JP2015042722A - 共重合ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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元貴 富澤
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Abstract

【課題】常温での柔軟性に優れ、脆さを改良したポリエステル樹脂組成物であって、湿熱耐久性にも優れたポリエステル樹脂組成物を提供すること、より詳細には、電気・電子部品等のモールディング用途や、ポッティング加工用途に好適な共重合ポリエステル樹脂組成物を提供する。【解決手段】共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、共重合オレフィン樹脂(B)を20〜100質量部、エポキシ樹脂(C)を10〜60質量部含有する樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有し、グリコール成分として1,4-ブタンジオールを含有し、酸成分中の炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の含有量が10〜50モル%であり、グリコール成分中の1,4-ブタンジオールの含有量が80モル%以上であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、酸成分中に炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸を、グリコール成分中に1,4-ブタンジオールを含有する共重合ポリエステル樹脂中に、共重合オレフィン樹脂とエポキシ樹脂を含有しており、柔軟性、湿熱耐久性、耐燃料性(アルコール燃料等に対する)に優れた共重合ポリエステル樹脂に関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)またはポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略称する)単位を主成分とし、脂肪族ジカルボン酸または各種ジオールを共重合させた共重合ポリエステルは、優れた耐熱性、耐候性、耐溶剤性、柔軟性等を有しているため、フィルム、繊維、シート、接着剤、シーラントとして広く利用されている。
しかしながら、上記の共重合ポリエステルは、高い柔軟性を必要とする用途に用いる場合、低温や常温での柔軟性に欠けて脆いものであり、使用できる用途に限界があった。
このような欠点を改善するために、ポリエステル樹脂にソフトセグメントを共重合する方法が考えられている。ポリエーテル化合物をソフトセグメントとするポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体は、樹脂のガラス転移点が低く、流動性が高く、分子量を低下させても樹脂に柔軟性がある。このため、電気・電子部品あるいは自動車部品などで利用される成形材料などの素材として広く利用されている。このようなポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体は、例えば特許文献1に開示されている。
しかしながら、このポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体はハードセグメントのエステル結合により加水分解が起きやすく、さらにソフトセグメントであるポリエーテル化合物は高温に晒されたとき、酸化分解や熱分解などが起こりやすいなどの問題があり、この結果、共重合体自身の湿熱耐久性に問題があった。
特許文献2には、モールディング用に適したポリエステル樹脂及び樹脂組成物が記載されている。特許文献2に記載の樹脂は、電気・電子部品用のモールディング用途に適したものであり、防水性、耐久性、耐燃料性等に優れることが記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載されているような組成では、十分な柔軟性、湿熱耐久性、耐燃料性が得られない。このため、電気・電子部品等のモールディング用途に使用すると、その樹脂から得られる製品は、樹脂部分と内部の電気・電子部品等の剥離が生じたり、樹脂部分に亀裂が生じ、長期間使用することができないという問題を有している。
特開平2−3429号公報 特開2003−176341号公報
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、常温での柔軟性に優れ、脆さを改良したポリエステル樹脂組成物であって、湿熱耐久性、耐燃料性にも優れたポリエステル樹脂組成物を提供すること、より詳細には、電気・電子部品等のモールディング用途や、ポッティング加工用途に好適な共重合ポリエステル樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は、上記課題を解決するために検討した結果、特定の組成を有する共重合ポリエステル樹脂(A)に、共重合オレフィン樹脂(B)とエポキシ樹脂(C)を特定量配合した樹脂組成物とすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、共重合オレフィン樹脂(B)を20〜100質量部、エポキシ樹脂(C)を10〜60質量部含有する樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有し、グリコール成分として1,4-ブタンジオールを含有し、酸成分中の炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の含有量が10〜50モル%であり、グリコール成分中の1,4-ブタンジオールの含有量が80モル%以上であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂組成物を要旨とするものである。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、特定の組成を有する共重合ポリエステル樹脂(A)に、共重合オレフィン樹脂(B)とエポキシ樹脂(C)を特定量配合したものであるため、常温での柔軟性に優れており、適度な硬さを有し、脆さが改良されたものである。さらには、被着材に対する接着性に優れ、ヒートショック性(耐熱性)、湿熱耐久性、耐燃料性にも優れている。
そして、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、成形性に優れ、射出成形、ブロー成形、押し出し成形、溶融紡糸等により各種の成形品(容器、フィルム、繊維、シート)とすることが可能である。また、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、溶融時の流動性に優れ、低圧での射出成形が可能であるため、薄肉や複雑な形状を有する部品にも溶融成形が可能であり、モールディング用途にも好適に用いることができる。さらには、ハウジング内や基盤上に部品を置き、これに樹脂を注型し、ハウジングや基板と部品を一体化させるポッティング用途にも好適に用いることができる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、上記のような優れた性能を有することから、特に電気・電子部品あるいは自動車用部品など、過酷な環境でも使用できる部品等に好適に使用することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分は、芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有するものである。
まず、酸成分について説明する。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。中でもテレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸は、共重合ポリエステル樹脂の融点を上げ、耐熱性を付与するとともに機械的強度を上げることに寄与するものである。かかる見地より、本発明では、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸及びイソフタル酸の少なくとも1種が好ましい。酸成分中における芳香族ジカルボン酸の含有量(割合)は50〜80モル%であることが好ましく、中でも65〜80モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸の割合が50モル%未満になると、共重合ポリエステル樹脂の融点が低くなり、耐熱性に劣るとともに、機械的強度も低くなり、また耐燃料性も低くなりやすい。
一方、80モル%を超えると、炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の割合が少なくなり、共重合ポリエステル樹脂の柔軟性や湿熱耐久性を向上させる効果に乏しくなりやすい。
炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、エイコ酸二酸、ダイマー酸などが挙げられ、これらを2種類以上併用してもよい。中でも、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸を用いることが好ましい。
炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸は、主に共重合ポリエステル樹脂の柔軟性を向上し、脆さを改良するとともに、被着材に対する接着性に優れるものである。さらには湿熱耐久性を向上させることにも寄与するものである。酸成分中の炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の含有量(割合)は、10〜50モル%であることが必要であり、中でも20〜35モル%であることが好ましい。炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の割合が10モル%未満であると、上記したような効果を奏することが困難となる。一方、炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の割合が50モル%を超えると、得られる共重合ポリエステルの融点が低くなり、耐熱性に劣るとともに、機械的強度も低くなり、また耐燃料性も低くなりやすい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)は、酸成分中に上記したような芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有するが、本発明の効果を十分に奏するためには、酸成分として前記したような芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸のみを含有することが好ましい。
次に、本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)は、グリコール成分として、1,4−ブタンジオールを含有するものである。グリコール成分中の1,4−ブタンジオールの含有量(割合)は、80モル%以上であり、中でも85モル%以上であることが好ましい。グリコール成分として、1,4−ブタンジオールを80モル%以上含有することで、得られる共重合ポリエステル樹脂は、融点が高くなり、耐熱性に優れるとともに、成形性にも優れる。1,4−ブタンジオールに代えて、1,2−エチレングリコールを用いると、得られる共重合ポリエステル樹脂は、結晶化速度が遅くなり成形性が悪いものとなる。また、1,4−ブタンジオールに代えて、1,6−ヘキサンジオールを用いると、得られる共重合ポリエステルは、融点が低くなり、耐熱性に劣るものとなる。
なお、本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)は、グリコール成分中に1,4−ブタンジオール以外の他の成分を20モル%含有してもよく、このような他の成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物およびプロピレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタジエングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
次に、共重合オレフィン樹脂(B)について説明する。本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物において、上記した共重合ポリエステル樹脂(A)中に共重合オレフィン樹脂(B)を含有していることによって、柔軟性が向上し、ヒートショック性(耐熱性)に優れたものとなる。
なお、本発明におけるヒートショック性とは、温度変化に対する耐熱性のことであり、低温雰囲気下から高温雰囲気下へと温度変化させる処理を多数回受けても、得られた成形体の外観に亀裂等が生じることなく、優れた外観形状を保つことができる性能をいう。
本発明に用いられる共重合オレフィン樹脂(B)としては、ポリエチレン、ポリプロピレンの共重合体が挙げられる。例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-、無水マレイン共重合体、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体が挙げられる。
中でも、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体が柔軟性、ヒートショック性を向上させる効果が大きいため好ましい。このような共重合オレフィン樹脂(B)の市販品としては、「ボンダインAX8390」(エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体;アルケマ社製)、「ボンドファスト7M」(エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体;住友化学社製)等を用いることができる。
共重合オレフィン樹脂(B)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して20〜100質量部であることが必要であり、中でも40〜80質量部であることが好ましい。共重合オレフィン樹脂(B)の含有量が20質量部未満であると、柔軟性とヒートショック性の向上効果に乏しいものとなる。一方、100質量部を超えると、耐熱性に劣るとともに、機械的強度が低く、また耐燃料性も低くなりやすい。
次に、エポキシ樹脂(C)について説明する。本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物において、上記した共重合ポリエステル樹脂(A)中にエポキシ樹脂(C)を含有していることによって、被着材に対する接着性が向上する。
本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)としては、1分子当り平均1個以上の反応性エポキシ基を有するものであってビスフェノール型、エーテル・エステル型、ノボラックエポキシ型、エステル型、環状脂肪族型等の各種タイプのものが挙げられ、その1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することかできる。中でも、ビスフェノール型のエポキシ樹脂が接着性を高める上で好ましく、市販品として「エピクロン4050」(DIC社製)、「エピコート1004」(三菱化学社製)等を用いることができる。
エポキシ樹脂(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して10〜60質量部であることが必要であり、中でも20〜40質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂(C)の含有量が10質量部未満であると、被着材に対する接着性の向上効果に乏しいものとなる。一方、60質量部を超えると、耐熱性に劣るとともに、機械的強度が低く、また耐燃料性も低くなりやすい。
そして、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、上記のような成分を含有するものであるため柔軟性に優れている。本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、適度な硬さを有し、脆さが改良されたものであることを示す指標として、
20℃でのショアD硬度が50以下であることが好ましく、中でも25〜45であることが好ましい。ショアD硬度は、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を日精樹脂工業社製の射出成型機「PS20E2ASE」を用いて射出成形し、厚み3mm、幅20mmの成型サンプルを作成し、このサンプルを2枚重ね合わせ、20℃にてショアD硬度計(WESTOP WR−105D)を用い測定するものである。
20℃でのショアD硬度が50を超えると、共重合ポリエステル樹脂組成物は、硬さが不十分で脆い樹脂となり、多種多様な用途に用いることが困難となりやすい。一方、ショアD硬度が20未満であると、成形加工性が低下しやすくなる。そして、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は上記のヤング率とショアD硬度の両者ともに満足するものであることが好ましい。
さらに、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物が湿熱耐久性に優れることを示す指標として、下記に示すひずみ保持率が80%以上であることが好ましく、中でも85%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。ひずみ保持率が80%未満では、湿熱処理により樹脂組成物の強度低下が大きいものとなり、このような樹脂組成物を使用した成形体は形状安定性に劣るものとなる。つまり、湿熱環境下で長期間使用することが困難な成形体となる。
なお、本発明におけるひずみ保持率は、以下のようにして算出する。本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を日精樹脂工業社製の射出成型機「PS20E2ASE」を用いて、融点よりも50℃高い温度で溶融した樹脂を圧力1MPaで金型内に射出成形し、厚み1mm、幅3mmの成型サンプルを作成し、ISO規格527−2に記載の方法に従い、引張破壊ひずみを測定する(処理前の引張破壊ひずみ)。恒温恒湿器(ヤマト科学社製IG400型)を用い、得られた成型サンプルを、温度60℃湿度95%RHの環境下に200時間保存処理し、湿熱処理を施す。湿熱処理後のサンプルを上記と同様にして引張破壊ひずみを測定し、下記式により算出する。
ひずみ保持率(%)=〔(処理後の引張破壊ひずみ)/(処理前の引張破壊ひずみ)〕
×100
加えて、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物が耐燃料性に優れることを示す指標として、23℃×24時間のガソリン浸漬処理後のサンプル形状変化がない(サンプル表面に亀裂等が生じていない)ことが好ましい。
さらに、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、耐熱性にも優れるものであり、融点は120〜180℃であることが好ましく、中でも130〜170℃であることが好ましい。融点が120℃未満では耐熱性に乏しく、用いる用途が限定される。一方、180℃を超えると成型時の加工温度を高くする必要があり、コスト的に不利になると同時に、樹脂の熱劣化も大きくなる。本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、このような融点を有するものであるため、成形加工性にも優れるものとなる。
なお、融点は、パーキンエルマー社ダイヤモンドDSCを使用し、10℃/分で昇温、降温し、融解ピークの温度で測定するものである。
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、200℃での溶融粘度が10dPa・s〜3000dPa・sであることが好ましく、100〜1500dPa・sであることがより好ましい。溶融粘度がこの範囲内であることにより、低圧での成形加工が可能となり、ホットメルトモールディング用途やポッティング用途に好適なものとなる。具体的には、圧力0.1〜5MPa、特に0.1〜3MPaでの成形が可能なものとなる。
溶融粘度が3000dPa・sを超えると、流動性が低くなり、低圧での成形が困難となる。また溶融粘度を低下させるために溶融温度を高くすると、装置への負荷が大きくなるほか、共重合ポリエステル樹脂組成物の熱劣化も顕著なものとなる。一方、溶融粘度が10dPa・s未満であると、共重合ポリエステル樹脂の強度が低くなりやすい。
なお、溶融粘度は、フローテスター(島津製作所製、型式CFT−500)にて、ノズル径1.0mm、ノズル長10mmのノズルを用い、剪断速度1000sec−1の時の溶融粘度を測定するものである。
なお、本発明でいうホットメルトモールディング法とは、溶剤を用いることなく、樹脂を溶融し、予め工業用部品(特に電子部品)が配置された金型内に、溶融した樹脂を低圧(好ましくは0.1〜3MPa)で射出注入し、前記部品のハウジング又はケースとして樹脂の成形(いわゆるインサート成形)を行う方法をいう。
本発明におけるポッティング法とは、予めハウジング内又は基板上に工業用部品を置き、これに溶融した樹脂を低圧(好ましくは1MPa以下)で注入又は滴下し、前記ハウジング又は基板と前記部品とを一体化させる方法をいう。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、柔軟性、接着性、ヒートショック性、湿熱耐久性等、耐燃料性に優れることから、ホットメルトモールディング用途又はポッティング用途に用いると、成形加工性が良好であるのみならず、得られる製品(部品)は、インサートする電子部品と樹脂との接着に優れ、樹脂と電子部品との剥離が生じにくいものとなる。このため、過酷な環境下で長期間使用をしても、樹脂と電子部品との剥離が生じず、樹脂部分にひびや割れも生じにくいものとなる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物をホットメルトモールディング用途又はポッティング用途に用いるに際して、樹脂組成物中に発泡剤や発泡核剤を添加することによって、発泡成形を行ってもよい。これにより、樹脂組成物の使用量(質量)を低減できて軽量化や製造コストの低減を図ることができる。また、電子部品を覆う樹脂組成物が発泡していることにより、弾性やクッション性が大きくなり、振動による電子部品のクラックや損傷を生じにくくすることが可能となる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物に添加する発泡剤としては、それ自体公知の無機発泡剤または有機発泡剤を用いることができる。発泡剤の具体例としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジニトロソテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、またそれらの混合物などを挙げることができる。ただし、発泡時に分解ガスとして水蒸気を発生するものは、電子部品に対し水分の影響を与えてしまうため好ましくない。したがって、分解ガスとして窒素ガス等不活性なガスを発生するものが好ましい。そのような発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等を用いることができる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物中の発泡剤の配合量は、0.05〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物に添加する発泡核剤としては、酸化チタン、タルク、カオリン、クレイ、珪酸カルシウム、シリカ、クエン酸ソーダ、炭酸カルシウム、珪藻土、焼成パーライト、ゼオライト、ベントナイト、ガラス、石灰石、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸第二鉄、ポリテトラフルオロエチレン粉末などの無機粒子を用いることができる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物中の発泡核剤の含有量は、0.01〜15質量%とすることが好ましく、中でも0.1〜10質量%であることが好ましい。
そして、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物に、上記した発泡剤と発泡核剤とを使用して発泡成形する際には、例えば、樹脂組成物に発泡核剤を添加したものをペレット状もしくは粉末状にした後、発泡剤と混合し、次いでこの混合物を上記したホットメルトモールディング法やポッティング法にて使用することにより、発泡成形を行うことができる。
次に、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、共重合ポリエステル樹脂(A)は、上記の酸成分とグリコール成分を150〜250℃でエステル化反応させた後、重縮合反応触媒の存在下で減圧しながら(好ましくは大気圧から10〜30Pa程度まで減圧しながら)230〜300℃で重縮合することにより得ることができる。また例えば、芳香族ジカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とグリコール成分を150℃〜250℃でエステル交換反応させた後、重縮合反応触媒の存在下で減圧しながら(好ましくは大気圧から10〜30Pa程度まで減圧しながら230℃〜300℃で重縮合することにより得ることができる。
次に、上記製造方法で得られたポリエステル樹脂(A)と、共重合オレフィン樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)とを、一軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー等を用いる混練法によって溶融混練する。中でも、混練状態を良好にする観点から、特に二軸押出機を使用することが好ましい。例えば、二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS、スクリュ径26mm)の主ホッパーに、上記製造方法で得られたポリエステル樹脂(A)と、共重合オレフィン樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)とを供給し、180℃〜230℃で溶融混練し、ストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断して、樹脂組成物を得ることができる。
さらに、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核剤等を添加してもよい。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、カルボジイミド化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物等)が挙げられる。
無機充填材としては、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。なお、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物にこれらを添加する方法は特に限定されない。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(1)融点、溶融粘度
上記と同様の方法で測定した。
(2)ポリマー組成
得られた共重合ポリエステル樹脂組成物を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(3)ショアD硬度
上記と同様の方法で測定した。
(4)引張破壊ひずみ、ひずみ保持率(湿熱耐久性)
上記と同様の方法で測定した。
(5)引張強度
(4)と同様にして得られた成型サンプルを用い、引張試験機「テンシロン」(オリエンテック社製UTM−4−100型)を用い、20℃にて引張速度10mm/分で測定するものである。
(6)ヒートショック性
下記の成形性1の評価で作製した電気部品に、90℃で2時間アニール処理したものを使用し、−30℃の雰囲気下で30分保持した後、直ちに90℃の雰囲気下で30分保持するというヒートサイクルを50回行った。50回のヒートサイクル終了時点で電気部品の状態を目視にて以下の3段階で評価した。
○:特に形状変化(亀裂等の損傷)していない
△:若干、形状変化(亀裂等の損傷)している
×:大きく形状変化(亀裂等の損傷)している
(7)耐燃料性
下記の成形性1の評価で作製した電気部品を、23℃で24時間、ガソリンに浸漬処理し、浸漬処理後の電気部品の状態を目視にて以下の3段階で評価した。
○:特に形状変化(亀裂等の損傷)していない
△:若干、形状変化(亀裂等の損傷)している
×:大きく形状変化(亀裂等の損傷)している
(8)成形性1(ホットメルトモールディング)
得られた共重合ポリエステル樹脂を融点よりも50℃高い温度で溶融し、日精樹脂工業社製「PS20E2ASE」を用い、圧力1MPaにて射出成形を行った。このとき、被モールディング材料として塩化ビニル製のリード線2本をハンダ付けした回路基板を用い、アルミニウム製金型を用いてインサート成型することで、共重合ポリエステル樹脂と回路基板が一体化された電気部品を得た。部品を得る際の成形性を、金型から離型可能となる時間(離型時間)にて以下の3段階で評価した。
○・・・離型時間が10秒以内であった。
△・・・離型時間が10秒を超え20秒以内であった。
×・・・離型時間が20秒を超えていた。
上記の成形性が○の部品について、部品を80℃、95%の環境下で500時間放置した後、回路基板内の絶縁特性について以下のように評価した。
○・・・絶縁性が保持されている。
×・・・絶縁性が破られている。
なお、回路基板において、2本のリード線のハンダ付けした箇所(2箇所)はつながっていない。したがって、通常ではリード線間で電気は流れない(絶縁性が保たれている)。湿熱処理後、樹脂と回路基板の間に水が入り込むと、水が導体となってリード線間に電流が流れる(絶縁性が破られる)こととなる。
(8)成形性2(ポッティング)
得られた共重合ポリエステル樹脂を融点よりも50℃高い温度で溶融した。そして、ハウジング(容器型のもの)内に成形性1で使用したものと同じ回路基板を置き、これに溶融した共重合ポリエステル樹脂を圧力0.5MPaにて注入し、ハウジングと樹脂と回路基板を一体化させて電気部品を得た。部品を得る際の成形性を目視にて以下の3段階で評価した。
○・・・樹脂が部品全体に流れ込んでおり、表面に凹凸が見られない。
△・・・樹脂が部品全体に流れこんでいるが、形状に凹凸が見られる。
×・・・樹脂の流れこみが不十分で、回路基板の一部が露出している。
上記の成形性が○の部品について、部品を80℃、95%の環境下で500時間放置した後、回路基板内の絶縁特性について以下のように評価した。
○・・・絶縁性が保持されている。
×・・・絶縁性が破られている。
なお、回路基板において、2本のリード線のハンダ付けした箇所(2箇所)はつながっていない。従って、通常ではリード線間で電気は流れない(絶縁性が保たれている)。湿熱処理後、樹脂と回路基板の間に水が入り込むと、水が導体となってリード線間に電流が流れる(絶縁性が破られる)こととなる。
製造例1
酸成分として、テレフタル酸33質量部、ドデカン二酸28質量部を用い、ジオール成分として、1,4−ブタンジオール39質量部を用い、240℃に加熱して、エステル交換反応を行った。次に、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.1質量部を添加し、温度240℃にて60分間で徐々に真空度を上げながら10〜30Paの高真空までもっていき、その後4時間重縮合反応を行い、反応終了後に払い出し、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
製造例2、5
テレフタル酸、ドデカン二酸、1,4−ブタンジオールの添加量を変更し、表1に示す組成となるようにした以外は、製造例1と同様に行い、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
製造例3〜4
ドデカン二酸をセバシン酸、アジピン酸に変更し、表1に示す組成となるようにした以外は、製造例1と同様に行い、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
製造例1〜5で得られた共重合ポリエステル樹脂の組成、特性値を表1に示す。
共重合オレフィン樹脂(B)として、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製「ボンダインAX8390」)を使用した。
また、エポキシ樹脂(C)として、ビスフェノール型のエポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1004」)を使用した。
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS、スクリュ径26mm)の主ホッパーに、上記製造例1で得られたポリエステル樹脂(A)100質量部と、共重合オレフィン樹脂(B)80質量部、エポキシ樹脂(C)20質量部とを供給し、180℃で溶融混練した。そしてストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断して、樹脂組成物を得た。
実施例2〜7、比較例1〜6
ポリエステル樹脂(A)の種類と量、共重合オレフィン樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)の量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について各種特性値を測定した結果、各種性能を評価した結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例1〜7で得られた樹脂組成物は、本発明を満足する組成のものであったため、適度な硬さを有しており、脆さが改良されたものであった。このため、20℃でのショアD硬度が50以下であり、さらに、ひずみ保持率も高く、湿熱耐久性にも優れていた。さらに、実施例1〜7で得られた樹脂組成物は、ホットメルトモールディング又はポッティングで成形品を得た際の成形性に優れており、得られた成形品は成形時、湿熱処理後の両方において十分な絶縁特性を有していた。また、ヒートショック性、耐燃料性にも優れていた。つまり、両方法で得られた成形品は、樹脂と部品との接着性が良好であり、過酷な環境下においても長期間使用が可能なものであった。
一方、比較例1で得られた樹脂組成物は、共重合オレフィン樹脂を含有していないものであったため、ショアD硬度が高く柔軟性に劣るものであり、ヒートショック性にも劣るものであった。また、湿熱処理後の絶縁性にも劣るものであった。
比較例2で得られた樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有していないものであったため、接着性に劣るものとなり、その結果、湿熱処理後の絶縁性にも劣るものであった。
比較例3で得られた共重合ポリエステル樹脂は、共重合オレフィン樹脂の含有量が多かったため、融点が低く、耐熱性に劣るとともに、引張強度が低く、耐燃料性に劣り、また成形性にも劣るものであった。
比較例4で得られた共重合ポリエステル樹脂は、エポキシ樹脂含有量が多かったため、融点が消失し、耐熱性に劣るとともに、引張強度が低く、耐燃料性に劣り、また成形性にも劣るものであった。
比較例5で得られた共重合ポリエステル樹脂は、共重合オレフィン樹脂とエポキシ樹脂の含有量が多かったため、融点が低く、耐熱性に劣るとともに、引張強度が低く、耐燃料性に劣り、また成形性にも劣るものであった。
比較例6で得られた樹脂組成物は、ポリエステル樹脂中のドデカン二酸の共重合量が少なかったため、ショアD硬度が高く、柔軟性に劣るものであり、また、ひずみ保持率が低く、湿熱耐久性に劣り、湿熱処理後の絶縁性にも劣るものであった。

Claims (4)

  1. 共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、共重合オレフィン樹脂(B)を20〜100質量部、エポキシ樹脂(C)を10〜60質量部含有する樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有し、グリコール成分として1,4-ブタンジオールを含有し、酸成分中の炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の含有量が10〜50モル%であり、グリコール成分中の1,4-ブタンジオールの含有量が80モル%以上であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂組成物。
  2. 20℃でのショアD硬度が50以下である請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
  3. 共重合オレフィン樹脂がエチレン-アクリル酸を主成分とする共重合体である請求項1又は2に記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
  4. エポキシ樹脂がビスフェノール型のエポキシ樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
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