JP2015023854A - モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株 - Google Patents

モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株 Download PDF

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Abstract

【課題】モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株を提供する。
【解決手段】ホスホトランスアセチラーゼを欠損し、かつ乳酸デヒドロゲナーゼを高発現する、乳酸生産性モーレラ属細菌株。
【選択図】なし

Description

本発明は、モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株に関する。
モーレラ(Mooorella)属細菌は高熱性酢酸生産菌であり、有機炭素源および合成ガス(H+CO+CO)のいずれを基質としても生育が可能であるという特徴を有する。また、モーレラ属細菌は、ほぼ唯一の代謝産物として酢酸を生産するが、比酢酸生産速度が非常に高く、例えば、中温性酢酸生産菌A. woodii の比酢酸生産速度が約0.29 g/g−乾菌体/hであるのに対して、M. thermoaceticaの比酢酸生産速度は約1g/g−乾菌体/hであることなどが報告されている。そのため、モーレラ属細菌を有用物質生産に利用することができれば、より効率的な生産が期待される。
そのため、モーレラ属細菌の代謝経路を改変し、乳酸等の有用物質を生産しようとする試みが行われてきた。例えば、特許文献1には、モーレラ属細菌に、異種細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼを導入することにより、高い乳酸生産能力を付与したことが記載されている。なお、野生型のモーレラ属細菌も乳酸デヒドロゲナーゼを持つが、その活性が低いため、乳酸はほとんど生産されない。
特開2013−90600号公報
しかし、特開2013−90600号公報(特許文献1)に記載の方法により作製した乳酸生産性モーレラ属細菌では、代謝産物として乳酸および酢酸を生産するため、乳酸生産効率をさらに向上させられる余地があると考えられた。
そこで、本発明は、モーレラ属細菌の代謝経路を改変し、酢酸の生産を抑制し、乳酸の生産を増大させた菌株を提供すること、すなわち、モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、オロチジン5’リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)および抗生物質耐性遺伝子を選択マーカー遺伝子として用いることにより2回の遺伝子組換えを行うことが可能となり、モーレラ属細菌のpyrF破壊株において、ゲノム上に存在する2個のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子を破壊するとともに、pyrF、抗生物質耐性遺伝子および乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入することで、モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株を作製することができることを知得し、本発明を完成させた。
より詳細には、本発明は以下のものである。
(1)アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼを欠損し、かつ乳酸デヒドロゲナーゼを高発現する、乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(2)前記ホスホトランスアセチラーゼを完全欠損する、(1)に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(3)前記乳酸デヒドロゲナーゼがNADH依存性である、(1)または(2)に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(4)前記乳酸デヒドロゲナーゼが乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(5)前記乳酸デヒドロゲナーゼがサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属細菌に由来する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(6)前記乳酸デヒドロゲナーゼがサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)に由来する、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(7)前記乳酸デヒドロゲナーゼがサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)39E株に由来する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(8)前記ホスホトランスアセチラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質または配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(9)前記モーレラ属細菌がモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(10)NITE特許微生物寄託センター(NPMD)に受領番号NITE AP-01657で寄託されている、乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(11)ゲノムDNAの塩基配列中に、配列番号5の塩基配列と、配列番号7の塩基配列と、配列番号9の塩基配列とを有する、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(12)ゲノムDNAの塩基配列中に、配列番号1の塩基配列および配列番号3の塩基配列がない、(11)に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
(13)オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼを欠損し、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第一のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-1)およびアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第二のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-2)をゲノムに有するモーレラ属細菌株(dpyrF株)を準備する工程と、前記dpyrF株の第一の前記pta-1を標的遺伝子とする相同組換えにより、前記pta-1を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)およびオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を導入する工程と、前記dpyrF株の前記pta-2を標的とする相同組換えにより、前記pta-2を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)および外来性の抗生物質耐性遺伝子を導入する工程とを備える、乳酸生産性モーレラ属細菌株の作製方法。
(14)オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼを欠損し、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第一のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-1)およびアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第二のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-2)をゲノムに有するモーレラ属細菌株(dpyrF株)を準備する工程と、前記dpyrF株の前記pta-2を標的とする相同組換えにより、前記pta-2を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)および外来性の抗生物質耐性遺伝子を導入する工程と、前記dpyrF株の第一の前記pta-1を標的遺伝子とする相同組換えにより、前記pta-1を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ldh)およびオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子(pyrF)を導入する工程とを備える、乳酸生産性モーレラ属細菌株の作製方法。
(15)前記pta-1がコードするタンパク質および前記pta-2がコードするタンパク質が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から重複しないように選択される、(13)または(14)に記載の作製方法。
(16)前記pta-1の塩基配列および前記pta-2の塩基配列が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列からなる群から重複しないように選択される、(13)または(14)に記載の作製方法。
(17)前記pyrFが配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする、(13)〜(16)のいずれか1項に記載の作製方法。
(18)前記pyrFが配列番号7の塩基配列からなる、(13)〜(17)のいずれか1項に記載の作製方法。
(19)前記モーレラ属細菌がモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)である、(13)〜(18)のいずれか1項に記載の作製方法。
(20)前記dpyrF株がNITE特許微生物寄託センター(NPMD)に受託番号NITE P-1057で寄託されている、(13)〜(19)のいずれか1項に記載の作製方法。
(21)前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がNADH依存性の乳酸デヒドロゲナーゼをコードする、(13)〜(20)のいずれか1項に記載の作製方法。
(22)前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属細菌に由来する、(13)〜(21)のいずれか1項に記載の作製方法。
(23)前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)に由来する、(13)〜(22)のいずれか1項に記載の作製方法。
(24)前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)39E株に由来する、(13)〜(23)のいずれか1項に記載の作製方法。
(25)前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする、(13)〜(24)のいずれか1項に記載の作製方法。
(26)前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が配列番号5の塩基酸配列からなる、(13)〜(25)のいずれか1項に記載の作製方法。
(27)前記抗生物質耐性遺伝子が、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子およびピューロマイシン耐性遺伝子からなる群から選択されるいずれか1つである、(13)〜(26)のいずれか1項に記載の作製方法。
(28)前記抗生物質耐性遺伝子が配列番号10のタンパク質をコードする、(13)〜(27)のいずれか1項に記載の作製方法。
(29)前記抗生物質耐性遺伝子が配列番号9の塩基配列からなる、(13)〜(28)のいずれか1項に記載の作製方法。
(30)前記G3PDプロモーターの塩基配列が配列番号13の塩基配列に含まれる、(13)〜(29)のいずれか1項に記載の作製方法。
(31)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株、または(13)〜(30)のいずれか1項に記載の作製方法によって作製された乳酸生産性モーレラ属細菌株を有機栄養的に培養する工程を備える乳酸の製造方法。
本発明によれば、モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株およびその作製方法を提供することができる。
図1は、ウッド・リングダール経路(アセチルCoA経路)を説明する模式図である。 図2は、酢酸生産経路を表す模式図である。 図3は、吸光度と乾燥菌体質量との関係を表すグラフである。 図4は、pK18-ldhを説明する模式図である。 図5は、pK18-PG3D-kanを説明する模式図である。 図6は、(a,b)相同組換えによるMoth_0864の破壊を表す模式図および(c)PCR産物の電気泳動結果を表す写真である。 図7は、(a)相同組換えによるMoth_1181の破壊を表す模式図および(b)PCR産物の電気泳動結果を表す写真である。 図8は、(a)相同組換えによるMoth_0940の破壊を表す模式図および(b)PCR産物の電気泳動結果を表す写真である。 図9は、各破壊遺伝子の転写レベルを表すグラフである。 図10は、Moth_0864由来タンパク質およびMoth_1184由来タンパク質のSDS−PAGE結果を表す写真である。 図11は、アセチルCoA経路関連遺伝子のゲノム上における位置を表す模式図である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の一つの特徴は、酢酸非生産・乳酸生産株の作製方法にある。すなわち、モーレラ属細菌のオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)欠損株において、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒するホスホトランスアセチラーゼをコードする2遺伝子を破壊するとともに、pyrF、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)および抗生物質耐性遺伝子を導入することにより、モーレラ属細菌の酢酸非生産・乳酸生産株を作製した点が本発明の一つの特徴である。
モーレラ属細菌において、アセチルCoAからアセチルリン酸を経由して酢酸を生産する経路に関与する酵素をコードする遺伝子は不明であった。モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)ATCC 39073株に関して、Pierce et al., 2008, Environ. Microbiol.; 10 (10):2550-73.は、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)の1,2−プロパンジオール分解に関わる酵素として同定されたPduLをコードする遺伝子(pduL)とのホモロジーから、Moth_0864(配列番号1)およびMoth_1181(配列番号3)もPduLであると推定している。PduLはプロピオニルCoAからプロピオニルリン酸への反応を触媒するホスホトランスアセチラーゼであるため(Liu et al., 2007, J. Bacteriol. 189: 1589-1596.)、M. thermoacetica ATCC 39073株において、Moth_0864およびMoth_1181がコードするタンパク質はアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素ではなく、いずれも酢酸生産に関与していないものと考えられていた。
しかしながら、本発明者らは、実験(実施例を参照)により、M. thermoaceticaのMoth_0864およびMoth_1181を破壊すると酢酸を実質的に生産しない遺伝子組換え株が得られること、さらには、Moth_0864およびMoth_1181をコードするタンパク質を精製したものがともにアセチルCoAとアセチルリン酸との相互変換を触媒することを確認し、Moth_0864およびMoth_1181がアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒するホスホトランスアセチラーゼをコードする遺伝子であるとの確証を得た。なお、「酢酸を実質的に生産しない」とは、同一培養条件で基質(フルクトース)1モルあたりの酢酸生産量が、野生株に比べて1/30未満、好ましくは1/50以下であることをいうものとする。例えば(実施例を参照)、M. thermoaceticaの野生株であるATCC 39073株のYP/S-酢酸(mol/mol)が2.13±0.11であるのに対して、Moth_0864およびMoth_1181の両方を破壊したdpL1−2株では0.023±0.003となっており、約1/80〜1/110である。一方、Moth_0864およびMoth_1181のいずれか一方を破壊したdpL1株およびdpL2株では、それぞれ、ほとんど変わらないか、約1/3に低下するだけであり、Moth_1181およびMoth_0940を破壊したdpL2-ak株では約1/23〜1/30に低下するに過ぎなかった。
また、pduLおよびPduLについて、プロテオバクテリア門に帰属するグラム陰性細菌であるSalmonella entericaとフィルミクテス門に帰属するグラム陽性細菌であるMoorella thermoaceticaとの間で相同性が高かったことに基づけば、同属であるモーレラ属細菌相互間でのアセチルCoAとアセチルリン酸との相互変換を触媒する酵素およびそれをコードする遺伝子の相同性は相当に高いことが予想される。したがって、M. thermoacetica ATCC 39073株(ATCC 39073株に由来する菌株を含む)とその他のモーレラ属細菌株との間でも、Moorella属細菌の酢酸生産に関与するホスホトランスアセチラーゼおよびそれをコードする遺伝子の相同性は高く、ATCC 39073株およびそれに由来する菌株以外のモーレラ属細菌株について、Moth_0864およびMoth_1181に相当する遺伝子を特定し、その遺伝子および周辺のDNA塩基配列を解読すること、その遺伝子がコードするタンパク質がアセチルCoAとアセチルリン酸との相互変換を触媒する酵素であることを確認することは困難ではないと考えられる。
[乳酸生産性モーレラ属細菌株の作製方法]
本発明の乳酸生産性モーレラ属細菌の作製方法は、オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼを欠損し、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第一のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-1)およびアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第二のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-2)をゲノムに有するモーレラ属細菌株(dpyrF株)を準備する工程(準備工程)と、前記dpyrF株の第一の前記pta-1を標的遺伝子とする相同組換えにより、前記pta-1を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)およびオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を導入する工程(遺伝子組換工程1)と、前記dpyrF株の前記pta-2を標的とする相同組換えにより、前記pta-2を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)および外来性の抗生物質耐性遺伝子を導入する工程(遺伝子組換工程2)とを備える。前記遺伝子組換工程1および前記遺伝子組換工程2は、互いの順序を入れ替えてもよい。
(dpyrF株)
dpyrF株の作製方法は、特開2012−249572号公報または特開2012−249573号公報の開示をもとに作製することができる。
オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)がコードするオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼは、ウラシルの生合成に必要なピリミジン塩基の前駆体であるUMP(ウリジン一リン酸)の生合成に関与する酵素の一つである。したがって、pyrF欠損株(dpyrF株)は、UMPを生合成できなくなるため、ウラシル要求性を発現する。dpyrF株にpyrFを導入するとウラシル要求性は消失するので、pyrFを選択マーカー遺伝子として利用することができる。また、dpyrF株は5−フルオロオロチン酸(5−FOA)に非感受性であるが、野生株は感受性であるので、5−FOAを選択物質として用いることで、dpyrF株を選別することができる。
本発明では、pyrFを破壊してdpyrF株を作製して用いてもよいし、既に作製されたdpyrF株を用いてもよい。
dpyrF株としては、特に限定されるものではないが、M. thermoacetica のpyrFを破壊して作製した株が好ましく、M. thermoacetica ATCC 39073株のpyrFを破壊して作製した株がより好ましく、NITE特許微生物寄託センター(NPMD)に受託番号NITE P-1057で寄託されている菌株がさらに好ましい。
(pta-1、pta-2)
モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)ATCC 39073株では、前述のとおり、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素として、Moth_0864がコードするタンパク質およびMoth_1181がコードするタンパク質が同定された。前述のとおり、モーレラ属細菌は、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素として、アミノ酸配列およびコードする遺伝子が相違する2種類のホスホトランスアセチラーゼを有するものと推定される。すなわち、ゲノムに、第一のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-1)および第二のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-2)を有すると思われる。
本発明では、この2つの遺伝子を破壊することにより、ホスホトランスアセチラーゼを欠損、好ましくは完全に欠損させる。
〈遺伝子組換工程1および遺伝子組換え工程2〉
遺伝子組換工程1では、骨格となる相同組換え用プラスミドに、pta-1の上流領域と、pyrFと、G3PDプロモーターと、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)と、pta-1の下流領域とをこの順に含み、かつ前記pyrFが本来のプロモーターにより発現され、前記ldhが前記G3PDプロモーターにより発現されるように組み込んで構築した遺伝子破壊用プラスミドを用いて相同組換えを行って、pta-1を破壊するとともに、pyrFおよびldhを導入する。
遺伝子組換え工程2では、骨格となる相同組換え用プラスミドに、pta-2の上流領域と、G3PDプロモーターと、抗生物質耐性遺伝子と、pta-2の下流領域とをこの順に含み、かつ前記抗生物質耐性遺伝子が前記G3PDプロモーターによって発現されるように組み込んで構築した遺伝子破壊用プラスミドを用いて相同組換えを行って、pta-2を破壊するとともに、抗生物質耐性遺伝子を導入する。
前記骨格となる相同組換え用プラスミドは、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、pK18、pK19、pK18mob、pK19mob、pUC18、pUC19、pBR322、pBluescript II系プラスミド等が挙げられる。なお、遺伝子組換工程1で使用する遺伝子破壊用プラスミドと遺伝子組換工程2で使用する遺伝子破壊用プラスミドとは、骨格となる相同組換え用プラスミドは同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
pta-1は、M. thermoacetica ATCC 39073株のMoth_0864(配列番号1)に相当する遺伝子であってもよいし、Moth_1181(配列番号3)に相当する遺伝子であってもよいが、pta-2とは相違する。
pta-2は、M. thermoacetica ATCC 39073株のMoth_0864(配列番号1)に相当する遺伝子であってもよいし、Moth_1181(配列番号3)に相当する遺伝子であってもよいが、pta-1とは相違する。
pta-1の塩基配列は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列からなる群から選択されることが好ましく、配列番号1の塩基配列および配列番号3の塩基配列からなる群から選択されることがより好ましい。ただし、pta-2の塩基配列とは相違する。
pta-2の塩基配列は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列からなる群から選択されることが好ましく、配列番号1の塩基配列および配列番号3の塩基配列からなる群から選択されることがより好ましい。ただし、pta-1の塩基配列とは相違する。
pta-1がコードするタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選択されるタンパク質が好ましく、さらにpta-2がコードするタンパク質とは相違することがより好ましい。
pta-2がコードするタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選択されるタンパク質が好ましく、さらにpta-1がコードするタンパク質とは相違することがより好ましい。
前記pyrFは、特に限定されず、同種モーレラ属細菌に由来するものが好ましく、配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であることがより好ましく、配列番号7の塩基配列からなる遺伝子であることがさらに好ましい。
pyrFは選択マーカー遺伝子の一つであり、pyrF破壊株(dpyrF株)にpyrFを導入することにより、ウラシル要求性が消失するため、ウラシルを含有しない培地を用いて、pyrF導入株を選択することができる。
本発明において、遺伝子組換えの前後で菌種に変化はなく、例えば、Moorella thermoaceticaのある株を遺伝子組み換えして作製した乳酸生産性のモーレラ属細菌株は、菌種としては、M. thermoaceticaのままである。
(乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh))
上記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)は、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来するものであれば特に限定されないが、NADH依存性の乳酸デヒドロゲナーゼをコードするものが好ましく、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属細菌に由来するものがより好ましく、サーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)に由来するものがさらに好ましく、サーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)39E株に由来するものがいっそう好ましい。
このような乳酸デヒドロゲナーゼは耐熱性を有することから、モーレラ属細菌の培養温度でも高い乳酸生産性を有する。
また、上記ldhは、その上流に連結されたG3PDプロモーターにより発現される。
なお、M. thermoaceticaが有している本来の乳酸デヒドロゲナーゼはNADPH依存性であると考えられる。
前記ldhは、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするものが好ましく、配列番号5の塩基酸配列からなるものがより好ましい。
(抗生物質耐性遺伝子)
前記抗生物質耐性遺伝子は、特に限定されるものではないが、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子およびピューロマイシン耐性遺伝子からなる群から選択されるいずれか1つが好ましく、カナマイシン耐性遺伝子がより好ましい。
抗生物質耐性遺伝子は選択マーカー遺伝子の一つであり、抗生物質耐性遺伝子を導入することにより構成物質に対する耐性が付与されるため、抗生物質を含有する培地で培養することにより、抗生物質耐性遺伝子が導入された株を選択することができる。
上記抗生物質耐性遺伝子は、その上流に連結されたG3PDプロモーターによって発現される。
前記カナマイシン耐性遺伝子は、特に限定されないが、配列番号10のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするものが好ましく、配列番号9の塩基配列からなるものがより好ましい。
(G3PDプロモーター)
グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(リン酸化)(GAPDH)は、解糖系/糖新生に関与する酵素であり、D−グリセルアルデヒド−3−リン酸と1,3−ビスホスホグリセリン酸との相互変換を触媒し、常時発現している。そのため、強力な発現プロモーターとして利用できる。
上記G3PDプロモーターは、特に限定されないが、同種モーレラ属細菌に由来するものが好ましく、由来が同一である細菌株に由来するものがより好ましい。例えば、本発明の菌株がM. thermoaceticaである場合には、上記G3PDプロモーターはM. thermoaceticaに由来するものが好ましい。
前記G3PDプロモーターの塩基配列は、配列番号13の塩基配列に含まれるものが好ましい。
なお、本発明において、遺伝コードは標準コードと一部異なる場合があり、翻訳開始コドンとして、ATG(AUG)の他、TTG(UUG)、CTG(CUG)、GTG(GUG)、ATT(AUU)、ATC(AUC)、ATA(AUA)も使用され得る。これらは翻訳開始コドンとして使用されるときはメチオニン(Met,M)をコードするが、翻訳開始コドン以外として使用されるときは、標準コードと同じく、TTG(UUG)およびCTG(CUG)はロイシン(Leu,L)を、ATT(AUU)、ATC(AUC)およびATA(AUA)はイソロイシン(Ile,I)を、GTG(GUG)はバリン(Val,V)を、それぞれコードする。
[乳酸生産性モーレラ属細菌株]
上述した作製方法によって作製される本発明の乳酸生産性モーレラ属細菌は、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼを欠損し、かつ乳酸デヒドロゲナーゼを高発現する。前記ホスホトランスアセチラーゼは完全欠損することが好ましい。
前記ホスホトランスアセチラーゼを欠損しているか否かは、酵素活性を調べることによって、またはホスホトランスアセチラーゼをコードする2遺伝子がともに破壊されているか否かを調べることによって、判定することができる。
前記乳酸デヒドロゲナーゼを高発現するか否かは、好ましくは乳酸を生産するか否かによって、より好ましくは酵素の比活性を測定することによって判定することができる。野生型のモーレラ属細菌では、酢酸がほぼ唯一の代謝産物であることから、乳酸生産性を有することは、乳酸デヒドロゲナーゼを高発現していると推定される。
前記乳酸デヒドロゲナーゼはNADH依存性であることが好ましい。モーレラ属細菌の本来の乳酸デヒドロゲナーゼはNADPH依存性と考えられ、NADH依存性であることは、外来性の乳酸デヒドロゲナーゼと考えられる。
前記乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)は乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来することが好ましく、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属細菌に由来することがより好ましく、サーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)に由来することがさらに好ましく、サーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)39E株に由来することがいっそう好ましい。
前記ホスホトランスアセチラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質であることが好ましい。これら2つが欠損することで、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換が抑制されるからである。
乳酸生産性モーレラ属細菌株としては、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)の株であることが好ましく、NITE特許微生物寄託センター(NPMD)に受領番号NITE AP-01657で寄託されている、乳酸生産性モーレラ属細菌株(Moorella thermoacetica MTA-dpduL1-2株)が特に好ましい。
なお、MTA-dpduL1-2株は、dpL1-2株と同一の細菌株である。
本発明の乳酸生産性モーレラ属細菌株は、ゲノムDNAの塩基配列中に、配列番号5の塩基配列と、配列番号7の塩基配列と、配列番号9の塩基配列とを有することが好ましく、さらに、ゲノムDNAの塩基配列中に、配列番号1の塩基配列および配列番号3の塩基配列がないことがより好ましい。このような特徴は、上述した作製方法により作製されたことを強く示唆するためである。
[乳酸の製造方法]
本発明の乳酸生産性モーレラ属細菌株を有機栄養的に培養することにより、酢酸を実質的に生産することなく、乳酸を生産することができる。
〔1.概要〕
M. thermoaceticaは、糖質およびガスのどちらを基質とした場合でも、ほぼ唯一の代謝産物として酢酸を生産する。そのため、M. thermoaceticaを宿主とした物質生産を行う際に、酢酸の生産量をコントロールすることは非常に大事である。そこで本実施例では、酢酸非生産変異株の構築と同時に、M. thermoaceticaの酢酸の生産に関わる遺伝子の同定を行った。
M. thermoaceticaは、フルクトースおよびH+CO混合ガスから、アセチルCoAを経由して酢酸を生産する。酢酸の生産はアセチルCoAからホスホトランスアセチラーゼと酢酸キナーゼの2酵素の関与により行われる(図2)。しかし、M. thermoaceticaにおいて抽出された酵素液からは、ホスホトランスアセチラーゼの存在が示唆されていた(Dlake, H. L. et al., 1981, J. Biol. Chem., 256: 11137-11144)が、ゲノム情報からは既知のホスホトランスアセチラーゼの存在が確認できなかった(Pierce, E. et al., 2008, Environ. Microbiol., 10: 2550-2573)。しかしながら、M. thermoaceticaのゲノム情報から、新規のホスホトランスアセチラーゼ候補となりうるPduLをコードしている遺伝子が2遺伝子(Moth_0864、Moth_1181)確認された。
PduLはSalmonella entericaで1,2−プロパンジオールの分解に関わる酵素として同定されており、ホスホトランスアセチラーゼ活性を持っていることが確認されている(Liu, Y. et al., 2007, J. Bacteriol., 189: 1589-1596)。そこで、本実施例ではPduLをコードしている遺伝子Moth_0864およびMoth_1181と、酢酸キナーゼをコードしている遺伝子Moth_0940とが酢酸生産に関与しているのかどうか調べた。具体的には、上記3遺伝子の破壊と同時にT-ldhを導入し、フルクトースを基質として酢酸生産から乳酸生産に代謝の流れが変化するかどうかにより調べた。
〔2.実験材料および機器〕
使用菌株およびプラスミド
本実施例で使用した菌株およびプラスミドを下記表1に示す。
基本培地および基本溶液の調整
Moorella用基本培地の調整
本実施例では、C. ljungdahliiの培養に用いられるATCC 1754 PETC培地を改変したものを基本培地として用いた。改変として、塩酸システイン・一水和物の最終濃度を0.3g/Lに減らし、NaS・9HOを除いた。培地作製は、還元剤(塩酸システイン・一水和物、60g/L)と基質(フルクトース等)を別に調製した。嫌気的に培地を調製する方法として、Hungateの方法(Hungate, R. E., 1969, Methods Microbiol., 3B: 117-132)を改変したMillerらの方法(Miller, T. L. et al., 1974, Appl. Microbiol., 27: 985-987)を用いた。各成分の組成と調製手順を以下に示す。
5N HClでpH6.9に調整後、イオン交換水で900mLにメスアップ
培地が青から赤に変色するまでボイル(20分間)
/CO(80:20)を注入しながら氷中で冷却(20分間)
予めCOを注入しておいた125mLバイアル瓶に45mLずつ分注
さらに、3分間COを注入した後、ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉
オートクレーブ(121℃、15分)
微量元素溶液の調製
ビタミン溶液作成方法
フルクトース溶液(200g/L)の調製
イオン交換水(100mL)を20分間ボイルして脱気
を注入しつつ、氷中で室温まで冷却後、フルクトース(20g)を加える
を注入しつつ、さらに氷中で20分間冷却
0.45μmフィルターで濾過滅菌しつつ、Nを注入した滅菌済みバイアル瓶に注入
還元剤(60g/L)の調製
イオン交換水(100mL)を20分間ボイル
を注入しつつ氷中で室温まで冷却
L−システイン・HCl・HO(6.0g)を添加
を注入しつつさらに氷中で20分間冷却
を注入した滅菌済みバイアル瓶に、0.45μmフィルターで濾過滅菌しつつ注入
遮光して室温保存
※培地に対して1/50量を添加
Ti(III)クエン酸溶液の調製
イオン交換水にクエン酸ナトリウム二水和物(11.76g)を加えて、200mLにメスアップ
20分間ボイルして脱気後、Nを注入しつつ氷中で20分間冷却
ガス下で、20% 塩化チタン(III)水溶液(ナカライテスク)(10.6mL)を混合
ガス下で、湯煎で沈殿を溶解させた飽和炭酸ナトリウム水溶液でpH6.0に調整
予めNを注入しておいた125mLバイアル瓶に80mLずつ分注
さらに、3分間Nを注入した後、ブチルゴム栓およびアルミキャップで密閉
オートクレーブ(121℃、15分)後、遮光し室温保存
※培地に対して1、2滴を添加
ウラシル溶液(10mg/mL)の調製
ウラシル(300mg)をジメチルスルホオキシド(DMSO)(30mL)に溶解
65mLバイアル瓶に移し、ブチルゴム栓およびアルミキャップで密閉
遮光し室温保存
※ウラシル要求性変異株(dpyrF株)培養時のみ培地に対して1/1000量を添加
エレクトロポレーション・バッファー(272mM スクロース溶液)の調製
スクロース(46.6g)をミリQ水に溶解し、500mLにメスアップ
20分間ボイルして脱気後、Nを注入しつつ氷中で20分間冷却
予めNを注入しておいた125mLバイアル瓶に50mLずつ分注
さらに、3分間Nを注入した後、ブチルゴム栓およびアルミキャップで密閉
オートクレーブ(121℃、15分)後、室温保存
Tris−HClバッファー(1M、pH8.0)の調製
ミリQ水(400mL)にトリス塩基(60.55g)を溶解
5N HClでpH8.0に合わせ、ミリQ水で500mLにメスアップ
密栓してオートクレーブ(121℃、15分)後、室温保存
EDTA溶液(0.5M、pH8.0)の調製
ミリQ水(400mL)にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA・2Na・2HO)(93.06g)を懸濁
固形水酸化ナトリウム(10g)を少しずつ加え、EDTA・2Na・2HOを完全に溶解
5N NaOHでpHを8.0に合わせ、ミリQ水で500mLにメスアップ
オートクレーブ(121℃、15分)後、室温保存
Tris−EDTA(TE)バッファーの調製
ミリQ水(494mL)に、Tris−HClバッファー(5mL)と、EDTA溶液(1mL)とを添加
密栓してオートクレーブ(121℃、15分)後、室温保存
リン酸カリウムバッファー(500mM、pH6.0)の調製
500mM リン酸水素二カリウム水溶液と、500mM リン酸二水素カリウム水溶液とを、pHを確認しながら混ぜていき、pHを6.0に調節
オートクレーブ(121℃、15分)後、室温保存
ソニケーションバッファーの調製
ミリQ水(12mL)に、リン酸カリウムバッファー(500mM、pH6.0)(1.5mL)および100mM ジチオスレイトール(DTT)水溶液(1.5mL)を添加
−20℃で保存
50× TAEバッファーの調製
トリス塩基(242g)と、酢酸(57.1mL)と、0.5M EDTA溶液(100mL)を混合し、イオン交換水で1000mLにメスアップ
50倍に希釈したものをアガロースゲル電気泳動用のバッファーとした。また50倍希釈のものにアガロースを0.7〜1.0%になるように溶解し、アガロースゲルを作成した。
LB培地の作製
トリプトン(ナカライテスク) 10g
酵母エキス(ナカライテスク) 5g
NaCl 10g
イオン交換水1000mLに溶かしてオートクレーブ
プレート作成時には寒天末を1%添加
2×YT培地の作製
トリプトン(ナカライテスク) 16g
酵母エキス(ナカライテスク) 10g
NaCl 5g
イオン交換水1000mLに溶かしてオートクレーブ
プレート作成時には寒天末を1%添加
SOB培地の作製
イオン交換水950mLに対して、
トリプトン(ナカライテスク) 20g、
酵母エキス(ナカライテスク) 5g、
NaCl 0.5g、および
250mM KCl 10mL
を溶解後、pHを7.0に調整し、イオン交換水で1000mLにメスアップ
オートクレーブ後、使用直前にオートクレーブ滅菌した2M MgCl(5mL)を添加
SOC培地の作製
SOB培地(1000mL)に、フィルター滅菌した1M グルコース(20mL)を添加
Inoueトランスフォーメーションバッファー
まず以下の手順で、0.5M PIPES(piperazine−1,2−bis[2−ethanesulfonic acid])を準備する。
PIPES(15.1g)をミリQ水(80mL)に溶解
5N KOHを用いてpHを6.7に調整後、ミリQ水で100mLにメスアップ
0.45μmフィルターで濾過滅菌後、−20℃で保存
次に、以下の試薬をミリQ水(800mL)に溶解する。
MnCl・4HO 10.88g
CaCl・2HO 2.20g
KCl 18.65g
溶解後、0.5M PIPES(20mL)を添加し、ミリQ水で1000mLにメスアップ
0.45μmフィルターで濾過滅菌後、−20℃で保存
実験機器
・インキュベーター
BR−43FH(タイテック):振とう培養(55℃、180rpm)
TVA660DA(アドバンテック):静置培養(55℃)
IS−61(ヤマト科学):静置培養(37℃)
・遠心分離機
MX300(トミー精工)
Centrifuge 5410(エッペンドルフ)
・吸光光度計
Ultrospec 3300 pro(アマシャムバイオサイエンス):菌体濃度測定、DNA、RNA濃度測定
UV−1600(島津製作所):酵素活性測定
・pHメーター
F−21(堀場製作所):電極はCM057−BNC(CEMCO)を使用
・PCR装置
PC808(アステック)
GeneAmp PCR System 2400(パーキンエルマー)
・ブロックインキュベーター
BI−525A (アステック)
・超音波破砕機
Digital Sonifier (ブランソン)
・qRT−PCR
Light Cycler 1.5(ロシュ・ダイアグノスティックス)
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
微生物により代謝される生産物濃度の分析はHPLCを用いて行った。HPLCのシステムは、PU−2080 Plus(HPLCポンプ)、RI−2031 Plus(RIディテクター)、CO−2065 Plus(カラムオーブン)、AS−2057 Plus(オートサンプラー)を用いた(いずれもJASCO)。
移動相は0.1%(v/v) HPOを用い、0.7mL/分の流速で流した。分離カラムには、RSpak KC−811(Shodex)を用いた。また、ガードカラムとして、RSpak KC−G(Shodex)を分離カラムの前に設置した。カラムオーブンの温度は、60℃に設定した。測定時にはサンプルの上清に、内部標準として100mMのクロトン酸を含む0.2%(v/v) HPOを1:1で混合し、酢酸セルロース親水性フィルター 0.20μm(Dismic(R)−13CP)で濾過してから測定を行った。オートサンプラーのインジェクションボリュームは10μLとした。
〔3.実験方法〕
大腸菌の培養
大腸菌は2×YT培地およびSOB培地を使用し、37℃で培養した。カナマイシン耐性株のスクリーニングはカナマイシン(20μg/mL)を含むプレートを、クロラムフェニコール耐性株のスクリーニングにはクロラムフェニコール(30μg/mL)を含むプレートを使用した。
コンピテントセルの作製
コンピテントセルの作製は、井上法(Inoue et al., 1990, Gene 96: 23-28)を参考に、以下の手順で行った。まず、大腸菌を寒天末に塗布し、37℃で1晩培養した。得られたシングルコロニーを2×YT(5mL)に植菌し、6〜8時間振とう培養(37℃、280rpm)した。さらに、得られた培養液(2mL)をSOB培地(100mL)に植菌し、OD600=0.55程度になるまで振とう培養(18℃、120rpm)した。得られた培養液を50mlずつ分注し、10分間氷上静置した。10分後、遠心分離(2500×g、4℃)し、上清を取り除いた後、氷冷した Inoue transformation buffer(16mL)で菌体ペレットをタッピングにより静かに懸濁した。懸濁後、氷上で10分間静置し、遠心分離(2500×g、4℃)した。遠心分離後、上清を取り除き、氷冷したInoue transformation buffer(4mL)で菌体ペレットをタッピングにより静かに懸濁した。DMSO(ジメチルスルホオキシド)(300μL)を添加し、混合した後、適当量分注し、液体窒素により急速冷凍した。作製したコンピテントセルは−80℃で保存した。
プラスミドの構築
遺伝子破壊用のプラスミドは以下の手順で構築した。まず、それぞれの目的の遺伝子であるMoth_0864、Moth_0940、Moth_1181を、上流1kbpおよび下流1kbpを含めて、ATCC 39073株のゲノムDNAを鋳型に、それぞれ、プライマーセット0864-upF/0864-downR、0940-upF/0940-downR、1181-upF/1181-downRにより増幅した。回収したDNA断片は、pk18mobのSma Iサイトに2×ligation mix(ニッポンジーン)を用いて挿入し、E. coli DH5α(タカラバイオ)に導入した。
形質転換体から得られたプラスミドを鋳型に、プライマーセット0864-downF-inv/0864-upR-inv、0940-downF-inv/0940-upR-inv、1181-inv-F/1181-inv-R、pk18-0864-inv-F/pk18-0864-inv-R、およびpk18-0940-inv-F/pk18-0940-inv-Rにより線状ベクターを構築した。
特開2013−90600号公報に記載の方法に従って、pK18mobのSma Iサイトに、pyrFの上流域、pyrF、G3PDプロモーター、T-ldh(Thermoanaerobacter pseudethanolicus 39E株に由来する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子)およびpyrFの下流域を組み込み(図4)、環状プラスミドpK18-ldhを作製した。
pk18-ldhを鋳型に、プライマーセットpyrF-IN-F/ldh-OUT-Rにより、pyrFおよびldhを含むDNA断片を増幅し、プライマーセット0864-downF-inv/0864-upR-inv、0940-downF-inv/0940-upR-inv、1181-inv-F/1181-inv-Rにより構築された線状ベクターと、In Fusion HD Cloning Kit(クロンテック)を用いてつなげ、pk18-d0864-ldh、pk18-d0940-ldh、pk18-d1181-ldhを構築した。
pK18mobのSma Iサイトに、pyrFの上流域、pyrF、G3PDプロモーター、pIKM1のカナマイシン耐性遺伝子(kanR)およびpyrFの下流域を組み込み(図5)、環状プラスミドpK18-PG3D-kanを構築した。
さらに、pk18-PG3PD-kanを鋳型に、プライマーセットkan-G3PD-F/pyrF-kan-Rにより、G3PDプロモーターおよびkanRを含むDNA断片を増幅し、プライマーセットpk18-0864-inv-F/pk18-0864-inv-R、pk18-0940-inv-F/pk18-0940-inv-Rにより構築された線状ベクターと、In Fusion HD Cloning Kitを用いてつなげ、pk18-d0864-kan、pk18-d0940-kanを構築した。
また、PduL大量発現用のプラスミド(pCold-M0864、pCold-M1181)は、moth_0864、moth1181をプライマーセットm0864-inf-f/m0864-inf-rおよびm1181-inf-f/m1181-inf-rを用いて、PrimeSTAR(R) Max DNAポリメラーゼにより増幅し、pCold IIのNde Iサイトに、In Fusion HD Cloning Kitを用いて挿入することで構築した。
使用プライマーを表5に、反応液組成を表6に、PCR条件を表7および表8に、それぞれ示す。
大腸菌の形質転換
大腸菌への遺伝子導入は、コンピテントセルを用いて以下の手順でヒートショックにより行った。まず、コンピテントセルを−80℃から取り出し、氷上で10分間静置し、解
凍した。コンピテントセル(100μL)にDNA溶液(5μL)を添加し、氷上で30分間静置した。30分後、42℃で90秒間インキュベートし、ヒートショックを行った。ヒートショック後、直ぐに氷上に移し、1〜2分間静置した。その後、SOC培地(800mL)を添加し、37℃で45分間培養した。45分後、抗生物質を含む2×YTプレートに塗布し、37℃、12〜16時間培養した。形成されたコロニーは2×YT(5ml)に植菌し、プラスミド抽出を行った。
大腸菌からのプラスミドDNAの抽出
大腸菌からのプラスミドDNAの抽出は、Quantum Prep Plasmid Miniprep Kit(BIO RAD)を用いて、付属のプロトコールに従い行った。抽出したプラスミドは、制限酵素処理により目的のプラスミドが構築されていることを確認した。
PAM法によるプラスミドのメチル化
PAM法による遺伝子組換え用プラスミドのメチル化は、E. coli TOP10内で行った。まず、コンピテントセル化させたTOP10に、pBAD-M1281をヒートショックにより導入し、クロラムフェニコールを含む2×YTプレートに塗布した。さらに、得られたpBAD-M1281を保有する形質転換体をコンピテントセル化させた。このコンピテントセルにM. thermoaceticaの遺伝子組換えのために構築したプラスミドをヒートショックにより導入し、カナマイシンおよびクロラムフェニコールを含む2×YTプレートに塗布した。得られた形質転換体はカナマイシンおよびクロラムフェニコールと、アラビノース(5mg/L)を含む2×YT液体培地に植菌し、37℃で9〜16時間振とう培養した。培養後、得られた菌体からプラスミドを抽出し、エレクトロポレーションに用いた。
バイアルを用いた回分培養
バイアル瓶への還元剤の添加、植菌、またはサンプリングには、22G×1・1/4または27G×1・1/4の注射針(ニプロ)を付けたプラスチック注射器(テルモ)を用いて嫌気的に行った。操作はクリーンベンチ内で行い、注射針を刺すブチルゴム栓の部分は、ガスバーナーであぶって滅菌した。フルクトースで培養する場合は、植菌直前にフルクトース溶液(200g/L)を培地に対し1%(v/v)、還元剤(60g/L)を2%(v/v)、Ti(III)クエン酸溶液を1、2滴添加し、前培養液を5%(v/v)植菌した。H−COで培養する場合には、フルクトース溶液を添加せず、植菌後にH−CO[80:20(v/v)]を、バイアル瓶のヘッドスペースへ0.45μmの酢酸セルロース親水性フィルター(Dismic−25、アドバンテック、東洋濾紙)を通して置換し、0.25MPa(約2.5atm)になるように充填した。培養は55℃で、フルクトースで培養時は静置培養、H−COで培養時は180rpmで振盪培養を行った。
ロールチューブ法によるコロニー形成
ロールチューブの作成は、Hungateの方法(Hungate, 1969, Methods Microbiol., 3B: 117-132)に従った。ロールチューブ作成にはモーレラ用基本培地(18mL)が入ったバイアルに、低温ゲル化用寒天末(ナカライテスク、ゲル化温度30〜31℃)(0.37g)を添加し、オートクレーブ(125℃、15分間)した培地を使用した。使用前に培地を湯煎により融解し、40℃程度に保ちながら還元剤(0.4mL)、フルクトース溶液(0.2mL)、およびTi(III)クエン酸溶液1滴を添加した後、菌体を気泡ができないように植菌した。植菌後、氷水を入れたロールチューブ作成装置で回転させながら、寒天をバイアル瓶側面に固めた。その後、55℃で5〜7日間静置培養した。形成されたコロニーは、クリーンベンチ内で滅菌済みのパスツールピペットを用いて培地ごと取り出し、5mLの培地に植菌し、フルクトースを基質として静置培養した。
乾燥菌体質量測定
フルクトースを基質として用いてOD600=0.05〜0.85になるように培養した培養液を使用した。採取した培養液は、吸光光度計にて吸光度を測定した。次に、得られたOD600の値から、乾燥菌体質量(g/L)を求めるために、以下のように検量線を作成した。
まず、孔径0.45μmの酢酸セルロース親水性フィルター(Dismic−25、アドバンテック、東洋濾紙)を耐熱シャーレに入れて、80℃で3時間乾燥後、デシケーターに入れて1時間放冷し、電子天秤(CPA224S、ザルトリウス)で秤量した。続いてこのフィルター上で培養液(40mL)を吸引ろ過し、イオン交換水で数回洗浄して水溶性成分を除去した後、耐熱シャーレに入れて、80℃で約1晩乾燥し、デシケーターで1時間放冷した後に秤量した。ろ過前のフィルターの質量とろ過後の質量との差から、乾燥菌体質量を求めた。得られたデータを元に作成した検量線(図3)から、次の式(1)が得られた。
乾燥菌体質量(g/L)=OD600×0.383 (1)
エレクトロポレーションを用いた M. thermoacetica への遺伝子導入
M. thermoacetica への遺伝子の導入はエレクトロポレーションを用いた。まず、dpyrF株をH−COでOD600=0.1程度になるまで培養し、10分間遠心(5800×g、4℃)して上清を除去した。残った菌体にエレクトロポレーション・バッファー(10mL)を加え、再懸濁後、10分間遠心(5800×g、4℃)して上清を除去した。この操作をもう一度繰り返した後、OD600=1.0程度になるように菌体をエレクトロポレーション・バッファーにより再懸濁した。DNA(2μg)を含む溶液を加えた菌体懸濁液(400μL)をエレクトロポレーション用キュベット(2mmギャップ)に移し、1500V、500Ω、50μFの条件でパルスをかけた。パルス後、すぐにキュベットを氷中に移し、3〜5分間静置した。冷却後、菌体懸濁液はウラシル(1μg/mL)を含む培地に植菌し、フルクトースにより55℃で48時間静置培養した。培養後、ロールチューブ法(ウラシルを含まない培地を使用)により、形質転換体の単離を行った。単離した菌株はゲノム抽出後、PCRにより目的の遺伝子がゲノム上に挿入されているか否かを確認した。
M. thermoacetica からのゲノムDNAの抽出
M. thermoacetica からのゲノムDNAの抽出には、定常期まで培養した菌体を使用した。
抽出はNucleoSpin Tissue kit(Macherey−Nagel)を用いて行った。抽出プロトコールは一部添付のマニュアルを改変して行った。改変としては、Pre−lyseの段階で、バッファーT1(180μL)で再懸濁するところを、リゾチーム(東京化成工業)およびアクロモペプチダーゼ(和光純薬)をそれぞれ10mg/mLになるように溶解させたTEバッファー(180μL)に菌体ペレットを懸濁し、37℃で10分間反応させた。その後、のプロテイナーゼK(25μL)を加え、37℃で15分間反応させた。この後の操作は、添付のマニュアルに従った。抽出したゲノムDNAは−20℃で保存し、必要なときに適宜解凍して使用した。
PCRによる形質転換体の確認
形質転換体の確認は、抽出したゲノムDNAを鋳型にPCRすることにより行った。PCRに使用したプライマーを表9に、反応液組成を表10に、PCR条件を表11に、それぞれ示す。
M. thermoacetica からのトータルRNAの抽出
M. thermoacetica からのトタルRNAの抽出には、H−COでOD600=0.1〜0.15、フルクトースでOD600=0.4〜0.8まで培養した菌体を使用した。抽出はNucleoSpin RNA II kit (Macherey−Nagel)を用いて行った。基本的なプロトコールは添付のマニュアルに従ったが、抽出の前処理として、リゾチームおよびアクロモペプチダーゼをそれぞれ10mg/mLになるように溶解させたTEバッファー(100μL)に菌体ペレットを懸濁し、37℃で10分間反応させた。抽出したトータルRNAは−20℃または−70℃で保存した。
定量逆転写PCR(qRT-PCR)を用いた転写解析
qRT−PCRを行うために、抽出したトータルRNAを鋳型として、cDNAへの逆転写反応を行った。逆転写反応は、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(TOYOBO)を用いて行った。逆転写に用いた反応液の組成を表12に、反応条件を表13に、それぞれ示す。作製したcDNAを鋳型にTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO)を用いて、定量PCRを行った。使用したプライマーおよび反応液組成と反応条件を以下の表に示す。mRNA量の内部標準にはgyrBのmRNA量を使用して各遺伝子の相対転写量を測定した。
大腸菌を用いたタンパク質の大量発現
タンパク質大量発現用の宿主として、Rosetta−gami 2(DE3)pLysS(ノバゲン)を使用した。構築したpCold−M0864、pCold−M1181をRosetta−gami 2(DE3)pLysSに導入し、以下の通り培養することでPduLの大量発現を行った。まず、アンピシリン(100μg/mL)と、テトラサイクリン(15g/mL)と、ストレプトマイシン(25μg/mL)とを含むLB培地(5mL)に植菌し、37℃で前培養した。次に、前培養と同様の抗生物質を含むLB培地(100mL)に前培養液を植菌し、37℃で本培養した。OD660が約0.2になったところで培養液を15℃のインキュベーターに移し、30分間放置した。30分後、IPTGを終濃度0.5mMとなるよう添加し、15℃で1晩振とう培養した。培養後、50mLファルコンチューブに培養液を移し、遠心分離(8000×g、10分間)した。遠心分離後、上清をきれいに取り除き、−80℃で菌体ペレットを保存した。
His tagを利用したタンパク質の精製
タンパク質の精製には、HisTALON Gravity Columns Purification Kit(クロンテック)を用いた。まず、精製用サンプルの調整を行った。冷凍保存しておいた菌体ペレットの入ったファルコンチューブにB−PER Protein Extraction Reagents(サーモフィッシャーサイエンティフィック)(7mL)と、DNase(10U/μL)(50μL)と、MgCl(1M)(300μL)と、リゾチーム(10mg/mL)(750μL)とを添加した。これを2本(培養液100mL分)作製し、1本にまとめた。超音波破砕機を用いて菌体を破砕し、破砕液を遠心分離(8000×g、20分間)した。遠心分離後、上清を取り出し、精製用サンプルとした。次に、精製用サンプルを用いてタンパク質の精製を行った。まず、HisTALON Gravity Columnsに、HisTALON Equilibration Bufferを5mL添加し、重力により全て滴下されるまで静置した。滴下後、精製用サンプルをカラムに全量添加し、全て滴下されるまで静置した。滴下後、HisTALON Equilibration Bufferを8mL添加し、全て滴下されるまで静置した。wash buffer(HisTALON Equilibration Buffer(8.5mL)と、HisElution Buffer(1.5mL)と、5M NaCl(500μL)とを混合したもの)(7mL)を添加し、全て滴下されるまで静置した。滴下後、HisElution Buffer(5mL)を添加し、滴下してきた抽出物を約500μLずつエッペンドルフチューブに回収した。回収したサンプルのA280を測定し、目的タンパク質が抽出されていると思われるサンプルを5本選択した。精製サンプルをAmicon Ultra−4により、脱塩濃縮した。脱塩濃縮後、精製タンパクをSDS−PAGEにより確認した。
SDS−PAGEによる精製タンパク質の確認
SDS−PAGEは以下の手順で行った。まず、SDS−PAGE用のランニング・ゲル(12.5%ゲル)を作製するために、30% アクリルアミドストック溶液(290g/L アクリルアミド+10g/L N,N’−メチレンビスアクリルアミド)(7.1mL)と、イオン交換水(5.45mL)と、1.5M Tris−HCl(pH8.8)(4.25mL)と、10% SDS(170μl)と、10% 過硫酸アンモニウム(57μL)と、TEMED(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)(8.5μL)とを混合し、ゲル作製用のガラス板に直ぐに入れた。
ガラス板に入れた混合液に水飽和ブタノールを重層し、酸素の混入を防いだ。1時間放置後、ゲルが固まったのを確認したら、重層したブタノールを水流にさらしきれいに取り
除いた。次に、スタッキング・ゲルを作製するために、30% アクリルアミドストック溶液(0.79mL)と、イオン交換水(2.89mL)と、0.5M Tris−HCl(pH6.8)(1.25mL)と、10% SDS(50μL)と、10% 過硫酸アンモニウム(17μL)と、TEMED(5μL)とを混合し、先ほど作製したランニング・ゲルの上に重層した。コームを差し、水飽和ブタノールを重層した後、1時間放置した。1時間後、ゲルが固まったのを確認したら、コームを抜き取り水でブタノールをきれいに取り除いた。
次にSDS−PAGEに使用するタンパク質溶液を、Electrophosis Sample Buffer 2×と1:1の割合で混合し、98℃で10分間処理し、変性させた。作製したゲルを泳動バッファー(3g/L Tris + 14.4g/L グリシン + 1g/L SDS)で満たした電気泳動槽(AE−6531、アトー)に設置し、Precision Plus Protein Unstained Standards(バイオラッド)サンプルをゲルにアプライした。アプライ後、20mAで90分間電気泳動した。90分後、ゲルをガラス板から取り外し、染色液(EtOH:45%、酢酸:10%、クーマジーブリリアントブルー R−250:0.25%)に1時間振とうしながら浸した。染色後、ゲルを脱色液(EtOH:25%、酢酸:10%)に振とうしながら浸し、何回か脱色液を交換しながら1晩放置した。
タンパク質濃度の測定
粗酵素液のタンパク濃度の測定は、サンプルをソニケーションバッファーで適宜希釈したうえで、Pierce 660nm Protein Assay Kit(サーモサイエンティフィック)を用いて行った。定量のための標準タンパク溶液にはウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を用い、検量線を求めた。
ホスホトランスアセチラーゼ活性の測定
ホスホトランスアセチラーゼ活性は、Bockらの方法(Bock, A. K. et al., 1999, J. Bacteriol., 181: 1861-1867)およびFerryの方法(Ferry, J. G., 2011, Methods Enzymol., 494: 219-231)を参考に2つの方法で行った。1つ目の方法では、エルマン試薬を使用してA412の経時変化(HSCoAの生成量)を測定することにより活性を求めた。測定時の反応液組成は表17 A)に示す。1Uは1分あたりにCoASHが1μM生成される活性と定義した。2つ目の方法では、A233の経時変化(アセチルCoAの生成量)を測定することにより活性を求めた。測定時の反応液組成は表17 B)に示す。1Uは1分あたりにアセチルCoAが1μM生成される活性と定義した。
[3.結果および考察]
酢酸生産関連遺伝子候補の破壊
酢酸生産関連遺伝子候補(Moth_0864、Moth_1181、Moth_0940)の破壊はdpyrF株を宿主として、それぞれの遺伝子とマーカー遺伝子であるpyrFおよび乳酸脱水素酵素遺伝子(T-ldh、T. pseudethanolicus ATCC 33223株由来)を相同組換えで置換することにより行った。エレクトロポレーションによる遺伝子の導入後、得られた候補株からゲノムを抽出し、それを鋳型としたPCR(図6、図7、図8の矢印の位置から増幅)により各遺伝子の破壊を確認した。その結果、PCR産物の予想DNA鎖長(表18)から、Moth_0864単独破壊株(dpL1株)およびMoth_1181単独破壊株(dpL2株)が構築されていることが確認できた(図6、図7、図8)。Moth_0940単独破壊株については取得することができなかった。次に、得られたdpL1株またはdpL2株を宿主として、Moth_0864およびMoth_1181の二重破壊株、Moth_0864およびMoth_0940の二重破壊株、Moth_1181およびMoth_0940の二重破壊株の構築を試みた。二重破壊株におけるそれぞれの遺伝子の破壊はマーカー遺伝子であるkanRと置換することにより行った。得られた候補株のゲノムを鋳型としたPCR(図6、図7、図8の矢印の位置から増幅)により遺伝子破壊を確認した結果、PCR産物の予想DNA鎖長(表18)から、Moth_0864およびMoth_1181の二重破壊株(dpL1-2株)ならびにMoth_1181およびMoth_0940の二重破壊株(dpL2-ak株)が構築されていることが確認できた(図6、図7、図8)。Moth_0864およびMoth_0940の二重破壊株については取得することができなかった。
破壊遺伝子の転写の確認
各破壊株について、フルクトースでOD600=0.15〜0.4まで培養後、RNAを抽出し、破壊した遺伝子が転写されていないことをqRT−PCRにより確認した(図9)。その結果、各破壊株において、破壊した遺伝子は転写されていないことが確認された。また、dpL1株においてはMoth_1181の転写量が、dpL2株においてはMoth_0864の転写量が、それぞれ、野生株と比較して増加していることが分かった。Moth_0864およびMoth_1181は、いずれもPduLをコードしていると思われ、同様の機能を持つ酵素をコードしている。そのため、破壊された遺伝子の機能を補うために、もう片方の遺伝子の転写量が増幅したと考えられる。
酢酸生産関連遺伝子候補破壊株の増殖および代謝産物の観察
各破壊株において、遺伝子の破壊により菌体の増殖および酢酸と乳酸の生産量に影響が出たかどうかを調べるために、それぞれの株を基本培地にリン酸バッファー(100mM、pH6.5)および酵母エキス(5g/L)を加えた培地でフルクトース(45mM)を基質として回分培養を行い、OD600、pH、および代謝産物濃度の経時変化を測定した。
まず単独破壊株において、Moth_0864破壊株(dpL1株)は、酢酸生産量および基質1mol消費あたりの酢酸生産量(YP/S−酢酸)について、野生株(ATCC 39073)との間に差はなかったが、Moth_1181破壊株(dpL2株)は、酢酸生産量およびYP/S−酢酸について、野生株と比較して顕著に減少していた。さらに、dpL2株は、乳酸生産量および基質1mol消費あたりの乳酸生産量(YP/S−乳酸)が、野生株に比べ顕著に増加しており、酢酸生産から乳酸生産へ代謝の流れが変化していることが示唆された。また、dpL2株は、基質1mol消費あたりの乾燥菌体質量YX/Sが、野生株と比較して半分ほどになっており、これは酢酸生産に伴うATP生産の減少が原因と思われる。これらのことから、Moth_1181は、酢酸生産に大きく関わっている遺伝子であることが示唆された。次に、二重破壊株に目を向けると、Moth_0864およびMoth_1181の二重破壊株(dpL1-2株)とMoth_1181およびMoth_0940の二重破壊株(dpL2-ak株)において、酢酸生産がほとんど行われていないことが分かった。dpL1-2株およびdpL2-ak株の両株とも、酢酸生産量およびYP/S−酢酸が0に近い値になり、乳酸生産量およびYP/S−乳酸が野生株およびdpL2株と比較して著しく増加しているため、代謝の流れが酢酸生産から完全に乳酸生産に変化していると考えられる。さらに、YX/Sが野生株の約半分になっており、酢酸生産に伴うATP生産量の減少が考えられる。これらのことから、Moth_1181だけでなく、Moth_0864およびMoth_0940も酢酸生産に関わっている遺伝子であることが示唆された。特に、Moth_0864の単独破壊では影響が見られなかったこと、およびdpL2株において転写量が増加したことから、通常はMoth_1181が酢酸生産に大きく寄与しており、Moth_0864の酢酸生産への寄与は少ないと思われる。
精製PduLを用いたホスホトランスアセチラーゼ活性の測定
破壊株の生産物から、Moth_0864およびMoth_1181が酢酸生産に関与していることが示唆された。そこで、これらの遺伝子がコードしているタンパク質(PduL)がホスホトランスアセチラーゼ活性を有しているのかどうかを調べるために、大腸菌を用いて大量発現させ、精製を行ったあと酵素活性測定を行った。精製したタンパク質をSDS−PAGEにより確認したところ、予想された分子量(約22.5kDa)にバンドが見られ、Moth_0864がコードしているタンパク質およびMoth_1181がコードしているタンパク質がともに精製されていることが確認された(図10)。ホスホトランスアセチラーゼ活性は、アセチルCoAからアセチルリン酸への反応およびアセチルリン酸からアセチルCoAへの反応の両方向を測定した(表20)。
酢酸生産遺伝子として、ホスホトランスアセチラーゼをコードする遺伝子および酢酸キナーゼをコードする遺伝子の同定を行った。遺伝子破壊による酢酸生産への影響を調べた結果、Moth_1181単独破壊株、Moth_0864、Moth_1181二重破壊株、およびMoth_1181、Moth_0940二重破壊株において酢酸生産量の減少が見られ、Moth_0864、Moth_1181およびMoth_0940の3遺伝子の酢酸生産への関与が示唆された。さらに、Moth_0940はゲノム情報から既知の酢酸キナーゼをコードすることが分かっていたが、Moth_0864およびMoth_1181はゲノム情報から新規のホスホトランスアシラーゼであるPduLをコードするとされていたため、実際にホスホトランスアセチラーゼ活性を有しているのか精製タンパク質を用いて活性測定を行った。その結果、Moth_0864およびMoth_1181がコードするタンパク質は、ともにホスホトランスアセチラーゼ活性を有していることが分かった。その中でも、Moth_1181がコードするタンパク質はMoth_0864のものと比較して非常に高いホスホトランスアセチラーゼ活性を有していた。単独破壊株(dpL1株、dpL2株)の酢酸生産性および活性測定の結果から、Moth_1181が特に酢酸生産に重要な遺伝子であることが示唆されたが、これは、Moth_1181がアセチルCoA経路(図1)を形成している酵素であるメチレン−THFレダクターゼをコードしている遺伝子(Moth_1191)からわずか10遺伝子下流にあることからも推測される(Pierce et al., 2008, Environ. Microbiol., 10: 2550-2573)。
M. thermoacetica ATCC 39073の酢酸生産に関わる遺伝子の同定を行い、Moth_0864、Moth_1181、およびMoth_0940の酢酸生産への関与を明らかにし、ホスホトランスアセチラーゼをコードしている遺伝子としてMoth_0864およびMoth_1181を同定した。また、ホスホトランスアセチラーゼをコードしている遺伝子の中でもMoth_1181が酢酸生産に大きく関わっていることが分かった。また、Moth_0864およびMoth_1181がコードするタンパク質PduLが酢酸生産菌において酢酸生産を担っているという報告はこれまでない。

Claims (31)

  1. アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼを欠損し、かつ乳酸デヒドロゲナーゼを高発現する乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  2. 前記ホスホトランスアセチラーゼを完全欠損する、請求項1に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  3. 前記乳酸デヒドロゲナーゼがNADH依存性である、請求項1または2に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  4. 前記乳酸デヒドロゲナーゼが乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  5. 前記乳酸デヒドロゲナーゼがサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属細菌に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  6. 前記乳酸デヒドロゲナーゼがサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)に由来する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  7. 前記乳酸デヒドロゲナーゼがサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)39E株に由来する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  8. 前記ホスホトランスアセチラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質または配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  9. 前記モーレラ属細菌がモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  10. NITE特許微生物寄託センター(NPMD)に受領番号NITE AP-01657で寄託されている、乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  11. ゲノムDNAの塩基配列中に、配列番号5の塩基配列と、配列番号7の塩基配列と、配列番号9の塩基配列とを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  12. ゲノムDNAの塩基配列中に、配列番号1の塩基配列および配列番号3の塩基配列がない、請求項11に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株。
  13. オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼを欠損し、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第一のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-1)およびアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第二のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-2)をゲノムに有するモーレラ属細菌株(dpyrF株)を準備する工程と、
    前記dpyrF株の第一の前記pta-1を標的遺伝子とする相同組換えにより、前記pta-1を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)およびオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を導入する工程と、
    前記dpyrF株の前記pta-2を標的とする相同組換えにより、前記pta-2を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)および外来性の抗生物質耐性遺伝子を導入する工程と
    を備える、乳酸生産性モーレラ属細菌株の作製方法。
  14. オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼを欠損し、アセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第一のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-1)およびアセチルCoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする第二のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta-2)をゲノムに有するモーレラ属細菌株(dpyrF株)を準備する工程と、
    前記dpyrF株の前記pta-2を標的とする相同組換えにより、前記pta-2を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)および外来性の抗生物質耐性遺伝子を導入する工程と、
    前記dpyrF株の第一の前記pta-1を標的遺伝子とする相同組換えにより、前記pta-1を破壊するとともに、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(G3PDプロモーター)、乳酸生産性の好熱性嫌気性細菌に由来する乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ldh)およびオロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子(pyrF)を導入する工程と
    を備える、乳酸生産性モーレラ属細菌株の作製方法。
  15. 前記pta-1がコードするタンパク質および前記pta-2がコードするタンパク質が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から重複しないように選択される、請求項13または14に記載の作製方法。
  16. 前記pta-1の塩基配列および前記pta-2の塩基配列が、それぞれ、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列および配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列からなる群から重複しないように選択される、請求項13または14に記載の作製方法。
  17. 前記pyrFが配列番号8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の作製方法。
  18. 前記pyrFが配列番号7の塩基配列からなる、請求項13〜17のいずれか1項に記載の作製方法。
  19. 前記モーレラ属細菌がモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)である、請求項13〜18のいずれか1項に記載の作製方法。
  20. 前記dpyrF株がNITE特許微生物寄託センター(NPMD)に受託番号NITE P-1057で寄託されている、請求項13〜19のいずれか1項に記載の作製方法。
  21. 前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がNADH依存性の乳酸デヒドロゲナーゼをコードする、請求項13〜20のいずれか1項に記載の作製方法。
  22. 前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属細菌に由来する、請求項13〜21のいずれか1項に記載の作製方法。
  23. 前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)に由来する、請求項13〜22のいずれか1項に記載の作製方法。
  24. 前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がサーモアナエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)39E株に由来する、請求項13〜23のいずれか1項に記載の作製方法。
  25. 前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする、請求項13〜24のいずれか1項に記載の作製方法。
  26. 前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が配列番号5の塩基酸配列からなる、請求項13〜25のいずれか1項に記載の作製方法。
  27. 前記抗生物質耐性遺伝子が、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子およびピューロマイシン耐性遺伝子からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項13〜26のいずれか1項に記載の作製方法。
  28. 前記抗生物質耐性遺伝子が配列番号10のタンパク質をコードする、請求項13〜27のいずれか1項に記載の作製方法。
  29. 前記抗生物質耐性遺伝子が配列番号9の塩基配列からなる、請求項13〜28のいずれか1項に記載の作製方法。
  30. 前記G3PDプロモーターの塩基配列が配列番号13の塩基配列に含まれる、請求項13〜29のいずれか1項に記載の作製方法。
  31. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の乳酸生産性モーレラ属細菌株、または請求項13〜30のいずれか1項に記載の作製方法によって作製された乳酸生産性モーレラ属細菌株を有機栄養的に培養する工程を備える乳酸の製造方法。
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