JP2015042722A - 共重合ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、共重合オレフィン樹脂(B)を20〜100質量部、エポキシ樹脂(C)を10〜60質量部含有する樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有し、グリコール成分として1,4-ブタンジオールを含有し、酸成分中の炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の含有量が10〜50モル%であり、グリコール成分中の1,4-ブタンジオールの含有量が80モル%以上であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂組成物を要旨とするものである。
そして、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、成形性に優れ、射出成形、ブロー成形、押し出し成形、溶融紡糸等により各種の成形品(容器、フィルム、繊維、シート)とすることが可能である。また、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、溶融時の流動性に優れ、低圧での射出成形が可能であるため、薄肉や複雑な形状を有する部品にも溶融成形が可能であり、モールディング用途にも好適に用いることができる。さらには、ハウジング内や基盤上に部品を置き、これに樹脂を注型し、ハウジングや基板と部品を一体化させるポッティング用途にも好適に用いることができる。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、上記のような優れた性能を有することから、特に電気・電子部品あるいは自動車用部品など、過酷な環境でも使用できる部品等に好適に使用することが可能である。
本発明の共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分は、芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有するものである。
まず、酸成分について説明する。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。中でもテレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。
一方、80モル%を超えると、炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の割合が少なくなり、共重合ポリエステル樹脂の柔軟性や湿熱耐久性を向上させる効果に乏しくなりやすい。
なお、本発明におけるヒートショック性とは、温度変化に対する耐熱性のことであり、低温雰囲気下から高温雰囲気下へと温度変化させる処理を多数回受けても、得られた成形体の外観に亀裂等が生じることなく、優れた外観形状を保つことができる性能をいう。
中でも、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体が柔軟性、ヒートショック性を向上させる効果が大きいため好ましい。このような共重合オレフィン樹脂(B)の市販品としては、「ボンダインAX8390」(エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体;アルケマ社製)、「ボンドファスト7M」(エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体;住友化学社製)等を用いることができる。
20℃でのショアD硬度が50以下であることが好ましく、中でも25〜45であることが好ましい。ショアD硬度は、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を日精樹脂工業社製の射出成型機「PS20E2ASE」を用いて射出成形し、厚み3mm、幅20mmの成型サンプルを作成し、このサンプルを2枚重ね合わせ、20℃にてショアD硬度計(WESTOP WR−105D)を用い測定するものである。
なお、本発明におけるひずみ保持率は、以下のようにして算出する。本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を日精樹脂工業社製の射出成型機「PS20E2ASE」を用いて、融点よりも50℃高い温度で溶融した樹脂を圧力1MPaで金型内に射出成形し、厚み1mm、幅3mmの成型サンプルを作成し、ISO規格527−2に記載の方法に従い、引張破壊ひずみを測定する(処理前の引張破壊ひずみ)。恒温恒湿器(ヤマト科学社製IG400型)を用い、得られた成型サンプルを、温度60℃湿度95%RHの環境下に200時間保存処理し、湿熱処理を施す。湿熱処理後のサンプルを上記と同様にして引張破壊ひずみを測定し、下記式により算出する。
ひずみ保持率(%)=〔(処理後の引張破壊ひずみ)/(処理前の引張破壊ひずみ)〕
×100
なお、融点は、パーキンエルマー社ダイヤモンドDSCを使用し、10℃/分で昇温、降温し、融解ピークの温度で測定するものである。
なお、溶融粘度は、フローテスター(島津製作所製、型式CFT−500)にて、ノズル径1.0mm、ノズル長10mmのノズルを用い、剪断速度1000sec−1の時の溶融粘度を測定するものである。
まず、共重合ポリエステル樹脂(A)は、上記の酸成分とグリコール成分を150〜250℃でエステル化反応させた後、重縮合反応触媒の存在下で減圧しながら(好ましくは大気圧から10〜30Pa程度まで減圧しながら)230〜300℃で重縮合することにより得ることができる。また例えば、芳香族ジカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とグリコール成分を150℃〜250℃でエステル交換反応させた後、重縮合反応触媒の存在下で減圧しながら(好ましくは大気圧から10〜30Pa程度まで減圧しながら230℃〜300℃で重縮合することにより得ることができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、カルボジイミド化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物等)が挙げられる。
無機充填材としては、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。なお、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物にこれらを添加する方法は特に限定されない。
(1)融点、溶融粘度
上記と同様の方法で測定した。
(2)ポリマー組成
得られた共重合ポリエステル樹脂組成物を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(3)ショアD硬度
上記と同様の方法で測定した。
(4)引張破壊ひずみ、ひずみ保持率(湿熱耐久性)
上記と同様の方法で測定した。
(5)引張強度
(4)と同様にして得られた成型サンプルを用い、引張試験機「テンシロン」(オリエンテック社製UTM−4−100型)を用い、20℃にて引張速度10mm/分で測定するものである。
下記の成形性1の評価で作製した電気部品に、90℃で2時間アニール処理したものを使用し、−30℃の雰囲気下で30分保持した後、直ちに90℃の雰囲気下で30分保持するというヒートサイクルを50回行った。50回のヒートサイクル終了時点で電気部品の状態を目視にて以下の3段階で評価した。
○:特に形状変化(亀裂等の損傷)していない
△:若干、形状変化(亀裂等の損傷)している
×:大きく形状変化(亀裂等の損傷)している
(7)耐燃料性
下記の成形性1の評価で作製した電気部品を、23℃で24時間、ガソリンに浸漬処理し、浸漬処理後の電気部品の状態を目視にて以下の3段階で評価した。
○:特に形状変化(亀裂等の損傷)していない
△:若干、形状変化(亀裂等の損傷)している
×:大きく形状変化(亀裂等の損傷)している
(8)成形性1(ホットメルトモールディング)
得られた共重合ポリエステル樹脂を融点よりも50℃高い温度で溶融し、日精樹脂工業社製「PS20E2ASE」を用い、圧力1MPaにて射出成形を行った。このとき、被モールディング材料として塩化ビニル製のリード線2本をハンダ付けした回路基板を用い、アルミニウム製金型を用いてインサート成型することで、共重合ポリエステル樹脂と回路基板が一体化された電気部品を得た。部品を得る際の成形性を、金型から離型可能となる時間(離型時間)にて以下の3段階で評価した。
○・・・離型時間が10秒以内であった。
△・・・離型時間が10秒を超え20秒以内であった。
×・・・離型時間が20秒を超えていた。
上記の成形性が○の部品について、部品を80℃、95%の環境下で500時間放置した後、回路基板内の絶縁特性について以下のように評価した。
○・・・絶縁性が保持されている。
×・・・絶縁性が破られている。
なお、回路基板において、2本のリード線のハンダ付けした箇所(2箇所)はつながっていない。したがって、通常ではリード線間で電気は流れない(絶縁性が保たれている)。湿熱処理後、樹脂と回路基板の間に水が入り込むと、水が導体となってリード線間に電流が流れる(絶縁性が破られる)こととなる。
得られた共重合ポリエステル樹脂を融点よりも50℃高い温度で溶融した。そして、ハウジング(容器型のもの)内に成形性1で使用したものと同じ回路基板を置き、これに溶融した共重合ポリエステル樹脂を圧力0.5MPaにて注入し、ハウジングと樹脂と回路基板を一体化させて電気部品を得た。部品を得る際の成形性を目視にて以下の3段階で評価した。
○・・・樹脂が部品全体に流れ込んでおり、表面に凹凸が見られない。
△・・・樹脂が部品全体に流れこんでいるが、形状に凹凸が見られる。
×・・・樹脂の流れこみが不十分で、回路基板の一部が露出している。
上記の成形性が○の部品について、部品を80℃、95%の環境下で500時間放置した後、回路基板内の絶縁特性について以下のように評価した。
○・・・絶縁性が保持されている。
×・・・絶縁性が破られている。
なお、回路基板において、2本のリード線のハンダ付けした箇所(2箇所)はつながっていない。従って、通常ではリード線間で電気は流れない(絶縁性が保たれている)。湿熱処理後、樹脂と回路基板の間に水が入り込むと、水が導体となってリード線間に電流が流れる(絶縁性が破られる)こととなる。
酸成分として、テレフタル酸33質量部、ドデカン二酸28質量部を用い、ジオール成分として、1,4−ブタンジオール39質量部を用い、240℃に加熱して、エステル交換反応を行った。次に、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.1質量部を添加し、温度240℃にて60分間で徐々に真空度を上げながら10〜30Paの高真空までもっていき、その後4時間重縮合反応を行い、反応終了後に払い出し、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
テレフタル酸、ドデカン二酸、1,4−ブタンジオールの添加量を変更し、表1に示す組成となるようにした以外は、製造例1と同様に行い、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
ドデカン二酸をセバシン酸、アジピン酸に変更し、表1に示す組成となるようにした以外は、製造例1と同様に行い、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
また、エポキシ樹脂(C)として、ビスフェノール型のエポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1004」)を使用した。
二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS、スクリュ径26mm)の主ホッパーに、上記製造例1で得られたポリエステル樹脂(A)100質量部と、共重合オレフィン樹脂(B)80質量部、エポキシ樹脂(C)20質量部とを供給し、180℃で溶融混練した。そしてストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断して、樹脂組成物を得た。
ポリエステル樹脂(A)の種類と量、共重合オレフィン樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)の量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
比較例2で得られた樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有していないものであったため、接着性に劣るものとなり、その結果、湿熱処理後の絶縁性にも劣るものであった。
比較例3で得られた共重合ポリエステル樹脂は、共重合オレフィン樹脂の含有量が多かったため、融点が低く、耐熱性に劣るとともに、引張強度が低く、耐燃料性に劣り、また成形性にも劣るものであった。
比較例4で得られた共重合ポリエステル樹脂は、エポキシ樹脂含有量が多かったため、融点が消失し、耐熱性に劣るとともに、引張強度が低く、耐燃料性に劣り、また成形性にも劣るものであった。
比較例5で得られた共重合ポリエステル樹脂は、共重合オレフィン樹脂とエポキシ樹脂の含有量が多かったため、融点が低く、耐熱性に劣るとともに、引張強度が低く、耐燃料性に劣り、また成形性にも劣るものであった。
比較例6で得られた樹脂組成物は、ポリエステル樹脂中のドデカン二酸の共重合量が少なかったため、ショアD硬度が高く、柔軟性に劣るものであり、また、ひずみ保持率が低く、湿熱耐久性に劣り、湿熱処理後の絶縁性にも劣るものであった。
Claims (4)
- 共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、共重合オレフィン樹脂(B)を20〜100質量部、エポキシ樹脂(C)を10〜60質量部含有する樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として芳香族ジカルボン酸と炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸とを含有し、グリコール成分として1,4-ブタンジオールを含有し、酸成分中の炭素数8以上の脂肪族ジカルボン酸の含有量が10〜50モル%であり、グリコール成分中の1,4-ブタンジオールの含有量が80モル%以上であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂組成物。
- 20℃でのショアD硬度が50以下である請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
- 共重合オレフィン樹脂がエチレン-アクリル酸を主成分とする共重合体である請求項1又は2に記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
- エポキシ樹脂がビスフェノール型のエポキシ樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
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