JP2015055017A - 壁紙裏打ち用不織布及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂コーティングや印刷等の加工がなされて壁紙として使われる壁紙裏打ち用不織布に関し、壁面から壁紙を剥離する際のピール特性が良好であると共に、塗布加工や印刷時の欠点となる毛羽立ちが少なくコーティング適性が良好で、さらに寸法安定性が良好な壁紙裏打ち用の不織布を提供することを目的とする。【解決手段】2層構造で、第1層が壁面に貼り付けられる層で、第2層が表面層である壁紙裏打ち用不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層はラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、壁紙用裏打ち紙として使用される2層構造の壁紙裏打ち用不織布に関する。
従来、低価格である上に、印刷加工、発泡加工、エンボス加工等の種々の加工適性を持ち合わせていることから、デザイン性、色柄等が豊富であるビニル壁紙等が室内装飾用内装材として広く用いられている。
壁紙を壁に施工する際、壁紙裏面に澱粉や酢酸ビニルエマルジョンやメチルセルロース等の水溶性の糊をロールコーターで塗布し、糊付けした壁紙の糊面を内側にして折り畳み、壁に貼るまで暫く放置した後、壁面への貼り付け作業を行う。この糊付けから施工までの放置された状態では、壁紙用裏打ち紙は水溶性の糊によってカールしたり、伸びたりする現象が起こる。また、石膏ボードやコンクリート等の壁面に貼り付けて数日後に完全に糊が乾燥すると、逆に収縮する現象が起こる。そのため、壁紙用裏打ち紙には乾燥状態と湿潤状態での寸法変化が小さいことが要求される。この対策として、ポリアルキレングリコールを塗布した壁紙(例えば、特許文献1参照)、スルファミン酸グアニジン誘導体、表面サイズ剤、バインダーからなる混合液を含浸した壁紙(例えば、特許文献2参照)が開示されている。また、寸法変化が小さい内装材としては、紙基材に合成繊維又は無機質材料を添加して、防カビを目的とした水中伸度が1%未満の壁紙等の内装材が提案されているが、これは、壁紙として通気性を確保するものであった(例えば、特許文献3参照)。
また、近年、居住空間の高級化と多用化が進んでおり、これに伴い新築住宅に比べ既設住宅のリフォームによる壁紙の張り替え需要が多くなってきている。リフォームを行う際に問題となるのは、壁紙を壁から剥がす際の作業性である。従って、壁紙を壁面から剥がす際の剥離強度が軽い、いわゆるピール特性に優れた壁紙が求められている。ピール特性に優れた壁紙としては、糊にメチルセルロースを用いた壁紙が開示されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、壁紙にはデザイン、意匠性を高めるための印刷やボリューム感を高めるための発泡性ポリ塩化ビニル樹脂のコーティングが行われ、表層が設けられる。そのため、壁紙用裏打ち紙の印刷や発泡性ポリ塩化ビニル樹脂コーティングが施される側には、印刷適性やコーティング適性が必要となる。
しかしながら、パルプ繊維のみからなる壁紙用裏打ち紙、紙基材に単に合成繊維又は無機質材料を添加した壁紙用裏打ち紙では、層間強度が弱いために壁紙の層間で剥離してしまい、壁面に壁紙の一部がランダムに残り作業性を低下させるばかりでなく、張り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまうという問題があった。また、毛羽立ちによって、印刷適性やコーティング適性が不十分だという問題があった。
特開2001−81700号公報 特開平10−273896号公報 特開2001−303491号公報 特開2005−154968号公報
本発明の課題は、寸法安定性が良好であると共に、ピール特性を有し、印刷やコーティング適性をも有する壁紙裏打ち用不織布を提供することである。
本発明者らは、この課題を解決するため研究を行った結果、下記手段を見出した。
[1]2層構造で、第1層が壁面に貼り付けられる層で、第2層が表面層である壁紙裏打ち用不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層はラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用不織布。
[2]第2層の繊維状バインダーの一部又は全てがポリビニルアルコール繊維である[1]記載の壁紙裏打ち用不織布。
[3]第2層表面に顔料が付与されている[1]又は[2]記載の壁紙裏打ち用不織布。
[4]2層構造で、第1層が壁面に貼り付けられる層で、第2層が表面層である壁紙裏打ち用不織布の製造方法において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーを含み、第2層はラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーを含み、湿式抄造法により製造されたシートの第2層表面をヤンキードライヤーに当てて乾燥することを特徴とする壁紙裏打ち用不織布の製造方法。
本発明によれば、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂コーティングや印刷等の加工がなされて壁紙として使われる壁紙裏打ち用不織布に関し、第1層と第2層とで機能分離することにより、第2層が印刷やコーティング時の欠点となる毛羽立ちを抑え、コーティング適性を備え、第1層が壁面から壁紙を剥離する際のピール特性を付与し、さらに両層で寸法安定性を良好に備えた壁紙裏打ち用の不織布を提供することができる。また、本発明の2層構造の壁紙裏打ち用不織布は、結晶性に優れたラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維を含有することから、寸法安定性がさらに良好である。
ポリエチレンテレフタレート繊維のラマン散乱スペクトルである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の壁紙裏打ち用不織布は、第2層が表面層であり、第2層表面に壁紙の表層が設けられて壁紙として使用され、第1層が壁面に貼り付けられる層である2層構造の壁紙裏打ち用不織布である。本発明の壁紙裏打ち用不織布は、寸法安定性が良好であって施工性が良好であり、ピール特性に優れ、かつ毛羽立ちの問題がなく、印刷やコーティング適性を有する壁紙裏打ち用不織布である。
本発明の壁紙裏打ち用不織布は、石膏ボードやコンクリート等からなる壁面又は壁紙.裏打ち用不織布の第1層表面に塗布された糊によって、壁面に貼り付けられる。本発明の壁紙裏打ち用不織布の第1層は、パルプ繊維を含むことで、繊維状バインダーを含んでいても、親水性に調整されている。また、適度に叩解されたパルプ繊維を用いることにより繊維間に一定の空隙部を有し、吸水性が調整されている。パルプ繊維の叩解度は、300mlCSF以上が好ましく、400mlCSF以上がより好ましい。叩解度が300mlCSF未満の場合には、空隙部分が少なくなって吸水性が低下することがあり、糊が入り込みにくくなって直ぐに乾いてしまい、作業性が低下する場合がある。
パルプ繊維は、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。これらの繊維は、本発明の性能を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等を使用してもよい。本発明の壁紙裏打ち用不織布の第1層に配合されるパルプ繊維の配合比率は、第1層のパルプ繊維と繊維状バインダーの配合量を合計で100質量%とした場合に、50〜97質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜93質量%がさらに好ましい。50質量%未満の場合、強度維持、寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増すことがある。一方、97質量%を超えると、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあり、また、張り替え時に層間剥離を起こしてしまうことがある。さらに、寸法安定性が得られないこともある。
第1層に配合される繊維状バインダーは、シートを抄造した後の乾燥工程において、バインダー性能を発現する繊維である。断面が扁平なパルプ繊維とは異なり、真円状又は真円状に近い形状であり、パルプ繊維同士の間に存在させることによって、空隙部を増す働きをすると共に、耐水性に乏しいパルプ繊維同士を接着させることによって湿潤状態においても強度を維持し、糊が塗布されたときの伸びや施工されて乾燥した後の収縮等の寸法変化を抑える働きがある。また、石膏ボードやコンクリート等の壁面に施工された壁紙をリフォーム時に剥がす際には、壁面と壁紙の間に存在する糊層で剥離させることが重要であるが、第1層が繊維状バインダーを配合しないパルプ繊維のみの場合やパルプ繊維と合成繊維のみの場合には、層間強度が弱いために壁紙の層間で剥離してしまい、壁面に壁紙の一部がランダムに残り作業性を低下させるばかりでなく、張り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまう。本発明では、繊維状バインダーを第1層に配合していることで、壁紙の層間剥離を抑制することが可能となっている。
本発明において、第1層に配合される繊維状バインダーの配合比率は、第1層のパルプ繊維と繊維状バインダーの配合量を合計で100質量%とした場合に、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。3質量%未満の場合、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、張り替え時に層間剥離を起こしてしまうこともある。また、寸法安定性が得られない場合もある。一方、50質量%を超えると、強度維持、寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増すこともある。
繊維状バインダーの繊度は、0.1〜5.6dtexが好ましく、0.6〜3.3dtexがより好ましく、1.1〜2.2dtexがさらに好ましい。0.1dtex未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、5.6dtexを超えた場合、パルプ繊維との接点が少なくなり、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、均一な地合が取れないことがある。繊維状バインダーの繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり、均一な地合が得られないことがある。
繊維状バインダーとしては、単成分からなる単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、不織布の空隙部を保持したまま、耐水強度を向上させることができる。繊維状バインダーとしては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリエステルの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール(PVA)繊維のような湿熱接着性の繊維状バインダーも使用することができる。特に、芯鞘繊維が空隙部確保と強度発現の両方を備えているので好ましい。
本発明において、第1層には、パルプ繊維、繊維状バインダーに加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、バインダー性能を有しないパルプ繊維以外の繊維を配合することができ、その結果、さらに空隙部を増すことができる。バインダー性能を有しないパルプ繊維以外の繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。
本発明の壁紙裏打ち用不織布の第2層は、ラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーと有機繊維を含む。
「ラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)」を「ピーク強度比(I/I)」と記載する場合がある。ポリエチレンテレフタレート繊維は、紡糸条件を調整することにより結晶性を高めることが可能である。例えば紡糸速度の高速化により、分子配向度の高い未延伸糸を引き取り、熱延伸を施す方法で製造されるものが知られているが、本発明はこれに限定されるものではない。ラマン散乱スペクトルの1096cm−1付近及び1120cm−1付近のピークは、それぞれポリエチレンテレフタレート繊維のエチレングリコール部分のTransとGauche成分を示すものであり、Trans成分が結晶性を形成することが知られている。本発明に係わるポリエチレンテレフタレート繊維のピーク強度比(I/I)は特に上限を定める必要はないが、大き過ぎると、紡糸性を損なうおそれがあることから、3.0〜6.0が好ましく、特に好ましくは3.5〜5.0である。以下、特に断らない限り、本発明で言う「ポリエチレンテレフタレート繊維」は、「ラマン散乱スペクトルの1096cm−1付近及び1120cm−1付近のピーク強度比(I/I)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維」を指すものとする。本発明の2層構造の壁紙裏打ち用不織布は、結晶性に優れたポリエチレンテレフタレート繊維を含有することから、寸法安定性が良好であって施工性が良好である。
第2層のポリエチレンテレフタレート繊維の繊度は、0.3〜5.0dtexが好ましく、0.4〜4.0dtexがより好ましく、0.6〜3.5dtexがさらに好ましい。繊度が小さ過ぎると、十分な剛直性が得られない場合があり、寸法安定性が損なわれるおそれがある。一方、繊度が大き過ぎると、平滑性が低下し地合不良となるおそれがある。
ポリエチレンテレフタレート繊維の繊維長は、1〜15mmが好ましく、3〜10mmが特に好ましい。繊維長が短過ぎた場合には、十分な寸法安定性が得られないことがあり、繊維長が長過ぎると、地合不良となるおそれがある。
ポリエチレンテレフタレート繊維の配合比率は特に限定しないが、第2層におけるポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーの配合量を合計で100質量%とした場合に、2〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。2質量%未満であると、空隙部保持効果が少なくなる場合があり、30質量%を超えると空隙部が過剰となって、コーティングや印刷時に浸透量が過剰となってしまうという問題が発生することがある。
この第2層表面は、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂等が表面にコーティングされたり、印刷がなされたりする面であることから、第2層は繊維状バインダーで寸法安定性を保たせ、ポリエチレンテレフタレート繊維で寸法安定性をさらに向上させると共に、適当な空隙部を保持してボリューム感を出し、パルプ繊維で目を詰めてコーティングや印刷時の過剰な浸透を押さえて平坦性を良好なものに保たせている。さらに、繊維状バインダーの一部又は全てをPVA繊維にすることによって、毛羽立ちのより少ない平坦な表面が得られることから、コーティングや印刷後の表面も平滑になる。
第2層において、ポリエチレンテレフタレート繊維、パルプ繊維と繊維状バインダーとの配合量を合計で100質量%とした場合に、繊維状バインダーの配合率は2〜30質量%、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である。2質量%未満であると寸法安定性が悪く、30質量%を超えるとコーティングや印刷時に浸透量が過剰となってしまうという問題が発生する場合がある。
ポリエチレンテレフタレート繊維、パルプ繊維と繊維状バインダー以外の有機繊維を配合することによって、さらに空隙部を増やすことができる。有機繊維としては、再生繊維としてのレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等が、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ナイロン系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。有機繊維のほかに、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維も性能を阻害しない範囲で加えることができる。
有機繊維の繊度は、0.1〜11dtexが好ましく、0.6〜5.6dtexがより好ましく、1.1〜3.3dtexがさらに好ましい。0.1dtex未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、11dtexを超えた場合、空隙が過剰になる場合があり、また均一な地合が取れないことがある。有機繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり均一な地合が得られないことがある。
第2層において、パルプ繊維の配合比率は、ポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーの配合量を合計で100質量%とした場合に、40〜96質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましく、60〜90質量%がさらに好ましい。40質量%未満の場合、空隙部が多すぎるため、発泡性ポリ塩化ビニルのコーティング時に浸透量が過剰となってしまうことがあり、一方、96質量%を超えると寸法安定性が悪くなることがある。
本発明において、第2層で使用するパルプ繊維としては、上記の第1層に用いるパルプ繊維を使用できる。また、第2層で使用する繊維状バインダーとしては、上記の第1層に用いる繊維状バインダーを使用できる。芯鞘繊維を好ましく使用できる。さらに、第2層の繊維状バインダーの一部又は全てがPVA繊維であることがより好ましい。PVA繊維は、適当な原料PVAを用いて適当な条件で製造した繊維であり、常温の水ではほとんど溶解しないで繊維形態を保っているが、抄紙後のヤンキードライヤー面に第2層表面が接して加熱されると容易に溶解し始め、その瞬間にタッチロールのような設備で加圧することにより、繊維間にまたがって繊維状バインダーとなり、その後の脱水乾燥によって再凝固し、芯鞘繊維のみでは得られない毛羽立ちの少ない平滑な面が得られる。また、高温水中でなければ容易に離れない強力な紙層構成繊維となる。
このPVA繊維の接着力に及ぼす影響は色々考えられるが、大別して水中軟化点、繊度、繊維長の3点から考えることができる。まず、水中軟化点について説明する。水中軟化点は、湿紙がドライヤーにより熱を受け、繊維状バインダーが溶け始めて接着機能を示す温度を大体示している。水中軟化点の低いPVA繊維を使用するほど、接着の前提条件である繊維状バインダーの溶解が容易となり接着効果が大きくなる。水中軟化点の低い方が、接着効果の点からは良いが、ドライヤーへの付着は起こり易い。PVA繊維が溶解するためには、その水中軟化点以上に湿紙の温度が高くなる必要があり、従って乾燥温度が高いほど接着効果が大きく、強度は向上する。湿紙中の水温がPVA繊維の水中軟化点以下では、繊維状バインダーの溶解が起こらず、従ってバインダー性能は全く失われる。ヤンキードライヤーの場合、ドライヤーのスチーム温度は100〜160℃程度で、これに接触している湿紙の温度は60〜90℃と考えられるから、PVA繊維の水中軟化点として65〜85℃のものを選定すると十分な接着力を得ることができる。
次に、繊度については、細くなるに従って強度は向上する。このことは同一質量比で添加した場合、細い繊維を用いると、添加本数が多くなって接着点の数が増えるため、接着力が大きくなるからである。但し、あまり繊度が小さくなりすぎると、不織布が緻密になりすぎることがある。PVA繊維の繊度は、特に限定しないが、0.1〜5.6dtexが好ましく、0.3〜3.3dtexがより好ましく、0.6〜2.2dtexがさらに好ましい。最後に、PVA繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり均一な地合が得られないことがある。
本発明の壁紙裏打ち用不織布の坪量は、特に限定しないが、40g/m以上が好ましく、60g/m以上がより好ましい。40g/m未満では、引張強度、硬さに問題があり、コーティングや印刷の際にカールの発生や断紙を起こす恐れがある。一方、カールや断紙の抑制効果は、坪量が200g/mを超えた領域ではほとんど変わらないため、坪量は200g/m以下とすることが好ましく、150g/m以下としてもよい。
第1層の坪量は、5g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましい。5g/m未満の場合、第1層表面に水溶性の糊を塗布する際に、第2層にまで糊が達してしまい、第1層の役割を果たさなくなってしまうことがある。一方、糊の浸透を抑制する効果は、坪量が100g/mを超えた領域ではほとんど変わらないため、第1層の坪量は100g/m以下とすることが好ましく、80g/m以下としてもよい。
第2層の坪量は、10g/m以上が好ましく、30g/m以上がより好ましい。10g/m未満の場合、均一な地合を得ることが困難となり、毛羽立ちが発生する恐れがある。一方、150g/mを超えた領域では、毛羽立ちの抑制効果はほとんど変わらないため、第2層の坪量は150g/m以下とすることが好ましく、120g/m以下としてもよい。
本発明の壁紙裏打ち用不織布には、必要に応じてサイズ剤を配合することができる。サイズ剤としては、本発明の所望の効果を損なわないものであれば、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、合成サイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)など公知のサイズ剤のいずれをも用いることができる。サイズ性を発現させる目的で必要に応じてアルミニウム(Al)の多価金属化合物(例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェイト、アルミン酸ソーダ等)を配合できることは勿論である。
このほかに、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、従来から使用されている各種アニオン性、ノニオン性、カチオン性、あるいは両性の歩留り向上剤、濾水剤、分散剤、紙力向上剤や粘剤が必要に応じて適宜選択して使用される。なお、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を目的に応じて適宜添加することも可能である。
また、必要に応じて、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の填料や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の自己消火性を有する填料等も配合できる。特にコンクリートや石膏ボード等の壁面が透けて見えないようにするために隠蔽性、不透明度を高めるためには酸化チタンが有用である。これら填料の添加量は、隠蔽性、難燃性、不織布の強度等を考慮して、上記の壁紙裏打ち用不織布100質量%に対し、5〜30質量%である。
本発明の壁紙裏打ち用不織布の第1層は、石膏ボードやコンクリート等の壁面に接着される面であり、第2層は印刷されたり、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂をコーティングされたりする面である。坪量比率は、特に限定されないが、壁紙としての印刷適性、コーティング適性、ボリューム感を付与することを考慮して、第1層より第2層を大きくすることが好ましい。
本発明における壁紙裏打ち用不織布は、好ましくは、以下のような製造方法によって製造することができる。第2層は、水に叩解後のパルプ繊維、繊維状バインダー、ポリエチレンテレフタレート繊維、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、パルプスラリーとして貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ抄紙機に送り、目標の坪量となるように第2層を先に抄造する。次に、第1層は、水に叩解後のパルプ繊維、繊維状バインダー、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、貯蔵タンクに送り、このスラリーを第1層用として一定量ずつ抄紙機に送り、先に抄造した第2層に第1層の目標の坪量となるように抄き合わせる。さらに、この抄き合わせたシートをプレス後、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、壁紙裏打ち用不織布とすることができる。また、第1層又は第2層を先に抄造し、その上に第2層又は第1層を流延する方法、別々に製造した第1層及び第2層を熱圧処理で貼り合わせる方法で製造することもできる。
本発明において、壁紙裏打ち用不織布の第2層表面には、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂や印刷の目止め、毛羽立ちの抑制といった目的で、さらに顔料を付与することができる。顔料の付与は、顔料とバインダーを含む塗液を第2層表面に含浸又は塗工することによって可能である。顔料としては、抄紙工程で填料として添加可能なクレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の自己消火性を有するものを使用できる。特にコンクリートや石膏ボード等の壁面が透けて見えないようにするために、隠蔽性、不透明度を高めるには酸化チタンが有用である。壁紙裏打ち用不織布100質量%に対して、付与する顔料の割合は3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。
顔料を付与する方法としては、抄紙工程の中間に設置された2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター等の含浸又は塗工装置による処理が可能であるが、これに限定されるものではない。また、抄紙後にオフマシン装置での含浸又は塗工処理も可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、全て質量によるものである。
本例中のラマン散乱ピーク強度比は以下の方法で測定した。
試料とするポリエチレンテレフタレート繊維の断面を、測定装置としてThermoElectronCorp製NICOLET ALMEGA XR Dispersive Ramanを用い、レーザー波長:780mm、レーザーパワー:100%、アパーチャー:100μピンホール、対物レンズ:MPlan 100X BDの条件で測定した。
図1は、ポリエチレンテレフタレート繊維のラマン散乱スペクトルである。データ解析方法としては、図1に示すように、ベースライン補正後、1096cm−1付近のピークの高さ(I)と1120cm−1のピークの高さ(I)を測定し、ピーク強度比(I/I)を算出した。なお、図1の点Xの位置は両ピーク間のラマン散乱強度が最も低くなる波長とし、また、点BとBの位置はベースラインIとIの傾きが最も大きくなる波長とした。
(実施例1)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)、繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維を93:5:2の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量70g/mとなるように第2層を先に抄造する。
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)を95:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量30g/mとなるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例2)
第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、ポリエチレンテレフタレート繊維を90:5:5の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例3)
第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、ポリエチレンテレフタレート繊維を85:5:10の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例4)
第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、ポリエチレンテレフタレート繊維を75:5:20の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例5)
第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、ポリエチレンテレフタレート繊維を65:5:30の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(比較例1)
第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを100:0の比率に変えた以外は、実施例2と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(比較例2)
第1層の芯鞘状繊維状バインダーの代わりに、バインダー性能を有していない帝人社製ポリエステル繊維(1.7dtex×5mm、有機繊維)を用いて、パルプ繊維、有機繊維を95:5の比率に変えた以外は、実施例2と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(比較例3)
第2層の繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維の代わりに、繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)2.8のポリエチレンテレフタレート繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例6)
第2層の繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維の代わりに、繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.5のポリエチレンテレフタレート繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例7)
第2層の繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維の代わりに、繊度3.3dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)4.0のポリエチレンテレフタレート繊維に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例8)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)、繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維を80:10:10の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量70g/mとなるように第2層を先に抄造する。
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)を80:20の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量30g/mとなるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例9)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維、繊維状バインダー(商品名:VPB107、クラレ社製、1.1dtex×3mm、PVA繊維)を80:10:10の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量80g/mとなるように第2層を先に抄造する。
次に、別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)を80:20の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量20g/mとなるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例10)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)、繊度1.7dtex、繊維長5mm、ピーク強度比(I/I)3.0のポリエチレンテレフタレート繊維、繊維状バインダー(商品名:VPB107、クラレ社製、1.1dtex×3mm、PVA繊維)を80:5:10:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量80g/mとなるように第2層を先に抄造する。
次に、別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー(登録商標)4080、ユニチカ社製、2.2dtex×5mm)を80:20の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量20g/mとなるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
(比較例4)
実施例10の第2層のパルプ繊維、芯鞘繊維状バインダー、ポリエチレンテレフタレート繊維、繊維状バインダー(PVA繊維)を80:0:20:0の比率に変えた以外は、実施例10と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例11)
顔料として酸化チタン(商品名:W−10、石原産業社製)、バインダーとしてアクリルエマルジョン(商品名:ボンコート(登録商標)MAT−200−E、DIC社製)及びポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、クラレ社製)をそれぞれ100:20:5の比率で水に分散、混合し、顔料塗工液を作製した。本塗工液をエアナイフ塗工装置にて実施例10の不織布の第2層面に乾燥質量で25g/m塗工後乾燥させ、壁紙裏打ち用不織布を得た。
(実施例12)
顔料をカオリン(商品名:ニュークレイ、エンゲルハード社製)に変えた以外は、実施例11と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
使用したパルプの叩解度は、JIS P 8121に準じ、カナダ標準濾水度を測定した。
試験1(寸法安定性)
壁紙裏打ち用不織布を温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間以上調湿し、サンプルの横方向の長さ(原寸)を正確に測定する。このサンプルを温度23℃の水中へ5分間浸した後、速やかにサンプルの長さを測定し、原寸に対する伸び率を求めた。0に近いほど、寸法安定性が良い。従来の経験則より、伸び率は0.60%以内が望ましく、最低でも1.00%以内が必要である。これらの結果を表1及び表2に示した。
試験2(毛羽立ち)
壁紙裏打ち用不織布を温度23℃、湿度50%RH環境下で24時間調湿した後、MD方向32cm×CD方向15cmとなるように裁断した。なお、サンプリングの際は紙面を擦らないよう十分注意をして行った。ガラス板上に坪量150g/mの上質紙2枚を敷き、クリップにて固定した。次に幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属立方体(重さ400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙面を2回擦りガーゼ面をならした。上質紙上に壁紙裏打ち用不織布を、ポリ塩化ビニル塗工面となる第2層を上にして載せ、第2層表面を用意したガーゼを巻きつけた金属立方体にて、自重によりMD方向で上から下に向かって1回擦った。壁紙裏打ち用不織布の上下方向の向きを変え、同様に上から下に向かって1回擦った。この壁紙裏打ち用不織布の擦った場所に、塗工厚200μmのアプリケーターを用い、塩化ビニルペーストを塗工し、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化したポリ塩化ビニル層面の中央部に5cm×10cmの切り抜いた型紙を載せ、その中に発生した突起物の数を計測した。結果は、同様にして作製したサンプル4枚の計測値の合計(200cmあたりの個数)を計測した。計測した突起物の数が25個以下を「◎」、26〜50個を「○」、51〜150個を「△」、151個以上を「×」と評価した。これらの結果を表1及び表2に示した。
試験3(ピール特性)
メチルセルロース系壁紙用粉末糊を5質量%濃度となるように水で希釈して十分撹拌した糊溶液を、壁紙裏打ち用不織布の第1層面にウェット塗工量が150g/mになるように塗工し、厚さ12.5mmの準不燃石膏ボード(商品名:タイガーハイクリンボード(登録商標)、吉野石膏社製)に貼着し、10日後に、幅5cm、長さ10cmの長方形に切れ目を入れて引き剥がし、剥がれた状態を観察した。石膏ボードと壁紙裏打ち用不織布の第1層面の間で綺麗に剥離できたものを「○」、石膏ボード表面に第1層面の一部が少量残るが全面剥離できたものを「△」、不織布の層間で剥離又は切れたものを「×」と評価した。これらの結果を表1及び表2に示した。
試験4(不透明度)
不織布の不透明度をJIS P 8149:2000に準じて測定し、隠蔽性の評価を行った。不織布の不透明度が84%以上、好ましくは86%以上であれば隠蔽性が良好となり、壁紙メーカーにて改めて隠蔽性付与の工程を省略することが可能となる。これらの結果を表2に示した。
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10の壁紙裏打ち用不織布は、2層構造で、第1層が壁面に貼り付けられる層で、第2層が表面層である壁紙裏打ち用不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層はピーク強度比(I/I)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含んでいるので、寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性の全てが良好であり、壁紙用裏打ち紙として有用に活用できる。また、実施例8と9を比較すると、第2層に繊維状バインダーとしてPVA繊維を用いて、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥した実施例9の不織布は、第2層面の平滑性が高く、毛羽立ちが少なく非常に良好であった。さらに実施例11及び12は、第2層表面に顔料を付与していることから不透明度が高く、石膏ボードやコンクリート等の壁面の透けを防止できていた。比較例1及び2は、壁面に接する第1層に繊維状バインダーを配合していないため、ピール特性が悪かった。比較例3は、第2層に含まれているポリエチレンテレフタレート繊維のピーク強度比(I/I)が3.0未満であったため、寸法安定性が0.60%を超えており伸びが大きかった。比較例4は、表層を設ける側の第2層に繊維状バインダーを配合していないため、毛羽立ちが良くなかった。
本発明の活用例として、寸法安定性が良好でピール特性を有し、印刷やコーティング適性を有する壁紙等が挙げられる。

Claims (4)

  1. 2層構造で、第1層が壁面に貼り付けられる層で、第2層が表面層である壁紙裏打ち用不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層はラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用不織布。
  2. 第2層の繊維状バインダーの一部又は全てがポリビニルアルコール繊維である請求項1記載の壁紙裏打ち用不織布。
  3. 第2層表面に顔料が付与されている請求項1又は2記載の壁紙裏打ち用不織布。
  4. 2層構造で、第1層が壁面に貼り付けられる層で、第2層が表面層である壁紙裏打ち用不織布の製造方法において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーを含み、第2層はラマン散乱スペクトルの1096cm−1及び1120cm−1付近のピーク強度比(I1096/I1120)が3.0以上のポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーを含み、湿式抄造法により製造されたシートの第2層表面をヤンキードライヤーに当てて乾燥することを特徴とする壁紙裏打ち用不織布の製造方法。
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