JP2015046596A - 電子デバイス、及び電子デバイスの製造方法 - Google Patents

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才華 大坪
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晋司 荒牧
孝理 横山
Takayoshi Yokoyama
孝理 横山
佳洋 宮本
Yoshihiro Miyamoto
佳洋 宮本
佐藤 佳晴
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Abstract

【課題】金属酸化物含有層を有する中間層を備えたタンデム型の電子デバイスにおいて、高い電気的特性を有するタンデム型の電子デバイス及び、該電子デバイスの簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に、少なくとも、下部電極101と、第1の機能性半導体層103と、金属酸化物含有層を含む中間層104と、第2の機能性半導体層105と、上部電極106と、をこの順に有するタンデム型の電子デバイスの製造方法であって、前記金属酸化物含有層は、特定の不飽和カルボン酸金属塩を含有するインクを塗布する工程と、前記塗布後に熱処理を行う工程により形成され、前記第2の機能性半導体層は塗布法により形成されることを特徴とするタンデム型の電子デバイスの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子デバイス、及び電子デバイスの製造方法に関する。
近年、有機半導体を用いた電子デバイス、なかでも有機薄膜太陽電池(OPV)や有機電界発光素子(OLED)が、盛んに開発されている。
電子デバイス設計上の問題点を解決して高効率化を図る試みの中に、多数個のpn接合を1つの素子内に作り込んだ構造(多重接合構造)がある。この構造は大別して二つあり、一つは同じ、又は異なる材料で作ったpn接合を光の進行方向に重ねて配列する方式(タンデム構造)である。他の一つはpn接合を光の進行方向に平行に形成したものを多数個組み込んだもの(垂直接合式)である。
タンデム構造では、pn接合間の中間層(接合層)が重要であり、特許文献1及び2では、OPV及びOLEDにおいて、金属酸化物含有層を有する中間層が用いられることが各々記載されている。特に、特許文献1には、PEDOT:PSS等の有機材料と酸化亜鉛等の導電性ナノ粒子とを含む中間層が記載されている。
また、中間層に含有される酸化亜鉛層の成膜方法として、特許文献3には、酸化亜鉛分散液を塗布することにより酸化亜鉛層を成膜する方法が記載されている。また、非特許文献1には、酢酸亜鉛を原料として用い、水酸化亜鉛を経由して酸化亜鉛を生成するゾルゲル法により酸化亜鉛層を成膜する方法が記載されている。さらに、非特許文献2には、亜鉛アセチルアセトナート錯体を熱分解で酸化亜鉛に変換することにより酸化亜鉛層を成膜する方法が記載されている。
特表2006−527490号公報 特開2005−123095号公報 特開2012−182439号公報
Organic Electronics 2011,12,364. Organic Electronics 2012,13,2696.
一般的に、タンデム型の電子デバイスでは、中間層の上方及び下方の両方にpn接合を有する機能性半導体層が設けられる。また、金属酸化物含有層をより簡便に形成することは、金属酸化物含有層を有する中間層を含むタンデム型の電子デバイスの製造コストを低下させる上で有利である。しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献3に記載の酸化亜鉛分散液の塗布方法、非特許文献1に記載のゾルゲル法、非特許文献2に記載の亜鉛アセチルアセトナート錯体の熱分解法で製造された金属酸化物含有層である酸化亜鉛層は、いずれも膜の表面が荒れてしまい緻密な膜が得られにくい傾向があることが判明した。このような金属酸化物含有層上に、機能性半導体層を塗布法により形成しようとすると、該機能性半導体層形成用インクが金属酸化物含有層を透過し、中間層の下方に設けられた他の機能性半導体層を浸食し、結果的に、電子デバイスの特性が著しく低下してしまう。この問題を解決するためには、金属酸化物含有層を形成した後に、平坦化の層を別途設けることも考えられるが、この場合、製造プロセスが困難となり、また高コスト化してしまう問題も考えられる。
本発明は、金属酸化物含有層を有する中間層を備えたタンデム型の電子デバイスにおいて、高い電気的特性を有するタンデム型の電子デバイス及び、該電子デバイスの簡便な製造方法を提供することを課題とする。
上記実情に鑑み鋭意検討の結果、本願発明者らは、特定の不飽和カルボン酸金属塩を金属酸化物前駆体として用いることで、上記問題を解決でき、本発明を達成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 基材上に、少なくとも、下部電極と、第1の機能性半導体層と、金属酸化物含有層を含む中間層と、第2の機能性半導体層と、上部電極と、をこの順に有するタンデム型の電子デバイスの製造方法であって、前記金属酸化物含有層は、下記式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩を含有するインクを塗布する工程と、前記塗布後に熱処理を行う工程により形成され、前記第2の機能性半導体層は、塗布法により形成されることを特徴とするタンデム型の電子デバイスの製造方法。
Figure 2015046596
(式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は任意の置換基であり、Mはm価の金属原子であり、mは2以上5以下の整数である。m個のCR12=CR3-COO-は、同じであっても互いに異なっていてもよい。)
[2] 前記不飽和カルボン酸金属塩を構成する炭素数が3以上、12以下である[1]に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[3] 前記不飽和カルボン酸金属塩を形成する不飽和カルボン酸の沸点が139℃以上、300℃未満である[1]又は[2]に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[4] 前記式(I)中、R1、R2及びR3がそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である[1]〜[3]のいずれかに記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[5] 前記式(I)中、R1、R2及びR3がそれぞれ水素原子である[1]〜[4]のいずれかに記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[6] 前記式(I)中、Mが周期表第4周期の遷移金属元素、周期表第12族元素、周期表第13族元素、及び周期表第14族元素から選ばれるいずれかの金属原子である[1]〜[5]のいずれかに記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[7] 前記式(I)中、Mが亜鉛原子である[1]〜[5]のいずれかに記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[8] 電界発光素子である[1]〜[7]のいずれかに記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[9] 光電変換素子である[1]〜[7]のいずれかに記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
[10] 基材上に、少なくとも、下部電極と、第1の機能性半導体層と、酸化亜鉛含有層を含む中間層と、第2の機能性半導体層と、上部電極と、をこの順に有するタンデム型の電子デバイスであって、前記酸化亜鉛含有層の膜厚に対する平均粗さの割合は10%未満であり、かつ前記酸化亜鉛含有層のX線回折(XRD)法(out of plane測定)における(002)面の2θピークの半値幅が1°以上であることを特徴とする、タンデム型の電子デバイス。
本発明により、金属酸化物含有層を有する中間層を備えたタンデム型の電子デバイスにおいて、高い電気的特性を有するタンデム型の電子デバイス及び、該電子デバイスの簡便な製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態としての光電変換素子の構成を模式的に表す断面図である。 本発明の一実施形態としての太陽電池の構成を模式的に表す断面図である。 本発明の一実施形態としての太陽電池モジュールの構成を模式的に表す断面図である。 本発明の一実施形態としての電界発光素子の構成を模式的に表す断面図である。 実施例1−1、比較例1−1〜1−4で測定した酸化亜鉛含有層の薄膜X線回折(XRD)スペクトルである。 実施例1−1で測定した酸化亜鉛含有層の薄膜X線回折(XRD)スペクトルである 比較例1−3で測定した酸化亜鉛含有層の薄膜X線回折(XRD)スペクトルである。 比較例1−4で測定した酸化亜鉛含有層の薄膜X線回折(XRD)スペクトルである。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明の一実施形態は、基材上に、少なくとも、下部電極と、第1の機能性半導体層と、金属酸化物含有層を含む中間層と、第2の機能性半導体層と、上部電極と、を有するタンデム型の電子デバイスの製造方法であって、前記金属酸化物含有層は、後述する式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩を含有するインクを塗布する工程と、前記塗布後に熱処理を行う工程により形成され、第2の機能性半導体膜は塗布法により形成されるものである。
本発明において、タンデム型の電子デバイスとは、同じ又は異なる材料を用いて形成した複数のpn接合を有する機能性半導体層を光の進行方向に重ねて配列した構造を備えた電子デバイスを意味する。なお、機能性半導体層とは、上述の通り、pn接合を有する層であり、各電子デバイスの機能発現に中心的役割を果たしている層である。例えば、有機発光素子においては、機能性半導体層は発光層を意味し、光電変換素子及びフォトダイオードにおいては活性層を意味する。
また、本発明において、電子デバイスとは、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置である。例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子が挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、又は発振等が挙げられる。
電子デバイスは、特段の制限はないが、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、若しくは化学センサー等、又はこれらの素子を組み合わせ若しくは集積化したデバイスが挙げられる。また、光電流を生じるフォトダイオード若しくはフォトトランジスタ、電界を印加することにより発光する電界発光素子、及び光により起電力を生じる光電変換素子若しくは太陽電池等の光素子も挙げることができる。
電子デバイスのより具体的な構成例は、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley Interscience 1981)に記載されているものを挙げることができる。
なかでも、本発明に係る電子デバイスは、光電変換素子、太陽電池及び電界発光素子であることが好ましい。これらの電子デバイスは、pn接合を光の進行方向に配列することで性能を発揮する電子デバイスであり、タンデム構造とすることで、電気的特性向上に、特に有効であるからである。
以下、本発明の好適な例として、タンデム型の、光電変換素子、太陽電池、及び電界発光素子の構成及びその製造方法について詳細に説明する。
<1.タンデム型の光電変換素子109>
本発明に係るタンデム型の光電変換素子は、基材上に、少なくとも、下部電極と、第1の機能性半導体層である第1の活性層と、金属酸化物含有層を含む中間層と、第2の機能性半導体層である第2の活性層と、上部電極と、をこの順に有する。しかしながら、本発明に係るタンデム型の光電変換素子は、当該構成に限定されずに、他の層を含んでいてもよい。例えば、電子取り出し層及び/又は正孔取り出し層を任意で設けてもよい。具体的には、図1に示すように、基材上108に、下部電極101と、電子取り出し層102と、第1の活性層103と、中間層104と、第2の活性層105と、正孔取り出し層106と、上部電極107と、をこの順に有する構成であってもよい。また、電子取り出し層102と正孔取り出し層106の位置は逆であってもよい。また、電子取り出し層102と正孔取り出し層106のどちらか一方の層のみを有していてもよい。
以下、図1を参照して、本発明に係るタンデム型の光電変換素子及びその製造方法について説明する。また、本発明において、下部電極101及び上部電極107を合わせて一対の電極と称す場合がある。
<1−1.中間層104>
中間層104は、第1の活性層103と、第2の活性層105との間に位置し、第1の活性層103と第2の活性層105とを電気的に接続する層である。中間層は、単層で形成することも可能ではあるが、電子及び正孔の電荷再結合を防ぐために、通常は、電子取り出し機能を有する層と正孔取り出し機能を有する層とを含んだ多層構造であることが好ましい。なお、中間層104は、電子取り出し機能を有する層と正孔取り出し機能を有する層の間に、金属層を加えた層構成であってもよい。しかしながら、高い電気的特性が得られ、かつ製造コストを抑えるために、中間層104は2層構造又は3層構造であることが好ましく、正孔取り出し機能を有する層及び電子取り出し機能を有する層の2層構造であることが特に好ましい。
中間層104の膜厚は特に限定はないが、通常0.5nm以上である。一方、通常800nm以下、好ましくは400nm以下である。中間層104の膜厚が0.5nm以上であることで、接合層材料としての機能を果たすことになり、中間層104の膜厚が800nm以下であることで、電荷が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
なお、中間層104を構成する電子取り出し機能を有する層は、後述する電子取り出し層102に挙げる材料及び形成方法により形成することができ、正孔取り出し機能を有する層は後述する正孔取り出し層106に挙げる材料及び形成方法により形成することができるが、本発明において、電子取り出し機能を有する層及び正孔取り出し機能を有する層の少なくとも一方は、後述する金属酸化物含有層を含む。即ち、本発明においては、中間層103は、少なくとも金属酸化物含有層を含む。以下、中間層103に含まれる金属酸化物含有層について説明する。
<1−2.金属酸化物含有層>
本発明に係る中間層は上述の通り、金属酸化物含有層を含む。なお、後述するように、該金属酸化物含有層は、特定の不飽和カルボン酸金属塩を金属酸化物前駆体として、塗布法により成膜し、加熱処理を行うことで、金属酸化物含有層を形成することができる。
なお、金属酸化物含有層を形成する方法としては、スパッタ法等の乾式成膜法や塗布法が考えられる。しかしながら、スパッタ法等の乾式成膜法では下地となる層を真空状態で損傷してしまい、素子特性が低下する場合がある。また、生産性も低く、さらには高コスト化してしまう。一方で、従来のように、金属水酸化物を経由して金属酸化物を形成するゾルゲル法のような塗布法により金属酸化物含有層した場合、得られる層の表面は荒れる傾向がある。そのため、金属酸化物含有層上に、引き続き、第2の活性層105を塗布法により形成すると、第2の活性層を形成するための溶媒が金属酸化物含有層を透過し、金属酸化物含有層の下方に形成されている第1の活性層103に浸食して光電変換素子の電気的特性が大幅に低下してしまうことになる。この場合、金属酸化物含有層を中間層に適用するには、平坦化用の金属薄膜層をさらに導入するか、又は特殊な材料(例えば中性処理したPEDOT:PSS)等を用いることにより解決を図る方法も考えられるが、いずれも製造工程が複雑化するとともに製造コストが高くなる。しかしながら、本発明に係る方法により得られる金属酸化物含有層の膜は荒れの少ない緻密な膜であるために、金属薄膜層導入等の追加工程を必要とすることなく、第2の活性層を塗布法により形成しても、その溶媒が金属酸化物含有層を透過することがないために、高い電気特性を有するタンデム型の光電変換素子を提供することができる。
金属酸化物含有層は、2〜5価の金属の酸化物を含有する層であり、特段の制限はないが、周期表第4周期の遷移金属元素、周期表第12族元素、周期表第13族元素、及び周期表第14族元素から選ばれる金属原子の酸化物を含む層であることが好ましい。なお、本発明において遷移金属元素とは、周期表第3族〜第11族の金属元素を指す。本明細書において、周期表とは、IUPAC2005年度推奨版(Recommendations of IUPAC 2005)のことを指す。なかでも、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム又は酸化スズであることがさらに好ましく、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化インジウム又は酸化スズであることがより好ましく、高いキャリア移動度を得られるという観点から酸化亜鉛であることが特に好ましい。
金属酸化物含有層の膜厚は、特段の制限はないが、通常0.5nm以上であり、一方で、通常800nm以下、好ましくは400nm以下、特に好ましくは200nm以下である。金属酸化物含有層の膜厚が、上記の範囲内であれば、電気的特性もよく発揮されうる。
<1−2−1.金属酸化物含有層の形成方法>
金属酸化物含有層は、下記式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩(以下、本発明に係る不飽和カルボン酸金属塩と称す場合がある)を含有するインクを塗布する工程と、塗布後に熱処理を行う工程と、によって形成される(以下、本発明に係る金属酸化物含有層の形成方法と称す場合がある)。
Figure 2015046596
式(I)中、mは2以上5以下の整数である。なお、不純物が少ない金属酸化物含有層を形成するには、不飽和カルボン酸金属塩に占める金属原子の割合は大きい方が好ましいために、mは3以下であることが好ましい。一方で、適度な温度で不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物への変換を可能にするために、mは2以上であることが好ましい。なかでも、mは2であることが特に好ましい。
なお、1分子の不飽和カルボン酸金属塩は、m個の不飽和カルボン酸から構成されるが、m個の不飽和カルボン酸は、同じあってもよいし、互いに異なっていてもよい。すなわち、m個のCR12=CR3−COO-は、同じであっても互いに異なっていてもよい。
式(I)中、Mはm価の金属原子であり、具体的には2〜5価の金属原子である。2価の金属原子としては、チタン(II)原子、バナジウム(II)原子、クロム(II)原子、マンガン(II)原子、鉄(II)原子、コバルト(II)原子、ニッケル(II)原子、銅(II)原子等の2価の遷移金属原子;亜鉛(II)原子、スズ(II)原子、鉛(II)原子等の2価の典型金属原子が挙げられる。3価の金属原子としては、スカンジウム(III)原子、チタン(III)原子、クロム(III)原子、マンガン(III)原子、鉄(III)原子、コバルト(III)原子等の3価の遷移金属原子;アルミニウム(III)原子、ガリウム(III)原子、インジウム(III)原子等の3価の典型金属原子が挙げられる。4価の金属原子としては、チタン(IV)原子、スズ(IV)原子、鉛(IV)原子等が挙げられる。5価の金属原子としては、バナジウム(V)原子等が挙げられる。
本明細書において典型金属原子とは、周期表第12族以降の金属元素の原子を指す。
なかでも、Mは2価又は3価の金属原子であることが、式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩がジカルボン酸金属塩又はトリカルボン酸金属塩となりうる点で好ましい。Mが2価の金属原子であることは、式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩がジカルボン酸金属塩となりうる点で特に好ましい。
なお、上記のなかでも、Mの好ましい例としては、特にカルボン酸金属塩を形成しやすい原子が挙げられる。具体的には、周期表第4周期元素の遷移金属原子、周期表第12族元素、周期表第13族元素、及び周期表第14族元素から選ばれる金属原子が挙げられる。周期表第4周期元素の遷移金属原子は、好ましくは、スカンジウム原子、チタン原子、バナジウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子が挙げられる。周期表第12族元素から選ばれる金属原子は、好ましくは亜鉛原子が挙げられる。周期表第13族元素から選ばれる金属原子は、好ましくは、インジウム原子、ガリウム原子、アルミニウム原子が挙げられる。周期表第14族元素から選ばれる金属原子は、好ましくは、スズ原子、鉛原子等が挙げられる。対応する金属酸化物のキャリア移動度が高い点で、Mはチタン原子、バナジウム原子、鉄原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、インジウム原子、ガリウム原子、アルミニウム原子又はスズ原子であることが好ましい。なかでも、チタン原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、インジウム原子又はスズ原子がより好ましく、亜鉛原子が特に好ましい。亜鉛原子は、不飽和カルボン酸亜鉛の溶解性が高い点、不飽和カルボン酸亜鉛を含有するインクを塗布成膜して得られる膜の均一性が高い点、並びに酸化亜鉛含有層の物理的特性が良好であり、かつキャリア移動度が高い点で、特に好ましい。本明細書においてキャリア移動度とは、後述するように電子移動度と正孔移動度とのどちらかのことを指す。
式(I)中、R1、R2及びR3は、得られる金属酸化物含有層が機能する限り特段の限定はなく、それぞれ独立して、水素原子又は任意の置換基である。なお、任意の置換基とは1価の有機基を意味する。
1価の有機基は、特段の制限はないが、好ましい例としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が挙げられる。アミノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子は、特段の制限はないが、フッ素原子が好ましい。
アミノ基は、特段の制限はないが、炭素数20以下の、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基が挙げられる。2級アミノ基及び3級アミノ基は、例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、又はカルバゾリル基等の芳香族置換アミノ基が挙げられる。
シリル基は、特段の制限はないが、炭素数20以下の、1級シリル基、2級シリル基、3級シリル基、又は4級のシリル基が好ましい。例えば、トリメチルシリル基、又はトリフェニルシリル基等が挙げられる。
ボリル基は、ボリル基は、特段の制限はないが、炭素数20以下の、1級ボリル基、2級ボリル基、又は3級ボリル基が好ましい。例えば、ジメシチルボリル基等の芳香族置換ボリル基が挙げられる。
アルキル基は、特段の制限はないが、炭素数1以上20以下のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。
アルケニル基は、特段の制限はないが、炭素数2以上20以下のものが好ましく、例えば、ビニル基、スチリル基又はジフェニルビニル基が挙げられる。
アルキニル基は、特段の制限はないが、炭素数2以上20以下のものが好ましく、例えば、メチルエチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基が挙げられる。
アルコキシ基は、特段の制限はないが、炭素数2以上20以下のものが好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、へプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デキルオキシ基、ウンデキルオキシ基、ドデキルオキシ基、エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、ベンジルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基は、特段の制限はないが、炭素数2以上20以下のものが好ましい。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、又はオクチルオキシカルボニル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、特段の制限はないが、炭素数6以上20以下のものが好ましい。芳香族炭化水素基は、単環芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族炭化水素基、及び環連結芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。単環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェナントリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、ペリレニル基が挙げられる。環連結芳香族炭化水素基としては、例えば、ビフェニル基又はターフェニル基が挙げられる。これらの中でも、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
芳香族複素環基は、特段の制限はないが、炭素数2以上20以下のものが好ましく、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フェニルカルバゾリル基が挙げられる。これらの中でも、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基又はフェナントリル基が好ましい。
アミノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、特段の制限はなく、例えば上述の1価の有機基で挙げた基が挙げられる。なお、1価の有機基が置換基を有している場合、上述した1価の有機基の好ましい炭素数は、置換基を含めた炭素数とする。
上記の中でも、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、カルボキシル基、又は置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基が好ましい。具体的には、アクリル酸(R1=R2=R3=H)、メタクリル酸(R1=R2=H、R3=CH3)、エタクリル酸(R1=R2=H、R3=C25)、クロトン酸(R1=CH3、R2=R3=H)、イソクロトン酸(R1=H、R2=CH3、R3=H)、アンゲリカ酸(R1=H、R2=CH3、R3=CH3)、チグリン酸(R1=CH3、R2=H、R3=CH3)、2−ペンテン酸(R1=C25、R2=R3=H)、2−ヘキセン酸(R1=C37、R2=R3=H)、2−ヘプテン酸(R1=C49、R2=R3=H)、2−オクテン酸(R1=C511、R2=R3=H)、2−ノネン酸(R1=C613、R2=R3=H)、2−デセン酸(R1=C715、R2=R3=H)、2−ウンデセン酸(R1=C817、R2=R3=H)、2−ドデセン酸(R1=C919、R2=R3=H)、フマル酸(R1=COOH、R2=R3=H)、マレイン酸(R1=H、R2=COOH、R3=H)、イタコン酸(R1=R2=H、R3=CH2COOH)、シトラコン酸(R1=CH3、R2=COOH、R3=H)、メサコン酸(R1=COOH、R2=CH3、R3=H)、フマル酸モノメチル(R1=COOCH3、R2=R3=H)、フマル酸モノエチル(R1=COOC25、R2=H、R3=H)、フマル酸モノブチル(R1=COOC49、R2=R3=H)、フマル酸モノオクチル(R1=COOC817、R2=R3=H)、マレイン酸モノメチル(R1=H、R2=COOCH3、R3=H)、マレイン酸モノエチル(R1=H、R2=COOC25、R3=H)、マレイン酸モノブチル(R1=H、R2=COOC49、R3=H)、マレイン酸モノオクチル(R1=H、R2=COOC817、R3=H)、イタコン酸モノメチル(R1=R2=H、R3=CH2COOCH3)、イタコン酸モノエチル(R1=R2=H、R3=CH2COOC25)、イタコン酸モノブチル(R1=R2=H、R3=CH2COOC49)、シトラコン酸モノメチル(R1=CH3、R2=COOCH3、R3=H)、シトラコン酸モノエチル(R1=CH3、R2=COOC25、R3=H)、シトラコン酸モノブチル(R1=CH3、R2=COOC49、R3=H)、シトラコン酸モノオクチル(R1=CH3、R2=COOC817、R3=H)、メサコン酸モノメチル(R1=COOCH3、R2=CH3、R3=H)、メサコン酸モノエチル(R1=COOC27、R2=CH3、R3=H)、メサコン酸モノブチル(R1=COOC49、R2=CH3、R3=H)、又はメサコン酸モノオクチル(R1=COOC817、R2=CH3、R3=H)が挙げられる。炭素−炭素二重結合(C=C)を構成する炭素原子に結合したカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸は、脱炭酸反応等の熱分解反応を比較的低温で起こしやすい性質があるので、本発明に係る金属酸化物含有層を低温でかつ効率的に得るために適している。
特に、不飽和カルボン酸イオンと金属原子との結合の強さが適当なものとなり、金属酸化物含有層の生成が円滑に進行しうる観点からは、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、2−ノネン酸、2−デセン酸、2−ウンデセン酸、又は2−ドデセン酸が挙げられる。
なかでも、金属酸化物含有層が形成される際に層に損傷を与えうる化合物が生じにくくなる点で、R3が水素原子であり、R1及びR2のうちどちらか一方が、水素原子又は置換基を有していない直鎖アルキル基であり、他方が、水素原子であることが好ましい。具体的には、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、2−ノネン酸、2−デセン酸、2−ウンデセン酸、又は2−ドデセン酸が挙げられる。これらのなかでも、R1、R2及びR3が共に水素原子であるアクリル酸が特に好ましい。
また、後述するように、脱水を伴うカルボン酸金属塩化と加水分解との可逆反応を後者の加水分解側に偏らせる上では、沸点が300℃未満の不飽和カルボン酸が好ましく、沸点が250℃以下の不飽和カルボン酸がより好ましく、沸点が200℃以下の不飽和カルボン酸がさらに好ましい。沸点の下限としては、炭素−炭素二重結合(C=C)1つとカルボキシル基1つとを有する最も単純で小さい不飽和カルボン酸である、アクリル酸の沸点(139℃)以上である。
上記式(I)からも分かるように、本発明に係る不飽和カルボン酸の炭素数は、3以上である。一方で、形成される金属酸化物含有層内に不飽和カルボン酸金属塩の未反応物が多く存在すると、金属酸化物含有層の特性に影響を及ぼすと考えられるため、不飽和カルボン酸を構成する原子の数は少ないことが好ましい。この観点からは、不飽和カルボン酸の炭素数は、好ましくは12以下であり、より好ましくは6以下である。6以下の不飽和カルボン酸は、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、又はメサコン酸モノメチルが挙げられる。なかでも、炭素−炭素二重結合(C=C)1つとカルボキシル基1つとを有する最も単純で小さい不飽和カルボン酸である、アクリル酸が、特に好ましい。
<1−2−2.不飽和カルボン酸金属塩の合成>
本発明に係る不飽和カルボン酸金属塩は、例えば、公知文献(特開2010−001395号公報等)に記載されているように、金属化合物と不飽和カルボン酸との反応により製造することができる。
反応に用いる金属化合物は、特段の制限はなく、金属酸化物、金属水酸化物、酢酸金属塩、金属アセチルアセトナート錯体、及び金属塩化物が挙げられる。なかでも、副生成物が無害な水である点で、不飽和カルボン酸と、金属酸化物又は金属水酸化物との脱水反応を用いて不飽和カルボン酸金属塩を製造することが好ましく、金属酸化物を用いることがより好ましい。また、製造の容易さの点で、酢酸金属塩のようなカルボン酸金属塩と、不飽和カルボン酸とのイオン交換により不飽和カルボン酸金属塩を合成することも好ましい。
金属酸化物は、特段の制限はなく、上記式(I)中のMと同一金属原子の酸化物であればよい。例えば、酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化スズ又は酸化鉛が挙げられる。
金属酸化物は、他の金属がドープされていてもよく、例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、インジウム・ガリウムドープ酸化亜鉛、セシウムドープ酸化チタン等を用いることもできる。金属酸化物としては、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
反応に用いる金属化合物は、粉末状態でも、分散液の状態でもよい。金属化合物が粉末状態である場合、その平均一次粒径は、動的光散乱粒子径測定装置や透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができるが、不飽和カルボン酸金属塩の合成原料として用いることが可能であれば、特段の制限はない。
反応に用いる金属化合物は表面処理されていなくてもよいが、表面処理剤で表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、不飽和カルボン酸金属塩が得られる限り特段の制限はないが、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリメトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、ジメチコンPEG−7コハク酸塩等のポリシロキサン化合物及びその塩;メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシラン、3−カルボキシプロピルトリメチルトリメトキシシラン等の有機ケイ素化合物、ギ酸、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸等のカルボン酸化合物;ラウリルエーテルリン酸、トリオクチルホスフィン等の有機リン化合物;ジメチルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン等のアミン化合物;ポリイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素等のバインダー樹脂等が挙げられる。表面処理剤としては、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
反応に用いる金属化合物が分散液の状態である場合、分散液に用いる溶媒は、不飽和カルボン酸金属塩が得られる限り特段の制限はないが、例えば、水;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン(NMP)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;エタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類が挙げられる。なかでも好ましくは、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン(NMP)等のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類である。さらに好ましくは、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール類である。溶媒としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和カルボン酸金属塩が得られるのであれば、溶媒の沸点に特に制限はない。
反応に用いる金属酸化物の具体的な例としては、粉末としてはナノジンク60(本荘ケミカル社製,酸化亜鉛)、ナノジンク100(本荘ケミカル社製,酸化亜鉛)、FINEX−30(堺化学工業社製,酸化亜鉛)、ZINCOX SUPER F−2(ハクスイテック社製,酸化亜鉛)、パゼット23K(ハクスイテック社製,アルミニウムドープ酸化亜鉛)、パゼットGK40(ハクスイテック社製,ガリウムドープ酸化亜鉛)が挙げられる。また、分散液としてはアルドリッチ社製酸化亜鉛分散液(カタログナンバー721085、721107等)、パゼットGK分散体(ハクスイテック社製,ガリウムドープ酸化亜鉛分散液)が挙げられる。
<1−2−3.不飽和カルボン酸金属塩を含有するインクを塗布する塗布工程>
上述のように、本発明に係る金属酸化物含有層は、上記式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩を塗布する塗布工程と、該塗布後の熱処理工程と、により形成することができる。
<1−2−4.不飽和カルボン酸金属塩の塗布工程>
不飽和カルボン酸金属塩を塗布する方法は、特段の制限はなく、任意の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられる。また、塗布方法として1種の方法のみを用いてもよいし、2種以上の方法を組み合わせて用いることもできる。
なお、不飽和カルボン酸金属塩の塗布工程は、不飽和カルボン酸金属塩と、溶媒と、を含むインクを用いて塗布することが好ましい。
不飽和カルボン酸金属塩と、溶媒と、を含むインクは、不飽和カルボン酸金属塩と、溶媒と、を混合することにより作製することができる。また、別の方法としては、溶媒中で、上述の通り、不飽和カルボン酸金属塩を製造するための、金属化合物と不飽和カルボン酸とを反応させることにより作製することができる。
インク中の、不飽和カルボン酸金属塩は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、インク中において、不飽和カルボン酸金属塩は、必ずしも単独で存在している必要はなく、溶媒とともに錯体を形成して存在していてもよいし、多量体を形成していてもよい。
溶媒は、特に限定されないが、例えば、水;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン(NMP)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;エタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類が挙げられる。なかでも好ましくは、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン(NMP)等のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類である。特に好ましくは、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール類である。なお、溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、電子デバイスとしての電気的特性を著しく損なわない限り、溶媒は金属酸化物含有層中に残留していてもよいために溶媒の沸点は特に限定されない。
インク中の不飽和カルボン酸金属塩の濃度は、特段の制限はないが、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、一方、通常100質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。インク中の不飽和カルボン酸金属塩の濃度が上記の範囲内にあることは、不飽和カルボン酸金属塩を均一に塗布しうる点、及び緻密な金属酸化物含有層が得られうる点で好ましい。
インクは、さらに金属酸化物を含んでいてもよい。インクが金属酸化物を含有することにより、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物の生成反応を促進する触媒として機能したり、生成される金属酸化物の結晶成長のための種結晶として機能する可能性がある。
また、インクは添加剤を含んでいてもよい。添加剤により、インクの粘度を調整することができる。添加剤は、電子デバイスの電気的特性を著しく阻害しない限り、特段の制限はなく、例えば、上述の金属酸化物の表面処理剤又は後述するドーピング材料が挙げられる。
インクの粘度は、回転粘度計法(「物理化学実験のてびき」(足立吟也、石井康敬、吉田郷弘編、化学同人(1993)に記載)により求めることができ、具体的には、RE85形粘度計(東機産業社製)を用いて測定することができる。インクの好ましい粘度は、特段の限定はなく、塗布方法の種類により変化しうるが、スプレーコート法を用いる場合には比較的低粘度であることが好ましく、ワイヤーバーバーコート法を用いる場合には、比較的高粘度であることが好ましい。
<1−2−5.熱処理工程>
上述の通り、不飽和カルボン酸金属塩の塗布後に、熱処理工程を行うことにより不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物への生成反応が起こり、金属酸化物含有層を形成することができる。なお、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物が生成される詳細なメカニズムは分かっていないが、下記式(i)に示すように、不飽和カルボン酸金属塩が、水蒸気のような水分と反応することにより金属水酸化物へと加水分解され、最終的に金属酸化物に変化する経路と、下記式(ii)に示すように、不飽和カルボン酸金属塩を構成する不飽和カルボン酸の熱分解により、純粋な金属が生成され、外気の酸素と結合することにより最終的に金属酸化物に変化する経路等により、金属酸化物が生成されるものと考えられる。
Figure 2015046596
加熱処理工程の温度は、特段の制限はないが、100℃以上であることが好ましい。この理由としては、水が自由度の大きい水蒸気に変化する温度が100℃以上であることが挙げられる。すなわち、上記式(i)及び(ii)に示されるような反応経路を経て、金属酸化物は生成されるものと考えられるが、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物が生成される際には、水蒸気が、加水分解反応における反応物質としての役割を有し、さらには熱分解反応における反応触媒としての役割のうちの少なくとも一方を担うものと考えられるため、水蒸気の存在により、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物への生成が促進されると考えられる。従って、加熱処理工程の温度を100℃以上とすることで、加熱処理の時間を短縮することができると考えられる。一方、熱処理工程の温度は、300℃未満であることが好ましく、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。加熱処理温度が300℃未満であることで、ロール・ツー・ロール方式のような、フレキシブル基材を用いる製造工程においても対応可能な温度である点で好ましい。特に、フレキシブルな電子デバイスにおいては、低温で、高密度かつ高性能な金属酸化物含有層を形成するプロセスの構築が、早急に解決すべき課題として挙げられている(応用物理,2012,81,728.)。この点に関して、本発明に係る金属酸化物含有層の製造方法によれば、低温で、高特性の金属酸化物含有層を含んだ中間層を製造することができる。
加熱時間は金属酸化物の生成反応が進行する限り、特に限定されないが、金属酸化物の生成反応が十分に進行し、さらにはロール・ツー・ロール方式のような実用的な製造工程においても生成反応が円滑に進行しうる点から、加熱時間は、通常30秒以上であり、1分以上であることが好ましく、2分以上であることがさらに好ましく、3分以上であることが特に好ましく、一方で、通常180分以下であり、60分以下であることが好ましく、30分以下であることがさらに好ましく、15分以下であることが特に好ましい。
なお、加熱温度を高くすれば、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物への生成反応が進行しやすくなる傾向がある。そのため、短時間で金属酸化物の生成反応を行いたい場合は、使用する基材や光電変換素子を構成する他の層に影響がない範囲で、適宜温度を調整すればよい。また加熱工程の温度を低くしたい場合は、加熱時間を長くすることによって、金属酸化物の生成反応を進行させることができる。そのため、加熱時間や加熱温度は、使用する基材や光電変換素子を構成する他の層等を考慮して、適宜選択すればよい。
熱処理工程の際の雰囲気中の酸素濃度は、特段の制限はないが、通常0.1体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、一方、通常50体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは25%体積以下である。酸素濃度がこの範囲であれば、より良好な特性を有する緻密な金属酸化物含有層が得られうる。例えば、酸素濃度が0.1体積%以上であることにより、不飽和カルボン酸金属塩からの金属酸化物の生成が低温で安定に行われうる。また、酸素濃度が50体積%以下であることにより、過剰な酸素による過酸化物等の不安定物質の副生が防がれうる。
熱処理工程を行う際の雰囲気中の水分濃度は、特段の制限はないが、不飽和カルボン酸金属塩からの金属酸化物の生成に大きな影響を与えると考えられる。加水分解反応における反応物質としての役目として、水が重要であるからである。具体的な水分濃度は、25℃条件時の湿度として、通常1%を超え、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは30%以上であり、一方、通常80%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下である。水分濃度がこの範囲にあることにより、より良好な特性を有する緻密な金属酸化物含有層が得られうる。例えば、湿度が1%を超えることにより、不飽和カルボン酸金属塩からの金属酸化物の生成が低温で安定に行われうる。また、湿度が80%以下であることにより、不飽和カルボン酸金属塩を含有するインクが、基材上に、不均一に塗布されることが防がれうる。本明細書において25℃条件時の湿度とは、雰囲気を25℃に調整した際の相対湿度のことを指す。
なお、熱処理工程において、必ずしも全ての不飽和カルボン酸金属塩が金属酸化物に変化する必要はない。具体的には、不飽和カルボン酸金属塩のうち、通常60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上が、金属酸化物に変化すればよい。60モル%以上の不飽和カルボン酸金属塩が金属酸化物に変化すれば、得られた金属酸化物含有層を中間層として用いた際に、電気的特性の高い電子デバイスとすることができる。なお、本発明に係る不飽和カルボン酸金属塩のうち金属酸化物に変化したものの割合は、赤外分光法(IR)により定量することができる。また、生成物中の金属酸化物の割合は、紫外可視吸収スペクトル測定法、及びX線光電子分光法(XPS又はESCA)により定量することができる。
<1−2−6.金属酸化物含有層の特徴>
上記方法に従うと、緻密な金属酸化物含有層を形成することができる。そのため、金属酸化物含有層上に第2の活性層を塗布法により形成する際に、第2の活性層形成用インクが金属酸化物含有層を透過することがなくなり、金属酸化物含有層の下方に形成される第1の活性層を浸食することがなく、簡便に電気的特性の高い光電変換素子を提供することが可能となる。
上述の理由により、金属酸化物含有層の膜厚に対する平均粗さの割合は、10%未満であることが好ましく、9%以下であることがさらに好ましく、8%以下であることが特に好ましい。なお、膜厚及び平均粗さは、接触型膜厚測定装置としては、例えば、触針式表面形状測定器Dektak150(アルバック社製)、または、非接触型膜厚測定装置としては、例えば、形状測定レーザマイクロスコープVK−X200(キーエンス社製)を用いて、測定することができる。
また、上記方法により形成される金属酸化物含有層は、金属酸化物が、極端な特定の結晶配向性を持たない傾向がある。通常、薄膜は単結晶でなく、多結晶であり、酸化亜鉛を例にすると、酸化亜鉛はウルツ鉱型の結晶構造を取りやすく、スパッタリング法等の乾式成膜法や電気分解法により酸化亜鉛層を形成すると、c軸配向性の強い多結晶構造をとりやすくなる傾向がある。しかしながら、c軸配向性の強い多結晶構造の場合、電子移動度は高くなる傾向があるものの、熱、湿度等の外気の環境に対する耐久性が弱い傾向が見受けられる。しかしながら、上記の方法により形成された酸化亜鉛含有層の場合、極端に特定の結晶配向性を持たない多結晶構造をとるために、外気の環境に対する耐久性が向上するものと考えられる。
具体的には、酸化亜鉛含有層のX線回折(XRD)法(out of plane測定)において(002)面の2θピークの半値幅は、1°以上であることが好ましく、1.1°以上であることがさらに好ましく、1.2°以上であることが特に好ましく、一方、5°以下であることが好ましく、4°以下であることがさらに好ましく、3.5°以下であることが特に好ましい。上記の結晶構造を有する酸化亜鉛含有層を中間層として用いることで、光電変換素子の変換効率と耐久性を向上させることができるものと考えられる。
また、上記方法により得られた金属酸化物含有層は、適度な硬さを有する傾向がある。光電変換素子の工業的に製造する場合、ロール・ツー・ロール方式で素子を構成する各層を形成することが考えられるが、ロール・ツー・ロール方式の場合、ロールの巻き取りの際に、層の形成面が損傷する可能性がある。この場合、製造される光電変換素子は良好な変換効率が得られない場合が想定される。しかしながら、上記方法により得られた金属酸化物含有層は適度な硬さを有するために、ロールの巻き取りの際に、形成されている金属酸化物含有層が損傷するのを防ぐことができる。
金属酸化物含有層の硬度は、鉛筆引っかき硬度試験(例えば、JIS K5600−5−4(1999年))や、接触型膜厚測定装置(例えば、触針式表面形状測定器Dektak150(アルバック社製))を用いた、カンチレバー針による引っかき硬度試験等で調べることができる。なお、上記の理由により、接触型膜厚測定装置(触針式表面形状測定器Dektak150)を用いたカンチレバー針による引っかき硬度試験によって測定された金属酸化物含有層の耐久触針圧は、5.0mg以上であることが好ましく、10.0mg以上であることがさらに好ましく、15.0mg以上であることが特に好ましい。なお、別の測定装置を用いて得られた測定値をDektak150のカンチレバー針の耐久触針圧に換算した場合に、金属酸化物含有層の耐久触針圧は10000mg以下であることが好ましく、5000mg以下であることがさらに好ましい。
金属酸化物含有層中の金属酸化物の割合は、通常、10質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが殊更好ましく、80%質量以上であることが特に好ましく、一方、100質量%以下である。また、金属酸化物含有層は、金属酸化以外の化合物を含有していてもよい。具体的には、不飽和カルボン酸金属塩の分解物や、それらの重合体等が挙げられる。また、金属酸化物含有層には、不純物がドーピングされていてもよい。
<1−3.第1の活性層103、第2の活性層105>
第1の活性層103及び第2の活性層105は、それぞれ、光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む。p型半導体化合物とは、p型半導体材料として働く化合物であり、n型半導体化合物とは、n型半導体材料として働く化合物である。光電変換素子109が光を受けると、光が第1の活性層103及び第2の活性層105に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気が下部電極101及び上部電極107から取り出される。
第1の活性層103及び第2の活性層105の層構成は、p型半導体化合物層とn型半導体化合物層とが積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型、p型半導体化合物層と、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)と、n型半導体化合物層とが積層されたもの等が挙げられる。なかでも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型が好ましい。
以下、代表例として、第1の活性層103及び第2の活性層105が共に、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型の活性層である場合について説明する。
本発明において、第1の活性層103及び第2の活性層105は、生産性を向上させるために、塗布法により形成することが好ましい。特に、第2の活性層105を、塗布法で形成する場合、第2の活性層105の下方に形成される金属酸化物含有層を含む中間層104に第2の活性層105の溶媒が透過してしまい第1の活性層103を浸食してしまう可能性がある。しかしながら、本発明においては、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成させることにより得られる金属酸化物含有層は緻密な膜となるために、第2の活性層105を形成するための溶媒が透過しにくい。そのため、第2の活性層105を簡便な塗布法により形成しても、変換効率の高い光電変換素子を提供することができる。
塗布法は、任意の方法を用いることができ、例えば、活性層形成用インクを用いて、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。
活性層形成用インクは、p型半導体化合物と、n型半導体化合物と、溶媒とを含むことが好ましい。
溶媒は、特段の制限はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
p型半導体化合物及びn型半導体化合物は後述するp型の半導体化合物及びn型の半導体化合物が挙げられる。
第1の活性層103及び第2の活性層105の膜厚は、特段の制限はないが、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、通常10nm以上、好ましくは50nm以上である。一方、各内部抵抗が小さくなると共に、下部電極101と中間層104との距離、及び中間層104と上部電極107との距離が離れすぎず、良好な電荷の拡散を可能にするために、各活性層の膜厚は、通常1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。
第1の活性層103及び第2の活性層105の膜厚は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
第1の活性層103及び第2の活性層105を形成するためのp型半導体化合物及びn型の半導体化合物は後述するp型半導体化合物及びn型の半導体化合物が挙げられるが、入射光を透過損失することなく、変換効率を向上させるために、第1の活性層103及び第2の活性層105は互いに異なる吸収波長を有することが好ましい。具体的には、第1の活性層103及び第2の活性層105は異なる吸収波長を有するp型半導体化合物及び/又はn型半導体化合物を用いて形成することが好ましい。
なお、本明細書において「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷(電子又は正孔)がどれだけ速く(又は多く)移動されうるかを示す指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」は、室温におけるキャリア移動度が通常1.0x10-6cm2/V・s以上、好ましくは1.0x10-5cm2/V・s以上、より好ましくは5.0x10-5cm2/V・s以上、さらに好ましくは1.0x10-4cm2/V・s以上であることが望ましい。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性の測定、又はタイムオブフライト法等により測定できる。また、本発明に係る半導体層の特性としては、室温におけるキャリア移動度が1.0x10-6cm2/V・s以上、好ましくは1.0x10-5cm2/V・s以上、より好ましくは5.0x10-5cm2/V・s以上、さらに好ましくは1.0x10-4cm2/V・s以上であることが望ましい。
<1−3−1.p型半導体化合物>
p型半導体化合物は、特に限定はないが、低分子有機半導体化合物と高分子有機半導体化合物とが挙げられるが、第1の活性層103及び第2の活性層105を塗布法により容易に形成するために、高分子有機半導体化合物を用いることが好ましい。
高分子有機半導体化合物は、特段の制限はないが、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のポリマー半導体;等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体ポリマーも挙げられる。共役ポリマーとしては、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻,2007)、Materials Science and Engineering 2001,32,1.、Pure Appl.Chem. 2002,74,2031.、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻,2009)等の公知文献に記載されたポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るポリマーを用いることができる。p型半導体化合物として用いられる高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
高分子有機半導体化合物のモノマー骨格及びモノマーの置換基は、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位等を制御するために選択することができる。また、高分子有機半導体化合物が有機溶媒に可溶であることは、光電変換素子を作製する際に塗布法により活性層を形成しうる点で好ましい。高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
Figure 2015046596
Figure 2015046596
なかでも好ましくは、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体である。なお、第1の活性層103及び/又は第2の活性層105は、複数の高分子半導体化合物を含んで形成されていてもよい。
p型半導体化合物のHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無く、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
p型半導体化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
<1−3−2.n型半導体化合物>
n型半導体化合物は、特段の制限はないが、フラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ等が挙げられる。
その中でも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドがより好ましく、フラーレン化合物が特に好ましい。好ましいフラーレン化合物としては、PC60BM及びPC70BMが挙げられる。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
<1−4.基材108>
光電変換素子109は、通常は支持体となる基材108を有する。
基材108の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材108の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料、及びフレキシブル基材等が挙げられる。フレキシブル基材の具体例としては、限定されるわけではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル又はポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料(樹脂基材);紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属箔に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料が挙げられる。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
基材108の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。
また、基材108の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材の膜厚が5μm以上であることは、光電変換素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ質量が重くならないために好ましい。基材108の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材108の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材108の膜厚が0.5cm以下であることは、質量が重くならないために好ましい。
<1−5.一対の電極(下部電極101、上部電極107)>
下部電極101及び上部電極107は、一方の電極が光吸収により生じた正孔を捕集するアノードであり、他方の電極が電子を捕集するカソードである。
従って、下部電極101がアノードの場合、上部電極107はカソードであり、下部電極101がカソードの場合、上部電極107はアノードである。
一対の電極は、いずれか一方の電極が透光性を有していればよく、両方の電極が透光性を有していてもよい。なお、透光性を有するとは、太陽光が40%以上透過することを指す。少なくともどちらか一方の電極が透光性を有することで、光が電極を透過し、活性層に到達することができる。なお、光の透過性は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U−4100)により測定することができる。
アノードは、一般には仕事関数がカソードよりも高い導電性材料で構成され、第1の活性層103及び/又は第2の活性層105で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノードの材料は、特段の制限はないが、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化チタン、又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。これらの物質は高い仕事関数を有するとともに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、アルミニウムやマグネシウム等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。なお、アノードを透光性を有する電極とする場合、ITO、酸化亜鉛又は酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。また、透光性を有するアノードを形成するために、メッシュ状の電極構成にしてもよい。
アノードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
アノードのシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。シート抵抗は、抵抗率計(例えば、三菱化学アナリテック社製ロレスタGP)を用いて求めることができる。
アノードの形成方法としては、真空蒸着法若しくはスパッタリング法等の乾式成膜法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する塗布法が挙げられる。
カソードは、一般には仕事関数がアノードよりも高い値を有する導電性材料で構成され、第1の活性層103及び/又は第2の活性層105で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
カソードの材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料であるため、好ましい。カソードについてもアノードと同様に、電子取り出し層としてチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、カソードに適した高い仕事関数を有する材料を用いることもできる。電極保護の観点から、カソードの材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム若しくはインジウム等の金属、又は酸化インジウムスズ等のこれらの金属を用いた合金である。また、カソードを透光性を有する電極とする場合、特段の制限はないが、ITO、酸化亜鉛又は酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物と、薄い金属層とを積層させて形成することができる。また、透光性を有するカソードを形成するために、メッシュ状の電極構成にしてもよい。
カソードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
カソードのシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソードの形成方法としては、真空蒸着法若しくはスパッタリング法等の乾式成膜法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する塗布等がある。
さらに、アノード及びカソードは、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、アノード及びカソードに対して表面処理を行うことにより、電気的特性やぬれ特性等を改良してもよい。
<1−6.電子取り出し層102、正孔取り出し層106)>
光電変換素子109は、カソードと第1の活性層103との間に電子取り出し層102を有していてもよい。また光電変換素子109は、第2の活性層105とアノードとの間に正孔取り出し層106を有していてもよい。
電子取り出し層102に使用する材料は、第1の活性層103及び/又は第2の活性層105からカソードへ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物は、特段の制限はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、又は酸化インジウム等のn型半導体である金属酸化物が挙げられる。これらのなかでも、酸化亜鉛、酸化チタン又は酸化インジウムであることが好ましく、酸化亜鉛が特に好ましい。
有機化合物は、特段の制限はないが、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。
電子取り出し層102の形成方法は、特段の制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、塗布法により形成することができる。
塗布法は、任意の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。また、これらの方法の中で2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。なお、塗布法により正孔取り出し層106を形成する場合、インクはさらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び乾燥工程での塗布むら等の発生を抑制することができる。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
n型半導体である金属酸化物を用いて、電子取り出し層102を形成する場合、上述した不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成する方法により電子取り出し層102を形成してもよい。
電子取り出し層102は、単層であってもよいし、積層であってもよい。
電子取り出し層102の全体の膜厚は、特段の制限はないが、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。一方、通常1μm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは200nm以下である。電子取り出し層102の膜厚が上記の範囲内であれば、電子取り出し機能が良好になる傾向がある。
正孔取り出し層106に使用する材料は、第1の活性層103及び/又は第2の活性層105からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。
具体的に、正孔取り出し層106に使用できる材料は、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及びヨウ素のうち少なくとも一方等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物;ナフィオン;、後述するp型半導体化合物;酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物;金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜が挙げられる。これらのなかでも、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであることが好ましく、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)であることが特に好ましい。
正孔取り出し層106は、単層であってもよいし、積層であってもよい。
正孔取り出し層106の膜厚は、特段の制限はないが、通常0.5nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層106の膜厚が上記の範囲であれば、正孔取り出し機能が向上する傾向がある。
正孔取り出し層106の形成方法は、制限の制限はなく、電子取り出し層102の形成方法と同様の方法が挙げられる。
なお、正孔取り出し層106の材料としてPEDOT:PSSを用いる場合、分散液を塗布する方法によって正孔取り出し層106を形成することが好ましい。PEDOT:PSSの分散液としては、ヘレウス社製のCLEVIOS(登録商標)シリーズや、アグファ社製のORGACON(登録商標)シリーズが挙げられる。
金属酸化物を用いて、正孔取り出し層106を形成する場合、上述した不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成する方法により正孔取り出し層106を形成してもよい。
<1−7.光電変換素子の製造方法>
光電変換素子109は、各層について説明した上述の方法に従い、順次積層することにより製造することができる。なお、上部電極107を積層した後に、アニール処理することが好ましい。
アニール処理の温度に特段の制限はないが、各層の密着性を向上させることにより、変換効率を向上させるため、通常50℃以上であり、好ましくは80℃以上であり、一方、通常300℃以下であり、好ましくは280℃以下であり、特に好ましくは250℃以下である。各層間の密着性を向上させることにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることで、活性層内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常180分以下、好ましくは60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
本発明に係る光電変換素子を構成する各層は上述の方法により形成することができるが、各層の形成方式は、シート・ツー・シート(万葉)方式又はロール・ツー・ロール方式が挙げられる。
ロール・ツー・ロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロール・ツー・ロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、シート・ツー・シート方式に比べて量産化に適した生産方式である。
なお、ロール・ツー・ロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロール・ツー・ロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径は、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下であり、通常10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径は、通常4m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下であり、通常1cm以上、好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、更に好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると、以下の各工程で成膜される層が、曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅は、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上であり、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると光電変換素子の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
<1−8.光電変換特性>
光電変換素子109の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子109にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
本発明に係る光電変換素子の光電変換効率は、特段の制限はないが、通常1%以上、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、光電変換素子の耐久性を測定する方法としては、光電変換素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
光電変換素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
<2.太陽電池>
上述の実施形態に係る光電変換素子109は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図2は、本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、光電変換素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、薄膜太陽電池は、通常、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、光電変換素子6が発電する。なお、薄膜太陽電池は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、各構成部材を任意で選択して設ければよい。
薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2011/016430号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載のものを使用することができる。
本発明に係る太陽電池、特に上述した薄膜太陽電池14の用途に特段の制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等が挙げられる。
本発明に係る太陽電池、特に薄膜太陽電池はそのまま用いてもよいし、例えば基材上に太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。例えば、図3に示すように、基材12上に薄膜太陽電池14を備えた太陽電池モジュール13として、使用場所に設置して用いることができる。基材12については、周知技術を用いることができ、例えば、国際公開第2011/016430号又は特開2012−191194号公報等に記載のものを用いることができる。例えば、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製することができる。
<3.電界発光素子(LED)>
また、タンデム型の電子デバイスの別の実施形態として、タンデム型の電界発光素子について説明する。電界発光素子は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーによって蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
以下に、本発明に係るタンデム型の電界発光素子について、図面を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るタンデム型の電界発光素子41は、基材31上に、下部電極32と、電子注入層33と、電子輸送層34と、第1の機能性半導体層である第1の発光層35と、中間層36と、第2の機能性半導体層である第2の発光層37と、正孔輸送層38と、正孔注入層39と、上部電極40と、を有する。なお、本発明に係る電界発光素子は図1の構成及び積層順に限定されるわけではない。例えば、基板31上、に下部電極32と、正孔注入層39と、正孔輸送層38と、第1の発光層35と、中間層36と、第2の発光層37と、電子輸送層34と、電子注入層33と、上部電極40と、をこの順に有する構成であってもよい。
各層は、図4の構成に対して逆の積層順であってもよい。また、電子注入層33と、電子輸送層34と、正孔輸送層38と、正孔注入層39とは、必須の構成ではなく、任意で設ければよい。なお、下部電極32及び上部電極40を合わせて一対の電極と称す場合がある。
<3−1.中間層36>
中間層36は、第1の発光層35と、第2の発光層37との間に位置する層であり、第1の発光層と第2の発光層とを電気的に接続する層である。中間層は、電子輸送機能を有する層、又は正孔輸送機能を有する層の単層構造であってもよいが、電子輸送機能を有する層及び正孔輸送機能を有する層の積層構造であることが好ましい。
中間層36の膜厚は、特段の制限はないが、発光効率を向上させるために、0.5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることが特に好ましく、一方、1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
なお、中間層36を構成する電子輸送機能を有する層は、後述する電子輸送層34に挙げる材料及び形成方法により形成することができ、正孔輸送機能を有する層は、後述する正孔輸送層38に挙げる材料及び形成方法により形成することができるが、本発明において、電子輸送機能を有する層及び正孔輸送機能を有する層の少なくとも一方は、金属酸化物含有層を含む。即ち、本発明において、中間層36は、少なくとも金属酸化物含有層を含む。なお、中間層36が含む金属酸化物含有層は上述の<1−2.金属酸化物含有層>の項目を参照して形成することができる。すなわち、式(I)で表わされる不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成することによって形成することができる。
<3−2.第1の発光層35及び第2の発光層37>
第1の発光層35及び第2の発光層37は、電子と正孔との結合により発光を起こす層である。
第1の発光層35及び第2の発光層37を形成する材料は、特段の制限はなく、例えば、特開昭63−295695号公報に記載の8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体、特開平4−308688号公報に記載のビススチリルアリーレン誘導体、特開平8−12600号公報又は特開平11−312588号公報に記載のアントラセン誘導体が挙げられる。
第1の発光層35及び第2の発光層37の形成方法は、特段の制限はなく、乾式成膜法及び塗布法を用いることができるが、少なくとも第2の発光層37は、塗布法により形成されることが好ましい。第2の発光層を塗布法により形成する場合、第2の発光層形成用インクにより第1の発光層が浸食される可能性があるが、<1−2.金属酸化物含有層>の項目で説明したように、第2の発光層37と第1の発光層35との間に設けられる中間層36の金属酸化物含有層の膜は緻密な膜であるために、第2の発光層形成用インクが金属酸化物含有層を透過しない。そのため、第1の発光層35が、第2の発光層形成用インクにより浸食されるのを防ぐことができ、発光効率の高い電界発光素子を簡便に提供することができる。
塗布法は、任意の方法を用いることができ、例えば、発光層形成用インクを用いて、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。
発光層形成用インクは、上記の発光材料と、溶媒とを含むことが好ましい。
溶媒は、特段の制限はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、電界発光素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、
第1の発光層35及び/又は第2の発光層は、上述の発光層材料に加えて別の色素がドープされていてもよい。例えば、公知文献J.Appl.Phys. 1989,65,3610.に記載されるように、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素がドープされていてもよい。
また、電界発光素子の駆動寿命を改善する目的においても、発光層材料をホスト材料として、蛍光色素をドープすることは有効である。例えば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体を、ホスト材料に対して0.1〜10質量%ドープすることにより、素子の発光特性、特に駆動安定性を大きく向上させることができる。
蛍光色素以外には、燐光性金属錯体を上記発光層ホスト材料に対して1〜30質量%ドープすることにより、素子の発光効率を大きく改善することも行われる。この場合、燐光性金属錯体としては、中心金属としてイリジウムや白金等を有し配位子としてフェニルピリジン、フェニルイソキノリン等を有するものが使用できる。
上記発光層中に正孔輸送材料を混合させることも、特に素子の駆動安定性向上目的のためには有効である。混合比率としては、5質量%以上50質量%以下が好ましい範囲である。
第1の発光層35及び第2の発光層37の膜厚は特段の制限はないが、3nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、一方、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
なお、第1の発光層35と第2の発光層37は、同一材料により形成されていてもよいし、異なる材料により形成されていてもよい。また、第1の発光層35の膜厚と第2の発光層37の膜厚は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
<3−3.基材31>
基材31は、電界発光素子の支持体となるものであり、その材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材31の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料、及びフレキシブル基材が挙げられる。本発明において、フレキシブル基材とは曲率半径が通常、0.1mm以上であり、10000mm以下の基材である。なお、フレキシブルな電子デバイスを製造する場合は、屈曲性と支持体としての特性を両立するために、曲率半径が0.3mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがさらに好ましく、一方で、3000mm以下であることが好ましく、1000mm以下であることがさらに好ましい。なお、曲率半径は、ひずみや割れ等の破壊が現れないところまで曲げた基材を、共焦点顕微鏡(例えば、キーエンス社製形状測定レーザマイクロスコープVK−X200)で求めることができる。フレキシブル基材の具体例としては、限定されるわけではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂等の有機材料(樹脂基材);紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属箔に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料が挙げられる。
なお、上述の基材の中でも、本発明に係る金属酸化物含有層を含む中間層を製造する方法は、フレキシブル基材に用いる際に特に効果的である。例えば、金属酸化物含有層を従来の方法で製造する場合、高温プロセスが必要になるために、ガラス転移温度の低い樹脂基材を使用することは極めて困難である。一方で、本発明は、低温プロセスで、金属酸化物含有層の製造が可能であるために、ガラス転移温度の低い樹脂基材にも適用することができる。また、上述の金属箔に絶縁性を付与した複合材料を基材として用いる場合も、その膜厚は非常に小さいために、従来のように、高温プロセスで金属酸化物含有層を製造すると、基材に歪みが発生してしまう。そのため、金属箔に絶縁性を付与した複合材料を基材として用いる場合も、本発明は極めて有効である。更に、本発明は、上記の通り、フレキシブル基材を使用することができるために、ロールツゥーロール方式による電子デバイスの製造が可能となり、生産性が向上する。
樹脂基材を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。すなわち、基材のガスバリア性が低過ぎると、基材を通過する外気により電界発光素子が劣化することがあるので望ましくない。このため、樹脂基材を使用する場合には、少なくとも一方の板面に緻密なシリコン酸化膜等を設ける等の方法により、ガスバリア性を確保するのが望ましい。
ガラスとしては、ソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラスが挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
基材31の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。
また、基材31の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材の膜厚が5μm以上であることは、電界発光素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ質量が重くならないために好ましい。
基材31の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材31の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材31の膜厚が0.5cm以下であることは、質量が重くならないために好ましい。
<3−4.一対の電極(下部電極32、上部電極40)>
下部電極32及び上部電極40は、一方の電極が電子を供給するための陰極であり、他方の電極が正孔を供給するための陽極である。従って、下部電極32が陰極の場合は上部電極40は陽極であり、下部電極32が陽極の場合は上部電極40は陰極である。なお、上部電極32及び下部電極40のうち少なくとも一方の電極は、透明性を有することが好ましい。
陰極は、特段の制限はないが、効率よく電子の供給を行うために、仕事関数の低い金属で形成されることが好ましい。例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はこれらの合金が用いられる。具体的としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極の形成方法は特段の制限はなく、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式成膜法により行われる。また、銀等の金属微粒子を適当なバインダー樹脂溶液に分散し、塗布する塗布法により形成することもできる。なお、陽極は単層でもよいし、積層であってもよい。
陰極の膜厚は、特段の制限はなく、通常5nm以上であり、好ましくは10nm以上であり、一方、通常1000nm以下であり、好ましくは500nm以下である。
陰極に透明性が必要とされる場合、可視光の透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。なお、可視光透過率は、陰極を形成する材料と膜厚等を適宜選択して調整すればよい。
また、陰極は仕事関数が比較的低い材料で形成されるために、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層させることで、素子の安定性を向上させることができる。このような金属層の材料は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられ、仕事関数を考慮して適宜選択すればよい。
陽極は、特段の制限はなく、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;酸化インジウム、酸化スズ等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック;又はポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子が挙げられる。
陽極の形成方法は特段の制限はなく、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式成膜法により行われる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を適当なバインダー樹脂溶液に分散し、塗布法により形成することもできる。さらに、導電性高分子を用いる場合には、電解重合又は塗布法により形成することもできる。また、陽極は単層でもよいし、積層であってもよい。
陽極の膜厚は、特段の制限はなく、通常5nm以上であり、好ましくは10nm以上であり、一方、通常1000nm以下であり、好ましくは500nm以下である。
陽極に透明性が必要とされる場合、可視光の透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。なお、可視光透過率は、陽極を形成する材料と膜厚等を適宜選択して調整すればよい。
<3−5.電子注入層33>
電子注入層33は、陰極からの電子注入を容易にする機能を有する。
電子注入層33を形成する材料は、特段の制限はないが、電子親和力が大きい化合物が好ましい。例えば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体、フラーレン誘導体、金属酸化物等が挙げられる。
電子注入層33の膜厚は、特段の制限はないが、電子注入機能を向上させるために、3nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、一方、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
電子注入層33の形成方法は、特段の制限はないが、塗布法、又は真空蒸着法等の乾式成膜法が挙げられる。また、金属酸化物を用いて、電子注入層を形成する場合、上述のような不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成する方法により形成してもよい。
<3−6.電子輸送層34>
電界発光素子の発光効率をさらに向上させるために、電子注入層33と第1の発光層35との間に電子輸送層34を設けてもよい。
電子輸送層34を形成するための材料は、特段の制限はないが、陰極からの電子注入が容易で、さらに電子の輸送性が高ものが好ましい。例えば、8-ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、スターバースト型ベンズイミダゾール化合物、シロール化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。また、金属酸化物を用いることもできる。
また、電子輸送層34の導電性を改善させるために、電子輸送層34は、さらに、アルカリ金属原子を含んでいてもよい。導電性が改善される理由は、電子輸送性層材料がアルカリ金属原子との反応により還元され、電荷キャリアとなるアニオンラジカルを効率よく生成するためであると考えられる。なお、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。また、電子輸送層34中におけるアルカリ金属原子の含有量は、電子輸送層34の全量に対して、1質量%以上50質量%であることが好ましい。
電子輸送層34の膜厚は、特段の制限はないが、電子輸送機能を向上させるために、3nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、一方、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
電子輸送層34の形成方法は、特段の制限はないが、塗布法、又は真空蒸着法等の乾式成膜法が挙げられる。上述のように、アルカリ金属を含有する電子輸送層34を形成する方法は、特段の制限はないが、電子輸送材料及びアルカリ金属原子を共蒸着することにより形成することができる。また、金属酸化物を用いて電子輸送層を形成する場合、上述のような不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成する方法により形成してもよい。
<3−7.正孔輸送層38>
正孔輸送層38を形成するための材料は、注入された正孔を輸送することができる限りにおいて、特段の制限はないが、正孔注入層39を形成する材料のイオン化ポテンシャルとの差が小さく、正孔移動度が大きいものが好ましい。また、耐熱性向上のためにガラス転移温度(Tg)として75℃以上の値を有する材料が望ましい。
このような正孔輸送材料としては、例えば、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4”-トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin. 1997,72−74,985.)、トリフェニルアミンの四量体からなる芳香族アミン化合物(Chem.Commun. 1996,2175.)、2,2',7,7'-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals 1997,91,209.)が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。また、金属酸化物を用いることもできる。
正孔輸送層38の膜厚は、特段の制限はないが、3nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、一方、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。
正孔輸送層38の形成方法は、特段の制限はなく、塗布法、又は真空蒸着法等の乾式成膜法又は塗布法により形成することができる。塗布法の場合は、上述のような正孔輸送層材料と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤等の添加剤とを添加し、溶解してインクを調製し、所望の層上に塗布することにより形成することができる。バインダー樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はポリエステルが挙げられる。なお、バインダー樹脂は、その添加量が多すぎると、正孔移動度が低下する可能性があるために、正孔輸送層38全量に対して、50質量%以下であることが好ましい。
なお、金属酸化物を成功輸送層38の材料として使用する場合、上述の通り、不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成させて形成してもよい。
<3−8.正孔注入層39>
正孔注入層39は、特段の制限はないが、注入された正孔を効率よく輸送し、さらには正孔輸送層との正孔注入障壁が小さい材料であることが好ましい。そのため、正孔注入材料のイオン化ポテンシャルと陽極の仕事関数との差が小さい材料であることが好ましい。また耐熱性の高い材料であることが好ましく、融点が200℃以上であり、ガラス転移温度が75℃以上であることが好ましい。
このような材料は、例えば、特開昭63−295695号公報に記載のポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物、特開平4−308688号公報に記載のスターバースト型芳香族トリアミン等の有機化合物、特開平8−31573号公報に記載のスパッタ・カーボン膜、公知の「第43回応用物理学関係連合講演会、27a−SY−9、1996年」に記載の酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化モリブデン等の金属酸化物が挙げられる。
なお、ポルフィリン化合物及びフタロシアニン化合物は、中心金属を有するものであってもよいし、中心金属を有さないものであってもよい。フタロシアニン化合物の具体例としては、29H,31H−フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、亜鉛(II)フタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅(II)−4,4',4'',4'''−テトラアザ−29H,31H-フタロシアニンが挙げられる。
また、正孔注入層39の形成材料として、正孔輸送性を有する高分子に電子受容性化合物を混合した系が挙げられる。このような正孔輸送性を有する高分子は、ポリチオフェン、ポリアニリン、芳香族アミン含有ポリエーテル等が挙げられる。また、電子受容性化合物は、特段の制限はないが、下記化合物群から選ばれる化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
Figure 2015046596
正孔注入層39の形成方法は、特段の制限はないが、昇華性を有する化合物の場合には真空蒸着法、溶媒に可溶な化合物の場合にはスピンコートやインクジェット等の塗布法、無機物の場合にはさらにスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法等を用いることができる。なお、金属酸化物を用いる場合は、上述のような不飽和カルボン酸金属塩から金属酸化物を生成する方法により形成してもよい。
正孔注入層39の膜厚は、特段の制限はないが、3nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、一方、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明の電界発光素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造の素子のいずれにおいても適用することができる。
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
<亜鉛化合物の分解温度(Td)>
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TG−DTA6300を用いた、示差熱質量同時分析により、各種亜鉛化合物の粉末状態での分解温度を測定した。測定条件は以下の通りである。
試料容器: アルミニウム製試料容器
雰囲気: 大気 200mL/分
昇温速度: 10℃/分
温度範囲: 25℃〜600℃
測定された分解温度は以下の通りであった。
ジアクリル酸亜鉛: 228℃
酢酸亜鉛二水和物: 242℃ (脱水89℃)
亜鉛アセチルアセトナート錯体: 116℃
以上より、ジカルボン酸亜鉛の分解温度は200℃以上300℃未満であり、亜鉛アセチルアセトナート錯体よりも高いことが分かった。このように、水や熱等の外的刺激を積極的に加える制御を行わないと、ジカルボン酸亜鉛は酸化亜鉛等に変換されないことが分かった。
<実施例1:インク及び酸化亜鉛含有層の作製、膜厚及び粗さ測定、並びに薄膜X線回折
(XRD)測定>
[実施例1−1]
ジアクリル酸亜鉛(日本触媒社製,800mg,3.86mmol)をエタノール(和光純薬工業社製,11.1mL)とエチレングリコール(和光純薬工業社製,0.4mL)に溶解することで、無色透明のインク(S1)を調製した。
次に、155nmの厚みでインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を、アセトンを用いた超音波洗浄、イソプロパノールを用いた超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローを行った。
洗浄した基板に、調製したインク(S1)を滴下後、スピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、制御していない大気雰囲気下(20〜25℃、湿度30〜35%)、3000rpm、30秒間の条件でスピンコートした。その後、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、酸化亜鉛含有層を作製した。
[膜厚及び粗さ測定]
得られた酸化亜鉛含有層について、触針式表面形状測定器Dektak150(アルバック社製)を用い、以下の測定条件で、膜厚を測定した。5回の測定値の平均を結果とし、表1に示す。また、同じ測定条件で、1000μm間の平均粗さ(Ra)を測定した。5回の測定値の平均を結果とし、表1に示す。
触針圧:1mg
触針サイズ:Radius12.5μm
測定距離:1000μm
測定時間:60秒間
測定モード:標準
[薄膜X線回折(XRD)測定]
得られた酸化亜鉛含有層について、以下の条件で薄膜X線回折(XRD)測定を行った。結果を図5に示す。なお、図5においては、各スペクトルの判別を容易とするために、各スペクトルのベースラインの位置がずらされている。
また、薄膜X線回折(XRD)スペクトルを、横軸(2θ)方向に20°〜50°の範囲で拡大し、34.3°を、ピークトップにして半価幅を求めた。結果を図6及び表1に示す。
(測定条件)
測定装置 リガク社製RINT2000
光学系 斜入射X線回折光学系
測定条件 out of plane法
X線出力 50kV、250mA(CuKα)
走査軸 2θ
入射角(θ) 0.2°
走査範囲(2θ) 2−60°
走査速度 3°/min
[比較例1−1]
酢酸亜鉛二水和物(和光純薬工業社製,1760mg,8.0mmol)を、エタノールアミン(アルドリッチ社製,0.50mL)及び2−メトキシエタノール(アルドリッチ社製,10mL)に溶解させ、60℃で1時間攪拌することで、酸化亜鉛の前駆溶液である無色透明のインク(S2)を調製した。このインク(S2)を実施例1−1と同様に、スピンコートし、大気雰囲気下、150℃、60分間の加熱処理を行うことで、酸化亜鉛含有層を作製した。実施例1−1と同様にして、膜厚、平均粗さ(Ra)、薄膜X線回折(XRD)測定を行った。結果を表1及び図5に示す。
[比較例1−2]
亜鉛アセチルアセトナート錯体(同仁化学研究所社製,400mg,1.42mmol)をエタノール(和光純薬工業社製,10mL)に溶解することで、無色透明のインク(S3)を調製した。このインク(S3)を実施例1−1と同様に、スピンコートし、大気雰囲気下、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、酸化亜鉛含有層を作製した。実施例1−1と同様にして、膜厚、平均粗さ(Ra)、薄膜X線回折(XRD)測定を行った。結果を表1及び図5に示す。
[比較例1−3]
酸化亜鉛ブチルグリコール分散液(アドルリッチ社製、カタログナンバー721107)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、関東化学社製)により5倍希釈することで、白色のインク(S4)を調製した。このインク(S4)を実施例1−1と同様に、スピンコートし、大気雰囲気下、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、酸化亜鉛含有層を作製した。実施例1−1と同様にして、膜厚、平均粗さ(Ra)、薄膜X線回折(XRD)測定を行った。結果を表1及び図5に示す。
また、薄膜X線回折(XRD)スペクトルを、横軸(2θ)方向に20°〜50°の範囲で拡大し、34.7°を、ピークトップにして半価幅を求めた。結果を図7及び表1に示す。
[比較例1−4]
洗浄した基板に、アルゴン雰囲気下(アルゴン流量20sccm)、酸化亜鉛(ZnO)のターゲット(高純度化学研究所社製、99.99%)を用い、RFスパッタリング法によって、半導体層を作製した。実施例1−1と同様にして、膜厚、平均粗さ(Ra)、薄膜X線回折(XRD)測定を行った。結果を表1及び図5に示す。
また、薄膜X線回折(XRD)スペクトルを、横軸(2θ)方向に20°〜50°の範囲で拡大し、34.6°を、ピークトップにして半価幅を求めた。結果を図8及び表1に示す。
Figure 2015046596
一般的に、塗布法により形成された膜の平均粗さは、乾式成膜法により形成された膜の平均粗さよりも大きくなると考えられているが、実施例1−1に示すように、塗布法である飽和カルボン酸金属塩を用いて形成した酸化亜鉛含有層の平均粗さは、比較例1−1〜1−3に示される塗布法により形成された膜の平均粗さよりもはるかに小さく、さらには、比較例1−4に示されるような乾式成膜法であるスパッタ法により形成した酸化亜鉛含有層と同等であることが確認できる。
また、スパッタリング法のような乾式成膜法では、c軸配向性が強い多結晶の酸化亜鉛含有層が生成するのに対して、実施例1−1により得られた酸化亜鉛含有層は、(100)、(101)のピークと重なる幅広い(002)ピークが測定されているように、特定の結晶配向性を極端に持たない多結晶の酸化亜鉛含有層が生成できる。
以上より、実施例1−1により得られた酸化亜鉛含有層は膜の平均表面粗さが小さい緻密な膜であり、さらには特定の結晶配向性を極端に持たない多結晶膜であることが分かる。よって、このような酸化亜鉛含有層をタンデム型の電子デバイスの中間層に用いることで、電子デバイスの電気的特性を向上させることができ、また、簡便にこのような電子デバイスを製造することが可能となる。
<実施例2:光電変換素子の作製及び評価>
[合成例:コポリマーAの合成]
Figure 2015046596
モノマーとして、公知文献(J.Am.Chem.Soc. 2011,133,10062.)に記載の方法を参考にして得られた1,3−ジブロモ−5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6−(5H)−ジオン(化合物E1,86mg,0.204mmol)、公知文献(J.Am.Chem.Soc. 2011,133,10062.)に記載の方法を参考にして得られた4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−ビス(トリメチルスズ)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール(化合物E2,80mg,0.108mmol)、及び公知文献(Chem.Commun., 2011,47,4920.)に記載の方法を参考にして得られた4,4−ジ−n−オクチル−2,6−ビス(トリメチルスズ)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール(化合物E3,80mg,0.108mmol)を用いて、公知文献(J.Am.Chem.Soc. 2011,133,10062.)に記載の方法を参考にしてコポリマーAを合成した。
コポリマーAの重量平均分子量Mw及びPDIを下記の方法で測定したところ、それぞれ、3.69×105及び9.4であった。
なお、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。分子量分布(PDI)は、Mw/Mnを表す。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は以下の条件で行った。
カラム:PolymerLaboratories GPC用カラム(PLgel MIXED−B 10μm,内径7.5mm,長さ30cm)を2本直列に接続して使用
ポンプ:LC−10AT(島津製作所社製)
オーブン:CTO−10A(島津製作所社製)
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製,RID−10A)及びUV−vis検出
器(島津製作所社製,SPD−10A)
サンプル:試料1mgをクロロホルム(200mg)に溶解させた液1μL
移動相:クロロホルム
流速:1.0mL/min
解析:LC−Solution(島津製作所社製)
[有機活性層形成用インク1の作製]
レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT,Rieke Metals社製)と、C60(Ind)2(フロンティアカーボン社製 NanomSpectra−Q400)とを、質量比1:0.95で、合計濃度が3.5質量%となるように、o−キシレン(和光純薬工業社製)に溶解した。得られた溶液を、窒素雰囲気下、80℃で1時間、スターラーを用いて攪拌混合した。攪拌後の溶液を0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過することにより、有機活性層形成用インク1を作製した。
Figure 2015046596
[有機活性層形成用インク2の作製]
合成例で得られたコポリマーA、及びn型半導体化合物としてC60PCBMとC70PCBMの混合物(フロンティアカーボン社製 NanomSpectra−E123)を、質量比が1:2となるように混合し、混合物が2質量%の濃度となるように窒素雰囲気中でオルトキシレンとテトラリンとの混合溶媒(体積比4:1)に溶解させた。この溶液をホットスターラー上で80℃の温度にて1時間攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過することにより、有機活性層形成用インク2を得た。
Figure 2015046596
[光電変換素子の作製]
[実施例2−1]
実施例1−1と同様にして、無色透明のインク(S1)を調製した。
次に、155nmの厚みでインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を、アセトンを用いた超音波洗浄、イソプロパノールを用いた超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローを行った。
洗浄した基板に、インク(S1)(1mL)を滴下後、スピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、3000rpm、30秒間の条件でスピンコートした。その後、大気雰囲気(湿度11%RH)下、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、厚さ約40nmの酸化亜鉛含有層1からなる電子取り出し層を形成した。
続けて、電子取り出し層上に、有機活性層形成用インク1を、スピンコーターMS−A100(ミカサ社製)を用いて窒素雰囲気下でスピンコートすることで、厚さ約200nmの第1の有機活性層を形成した。
界面活性剤(日信化学工業製,オルフィンEXP4036)を1質量%含有させた、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(ヘレウス社製PEDOT:PSS水性分散液,商品名「CLEVIOS(登録商標) PH」)を、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過した。得られた濾過液を、スピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、第1の有機活性層上に大気中でスピンコートした後、窒素中で150℃、10分間加熱乾燥することで厚さ約100nmのPEDOT:PSS含有層1を形成した。
PEDOT:PSS含有層1上に、再びインク(S1)(1mL)を滴下後、スピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、3000rpm、30秒間の条件でスピンコートした。その後、大気雰囲気(湿度11%RH)下、150℃、10分間の加熱処理を行い、厚さ約40nmの酸化亜鉛含有層2を形成することで、PEDOT:PSS含有層1及び酸化亜鉛含有層2からなる中間層を形成した。
続けて、中間層上に、再び有機活性層形成用インク1を、スピンコーターMS−A100(ミカサ社製)を用いて窒素雰囲気下でスピンコートすることで、厚さ約200nmの第2の有機活性層を形成した。
第2の有機活性層上に、上記のPEDOT:PSS水性分散液の濾過液を、再びスピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、大気中でスピンコートした後、窒素中で150℃、10分間加熱乾燥することで厚さ約100nmのPEDOT:PSS含有層2からなる正孔取り出し層を形成した。
正孔取り出し層上に、厚さ100nmの銀電極を抵抗加熱型真空蒸着法により成膜した後に、ホットプレートを用いて120℃、5分間加熱することによって、5mm角の光電変換素子を作製した。
照射光源としてエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cm2のソーラシミュレータを用い、ソースメータ2400型(ケースレーインスツルメンツ社製)により、作製した光電変換素子の電流電圧特性を4mm角のメタルマスクを付けて測定した。開放電圧Voc[V]、短絡電流密度Jsc[mA/cm2]、形状因子FF、及び光電変換効率PCE[%]の測定結果を表2に示す。
ここで、開放電圧Vocとは、電流値=0(mA/cm2)の際の電圧値(V)であり、短絡電流密度Jscとは、電圧値=0(V)の際の電流密度(mA/cm2)である。形状因子(FF)とは、内部抵抗を表すファクターであり、最大出力点をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = Pmax/Pin×100
= Voc×Jsc×FF/Pin×100
[参考例2−1]
実施例2−1において、酸化亜鉛含有層2、第2の有機活性層、及びPEDOT:PSS含有層2を設けることなく、PEDOT:PSS含有層1を正孔取り出し層として、5mm角の光電変換素子を作製した。具体的には、ITOが積層された基板上に、電子取り出し層(酸化亜鉛含有層1)、第1の有機活性層、正孔取り出し層(PEDOT:PSS含有層1)、銀電極の順に積層して、素子を作製した。
作製した光電変換素子の電流電圧特性を実施例2−1同様に測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2015046596
[比較例2−1]
比較例1−1と同様にして、酸化亜鉛の前駆体溶液である無色透明のインク(S2)を調製した。
このインク(S2)を、大気雰囲気下、スピンコートし、150℃、60分間の加熱処理を行うことで作製した酸化亜鉛含有層を、実施例2−1におけるインク(S1)から作製した酸化亜鉛含有層2の代わりに、中間層を構成する層として用いた。
しかしながら、第2の有機活性層形成時のスピンコートにおいて、第1の有機活性層は、中間層を透過した有機活性層形成用インクにより浸食されており、第1の有機活性層の膜の均一性は失われていた。作製した4つの光電変換素子は、電流電圧特性の結果、全て短絡していた。
[比較例2−2]
比較例1−2と同様にして、無色透明のインク(S3)を調製した。
このインク(S3)を、大気雰囲気下、スピンコートし、150℃、10分間の加熱処理を行うことで作製した酸化亜鉛含有層を、実施例2−1におけるインク(S1)から作製した酸化亜鉛含有層2の代わりに、中間層として用いた。
しかしながら、第2の有機活性層形成時のスピンコートにおいて、第1の有機活性層は、中間層を透過した有機活性層形成用インクにより浸食されており、第1の有機活性層の膜の均一性は失われていた。作製した4つの光電変換素子は、電流電圧特性の結果、全て短絡していた。
[比較例2−3]
比較例1−3と同様にして、白色のインク(S4)を調製した。
このインク(S4)を、大気雰囲気下、スピンコートし、150℃、10分間の加熱処理を行うことで作製した酸化亜鉛含有層を、実施例2−1におけるインク(S1)から作製した酸化亜鉛含有層2の代わりに、中間層として用いた。
しかしながら、第2の有機活性層の形成時のスピンコートにおいて、第1の有機活性層は、中間層を透過した有機活性層形成用インクにより浸食されており、第1の有機活性層の膜の均一性は失われていた。作製した4つの光電変換素子は、電流電圧特性の結果、全て短絡していた。
以上の結果を参照すると、実施例2−1では、不飽和カルボン酸金属塩であるジアクリル酸亜鉛を用いて形成した酸化亜鉛含有層は緻密な膜であるために、第2の活性層を形成する際に、第1の活性層が浸食されるのを防ぐことができ、電気特性に優れたタンデム型の光電変換素子が作製できた。一方、比較例2−1〜2−3では、形成された酸化亜鉛含有層の膜厚に対する平均粗さが大きく、緻密な膜を得ることができなかった。そのため、第2の活性層を形成する際に、第1の活性層が浸食されて、タンデム型の光電変換素子としての特性が得られなかったものと考えられる。
また、実施例2−1に係るタンデム型の光電変換素子は、参考例2−1に係るシングル型の光電変換素子と比較して、開放電圧が約2倍になっていることが分かる。これは、不飽和カルボン酸金属塩により形成された酸化亜鉛含有層を有する中間層が正常に機能できていることを表している。一方、実施例2−1に係るタンデム型の光電変換素子の変換効率は、比較例2−1に係るシングル型の光電変換素子の変換効率よりも低くなっているが、この理由は、実施例2−1において、第1の活性層及び第2の活性層に同一の材料を用いているためであると考えられる。即ち、実施例2−1では、第1の活性層と第2の活性層の吸収波長が同じであるために、変換効率が向上していないが、上述の通り、開放電圧は大幅に向上していることから、第1の活性層と第2の活性層とが異なる吸収波長を有する材料を含んでいる場合、変換効率は大幅に向上するものと考えられる。
[実施例3−1]
実施例1−1及び比較例1−3と同様にして、無色透明のインク(S1)及び白色のインク(S4)を調製した。
次に、155nmの厚みでインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を、アセトンを用いた超音波洗浄、イソプロパノールを用いた超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローを行った。
洗浄した基板に、インク(S4)を、大気雰囲気下、スピンコートし、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、厚さ約50nmの酸化亜鉛含有層1からなる電子取り出し層を形成した。なお、S4から製造した酸化亜鉛含有層は均一な膜でないが、下の層がITO透明導電膜を堆積したガラス基板であるので、溶媒透過を気にすることなく、電子取り出し層に用いることができる。
続けて、電子取り出し層上に、上述の有機活性層形成用インク1を、スピンコーターMS−A100(ミカサ社製)を用いて窒素雰囲気下でスピンコートすることで、厚さ約200nmの第1の有機活性層を形成した。
界面活性剤(日信化学工業製,オルフィンEXP4036)を1質量%含有させた、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(ヘレウス社製PEDOT:PSS水性分散液,商品名「CLEVIOS(登録商標)PH」)を、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過した。得られた濾過液を、スピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、有機活性層1上に大気中でスピンコートした後、窒素中で150℃、10分間加熱乾燥することで厚さ約100nmのPEDOT:PSS含有層を形成した。
PEDOT:PSS含有層上に、インク(S1)(1mL)を滴下後、スピンコーターACT−300DII(アクティブ社製)を用いて、3000rpm、30秒間の条件でスピンコートした。その後、大気雰囲気(湿度10%RH)下、150℃、10分間の加熱処理を行い、厚さ約40nmの酸化亜鉛含有層2を形成することで、PEDOT:PSS含有層及び酸化亜鉛含有層2からなる中間層を形成した。
続けて、中間層上に、上述の有機活性層形成用インク2を、スピンコーターMS−A100(ミカサ社製)を用いて窒素雰囲気下でスピンコートすることで、厚さ約200nmの第2の有機活性層を形成した。
有機活性層2上に、厚さ3nmの三酸化モリブデン(高純度化学研究所社製)を抵抗加熱型真空蒸着法により成膜することによって、三酸化モリブデン層からなる正孔取り出し層を形成した。
正孔取り出し層上に、厚さ80nmの銀電極を抵抗加熱型真空蒸着法により成膜することによって、5mm角の光電変換素子を作製した。
作製した光電変換素子の電流電圧特性を実施例2−1同様に測定した。測定結果を表3に示す。
[参考例2−2]
実施例2−2において、酸化亜鉛含有層1、第1の有機活性層、PEDOT:PSS含有層を設けることなく、酸化亜鉛含有層2を電子取り出し層として、5mm角の光電変換素子を作製した。
作製した光電変換素子の電流電圧特性を実施例2−1同様に測定した。測定結果を表3に示す。
[参考例2−3]
実施例2−2において、酸化亜鉛含有層2、第2の有機活性層、三酸化モリブデン層を設けることなく、PEDOT:PSS含有層を正孔取り出し層として、5mm角の光電変換素子を作製した。
作製した光電変換素子の電流電圧特性を実施例2−1同様に測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2015046596
実施例2−2に係るタンデム型の光電変換素子は、材料が異なる有機活性層各々のシングル素子に相当する参考例2−2及び参考例2−3に係るシングルセル型の光電変換素子の開放電圧をほぼ合算した値になった。これは、不飽和カルボン酸金属塩であるジアクリル酸亜鉛の溶液から製造した酸化亜鉛含有層を有する中間層が良好に機能していることを表している。一方、実施例2−2に係る光電変換素子の変換効率は、参考例2−2に係るシングル型の光電変換素子の変換効率と比較して低下していることが分かる。しかしながら、これは実施例2−2に係るタンデム型の光電変換素子において、第1の有機活性層と第2の有機活性層の吸収波長領域が似ていたために、変換効率が低くなっているものと思われるが、上述の通り、開放電圧は大幅に向上していることを考慮すると、第1の有機活性層及び第2の有機活性層の吸収波長領域を調整することで、大幅な変換効率の上昇が期待できる。
101 下部電極
102 電子取り出し層
103 第1の活性層
104 中間層
105 第2の活性層
106 正孔取り出し層
107 上部電極
108 基材
109 光電変換素子
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
31 基材
32 下部電極
33 電子注入層
34 電子輸送層
35 第1の発光層
36 中間層
37 第2の発光層
38 正孔輸送層
39 正孔注入層
40 上部電極
41 電界発光素子

Claims (10)

  1. 基材上に、少なくとも、下部電極と、第1の機能性半導体層と、金属酸化物含有層を含む中間層と、第2の機能性半導体層と、上部電極と、をこの順に有するタンデム型の電子デバイスの製造方法であって、
    前記金属酸化物含有層は、下記式(I)で表される不飽和カルボン酸金属塩を含有するインクを塗布する工程と、前記塗布後に熱処理を行う工程により形成され、
    前記第2の機能性半導体層は、塗布法により形成されることを特徴とするタンデム型の電子デバイスの製造方法。
    Figure 2015046596
    (式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は任意の置換基であり、Mはm価の金属原子であり、mは2以上5以下の整数である。m個のCR12=CR3-COO-は、同じであっても互いに異なっていてもよい。)
  2. 前記不飽和カルボン酸金属塩を構成する炭素数が3以上、12以下である請求項1に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  3. 前記不飽和カルボン酸金属塩を形成する不飽和カルボン酸の沸点が139℃以上、300℃未満である請求項1又は2に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  4. 前記式(I)中、R1、R2及びR3がそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  5. 前記式(I)中、R1、R2及びR3がそれぞれ水素原子である請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  6. 前記式(I)中、Mが周期表第4周期の遷移金属元素、周期表第12族元素、周期表第13族元素、及び周期表第14族元素から選ばれるいずれかの金属原子である請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  7. 前記式(I)中、Mが亜鉛原子である請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  8. 電界発光素子である請求項1〜7のいずれか一項に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  9. 光電変換素子である請求項1〜7のいずれか一項に記載のタンデム型の電子デバイスの製造方法。
  10. 基材上に、少なくとも、下部電極と、第1の機能性半導体層と、酸化亜鉛含有層を含む中間層と、第2の機能性半導体層と、上部電極と、をこの順に有するタンデム型の電子デバイスであって、前記酸化亜鉛含有層の膜厚に対する平均粗さの割合は10%未満であり、かつ前記酸化亜鉛含有層のX線回折(XRD)法(out of plane測定)における(002)面の2θピークの半値幅が1°以上であることを特徴とする、タンデム型の電子デバイス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016181634A (ja) * 2015-03-25 2016-10-13 株式会社東芝 光電変換素子およびその製造方法
JPWO2015166562A1 (ja) * 2014-04-30 2017-04-20 国立大学法人山形大学 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法

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