以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
本発明は、樹脂基材と該樹脂基材の片側に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを有する積層体を延伸、染色して、当該樹脂基材上に偏光膜を作製することを含む偏光板の製造方法に関する。本発明においては、偏光膜の片側または両側に積層される保護フィルムの少なくとも1つを、水分率が10%以下の接着剤を介して積層する。1つの実施形態においては、本発明の偏光板の製造方法は、樹脂基材と該樹脂基材の片側に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを有する積層体を延伸、染色して、該樹脂基材上に偏光膜を作製する工程と、該偏光膜の該樹脂基材と反対側に第1の保護フィルムを積層する工程と、樹脂基材を剥離して、偏光膜の該樹脂基材を剥離した側に第2の保護フィルムを積層する工程と、を含む(以下、便宜上、第1の実施形態と称する)。別の実施形態においては、本発明の偏光板の製造方法は、樹脂基材と該樹脂基材の片側に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを有する積層体を延伸、染色して、該樹脂基材上に偏光膜を作製する工程と、樹脂基材を剥離して、偏光膜の該樹脂基材を剥離した側に保護フィルムを積層する工程と、を含む(以下、便宜上、第2の実施形態と称する)。なお、第2の実施形態における保護フィルムは、積層位置等の観点から第1の実施形態における第2の保護フィルムに対応するので、便宜上、第2の保護フィルムと称する場合がある。上記のとおり、本発明においては、上記第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの少なくとも一方は、水分率が10%以下の接着剤を介して積層され得る。以下、各工程について具体的に説明する。簡単のため、第1の実施形態について各工程を順次説明し、第2の実施形態については第1の実施形態と異なる部分のみを説明する。
<第1の実施形態>
A.偏光膜の作製工程
A−1.積層体
図1は、本発明の偏光板の製造方法の一例を示す概略図である。図1(a)に示すように、積層体10は、樹脂基材11とポリビニルアルコール系樹脂層12とを有する。積層体10は、代表的には、長尺状の樹脂基材11にポリビニルアルコール系樹脂層12を形成することにより作製される。ポリビニルアルコール系樹脂層12の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、樹脂基材11上に、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」という)を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、PVA系樹脂層12を形成する。
上記樹脂基材の形成材料としては、任意の適切な熱可塑性樹脂が採用され得る。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ノルボルネン系樹脂、非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂である。
1つの実施形態においては、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。中でも、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールをさらに含む共重合体が挙げられる。
後述する延伸において水中延伸方式を採用する場合、上記樹脂基材は水を吸収し、水が可塑剤的な働きをして可塑化し得る。その結果、延伸応力を大幅に低下させることができ、高倍率に延伸することが可能となり、空中延伸時よりも延伸性に優れ得る。その結果、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。1つの実施形態においては、樹脂基材は、好ましくは、その吸水率が0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。一方、樹脂基材の吸水率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。このような樹脂基材を用いることにより、製造時に寸法安定性が著しく低下して、得られる偏光膜の外観が悪化するなどの不具合を防止することができる。また、水中延伸時に基材が破断したり、樹脂基材からPVA系樹脂層が剥離したりするのを防止することができる。なお、樹脂基材の吸水率は、例えば、形成材料に変性基を導入することにより調整することができる。吸水率は、JIS K 7209に準じて求められる値である。
樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以下である。このような樹脂基材を用いることにより、PVA系樹脂層の結晶化を抑制しながら、積層体の延伸性を十分に確保することができる。さらに、水による樹脂基材の可塑化と、水中延伸を良好に行うことを考慮すると、120℃以下であることがより好ましい。1つの実施形態においては、樹脂基材のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。このような樹脂基材を用いることにより、上記PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、樹脂基材が変形(例えば、凹凸やタルミ、シワ等の発生)するなどの不具合を防止して、良好に積層体を作製することができる。また、PVA系樹脂層の延伸を、好適な温度(例えば、60℃程度)にて良好に行うことができる。別の実施形態においては、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、樹脂基材が変形しなければ、60℃より低いガラス転移温度であってもよい。なお、樹脂基材のガラス転移温度は、例えば、形成材料に変性基を導入する、結晶化材料を用いて加熱することにより調整することができる。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
樹脂基材の延伸前の厚みは、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは50μm〜200μmである。20μm未満であると、PVA系樹脂層の形成が困難になるおそれがある。300μmを超えると、例えば、水中延伸において、樹脂基材が水を吸収するのに長時間を要するとともに、延伸に過大な負荷を要するおそれがある。
上記PVA系樹脂層を形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜5000、さらに好ましくは1500〜4500である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
上記塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、樹脂基材に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
塗布液に、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
上記塗布液の塗布・乾燥温度は、好ましくは50℃以上である。
PVA系樹脂層の延伸前の厚みは、好ましくは3μm〜40μm、さらに好ましくは3μm〜20μmである。
PVA系樹脂層を形成する前に、樹脂基材に表面処理(例えば、コロナ処理等)を施してもよいし、樹脂基材上に易接着層を形成してもよい。このような処理を行うことにより、樹脂基材とPVA系樹脂層との密着性を向上させることができる。
A−2.積層体の延伸
積層体の延伸方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。好ましくは、自由端延伸である。
積層体の延伸方向は、適宜、設定され得る。1つの実施形態においては、長尺状の積層体の長手方向に延伸する。この場合、代表的には、周速の異なるロール間に積層体を通して延伸する方法が採用される。別の実施形態においては、長尺状の積層体の幅方向に延伸する。この場合、代表的には、テンター延伸機を用いて延伸する方法が採用される。
延伸方式は、特に限定されず、空中延伸方式でもよいし、水中延伸方式でもよい。好ましくは、水中延伸方式である。水中延伸方式によれば、上記樹脂基材やPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。
積層体の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、例えば、上記自由端延伸と固定端延伸とを組み合わせてもよいし、上記水中延伸方式と空中延伸方式とを組み合わせてもよい。また、多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
積層体の延伸温度は、樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。空中延伸方式を採用する場合、延伸温度は、好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、さらに好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+10℃以上、特に好ましくはTg+15℃以上である。一方、積層体の延伸温度は、好ましくは170℃以下である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。
水中延伸方式を採用する場合、延伸浴の液温は、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは50℃〜85℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。延伸浴への積層体の浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
水中延伸方式を採用する場合、積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することが好ましい(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜10重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光膜を作製することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
後述の染色により、予め、PVA系樹脂層に二色性物質(代表的には、ヨウ素)が吸着されている場合、好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜15重量部、より好ましくは0.5重量部〜8重量部である。
積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上である。このような高い延伸倍率は、例えば、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。なお、本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
好ましい実施形態においては、上記積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸した後、上記ホウ酸水中延伸および後述の染色を行う。このような空中延伸は、ホウ酸水中延伸に対する予備的または補助的な延伸として位置付けることができるため、以下「空中補助延伸」という。
空中補助延伸を組み合わせることで、積層体をより高倍率に延伸することができる場合がある。その結果、より優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。例えば、上記樹脂基材としてポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いた場合、ホウ酸水中延伸のみで延伸するよりも、空中補助延伸とホウ酸水中延伸とを組み合せる方が、樹脂基材の配向を抑制しながら延伸することができる。当該樹脂基材は、その配向性が向上するにつれて延伸張力が大きくなり、安定的な延伸が困難となったり、破断したりする。そのため、樹脂基材の配向を抑制しながら延伸することで、積層体をより高倍率に延伸することができる。
また、空中補助延伸を組み合わせることで、PVA系樹脂の配向性を向上させ、そのことにより、ホウ酸水中延伸後においてもPVA系樹脂の配向性を向上させ得る。具体的には、予め、空中補助延伸によりPVA系樹脂の配向性を向上させておくことで、ホウ酸水中延伸の際にPVA系樹脂がホウ酸と架橋し易くなり、ホウ酸が結節点となった状態で延伸されることで、ホウ酸水中延伸後もPVA系樹脂の配向性が高くなるものと推定される。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を作製することができる。
空中補助延伸における延伸倍率は、好ましくは3.5倍以下である。空中補助延伸の延伸温度は、PVA系樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましい。延伸温度は、好ましくは95℃〜150℃である。なお、空中補助延伸と上記ホウ酸水中延伸とを組み合わせた場合の最大延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上、より好ましくは5.5倍以上、さらに好ましくは6.0倍以上である。
A−3.染色
上記染色は、代表的には、PVA系樹脂層に二色性物質(好ましくは、ヨウ素)を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、ヨウ素を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液に積層体を浸漬させる方法である。ヨウ素が良好に吸着し得るからである。
上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜0.5重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.02重量部〜20重量部、より好ましくは0.1重量部〜10重量部である。染色液の染色時の液温は、PVA系樹脂の溶解を抑制するため、好ましくは20℃〜50℃である。染色液にPVA系樹脂層を浸漬させる場合、浸漬時間は、PVA系樹脂層の透過率を確保するため、好ましくは5秒〜5分である。また、染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光膜の偏光度もしくは単体透過率が所定の範囲となるように、設定することができる。1つの実施形態においては、得られる偏光膜の偏光度が99.98%以上となるように、浸漬時間を設定する。別の実施形態においては、得られる偏光膜の単体透過率が40%〜44%となるように、浸漬時間を設定する。
染色処理は、任意の適切なタイミングで行い得る。上記水中延伸を行う場合、好ましくは、水中延伸の前に行う。
A−4.その他の処理
上記積層体は、延伸、染色以外に、そのPVA系樹脂層を偏光膜とするための処理が、適宜施され得る。偏光膜とするための処理としては、例えば、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が挙げられる。なお、これらの処理の回数、順序等は、特に限定されない。
上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬することにより行う。不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、不溶化処理は、上記水中延伸や上記染色処理の前に行う。
上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬することにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜60℃である。好ましくは、架橋処理は上記水中延伸の前に行う。好ましい実施形態においては、染色処理、架橋処理および水中延伸をこの順で行う。
上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬することにより行う。上記乾燥処理における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
A−5.偏光膜
上記偏光膜は、実質的には、二色性物質が吸着配向されたPVA系樹脂膜である。偏光膜の厚みは10μm以下であり、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。一方、偏光膜の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上、特に好ましくは43.0%以上である。偏光膜の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
B.第1の保護フィルムの積層
上記積層体(PVA系樹脂層)に上記各処理を施した後、図1(b)に示すように、積層体の偏光膜(PVA系樹脂層)12側に第1の保護フィルム21を積層する。代表的には、長尺状の積層体に長尺状の第1の保護フィルムを、互いの長手方向を揃えるようにして積層する。なお、本積層工程は、樹脂基材剥離後の剥離面に第2の保護フィルムを積層した後に行ってもよい。また、後述する第2の実施形態のように、本積層工程は省略してもよい。
後述するように、1つの実施形態においては、偏光膜表面に水系接着剤を塗布して加熱することにより、第1の保護フィルムを貼り合わせる。このようにして第1の保護フィルムを積層することで、偏光膜の光学特性を向上させ得る。加熱により、光学特性への寄与が低い配向性の低いヨウ素錯体が選択的に分解され得ることが、光学特性向上の要因の一つとして考えられる。具体的には、樹脂基材上に形成された偏光膜は、その樹脂基材側(下側)と表面側(上側)とで構成が異なる場合がある。具体的には、下側と上側とではPVA系樹脂の配向性が異なる場合がある。配向性の低い部分に存在するヨウ素錯体もその配向性は低く、光学特性(特に、偏光度)への寄与が低いだけでなく、光学特性(特に、透過率)の低下の原因となり得る。一方で、このようなヨウ素錯体は、その配向性の低さから結合力も弱く分解されやすい。その結果、加熱により、配向性の低いヨウ素錯体を選択的に分解させて、可視光領域の吸収を低減させ、透過率を向上させることができる。なお、配向性の低いヨウ素錯体は、もともと偏光度への寄与が低いため、分解されても偏光度の低下は最小限に抑えられる。
第1の保護フィルムは、例えば、位相差フィルム等としても機能し得る。
第1の保護フィルムとしては、任意の適切な樹脂フィルムが採用され得る。保護フィルムの形成材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。
第1の保護フィルムの厚みは、代表的には10μm〜100μmである。なお、第1の保護フィルムには、各種表面処理が施されていてもよい。
1つの実施形態においては、上記第1の保護フィルムは、好ましくは、その透湿度が100g/m2・24h以下であり、さらに好ましくは90g/m2・24h以下である。第1の保護フィルムがこのような透湿度を満足することにより、PVA系樹脂層に存在する水分を層中にとどめた状態で加熱することができる。水分存在下で加熱することにより、特に、水溶化されている(配向性の低い)ヨウ素錯体は分解されやすく、ヨウ素イオンに分解され得、得られる偏光膜の可視光領域の吸収が低減して、透過率が向上し得る。なお、「透湿度」は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して、温度40℃、湿度92%RHの雰囲気中、面積1m2の試料を24時間に通過する水蒸気量(g)を測定して求められる値である。
C.第2の保護フィルムの積層
本実施形態においては、図1(c)に示すように、上記偏光膜12から樹脂基材11を剥離し、この剥離面に第2の保護フィルム22を積層する。代表的には、長尺状の偏光膜に長尺状の第2の保護フィルムを、互いの長手方向を揃えるようにして積層する。
第2の保護フィルムの特性、構成材料、厚み等については、第1の保護フィルムに関して説明したとおりである。
D.第1の保護フィルムおよび/または第2の保護フィルムの積層に用いられる接着剤
本発明においては、上記のとおり、第1の保護フィルム21および第2の保護フィルム22の少なくとも一方は、水分率が10%以下の接着剤(以下、低水分率接着剤を称する場合もある)を介して積層され得る。例えば、第1の保護フィルム21のみが低水分率接着剤で積層されてもよく、第2の保護フィルム22のみが低水分率接着剤で積層されてもよく、第1の保護フィルム21および第2の保護フィルム22の両方が低水分率接着剤で積層されてもよい。1つの実施形態においては、第1の保護フィルム21および第2の保護フィルム22の両方が低水分率接着剤で積層され得る。別の実施形態においては、第1の保護フィルム21が低水分率接着剤で積層され、第2の保護フィルム22は任意の適切な接着剤または粘着剤で積層され得る。さらに別の実施形態においては、第2の保護フィルム22が低水分率接着剤で積層され、第1の保護フィルム21は任意の適切な接着剤または粘着剤で積層され得る。
D−1.水分率が10%以下の接着剤
上記水分率が10%以下の接着剤(低水分率接着剤)は、その水分率が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。このような接着剤を用いて第1の保護フィルムおよび/または第2の保護フィルムを積層することにより、光学特性に優れた偏光板を作製することができる。1つの実施形態においては、第2の保護フィルムが低水分率接着剤により積層され得る。この場合、偏光膜における水分量が少ない状態で第2の保護フィルムを積層することにより、PVA系樹脂の配向性を保持させることができる。具体的には、上述のとおり、樹脂基材側(下側)と表面側(上側)とではPVA系樹脂の配向性が異なる場合があるが、配向性が水分により低下してヨウ素錯体の分解するのを抑制することができる。1つの実施形態においては、第1の保護フィルムが後述する水系接着剤で積層され、第2の保護フィルムが低水分率接着剤により積層され得る。この場合、偏光膜に水分が過剰に存在する状態を回避して、光学特性の低下を抑制することができる。
上記水分率が10%以下の接着剤としては、上記水分率を満足し得る限り、任意の適切な接着剤が用いられる。好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。上記水分率を良好に達成し得るからである。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、活性エネルギー線の照射によって硬化し得る接着剤であれば、任意の適切な接着剤が用いられ得る。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型など必要に応じて選択することができ、例えば、ラジカル硬化型とカチオン硬化型のハイブリッドなど、適宜組み合わせて使用することも可能である。
ラジカル硬化型接着剤としては、例えば、硬化成分として、(メタ)アクリレート基や(メタ)アクリルアミド基などのラジカル重合性基を有する化合物(例えば、モノマーおよび/またはオリゴマー)を含有する接着剤が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/メタクリルをいう。
ラジカル硬化型接着剤の具体例としては、例えば、硬化性成分として、SP値が29.0(kJ/m3)1/2以上32.0以下(kJ/m3)1/2であるラジカル重合性化合物(A)、SP値が18.0(kJ/m3)1/2以上21.0(kJ/m3)1/2未満であるラジカル重合性化合物(B)、およびSP値が21.0(kJ/m3)1/2以上23.0(kJ/m3)1/2以下であるラジカル重合性化合物(C)と、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(D)とを含有し、組成物全量を100重量%としたとき、前記ラジカル重合性化合物(B)を25〜80重量%含有する。なお、本明細書において「組成物全量」とは、ラジカル重合性化合物に加えて、各種開始剤や添加剤を含む全量を意味するものとする。
ラジカル重合性化合物(A)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が29.0(kJ/m3)1/2以上32.0以下(kJ/m3)1/2である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(A)の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値29.6)、N−メチロールアクリルアミド(SP値31.5)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(B)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が18.0(kJ/m3)1/2以上21.0(kJ/m3)1/2未満である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(B)の具体例としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート(SP値19.0)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(SP値19.2)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SP値20.3)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(SP値19.1)、ジオキサングリコールジアクリレート(SP値19.4)、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート(SP値20.9)などが挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(B)としては市販品も好適に使用可能であり、例えばアロニックスM−220(東亞合成社製、SP値19.0)、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学社製、SP値19.2)、ライトアクリレートDGE−4A(共栄社化学社製、SP値20.9)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学社製、SP値20.3)、SR−531(Sartomer社製、SP値19.1)、CD−536(Sartomer社製、SP値19.4)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(C)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が21.0(kJ/m3)1/2以上23.0(kJ/m3)1/2以下である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(C)の具体例としては、例えば、アクリロイルモルホリン(SP値22.9)、N−メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N−エトキシメチルアクリルアミド(SP値22.3)などが挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(C)としては市販品も好適に使用可能であり、例えばACMO(興人社製、SP値22.9)、ワスマー2MA(笠野興産社製、SP値22.9)、ワスマーEMA(笠野興産社製、SP値22.3)、ワスマー3MA(笠野興産社製、SP値22.4)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がいずれも60℃以上であると、接着剤層のTgも高くなり、耐久性が特に優れたものとなる。その結果、例えば偏光膜と保護フィルムとの接着剤層としたとき、偏光膜のヒートショッククラックの発生を防止することができる。ここで、ラジカル重合性化合物のホモポリマーのTgとは、ラジカル重合性化合物を単独で硬化(重合)させたときのTgを意味する。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、塗工時の作業性や均一性を考慮した場合、低粘度であることが好ましいため、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(D)も低粘度であることが好ましい。低粘度であって、かつ接着剤層の硬化収縮を防止できるアクリル系オリゴマーとしては、重量平均分子量(Mw)が15000以下のものが好ましく、10000以下のものがより好ましく、5000以下のものが特に好ましい。一方、硬化物層(接着剤層)の硬化収縮を十分に抑制するためには、アクリル系オリゴマー(D)の重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。アクリル系オリゴマー(D)を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1−20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2−イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5−ノルボルネン−2−イル−メチル(メタ)アクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメチル−ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、ラジカル重合性化合物(B)を25〜80重量%含有する。さらに、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、前記ラジカル重合性化合物(A)を3〜40重量%、前記ラジカル重合性化合物(C)を5〜55重量%、前記アクリル系オリゴマー(D)を3〜20重量%含有することが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を電子線硬化型で用いる場合、組成物中に光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光重合開始剤を用いることが好ましく、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物では、光重合開始剤として、下記一般式(1)で表される化合物;
(式中、R
1およびR
2は−H、−CH
2CH
3、−iPrまたはClを示し、R
1およびR
2は同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(1)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(1)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて接着性に優れる。一般式(1)で表される化合物の中でも、R
1およびR
2が−CH
2CH
3であるジエチルチオキサントンが特に好ましい。組成物中の一般式(1)で表される化合物の組成比率は、組成物全量を100重量%としたとき、0.1〜5.0重量%であることが好ましく、0.5〜4.0重量%であることがより好ましく、0.9〜3.0重量%であることがさらに好ましい。
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、組成物全量を100重量%としたとき、通常0〜5重量%、好ましくは0〜4重量%、最も好ましくは0〜3重量%である。
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する保護フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
特に、光重合開始剤として、一般式(1)の光重合開始剤に加えて、さらに下記一般式(2)で表される化合物;
(式中、R
3、R
4およびR
5は−H、−CH
3、−CH
2CH
3、−iPrまたはClを示し、R
3、R
4およびR
5は同一または異なっても良い)を使用することが好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、市販品でもある2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:IRGACURE907 メーカー:BASF)が好適に使用可能である。その他、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名:IRGACURE369 メーカー:BASF)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(商品名:IRGACURE379 メーカー:BASF)が感度が高いため好ましい。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料などを挙げることができる。
上記の添加剤の中でも、シランカップリング剤は偏光膜表面に作用し、更なる耐水性を付与することができる。シランカップリング剤を使用する場合、その添加量は、組成物全量を100重量%としたとき、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜3重量%である。
シランカップリング剤は、活性エネルギー線硬化性の化合物を使用することが好ましいが、活性エネルギー線硬化性でなくても同様の耐水性を付与することができる。
シランカップリング剤の具体例としては、活性エネルギー線硬化性の化合物としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性ではないシランカップリング剤の具体例としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルーN−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
好ましくは、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV〜300kVであり、さらに好ましくは10kV〜250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、保護フィルムや偏光膜にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGy、さらに好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、保護フィルムや偏光膜にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる保護フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
一方、紫外線硬化型において、紫外線吸収能を付与した保護フィルムを使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に到達しないため、その重合反応に寄与しない。さらに、保護フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、保護フィルム自体が発熱し、偏光板のカール・シワなど不良の原因となる。そのため、紫外線硬化型を採用する場合、紫外線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380〜440nmの積算照度と波長範囲250〜370nmの積算照度との比が100:0〜100:50であることが好ましく、100:0〜100:40であることがより好ましい。このような積算照度の関係を満たす紫外線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380〜440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光を光源とし、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の光を遮断して用いることもできる。
紫外線硬化型において、紫外線を照射する前に活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を加温すること(照射前加温)が好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。また、紫外線を照射後に活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を加温すること(照射後加温)も好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、特に偏光膜と波長365nmの光線透過率が5%未満である保護フィルムとを接着する接着剤層を形成する場合に好適に使用可能である。すなわち、上記第1の保護フィルムおよび/または第2の保護フィルムは、波長365nmの光線透過率が5%未満であり得、または、UV吸収能を有し得る。ここで、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、上述した一般式(1)の光重合開始剤を含有することによって、UV吸収能を有する保護フィルム越しに紫外線を照射して、接着剤層を硬化形成することができる。よって、偏光膜の両面にUV吸収能を有する保護フィルムを積層した偏光板においても、接着剤層を硬化させることができる。ただし、当然ながら、UV吸収能を有さない保護フィルムを積層した偏光板においても、接着剤層を硬化させることができる。なお、UV吸収能を有する保護フィルムとは、380nmの光に対する透過率が10%未満である保護フィルムを意味する。
保護フィルムへのUV吸収能の付与方法としては、保護フィルム中に紫外線吸収剤を含有させる方法や、保護フィルム表面に紫外線吸収剤を含有する表面処理層を積層させる方法が挙げられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、従来公知のオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物により形成された接着剤層は水系接着剤層に比べて、耐久性が高い。本発明においては、接着剤層として、Tgが60℃以上であるものを用いることが好ましい。また、接着剤層の厚みが、0.01〜7μmになるように制御することが好ましい。接着剤層が60℃以上の高Tgになる、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を用いるとともに、接着剤層の厚みを所定範囲に制御することにより、高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足させることができる。偏光板の耐久性を考慮した場合、接着剤層のTg(℃)をA、接着剤層の厚み(μm)をBと定義した場合に、数式(1):A−12×B>58、を満足することが好ましい。
上記のとおり、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、これにより形成される接着剤層のTgが60℃以上になるように選択されることが好ましく、さらには70℃以上であることが好ましく、さらには75℃以上、さらには100℃以上、さらには120℃以上であることが好ましい。一方、接着剤層のTgが高くなりすぎると偏光板の屈曲性が低下することから、接着剤層のTgは300℃以下、さらには240℃以下、さらには180℃以下にすることが好ましい。
また、接着剤層の厚みは好ましくは0.01〜7μm、より好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.01〜2μm、最も好ましくは0.01〜1μmである。接着剤層の厚みが0.01μmより薄い場合は、接着力自体の凝集力が得られず、接着強度が得られないおそれがある。一方、接着剤層の厚みが7μmを超えると、偏光板が耐久性を満足できない場合がある。
活性エネルギー線硬化型接着剤およびその硬化方法の具体例は、例えば、特開2012−144690号公報に記載されている。当該記載は、本明細書に参考として援用される。
D−2.その他の接着剤または粘着剤
本発明においては、上記のとおり、第1の保護フィルム21および第2の保護フィルム22の少なくとも一方は、水分率が10%以下の接着剤(低水分率接着剤)を介して積層され得る。言い換えれば、第1の保護フィルム21または第2の保護フィルム22のいずれかは、低水分率接着剤以外の接着剤(以下、その他の接着剤とする)または粘着剤を用いて積層されてもよい。すなわち、その他の接着剤または粘着剤は、第1の保護フィルム21の積層に用いられてもよく、第2の保護フィルム22の積層に用いられてもよい。その他の接着剤としては、水系接着剤であってもよいし溶剤系接着剤であってもよい。好ましくは、水系接着剤が用いられる。水系接着剤に含まれる水分がPVA系樹脂層に移行し得る。これにより、ヨウ素錯体の安定性が低下し、特に配向性の低いヨウ素錯体は、もともとの安定性が低いため、分解されやすい状態になる。その結果、配向性の低いヨウ素錯体の分解を選択的に促進させることができる。
上記水系接着剤としては、任意の適切な水系接着剤が採用され得る。好ましくは、PVA系樹脂を含む水系接着剤が用いられる。水系接着剤に含まれるPVA系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100〜5500程度、さらに好ましくは1000〜4500である。平均ケン化度は、接着性の点から、好ましくは85モル%〜100モル%程度、さらに好ましくは90モル%〜100モル%である。
水系接着剤に含まれるPVA系樹脂は、好ましくは、アセトアセチル基を含有する。PVA系樹脂層と保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れ得るからである。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えば、PVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1モル%〜40モル%程度、さらに好ましくは1モル%〜20モル%、特に好ましくは2モル%〜7モル%である。なお、アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
水系接着剤の樹脂濃度は、好ましくは0.1重量%〜15重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜10重量%である。
接着剤の塗布時の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。例えば、加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定する。接着剤層の厚みは、好ましくは10nm〜300nm、さらに好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは20nm〜150nmである。
水系接着剤を用いて第1の保護フィルムを積層する際、水系接着剤に含まれる単位面積当たりの水分量は、好ましくは0.05mg/cm2以上である。一方、水分量は、好ましくは2.0mg/cm2以下、さらに好ましくは1.0mg/cm2以下である。接着剤の乾燥に時間がかかるおそれがあるからである。なお、当該水分量は、接着剤に含まれる水分量と偏光膜表面への接着剤の塗布量とにより求められる。
上記加熱温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは80℃以上である。なお、第1の保護フィルムの積層の際に行う加熱は、上記積層体への乾燥処理と兼ねてもよい。また、樹脂基材の剥離後に行ってもよいが、好ましくは、剥離前に行う。
<第2の実施形態>
上記のとおり、本実施形態による偏光板の製造方法は、樹脂基材と該樹脂基材の片側に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを有する積層体を延伸、染色して、該樹脂基材上に偏光膜を作製する工程と、樹脂基材を剥離して、偏光膜の該樹脂基材を剥離した側に保護フィルムを積層する工程と、を含む。すなわち、この実施形態においては、第1の保護フィルムを積層することなく、樹脂基材を剥離して、偏光膜の該樹脂基材を剥離した側に保護フィルム(上記のとおり、この保護フィルムは第1の実施形態における第2の保護フィルムに対応する)を積層してもよい。この実施形態においては、当該保護フィルムが、水分率が10%以下の接着剤を介して積層され得る。なお、この実施形態においては、樹脂基材を剥離する際には任意の適切な支持部材(例えば、支持フィルム)が偏光膜の樹脂基材と反対側に配置されてもよい。
<その他>
本発明の具体的な実施形態を、第1の実施形態および第2の実施形態として説明してきたが、本発明がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、第1の実施形態および第2の実施形態を適宜組み合わせてもよく、第1の実施形態および/または第2の実施形態と当業界において周知の材料および操作等とを組み合わせてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
1.厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC−351C」)を用いて測定した。
2.ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準じて測定した。
3.透湿度
JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して、温度40℃、湿度92%RHの雰囲気中、面積1m2の試料を24時間に通過する水蒸気量(g)を測定した。
4.水分率
カールフィッシャー滴定法により水分率を測定した。測定装置および測定条件の詳細は以下の通りである。
測定装置:電量滴定式水分測定装置(三菱化学社製、CA−06)、加熱気化装置(三菱化学社製、VA−06)
測定条件:加熱気化法(150℃加熱)
陽極液:アクアミクロンAKX(エーピーアイコーポレーション社製)
陰極液:アクアミクロンCXU(エーピーアイコーポレーション社製)
[実施例1]
樹脂基材として、吸水率0.60%、Tg80℃の非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)フィルム(三菱化学社製、商品名「ノバクリア」、厚み:100μm)を用いた。
樹脂基材の片面に、重合度4200、ケン化度99.2モル%のポリビニルアルコールの水溶液を60℃で塗布および乾燥して、厚み10μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に1.8倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液)に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に一軸延伸を行った(水中延伸)。ここで、積層体が破断する直前まで延伸した(最大延伸倍率は6.0倍)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体から樹脂基材を剥離した後、この剥離面に下記に示す接着剤を硬化後の接着剤層厚みが0.5μmとなるように塗布し、保護フィルム(アクリル系樹脂フィルム、厚み40μm、透湿度80g/m2・24h)を貼り合わせ、この貼り合わせたフィルム側からIRヒーターを用いて50℃に加温し、下記の紫外線を照射して接着剤を硬化させた。
こうして、厚み4.5μmの偏光膜を有する偏光板を作製した。
(接着剤組成)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、接着剤を調製した。
(紫外線)
活性エネルギー線として、紫外線(ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380〜440nm))を使用した。なお、紫外線の照度は、Solatell社製のSola−Checkシステムを使用して測定した。
[実施例2]
積層体の延伸(洗浄処理)までを実施例1と同様に行い、続いて、第1の保護フィルムの貼り合せを、下記のように行った。
積層体のPVA系樹脂層表面に、加熱後の接着剤層の厚みが90nmとなるようにPVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z−200」、樹脂濃度:3重量%、水分率:97%)を塗布し、第1の保護フィルム(アクリル系樹脂フィルム、厚み40μm、透湿度80g/m2・24h)を貼り合わせ、80℃に維持したオーブンで5分間加熱した。
続いて、積層体から樹脂基材を剥離した後、この剥離面に実施例1と同様の接着剤を硬化後の接着剤層厚みが0.5μmとなるように塗布し、第2の保護フィルム(ノルボルネン系樹脂フィルム、JSR社製、商品名「Arton」、厚み35μm)を貼り合わせ、この貼り合わせたフィルム側からIRヒーターを用いて50℃に加温し、実施例1と同様にして紫外線を照射して接着剤を硬化させた。接着剤組成、照射条件は、実施例1と同様にして行った。
こうして、厚み4.5μmの偏光膜を有する偏光板を作製した。
[実施例3]
第2の保護フィルムの積層に、下記に示す接着剤を用い、下記に示す条件で電子線を照射したこと以外は、実施例2と同様にして偏光板を作製した。
(接着剤)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)60重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)40重量部とを混合し、接着剤を調製した。
(電子線照射条件)
加速電圧:250kV
照射線量:20kGy
[実施例4]
第1の保護フィルムの積層を、実施例1の紫外線硬化型接着剤を用いて行ったこと以外は、実施例2と同様にして偏光板を作製した。
[比較例1]
第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの両方を下記に示す水系接着剤で積層したこと以外は、実施例2と同様にして偏光板を作製した。
積層体のPVA系樹脂層表面に、加熱後の接着剤層の厚みが90nmとなるようにPVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z−200」、樹脂濃度:3重量%、水分率:97%)を塗布し、第1の保護フィルム(アクリル系樹脂フィルム、厚み40μm、透湿度80g/m2・24h)を貼り合わせ、80℃に維持したオーブンで5分間加熱した。続いて、積層体から樹脂基材を剥離した後、第2の保護フィルムとして第1の保護フィルムと同様のフィルムを第1の保護フィルムと同様にして貼り合わせた。
各実施例および比較例で得られた偏光板の偏光度および単体透過率を測定した。偏光度および単体透過率の測定方法は以下のとおりである。測定結果を、第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの積層(接着)方式およびそれに用いた接着剤の水分率とともに表1に示す。また、実施例1において樹脂基材を剥離した後に第2の保護フィルムを積層せずに得た偏光板(参考例)の偏光度の測定結果も表1に示す。
なお、実施例1および参考例において、光学特性の測定は樹脂基材を剥離した状態で行った。これは、樹脂基材の表面反射の違いによる測定結果への影響をなくすためである。また、実施例2〜4および比較例1においては、第1の保護フィルムの屈折率はおよそ1.50、第2の保護フィルムの屈折率はおよそ1.53である。また、実施例1においては、最表面の片面のPVA系樹脂の屈折率はおよそ1.53、最表面のもう一方の片面は屈折率がおよそ1.50のアクリル系樹脂フィルムからなる保護フィルムであり、最表面の屈折率の組合せは1.50/1.53である。いずれの構成においても、最表面の屈折率の組合せは1.50/1.53であり、表面反射による測定結果への影響が出ない構成にて比較を行った。
(偏光度の測定方法)
紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7100」)を用いて、偏光膜の単体透過率(Ts)、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、偏光度(P)を次式により求めた。
偏光度(P)(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
なお、上記Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
単体透過率42.5%における偏光度は、比較例よりも各実施例の方が高かった。実施例および比較例を比較すると、第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの少なくとも一方の積層に水分率の低い接着剤を用いるのが好ましいことがわかる。