送達については、文献に記載されている(例えば、Wolff et al., Science 247:1465 (1990) 並びに、米国特許5,580,859;5,589,466;5,804,566;5,739,118;5,736,524;5,679,647;国際特許出願WO98/04720)。DNAに基づく送達法の例は、「裸のDNA」促進化(ブピビカイン、ポリマー、ペプチド仲介)送達、カチオン性脂質複合体、及び粒子仲介(「遺伝子銃」)又は圧力仲介送達(参照例:USP5,922,687)を含む。
治療又は予防的な免疫化を目的に、本発明のタンパク質はウイルス又はバクテリアベクター経由で発現させ得る。本発明の実施に使用し得る種々のウイルス遺伝子送達系は、制限されるものではないが、ワクチニア、鶏痘、カナリア痘、アデノウイルス、インフルエンザ、ポリオウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス、及びシンドビスウイルスを含む(参照例:Restifo, 1996, Curr. Opin. Immunol. 8:658-663; Tsang et al., J. Natl. Cancer Inst. 87:982-990 (1995))。非ウイルス送達系を採用し、158P1D7関連タンパク質をコード化する裸のDNAを患者に(例えば、筋肉内又は皮内に)導入し、抗腫瘍応答を誘導することもできる。
ワクチニアウイルスは、例えば、本発明のペプチドをコード化するヌクレオチド配列を発現するベクターとして使用する。宿主への導入により、組換えワクチニアウイルスは免疫原性ペプチドのタンパク質を発現し、それによって宿主の免疫応答を引き出す。免疫化プロトコールに有用なワクチニアベクター及び方法は、米国特許4,722,848に記載されている。もう一つのベクターはBCG(Bacille Calmette Guerin)である。BCGベクターは文献(Stover et al., Nature 351:456-460 (1991))に記載がある。本発明ペプチドの治療目的投与又は免疫化に有用な、多様な他のベクター、例えば、アデノ及びアデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、サルモネラ・ティフィ・ベクター、解毒化炭疽菌毒素ベクターなどは、本明細書の記載から、当業者に明らかであろう。
従って、遺伝子送達系は158P1D7関連核酸分子の送達に使用する。一態様においては、全長ヒト158P1D7cDNAを採用する。もう一つの態様においては、特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)及び/又は抗体エピトープをコード化する158P1D7核酸分子を採用する。
エキソビボ(生体外)・ワクチン
免疫応答を生成させるために、種々のエキソビボ(生体外)戦略も採用し得る。一つの方法は、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)を使用して、患者の免疫系に158P1D7抗原を提示することである。樹状細胞はMHCクラスI及びII分子、B7共刺激因子、及びIL−12を発現するので、高度特殊化抗原提示細胞である。膀胱癌では、MAGE−3抗原のペプチドでパルスした自己樹状細胞が、膀胱癌患者の免疫系を刺激するために、第I相臨床試験にて使用されている(Nishiyama et al., 2001, Clin Cancer Res. 7(1):23-31)。従って、樹状細胞はMHCクラスI及びII分子の環境下で、158P1D7ペプチドをT細胞に提示するために使用する。一態様において、自己樹状細胞はMHCクラスI及び/又はII分子に結合し得る158P1D7ペプチドでパルスする。もう一つの態様において、樹状細胞は完全158P1D7タンパク質にてパルスする。さらにもう一つの態様は、技術上既知の、アデノウイルス(Arthur et al., 1997, Cancer Gene Ther. 4:17-25)、レトロウイルス(Henderson et al., 1996, Cancer Res. 56:3763-3770)、レンチウイルス,アデノ関連ウイルス、DNA形質移入(Ribas et al., 1997, Cancer Res. 57:2865-2869)、又は腫瘍由来RNA形質移入(Ashley et al., 1997, J. Exp. Med. 186:1177-1182)など、種々の手段のベクターを使用し、樹状細胞中で158P1D7遺伝子が過剰発現するように設計することからなる。158P1D7を発現する細胞は、GM−CSFなど、免疫モジュレーターを発現するように設計し、免疫化剤としても使用し得る。
X.B.)抗体に基づく治療の標的としての158P1D7
158P1D7は、抗体に基づく治療戦略にとって魅力的な標的である。細胞外及び細胞内分子双方を標的とする多数の抗体戦略が、技術上既知である(参照例:補体及びADCC仲介死滅並びに細胞内発現抗体の使用)。158P1D7は、対応する正常細胞に比較した場合、種々系統の癌細胞により発現されるので、全身投与用の158P1D7免疫反応組成物は、それが非標的臓器と組織に結合に起因する毒性の非特異的及び/又は非標的作用無しに優れた感受性を示すように調製する。158P1D7のドメインと特異的に反応する抗体は、毒素又は治療剤との抱合体として、又は、細胞増殖又は機能を阻害し得る裸の抗体として、158P1D7発現癌を全身的に治療するために有用である。
158P1D7抗体は患者に導入し、該抗体が158P1D7に結合して、結合パートナーとの相互作用などの機能を調節するようにする;その結果、腫瘍細胞の分解を仲介し、及び/又は腫瘍細胞の増殖を阻害する。かかる抗体が治療効果を発揮するメカニズムは、補体仲介の細胞溶解、抗体依存性細胞性細胞毒性、158P1D7の生理的機能の調節、リガンド結合若しくはシグナル伝達経路の阻害、腫瘍細胞分化の調節、腫瘍血管形成因子プロフィールの変更、及び/又はアポトーシスなどである。
当業者が理解するように、抗体は図2又は図3に示す158P1D7配列の免疫原領域などの免疫原分子を特異的に標的とし、それに結合するように使用し得る。加えて、当業者は、抗体を細胞毒性剤に抱合させることが常套的であることを理解している(参照例;Slevers et al. Blood 93:11 3678-3884 (June 1, 1999))。細胞傷害性製剤及び/又は治療剤を直接細胞に送達する場合(例えば、該細胞が発現する分子(例:158P1D7)に特異的な抗体にそれらを抱合させる)、細胞傷害性剤はそれらの細胞上で、その既知の生物学的作用(例えば、細胞毒性)を発揮する。
細胞を死滅させる抗体−細胞傷害性剤抱合体を用いる多様な組成物と方法が、技術上既知である。癌の場合、代表的な方法では、細胞表面上で発現するか、結合に接近し得るか、又は局在するマーカー(例:158P1D7)と結合する標的化剤(例:抗158P1D7抗体)と結合した、選択した細胞傷害性剤及び/又は治療剤を含んでなる生物学的有効量の抱合体を、腫瘍をもつ動物に投与することが必要である。代表的な態様は、細胞傷害性剤及び/又は治療剤を158P1D7発現細胞に送達する方法である;該方法は158P1D7エピトープに免疫特異的に結合する抗体に細胞傷害性剤を抱合させ、次いで抗体−傷害性剤抱合体に該細胞を接触させることからなる。もう一つの例示となる態様は、転移癌に罹患している疑いのある個体の治療方法であって、当該個体に治療有効量の細胞傷害性剤及び/又は治療剤に抱合した抗体を含んでなる医薬組成物を投与する工程からなる。
抗158P1D7抗体を用いる癌免疫療法は、他の型の癌の治療に成功裏に採用されている種々の方法に従って実施し得る;他の型の癌とは、限定されるものではないが、結腸癌(Arien et al., 1998, Crit. Rev. Immunol. 18:133-138)、多発性骨髄腫(Ozaki et al., 1997, Blood 90:3179-3186, Tsunenari et al., 1997, Blood 90:2437-2444)、胃癌(Kasprzyk et al., 1992, Cancer Res. 52:2771-2776)、B細胞リンパ腫(Funakoshi et al., 1996, J. Immunother. Emphasis Tumor Immunol. 19:93-101)、白血病(Zhong et al., 1996, Leuk. Res. 20:581-589)、結腸直腸癌(Moun et al., 1994, Cancer Res. 54:6160-6166; Velders et al., 1995, Cancer Res. 55:4398-4403)、及び乳癌(Shepard et al., 1991, J. Clin. Immunol. 11:117-127)を含む。一部の治療方法では裸の抗体を毒素に抱合すること、例えば、Y91又はI131と抗CD20抗体(例:ゼバリンTM(Zevalin)、IDECファーマシューティカルズ・コープ、又は、ベクサーTM(Bexxar)、クールター・ファーマシューティカルズ)との抱合であり、一方、他の場合には、抗体と他の治療剤、例えば、ハーセプチンTM(Herceptin)(トラスツズマブ(trastuzumab))とパクリタクセル(paclitaxel)(ジェネンテック・インク)、とを同時に投与することからなる。膀胱癌の治療には、例えば、158P1D7抗体を放射線照射、化学療法又はホルモン切除などと連携して投与することができる。
158P1D7抗体療法は癌のすべての段階で有用であるが、抗体療法は進行癌又は転移癌に特に適切である。本発明の抗体療法での治療は、1回以上の化学療法を受けたことのある患者に対して必要である。あるいは、本発明の抗体療法は化学療法治療を受けたことのない患者に対して、化学療法又は放射線療法と組合わせる。さらに、抗体療法は、特に化学療法剤の毒性によく耐え切れない患者にとって、同時に実施する化学療法の用量を低下させて使用することを可能とする。
癌患者は158P1D7発現の存在及びレベルについて、好ましくは、腫瘍組織の免疫組織化学評価、定量的158P1D7画像化、又は158P1D7発現の存在及び程度を信頼し得るものとして示すその他の技法により評価し得る。腫瘍生検又は手術標本についての免疫組織化学分析は、この目的に好適である。腫瘍組織の免疫組織化学分析方法は技術上周知である。
膀胱癌及びその他の癌を治療する抗158P1D7モノクローナル抗体は、腫瘍又は直接細胞毒性であるものに対し強力な免疫応答を引き起こす抗体である。この観点で、抗158P1D7モノクローナル抗体(mAb)は、補体仲介又は抗体依存性細胞毒性(ADCC)メカニズムにより腫瘍細胞溶解を引き起こす;両メカニズムは補体タンパク質上のエフェクター細胞Fcレセプター部位との相互作用のために、免疫グロブリン分子の未処理Fc部分を必要とする。加えて、腫瘍増殖に直接の生物学的影響を及ぼす抗158P1D7mAbは、158P1D7を発現する癌の治療に有用である。直接に細胞傷害性mAbが作用するメカニズムは以下のとおりである:細胞増殖の阻害、細胞分化の調節、腫瘍血管形成因子プロフィールの調節、及びアポトーシスの誘導。特定の抗158P1D7mAbが抗腫瘍作用を発揮するメカニズムは、技術上一般に知られるように、ADCC、ADMMC、補体仲介細胞溶解などの細胞死を評価するいくつかのインビトロアッセイを用いて評価する。
一部患者において、マウス又は他の非ヒトモノクローナル抗体、又はヒト/マウスキメラmAbを使用することは、非ヒト抗体に対する穏和ないし強力な免疫応答を誘導し得る。これは循環系からの抗体のクリアランスと効力の低下に至る。最も深刻な場合、かかる免疫応答は大量の免疫複合体の形成に導き、それが潜在的に腎不全の原因となる。従って、本発明の治療法に使用される好適なモノクローナル抗体は、完全なヒトの、又はヒト化した抗体であり、標的の158P1D7抗原に高い親和性で特異的に結合するが、患者での抗原性は示さないか、又は低い抗体である。
本発明の治療方法では、単一の抗158P1D7mAb並びに異なるmAbの組合せ、又はカクテルの投与を期待する。かかるmAbカクテルは、それらが異なるエピトープを標的とするか、異なるエフェクターメカニズムを活用するか、又は細胞毒性mAbと免疫エフェクター機能性に依存するmAbとを直接組合わせたものである限り、確実な進歩性を有し得る。加えて、抗158P1D7mAbは他の治療様式、例えば、限定されるものではないが、種々の化学療法剤、アンドロゲン遮断剤、免疫調節剤(例:IL−2、GM−CSF)、手術又は放射線照射などと同時に投与し得る。抗158P1D7mAbはそれらの「裸の」又は非抱合の形状で投与するか、又はそれらに抱合させた治療剤を有し得る。
抗158P1D7抗体の製剤は、該抗体を腫瘍細胞に送達し得る何れかの経路によって投与する。投与経路は、制限されるものではないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内などである。治療は一般に静脈内投与(IV)などの許容し得る投与経路を経て、典型的には約0.1ないし10mg/kg体重の範囲で、抗158P1D7抗体製剤を繰返し投与することからなる。一般に、1週間あたりmAb10〜500mgの範囲の用量が有効であり、また十分に寛容である。
転移乳癌の治療におけるハーセプチン(Herceptin)mAbでの臨床試験に基づくと、当初の負荷用量が約4mg/kg(患者体重)静注、次いで週用量約2mg/kg静注の抗158P1D7mAb製剤が、許容し得る用量投与計画の代表である。好ましくは、初期負荷用量を90分以上の点滴として投与する。断続的維持用量は、初期用量が十分に寛容である場合に、30分以上の点滴として投与する。当業者が認めるように、特定の事例では、様々な因子が理想的な用量投与計画に影響し得る。かかる因子とは、例えば、使用したAb又はmAbの結合親和性及び半減期、患者における158P1D7発現の程度、遊離する158P1D7抗原の循環の範囲、所望の恒常状態抗体濃度レベル、治療の頻度、及び本発明治療方法と組合わせて使用する化学療法剤又はその他の物質の影響、並びに特定患者の健康状態である。
選択肢として、最も有効な投与計画などの決定に役立てるために、所定のサンプル中の158P1D7レベル(例:循環する158P1D7抗原及び/又は158P1D7発現細胞のレベル)について患者を評価すべきである。かかる評価はまた治療全般のモニターの目的にも使用され、他のパラメータ(例えば、尿細胞診断及び/又は膀胱癌治療における免疫Cytレベル、又は類推による前立腺癌治療における血清PSAレベル)の評価と組合わせて、治療の成功を正確に測定するために有用である。
抗イディオタイプ抗158P1D7抗体は、抗癌治療において、158P1D7関連タンパク質を発現する細胞に免疫応答を誘発するワクチンとして有用である。特に、抗イディオタイプ抗体の生成は、技術上周知である;この方法論は158P1D7関連タンパク質上のエピトープを模倣する抗イディオタイプ抗158P1D7抗体を生成するために、容易に適合させることができる(参照例:Wagner et al., 1997, Hybridoma 16:33-40; Foon et al., 1995, J. Clin. Invest. 96:334-342; Herlyn et al., 1996, Cancer Immunol. Immunother. 43:65-76)。かかる抗イディオタイプ抗体は、癌ワクチン戦略に使用することができる。
X.C.)細胞性免疫応答の標的としての158P1D7
本明細書に記載した1種以上のHLA結合ペプチドの免疫原としての有効量を含むワクチン及びワクチンの調製法は、本発明のさらなる態様である。さらに、本発明によるワクチンは、請求項記載の1種以上のペプチドからなる組成物を包含する。ペプチドは個々にワクチン中に存在し得る。あるいは、該ペプチドは同じペプチドの複数コピーを含むホモポリマーとして、又は、種々のペプチドのヘテロポリマーとして存在し得る。ポリマーは免疫反応を増大させる利点を有し、また、ポリマー作製のために異なるエピトープが使用される場合、病原性生物体の異なる抗原決定基と、又は免疫応答を目標とする腫瘍関連ペプチドと反応する抗体及び/又はCTLを誘導するさらなる能力を有する。その構成成分は天然起源の抗原でもよく、又は、例えば、組換えにより若しくは化学合成により調製してもよい。
本発明のワクチンとともに使用し得る担体は、技術上周知のものであり、例えば、チログロブリン、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風菌毒素、ポリL−リジン、ポリL−グルタミン酸などのポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質などである。該ワクチンは生理学的に耐性を示す(すなわち、許容し得る)希釈剤、例えば、水又は食塩水、好ましくはリン酸緩衝食塩水を含み得る。該ワクチンは一般的にアジュバントを含む。技術上周知のアジュバントの例は、不完全フロイントのアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はアルムなどの物質である。さらに、本明細書に開示するように、CTL応答は本発明のペプチドを、トリパルミトイル−S−グリセリルシステインリセリル−セリン(P3CSS)などの脂質に抱合させることにより、あらかじめ刺激することができる。さらに、合成シトシン−ホスホロチオール化グアニン含有(CpG)オリゴヌクレオチドなどのアジュバントは、CTL応答を10倍ないし100倍増大させることが見出されている(参照例:Davila and Cells, J. Immunol. 165:539-547 (2000))。
本発明によれば、注射、エーロゾル、経口、経皮、経粘膜、胸膜腔内、鞘内、又はその他の適当な経路を経由するペプチド組成物による免疫化により、宿主の免疫系は所望の抗原に特異的な大量のCTL及び/又はHTLを生産することにより、該ワクチンに応答する。その結果、宿主は158P1D7抗原を発現若しくは過剰発現する細胞のその後の成長に、少なくとも部分的に免疫状態となるか、又は該抗原が腫瘍関連であった場合には、少なくともある種の治療上の利益を誘導する。
一部の態様において望ましいことは、クラスIペプチド成分と、標的抗原に対する抗体及び/又はヘルパーT細胞応答の中和を誘発又は促進する成分とを組合わせることである。かかる組成物の好適な態様は、本発明によるクラスI及びクラスIIエピトープを包含する。かかる構成成分の別の態様は、本発明によるクラスI及び/又はクラスIIエピトープを、PADRETM(エピインミューン(Epimmune)、サンディエゴ、CA)分子などの交差反応性HTLエピトープとともに包含する(例えば、米国特許5,736,142に記載)。
本発明のワクチンはまた、本発明のペプチドを提示する媒体として、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)をも含み得る。ワクチン組成物は樹状細胞の可動化と採取に続き、インビトロで創生可能であり、それによって樹状細胞の負荷がインビトロで生じる。例えば、樹状細胞は、例えば、本発明によるミニ遺伝子により形質移入するか、又はペプチドでパルスする。樹状細胞は次いで患者に投与し、インビボでの免疫応答を引き出すことができる。ワクチン組成物は、DNAに基づくものでも、ペプチドに基づくものであっても、樹状細胞可動化と組合わせてインビボでも投与し得るが、それによって樹状細胞の負荷がインビボで生じる。
ワクチンに使用するポリエピトープ構成成分に包含させるための一連のエピトープを選択する場合、あるいはワクチンに包含させるべき及び/又はミニ遺伝子などの核酸がコード化するべき不連続のエピトープを選択する場合、好ましくは以下の原則を利用する。以下のそれぞれの原則は、選択を実施するために均衡させることが好ましい。所定のワクチン組成物に包含させるべき複数のエピトープは、必ずしもその必要はないが、該エピトープを誘導する元の抗原の配列に相接することがある。
1.)エピトープは、投与したときに、腫瘍クリアランスと相関することが観察されている免疫応答に類似するものを選択する。HLAクラスIについて、このものは少なくとも1つの腫瘍関連抗原(TAA)に由来する3〜4個のエピトープを含む。HLAクラスIIの場合、同様の理論的解釈を採用する;再び、3〜4個のエピトープが少なくとも1つのTAAから選択される(参照例:Rosenberg et al., Science 278:1447-1450)。1つのTAAからのエピトープは、1つ以上のさらなるTAAからのエピトープと組合わせて使用し、しばしば発現されるTAAの多様な発現パターンをもつ腫瘍を標的とするワクチンを製造することができる。
2.)免疫原性と相関することの証明された、必要な結合親和性をもつエピトープを選択する;HLAクラスIについては、IC50が500nM以下、多くの場合、200nM以下;また、クラスIIについては、IC50が1000nM以下。
3.)十分なスーパーモチーフ含有ペプチド、又は、十分な一連のアレル特異的モチーフ含有ペプチドは、広範な集団を範囲に含むように選択する。例えば、少なくとも80%の集団を範囲に含むことが好ましい。モンテカルロ分析は技術上既知の統計評価手段であるが、これを採用して集団範囲の幅又は重複性を評価することができる。
4.)癌関連抗原からエピトープを選択する場合、患者は元のエピトープに耐性を生じている可能性があるので、類似体を選択するのがしばしば有用である。
5.)特に関連性のあるのは、「ネステッドエピトープ」といわれるエピトープである。ネステッドエピトープは、少なくとも2つのエピトープが所定のペプチド配列において重なり合う場合に生じる。ネステッドペプチド配列は、B細胞、HLAクラスI及び/又はHLAクラスIIエピトープを含み得る。ネステッドエピトープを提供する場合、一般的な目的は、配列あたりの最大多数のエピトープを提供することである。従って、一側面では、ペプチドのアミノ末端エピトープのアミノ端末よりも長く、またカルボキシル末端エピトープのカルボキシル端末よりも長いペプチドを提供することは避けることである。ネステッドエピトープを含んでなる配列など、複数エピトープの配列を提供する場合、一般的に重要なことは、それが病理学的又は他の有害な生物学的性質をもたないことを保証するために、その配列をスクリーニングにかけることである。
6.)もしポリエピトープタンパク質が創生されているならば、又はミニ遺伝子を創製する場合、目標は対象のエピトープを包含する最小のペプチドを生成させることである。たとえ、ネステッドエピトープを含むペプチドを選択する場合に採用されるものと同じでなくとも、この原則は同じである。しかし、人工的ポリエピトープペプチドの場合、サイズ最小化の目標は、ポリエピトープタンパク質内のエピトープ間のスペーサー配列を組み込む必要性に対して均衡する。スペーサーアミノ酸配列は、例えば、連結部エピトープ(免疫系が認識するが、標的抗原には存在せず、またエピトープの人工並置によってのみ創生されるエピトープ)を回避するか、又は、エピトープ間の切断を促進するように導入し、それによってエピトープの提示を強めることができる。連結部エピトープは一般には回避すべきである;その理由は、非先天性のエピトープに対し、受容者が免疫応答を生じる可能性があるからである。特に関心のあるのは、「優性エピトープ」である連結部エピトープである。優性エピトープは、他のエピトープに対する免疫応答が減少するか又は抑制されるような強力な応答へ導く。
7.)同じ標的タンパク質の複数変異体の配列が存在する場合、強力なペプチドエピトープがその保存性に基づき選択され得る。例えば、保存性の基準は、HLAクラスI結合ペプチドの全配列が、又は、クラスII結合ペプチドの全9マーコアが、特定タンパク質抗原について評価した配列の規定パーセンテージに保存されていることと定義し得る。
X.C.1.ミニ遺伝子ワクチン
複数エピトープの同時送達を可能とする多くの異なる方法が利用可能である。本発明のペプチドをコード化する核酸は、特に有用な本発明の態様である。ミニ遺伝子に包含されるエピトープは、前のセクションで述べたガイドラインに従って、好適に選択される。本発明のペプチドをコード化する核酸を投与する好適な手段では、本発明の1個又は複数のエピトープを含んでなるペプチドをコード化するミニ遺伝子構築物を使用する。
複数エピトープミニ遺伝子の使用については、以下の文献に記載されている;Ishioka et al., J. Immunol. 162:3915-3925, 1999; An, L and Whitton, J.L., J. Virol. 71:2292 1997; Thomson, S.A. et al., J. Immunol. 157:822, 1996; Whitton, J.L., et al., J. Virol. 67:348, 1993; Hanke, R. et al., Vaccine 16:426, 1998。例えば、158P1D7から誘導されるスーパーモチーフ−及び/又はモチーフ−含有エピトープ、PADRE(登録商標)普遍ヘルパーT細胞エピトープ(又は158P1D7からの多重HTLエピトープ)及び小胞体位置転移シグナル配列をコード化する複数エピトープDNAプラスミドを設計することができる。ワクチンは他のTAAから誘導されるエピトープを含んでいてもよい。
複数エピトープミニ遺伝子の免疫原性は、試験するエピトープに対するCTL誘導応答の大きさを評価するためのトランスジェニックマウスにて確認し得る。さらに、DNA‐コード化エピトープのインビボ免疫原性は、DNAプラスミドで形質移入した標的細胞に対する特異的CTL株のインビトロ応答と相関させることができる。従って、これらの実験では、ミニ遺伝子が以下の両方に働くことを示し得る; 1)CTL応答を生じること、また、2)誘発されたCTLが、コード化されたエピトープを発現する細胞を認識すること。
例えば、ヒト細胞での発現のために選択したエピトープ(ミニ遺伝子)をコード化するDNA配列を創製するために、エピトープのアミノ酸配列を逆翻訳することができる。ヒトコドン用法の表を利用し、各アミノ酸に対するコドン選択を進めることができる。これらのエピトープコード化DNA配列は直接隣接させることができ、その結果、翻訳に際し、連続するポリペプチド配列を創出する。発現及び/又は免疫原性を最適化させるために、ミニ遺伝子の設計にさらなる要素を取り込ませることができる。逆翻訳が可能で、ミニ遺伝子配列に包含させ得るアミノ酸配列の例は;HLAクラスIエピトープ、HLAクラスIIエピトープ、抗体エピトープ、ユビキチン化シグナル配列、及び/又は小胞体標的化シグナルである。加えて、CTL及びHTLエピトープのHLA提示は、CTL又はHTLエピトープに隣接して、合成(例:ポリ−アラニン)又は天然フランキング配列を含ませることにより改善し得る;該エピトープを含んでなるこれらのより大きなペプチドは、本発明の範囲内である。
ミニ遺伝子配列は、ミニ遺伝子のプラス及びマイナス鎖をコード化するオリゴヌクレオチドを組み上げることにより、DNAに変換することができる。オーバーラップしたオリゴヌクレオチド(30〜100塩基長)は、周知の技法を用い、適切な条件下で合成し、リン酸化し、精製し、そしてアニールすることができる。オリゴヌクレオチドの末端は、例えば、T4DNAリガーゼを用いて結合させることができる。該エピトープポリペプチドをコード化するこの合成ミニ遺伝子は、次いで所望の発現ベクターにクローン化することができる。
当業者周知の標準的調節配列は、標的細胞中での発現を確かなものとするために、好ましくはベクターに含める。数種のベクター要素が望ましい:ミニ遺伝子挿入用の下流クローニング部位をもつプロモーター;効果的な転写終結用のポリアデニル化シグナル;大腸菌起源の複製;及び大腸菌選択可能マーカー(例:アンピシリン又はカナマイシン耐性)。数種のプロモーター、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターがこの目的のために使用し得る。参照例:他の適切なプロモーター配列について米国特許5,580,859及び5,589,466。
ミニ遺伝子の発現と免疫原性を最適化するためには、さらなるベクターの修飾が望まれる。一部の事例においては、効率的な遺伝子発現のために、イントロンが必要であり、1種以上の合成又は天然のイントロンをミニ遺伝子の転写領域に取り込ませ得る。mRNA安定化配列及び哺乳動物細胞中の複製用配列を含有させることが、ミニ遺伝子発現増大のためにも考え得る。
発現ベクターを選択した後、ミニ遺伝子をプロモーター下流のポリリンカー領域にクローン化する。このプラスミドを適切な大腸菌株に形質転換し、標準的技法を用いてDNAを調製する。ミニ遺伝子の方向及びDNA配列、並びにベクターに含まれる他のすべての要素を、制限マッピング及びDNA配列分析により確認する。正しいプラスミドを取り込むバクテリア細胞は、マスター細胞バンク及び作業用細胞バンクとして保存し得る。
加えて、免疫刺激性配列(ISS又はCpG)は、DNAワクチンの免疫原性において役割を果たすと思われる。これらの配列は、免疫原性を上昇させたい場合、ミニ遺伝子コーディング配列の外側でベクターに含ませ得る。
一部の態様においては、ミニ遺伝子コード化エピトープと第二のタンパク質(免疫原性を上昇させるか、又は低下させるために入れる)両方の産生を可能とするバイシストロン発現ベクターを使用することができる。免疫応答を有益に上昇させ得るタンパク質又はポリペプチドの例は、もし同時に発現されるとするなら、サイトカイン(例:IL−2、IL−12、GM−CSF)、サイトカイン誘導分子(例:LeIF)、同時刺激性分子、又はHTL応答の場合の、パン−DR結合タンパク質(PADRETM、エピインミューン(Epimmune)、サンディエゴ、CA)である。ヘルパー(HTL)エピトープは細胞内標的化シグナルに結合可能であり、発現したCTLエピトープとは別に発現される;このことはHTLエピトープがCTLエピトープの区画とは異なる細胞の区画に向かうことを可能とする。要すれば、このことはHTLエピトープが、HLAクラスII経路により効率的な侵入を促進し、それによってHTLの誘発を改善する。HTL又はCTLの誘発に対して、免疫抑制分子(例:TGF−β)の同時発現によって免疫応答を特異的に低下させることは、ある種疾患において有益であり得る。
治療量のプラスミドDNAは、例えば、大腸菌における発酵と、引き続く精製により製造し得る。作業用細胞バンクからの一部を用いて増殖培地に播種し、周知の技法に従ってシェーカーフラスコ又はバイオリアクターにて飽和状態まで増殖させる。プラスミドDNAは標準的バイオ分離技法、例えば、キアゲン・インク(QIAGEN, Inc.)(バレンシア、カリフォルニア)が供給する固相アニオン交換樹脂などにより精製し得る。要すれば、ゲル電気泳動又は他の方法により、開環状及び線状形状からスーパーコイルDNAを単離し得る。
精製したプラスミドDNAは、様々の剤形を用いて注射用に調製し得る。これらの内、最も簡単なのは、凍結乾燥したDNAを無菌リン酸緩衝食塩水(PBS)中で再構成することである。「裸のDNA」として知られるこの方法は、現在、臨床治験において、筋肉内(IM)投与用に使用されている。ミニ遺伝子DNAワクチンの免疫療法効果を最大とするために、精製したプラスミドDNAの別の製剤化方法が望まれる。様々な方法が記載されており、新しい技法が利用可能となる可能性がある。カチオン性脂質、糖脂質、及び融合性リポソームが、製剤化にも使用し得る(参照例:国際特許出願WO93/24640;Mannino & Gould-Fogerite, Bio Techniques 6(7):682 (1988); 米国特許5,279,833;国際特許出願WO91/06309;及び、 Felgner, et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 84:7413 (1987) に記載)。加えて、予防、相互作用、非縮合化合物(PINC)のような集合的な属性を有するペプチド及び化合物は、精製したプラスミドDNAと複合体を形成し、安定性、筋肉内分散性、又は特定の臓器若しくは細胞型への輸送などの変数に影響する可能性がある。
標的細胞の感作は、ミニ遺伝子コード化‐CTLエピトープの発現とHLAクラスI提示の機能的アッセイとして使用し得る。例えば、プラスミドDNAを、標準的CTLクロム放出アッセイの標的として適当な哺乳動物細胞株に導入する。使用する形質導入法は最終の製剤化に左右されるだろう。エレクトロポレーションを「裸の」DNAについて使用し得る一方で、カチオン性脂質はインビトロでの直接形質導入を可能とする。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するプラスミドを同時形質導入して、蛍光標示式細胞分取器(FACS)による形質導入細胞の濃縮化を可能とする。次いでこれらの細胞をクロム51(51Cr)標識し、エピトープ特異的CTL株の標的細胞として使用する;51Crの放出によって検出される細胞溶解は、ミニ遺伝子コード化‐CTLエピトープの産生とHLA提示の両方を示す。HTLエピトープの発現は、HTL活性を評価するアッセイ法を用いて、同様の方法で評価し得る。
インビボ免疫原性は、ミニ遺伝子DNA製剤を機能的に試験する第二の方法である。適切なヒトHLAタンパク質を発現するトランスジェニックマウスを、DNA産物で免疫化する。投与量及び投与経路は剤形による(例えば、PBS中のDNAについてはIM、脂質複合体DNAについては腹腔内(i.p.))。免疫化の21日後、膵細胞を採取し、試験する各エピトープをコード化するペプチドの存在下に、1週間再刺激する。その後、CTLエフェクター細胞について、標準法により、ペプチド負荷、51Cr標識標的細胞の細胞溶解についてのアッセイを行う。ミニ遺伝子コード化エピトープに相当するペプチドエピトープを負荷したHLAにより感作した標的細胞の溶解は、CTLのインビボ誘導について、DNAワクチンの機能を証明する。HTLエピトープの免疫原性は、同様の方法でトランスジェニックマウスにて確認する。
あるいは、該核酸は文献(例えば、米国特許5,204,253)に記載された射出送達法により投与し得る。この技法を用いて、DNAのみを含んでなる粒子を投与する。さらなる別の態様において、DNAは金粒子などの粒子に付着させることができる。
ミニ遺伝子はまた、技術上周知の、他のバクテリア又はウイルス送達系を用いて、送達することもできる;例えば、本発明のエピトープをコード化する発現構築物を、ワクチニアなどのウイルスベクターに取り込ませることもできる。
X.C.2.CTLペプチドとヘルパーペプチドとの組合わせ
本発明のCTLペプチドを含んでなるワクチン組成物は、修飾、例えば、同族化し、改善された血清半減期、拡大した母集団範囲、又は上昇した免疫原性など、所望の性質を提供し得る。
例えば、CTL活性を誘導するペプチドの能力は、Tヘルパー細胞応答を誘導し得る少なくとも1個のエピトープを含む配列に、該ペプチドを連結することにより増強し得る。CTLペプチドはTヘルパーペプチドに直接結合させ得るが、多くの場合、CTLエピトープ/HTLエピトープ抱合体は、スペーサー分子により連結する。該スペーサーは一般に、生理的条件下に実質的に荷電しない、比較的小さな中性分子、例えば、アミノ酸又はアミノ酸類似体などからなる。該スペーサーは一般に、例えば、Ala、Gly、又はその他の非極性アミノ酸又は中性極性アミノ酸の中性スペーサーから選択される。理解されることは、任意に存在するスペーサーが同じ残基で構成される必要はなく、従って、ヘテロ−又はホモ−オリゴマーであり得る。スペーサーが存在する場合、そのスペーサーは通常少なくとも1個又は2個の残基、より一般的には3個ないし6個の残基、場合によっては10個以上の残基である。CTLペプチドエピトープは、Tヘルパーペプチドエピトープに直接つながるか、又はCTLペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のスペーサーを介してつながり得る。免疫原性ペプチド又はTヘルパーペプチド何れものアミノ末端はアシル化し得る。
ある一定の態様において、Tヘルパーペプチドは遺伝的に多様な集団の大多数に存在するTヘルパー細胞が認識するペプチドである。これはHLAクラスII分子の多数、大部分又は全部に結合するペプチドを選択することにより実施し得る。多くのHLAクラスII分子に結合するかかるアミノ酸の例は、破傷風毒素の位置830〜843(QYIKANSKFIGITE;配列番号:24)、熱帯熱マラリア原虫サーカムスポロゾイト(CS)タンパク質の位置378〜398(DIEKKIAKMEKASSVFNVVNS;配列番号:25)、及び連鎖球菌18kDタンパク質の位置116〜131(GAVDSILGGVATYGAA;配列番号:26)などの抗原からの配列である。その他の例としては、DR1−4−7スーパーモチーフを含有するペプチド又はDR3モチーフの何れかを含む。
あるいは、自然界には見出されていないアミノ酸配列を用い、厳密ではないHLA制限様式で、Tヘルパーリンパ球を刺激し得る合成ペプチドを調製することが可能である(参照例:PCT公開WO95/07707)。パン−DR結合エピトープ(PADRETM、エピインミューン・インク(Epimmune Inc.)、サンディエゴ、CA)と呼称されるこれら合成化合物は、殆どのHLA−DR(ヒトHLAクラスII)分子に最も好適に結合するように設計する。例えば、式:aKXVAAWTLKAAa(配列番号:27)(式中、「X」はシクロへキシルアラニン、フェニルアラニン、又はチロシンの何れかであり、aはD−アラニン又はL−アラニンの何れかである)を有するパン−DR−結合エピトープペプチドは、HLAタイプに関係なく、殆どのHLA−DRアレルに結合し、殆どの個体からのTヘルパーリンパ球の応答を刺激することが判明している。パン−DR−結合エピトープの代替物は、すべての「L」天然アミノ酸を含んでなり、該エピトープをコード化する核酸の形状で提供し得る。
HTLペプチドエピトープも修飾して、その生物学的性質を変えることができる。例えば、それらはD−アミノ酸を含むように修飾して、プロテアーゼに対する抵抗性を増し、その血清半減期を延長することが可能であり、又は、それらは脂質、タンパク質、炭水化物などの他の分子に抱合させて、その生物学的活性を上昇させることができる。例えば、Tヘルパーペプチドは、アミノ又はカルボキシ末端の何れかで、1個以上のパルミチン酸鎖に抱合させることができる。
X.C.3.CTLペプチドとT細胞プライミング剤との組合わせ
一部態様においては、Bリンパ球又はTリンパ球を初回感作する少なくとも1種の成分を本発明の医薬組成物に含めることが望ましい。脂質はCTLをインビボで感作し得る物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基をリジン残基のε−及びα−アミノ基に付着させ、次いで、例えば、Gly、Gly−Gly、Ser、Ser−Serなどの1個以上の連結残基を介して、免疫原ペプチドに連結し得る。次いで、リピド化ペプチドをミセル又は粒子に直接処理し、リポソームに取り込ませるか又はアジュバント例えば不完全フロイントアジュバントに乳化することができる。好適な態様において、特に有効な免疫原構成成分は、Lysのε−及びα−アミノ基に付着させたパルミチン酸を含んでなり、これがSer−Serなどの結合を介して、免疫原ペプチドのアミノ末端に付着する。
CTL応答の脂質感作のもう一つの例として、トリパルミトル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(P3CSS)などの大腸菌リポタンパク質は、適切なペプチドに共有結合で付着している場合、ウイルス特異的CTLを初回感作するために使用し得る(参照例:Deres, et al., Nature 342: 561, 1989)。本発明のペプチドは、P3CSS、例えば、及び、標的抗原へ特異的な免疫応答を刺激するために個体に投与されるリポペプチドに、結合させることができる。さらに、P3CSS結合エピトープによって中和抗体の誘導も刺激されるので、2つのかかる構成成分は体液性及び細胞仲介応答をより効果的に引き出すために組合わせることができる。
X.C.4.CTL及び/又はHTLペプチドでパルスしたDCを含んでなるワクチン組成物
本発明によるワクチン組成物の態様は、患者血液からのPBMCへ、又はそこから単離されたDCへ、エピトープ含有ペプチドのカクテルを生体外で(ex vivo)投与することからなる。DCの採取を容易にする医薬、例えば、プロゲニポイエチン(ProgenipoietinTM)(ファルマシア−モンサント、セントルイス、MO)又はGM−CSF/IL−4などを使用し得る。DCをペプチドでパルスした後、また患者への再導入に先立ち、DCは洗浄して非結合ペプチドを除く。この態様において、ワクチンは表面上にHLA分子と複合体形成したパルスペプチドエピトープを提示する、ペプチドパルス‐DCを含んでなる。
DCを、ペプチドカクテルにより生体外でパルスすることができ、その一部が158P1D7に対するCTL応答を刺激する。選択肢として、天然又は人工のゆるやかに制限されたHLAクラスIIペプチドなどのヘルパーT細胞(HTL)ペプチドを包含させて、CTL応答を促進することができる。従って、本発明によるワクチンは158P1D7を発現又は過剰発現する癌の治療に使用する。
X.D.養子免疫治療
抗原性158P1D7関連ペプチドを使用して、CTL及び/又はHTL応答を生体外で同様に引き出す。得られるCTL又はHTL細胞は、他の通常形態の療法に反応しない患者の腫瘍、又は本発明による治療用ワクチンペプチド又は核酸に反応しそうにない患者の腫瘍の治療に使用し得る。特定の抗原に対する生体外CTL又はHTL応答は、組織培養において、患者の又は遺伝学的に矛盾のないCTL又はHTL前駆体細胞を、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)供給源及び適切な免疫原ペプチドとともにインキュベートすることにより誘導する。適切なインキュベーション時間(典型的には凡そ7〜28日)(この間、該前駆体細胞が活性化され、エフェクター細胞へと発展する)の後、細胞を点滴で患者に戻す;その際、該細胞は特定の標的細胞(例:腫瘍細胞)を破壊する(CTL)か、又は破壊を促進(HTL)する。形質導入された樹状細胞はまた、抗原提示細胞としても使用し得る。
X.E.治療又は予防を目的とするワクチンの投与
本発明の医薬組成物及びワクチン組成物は、代表的には158P1D7を発現又は過剰発現する癌の治療及び/又は予防に使用する。治療適用において、ペプチド及び/又は核酸組成物は、抗原に対し有効なB細胞、CTL及び/又はHTL応答を引き出すために、また症候及び/又は合併症を治癒するか、又は少なくとも阻止するか、又は減速するために十分な量、患者に投与する。これを実施するために適切な量は、「治療有効量」と定義する。この用途に有効な量は、例えば、投与される特定の組成物、投与様式、治療する疾患の段階及び重篤度、患者の体重と全身の健康状態、及び処方医師の判断による。
医薬組成物として、本発明の免疫原性ペプチド、又はそれらをコード化するDNAは、一般に158P1D7を発現する腫瘍をすでに有する個体に投与する。該ペプチド又はそれらをコード化するDNAは、単独で、又は1種以上のペプチド配列の融合物として投与し得る。患者は免疫原ペプチドにより単独で、又は適切な場合には、その他の治療、例えば、手術などとともに治療され得る。
治療での使用では、投与は一般に158P1D7関連癌の最初の診断時に開始すべきである。この後、少なくとも症候が実質的に消滅するまで、その後の一定期間、ブースター投与を続ける。患者に送達するワクチン組成物の態様(すなわち、限定されるものではないが、ペプチドカクテル、ポリエピトープポリペプチド、ミニ遺伝子、又はTAA特異的CTL又はパルスされた樹状細胞などの態様)は、疾患の段階又は患者の健康状態により変わり得る。例えば、158P1D7を発現する腫瘍をもつ患者において、158P1D7特異的CTLを含んでなるワクチンは、進行した疾患の患者の腫瘍細胞を死滅させるのに、別の態様よりもより有効であり得る。
細胞傷害性T細胞応答を効果的に刺激するような投与様式によって、一定量のペプチドエピトープが送達されることが、一般には重要である;ヘルパーT細胞応答を刺激する組成物は、本発明の態様に従って与えることもできる。
治療免疫開始時の投与量は、低値が凡そ1、5、50、500又は1,000μgであり、高値が凡そ10,000、20,000、30,000又は50,000μgの単位投与量の範囲にある。ヒトの投与量値は一般に70キログラムの患者あたり、凡そ500μgないし凡そ50,000μgの範囲である。数週間ないし数ヶ月にわたるブースト投与計画に従って、凡そ1.0μgないし凡そ50,000μgのブースト投与量を、患者の血液から得たCTL及びHTLの特異活性の測定よって判定した患者の応答及び症状に基づいて、投与し得る。投与は、少なくとも臨床症候又は実験室でのテストにより、その後の期間、異常増殖が除去されるか又は減少していることを示すまで継続すべきである。投与量、投与経路、及び投与計画は、技術上既知の方法に従って調整する。
一定の態様において、本発明のペプチド及び組成物は、深刻な疾病状態、すなわち、生命危機状態又は潜在的な生命の危機状況において採用される。かかる事例において、本発明の好適な組成物中の外来性物質の量が最少であることと、ペプチドの性質が比較的非毒性であることの結果として、ここに示した投与量に比較して、実質的に過剰なこれらのペプチド組成物を投与することが可能であり、治療する医師にとっても望ましいと思われる。
本発明のワクチン組成物は、純然たる予防薬としても使用し得る。一般に、当初の予防的免疫化の投与量は、低値が凡そ1、5、50、500又は1,000μgであり、高値が凡そ10,000、20,000、30,000又は50,000μgの単位投与量の範囲にある。ヒトの投与量値は一般に70キログラムの患者あたり、凡そ500μgないし凡そ50,000μgの範囲である。これに続き、ペプチド凡そ1.0μgないし凡そ50,000μgのブースト投与量を、最初のワクチン投与後4週間ないし6ヶ月の所定の間隔で投与する。ワクチンの免疫原性は、患者の血液サンプルから得たCTL及びHTLの特異的活性を測定することにより評価することができる。
治療処置用の医薬組成物は、非経口、外用、経口、経鼻、鞘内、又は局所(例;クリーム又は局所軟膏として)投与用を意図する。好ましくは、該医薬組成物は非経口的に、例えば、静脈内、皮下、皮内、又は筋肉内に投与する。従って、本発明は、許容し得る担体、好ましくは水性担体に溶解又は懸濁した免疫原ペプチドの溶液からなる非経口用組成物を提供する。
様々な水性担体を使用し得る;例えば、水、緩衝水、0.8%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。これらの組成物は常套の、周知の無菌化法により無菌化するか、又は無菌濾過することができる。得られる水溶液はそのまま使用するようにパッケージに詰めるか、又は凍結乾燥し、凍結乾燥品は投与前に無菌溶液と組み合わせる。
該組成物は生理的条件に近づけることが必要な場合、医薬的に許容し得る補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤(tonicity adjusting agent)、湿潤剤、保存剤などを含み得る;例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどである。
該医薬組成物中の本発明ペプチドの濃度は、広範に変化し得る;すなわち、重量で凡そ0.1%未満から通常は凡そ2%、又は少なくとも凡そ2%ないし20%から50%、又はそれ以上であり、選択した特定の投与様式に従い、液量、粘稠性などにより最初に選択する。
ペプチド組成物のヒトの単位投与形状は、典型的には、許容し得る担体、好ましくは水性担体のヒト単位用量を含んでなる医薬組成物中に含まれ、当業者周知のヒトにかかる組成物を投与するために使用する液量で、投与する(参照例:Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, A. Gennaro, Editor, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania, 1985)。
本発明のタンパク質及び/又は該タンパク質をコード化する核酸は、リポソームを介して投与することもできる;リポソームは:1)タンパク質をリンパ組織など特定の組織に目標を定めること;2)疾患細胞に選択的に目標を定めること;又は、3)ペプチド組成物の半減期を延ばすこと;などのためにも働く。リポソームはエマルジョン、泡状物、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散、ラメラ層などである。これらの製剤において、送達すべきペプチドはリポソームの一部として、単独で、又はCD45抗原に結合するモノクローナル抗体など、リンパ細胞に存在するレセプターに結合する分子とともに、又は他の治療若しくは免疫原組成物とともに取り込まれる。従って、本発明の所望のペプチドが満たされているか又は修飾されているリポソームは、リンパ細胞の当該部位に向かい、そこでリポソームはペプチド組成物を送達する。本発明により使用するリポソームは、標準の小胞形成脂質から形成され、それが一般的には中性及び負に荷電したリン脂質及びコレステロールなどのステロールを含む。脂質の選択は一般的には、例えば、リポソームのサイズ、酸に対する不安定性及び血流中での安定性を考慮して導かれる。様々な方法がリポソーム調製のために利用可能であり、例えば、文献(Szoka, et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980);及び、米国特許4,235,871;4,501,728;4,837,028;及び5,019,369)に記載されている。
免疫系の細胞を標的とするために、リポソームに取り込むべきリガンドは、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定因子に特異的な抗体又はそのフラグメントでもよい。ペプチド含有リポソーム懸濁液は、用量を、特にその投与様式、送達するペプチド、及び治療すべき疾患の段階に応じて変化させ、静脈内、局所的、外用的に投与し得る。
固形の組成物では、常套の非毒性固体担体が使用可能であり、例えば、医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどである。経口投与では、医薬的に許容し得る非毒性組成物は、すでに一覧掲載した担体などの通常使用される賦形剤の何れか、及び、一般的には10〜95%の濃度の有効成分すなわち1種以上の本発明ペプチドを、より好ましくは25%〜75%の濃度で取り込ませることにより形成する。
スプレーによる投与の場合、免疫原ペプチドは、好ましくは微細に分割した形状で、界面活性剤及び噴射剤とともに供給する。ペプチドの典型的パーセントは凡そ0.01〜20重量%、好ましくは凡そ1%〜10%である。界面活性剤は勿論、非毒性でなければならず、また噴射剤に可溶でなければならない。かかる試薬の代表例は、炭素原子凡そ6個ないし22個を含む脂肪酸のエステル又は部分エステルであり、カプロン酸、オクタン酸、タウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノレイン酸、オレステリン酸、及びオレイン酸などと、脂肪族多価アルコールとのエステル、又はその環状無水物である。混合若しくは天然グリセリドなどの混合エステルも採用し得る。界面活性剤は組成物の凡そ0.1〜20重量%、好ましくは凡そ0.25〜5%を構成し得る。該組成物のバランスは通常噴射剤である。担体も望ましい場合含有し得るが、例えば、鼻腔内送達の場合レシチンである。
XI.158P1D7の診断及び予測の態様
本明細書に開示するように、158P1D7ポリヌクレオチド、ポリペプチド、反応性細胞毒性T細胞(CTL)、反応性ヘルパーT細胞(HTL)及び抗ポリペプチド抗体は、癌、特に表1に掲載した癌などの制御不全細胞増殖と関連する症状を試験する周知の診断、予測及び治療アッセイにおいて使用する(参照例:組織発現のその特異的パターン、並びに、例えば、実施例4に記載した特定の癌でのその過剰発現の両方)。
158P1D7は、イムノCytTMと呼称される診断キットに代表される膀胱関連抗原の組み合わせであるムチン及びCEAと、類似の方法、又は、それを補足するものとして使用し得る。イムノCytは膀胱癌の存在を同定及びモニターする市販品として入手し得るアッセイである(参照:Fradet et al., 1997, Can J Urol, 4(3):400-405)。他の様々な診断マーカー、p53及びH−rasもまた同様の状況で有用である(参照例:Tulchinsky et al., Int J Mol Med 1999 Jul 4(1):99-102 and Minimoto et al., Cancer Detect Prev 2000; 24(1):1-12)。従って、158P1D7ポリヌクレオチド及びポリペプチド(並びにこれらの分子の存在を同定するために使用する158P1D7ポリヌクレオチドプローブ及び抗158P1D7抗体)及びその性質についての本開示は、例えば、癌関連症状を試験することを目的とする様々な診断アッセイに使用する方法と同様の方法において、当業者がこれらの分子を利用することを可能にする。
158P1D7ポリヌクレオチド、ポリペプチド、反応性T細胞及び抗体を利用する診断方法の典型的態様は、例えば、PSAポリヌクレオチド、ポリペプチド、反応性T細胞及び抗体を採用するよく確立された診断アッセイの方法と同様である。例えば、丁度、PSAポリヌクレオチドがプローブ(例えば、ノーザン分析;参照例:Sharief et al., Biochem Mol. Biol. Int. 33(3):567-74 (1994))及びプライマー(例えば、PCR分析;参照例:Okegawa et al., J. Urol. 163(4):1189-1190 (2000))として、PSA過剰発現又は前立腺癌の転移をモニターする方法において、PSA mRNAの存在及び/又はレベルを観察するために使用するように、本明細書に記載した158P1D7ポリヌクレオチドは、158P1D7過剰発現又は158P1D7遺伝子を発現する膀胱細胞の腫瘍転移及びその他の癌細胞を検出するために利用し得る。あるいは、PSAポリペプチドがPSAタンパク質の過剰発現(参照例:Stephen et al., Urology 55(4):560-3 (2000))又は前立腺細胞の転移(参照例:Alanen et al., Pathol. Res. Pract. 192(3):233-7 (1996))をモニターする方法においてPSAタンパク質の存在及び/又はレベルを観察するために使用し得るPSA特異的抗体を生成させるのに使用するように、本明細書に記載した158P1D7ポリペプチドは、158P1D7の過剰発現又はこの遺伝子を発現する膀胱細胞の腫瘍転移及びその他の癌の転移を検出するために利用し得る。
具体的には、転移が、起源となった臓器(肺又は膀胱など)から身体の異なる領域(リンパ節など)への癌細胞の移動を伴っているので、158P1D7ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを発現する細胞の存在について、生体サンプルを試験するアッセイを用いて、転移の証拠を提供することができる。例えば、通常158P1D7発現細胞を含まない組織(リンパ節)からの生体サンプルが、LAPC4及びLAPC9、リンパ節から分離した異種移植片及び骨転移でそれぞれに見られる158P1D7発現など、158P1D7発現細胞を含むと判明した場合、この知見は転移を物語っている。
別法として、158P1D7ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを使用して、癌の証拠を提供することができる;例えば、通常、158P1D7を発現しないか、又は異なったレベルで158P1D7を発現する生体サンプルが、158P1D7を発現するか、又は158P1D7の発現が増加している(参照例:表1に掲載した癌及び添付の図に示した患者サンプルなどにおける158P1D7の発現)場合である。かかるアッセイにおいて、熟練した技術者は(158P1D7に加えて)さらに第二の制限マーカー、例えば、イムノCytTM、PSCAなど(参照例:Fraded et al., 1997, Can J Urol, 4(3):400-405; Amara et al., 2001, Cancer Res 61:4660-4665)の存在について、生体サンプルをテストすることにより、転移の補足的証拠を生み出そうとする。丁度、当業者がPSAのモニター方法に使用するために、PSAポリヌクレオチドフラグメント及びポリヌクレオチド変異体を採用するように、158P1D7ポリヌクレオチドフラグメント及びポリヌクレオチド変異体を同様の方法に使用する。特に、PSAのモニター法に使用する典型的なPSAポリヌクレオチドは、PSA cDNA配列のフラグメントから構成されるプローブ又はプライマーである。これを説明すると、PSAポリヌクレオチドをPCR増幅するために使用するプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応にて機能するために、全長PSA配列よりも短いものでなければならない。かかるPCR反応の環境下、当業者は一般に、対象ポリヌクレオチドの異なる部分を増幅するか、又は増幅反応を最適化するために、プライマーとして使用し得る多様なポリヌクレオチドフラグメントを創出する(参照例:Caetano-Anolles, G. Biotechniques 25(3):472-476, 478-480 (1998); Robertson et al., Methods Mol. Biol. 98:121-154 (1998))。かかるフラグメント使用のさらなる説明は、実施例4に提供してあるが、そこでは158P1D7ポリヌクレオチドフラグメントをプローブとして使用し、癌細胞における158P1D7 RNAの発現を示している。加えて、変異体ポリヌクレオチド配列は、一般にPCR及びノーザン分析において相当するmRNAのプライマー及びプローブとして使用される(参照例:Sawai et al., Fetal Diagn, Ther. 1996 Nov-Dec 11(6):407-13 及び Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, Unit 2, Frederick M. Ausubel et al. eds., 1995)。ポリヌクレオチドフラグメント及び変異体は、それらが高ストリンジェントな条件下に、標的ポリヌクレオチド配列(例:図2に示す158P1D7ポリヌクレオチド)に結合し得るものである環境下で有用である。
さらに、抗体又はT細胞が認識し、特異的に結合し得るエピトープを含むPSAポリペプチドは、PSAのモニター方法に使用する。158P1D7ポリペプチドフラグメント及びポリペプチド類似体又は変異体も同様の方法で使用し得る。抗体(抗PSA抗体又はT細胞など)を生成させるために、ポリペプチドフラグメント又はポリペプチド変異体を使用する実験は、技術的に一般的であり、実験者が使用している融合タンパク質など、多様な系がある(参照例;Current Protocols in Molecular Biology, Volume 2, Unit 16, Frederick M. Ausubel et al. eds., 1995)。これに関連して、各エピトープは抗体又はT細胞が反応性である構造を提供するように機能する。典型的例として、当業者は対象のポリペプチドの異なる部分に特異的な免疫応答を生じさせるために使用し得る多様なポリペプチドフラグメントを創出する(参照例:米国特許5,840,501及び5,939,533)。例えば、本明細書にて考察した158P1D7の生物学的モチーフの一つを含む、又は、技術的に利用可能なモチーフに基づき当業者によって容易に同定されるモチーフ含有配列を含む、ポリペプチドを利用するのが好適である。ポリペプチドフラグメント、変異体又は類似体は、それらが標的のポリペプチド配列(例:図2に示す158P1D7ポリペプチド)に特異的な抗体又はT細胞を生成し得るエピトープを含む限り、この状況で一般に有用である。
本明細書に示すように、158P1D7ポリヌクレオチド及びポリペプチド(並びにこれらの分子の存在を同定するために使用する158P1D7ポリヌクレオチドプローブ及び抗158P1D7抗体又はT細胞)は、表1に掲載した癌などを診断する際にそれらを有用とする特別の性質を示す。本明細書に記載する膀胱癌などの病状の存在又は発病を評価するための、158P1D7遺伝子産物の存在を測定する診断アッセイは、前立腺癌のモニターがPSAにより成功裏に実施されているのと同様、予防的測定又はさらなるモニター用として、患者の確認に使用する。158P1D7ポリヌクレオチド及びポリペプチドなどの物質(並びにこれらの分子の存在の確認に使用する158P1D7ポリヌクレオチドプローブ及び抗158P1D7抗体)は、膀胱癌の状況下、PSAに類似の又は補足的特性をもつ分子について、技術上の必要性を満足する。最後に、診断アッセイにおけるそれらの使用に加え、本明細書に記載の158P1D7ポリヌクレオチドは、多くの他の用途、例えば、158P1D7遺伝子がマップされている染色体領域における発癌遺伝子関連染色体異常の同定における用途などを有する(下記実施例3参照)。さらに、診断アッセイにおけるそれらの使用に加えて、本明細書に開示した158P1D7関連タンパク質及びポリヌクレオチドは、未知起源組織の法医学的分析における使用など、他の用途を有する(参照例:Takahama K Forensic Sci Int 1996 Jun 28:80(1-2):63-9)。
さらに、本発明の158P1D7関連タンパク質又はポリヌクレオチドは、158P1D7の過剰発現を特徴とする病的症状を治療するために使用し得る。例えば、図2又は図3のアミノ酸又は核酸配列は、何れも158P1D7抗原に対し、免疫応答を生じさせるために使用し得る。158P1D7と反応する抗体又はその他の分子は、この分子の機能を調節するために使用し得るが、それによって治療上の利益を提供する。
XII.)158P1D7タンパク質機能の阻害
本発明は、158P1D7とその結合パートナーとの結合又は158P1D7とその他のタンパク質とのその会合を阻害する種々の方法及び組成物、並びに、158P1D7の機能を阻害する方法を包含する。
XII.A.)細胞内抗体による158P1D7の阻害
一方法においては、158P1D7に特異的に結合する一本鎖抗体をコード化する組み換えベクターを、遺伝子導入技術によって、158P1D7発現細胞に導入する。従って、コード化された一本鎖抗158P1D7抗体は細胞内で発現され、158P1D7タンパク質と結合し、それによって158P1D7タンパク質の機能を阻害する。かかる細胞内一本鎖抗体の設計方法は周知である。かかる細胞内の抗体は「細胞内発現抗体(intrabody)」としても知られ、細胞内の特定の区画を特異的に標的化し、処置の抑制的活性の焦点となる部位を制御する。
この技法は技術的に成功裏に適用されている(参照概説:Richardson and Marasco, 1995, TIBTECH vol.13)。細胞内発現抗体は、別の豊富な細胞表面レセプターの発現を実質的に排除することが示されている(参照例:Richardson et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 3137-3141; Beerli et al., 1994, J. Biol. Chem. 289: 23931-23936; Deshane et al., 1994, Gene Ther. 1:332-337)。
一本鎖抗体は、柔軟な(flexible)リンカーポリペプチドによって結合する重鎖と軽鎖の可変領域を含んでなり、単一のポリペプチドとして発現される。選択肢として、一本鎖抗体は、軽鎖定常領域と結合する一本鎖可変領域フラグメントとして発現される。
所望の細胞内区画に対し細胞内発現抗体が正確に標的化するように、周知の細胞内トラフィッキングシグナルを、かかる一本鎖抗体をコード化する組み換えポリヌクレオチドベクターに組み込む。
例えば、小胞体(ER)を標的とする細胞内発現抗体は、リーダーペプチド、及び選択肢としてKDELアミノ酸モチーフなどのC末端ER残留シグナルを組込むように設計する。核内で活性を発揮するように意図した細胞内発現抗体は、核局在化シグナルを含むように設計する。原形質膜の細胞質ゾル側に細胞内発現抗体を繋ぎ止めるために、脂質部分を細胞内発現抗体に結合する。細胞内発現抗体はまた、細胞質ゾル内で機能を発揮するために標的となり得る。例えば、細胞質ゾル‐細胞内発現抗体を、因子を細胞質ゾル内に取り込むために使用し、それによって該因子が本来の細胞内目的地に輸送されるのを防ぐ。
一態様において、細胞内発現抗体を、核内で158P1D7を捕捉するために使用し、それによって核内での158P1D7の活性を防止する。所望の標的化を達成するために、核標的シグナルをかかる158P1D7細胞内発現抗体に組み込む。かかる158P1D7細胞内発現抗体は、特定の158P1D7ドメインと特異的に結合するように設計する。もう一つの態様において、158P1D7タンパク質と特異的に結合する細胞質ゾル‐細胞内発現抗体を、158P1D7の核への接近を阻害するのに使用し、それによって、158P1D7が核内で生物活性を働かせるのを阻害する(例えば、158P1D7が他の因子と転写複合体を形成するのを阻害する)。
特定の細胞でのかかる細胞内発現抗体の発現を特異的に指向するため、細胞内発現抗体の転写を、適切な腫瘍特異的プロモーター及び/又はエンハンサーの調節制御下に置く。膀胱に特異的に細胞内発現抗体の発現を標的化するために、例えば、PSCAプロモーター及び/又はプロモーター/エンハンサーを利用することができる(参照例:米国特許5,919,652(1999年7月6日発行);及び、 Lin et al., PNAS, USA 92(3):679-683 (1995))。
XII.B.)組み換えタンパク質による158P1D7の阻害
もう一つの方法においては、組み換え分子が158P1D7に結合し、それによって158P1D7の機能を阻害する。例えば、これらの組み換え分子は、158P1D7がその結合パートナーに接近/結合すること、又は、その他のタンパク質と会合することを防止若しくは阻害する。かかる組み換え分子は、例えば、158P1D7特異的抗体分子の反応性部分を含み得る。特定の態様において、158P1D7結合パートナーの158P1D7結合ドメインが、二量体融合タンパク質に組み込まれるが、その場合の融合タンパク質はヒトIgG1などのヒトIgGのFc部分と結合する2つの158P1D7リガンド結合ドメインを含んでなる。
かかるIgG部分は、例えば、CH2とCH3ドメイン及びヒンジ領域を含み得るが、CH1ドメインは含まない。かかる二量体融合タンパク質は、158P1D7の発現と関連する癌に罹患している患者に、可溶性形状で投与する;その場合、当該二量体融合タンパク質は158P1D7に特異的に結合し、結合パートナーとの158P1D7相互作用を遮断する。かかる二量体融合タンパク質は、さらに、既知の抗体結合法により多量体タンパク質と組み合わせる。
XII.C.)158P1D7の転写又は翻訳の阻害
本発明はまた、158P1D7遺伝子の転写を阻害する種々の方法及び組成物をも包含する。同様に、本発明はまた、158P1D7mRNAのタンパク質への翻訳を阻害する方法及び組成物をも提供する。
一つの方法において、158P1D7遺伝子の転写を阻害する方法は、158P1D7遺伝子を158P1D7アンチセンスポリヌクレオチドと接触させることからなる。もう一つの方法において、158P1D7mRNAの翻訳を阻害する方法は、158P1D7mRNAとアンチセンスポリヌクレオチドとを接触させることからなる。もう一つの方法においては、158P1D7特異的リボザイムを用いて158P1D7メッセージを切断し、それによって翻訳を阻害する。かかるアンチセンス及びリボザイムに基づく方法は、158P1D7プロモーター及び/又はエンハンサー要素など、158P1D7遺伝子の調節領域にも向けることができる。同様に、158P1D7遺伝子の転写因子を阻害し得るタンパク質を、158P1D7 mRNAの転写を阻害するために使用する。上記の方法に有用な種々のポリヌクレオチド及び組成物については、上に記載した。転写及び翻訳を阻害するアンチセンス及びリボザイム分子の使用は、技術上周知である。
158P1D7の転写活性化に干渉することにより158P1D7の転写を阻害するその他の因子もまた、158P1D7を発現する癌の治療に有用でもある。同様に、158P1D7のプロセシングに干渉する因子は、158P1D7を発現する癌の治療に有用である。かかる因子を利用する癌治療方法もまた、本発明の範囲内である。
XII.D.)治療戦略の一般的考察
遺伝子導入及び遺伝子治療法の技術を、治療用のポリヌクレオチド分子を、158P1D7を合成する腫瘍細胞に送達するために使用する(すなわち、アンチセンス、リボザイム、細胞内発現抗体及び他の158P1D7阻害分子をコード化するポリヌクレオチド)。多くの遺伝子治療法が技術上既知である。158P1D7アンチセンスポリヌクレオチドをコード化する組み換えベクター、リボザイム、158P1D7転写に干渉し得る因子などを、かかる遺伝子治療法を利用することにより標的腫瘍細胞に送達し得る。
上記の治療方法を、様々の外科手術、化学療法又は放射線療法プログラムの何れか一つと組み合わせ得る。本発明の治療方法では、化学療法(又は他の療法)での投与量を減量すること及び/又は投与回数を減ずることなどが可能となり、すべての患者にとって、特に化学療法剤の毒性への耐性が弱い患者にとって有利である。
特定の構成成分(例えば、アンチセンス、リボザイム、細胞内発現抗体)又はかかる成分の組み合わせの抗腫瘍活性は、種々のインビトロ及びインビボのアッセイ系を用いて評価し得る。治療活性を評価するインビトロアッセイは、細胞増殖アッセイ、軟寒天アッセイ及び腫瘍増進活性を示すその他のアッセイ、及び、治療組成物が158P1D7の結合パートナーとの結合をどの程度阻害するかを判定し得る結合アッセイ、などである。
158P1D7治療用組成物のインビボ作用は、適当な動物モデルで評価し得る。例えば、異種間の膀胱癌モデルを使用し得るが、この場合、ヒトの膀胱癌植片片又は継代異種移植組織を、ヌードマウス又はSCIDマウスなどの免疫不全動物に導入する(Shibayama et al., 1991, J Urol., 146(4):1136-7; Beechen et al., 2000, Urology, 56(3):521-526)。腫瘍形成の阻害、腫瘍退縮又は転移などの阻害を測定するアッセイを用い、有効性を予測し得る。
アポトーシスの促進を評価するインビボアッセイは、治療用組成物の評価に有用である。一態様において、治療用組成物で処置した腫瘍保持マウスからの異種移植片を、アポトーシス巣の存在について試験し、異種移植片を有する未処置のマウスと比較し得る。処置マウスの腫瘍において、どの程度のアポトーシスが見出されるか、それが該組成物の治療有効性の指標を提供する。
前記方法の実施に使用される治療用組成物は、所望の送達方法に適する担体を含んでなる医薬組成物に製剤化することができる。適切な担体は、治療用組成物と組み合わせた場合に治療用組成物の抗腫瘍機能を維持し、かつ、患者の免疫系と一般的に非反応性である物質を包含する。例示としては、限定されるものではないが、多くの標準的医薬用担体、例えば、無菌リン酸緩衝塩溶液、静菌的な水などの何れかである(一般的参照例:Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th Edition, A. Osal., Ed., 1980)。
治療用製剤は、可溶化され、腫瘍部位に治療用構成成分を送達し得る任意の経路を介して投与し得る。可能性のある有効な投与経路は、限定されるものではないが、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内、臓器内、正所性(orthotopic)などである。静脈注射用の好適な剤形は、保存性の静菌的な水、無菌非保存水の溶液とした治療用組成物、及び/又は、注射用の塩化ポリビニル又はポリエチレンバッグに入った0.9%無菌塩化ナトリウム中で希釈された治療用組成物(USP)、を含む。
治療用タンパク質調製物は、凍結乾燥し、無菌粉末として、好ましくは真空下に置き、次いで注射に先立ち、静菌的な水(例えば、ベンジルアルコール保存剤を含む)又は無菌水中にて再構成され得る。
上記方法による癌治療のための投与量と投与プロトコールは、その方法と標的となる癌により変わり、一般には技術上認められているその他の多くの因子に左右される。
XIII.)158P1D7モジュレーターの同定、特徴付け、及び、使用
モジュレーターの同定法と使用法
一態様においては、スクリーニングを、特定の発現プロフィールを誘発又は抑制し、特定の経路、抑制又は誘発するモジュレーター(好ましくはそれによって関連表現型が生成される)を同定するために、実施する。もう一つの態様においては、特定の状況にて重要な示差的(differentially)に発現された遺伝子を同定する;個別遺伝子の発現の増加又は減少の何れかを変化させるモジュレーターを同定するためにスクリーニングを実施する。もう一つの態様において、スクリーニングを、示差的(differentially)に発現された遺伝子の発現産物の生物学的機能を変化させるモジュレーターを同定するために実施する。さらにまた、特定の状況における遺伝子の重要性を確認し、スクリーニングを、遺伝子産物に結合及び/又はその生物学的活性を調節する物質を同定するために実施する。
加えて、候補物質に応答して誘導される遺伝子について、スクリーニングを実施する。モジュレーター(癌発現パターンを抑制し、正常発現パターンに導くモジュレーター、又は正常組織におけると同様の遺伝子発現に導く癌遺伝子のモジュレーター)を同定した後、該物質に応答して特異的に調節される遺伝子を同定するためにスクリーニングを実施する。正常組織と物質で処理された癌組織間の発現プロフィールを比較することで、正常組織又は癌組織では発現されないが、物質処理組織では発現されるか、又はその逆の場合の遺伝子が明らかとなる。これらの物質特異的な配列を同定し、癌遺伝子又はタンパク質のための本明細書に記載の方法に使用する。特に、これらの配列及びこれらがコード化するタンパク質を用いて、物質を処理された細胞を作成又は同定する。加えて、該物質で誘発されたタンパク質に対する抗体を作成し、治療された癌組織サンプルに対する新規の治療法を目指すために使用する。
モジュレーター関連同定とスクリーニングアッセイ:
遺伝子発現関連アッセイ
本発明のタンパク質、核酸、及び抗体をスクリーニングアッセイに使用する。癌関連タンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質及びこれらの配列を含む細胞はスクリーニングアッセイに使用し、例えば、「遺伝子発現プロフィール」、ポリペプチドの発現プロフィール又は生化学的機能の変化などに対する薬物候補の作用を評価する。一態様において、発現プロフィールは、好ましくは、候補物質で処理した後の遺伝子の発現プロフィールのモニターを可能とするハイスループットスクリーニング法とともに使用する(例:Davis, GF, et al., J Biol Screen 7:69 (2002); Zlokarnik et al., Science 279:84-8 (1998); Heid, Genome Res 6:986-94, 1996)。
癌タンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質及び未改変の、又は改変した癌タンパク質又は遺伝子を含む細胞は、スクリーニングアッセイに使用する。すなわち、本発明は本発明の癌表現型又は癌タンパク質の生理的機能を調節する組成成分のスクリーニング法を含んでなる。この方法は遺伝子そのものについて実施するか、又は「遺伝子発現プロフィール」又は生物学的機能に対する薬物候補の効果を評価することにより実施する。一態様において、発現プロフィールは、好ましくは、候補物質で処理した後のモニターを可能とするハイスループットスクリーニング法とともに使用する(上記、Zlokarmik)。
様々のアッセイが本発明の遺伝子及びタンパク質を対象に実施される。アッセイは個々の核酸又はタンパク質レベルに関し実施する。すなわち、癌により上方制御された特定の遺伝子を同定し、遺伝子発現を調節する能力について、又は本発明の癌タンパク質に対する結合について、テスト化合物をスクリーニングする。この状況での「調節」は遺伝子発現の増加又は低下を意味する。調節の好適な量は、正常組織における遺伝子発現の当初の変化と、対する癌罹患組織における変化に左右されるが、少なくとも10%の変化、好ましくは50%、より好ましくは100〜300%、そしてある態様では300〜1000%以上の変化である。従って、もし遺伝子が正常組織に比べて癌組織で4倍の増加を示すならば、凡そ4倍の低下が多くの場合望ましい;同様に、正常組織に比べて癌組織で10倍減少しているなら、テスト化合物による発現が10倍増加した値を目標とすることが、多くの場合望ましい。癌に見られる遺伝子発現型を悪化させるモジュレーターは、例えば、さらなる分析における上方制御標的としても有用である。
遺伝子発現量は核酸プローブを用いてモニターし、遺伝子発現レベルの定量、又は二者択一として、遺伝子産物それ自体を、例えば、癌タンパク質に対する抗体及び標準的イムノアッセイ法の使用を介してモニターする。プロテオミクス及び分離方法もまた発現の定量を可能とする。
遺伝子発現を修飾する化合物を同定するための発現モニタリング
一態様において、遺伝子発現モニタリング、すなわち、発現プロフィールは、多くの実体と同時にモニターする。かかるプロフィールは、典型的には図2の1種以上の遺伝子に関わる。この態様において、例えば、癌核酸プローブはバイオチップに付着させ、特定細胞中の癌配列を検出し、定量する。あるいは、PCRを使用し得る。従って、一系列の、例えば、マイクロタイタープレートのウエルを用い、所望のウエルにプライマーを分配する。次いでPCR反応を実施し、各ウエルについて分析する。
発現モニタリングは、1種以上の癌関連配列、例えば、図2に示すポリヌクレオチド配列の発現を修飾する化合物を同定するために実施する。一般に、分析に先立ち、細胞にテストモジュレーターを加える。さらに、癌を調節するか、本発明の癌タンパク質を調節するか、本発明の癌タンパク質に結合するか、又は本発明の癌タンパク質及び抗体又は他の結合パートナーの結合に干渉する物質を同定するためのスクリーニング法も提供される。
一態様において、ハイスループットスクリーニング法は、膨大な数の可能性のある治療用化合物(候補化合物)を含むライブラリを提供することと関わる。かかる「コンビナトリアルケミカルライブラリ」を次いで、所望の特徴的活性を示すこれらのライブラリメンバー(特定の化学種又はサブクラス)を同定するための1種以上のアッセイ法でスクリーニングする。このように同定した化合物は、スクリーニング用の化合物としての、又は治療薬としての簡便な「リード化合物」として役立ち得る。
ある態様において、有力なモジュレーターのコンビナトリアルライブラリは、癌ポリペプチドに結合するか、又は活性を調節する能力についてスクリーニングする。簡便には、有用な性質を有する新規化学因子は、ある種所望の性質又は活性(例:阻害活性)を有する化学物質(「リード化合物」と呼称)を同定し、リード化合物の変種を創製し、そしてこれら変種化合物の性質と活性を評価することにより生成させる。多くの場合、ハイスループットスクリーニング(HTS)法はかかる分析のために採用する。
上記のように、遺伝子発現モニターリングは候補モジュレーター(例:タンパク質、核酸又は小分子)を試験するために、簡便に使用する。候補物質を加え、細胞をある期間インキュベートした後、分析すべき標的配列を含むサンプルは、例えば、バイオチップに加える。
要すれば、標的配列は既知の技法を用いて調製する。例えば、サンプルは既知溶解バッファー、エレクトロポレーションなどにより細胞を処理溶解し、適切であれば精製及び/又はPCRなどの増幅を実施する。例えば、ヌクレオチドに共有結合付着させた標識によるインビトロ転写を実施する。一般に、核酸は、ビオチン−FITC又はPEで、又はcy3又はcy5で標識する。
標的配列は、例えば、蛍光、化学発光、化学的、又は放射活性シグナルにより標識し、プローブに対する標的配列特異的結合を検出する手段を提供することができる。標識はまた適切な基質を供給したときに、検出可能な産物を生じるアルカリホスファターゼ又は西洋わさびペルオキシダーゼなどの酵素でもよい。あるいは、標識は標識化合物であるか、又は酵素インヒビターなどの小分子であって、結合はするが、酵素が触媒作用を及ぼすことも、変化させることもない分子である。標識はまたエピトープタグ又はストレプトアビジンに特異的に結合するビオチンなどの部分又は化合物でもよい。ビオチンの例では、ストレプトアビジンを上記のように標識し、それによって結合した標的配列に検出可能なシグナルを提供する。非結合標識ストレプトアビジンは、一般に分析の前に除去する。
当業者も承知するように、これらのアッセイ法は直接のハイブリダイゼーションアッセイであるか、又は複数のプローブを使用する「サンドイッチアッセイ」でもよい;その概要は米国特許に記載がある:USP5,681,702;5,597,909;5,545,730;5,594,117:5,591,584;5,571,670;5,580,731;5,591,584;5,624,802;5,635,352;5,594,118;5,359,100;5,124,246;及び5,681,697。この態様において、一般に、標的の核酸は上記のように調製し、ハイブリダイゼーション複合体の形成を可能とする条件下に、複数の核酸プローブからなるバイオチップに加える。
本発明では上に概説した高、中及び低ストリンジェントな条件など、様々なハイブリダイゼーション条件を使用する。該アッセイは一般に、標的の存在下でのみ標識プローブハイブリダイゼーション複合体の形成を可能とするストリンジェントな条件下で実施する。ストリンジェンシーの程度は熱力学的変数であるステップパラメーター、例えば、限定されるものではないが、温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度pH、有機溶媒濃度などを変えることにより制御し得る。これらのパラメーターは、米国特許5,681,697に概説されているように、非特異的結合を制御するためにも使用し得る。従って、非特異的結合を低減するためには、より高いストリンジェントな条件であるステップを実施することが望ましい。
本明細書に概略した反応は様々な方法で遂行し得る。反応成分は、同時に、又は順序だてて、異なる順序で添加し得るが、下記に示すのが好適な態様である。加えて、反応は多様な他の試薬を含み得る。これらは塩、バッファー、中性タンパク質、例えば、アルブミン、界面活性剤などであり、最適のハイブリダイゼーション及び検出を促進し、及び/又は非特異的又はバックグランド相互作用を減少させるために使用し得るものである。アッセイの効率を他の状態でも改善する試薬、例えば、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗微生物剤などは、サンプル調製法と標的の純度により、適切な場合に使用してもよい。アッセイデータを分析し、個々の遺伝子の発現レベルと、状態間での発現レベルの変化を決定して、遺伝子発現プロフィールを作成する。
生物活性関連アッセイ
本発明は、本発明の癌関連遺伝子又はタンパク質の活性を調節する化合物の同定方法又はスクリーニング方法を提供する。該方法は上記定義のように、本発明の癌タンパク質を含んでなる細胞にテスト化合物を加えることからなる。該細胞は本発明の癌タンパク質をコード化する組み換え核酸を含有する。もう一つの態様において、候補物質のライブラリを複数の細胞について試験する。
一側面において、該アッセイ法は生理的シグナル、例えば、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、増殖因子、活動電位、化学療法剤などの薬理物質、放射線照射、発癌剤、又は他の細胞(すなわち、細胞−細胞接触)の存在下若しくは不存在下又は事前若しくは事後の接触により評価する。もう一つの例において、判定は細胞周期過程の異なる段階でなされる。この方式で、本発明の遺伝子又はタンパク質を調節する化合物を同定する。薬理活性をもつ化合物は本発明の癌タンパク質の活性を上昇させるか、又は活性に干渉し得る。同定後、同様の構造を評価し、化合物の必須の構造的特長を同定する。
一態様において提供される癌細胞の分裂を調節(例えば、阻害)する方法は、癌モジュレーターを投与することからなる方法である。もう一つの態様において提供される癌を調節(例えば、阻害)する方法は、癌モジュレーターを投与することからなる方法である。さらなる態様において提供される癌細胞又は癌を有する個体の治療方法は、癌モジュレーターを投与することからなる方法である。
一態様においては、本発明の遺伝子を発現する細胞の状態を調節する方法が提供される。本明細書にて使用する場合、状態とは技術上受け容れられているパラメーター、例えば、細胞の成長、増殖、生存、機能、アポトーシス、老化、局在、酵素活性、シグナル伝達などを意味する。一態様において、癌インヒビターは上記考察の抗体である。もう一つの態様において、癌インヒビターはアンチセンス分子である。本明細書に記載したように、様々の細胞成長、増殖、及び転移アッセイ法が当業者に既知である。
モジュレーター同定のためのハイスループットスクリーニング
適切なモジュレーターを同定するためのアッセイは、ハイスループットスクリーニングに受け入れられる。好適なアッセイ法は、従って、癌遺伝子転写の上昇又は阻害、ポリペプチド発現の阻害又は上昇、及びポリペプチド活性の阻害又は上昇を検出することである。
一態様において、ハイスループットスクリーニング法により評価されたモジュレーターは、タンパク質であり、多くの場合、天然型タンパク質又は天然型タンパク質のフラグメントである。従って、例えば、タンパク質含有細胞性抽出物、又はタンパク質性細胞抽出物の無作為若しくは企図した消化物を使用する。タンパク質ライブラリはこの方式で本発明方法においてスクリーニングする。この態様において特に好適なのは、バクテリア、カビ、ウイルス、及び哺乳動物タンパク質のライブラリであるが、後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。特に有用なテスト化合物は、標的が属するタンパク質の群に、例えば、酵素の基質、又はリガンド及びレセプターなどを指向する。
モジュレーターの同定及び特徴付けにおける軟寒天増殖コロニー形成の使用
正常細胞は付着と増殖のために固体基質を必要とする。細胞を形質転換する場合、細胞はその表現型を失い、基質から切り離されて増殖する。例えば、形質転換細胞は、攪拌懸濁培養において、又は半固体若しくは軟寒天などの半固体培地に懸濁した状態で増殖することが可能である。形質転換細胞は、腫瘍抑制因子遺伝子で形質移入したとき、正常表現型を再生し、再び付着、増殖するための固体基質を必要とする。アッセイにおける軟寒天増殖又はコロニー形成は、癌配列のモジュレーターを同定するために使用するが、宿主細胞で発現された場合、異常細胞増殖及び形質転換を阻害する。モジュレーターは寒天などの固体又は半固体培地に懸濁した宿主細胞の増殖能力を低下させるか、又は除去する。
懸濁アッセイにおける軟寒天増殖又はコロニー形成の技法については、文献に記載がある:Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basich Technique (3rd ed., 1994)。上記文献(Garkavtsev et al. (1996)の方法に関する章)も参照されたい。
モジュレーターの同定と特徴付けのための接触阻害と増殖密度の評価
正常細胞は細胞培養において、一般に他の細胞と接触するまで、平床組織化パターンで増殖する。細胞が互いに触れ合うと、接触を阻害され、増殖を止める。しかし、形質転換細胞は非組織化巣で、接触を阻害されることなく、高密度まで増殖を続ける。従って、形質転換細胞は、対応する正常細胞よりも高飽和密度に増殖する。このことは細胞の無秩序な単層の形成により、又は巣中の細胞により形態的に検出される。別法として、飽和密度での(3H)チミジンによる標識指数を用いて、増殖の密度限界を測定する;同様に、MTT又はアラマー(Alama)ブルーアッセイは、細胞の増殖能力と、それに影響するモジュレーターの能力を明らかにしよう。参照文献:Freshney (1994), supra。形質転換細胞は、腫瘍抑制因子遺伝子で形質転換した場合、正常表現型を再生し、接触が阻害されるようになり、低密度に増殖する。
このアッセイにおいて、飽和密度での(3H)チミジンによる標識指数は、増殖密度限界を測定する好適な方法である。形質転換宿主細胞は癌関連配列で形質移入し、非限界培地条件下、飽和密度で24時間増殖する。(3H)チミジンによる細胞標識化のパーセントは、取り込まれたcpmで判定する。
接触非依存性の増殖は、異常細胞の増殖と形質転換に導いた癌配列のモジュレーターを同定するために使用する。モジュレーターは接触非依存性の増殖を低下させるか、又は除去し、該細胞を正常な表現型に戻す。
モジュレーターの同定と特徴付けのための増殖因子又は血清依存性の評価
形質転換細胞はその正常対照物よりも低い血清依存性を有する(参照例:Temin, J. Natl. Cancer Inst. 37:167-175 (1966); Eagle et al., J. Exp. Med 131:836-879 (1970); Freshney, supra)。これは一部分、形質転換細胞による様々な増殖因子の放出によるものである。形質転換宿主細胞の増殖因子又は血清依存性の度合いは、対照と比較することができる。例えば、細胞の増殖因子又は血清依存性は、本発明の癌関連配列を調節する化合物を同定・特徴付けする方法によりモニターする。
モジュレーターの同定と特徴付けのための腫瘍特異的マーカーレベルの使用
腫瘍細胞は対応する正常細胞よりも増加した量のある種因子(以下「腫瘍特異的マーカー」)を放出する。例えば、プラスミノーゲン活性化因子(PA)は、ヒトのグリオーマから、正常の脳細胞からよりも高いレベルで放出される(参照例:Guillino, Angiogenesis, Tumor Vascularization, and Potential Interference with Tumor Growth (脈管形成、腫瘍血管形成、及び腫瘍増殖の潜在的干渉), in Biological Responses in Cancer, pp. 178-184 (Mihich (ed.) 1985)。同様に、腫瘍脈管形成因子(TAF)は、腫瘍細胞において対応する正常細胞よりも高レベルで放出される。参照例:Folkman, Angiogenesis and Cancer, Sem Cancer Biol. (1992); 一方、bFGFは内皮腫瘍から放出される(Ensoli, B et al)。
これらの因子の放出を測定する種々の技法が文献(Freshney, 1994, supra)に記載されている。また、以下の文献も参照されたい:Unkless et al., J. Biol. Chem. 249:4295-4305 (1974); Strickland & Beers, J. Biol. Chem. 251:5694-5702 (1976); Whur et al., Br. J. Cancer 42:305 312 (1980); Gullino, Angiogenesis, Tumor Vascularization, and Potential Interference with Tumor Growth, in Biological Research in Cancer, pp. 178-184 (Mihich (ed.) 1985); Freshney, Anticancer Res. 5:111-130 (1985)。例えば、腫瘍特異的マーカーレベルは、本発明の癌関連配列を調節する化合物を同定し、特徴付けする方法によりモニターする。
モジュレーターの同定と特徴付けのためのマトリゲルへの侵入
マトリゲル又は細胞外マトリックス成分への侵入の度合いは、癌関連配列を調節する化合物を同定し特徴付けするアッセイとして使用し得る。腫瘍細胞は細胞の悪性度と、マトリゲル又はある種他の細胞外マトリックス成分への侵入との間に、正の相関を示す。このアッセイでは、一般に腫瘍化細胞を宿主細胞として使用する。これらの宿主細胞における腫瘍抑制因子遺伝子の発現は、宿主細胞の侵入を低下させよう。文献(Freshney (1994), supra)記載の方法を使用し得る。簡単に説明すると、宿主細胞の侵入レベルは、マトリゲル又はある種細胞外マトリックス成分で被覆したフィルターを用いて測定する。ゲルへの浸透、又はフィルターの端部からの浸透は、侵入度として評価され、組織学的には細胞数と移動距離により、又は細胞の125Iによる事前標識とフィルター端部若しくはディッシュ底部の放射活性測定により評価する。文献(Freshney (1994), supra)参照。
モジュレーターの同定と特徴付けのためのインビボ腫瘍増殖の評価
細胞増殖に対する癌関連配列の影響は、トランスジェニック生物又は免疫抑制生物で試験する。トランスジェニック生物は様々な技術的に受け容れられている方法で調製する。例えば、ノックアウトトランスジェニック生物、例えば、マウスなどの哺乳動物は、癌遺伝子が破壊されているか、又は癌遺伝子が挿入されている生物として創出する。ノックアウトトランスジェニックマウスは、マーカー遺伝子又は他の異種遺伝子を、相同組み換えを介してマウスゲノムの内在性癌遺伝子部位に挿入することにより創出する。かかるマウスはまた内在性癌遺伝子を癌遺伝子の突然変異体と置き換えることにより、又は内在性癌遺伝子を、例えば、発癌物質に接触させることによる突然変異により創出し得る。
トランスジェニック・キメラ動物、例えば、マウスを調製するためには、DNA構築物を胚幹細胞の核に導入する。新たに設計作製された障害巣をもつ細胞を宿主マウス胚に注射し、それを受容メスに再移植する。これら胚のいくつかは、突然変異細胞株由来の生殖細胞をもつキメラマウスに成長する。それ故、このキメラマウスを飼育することにより、導入した遺伝的障害をもつマウスの新株を得ることが可能である(参照例:Capecchi et al., Science 244:1288 (1989))。キメラマウスは以下の文献に従い、誘導し得る:米国特許6,365,797(2002年4月2日発行);USP6,107,540(2000年8月22日発行);Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo; A Laboratory Manual(マウス胚の操作;実験室マニュアル), Cold Spring Harbor Laboratory (1988) 及び Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach(奇形癌腫及び胚幹細胞;実用方法), Robertson, ed., IRL Press, Washington, D.C., (1987)。
別法として、種々の免疫抑制又は免疫欠失宿主動物を使用し得る。例えば、遺伝的胸腺欠損「ヌード」マウス(参照例:Giovanella et al., J. Natl. Cancer Inst. 52:921 (1974))、SCIDマウス、胸腺切除マウス、又は放射線照射マウス(参照例:Bradley et al., Br. J. Cancer 38:263 (1978); Selby et al., Br. J. Cancer 41:52 (1980))などが宿主として使用し得る。同質遺伝子的宿主に注射した移植可能な腫瘍細胞(典型的には凡そ106細胞)は、高比率の頻度で侵襲性腫瘍を生じるが、一方、同様の起源の正常細胞は生じない。侵襲性腫瘍を成長させた宿主に、癌関連配列を発現する細胞を皮下又は同所的に注射する。次いで、マウスを対照群と処置実験群(例えば、モジュレーターで処理)とを含むグループに分ける。適当な時間、好ましくは4〜8週間、置いた後、腫瘍増殖を測定し(例えば、容積によるか、又はその二次元最大値又は重量による)、対照と比較する。統計的に有意な減少(例えば、スチューデント‐T検定を使用)を示す腫瘍は、増殖が阻害されたと言われる。
モジュレーターの同定と特徴付けのためのインビトロアッセイ
調節活性を有する化合物の同定アッセイはインビトロで実施し得る。例えば、癌ポリペプチドは先ず可能性のあるモジュレーターと接触させ、適当な時間量、例えば、0.5〜48時間インキュベートする。一態様において、癌ペプチドレベルはタンパク質又はmRNAレベルを測定することにより決定する。タンパク質レベルは、癌ポリペプチド又はそのフラグメントに選択的に結合する抗体を用い、ウエスタンブロッティング、ELISAなどのイムノアッセイにより測定する。mRNAの測定には、例えば、PCR、LCRを用いる増幅、又は例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、RNaseプロテクション、ドットプロッティングなどのハイブリダイゼーションアッセイが好適である。タンパク質又はmRNAのレベルは、直接的又は間接的に標識した検出試薬、例えば、本明細書に記載の蛍光又は放射活性標識した核酸、放射活性又は酵素で標識した抗体などを用いて検出する。
あるいは、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CAT、又はP‐galなどのレポーター遺伝子に操作可能に結合した癌タンパク質プロモーターを用い、レポーター遺伝子系を案出することができる。レポーター構築物は、一般に細胞に形質移入する。可能性のあるモジュレーターで処理した後、レポーター遺伝子転写、翻訳、又は活性の量を、当業者既知の標準的技法に従って測定する(Davis GF, supra; Gonzalez, J. & Negulescu, P. Curr. Opin. Biotechol. 1998: 9:624)。
上に概説したように、インビトロスクリーニングは、個々の遺伝子と遺伝子産物について実施する。すなわち、特定の状態で重要とされる特定の示差的に発現された遺伝子を同定し、該遺伝子の発現又はその遺伝子産物のモジュレーターそのもののスクリーニングを実施する。
一態様において、特別の遺伝子発現のモジュレーターのスクリーニングを実施する。一般に、単一の、又は2〜3の遺伝子の発現を評価する。もう一つの態様において、スクリーニングは示差的に発現されたタンパク質に結合する化合物を先ず見出すように設計する。次いで、これらの化合物について、示差的に発現された活性を調節する能力を評価する。さらに、当初の候補化合物を同定した後、構造活性の関連性をよりよく評価するために、変異体をさらにスクリーニングする。
モジュレーターの同定と特徴付けのための結合アッセイ
本発明による結合アッセイにおいては、本発明の精製又は単離した遺伝子産物を一般に使用する。例えば、抗体は本発明のタンパク質に対して生成させ、イムノアッセイはタンパク質の量及び/又は位置を決定するために実施する。あるいは、癌タンパク質を含んでなる細胞をアッセイで使用する。
従って、該方法は本発明の癌タンパク質とリガンドなどの候補化合物とを組み合わせ、本発明の癌タンパク質に対する化合物の結合を決定することからなる。好適な態様ではヒトの癌タンパク質を利用する;ヒト疾患の動物モデルも開発し、使用し得る。また、他の類似の哺乳動物タンパク質も、当業者が認識するように、使用し得る。さらに、一部態様においては、変異又は誘導癌タンパク質が使用される。
一般に、本発明の癌タンパク質又はリガンドは、不溶性支持体に拡散せずに結合する。該支持体は、例えば、単離したサンプル受容領域をもつものである(マイクロタイタープレート、アレイなど)。不溶性支持体は組成物が結合し得る何らかの構成物で作られたもので、可溶性物質から容易に分離し得るものであり、スクリーニング方法全般と他の面でも両立し得るものである。かかる支持体の表面は固体でも多孔性でもよく、またどのように簡便な形状でもよい。
適当な不溶性支持体の例は、マイクロタイタープレート、アレイ、膜及びビーズである。これらは代表的に、ガラス、プラスチック(例:ポリスチレン)、多糖類、ナイロン、ニトロセルロース、又はテフロン(登録商標)などで作製される。マイクロタイタープレート及びアレイは、少量の試薬とサンプルを用いて、膨大な数のアッセイを同時に実施できるので、特に便利である。組成物が支持体に結合する特定の様式は、それが本発明の試薬及び方法全体と両立し、組成物の活性を維持し、拡散性でない限り、決定的なものではない。タンパク質を支持体に結合させる際に好適な結合方法は、リガンドの結合部位又は活性化配列の何れをも立体的に遮断しない抗体を使用すること、「粘着性」又はイオン性支持体に直接結合させること、化学的架橋、表面上でのタンパク質又は物質の合成などである。支持体にタンパク質又はリガンド/結合剤を結合させた後、過剰の未結合物質を洗浄により除去する。サンプル受容領域は、次いで、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン又はその他の無害なタンパク質又はその他の成分と、インキュベーションすることにより遮断してもよい。
本発明の癌タンパク質を支持体に結合させた後、テスト化合物をアッセイ系に加える。あるいは、候補結合物質を支持体に結合させ、次いで本発明の癌タンパク質を加える。結合物質は特異的抗体、ケミカルライブラリのスクリーニングにおいて同定される非天然の結合物質、ペプチド類似体などである。
特に対象となるのはヒトの細胞に毒性の低い物質を同定するアッセイ法である。多様なアッセイ法がこの目的に使用し得る;例えば、増殖アッセイ、cAMPアッセイ、標識化インビトロタンパク質−タンパク質アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合についてのイムノアッセイ、機能的アッセイ(リン酸化アッセイなど)などである。
本発明の癌タンパク質に対するテスト化合物(リガンド、結合物質、モジュレーターなど)の結合の決定は、多くの方法で実施し得る。テスト化合物は標識してもよく、結合は、例えば、本発明の癌タンパク質の全部又は一部を固体支持体に付着させ、標識した候補化合物(例えば、蛍光標識)を加え、過剰の試薬を洗い流し、次いで標識物が固体支持体上に存在するかを判定することにより直接決定する。適切な場合には、様々なブロッキングステップと洗浄ステップを利用し得る。
ある特定の態様では、1つの成分のみ、例えば、本発明のタンパク質又はリガンドのみを標識する。あるいは、1つを超える成分について異なる標識により、例えば、タンパク質についてはI125により、また、該化合物については蛍光体により標識する。近接試薬、例えば、クエンチング試薬又はエネルギー転移試薬も有用である。
モジュレーターの同定と特徴付けのための競合的アッセイ
一態様において、「テスト化合物」の結合は、「拮抗剤」との競合的結合アッセイにより判定する。拮抗剤は標的分子(例えば、本発明の癌タンパク質)に結合する結合残基である。拮抗剤は、抗体、ペプチド、結合パートナー、リガンドなどの化合物である。ある特定の条件下、テスト化合物と拮抗剤との間の競合的結合は、テスト化合物と置き換わる。一態様において、テスト化合物は標識される。テスト化合物、拮抗剤、又はその両方を、結合を可能とする十分な時間、タンパク質に加える。インキュベーションは最適な活性を促進する温度、一般に、4〜40℃で実施する。インキュベーション時間は、一般に、例えば、迅速なハイスループットスクリーニングを促進するように最適化する;例えば、0〜1時間で十分である。過剰の試薬は一般に除去又は洗い流す。次いで、第二成分を加え、標識化成分の存在又は不存在を追跡し、結合を示す。
一態様においては、先ず拮抗剤を加え、次いでテスト化合物を加える。拮抗剤の置き換えは、テスト化合物が癌タンパク質に結合していること、従って、癌タンパク質に結合可能であり、癌タンパク質の活性を調節する可能性のあることを示している。この態様においては、両成分を標識し得る。従って、例えば、もし拮抗剤が標識されているならば、テスト後化合物の洗浄液に標識が存在することは、テスト化合物に置き換わったことを示す。あるいは、もしテスト化合物が標識されているならば、支持体上に標識の存在することは、置換のあることを示す。
別の態様においては、先ずテスト化合物を加え、インキュベートし、洗浄した後に拮抗剤を加える。拮抗剤による結合がなければ、テスト化合物が拮抗剤よりも高い親和性で癌タンパク質に結合したことを示す。従って、もしテスト化合物が標識されているならば、支持体上の標識の存在は、拮抗剤の結合欠如と組み合わせて、テスト化合物が本発明の癌タンパク質に結合し、調節する可能性のあることを示している。
従って、競合的結合法は、本発明の癌タンパク質活性を調節し得る物質同定のための示差スクリーニングを包含する。この態様において、該方法は第一サンプルに癌タンパク質と拮抗剤を組み合わせることからなる。第二サンプルは、テスト化合物、癌タンパク質、及び拮抗剤からなる。拮抗剤の結合は両サンプルについて決定され、2つのサンプル間の結合の変化又は差は、物質が存在すること、その物質が癌タンパク質に結合可能であり、かつその活性を調節する可能性のあることを示している。すなわち、もし拮抗剤の結合が第一サンプルに比べて第二サンプルで異なっているならば、その物質は癌タンパク質に結合可能である。
あるいは、示差スクリーニングは未改変の癌タンパク質に結合するが、改変した癌タンパク質には結合し得ない薬物候補を同定するために使用する。例えば、癌タンパク質の構造をモデルとして理に適った薬物の設計に使用し、その部位と相互作用する作用因子、部位改変したタンパク質には一般的に結合しない作用因子を合成する。さらに、未改変癌タンパク質の活性に影響するかかる薬物候補はまた、かかるタンパク質の活性を上昇又は低下させる能力について薬物をスクリーニングすることによっても同定される。
陽性対照及び陰性対照はこのアッセイで使用し得る。好ましくは、対照とテストサンプルは統計的に有意な結果を得るために、少なくとも3組で実施する。すべてのサンプルのインキュベーションは、物質とタンパク質との結合が可能となる十分な時間行う。インキュベーションに続き、サンプルを洗浄して非特異的に結合した物質を除き、結合した量、通常は標識化物質を定量する。例えば、放射線標識を採用する場合、シンチレーション・カウンターによりサンプルを計測し、結合化合物量を定量することができる。
様々な他の試薬をスクリーニングアッセイに包含させ得る。これらは塩様試薬、中性タンパク質、例えば、アルブミン、界面活性剤などであり、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進し、及び/又は非特異的若しくはバックグランドの相互作用を低下させるために使用する。また、その他の点でアッセイの効率を改善する試薬、例えば、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗微生物剤などを使用することもできる。成分の混合物は、必要な結合を提供する順序で加える。
本発明のタンパク質を下方制御又は阻害するポリヌクレオチドの使用
癌のポリヌクレオチドモジュレーターは、リガンド結合分子との抱合体の形成により、標的ヌクレオチド配列を含む細胞に導入し得る(国際特許出願WO91/04753の記載参照)。適切なリガンド結合分子は、限定されるものではないが、細胞表面レセプター、増殖因子、他のサイトカイン、又は細胞表面レセプターに結合するその他のリガンドである。好ましくは、リガンド結合分子の抱合は、リガンド結合分子がその対応する分子又はレセプターに結合する能力に実質的に干渉せず、またセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその抱合体が細胞に入り込むのも遮断しない。あるいは、癌のポリヌクレオチドモジュレーターは、WO90/10448に記載されているように、例えば、ポリヌクレオチド−脂質複合体の形成により、標的核酸配列を含む細胞に導入し得る。理解されることは、アンチセンス分子又はノックアウト及びノックインモデルが、治療方法に加えて、上に考察したようにスクリーニングアッセイにも使用し得ることである。
阻害性及びアンチセンスヌクレオチド
ある特定態様において、癌関連タンパク質の活性は、アンチセンスポリヌクレオチド又は抑制性の核内低分子RNA(snRNA)、すなわち、コーディングmRNA核酸配列に相補性であり、また好ましくは特異的にハイブリダイズし得る核酸の使用により、下方制御されるか、又は全体として阻害される;例えば、本発明の癌タンパク質、mRNA、又はそのサブ配列である。アンチセンスポリヌクレオチドとmRNAとの結合は、そのmRNAの翻訳及び/又は安定性を低下させる。
本発明の状況下、アンチセンスポリヌクレオチドは天然のヌクレオチドからなるか、又は天然型のサブユニット若しくはその密接な相同体から形成される合成種を含み得る。アンチセンスポリヌクレオチドはまた、改変した糖部分又は糖間結合を有し得る。これらの内の代表例はホスホロチオアート及び他のイオウ含有種であり、技術的に使用の知られたものである。類似体は本発明のヌクレオチドと有効にハイブリダイズするように機能する限り、本発明に包含される。参照例:Isis Pharmaceuticals, Carlsbad, CA; Sequitor, Inc. Natick, MA。
かかるアンチセンスポリヌクレオチドは、組み換え手法を用いて容易に合成可能であるか、又はインビトロで合成し得る。そのような合成に用いる器材は、アプライドバイオシステム社を含むいくつかのメーカーから販売されている。その他のオリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオアート及びアルキル化誘導体などの調製についても、当業者に周知である。
ここで使用するアンチセンス分子とは、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドである。センスオリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンス鎖との結合によって、転写を遮断するために採用し得る。アンチセンス及びセンスオリゴヌクレオチドは、癌分子の標的mRNA(センス)又はDNA(アンチセンス)配列に結合し得る一本鎖核酸配列(RNA又はDNA)を含む。本発明によるアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、一般には少なくとも凡そ12個のヌクレオチド、好ましくは12〜30個のヌクレオチドを含んでなる。所定のタンパク質をコード化するcDNA配列に基づき、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを誘導する能力については、文献に記載がある:例:Stein & Cohen (Cancer Res. 48:2659 (1988)) 及び van der Krol et al., (Bio Techniques 6:058 (1988))。
リボザイム
アンチセンスポリヌクレオチドに加えて、癌関連ヌクレオチド配列の転写を標的とし、阻害するために、リボザイムを使用することができる。リボザイムは他のRNA分子を触媒的に切断するRNA分子である。異なる種類のリボザイム、例えば、グループIリボザイム、ハンマーヘッドリボザイム、ヘアピンリボザイム、リボヌクレアーゼP、及び斧型ヘッドリボザイムなどが文献に記載されている(異なるリボザイムの性質についての一般的概説参照例:Castanotto et al., Adv. in Pharmacology 25:289-317 (1994))。
ヘアピンリボザイムの一般的特徴については文献に記載がある;例:Hampel et al., Nucl. Acids Res. 18:299-304 (1990); 欧州特許公開No.0360257;米国特許5,254,678。その調製法については当業者に周知である(参照例:WO94/26877;Ojwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6340-6344 (1993); Yamada et al., Human Gene Therapy 1:39-45 (1994); Leavitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:699-703 (1995): Leavitt et al., Human Gene Therapy 5:1151-120 (1994); 及び Yamada et al., Virology 205: 121-126 (1994))。
表現型スクリーニングにおけるモジュレーターの使用
一態様において、テスト化合物は、関連する癌の発現プロフィールをもつ一群の癌細胞に投与する。本明細書において、「投与」又は「接触」とは、モジュレーターを、細胞による取り込み作用及び細胞内作用によって又は細胞表面での作用により、細胞に作用するような方法で細胞に加えることを意味する。一部の態様において、タンパク質様物質(すなわち、ペプチド)をコード化する核酸を、アデノウイルス又はレトロウイルス構築物などのウイルス構築物に入れ、ペプチド物質の発現が遂行されるように、細胞に加える;例:国際特許PCT US97/01019。制御可能な遺伝子療法システムも使用し得る。一旦細胞にモジュレーターを投与した後、所望により細胞を洗浄し、好ましい生理的条件下に、所要時間インキュベートする。次いで細胞を採取し、新たな遺伝子発現プロフィールを生成させる。このように、例えば、調節する物質について癌組織をスクリーニングし、例えば、癌表現型を誘発又は抑制する。少なくとも1つ、好ましくは多くの遺伝子における発現プロフィールの変化は、物質が癌の活性に対して作用をもつことを示している。同様に、生物学的機能の変化又はシグナル伝達の変化は、モジュレーター活性の証拠である。癌表現型のかかるサインを定義することによって、該表現型を変える新薬のスクリーニングが案出される。この方法により、薬物標的は既知であることを要せず、また当初の遺伝子/タンパク質発現スクリーニングプラットホームに提示される必要もなく、あるいは変化する必要のある標的タンパク質の転写物のレベルも必要ない。機能を阻害するモジュレーターは代用マーカーとして働く。
上に概説したように、スクリーニングは遺伝子又は遺伝子産物を評価するために行う。すなわち、特定の状態で、特定の示差的発現遺伝子を重要なものとして同定した後、遺伝子又は遺伝子産物自体の発現のモジュレーターのスクリーニングを実施する。
本発明ペプチドに影響するモジュレーターの使用
癌ポリペプチド活性の測定又は癌表現型の測定は、種々のアッセイ法を用いて実施する。例えば、癌ポリペプチドの機能に対するモジュレーターの作用は、上記のパラメーターを試験することにより測定する。活性に影響する生理的変化は、本発明のポリペプチドに対するテスト化合物の影響を評価するために使用する。機能的成果を未改変細胞又は動物により判定する場合、様々な作用について、固形腫瘍、腫瘍増殖、腫瘍転移、新生血管形成、ホルモン放出、既知及び未特徴付け遺伝子マーカー(例えば、ノーザンブロットによる)、細胞増殖若しくはpH変化などの細胞メカニズムの変化、及びcGNIPなどの細胞内セカンドメッセンジャーの変化、などと関連する癌の事例のように、評価し得る。
癌関連配列を同定・特徴付けする方法
種々の遺伝子配列の発現は、癌と相関する。従って、突然変異又は変異型癌遺伝子に基づく疾病が決定される。一態様において、本発明は変異型癌遺伝子を含む細胞を同定する方法、例えば、細胞中の少なくとも1種の内在性癌遺伝子の配列、その全部又は一部の存在を決定する方法を提供する。この方法はいくつかの配列決定技法を用いて実施する。本発明は個体の癌表現型を同定する方法、例えば、個体において本発明の少なくとも1種の遺伝子の配列の全部又は一部を決定する方法からなる。これは一般的に個体の少なくとも1種の組織、例えば、表1に示す組織で実施し、多数の組織についての、又は同じ組織の異なるサンプルについての評価を含み得る。この方法は配列決定した遺伝子の配列を既知の癌遺伝子、すなわち、野生型遺伝子と比較し、ファミリーメンバー、相同体、突然変異又は変異体の存在を決定することからなる。次いで、その遺伝子の全部又は一部の配列を既知癌遺伝子の配列に比較し、何らかの差異が存在するかを判定することができる。これはいくつかの既知相同性プログラム、例えば、BLAST、Bestfitなどを用いて行う。患者の癌遺伝子と既知癌遺伝子との間に、配列の差が存在する場合、本明細書に概説するように、それは病状と相関するか、又は病的傾向と相関する。
好適な態様において、癌遺伝子はゲノムの癌遺伝子のコピー数を決定するためにプローブとして使用する。癌遺伝子は癌遺伝子の染色体位置を決定するためのプローブとして使用する。染色体位置などの情報には、特に、トランスロケーションなどの染色体異常が癌遺伝子巣に同定される場合に、診断又は予測を提供するという用途がある。
XIV.)RNAi及び低分子干渉RNA(siRNA)の治療的使用
本発明はまた、siRNAオリゴヌクレオチドを目的とするものであり、特に、158P1D7コーディング領域若しくは5”UTR領域の少なくともフラグメント、又は相補性オリゴヌクレオチド若しくは158P1D7配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、を含む二本鎖RNAを目的とする。一態様において、かかるオリゴヌクレオチドは158P1D7の機能を解明するために使用するか、又は158P1D7の機能若しくは発現のモジュレーターをスクリーニング若しくは評価するために使用する。もう一つの態様において、158P1D7の遺伝子発現はsiRNAの形質移入により減少し、その結果、抗原を内在的に発現する形質転換癌細胞の増殖能力が有意に減少する;特異的158P1D7siRNAで処理した細胞は、例えば、細胞生存度の代謝リードアウトにより測定した生存率が減少を示し、減少した増殖能力と相関する。従って、158P1D7siRNA組成物は、158P1D7タンパク質又はそのサブ配列の核酸CRF配列に相当するsiRNA(二本鎖RNA)を含んでいる;これらのサブ配列はその長さが一般に、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、又はそれ以上の連続したRNAヌクレオチドであり、mRNAコーディング配列の少なくとも一部に相補性であるか、又は非相補性である配列を含む。好適な態様において、サブ配列は19〜25個のヌクレオチドの長さであり、最も好ましいのは、21〜23個のヌクレオチドの長さである。
RNA干渉は、インビトロ及びインビボで遺伝子をサイレンシング(silencing)させる新しい方法であり、従って短鎖二本鎖RNA(siRNA)は価値ある治療剤である。特異的な遺伝子活性をサイレンシングさせるsiRNAの能力は、現在、動物の疾患モデルに供し、また同様にヒトで使用されている。例えば、特定の標的に対するsiRNAによる、マウスへのsiRNA溶液の水力学的注入は、治療的に有効であることが証明されている。
ソングら(Song et al.)による開拓的研究が示すところによると、全体が天然型である一つのタイプの核酸、低分子干渉RNA(siRNA)は、さらに化学的改変を施さなくとも治療剤として作用する(Song, E., et al. “RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis (Fasを標的とするRNA干渉はマウスの劇症肝炎を予防する)” Nat. Med. 9(3): 347-51 (2003))。この研究は、動物にsiRNAを注入すると疾患を軽減するという最初のインビボの証拠を提供した。この事例で、著者らはFASタンパク質(炎症応答に際し活性化し過ぎた場合、肝細胞及びその他の細胞に死を誘発する細胞死レセプター)をサイレンシングさせるように設計したsiRNAをマウスに注射した。翌日、動物にFasに特異的な抗体を付与した。対照のマウスは急性肝不全のため二三日で死亡したが、siRNA処置マウスの80%以上が重症疾患にかからず、生存した。マウス肝細胞の80〜90%が裸のsiRNAオリゴヌクレオチドを取り込んだ。さらに、該RNA分子は10日間機能し、3週間後に作用を失った。
ヒトの治療に使用するためには、長時間持続するRNAi活性を誘発する効率的なシステムにより、siRNAを送達する。臨床使用のための主たる注意点は、適切な細胞にsiRNAを送達することである。肝細胞は外来のRNAに対し特に感受性が強いと思われる。今日、肝臓に位置する標的は、肝臓が核酸分子とウイルスベクターの標的と容易になり得る臓器であるため、興味の対象である。しかし、他の組織及び臓器標的も同様に好適である。
細胞膜の通過を促進する化合物によるsiRNA製剤を用い、治療におけるsiRNAの投与効果を改善する。化学的に改変した合成siRNAは、ヌクレアーゼに抵抗性で、血清安定性を有し、随伴するRNAi作用の持続性が延長されるため、さらなる態様となる。
従って、siRNA技法は、例えば、表1に掲載したような癌をもつ個体の158P1D7を標的とするsiRNA分子の送達によるヒト悪性腫瘍の治療法である。かかるsiRNAの投与は、158P1D7を発現する癌細胞の増殖を減少に導き、悪性腫瘍と関連する罹患率及び/又は死亡率を減少させる。
この遺伝子産物ノックダウン方式の有効性は、インビトロ又はインビボで測定した場合、有意である。インビトロ法を用い158P1D7タンパク質の発現低下を検出すると、(上記のように)培地の細胞又は癌患者の生検にsiRNAを投与するので、インビトロでの有効性が容易に証明される。
XV.)キット/製造物
本明細書に記載の、実験室、予測、予防、診断及び治療適用で使用するキットは本発明の範囲内である。かかるキットは担体、包装、又はバイアル、チューブなどの1個以上の容器を受容するために区画分けした容器からなり、各容器は本方法に使用すべき個々の要素と、本明細書に記載した用途など、使用説明書を含むレーベル又は添付文書とを含んでなる。例えば、該容器は、検出可能に標識した又は標識し得るプローブを含み得る。かかるプローブは本発明のタンパク質又は遺伝子若しくはメッセージにそれぞれ特異的な抗体又はポリヌクレオチドであり得る。本方法が標的の核酸を検出するために核酸のハイブリダイゼーションを利用する場合、キットもまた標的核酸配列増幅用のヌクレオチドを容れた容器を有する。キットはレポーターを含む容器を含み得る;例えば、酵素、蛍光体、又は放射性同位元素などのレポーター分子に結合したビオチン結合タンパク質、例えば、アビジン又はストレプトアビジンなどである:かかるレポーターは、例えば、核酸又は抗体とともに使用し得る。キットは図2又は図3のアミノ酸配列の全部若しくは一部又はその類似体、又はかかるアミノ酸配列をコード化する核酸分子を含み得る。
本発明のキットは、典型的には、上記の容器及びそれと関連する1個以上の容器からなり、該容器は商業的及びユーザーの観点から望まれる物質、例えば、バッファー、希釈剤、フィルター、針、注射筒など;担体、包装、容器、バイアル及び/又はチューブレーベル掲載内容及び/又は使用説明書、及び使用説明書付き添付文書などを含んでなる。
レーベルは、該組成物が予測、予防、診断又は実験室応用など、特異的な治療又は非治療応用に使用することを明記する容器上又は容器とともに存在し得るものであり、本明細書に記載するように、インビボ又はインビトロでの使用法を指示することもできる。説明書及び/又はその他の情報は、キットとともに、又はキット上に含める添付文書又はレーベルに含めることもできる。レーベルは容器上とするか、又は容器と関連付け得る。レーベルは文字、数字又はレーベルを形成するその他の特徴を容器自体に形作るか、又は彫り込む場合に、容器上に存在し得る;レーベルは、それが例えば添付文書のように、容器を保持する容器又は運搬用具内に在る場合、容器と関連付け得る。レーベルは、該組成物が表1に示す組織の異常増殖など、症状の診断、治療、予防又は予測に使用することを示し得る。
「キット」及び「製造物」という用語は、同義語として使用し得る。
本発明のもう一つの態様においては、アミノ酸配列(類)、小分子(類)、核酸配列(類)、及び/又は抗体(類)、例えば、表1に示したような組織の異常増殖の診断、予測、予防及び/又は治療に有用な物質などの組成物を含有してなる製造物が提供される。製造物は代表的には少なくとも1つの容器と少なくとも1つのレーベルからなる。適当な容器は、例えば、ビン、バイアル、注射筒、及び試験管である。容器は様々な材料、例えば、ガラス、金属又はプラスチックなどから形成し得る。容器はアミノ酸配列(類)、小分子(類)、核酸配列(類)、細胞集団(群)、及び/又は抗体(類)を収容し得る。一態様において、該容器は細胞のmRNA発現プロフィールの試験に使用するポリヌクレオチドを、この目的に使用する試薬とともに収容する。もう一つの態様において、容器は細胞及び組織中の158P1D7のタンパク質発現を評価する際に使用する、又は関連する実験室、予測、予防及び治療を目的する、抗体、その結合フラグメント又は特異的結合タンパク質を含んでなる;かかる使用のための効能・効果及び/又は用法説明書も、これらの目的に使用する試薬及び他の組成分又は器具同様に、かかる容器に含めることができる。もう一つの態様において、容器は細胞性又は体液性免疫応答を引き出すための物質を、関連する効能・効果及び/又は用法説明書とともに含んでなる。もう一つの態様において、容器は、細胞傷害性T細胞(CTL)又はヘルパーT細胞(HTL)などの養子免疫治療用の物質を、関連する効能・効果及び/又は用法説明書とともに含んでなる;かかる目的に使用する試薬及び他の組成分又は器具もまた含め得る。
該容器は、あるいは症状を治療、診断、予測又は予防するために有効な組成物を収容することが可能で、無菌の出入口を有し得る(例えば、容器は静注溶液用バッグ又はバイアルであり、皮下注射用針により穿孔し得る栓を有する)。該組成物中の活性剤は158P1D7に特異的に結合し、158P1D7の機能を調節し得る抗体であり得る。
該製造物はさらにリン酸緩衝塩溶液、リンゲル溶液及び/又はデキストロース溶液など、医薬的に許容し得るバッファーを収容する第二容器を含み得る。このものはさらに商業上及びユーザーの観点から望まれるその他の物質、例えば、他のバッファー、希釈剤、フィルター、スターラー、針、注射筒、及び/又は効能・効果及び/又は用法を記載する添付文書を含み得る。
下記各種実施例により本発明の各種形態を更に説明及び詳述するが、これらの実施例により本発明は何ら制限されるものではない。
[実施例1]SSHにより産生された158P1D7遺伝子のcDNA断片の単離
膀胱癌において過剰発現する遺伝子を単離するために、侵食移行上皮癌を含む膀胱癌組織由来のcDNAを用いる抑制差引ハイブリダイゼーション(Suppression Subtractive Hybridization(SSH))法を行った。158P1D7 SSH cDNA塩基配列は、膀胱癌プールから正常膀胱cDNAを差し引いたサブトラクションに由来した。ドライバーには、9個の他の正常組織由来のcDNAも含めた。158P1D7 cDNAは、膀胱癌組織プールにおいて高発現し、限定された正常組織セットではより低い発現が認められた。
231bpのSSH DNA塩基配列(図1)は、第13番染色体のゲノミッククローン由来の仮想タンパク質FLJ22774(GenBankアクセッションXM_033183)との高いホモロジー(230/231同一性)を有する。841個のアミノ酸のORFが明らかとなった(図2及び図3)、2555bpの158P1D7cDNAクローン(ターボスクリプト3PX(TurboScript3PX))を膀胱癌cDNAから単離した。
158P1D7タンパク質は、シグナル配列及び膜内外ドメインを有し、PSORT−Iプログラム(URL psort.nibb.ac.jp:8800/form.html)を用いると、細胞表面に局在していると予想される。158P1D7のアミノ酸配列分析により、ヒト仮想タンパク質FLJ22774(GenBankアクセッションXM_033182)(図4)に対する798のアミノ酸領域にわたって100%同一性が明らかにされる。
材料及び方法
ヒト組織:
膀胱癌患者の組織は、NDRI(フィラデルフィア、ペンシルヴァニア州)等のいくつかの出所から購入した。いくつかの正常組織のmRNAは、クロンテック(Clontech)(パロアルト、カリフォルニア州)から購入した。
RNA単離:
全RNAを分離するために、組織を、10ml/g組織のトリゾール(Trizol)試薬(Life Technologies、Gibco BRL)中でホモジナイズした。全RNAからポリARNA(Poly A RNA)を、キアゲンのOligotex mRNA小型兼中型キットを用いて精製した。全RNA及びmRNAを、分光光度分析(吸光度260/280nm)により定量化し、ゲル電気泳動により分析した。
オリゴヌクレオチド:
下記HPLC精製したオリゴヌクレオチドを使用した。
DPNCDN(cDNA合成プライマー):
5'TTTTGATCAAGCTT303'(配列番号:28)
アダプター1:
5'CTAATACGACTCACTATAGGGCTCGAGCGGCCGCCCGGGCAG3'(配列番号:29)
3'GGCCCGTCCTAG5'(配列番号:30)
アダプター2:
5'GTAATACGACTCACTATAGGGCAGCGTGGTCGCGGCCGAG3'(配列番号:31)
3'CGGCTCCTAG5'(配列番号:32)
PCRプライマー1:
5'CTAATACGACTCACTATAGGGC3' (配列番号:33)
ネステッドプライマー(NP)1:
5'TCGAGCGGCCGCCCGGGCAGGA3'(配列番号:34)
ネステッドプライマー(NP)2:
5'AGCGTGGTCGCGGCCGAGGA3'(配列番号:35)
抑制差引ハイブリダイゼーション:
抑制差引ハイブリダイゼーション(SSH)を用いて、膀胱癌内で差動的に発現されるであろう遺伝子に対応するcDNAを同定した。SSH反応は、膀胱癌及び正常組織からのcDNAが利用された。
遺伝子158P1D7塩基配列は、膀胱癌プールから正常膀胱cDNAを差し引いたサブトラクションに由来した。SSH DNA塩基配列(図1)を同定した。
正常な膀胱組織のプール由来のcDNAを、「ドライバー(driver)」cDNAのソースとして使用する一方、膀胱癌組織のプール由来のcDNAを「テスター(tester)」cDNAのソースとして使用した。テスター及びドライバーcDNAに対応する二本鎖cDNAを、前記したように、1ngのオリゴヌクレオチドDPNCDNをプライマーとして用い、CLONTECHのPCR−セレクトcDNAサブトラクションキット(PCR-Select cDNA Subtraction Kit)を用いて、関連する異種移植片から単離した2μgのポリ(A)+RNAから合成した。第一及び第二ストランドの合成を、キットの使用マニュアルのプロトコル(CLONTECHプロトコル第PT1117−1号、カタログ第K1804−1号)に記載されているのと同様に、行った。生じたDNAを、DpnIIを用いて37℃で3時間消化した。消化したcDNAをフェノール/クロロホルム(1:1)で抽出し、エタノール沈殿させた。
ドライバーcDNAは、関連する組織のソース(上記参照)からのDpnII消化したcDNAと、9つの正常な組織:胃、骨格筋、肺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、及び心臓由来の消化したcDNAの混合物とを1:1の比で混合することにより生成させた。
テスターcDNAは、1μlの関連する組織のソース(上記参照)からのDpnII消化cDNA(400ng)を5μlの水中で希釈することにより生成させた。その後、希釈したcDNA(2μl、160ng)を、別々の連結反応において、総容積10μlで、16℃で一晩、400uのT4DNAリガーゼ(CLONTECH)を用いて、2μlのアダプター1及びアダプター2(10μM)と、結合させた。結合反応は1μlの0.2MのEDTAを用いて、72℃で5分間加熱して終結させた。
1.5μl(600ng)のドライバーcDNAを1.5μl(20ng)のアダプター1−及びアダプター2−結合テスターcDNAを含む二本の管のそれぞれに加えることによって、第一のハイブリダイゼーションを行った。最終容積4μlで、サンプルをミネラルオイルで被覆し、98℃で1.5分間、MJリサーチサーマルサイクラー(MJ Research thermal cycler)中で変性させ、その後68℃で8時間ハイブリダイズさせた。その後、二つのハイブリダイゼーション(ハイブリッド形成物)を、1μlのさらに別の変性したドライバーcDNAと共に混合し、68℃で一晩ハイブリダイズさせた。その後、第二のハイブリダイゼーションを、200μlの20mM Hepe、pH8.3、50mM NaCl、0.2mM EDTA中で希釈し、70℃で7分間加熱し、−20℃で保存した。
SSHから生成した遺伝子断片のPCR増幅、クローニング及びシークエンシング(配列決定):
二つのPCR増幅を行って、SSH反応から生ずる遺伝子断片を増幅した。一次PCR反応において1μlの希釈した最終ハイブリダイゼーション混合物を1μlのPCRプライマー1(10μM)、0.5μl dNTP混合物(10μM)、2.5μl 10×反応バッファ(CLONTECH)及び0.5μl 50倍アドバンテージcDNAポリメラーゼミックス(50×Advantage cDNA polymerase Mix)(CLONTECH)に、最終容積25μlで、加えた。PCR1を、下記条件により行った:75℃5分間、94℃25秒間、その後94℃10秒間、66℃30秒間、72℃1.5分間の27サイクル。各実験として、5つの分離一次PCR反応を行った。産物をプールし、水を用いて1:10に希釈した。二次PCR反応として、プールしかつ希釈した一次PCR反応からの1μlを、プライマーNP1及びNP2(10μM)をPCRプライマー1の代わりに使用することを除いて、PCR1として使用した反応混合液と同一のものに加えた。PCR2を、94℃10秒間、68℃30秒間、及び72℃1.5分間の10−12サイクルで行った。PCR産物を、2%アガロースゲル電気泳動によって分析した。
PCR産物を、T/Aベクタークローニングキット(Invitrogen)を用いて、pCR2.1中に挿入した。形質転換した大腸菌を、青色/白色及びアンピシリン選択に付した。白色コロニーを選び取り、96ウェルプレート中に配列させ、一晩液体培養にて増殖させた。プライマーとしてNP1及びNP2を使用し、PCR1の条件により1mlの菌液についてPCR増幅を行って、複数の挿入断片を同定した。PCR産物を、2%アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
菌液を、96ウェルフォーマット内の20%グリセロール中で保存した。プラスミドDNAを調製し、配列決定し、GenBank、dBest及びNCl−CGAPデータベースの核酸ホモロジー検索に付した。
RT−PCR発現分析:
第一ストランドcDNAを、ギブコBRL(GibcoBRL)スーパースクリプトプレアンプリフィケーションシステム(Superscript Preamprification sysem)を用いて、オリゴ(チミジン(dT))12−18初回免疫で、1μgのmRNAから生成することができる。逆転写酵素を用いる42℃で50分間のインキュベーション、次いで37℃で20分間リボヌクレアーゼH処理をすることを含む製造プロトコルを用いた。反応を完了した後、標準化する前に容積を水で200μlまで増加することができる。16の異なる正常(健常)ヒト組織からの第一ストランドcDNAについては、クロンテック社から得ることができる。
多様な組織からの第一ストランドcDNAの標準化を、プライマー5'atatcgccgcgctcgtcgtcgacaa3'(配列番号:36)及び5'agccacacgcagctcattgtagaagg 3' (配列番号:37)を用いて行って、β−アクチンを増幅した。第一ストランドcDNA(5μl)を、0.4μMプライマー、0.2μM各dNTP、1XPCRバッファ(Clontech、10mMトリス塩酸、1.5mMのMgCl2、50mMのKCl、pH8.3)及び1×クレノウDNAポリメラーゼ(クロンテック社)を含有させて全容積50μlで、増幅させた。5μlのPCR反応物を、18、20及び22サイクルで取り除くことができ、アガロースゲル電気泳動に使用することができる。PCRを、下記の条件下、MJリサーチサーマルサイクラーを用いて行った:初期変性を94℃で15秒間とし、その後94℃で15、65℃で2分間、72℃で5秒間の18、20、及び22サイクルにすることができる。72℃での最終延長を、2分間実施した。アガロースゲル電気泳動後、多様な組織からの複数の283塩基対のβ−アクチンバンドの吸収帯強度を目視により比較した。第一ストランドcDNAの希釈倍率を計算して、PCRの22サイクル後の全組織における相当するβ−アクチンの吸収帯強度を得た。22サイクルのPCR後の全組織における相当するβ−アクチンの吸収帯強度を得るため、標準化の3つのラウンドが要求される。
5μlの標準化した第一ストランドDNAを26、及び30サイクルの増幅によるPCRによって分析して、158P1D7遺伝子の発現レベルを測定した。光吸収帯強度(light band intensity)を与えるサイクル数でのPCR産物を比較することによって、半定量発現分析(Semi-quantitative expression analysis)を行うことができる。RT−PCRとして使用したプライマーを、158P1D7 SSH塩基配列を用いてデザインした。これを以下に列挙する:
158P1D7.1
5'ATAAGCTTTCAATGTTGCGCTCCT3'(配列番号:38)
158P1D7.2
5'TGTCAACTAAGACCACGTCCATTC3'(配列番号:39)
代表的なRT−PCR発現分析を図6に示す。生成した複数の第一ストランドcDNAについて、多様なサンプルからの組織のプールを用いて、RT−PCR発現分析を、行った。cDNAは、ベータアクチンPCRを用いて標準化して表した。158P1D7の発現を、膀胱癌プールにおいて観察した。
[実施例2]158P1D7の完全長クローニング
158P1D7 SSH cDNA塩基配列は、膀胱癌プールから正常膀胱cDNAを差し引いたサブトラクションから由来した。SSH cDNA塩基配列(図1)を、158P1D7とした。完全長cDNAクローン158P1D7−クローン、ターボスクリプト3PX(TurboScript3PX)(図2)を膀胱癌プールcDNAからクローン化した。
158P1D7クローンcDNAを、2001年8月22日にブダペスト条約の約定の下、プラスミドp158P1D7−ターボ(Turbo)/3PXとして、アメリカタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(ATCC:10801 ブルヴァール大学(University Blvd.)、マナッサス、ヴァージニア州20110−2209 米国))に寄託し、受託番号PTA−3662に指定された。
[実施例3]158P1D7の染色体地図作成
染色体の局在性は、病気の発生と遺伝子を結びつけることができる。いくつかの染色体地図作成(位置付け)の方法があり、それらは、蛍光性インサイツハイブリダイゼーション(fluorescent in situ hybridization (FISH))、ヒト/ハムスター放射線ハイブリッド(radiation hybrid(RH))パネル(Walter et al., 1994; Nature Genetics 7:22; Research Genetics,ハンツヴィル(Huntsville)アラバマ州(AI))、コリエルインスティチュート(Coriell Institute)(キャムデン、ニュージャージー州)から入手できるようなヒト−げっ歯類体細胞ハイブリッド(雑種)パネル、及びBLASTを配列決定かつ地図作成したゲノミッククローンに利用するゲノムビューアー(NCBI、ベセズダ、メリーランド州)を含む。
158P1D7は、158P1D7塩基配列及びNCBI BLASTツール:(www (world wide web) URL ncbi.nlm.nih.gov/genom.seq/page.cgi?F=HsBlast.html&&ORG=Hs))を用いて染色体13に位置付けられる。これは、膀胱癌における高頻度増幅の領域(Prat et al.,Urology 2001 May;57(5):986-92; Muscheck et al., Carcinogenesis 2000 Sep;21(9):1721-26)であり、進行型膀胱癌における急速な腫瘍細胞の増殖と付随している(Tomovska et al. Int J Oncol 2001 Jun; 18(6):1239-44)。
[実施例4]正常組織及び患者標本における158P1D7の発現分析
RT−PCRによる158P1D7の分析を、図6に示す。158P1D7の強い発現が、膀胱癌プール及び乳癌プールにおいて観察される。より低いレベルの発現が、VP1、VP2、異種移植片プール、前立腺癌プール、結腸癌プール、肺癌プール、卵巣癌プール、及び転移プールにおいて、観察される。
16のヒト正常組織における158P1D7の広域ノーザンブロット分析(extensive northern brot analysis)によって、RT−PCRにより観察される発現が裏づけられる(図7)。約4.6及び4.2kbの二つの転写産物が前立腺において検出され、心臓、胎盤、肝臓、小腸及び結腸においてはより低いレベルで検出される。
患者腫瘍標本についてのノーザンブロット分析により、試験したほとんどの膀胱腫瘍組織において、及び膀胱癌株細胞SCaBERにおいて、158P1D7の発現が確認される(図8A及び8B)。正常な組織(健康なドナーから単離されたもの)ではなく、正常な隣接組織(患者から単離されたもの)において認められる発現によって、これらの組織が完全に正常でないこと、及び158P1D7が初期段階の腫瘍において発現される可能性があることが示されるかもしれない。158P1D7の発現が、4つのうち2つの肺癌株細胞、及び試験した全ての3つの肺癌組織においても認められる(図9)。乳癌サンプルに関し、158P1D7の発現が、MCF7及びCAMA−1乳癌株細胞、乳癌患者から単離された乳房腫瘍組織において観察されるが、正常な乳房組織においては観察されない(図10)。158P1D7は、メラノーマ癌において発現をする。RNAを正常な皮膚株細胞、デトロイト−551(Detroit−551)、及びメラノーマ癌株細胞A375から抽出した。10ugの全RNAを用いるノーザンブロットは、158P1D7 DNAプローブでプローブされた。結果として、メラノーマ癌株細胞において158P1D7の発現が確認されるが、その正常な株細胞においては確認されない(図20)。158P1D7は、頚部癌患者標本において発現をする。第一ストランドcDNAを、正常な頚部、頚部癌株細胞Hela、及び頚部癌患者標本のパネルから調製した。アクチン及びGAPDHに対するプライマーを用いて、PCRによって、標準化を行った。158P1D7に対するプライマーを用いて、26及び30サイクルの増幅で、半定量PCRを行った。結果として、試験した腫瘍標本の14個中3個において158P1D7の発現が確認されるが、正常な頚部においてもその株細胞においても確認されない(図21)。
正常な組織における158P1D7の発現の制限、及び前立腺癌、膀胱癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌、乳癌、メラノーマ癌、及び頚部癌において認められる発現は、158P1D7がヒト癌のための潜在的治療の標的(ターゲット)及び診断マーカーであることが示唆する。
[実施例5]原核系における組換え型158P1D7の製造
完全又は部分長158P1D7及び158P1D7変異体cDNA塩基配列を各種の公知の発現ベクターの何れかにクローン化して、原核細胞において組換え型158P1D7及び158P1D7変異体を発現させる。1又はそれ以上の下記領域の158P1D7変異体が発現される:図2及び3、又は8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の何れかに示した完全長シーケンス、或いは、158P1D7、変異体、又はこれらの類似物からの、より近接するアミノ酸。
A.インビトロ転写及び翻訳構築物:
pCRII:
RNAインサイツ解析用の158P1D7センス及びアンチセンスRNAプローブを生成させるため、158P1D7cDNAの全部又は断片をコード化したpCRII構築物(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)を作製した。pCRIIベクターには、RNAインサイツハイブリダイゼーション実験におけるプローブとして使用するための158P1D7RNAの転写を推進するため挿入断片に隣接するSp6及びT7プロモーターがある。これらのプローブは、RNAレベルでの158P1D7の細胞及び組織発現を分析するために使用される。158P1D7遺伝子のcDNAアミノ酸コード領域を表す転写された158P1D7RNAが、TnTTMCoupled Reticulolysate System(Promega、Corp.、マディソン、ウィスコンシン州)等の生体外翻訳システムにおいて使用され、158P1D7タンパク質が合成される。
B.細菌用構築物:
pGEX構築物:
グルタチオンS−トランスフェラーゼタンパク質に融合する細菌における組換え型158P1D7タンパク質を生成させるために、158P1D7cDNAのタンパク質コード配列の全部又は一部を、pGEXファミリーのGST融合ベクター(Amasham Pharmasia Biotech、ピスカタウェー、ニュージャージー州)にクローン化して。これらの構築物は、アミノ末端で融合したGST及びカルボキシル末端での6つのヒスチジンエピトープ(6×His)を含む組換え型158P1D7タンパク質シーケンスの発現の制御を可能にする。GST及び6×Hisタグは、適当なアフィニティマトリックスを用いて誘導した細菌からの組換え型融合タンパク質の精製を可能にし、並びに抗GST及び抗6×His抗体を含む融合タンパク質の認識を可能にする。6×Hisタグは、6ヒスチジンコドンを3’末端で、例えば、翻訳領域(ORF)のクローニングプライマーに付加することによって生成される。pGEX−6P−1におけるPreScissionTM認識部位等のタンパク質分解切断部位は、158P1D7関連タンパク質からGSTタグの切断を可能にするように用いてもよい。アンピシリン耐性遺伝子及びpBR322開始点は大腸菌におけるpGEXプラスミドの選択及び維持を可能にする。
pMAL構築物:
マルトース結合タンパク質(MBP)遺伝子に融合させて、細菌においてマルトース結合タンパク質(MBP)に融合する組換え型158P1D7タンパク質を生成するために、158P1D7cDNAタンパク質のコード配列の全部又は一部をpMAL−c2X及びpMAL−p2XベクターへのクローニングによってMBPと融合させた。これらの構築物は、アミノ末端で融合したMBP及びカルボキシル末端での6つのヒスチジン(His)エピトープタグを含む組換え型158P1D7タンパク質シーケンスの発現の制御を可能にする。MBP及び6X Hisタグは、適当なアフィニティマトリックスを用いて誘導した細菌からの組換え型タンパク質の精製を可能にし、並びに抗MBP及び抗6X His抗体を含む融合タンパク質の認識を可能にする。6X Hisエピトープタグは、6ヒスチジンコドンを3’末端のクローニングプライマーに付加することによって生成される。第Xa因子認識部位は、158P1D7からのpMALタグの切断を可能にする。pMAL−c2X及びpMAL−c2Xベクターを最適化して、細胞質又はペリプラズムのそれぞれにおいて組換えタンパク質を発現させる。ペリプラズム発現は、ジスルフィド結合を含むタンパク質のフォールディングを高める。158P1D7変異体1のアミノ酸356−608は、pMALc2Xベクターにクローン化されている。
pET構築物:
158P1D7cDNAタンパク質コード配列の全部又は一部を、pETファミリー(ノバジェン、マディソン、ウィスコンシン州)のベクターにクローン化して、細菌細胞において158P1D7を発現させる。これらのベクターは、NusA及びチオレドキシン(Trx)等の溶解性を高めるタンパク質、並びに組換えタンパク質の精製及び検出を助ける6×His及びS−TagTM等のエピトープタグに対する融合の有無によらず細菌における組換え型158P1D7タンパク質の発現の厳密な制御を可能にする。例えば、構築物は、158P1D7タンパク質の領域がNusAに対するアミノ末端融合物として発現されるようにpET NusA融合系43.1を利用して、作成される。
C.酵母構築物:
pESC構築物:
158P1D7cDNAタンパク質コード配列の全部又は一部を、それぞれが4つの選択可能なマーカー、HIS3、TRP1、LEU2、及びURA3(Stratagene、ラホーヤ、カリフォルニア州)のうち1つを含むpESCファミリーのベクターにクローン化して、組換えタンパク質の生成及び基礎研究のため酵母種Saccharomyces cerevisiaeにおいて158P1D7を発現させる。これらのベクターは、2つの異なる遺伝子まで同一のプラスミド、或いは同一の酵母細胞中のFlagTM又はMycエピトープタグのどちらかを含むクローン化したシーケンスからの発現の制限を可能にする。この系は、158P1D7のタンパク質−タンパク質相互作用を確認するのに有用である。さらに、酵母における発現は、真核細胞において発現したときに認められる糖鎖形成及びリン酸化等のより小さい翻訳後修飾(post-translational modification)を生ずる。
pESC構築物:
158P1D7cDNAタンパク質コード配列の全部又は一部を、pESPファミリーのベクターにクローン化して、酵母種Saccharomyces pombeにおいて158P1D7を発現させる。これらのベクターは、組換えタンパク質の精製を助けるGSTにアミノ末端又はカルボキシル末端のどちらかで融合する158P1D7のタンパク質シーケンスの高レベルの発現の制御を可能にする。FlagTMエピトープタグは、抗FlagTM抗体を含む組換えタンパク質の検出を可能にする。
[実施例6]真核系における組換え型158P1D7の製造
A.哺乳類構築物:
完全又は部分長158P1D7cDNA塩基配列を各種の公知の発現ベクターの何れかにクローン化して、真核細胞において組換え型158P1D7を発現させた。158P1D7の下記領域の1又はそれ以上を、これらの構築物、アミノ酸1〜841、又は158P1D7 v.1からの8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の何れか若しくはそれ以上の近接するアミノ酸;v.3のアミノ酸1〜732;v.4のアミノ酸1〜395;v.6のアミノ酸1〜529;又は158P1D7変異体からの8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の何れか若しくはそれ以上の近接するアミノ酸、或いはこれらの類似物において、発現させた。
構築物は、293T細胞等の広範な各種の哺乳類細胞の何れかに形質移入されうる。形質移入された293T細胞溶解産物は、本願において記載した、抗158P1D7ポリクローナル血清でプローブされうる。
pcDNA4/HisMax構築物:
158P1D7の158P1D7ORF、又はその部分をpcDNA/HisMax Version A(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)にクローン化して、哺乳類細胞において組換え型158P1D7を発現させる。タンパク質発現がサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及びSP16翻訳エンハンサーにより推進される。組換えタンパク質には、XpressTM、及びアミノ末端に融合する6ヒスチジン(6X His)エピトープがある。pcDNA/HisMaxベクターは、エピソームの複製のためのSV40開始点及びラージT抗原を発現する株細胞における単純ベクターレスキュー(simple vector rescue)と共に、mRNA安定性を高めるためウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル及び転写終結シーケンスも含む。ゼオシン(Zeocin)耐性遺伝子は、当該タンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピシリン耐性遺伝子とコリシンE1オリジンは、大腸菌におけるプラスミドの選択及び維持を可能にする。
pcDNA3.1/MycHis構築物:
コンセンサスKozak翻訳開始部位を含む158P1D7の158P1D7 ORF、又はその部分をpcDNA3.1/MycHis Version A(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)にクローン化して、哺乳類細胞において158P1D7を発現させた。タンパク質発現がサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターにより推進された。組換え型タンパク質には、mycエピトープ、及びカルボキシル末端に融合する6X Hisエピトープがある。pcDNA3.1/MycHisベクターは、エピソームの複製のためのSV40開始点及びラージT抗原を発現する株細胞における単純ベクターレスキュー(simple vector rescue)と共に、mRNA安定性を高めるためウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル及び転写終結シーケンスも含む。ネオマイシン耐性遺伝子は当該タンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピシリン耐性遺伝子とコリシンE1オリジンは、大腸菌におけるプラスミドの選択及び維持を可能にする。
158P1D7 v.1の完全なORFを、pcDNA3.1/MycHis構築物にクローン化して、158P1D7.pcDNA3.1/MycHisを生成した。図23は、293T細胞への形質移入後の158P1D7.pcDNA3.1/MycHisの発現を示す。293T細胞を、158P1D7.pcDNA3.1/MycHis又はpcDNA3.1/MycHisベクター制御して形質移入した。40時間後、細胞を採取し、抗158P1D7モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより分析した。結果として、形質移入した細胞の表面上において158P1D7.pcDNA3.1/MycHis構築物からの158P1D7の発現が確認される。
pcDNA3.1/CT−GFP−TOPO構築物:
コンセンサスKozak翻訳開始部位を含む158P1D7 ORF、又はその部分をpcDNA3.1/CT−GFP−TOPO(Invitrogen、カリフォルニア州)にクローン化して、哺乳類細胞において158P1D7を発現させ、蛍光性を用いて組換えタンパク質の検出を可能にさせる。タンパク質発現はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターにより推進される。組換え型タンパク質には、非観血的な、生体外検出及び細胞生物学研究を促進するカルボキシル末端に融合した緑色蛍光タンパク質(GFP)がある。pcDNA3.1/CT−GFP−TOPOベクターは、エピソームの複製のためのSV40開始点及びラージT抗原を発現する株細胞における単純ベクターレスキュー(simple vector rescue)と共に、mRNA安定性を高めるためウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル及び転写終結シーケンスも含む。ネオマイシン耐性遺伝子は当該タンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピシリン耐性遺伝子とコリシンE1オリジンは、大腸菌におけるプラスミドの選択及び維持を可能にする。アミノ末端GFP融合をしたその他の構築物は、158P1D7タンパク質の全長に及ぶpcDNA3.1/CT−GFP−TOPO中で作成される。
PAPtag:
158P1D7 ORF、又はその部分をpAPtag−5(GenHunter Corp.、ナッシュヴィル、テネシー州)にクローン化する。この構築物は、アミノ末端にIgGKシグナル配列を融合させている間、158P1D7タンパク質のカルボキシル末端でアルカリホスファターゼ融合を生成する。アミノ末端IgGKシグナル配列を含むアルカリホスファターゼが158P1D7タンパク質のアミノ末端に融合した構築物も生成される。生ずる組換え型158P1D7タンパク質は、形質移入した哺乳類細胞の培養液中への分泌のため最適化され、158P1D7タンパク質と相互に作用するリガンドやレセプター等のタンパク質を同定するために使用されうる。タンパク質発現は、CMVプロモーターにより推進され、組換えタンパク質には、検出及び精製を促進するカルボキシル末端に融合したmyc及び6X Hisも含まれる。ベクター中に存在するゼオシン耐性遺伝子は、組換え型タンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピリシン耐性遺伝子は、大腸菌におけるプラスミドの選択を可能にする。
pTag5:
158P1D7 ORF、又はその部分をpTag−5にクローン化する。この構築物は、pAPtag−5に類似するが、アルカリホスファターゼ融合をしない。この構築物は、検出及び親和性精製を促進するアミノ末端IgGKシグナル配列並びにカルボキシル末端でのmyc及び6X Hisエピトープタグを含む158P1D7タンパク質を生成した。生ずる組換え型158P1D7タンパク質は、形質移入した哺乳類細胞の培養液中への分泌のため最適化され、158P1D7タンパク質と相互に作用するリガンドやレセプター等のタンパク質を同定するための免疫原又はリガンドとして使用された。タンパク質発現は、CMVプロモーターにより推進される。ベクター中に存在するゼオシン耐性遺伝子は、組換えタンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピリシン耐性遺伝子は、大腸菌におけるプラスミドの選択を可能にする。
158P1D7v.1の細胞外ドメイン、アミノ酸16−608、27−300、及び301−608をpTag5構築物にクローン化して、158P1D7(16−608).pTag5、158P1D7(27−300).pTag5、及び158P1D7(301−608).pTag5のそれぞれを生成させた。293T細胞へのベクター移入後、158P1D7の細胞外ドメインの各種セグメントの発現及び分泌が確認された。
PsecFc:
158P1D7ORF、又はその部分もpsecFcにクローン化した。psecFcベクターを、ヒト免疫グロブリンG1(IgG)Fc(ヒンジ、CH2、CH3領域)をpSecTag2(Invitrogen、カリフォルニア州)へクローニングすることによって、構築した。この構築物は、N末端にIgGKシグナル配列を融合させている間、158P1D7タンパク質のカルボキシル末端でIgG1Fc融合を生成する。マウスのIgG1 Fc領域を利用する158P1D7融合も使用する。生ずる組換え型158P1D7タンパク質は、形質移入した哺乳類細胞の培養液中への分泌のため最適化され、158P1D7タンパク質と相互に作用するリガンドやレセプター等のタンパク質を同定するため又は免疫原として使用されうる。タンパク質発現は、CMVプロモーターにより推進される。ベクター中に存在するハイグロマイシン耐性遺伝子は、組換えタンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピシリン耐性遺伝子は、大腸菌におけるプラスミドの選択を可能にする。
158P1D7v.1の細胞外ドメインアミノ酸16−608をpsecFc構築物にクローン化して、158P1D7(16−608).psecFcを生成させた。
pSRα構築物:
158P1D7ORF、又はその部分をpSRα構築物にクローン化して、恒常的に158P1D7を発現する哺乳類株細胞を生成させた。アンホトロピックなレトロウイルス及びエコトロピックなレトロウイルスを、293T−10A1パッケージング系へのpSRα構築物の形質移入又は293細胞へのpSRα構築物及びヘルパープラスミド(除去されたパッケージングシークエンスを含む)の同時形質移入により、それぞれ生成させた。レトロウイルスは、クローン化した遺伝子、158P1D7の宿主細胞株への組込みをして、各種哺乳類株細胞を感染させるために使用される。タンパク質発現は、ロングターミナルリピート(LTR))により推進される。ベクター中に存在するネオマイシン耐性遺伝子は、タンパク質を発現する哺乳類細胞の選択を可能にし、アンピシリン耐性遺伝子及びコリシンE1オリジンは、大腸菌におけるプラスミドの選択及び維持を可能にする。その後、レトロウイルスベクターは、例えば、PC3、NIH 3T3、TsuPr1、293又はrat−1細胞を用いて各種株細胞の感染及び生成をさせるために使用されうる。
完全な158P1D7v.1のORFを、pSRα構築物にクローン化して、158P1D7.pSRαを生成させた。図23は、UMUC3細胞への形質導入後の158P1D7.pSRαの発現を示す。UMUC−3細胞を、158P1D7.pSRα又はベクター制御により形質導入した。40時間後、細胞を採取し、抗158P1D7モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより分析した。結果として、細胞の表面上における158P1D7.pSRα構築物からの158P1D7の発現が確認される。
抗Flag抗体を用いて検出を可能にするため、FLAGTMタグ等のエピトープタグを158P1D7塩基配列のカルボキシル末端に融合するその他のpSRα構築物を作成する。例えば、FLAGTMシーケンス5’gat tac aag gat gac gac gat aag 3’(配列番号:40)をORFの3’末端でクローニングプライマーに付加する。その他のpSRα構築物を作成して、完全長158P1D7タンパク質のアミノ末端及びカルボキシル末端の両方のGFP及びmyc/6×His融合タンパク質を製造する。
その他のウイルスベクター:
ウイルス媒介送達(viral-mediated delivery)及び158P1D7の発現のため、その他の構築物を作成する。アデノウイルスベクター及びヘルペス単位複製配列ベクター等のウイルス送達系において、158P1D7の高レベルの発現を引き起こす高ウイルスタイターにする。158P1D7コード配列又はその断片をPCRにより増幅し、AsEasyシャトルベクター(Stratagene)にサブクローニングする。製造指示書に従って、組換え及びウイルスパッケージングをして、アデノウイルスベクターを生成する。一方、158P1D7コード配列又はその断片をHSV−1ベクター(Imgenex)にクローン化して、ヘルペスウイルスベクターを生成する。その後、ウイルスベクターは、PC3、NIH3T3、293又はrat−1細胞等の各種株細胞の感染のために使用される。
調節発現系:
158P1D7のコード配列、又はその部分をT−Rex系(T-Rex System)(Invitrogen)、GeneSwitch系(GeneSwitch System)及び厳密制限したエクジソン系(Ecdysome System)(Stratagene)等の調節哺乳類発現系にクローン化して、哺乳類細胞における158P1D7の発現を制御する。これらの系は、一時的な及び濃度依存している組換え型158P1D7の効果の研究を可能にする。その後、これらのベクターは、PC3、NIH 3T3、293又はrat−1細胞等の各種株細胞における158P1D7の発現を制御するために使用される。
B.バキュロウイルス発現系
158P1D7ORF、又はその部分を、N末端でHis−タグを与えるバキュロウイルストランスファーベクターpBlueBac4.5(Invitrogen)にクローン化して、バキュロウイルス発現系において組換え型158P1D7タンパク質を生成させる。具体的には、pBlueBac−158P1D7を、SF9(Spodoptera frugiperda)昆虫細胞にヘルパープラスミドpBac−N−Blue(Invitrogen)を用いて同時形質移入して、組換え型バクロウイルスを生成させる(詳細についてはInvitrogenの指示マニュアル参照)。その後、バキュロウイルスは、細胞上清から採取され、プラークアッセイ(試験)により精製される。
その後、組換え型158P1D7タンパク質を、HighFive昆虫細胞(Invitrogen)を精製したバキュロウイルスに感染させることにより、生成させる。158P1D7に対して特異的なポリクローナル及びモノクローナル抗体を生成するため、組換え型158P1D7タンパク質は、精製されうるが、各種細胞ベースアッセイにおいて又は免疫原として使用されうる。
[実施例7]抗原性プロファイル及び二次構造
図11(a)−(d)、図12(a)−(d)、図13(a)−(d)、図14(a)−(d)、及び図15(a)−(d)は、158P1D7タンパク質変異体1、3、4、及び6のそれぞれの5つのアミノ酸プロファイル、ExPasy分子生物学サーバー上のwww(.expasy.ch/cgi-bin/protscale.pl)で検索されるProtScaleウェブサイトにアクセスして入手できる各評価を図示する。
これらのプロファイル:図11、親水性、(Hopp T.P., Woods K.R., 1981. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78: 3824-3828);図12、疎水性親水性指標(hydropathicity)、(Kyte J., Doolittle R.F., 1982. J.Mol.Biol. 157: 105-132);図13、Percentage Accessible Residue(Janin J., 1979 Nature 277:491-492);図14、平均自由度(Average Flexibility)(Bhaskaran R., 及びPonnuswamy P.K., 1988. Int. J. Pept. Protein Res. 32:242-255);図15、ベータターン(Beta-turn)(Deleage, G., Roux B. 1987 Protein Engineering 1:289-294);及び任意にProtScaleウェブサイト等の技術として入手できるこれ以外もの、を使用して、158P1D7変異タンパク質のそれぞれの抗原領域を同定した。158P1D7変異体の上記アミノ酸プロファイルのそれぞれを、分析のため下記ProtScaleパラメータを用いて生成した:1)9のウィンドサイズ;2)ウィンドセンターに比較して100%重量のウィンドエッジ;並びに3)0と1の間になるよう標準化したアミノ酸プロファイル値。
親水性(図11)、疎水性親水性指標(図12)及びPercentage Accessible Residue(図13)プロファイルを用いて、親水性アミノ酸のストレッチを決定した(すなわち、親水性及びPercentage Accessible Residueプロファイルにおいて0.5より大きい値、及び疎水性親水性指標プロファイルにおいて0.5より小さい値)。そのような領域は、水性環境にさらされ、タンパク質の表面上に存在する可能性があり、それゆえ抗体による等の、免疫認識に有用である。
平均自由度(図14)及びベータターン(図15)プロファイルはベータシート及びアルファヘリックス等の二次構造に限定されないアミノ酸(すなわち、ベータターンプロファイル及び平均自由度プロファイルにおいて0.5より大きい値)のストレッチを決定する。そのような領域も、タンパク質にさらされる可能性がよりあり、それゆえ抗体による等の免疫認識に有用である。
例えば図11(a)−(d)、図12(a)−(d)、図13(a)−(d)、図14(a)−(d)、及び図15(a)−(d)に示されるプロファイルにより表される158P1D7変異タンパク質の抗原シーケンスを用いて、免疫原、それらをコード化するペプチド又は核酸のどちらかを製造し、治療用及び診断用抗158P1D7抗体を生成させる。免疫原は、図2及び3に列挙された158P1D7タンパク質変異体からの、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50の何れか又は50以上の連続するアミノ酸、或いはそれらをコード化する対応する核酸でありうる。特に、本発明のペプチド免疫原は、図11の親水性プロファイルにおいて0.5より大きい値を有するアミノ酸位置を含むように任意の整数で増加する図2及び3の少なくとの5つのアミノ酸のペプチド領域;図12の疎水性親水性指標プロファイルにおいて0.5より小さい値を有するアミノ酸位置を含むように任意の整数で増加する図2及び3の少なくとの5つのアミノ酸のペプチド領域;図13のパーセント接触可能残基プロファイルにおいて0.5より大きい値を有するアミノ酸位置を含むように任意の整数で増加する図2及び3の少なくとの5つのアミノ酸のペプチド領域;図14における平均自由度プロファイルにおいて0.5より大きい値を有するアミノ酸位置を含むように任意の整数で増加する図2及び3の少なくとの5つのアミノ酸のペプチド領域;及び、図15のベータターンプロファイルにおいて0.5より大きい値を有するアミノ酸位置を含むように任意の整数で増加する図2及び3の少なくとの5つのアミノ酸のペプチド領域を含むことができる。本発明のペプチド免疫原は、前出のいくつかをコード化する核酸をも含むことができる。
本発明の全免疫原、ペプチド又は核酸を、ヒト単位の投与形態にすることができ、或いはヒトの生理機能に適合する製薬上の賦形剤を含む組成物で構成することができる。
158P1D7タンパク質変異体1、3、4、及び6の二次構造、すなわち、アルファヘリックスの予想される存在及び位置、伸長ストランド(extended strand)及びランダムコイルは、ExPasy分子生物学サーバー(http://www.expasy.ch/tools/)からアクセスされるHNN−階層ニューラルネットワーク法(HNN-Hierarchical Neural Network method)(NPS@:Network Protein Sequence Analysis TIBS 2000 March Vol.25, No 3[291]: 147-150 Combet C., Blanchet C., Geourjon C. 及びDeleage G., http://pbil.ibcp.fr/cgi-bin/npsa_automat.pl?page=npsa_nn.html)を用いて一次アミノ酸配列から予想される。分析から、158P1D7変異体1が35.32%のアルファヘリックス、15.93%の伸長ストランド、及び48.75%のランダムコイルで構成されることが示される(図16A)。変異体3は、34.97%のアルファヘリックス、16.94%の伸長ストランド、及び48.09%のランダムコイルで構成される(図16B)。変異体4は、24.56%のアルファヘリックス、20.76%の伸長ストランド、及び54.68%のランダムコイルで構成される(図16C)。変異体6は、28.92%のアルファヘリックス、17.96%の伸長ストランド、及び53.12%のランダムコイルで構成される(図16D)。
158P1D7変異タンパク質における膜内外に存在する電位差の分析を、ExPasy分子生物学サーバー(http://www.expasy.ch/tools/)からアクセスされる各種の膜内外予想アルゴリズム(transmembrane prediction algorithms)を用いて行った。TMpredプログラムによる変異体1、3、4、及び6の分析結果を、それぞれ図16E、16G、16I、16Kに図示する。TMHMMプログラムによる変異体1、3、4、及び6の結果を、それぞれ図16F、16H、16I、16Lに図示する。TMpredプログラム及びTMHMMプログラムの両方が、変異体1及び3における1膜内外ドメインの存在を予想する。変異体4及び6は、膜内外ドメインを含むと予想されない。全ての変異体は、疎水性アミノ酸配列のストレッチ(配列)を、シグナルペプチドをコード化してもよいそれらのアミノ末端で、含む。他の構造予想プログラムによる158P1D7及び158P1D7変異体の分析については、表56において概要を述べる。
[実施例8]158P1D7ポリクローナル抗体の生成
例えば、免疫化剤及び必要により、免疫賦活剤(アジュバント)の1又はそれ以上の注入によって、哺乳類において、ポリクローナル抗体が生じうる。一般的には、免疫化剤及び/又はアジュバントは、多様な皮下又は腹腔内注射により哺乳類に注射されるであろう。完全長の158P1D7タンパク質変異体で免疫化することに加えて、アミノ酸配列分析に基づき抗原性であり、免疫化した宿主の免疫系による認識に利用できるという特徴を含む免疫原のデザインに、コンピュータアルゴリズムが用いられる(「抗原性プロファイル及び二次構造」と題した実施例参照)。そのような領域は、親水性であり、自由(フレキシブル)であり、ベータターン高次構造にあると予想され、タンパク質の表面上に露出されると予想されるであろう(158P1D7タンパク質変異体1、3、4、及び6のそのような領域を示すアミノ酸プロファイルに関する図11、図12、図13、図14、又は図15参照)。
例えば、158P1D7タンパク質変異体の親水性で、自由な、ベータターンの領域を含む組換え型の細菌性融合タンパク質又はペプチドを抗原として使用して、ニュージーランドホワイトウサギ(New Zealand White rabbit)のポリクローナル抗体又は実施例9において記載されたモノクローナル抗体が生成される。例えば、158P1D7変異体1において、そのような領域は、アミノ酸25−45、アミノ酸250−385、及びアミノ酸694−730を含むが、これらに限定されない。それは、免疫化剤を、免疫化されている哺乳類において免疫原性であることが知られているタンパク質と結合させることに有用である。そのような抗原性タンパク質の例には、スカシガイヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれるが、これらに限定されない。一つの形態として、158P1D7変異体1のアミノ酸274−285をコード化するペプチドを合成し、KLHと結合させた。このペプチドは、その後、免疫原として使用される。一方、免疫化剤は、158P1D7変異タンパク質の全部若しくは一部、その類似物又は融合タンパク質を含んでもよい。例えば、158P1D7変異体1アミノ酸配列は、組換えDNA技術を用いて、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)及びHISタグ融合タンパク質等の、技術としてよく知られている各種融合タンパク質のパートナーの何れかと融合されうる。別の形態として、158P1D7変異体1のアミノ酸27−300は、組換え技術及びpGEX発現ベクターを用いてGSTと融合され、発現され、精製され、ウサギを免疫化するために使用される。そのような融合タンパク質は、適当なアフィニティーマトリックスを用いて誘導した細菌から精製される。
用いてもよい他の組換え型細菌性融合タンパク質には、マルトース結合タンパク質、LacZ、チオレドキシン、NusA、又は免疫グロブリン定常領域が含まれる(「原核系における158P1D7の製造」と題したセクション及び分子生物学におけるカレントプロトコル(Current Protocols In Molecular Biology)、Volume 2、Unit 16、Frederick M. Ausubulら編、1995; Linsley, P.S., Brady, W., Urnes, M., Grosmair,L., Damle, N., Ledbetter, L. (1991) J.Exp. Med. 174,561-566参照)。
細菌由来融合タンパク質に加えて、哺乳類発現タンパク質抗原も使用される。これらの抗原は、Tag5及びFc融合ベクター(「真核系における組換え型158P1D7の製造」と題したセクション参照)等の哺乳類発現ベクターから発現され、未変性タンパク質において認められる糖修飾等の翻訳後修飾を維持する。一つの形態として、158P1D7変異体1のアミノ酸16−608を、Tag5哺乳類分泌ベクターにクローン化し、293T細胞において発現させた。組換えタンパク質を、組換えベクターを安定して発現する293Tの組織培養上清から、金属キレートクロマトグラフィーにより精製した。精製したTag5158P1D7変異体1タンパク質は、その後免疫原として使用される。免疫化プロトコルを通じて、それは、抗原を、宿主動物の免疫応答を高めるアジュバントに混合又は乳化するのに有用である。アジュバントの例には、完全フロインドアジュバント(CFA)及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA)、合成トレハロースジコリノミコレートが含まれるが、これらに限定されない。
一般的なプロトコルでは、ウサギが、200μgまで、典型的には100−200μgの、完全フロインドアジュバント(CFA)中に混合したKLHと結合した融合タンパク質又はペプチドで、先ず皮下免疫化される。ウサギは、その後、2週間毎に、200μgまで、典型的には100−200μgの、不完全フロインドアジュバント(IFA)中の免疫原を皮下注射される。試験血(test bleed)は、各免疫化後、約7−10日とられ、ElISAにより抗血清のタイターをモニターするために使用される。
完全長158P1D7変異体1cDNAをpCDNA3.1myc−his発現ベクター(Invitrogen、「真核系における組換え型158P1D7の製造」と題した実施例参照)にクローン化して、158P1D7変異体1タンパク質のGST融合での免疫化から誘導したウサギ血清等の免疫血清の反応性及び特異性を試験する。293Tへの構築物の形質移入後、細胞ライセートを、抗158P1D7血清及び抗His抗体(Santa Cruz Biotechnologies、サンタクルーズ、カリフォルニア州)でプローブして、変性158P1D7タンパク質に対する特異的な反応性を、ウエスタンブロット技術を用いて測定する。さらに、免疫血清を、293T及び他の組換え型158P1D7発現細胞に対する螢光顕微鏡検査、フローサイトメトリー並びにイムノプレシピテーションにより試験して、未変性タンパク質の特異的な認識を測定する。内在的に158P1D7を発現する細胞を用いるウエスタンブロット、螢光顕微鏡検査、及びフローサイトメトリー技術も、反応性及び特異性を試験するために行われる。GST及びMBP融合タンパク質等の158P1D7変異融合タンパク質で免疫化したウサギからの抗血清は、融合パートナーを単独で又は無関係の融合タンパク質と関連して含むアフィニティーカラム中への通過による融合パートナーシーケンスに対する反応性の抗体の除去により精製される。例えば、GST−158P1D7変異体1融合タンパク質から誘導した抗血清は、AffiGelマトリックス(BioRad、Hercules、カリフォルニア)と共有結合したGSTタンパク質のカラム中への通過により先ず精製される。抗血清は、その後、Affigelマトリックスと共有結合したMBP−158P1D7から構成されるカラム中への通過によりアフィニティー精製される。血清は、その後さらにタンパク質Gアフィニティークロマトグラフィーにより精製されて、IgG画分が単離される。他のHisタグ抗原及びペプチド免疫化したウサギからの血清並びに融合パートナー除去血清は、原タンパク質免疫原又は遊離ペプチドから構成されるカラムマトリックス中への通過によりアフィニティー精製される。
[実施例9]158P1D7モノクローナル抗体(mAbs)の生成
一つの形態において、158P1D7変異体に対する治療mAbsは、各変異タンパク質に対して特異的な、或いは158P1D7変異体の生物学的機能を結びつけ、インターナライズし、妨害し、又は調節するであろう変異体、例えば、リガンドとの相互作用を妨害するであろう変異体と、結合パートナーとの間に共通したシーケンスに対して特異的なエピトープと反応するmAbsを含む。そのようなmAbsの生成のための免疫原には、細胞外ドメイン若しくは全158P1D7タンパク質変異体シーケンス、機能的モチーフを含むと予想される領域、並びにアミノ酸配列のコンピュータ分析から抗原性であると予想される158P1D7タンパク質変異体の領域をコード化する又は含むデザインされた免疫原が含まれる(例えば、図11、図12、図13、図14、又は図15、及び「抗原性プロファイル及び二次構造」と題した実施例参照)。免疫原には、ペプチド、組換え型細菌性タンパク質、及び哺乳類発現Tag5タンパク質並びにヒト及びマウスIgG FC融合タンパク質が含まれる。さらに、pTAG5タンパク質、293T−158P1D7変異体1又は3T3、RAT、又は300.19−158P1D7変異体1マウスPre−B細胞等の各158P1D7変異体を高レベルで発現するよう操作されたpTAG5細胞をコード化するDNAベクターを使用して、マウスを免疫化する。
158P1D7変異体に対するmAbsを生成させるため、マウスは、先ず、一般的には10−50μgのタンパク質免疫原又は完全フロインドアジュバント中に混合した107個の158P1D7発現細胞で、腹腔内(IP)免疫化される。マウスは、その後、続いて2−4週間毎一般的には10−50μgのタンパク質免疫原又は不完全フロインドアジュバント中に混合した107個の158P1D7発現細胞で、IP免疫化される。一方、MPL−TDMアジュバントが、免疫化において使用される。上記タンパク質及び細胞ベース免疫化ストラテジーに加えて、158P1D7変異体シーケンスをコード化する哺乳類発現ベクターを使用して、プラスミドDNAの直接注入によってマウスを免疫化する、DNAベース免疫化プロトコルが用いられる。例えば、変異体1の158P1D7のアミノ酸16−608をTag5哺乳類分泌ベクターにクローン化し、組換えベクターを免疫原として使用した。別の実施例として、同一のアミノ酸を、158P1D7変異体1シーケンスがアミノ末端でIgKリーダー配列と、カルボキシル末端でヒト又はマウスIgG Fc領域のコード配列と融合されるFC融合分泌ベクターにクローン化した。組換えベクターを、その後、免疫原として使用した。プラスミド免疫化プロトコルを、同一のベクターから発現した精製タンパク質と及び各158P1D7変異体を発現する細胞とを組み合わせて使用した。
免疫化プロトコルを通じて、試験血を、注射後、約7−10日とって、免疫応答のタイター及び特異性をモニターする。適当な反応性及び特異性が、ELISA、ウエスタンブロッティング、イムノプレシピテーション、螢光顕微鏡検査、及びフローサイトメトリー分析で測定して得られたら、その後、融合及びハイブリドーマ生成が、技術としてよく知られている確立した処理法で、行われる(例えば、Harlow及びLane、1988)。
158P1D7変異体1モノクローナル抗体を生成するための一つの形態として、アミノ酸274−285をコード化するペプチドを合成し、KLHと結合させ、免疫原として使用した。遊離ペプチドにおけるELSAを使用して、免疫反応性クローンを同定した。完全長158P1D7変異体1タンパク質に対するモノクローナル抗体の反応性及び特異性を、組換え型かつ内在性発現158P1D7変異体1細胞を用いて、ウエスタンブロッティング、イムノプレシピテーション、及びフローサイトメトリーによりモニターした(図22、23、24、25、及び28参照)。
158P1D7変異体1特異性モノクローナル抗体の結合親和力を、標準技術を用いて測定した。親和力測定は、結合しているエピトープに対する抗体の強度を数量化し、当業者において理解されているように、158P1D7変異体モノクローナル抗体が診断又は治療的使用に好ましいという規定を裏づけるために使用される。BIAcoreシステム(Uppsal、Sweden)は、結合親和力を測定するために、好ましい方法である。BIAcoreシステムは表面プラスモン共鳴((SPR),Welford K. 1991、 Opt. Quant, Elect. 23:1;Morton及びMyszka, 1998, Methods in Enzymology 295: 268)は、リアルタイムで生体分子相互作用をモニターするために、使用する。BIAcore分析から簡便に結合速度定数、解離速度定数、平衡解離定数、及びアフィニティ定数が得られる。158P1D7変異体1モノクローナル抗体のBIAcore分析の結果を表57に示す。
他の158P1D7変異体に特異的なモノクローナル抗体を生成させるため、変異体に特有のアミノ酸配列をコード化するように免疫原をデザインする。一つの形態として、変異体における選択的スプライシングにより生成する特有のシーケンスを含むペプチド又は細菌性融合タンパク質が、作成される。一つの例として、アミノ酸673−693等の、158P1D7変異体3におけるアミノ酸682及び683を含む連続したシーケンスをコード化するペプチドが使用される。別の形態として、アミノ酸369−391等の、158P1D7変異体6におけるアミノ酸379−381を含む連続したシーケンスをコード化するペプチドが使用される。抗体に特異的な各変異体を認識し、細胞において発現する完全長変異タンパク質をも認識するハイブリドーマが、その後選択される。そのような選択では、ウエスタンブロッティング、イムノプレシピテーション、及びフローサイトメトリー等の前記イムノアッセイが利用される。
下記プロトコルを用いて、158P1D7モノクローナル抗体を生成させた。5匹のBalb/cマウスを、2μgのQuiagen ImmumeEasyTMアジュバント中にあるペプチドを用いて皮下免疫化した。免疫化は、2週間隔離して行った。使用したペプチドは、C’末端でKLH(スカシガイヘモシアニン)と結合するシーケンスEEHEDPSGSLHL(配列番号:41)を有するアミノ酸274−285からなる12アミノ酸ペプチドであった。
免疫化したマウスの脾臓からのB細胞を、ポリエチレングリコールの影響下で、融合パートナーSp2/0を用いて、融合した。ハイブリドーマを製造する抗体を、ペプチドに対して特異的な結合を示すペプチド被覆ELISAプレートにおいてスクリーニングすることのよって、及びその後158P1D7を発現する細胞についてのFACSによって選択した。この製造及び同定した4つの158P1D7細胞外ドメイン(ECD)特異抗体を、M15−68(2)18.1.1;M15−68(2)22.1.1;M15−68(2)31.1.1及びM15−68(2)102.1.1と命名した。
M15−68(2)18.1.1と命名した抗体を、2004年2月6日に、アメリカタイプカルチャーコレクション(ATCC)、P.O.Box 1549、マナッサス、ヴァージニア州20110−2209に送った。これは、受諾番号PTA−5801に指定された。
これら4つの抗体の特徴を、表57に示す。
下記プロトコルを用いて、M15−68(2)18.1.1抗体をクローン化した。M15−68(2)18.1.1ハイブリドーマ細胞を、トリゾール試薬(Life Technologies、Gibco BRL)を用いて溶解させた。全RNAを、精製し、定量した。第一ストランドcDNAを、GibcoBRLスーパースクリプトプレ増幅システム(Superscript Preamplification System)を用いて、オリゴ(チミジン)12−18初回免疫で全RNAから生成させた。第一ストランドcDNAを、マウスIg可変重鎖プライマー、及びマウスIg可変軽鎖プライマーを用いて増幅した。PCR産物を、pCRScriptベクター(Stratagene、ラホーヤ)クローン化した。いくつかのクローンを、配列決定し、可変重(VH)及び可変軽(VL)鎖領域を測定した。M15−68(2)18.1.1可変重鎖及び可変軽鎖領域の核酸及びアミノ酸配列を、図34A及び34B並びに図35A及び35Bに示す。
[実施例10]HLAクラスI及びクラスII結合アッセイ
開示されたプロトコル(例えば、PCT公報WO94/20127及びWO94/03205;Sidney et al., Current Protocols in Immunology 18.3.1(1998);Sidney et al., J. Immunol. 154:247 (1995);Sette, et al., Mol. Immunol. 31:813(1994))に従って精製したHLA分子をを用いてHLAクラスI及びクラスII結合アッセイを行う。簡単には、精製したMHC分子(5〜500nM)が各種非標識ペプチドインヒビター及び前記1−10nMの125I−放射標識プローブペプチドとともにインキュベートされる。インキュベート後、MHCペプチド複合体を、ゲル濾過により遊離ペプチドから分離し、ペプチド結合の分画を測定する。一般には、予備実験として、各MHC調製物を固定量の放射標識ペプチドの存在下滴定して、全放射能の10−20%を結合するために必要なHLA分子の濃度を測定する。全後発阻害(all subsequent inhibition)及びダイレクト結合アッセイ(direct binding assay)を、これらのHLA濃度を用いて行う。
これらの条件[標識]<[HLA]及びIC50≧[HLA]の下から、測定したIC50値は、真のKD値の合理的な近似値である。ペプチドインヒビターは、一般には、120μg/mlから1.2ng/mlに及ぶ濃度で試験され、2〜4の完全に独立した実験で試験される。各試験したペプチド(典型的には放射標識プローブペプチドの非標識のもの)用のIC50の阻害のためのポジティブコントロールのIC50を動かすことにより各ペプチドについて相対結合数を計算して、異なる実験において得られたデータの比較を可能にする。データベースの目的、及び相互実験比較のため相対結合数を編集する。これらの値は、その後、対象となるペプチドの相対結合による阻害のためのポジティブコントロールのIC50nMを動かすことによりIC50nM値に入れて変換されうる。データ編集の方法は、異なる日に、又は精製したMHCの異なるロットについて試験したペプチドを比較することに対して、正確であり、一貫している
上記結合アッセイの概要を使用して、HLAスーパーモチーフ及び/又はHLAモチーフベアリングペプチドを分析してもよい。
[実施例11]HLAスーパーモチーフ及び/又はモチーフベアリングCTL候補エピトープの同定
本発明のHLAワクチン組成物は、多様なエピトープを含みうる。当該多様なエピトープは、多様なHLAスーパーモチーフ又はモチーフを含むことで、個体群適用範囲(population coverage)を広範にしうる。この実験により、そのようなワクチン組成物中の含有物のためスーパーモチーフ及びモチーフベアリングエピトープの同定並びに確認が示される。個体群適用範囲の計算は、以下に記載のストラテジーを用いて行われる。
スーパーモチーフ及び/又はモチーフベアリングエピトープの同定のためのコンピュータサーチ及びアルゴリズム
サーチを行って、「抗原性プロファイル」と題した実施例におけるモチーフベアリングペプチドシーケンスを同定した。表5〜18及び22〜49では、図2及び図3に示される158P1D7の遺伝子産物からのタンパク質シーケンスデータが使用される。
HLAクラスI又はクラスIIスーパーモチーフ又はモチーフを有するエピトープに対するコンピュータサーチは、下記のようにして行った。全翻訳した158P1D7タンパク質配列を、テキストストリングサーチプログラム(text string search program)を用いて分析して、適当なHLA結合モチーフを含むポテンシャルペプチドシーケンスを同定する;そのようなプログラムは、公知のモチーフ/スーパーモチーフの開示による技術情報に従って容易に作成される。さらに、そのような計算は、頭の中でなされうる。
同定したA2−、A3−、及びDR−スーパーモチーフシーケンスを、多項式アルゴリズムを用いて採点して、それらのHLAクラスI又はクラスII分子に結合する能力を予想する。これらの多項式アルゴリズムは、異なる位置での異なるアミノ酸の影響の原因であり、本質的にペプチドHLA分子の全親和力(又はΔG)がそのタイプの一次多項式関数として近似されうるという前提に基づいている:
“ΔG”=a1i×a2i×a3i......×ani
但し、ajiは、n個のアミノ酸のペプチドのシーケンスに沿った生じた位置(i)での生じたアミノ酸(j)の存在の効果を表す係数である。この方法の重大な仮定は、各位置での効果が本質的に互いに独立している(例えば、個々の側鎖の独立結合)というものである。ペプチドにおける位置iで残基jが生ずるとき、ペプチドの残部のシーケンスに関係なくペプチド結合の自由エネルギーに一定量jiを与えると考えられる。
特異的なアルゴリズム係数の導出の方法は、Gulukota et al., J. Mol. Biol. 267: 1258-126, 1997(Sidney et al., Human Immunol. 45:79-93,1996;及びSouthwood et al., J. Immunol. 160:3363-3373, 1998参照)に記載されている。簡単には、全i位置に対して、アンカー及び非アンカー同様に、jを持つ全ペプチドの平均相対結合(ARB)の幾何的な手段が、基の残部を基準として計算され、jiの概算として用いられる。クラスIIペプチドに対して、多様なアライメントが可能であれば、最も高い得点のアライメントのみが利用され、その後反復処理される。ペプチドのシーケンスに対応するARB値を増加させて、試験のセットにおいて生じたペプチドのアルゴリズムスコアを計算する。この産物が選択した閾値を超える場合は、ペプチドは結合すると予想される。適当な閾値は選択される。目的とする予想の厳密性の度合いの関数として選択される。
HLA−A2スーパータイプ交さ反応性ペプチドの選択
158P1D7からの完全なタンパク質シーケンスを、モチーフ同定ソフトウェアを利用してスキャンして、HLA−A2スーパーモチーフ主アンカー特異性を含む8−、9−、10−、又は11−マーシーケンスを同定する。一般に、これらのシーケンスは、その後前記記載のプロトコルを用いて採点され、ポジティブスコアリングシーケンスに対応するペプチドは合成され、生体外で精製したHLA−A*0201分子を結合させる能力について試験される(HLA−A*0201は、プロトタイプA2スーパータイプ分子と考えられる)。
これらのペプチドは、その後、別のA2スーパータイプ分子(A*0202、A*0203、A*0206、及びA*6802)と結合する能力について試験される。試験した5つのA2スーパータイプ対立遺伝子のうち少なくとも3つと結合するペプチドは、一般に、A2スーパータイプ交さ反応性結合とみなされる。好ましいペプチドは、3又はそれ以上のHLA−A2スーパータイプ分子と、同等か又は500nMより小さい親和力で結合する。
HLA−A3スーパーモチーフベアリングエピトープの選択
上記スキャンした158P1D7タンパク質シーケンスを、HLA−A3−スーパーモチーフ一次アンカーを有するペプチドの存在についても評価する。HLA A3スーパーモチーフベアリングシーケンスに対応するペプチドは、その後、合成され、HLA−A*0301及びHLA−A*1101分子との結合について試験される。その分子は二つの最も普及しているA3スーパータイプ対立遺伝子によってコード化した。≦500nM、多くの場合≦200nM、結合親和力で二つの対立遺伝子のうち少なくとも1つを結合するペプチドを、その後、他の一般的なA3スーパータイプ対立遺伝子(例えば、A*3101、A*3301、及びA*6801)に対する結合交さ反応性について試験して、試験した5つのHLA−A3−スーパータイプ分子のうち少なくとも3つを結合することができるペプチドを同定する。
HLA−B7スーパーモチーフベアリングエピトープの選択
158P1D7タンパク質は、HLA−B7−スーパーモチーフを有する8−、9−、10−、又は11−マーペプチドの存在についても分析される。対応するペプチドは、合成され、HLA−B*0702との結合について試験される。その分子は最も一般的なB7スーパータイプ対立遺伝子(すなわち、プロトタイプB7スーパータイプ対立遺伝子)によってコード化した。≦500nMのIC50を用いてB*702を結合するペプチドは、標準的な方法を用いて同定される。これらのペプチドは、その後他の共通のB7スーパータイプ分子(例えば、B*3501、B*5101、B*5301、及びB*5401)との結合のため試験される。それにより、試験した5つのB7スーパタイプ対立遺伝子のうち3又はそれ以上と結合可能なペプチドが同定される。
A1及びA24モチーフベアリングエピトープの選択
HLA−A1−及び−A24エピトープワクチン組成物に混合させて、さらに個体群適用範囲をも向上させることができる。158P1D7タンパク質の分析を行って、HLA−A1−及びA24−モチーフ含有シーケンスをも同定することができる。
他のモチーフ及び/又はスーパーモチーフを有する高親和力及び/又は交さ反応性結合エピトープは、類似の方法論を用いて同定される。
[実施例12]免疫原性の確認
本願において上記のように同定した交さ反応性候補CTLA2スーパーモチーフベアリングペプチドを選択して、生体外免疫原性を確認する。下記方法論を用いて確認を行う:
細胞スクリーニングの標的株細胞
HLA−A2.1遺伝子をHLA−A、−B、−C無発現変異ヒトB−リンパ芽球腫株細胞(null mutant human B-lymphoblastoid cell line)721:221に導入することにより製造した221A2.1株細胞を、ペプチド充填標的(peptide-loaded target)として使用して、HLA−A2.1制限CTLの活性を測定した。この株細胞を、抗生物質、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸及び10%(v/v)熱不活性化FCSを含むRPMI−1640培養液中で生長させる。対象となる抗原、又は対象となる抗原をコード化する遺伝子を含む形質移入体を発現する細胞を標的細胞として使用して、内在性抗原を認識するペプチド特異的CTLの能力を確認する。
一次CTL誘導培養物:
樹状細胞(DC)の生成:PBMCを、30μg/mlデオキシリボヌクレアーゼ(DNAse)を含むRPMI中にて解凍し、2回洗浄し、完全培地(5%ABヒト血清加RPMI−1640、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシン)中に再懸濁させる。単球を、6ウェルプレートに、10×106 PBMC/ウェルを蒔くことにより精製する。37℃で2時間後、非接着細胞を、プレートを緩やかに振とうし、上清を吸引することにより、取り除く。ウェルを、3ml RPMIで合計3回洗浄して、非接着細胞及び軽く接着した細胞の大部分を取り除く。50ng/mlのGM−CSF及び1000U/mlのIL−4を含む3mlの完全培地を、その後、各ウェルに加える。TNFαを、75ng/mlで、6日目に、DCに加え、その細胞を、7日目にCTL誘導培養物として使用する。
DC及びペプチドを含むCTLの誘導:CD8+T細胞を、Dynal免疫磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標) M-450)及びdetacha-bead(登録商標)試薬を用いてポジティブ選択により分離する。一般的に約200−250×106個のPBMCを処理して、24×106個のCD8+T細胞を(48ウェルプレート培養のために十分に)を得る。簡単には、PBMCを、30μg/mlデオキシリボヌクレアーゼ(DNAse)を含むRPMI中にて解凍し、1%ヒトAB血清を含むPBSで1回洗浄し、20×106セル/mlの濃度でPBS/1%AB血清中に再懸濁させる。磁気ビーズを、PBS/AB血清で3回洗浄し、細胞(140μlビーズ/20×106セル)に加え、連続混合しながら4℃で1時間インキュベートする。ビーズ及び細胞(セル)を、PBS/AB血清で4回洗浄して、非接着細胞を取り除き、100μl/mlのdetacha-bead(登録商標)試薬及び30μg/mlのデオキシリボヌクレアーゼを含むPBS/AB血清中に100×106セル/mlで(最初の細胞数に基づく)再懸濁させる。混合物を、連続混合しながら室温で1時間インキュベートする。ビーズを、PBS/AB/デオキシリボヌクレアーゼで再度洗浄して、CD8+T細胞を採取する。DCを、採取し、1300rpmで5−7分間遠心分離し、1%BSAを含むPBSで洗浄し、計数し、20℃で4時間、3μg/mlのβ2−ミクログロブリンの存在下、1−2×106/mlの細胞濃度で40μg/mlのペプチドを用いてパルスする。その後、DCに放射線(4200rad)を照射し、これを培地で1回洗浄し、再度計数する。
誘導培養物の準備:0.25mlサイトカイン生成したDC(1×106セル/mlで)を、10ng/mlのIL−7の存在下、48ウェルプレートの各ウェル中に0.25mlのCD8+T細胞と共に共培養する。組換え型ヒトIL−10を、翌日、10ng/mlの最終濃度で添加し、ヒトIL−2を48時間後10IU/mlで添加した。
ペプチドパルスした接着細胞誘導培養物の再刺激:一次導入後7及び14日に、細胞を、ペプチドパルスした接着細胞(peptide-pulsed adherent cell)を用いて再刺激する。PBMCを解凍し、RPMI及びデオキシリボヌクレアーゼを用いて2回洗浄する。細胞を5×106セル/mlで再懸濁させ、これに〜4200radで放射線を照射する。PBMCを、ウェル当たり0.5mlの完全培地中に2×106で蒔き、37℃で2時間インキュベートする。プレートを、RPMIを用いてこのプレートを軽くたたくことによって2回洗浄して、非接着細胞を取り除き、接着細胞は、37℃で2時間、ウェル当たり0.25mlのRPM/5%AB中で、3μg/mlのβ2ミクログロブリンの存在下、10μg/mlのペプチドを用いてパルスする。各ウェルからのペプチド溶液を吸引し、ウェルを、RPMIを用いて1回洗浄する。培地の大部分を、誘導培養物(CD8+細胞)から取り除き、新鮮な培地を用いて5mlにする。細胞を、その後、ペプチドパルスした接着細胞を含むウェルに移す。24時間後、組換え型ヒトIL−10を、10ng/mlの最終濃度で加え、組換え型ヒトIL−2を翌日、2−3日後に再度50IU/mlで加える(Tsai et al., Critical Reviews in immunology 18(1-2):65-75,1998)。7日後、培養物を、51Cr遊離試験でCTL活性測定のため検定する。いくつかの実験において、培養物を、二次刺激の際に、生体内原位置IFNγ ELISAでペプチド特異認識測定のため検定し、その7日後、内在性認識の検定をする。増殖後、活性を、並列比較の両アッセイ(both assays for a side-by-side comparison)で測定する。
51 Cr遊離によるCTL溶解性活性の測定
二次再刺激後7日に、細胞障害性を、標準(5hr)51Cr遊離試験で単一E:Tで個々のウェルを試験することによって、測定する。ペプチドパルスした標的(ターゲット)を、37℃で一晩10μg/mlペプチドとともに細胞をインキュベートすることにより調製する。
接着標的細胞を、トリプシンERTAを用いて培養フラスコから取り除く。標的細胞を、37℃で1時間、200μCiの51Crクロム酸ナトリウム(Dupont、ウィルミントン、デラウェア州)で標識化する。標識化した標的細胞を、ml当たり106で再懸濁させ、3.3×106/ml(NK感受性赤芽球腫株細胞を使用して非特異的溶解を減少させた)の濃度でK562細胞を用いて1:10希釈する。標的細胞(100μl)及びエフェクター(100μl)を96ウェル丸底プレート中に蒔き、37℃で5時間インキュベートする。その時、100μlの上清を各ウェルから採取し、パーセントの溶解を、式に従って求める:
[(試験サンプルのcpm−自発的な51Cr遊離サンプルのcpm)/(最大51Cr遊離サンプルのcpm−自発的な51Cr遊離サンプルのcpm)]×100
最大の及び自発的な遊離を、1%トリトンX−100及び培地単独のそれぞれとともに、標識化した標的をインキュベートすることによって測定する。陽性培養物は、特異的溶解(サンプル−バックグラウンド)が個々のウェルの場合に10%以上であり、かつ増殖した培養物を測定するとき2つの最も高いE:T比で15%以上であるものと定義される。
ペプチド特異性及び内在性認識の指標としてのヒトIFNγ産物の生体内原位置測定
Immulon2プレートを、4℃で一晩、マウス抗−ヒトIFNγモノクローナル抗体(4μg/mlの0.1M NaHCO3、pH8.2)で被覆する。プレートを、Ca2+、Mg2+−遊離PBS/0.05% Tween20で洗浄し、2時間、PBS/10%FCSで遮断し、その後、CTL(100μl/ウェル)及び標的(100μl/ウェル)を、標準物質及びブランク(培地のみを受け入れる)用の空のウェルを残して、各ウェルに添加する。標的細胞、ペプチドパルスした又は内在性のどちらかの標的を、1×106セル/mlの濃度で使用する。プレートを、5%CO2を用いて37℃で48時間インキュベートする。
組換え型ヒトINF−γを、400pg又は1200pg/100μl/ウェルで開始して標準ウェルに添加する。プレートを、37℃で2時間、インキュベートした。プレートを洗浄し、100μlのビオチン化したマウス抗−ヒトIFN−γモノクローナル抗体(PBS/3%FCS/0.05%Tween20中2μg/ml)を加え、室温で2時間、インキュベートする。再度の洗浄後、100μlのHRPストレプトアビジン(1:4000)を加える。プレートを室温で2時間インキュベートした。プレートをその後、洗浄バッファで6回洗浄し、100μl/ウェル発育溶液(developing solution)(TMB 1:1)を加え、そのプレートを、5−15分間発育させる。反応を、50μl/ウェル 1M H3PO4で用いて停止させ、OD450で判断する。培養物は、少なくとも50pgのIFN−γ/ウェルの上記バックグラウンドを測定し、2回とも発現のバックグラウンドレベルである場合には、陽性と考えられる。
CTL増殖
ペプチドパルスした標的及び/又は腫瘍標的に対して特異的溶解性活性を示すそれらの培養物を、抗CD3で2週間にわたって増殖させる。簡単には、5×104個のCD8+細胞を下記のものを含むT25フラスコに加える:ml当たり1×106放射線照射した(4200rad)PBMC(自家又は同種異系)、ml当たり2×105放射線照射した(8000rad)EBV形質転換した細胞、及び、10%(v/v)ヒトAB血清、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、25μMの2−メルカプトエタノール、L−グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI−1640中ml当たり30ngでのOKT3(抗CD3)。組換え型ヒトIL2を、24時間後、最終濃度200IU/mlで加え、その後3日ごとに50IU/mlで新鮮な培地と共に加える。細胞濃度が1×106/mlを超える場合には、細胞を分割し、増殖前と同一の標的を用いて、51Cr遊離試験で30、10、3、及び1:1のE:T比で又は生体内原位置IFNγ試験で1×106/mlで、13から15日の間に、培養物を検定する。
培養物を、下記のように抗CD3+の存在下、増殖させる。ペプチド及び内在性標的に対して特異的溶解性活性を示すそれらの培養物を選択し、5×104個のCD8+細胞を下記のものを含むT25フラスコに加える:37℃で2時間、10μg/mlペプチドを用いてペプチドパルス及び放射線照射しておいたml当たり1×106自家PBMC;ml当たり2×105放射線照射した(8000rad)EBV形質転換した細胞、10%(v/v)ヒトAB血清、非必須アミノ酸(amino acid(AA))、ピルビン酸ナトリウム、25μM 2−メルカプトエタノール(2−ME)、L−グルタミン及びゲンタマイシンを含むRPMI−1640。
A2スーパーモチーフベアリングペプチドの免疫原性
A2スーパーモチーフ交さ反応性結合ペプチドを、ペプチド特異的CTLを正常な固体において誘導する能力を測定するための細胞試験で試験する。この分析において、ペプチドは、ペプチド特異的CTLを少なくとも固体において誘導し、好ましくは、さらに発現したペプチドを内在的に認識する場合には、一般的には、エピトープであると考えられる。
免疫原性を、158P1D7を発現する腫瘍を有する患者から分離したPBMCを用いて確認することもできる。簡単には、PBMCが、患者から分離され、ペプチドパルスした単球で再刺激され、ペプチドパルスした標的細胞、並びに抗原を内在的に発現する形質移入細胞を認識する能力について検定される。
A * 03/A11免疫原性の評価
HLA−A3スーパーモチーフベアリング交さ反応性結合ペプチドも、HLA−A2スーパーモチーフペプチドの免疫原性を評価するために使用したものと類似の方法論を用いて、免疫原性について評価される。
B7免疫原性の評価
本願において示したように同定したB7スーパータイプ交さ反応性結合ペプチドの免疫原性スクリーニングが、A2−及びA3−スーパーモチーフベアリングペプチドの確認と類似の方法で確認される。
他のスーパーモチーフ/モチーフ、例えば、HLA−A1、HLA−A24等を有するペプチドも同様の方法論を用いて確認される。
[実施例13]類似物の作成による未変性エピトープの結合能力を改善するための伸長スーパーモチーフ(extended supermotif)の実行
本願において示されるように、HLAモチーフ及びスーパーモチーフ(一次及び/又は二次残基を含む)は、高交さ反応未変性ペプチドの同定及び調製において有用である。さらに、HLAモチーフ及びスーパーモチーフの決定は、誰にも、一定の特性、例えば、スーパータイプを含むHLA分子の基の範囲内での、より大きな交さ反応性、及び/又はそれらのHLA分子のいくつか又は全部に対する、より大きな結合親和力をペプチドに与えるようアナログされうる未変性ペプチドシーケンスの範囲内で残基を同定することによって交さ反応性エピトープを高度に設計することを可能にする。結合親和力において調節を示すようペプチドをアナロジングする例を、本実施例中に示す。
一次アンカー残基でのアナロジング
ペプチド設計ストラテジーを、エピトープの交さ反応性をさらに増強するため実行する。例えば、A2スーパーモチーフベアリングペプチドの主アンカーを変化させて、例えば、好ましくはL、I、V、又はMを2位に、I又はVをC末端に導入する。
ペプチド類似物の交さ反応性を分析すべく、各設計した類似物は、プロトタイプA2スーパータイプ対立遺伝子A*0201との結合について、その後A*0201結合能力が維持される場合には、A2スーパータイプ交さ反応性について先ず試験される。
一方、ペプチドは、一つの又は全てのスーパータイプメンバーを結合すると確認され、その後、いくつか(又はそれ以上)のスーパータイプメンバーに対する結合親和力を調節して個体群適用範囲を追加するようアナログされる。
細胞スクリーニング分析における免疫原のための類似物の選択は、一般には、より多くのうち3つのA2スーパータイプ対立遺伝子に少なくとも弱く結合する、すなわち5000nm以下のIC50で結合する親(parent)野生型(WT)ペプチドの能力により制限される。この規定の原理は、WTペプチドは、生物学的に適切である十分な量で、内在的に存在しなければならないというものである。アナロジングしたペプチドでは、免疫原性、及び親エピトープに特異的なT細胞による交さ反応性が増強されることが示されている(例えば、Parkhurst et al., J.Immunol. 157:2539, 1996;及びPogue et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:8166, 1995参照)。
これらのペプチド類似物の細胞スクリーニングにおいて、類似特異的CTLも野生型ペプチド及び、可能な場合には、エピトープを内在的に発現する標的細胞を認識することができるということを確認することは重要である。
HLA−A3及びB7−スーパーモチーフベアリングペプチドのアナロジング
HLA−A3スーパーモチーフベアリングエピトープの類似物を、HLA−A2スーパーモチーフベアリングペプチドをアナロジングすることにおいて使用したものと同様のストラテジーを用いて、生成させる。例えば、3/5のA3スーパータイプ分子を、一次アンカー残基で設計して、2位に好ましい残基(V、S、M、又はA)を持たせる。
ペプチド類似物は、その後A*03及びA*11(プロトタイプA3スーパータイプ対立遺伝子)を結合する能力について試験される。≦500nMの結合能力を示すそれらのペプチドは、その後A3スーパータイプ交さ反応性を有すると確認される。
A2−及びA3−モチーフベアリングペプチドと同様、3又はそれ以上のB7スーパータイプ対立遺伝子を結合するペプチドは、改善されることが可能であり、可能な場合には、交さ反応性結合が増強され、結合親和力又は結合半減期が高まる。B7スーパーモチーフベアリングペプチドは、Sidneyらによって立証されているように、例えば、C末端一次アンカー位置に好ましい残基(V、I、L、又はF)を持つように設計される(J.Immunol. 157:3480-3490, 1996)。
他のモチーフ及び/又はスーパーモチーフベアリングエピトープの一次アンカー残基でのアナロジングは、同様の方法で行われる。
ペプチド類似物は、その後、一般的には細胞スクリーニング試験で、免疫原について確認される。また、類似特異的CTLも野生型ペプチド及び、可能な場合には、エピトープを内在的に発現する標的を認識することもできるということを立証することは一般的に重要である。
二次アンカー残基でのアナロジング
さらに、HLAスーパーモチーフは、交さ反応性ペプチド及び/又はそのような特性と付随した二次アンカー位置で特定の残基を同定することにより親和力を高めてHLA分子を結合するペプチドを高度に設計することにおいて有用性がある。例えば、1位にF残基を持つB7スーパーモチーフベアリングペプチドの結合能力が、分析される。ペプチドを、その後アナロジングして、1位で、FをLで置換する。アナロジングしたペプチドは、結合親和力の増加、結合半減期及び/又は交さ反応性の増加について評価される。そのような方法により、特性が高められたアナロジングしたペプチドが同定される。
結合能力又は交さ反応性を十分に改善して設計された類似物も、例えば、IFA免疫化又はリポペプチド免疫化の後、HLA−B7−遺伝子組換えマウスにおける免疫原性について試験されうる。アナロジングしたペプチドは、158P1D7発現腫瘍を有する患者からのPBMCを用いてリコールレスポンス(recall response)を刺激する能力についてさらに試験される。
他のアナロジングストラテジー
ペプチドアナロジングの別の形態には、アンカーの位置とは関係なく、α−アミノ酪酸でのシステインの置換が含まれる。その化学的性質により、シルテインは、ジスルフィドブリッジを形成する傾向を有し、結合能力を減少させるようにペプチドを十分に構造変化させる。システインに対するα−アミノ酪酸の置換は、この問題を軽減するだけでなく、いくつかの場合において結合能力及び交叉結合(crossbinding)能力を改善することを示した(例えば、Persistent Viral Infections, Eds. R.Ahmed及びI.Chen, Johon Wiley & Sons, England, 1999におけるSette et al.によるレビュー参照)。
したがって、単一のアミノ酸置換体の使用により、HLAスーパータイプ分子に対するペプチドリガンドの結合特性及び/又は交さ反応性は、調節されうる。
[実施例14]HLA−DR結合モチーフでの158P1D7誘導シーケンスの同定及び確認
クラスIIスーパーモチーフ又はモチーフを有するペプチドが、HLAクラスIペプチドのために記載されたものと同様の方法論を用いて、以下に概説したように、同定及び確認される。
HLA−DR−スーパーモチーフベアリングエピトープの選択
158P1D7抗原を、HLA−DRモチーフ又はスーパーモチーフを有するシーケンスの存在について分析して、158P1D7誘導、HLAクラスIIのHTLエピトープを同定する。具体的には、DR−スーパーモチーフを含み、9−マーコア、並びに3残基N−及びC−末端フランキング領域を含む(15アミノ酸総量)15−マーシーケンスを選択する。
DR分子に結合するのに適したペプチドを予想するためのプロトコルが開発されている(Southwood et al., J.Immunol. 160:3363-3373, 1998)。個々のDR分子に対して特異的なこれらのプロトコルは、9−マーコア領域の得点付け及び順位付けを可能にする。各プロトコルにより、9−マーコアの範囲内でDR−スーパーモチーフ一次アンカー(すなわち、1位及び6位)の存在についてペプチドシーケンスに得点がつけられるだけでなく、さらに二次アンカーの存在についてシーケンスが評価される。対立遺伝子特異選択表(allele-specific selection table)(例えば、Southwood et al., ibid)を用いると、これらのプロトコルにより、特定のDR分子を結合する確率の高いペプチドシーケンスが効果的に選択されるということが分かっている。さらに、タンデムにこれらのプロットコル、具体的にはDR1、DR4w4及びDR7のためのプロトコル、を実行すると、DR交さ反応性ペプチドが効果的に選択されうる。
上記同定された158P1D7誘導ペプチドは、各種共通のHLA−DR分子に対する結合能力について試験される。全てのペプチドは、先ず、一次パネル:DR1、DR4w4及びDR7におけるDR分子に対する結合について試験される。これらの3つのDR分子のうち少なくとも2つを結合するペプチドが、その後二次試験においてDR2w2β1、DR2w2β2、DR6w19、及びDR9分子に対する結合について試験される。最後に、4つの二次パネルDR分子のうち少なくとも2つを結合するペプチド、及びこのように累積して7つの異なるDR分子のうち少なくとも4つを結合するペプチドが三次試験においてDR4w15、DR5w11、及びDR8w2分子に対する結合についてスクリーニングされる。一次、二次、及び三次スクリーニング試験を構成する10のDR分子のうち少なくとも7つを結合するペプチドは、交さ反応性DRバインダーと考えられる。共通のHLA−DR対立遺伝子を結合すると見られる158P1D7誘導ペプチドは、特に重要である。
DR3モチーフペプチドの選択
HLA−DR3は、白人系、黒人系、及びヒスパニック系の個体群に多い対立遺伝子であるため、DR3結合能力は、HTLエピトープの選択において適切な基準となる。したがって、候補であることを示すペプチドも、DR3結合能力について検定されてもよい。しかしながら、DR3モチーフの結合特異性の観点から、DR3のみに結合するペプチドもワクチン製剤への含有のための候補と考えられうる。
標的158P1D7抗原は、Gelukらによって報告された2つのDR3−特異的結合モチーフ(J.Immunol. 152:5742-5748, 1994)のうち1つを保有するシーケンスについて分析されて、DR3を結合するペプチドを効果的に同定する。対応するペプチドが、その後合成され、1μM又はそれより良い、すなわち1μMより小さい親和力でDR3を結合する能力を有すると確認される。この結合基準を満たし、HLA クラスIIの高親和力バインダーの資格があるペプチドが見出される。
この方法で同定されるDR3結合エピトープは、DRスーパーモチーフベアリングペプチドエピトープを有するワクチン組成物に含まれる。
HLA クラスIモチーフベアリングペプチドの場合と同様、クラスIIは、親和力又は交さ反応性を改善するようアナロジングされる。例えば、9−マーコアシーケンスの4位のアスパラギン酸は、DR3結合に最適な残基であり、その残基からの置換は、多くの場合DR3結合を改善する。
[実施例15]158P1D7誘導HTLエピトープの免疫原性
この実施例では、本願において示した方法論を用いて、同定されたエピトープのうち免疫原性DRスーパーモチーフベアリングエピトープ及びDR3−モチーフが測定される。
HTLエピトープの免疫原性は、HTLレスポンスを刺激する能力を評価することにより、及び/又は適当な遺伝子組換えマウスモデルを用いることにより、CTLエピトープの免疫原性の測定に類似した方法で、確認される。免疫原性は、1.)正常PBMCを用いる生体外一次誘導又は2.)158P1D7発現腫瘍を有する患者からのリコールレスポンス:についてスクリーニングすることによって測定される。
[実施例16]個体群範囲(個体群適用範囲)の呼吸を測定するための各種民族のバックグラウンドにおけるHLA−スーパータイプの表現型度数の計算
この実施例では、多様なスーパーモチーフ及び又はモチーフを含む多様なエピトープから構成されるワクチン組成物の個体群適用範囲(population coverage)の幅の評価について詳述する。
個体群適用範囲を分析するため、HLA対立遺伝子の遺伝子度数(gene frequency)が測定される。各HLA対立遺伝子に対する遺伝子度数は、二項分布式gf=1−(SQRT(1−af))(例えば、Sidney et al., Human Immunol. 45:79-93, 1996参照)を利用して、抗原又は対立遺伝子度数から計算される。累積遺伝子度数(cumulative gene frequency)を計算し、累積抗原度数(cumulative antigen frequency)を逆算式[af=1-(1-Cgf)2]の使用により誘導して、総合的な表現型度数(phenotypic frequency)を得る。
度数データが、DNA分類のレベルで利用できない場合には、血清学的に規定した抗原度数との一致が考えられる。全潜在的(ポテンシャル)スーパータイプ個体群適用範囲を得るため、結合不均衡(linkage disequilibrium)はないと考えられ、スーパータイプのそれぞれに属すると確認された対立遺伝子のみが、含まれる(最小評価)。遺伝子座間の組み合わせにより得られる全ポテンシャル範囲の評価は、A範囲に、考えられるB対立遺伝子によって被覆されると期待されうる非A被覆個体群の比率を加えることによってなされる(例えば、全数=A+B*(1−A))。A3様スーパータイプのうち確認されたメンバーは、A3、A11、A31、A*3301、及びA*6801である。A3様スーパータイプは、A34、A66、及びA*7401を含む可能性があるが、これらの対立遺伝子は、総合的な度数計算に含まれなかった。同様に、A2様スーパータイプファミリー(A2−like supertype family)のうち確認されたメンバーは、A*0201、A*0202、A*0203、A*0204、A*0205、A*0206、A*0207、A*6802、及びA*6901である。最後に、B7様スーパータイプファミリーの確認された対立遺伝子は:B7、B*3501−03、B51、B*5301、B*5401、B*5501−2、B*5601、B*6701、及びB*7801である(潜在的には、B*1401、B*3504−06、B*4201及びB*5602も同様)
A2−、A3−、及びB7−スーパータイプを組み合わせることによって得られる個体群適用範囲は、5つの主な民族群において約86%である。適用範囲を、A1及びA24モチーフを有するペプチドを含めることによって広げてもよい。平均して、5つの異なる主な民族群(白人、北アメリカ黒人、中国人、日本人、及びヒスパニック)の全てにわたる個体群の12%にA1が、29%にA24が存在している。全体として、これらの対立遺伝子は、これらの同一の民族個体群において39%の平均度数で表される。A1及びA24がA2−、A3−及びB7−スーパータイプ対立遺伝子と併用されるときの、主な民族性の全てにわたる全適用範囲は、>95%である。類似のアプローチを用いて、クラスIIモチーフベアリングエピトープの組み合わせで得られる個体群適用範囲を評価することができる。
ヒトにおける免疫原性研究により、高交さ反応性結合ペプチド(highly cross-reactive binding peptide)はほとんどいつでもエピトープとして認識されるということが示されている(例えば、Bertoni et al., J Clin. Invest. 100:503, 1997;Doolan et al., Immunity 7:97, 1997;及びThrelkeld et al., J. Immunol. 159:1648, 1997)。高交さ反応性結合ペプチドの使用は、多種多様な個体群において免疫原性であるワクチンに含有させるための候補エピトープを同定することにおいて重要な選択基準となる。
エピトープ(本願において開示されるもの及び技術から開示されるもの)の十分な数について、平均個体群適用範囲は、5つの主な民族個体群のそれぞれにおいて95%より大きいと予想される。技術として公知のゲーム理論モンテカルロシミュレーション分析(例えば、Osborne, M.J. Rubinstein, A. 「ゲーム理論における過程(A course in game theory)」MIT出版, 1994参照)を用いて、白人、北アメリカ黒人、日本人、中国人、及びヒスパニック民族群で構成される個体群において個体のどのくらいのパーセンテージが本願に記載したワクチンエピトープを認識するかを評価することができる。好ましいパーセンテージは、90%である。より好ましいパーセンテージは95%である。
[実施例17]初回免疫後の内在的処理した抗原のCTL認識
この実施例では、本願において同定及び選択された未変性ペプチド又はペプチド類似のエピトープによって誘導したCTLは内在的に合成された、すなわち未変性の抗原を認識するということが確認される。
例えば、ペプチドエピトープで免疫化した遺伝子組換えマウスから分離した効果細胞、例えば、HLA−A2スーパーモチーフベアリングエピトープは、ペプチド被覆刺激要因細胞を用いて生体外で再刺激される。6日後、効果細胞は、細胞障害性について検定され、ペプチド特異的細胞障害活性を含む株細胞はさらに再刺激される。さらに6日後、これらの株細胞は、ペプチドの不存在又は存在下、51Cr標識化したJurkat−A2.1/Kb標的細胞における細胞障害活性について試験され、内在的に合成した抗原、すなわち158P1D7発現ベクター用いて安定的に形質移入された細胞を有する51Cr標識化した標的細胞についても試験される。
その結果により、ペプチドエピトープで初回抗原刺激された動物から得られるCTL株細胞は、内在的に合成した158P1D7抗原を認識するということが立証される。そのような分析のために使用されるべき遺伝子組換えマウスモデルの選択は、評価されているエピトープに依存する。HLA−A*0201/Kb遺伝子組換えマウスに加えて、A3エピトープを評価するために使用されてもよい、ヒトA1及びB7対立遺伝子を有するマウスを含むいくつかの他の遺伝子組換えマウスモデルが特徴付けられており、これ以外のもの(例えば、HLA−A1及びA24のための遺伝子組換えマウス)は、開発されている。HTLエピトープを評価するために使用される可能性のあるHLA−DR1及びHLA−DR3マウスモデルも開発されている。
[実施例18]遺伝子組換えマウスにおけるCTL−HTL複合エピトープの活性
この実施例では、158PD7誘導CTL及びHTLペプチドワクチン組成物の使用によって、遺伝子組換えマウスにおけるCTL及びHTLの誘発について詳述する。本願において使用されるワクチン組成物には、158P1D7発現腫瘍を有する患者に投与されるべきペプチドが含まれる。ペプチド組成物には、多様なCTL及び/又はHTLエピトープが含まれる。エピトープは、本願において記載された方法論を用いて同定される。この実施例では、また、CTLワクチン組成物中への1又はそれ以上のHTLエピトープの含有によって免疫原性を高めることができることも詳述する;そのようなペプチド組成物は、CTLエピトープと結合(複合)したHTLエピトープを含むことができる。CTLエピトープは、500nM以下の親和力で多様なHLAファミリーメンバーに結合するエピトープ、又はそのエピトープの類似物でありうる。ペプチドは、必要により脂質処理され(lipidate)てもよい。
免疫化処理:遺伝子組換えマウスの免疫化は、記載したように行われる(Alexander et al., J. Immunol. 159:4753-4761, 1997)。例えば、ヒトHLA A2.1対立遺伝子に対してトランスジェニックであり、HLA−A*0201モチーフベアリングエピトープ又はHLA−A2スーパーモチーフベアリングエピトープの免疫原性を確認するために使用されるA2/Kbマウスを、不完全Freundのアジュバント中にある、又はペプチド組成物が脂質化したCTL/HTL複合物である場合にはDMSO/生理食塩水中にある、又はペプチド組成物がポリペプチドである場合にはPBS又は不完全Freundのアジュバント中にある0.1mlのペプチドを用いて皮下(尾の付け根)初回抗原刺激する。初回抗原刺激後7日に、これらの動物から得られた脾細胞を、ペプチドで被覆した、同質遺伝子的な放射線照射したLPS活性化リンパ芽球を用いて再刺激する。
株細胞:ペプチド特異的細胞障害性試験用の標的細胞は、HLA−A2.1/Kbキメラ遺伝子(例えば、Vitiello et al., J. Exp. Med. 173:1007, 1991)を用いて形質移入したJurkat細胞である。
生体外CTL活性化:初回抗原刺激後1週間に、脾臓細胞(30×106セル/フラスコ)を、10mlの培地/T25フラスコ中で、同系の、放射線照射した(3000rad)、ペプチド被覆リンパ芽球(10×106セル/フラスコ)と共に37℃で共培養する。6日後、効果細胞を収集し、細胞障害活性について検定した。
細胞障害活性の試験:標的細胞(1.0〜1.5×106セル/フラスコ)を、200μlの51Crの存在下、37℃でインキュベートする。60分後、細胞を3回洗浄し、R10培地に再懸濁させる。必要な場合には、ペプチドを1μg/mlで加える。試験のため、104の51Cr標識化した標的細胞を、U底96ウェルプレート中の異なる濃度の効果細胞に加える(最終容積200μl)。37℃で6時間のインキュベート期間後、上清の0.1mlのアリコート(一定分量)を、各ウェルから取り除き、Micromedic automatic gamma counterで、放射能を測定する。%特異的溶解(percent specific lysis)を、式により測定する:%特異的遊離(percent specific releace)=100×(実験的遊離−自発的遊離)/(最大遊離−自発的遊離)。%51Cr遊離データを、溶解単位/106セルとして表して、同一の条件下で行った分離CTL試験間の比較を容易にする。一つの溶解単位は、6時間51Cr遊離試験において10000の標的細胞の30%溶解とするために必要とされる効果細胞の数として、任意に、規定される。ペプチドの不存在下において得られる溶解単位/106を、ペプチドの存在下において得られる溶解単位/106から引いて、特異的溶解単位/106を得る。例えば、30%51Cr遊離が、ペプチドの不存在下において50:1(すなわち、10000の標的に対して5×105効果細胞)及びペプチドの存在下において5:1(すなわち、10000の標的に対して5×104効果細胞)のエフェクター(E):標的(T)比で得られる場合には、特異的溶解単位は:[(1/50000)−(1/500000)]×106=18LUとなるであろう。
結果を分析して、免疫原性CTL/HTL複合ワクチン製剤を注射された動物のCTL応答(レスポンス)の大きさを検定し、さらに、例えば「免疫原性の確認」と題した実施例において上記概説したCTLエピトープを用いて得られたCTL応答の大きさと比較する。これに類似した分析を行って、多様なCTLエピトープ及び/又は多様なHTLエピトープを含むペプチド複合体の免疫原性を確認してもよい。これらの方法に従って、そのような組成物の投与においてCTL応答が誘発され、同時にHTL応答が誘発されることがわかる。
[実施例19]158P1D7特異的ワクチン中に含有させるためのCTL及びHTLの選択
この実施例では、本発明のワクチン組成物用のペプチドエピトープを選択する方法について詳述する。当該組成物中のペプチドは、核酸シーケンス(配列)の形態、ペプチド(又はその複数)をコード化する単一又は1若しくはそれ以上のシーケンス(すなわち、ミニ遺伝子)の形態とすることができ、或いは単一及び/又はポリエピトープのペプチドとすることができる。
下記原理は、ワクチン組成物中に含有させるためのエピトープの大多数を選択するときに利用される。下記原理のそれぞれは、選択をするために考量される。
投与において、158P1D7クリアランスと相関する模擬免疫応答をするエピトープを選択する。使用したエピトープの数は、自発的に158P1D7を除去する患者の所見に依存する。例えば、自発的に158P1D7を除去する患者が158P1D7抗原から少なくとも3に対する免疫応答を生ずると観察された場合には、その後3−4エピトープが、HLA クラスIに対して含まれるべきである。同様の原理を用いて、HLA クラスIIエピトープが決定される。
HLA クラスI分子に対して500nM以下のIC50、又はクラスIIに対して1000nM以下のIC50の結合親和力を有するエピトープが、多くの場合選択され;或いはURL bimas.dcrt.nih.gov/のBIMASウェブサイトから高い結合得点を持つHLAクラスIペプチドが選択される。
多種多様な個体群全体にわたってワクチンの適用範囲を広範にするため、十分なスーパーモチーフベアリングペプチド、又は対立遺伝子特異的モチーフベアリングペプチドの十分なアレイを選択して、個体群の適用範囲を広範にする。一つの形態において、少なくとも80%の個体群の適用範囲を与えるようにエピトープを選択する。技術として公知の統計学的評価であるモンテカルロ分析を用いて、個体群の適用範囲の幅、又は重複性を検定することができる。
ポリエピトープ組成物又はこれをコード化するミニ遺伝子を作成するときには、対象となるエピトープを包含する可能性のある最小のペプチドを生成させることが一般的に望ましい。用いられる原理は、同一でなければ、ネステッドエピトープを含むペプチドを選択するときに用いられる原理と同様である。例えば、ワクチン組成物用のタンパク質シーケンスは、そのシーケンスの範囲内に含まれるエピトープの最大数である、すなわち、高濃度のエピトープを有するため、そのようなシーケンスが選択される。エピトープは、ネステッド又はオーバーラップ(すなわち、互いに対してフレームシフトしたもの)でもよい。例えば、オーバーラップエピトープについては、10アミノ酸ペプチド中に二つの9−マーエピトープ及び一つの10−マーエピトープが存在しうる。多様なエピトープのペプチドは、合成して、組換えて、又は天然のソースからの分割によって生じうる。一方、類似物は、このような天然(未変性)のシーケンスで作られうるが、それによって、1又はそれ以上のエピトープには、ポリエピトープペプチドの交さ反応性及び/又は結合親和力特性を変化させる置換体が含まれる。そのようなワクチン組成物は、治療又は予防目的のため投与される。この形態は、免疫系処置のまだ発見されていない側面が未変性のネステッドシーケンスに適用され、それにより、治療又は予防免疫応答誘導ワクチン組成物の製造を促進するであろうという可能性に備える。さらに、そのような形態は、現に知られているHLA組成のモチーフベアリングエピトープの実現性に備える。なお、この形態(いくつかの類似物の作成がない)は、実際に158P1D7に存在している多様なペプチドシーケンスに対する免疫応答を誘導し、それゆえ、いくつかの結合エピトープを評価する必要性をなくす。最後に、その形態は、核酸ワクチン組成物を製造するときの規模について経済性を提供する。この形態に関して、従来技術における原理に従って、標的シーケンスを同定し、シーケンス長当たりのエピトープの最大数を同定するコンピュータプログラムを誘導することができる。
選択したペプチドで構成されるワクチン組成物は、投与したとき、安全で、有効で、158P1D7を有し又は過剰発現する細胞を制御或いは除去する免疫応答と大きさにおいて類似する免疫応答を誘発する。
[実施例20]「ミニ遺伝子」マルチエピトープDNAプラスミドの構築
この実施例では、ミニ遺伝子発現プラスミドの構築を議論する。ミニ遺伝子プラスミドには、当然、本願において記載したB細胞、CTL及び/又はHTLエピトープペプチド或いはエピトープ類似物の各種の形態が含まれる。
ミニ遺伝子発現プラスミドには、一般に、CTL及び/又はHTLペプチドエピトープが含まれる。本実施例において、HLA−A2、−A3、−B7スーパーモチーフベアリングエピトープ並びにHLA−A1及び−A24モチーフベアリングエピトープは、DRスーパーモチーフベアリングエピトープ及び/又はDR3エピトープと組み合わせて使用される。158P1D7から誘導されるHLAクラスIスーパーモチーフ又はモチーフベアリングエピトープが選択され、その結果、多様なスーパーモチーフ/モチーフは個体群の適用範囲を確実に広範にするよう表される。同様に、HLA クラスIIエピトープを、158P1D7から選択して、個体群の適用範囲を広範にする、すなわち、HLA−1−4−7スーパーモチーフベアリングエピトープかつHLA DR−3モチーフベアリングエピトープが、ミニ遺伝子構築物中への含有のために選択される。選択したCTL及びHTLエピトープは、発現ベクターにおける発現のためミニ遺伝子中に組み込まれる。
そのような構築物は、さらに小胞体にエピトープを誘導するシーケンスを含んでもよい。例えば、liproteinを、従来技術に記載されている1又はそれ以上のHTLエピトープと融合させてもよい。なお、liproteinのCLIPシーケンスは、HLAクラスIIエピトープシーケンスが小胞体に誘導されるように、除去され、かつHLAクラスIIエピトープシーケンスと置換され、エピトープは、HLA クラスII分子と結合する。
この実施例では、ミニ遺伝子ベアリング発現プラスミドの構築のために使用されるべき方法について詳述する。ミニ遺伝子組成物のために使用される他の発現ベクターは、入手可能であり、当業者において公知である。
この実施例のミニ遺伝子DNAプラスミドには、コンセンサスKozak配列及びコンセンサスマウスκ Ig軽鎖シグナル配列、続いて本願において開示した原理に従って選択されるCTL及び/又はHTLが含まれる。そのシーケンス(配列)は、pcDNA3.1Myc−Hisベクターを通じてコードされるMyc及びHis抗体エピトープタグと融合したORFをコード化する。
例えば、平均して、15ヌクレオチドオーバーラップで長さにおいて約70ヌクレオチドでありうるオーバーラップオリゴヌクレオチド(overlapping oligonucleotide)が、合成され、HPLC精製される。当該オリゴヌクレオチドは、選択したペプチドエピトープ並びに適当なリンカーヌクレオチド、Kozak配列及びシグナル配列をコード化する。マルチエピトープ(multiepitope)ミニ遺伝子は、PCRを用いて、反応の3セットでオーバーラップオリゴヌクレオチドを伸長させることによって構築される。Perkin/elmer 9600 PCR装置が用いられ、下記条件を用いて合計30サイクル行われる:95℃で15分、アニーリング温度(各プライマー対の最も低く計算したTm以下の5°)で30秒、及び72℃で1分。
例えば、ミニ遺伝子は、下記のように調製される。最初のPCR反応に関し、5μgの各二つのオリゴヌクレオチドを、アニールし、伸長する:例として、8のオリゴヌクレオチド、すなわち4対のプライマーを用いて、オリゴヌクレオチド1+2+、3+4、5+6、及び7+8を、Pfuポリメラーゼバッファ(1×=10mMのKCl、10mMの(NH4)2SO4、20mMトリスクロライド(Tris-chloride)、pH8.75、2mMのMgSO4、0.1%TritonX−100、100μg/mlのBSA)、0.25mM各dNTP、及び2.5UのPfuポリメラーゼを含む100μl反応液中で組み合わせる。完全長ダイマー産物を、ゲル精製し、1+2及び3+4の産物と、5+6及び7+8の産物とを含む二つの反応液を混合し、10サイクル間アニールし、伸長する。二つの反応液の半分を、その後混合し、フランキングプライマーを加えて完全長産物を増幅させる前に5サイクルのアニーリング及び伸長を行う。完全長産物をゲル精製し、pCR−blunt(Invitrogen)にクローン化し、個々のクローンを、シークエンシングによりスクリーニングする。
[実施例21]プラスミド構築物及びそれが免疫原を誘導する程度
プラスミド構築物、例えば、先の実施例に従って作成されたプラスミドが免疫原を誘導することを可能にする程度を、エピトープ発現核酸構築物でのAPCの形質導入又は形質移入後、APCによりエピトープの提示を測定することによって、生体外で確認する。そのような研究により、「抗原性」が測定され、ヒトAPCの使用が可能となる。そのアッセイ(試験)により、細胞表面上のエピトープ−HLAクラスI複合体の密度を定量化することによりT細胞によって認識される状況において、APCにより提示されるエピトープの能力が測定される。定量化については、APCから溶出したペプチドの量を直接測定することにより行うことができる(例えば、Sijts et al., J. Immunol. 156:683-962, 1996;Demonz et al., Nature 342:682-684, 1989参照);又は、ペプチド−HLAクラスI複合体の数については、患部の又は形質移入した標的細胞により誘発された溶解又はリンホカイン放出の量を測定し、その後同等レベルの溶解又はリンホカイン放出を得るために必要なペプチド濃度を決定することによって測定することができる(例えば、Kageyama et al.., J. Immunol. 154:567-576, 1995参照)。
一方、免疫原性は、例えば、Alexander et al. Immunity 1:751-761, 1994において詳述されているように、マウス中への生体内注射、並びにその後、細胞障害性及び増殖試験のそれぞれを用いて分析されるCTL及びHTL活性の生体外試験を通じて確認される。
例えば、生体内でCTLを誘導するための少なくとも1つのHLA−A2スーパーモチーフペプチドを含むDNAミニ遺伝子構築物の能力を確認すべく、HLA−A2.1/Kbトランスジェニック(遺伝子導入)マウスが、例えば、100μgの裸のcDNAで、筋肉内免疫化される。cDNA免疫化により誘導されるCTLのレベルを比較する手段として、動物のコントロールグループ(対照群)も、単一のポリペプチドとして合成される多様なエピトープは、ミニ遺伝子によりコード化されうるので、多様なエピトープを含む実際のペプチド組成物で免疫化される。
免疫化した動物からの脾細胞は、それぞれの組成物(ミニ遺伝子又はポリエピトープペプチドにおいてコード化されたペプチドエピトープ)毎に2回刺激され、その後51Cr遊離試験でペプチド特異的細胞障害活性について試験される。その結果から、A2拘束性エピトープに対して誘発されるCTL応答の大きさが示され、それゆえ、ミニ遺伝子及びポリエピトープワクチンの細胞内免疫原性が示される。
したがって、ポリエピトープペプチドワクチンを常用すると、HLA−A2スーパーモチーフペプチドエピトープに対して誘導されるミニ遺伝子が、免疫応答を誘発することがわかる。他のHLA−A3及びHLA−B7トランスジェニックマウスモデルを用いて同様の分析を行って、HLA−A3及びHLA−B7モチーフ又はスーパーモチーフエピトープによるCTL誘導も測定され、それによって、ミニ遺伝子が与えられたエピトープに対して誘導される適当な免疫応答を誘発することも分かる。
適当なマウスMHC分子と交さ反応させる生体内HTL、DRトランスジェニックマウスを誘導、又はそれらのエピトープのために誘導するクラスIIエピトープコード化ミニ遺伝子の能力を確認するため、1−Ab拘束性マウスは、例えば、100μgのプラスミドDNAで、筋肉内免疫化される。DNA免疫化により誘導されるHTLのレベルを比較する手段として、対照(コントロール)動物のグループ(群)も、完全Freundアジュバント中で乳化される実際のペプチド組成物で免疫化される。CD4+T細胞、すなわちHTLは、免疫化した動物の脾細胞から精製され、それぞれの組成物(ミニ遺伝子においてコード化されるペプチド)毎に刺激される。HTL応答は、3H−チミジン取込み増殖反応測定法(3H-thymidine incorporation proliferation assay)(例えば、Alexander et al. Immunity 1:751-761. 1994参照)を用いて測定される。その結果から、HTL応答の大きさが示され、それゆえ、ミニ遺伝子の細胞内免疫原性が示される。
先の実施例において記載したように構築されるDNAミニ遺伝子も、初回抗原刺激追加免疫プロトコルを用いて追加免疫剤と組み合わせて確認される。追加免疫剤は、例えば、対象とする完全タンパク質をコード化するミニ遺伝子又はDNAを発現する組換えタンパク質(例えば、Barnett et al. Aids Res. and Human Retroviruses 14, Supplement 3:S299-S309, 1998参照)或いは組換えワクシニア(例えば、Hank et al., Vaccine 16:439-445, 1998;Sedegah et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 95:7648-53, 1998;hanke及びMcMichael, Immunol. Letters 66:177-181, 1999;及びRobinson et al., Nature Med. 5:526-34, 1999参照)から構成されうる。
例えば、初回抗原刺激追加免疫プロトコルにおいて使用されるDNAミニ遺伝子の有効性は、先ずトランスジェニックマウスで評価される。この実施例においてA2.1/Kbトランスジェニックマウスは、少なくとも1つのHLA−A2スーパーモチーフベアリングペプチドを含む免疫原性ペプチドをコード化する100μgのDNAミニ遺伝子で免疫化したIMである。インキュベート期間後(3−9週間の範囲にわたる)、マウスは、DNAミニ遺伝子によりコード化される同一のシーケンスを発現する107pfu/マウスの組換えワクシニアウイルスで追加免疫したIPとなる。対照マウスは、ミニ遺伝子配列のない100μgのDNA又は組換えワクシニアで、或いはミニ遺伝子をコード化するDNAで免疫化されるが、ワクシニア追加免疫はない。さらに2週間のインキュベート期間後、直ぐにマウスからの脾細胞は、ELISPOT試験でペプチド−比活性について、検定される。さらに、脾細胞は、ミニ遺伝子及び組換えワクシニアにおいてコード化されるA2拘束性ペプチドエピトープで生体外刺激され、その後α、β及び/又はγIFN ELISAでペプチド−比活性について検定される。
初回抗原刺激追加免疫プロトコルにおいて利用されるミニ遺伝子は、HLA−A2スーパーモチーフペプチドに対してDNA単独よりも大きな免疫応答を発現することが分かる。そのような分析を、HLA−A11又はHLA−B7トランスジェニックマウスモデルを用いて行って、HLA−A3又はHLA−B7モチーフ又はスーパーモチーフエピトープによるCTL誘導をも検定することができる。ヒトにおける初回抗原刺激追加免疫プロトコルの使用については、以下の「初回抗原刺激追加免疫プロトコルを用いるCTL応答の誘導」と題した実施例において記載する。
[実施例22]予防的使用のためのペプチド組成物
本発明のワクチン組成物を、この抗原を有する腫瘍に対する危険にさらされている人において158P1D7発現を予防するために使用することができる。例えば、個体群の80%より多い標的に対しても選択される、上記実施例において選択されるCTL及びHTLエピトープ等の多様なCTL及びHTLエピトープを含むポリエピトープペプチド組成物(又はこれを含む核酸)が、158P1D7付随性腫瘍に対する危険にさらされている個体に投与される。
例えば、ペプチドベース組成物は、多様なエピトープを包含する単一のポリペプチドとして与えられる。ワクチンは、一般に、不完全Freundアジュバント等のアジュバントを含む生理溶液で投与される。初期免疫化のためのペプチドの投与量は、70kgの患者に対し、約1から約50000μgであり、一般には100〜5000μgである。ワクチンの初期投与は、PBMCサンプル中のエピトープ特異的CTL個体群の存在を測定する技術による患者における免疫応答の大きさの評価4週間後の、追加免疫投与量を伴う。さらに追加免疫投与量が、必要により投与される。組成物は、158P1D7付随疾病に対する予防として安全かつ有効であることが分かる。
一方、形質移入剤を一般に含む組成物は、従来技術において知られ、本願において開示された方法論に従って、核酸ベースワクチンの投与のために使用される。
[実施例23]未変性158P1D7から誘導されるポリエピトープワクチン組成物
未変性158P1D7ポリタンパク質シーケンスが、好ましくは、各クラスI及び/又はクラスIIスーパーモチーフ或いはモチーフのために規定されるコンピュータアルゴリズムを用いて、分析されて、多様なエピトープを含むポリタンパク質の「相対的に短い」領域が同定される。当該「相対的に短い」領域は、全体の未変性の抗原よりも長さにおいて少ないことが好ましい。多様な異なる又はオーバーラップする「ネステッド(nested)」エピトープを含むこの相対的に短いシーケンスが選択され;ミニ遺伝子構築物を精製させるために使用されうる。その構築物は、操作されて、未変性タンパク質シーケンスに対応するペプチドを発現する。当該「相対的に短い」ペプチドは、一般に長さにおいて250アミノ酸より少なく、多くの場合長さにおいて100アミノ酸より少なく、好ましくは長さにおいて75アミノ酸より少なく、より好ましくは長さにおいて50アミノ酸より少ない。ワクチン組成物のタンパク質シーケンスは、そのシーケンスの範囲内に含まれるエピトープの最大数を有する、すなわち高濃度のエピトープを有するので、そのようなワクチン組成物のタンパク質シーケンスが選択される。本願において記述したように、エピトープモチーフは、ネステッド又はオーバーラップ(すなわち互いに関連したフレームシフト)であってもよい。例えば、オーバーラップエピトープについては、二つの9マー及び一つの10マーエピトープが、10アミノ酸ペプチド中に存在しうる。そのようなワクチン組成物は、治療用又は予防用目的として投与される。
ワクチン組成物は、例えば、158P1D7抗原からの多様なCTLエピトープ及び少なくとも1つのHTLエピトープを含むであろう。このポリエピトープ未変性シーケンスは、ペプチドとして、又はペプチドをコード化する核酸シーケンスとして投与される。一方、類似物は、この未変性シーケンスから作り出されうるが、それによって、1又はそれ以上のエピトープは、ポリエピトープペプチドの交さ反応性及び/又は結合親和力特性を変化させる置換体を含む。
この実施例の形態は、免疫系処置のまだ発見されていない側面が未変性のネステッドシーケンスに適用され、それにより、治療又は予防免疫応答誘導ワクチン組成物の製造を促進するであろうという可能性に備える。さらに、そのような形態は、現に知られているHLA組成のモチーフベアリングエピトープの実現性に備える。なお、この形態(いくつかの類似した形態を除く)は、実際に未変性の158P1D7に存在している多様なペプチドシーケンスに対する免疫応答を誘導し、それゆえ、いくつかの結合エピトープ(junctional epitope)を評価する必要性をなくす。最後に、その形態は、ペプチド又は核酸ワクチン組成物を製造するときの規模について経済性を提供する。
この形態に関して、標的シーケンスを同定し、シーケンス長当たりのエピトープの最大数を同定することができる技術としてコンピュータプログラムを利用できる。
[実施例24]多様な抗原からのポリエピトープワクチン組成物
本発明の158P1D7ペプチドエピトープを、他の標的腫瘍関連抗原と併用して、158P1D7及びそのような抗原を発現する癌の予防又は治療に有用なワクチン組成物が作成される。例えば、ワクチン組成物は、158P1D7からの多様なエピトープ、並びに15891D7発現と関連する標的癌について多くの場合発現される腫瘍関連抗原を取り込む単一のポリペプチドとして与えられ、或いは1又はそれ以上の分離エピトープ(discrete epitope)の反応混液を含む組成物として投与されうる。一方、ワクチンは、ミニ遺伝子構築物として、又は生体外でペプチドエピトープを添加された樹状細胞として投与されうる。
[実施例25]免疫応答を評価するためのペプチドの使用
本発明のペプチドを使用して、特異抗体、158P1D7に誘導したCTL又はHTLに対する免疫応答を分析してもよい。そのような分析は、Ogg et al., Science 279:2103-2106, 1988によって記載された方法で行われうる。この実施例において、本発明に従ったペプチドは、免疫原としてではなく、診断又は予後徴候の目的の試薬として使用される。
この実施例において高感受性ヒト白血球抗原四量体複合体(highly sensitive human leukocyte antigen tetrameric complex)(「四量体(tetramer)」)は、例えば、疾病の異なる段階での又はA*0201モチーフを含有する158P1D7ペプチドを含む免疫化後のHLA A*0201陽性個体からの158P1D7 HLA−A*0201特異的CTL度数(frequency)の横断面分析(cross-sectional analysis)のために使用される。四量体複合体は、記載されたように(Musey et al., N Engl. J. Med. 337:1267, 1997)合成される。簡単には、精製したHLA重鎖(この実施例においてA*0201)及びβ2−ミクログロブリンが、原核発現系(prokaryotic expression system)によって合成される。重鎖は、BirA酵素ビオチン化部位(enzymatic biotinylation site)を含むシーケンスの膜内外細胞基質末端(transmembrane-cytosolic tail)及びCOOH−末端付加の欠失によって修飾される。重鎖、β2−ミクログロブリン及びペプチドは、希釈によりリフォールディングされる。45−kDリフォールディングした産物は、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(fast protein liquid chromatography)により分離され、その後ビオチン(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)、アデノシン5’リン酸及びマグネシウムの存在下、BirAによりビオチン化される。ストレプトアビジンs−フィコエリトリン複合物が、1:4のモル比で加えられ、四量体産物が1mg/mlまで濃縮される。結果として生じた産物を、四量体−フィコエリトリンと呼ぶ。
患者の血液サンプルの分析のため、約100万のPBMCが300gで5分間遠心分離され、50μlの低温リン酸緩衝生理食塩水中に再懸濁される。抗CD8−トリカラー、及び抗CD38と共に四量体−フィコエリトリンを用いて、三色分析が行われる。PBMCが、30から60分間氷上で四量体及び抗体とともにインキュベートされ、その後、ホルムアルデヒド固定前に2回洗浄される。>99.98%の対照サンプルを含むようにゲートが利用される。四量体の対照は、A*0201陰性個体及びA*0201陽性非疾的ドナーの両方を含む。四量体デ染色される細胞の割合は、その後フローサイトメトリーにより測定される。この結果により、エピトープ拘束性CTLを含むPBMCサンプルにおける細胞数が示され、それにより、158P1D7エピトープに対する免疫応答の範囲が容易に示され、それゆえ158P1D7に対する曝露又は予防的若しくは治療的応答を誘発するワクチンに対する曝露の状態が示される
[実施例26]リコールレスポンスを評価するためのペプチドエピトープの使用
本発明のペプチドエピトープを試薬として用いて、患者における急性又はリコールレスポンス(応答)等のT細胞応答が評価される。そのような分析を、158P1D7付随疾病から回復した又は158P1D7ワクチンを接種された患者について行ってもよい。
例えば、ワクチン接種されている人のクラスI拘束性CTL応答を分析してもよい。ワクチンは、いくつかの158P1D7ワクチンであってもよい。PBMCは、ワクチン接種された個体及びHLA型のものから採取される。最適には、多様なHLAスーパータイプファミリーメンバーとの交さ反応性を与えるためスーパーモチーフを有する本発明の適当なペプチドエピトープが、その後、HLA型を有する個体から誘導したサンプルの分析のため使用される。
ワクチン接種された個体からのPBMCは、フィコール−ヒストパック密度比重差(Ficoll-Histopaque density gradient)(Sigma Chemical Co.、セントルイス、ミズーリ州)で分離され、HBSS(GIBCO Laboratories)で3回洗浄され、L-グルタミン(2mM)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、及び10%熱不活性化ヒトAB血清を含有するHepe(10mM)(完全RPMI)を追加したRPMI-1640(Gibco Laboratories)中に再懸濁され、ミクロ培養形式を用いて培養される。本発明のエピトープを含む合成ペプチドが、10μg/mlで各ウェルに添加され、HBVコア128-140エピトープが、1μg/mlで各ウェルに刺激の最初の1週間の間、T細胞援助のソースとして添加される。
ミクロ培養形式において、4×105のPBMCが、100μl/ウェルの完全RPMI中、96ウェル丸底プレートでの8の同型培養において、ペプチドで刺激される。1日に3、10、100ulの完全RPMI及び20U/mlの最終濃度のrIL−2が各ウェルに添加される。7日に、培養物は、96ウェル平底プレートに移され、ペプチド、rIL−2及び105放射線照射した(3000rad)自家支持細胞で再刺激される。培養物は14日に細胞障害活性について試験される。陽性CTL応答は、先に記載された非病的対照被検者との比較に基づいて、10%特異的51Cr遊離よりも大きく示すために、8の同型培養のうち2又はそれ以上を必要とする(Reherman, et al., Nature Med. 2:1104,1109, 1996;Reherman et al., J. Clin. Invest. 97:1655-1665, 1996;及びReherman et al., J. Clin. Invest. 98:1432-1440, 1996)。
標的株細胞は、米国組織適合性学会(American Society for Histocompatibility)及びImmunogenetics(ASHI、ボストン、マサチューセッツ州)から市販され、又は記載したように(Guilhot. Et al. J. Viol. 66:2670-2678, 1992)患者のプールから株化される自家及び同種異系EBV形質転換B-LCLである。
細胞障害性試験は、下記の方法で行われる。10μMの本発明の合成ペプチドエピトープを用いて一晩インキュベートし、HBSSで4回洗浄した後1時間、100μCiの51Cr(Amersham Corp.、アーリントンハイツ、イリノイ州)で標識化した同種異系HLA対応又は自家EBV形質転換B-リンパ芽球腫株細胞(B-lymphoblastoid cell line)から、標的細胞は、構成される。
細胞溶解活性は、3000標的/ウェルを含むU底96ウェルプレートを用いて、標準4−h、分割ウェル51Cr遊離試験で測定される。シミュレートしたPBMCは、14日に、20〜50:1のエフェクター/標的(E/T)比で試験される。%細胞障害性は、式:100×[(実験的遊離−自発的遊離)/(最大遊離−自発的遊離)]から求められる。最大遊離は、洗浄剤(2%トリトンX−100;Sigma Chemical Co.、セントルイス、ミズーリ州)による標的の溶解によって測定される。自発的遊離は、全実験に対する最大遊離の<25%である。
そのような分析の結果から、HLA拘束性CTL個体群が158P1D7又は158P1D7ワクチンに対する先の曝露によって刺激されている範囲が示される。
同様に、クラスII拘束性HTL応答も分析してもよい。精製したPBMCは、96ウェル平底プレート中で1.5×105セル/ウェルの密度で培養され、10μg/mlの本発明の合成ペプチド、全158P1D7抗原、又はPHAで刺激される。細胞は、各条件に対し4〜6ウェルの同型で慣行的に培養される。培養7日後、培地は取り除かれ、10U/mlのIL−2を含む新鮮な培地と交換される。2日後、1μCiの3H−チミジンが各ウェルに添加され、インキュベーションが、さらに18時間続けられる。細胞DNAは、その後ガラス繊維マット上に収集され、3H−チミジン取込みについて分析される。抗原特異的T細胞増殖が、抗原の不存在下における3H−チミジン取込みで割った抗原存在下における3H−チミジン取込みの比として計算される。
[実施例27]ヒトにおける特異的CTL応答の誘導
本発明のCTL及びHTLエピトープを含有する免疫原性組成物に対するヒト臨床試験を、IND PhaseI、投与量の段階的増大試験(dose escalation study)として設定し、無作為化二重盲検プラセボ対照試験(randomized, double-blind, placebo-controlled trial)として行う。そのような試験は、例えば以下のようにデザインされる:
約27の個体の全部を記録し、3つのグループに分ける:
グループI:3人の被検者がプラセボを注射され、6人の被検者が5μgのペプチド組成物を注射される;
グループII:3人の被検者がプラセボを注射され、6人の被検者が50μgのペプチド組成物を注射される;
グループIII:3人の被検者がプラセボを注射され、6人の被検者が500μgのペプチド組成物を注射される。
最初の注射後4週間の後、全患者に、同一の投与量で追加免疫接種を受けさせる。
この試験において測定された終点は、ペプチド組成物の安全性及び耐容性並びにその免疫原性に関係する。ペプチド組成物に対する細胞免疫応答は、このペプチド組成物の固有活性の指標であり、それゆえこれを生物学的有効性(効力)の測定とみなすことができる。安全性及び効力の終点に関係する臨床データ及び検査値について、以下に概要を述べる。
安全性:有害事象の発生率を、プラセボ及び薬剤治療グループにおいてモニターし、程度及び可逆性の観点で評価する。
ワクチンの効力の評価:ワクチンの効力評価のため、注射前後に患者から血を取る。末梢血単核細胞を、フィコール−ハイパック比重差遠心により新鮮なヘパリン添加血から分離し、凍結培地に分注し、凍結保存する。サンプルは、CTL及びHTL活性について試験される。
ワクチンは、安全かつ有効であることが分かる。
[実施例28]158P1D7を発現している患者におけるフェーズII試験
フェーズII試験を行って、CTL−HTLペプチド組成物を、158P1D7を発現する癌になっている患者に投与する効果を試験する。その試験の主な目的は、例えば、病変(lesion)の減少(reduction)及び/又は縮小(shrinking)によって、明らかにするように、158P1D7を発現する癌患者においてCTLを誘導するために効果的な投与量及び療法を決定すること、これらの患者においてCTL及びHTL応答を誘導する安全性を確立すること、並びにCTLの活性がこれらの患者の病像(clinical picture)を改善する範囲について確認することである。そのような試験は、例えば、下記のようにデザイン(設計)される:
試験は、多数を中心に行う。試験デザインは、盲検解除で(open-labeled)、非対照で(uncontrolled)、ペプチド組成物が1回投与量として投与され次いで6週間後同一の投与量の1回の追加免疫注射により投与される投与量の段階的増大プロトコルである。投与量は、注射当たり50、500及び5000μgである。薬剤付随副作用(drug-associated adverse effect)(重症度及び可逆性)が記録される。
三つの患者群性体がある。第一群(グループ)は、50μgのペプチド組成物を注射され、第二及び第三群は、500及び5000μgのペプチド組成物をそれぞれ注射される。各群内の患者は、21−60歳にそろえ、多種多様な民族バックグラウンドの標本を示す。それらの全てが、158P1D7を発現する腫瘍を有する。
臨床上の徴候又は抗原特異性T細胞応答をモニターして、ペプチド組成物を投与する効果を評価する。ワクチン組成物は、158P1D7付随疾病の治療において安全かつ有効であることが分かる。
[実施例29]初回抗原刺激追加免疫プロトコルを用いるCTL応答の誘導
前記「プラスミド構築物及びそれが免疫原を誘導する程度」と題した実施例において記載したようなトランスジェニックマウスにおけるDNAワクチンの効力を確認するために使用されるプロトコルと根底にある原理において類似する初回抗原刺激追加免疫プロトコルも、ヒトに対するワクチンの投与のために使用される。そのようなワクチン療法には、例えば、裸のDNAの初期投与、これに続く、ワクチンをコード化する組換えウイルスを用いる追加免疫、或いは組換えタンパク質/ポリペプチド、又はアジュバント中に投与したペプチド混合物の初期投与が含まれる。
例えば、初期免疫化を、多様な部位に0.5〜5mgの量でIM(又はSC若しくはID)投与した裸の核酸の形態にある『「ミニ遺伝子」マルチエピトープDNAプラスミドの構築』と題した実施例において構築した発現ベクター等の発現ベクターを用いて行ってもよい。核酸(0.1から1000μg)も、遺伝子銃を用いて投与することができる。3〜4週間のインキュベーション期間後、追加免疫投与量の投与がなされる。追加免疫を、5×107から5×109pfuの投与量で投与される組換え鶏痘ウイルスとすることができる。MVA、カナリア痘、アデノウイルス、又はアデノ関連性ウイルス等の別の組換えウイルスも、追加免疫として使用することができ、或いはポリエピトープタンパク質又はペプチドの混合物を投与することができる。ワクチン有効性の評価のため、患者血液サンプルを、免疫化前並びに初期のワクチン及び追加免疫投与量のワクチンの投与に続く間隔で得る。末梢血単核細胞が、フィコール−ハイパック密度比重差遠心(Ficoll-Hypaque density gradient contrifugation)により新鮮なヘパリン添加血から分離され、凍結培地に分注され、冷凍保存される。サンプルは、CTL及びHTL活性について試験される。
それらの結果の分析から、158P1D7に対する治療的又は予防的免疫を得るために十分な応答の大きさを生ずることが示される。
[実施例30]樹状細胞(DC)を用いるワクチン組成物の投与
本発明のペプチドエピトープを含有するワクチンを、APC又はDC等の「専門の」APCを用いて投与することができる。この実施例において、ペプチドパルスしたDCを患者に投与して、生体内でCTL応答を刺激する。この方法では、樹状細胞が単離され、増殖され、本発明のペプチドCTL及びHTLエピトープを含むワクチンでパルスされる。樹状細胞を元の患者に注入して、生体内でCTL及びHTL応答を誘発させる。誘発したCTL及びHTLは、それぞれワクチンにおけるエピトープが誘導される158P1D7タンパク質を有する標的細胞の破壊をし又は破壊を容易にする。
エピトープ含有ペプチドの反応混液が、PBMCに対し生体外投与され、それからDCが分離される。ProgenipoetinTM(モンサント、セントルイス、ミズーリ州)又はCSF/IL−4等のDCの収集を容易にする医薬を用いることができる。ペプチドでDCをパルスした後、及び患者に再注入する前に、DCを洗浄して未結合のペプチドが取り除かれる。
臨床上認識され、臨床上の結果に基づき当業者により容易に測定されているように、患者に再注入したDCの数は変動しうる(例えば、Nature Med. 4:328, 1998;Nature Med. 2:52, 1996及びProstate 32:272, 1997参照)。患者当たり2〜50×106個のDCが一般に投与されるが、107又は108のようにより大きい数のDCも与えられうる。そのような細胞個体群は一般に50〜90% DCの間で含む。
いくつかの形態において、ペプチド添加PBMCが、DCの精製をしないで、患者に注射される。例えば、ProgenipoietinTM等の薬剤での治療後に生成されるPBMCが、DCの精製をしないで、患者に注射される。投与されるPBMCの全数は、多くの場合、108から1010にわたる。一般に、患者に注射される細胞投与量は、例えば、免疫蛍光分析により特異的抗DC抗体を用いて測定されるように、各患者の血液中のDCの割合に基づく。したがって、例えば、ProgenipoietinTMが、投与された患者の末梢血中の2%DCを動態化する場合には、その患者は5×106個のDCを受け取るようになり、その後患者は2.5×108ペプチド添加PBMCの全部を注射されるであろう。ProgenipoietinTM等の薬剤により動態化されるDCの割合は、一般に2〜10%の間であると推定されるが、当業者において認識されているように変動しうる。
CTL/HTL応答の生体外活性化
一方、158P1D7抗原似に対する生体外CTL又はHTL応答は、組織培養において、DC等のAPCのソース及び免疫原性ペプチドと共に患者の若しくは遺伝的適合性の、CTL又はHTL前駆細胞をインキュベートすることにより誘発されうる。前駆細胞が活性化され、効果細胞に拡がる適当なインキュベーション時間(一般には約7〜28日)後、細胞は、患者に注入される。なお、それらの細胞は、それらの特異的な標的細胞、すなわち腫瘍細胞の破壊(CTL)をし又は破壊(HTL)を促進する。
[実施例31]モチーフベアリングペプチドを同定及び確認する別の方法
モチーフベアリングペプチドを同定及び確認する別の方法は、それらを規定されたMHC分子を有する細胞から溶出することである。例えば、組織適合試験(tissue typing)のために使用されるEBV形質転換B株細胞は、それらがどちらのHLA分子を発現するか決定するため広範に特徴づけられている。一定の場合には、これらの細胞は、単一型のHLA分子のみを発現する。これらの細胞は、対象となる抗原、例えば、158P1D7を発現する核酸で形質移入されうる。形質移入の結果として生成したペプチドの内在性抗原プロセッシングにより製造されたペプチドは、その後、細胞内でHLA分子と結合し、輸送され、細胞の表面上に示されるであろう。ペプチドは、その後穏和な酸性条件にさらされてHLA分子から溶出され、それらのアミノ酸配列が、例えば、質量分析(例えば、Kubo et al., J. Immunol. 152:3913, 1994)により決定される。特定のHLA分子を結合するペプチドの大多数は、モチーフベアリングであるため、これは、細胞において発現した特定のHLA分子と関連したモチーフベアリングペプチドを得るための代替モダリティー(modality)である。
一方、内在性HLA分子を発現しない株細胞は、単一のHLA対立遺伝子をコード化する発現構築物で形質移入されうる。これらの細胞は、その後記載されているように使用されうる、すなわちそれらは、その後、細胞表面上に存在していた158P1D7に対応するペプチドを分離するよう158P1D7をコード化する核酸で形質移入されうる。そのような分析から得られるペプチドは、細胞において発現される単一のHLA対立遺伝子との結合に対応するモチーフ(又は複数のモチーフ)を有するであろう。
当業者により認識されているように、当業者は、1以上のHLA対立遺伝子を有する細胞について同様の分析を行うことができ、その後、発現した各HLA対立遺伝子に対して特異的なペプチドを測定することができる。さらに、当業者は、タンパク質抗原を用いて付加すること等の形質移入以外の手段を用いて細胞に対する抗原のソースを与えることができるということも認識するであろう。
[実施例32]相補ポリヌクレオチド
158P1D7コード化シーケンスに対して相補的なシーケンス、又はそのいくつかの部分を使用して、自然発生158P1D7の発現の検出、減少、又は阻害をする。約15から30までの塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用が記載されるが、本質的に同一の方法が、より小さい又はより長いシーケンス断片について、使用される。適当なオリゴヌクレオチドが、例えば、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)及び158P1D7のコード配列を用いて、設計される。転写を阻害するために、相補オリゴヌクレオチドが、最もユニークな5’配列から設計され、コード配列と結合するプロモーターを妨げるために使用される。翻訳を阻害するため、相補オリゴヌクレオチドは、158P1D7コード化転写物とリボソーム結合することを妨げるよう設計される。
[実施例33]158P1D7特異抗体を用いる天然の又は組換え型158P1D7の精製
天然の又は組換え型158P1D7は、158P1D7に特異的な抗体を用いて、イムノアフィニティークロマトグラフィーにより実質的に精製される。イムノアフィニティーカラムは、抗158P1D7抗体を、CNBr活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)等のクロマトグラフ樹脂と共有結合させることにより構築される。結合後、樹脂は、製造指示書に従って、ブロックされ、洗浄される。
158P1D7を含む培地を、イムノアフィニティーカラムに通じ、そのカラムを、優先的な光吸収を可能にする条件下(例えば、洗浄剤の存在下にある高イオンバッファ)、洗浄する。そのカラムは、抗体/158P1D7結合を分裂させる条件下(例えば、pH2からpH3のバッファ、又は尿素若しくはチオシアネートイオン等の高濃度のカオトロープ(chaotrope))、溶出され、GCR.Pが採取される。
[実施例34]158P1D7と相互に作用する分子の同定
158P1D7、又はその生理活性断片は、121Iボルトン−ハンター試薬で標識化される(Bolton et al. (1973) Biochem. J. 133:529参照)。マルチウェルプレートのウェル中に以前に配置した候補分子は、標識化した158P1D7とともにインキュベートされ、洗浄され、標識化した158P1D7を含むいくつかのウェルが、試験される。異なる濃度の158P1D7を用いて得られたデータを用いて、158P1D7の数、親和力、候補分子との会合の値を計算する。
[実施例35]158P1D7腫瘍増殖促進の生体内試験
158P1D7タンパク質の増殖した腫瘍細胞への効果を、膀胱癌細胞における遺伝子の過剰発現により生体内で確認することができる。例えば、SCIDマウスは、tkNeo空ベクター又は158P1D7を含む1×106膀胱癌細胞(SCaBER、UM−UC−3、HT1376、RT4、T24、TCC−SUP、J82及びSW780細胞等)をそれぞれの脇腹にSQ注射されうる。
少なくとも2つのストラテジーを用いてよい:(1)プロモーターが宿主細胞系と適合されるように、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504号)、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウィルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから、或いは例えば、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター等の異種哺乳類のプロモーターから得られる構成プロモーター等、プロモーターの制御下の構成158P1D7発現が与えられる。(2)与えられるプロモーターが宿主細胞系と適合されるので、エクジソン(ecdysone)、tet等、誘導ベクター系の制御下の制限されている発現が使用されうる。その後、腫瘍体積が、明白な腫瘍の外観からモニターされ、158P1D7発現細胞がより速い速度で増殖するかどうか及び158P1D7発現細胞により生じた腫瘍が病原力の変化(例えば、転移の亢進、血管新生化、化学療法剤に対する応答性の減少)の特徴を示すかどうか測定するための時間にわたって続けられる。さらに、マウスは、同一の細胞を同所移植されて、158P1D7が膀胱における局所増殖、或いは細胞の、特に肺又はリンパ節に、転移する能力に効果を及ぼすかどうか測定される(Fu, X., et al., Int. J. Cancer, 1991. 49:p.938-939;Chang, S., et al., Anticancer Res., 1997. 17:p.3239-3242;E. A., et al., J. Urol., 1999. 162:p.1806-1811)。さらに、この試験は、例えば、158P1D7抗体又は細胞内抗体(intrabody)及び158P1D7アンチセンス分子又はリボザイム等の候補治療組成物の158P1D7阻害性効果を確認するのに有用である。
試験を、下記プロトコルを用いて行った。雄ICR−SCIDマウス、5−6週齢(Charles River Laboratory、ウィルミントン、MA)を使用し、研究動物のケア及び使用のためのNIHガイド(NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って厳重な管理環境下で管理した。158P1D7移入UM−UC−3細胞及び親細胞を、SCIDマウスの皮下に注射した。各マウスに、50%(v/v)のMatrigel中に懸濁した4×106の細胞を入れた。腫瘍の大きさを、2週間キャリパ(caliper)測定によりモニターした。最長寸法(L)及びそれに対して垂直の寸法(W)をとって、式W2×L/2により腫瘍体積を計算した。マン−ホイットニーU検定(Mann-Whitney U test)を用いて、腫瘍増殖の相違を評価した。全検定は、α=0.05での両側とした。これらの結果から、158P1D7はマウスにおける膀胱癌の増殖を亢進するということが示される(図27)。
[実施例36]生体内での膀胱及び前立腺腫瘍の158P1D7モノクローナル抗体介在阻害
癌組織における158P1D7の著しい発現、並びに正常組織におけるその制限された発現は、158P1D7を、抗体治療として優れた標的にする。モノクローナル抗体標的が細胞表面タンパク質である場合では、抗体は、腫瘍増殖を阻害することについて有効であることが示されている(例えば、Saffran, D., et al., PNAS 10:1073-1078又はURL:pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.051624698参照)。前立腺癌におけるPSA及びPAP等、標的が細胞表面上にない場合では、抗体が、それらの抗体のタンパク質を発現する細胞の増殖を認識及び阻害することは今でも示されている(Saffran, D.C., et al., Cancer and Metastasis Reviews, 1999. 18: p.437-449)。制限された発現プロファイルを含むいくつかの細胞タンパク質では、158P1D7は、T細胞ベースの免疫療法のための標的となる。
したがって、ヒト膀胱癌マウスモデルにおける抗158P1D7mAbsの治療の有効性は、実施例(158P1D7を発現するように設計されている「158P1D7腫瘍増殖促進の生体内試験」と題した実施例)において記載したように、158P1D7発現膀胱癌異種移植片又は膀胱癌株細胞でモデル化される。
腫瘍増殖及び転移形成についての抗体有効性が、例えば、マウス同所性膀胱癌異種移植モデルで、確認される。抗体は、この実施例において論じるように、未結合でありうるが、或いは従来技術において認識されるように、治療療法と複合化されうる。抗158P1D7 mAbsが、158P1D7発現膀胱及び前立腺腫瘍の形成を阻害するということが確認される(図30及び31)。抗158P1D7mAbsは、株化した同所性の腫瘍増殖の遅延及び腫瘍ベアリングマウスの生存の延長について試験される。これらの結果から、膀胱及び前立腺癌の局所及び進行段階の治療における抗158P1D7mAbsの有用性が示される(例えば、Saffran, D., et al., PNAS 10:1073-1078又はURL:pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.051624698参照)。
抗158P1D7mAbsの投与は、株化した同所性の腫瘍増殖を遅延させ、遠位の部位に対する転移を阻害し、腫瘍ベアリングマウスの生存の著しい延長をもたらす。これらの研究から、158P1D7が免疫療法のための誘引性の標的であり、局所性及び転移性膀胱癌の治療のための抗158P1D7mAbsの治療可能性を示すということが示される。
この実施例では、SCIDマウスにおいて増殖したヒト膀胱腫瘍の増殖を効果的に阻害するために未結合の158P1D7モノクローナル抗体;それに応じたそのような効果的なモノクローナル抗体の組み合わせも効果的である。
多様な未結合158P1D7mAbsを用いる腫瘍阻害
材料及び方法
158P1D7モノクローナル抗体:
モノクローナル抗体は、「158P1D7モノクローナル抗体の生成」と題した実施例において記載されるように、158P1D7に対して産生される。抗体は、158P1D7を結合する能力について、従来技術として公知の技術に従って、ELISA、ウエスタンブロット、FACS、及びイムノプレシピテーションによって特徴づけられる。ELISA及びウエスタン分析により測定されるように、抗158P1D7mAbsのエピトープマッピングデータから、158P1D7タンパク質におけるエピトープが認識される。これらの抗体を含む膀胱癌組織及び細胞の免疫組織化学的分析が行われる。
モノクローナル抗体は、プロイテイン−Gセファロースクロマトグラフィーによって腹水又はハイブリドーマ腫瘍組織培養上清から精製され、PBSに対して透析され、フィルター無菌化され、−20℃で保存される。タンパク質の定量は、ブラッドフォード法(Bio−Rad、ハーキュリーズ(Hercules)、CA)により、行われる。治療用モノクローナル抗体又は個々のモノクローナル抗体の混合物を含む反応混液が、調製され、膀胱腫瘍異種移植片の皮下又は同所性の注射を受けるマウスの治療のために使用される。
膀胱癌株細胞
158P1D7を発現する膀胱癌株細胞(Scaber、J82、UM−UC−3、HT1376、RT4、T24、TCC−SUP、I82及びSW780)は、Hubert, R.S., et al., STEAP:ヒト前立腺腫瘍において高発現される前立腺特異細胞表面抗原(a prostate-specific cell-surface antigen highly expressed in human prostate tumors). Proc Natl Acad Sci USA, 1999. 96(25):14523-8において記載されるように、レトロウイルス遺伝子導入によって生成される。抗158P1D7染色は、FITC接合ヒツジ抗マウス抗体を用いることによって検出され、Coulter Epics−XLフローサイトメトリーでの分析が続いて行われる。
生体内マウスモデル
皮下(s.c.)腫瘍は、雄SCIDマウスの右脇腹において、Matrigel(Collaborative Research)を含む1:1希釈で混合した1×106個の158P1D7発現膀胱癌細胞を注射することによって生成される。腫瘍形成についての抗体有効性を試験するため、i.p.抗体注射が腫瘍細胞注射と同日に開始される。対照として、マウスが、精製したマウスIgG(ICN)又はPBSのどちらか;或いはヒト細胞において発現されない無関連抗原(irrelevant antigen)を認識する精製したモノクローナル抗原を注射される。予備試験では、腫瘍増殖におけるマウスIgG又はPBS間で、違いは見出されない。腫瘍の大きさは、ノギス(vernier caliper)測定により測定され、腫瘍体積は、長さ×幅×高さとして計算される。直径1.5cmより大きいs.c.腫瘍を有するマウスは、犠牲にされる。抗158P1D7 mAbsの循環レベルが、捕捉ELISAキット(Bethy Laboratories, Montogomery, TX)により測定される(例えば、Saffran, D., et al., PNAS 10:1073-1078参照)。
同所性の注射は、例えば、二つの別の形態で、例えば、ケタミン/キシラジンによる麻酔下、行われる。第一の形態では、膀胱癌細胞の膀胱内注射剤が、膀胱内に尿道を通じて直接投与される(Peralta, E. A., et al., J. Urol., 1999. 162:1806-1811)。第二の形態では、「オンプランテーション(onplantation)」(Fu, X., et al., Int. J. Cancer, 1991. 49: 938-939;Chang, S., et al., Anticancer Res., 1997. 17:p.3239-3242)と名付けられるが、腹壁を切開して、膀胱を露出させ、s.c.腫瘍に由来する膀胱腫瘍組織片(大きさにおいて1−2mm)を、膀胱の外壁上に外科的に接着させる。抗体は、腫瘍の注射又はオンプランテーションの時、或いは腫瘍株化をさせるため1−2週間後にマウスのグループに投与されうる。
158P1D7発現膀胱癌腫瘍の増殖を阻害する抗158P1D7mAbs
一つの形態として、抗158P1D7mAbsの腫瘍形成への効果が、膀胱オンプランテーション同所性モデルを使用することによって試験される。s.c.腫瘍モデルと比較して、膀胱上に腫瘍組織の直接の外科的な付着を必要とする同所性モデルでは、局所的な腫瘍増殖、遠位部位における転移の発生、及び引き続いて起こる死亡が、結果として起こる(Fu, X., et al., Int. J. Cancer, 1991. 49: 938-939;Chang, S., et al., Anticancer Res., 1997. 17:p.3239-3242)。この特徴は、ヒト病気の進行のより典型的な同所性モデルを作り、臨床上適切な終点において、それをmAbsの治療効果、並びに他の治療様式に従わせる。
したがって、158P1D7発現腫瘍細胞は、同所性オンプラントされ、2日後、マウスは、二つのグループに分けられ、2から5週間、週に3回、a)50−2000μg、通常200−500μgの抗158P1D7 Ab、又はb)PBSで治療される。マウスは、腫瘍増殖の徴候について毎週モニターされる。
記載したように、同所性の膀胱癌モデルの主な利点は、転移の発生を研究する能力である。株化した同所性の腫瘍を有するマウスにおける転移の形成は、肺及びリンパ節を含む組織部分の組織学的分析により研究される(Fu, X., et al., Int. J. Cancer, 1991. 49: 938-939;Chang, S., et al., Anticancer Res., 1997. 17:p.3239-3242)。さらに、抗158P1D7抗体を用いてIHC分析が、その組織において行われうる。
株化した同所性の158P1D7発現膀胱腫瘍を有するマウスは、4週間の期間にわたって抗158P1D7mAbs又はPBSの1000μg注射を投与される。両方のグループのマウスでは、高い腫瘍負荷量を設定させておき、マウスの肺及びリンパ節における転移形成の度数が確実に高くされる。マウスはその後、犠牲にされ、それらの局所膀胱癌並びに肺及びリンパ節組織が、組織学及びIHC分析により、腫瘍細胞の存在について分析される。
別の形態として、抗158P1D7 mAbsの腫瘍増殖への効果を、下記プロトコルを用いて試験した。雄ICR−SCIDマウス、5−6週齢(Charles River Laboratory、ウィルミントン、MA)を使用し、研究動物のケア及び使用のためのNIHガイドに従って厳重な管理環境下で管理した。
UG−B1、患者膀胱癌を使用して、異種移植モデルを確立した。SCIDマウスにおいて定期的に管理した保存腫瘍を、無菌切開し、細かに切り刻み、プロナーゼ(Calbiochem、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて温浸した。生成させた細胞懸濁液を、37℃で一晩インキュベートして、均一単細胞懸濁液を得た。各マウスにおいて、その脇腹の皮下部に2.5×106セルを入れた。158P1D7に対するマウスのモノクローナル抗体を、その研究において、500μg/マウスの投与量で試験した。PBSを、対照として用いた。MABsを、合計12投与量について週2回、腹膜内投与し、これを腫瘍細胞注射と同日に開始した。腫瘍の大きさを、週2回、キャリパ測定によりモニターした。最長寸法(L)及びそれに対して垂直の寸法(W)をとって、式W2×L/2により腫瘍体積を計算した。その結果から、抗158P1D7mAbsはマウスにおけるヒト膀胱癌腫の増殖を阻害する能力があるということが示される(図30)。
株化した158P1D7発現前立腺癌腫瘍の増殖を遅延させる抗158P1D7mAbs
別の形態として、抗158P1D7mAbsの腫瘍増殖への効果を、下記プロトコルを用いて試験した。雄ICR−SCIDマウス、5−6週齢(Charles River Laboratory、ウィルミントン、MA)を使用し、研究動物のケア及び使用のためのNIHガイドに従って厳重な管理環境下で管理した。LAPC−9AD、アンドロゲン依存ヒト前立腺癌を使用して、異種移植モデルを確立した。保存腫瘍を、SCIDマウスにおいて定期的に管理した。移植の日に、保存腫瘍を、収集し、壊死組織を取り除き、1mm3の小片まで細かに切り刻んだ。各マウスにおいて、右脇腹の皮下部に4つの小片の組織を入れた。158P1D7に対するマウスモノクローナル抗体を、それぞれ500μg/マウス及び500μg/マウスの投与量で試験した。PBS及び抗KLHモノクローナル抗体を、コントロール(対照)として使用した。研究コホートを、各グループにおいて6マウスの4グループで構成した。Mabsを、合計8回投与量で週2回腹膜内投与した。治療を、腫瘍体積が45mm3に達したときに開始した。腫瘍の大きさを、週2回キャリパ測定によりモニターした。最長寸法(L)及び及びそれに対して垂直の寸法(W)をとって、式W2×L/2により腫瘍体積を計算した。適用可能な場合には、スチューデントのt検定及びマン−ホイットニーU検定を用いて、腫瘍増殖の相違を評価した。全検定は、α=0.05での両側とした。これらの結果から、抗158P1D7mAbsはマウスにおいて株化したヒト膀胱癌腫の増殖を遅らせる能力があるとということが示される(図31)。
これらの研究から、膀胱癌及び前立腺癌の惹起及び進行における抗158P1D7の抗腫瘍効果が広範となることが示され、抗158P1D7抗体がマウスモデルにおける158P1D7発現組織(表1)の増殖を阻害すること及び遅延させることにおいて効果的であることが示される。抗158P1D7抗体は、腫瘍形成を阻害し、既に株化した腫瘍の増殖を遅らせ、治療したマウスの生存を延長させる。さらに、抗158P1D7mAbsは、たとえ大きい腫瘍負荷量下であっても、局所性の膀胱癌の遠位部位への拡散に対して著しい阻害効果を示す。したがって、抗158P1D7mAbsは、腫瘍増殖の減少、転移の減少、及び生存の延長を含む主な臨床上関連性のある終点において効果的である。
[実施例37]公知のシーケンスに対する158P1D7のホモロジー比較
158P1D7タンパク質は、95.1kDaの計算された分子量及び6.07のplの841アミノ酸を有する。158P1D7は、原形質膜蛋白(0.46 PSORT http://psort.nibb.ac.jp/form.html)でありそれが拡散タンパク質である可能性を有する(PSORTにより65% http://psort.nibb.ac.jp/form2.html)と予想される。158P1D7は、aa626から627の間でポテンシャルな切断部位を有し、aa3−25でポテンシャルシグナルを有する。
158P1D7は、アミノ末端が、タイプ1の膜内外タンパク質(www at.cbs.dtu.dk/services/TMHMMにある)のトポロジーと一致して、外側に存するということについて高い可能性を有するアミノ酸611−633からの単一の膜内外タンパク質領域を含む。可視化されるものはまた、アミノ末端シグナルペプチドの存在と一致して、アミノ酸3−25からの短い疎水性の伸長となる。TMBASE(K. Hofmann, W. Stoffel, TMBASE−A 膜内外タンパク質セグメントのデータベース(database of membrane spanning protein segments) Biol. Chem. Hoppe-Seyler 374:166, 1993)を利用するホフマン(Hofmann)及びストッフェル(Stoffel)のTmpredアルゴリズムに基づくと、158P1D7は、アミノ末端が内側に、カルボキシル末端が外側に存するという配位をもつアミノ酸609−633からの一次膜内外領域及びアミノ酸3−25からの二次膜内外領域(プロット上で0より大きい値をもつ近接するアミノ酸は、膜内外領域であるという高い可能性を有する)を含む。別のモデルも、158P1D7は、アミノ末端が外側にありタンパク質がアミノ酸3−25からの二次膜内外ドメインシグナルペプチド及びaa615−633からの一次膜内外ドメインを含むタイプ1の膜内外タンパク質であると予想される。膜内外予想アルゴリズムは、(.expasy.ch/tools/)のwwwで検出されるExPasy分子生物学サーバーを通じて入手される。
(.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)のwwwで検出されるN.C.B.I.のPubMedウェブサイトの使用により、158P1D7が、97%同定及び97%ホモロジー(図4及び図5A)で、未知の機能の仮想タンパク質FLJ22774(PubMed登録:gi14149932)と最良のホモロジーを示すということがタンパク質レベルで発見された。158P1D7タンパク質は、36%同定及び52%ホモロジー(図5B)でIGFALS(インシュリン様成長因子結合タンパク質、酸不安定サブユニット(PubMed登録:gi6691962)と類似したヒトタンパク質と、25%同定及び39%ホモロジーでスリット(Slit)タンパク質と、並びに26%同定及び43%ホモロジーでFLRT2、及び34%同定及び53%ホモロジーでFLRT3を含むタンパク質FLRT(フィブロネクチン様ドメイン含有高ロイシン膜内外タンパク質のロイシンリッチ反復膜内外ファミリーとのホモロジーを示す。
インシュリン様成長因子(IGF)は前立腺、乳、脳及び卵巣の癌を含む腫瘍の増殖において重要な役割を果たすことが明らかにされている(O’Brian et al., Urology. 2001, 58:1;Wang J et al Oncogene. 2001, 20:3857;Helle S et al, Br J Cancer.2001, 85:74)。IGFは、特異細胞表面レセプターと結合することによって、並びに生存及びマイトジェン経路を活性化することによって発癌効果を生ずる(Babajko S et al, Med Pedoatr Oncol. 2001, 36:154;Scalia P et al, J Cell Biochem. 2001, 82:610)。インシュリン様成長因子の活性は、IGF結合タンパク質(IGF−BP)及びIGF−BPの酸不安定サブユニット(ALS)により制御される(Zeslawski W et al, EMBO J. 2001, 20:3638;Jones JI及びClemmons DR. Endocr. Rev. 1995, 16:3)。プラズマ中に、最大量のIGFが、IGF−BP及びALSを含む三元複合体として存在する(Jones JI及びClemmons DR. Endocr. Rev. 1995, 16:3)。ALSとの会合は、脈管構造における三元複合体の保持を可能にし、その寿命を延ばす(Ueki et al, Proc Natl Acad Sci U S A 2000, 97:6868)。マウスにおける研究から、変異体ALSを保有するマウスが増殖不足を示すということを明らかにし、ALSが腫瘍細胞の増殖において決定的な役割を果たすということを示すことによって、細胞増殖に対するALSの貢献度が示される(Ueki et al, Proc Natl Acad Sci U S A 2000, 97:6868)。158P1D7タンパク質は、IGF三元複合体の形成を促進することにおいて、IGF−ALS様タンパク質として貢献する。158P1D7誘導IGF複合体形成は、生体内で悪性腫瘍の増殖を促進する158P1D7を発現する腫瘍細胞の増殖の増加を引き起こす。IGF複合体の誘導は、誰にも阻害する中和能力、又は促進形態、三元相互作用を高める能力を有するモノクローナル抗体について測定することを可能にする。
スリットタンパク質を、軸索ガイダンス及びオリエンテーションを規定する分泌タンパク質としてショウジョウバエで先ず同定した(Rajagopalan S et al, Cell. 2000, 103:1033;Chen J et al, Neurosci. 2001, 21:1548)。哺乳類相同体を、マウス及びヒトにおいてクローン化した。ここでマウス及びヒトは、遊走及び走化性を制御することが示される(Wu J et al, Nature. 2001, 410:948;Brose K Tressier M, Curr Opin Neurobiol. 2001, 10:95)。スリットタンパク質は、二つの異なる細胞下部位(subcellular site)で、細胞段階次第で上皮細胞の内部に、主にミトコンドリア中に局在し及びより周密的な細胞における細胞表面を標的とするスリット3と共に、局在する(Little MH et al, Am J Physiol Cell Physiol. 2001. 281:C486)。示差スリット局在は、スリットが分泌され、細胞表面と会合され、又はミトコンドリア内で保持されるかどうか別々に作用する可能性があることを示唆する。158P1D7タンパク質は、細胞表面上でラウンドアバウトレセプター(roundabout receptors(Eobos))と結合するという点で、スリット様タンパク質として作用する。158P1D7は、マウスSlitrk6遺伝子、ロイシンリッチレセプター(LRRs)の新ファミリーのメンバーとのホモロジー(全長に沿って83%同一性)を有する。LRRsのスリットファミリーは、神経突起増殖及び発生の間の軸索ガイダンスに含まれる。これらのタンパク質も、肺、腎臓及び他の器官における形態形成を枝分かれさせるための役割を与えることによって、器官発生において役割を果たす。いくつかのLRRsの結晶構造が決定されている。これらのタンパク質は、中心可動部の両側においてLRRsを有する蹄鉄様の形をとる。この蹄鉄形は、他のタンパク質(結合パートナー)が相互に作用する場合には、中央ポケットを形成する可能性がある。用語 結合パートナーには、リガンド、レセプター、基質、抗体、及び結合パートナーの特定の位置及び158P1D7ポリペプチド間での接触又は近接により158P1D7ポリペプチドと相互に作用する他の分子が含まれる。158P1D7ポリペプチドの結合パートナーは、器官内で、上皮及び間葉細胞の両方において発現される。LRRsのスリットファミリーの公知の結合パートナーには、遺伝子及びグリピカン(glypican)の両方のRoboファミリーが含まれる。これらのポテンシャルタンパク質相互作用パートナーの両方は、ヒト癌において異常発現される。Roboは、接着分子として働くIg様タンパク質である。特異的Robo及びスリットタンパク質の相互作用により、細胞内シグナル伝達カスケード次第で、反発又は誘引の何れかである最終的な結果を伴って細胞遊走がもたらされる。スリットのRoboとの相互作用を阻害する突然変異は、発現の間、ニューロンの遊走を防止することをできなくする原因となる。さらに、機能的な相互作用を阻害する突然変異は、発現している肺における器官不全及び過剰増殖を招く。変異分析により、さらにLRR領域がこれらのレセプターの生物活性のために必要とされるということが明らかにされている。158P1D7は、膀胱及び肺に由来する癌を含む各種のヒト癌において過剰発現される。このタンパク質の異常発現は、158P1D7と近接した細胞の表面上の特異結合パートナーとの間のタンパク質相互作用を阻害又は促進することより、細胞増殖の増強、生存、転移の増大及び血管形成を招く。158P1D7のRoboレセプター(Robo−1、−2、−3及び−4)との結合は、生体外で、組換えタンパク質として、かつ細胞表面分子として観察される。生物学的効果は、Robo−1、−2、−3又は−4レセプター又はグリピカン結合パートナーが細胞表面上で158P1D7と結合するときに、誘発される。これらの活性は、細胞ベースの測定で、接着、遊走の増大又は反発により検出される。158P1D7及びRoboレセプター間の相互作用は、158P1D7発現腫瘍細胞と内皮又はRoboレセプターを発現する他の細胞型間の接着の増大を招き、腫瘍細胞の拡散及び転移並びに血管形成の増大を招く。さらに、158P1D7及びRoboレセプター間の会合は、生体外測定において、相互作用を遮断する(又は高める)能力を有するモノクローナル抗体についてスクリーニングすることを可能にする。そのような抗体は、158P1D7発現腫瘍の増殖への調節効果を有する。
膜内外タンパク質のFLRT(フィブロネクチン様ドメイン含有高ロイシン膜内外タンパク質ファミリーは、高システインドメイン、フィブロネクチン/コラーゲン様モチーフ及び細胞内末端(intracellular tail)のそばに隣接した10高ロイシン反復含む三つのメンバー、FLRT1、FLRT2及びFLRT3を有する(Lacy SE et al, Genomics 1999, 62:417)。三つのタンパク質の全体構造に基づくと、細胞付着における役割及びレセプターシグナル伝達が予想される。FGF(線維芽細胞成長因子と共発現され、活性化後に誘導され、FGFによるシグナル伝達の阻害後に減数分裂される、FLRT3のアフリカツメガエルの相同分子種(XFLRT3)を、同定した(Bottcher RT et al, Nature Cell Biol 2004, 6:38)。FGFR(FGFレセプター)とXFLRT3との間の相互作用は、XFLRT3がMAPキナーゼ経路によりFGF誘導シグナル伝達を調節することを示す。158P1D7タンパク質は、MAPキナーゼ(ERK−1及びERK−2)経路によりFGF誘導シグナル伝達の調節を誘発するFGFRとの複合体を形成する。FGF誘導シグナルは、細胞の増殖能力の増大を招く158P1D7の発現によって増強される。これは、158P1D7を発現する癌細胞の制御不能の増殖を著しく促進し、生体外で優位な細胞増殖に貢献する。158P1D7タンパク質とFGFRとの相互作用は、誰にもこれら二つの分子の会合を阻害する(又は高める)能力を有するモノクローナル抗体についてスクリーニングすることを可能にする。そのような抗体は、158P1D7発現腫瘍の増殖への調節効果を有する。
[実施例38]シグナル伝達経路の同定及び確認
多くの哺乳類のタンパク質は、シグナル伝達分子と相互に作用し、シグナル伝達経路を制御することに関与すると報告されている(J Neurochem. 2001; 76:217-223)。特に、IGF及びIGF−BPは、マイトジェン(分裂促進)及び生存経路を制御すると示されている(Babajko S et al., Med Pediatr Oncol. 2001, 36:154;Scalia P et al, J Cell Biochem. 2001, 82:610)。免疫沈降法及びウエスタンブロット技術を用いて、158P1D7と相互作用し、シグナル伝達現象を媒介するタンパク質が同定される。FAK、Rho、Rac−1等、並びにERK、p38等のマイトジェン/生存カスケードを含む、PI3K、AKT、等のリン脂質経路、接着及び遊走経路を含む、癌生物学において役割を果たすと知られているいくつかの経路は、158P1D7によって制御される(Cell Growth Differ. 2000, 11:279;J Biol Chem. 1999, 274:801;Oncogene. 2000, 19:3003, J. Cell Biol. 1997, 138:913)。生物情報学的分析から、158P1D7は、セリン/スレオニン並びにチロシンキナーゼによってリン酸化されうるということが明らかにされた。したがって、158P1D7のリン酸化が、本発明により与えられて、上記列挙された経路の活性化へ導く。
例えば、ウエスタンブロット技術を用いて、158P1D7のこれらの経路を制御する能力が確認される。158P1D7を発現する又は欠く細胞は、未処理の状態にされるか又はサイトカイン、ホルモン及び抗インテグリン抗体で刺激された状態にされる。
ERK、p38、AKT、PI3K、PLC及び他のシグナル伝達分子のリン酸化並びに制御を検出するため、抗リン酸特異抗体(Cell Signaling、Santa Cruz Biotechnology)を用いて、細胞ライセートが分析される。158P1D7がシグナル伝達経路の制御において役割を果たすとき、個別的であれ共同的であれ、それは診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
158P1D7が細胞において公知のシグナル伝達経路を直接的又は間接的に活性化することを確認するため、ルシフェラーゼベース転写レポーター測定(luciferase(luc) based transcriptional reporter assay)が、個々の遺伝子を発現する細胞について行われる。これらの転写レポーターは、よく特徴づけられたシグナル伝達経路の下流にある公知の転写因子(transcription factor)のためのコンセンサス結合部位を含む。そのレポーター及びこれらの会合(結合)した転写因子、シグナル伝達経路、及び活性化刺激の例を、下記に列挙する:
1.NFkB−luk、NFkB/Rel;Ik−キナーゼ/SAPK;増殖/アポトーシス/ストレス
2.SRE−luk、SRF/TCF/ELK1;MAPK/SAPK;増殖/分化
3.AP−1−luk、FOS/JUN;MAPK/SAPK/PKC;増殖/アポトーシス/ストレス
4.ARE−luk、アンドロゲン;ステロイド/MAPK;増殖/分化/アポトーシス
5.P53−luk、p53;SAPK;増殖/分化/アポトーシス
6.CRE−luk、CREB/ATF2;PKA/p38;増殖/アポトーシス/ストレス
遺伝子媒介効果が、mRNA発現を示す細胞において測定される。ルシフェラーゼレポータープラスミドが、脂質媒介移入(TFX−50、Promega)により誘導される。ルシフェラーゼ活性、相対転写活性の指標、がルシフェリン基質を含む細胞抽出物のインキュベーションにより測定され、反応物の発光が、照度計によりモニターされる。
158P1D7により活性化したシグナル伝達経路は、遺伝子座が決定され、治療標的の同定及び確認のために使用される。158P1D7が、細胞シグナル伝達に関与するとき、それは、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例39]腫瘍進行における関与
158P1D7遺伝子は、癌細胞の増殖に寄与しうる。腫瘍増殖における158P1D7の役割は、前立腺、大腸、膀胱及び腎臓の株細胞、並びに158P1D7を安定して発現させるべく設計されたNIH3T3細胞を含む各種の一次の及び形質移入された株細胞において確認される。158P1D7を欠く親細胞及び158P1D7を発現する細胞は、十分実証された増殖測定(例えば、Fraser SP, Grimes JA, Djamgoz MB. Prostate. 2000;44:61、Johnson DE, Ochieng J, Evans SL. Anticancer Drugs. 1996, 7:288参照)を用いて細胞増殖について評価される。
形質移入プロセスにおける158P1D7の役割を確認するため、コロニー形成測定法においてその効果を検討する。158P1D7を欠く親NIH3T3細胞が、厳密且つより任意の条件下で軟寒天を用いて、158P1D7を発現するNHI−3T3細胞と比較される(Song Z/ et al. Cancer Res. 2000, 60:6730)。
癌細胞の侵入及び転移における158P1D7の役割を確認するため、十分確立された測定法、例えば、Transwell Insert System測定法(Becton Dickinson)が使用される(Cancer Res. 1999, 59:6010)。158P1D7を欠く前立腺、大腸、膀胱及び腎臓の株細胞を含む対照細胞は、それぞれ158P1D7を発現する細胞と比較される。細胞は、蛍光色素、カルセインを負荷され、基底膜類似物で被覆されたTranswellインサートの上部ウェルに入れられる。侵入は、全細胞群の発光を基準とした、より低いチャンバーでの細胞の発光により測定される。
158P1D7も、細胞周期(分裂周期)及びアポトーシスにおいて役割を果たしうる。親細胞、及び158P1D7を発現する細胞は、十分に確立されたBrdU測定法(Abdel-Malek ZA. J Cell Physiol. 1988, 136:247)を用いて、細胞周期制御における相違について比較される。手短に言えば、細胞は、最適(完全血清及び制限(低血清)条件の両方の下、増殖され、BrdUで標識化され、抗BrdU Ab及びヨウ化プロピジウムで染色される。細胞は、細胞周期のG1、S、及びG2M段階に入ったことについて分析される。一方、ストレスのアポトーシスへの影響は、正常及び腫瘍膀胱細胞を含む、対照の親細胞及び158P1D7を発現する細胞において評価される。設計された、かつ親の細胞は、パクリタクセル、ゲムシタビン等の各種の化学療法剤、及びシクロヘキシミド等のタンパク質合成阻害剤で治療される。細胞は、アネキシンV−FITCで染色され、細胞死が、FACS分析によって測定される。158P1D7による細胞死の調節は、腫瘍の進行及び腫瘍の負荷を制御することにおいて重大な役割を果たす。
158P1D7が、細胞増殖、形質移入、侵入又はアポトーシスにおいて役割を果たすとき、それは、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例40]血管形成における関与
血管形成又は新たな毛細血管形成は、腫瘍増殖にとって必要である(Hanahan D, Folkman J. Cell. 1996, 86:353;Folkman J. Endocrinology. 1998 139:441)。いくつかの測定法が、組織培養測定、内皮細胞管形成、及び内皮細胞増殖等、生体外及び生体内での血管形成を測定すべく開発されている。これらの測定法及び生体外新血管新生化を用いて、158P1D7の血管新生への効果が、確認される。例えば、158P1D7を発現するよう設計された内皮細胞は、管形成及び増殖測定を用いて評価される。158P1D7の効果も、動物モデル生体内で確認される。例えば、158P1D7を発現する又は欠く細胞は、免疫無防備状態マウスに皮下移植される。内皮細胞の遊走及び血管形成は、免疫組織化学的技術を用いて、5−15日後に評価される。158P1D7が血管形成に影響を及ぼすとき、それは、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例41]転写の制御
158P1D7の核への上記示した局在化、並びにシグナル伝達経路を活性化すること及び必須の細胞機能を制御することがわかっているそのIGP−BPとの類似性により、その真核生物の遺伝子の転写制御における役割に基づく158P1D7の本発明の使用が裏づけられる。遺伝子発現の制御が、例えば、158P1D7を発現する又は欠く細胞における遺伝子発現を研究することによって確認される。この目的のため、二つのタイプの実験が行われる。
実験の第一のセットとして、親及び158P1D7発現細胞からのRNAが抽出され、市販されている遺伝子アレイ(クロンテック)とハイブリダイズされる(Smid-Koopman E et al. Br J Cancer. 2000. 83:246)。休止細胞並びにFBS又はアンドロゲンで処理した細胞が比較される。特異的に発現した遺伝子は、技術として公知の手法に従って同定される。その特異的に発現した遺伝子は、その後、生物学的経路に遺伝子座が決定される(Chen K et al., Thyroid. 2001. 11:41.)。
実験の第二のセットとして、特異的な転写経路活性化が、NFkB−luc、SRE−luc、ELK1−luc、ARE−luc、p53−luc、及びCRE−luc:を含む市販されている(例えば、Stratagene)ルシフェラーゼレポーター構築物を用いて、評価される。これらの転写レポーターは、よく特徴づけられたシグナル伝達経路の下流にある公知の転写因子のためのコンセンサス結合部位を含み、経路活性化を確認し経路活性化の正及び負のモジュレーター(修飾物質)についてスクリーニングするための良好な手段である。
158P1D7が遺伝子制御において役割を果たすとき、それは、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例42]158P1D7の細胞下局在化
158P1D7の細胞位置は、細胞生物学において広く用いられる細胞下分画技術を用いて評価される(Storrie B, et al. Methods Enzymol. 1990;182:203-25)。前立腺、腎臓及び膀胱株細胞を含む各種の株細胞並びに158P1D7を発現するよう設計された株細胞は、核、細胞基質及び膜の画分に分けられる。遺伝子発現並びに核、重膜(heavy membrane)(リソソーム、ペルオキシソーム、及びミトコンドリア)、軽膜(light membrane)(原形質膜及び内質膜)、及び可溶タンパク質画分における位置は、ウエスタンブロッティング技術を用いて、試験される。
一方、293T細胞は、個々の遺伝子をコード化する発現ベクターを形質移入され、HISタグをつけられ(PCDNA 3.1 MYC/HIS, Invitrogen)、これらの遺伝子の細胞下局在化が前記のように測定される。手短に言えば、形質移入された細胞は、収集され、示差細胞成分分画法に付される(Pamberton, P.A. et al, 1997, J of Histochemistry and Cytochemistry, 45:1697-1706)。HISタグ遺伝子の位置は、ウエスタンブロッティングに従う。
158P1D7を用いて、蛍光抗体法及び免疫組織化学により細胞局在化を実証することができる。例えば、158P1D7を発現する又は欠く細胞が、顕微鏡スライドに付着され、抗158P1D7特異的Abで染色される。細胞は、FITC結合された二次抗特異的Abとともにインキュベートされ、螢光顕微鏡により分析される。一方、158P1D7を欠く又は発現する細胞及び組織は、本願において記載したようにIHCにより分析される。
158P1D7が特異細胞区画に局在しているとき、それは、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例43]タンパク質輸送における158P1D7の関与
スリットタンパク質との類似性のため、158P1D7は、細胞内輸送及びミトコンドリア及び/又は核の区画への保持を制御することができる。そのタンパク質の輸送における役割は、十分に確立された方法(Valetti C. et al. Mol Biol Cell. 1999, 10:4107)を用いて確認されうる。例えば、FITC結合α2−マクログロブリンが、158P1D7発現及び158P1D7陰性細胞とともにインキュベートされる。FITC−α2−マクログロブリンの位置及び取り込みは、螢光顕微鏡を用いて可視化される。別のアプローチとして、158P1D7の小胞タンパク質との共存が、共沈及びウエスタンブロッティング技術及び螢光顕微鏡によって確認される。
一方、158P1D7発現及び158P1D7欠除細胞は、bodipy−ceramide標識ウシ血清アルブミンを用いて比較される(Huber L et al. Mol. Cell. Biol. 1995, 15:918)。簡単には、細胞が、標識BSAを吸収するようにさせられ、輸送を起こすように断続的に4℃又は18℃の環境におかれる。細胞は、ゴルジ、小胞体等を含む特異的小胞区画中の標識BSAの存在について、異なる時点で、螢光顕微鏡下、調べられる。
別の形態として、158P1D7の膜輸送への影響が、ビオチン−アビジン複合体を用いて、調べられる。158P1D7を発現する又は欠く細胞は、一時的にビオチンと共にインキュベートされる。その細胞は、各種の期間、4℃の環境におかれ、又は37℃まで一時的に温められる。その細胞は、分画され、特異細胞区画中のアビジンの存在についてアビジン親和性沈降によって調べられる。そのような測定系を用いて、158P1D7の小胞輸送への影響を変えるタンパク質、抗体及び小分子が同定される。158P1D7が細胞内輸送において役割を果たすとき、158P1D7は、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例44]タンパク質−タンパク質会合
IGF及びIGF−BPタンパク質は、他のタンパク質と相互に作用し、それによりタンパク質局在化、生物活性、遺伝子転写、及び細胞形質転換を制御しうるタンパク質複合体を形成することが明らかにされている(Zeslawski W et al, EMBO J. 2001, 20:3638;Yu H, Rohan T, J Natl Cancer Indt. 2000, 92:1472)。イムノプレシピテーション(免疫沈降)技術並びに二つの酵母ハイブリッド系を用いて、158P1D7と会合するタンパク質が同定される。158P1D7を発現する細胞及び158P1D7を欠く細胞からの免疫沈降物は、特異的なタンパク質−タンパク質会合について比較される。
158P1D7の、EGF及びIGFレセプター等のレセプターとの会合、IGF−BP、細胞骨格タンパク質等の細胞内タンパク質との会合の程度を測定するため、研究が行われる。158P1D7陽性細胞と158P1D7陰性細胞を比較する研究、並びに非刺激/休止細胞とサイトカイン、増殖因子及び抗インテグリンAb等の上皮細胞活性化物質で処理された細胞を比較することにより、特有のタンパク質−タンパク質相互作用が明らかにされる。
さらに、タンパク質−タンパク質相互作用は、二つの酵母ハイブリッド方法論を用いて確認される(Curr Opin Chem Biol. 1999, 3:64)。転写因子の活性化ドメインと融合されるタンパク質のライブラリを保有するベクターは、158P1D7−DNA−結合ドメイン融合タンパク質及びレポーター構築物を発現する酵母に導入される。タンパク質−タンパク質相互作用は、比色レポーター活性によって検出される。表面レセプター及びエフェクター分子との特異的な会合から、熟練した者(当業者)は、158P1D7の作用様式を知り、それに従って、癌の治療、予後徴候、予防及び/又は診断の標的が同定される。この測定法及び類似の測定法を用いて、158P1D7と相互に作用する小分子についての同定及びスクリーニングもされる。
158P1D7がタンパク質、又は小分子と会合するとき、それは、診断、予後徴候、予防及び治療の目的のための標的として使用される。
[実施例45]158P1D7の転写変異体
転写変異体(バリアント)は、選択的転写(alternative transcription)又は選択的スプライシングにより生ずる同一の遺伝子からの各種の成熟mRNAである。選択的転写物は、同一遺伝子からの転写物であるが、種々の点で転写を開始する。スプライスバリアントは、同一転写物から別々にスプライスされたmRNA変異体である。真核生物においては、マルチエクソン遺伝子がゲノムDNAから転写されるとき、エクソンのみを有し、かつアミノ酸配列への翻訳のために使用される機能性RNAを生ずるよう最初のRNAはスプライスされる。したがって、与えられる遺伝子は、ゼロから多くの選択的転写物を有しうるし、各転写物は、ゼロから多くのスプライスバリアントを有しうる。各転写変異体は、特有のエキソン構造を有し、元の転写物とは異なるコード(翻訳)及び/又は非コード(5’又は3’末端)部分を有しうる。転写変異体は、同一若しくは同様の機能をもつ同様の又は異なるタンパク質についてコードすることができ、或いは異なる機能をもつタンパク質をコード化することができ、同時に同一の組織において、又は同時に異なる組織において、又は異なる時点で同一の組織において、又は異なる時点で異なる組織において発現されうる。転写変異体によりコード化されたタンパク質は、例えば、分泌対細胞内の、同様の若しくは異なる細胞又は細胞外の局在化をしうる。
転写変異体は、各種の技術として一般に認容された方法により同定される。例えば、選択的転写物及びスプライスバリアントは、完全長クローニング実験により、又は完全長転写物及びESTシーケンスの使用により同定される。先ず、全てのヒトESTを、互いに直接型又は間接型同一性を示すクラスターに分類した。次いで、同一クラスター内のESTを、サブクラスターにさらに分類し、これらを集めてコンセンサス配列を構築させた。その元の遺伝子配列は、コンセンサス配列(又は複数のコンセンサス配列)又は他の完全長シーケンスと比較される。各コンセンサス配列は、その遺伝子についてポテンシャルなスプライスバリアントである(例えば、URL www.doubleteist.com/products/c11_agentsOverview,jhtml参照)。たとえ完全長クローンでない変異体が同定されるときでも、その変異体のその部分は、抗原生成にとって、公知技術を用いる完全長スプライスバリアントのさらなるクローニングにとって非常に有用である。
さらに、コンピュータプログラムが、ゲノムシーケンスに基づいて転写変異体を同定する技術において利用できる。ゲノムベースの転写変異体同定プログラムには、FgenesH(A. Salamov及びV. Solovyev、「ショウジョウバエのゲノムDNAにおける最初からの遺伝子発見(Ab initio gene finding in Drosophila genomic DNA)」、Genome Research. 2000 April ; 10 (4): 516-22;Grail (URL compbio.ornl.gov/Grail-bin/EmptyGrailForm)並びにGenScan(URL genes. mit.edulGENSCAN. html)が含まれる。スプライスバリアント同定の一般的な議論に関し、プロトコルについては、例えば、Southan,C., ヒトプロテアーゼにおけるゲノム展望(A genomic perspective on human proteases), FEBS Lett. 2001 Jun 8; 498 (2-3): 214-8; de Souza, S. J., et al., ORF発現シーケンスタグを含むヒト染色体22転写シーケンスの同定(Identification of human chromosome 22 transcribed sequences with ORF expressed sequence tags), Proc. Natl Acad SciUSA. 2000 Nov 7; 97 (23): 12690-3が参照される。
転写変異体のパラメータをさらに確認するため、完全長クローニング、プロテオーム確認(proteomic validation)、PCRベース変異体、及び5’RACE変異体等の各種の技術が、技術として利用できる(例えば、 プロテオームの確認(Proteomic Validation): Brennan, S. O.,et al., Albumin banks peninsula : エレクトロスプレー質量分析により特徴付けられる新たな終結変異体(a new termination variant characterized by electrospray mass spectrometry), Biochem Biophys Acta. 1999 Aug 17; 1433 (1-2): 321-6; Ferrant P, et al., 成熟カプリンα(s1)−カゼインの多形態を生ずるプレメッセンジャーRNAの異なるスプライシング(Differential splicing of pre-messenger RNA produces multiple forms of mature caprine alpha(s1)-casein), Eur J Biochem. 1997 Oct 1; 249(1) : 1-7). PCRベース確認について(For PCR-based Validation):Wellmann S, eta/., ライトサイクラー技術による血管内皮増殖因子(VEGF)スプライスバリアントの特異的逆転写PCR定量化(Specific reverse transcription-PCR quantification of vascular endothelial growth factor (VEGF) splice variants by LightCycler technology), Clin Chem. 2001 Apr; 47 (4): 654-60; Jia, H. P., et al., ゲノム科学ベースのアプローチを用いる新たなヒトβ−デフェンシンの発見(Discovery of new human beta- defensins using a genomics-based approach), Gene. 2001 Jan 24; 263 (1-2): 211-8. PCRベース及び5’RACE確認について(For PCR-based and 5’RACE Validation): Brigle, K. E., etal., マウス還元葉酸塩担体遺伝子の組織化及びバリアントスプライス形態の同定(Organization of the murine reduced folate carrier gene and identification of variant splice forms), Biochem Biophys Acta. 1997 Aug 7; 1353 (2): 191-8)。
ゲノム領域が癌において調節されるということが技術として知られている。遺伝子が位置するゲノム領域が特定の癌において調節されるとき、その遺伝子の選択的転写物又はスプライスバリアントもまた調節される。本願において開示されたことは、158P1D7が癌に関係がある特定の発現プロファイルを有するということである。158P1D7の選択的転写及びスプライスバリアントもまた、同一の又は異なる組織において癌に関与し、したがって、腫瘍結合マーカー/抗原(tumor-associated markers/antigens)として役立つ可能性がある。
完全長遺伝子及びESTシーケンスを用いて、4つの転写変異体を同定し、158P1D7 v.3、v.4、v.5及びv.6としてデザインした。元の転写物、158P1D7 v.1におけるエクソンの境界を表BILL−1に示した。158P1D7 v.1と比較して、転写変異体158P1D7 v.3は、図12に示すように、158P1D7 v.1から2069−2395外れて、スプライスしていた。変異体158P1D7 v.4は、158P1D7 v.1の1162−2096外で、スプライスした。変異体158P1D7 v.5は、1つのエクソンを5’末端に加え、158P1D7 v.1の5’末端まで2bp、3’末端まで288bp伸長した。理論的には、空間的なオーダーでのエクソン、例えば、v.5のエクソン1並びにv.3又はv.4のエクソン1及び2のそれぞれ異なる組み合わせは、ポテンシャルなスプライスバリアントである。
158P1D7の変異体には、膜内外モチーフを欠く変異体が含まれるが、変異体が分泌タンパク質であることを示すシグナルペプチドが含まれる(v.4及びv.6)。そのようなv.4及びv.6等の分泌タンパク質は、癌存在及び進行の生物マーカーとして役立つ。癌患者の血清中のそのような変異タンパク質のレベルは、癌、特に、表Iに列挙した癌等の癌の疾患又はその進行の予後徴候マーカーとして役立つ。さらに、そのような分泌タンパク質は、モノクローナル抗体及び関連している結合分子の標的である。したがって、これらのような分泌タンパク質は、ヒト悪性腫瘍に対する診断、予後徴候、予防及び治療のための標的として役立つ。158P1D7の分泌変異体のターゲッティングは、その分泌変異体が細胞/組織に病理関連或いは癌関連の効果を及ぼすときに、特に好ましい。
表LI(a)−(d)からLIV(a)−(d)は、変異体変異体ベースについて示される。表LI(a)−(d)は、転写変異体のヌクレオチド配列を示す。表LII(a)−(d)は、転写変異体の、158P1D7 v.1の核酸配列との位置関係を示す。表LIII(a)−(d)は、同定した読み枠配向(reading frame orientation)として転写変異体のアミノ酸翻訳を示す。表LIV(a)−(d)は、スプライスバリアントによりコード化されたアミノ酸配列の、158P1D7 v.1の配列との位置関係を示す。
[実施例46]158P1D7の一塩基多型
一塩基多型(SNP)は、特異的な位置でのヌクレオチド配列(核酸配列)における一塩基対変異である。ゲノムの任意の点で、4つの可能性のあるヌクレオチド塩基対:A/T、C/G、G/C及びT/Aがある。遺伝子型(genotype)は、個体のゲノムにおける1又はそれ以上の位置の特異的な塩基対シーケンスを意味する。ハプロタイプ(haplotype)は、多くの場合、1つの遺伝子と関連した、又はいくつかの緊密結合遺伝子と関連した、同一のDNA分子(或いは、より高度な生体において同一の染色体)における1を超える位置の塩基対シーケンスを意味する。cDNAにおいて生ずるSNPは、cSNPと呼ばれる。このcSNPは、遺子によりコード化されたタンパク質のアミノ酸を変化させ、それに従ってタンパク質の機能を変化させる可能性がある。いくつかのSNPは、遺伝病を引き起こす;これ以外のものは、表現型における量的変異並びに食事制限及び個体間での薬物を含む環境への反応に寄与する。それゆえ、SNP及び/又は対立遺伝子の組み合わせ(ハプロタイプと呼ばれる)は、遺伝病の診断、薬物反応及び投与量の測定、疾患の原因である遺伝子の同定、並びに個体間の遺伝子関係の分析を含む多くの用途を有する(P. Nowotny, J. M. Kwon及びA. M. Goate, 「ヒトの体質を分析するSNP分析(SNP analysis to dissect human traits)」, Curr. Opin. Neurobiol. 2001 Oct ; 11 (5): 637-641;M. Pirmohamed and B. K. Park, 「有害な薬物反応に対する遺伝子感受性(Genetic susceptibility to adverse drug reactions)」, Trends Pharmacol. Sci. 2001 Jun; 22 (6): 298-305;J. H. Riley, C. J. Allan, E. Lai及びA. Roses, 「通常の病原遺伝子の同定における一塩基多型の使用(The use of single nucleotide polymorphisms in the isolation of common disease genes)」, Pharmacogenomics. 2000 Feb; 1(1) : 39-47;R. Judson, J. C. Stephens及びA. Windemuth, 「臨床応答におけるハプロタイプの予測力(The predictive power of haplotypes in clinical response)」, Pharmacogenomics. 2000 feb;1(1) : 15-26)。
SNPは、各種の技術として一般に認容された方法により同定される(P. Bean, 「SNP標的発見の有望な企て(The promising voyage of SNP target discovery)」, Am. Clin. Lab. 2001 Oct-Nov; 20 (9): 18-20;K.M. Weiss,「ヒト差異の調査について(In search of human variation)」, Genome Res. 1998 Jul ; 8 (7): 691- 697;M. M. She,「高処理能力変異検出及び遺伝形質を決める技術による大規模遺伝薬理学研究の可能化(Enabling large-scale pharmacogenetic studies by high-throughput mutation detection and genotyping technologies)」, Clin. Chem. 2001 Feb; 47 (2): 164-172)。例えば、SNPは、制限断片長多型(RFLP)及び変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)等のゲルベースの方法により多型性を示すDNA断片を配列決定することによって同定されうる。それらは、異なる個体からプールしたDNAサンプルの直接のシークエンシング(配列決定)によって又は異なるDNAサンプルからのシーケンスを比較することによっても発見されうる。公共及び私用のデータベースにおけるシーケンスデータの急速な蓄積に伴って、誰でもコンピュータプログラムを用いてシーケンスを比較することによりSNPを発見することができる(Z. Gu, L. Hillier及びP. Y. Kwok,「サイバスペースで探す一塩基多型(Single nucleotide polymorphism hunting incyberspace)」, Hum. Mutat. 1998; 12 (4):221-225)。SNPは検証されうるし、個体の遺伝子型又はハプロタイプは、直接のシークエンシング及び高処理能力マイクロアレイ(high throughput microarray)を含む各種の方法により決定されうる(P. Y. Kwok,「一塩基多型の遺伝形質を決める方法(Methods for genotyping singlenucleotide polymorphisms)」, Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 2001; 2: 235-258;M.Kokoris, K. Dix, K. Moynihan, J. Mathis, B. Erwin, P. Grass, B. Hines及びA. Duesterhoeft,「マスコードシステムでの高処理能力SNP遺伝形質決定(High-throughput SNP genotyping with the Masscode system), Mol. Diagn. 2000 Dec; 5 (4): 329-340)。
前記記載の方法を用いて、一つのSNPを、位置1546(A/G)で、元の転写物、158P1D7 v.1において同定した。選択的対立遺伝子(alternative allele)を含む転写物又はタンパク質を、変異体158P1D7v.2と名付けた。図17は、SNP変異体の模式的なアラインメントを示す。図18は、ヌクレオチド変異体に対応する、タンパク質変異体の模式的なアラインメントを示す。同一のアミノ酸配列をv.1としてコードするヌクレオチド変異体は、図18において示されていない。SNPのこれらの対立遺伝子は、ここに別途示されて、異なる組み合わせ(ハプロタイプ)において、及びそのSNPの部位を含む転写変異体(158P1D7v.5等)のうち何れかにおいて生じうる。
[実施例47]ヒトにおける抗158P1D7抗体の治療及び診断的使用
抗158P1D7モノクローナル抗体は、ヒトにおける診断、予防、予後徴候及び/又は治療の目的のため、安全かつ効果的に使用される。抗158P1D7mAbを含む癌組織及び癌異種移植片のウエスタンブロット及び免疫組織化学分析は、癌腫において強い広域染色(extensive staining)を示すが、正常組織において著しく低い又は検出不可能なレベルのものを示す。癌腫における及び転移性疾患における158P1D7の検出は、mAbの診断及び/又は予後徴候の指標としての有用性を示す。抗158P1D7抗体は、それゆえ、疑わしい患者からの癌を検出すべく、腎臓生検材料の免疫組織化学等の診断用途において使用される。
フローサイトメトリーにより測定すると、抗158P1D7mAbは、癌腫細胞と特異的に結合する。したがって、抗158P1D7抗体は、158P1D7の発現を示す局在型及び転移性癌の検出のため、放射性免疫シンチグラフィー及び放射性免疫治療等の診断用の全身画像処理(diagnostic whole body imaging applications)において(例えば、Potamianos S. , et. al. Anticancer Res 20 (2A): 925-948 (2000)参照)使用される。アルカリホスファターゼB10(Meerson, N. R.,Hepatology 27 : 563-568 (1998))で確認されるような、細胞外環境への158P1D7の細胞外ドメインの排泄又は放出は、疑わしい患者からの血清及び尿サンプル中の抗158P1D7抗体による158P1D7の診断上の検出を可能とする。
158P1D7と特異的に結合する抗158P1D7抗体は、158P1D7を発現する癌の治療のための治療用途において使用される。抗158P1D7抗体は、非結合型モダリティーとして、及び抗体がプロドラッグ、酵素、又は放射性同位元素等、技術としてよく知られている各種の治療又は画像処理モダリティーの一つに付着される結合型形態として使用される。前臨床試験において、非結合型及び結合型抗158P1D7抗体は、SCIDマウス癌異種移植モデル、例えば、腎臓癌モデルAGS−K3及びAGS−K6(例えば、「生体内での膀胱及び肺腫瘍の158P1D7モノクローナル抗体介在阻害」と題した実施例参照)における腫瘍予防及び増殖阻害の効力について試験される。非結合型抗158P1D7抗体及び結合型抗158P1D7抗体のどちらも、単独で又は下記実施例において記載した他の治療と組み合わせて、ヒト臨床試験における治療モダリティーとして使用される。
[実施例48]生体内でのヒト抗158P1D7抗体の使用によるヒト癌腫の治療及び診断のためのヒト臨床試験
158P1D7におけるエピトープを認識する抗体は、本発明に従って使用され、表Iに列挙された腫瘍等の所定の腫瘍の治療において使用される。158P1D7発現レベルを含む、多数の要因に基いて、表Iに列挙された腫瘍等の腫瘍は、現に好ましい徴候である。これらの徴候のそれぞれと関連して、三つの臨床的なアプローチが、うまく遂行される。
I)補助的療法(adjunctive therapy);補助的療法において、患者は、化学療法剤若しくは抗腫瘍剤及び/又は放射線療法と組み合わせて抗158P1D7抗体で治療される。表Iに列挙された癌標的等の一次癌標的(primary cancer target)は、標準第一及び第二次療法(standard first and second line therapy)に対する付加抗158P1D7抗体よって標準プロトコルの下、治療される。プロトコルデザインは、腫瘍質量の減少並びに標準的な化学療法の常用量を減少させる能力により評価される有効性に対処する。これらの投与量の減少は、化学療法剤の用量関連毒性を減少させることによって追加及び/又は長期治療を可能にする。抗158P1D7抗体は、化学療法剤又は抗腫瘍剤、アドリアマイシン(進行型の前立腺癌腫)、シスプラチン(進行型の頭部及び頚部及び肺癌腫)、タキソール(乳癌)、及びドキソルビシン(前臨床)と組み合わせて、いくつかの補助的臨床試験において利用される。
II)単独療法:腫瘍の単独療法における抗158P1D7抗体の使用と関連して、その抗体は、化学療法剤又は抗腫瘍剤を使用しないで、患者に投与される。一つの形態として、単独療法は、広範な転移性疾患を有する末期癌患者において臨床的に行われる。患者は、いくつかの疾患安定化を示す。試験から、癌性腫瘍を有する難治患者における効果が示される。
III)画像化(画像処理)剤:放射性核種(例えば、ヨード又はイットリウム(I131、Y90))を抗158P1D7抗体に結合させることにより、放射標識抗体は、診断及び/又は画像化剤として利用される。そのような役割において、標識抗体は、固形腫瘍、並びに、158P1D7を発現する細胞の転移性病変の両方に局在化する。画像化剤としての抗158P1D7抗体の使用と関連して、その抗体は、腫瘍が残る及び/又は回復することを測定すべく、固形腫瘍の外科的治療への補助として、前外科的スクリーン並びに手術後の経過観察の両方として使用される。一つの形態として、(111In)−158P1D7抗体が、158P1D7を発現する癌腫を有する患者の第一相(PhaseI)ヒト臨床試験における画像化剤として使用される(類推により、例えば、Divgi et al. J. Natl. Cancer Inst. 83:97-104 (1991)参照)。患者は、標準前側及び後側ガンマカメラ(standard anterior and posterior gamma camera)で追跡される。その結果から、一次病変及び転移性病変が同定されることが示される。
投与量及び投与の経路
その技術において通常の知識を有する者(当業者)により理解されているように、投薬条件は、診療所にある類似製品との比較により決定されうる。したがって、抗158P1D7抗体は、5から400mg/m2の範囲内の投与量で、例えば、安全性試験と関連して使用される、より低い投与量で、投与されうる。標的のための公知の抗体の親和力と基準とした、抗158P1D7抗体の親和力は、類似の投与療法を決定するためにその技術において通常の知識を有する者により使用される一つのパラメータである。さらに、完全ヒト抗体である抗158P1D7抗体は、キメラ抗体と比較して、より鈍いクリアランスを有する;したがって、そのような完全ヒト抗158P1D7抗体を含む患者における投薬は、より低く、おそらく50から300mg/m2の範囲内にでき、引き続き効果を残しうる。mg/kgでの投与量の慣習的な測定値に対して、mg/m2での投薬は、表面積に基づく測定値であり、幼児から成人まで全ての大きさの患者を含むようにデザインされる簡便な投薬測定値である。
三つの異なる送達のアプローチは、抗158P1D7抗体の送達にとって有用である。慣習的な静脈内送達は、多くの腫瘍のための1つの標準的な送達技術である。しかしながら、卵巣、胆管、その他の管等の腫瘍等の腹腔における腫瘍と関連して、腹腔内投与が、腫瘍での抗体の投与量を高くするため及び抗体のクリアランスを最小化するためにも好ましいと判明する可能性がある。同様の方法において、所定の固形腫瘍は、領域性の環流(regional perfusion)に適している脈環構造を有する。領域性の環流は、腫瘍の部位での抗体の投与量を高くし、抗体の短期クリアランスを最小化する。
臨床上の発展計画(clinical development plan(CDP))
CDPは、補助的療法、単独療法と関連して、及び画像化剤として抗158P1D7抗体の治療に従い、これを発展させる。試験は先ず安全性を立証し、その後繰り返し投与における有効性を確認する。試験は、標準的な化学療法と、抗158P1D7抗体を加えた標準的な療法とを比較した盲検解除である。理解されているであろうが、患者の記録と関連して利用されうる一つの判定基準は、生検により測定される患者の腫瘍における158P1D7発現レベルである。
いくつかのタンパク質又は抗体輸液ベース治療と同様、安全性の懸念は、(i)サイトカイン放出症候群、すなわち低血圧、発熱、震え、悪寒;(ii)材料への免疫原性応答の発生(すなわち、抗体治療又はHAHA応答への患者によるヒト抗体の発生);並びに、(iii)158P1D7を発現する正常細胞に対する毒性に、主として関連がある。標準試験及び経過観察は、これらの安全性の懸念のそれぞれをモニターするのに利用される。抗158P1D7抗体は、ヒト投与において安全であることがわかる。
[実施例49]ヒト抗158P1D7抗体及び化学療法剤でのヒト臨床試験補助的療法
第一相ヒト臨床試験を、固形腫瘍、例えば、表Iに列挙した組織の癌の治療と関連して、ヒト抗158P1D7抗体の6つの静脈内投与量の安全性を評価すべく開始する。その試験において、補助的療法としてシスプラチン、トポテカン、ドキソルビジン、アドリアマイシン、又はタキソール等であって、これらに限定されることのない、本願において定義した抗腫瘍剤又は化学療法剤に利用したときの抗158P1D7抗体の一回投与量の安全性が評価される。試験デザインには、下記スケジュールに従って治療の経過を通して、約25mg/m
2から約275mg/m
2で段階的に増大させる抗体の投与量での、抗158P1D7抗体の6つの一回投与量の送達が含まれる:
患者は、抗体及び化学療法の各投与ないし処理後、一週間厳密に従う。特に、患者は、上述した安全性の懸念について評価される:(i)サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome)、すなわち低血圧、発熱、震え、悪寒;(ii)材料への免疫原性応答の発生(すなわち、抗体治療又はHAHA応答への患者によるヒト抗体の発生);並びに、(iii)158P1D7を発現する正常細胞に対する毒性。標準試験及び経過観察を利用して、これらの安全性の懸念のそれぞれをモニターする。患者は、臨床上の結果、及び特にMRI又は他の画像診断法により検出されるような腫瘍質量の減少についても評価される。
抗158P1D7抗体は、安全かつ有効であると実証され、第二相試験からその有効性が確認され、最適であった投与がさらに正確にされる。
[実施例50]ヒト臨床試験:ヒト抗158P1D7抗体での単独療法
抗158P1D7抗体は、上記議論した補助的試験と関連して安全であり、第二相ヒト臨床試験から、単独療法における有効性及び最適な投薬が確認される。そのような試験は、成し遂げられ、患者が抗158P1D7抗体の投与量の受け入れと同時に化学療法を受け入れないことを除外して、必然的に上記記載した補助的試験に対する同様の安全性及び結果分析をもたらす。
[実施例51]ヒト臨床試験:ヒト抗158P1D7抗体での診断画像処理
もう一度、上記議論した補助的療法は、上記議論したように安全性の判断基準の範囲内で安全であるので、臨床試験は、診断画像処理(画像化)剤として抗158P1D7抗体の使用に関して行われる。プロトコルは、Divgi et al. J. Natl. Cancer Inst. 83:97-104 (1991)等の従来技術に記載されているのと実質的に同様の方法でデザインされる。その抗体は、診断モダリティーとして使用したときに、安全かつ有効であることが分かる。
[実施例52]RNA干渉(RNAi)
RNA干渉(RNAi)技術は、腫瘍学に関連した各種の細胞測定に対して実行される。RNAiは、二重鎖RNA(dsRNA)により活性化される転写後遺伝子サイレンシングメカニズムである。RNAiは、タンパク質発現において変化を引き起こし、及び遺伝子機能において実質的に変化を引き起こす特異的なmRNA分解を誘発する。哺乳類細胞において、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれるこれらのdsRNAは、分解のため標的にするRNAi経路、特に特異的ないくつかのmRNAを活性化するのに妥当な組成を有する。Elbashir S. M., et aL, 培養哺乳類細胞におけるRNA干渉を介在する21−ヌクレオチドRNAの二重鎖(Duplexes of 21-nucleotide RNAs Mediate RNA interference in Cultured Mammalian Cells), Nature411 (6836): 494-8 (2001)を参照すべきである。したがって、RNAi技術は、サイレンス標的遺伝子のため哺乳類細胞において、うまく用いられる。
細胞増殖制御の低下は、癌細胞の特徴である;したがって、細胞生存/増殖における158P1D7の役割を評価することが適切である。したがって、RNAiを使用して、その158P1D7抗原の機能を研究した。重要な分子パラメータ(G:C含量、融解温度等)を示し且つ細胞に導入したときに158P1D7タンパク質の発現レベルを著しく減少させる能力を有するオリゴヌクレオチドを予測するアルゴリズムを用いて、158P1D7のsiRNAを生成した。したがって、158P1D7siRNAの一つの標的シーケンスは:5’AAGCTCATTCTAGCGGGAAAT3’(配列番号:42)(オリゴ158P1D7.B)である。この実施例に従って、158P1D7タンパク質の核酸ORF配列(シーケンス)又はその部分配列(サブシーケンス)に対応するsiRNA(二重鎖の低分子干渉RNA)を含む158P1D7siRNA組成が、使用される。したがって、siRNAサブシーケンスは、この方法で使用され、一般に、長さにおいて5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35又は35を超える近接したRNAヌクレオチドである。これらのsiRNAシーケンスは、mRNAコード配列の少なくとも一部に対して相補的及び非相補的である。好ましい形態として、サブシーケンスは、長さにおいて19−25のヌクレオチドであるが、より好ましくは長さにおいて21−23のヌクレオチドである。好ましい形態として、これらのsiRNAは、タンパク質を発現する細胞において158P1D7抗原のノックダウンをもたらし、以下に記載した機能効果を有する。
選択したsiRNA(158P1D7.Bオリゴ)を、生存/増殖MTS試験(survival/proliferation MTS assay)(細胞代謝活性を測定する試験)で、多数の株細胞について試験した。生細胞は、代謝的に活性があり、それゆえテトラゾリウム塩を有色のホルマザン(formazan)化合物に還元することができるが;死細胞は、そうでないので、テトラゾリウムベース比色試験(Tetrazolium-based colorimetric assay)(すなわちMTS)は、生存可能な細胞のみを検出する。さらに、この158P1D7.Bオリゴは、タンパク質を発現する細胞において158P1D7抗原のノックダウンをもたらし、下記プロトコルを用いると以下に記載した機能効果を有した。
哺乳類siRNA移入:siRNA移入前の日、異なる株細胞を、生存/MTS試験のため、80μl(96ウェルプレートフォーマット)中、2×103細胞/ウェルで、培地(抗生物質を含まない10%FBS添加RPMI1640培地)に蒔いて培養した。158P1D7特異siRNAオリゴに平行して、下記シーケンスを、コントロールとして、全ての実験に含めた:a)リポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000)(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)及びアニーリングバッファ(siRNAなし)を含むMock移入細胞(Mock transfected cell);b)ルシフェラーゼ−4特異siRNA(標的シーケンス:5’-AAGGGACGAAGACGAACACUUCTT-3’(配列番号:43));並びにc)Eg5特異siRNA(標的シーケンス:5’-AACTGAAGACCTGAAGACAATAA-3’(配列番号:44)。siRNAを、10nM及び1μg/mlリポフェクタミン2000最終濃度で使用した。
その手順を、下記のようにした:siRNAを、先ず0.1uMμM(10倍濃縮したもの)でOPTIMEN(無血清改質移入培地、Invitrogen)において希釈し、5−10分RTインキュベートした。リポフェクタミン2000を、全数移入(total number transfections)のため10μg/ml(10倍濃縮したもの)で希釈し、室温(RT)で5−10分インキュベートした。適量の希釈した10倍濃縮のリポフェクタミン2000を、希釈した10倍濃縮のsiRNAと1:1混合し、20−30秒間、RTでインキュベートした(5倍濃縮した形質移入溶液)。5倍濃縮した形質移入溶液の20μlを、それぞれのサンプルに加え、分析前に37℃で96時間インキュベートした。
MTS測定:MTS測定は、テトラゾリウム化合物[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium、分子内錯塩(inner salt);MTS(b)]及び電子結合試薬(フェナジンエトスルフェート(phenazine ethosulfate(PES)))に基づく増殖、細胞障害性又は化学受容性試験において生存可能な細胞の数を測定する比色法である。測定を、少量の溶液試薬を培養ウェルに直接加え、1−4時間インキュベートし、その後96ウェルプレート読取り装置を用いて490nmでの吸光度を記録することによって行った。490nmの吸光度の量で測定した有色のホルマザン産物の量は、ミトコンドリア活性及び/又は培養物における生細胞の数と正比例する
細胞における158P1D7の機能を扱うため、158P1D7を、陰性siRNAコントロール(Luc4、ヒトゲノムで表現されない標的シーケンス)及び陽性siRNAコントロール(Eg5を標的にする)と共に158P1D7特異siRNA(158P1 D7.b)を含む内在発現158P1D7株細胞(LNCaP及びPC3)を形質移入することによってサイレンシングした(図29)。その結果から、これらの細胞が158P1D7 mRNAを特異的に標的にするsiRNAで治療されるときには、この測定法により測定すると結果として生ずる「158P1D7欠除細胞」は細胞生存度又は増殖の減少を示すということが示された(オリゴ158P1D7.b治療細胞参照)。この効果は、アポトーシスの積極的な誘発によって、引き起こされる可能性がある。その生存度の減少は、アポトーシス細胞において主に生ずるミトコンドリア酵素の放出(及び活性)の増加によって測定される。
コントロールとして、3T3細胞、158P1D7mRNAの検出不可能な発現を伴う株細胞、もsiRNA(オリゴ158P1D7. bを含む)のパネルで治療したが、表現型は観察されなかった。この結果は、3T3細胞は158P1D7.bに対して応答しなかったことからLNCaP及びPC3細胞における特定のタンパク質のノックダウンが一般的な毒性の機能ではないという事実を反映する。Eg5コントロールに対する三つの株細胞の異なる応答は、細胞移入のレベルの相違及びオリゴ治療に対する株細胞の応答性を反映するものである(図29)。
共に、これらのデータは、158P1D7が癌細胞の増殖において重要な役割を果たすこと、並びに158P1D7の欠除がこれらの細胞の生存ポテンシャルを明らかに増大させることを示した。158P1D7が多くの腫瘍株細胞において恒常的に発現されるということに注目すべきである。158P1D7は、悪性度において役割を果たす;その発現は、疾患の一次指標であり、そのような疾患は、多くの場合、非制御細胞増殖及び減少した細胞の高い割合で特徴付けられる。RNAi治療後、細胞内表現型を遺伝子ノックダウンと対比することは、重要であり、誰にも妥当な結論を引き出させ、これらの試薬の毒性又は他の非特異的な効果を除外させる。このため、RNAi治療後の標的に対するタンパク質及びmRNAの両方の発現レベルを測定するための測定法は、ウエスタンプロッティング、抗体で染色するFACS、イムノプレシピテーション、ノーザンブロット法又はRT−PCR(Taqman又は標準法)を含めて重要である。これらの測定法におけるsiRNAの発現型の効果は、同一株細胞におけるタンパク質及び/又はmRNAノックダウンレベルと関連があるはずである。158P1D7のノックダウンは、158P1D7. Bオリゴを用いてウエスタンブロット及びRT−PCR分析により測定すると得られる。
158P1D7関連細胞増殖を分析する方法は、増殖のためのマーカーとしてのDNA合成の測定である。標識DNA前駆物質(すなわち3H−チミジン)が、使用され、DNAに対するそれらの取り込みが定量化される。標識前駆物質のDNAへの取り込みは、培養物において生ずる細胞分裂の量と正比例する。細胞増殖を測定するために使用される別の方法は、クローン原性測定(clonogenic assays)を行うことである。これらの測定法において、細胞の規定した数が、適当なマトリックス上に蒔いて培養され、siRNA治療後の増殖期間後形成されたコロニーの数が計数される。
158P1D7癌標的の確認において、アポトーシスを伴う細胞生存/増殖分析及び細胞周期プロファイリング研究を補完することが考えられる。アポトーシスプロセスの生化学的特徴は、ゲノムDNA断片化であり、細胞を死なせる不可逆的な現象である。細胞において断片化したDNAを観察する方法は、アポトーシス細胞の細胞質におけるヒストン複合型DNA断片(モノ−及びオリゴ−ヌクレオソーム)の濃縮を測定するイムノアッセイ(免疫測定法)(すなわち細胞死検出ELISA)によるヒストン複合型DNA断片の免疫学的検出である。この測定は、細胞の前標識を必要とせず、生体外で増殖しない細胞(ずなわち新たに分離された腫瘍細胞)におけるDNA分解を検出することができる。
アポトーシス細胞死のきっかけとなる最も重要なエフェクター分子は、カスパーゼである。カスパーゼは、活性化したときに、多数の基質を活性化におけるアポトーシスに極めて早い段階で影響するアスパラギン酸残基のカルボキシ末端部位で切断するプロテアーゼである。全てのカスパーゼは、前酵素として合成され、活性化には、アスパラギン酸残基での切断が含まれる。特に、カスパーゼ3は、アポトーシスの細胞性の現象の開始において中心的な役割を果たすと思われる。カスパーゼ3の活性の測定するための試験では、アポトーシスの現象が早期に検出される。RNAi治療後、活性カスパーゼ3存在又はアポトーシス細胞において認められる産物(すなわちPARP)の蛋白分解性の切断のウエスタンブロット検出から、アポトーシスの活性誘導がさらに裏づけられる。アポトーシスをもたらす細胞メカニズムは複雑であるため、それぞれは、その利点と限界を有する。細胞形態、染色質凝縮、膜小疱形成(membrane blebbong)、アポトーシス体等の他の判定基準/終点の考察は、アポトーシスのような細胞死をさらに裏づけるのに役立つ。細胞増殖を制御する全て遺伝子標的が抗アポトーシスであるとは限らないので、透過化処理細胞のDNA構築物を測定して、DNA構築物のプロファイル又は細胞周期プロファイルを得る。アポトーシス細胞の核は、細胞質(サブG1集団(sub-G1 population))に漏出させるため、より小さいDNAを含む。さらに、DNA染色(すなわち、ヨウ化プロピジウム)の使用により、G0/G1、S及びG2/MにおけるDNA含量の相違のため、細胞集団における細胞周期の異なる相間も区別される。これらの研究において、分集団が定量化されうる。
158P1D7遺伝子に関し、RNAi研究は、癌経路における遺伝子生成の寄与の理解を容易にする。そのような活性RNAi分子は、有効な抗腫瘍治療学であるmAbsについてスクリーニングする同定方法において有用である。さらに、siRNAは、表Iに列挙した癌型を含むいくつかの癌型の悪性増殖を減少させるため癌患者に対する治療学として投与される。158P1D7が細胞生存、細胞増殖、腫瘍形成、又はアポトーシスにおいて役割を果たすとき、それは診断、予後徴候、予防及び/又は治療目的のための標的として用いられる。
[実施例53]158P1D7機能測定
I.158P1D7発現細胞における増殖の増大及び細胞周期調節
増殖の増大及び正常細胞に関連する腫瘍細胞のS相への移行は、癌細胞表現型の特徴である。正常細胞の増殖速度における158P1D7の発現の影響を扱うべく、二つのげっ歯類株細胞(3T3及びRat−1)を、158P1D7遺伝子を含むウイルスに感染させ、158P1D7抗原を発現する安定な細胞、並びに選択マーカーネオマイシン(Neo)を発現する空ベクター制御細胞を誘導した。細胞を、0.5%FBS中で一晩増殖させ、その後10%FBSで処理した細胞と比較した。それらの細胞を、3H−チミジン取込み試験による18−96時間の後処理での増殖について、並びにBrdU取込み/ヨウ化プロピジウム染色試験による細胞周期分析について評価した。図32における結果から、158P1D7抗原を発現するRat−1細胞がRat−1−Neo細胞と比較して、低血清濃度(0.1%)で有効に増殖したことが示される。158P1D7を発現する3T3細胞対Neoのみに関して、同様の結果が得られた。別の方法論により細胞増殖を評価すべく、細胞をBrdU及びヨウ化プロピジウムで染色した。簡単に、細胞を10 μMで標識し、洗浄し、トリプシン処理し、0.4%パラホルムアルデヒド及び70%エタノールに固定した。抗BrdU−FITC(Pharmigen)を細胞に添加し、その細胞を洗浄し、その後洗浄及び488nmでの蛍光分析より前に20分間、10 μg/mlヨウ化プロピジウムと共にインキュベートした。図33における結果から、制御細胞と関連した158P1D7抗原を発現した3T3細胞のS相(細胞周期のDNA合成相)において細胞の標識の増加があったことが示される。これらの結果から、3H−チミジン取込みにより測定した結果が確認され、158P1D7抗原を発現する細胞が高い増殖能力を有し、かつ低血清条件で生存することが示される。したがって、158P1D7発現細胞は、生体内での腫瘍細胞のような増殖の可能性を増大させた。
II.細胞表面と結合する組換え細胞外ドメイン(ECD)
細胞−細胞相互作用は、組織/器官保全性及び恒常性(ホメオスタシス)を維持することにおいて必須であるが、それらの両方は腫瘍形成及び増殖の間、調節解除するようになる。さらに、細胞−細胞相互作用は、転移、及び血管形成の増大のための内皮活性化の間、腫瘍細胞付着を促進する。158P1D7の遺伝子生成と推定上のリガンド間の相互作用を扱うべく、測定法を確立して、158P1D7抗原の細胞外ドメイン(ECD)(アミノ酸16−608)と一次内皮(primary endothelium)間の相互作用を同定した。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、3時間、培地中0.1%FBSで増殖させた。細胞を、洗浄し、10mM EDTAで剥離し、10%FBSに再懸濁させた。組換え型158P1D7 ECD(「真核系における組換え型158P1D7の製造」と題した実施例において記載したもの)を細胞に添加し、それらの細胞を、1μg/mlでMabM15/X68.2.22を添加するより前に、洗浄した。洗浄後、二次Ab(抗マウス−PE、1:400)を、氷上1時間の細胞に添加した。細胞を、洗浄し、氷上3時間の1%ホルマリンに固定し、その後PBSに再懸濁し、フローサイトメトリーにより分析した。図26Aから、158P1D7 ECDが、158P1D7特異MAbにより検出されたHUVEC細胞の表面に直接結合したことが示される。同お湯の形態において、158P1D7の組換え型ECDを、iodogen(1,3,4,5−テトラクロロ−3a,6a−ジフェニルグリコルリル(1,3,4,5−tetrachloro-3a,6a-diphenylglycoluril))法を用いて、高比活性まで、ヨード化した。6ウェルプレート中90%集密性のHUVEC細胞を、4℃又は37℃の何れかで、2時間、50倍過剰量非標識ECDの存在(非特異結合)又は不存在(全結合)下で、1nMの125I−158P1D7 ECDと共にインキュベートした。図25Bにおけるデータから、HUVEC細胞における158P1D7レセプターの存在を裏づける158P1D7 ECDのHUVEC細胞への特異結合が示される。これらの結果から、158P1D7抗原は、腫瘍増殖、腫瘍血管新生に対する内皮の活性化又は腫瘍細胞転移を促進する細胞−細胞相互作用に関与することが示される。それらのデータから、発現細胞の細胞表面から脱落する158P1D7抗原は、細胞エフェクター機能を誘導すべく、オートクリン又はパラクリンの方法で細胞と結合する可能性があることも示される。
[実施例54]免疫組織化学を用いる癌患者検体における158P1D7タンパク質の検出
158P1D7タンパク質の発現を測定すべく、標本を、各種癌患者から得て、158P1D7のアミノ酸274−285をコード化するペプチドに対して産生されるアフィニティー精製モノクローナル抗体を用いて染色し(「158P1D7モノクローナル抗体(mAbs)の生成」と題した実施例参照)、ホルマリン固定し、パラフィン内包し、組織を4ミクロン切片にカットし、ガラススライド上に固定した。その切片を、脱パラフィンし、再水和し、高温で抗原回収溶液(Antigen Retrieval Citra Solution;BioGenex、4600 Norris Canyon Road、San Ramon、CA、94583)で処理した。切片を、その後3時間、マウスモノクローナル抗158P1D7抗体、M15−68(2)22中でインキュベートした。スライドを、バッファ中で3回洗浄し、さらに1時間、DAKO EnVision+TMペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗マウス免疫グロブリン二次抗体(DAKO EnVision+TM peroxidase-conjugated goat anti-mouse immunoglobulin secondary antibody)(DAKO Corporation、Carpenteria、CA)と共にインキュベートした。切片を、その後バッファ中で洗浄し、DABキット(SIGMA Chemicals)を用いて発育させ、ヘマトキシリンを用いて対比染色し、明視野顕微鏡により分析した。それらの結果から、癌患者の組織における158P1D7の発現が示された(図36)。一般に、膀胱移行上皮癌において、158P1D7の発現は、主として、158P1D7がこれらの組織において会合した膜であることを示す細胞膜の周囲にあった。試験した膀胱移行上皮癌サンプルの49.3%は、158P1D7に対して陽性であった(表58)。
これらの結果から、158P1D7が癌における診断、予後徴候、予防及び治療の用途の標的であることが示される。
本発明は、本発明の個々の側面の一詳述のつもりで本願において開示された形態による範囲に制限されず、機能的に同等である、いかなるものも本発明の範囲内にある。本願において記載されたモデル及び方法に加え、本発明のモデル及び方法に対する各種の変更は、前述の記載及び教示から、その技術において熟練した者(当業者)に明らかであろうし、同様に本発明の範囲内に入ると意図される。そのような変更又は他の形態は、本発明の本来の範囲及び意図から離れることなく、実施されうる。
なお、本発明は、以下の好ましい実施形態も含む。
(形態1)
a)図2のタンパク質の8、9、10又は11個の連続するアミノ酸からなるペプチド;
b)表5〜表18のペプチド
c)表22〜表45のペプチド;又は
d)表46〜表49のペプチド
を含む、から実質的になる、又はからなる組成物。
(形態2)
免疫応答を誘発する形態1の組成物。
(形態3)
図2に示した全アミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%相同であるか、又は同一である形態2のタンパク質。
(形態4)
図2のタンパク質と特異的に結合する抗体によって結合される形態2のタンパク質。
(形態5)
図2のタンパク質のアミノ酸配列からの、細胞障害性T細胞(CTL)ポリペプチドエピトープ又はその類似体を含むことを特徴とする形態2の組成物。
(形態6)
前記エピトープは図2の全アミノ酸配列ではないという条件によって更に制限される形態5の組成物。
(形態7)
前記ポリペプチドは図2のタンパク質の全アミノ酸配列ではないという条件によって更に制限される形態2の組成物。
(形態8)
図2のアミノ酸配列からの抗体ポリペプチドエピトープを含む形態2の組成物。
(形態9)
前記エピトープは図2の全アミノ酸配列ではないという条件によってされに制限される形態8の組成物。
(形態10)
前記抗体エピトープは、当該ペプチドの末端まで任意の整数で増加する図2の少なくとも5アミノ酸のペプチド領域を含み、
前記エピトープは、
a)図5の親水性プロファイルの0.5より大きい値を有するアミノ酸位置、
b)図6の疎水性親水性プロファイルの0.5より小さい値を有するアミノ酸位置、
c)図7のパーセント接触可能残基プロファイルの0.5より大きい値を有するアミノ酸位置、
d)図8の平均可撓性プロファイルの0.5より大きい値を有するアミノ酸位置、
e)図9のベータ−ターンプロファイルの0.5より大きい値を有するアミノ酸位置、
f)前記a)〜e)の少なくとも2つの組合せ、
g)前記a)〜e)の少なくとも3つの組合せ、
h)前記a)〜e)の少なくとも4つの組合せ、
i)前記a)〜e)の5つの組合せ、
から選択されるアミノ酸位置を含むことを特徴とする形態8の組成物。
(形態11)
形態1のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(形態12)
図2に示された核酸分子を含む形態11のポリヌクレオチド。
(形態13)
前記コードされたタンパク質は図2の全アミノ酸配列ではないという条件によって更に制限される形態12のポリヌクレオチド。
(形態14)
形態11のポリヌクレオチドに完全に相補的なポリヌクレオチドを含む組成物。
(形態15)
158P1D7タンパク質の核酸ORF配列又はその部分配列に対応するsiRNA(二本鎖RNA)を含み、
前記部分配列は長さにおいて19、20、21、22、23、24、又は25連続RNAヌクレオチドでありかつmRNAコード配列の少なくとも一部に相補的な配列と非相補的な配列を含むことを特徴とする158P1D7siRNA組成物。
(形態16)
形態1の付加的ペプチドをコードする付加的ヌクレオチド配列を更に含む形態13のポリヌクレオチド。
(形態17)
図2のタンパク質に向けられた哺乳類免疫応答を惹起する方法であって、
該方法は、前記哺乳類の免疫系の細胞を
a)158P1D7関連タンパク質及び/又は
b)該158P1D7関連タンパク質をコードするヌクレオチド配列
の一部に接触させることにより、該158P1D7関連タンパク質に対する免疫応答が惹起されることを含む方法。
(形態18)
形態17の免疫応答惹起方法であって、
少なくとも1つのT細胞エピトープ又は少なくとも1つのB細胞エピトープを含む158P1D7関連タンパク質を用意すること、及び
前記エピトープを哺乳類免疫系T細胞又はB細胞に接触させることにより、T細胞又はB細胞が活性化されること
を含む方法。
(形態19)
前記免疫系細胞はB細胞であり、そのため活性化されたB細胞は、前記158P1D7関連タンパク質に特異的に結合する抗体を産生することを特徴とする形態18の方法。
(形態20)
前記免疫系細胞は細胞障害性T細胞(CTL)であるT細胞であり、そのため活性化されたCTLは、前記158P1D7関連タンパク質を発現する自己細胞を死滅することを特徴とする形態18の方法。
(形態21)
前記免疫系細胞はヘルパーT細胞(HTL)であるT細胞であり、そのため活性化されたHTLは、細胞障害性T細胞(CTL)の細胞障害活性又はB細胞の抗体産生活性を促進するサイトカインを分泌することを特徴とする形態18の方法。
(形態22)
サンプル中の図2のタンパク質をコードするmRNAの存在を検出する方法であって、
前記サンプルを少なくとも1つの158P1D7cDNAプライマーを用いる逆転写にかけることにより、該サンプル中にmRNAが存在する場合cDNAが産生されること;
産生されたcDNAを、センスプライマー及びアンチセンスプライマーとしての158P1D7ポリヌクレオチドを用いて増幅すること;及び
増幅された158P1D7cDNAの存在を検出すること、
この場合、増幅された158P1D7cDNAの存在は、図2のタンパク質をコードするmRNAの前記サンプル中における存在の指標であること
を含むことを特徴とする方法。
(形態23)
サンプル中における158P1D7関連タンパク質又は158P1D7関連ポリヌクレオチドの存在を検出する方法であって、以下のステップ:
前記サンプルを158P1D7関連タンパク質又は158P1D7関連ポリヌクレオチドに特異的に結合する物質と接触させて複合体を形成すること;及び、
前記サンプル中における前記複合体の存在又は量を求めること
を含むことを特徴とする方法。
(形態24)
サンプル中の158P1D7関連タンパク質の存在を検出するための、形態23の方法であって、以下のステップ:
前記サンプルを何れも158P1D7関連タンパク質に特異的に結合する抗体又はそのフラグメントと接触させて、結合した場合複合体を形成すること;及び、
前記サンプル中における前記複合体の存在又は量を求めること
を含むことを特徴とする方法。
(形態25)
生物学的サンプル中の1又は2以上の158P1D7遺伝子産物をモニターするための、形態23の方法であって、
1つの個体からの組織サンプル中の細胞によって発現された1又は2以上の158P1D7遺伝子産物の状態を検出すること;
前記検出された状態と、相応の標準サンプル中の1又は2以上の158P1D7遺伝子産物の状態とを比較すること;及び
前記標準サンプルに対する前記組織サンプル中における158P1D7の異常発現状態の存在を同定すること
を含むことを特徴とする方法。
(形態26)
158P1D7mRNA又は158P1D7タンパク質の1又は2以上の増加された遺伝子産物が存在するか否かを求めるステップを更に含み、前記標準組織サンプルに対する前記試験サンプル中における1又は2以上の増加された遺伝子産物の存在は癌の存在又は状態の指標であることを特徴とする形態25の方法。
(形態27)
前記組織は表1に示された組織のセットから選択されることを特徴とする形態26の方法。
(形態28)
図2のタンパク質を発現する細胞の状態を調節する組成物であって、
a)図2のタンパク質を発現する細胞の状態を調節する物質、又はb)図2のタンパク質によって制御又は生成される分子を含む組成物。
(形態29)
158P1D7タンパク質の核酸ORF配列又はその部分配列に対応するsiRNA(二本鎖RNA)を含み、
前記部分配列は長さにおいて19、20、21、22、23、24、又は25連続RNAヌクレオチドでありかつmRNAコード配列の少なくとも一部に相補的な配列と非相補的な配列を含むことを特徴とする形態28の158P1D7siRNA組成物。
(形態30)
生理学的に許容可能な担体を更に含む形態28の組成物。
(形態31)
ヒト最小投薬単位形態の形態28の組成物を含む医薬組成物。
(形態32)
前記物質は、図2のタンパク質と特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを含むことを特徴とする形態28の組成物。
(形態33)
モノクローナルである形態32の抗体又はそのフラグメント。
(形態34)
ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である形態32の抗体。
(形態35)
形態32の抗体を産生する非ヒトトランスジェニック動物。
(形態36)
形態33の抗体を産生するハイブリドーマ。
(形態37)
前記物質は、図2のタンパク質を発現する細胞の生存能力、成長又は複製状態を減少又は阻害することを特徴とする形態28の組成物。
(形態38)
前記物質は、図2のタンパク質を発現する細胞の生存能力、成長又は複製状態を増加又は促進することを特徴とする形態28の組成物。
(形態39)
前記物質は、
a)何れも図2のタンパク質と免疫特異的に結合する抗体又はそのフラグメント;
b)何れも図2のタンパク質と免疫特異的に結合する抗体又はそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
c)158P1D7コード配列を有するポリヌクレオチド切断するリボザイム、又は該リボザイムをコードする核酸分子;及び生理学的に許容可能な担体;
d)特定のHLA分子と関連して158P1D7ペプチド部分配列を特異的に認識するヒトT細胞;
e)図2のタンパク質、又は図2のタンパク質のフラグメント;
f)図2のタンパク質をコードするヌクレオチド、又は図2のタンパク質のフラグメントをコードするヌクレオチド;
g)図2のタンパク質の8、9、10又は11連続アミノ酸のペプチド;
h)表5〜表18のペプチド;
i)表22〜表45のペプチド;
j)表46〜表49のペプチド;
k)図2のアミノ酸配列からの抗体ポリペプチドエピトープ;
l)図2のアミノ酸配列からの抗体ポリペプチドエピトープをコードするポリヌクレオチド;又は
m)158P1D7タンパク質の核酸ORF配列又はその部分配列に対応するsiRNA(二本鎖RNA)を含み、該部分配列が長さにおいて19、20、21、22、23、24、又は25連続RNAヌクレオチドでありかつmRNAコード配列の少なくとも一部に相補的な配列と非相補的な配列を含む158P1D7siRNA組成物
を含む群から選択されることを特徴とする形態28の組成物。
(形態40)
図2のタンパク質を発現する癌細胞の生存能力、成長又は複製状態を阻害する方法であって、
前記癌細胞に形態28の組成物を投与して、該癌細胞の生存能力、成長又は複製状態を阻害すること
を含む方法。
(形態41)
前記組成物は、何れも158P1D7関連タンパク質に特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを含むことを特徴とする形態40の方法。
(形態42)
前記組成物は、(i)158P1D7関連タンパク質、又は(ii)158P1D7関連タンパク質のコード配列を含むポリヌクレオチド若しくは158P1D7関連タンパク質のコード配列に相補的なポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含むことを特徴とする形態40の方法。
(形態43)
前記組成物は、図2のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを切断するリボザイムを含むことを特徴とする形態40の方法。
(形態44)
前記組成物は前記癌細胞に対するヒトT細胞であり、該ヒトT細胞は図2のタンパク質のペプチド部分配列を特異的に認識し、該部分配列は前記特定のHLA分子に関連していることを特徴とする形態40の方法。
(形態45)
前記組成物は単鎖モノクローナル抗体をコードするヌクレオチドを運搬するベクターを含み、該コードされた単鎖抗体は図2のタンパク質を発現する癌細胞の内部で細胞内発現されることを特徴とする形態40の方法。
(形態46)
図2のタンパク質を発現する細胞に剤を送達する方法であって、
形態32の抗体又はそのフラグメントとコンジュゲートされた剤を与えること;及び
前記細胞と、前記抗体−剤コンジュゲート又はフラグメント−剤コンジュゲートを接触させること
を含む方法。
(形態47)
図2のタンパク質を発現する癌細胞の生存能力、成長又は複製状態を阻害する方法であって、
前記癌細胞に形態28の組成物を投与して、該癌細胞の生存能力、成長又は複製状態を阻害すること
を含む方法。
(形態48)
表1に列挙した組織の癌を阻止又は治療するための情報を、当該阻止又は治療の必要な被検体に対しターゲティングする方法であって、
被検体からのサンプル中における、表1に列挙した組織の癌と関連するポリヌクレオチドの発現の有無を検出すること、但し、前記ポリヌクレオチドの発現は、
(a)図2のヌクレオチド配列;
(b)図2のヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(c)図2のヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列と90%以上同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
からなる群から選択される;及び
前記サンプル中における前記ポリヌクレオチドの発現の有無に基づいて、表1に列挙した組織の癌を阻止又は治療するための情報を、当該阻止又は治療の必要な被検体に向けること
を含む方法。
(形態49)
前記情報は表1に列挙された組織の癌のための検出手順又は治療の記述を含むことを特徴とする形態48の方法。
(形態50)
細胞増殖を調節する候補分子を同定するための方法であって、
(a)試験分子を
(i)配列番号1のヌクレオチド配列;
(ii)図3に示したアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(iii)図3に示したアミノ酸配列と90%以上同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び
(iv)前記(i)、(ii)又は(iii)のヌクレオチド配列のフラグメント
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸を含む系に導入するか、又は
試験分子を前記(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質を含む系に導入すること;及び
(b)前記試験分子と前記ヌクレオチド配列又はタンパク質との間の相互作用の有無を決定し、該試験分子と該ヌクレオチド配列又はタンパク質との間の相互作用の存在により、該試験分子は、細胞増殖を調節する候補分子として同定されること、
を含む方法。
(形態51)
前記系は動物であることを特徴とする形態50の方法。
(形態52)
前記系は細胞であることを特徴とする形態50の方法。
(形態53)
前記試験分子は、前記(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントを含むことを特徴とする形態50の方法。
(形態54)
被検体において表1に列挙された組織の癌を治療するための方法であって、
形態50の方法によって同定された候補分子を、治療の必要のある被検体に投与することにより、該候補分子が該被検体内の表1に列挙された組織の癌を治療することを特徴とする方法。
(形態55)
表1に列挙された組織の癌を治療するための候補薬を同定するための方法であって、
(a)試験分子を
(i)配列番号1のヌクレオチド配列;
(ii)図3に示したアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(iii)図3に示したアミノ酸配列と90%以上同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び
(iv)前記(i)、(ii)又は(iii)のヌクレオチド配列のフラグメント
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸を含む系に導入するか、又は
試験分子を前記(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質を含む系に導入すること;及び
(b)前記試験分子と前記ヌクレオチド配列又はタンパク質との間の相互作用の有無を決定し、該試験分子と該ヌクレオチド配列又はタンパク質との間の相互作用の存在により、該試験分子は、表1に列挙された組織の癌を治療するための候補薬として同定されること、
を含む方法。
(形態56)
前記系は動物であることを特徴とする形態55の方法。
(形態57)
前記系は細胞であることを特徴とする形態55の方法。
(形態58)
前記試験分子は、前記(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントを含むことを特徴とする形態55の方法。