JP2015034620A - 駆動力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】クラッチの応答性やトルク伝達容量の低下を抑えながら、異音の発生を抑制することが可能な駆動力伝達装置を提供する。
【解決手段】駆動力伝達装置1Rは、同軸上で相対回転可能なハウジング2及びインナシャフト3と、ハウジング2にスプライン係合したメインアウタクラッチプレート41及びインナシャフト3にスプライン係合したメインインナクラッチプレート40を有し、軸方向の推力を受けてインナシャフト3とハウジング2とをトルク伝達可能に連結するメインクラッチ4と、ハウジング2の回転力を受けるパイロットクラッチ5と、このパイロットクラッチ5によって伝達される回転力を受けるパイロットカム71、及びパイロットカム71との相対回転により回転力をメインクラッチ4への軸方向の推力に変換するメインカム70を有するカム機構7と、メインカム70をメインクラッチ4から離間する方向に押し付ける押付部材12とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、カム機構のカム推力によってトルク伝達可能となるクラッチを備えた駆動力伝達装置に関する。
従来、外側回転部材と、外側回転部材と同軸上で相対回転可能な内側回転部材と、外側回転部材にスプライン嵌合するアウタクラッチプレート及び内側回転部材にスプライン嵌合するインナクラッチプレートからなるクラッチと、このクラッチを押圧するカム機構とを備えた駆動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1に記載の駆動力伝達装置は、外側回転部材と内側回転部材との差動回転に反転状態が発生したときに発生する異音(バキ音)を抑制するために、クラッチを押圧するカム機構のカム部材と内側回転部材との間の第1のスプライン隙間(L1)が、インナクラッチプレートと内側回転部材との間の第2のスプライン隙間(L2)よりも小さくなるように構成されている。
また、特許文献2に記載の駆動力伝達装置は、外側回転部材のスプライン歯とアウタクラッチプレートの突起との周方向の隙間角度をθ、内側回転部材のスプライン歯とインナクラッチプレートの突起との周方向の隙間角度をθ、内側回転部材のスプライン歯とクラッチを押圧するカム機構のカム部材の突起との周方向の隙間角度をθとしたとき、θ+θ−θ≧1.0°の不等式を満たすように構成されている。
このように構成された駆動力伝達装置によれば、差動回転が反転してインナクラッチプレート及びアウタクラッチプレートが内側回転部材及び外側回転部材のスプライン歯の周方向反対側の歯面に当接(接触)する直前にカム推力の残存量が小さくなるので、異音の発生が抑制される。
特開2006−200748号公報 特開2012−072892号公報
しかしながら、特許文献1に記載の駆動力伝達装置では、第1のスプライン隙間(L1)を第2のスプライン隙間(L2)よりも小さくするために、内側回転部材とスプライン嵌合するインナクラッチプレートの突起の周方向幅を少なくとも第2カム部材の突起の周方向幅よりも小さくする必要がある。このため、インナクラッチプレートの耐荷重性を確保するのが難しく、クラッチによるトルク伝達容量に制限が生じる場合があった。
また、特許文献2に記載の駆動力伝達装置では、上記の不等式を満たすために、内側回転部材のスプライン歯とクラッチを押圧するカム部材の突起との周方向の隙間角度(θ)をできるだけ小さくする必要があるが、この隙間を小さくすると、カム部材の軸方向への移動時の抵抗が大きくなり、クラッチの応答性が低下するおそれがあった。
そこで本発明は、クラッチの応答性やトルク伝達容量の低下を抑えながら、異音の発生を抑制することが可能な駆動力伝達装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、同軸上で相対回転可能な外側回転部材及び内側回転部材と、前記外側回転部材にスプライン係合したアウタクラッチプレート及び前記内側回転部材にスプライン係合したインナクラッチプレートを有し、軸方向の推力を受けて前記内側回転部材と前記外側回転部材とをトルク伝達可能に連結するメインクラッチと、前記メインクラッチに回転軸線に沿って並列し、前記外側回転部材の回転力を受けるサブクラッチと、前記サブクラッチによって伝達される回転力を受ける第1のカム部材、及び前記第1のカム部材との相対回転により前記回転力を前記推力に変換する第2のカム部材を有するカム機構と、前記第2のカム部材を前記メインクラッチから離間する方向に押し付ける押付部材とを備え、前記第2のカム部材は、前記押付部材によって前記内側回転部材との相対回転が規制されている駆動力伝達装置を提供する。
本発明によれば、クラッチの応答性やトルク伝達容量の低下を抑えながら、異音の発生を抑制することが可能となる。
第1の実施の形態に係る四輪駆動車の構成を示す概略図である。 駆動力伝達装置の全体を示す断面図である。 回転軸線に沿って電磁コイル側から見たインナシャフトの平面図を示す。 (a)はメインインナクラッチプレートの平面図であり、(b)はメインアウタクラッチプレートの平面図である。 (a)はパイロットインナクラッチプレートの平面図であり、(b)はパイロットアウタクラッチプレートの平面図である。 回転軸線に沿ってメインクラッチ側から見たメインカムの平面図である。 (a)押付部材の外観を示す斜視図であり、(b)は、押付部材の外観を示す平面図であり、(c)は、図7(b)のA−A線断面図である。 押付部材及びその周辺部を示す拡大図である。 駆動力伝達装置を構成する各部材の係合部の断面図である。 インナシャフトとフロントハウジングとの差動回転の反転時における本実施の形態に係る各部材の動きを模式的に示した図であり、(a)は定常状態を、(b)は反転初期状態を、(c)さらに反転した状態を、それぞれ示す。 インナシャフトとフロントハウジングとの差動回転に反転時における比較例に係る各部材の動きを模式的に示した説明図であり、(a)は定常状態を、(b)は反転初期状態を、(c)さらに反転が進んだ状態を、それぞれ示す。 (a)は第2の実施の形態に係る押付部材を示す斜視図であり、(b)は押付部材の平面図であり、(c)は(b)のB−B線断面図である。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る四輪駆動車の構成を示す概略図である。図1に示すように、四輪駆動車101は、駆動源としてのエンジン102,トランスアクスル103,一対の前輪104,104及び一対の後輪105R,105Lと、後輪側に配置されたディファレンシャルキャリア106に収容されたギヤ機構210と、ギヤ機構210のトルク伝達下流側に設けられた一対の駆動力伝達装置1R,1Lとを備えている。
一対の駆動力伝達装置1R,1Lは、四輪駆動車101における前輪側から後輪側に至る駆動力伝達経路に配置され、かつ四輪駆動車101の車体(図示せず)にディファレンシャルキャリア106を介して支持されている。
エンジン102は、その駆動力をトランスアクスル103を介してフロントアクスルシャフト109に出力することにより、一対の前輪104,104を駆動する。
また、エンジン102は、その駆動力をトランスアクスル103を介してプロペラシャフト107,ギヤ機構210,一対の駆動力伝達装置1R,1L,及びリヤアクスルシャフト111R,111Lに出力することにより、一対の後輪105R,105Lを駆動する。
ギヤ機構210は、プロペラシャフト107と一体に回転するようにプロペラシャフト107の端部に設けられた傘歯車からなる入力ギヤ211と、入力ギヤ211に噛み合う傘歯車からなる出力ギヤ212とを有している。そして、ギヤ機構210は、プロペラシャフト107を介して入力ギヤ211に入力されたエンジン102のトルクを、出力ギヤ212から一対の駆動力伝達装置1R,1Lに出力するように構成されている。すなわち、ギヤ機構210は、入力されたトルクを一対の駆動力伝達装置1R,1Lに分配する。
右側の駆動力伝達装置1Rは、出力ギヤ212からのトルクを右後輪105Rに連結されたリヤアクスルシャフト111Rにトルク伝達量可変に伝達する。また、左側の駆動力伝達装置1Lは、出力ギヤ212からのトルクを左後輪105Lに連結されたリヤアクスルシャフト111Lにトルク伝達量可変に伝達する。駆動力伝達装置1R及び駆動力伝達装置1Lによるトルク伝達量は、図略の制御装置によって制御可能である。
(駆動力伝達装置1Rの全体構成)
図2は、駆動力伝達装置1Rの全体を示す断面図である。なお、一対の駆動力伝達装置1R,1Lはそれぞれが同様の構成を有しているため、右側の駆動力伝達装置1Rの構成について図2を参照して詳細に説明し、左側の駆動力伝達装置1Lの構成については説明を省略する。
図2に示すように、駆動力伝達装置1Rは、ディファレンシャルキャリア106(図1に示す)に対して相対回転可能な外側回転部材としてのハウジング2と、このハウジング2に同軸上で相対回転可能な内側回転部材としてのインナシャフト3と、ハウジング2にスプライン係合したメインアウタクラッチプレート41及びインナシャフト3にスプライン係合したメインインナクラッチプレート40を有し、軸方向の推力を受けてインナシャフト3とハウジング2とをトルク伝達可能に連結するメインクラッチ4と、このメインクラッチ4に回転軸線に沿って並列し、ハウジング2の回転力を受けるサブクラッチとしてのパイロットクラッチ5と、このパイロットクラッチ5の押圧力を発生させる駆動機構6と、パイロットクラッチ5によって伝達される回転力を受ける第1のカム部材としてパイロットカム71、及びパイロットカム71との相対回転により回転力をメインクラッチ4への軸方向の推力に変換する第2のカム部材としてメインカム70を有するカム機構7と、メインカム70をメインクラッチ4から離間する方向に押し付ける押付部材12とを備える。
(ハウジング2の構成)
ハウジング2は、図2に示すように、フロントハウジング8、及びフロントハウジング8に螺着等により一体に回転するように結合されたリヤハウジング9からなり、ディファレンシャルキャリア106(図1に示す)内に回転軸線Oを中心軸線として回転可能に収容されている。ハウジング2とインナシャフト3との間には、環状の収容空間2aが形成されている。この収容空間2aには潤滑油が封入されている。
フロントハウジング8は、円板状の底部8aと中空の円筒部8bとを一体に有し、リヤハウジング9側に開口する有底円筒部材に形成され、エンジン102(図1参照)にトランスアクスル103(図1参照)及びプロペラシャフト107(図1参照)を介して連結されている。円筒部8bの内周面には、回転軸線Oに沿って設けられた複数のスプライン歯80bが形成されている。そして、フロントハウジング8は、エンジン102の駆動力をプロペラシャフト107から受けてリヤハウジング9と共に回転軸線Oの回りに回転し得るように構成されている。
リヤハウジング9は、第1〜第3ハウジングエレメント91〜93を溶接等により一体に結合してなり、フロントハウジング8の開口内周面に螺着され、かつヨーク94に軸受95を介して回転可能に支持されている。リヤハウジング9には、フロントハウジング8の開口方向と同一の方向に開口する円環状の収容空間9aが設けられている。ヨーク94は、収容空間9a内でカップリングケースに固定され、段状の円筒部材によって形成されている。
第1ハウジングエレメント91は、リヤハウジング9の内周側に配置され、磁性材料からなる円筒部材によって形成されている。第2ハウジングエレメント92は、リヤハウジング9の外周側に配置され、第1ハウジングエレメント91と同様に磁性材料からなる円筒部材によって形成されている。第3ハウジングエレメント93は、第1ハウジングエレメント91と第2ハウジングエレメンと92との間に介在し、ステンレス鋼等の非磁性材料からなるハウジングエレメント連結用の円環状部材によって形成されている。
(インナシャフト3の構成)
図3は、インナシャフト3を回転軸線Oに沿って電磁コイル6a側(図2参照)から見た平面図である。インナシャフト3は、各外径が互いに異なる大径部3aと小径部3bとを有している。大径部3aと小径部3bとの間には段差面3cが形成されている。また、インナシャフト3は、ハウジング2の回転軸線Oと同軸上に配置され、かつハウジング2に軸受17,18を介して相対回転可能に支持されている。
大径部3aの外周面には、収容空間2aに露出して回転軸線Oに沿って設けられた複数のスプライン歯30aが形成されている。
小径部3bには、図2に示すように、押付部材12が外嵌されている。小径部3bの外周面は、回転軸線Oに平行な円筒状である。小径部3bの内周には、リヤアクスルシャフト111R(図1参照)の先端部を収容する収容空間3dが形成され、リヤアクスルシャフト111Rの外周面にスプライン嵌合するスプライン嵌合部30bが設けられている。
図3に示すように、インナシャフト3の段差面3cには、複数(本実施の形態では4つ)の第1の収容溝30cが形成されている。これら複数の第1の収容溝30cは、回転軸線Oに平行な方向に深さを有し、大径部3a側に向かって窪んでいる。第1の実施の形態では、回転軸線Oに平行な方向から段差面3cを見た場合の第1の収容溝30cの形状が長方形状であり、その長辺がインナシャフト3の径方向に沿って、また短辺がインナシャフト3の周方向に沿って、それぞれ形成されている。また、これら複数の第1の収容溝30cは、例えば切削加工により形成されている。
(メインクラッチ4の構成)
メインクラッチ4は、図2に示すように、複数のメインアウタクラッチプレート41及び複数のメインインナクラッチプレート40を有する湿式の多板クラッチからなる。メインクラッチ4は、収容空間2aに収容され、フロントハウジング8の円筒部8bとインナシャフト3の大径部3aとの間に配置されている。そして、メインクラッチ4は、メインインナクラッチプレート40及びメインアウタクラッチプレート41のうち互いに隣り合うクラッチプレート同士を摩擦係合させ、またその摩擦係合を解除してハウジング2とインナシャフト3とをトルク伝達可能に連結するように構成されている。
メインインナクラッチプレート40及びメインアウタクラッチプレート41は、環状に形成され、その側面同士を互いに対向させて回転軸線O上に交互に配置されている。また、メインインナクラッチプレート40はインナシャフト3に対して、メインアウタクラッチプレート41はフロントハウジング8に対して、それぞれ回転軸線Oに沿って軸方向移動可能である。
図4(a)は、メインインナクラッチプレート40の構成例を示す平面図であり、図4(b)はメインアウタクラッチプレート41の構成例を示す平面図である。
図4(a)に示すように、メインインナクラッチプレート40には、その内周縁部に径方向内側に向かって突出する突起40aが円周方向に沿って複数形成されている。また、インナクラッチプレート40には、その側面の外周部に環状の摩擦材401が貼り付けられている。また、摩擦材401の内周側には潤滑油を流通させるための複数の油孔40bが形成されている。摩擦材401の表面は、アウタクラッチプレート41と摺動する摩擦面401aとして構成されている。
メインインナクラッチプレート40は、その複数の突起40aをインナシャフト3(図2参照)の複数のスプライン歯30aに係合させて、インナシャフト3(図2参照)に一体回転可能かつ回転軸線Oの方向に沿って移動可能に配置されている。
図4(b)に示すように、メインアウタクラッチプレート41には、その外周縁部に径方向外側に向かって突出する突起41aが円周方向に沿って複数形成されている。また、メインアウタクラッチプレート41は、メインインナクラッチプレート40の摩擦材401の摩擦面401aと対向する領域が摩擦面411aとして形成されている。
アウタクラッチプレート41は、その突起41aをフロントハウジング8(図2参照)の複数のスプライン歯80bに係合させて、フロントハウジング8(図2参照)に一体回転可能かつ回転軸線Oの方向に沿って移動可能に配置されている。
(パイロットクラッチ5の構成)
パイロットクラッチ5は、図2に示すように、駆動機構6(後述)の駆動によるアーマチュア6bの電磁コイル6a側への移動によって互いに摩擦係合可能な円環状の摩擦板からなる複数のパイロットインナクラッチプレート50及び複数のパイロットアウタクラッチプレート51を有している。パイロットクラッチ5は、アーマチュア6bとリヤハウジング9との間に配置され、かつ収容空間2aに収容されている。
図5(a)は、パイロットメインインナクラッチプレート50の構成例を示す平面図であり、図5(b)はメインアウタクラッチプレート51の構成例を示す平面図である。
図5(a)に示すように、パイロットインナクラッチプレート50には、その内周縁部に径方向内側に向かって突出する突起50aが円周方向に沿って複数形成されている。また、パイロットインナクラッチプレート50の径方向において、内周縁と外周縁との間には、周方向に延びる複数の円弧状のスリット501が周方向に並ぶように形成されている。
パイロットインナクラッチプレート50は、複数の突起50aが後述するパイロットカム71のスプライン歯71aに係合してパイロットカム71との相対回転が制限され、かつ軸方向移動可能に連結されている(図2参照)。
図5(b)に示すように、パイロットアウタクラッチプレート51には、その外周縁に径方向外側に向かって突出する複数の突起51aが円周方向に沿って複数形成されている。また、パイロットアウタクラッチプレート51の径方向において、内周縁と外周縁との間には、周方向に延びる複数の円弧状のスリット510が周方向に並ぶように形成されている。
パイロットアウタクラッチプレート51は、複数の突起51aがフロントハウジング8のスプライン歯80bに係合してフロントハウジング8との相対回転が制限され、かつ軸方向移動可能に連結されている。
パイロットインナクラッチプレート50及びパイロットアウタクラッチプレート51は、環状に形成され、その側面同士を互いに対向させて回転軸線O上に交互に配置されている(図2参照)。
(駆動機構6の構成)
駆動機構6は、電磁コイル6a及びアーマチュア6bを有し、ハウジング2の回転軸線O上に配置されている。そして、駆動機構6は、電磁コイル6aの電磁力の発生によるアーマチュア6bの電磁コイル6a側への移動によってパイロットクラッチ5のパイロットインナクラッチプレート50及びパイロットアウタクラッチプレート51を摩擦係合させるように構成されている。
電磁コイル6aは、リヤハウジング9の収容空間9aに収容され、かつヨーク94に取り付けられている。そして、電磁コイル6aは、図2に破線で示すように、通電によってヨーク94,パイロットクラッチ5,アーマチュア6b及びリヤハウジング9等に跨って磁気回路Gを形成し、アーマチュア6bにリヤハウジング9側への移動力を付与するための電磁力を発生させるように構成されている。パイロットインナクラッチプレート50及びパイロットアウタクラッチプレート51はこの移動力によって圧接され、摩擦力を発生させる。
アーマチュア6bは、その外周縁に回転軸線Oに沿ったストレートスプライン嵌合部60bを有し、ストレートスプライン嵌合部60bをスプライン歯80bに嵌合してフロントハウジング8との相対回転が制限され、かつ軸方向移動可能に連結されている。
電磁コイル6aには図略の制御装置からコイル電流が供給される。このコイル電流の大きさによって磁気回路Gに発生する磁束の密度が変化し、コイル電流が大きいほどアーマチュア6bがパイロットクラッチ5を押圧する押圧力が強くなる。
(カム機構7の構成)
カム機構7は、図2に示すように、インナシャフト3からの回転力を受けて回転する押圧部材としての環状のメインカム70、このメインカム70にハウジング2の回転軸線Oに沿って並列する環状のパイロットカム71、及びメインカム70とパイロットカム71との間に介在する球状のカムフォロア72を有し、メインクラッチ4とリヤハウジング9との間に配置され、かつ収容空間2aに収容されている。メインカム70は、インナシャフト3の段差面3cとの間に配置された後述する押付部材12によってパイロットカム71側に付勢されている。そして、カム機構7は、パイロットクラッチ5のクラッチ動作によってハウジング2からの回転力を受け、この回転力をメインクラッチ4のクラッチ力となる押圧力に変換するように構成されている。
メインカム70は、パイロットカム71との相対回転によって発生するカム推力をカムフォロア72から受けてメインクラッチ4を押圧するメインクラッチプレート押圧面70aを有し、カム機構7のメインクラッチ4側に回転軸線Oに沿って移動可能に配置されている。
パイロットカム71は、リヤハウジング9の第1ハウジングエレメント91との間に軸受19を介在させ、インナシャフト3に相対回転可能に配置されている。
パイロットカム71の外周縁には、複数のスプライン歯71aが回転軸線Oに沿って形成され、これら複数のスプライン歯71aをパイロットインナクラッチプレート50の突起50aに嵌合して、パイロットインナクラッチプレート50との相対回転が制限され、かつ軸方向移動可能に連結されている。
メインカム70及びパイロットカム71の対向面には、それぞれ周方向に延びる複数(例えば6個)のカム溝70e及び71bが形成されている。カム溝70e,71bは、周方向の中央部で軸方向深さが最も深く、端部に向かって浅くなるように形成されている。カムフォロア72は、それぞれのカム溝70e,71bの間に配置され、カム溝70e,71bの周方向の中央部(中立位置)から周方向の一方側又は他方側に転動することでメインカム70とパイロットカム71とを離間させ、メインクラッチ4のクラッチ力となる押圧力を発生させる。
図6に示すように、メインカム70は、インナシャフト3を挿通する挿通孔701が中心部に形成される環板状であり、メインクラッチ4との対向面としてメインクラッチプレート押圧面70aと、インナシャフト3の段差面3cとの間に押圧部材12を挟む底面70bとを有する。また、図2に示すように、底面70bは、回転軸線Oに平行な方向からメインクラッチプレート押圧面70aよりもパイロットカム71側に窪んでいる。
底面70bには、図6に示すように、複数(第1の実施の形態では4つ)の第2の収容溝70cが形成されている。これら複数の第2の収容溝70cは、回転軸線Oに平行な方向に深さを有し、インナシャフト3の段差面3c(図2参照)側とは反対側に向かって窪んでいる。第1の実施の形態では、回転軸線Oに平行な方向から底面70bを見た場合の第2の収容溝70cの形状が長方形状であり、その長辺がメインカム70の径方向に沿って、また短辺がメインカム70の周方向に沿って、それぞれ形成されている。これら複数の第2の収容溝70cは、例えば切削加工により形成されている。
また、メインカム70には、収容空間2aに封入されている潤滑油を流通させるための複数の油孔70fが形成されている。
(押付部材12の構成)
次に、押付部材12について図7を参照して詳細に説明する。
図7(a)は押付部材12の構成例を示す斜視図であり、(b)は押付部材10の平面図であり、(c)は(b)のA−A線断面図である。
押付部材12は、図7(a)及び(b)に示すように、インナシャフト3を挿通させる挿通孔12aが中心部に形成され、軸方向の所定の厚みを有する円盤状の基部121と、基部121の第1の側面121aから軸方向に突出した複数の第1の突部122と、基部121の第2の側面121bから軸方向に突出した複数の第2の突部123とを有している。
基部121のインナシャフト3の段差面3cと対向する第1の端面121aに複数(第1の実施の形態では4つ)の第1の突部122が周方向に沿って等間隔に設けられていると共に、メインカム70の底面70bに対向する第2の端面121bに複数(第1の実施の形態では4つ)の第2の突部123が周方向に沿って等間隔に設けられている。また、これら複数の第1及び第2の突部122,123は、周方向に沿って交互に配置されている。
第1及び第2の突部122,123は、例えば、軸方向へプレスで円弧状に打ち出すことにより形成することができる。すなわち、第1の突部122は、第2の側面121bから第1の側面121aに向かって円弧状にプレス加工することにより形成され、第2の突部123は、第1の側面121aから第1の側面121bに向かって円弧状にプレス加工することにより形成される。
図7(c)に示すように、第1の突部122及び第2の突部123は、基部121の軸方向に円弧状に突出して形成されている。
第1の突部122は、軸方向に湾曲してその中央部が第1の収容溝30c(図3参照)に係合し、第2の突部123は、軸方向に湾曲してその中央部が第2の収容溝70c(図6参照)に係合する。これにより、メインカム70は、軸方向にパイロットカム71側へ付勢力を受けるとともに、インナシャフト3との相対回転が規制されている。
図8(a)は、押付部材12の第2の突部123が第2の収容溝70cと係合している状態の拡大図を示し、図8(b)は、第1の突部122が第1の収容溝30cと係合している状態を示す拡大図である。
図8(a)及び(b)に示すように、第2の突部123の円弧状の頂点が第2の収容溝70cの溝底面70dに当接するとともに、第1の突部122の円弧状の頂点が第1の収容溝30cの溝底面30dに当接している。ここで、第1及び第2の収容溝30c,70cの溝深さをd、第1及び第2の突部122,123の第1及び第2の端面121a,121bからの高さをhとすると、この溝深さd及び高さhは、メインカム70を軸方向に弾性的に押し付けることが可能なストロークを確保しつつ、第1及び第2の突部122,123が、第1及び第2の収容溝30c,70cに係合可能となるように設定されている。具体的には、溝深さd及び高さhは、h≧d×2となることが望ましい。
また、本実施の形態では、第1の突部122は、第1の収容溝30cに対して圧入され、第2の突部123は、第2の収容溝70cに対して圧入されている。したがって、第1及び第2の収容溝30c,70cと第1及び第2の突部122,123との間の周方向の隙間は実質的にゼロとなる。
図9は、メインクラッチ4の内周部及び外周部におけるインナシャフト3及びフロントハウジング8との係合部と、パイロットクラッチ5の内周部及び外周部におけるパイロットカム71及びフロントハウジング8との係合部とを回転軸線に直交する断面で示す説明図であり、(a)はパイロットカム71とパイロットインナクラッチプレート50との係合部を、(b)はインナシャフト3とメインインナクラッチプレート40との係合部を、(c)はフロントハウジング8とメインアウタクラッチプレート41との係合部を、(d)はフロントハウジング8とパイロットアウタクラッチプレート51との係合部を、それぞれ示す。
(パイロットカム71とパイロットインナクラッチプレート50との係合部)
図9(a)に示すように、パイロットカム71のスプライン歯71aとパイロットインナクラッチプレート50の突起50aとの間には周方向の隙間(ガタ)があり、この隙間に対応した角度範囲でパイロットカム71とパイロットインナクラッチプレート50とが相対回転可能である。図9(a)では、突起50aがスプライン歯71aに当接するまで、パイロットインナクラッチプレート50がパイロットカム71に対して第1の方向(反時計回り)に回転した第1の位置におけるパイロットインナクラッチプレート50を実線で、同じくパイロットインナクラッチプレート50の突起50aがパイロットカム71のスプライン歯71aに対して当接するまで第2の方向(時計回り)に回転した第2の位置におけるパイロットインナクラッチプレート50を二点鎖線で、それぞれ示している。
また、図9(a)では、実線及び二点鎖線で示すパイロットインナクラッチプレート50の突起70bの中心軸線を共に一点鎖線で示している。第1及び第2の位置におけるそれぞれの突起50aの中心軸線がなす角度(隙間角度)θは、パイロットカム71のスプライン歯71aとパイロットインナクラッチプレート50の突起50aとの周方向の隙間の大きさに対応する角度であり、パイロットカム71とパイロットインナクラッチプレート50は、この角度θの範囲で相対回転可能である。
(インナシャフト3とメインインナクラッチプレート40との係合部)
図9(b)に示すように、インナシャフト3のスプライン歯30aとメインインナクラッチプレート40の突起40aとの間には周方向の隙間(ガタ)があり、この隙間に対応した角度範囲でインナシャフト3とメインインナクラッチプレート40とが相対回転可能である。図9(b)では、突起40aがスプライン歯30aに当接するまで、メインインナクラッチプレート40がインナシャフト3に対して第1の方向(反時計回り)に回転した場合のメインインナクラッチプレート40を実線で、同じくメインインナクラッチプレート40の突起40aがインナシャフト3のスプライン歯30aに対して当接するまで第2の方向(時計回り)に回転した場合のメインインナクラッチプレート40を二点鎖線で、それぞれ示している。
また、図9(b)では、実線及び二点鎖線で示すメインインナクラッチプレート40の突起40aの中心軸線を共に一点鎖線で示している。第1及び第2の位置におけるそれぞれの突起40aの中心軸線がなす角度(隙間角度)θは、インナシャフト3のスプライン歯30aとメインインナクラッチプレート40の突起40aとの周方向の隙間の大きさに対応する角度であり、インナシャフト3とメインインナクラッチプレート40は、この角度θの範囲で相対回転可能である。
(フロントハウジング8とメインアウタクラッチプレート41との係合部)
図9(c)に示すように、フロントハウジング8のスプライン歯80bとメインアウタクラッチプレート41の突起41aとの間には周方向の隙間(ガタ)があり、この隙間に対応した角度範囲でフロントハウジング8とメインアウタクラッチプレート41とが相対回転可能である。図9(c)では、突起41aがスプライン歯80bに当接するまで、メインアウタクラッチプレート41がフロントハウジング8に対して第1の方向(反時計回り)に回転した第1の位置におけるメインアウタクラッチプレート41を実線で、同じくメインアウタクラッチプレート41の突起41aがフロントハウジング8のスプライン歯80bに当接するまで第2の方向(時計回り)に回転した第2の位置におけるメインアウタクラッチプレート41を二点鎖線で、それぞれ示している。
また、図9(c)では、実線及び二点鎖線で示すメインアウタクラッチプレート41の突起41aの中心軸線を共に一点鎖線で示している。第1及び第2の位置におけるそれぞれの突起41aの中心軸線がなす角度(隙間角度)θは、フロントハウジング8のスプライン歯80bとメインアウタクラッチプレート41の突起41aとの周方向の隙間の大きさに対応する角度であり、フロントハウジング8とメインアウタクラッチプレート41は、この角度θの範囲で相対回転可能である。
(フロントハウジング8とパイロットアウタクラッチプレート51との係合部)
図9(d)に示すように、フロントハウジング8のスプライン歯80bとパイロットアウタクラッチプレート51の突起51aとの間には周方向の隙間(ガタ)があり、この隙間に対応した角度範囲でフロントハウジング8とパイロットアウタクラッチプレート51とが相対回転可能である。図9(d)では、突起51aがスプライン歯80bに当接するまで、パイロットアウタクラッチプレート51がフロントハウジング8に対して第1の方向(反時計回り)に回転した第1の位置におけるパイロットアウタクラッチプレート51を実線で、同じくパイロットアウタクラッチプレート51の突起51aがフロントハウジング8のスプライン歯80bに当接するまで第2の方向(時計回り)に回転した第2の位置におけるパイロットアウタクラッチプレート51を二点鎖線で、それぞれ示している。
また、図9(d)では、実線及び二点鎖線で示すパイロットアウタクラッチプレート51の突起51aの中心軸線を共に一点鎖線で示している。第1及び第2の位置におけるそれぞれの突起51aの中心軸線がなす角度(隙間角度)θは、フロントハウジング8のスプライン歯80bとパイロットアウタクラッチプレート51の突起51aとの周方向の隙間の大きさに対応する角度であり、フロントハウジング8とパイロットアウタクラッチプレート51は、この角度θの範囲で相対回転可能である。
第1の実施の形態では、角度θと角度θとが同等であり、角度θは角度θよりも大きく設定され、これにより角度θと角度θとの和(θ+θ)が、角度θと角度θとの和(θ+θ)よりも大きくなるように駆動力伝達装置1Rが構成されている。すなわち、θ+θ>θ+θの関係を満たすように、インナシャフト3、フロントハウジング8、メインカム70、メインインナクラッチプレート40、メインアウタクラッチプレート41、パイロットカム71、パイロットインナクラッチプレート50、及びパイロットアウタクラッチプレート51、及び押付部材12が構成されている。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
図10は、インナシャフト3とフロントハウジング8との差動回転に反転状態が発生したときの各部材の動きを模式的に説明する説明図である。このような反転状態は、例えば四輪駆動車101が直進走行から旋回走行に移行して、一対の後輪105R,105Lのうち旋回半径の外側の車輪の回転速度が一対の前輪104,104の平均回転速度よりも大きくなったときなどに発生する。つまり、ここで反転状態とは、インナシャフト3の回転速度がフロントハウジング8の回転速度に比較して高くなり、インナシャフト3がフロントハウジング8に追従して回転する状態から、インナシャフト3の回転がフロントハウジング8の回転に対して先行する状態になることをいう。なお、図10(a),図10(b),図10(c)中に示した矢印は回転方向を示しており、矢印の長短は速度の大小関係を示している。
図10(a)は、インナシャフト3がフロントハウジング8に追従して回転している通常の駆動力伝達状態を示す。
この状態では、フロントハウジング8の回転により、フロントハウジング8のスプライン歯80bが、パイロットアウタクラッチプレート51の突起51a及びメインアウタクラッチプレート41の突起41aに対して矢印方向に当接するとともに、パイロットインナクラッチプレート50の突起50aもパイロットカム71のスプライン歯71aに対して同方向に当接している。
パイロットインナクラッチプレート50の突起50aがパイロットカム71のスプライン歯71aに当接することで、パイロットカム71にメインカム70との相対回転を生じさせるトルクが付与されている。これにより、カム機構7のパイロットカム71のカム溝71bとメインカム70のカム溝70eとの間に介在するカムフォロア72が中立位置から転動し、メインカム70がパイロットカム71から軸方向に離間して、メインカム70のクラッチプレート押圧部70aがメインクラッチ4に押圧力を付与している。
また、この押圧力によって、メインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート40とが摩擦係合し、メインインナクラッチプレート40の突起40aがインナシャフト3のスプライン歯30aに対して矢印方向に当接し、フロントハウジング8とインナシャフト3との間でメインクラッチ4を介してトルクが伝達されている。
図10(b)は、反転状態が発生し、インナシャフト3がフロントハウジング8に対して回転速度が矢印方向に大きくなった反転初期状態を示す。
インナシャフト3とフロントハウジング8との差動回転が反転すると、図10(b)に示すように、フロントハウジング8のスプライン歯80bは、パイロットアウタクラッチプレート51の突起51a及びメインアウタクラッチプレート41の突起41aに対して、矢印と逆方向にほぼ同時に当接する。これにより、パイロットアウタクラッチプレート51とパイロットインナクラッチプレート50とは摩擦係合しているので、パイロットインナクラッチプレート50の突起50aがパイロットカム71のスプライン歯71に対して矢印と逆方向に当接する。
この反転初期状態では、メインカム70とパイロットカム71との相対回転の位相は図10(a)に示すトルク伝達状態のままであり、メインカム70のメインクラッチプレート押圧部70aがメインクラッチ4に押圧力を付与している。ただし、メインインナクラッチプレート40の突起40aが未だインナシャフト3のスプライン歯30aに矢印と逆方向に当接しておらず、フロントハウジング8とインナシャフト3との間でメインクラッチ4を介したトルク伝達はなされない。
図10(b)に示す状態からさらにインナシャフト3がフロントハウジング8に対して矢印方向に相対回転すると、図10(c)に示すように、インナシャフト3のスプライン歯30aがメインインナクラッチプレート40の突起40aに当接する。
また、図10(b)に示す状態から図10(c)に示す状態に移行する過程で、パイロットカム71はメインカム70に対して矢印方向に回転するため、カムフォロア72がパイロットカム71のカム溝71b及びメインカム70のカム溝70eを中立位置に向かって移動し、メインカム70とパイロットカム71との間の距離が短くなる。
これにより、メインカム70のクラッチプレート押圧部70aがメインクラッチ4を押圧する押圧力が低減される。ここで、本実施の形態では前述のようにθ+θ>θ+θの関係を満たすように各部材が構成されているので、メインインナクラッチプレート40の突起40aがインナシャフト3のスプライン歯30aに対して矢印と逆方向に当接する時には、既にメインクラッチ4の押圧力が低減されている。
また、押付部材12がメインカム70とインナシャフト3との間に介在することによって、メインカム70とインナシャフト3とが一体に回転するため、メインカム70とインナシャフト3との間に周方向のガタが存在する場合に比較して、より早くカムフォロア72が中立位置に向かって転動することになる。つまり、メインクラッチ4への押圧力が低減される開始タイミングが早まり、メインクラッチ4の押圧力が低減された状態で、インナシャフト3のスプライン歯30aがメインインナクラッチプレート40の突起40aに矢印と逆方向に当接する。
これにより、インナシャフト3とフロントハウジング8の差動回転に反転状態が発生したときのインナシャフト3とフロントハウジング8との間のトルク伝達量の急激な変化が抑制され、ひいては異音の発生が抑制される。
なお、図10(c)に示す状態からさらにインナシャフト3がフロントハウジング8に対して矢印と逆方向に差動回転すると、カムフォロア72が中立位置を挟んで反対側のパイロットカム71のカム溝71b及びメインカム70のカム溝70eの斜面に乗り上げ、メインカム70がパイロットカム71から離間する。これにより、インナシャフト3とフロントハウジング8との間でメインクラッチ4を介してトルク伝達が行われるトルク伝達状態となる。
(比較例)
図11は、インナシャフト3のスプライン歯30aにスプライン係合する突起70Bをメインカム70Aに設け、この突起70Bによってインナシャフト3に対するメインカム70Aの相対回転を規制した場合の比較例における各部材の動きを模式的に説明する説明図である。
図11(a)に示す通常の駆動力伝達状態では、メインカム70Aのスプライン歯70B及びメインインナクラッチプレート40の突起40aが、インナシャフト3のスプライン歯30aに対して矢印方向に当接する。
図11(b)に示す反転初期状態では、インナシャフト3は、フロントハウジング8に先行して相対的に矢印方向に回転し、インナシャフト3のスプライン歯30aが、メインカム70Aのスプライン歯70Aに対して矢印方向に当接した後に、メインカム70Aが矢印方向への回転を開始することになる。
そして、図11(b)から図11(c)に示す状態に移行する過程で、メインカム70Aとパイロットカム71が相対回転することで、メインクラッチ4を押圧する押圧力が低減される。つまり、スプライン歯30aとスプライン歯70Bとの隙間が詰った後にメインカム70Bとパイロットカム71が相対回転する。
このように、比較例の場合は、インナシャフト3とメインカム70Aとの間に隙間が形成されていることにより、インシャフト3とメインカム70とが一体に回転する本実施の形態の場合に比較して、メインカム70とパイロットカム71との相対回転が開始するタイミングが遅くなる。つまり、メインクラッチ4への押圧力を低減するタイミングが遅れることになる。
一方、第1の実施の形態の場合は、インナシャフト3とメインカム70とが一体に回転することにより、比較例の場合に比べて、インナシャフト3とフロントハウジング8との間でメインクラッチ4を介してトルク伝達が可能となる前に、より早く押圧力が解除されることになる。
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)押付部材12をメインカム70とインナシャフト3との相対回転を規制するように配置したことにより、例えば、メインカム70とインナシャフト3とをスプライン係合した場合に比較して、フロントハウジング8とインナシャフト3との差動回転の反転時にカム機構7のカム推力がより早く低減される。これにより、前輪側(フロントハウジング8)と後輪側(インナシャフト3)の差動回転が反転した際のカム推力の残存によって発生する一時的な伝達トルクの急増が抑制され、衝撃及び異音を低減できる。
(2)押付部材12は、第1の突部122及び第2の突部123を有し、第1の突部122がインナシャフト3の第1の収容溝30cに係合し、第2の突部123がメインカム70の第2の収容溝70cに係合するので、インナシャフト3とメインカム70との間の相対回転の規制を簡素な構成で確実に行うことができる。
(3)第1の突部122は軸方向に湾曲してインナシャフト3の第1の収容溝30cに係合し、第2の突部123は軸方向に湾曲してメインカム70の第2の収容溝70cに係合するので、第1の突部122及び第2の突部123の弾性により、メインカム70をメインクラッチ4から離間する方向に押し付けながら、メインカム70のインナシャフト3に対する回転規制を行うことができる。つまり、第1の突部122及び第2の突部123によって、メインカム70を押し付ける機能と、メインカム70の回転規制の機能とを簡素な構成で実現することができる。
(4)第1の突部122はインナシャフト3の第1の収容溝30cに圧入され、第2の突部123はメインカム70の第2の収容溝70cに圧入されるので、インナシャフト3及びメインカム70と押付部材12との間の周方向のガタを実質的にゼロとすることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図12を参照して説明する。図12(a)は第2の実施の形態に係る押付部材12Aの外観を示す斜視図であり、(b)は押付部材12Aの平面図であり、(c)は(b)のB−B線断面図である。
第2の実施の形態では、押付部材12Aにおける第1及び第2の突部122A,123Aの形状が第1の実施の形態の第1及び第2の突部122,123の形状と異なり、駆動力伝達装置のその他の構成は、第1の実施の形態と同様に構成される。
押付部材12Aは、図12に示すように、第1の突部122Aが円盤状の基部121Aから段差面3c側に突出し、第2の突部123Aが基部121Aからメインカム70側に突出している。第1の突部122Aは、径方向内径側の端部が基部121Aに連続し、径方向外側の端部が基部121Aとは切り離された自由端となっている。また、第2の突部123Aは、第1の突部122Aと同様に、径方向内径側の端部が基部121Aに連続し、径方向外側の端部は基部121Aとは切り離された自由端となっている。
第1の突部122A及び第2の突部123Aは、段差面3c側及びメインカム70側に凸となるように、円弧状に湾曲している。
第1及び第2の突部122A,123Aは、第1の実施の形態と同様に、第1及び第2の収容溝30c,70cに係合することで、インナシャフト3とメインカム70との相対回転を規制している。
また、第1及び第2の突部122A,123Aは、軸方向に変形可能であり、第1及び第2の収容溝30c,70cとの係合によりインナシャフト3とメインカム70との相対回転を規制できればどのような形状でもよい。
[第2の実施の形態の作用及び効果]
第2の形態の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。また、メインカム70への軸方向において第1の実施の形態に比較してより大きなストロークを確保することができる。
1R,1L…駆動力伝達装置、2…ハウジング、2a…収容空間、3…インナシャフト、3a,3b…円筒部、3c…段差面、3d…収容空間、4…メインクラッチ、5…パイロットクラッチ、6…駆動機構、6a…電磁コイル、6b…アーマチュア、7…カム機構、8…フロントハウジング、8a…底部、8b…円筒部、9…リヤハウジング、9a…収容空間、12,12A…押付部材、12a…挿通孔、17,18,19…軸受、30a,30A…スプライン歯、30b…スプライン嵌合部、30c…第1の収容溝、30d…溝底面、40…メインインナクラッチプレート、41…メインアウタクラッチプレート、50…パイロットインナクラッチプレート、51…パイロットアウタクラッチプレート、40a,41a,50a,51a…突起、40b…油孔、60b…ストレートスプライン嵌合部、70…メインカム、70a…メインクラッチプレート押圧面、70b…底面、70B…スプライン歯、70c…第2の収容溝、70d…溝底面,70e,71b…カム溝、70f…油孔、71…パイロットカム、71a…スプライン歯、72…カムフォロア、80b…スプライン歯、91,92,93…第1〜第3ハウジングエレメント、94…ヨーク、101…四輪駆動車、102…エンジン、103…トランスアクスル、104…前輪、105R,105L…後輪、106…ディファレンシャルキャリア、107…プロペラシャフト、109…フロントアクスルシャフト、111R,111L…リヤアクスルシャフト、121,121A…基部、121a…第1の側面、121b…第2の側面、122,122A…第1の突部、123,123A…第2の突部、210…ギヤ機構、211…入力ギヤ、212…出力ギヤ、401…摩擦材、401a…摩擦面、411a…摩擦面、701…挿通孔、G…磁気回路、O…回転軸線

Claims (3)

  1. 同軸上で相対回転可能な外側回転部材及び内側回転部材と、
    前記外側回転部材にスプライン係合したアウタクラッチプレート及び前記内側回転部材にスプライン係合したインナクラッチプレートを有し、軸方向の推力を受けて前記内側回転部材と前記外側回転部材とをトルク伝達可能に連結するメインクラッチと、
    前記メインクラッチに回転軸線に沿って並列し、前記外側回転部材の回転力を受けるサブクラッチと、
    前記サブロットクラッチによって伝達される回転力を受ける第1のカム部材、及び前記第1のカム部材との相対回転により前記回転力を前記推力に変換する第2のカム部材を有するカム機構と、
    前記第2のカム部材を前記メインクラッチから離間する方向に押し付ける押付部材とを備え、
    前記第2のカム部材は、前記押付部材によって前記内側回転部材との相対回転が規制されている、
    駆動力伝達装置。
  2. 前記内側回転部材は、前記インナクラッチプレートがスプライン係合する大径部と前記押付部材が外嵌された小径部との間の段差面に第1の溝部が形成され、
    前記第2のカム部材は、前記段差面との対向面に第2の溝部が形成され、
    前記押付部材は、前記第1の溝部に係合する第1の突部と、前記第2の溝部に係合する第2の突部とを有する、
    請求項1に記載の駆動力伝達装置。
  3. 前記押付部材は、前記内側回転部材を挿通させる挿通孔が中心部に形成された円盤状の基部の一方の側面に前記第1の突起が設けられると共に、他方の側面に前記第2の突部が設けられ、
    前記第1の突起は軸方向に湾曲して前記第1の溝部に係合し、
    前記第2の突起は軸方向に湾曲して前記第2の溝部に係合する、
    請求項2に記載の駆動力伝達装置。
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