JP2015047541A - 正浸透水処理方法および正浸透水処理装置およびドロー溶液 - Google Patents
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Abstract
【課題】正浸透用のドロー溶質を容易に分離・回収することのできる、正浸透水処理方法および正浸透処理装置を提供し、安全性の高い水を生産すること。
【解決手段】第1面と第2面を有する正浸透膜において、第1面を、水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させると共に、第2面を、少なくとも1種のドロー溶質を含むドロー溶液に接触させることで、処理対象水中に含まれる水を、正浸透膜を通して第1面側から第2面側に移動させる浸透工程と、ドロー溶液の温度を変化させることで、ドロー溶液に含まれるドロー溶質を水と分離させる分離工程と、水と分離したドロー溶質を回収する回収工程とをこの順で含み、ドロー溶質が、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含んでなる、正浸透水処理方法。
【選択図】図1
【解決手段】第1面と第2面を有する正浸透膜において、第1面を、水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させると共に、第2面を、少なくとも1種のドロー溶質を含むドロー溶液に接触させることで、処理対象水中に含まれる水を、正浸透膜を通して第1面側から第2面側に移動させる浸透工程と、ドロー溶液の温度を変化させることで、ドロー溶液に含まれるドロー溶質を水と分離させる分離工程と、水と分離したドロー溶質を回収する回収工程とをこの順で含み、ドロー溶質が、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含んでなる、正浸透水処理方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、正浸透水処理方法および正浸透水処理装置およびドロー溶液に関する。
従来、水処理分野においては、逆浸透(RO:reverse osmosis)工程による淡水化方法が広く知られている。(正)浸透現象は、低濃度側の水が高濃度の溶液に向かって移動する現象のことであるが、逆浸透工程は、人為的に強い圧力を加えることにより、逆に高濃度の処理対象水(海水など)から低濃度の溶液(水など)側に水を移動させて淡水を生産する工程である。逆浸透工程は強い圧力を必要とするため、エネルギー消費量が極めて多く、エネルギー効率が低い。
そこで、近年、水処理のエネルギー効率を高めるために、人為的に圧力を加える必要のない正浸透(FO:forward osmosis)工程による淡水化方法も検討されている。
正浸透用の高張液である誘導溶液(ドロー溶液)の調製に用いられる溶質(ドロー溶質)としては、炭酸水素アンモニウム、二酸化硫黄、脂肪族アルコール、硫酸アルミニウム、グルコース、フルクトース、硝酸カリウムなどが知られている。中でも、炭酸水素アンモニウムは、正浸透工程後に約60℃の温度に加温することでアンモニアと二酸化炭素とに分解されて気化するため、水から分離することが可能であり、正浸透用のドロー溶質として最も広く知られている。
一方で、新たなドロー溶質として、親水性ペプチドなどを付着したナノ磁性粒子や、デンドリマー、タンパク質などの高分子電解質が提案されている。ナノ磁性粒子は、磁場を用いて水から分離することができ、高分子電解質は、限外ろ過膜、ナノろ過膜等を用いて水から分離することができる。
また、特許文献1(特開2012−170954号公報)では、水溶液状態で温度に応じて相溶状態と非相溶状態が可逆的に変化するポリアクリルアミド系ポリマーを、ドロー溶質として用いることが提案されている。
しかし、炭酸水素アンモニウムの場合には、60℃以上に加熱しなければ気化が進まないためエネルギー効率が悪く、しかも、アンモニアを完璧に除去することは事実上困難であるため、処理された水はアンモニア臭がして飲料水として使用することはできない。
また、ナノ磁性粒子の場合には、磁場によって分離・凝集された磁性粒子の再分散が困難であり、ナノ粒子を完全に除去することができないため、ナノ粒子の毒性も問題となる。高分子電解質の場合も、高分子電解質の大きさが数nm〜数十nmのレベルであるためナノろ過膜、限外ろ過膜などの特殊なフィルターが必要であり、しかも、ろ過後に固まった高分子電解質を再溶解させることも難しい。
また、ポリアクリルアミド系ポリマーのような窒素を含有するポリマーは毒性を有しており、特許文献1の方法は飲料水を製造するとして安全性上の問題がある。また、ポリアクリルアミドは比較的高価な材料であり、水処理のコストが高くなってしまう。
上記課題に鑑み、本発明の目的は、正浸透用のドロー溶質を容易に分離・回収することのできる、正浸透水処理方法および正浸透水処理装置を提供し、安全性の高い水を生産することである。
[1] 第1面と第2面を有する正浸透膜において、
前記第1面を、水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させると共に、
前記第2面を、少なくとも1種のドロー溶質を含むドロー溶液に接触させることで、
前記処理対象水中に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記第1面側から前記第2面側に移動させる浸透工程と、
前記ドロー溶液の温度を変化させることで、前記ドロー溶液に含まれる前記ドロー溶質を水と分離させる分離工程と、
水と分離した前記ドロー溶質を回収する回収工程とをこの順で含む、
正浸透水処理方法であって、
前記ドロー溶質が、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含んでなることを特徴とする、正浸透水処理方法。
前記第1面を、水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させると共に、
前記第2面を、少なくとも1種のドロー溶質を含むドロー溶液に接触させることで、
前記処理対象水中に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記第1面側から前記第2面側に移動させる浸透工程と、
前記ドロー溶液の温度を変化させることで、前記ドロー溶液に含まれる前記ドロー溶質を水と分離させる分離工程と、
水と分離した前記ドロー溶質を回収する回収工程とをこの順で含む、
正浸透水処理方法であって、
前記ドロー溶質が、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含んでなることを特徴とする、正浸透水処理方法。
[2] 前記親水性基は、水酸基、カルボキシル基、アセチル基、アルデヒド基、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種類である、[1]に記載の正浸透水処理方法。
[3] 前記温度応答性高分子は、少なくとも一部の前記構造単位において少なくとも1つの親水性基を有する、[1]または[2]に記載の正浸透水処理方法。
[4] 前記温度応答性高分子は、一部の前記構造単位において疎水性基を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の正浸透水処理方法。
[5] 前記温度応答性高分子は、ポリビニルエーテル系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマーおよび(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の正浸透水処理方法。
[6] 前記ポリビニルエーテル系ポリマーは、ポリメチルビニルエーテル、オキシエチレン鎖を有するビニルエーテル、ポリヒドロキシブチルビニルエーテルおよびポリヒドロキシブチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種類を含む、[5]に記載の正浸透水処理方法。
[7] 前記ポリ酢酸ビニル系ポリマーは、ポリ酢酸ビニル部分けん化物を含む、[5]に記載の正浸透水処理方法。
[8] 前記(メタ)アクリル酸系ポリマーは、オキシエチレン鎖を有するポリ(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類を含む、[5]に記載の正浸透水処理方法。
[9] さらに、前記温度応答性高分子とは異なる水溶性高分子を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の正浸透水処理方法。
[10] 前記分離工程において、前記ドロー溶質からなるミセルを形成させることで、前記ドロー溶質を水と分離させ、
前記回収工程において、前記ミセルを回収することで、前記ドロー溶質を回収する、[1]〜[9]のいずれかに記載の正浸透水処理方法。
前記回収工程において、前記ミセルを回収することで、前記ドロー溶質を回収する、[1]〜[9]のいずれかに記載の正浸透水処理方法。
[11] さらに、前記回収工程で回収された前記ドロー溶質を、前記正浸透膜の第2面に接するドロー溶液中に再溶解させる再利用工程を含む、[1]〜[10]のいずれかに記載の正浸透水処理方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の正浸透水処理方法に用いられる正浸透水処理装置であって、
第1面と第2面を有する正浸透膜と、
水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させるために、前記第1面に接して設けられた第1チャンバーと、
前記第2面を、ドロー溶液に接触させるために、前記第2面に接して設けられた第2チャンバーと、
前記ドロー溶液の温度を変化させるための温度調節機構を有する第3チャンバーと、
水と分離した前記ドロー溶質を回収するための回収システムとを備える、正浸透水処理装置。
第1面と第2面を有する正浸透膜と、
水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させるために、前記第1面に接して設けられた第1チャンバーと、
前記第2面を、ドロー溶液に接触させるために、前記第2面に接して設けられた第2チャンバーと、
前記ドロー溶液の温度を変化させるための温度調節機構を有する第3チャンバーと、
水と分離した前記ドロー溶質を回収するための回収システムとを備える、正浸透水処理装置。
[13] モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含む、正浸透水処理用のドロー溶液。
[14] さらに、前記温度応答性高分子とは異なる水溶性高分子を含む、[13]に記載の正浸透水処理用のドロー溶液。
本発明の正浸透水処理方法に用いられるドロー溶質は、温度応答性高分子を含んでいるため、ドロー溶液の温度を変化させることで、容易に水から分離させ、回収することができる。また、回収後のドロー溶質は、容易に再利用(ドロー溶液等に再溶解)することができる。さらに、本発明の正浸透用のドロー溶質は窒素を含んでいないため、安全性の高い水を生産することができる。
本発明に用いられるドロー溶質は、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する高分子(温度応答性高分子)を含む。温度応答性高分子は、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有している。
所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性(温度応答性)とは、言い換えれば、温度に応じて親水性になったり疎水性になったりする特性である。ここで、親水性の変化は可逆的であることが好ましい。したがって、温度応答性高分子は、温度を調整することで、水に溶解させたり、水と相分離させたりすることができる。
温度応答性高分子には、下限臨界共溶温度(LCST)タイプと上限臨界共溶温度(UCST)タイプがある。LCSTタイプでは、低温の水に溶解している高分子が、高分子に固有の温度(LCST)以上の温度になると、水と相分離する。逆に、UCSTタイプでは、高温の水に溶解している高分子が、高分子に固有の温度(UCST)以下になると、水と相分離する(杉原ら、「環境応答性高分子の組織体への展開」、SEN’I GAKKAISHI(繊維と工業)、Vol.62,No.8,2006参照)。半透過膜は、高温で劣化し易い素材を用いる場合においては、低温の水に溶解している温度応答性高分子が半透膜に接触している方が望ましいため、本発明に用いる温度応答性高分子はLCSTタイプであることが好ましい。また、高温で劣化しにくい素材で構成された半透過膜を用いる場合は、LCSTタイプの他,UCSTタイプも用いることができる。
親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アセチル基、アルデヒド基、エーテル結合、エステル結合が挙げられる。親水性基は、これらから選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
温度応答性高分子は、少なくとも一部または全部の構造単位において少なくとも1つの親水性基を有することが好ましい。また、温度応答性高分子は、親水性基を有しつつ、一部の構造単位において疎水性基を有していてもよい。なお、温度応答性高分子が、温度応答性を有するためには、分子中に含まれる親水性基と疎水性基のバランスが重要であると考えられている。
温度応答性高分子は、ポリビニルエーテル系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマーおよび(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
ポリビニルエーテル系ポリマーは、ポリメチルビニルエーテル、オキシエチレン鎖を有するビニルエーテル、ポリヒドロキシブチルビニルエーテルおよびポリヒドロキシブチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
具体的なポリビニルエーテル系ポリマーとしては、例えば、表1に示すポリマーが挙げられる。なお、表1に示す相転移温度は、水溶液中での下限臨界共溶温度(LCST)である。
表1中に記載の参考文献1〜4は、次のとおり、
参考文献1:日本ゴム協会誌、第63巻、第1号、29-39(1990)
参考文献2:Journal of Polymer Science Part A:polymer Chemistry Vol.30,2407-2413(1992)
参考文献3:Journal of Polymer Science Part A:polymer Chemistry Vol.41,3300-3312(2003)
参考文献4:Macromolecules ,36,8312-8319(2003)
である。
参考文献1:日本ゴム協会誌、第63巻、第1号、29-39(1990)
参考文献2:Journal of Polymer Science Part A:polymer Chemistry Vol.30,2407-2413(1992)
参考文献3:Journal of Polymer Science Part A:polymer Chemistry Vol.41,3300-3312(2003)
参考文献4:Macromolecules ,36,8312-8319(2003)
である。
ポリ酢酸ビニル系ポリマーは、ポリ酢酸ビニル部分けん化物を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸系ポリマーは、オキシエチレン鎖を有するポリ(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸系ポリマーは、オキシエチレン鎖を有するポリ(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
ドロー溶質を構成する成分(温度応答性高分子や水溶性高分子)は、窒素を含まない。窒素を含まないドロー溶質を用いることで、安全性の高い水を生産することができる。
ドロー溶質は、上記の温度応答性高分子に加えて、さらに、上記の温度応答性高分子とは異なる水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子としては、例えば、天然高分子として、アラビアガム、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、トラガント、トウモロコシデンプン、キタンサンガム、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロース、リン酸化デンプン、アルギン酸およびその塩、アルギン酸プロピレングリコール、カチオン化グアガム、ヒアルロン酸およびその塩、が例示される他、合成高分子としては、ポリアクリル酸およびその塩、ポリアクリル酸アミド、アクリルアミド・アクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテート共重合体、ポリエチレングリコールが挙げられる。温度応答性高分子の総量と水溶性高分子の総量との重量比は、例えば、1:99〜99:1である。
ドロー溶質中にこのような水溶性高分子を配合することで、例えば、後述する分離工程において、ドロー溶液の温度を上げることで水とドロー溶質が非相溶状態となったときに、ドロー溶質がミセル化しやすくなり、ドロー溶質が固体状態で沈殿あるいは析出する場合に比べて、その後の分離・回収がさらに容易になる。また、ドロー溶質がミセル化することにより、ドロー溶質が固体状態で沈殿あるいは析出する場合に比べて、ドロー溶質の水(ドロー溶液)への再溶解(再利用)が容易になるという利点もある。
(正浸透水処理方法)
以下、図1を参照して、本発明の正浸透水処理方法について説明する。
以下、図1を参照して、本発明の正浸透水処理方法について説明する。
本発明の正浸透水処理方法は、処理対象水(水と水以外の成分を含む液)から半透膜を用いた正浸透により水を分離・回収する方法である。処理対象水としては、例えば、海水、河川水、湖沼水、工業廃水が挙げられる。半透膜としては、特に限定されず、正浸透に用いることのできる種々公知の膜を使用できるが、例えば、セルロース系の半透膜が挙げられる。セルロース系の正浸透膜としては、例えば、CTA(東洋紡株式会社製)が挙げられる。
本発明の正浸透水処理方法は、以下に説明する浸透工程と、分離工程と、回収工程とを少なくとも含む。さらに、後述する再利用工程を含むことが好ましい。
(浸透工程)
図1を参照して、正浸透膜1の第1面11に接して設けられた第1チャンバー21内に、処理対象水を流入させて、処理対象水を正浸透膜1の第1面11に接触させる。なお、処理対象水が直接、第1面11に接触するように、第1チャンバー21の第1面側に隔壁等は設けられていない。
図1を参照して、正浸透膜1の第1面11に接して設けられた第1チャンバー21内に、処理対象水を流入させて、処理対象水を正浸透膜1の第1面11に接触させる。なお、処理対象水が直接、第1面11に接触するように、第1チャンバー21の第1面側に隔壁等は設けられていない。
これと共に、正浸透膜1の第2面12に接して設けられた第2チャンバー22内に、少なくとも1種の上記ドロー溶質を含むドロー溶液(通常は、水溶液)を流入させて、ドロー溶液を正浸透膜1の第2面12に接触させる。なお、ドロー溶液が直接、第2面12に接触するように、第2チャンバー22の第2面側に隔壁等は設けられていない。
所定の時間、このような状態を維持することで、正浸透現象により、処理対象水中に含まれる水が、正浸透膜1を通して第1面11側から第2面12側に移動する。
なお、このような正浸透現象が生じるようにするため、処理対象水中の水がドロー溶液に移動しても尚、ドロー溶液が処理対象水よりも高い浸透圧を有する高張液となるように、ドロー液中には十分な量のドロー溶質が溶解している必要がある。また、ドロー溶質は、水に溶解させた際に低い濃度でも高い浸透圧を生じるような(溶質量当たりの浸透圧の付与能力が大きい)溶質であることが好ましい。
(分離工程)
処理対象水中の水を含むドロー溶液を、第3チャンバー3内に流入させ、ここでドロー溶液の温度を変化させることで、ドロー溶液に含まれるドロー溶質を水と分離させる。例えば、ドロー溶質がLCSTタイプの温度応答性高分子を含む場合は、ドロー溶液の温度をLCST以上に上昇させることで、ドロー溶質を水と相分離させることができる。このように、ドロー溶液の温度を変化させるために、第3チャンバー3は温度調節機構を有していることが好ましい。
処理対象水中の水を含むドロー溶液を、第3チャンバー3内に流入させ、ここでドロー溶液の温度を変化させることで、ドロー溶液に含まれるドロー溶質を水と分離させる。例えば、ドロー溶質がLCSTタイプの温度応答性高分子を含む場合は、ドロー溶液の温度をLCST以上に上昇させることで、ドロー溶質を水と相分離させることができる。このように、ドロー溶液の温度を変化させるために、第3チャンバー3は温度調節機構を有していることが好ましい。
分離工程において、ドロー溶質からなるミセルを形成させることで、ドロー溶質を水と分離させることが好ましい。これにより、ドロー溶質の沈殿や析出が生じる場合に比べて、さらに容易にドロー溶質を水と相分離させることができる。なお、ミセルとは、疎水性セグメントが多分子的に会合してコアを形成し、その外側に親水性セグメントが放射状に広がったコロナ部が形成されてなる球状体である。ミセルを形成させるためには、ドロー溶質が、温度応答性高分子以外に、上述の水溶性高分子を含んでいることが好ましい。
(回収工程)
水と分離したドロー溶質、および、水を含む液を、第3チャンバー3から回収システム4に流入させ、回収システムによりドロー溶質を回収する。回収工程において、ミセルを回収する方法としては、例えば、膜分離、遠心分離、沈降分離、または、これらを組み合わせた分離を用いる回収方法が挙げられる。膜分離としては、例えば、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜を用いた膜分離が挙げられる。回収システム4は、これらの回収方法を実施するための機構を備えた、膜分離装置、遠心分離装置、沈降分離装置などである。
水と分離したドロー溶質、および、水を含む液を、第3チャンバー3から回収システム4に流入させ、回収システムによりドロー溶質を回収する。回収工程において、ミセルを回収する方法としては、例えば、膜分離、遠心分離、沈降分離、または、これらを組み合わせた分離を用いる回収方法が挙げられる。膜分離としては、例えば、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜を用いた膜分離が挙げられる。回収システム4は、これらの回収方法を実施するための機構を備えた、膜分離装置、遠心分離装置、沈降分離装置などである。
分離工程においてドロー溶質からなるミセルが形成されている場合、ドロー溶質の沈殿や析出が生じる場合に比べて、回収工程において、さらに容易にドロー溶質(ミセル)を回収することができる。特に膜分離により容易にドロー溶質を回収できる点で有利である。
なお、このドロー溶質の回収工程後に残存する水を回収することで、水処理方法の目的物である水を得ることができる。純粋な水が得られるようにドロー溶質の回収工程は多段階に分けて繰り返されてもよく、ドロー溶質の回収工程の後に、さらに得られる水の品質を高めるための処理を行ってもよい。
(再利用工程)
さらに、回収工程で回収されたドロー溶質を、正浸透膜1の第2面12に接触するドロー溶液(第3チャンバー3内のドロー溶液など)中に再溶解させる。ここで、ドロー溶質は温度応答性高分子や水溶性高分子から構成されるため、温度を調節することで温度応答性高分子を親水性にすれば、ドロー溶質を容易にドロー溶液中に溶解させることができる。
さらに、回収工程で回収されたドロー溶質を、正浸透膜1の第2面12に接触するドロー溶液(第3チャンバー3内のドロー溶液など)中に再溶解させる。ここで、ドロー溶質は温度応答性高分子や水溶性高分子から構成されるため、温度を調節することで温度応答性高分子を親水性にすれば、ドロー溶質を容易にドロー溶液中に溶解させることができる。
分離工程においてドロー溶質からなるミセルが形成され、回収工程においてドロー溶質をミセルとして回収した場合、ミセルがある程度水分を含んだ状態であるため、ドロー溶質を沈殿や析出物として回収する場合に比べて、さらに容易にドロー溶質をドロー溶液中に溶解させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 分離膜、11 第1面、12 第2面、21 第1チャンバ、22 第2チャンバ、3 第3チャンバ、4 回収システム。
Claims (14)
- 第1面と第2面を有する正浸透膜において、
前記第1面を、水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させると共に、
前記第2面を、少なくとも1種のドロー溶質を含むドロー溶液に接触させることで、
前記処理対象水中に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記第1面側から前記第2面側に移動させる浸透工程と、
前記ドロー溶液の温度を変化させることで、前記ドロー溶液に含まれる前記ドロー溶質を水と分離させる分離工程と、
水と分離した前記ドロー溶質を回収する回収工程とをこの順で含む、
正浸透水処理方法であって、
前記ドロー溶質が、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含んでなることを特徴とする、正浸透水処理方法。 - 前記親水性基は、水酸基、カルボキシル基、アセチル基、アルデヒド基、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種類である、請求項1に記載の正浸透水処理方法。
- 前記温度応答性高分子は、少なくとも一部の前記構造単位において少なくとも1つの親水性基を有する、請求項1または2に記載の正浸透水処理方法。
- 前記温度応答性高分子は、一部の前記構造単位において疎水性基を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正浸透水処理方法。
- 前記温度応答性高分子は、ポリビニルエーテル系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマーおよび(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の正浸透水処理方法。
- 前記ポリビニルエーテル系ポリマーは、ポリメチルビニルエーテル、オキシエチレン鎖を有するビニルエーテル、ポリヒドロキシブチルビニルエーテルおよびポリヒドロキシブチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種類を含む、請求項5に記載の正浸透水処理方法。
- 前記ポリ酢酸ビニル系ポリマーは、ポリ酢酸ビニル部分けん化物を含む、請求項5に記載の正浸透水処理方法。
- 前記(メタ)アクリル酸系ポリマーは、オキシエチレン鎖を有するポリ(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類を含む、請求項5に記載の正浸透水処理方法。
- さらに、前記温度応答性高分子とは異なる水溶性高分子を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の正浸透水処理方法。
- 前記分離工程において、前記ドロー溶質からなるミセルを形成させることで、前記ドロー溶質を水と分離させ、
前記回収工程において、前記ミセルを回収することで、前記ドロー溶質を回収する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の正浸透水処理方法。 - さらに、前記回収工程で回収された前記ドロー溶質を、前記正浸透膜の第2面に接するドロー溶液中に再溶解させる再利用工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の正浸透水処理方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の正浸透水処理方法に用いられる正浸透水処理装置であって、
第1面と第2面を有する正浸透膜と、
水と水以外の成分を含む処理対象水に接触させるために、前記第1面に接して設けられた第1チャンバーと、
前記第2面を、ドロー溶液に接触させるために、前記第2面に接して設けられた第2チャンバーと、
前記ドロー溶液の温度を変化させるための温度調節機構を有する第3チャンバーと、
水と分離した前記ドロー溶質を回収するための回収システムとを備える、正浸透水処理装置。 - モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有し、窒素を含まず、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性を有する温度応答性高分子を含む、正浸透水処理用のドロー溶液。
- さらに、前記温度応答性高分子とは異なる水溶性高分子を含む、請求項13に記載の正浸透水処理用のドロー溶液。
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