JP2015042752A - 軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品 - Google Patents

軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品 Download PDF

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Abstract

【課題】部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合でも軋み音低減効果が維持され、更に、耐熱性、耐衝撃性、成形性に優れ、破壊の際も延性破壊することにより、衝突時の安全性に優れた熱可塑性樹脂組成物製接触部品を提供する。
【解決手段】ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕20〜65質量部、及び、ポリカーボネート樹脂〔B〕35〜80質量部(ただし、〔A〕及び〔B〕の合計で100質量部)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、
前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、Tm(融点)が0℃以上のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔c1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔c2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕とを含有してなり、
前記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と前記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、熱可塑性樹脂組成物〔X〕を100質量%として、5〜30質量%である、軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品である。
【選択図】なし

Description

本発明は、軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品に関し、更に詳しくは、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させた熱可塑性樹脂組成物製接触用部品に関する。
ABS樹脂は、機械的強度、成形性に優れ、自動車、家電、OAなど広い分野で使用されているが、耐熱性や耐衝撃性が不十分で、用途が限定されている。一方、ポリカーボネート(PC)樹脂は、耐熱性や耐衝撃性に優れ、自動車、家電、精密機械などの広い分野で使用されているが、成形性や低温での耐衝撃性が不十分で、用途が限定されている。
これらの欠点を補う方法として、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂とをブレンドすることが知られている。この方法を用いると、ABS樹脂の耐熱性や耐衝撃性が改良されるとともに、ポリカーボネート樹脂の成形性や低温での耐衝撃性も改良され、その結果、成形性、耐衝撃性、機械的強度及び耐熱性に優れた樹脂ブレンドが得られ、衝突時の乗員の安全性が求められる自動車用内装部品等の幅広い分野での使用が可能となった。
しかしながら、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂をブレンドしたPC/ABS樹脂からなる成形品を自動車内装部品に用いると、自動車走行時の振動に伴い、PC/ABS樹脂製自動車内装部品が、該部品同士や該部品とABS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ポリウレタン、天然ゴム、ポリエステルまたはポリエチレン製の内張りシート、フォームなどの他の部材とが接触して擦れ合い、軋み音(擦れ音)を発生することがある。また、机の引き出しや扉まわりの用途に用いた場合、PC/ABS製の部品が、SUS、アルミ、真鍮部品等の金属部材やABS樹脂などの他の部材と接触し、軋み音(擦れ音)を発生することがある。これらの軋み音は自動車室内やオフィス内、住宅室内の快適性や静粛性を損ねる大きな原因となっており、軋み音の低減が強く要求されている。
上記PC/ABS樹脂やPC樹脂は非晶性樹脂であるため、結晶性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタールなどの樹脂と比較すると摩擦係数が高く、自動車内のインストルメントパネルのスイッチ部品や事務机のスライド部品等のように、他の部材と嵌合等により接触する部位に用いると、摩擦係数が大きいために、図1に示されるようなスティックスリップ現象が発生し、異音(軋み音)が発生する。スティックスリップ現象とは、2つの物体が擦れ合う時に発生するもので、図2(a)のモデルで示されるように駆動速度Vで動く駆動台の上にバネでつながれた物体Mが置かれた場合、物体Mは先ず静摩擦力の作用により駆動速度Vで移動する台とともに図2(b)のように右方向に移動する。そしてバネによって元に戻されようとする力が、この静摩擦力と等しくなったとき、物体Mは駆動速度Vと逆の方向に滑り出す。このときに、物体Mは動摩擦力を受けることになるので、バネの力とこの動摩擦力が等しくなった図2(c)の時点で滑りが止まり、すなわち駆動台に付着することになり、再び駆動速度Vと同じ方向に移動することになる(図2(d))。これをスティックスリップ現象といい、図1に示されるように静摩擦係数μsと、ノコギリ波形下端のμlの差Δμが大きいと、軋み音が発生しやすくなるといわれている。尚、動摩擦係数はμsとμlの中間の値になる。
これらの軋み音は自動車室内やオフィス内、住宅室内の快適性や静粛性を損ねる大きな原因となっており、軋み音の低減が強く要求されている。
一方、アモントン・クーロンの法則により求めた摩擦係数の摩擦速度依存性が負の値をとると、スティックスリップ現象が顕著に現れることが知られている(非特許文献1参照)。そこで、上記摩擦係数の摩擦速度依存性をゼロに近づけるか、若しくはゼロ以上の正の値とすることで、スティックスリップ現象の発生を抑制し、軋み音の発生を低減させることが可能である。
そこで、これら接触部分の軋み音を防止するため、部材表面にテフロン(登録商標)コーティングを施す方法、テフロン(登録商標)テープを装着する方法、不織布を装着する方法、シリコーンオイルを塗布する方法などが行なわれてきたが、装着、塗布といった工程は非常に煩雑で手間がかかるばかりでなく、高温下に長時間置かれた場合は効果が持続しないという問題があった。
また、自動車内装部品や室内機構部品に用いられる接触用部品の材料自体を改質する方法として、ABS樹脂にシリコーンオイルを配合する方法、ABS樹脂にエポキシ含有オレフィン共重合体を配合する方法などが提案されている。たとえば、ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂かならなる樹脂に有機ケイ素化合物を配合する技術(特許文献1参照)が、またABS樹脂に難燃剤、難燃助剤およびシリコーンオイルを配合する技術(特許文献2参照)が、またABS樹脂、MBS樹脂およびHIPS(ハイインパクトポリスチレン)樹脂にシリコーンオイルを配合する技術(特許文献3参照)が、またABS樹脂にアルカンスルホネート系界面活性剤を配合する技術(特許文献4参照)が、さらにはABS樹脂にエポキシ基、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の反応基を含有する変性ポリオルガノシロキサンを配合し、撥水性を高め浴室内やトイレ内の水回り部品に使用する技術(特許文献5参照)が開示されている。
しかしながら、これらの方法による軋み音の低減効果は十分とはいえず、成形直後にはある程度の軋み音防止効果を示しても効果の持続性が乏しく、特に、高温下に長時間置かれた場合にはその効果が大幅に低下するという問題があった。さらに近年、車両内装用途では衝突時に乗員の安全性を確保するために、耐衝撃性だけでなく、破壊された成形品の破片が飛散するおそれのある脆性破壊ではなく、延性破壊することが求められるようになった。
特公昭63−56267号公報 特許第2798396号公報 特許第2688619号公報 特許第2659467号公報 特開平10−316833号公報
表面科学Vol.24, No.6, PP 328-333, 2003
本発明は、かかる実情に鑑み、部材が擦れ合うときに発生する軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには、衝突時の乗員の安全性が求められる自動車用内装部品等の幅広い分野での使用が可能な、成形性、耐衝撃性、機械的強度及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物製接触用部品の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、特定のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体にビニル系単量体をグラフト重合したゴム変性ビニル系樹脂を特定量配合することにより、部材が擦れ合うときに発生する軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには、衝突時の乗員の安全性が求められる自動車用内装部品等の幅広い分野での使用が可能な、成形性、耐衝撃性、機械的強度及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物製接触用部品が得られることを見出した。また、上記熱可塑性樹脂組成物に特定のシリコーンオイル及び/またはポリオレフィンワックスを特定量配合することにより、さらに軋み音の低減効果に優れることも見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明によれば、次の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品が提供される。すなわち、
1. ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕20〜65質量部、及び、ポリカーボネート樹脂〔B〕35〜80質量部(ただし、〔A〕及び〔B〕の合計で100質量部)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、
前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、Tm(融点)が0℃以上のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔c1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔c2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕とを含有してなり、
前記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と前記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、熱可塑性樹脂組成物〔X〕を100質量%として、5〜30質量%である、軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
2. ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、更に、ビニル系単量体〔c3〕の(共)重合体〔C〕を含有してなる上記1.に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
3. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が、エチレン60〜95質量%、及び、α−オレフィン40〜5質量%(ただし、エチレン及びα−オレフィンの合計で100質量%)からなる上記1.又は2.に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
4. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕とジエン系ゴム質重合体〔a2〕との質量比〔a1〕:〔a2〕が90〜15:10〜85である上記1.乃至3.の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
5. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕100質量部に、更に、シリコーンオイル〔D〕0.1〜8質量部、及び/又は、ポリオレフィン系ワックス〔E〕0.1〜8質量部を含有してなる上記1.乃至4.の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
6. シリコーンオイル〔D〕が、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイルからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記5.に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
7. 自動車内装部品、スイッチ部品、事務機器用部品、デスク用ロック部品、住宅用内装部品、又は室内扉の開閉ダンパー部品に使用される上記1.乃至6.の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
本発明によれば、特定のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体にビニル系単量体をグラフト重合したゴム強化ビニル系樹脂とポリカーボネート樹脂とを特定量配合することにより、部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには、衝突時の乗員の安全性が求められる自動車用内装部品等の幅広い分野での使用が可能な、成形性、耐衝撃性、機械的強度及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物製接触用部品を得ることができる。
図1はスティックスリップ現象の説明図である。 図2(a)、(b)、(c)、(d)はスティックスリップのモデル図である。 図3は軋み音の発生を調べる方法を示す概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における熱可塑性樹脂製接触用部品は、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕20〜65質量部、及び、ポリカーボネート樹脂〔B〕35〜80質量部(ただし、〔A〕及び〔B〕の合計で100質量部)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、
前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、Tm(融点)が0℃以上のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔c1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕であり、
前記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が、熱可塑性樹脂組成物〔X〕を100質量%として、5〜30質量%である熱可塑性樹脂組成物製接触用部品からなることを特徴とする。
尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
1.ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕(以下、「以下、成分〔A〕」ともいう。):
本発明で使用する成分〔A〕は、Tm(融点)が0℃以上のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔c1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕単独、及び、必要に応じて、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔c2〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕との混合物、及び/または、ビニル系単量体〔c3〕の(共)重合体〔C〕との混合物からなるゴム強化ビニル系樹脂である。(共)重合体〔C〕は、ゴム質重合体の非存在下にビニル系単量体〔c3〕を重合して得られる。
1−1.エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕(以下「成分〔a1〕ともいう。):
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕は、Tm(融点)が0℃以上であることの他は特に制限はなく、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体が挙げられる。ここで、Tmは、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値であり、詳細は、JIS K7121−1987に記載されている。上記Tmは、好ましくは0〜120℃、より好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜80℃であり、Tmが0℃未満では、軋み音の低減効果に劣る。尚、DSCの測定において、吸熱変化のピークを明瞭に示さないものは、実質的にゴム質重合体に結晶性がないものであり、Tmを持たないものと判断し、上記Tmが0℃以上のゴム質重合体には含まれないものとする。よって、Tmが存在しないものも軋み音の低減効果に劣る。
ゴム質重合体に融点(Tm)があることは、該ゴム質重合体が結晶性部分を有することを意味している。ゴム質重合体中に結晶性部分が存在すると、上記したように、スリップスティック現象の発生を抑制する為、軋み音の発生が抑制されるものと考えられる。
また、ゴム質重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、−20℃以下であり、より好ましくは、−30℃以下であり、特に好ましくは、−40℃以下である。ガラス転移温度が、−20℃を超えると、耐衝撃性が不十分になる場合がある。尚、上記ガラス転移温度は、Tm(融点)の測定と同様に、DSC(示差走査熱量計)を用い、JIS K7121−1987に準拠して求めることができる。
上記成分〔a1〕を構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると共重合性が低下し、成形品の表面外観が十分でなくなる場合がある。エチレン:α−オレフィンの質量比は、通常5〜95:95〜5、好ましくは50〜95:50〜5、より好ましくは60〜95:40〜5である。
α−オレフィンの質量比が95を超えると、得られるゴム強化ビニル系樹脂の耐衝撃性が不十分となり好ましくない。また、5未満でも、ゴム質重合体〔a1〕のゴム弾性が十分でなくなるため、樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなくなる。
非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、ゴム質重合体全量に対する割合は、通常0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。非共役ジエンの割合が20質量%を超えると、ゴム質重合体〔a1〕の融点(Tm)が低下するか、あるいは融点が消失し、軋み音の低減効果が不十分となる場合がある。
また、成分〔a1〕のムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K6300に準拠)は、通常5〜80、好ましくは10〜65、より好ましくは10〜45である。ムーニー粘度が80を超えると、得られるゴム強化ビニル系樹脂の流動性が不十分になる場合があり、またムーニー粘度が5未満になると、得られる成形品の耐衝撃性が不十分となる場合がある。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕は、軋み音低減の観点から、非共役ジエン成分を含有しないエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましく、これらのうち、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体がさらに好ましく、エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
また、このエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕には、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物を用いて得られたブロック(共)重合体を水素添加した重合体(共役ジエン部分の二重結合の水素添加率は耐候性の点から90%以上が好ましい。)も含まれる。上記重合体は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
1−2.ジエン系ゴム質重合体〔a2〕(以下「成分〔a2〕ともいう。):
ジエン系ゴム質重合体〔a2〕としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等のブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のイソプレン系共重合体等が挙げられる。これらは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。該ジエン系ゴム質重合体〔a2〕は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
1−3.ビニル系単量体〔c1〕〜〔c3〕:
上記ビニル系単量体〔c1〕、〔c2〕及び〔c3〕は、いずれも、不飽和結合を有する重合性化合物であれば、特に限定されない。
上記ビニル系単量体〔c1〕、〔c2〕及び〔c3〕は、通常、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む。その他、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物等の、他の共重合可能なビニル系単量体、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を1種以上有する官能基含有ビニル系単量体を併用してもよい。上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕及び〔A2〕の形成に用いるビニル系単量体〔c1〕及び〔c2〕は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、(共)重合体〔C〕の形成に用いるビニル系単量体〔c3〕は、上記ビニル系単量体〔c1〕及び/又は〔c2〕と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−フェニルマレイミドが好ましい。
尚、このマレイミド化合物からなる単量体単位を重合体に導入する方法としては、予め、無水マレイン酸を共重合させ、その後、イミド化する方法がある。
上記の官能基含有ビニル系単量体のうち、カルボキシル基を有する不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物基を有する不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基を有する不飽和化合物としては、ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基を有する不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノメチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノメチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミド基を有する不飽和化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有する不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリン基を有する不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ビニル系単量体〔c1〕、〔c2〕及び〔c3〕は、目的、用途等に応じてその種類及び使用量が選択されるが、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計量は、ビニル系単量体全量100質量%に対して、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。上記他の共重合可能なビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体全体100質量%に対して通常0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。上記官能基含有ビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体全量100質量%に対して、通常0〜40質量%、好ましくは、0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率(芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物)は、これらの合計を100質量%とした場合、通常40〜85質量%/15〜60質量%、好ましくは45〜85質量%/15〜55質量%である。
1−4.上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の製造方法:
上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び必要に応じて、更にジエン系ゴム質重合体〔a2〕を含有する重合体成分であるが、その含有形態は特に限定されない。
上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕には、通常、ビニル系単量体の(共)重合体がゴム質重合体にグラフトしているグラフト共重合体と、ゴム質重合体にグラフトしていないビニル系単量体の(共)重合体が含まれる。ただし、このグラフト共重合体に、ビニル系単量体の(共)重合体がグラフトしていない、ゴム質重合体が含まれていてもよい。
また、上記のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕が使用される場合の含有態様は、以下に例示される。
(1)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕の両方が、グラフト共重合体として含有される場合。
(2)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕のいずれか一方が、グラフト共質重合体として含有される場合。
(3)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕の両方が、未グラフトのゴム質重合体として含有される場合。
これらのうち、(1)が特に好ましい。
上記態様(1)のゴム強化ビニル系樹脂〔A〕としては、以下に例示される。
[i]上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、ビニル系単量体〔c1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔c2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕とからなる混合物。
[ii]上記混合物[i]と、ビニル系単量体〔c3〕の(共)重合体〔C〕(以下、「(共)重合体〔C〕」ともいう。)とからなる混合物。
[iii]上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下に、ビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕。
[iv]上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕と、上記(共)重合体〔C〕とからなる混合物。
これらのうち、[i]及び[ii]が生産性の点から好ましく、[ii]が特に好ましい。
尚、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕としては、上記[i]、[ii]、[iii]及び[iv]の2種以上の組み合わせであってもよい。
次に、上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕の製造方法について、説明する。
重合方法としては、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の重合方法が挙げられる。いずれにおいても、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体を一括投入して反応させてもよいし、分割又は連続添加して反応させてもよい。また、ゴム質重合体は、全量又は一部を、ビニル系単量体との重合の途中で添加して反応させてもよい。
尚、ゴム質重合体の使用量は、ゴム質重合体とビニル系単量体の合計を100質量%とした場合、通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%である。
上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の製造方法は、溶液重合及び塊状重合が好ましく、更に好ましくは溶液重合であり、ゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕の製造方法は、乳化重合、懸濁重合が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕の製造方法は、乳化重合、溶液重合、懸濁重合及び塊状重合が好ましく、これらの方法を組み合わせたものであってもよい。
上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕を乳化重合で製造する場合には、通常、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、水等が用いられる。尚、上記ゴム質重合体がラテックス状でなく、固形状である場合には、再乳化によりラテックス状として使用することができる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕の全量に対し、通常、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。
上記重合開始剤は、通常、反応系に一括添加又は連続添加される。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕の全量に対し、通常、0.05〜2質量%である。
乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;ロジン酸塩、リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕の全量に対し、通常、0.3〜5質量%である。
乳化重合は、用いるビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕、重合開始剤等の種類、量に応じ、公知の条件で行うことができる。上記乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸等が用いられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、要求される性能に応じて、凝固後にアルカリ成分又は酸成分を添加し中和処理した後、洗浄してもよい。
上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕を溶液重合により製造する場合には、通常、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等が用いられる。
溶媒としては、公知のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ジクロルメチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を用いることができる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶液重合は、用いるビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。重合温度は、通常80〜140℃の範囲である。尚、溶液重合に際し、重合開始剤を使用せずに製造することもできる。
塊状重合及び懸濁重合による場合も、公知の方法を適用することができる。これらの方法において用いる重合開始剤、連鎖移動剤等は特に制限はないが、溶液重合において例示した化合物と同じものを用いることができる。
1−5.ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の物性:
上記のようにして得られた、ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕のグラフト率は、いずれも、通常10〜150質量%、好ましくは20〜120質量%、特に好ましくは20〜80質量%である。このグラフト率が10質量%未満では、グラフト共重合体とビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕の(共)重合体との界面強度が劣るため、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、150質量%を超えると、ゴム質重合体表面におけるビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕の(共)重合体からなる層が厚くなり、また、ゴム質重合体の内部にグラフトした上記(共)重合体からなる層が発達するため、ゴム弾性が低下し、その結果、耐衝撃性が低下する場合がある。
上記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはゴム強化ビニル系樹脂1グラムをアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化ビニル系樹脂1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、いずれも、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
上記のように、本発明に係るゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、別々に調製したゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、又は〔A1〕及び〔A2〕の混合物を用いてなるものであってよいし、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下に、ビニル系単量体〔c1〕又は〔c2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕を用いてなるものであってもよい。従って、前者のような、複数のゴム強化ビニル系樹脂を用いる場合には、各製造工程で得られた各樹脂の混合物を用いてもよいが、他の方法として、例えば、乳化重合により各樹脂を各々含むラテックスを製造してから、ラテックス同士を混合し、その後、凝固する等により得ることができる。
2.ポリカーボネート樹脂〔B〕(以下、「成分〔B〕」ともいう。):
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂〔B〕は特に制限はないが、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂である。上記芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、好ましくは15,000〜40,000、より好ましくは17,000〜30,000、特に好ましくは18,000〜28,000である。この粘度平均分子量が高いほど、耐衝撃性が高くなる一方、流動性が十分でなく、成形加工性に劣る傾向にある。尚、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
3.(共)重合体〔C〕(以下、「成分〔C〕」ともいう。):
3−1.(共)重合体〔C〕の製造方法:
上記(共)重合体〔C〕は、ゴム質重合体の非存在下、ビニル系単量体〔c3〕を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法で重合することにより製造することができる。上記重合は、重合開始剤を用いない熱重合であってもよいし、重合開始剤を用いる触媒重合であってもよい。
3−2.(共)重合体〔C〕の物性:
上記重合体〔C〕の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記(共)重合体〔C〕をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
4. シリコーンオイル〔D〕(以下、「成分〔D〕」ともいう。):
本発明で使用する成分〔D〕としてのシリコーンオイルは、ポリオルガノシロキサン構造を持つものであれば周知のものを用いることができる。シリコーンオイル〔D〕は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等の未変性シリコーンオイルであってもよいし、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖の一部及び/又はポリオルガノシロキサン構造の片末端部分、又は、ポリオルガノシロキサン構造の両末端部分に各種有機基が導入された変性シリコーンオイルであってもよい。上記変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等を使用することができる。これらの中で、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルが好ましい。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で使用するシリコーンオイル〔D〕が、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイルである場合、軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物製接触用部品が得られる。
また、本発明で使用するシリコーンオイル〔D〕が、メチルフェニルシリコーンオイルである場合、軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合において、軋み音低減効果の維持において更に優れている。
本発明で用いられるメチルフェニルシリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基である、非反応性のストレートシリコーンオイルである。
本発明で用いられるアルキル・アラルキル変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルの側鎖の一部にアルキル基およびアラルキル基が導入された、非反応性の変成シリコーンオイルである。
本発明に用いられるアミノ変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖の一部にアミノ基を導入したもので、アミノ変性はモノアミン変性、ジアミン変性のいずれであってもよい。
また、本発明で使用するシリコーンオイル〔D〕の25℃における動粘度は、通常、10〜100,000cSt、好ましくは、10〜50,000cSt、より好ましくは15〜50,000cSt、特に好ましくは20〜30,000cStである。該シリコーンオイル〔D〕の25℃における動粘度が10cSt未満では、軋み音の低減効果が不十分になる傾向があり、一方、動粘度が100,000cStを超えると、熱可塑性樹脂組成物〔X〕における該シリコーンオイル〔D〕の分散性が悪くなり、耐衝撃性、軋み音低減効果が安定して発現せず、溶融混練時の押出加工性も低下する傾向がある。
シリコーンオイルの動粘度の測定は、ASTM D445−46T(JIS 8803でも可)によるウベローデ粘度計により測定した。
5. ポリオレフィン系ワックス〔E〕(以下、「成分〔E〕」ともいう。):
本発明で使用する成分〔E〕としてのポリオレフィン系ワックスは、オレフィンの単独重合体及び共重合体のうち、数平均分子量が、通常、100〜10,000の範囲にある、比較的低分子量のものが好適である。具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、オレフィン共重合体ワックス(例えば、エチレン共重合体ワックス)等が挙げられ、これらの部分酸化物又はこれらの混合物も含まれる。尚、ポリオレフィンワックスの構造は、線状構造であってもよいし、分岐構造であってもよい。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オレフィン共重合体には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィンの2種以上を用いてなる共重合体、これらのオレフィンと、共重合可能な単量体、例えば、不飽和カルボン酸及びその酸無水物[(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等]、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等]等の重合性単量体との共重合体等が挙げられる。また、これらの共重合体には、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が含まれる。
上記ポリオレフィン系ワックスの好ましい数平均分子量は、1,000〜6,000であり、より好ましくは1,200〜5,500である。数平均分子量がこの範囲にあると、離型性に特に優れる。
また、上記ポリオレフィン系ワックスの好ましい粘度(140℃)は、100〜10,000cpsであり、より好ましくは100〜5,000cpsである。粘度がこの範囲にあると、離型性に特に優れる。
6.熱可塑性樹脂組成物〔X〕:
本発明における熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、上記成分〔A〕、上記成分〔B〕、及び、所望により上記成分〔C〕、〔D〕及び〔E〕を所定の配合比率で混合し、溶融混練することにより得られる。
本発明における上記成分〔A〕及び上記成分〔B〕の使用量は、上記成分〔A〕と上記成分〔B〕の合計を100質量部として、20〜65質量部、及び、35〜80質量部、好ましくは、25〜65質量、及び、35〜75質量部、さらに好ましくは、35〜65質量部、及び、35〜65質量部、特に好ましくは、45〜65質量部、及び、35〜55質量部である。上記成分〔A〕の使用量が20質量部未満で、上記成分〔B〕の使用量が80質量部を超えると、軋み音の低減効果、成形性が劣る。一方、上記成分〔A〕の使用量が65質量部を超え、上記成分〔B〕の使用量が35質量部未満になると、破壊形態は脆性破壊となり、衝撃強度も劣る。
上記成分〔A〕中のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕を100質量%として、5〜30質量%であり、好ましくは5〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。この合計量が5質量%未満では軋み音の低減効果、成形性に劣り、一方、30質量%を超えると耐熱性が低下する。
上記成分〔A〕中の上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の質量比〔a1〕:〔a2〕は通常90〜15:10〜85、好ましくは80〜20:20〜80、より好ましくは75〜25:25〜75、特に好ましくは75〜50:25〜50である。各ゴム質重合体の質量比をこの範囲とすることにより、軋み音低減効果、耐衝撃性及び耐熱性が十分となる。
さらに、上記成分〔A〕は、所望によりビニル系単量体〔c3〕の(共)重合体〔C〕を配合することができる。上記成分〔C〕の配合量は、上記成分〔A〕の全量を100質量%とした場合、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕100質量部に対する上記シリコーンオイル〔D〕の配合量は、通常0.1〜8質量部、好ましくは0.2〜6質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは2.5〜3.5質量部である。上記成分〔D〕の配合量が0.1質量部未満では、軋み音の低減効果が十分に得られない場合がある。一方、上記成分〔D〕の配合量が8質量部を超えると、成形品の外観や耐衝撃性が不十分になり、溶融混連が困難になる場合がある。
上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕100質量部に対する上記ポリエチレンワックス〔E〕の配合量は、通常0.1〜8質量部、好ましくは0.2〜6質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは2.0〜5.0質量部である。上記成分〔E〕の配合量が0.1質量部未満では、軋み音の低減効果が十分に得られない場合がある。一方、上記成分〔E〕の配合量が8質量部を超えると、成形品の外観や耐衝撃性が不十分となり、溶融混連が困難になる場合がある。
上記の如く本発明における熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、必要に応じて、充填剤、造核剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、必要に応じて、他の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜300℃、好ましくは220〜280℃である。
7. 接触用部品:
本発明の接触用部品は、上記熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる。該熱可塑樹脂組成物から本発明の接触用部品を製造する方法には何等制限はなく、射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、異形押出成形、フィルム成形等公知の方法により製造することができる。
本発明の接触用部品が接触する他の部材に特に制限はなく、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕を含む熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、有機質材料、無機質材料、金属材料等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、PMMA、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、EVA、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸、PC/ABS、PC/AES、PA/ABS、PA/AES等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上の組み合わせで使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ゴムとしては、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、SEBS、SBS、SIS等の各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
有機質材料としては、例えば、インシュレーションボード、MDF(中質繊維板)、ハードボード、パーティクルボード、ランバーコア、LVL(単板積層材)、OSB(配向性ボード)、PSL(パララム)、WB(ウェハーボード)、硬質繊維板、軟質繊維板、ランバーコア合板、ボードコア合板、特殊コア−合板、ベニアコア−ベニヤ板、タップ樹脂を含浸させた紙の積層シート・板、(古)紙等を砕いた細かい小片・線状体に接着剤を混合して加熱圧縮したボード、各種の木材等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
無機質材料としては、例えば、ケイ酸カルシウムボード、フレキシブルボード、ホモセメントボード、石膏ボード、シージング石膏ボード、強化石膏ボード、石膏ラスボード、化粧石膏ボード、複合石膏ボード、各種セラミック、ガラス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
更に、金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅、各種の合金等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の接触用部品は、他の部材と接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車内装用部品、事務用機器、住宅内装用部品等に好適に用いることができる。
本発明の自動車内装用部品は、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能ある。さらには、延性破壊することにより、衝突時の安全性に優れる。このような自動車内装部品としてはドアトリム、ドアライニング、ピラーガーニッシュ、コンソール、ドアポケット、ベンチレータ、ダクト、エアコン、メーターバイザー、インパネアッパーガーニッシュ、インパネロアガーニッシュ、A/T インジケーター、オンオフスイッチ類(スライド部、スライドプレート)、グリルフロントデフロスター、グリルサイドデフロスター、リッドクラスター、カバーインストロアー、マスク類(マスクスイッチ、マスクラジオなど)、グローブボックス、ポケット類(ポケットデッキ、ポケットカードなど)、ステアリングホイールホーンパッド、スイッチ部品、カーナビゲーション用外装部品等を挙げることができる。その中でも、自動車用ベンチレータ、自動車用エアコンの板状羽根、バルブシャッター、ルーバー、スイッチ部品、カーナビゲーション用外装部品等として特に好適に用いることができる。
本発明の事務機器用部品は、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。さらには、延性破壊することにより、衝突等の安全性に優れる。このような事務用機器用の接触用部品としては、デスクロック部品、デスク引き出し等に好適に用いることができる。
本発明の住宅内装用部品は、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。さらには、延性破壊することにより、衝突等の安全性に優れる。このような住宅内装用部品としては、シェルフ扉、チェアダンパー、テーブル折りたたみ脚可動部品、扉開閉ダンパー、引き戸レール、カーテンレール等として特に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
(1)評価方法:
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
(1−1)軋み音評価I(実用評価):
株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J−100E」(型式名)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる、ISOダンベル試験片を射出成形し、その後、試験片を80℃のギアオーブンに200時間放置した。次に、上記表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるISOダンベル試験片5枚と、接触する他の部品として、テクノポリマー株式会社製のPC/ABS「CK43」(商品名)からなり、同様に80℃のギアオーブンに200時間放置したISOダンベル試験片5枚を交互に重ね合わせ、この両端を手でひねって軋み音の発生の状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
軋み音低減効果の評価:
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
ギアオーブンでの放置時間を400時間とした同様の評価も行った。
(1−2)軋み音評価II(摩擦係数の摩擦速度依存性):
日精樹脂工業株式会社製の電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(型式名)を用い、成形温度240℃、金型温度50℃、射出速度30mm/sの条件で、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物及び接触する他の部品であるテクノポリマー株式会社製のPC/ABS「CK43」(商品名)からなる、内径20mm、外径24.8mm、高さ15mmの円筒型の試験片を射出成形し、その後、両試験片を80℃のギアオーブンに400時間放置した。次に、株式会社オリエンテック製の摩耗摩擦試験器「EFM−III −EN」(商品名)を用い、回転側に接触相手としてCK43からなる試験片をセットし、固定側に表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる試験片をセットし、荷重3kg、回転速度(摩擦速度)50、100、150mm/秒の条件で摩擦強度を測定し、摩擦速度に対する摩擦係数の傾きを求めた。
(1−3)荷重たわみ温度
表1に記載の熱可塑性樹脂組成物を用い、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を射出成形機J100E(日本製鋼所(株)製)で作成した。成形条件は成形温度が250℃、金型温度が60℃であった。評価はISO75に準拠し、Flat−wise法、荷重1.82MPaで測定した。
評価結果は、荷重たわみ温度が高いほど、耐熱性に優れる。
(1−4)メルトマスフローレート
表1に記載の熱可塑性樹脂組成物を用い、二軸押出し機(日本製鋼所TEX44)にて製造したペレットを使用し、ISO1133(温度240℃、荷重98N)に準じてメルトマスフローレート(MFR)を測定した。単位はg/10分である。
(1−5)落錘衝撃強度:
日精樹脂工業株式会社製の電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(型式名)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる、80mm×55mm×2.4mmの平板型の試験片を射出成形した。試験片は、55mmの一方の辺の中央に4mm×1mmのサイドゲートを備え、成形時の樹脂温度は240℃、金型温度は50℃であった。次に、株式会社島津製作所の島津ハイドロショット・高速パンクチャー衝撃試験機「HITS−P10」(型式名)を用い、以下に示す条件で上記試験片を打ち抜いて破壊エネルギー(J)を測定した。
測定温度 : 23℃
打ち抜き速度 : 6.7mm/s
打ち抜き試験用ジグのストライカ先端 : φ12.7mm
試験片受け台のダイス径 : 43mm
(1−6)破壊形態:
評価方法(1−5)の落錘衝撃強度試験後の評価プレートの打ち抜き部分周辺の割れを観察し、打ち抜き部分の端部からの割れ長さが5mm以内の場合を延性破壊、5mm超過の場合を脆性破壊として評価した。
衝突時に接触用部品が脆性破壊をおこすと、周囲に破片が飛散する等、乗員の安全性が十分に確保できない恐れがあり、延性破壊することが好ましい。
(2−1)成分〔A〕
A1−1:AES−1
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕として、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=78/22(%)、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)20、融点(Tm)は40℃、ガラス転移温度(Tg)は−50℃)22部、スチレン55部、アクリロニトリル23部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂のグラフト率は70%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
A2:ABS−1
攪拌機付き重合器に、水280部およびジエン系ゴム質重合体〔a2〕として、重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間撹拌続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のグラフト率は40%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.38dl/gであった。
A3:AES−2
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕としてエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体(エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン=63/32/5(%)、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)33、融点(Tm)なし、ガラス転移温度(Tg)は−52℃)30部、スチレン45部、アクリロニトリル25部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン140部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒とを留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂のグラフト率は60%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
A1−2:AES−3
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕を、デュポン・ダウ・エラストマー社製のポリオレフィンエラストマー「ENGAGE8100」(商品名、エチレン/1−オクテン=76/24(%)、ムーニー粘度(ML1+4,121℃)23、融点(Tm)は60℃、ガラス転移温度(Tg)は−56℃)〔a1〕とした以外は、AES−1と同様の方法でゴム強化ビニル系樹脂を得た。得られたゴム強化ビニル系樹脂のグラフト率は60%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.41dl/gであった。
(2−2)成分〔B〕(ポリカーボネート樹脂):
B−1:ノバレックス7022PJ(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、粘度平均分子量(Mv)は22,000であった。
B−2:ノバレックス7022PJ−LH1(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、粘度平均分子量(Mv)は18,500であった。
(2−3)成分〔C〕AS:
撹拌機付き重合容器に、水250部およびパルミチン酸ナトリウム1.0部を投入し、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら70℃まで加熱した。さらにナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み後、α−メチルスチレン70部、アクリロニトリル25部、スチレン5部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部からなる単量体混合物を、重合温度70℃で連続的に7時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を75℃にし、1時間撹拌を続けて重合を終了させ、共重合体のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。その後、得られたラテックスを塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の共重合体を得た。得られた共重合体のアセトン可溶分の極限粘度[η]は0.40dl/gであった。
(2−4)成分〔D〕(シリコーンオイル):
D−1:メチルフェニルシリコーンオイル;KF54(信越シリコーン株式会社製)、25℃の動粘度は400cStであった。
D−2:アミノ変性シリコーンオイル;TSF4700(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、25℃の動粘度は50cStであった。
D−3:アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル;XF42−334(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、25℃の動粘度は1300cStであった。
(2−5)成分〔E〕(ポリオレフィン系ワックス):
E−1:サンワックス171−P(三洋化成工業株式会社製)、ポリエチレンワックスで数平均分子量(Mn)は1500であった。
E−2:サンワックス161−P(三洋化成工業株式会社製)、ポリエチレンワックスで数平均分子量(Mn)は5000であった。
(2−6)成分〔F〕(添加剤):
F−1:エチレン・ビスステアリン酸アマイド;カオーワックス EB−P(花王株式会社製)
F−2:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン;アデカスタブ AO−20(株式会社ADEKA製)
F−3:ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト;アデカスタブ PEP−24G(株式会社ADEKA製)
実施例1〜19及び比較例1〜6
表1に記載の配合割合で、上記成分〔A〕〜〔F〕からなる熱可塑性組成物をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44α、バレル設定温度250℃)で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットで上記したように評価用の各試験片を成形した。そして得られた試験片を用いて、前記の方法で評価した。評価結果を表1に示した。
Figure 2015042752
Figure 2015042752
表1から明らかように、実施例1〜19に代表される本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的とする軋み音が低減され、更に、耐熱性、耐衝撃性、樹脂流動性、破壊形態をバランス良く備えた成形品を提供することができる。
これに対し、比較例1は、本発明の特定のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕を含まない例であり、軋み音の低減効果に劣る。比較例2は、ポリカーボネート樹脂〔B〕の配合量が不足している例であり、脆性破壊となるため安全性に劣る。比較例3は、ポリカーボネート樹脂〔B〕の配合量が過剰な例であり、軋み音の低減効果が著しく低下するとともに溶融樹脂の流動性が不足するため成形性にも劣る。比較例4は、ポリカーボネート樹脂〔B〕を含まない例であり、耐熱性が低く、脆性破壊となるため安全性に劣る。比較例5は、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の配合量が過剰で、ポリカーボネート樹脂〔B〕の配合量が過少である例であり、耐熱性、耐衝撃性が低く、脆性破壊となるため安全性に劣る。比較例6は、本発明の特定のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕以外をベースゴムとするAESを用いた例であるが、軋み音低減効果(実用評価:400時間)に劣る。
実施例20
図3に示すように、接触用部品Aとして、実施例2の熱可塑性樹脂組成物からなり、底部1と立ち上り部2とからなるT字状部品と、他の接触用部品Bとして、テクノポリマー製のPC/ABS「CK43」(商品名)からなり、底部3と、上記立ち上り部2を密に挟み付ける2個の立ち上り部4、4とからなる挟着部品とを作製し、両者を80℃のギアオーブンに200時間放置した後、T字状部品の立ち上り部2を挟着部品の2個の立ち上り部4、4の間に挟み付けるように組み付け、矢示したように摺動させて軋み音の発生の有無を調べた。その結果、軋み音の発生は認められなかった。
比較例7、8
接触用部品Aとして、T字状部品の熱可塑性樹脂組成物を比較例1、3の熱可塑性樹脂組成物にそれぞれ変更した他は、実施例20と同様にして軋み音の発生の有無を調べた。その結果、いずれの場合も軋み音の発生が認められた。
以上から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品は、他の部材と接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車内装用部品、事務用機器、住宅内装用部品等に好適であることがわかる。
本発明の接触用部品は、部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物からなる接触用部品を提供することができ、他の部材と接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車内装用部品、事務用機器、住宅内装用部品等に好適に用いることができる。
M 物体
V 駆動速度
μs 静摩擦係数
μl ノコギリ波形下端
Δμ μs−μl
A 接触用部品
B 他の接触用部品
1 底部
2 立ち上り部
3 底部
4 立ち上り部

Claims (7)

  1. ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕20〜65質量部、及び、ポリカーボネート樹脂〔B〕35〜80質量部(ただし、〔A〕及び〔B〕の合計で100質量部)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、
    前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、Tm(融点)が0℃以上のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔c1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔c2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕とを含有してなり、
    前記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と前記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、熱可塑性樹脂組成物〔X〕を100質量%として、5〜30質量%である、軋み音を低減した熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
  2. ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、更に、ビニル系単量体〔c3〕の(共)重合体〔C〕を含有してなる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
  3. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が、エチレン60〜95質量%、及び、α−オレフィン40〜5質量%(ただし、エチレン及びα−オレフィンの合計で100質量%)からなる請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
  4. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕とジエン系ゴム質重合体〔a2〕との質量比〔a1〕:〔a2〕が90〜15:10〜85である請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
  5. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕100質量部に、更に、シリコーンオイル〔D〕0.1〜8質量部、及び/又は、ポリオレフィン系ワックス〔E〕0.1〜8質量部を含有してなる請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
  6. シリコーンオイル〔D〕が、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイルからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
  7. 自動車内装部品、スイッチ部品、事務機器用部品、デスク用ロック部品、住宅用内装部品、又は室内扉の開閉ダンパー部品に使用される請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物製接触用部品。
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