JP2015051933A - クロロゲン酸の製造方法及びクロロゲン酸金属錯体 - Google Patents

クロロゲン酸の製造方法及びクロロゲン酸金属錯体 Download PDF

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Abstract

【課題】高純度のクロロゲン酸を高収率で得ることができるクロロゲン酸の製造方法及び該製造方法の中間体である新規なクロロゲン酸金属錯体を提供する。
【解決手段】クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料と、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体を形成しうる2価の金属イオンと、を接触させて、クロロゲン酸金属錯体を形成させる工程、及び、得られた錯体を回収する工程、を含むクロロゲン酸の製造方法。得られたクロロゲン酸金属錯体を脱金属することでクロロゲン酸を得ることができる。クロロゲン酸としては、下記一般式(1)におけるR1、R2、R3、及びR5が水素であり、且つ、R4が下記式(1−2)で表されるカフェ酸部分構造である化合物が主成分となる。

【選択図】なし

Description

本発明は、クロロゲン酸の製造方法及び該クロロゲン酸の製造方法における中間体であるクロロゲン酸金属錯体に関する。
クロロゲン酸は、抗酸化作用、血圧改善作用、血糖値の上昇抑制作用等の種々の生理活性を有することから、近年、医薬品、化粧品、健康食品、食品添加物等の原料として期待されている。
クロロゲン酸は、ヒマワリの種子、コーヒー豆、さつまいもの葉、ヨモギの葉、杜仲の葉、スイカズラの花等に含まれていることが知られている。従来、クロロゲン酸は、これらを原材料として、熱水抽出、エタノール抽出等によりクロロゲン酸を含む抽出物を得た後、溶媒を留去させ、粉末化するという方法により得ていた。しかしながら、かかる方法では、低純度のクロロゲン酸しか得ることができず、また、収率も低いものであった。クロロゲン酸は、純度が高いほど、医薬品、食品等への応用が期待できる。そのため、クロロゲン酸を高純度且つ高収率で得る技術が所望され、検討されている。
従来、クロロゲン酸をクロマトグラフィーなどの手段により精製して、高純度化する方法が提案されているが、工程が複雑で高コストであるために、産業上利用しうる程度の大量生産に適用し難い。
精製クロロゲン酸の製造方法としては、例えば、スイカズラ及び杜仲から抽出したクロロゲン酸を含む抽出液に明礬等を添加した後、pHを1〜4.5に調整し、形成された不純物のアルミニウム錯体を除去する工程(工程1)、不純物のアルミニウム錯体を除去した溶液のpHを4.5〜7に調整し、形成されたクロロゲン酸のアルミニウム錯体を単離する工程(工程2)、単離されたクロロゲン酸のアルミニウム錯体を酸性水に溶解させた後、有機溶媒を用いてクロロゲン酸を抽出する工程(工程3)、及びクロロゲン酸を含む有機溶媒を濃縮し、晶析して、クロロゲン酸を得る工程(工程4)を含むクロロゲン酸の製造方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
中国特許出願公開第102675106号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されたクロロゲン酸の製造方法は、スイカズラの花や杜仲の葉のような相対的に脂質の含有量が少ないものを原材料とする場合には、ある程度純度の高いクロロゲン酸を得ることができるものの、収率は65%程度であり、ひまわりの種子のような脂質の多いものを原材料とする場合には、クロロゲン酸の純度及び収率がさらに低くなるという問題があった。
本発明者が、その原因について検討したところ、特許文献1に記載されたクロロゲン酸の製造方法では、工程1において低pH条件での錯体の形成に3価の金属であるアルミニウムを用いているために、例えば、低pH条件で錯体を形成する場合、脂質等の不純物のみならず、クロロゲン酸についてもアルミニウム錯体を形成する場合があり、所望されないクロロゲン酸の除去による収率の低下が懸念されること、さらに、pH5付近でクロロゲン酸とアルミニウムイオンとを反応させる際の錯体化率が期待されるよりも低いこと、が明らかとなった。
上記のような事情に鑑みてなされた本発明の課題は、クロロゲン酸を含む種々の原材料から、高純度のクロロゲン酸を高収率で得ることができるクロロゲン酸の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる課題は、前記本発明のクロロゲン酸の製造方法における中間体である、新規なクロロゲン酸金属錯体を提供することである。
本願発明者らは鋭意検討の結果、クロロゲン酸の金属錯体の形成に2価の金属イオンを使用することで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
上記の課題を解決するための具体的な手段は、以下の通りである。
<1> クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料と、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体を形成しうる2価の金属イオンと、を接触させて、錯体を形成させる工程、及び、
得られた錯体を回収する工程、を含むクロロゲン酸の製造方法。
<2> クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料が、液体を含有する<1>に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<3> クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料が固体であり、錯体を形成させる工程において、さらに溶媒を含有させる<1>に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<4> 2価の金属イオンが、Ca、Zn、及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである<1>〜<3>のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<5> 2価の金属イオンの含有量が、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物に対して、0.5当量以上20当量以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<6> 錯体を形成させる工程において、さらに、塩基性物質を、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物に対して、0.5当量以上4当量以下含有させる<1>〜<5>のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<7> 錯体が、金属イオンとクロロゲン酸との反応生成物であり、分子内に少なくとも3つのクロロゲン酸由来の構造単位を含む化合物である<1>〜<6>のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<8> 錯体を脱金属させ、クロロゲン酸を得る工程をさらに含む<1>〜<7>のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<9> 錯体を脱金属させ、クロロゲン酸を得る工程が、錯体と酸性水とを接触させる工程と、25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒を添加して、水相と有機相とに分離させる工程と、クロロゲン酸を含む有機相を回収する工程と、回収した有機相を濃縮し、結晶を生成させる工程と、を含む<8>に記載のクロロゲン酸の製造方法。
<10> 2価の金属イオンとクロロゲン酸との反応生成物であり、分子内に少なくとも3つのクロロゲン酸由来の構造単位と、少なくとも2つの金属原子とを含むクロロゲン酸金属錯体。
<11> 2価の金属イオンが、Ca、Zn、及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである<10>に記載のクロロゲン酸金属錯体。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成される場合には、本用語に含まれる。
本発明によれば、クロロゲン酸を含む種々の原材料から、高純度のクロロゲン酸を高収率で得るクロロゲン酸の製造方法を提供することができる。
また、本発明のクロロゲン酸の製造方法における中間体である、新規なクロロゲン酸金属錯体を提供することができる。
実施例1で得られたクロロゲン酸亜鉛錯体のIRスペクトルを示す図である。 対照例であるクロロゲン酸のIRスペクトルを示す図である。 実施例1で得られたクロロゲン酸亜鉛錯体の13C−NMRスペクトルを示す図である。 対照例であるクロロゲン酸の13C−NMRスペクトルを示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
[クロロゲン酸の製造方法]
本発明のクロロゲン酸の製造方法は、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料に、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体を形成しうる2価の金属イオンを接触させて、錯体を形成させる工程(以下、適宜、「工程(A)」と称する。)、及び、得られた錯体を回収する工程(以下、適宜、「工程(B)」と称する。)を含む。
なお、本発明のクロロゲン酸の製造方法においては、さらに、工程(B)において得られた錯体を脱金属させ、クロロゲン酸を得る工程(以下、適宜、「工程(C)」と称する。)を含んでいてもよい。
本発明のクロロゲン酸の製造方法によれば、脂質の含有量が多い原材料からでも、高純度なクロロゲン酸を高収率で得ることができる。
本発明の作用機構は明確ではないが、本発明者は、以下の如く推測している。
従来法、例えば、上述の特許文献1に記載された方法では、工程1において、低pH条件での錯体の形成に金属錯体の形成に「みょうばん(硫酸カリウムアルミニウム)」を用いており、3価のアルミニウム錯体を形成する際に、脂質等の不純物のみならず、クロロゲン酸についてもアルミニウム錯体を形成する場合があり、所望されないクロロゲン酸の除去による収率の低下が懸念され、特にこのような傾向は原料として相対的に脂質の多いものを用いるとより顕著となるため、最終的にクロロゲン酸の収率が低いものとなると推定される。
これに対して、本発明のクロロゲン酸の製造方法では、工程(A)において、クロロゲン酸金属錯体の形成に2価の金属イオンを用いているために、形成されたクロロゲン酸の金属錯体は、クロロゲン酸の有するカルボキシ基部分のみならず、カテコール部分も解離させて金属イオンと結合して錯体を形成する。このため、形成されたクロロゲン酸金属錯体は、2価の金属イオンを介して直鎖状に結合したクロロゲン酸由来の構造単位を含むオリゴマー又はポリマーとなる。従って、結晶が成長しやすくなり、不純物が錯体化される懸念がなく、クロロゲン酸の収率が向上するものと考えられる。
次に、工程(B)において、形成されたクロロゲン酸金属錯体を回収するが、クロロゲン酸金属錯体の回収は、通常、固液分離により行う。工程(B)において、液体を分離することで、錯体を形成し得ない溶媒溶解性の不純物が除去される。
本発明の好ましい態様においては、工程(A)において、2価の金属イオンとして、食品や医薬品原料としての安全性が確認されたCaイオン、Znイオン、Mgイオンなどを用いることで、得られた中間体であるクロロゲン酸金属錯体、或いは、後述する工程(C)においてクロロゲン酸金属錯体が脱金属されて得られる精製クロロゲン酸は、安全性が高いものとなり、食品、医薬品、化粧品などの種々の用途にそのまま適用しうるという利点をも有する。
なお、本発明の製造方法は、さらに、工程(C)を含んでいてもよい。工程(C)は、固形分として回収したクロロゲン酸金属錯体を脱金属させ、クロロゲン酸を得る工程である。工程(C)の詳細については後述するが、工程(C)における出発物質として、既述のように高純度クロロゲン金属錯体を用いるため、工程(C)を実施することで高純度のクロロゲン酸を高収率で得ることができる。
本発明のクロロゲン酸の製造方法によれば、不純物を除去する方法として、クロロゲン酸を2価の金属イオンと反応させて錯体を形成させる工程を行う。また、中間体であるクロロゲン酸金属錯体からクロロゲン酸を得る場合には、得られた金属錯体を脱金属させる。錯体の形成は、クロロゲン酸の末端のカルボキシル基、或いは、カテコール部分と2価の金属イオンとが水素結合性、又は、配位結合性の相互作用により結合するものであり、クロロゲン酸自体の構造を変更するような化学反応を経る工程を含まず、2価の金属イオンとの金属錯体の形成、金属錯体の脱金属という、クロロゲン酸自体の構造が変更されない方法を採用しているので、副生成物が生じる懸念がない。そのため、最終的に得られるクロロゲン酸は、安全性が高く、食品等の種々の用途に好適なものとなる。
以下、本発明におけるクロロゲン酸について説明した後、本発明のクロロゲン酸の製造方法に含まれる各工程について、具体的に説明する。
本発明における「クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物」は、下記一般式(1)で表される化合物群、即ち、クロロゲン酸、クロロゲン酸誘導体、及びこれらの異性体の総称である。
なお、本明細書においては、以下、「クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物」を、適宜、「クロロゲン酸」と称することがある。以下、「クロロゲン酸」の文言は、「クロロゲン酸誘導体」及び「クロロゲン酸の異性体」をも包含する意味で用いられる。
下記一般式(1)で表されるクロロゲン酸は、式(1−1)で表されるキナ酸の4つの水酸基の1個〜3個が、式(1−2)で表されるカフェ酸部分構造とエステル結合してなる化合物であり、式(1−1)で表されるキナ酸部にカルボキシル基を有する。
なお、クロロゲン酸の誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造において、Rが水素原子以外、例えば、メチル基等のアルキル基である化合物などが挙げられる。このような誘導体のうち、R、R、及びRの少なくとも一つが式(1−2)においてRが水素原子である化合物であれば、本発明の製造方法により得ることができる。
本発明の製造方法において得られるクロロゲン酸としては、下記一般式(1)におけるR、R、R、及びRが水素であり、且つ、Rが下記式(1−2)で表されるカフェ酸部分構造である化合物が主成分となる。
一般式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は式(1−2)で示される部分構造を表し、R、R、R、及びRのうち、1個〜3個は、式(1−2)で表される部分構造である。Rは、水素原子又はメチル基を表す。
<工程(A)>
工程(A)は、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料と、クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体を形成しうる2価の金属イオン(以下、適宜、「2価の金属イオン」と称する)と、を接触させて、錯体を形成させる工程である。
本発明のクロロゲン酸の製造方法において用いられる原料としては、クロロゲン酸類を含む限りにおいて特に制限はなく、ヒマワリの種子及びその搾油残渣、コーヒー豆及びコーヒー滓、さつまいもの葉、ヨモギの葉、杜仲の葉、スイカズラの花等、或いは、クロロゲン酸類を任意の濃度で含む試薬類なども原料として用いることができ、原料に含まれるクロロゲン酸類の含有量が低濃度であっても、本発明の製造方法によれば、高純度のクロロゲン酸を得ることができる。
原料の加工は任意であり、既述の原料、例えば、ヒマワリの種子、植物の葉等は、水や有機溶剤などの溶媒で予め抽出された抽出液を原料としてもよい。
抽出溶媒にアルコールを用いる場合には、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。アルコールは、2種以上を混合して用いてもよい。最終的に得られるクロロゲン酸を食品、化粧品、医薬品等に使用する場合には、安全性の観点から、アルコールは、エタノールであることが好ましい。
また、抽出溶媒として、水とアルコールとの混合溶媒を用いる場合には、水とアルコールとの質量比(水/アルコール)は、99/1〜1/99の範囲であることが好ましい。
クロロゲン酸を含有する原料と、クロロゲン酸と錯体を形成しうる2価の金属イオンと、を接触させる方法としては、常法に従い、2価の金属イオンを生成しうる金属塩を添加すればよい。金属塩は溶媒中で解離して2価の金属イオンを生成させうる化合物であれば特に制限はない。
工程(A)で用いられるクロロゲン酸と錯体を形成しうる2価の金属イオンとしては、例えば、亜鉛(Zn)イオン、カルシウム(Ca)イオン、マグネシウム(Mg)イオン、ベリリウム(Be)イオン、ストロンチウム(Sr)イオン、バリウム(Ba)イオン、2価の銅(Cu)イオン、などが挙げられるが、これらに限定されず、クロロゲン酸と錯体を形成しうること、2価の金属イオンであることを満たせば特に制限はない。
なかでも、食品添加物や化粧品などへの適用により安全性が確認されているZnイオン、Caイオン、及びMgイオンから選ばれる少なくとも1種を選択することで、得られたクロロゲン酸金属錯体、或いは、クロロゲン酸金属錯体から得られるクロロゲン酸は、食品、医薬品などの経口用、或いは、化粧品、皮膚外用剤などの皮膚と直接接触する用途にも使用しうるものとなるため好ましい。
また、既述のCuイオン等の、Znイオン、Caイオン、及びMgイオン以外の2価の金属イオンを用いた場合でも、脱金属の結果得られるクロロゲン酸は高純度であるために、工業原料として有用であることはいうまでもない。さらに、Znイオン、Caイオン、及びMgイオン以外の2価の金属イオンを用いて得られたクロロゲン酸においても、精製を充分に行うことで、安全性に対してより厳しい分野である食品や化粧品にも使用しうるものとなる。
2価の金属イオンを生成させうる金属塩としては、以下の化合物が挙げられる。
Znイオンを生成しうる金属塩としては、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等が挙げられる。
Caイオンを生成しうる金属塩としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
Mgイオンを生成しうる金属塩としては、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。
2価のCuイオンを生成しうる金属塩としては、硫酸銅(II)、硫化銅(II)、塩化銅(II)、水酸化銅(II)などが挙げられる。
工程(A)で用いる原料が抽出液などの液状物質である場合には、直接2価の金属イオンを生成しうる金属塩を添加して接触させるか、或いは適切な溶媒に溶解させた2価の金属イオンを生成しうる金属塩とクロロゲン酸を含む原料とを混合すればよい。
コーヒー滓やヒマワリなどの植物の種子の粉砕品など、原料が固体である場合には、2価の金属イオンを生成しうる金属塩は、溶媒に予め溶解させて添加するか、或いは、直接原料に金属塩を添加し、その際に、さらに溶媒を添加すればよい。金属塩と溶媒とを添加する場合、添加の順は任意であり、いずれかを先に添加する逐次添加でもよく、同時に添加してもよく、或いは、既述のように予め金属塩を溶媒に溶解させたものを添加してもよい。また、金属塩を溶解した溶媒に原料を添加して、混合してもよい。
工程(A)では、液中で、金属塩から解離した2価の金属イオンとクロロゲン酸とが接触し、反応してクロロゲン酸の金属錯体が形成される。
金属イオンの含有量は、効率的な錯体形成が進行しうるという観点から、少なくとも原料中に含まれるクロロゲン酸に対して0.5当量以上となる量で含有させることが好ましい。
原料中のクロロゲン酸の含有量は、分析により予め含有量を測定することにより検知してもよく、原料固有のクロロゲン酸含有量が公知である場合には、その含有量に従えばよい。クロロゲン酸の含有量の測定が困難な場合には、原料の質量換算にて、過剰量の金属塩を加えてもかまわない。これは、クロロゲン酸との金属錯体の形成に関与しない余剰の金属イオンは、固液分離の際に除去され、得られる錯体の収率などに影響を与える懸念がないためである。
金属イオンの添加量は、クロロゲン酸に対して0.5当量以上20当量以下であることが好ましく、0.9当量以上15当量以下であることがより好ましい。金属イオンの添加に際しては、上記好ましい添加量となる金属イオンを生成しうる量の金属塩を、溶媒に溶解して添加するか、或いは、原料を含む液に直接添加すればよい。
クロロゲン酸を含む原料に2価の金属イオンを添加した後は、例えば、クロロゲン酸と金属イオンとを含む混合液を室温(25℃)下で撹拌してもよい。
工程(A)においては、2価の金属イオンの原料である金属塩の添加後に、さらに塩基性物質を添加して、pHを4.5〜9に調整することがクロロゲン酸金属錯体の形成を促進させる観点からことが好ましい。また、クロロゲン酸の金属錯体の固形物としての析出を促進させる観点から、上記pHの調整後、溶液の温度を30℃以下にすることが好ましい。
なお、2価の金属イオンの弱塩基性の塩、或いは強塩基性の塩を用いた場合にはこれら塩基性物質の添加は必要ない。
また、原料に金属イオンを添加する前に、これらの塩基性物質を予め添加してもよい。ただし、塩基性物質の添加によりクロロゲン酸が酸化されやすくなるため、塩基性物質を予め添加する際は、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
工程(A)にて使用しうる塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが挙げられる。塩基性物質を添加することで、クロロゲン酸のカルボキシル基のみならず、カテコール部分も解離されることにより、クロロゲン酸の両末端に金属原子が配位して、所望の直鎖状の金属錯体が効率よく形成される。
塩基性物質の添加量としては、原料に含有されるクロロゲン酸に対して0.5当量以上4当量以下となる量が好ましく、1当量以上3当量以下であることがより好ましく、最も好ましくは2当量程度である。
原料に含まれるクロロゲン酸の量が不明な場合、クロロゲン酸原料を含む液のpHが既述の4.5〜9の範囲となることを目安に添加量を決めればよい。
また、溶媒として、水/アルコール混合溶媒などpH測定に適さない系の場合には、推定量よりやや過剰な量の塩基性物質を添加してもよい。
工程(A)により、以下のようなスキームにて金属イオンを介して複数のクロロゲン酸が直鎖状に連結したクロロゲン酸の金属錯体であるオリゴマー或いはモノマーが形成され、固体状となって沈殿する。
なお、下記スキームにおいてMは金属原子を表す。以下のスキームでは、クロロゲン酸由来の構造単位を3つ有する例を記載しているが、本発明はもちろんこれらの態様に限定されない。
条件によって、末端の金属原子(金属イオン)を介して、さらにクロロゲン酸由来の構造単位が結合する場合もあり、末端の金属原子が、例えばアミノ基、水分子等によって封止され、それ以上のクロロゲン酸由来の構造単位の結合が生じずにオリゴマーが形成される場合もありうる。
ここで、クロロゲン酸由来の構造単位とは、クロロゲン酸のカルボン酸部位あるいはフェノール部位のうち少なくとも1つから水素原子が除かれた構造を示す。
<工程(B)>
工程(B)は、生成した固形物を回収する工程である。
工程(A)で形成されたクロロゲン酸金属錯体は、固形物として沈殿するため、固液分離することで、クロロゲン酸金属錯体を回収することができる。
生成した固形物を回収する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の固液分離方法を採用することができ、例えば、濾過(例えば、吸引濾過等)、遠心分離等が挙げられる。
得られた固形物は、所望により洗浄され、クロロゲン酸金属錯体が得られる。クロロゲン酸金属錯体は、クロロゲン酸由来の構造単位が金属原子を介して少なくとも3つ連結してなるオリゴマー又はポリマーである。
以下に、工程(A)にて形成され、工程(B)にて回収されるクロロゲン酸金属錯体の具体例を挙げるが、本発明は以下の記載に限定されない。
前記具体例において、Ch1は、クロロゲン酸由来の構造単位を3つ含み、クロロゲン酸由来の構造単位の両末端は、クロロゲン酸のカルボキシ基と、カテコール部分とがそのまま残存している。Ch2は、クロロゲン酸由来の構造単位を3つ含み、クロロゲン酸由来の構造単位の片末端のカルボキシ基に配位したZnはアミノ基で封止されており、他端の構造単位ではクロロゲン酸のカテコール部分がそのまま残存している。Ch3は、クロロゲン酸由来の構造単位を3つ含み、クロロゲン酸由来の構造単位の片末端のカルボキシ基に配位したZnは水分子で封止されており、他端の構造単位ではクロロゲン酸のカテコール部分がそのまま残存している。
上記工程(B)を経て得られたクロロゲン酸金属錯体の純度(%)は、50〜100程度であり、収率(%)は、30〜100程度であり、本発明の製造方法によれば、極めて高純度のクロロゲン酸金属錯体を高収率で得ることができる。なお、ここで「100程度」とは、不可避不純物を除けば、ほぼ100%の純度、収率であることを指すものであり、本発明の方法によれば、100程度の純度、収率が望めることを意味する。
クロロゲン酸金属錯体の錯体化率は、得られた金属錯体を脱金属してクロロゲン酸を分離し、液中のクロロゲン酸量を定量することで、原料に含まれるクロロゲン酸からの金属錯体化収率を求めることができる。
即ち、まず、原料中のクロロゲン酸含有量をUV検出器を備えた逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による絶対検量線法により行なった。検量線は、上記HPLCと同様の条件により、標準クロロゲン酸(和光純薬(株)製)を用いて作成した。
前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて原料中のクロロゲン酸含有量を測定しこれをCとする。次に、得られた金属錯体を以下に詳述する方法にて脱金属し、液中に含まれるクロロゲン酸の量を、同様にHPLCにて分析し、これをCとする。液中に含まれるクロロゲン酸はクロロゲン酸金属錯体由来のものであるため、クロロゲン酸の錯体化率は、以下の式により求めたものを用いている。
(式) 錯体化率(%)=〔C/C〕×100
上記HPLCによるクロロゲン酸の含有量は、標準クロロゲン酸を用いた検量線から換算したものであり、原料抽出液を用いて得たクロロゲン酸含有量(C)と、クロロゲン酸金属錯体より脱金属した液中のクロロゲン酸含有量(C)とは、同条件の検量線からを用いて測定しており、正確な錯体化率が算出される。
<クロロゲン酸金属錯体>
本発明のクロロゲン酸金属錯体は、2価の金属イオンとクロロゲン酸との反応生成物であり、分子内に少なくとも3つのクロロゲン酸由来の構造単位と、少なくとも2つの金属原子とを含む化合物、即ち、クロロゲン酸金属錯体のオリゴマー又はポリマーである。
本発明のクロロゲン酸金属錯体は、既述の本発明の製造方法により得られたクロロゲン酸金属錯体である。
クロロゲン酸金属錯体に含まれるクロロゲン酸由来の構造単位の数は特に制限はなく、金属イオンを介して少なくとも3つのクロロゲン酸由来の構造単位が連結していればよい。上記具体例では、クロロゲン酸由来の構造単位が3つ結合してなる錯体化合物が記載されているが、本発明者らの検討によれば、工程(B)において、種々の条件を調整することで、3つ以上のクロロゲン酸由来の構造単位を直鎖状に連結してなる金属錯体ポリマーをも生成しうる。
なお、上記工程(B)を経て得られたクロロゲン酸のカルボキシル基部分とカテコール部分の双方に金属イオンが配位してなり、3つ以上のクロロゲン酸由来の構造単位が直鎖状に連結されたクロロゲン酸金属錯体は新規化合物である。
得られたクロロゲン酸金属錯体は、工業原料として有用であり、さらに、錯体形成に際して金属イオンとしてCa、Zn及びMgから選ばれた少なくとも1種の金属のイオンを用いた場合には、高純度で、且つ、安全性が高いことから、そのまま食品、医薬品、化粧品などの原料として使用しうる。
<工程(C)>
得られたクロロゲン酸金属錯体を脱金属することで、高純度のクロロゲン酸が得られる。このため、本発明の製造方法では、工程(B)で得られたクロロゲン酸金属錯体を脱金属して、クロロゲン酸を得る工程(工程(C))をさらに有していてもよい。
工程(C)の好ましい態様としては、クロロゲン酸金属錯体に酸性水を接触させる工程(以下、適宜、「工程(C−1)」と称する。)と、25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒を添加して、水相と有機相とに分離させる工程(以下、適宜、「工程(C−2)」と称する。)と、クロロゲン酸を含む溶媒相を回収する工程(以下、適宜、「工程(C−3)」と称する。)と、回収した溶媒相を濃縮し、クロロゲン酸の結晶を生成させる工程(以下、適宜、「工程(C−4)」と称する。)と、を含んでいてもよい。
工程(C−1)では、固形分として回収したクロロゲン酸の金属錯体に酸性水を添加し、錯体を酸性水に溶解させることにより脱金属し、クロロゲン酸に戻す工程である。工程(C−1)において酸性水を添加することで、クロロゲン酸と酸性水とを含む混合物が得られる。
工程(C−1)で使用される、クロロゲン酸金属錯体を溶解させる酸性水のpHは、金属イオンの脱離を効率よく行うという観点から、1〜4の範囲であることが好ましく、1〜3の範囲であることがより好ましい。
酸性水としては、例えば、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の水溶液が挙げられ、酸性水の調製に用いる酸としては、塩酸等が好ましい。
酸性水の量は、クロロゲン酸金属錯体の全てを脱保護して、クロロゲン酸に戻すために十分な量であれば、特に限定されるものではなく、過剰であってもよい。
工程(C−1)に引き続き行われる工程(C−2)は、上記工程(C−1)で得た、クロロゲン酸金属錯体が溶解された酸性水混合物に、25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒を添加して混合した後、水相と有機相とを分離させる工程である。工程(C−2)では、上記工程(C−1)で回収したクロロゲン酸を含む酸性水と、25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒と、を混合した後、水相と有機相とに分離させることで、クロロゲン酸を含む溶媒相を得ることができる。即ち、後述する工程(C−3)によりクロロゲン酸を含む溶媒相を回収することができる。分離された水相には、残存する水溶性の不純物が含まれており、この水相を除去することで、最終的には、高純度なクロロゲン酸を含む溶媒相が得られる。
25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒としては、例えば、酢酸エチル(比誘電率:6.1)、酢酸ブチル(比誘電率:5.0)、メチルエチルケトン(比誘電率:18.6)、塩化メチレン(比誘電率:8.9)、クロロホルム(比誘電率:4.8)、テトラヒドロフラン(比誘電率8.5)等が挙げられる。これらの中でも、抽出効率の観点からは、酢酸エチルが好ましい。
なお、比誘電率については、改訂5版化学便覧基礎編II(日本化学会編、丸善)619ページに詳細が記載されており、各溶媒の比誘電率の数値については、同文献に記載された表の数値等が参照できる。
比誘電率が3以上の溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、比誘電率が3以上の溶媒は、比誘電率が3以上であれば、比誘電率が3以上の溶媒と比誘電率が3未満の溶媒とを混合して得られた溶媒であってもよい。ここで、「水と2層に相分離可能な溶媒」とは、水との質量比が1:1となる量で混合した後、25℃で10分間静置した場合に、水と2層に相分離していることが、目視にて確認できる溶媒という。
比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒の量は、上記工程(C−1)で回収したクロロゲン酸を含む酸性水からクロロゲン酸を抽出するために十分な量であれば、特に限定されるものではなく、過剰であってもよい。比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒の量は、上記工程(C−1)で回収したクロロゲン酸を含む酸性水に対して、質量比で0.1倍〜100倍量の範囲であることが好ましく、0.2倍〜50倍量であることがさらに好ましい。
工程(C−2)では、抽出効率の観点から、上記工程(C−1)で得た酸性水混合物に、塩を添加した後、25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒と混合することが好ましい。塩としては、例えば、塩化ナトリウム(食塩)、塩化カリウム、臭化ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、塩化ナトリウム(食塩)が好ましい。
工程(C−3)は、工程(C−2)で水相と有機相とに分離した2相のうち、クロロゲン酸を含む有機相を回収する工程である。
ここで、水相には、クロロゲン酸から分離された金属イオン、及び、残存する水溶性の不純物が含まれており、水相を除去し、有機相のみを回収することで、有機相から純度のより高いクロロゲン酸を得ることができる。
工程(C−3)の後には、さらに工程(C−3)で得た有機相からクロロゲン酸を結晶化により得る工程、即ち、工程(C−4)を含んでいてもよい。
工程(C−4)は、上記工程(C−3)で回収した有機相を濃縮し、結晶を生成させる工程である。
回収した有機相を濃縮し、結晶を生成させる方法は、いわゆる濃縮晶析と呼ばれる方法であり、既知の手順により行なうことができる。例えば、回収した有機相に、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を添加し、水分を除去した後、濾過等により水分が除去された有機相を回収し、減圧又は常圧にて濃縮することにより、結晶を生成させる。このような濃縮晶析操作によれば、目的とするクロロゲン酸を固体の形態で得ることができる。
なお、得られた結晶に対しては、目的に応じて、更に再結晶やカラムクロマトグラフィー等による精製などの後処理を行なってもよい。
このように、工程(B)を経て得られたクロロゲン金属錯体を用い、工程(C)を実施して該クロロゲン酸金属錯体を脱金属することで、クロロゲン酸を高収率で得ることができる。
[クロロゲン酸]
本発明の製造方法によって得られるクロロゲン酸は、高い純度、具体的には、80質量%以上の純度を有している。また、本発明の製造方法は、クロロゲン酸自体の構造を変更するような化学反応を経る工程を含まないことから、副生成物が生じる懸念がなく、得られるクロロゲン酸は安全性が高い。したがって、本発明の製造方法によって得られるクロロゲン酸は、工業用原料などの目的以外にも、より厳しい安全性が求められる分野、例えば、医薬品、食品、化粧品等に好適に用いることでき、非常に高い安全性が求められる食品、例えば、健康食品、食品添加物等にも好適に使用しうる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1.クロロゲン酸を含有する原料の調製)
水250mlとエタノール250mlとの混合溶媒に、ヒマワリの搾油残渣50gを添加し、窒素雰囲気下で2時間、70℃にて加熱還流した。室温まで冷却した後、吸引濾過し、更に、残渣を水100mlとエタノール100mlとの混合溶媒で洗浄し、抽出液507gを得た。この抽出液中のクロロゲン酸の含有量(C)は、1.20gであった。
得られた抽出液を、クロロゲン酸を含有する原料とした。
(2.クロロゲン酸金属錯体の作製)
得られた抽出液507gに、塩化亜鉛1.5gを加えて、撹拌し、塩化亜鉛を溶解した後、1N NaOH水溶液を9ml滴下した。室温(25℃)で1時間撹拌したところ、沈殿が形成された(工程(A))。
水酸化ナトリウム滴下後の溶液を、室温(25℃)で10分間撹拌した後、5℃になるまで氷冷した。氷冷後、吸引濾過により固形分を濾別し、水洗して、クロロゲン酸の亜鉛錯体を得た。(工程(B))
得られたクロロゲン酸亜鉛錯体を乾燥した後、IR測定を行なったところ、下記Ch1で示す構造のクロロゲン酸亜鉛錯体であり、その主成分がクロロゲン酸であることが確認された。IRスペクトルを図1に示す。
また、対象品として試薬である高純度のクロロゲン酸(東京化成製)のIRスペクトルを図2に示す。
図1と図2との対比より、図1及び図2の、3300cm−1〜3500cm−1付近のピークがそれぞれ、錯体化していない水酸基、錯体化している水酸基を表し、クロロゲン酸と亜鉛(金属)とが錯体を形成していることがわかる。
さらに、得られたクロロゲン酸亜鉛錯体を乾燥した後、13C−固体NMR測定を行った。13C−固体NMRのスペクトルを図3に示す。
また、IRスペクトルと同様に、対象品として試薬である高純度のクロロゲン酸(東京化成製)の13C−NMR測定を行った。対象品として試薬である高純度のクロロゲン酸(東京化成製)の13C−NMRを測定した。クロロゲン酸のスペクトルを図4に示す
図3と図4との対比より、図3及び図4の140ppm〜160ppm付近のピ−クがフェノール性水酸基が置換している芳香族炭素、180ppm付近のピークがカルボン酸の炭素を表し、クロロゲン酸と亜鉛とが錯体を形成していることがわかる。
次に、前記で得られたクロロゲン酸金属錯体を含む液体に、酸性水である1%塩酸水溶液(pH:1)250mlを加えて、金属錯体を脱金属してクロロゲン酸を分離した(工程(C−1))。工程(C−1)の終了後に、液中に存在するクロロゲン酸量(C)を、既述の方法によりHPLCにて定量した。また、同様の方法で原料に含まれるクロロゲン酸の含有量(C)を定量し、これらより、既述の方法に従いクロロゲン酸金属錯体(Ch1)の錯体化収率を求めたところ、錯体化収率は95%であった。
(3.クロロゲン酸の作製)
工程(C−1)で得た酸性水混合物に、食塩を添加した。その後、酢酸エチル250mlを加えて、室温(25℃)で5分間撹拌したところ、水相と有機相との2相に分離した(工程(C−2))。酢酸エチルを用いて有機相を分離することで、クロロゲン酸類を抽出した(工程(C−3))。酢酸エチルによるクロロゲン酸の抽出処理を5回繰り返した。
有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧で濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液から晶析して、1.20gのクロロゲン酸の結晶を得た(工程(C−4))。
得られた結晶のH−NMR測定を行なったところ、その主成分がクロロゲン酸であることが確認された。
H−NMR(DO:300MHz)7.51(d,1H)、7.09(d,1H)、7.03(d,1H)、6.87(d,1H)、6.24(d,1H)、5.26〜5.15(m,1H)、4.22〜4.15(m,1H)、3.85〜3.76(m,1H)、2.22〜1.94(m,4H)。
〔クロロゲン酸の純度測定〕
結晶のクロロゲン酸としての純度は、UV検出器を備えた逆相の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。上記〔抽出液中のクロロゲン酸の定量〕と同様にして、絶対検量線法により結晶中のクロロゲン酸量を測定し、結晶の重量に対する結晶中のクロロゲン酸量の割合〔(結晶中のクロロゲン酸量/結晶の重量)×100〕を算出し、得られた値を純度(%)とした。
〔クロロゲン酸の収率測定〕
既述の方法にて、HPLCにより原料中のクロロゲン酸含有量を測定した。これをCとする。
得られたCと、クロロゲン酸の純度測定方法において測定された結晶中のクロロゲン酸量とを用いて、下記式によりクロロゲン酸の収率を測定した。
(式) 収率(%)=〔結晶中のクロロゲン酸量/C〕×100
得られたクロロゲン酸の純度を上記方法にて測定したところ、純度は90.0%であり、上記方法にて算出したクロロゲン酸の収率は90.0%であった。
[実施例2]
ヒマワリの搾油残渣60gをエタノール400ml、水100mlの混合液に添加し、窒素下、2時間加熱還流した。室温まで冷却した後、吸引ろ過し、残渣をエタノール160ml、水40mlの混合液で洗浄し、480gの抽出液を得た。抽出液中のクロロゲン酸含有量(C)は、1.20gであった。この抽出液を、クロロゲン酸を含む原料として用いた。
得られた原料である抽出液に、塩化マグネシウム1.5gを加え、溶解した後、窒素雰囲気下で1N NaOH水溶液を9ml滴下した。室温で1時間撹拌したところ、固形物であるクロロゲン酸のマグネシウム錯体が生成した。
生成した固形物を吸引ろ過により、固液分離して固形分のみを濾別し、エタノール100mlで洗浄した。
固形分を乾燥後、酸性水である1%塩酸水溶液(pH:1)250mlを加えて、金属錯体を脱金属してクロロゲン酸を分離した。液中のクロロゲン酸量を定量し、実施例1と同様にして錯体化収率を求めたところ、錯体化収率は90%であった。
得られた酸性水溶液に、食塩を添加した。食塩の添加後、酢酸エチル250mlを加えて、室温(25℃)で5分間撹拌したところ、水相と有機相との2相に分離した。酢酸エチルを用いて有機相を分離することで、クロロゲン酸類を抽出した。酢酸エチルによるクロロゲン酸の抽出処理を5回繰り返した。
得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧で濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液から晶析して、1.10gのクロロゲン酸の結晶を得た。
得られた結晶のH−NMR測定を行なったところ、主成分がクロロゲン酸であることが確認された。
得られたクロロゲン酸の純度及び収率を実施例1と同様の測定したところ、純度は89.0%であり、収率は82.0%であった。
[実施例3]
実施例2において用いたのと同じ、ヒマワリの搾油残渣由来の抽出液をクロロゲン酸含有原料として用いた。
得られた原料である抽出液に、塩化カルシウム1.5gを加え、溶解した後、窒素雰囲気下で1N NaOH水溶液を9ml滴下した。室温で1時間撹拌したところ、固形物であるクロロゲン酸のカルシウム錯体が生成した。
生成した固形物を吸引ろ過により、固液分離して固形分のみを濾別し、エタノール100mlで洗浄した。
固形分を乾燥後、酸性水である1%塩酸水溶液(pH:1)250mlを加えて、金属錯体を脱金属してクロロゲン酸を分離した。液中のクロロゲン酸量を定量し、錯体化収率を求めたところ、錯体化収率は90%であった。
得られた酸性水溶液に、食塩を添加した。食塩添加後、酢酸エチル250mlを加えて、室温(25℃)で5分間撹拌したところ、水相と有機相との2相に分離した。酢酸エチルを用いて有機相を分離することで、クロロゲン酸類を抽出した。酢酸エチルによるクロロゲン酸の抽出処理を5回繰り返した。
得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧で濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液から晶析して、1.05gのクロロゲン酸の結晶を得た。
得られた結晶のH−NMR測定を行なったところ、主成分がクロロゲン酸であることが確認された。
得られたクロロゲン酸の純度及び収率を実施例1と同様の測定したところ、純度は88.0%であり、収率は77.0%であった。
[比較例1]
実施例1で用いたものと同じ、ヒマワリの搾油残渣由来のクロロゲン酸含有量1.14gの抽出液をクロロゲン酸含有原料として用いた。
抽出液456gに濃塩酸2mlを加え、pH3に調整した。カリ明礬(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物)5.46gを水50mlに溶解した溶液を添加し、pH2.5にて、室温で1時間撹拌した後、吸引ろ過により、固体を濾別し、エタノール20mlで洗浄した。
得られた濾液に10%NaOH水溶液を滴下して、pH6に調整した。室温で1時間撹拌した後、5℃まで氷冷した。吸引ろ過して、固形物を濾別し水洗した。
水洗後の固形分を、1%塩酸水溶液250mlに溶解させた後、食塩を添加した。食塩の添加後、酢酸エチル250mlを加えて、室温(25℃)で5分間撹拌し、分液し、有機相を回収する操作を5回繰り返した。
回収した有機相に無水硫酸ナトリウムを添加し、水分を除去した後、吸引濾過により、濾液を回収した。回収した濾液に対して、減圧にて濃縮晶析を行ない、710mgの結晶を得た。
得られた結晶のH−NMR測定を行なったところ、主成分がクロロゲン酸であることが確認された。
得られた結晶のクロロゲン酸の純度及び収率を実施例1と同様の測定したところ、純度は78.0%であり、収率は54.0%であった。

Claims (11)

  1. クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料と、該クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と錯体を形成しうる2価の金属イオンと、を接触させて、錯体を形成させる工程、及び、
    得られた錯体を回収する工程、を含むクロロゲン酸の製造方法。
  2. 前記クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料が、液体を含有する請求項1に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  3. 前記クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む原料が固体であり、前記錯体を形成させる工程において、さらに溶媒を含有させる請求項1に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  4. 前記2価の金属イオンが、Ca、Zn、及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  5. 前記2価の金属イオンの含有量が、前記クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物に対して、0.5当量以上20当量以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  6. 前記錯体を形成させる工程において、さらに、塩基性物質を、前記クロロゲン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物に対して、0.5当量以上4当量以下含有させる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  7. 前記錯体が、前記金属イオンとクロロゲン酸との反応生成物であり、分子内に少なくとも3つのクロロゲン酸由来の構造単位を含む化合物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  8. 前記錯体を脱金属させ、クロロゲン酸を得る工程をさらに含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  9. 前記錯体を脱金属させ、クロロゲン酸を得る工程が、錯体と酸性水とを接触させる工程と、25℃における比誘電率が3以上であって、且つ、水と2層に相分離可能な溶媒を添加して、水相と有機相とに分離させる工程と、クロロゲン酸を含む有機相を回収する工程と、回収した有機相を濃縮し、結晶を生成させる工程と、を含む請求項8に記載のクロロゲン酸の製造方法。
  10. 2価の金属イオンとクロロゲン酸との反応生成物であり、分子内に少なくとも3つのクロロゲン酸由来の構造単位と、少なくとも2つの金属イオンとを含むクロロゲン酸金属錯体。
  11. 前記2価の金属イオンが、Ca、Zn、及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンである請求項10に記載のクロロゲン酸金属錯体。
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