JP2015035875A - 電気自動車の制御装置 - Google Patents

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国棟 李
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Abstract

【課題】 走行駆動用のモータのローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサにより検出される回転角度の起算点を一致させるように、回転角度センサにより検出される回転角度ゼロ点を調整する電気自動車の制御装置を提供する。【解決手段】 モータ6のローターの回転角度を回転角度センサ36から得てベクトル制御を行う電気自動車の制御装置において、モータコントロール部29に、車両の速度およびECU21からのトルク指令に応じて、ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサ36により検出される回転角度の起算点を一致させるように、回転角度センサ36により検出される回転角度の起算点を設定規則に従って調整する回転角度ゼロ点調整部38を設けた。【選択図】 図2

Description

この発明は、例えば、インホイールモータ駆動装置を備えた電気自動車において、モータ回転角度センサにより検出される回転角度のゼロ点を自動調整する電気自動車の制御装置に関する。
電気自動車において、駆動輪となる左右の車輪が、それぞれ独立の走行用のモータにより駆動される自動車が公知である(特許文献1)。前記モータの回転は、減速機および車輪用軸受を介して車輪に伝達される。前記モータとして、例えば、IPMモータ(埋込磁石型同期モータ)が適用される。
特開2012−178919号公報 特開2002−51584号公報
IPMモータは、モータ回転角度センサにより検出される回転角度に基づいて、モータへの通電を制御するため、その回転角度センサにより検出される回転角と、実際のモータローターの回転位置とを整合させることが重要である。
具体的に、モータの回転軸に取り付けた回転角度センサにおいて、ローターの回転位置の起算点となるゼロ点は、回転角度センサにより検出される回転角度の起算点(電気角度ゼロ点)と、一致させるように、回転角度センサの取り付け位置の調整方法やモータ回転角度センサにより検出される電気角度の調整方法が提案される。
従来技術1(特許文献2)
図9は、従来例に係り、誘起電圧とモータ回転角度センサにより検出される回転角度のずれをゼロにする調製方法を説明する図である。
PMモータを無負荷で回転させたときの誘起電圧と、回転位置センサの位相信号とのずれをそれらの波形信号から検出し、このずれ(図示ΔΘ)をゼロにする値をオフセット量Θ_OFFSETとして求めて、このオフセット量Θ_OFFSETをモータ制御における、回転角度センサにより検出される回転角度の補正量とする。つまり電気角度のオフセット量Θ_OFFSETを調製し、調製後のオフセット量Θ_OFFSETをCPUのROMに書き込み、モータ制御時、回転角度センサにより検出される回転角度の値ΘにΘ_OFFSETを加算して、モータへの通電を制御する。
しかし、車載モータにおける誘起電圧を求めることは困難であるため、本技術を車載モータのゼロ点を調整する技術に適用することが難しい。
また、モータ軸には、経年変化により、回転ぶれが発生する可能性がある。モータ軸に取り付けられたローターが回転ぶれを受けると、回転角度の検出精度が劣化する問題がある。また回転センサの回路の精度も経時劣化に起因して徐々に変化する。これらの影響で、トルク指令値に対する実測トルク値のばらつきが大きくなり、且つトルク低下の問題が生じる。そこで、車載モータに対して、定期的に回転角度センサにより検出される回転角度と、実際のモータローターの回転位置とを整合させることが必要となる。
この発明の目的は、走行駆動用のモータのローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサにより検出される回転角度の起算点(電気角度ゼロ点)を一致させるように、回転角度センサにより検出される回転角度ゼロ点を調整する電気自動車の制御装置を提供することである。
この発明の電気自動車の制御装置は、車両全般を制御する電気制御ユニットであるECU21と、直流電力を走行用のモータ6の駆動に用いる交流電力に変換するインバータ31を含むパワー回路部28、および前記ECU21からのトルク指令に従って前記パワー回路部28を制御するモータコントロール部29を有するインバータ装置22とを備え、
前記モータ6の回転角度を検出する回転角度センサ36を設け、前記モータコントロール部29は、前記モータ6のローターの回転角度を前記回転角度センサ36から得てベクトル制御を行う電気自動車の制御装置において、
前記モータコントロール部29に、
前記車両の速度および前記ECU21からのトルク指令に応じて、前記ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、前記回転角度センサ36により検出される回転角度の起算点を一致させるように、前記回転角度センサ36により検出される前記回転角度の起算点を設定規則に従って調整する回転角度ゼロ点調整部38を設けたことを特徴とする。
この構成によると、外部の操作信号、例えば、スイッチ、ボタン等からの入力信号により、回転角度センサ36により検出される回転角度の起算点(すなわち、電気角度ゼロ点)の自動調整を行う。車両走行時において、回転角度ゼロ点調整部38は、車両の速度およびECU21からのトルク指令に応じて、下記に示すように、回転角度センサ36により検出される回転角度の起算点を調整する。
1.回転角度センサ36の値の一定範囲内で、オフセット値を増加方向へ調整する。オフセット値の増加につれ実測トルクを記録し、その記録された実測トルクと相応な指令値トルクとを比較し、最小の実測トルクT1と相応するゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET1を記録する。
2.回転角度センサ36の値の一定範囲内で、オフセット値を減少方向へ調整する。前記と同様に、最小の実測トルクT2と相応するゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET2を記録する。
3.前記の記録された実測トルクT1と実測トルクT2とを比較し、小さい方の実測トルクに相応するゼロ点のオフセット値を、調整後のゼロ点オフセット値として記録する。
前記調整は、一定の回転数を元に、一定指令トルク値の条件下で調整する。なおオフセット値を減少方向へ調整してゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET2を記録した後、オフセット値を増加方向へ調整してゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET1を記録しても良い。前記のように回転角度センサ36により検出される回転角度のゼロ点を調整することで、ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサ36により検出される回転角度のゼロ点が略一致する。よって、車両に搭載される走行用のモータ6の誘起電圧を求めることなく、回転角度センサにより検出される回転角度のゼロ点を容易に調整することができる。また車両の運転者等が、このゼロ点調整を定期的にまたは任意のタイミングで不定期に行うことで、モータ軸の回転ぶれに起因する回転角度の検出精度の劣化を未然に防止することができる。
前記回転角度ゼロ点調整部38は、前記車両の定速走行時における車速およびトルク指令値に応じて、前記回転角度の起算点を調整するものであり、この調整された回転角度の起算点を記憶する記憶部を前記インバータ装置22に設けても良い。車両の定速走行時における車速およびトルク指令値に応じて、回転角度の起算点を調整するため、回転数制御とトルク制御とが釣り合っている安定な状態で、回転角度の起算点をより精度良く調整し得る。
この明細書において、前記「定速走行時」とは、車両停止状態から発進直後における一定速度の車速(例えば、時速30km/h以下の低速で、数ミリ秒〜数十ミリ秒の一定時間)であっても良いし、車両発進後、徐行速度を超える速度で巡航している車両走行途中の一定速度の車速で、数ミリ秒〜数十ミリ秒の一定時間であっても良い。
前記車両は、左右の車輪2,2を独立して駆動する前記モータ6をそれぞれ備え、前記回転角度ゼロ点調整部38がいずれか一方のモータ側における前記回転角度の起算点を調整するとき、前記モータコントロール部28は、前記一方のモータ6をトルク制御し、他方のモータ6を回転数制御するものとしても良い。例えば、右車輪2を駆動する右側モータ6の電気角度ゼロ点を調整するとき、左車輪2を駆動する左側モータ6を回転数制御で実施し、前記右側モータ6をトルク制御で実施する。逆に、左側モータ6の電気角度ゼロ点を調整するとき、右側モータ6を回転数制御で実施し、前記左側モータ6をトルク制御で実施する。
前記設定規則として、モータ回転数とトルクとの関係を定めたトルク指令マップと、モータ回転数およびトルクに応じたモータパラメータを定めたモータパラメータマップとを設け、前記回転角度ゼロ点調整部38は、前記一方のモータ6が一定のモータ回転数で回転する状態で、前記トルク指令マップから取り込んだトルク指令値が、前記モータパラメータマップから算出された実測トルクと一致するように、前記回転角度の起算点を調整するものとしても良い。
この場合、前記トルク指令マップは、例えば、モータ台上試験により作成し、記憶しておく。ゼロ点調製しようとするモータ6をトルク制御するとき、アクセル信号に基づき、記憶されたトルク指令マップから相応な一次電流と電流推進角を取り出して、前記モータ6を制御する。前記モータパラメータマップは、例えば、台上試験および実車試験結果に基づき作成し、記憶しておく。モータ回転数およびトルクに応じて、モータパラメータマップからパラメータを取得し、実測トルクとして算出することができる。
回転角度ゼロ点調整部38は、前記トルク指令マップ中の複数箇所で調整したゼロ点のオフセット値の平均値を算出し、この算出した平均値を、前記回転角度の起算点のオフセット値としても良い。この場合、例えば、実測トルクの一部に測定誤差があったとしても、前記平均値を、前記回転角度の起算点のオフセット値とすることで測定誤差の影響を緩和することができる。その結果、回転角度の検出精度を高めることができる。
前記モータ6は、車両の前輪3および後輪2のいずれか一方、または両方を駆動し、前記モータ6と車輪用軸受4と減速機7とを含むインホイールモータ駆動装置8を構成するものとしても良い。
この発明の電気自動車の制御装置は、車両全般を制御する電気制御ユニットであるECUと、直流電力を走行用のモータの駆動に用いる交流電力に変換するインバータを含むパワー回路部、および前記ECUからのトルク指令に従って前記パワー回路部を制御するモータコントロール部を有するインバータ装置とを備え、前記モータの回転角度を検出する回転角度センサを設け、前記モータコントロール部は、前記モータのローターの回転角度を前記回転角度センサから得てベクトル制御を行う電気自動車の制御装置において、前記モータコントロール部に、前記車両の速度および前記ECUからのトルク指令に応じて、前記ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、前記回転角度センサにより検出される回転角度の起算点を一致させるように、前記回転角度センサにより検出される前記回転角度の起算点を設定規則に従って調整する回転角度ゼロ点調整部を設けたため、走行駆動用のモータのローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサにより検出される回転角度の起算点を一致させるように、回転角度センサにより検出される回転角度ゼロ点を調整することができる。
この発明の第1の実施形態に係る電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。 同電気自動車のインバータ装置等の概念構成のブロック図である。 同電気自動車のIPMモータの概念構成図である。 同電気自動車のモータコントロール部のトルク制御系のブロック図である。 同電気自動車の制御装置におけるモータのトルク指令マップを示す図である。 同電気自動車の制御装置のモータパラメータマップを示す図である。 同電気自動車の制御装置の回転角度(位相)自動補正方法を示すフローチャートである。 同電気自動車の制御装置のアクセル開度の操作方法を概略示す図である。 従来例に係り、誘起電圧とモータ回転角度センサにより検出される回転角度のずれをゼロにする調製方法を説明する図である。
この発明の第1の実施形態に係る電気自動車の制御装置を図1ないし図8と共に説明する。図1は、この実施形態に係る電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。同図1に示すように、この電気自動車は、車体1の左右の後輪となる車輪2が駆動輪とされ、左右の前輪となる車輪3が従動輪の操舵輪とされた4輪の自動車である。駆動輪および従動輪となる車輪2,3は、いずれもタイヤを有し、それぞれ車輪用軸受4,5を介して車体1に支持されている。
車輪用軸受4,5は、図1にてハブベアリングの略称「H/B」を付してある。駆動輪となる左右の車輪2,2は、それぞれ独立の走行用のモータ6,6により駆動される。モータ6の回転は、減速機7および車輪用軸受4を介して車輪2に伝達される。これらモータ6、減速機7、および車輪用軸受4は、互いに一つの組立部品であるインホイールモータ駆動装置8を構成しており、インホイールモータ駆動装置8は、一部または全体が車輪2内に配置される。減速機7は例えばサイクロイド減速機からなる。各車輪2,3には、電動式のブレーキ9,10が設けられている。また左右の前輪となる操舵輪である車輪3,3は、転舵機構11を介して転舵可能であり、操舵手段12により操舵される。
図2は、同電気自動車のインバータ装置等の概念構成のブロック図である。
同図2に示すように、この電気自動車は、自動車全般の制御を行う電気制御ユニットであるECU21と、このECU21の指令に従って走行用のモータ6の制御を行うインバータ装置22とを有する。ECU21は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。ECU21は、トルク配分手段21aと、力行・回生制御指令部21bとを有する。
トルク配分手段21aは、アクセル操作手段16の出力する加速指令と、ブレーキ操作手段17の出力する減速指令と、操舵手段12からの旋回指令とから、左右輪の走行用のモータ6,6に与える加速・減速指令をトルク指令値として生成し、インバータ装置22へ出力する。トルク配分手段21aは、ブレーキ操作手段17の出力する減速指令があったときに、モータ6を回生ブレーキとして機能させる制動トルク指令値と、ブレーキ9,10を動作させる制動トルク指令値とに配分する機能を持つ。回生ブレーキとして機能させる制動トルク指令値は、左右輪のモータ6,6に与える加速・減速指令をトルク指令値に反映させる。ブレーキ9,10を動作させる制動トルク指令値は、ブレーキコントローラ23へ出力する。
力行・回生制御指令部21bは、加速(力行)・減速(回生)の切換えを行うための指令フラグを、後述するモータコントロール部29のモータ力行・回生制御部33に与える。
インバータ装置22は、各モータ6に対して設けられたパワー回路部28と、このパワー回路部28を制御するモータコントロール部29とを有する。パワー回路部28は、バッテリ19直流電力をモータ6の力行および回生に用いる3相の交流電力に変換するインバータ31と、このインバータ31を制御するPWMドライバ32とを有する。モータ6は、3相の同期モータ等からなる。このモータ6には、同モータのローターの電気角としての回転角度を検出する回転角度センサ36が設けられている。インバータ31は、複数の半導体スイッチング素子で構成され、PWMドライバ32は、入力された電流指令をパルス幅変調し、前記各半導体スイッチング素子にオンオフ指令を与える。
モータコントロール部29は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、および電子回路により構成され、その基本となる制御部としてモータ力行(駆動)・回生制御部33を有している。このモータ力行・回生制御部33は、上位制御手段であるECU21から与えられるトルク指令等による加速(力行)・減速(回生)指令に従い、電流指令に変換して、パワー回路部28のPWMドライバ32に電流指令を与える手段である。
加速(力行)・減速(回生)の切換は、ECU21の力行・回生制御指令部21bからの指令フラグにより行う。モータ力行・回生制御部33は、力行制御手段33aと、回生制御手段33bとを有し、力行・回生制御指令部21bからの指令フラグにより力行制御手段33aおよび回生制御手段33bのいずれか一方が選択的に用いられる。
モータ力行・回生制御部33は、前記指令フラグにより、インバータ内部に予め設定したトルク指令マップを用い、モータ6に指令電流値を生成する。このときモータ6に実際に流れる電流を検出し、この電流を指令電流と一致させるために、モータ6をPI制御で制御する。
またモータコントロール部29は、制御パラメータ調整部34および回転角度ゼロ点調製部38を備えている。制御パラメータ調整部34は、モータ6を制御するときに用いるPI制御ゲインを調整する。一方、回転角度ゼロ点調製部38は、後述のように、モータ6のローターの回転角度のゼロ点に、回転角度センサ36により検出される回転角度のゼロ点を一致させるように、前記回転角度のゼロ点を調整する。これによりベクトル制御を精度良く実現し得る。
なお、ECU21、インバータ装置21、ブレーキコントローラ23、操舵手段12と4者間の信号転走は、コントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)通信で行われている。
図3は、この電気自動車のIPMモータの概念構成図である。
図3(a)に示すように、車輪を駆動するモータがIPMモータつまり埋込磁石型同期モータの場合は、磁石軸であるd軸方向よりそれと直交するq軸方向の磁気抵抗が小さくなるため、突極構造となり、d軸インダクタンスLdよりq軸インダクタンスLqが大きくなる。
この突極性により、磁石トルクTm以外にリラクタンストルクTrが併用でき、高トルクおよび高効率とすることもできる。
磁石トルクTm:回転子の永久磁石による磁界と巻線による回転子磁界と吸引反発して発生するトルクである。
リラクタンストルクTr:巻線による回転磁界に回転子の突極部が吸引されて発生するトルクである。
モータが発生する総トルクは下記のようになる。
T=p×{Ke×Iq+(Ld−Lq)×Id×Iq}
=Tm+Tr
p:極対数
Ld:モータのd軸インダクタンス
Lq:モータのq軸インダクタンス
Ke:モータ誘起電圧定数実効値
図3(b)に示すように、IPMモータに流す1次電流Iaを、トルク生成電流q軸電流Iqと、磁束生成電流d軸電流Idとに分離し、それぞれ独立に制御できるベクトル制御手法が周知である。
Id=−Ia×sinβ
Iq=Ia×cosβ
β:電流進角
図4は、この電気自動車のモータコントロール部のトルク制御系のブロック図である。図2も参照しつつ説明する。
モータコントロール部29は、モータ駆動電流を制御する手段であって、電流指令部40を含む。この電流指令部40は、モータ6に印加する駆動電流をモータ電流検出手段である電流センサ43で検出される検出値と、ECU21のトルク配分手段21aで生成した加速・減速指令によるトルク指令値とから、インバータ装置22のインバータ内部に予め設定したトルク指令マップを用い、相応の指令電流を生成する。つまりECU21からのトルク指令値に応じて、インバータ内部に生成された指令電流値の偏差を無くすためのPIフィードバック制御を行う。前記指令電流の方向は、ECU21の力行・回生制御指令部21bから与えられる指令フラグにより切換えられる。
モータ力行・回生制御部33は、モータ6のローターの回転角を回転角度センサ36から得て、ベクトル制御を行う。ここで車体の左右の後輪2に設けられたモータ6は、力行時と回生時とでトルク発生方向が互いに異なる。つまり前記モータ6をこの出力軸の方向から見ると、左側の後輪駆動用のモータ6はCW方向のトルクを発生し、右側の後輪駆動用のモータ6はCCW方向のトルクが発生する(左、右側は車両後ろから見る方向で決定される)。左、右側のモータ6でそれぞれ発生したトルクは、前記減速機7および車輪用軸受4を介して、トルク方向を反転し、タイヤに伝達される。また、左、右タイヤのモータ6における回生時のトルク発生方向は、力行時のトルク発生方向と異なっている特徴を持つ。
前記トルク指令マップに関しては、アクセル信号とモータ6の回転数とに応じて、最大トルク制御テーブル(図5参照)から、相応なトルク指令値を算出する。電流指令部40は、算出された前記トルク指令値に基づき、モータ6の1次電流(Ia)と電流進角(β)の指令値を生成する。電流指令部40は、これら1次電流(Ia)と電流進角(β)の値に基づき、d軸電流(界磁成分)O_Idと、q軸電流O_Iqの二つの指令電流を生成する。
電流PI制御部41は、電流指令部40から出力されたd軸電流O_Id、q軸電流O_Iqの値と、モータ電流および回転子角度から3相・2相変換部42で計算された2相電流Id,Iqとから、PI制御による電圧値による制御量Vd,Vqを算出する。3相・2相変換部42では、モータ電流検出手段である電流センサ43で検出されたモータ6のu相電流(Iu)とw相電流(Iw)の検出値から、次式Iv=−(Iu+Iw)で求められるv相電流(Iv)を算出し、Iu,Iv,Iwの3相電流からId,Iqの2相電流に変換する。この変換に使われるモータ6の回転子角度は、回転角度センサ36から取得する。検出された回転角度の(位相)値は、回転角度ゼロ点調製部38によりゼロ点調製されることで、モータ6を精度良く制御し得る。
2相・3相変換部44は、入力された2相の制御量Vd,Vqと、回転角度ゼロ点調製部38によりゼロ点調製された回転角度の値とから、3相のPWMデューティVu,Vv,Vwに変換する。電力変換部45は、PWMデューティVu,Vv,Vwに従ってインバータ31をPWM制御し、モータ6を駆動する。
図5は、モータのトルク指令マップを示す図である。
同図5に示すトルク指令マップは、予めモータ台上試験により作成し、インバータ装置におけるCPUのROM46(図2)に書き込む。
マップ詳細:
Rot_0,Rot_1,…Rot_m:各々の回転数
Trq_0,Trq_1,…Trq_n:各々のトルク指令値
Ia:1次電流
β:電流進角
モータのトルク制御時、アクセル信号に基づき、前記トルク指令マップから相応な1次電流(Ia)と電流進角(β)とを取り出して、モータを制御している。また、1次電流(Ia)と電流進角(β)から、トルク生成電流q軸電流Iqと磁束生成電流d軸電流Idを生成し、それぞれ独立に制御できるベクトル制御である。
Id=−Ia×sinβ
Iq= Ia×cosβ
図6は、モータパラメータマップを示す図である。
モータ回転数およびトルクに応じて、モータパラメータマップからパラメータ(Ld,Lq,Ke)を取得し、実測のトルク値Tとして次のように計算できる。
T=p×{Ke×Iq+(Ld−Lq)×Id×Iq}=Tm+Tr
Tm:磁石トルク
Tr:リラクタンストルク
p:極対数
Ld:モータのd軸インダクタンス
Lq:モータのq軸インダクタンス
Ke:モータ誘起電圧定数実効値
Id=−Ia×sinβ
Iq=Ia×cosβ
台上試験および実車試験結果に基づき、モータパラメータマップを作成する。パラメータ(Ld,Lq,Ke)は実測値であり、温度変化、電流変化、電流進角変化、モータ回転数変化などの情報を考慮した上の測定値とし、前記CPUのROM46(図2)に記録する。
図7は、この電気自動車の制御装置の回転角度(位相)自動補正方法を示すフローチャートである。本補正方法は、車両走行時に回転角度ゼロ点調製部にて実行される。本処理開始後、ステップS1にて外部の操作信号(例えば、スイッチ、ボタン等)からの入力信号により(ステップS1:YES)、ステップS2に移行して回転角度のゼロ点の自動調整モードが起動される。ステップS1で入力信号がないと判定されると(ステップS1:NO)、ステップS1にリターンする。
ステップS2の後、ステップS3に移行し、アクセル信号(一定値保持)に基づき、左側モータを回転数制御で実施し、右側モータをトルク制御で実施する。この右側モータの電気角度のゼロ点を調整する。先ず、調製回数:n回、初期オフセット:Θ_OFFSET0とする(ステップS4)。
以下、調製方法を下記にて示す。
1.回転角度センサの値の一定範囲内で、オフセット値を増加方向へ調整する(ステップS5)。オフセット値の増加につれ、実測トルク(T=p×{Ke×Iq+(Ld−Lq)×Id×Iq}=Tm+Tr)をROMに記録する。その記録された実測トルクTと、この実測トルクTに相応するトルク指令マップから取得した指令値トルクとを比較し、最小の実測トルク(T1とする)と相応するゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET1をROMに記録する。なお図5のステップS5にて指令値トルクを、Tに星印を付して表記している(ステップS6についても同じ)。
2.回転角度センサの値の一定範囲内で、オフセット値を減少方向へ調整する(ステップS6)。前記と同様に、オフセット値の減少につれ、実測トルクTを記録していき、その実測トルクTと、相応する指令値トルクとを比較し、最小の実測トルク(T2とする)と相応するゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET2をROMに記録する。
3.その後ステップS7に移行し、記録された実測トルクT1と実測トルクT2とを比較し、小さい方の実測トルクに相応するゼロ点のオフセット値を、調製後のゼロ点オフセット値として、記憶部であるROMに書き込む。ステップS7で実測トルクT1が実測トルクT2よりも小さいと判定されると(ステップS7:YES)、実測トルクT1と相応するゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET1をゼロ点のオフセット値として、CPUのROMに書き込む(ステップS8)。実測トルクT1が実測トルクT2よりも小さくないと判定されると(ステップS7:NO)、実測トルクT2と相応するゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET2をゼロ点のオフセット値として、CPUのROMに書き込む(ステップS9)。その後本処理を終了する。
前記調製は、一定の回転数を元に、一定指令トルク値の条件下で調整する。調製する状態は、回転数制御とトルク制御とが釣り合っている安定な状態とする。回転角度ゼロ点調製部38は、トルク指令マップ中の複数箇所で調整したゼロ点のオフセット値の平均値を算出し、この算出した平均値を、回転角度の起算点のオフセット値とする。
なお、オフセット値を減少方向へ調整してゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET2を記録した後、オフセット値を増加方向へ調製してゼロ点のオフセット値Θ_OFFSET1を記録しても良い。
同様に、左側モータの電気角度のゼロ点を調製する場合、右側モータを回転数制御で実施、左側モータをトルク制御で実施する。
よって、回転角度ゼロ点調製部は、ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサにより検出される回転角度の起算点を一致させるように、回転角度センサにより検出される回転角度のゼロ点を自動調整する。ここで回転角度が電気角度に一致する。
図8は、この電気自動車の制御装置のアクセル開度の操作方法を概略示す図である。図8(a)に示すように、時間の経過に従ってアクセル開度を単調に増加させる方式では、モータの回転数制御を実施し難い。図8(b)に示すように、一定時間内にアクセル開度を一定に保持するアクセル開度信号処理方法では、回転数制御を実施しやすい。このため、一定時間内におけるアクセル開度信号の変動に対して、信号処理後のデータは振動しない特徴を持つ。この実施形態では、ゼロ点調製しようとする一方のモータに対して、他方のモータを図8(b)に示すアクセル開度信号処理方法にて回転数制御する。
作用効果について説明する。
回転角度ゼロ点調製部38は、車両走行時において、車両の速度およびECU21からのトルク指令に応じて、ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、回転角度センサ36により検出される回転角度の起算点を一致させるように、回転角度センサ36の回転角度のゼロ点を調整する。よって、車両に搭載される走行用のモータ6の誘起電圧を求めることなく、回転角度センサ36により検出される回転角度のゼロ点を容易に調製することができる。また、車両の運転者等が、このゼロ点調製を定期的にまたは任意のタイミングで不定期に行うことで、モータ軸の回転ぶれに起因する回転角度の検出精度の劣化を未然に防止することができる。
回転角度ゼロ点調製部38は、車両の定速走行時における車速およびトルク指令値に応じて、ゼロ点調製するため、一方のモータ6の回転数制御と他方のモータ6のトルク制御とが釣り合っている安定な状態で、回転角度のゼロ点をより精度良く調整し得る。
回転角度ゼロ点調製部38は、トルク指令マップ中の複数箇所で調整したゼロ点のオフセット値の平均値を算出し、この算出した平均値を、回転角度の起算点のオフセット値としている。このため、例えば、実測トルクの一部に測定誤差があったとしても、前記平均値を、前記回転角度の起算点のオフセット値とすることで測定誤差の影響を緩和することができる。その結果、回転角度の検出精度を高めることができる。
実施形態では、左右の後輪を駆動輪としているが、この例に限定されるものではない。例えば、左右の前輪を駆動輪として、これら駆動輪を個別のモータで駆動し、左右の後輪を従動輪とする形式としても良い。また、4輪とも個別のモータで駆動される電気自動車にも適用することができる。
2…車輪
4…車輪用軸受
6…モータ
7…減速機
8…インホイールモータ駆動装置
21…ECU
22…インバータ装置
28…パワー回路部
29…モータコントロール部
31…インバータ
36…回転角度センサ
38…回転角度ゼロ点調製部
46…ROM(記憶部)

Claims (6)

  1. 車両全般を制御する電気制御ユニットであるECUと、直流電力を走行用のモータの駆動に用いる交流電力に変換するインバータを含むパワー回路部、および前記ECUからのトルク指令に従って前記パワー回路部を制御するモータコントロール部を有するインバータ装置とを備え、
    前記モータの回転角度を検出する回転角度センサを設け、前記モータコントロール部は、前記モータのローターの回転角度を前記回転角度センサから得てベクトル制御を行う電気自動車の制御装置において、
    前記モータコントロール部に、
    前記車両の速度および前記ECUからのトルク指令に応じて、前記ローターの回転位置の起算点となるゼロ点に、前記回転角度センサにより検出される回転角度の起算点を一致させるように、前記回転角度センサにより検出される前記回転角度の起算点を設定規則に従って調整する回転角度ゼロ点調整部を設けたことを特徴とする電気自動車の制御装置。
  2. 請求項1記載の電気自動車の制御装置において、前記回転角度ゼロ点調整部は、前記車両の定速走行時における車速およびトルク指令値に応じて、前記回転角度の起算点を調整するものであり、この調整された回転角度の起算点を記憶する記憶部を前記インバータ装置に設けた電気自動車の制御装置。
  3. 請求項1または請求項2記載の電気自動車の制御装置において、前記車両は、左右の車輪を独立して駆動する前記モータをそれぞれ備え、前記回転角度ゼロ点調整部がいずれか一方のモータ側における前記回転角度の起算点を調整するとき、前記モータコントロール部は、前記一方のモータをトルク制御し、他方のモータを回転数制御する電気自動車の制御装置。
  4. 請求項3記載の電気自動車の制御装置において、前記設定規則として、モータ回転数とトルクとの関係を定めたトルク指令マップと、モータ回転数およびトルクに応じたモータパラメータを定めたモータパラメータマップとを設け、前記回転角度ゼロ点調整部は、前記一方のモータが一定のモータ回転数で回転する状態で、前記トルク指令マップから取り込んだトルク指令値が、前記モータパラメータマップから算出された実測トルクと一致するように、前記回転角度の起算点を調整する電気自動車の制御装置。
  5. 請求項4記載の電気自動車の制御装置において、回転角度ゼロ点調整部は、前記トルク指令マップ中の複数箇所で調整したゼロ点のオフセット値の平均値を算出し、この算出した平均値を、前記回転角度の起算点のオフセット値とする電気自動車の制御装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電気自動車の制御装置において、前記モータは、車両の前輪および後輪のいずれか一方、または両方を駆動し、前記モータと車輪用軸受と減速機とを含むインホイールモータ駆動装置を構成する電気自動車の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115163318A (zh) * 2022-09-02 2022-10-11 南京工业大学 一种多功能无人机节气门驱动电路

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