次に、発明の実施の形態を通じて本発明の態様を説明する。下記の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、フィールドスコープシステム100の構成例を示す模式図である。フィールドスコープシステム100は、標準対物ユニット200、大口径対物ユニット600、三脚座300、傾斜型プリズムユニット400、直視型プリズムユニット700、カメラマウントユニット800、接眼ユニット500等を含む。また、カメラマウントユニット800に対応するレンズマウントを有するカメラボディ900も、フィールドスコープシステム100の一部をなすといえる。
なお、以降の説明においては、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600の光学系の光軸方向について、物体側、即ち、図中左側を前側または先側と記載する。また、物体側と反対側、即ち、図中右側を後側と記載する。
フィールドスコープシステム100において、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600はそれぞれ、連結機構230を後側端部に有する。また、傾斜型プリズムユニット400、直視型プリズムユニット700およびカメラマウントユニット800はそれぞれ、連結部430を前端に有する。
標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600の連結機構230と、傾斜型プリズムユニット400、直視型プリズムユニット700およびカメラマウントユニット800の連結部430は、互いに連結することができる。よって、フィールドスコープシステム100においては、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600のいずれかに対して、傾斜型プリズムユニット400、直視型プリズムユニット700およびカメラマウントユニット800から選択した部材を結合させて、互いに仕様の異なるフィールドスコープを形成できる。
また、フィールドスコープシステム100において、傾斜型プリズムユニット400および直視型プリズムユニット700はそれぞれ、保持部440を後端に有する。また、接眼ユニット500は、前端に保持部440を有する。接眼ユニット500の保持部440は、傾斜型プリズムユニット400の保持部440にも、直視型プリズムユニット700の保持部440にも連結させることができる。よって、単一の接眼ユニット500を用いて、傾斜型フィールドスコープまたは直視型フィールドスコープのいずれかを形成できる。
更に、フィールドスコープシステム100において、カメラマウントユニット800は、カメラボディ900のレンズマウント部940と互換性を有するカメラマウント部840を有する。よって、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600の連結機構230にカメラマウントユニット800を連結した場合は、フィールドスコープにカメラボディ900を連結して、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600のいずれかを望遠レンズの代わりに用いることができる。
また更に、仕様が異なる接眼ユニット500、カメラボディ900を用意することにより、上記のようなフィールドスコープの仕様のバリエーションは更に多くなる。また、いずれのバリエーションにおいても、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600に対して取り付けることができる環状部310を有する三脚座300の使用または不使用を選択できる。
このように、フィールドスコープシステム100においては、対物レンズとプリズムとを分離して脱着できるので、その組み合わせによっていろいろな観察状況に柔軟に対応できる。また、プリズムと接眼レンズとを分離できるので,接眼ユニット500を異なる倍率のものに交換することにより、観察倍率も容易に変更できる。
よって、フィールドスコープシステム100を用いることにより、一体化したフィールドスコープを何種類も持参して使い分ける場合と同じ観察を、軽量な機材で実行できる。また、重複する部材を省くことができるので、機材を用意する費用の面でも有利になる。
なお、フィールドスコープシステム100の要素は上記の例に限られるわけではない。例えば、標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600と交換する要素として、顕微鏡等を加えてもよい。また、傾斜型プリズムユニット400および直視型プリズムユニット700と交換する要素として、プリズムに換えて反射鏡を用いた軽量なプリズムユニットを加えてもよい。更に、カメラマウントユニット800と交換する要素として、他の規格のカメラマウント、撮影レンズが固定されたカメラ、ビデオカメラ、微光暗視装置、放射温度計等に結合するユニットを加えてもよい。
図2は、フィールドスコープシステム100に含まれる標準対物ユニット200の断面図である。標準対物ユニット200は、対物光学系を収容する本体210を備える。対物光学系は、共通の光軸X1に沿って配置された対物レンズ222、フォーカスレンズ224およびリレーレンズ226を含む。また、本体210は、後端側から順に、連結機構230、合焦機構240、三脚座300およびフード260を備える。
観察対象の像を導く対物レンズ222は、鏡筒である本体210の前端近傍の内側に、押え環221により固定される。対物レンズ222と本体210との間には、Oリング228が挟まれ、対物レンズ222に対して本体210の内側は、外部に対して気密に封止される。
フォーカスレンズ224は、合焦機構240により光軸X1方向に駆動される移動枠223に支持される。リレーレンズ226は、本体210の後端に取り付けられた嵌合部材234に対して、押え環225により固定される。嵌合部材234およびリレーレンズ226と押え環225との間には、弾性を有する防水リング229が挟まれる。これにより、リレーレンズ226に対して本体210の内側は、外部に対して気密に封止される。
フード260は、本体210の先端近傍において、本体210と同軸に、本体210の外周に沿って装着される。フード260は、本体210の外周面に沿って、光軸X1方向に移動させることができる。フード260を前方に引き出した場合は、光軸X1に対して大きく傾いた光束が対物光学系に入射することを防止できる。
本体210の先端外周においてフード260の内面と接する部分には、潤滑性を有する摺動部材212が配される。また、フード260の後端内周において本体210外面と接する部分には、潤滑性を有する摺動部材262が配される。これにより、フード260は、引き出し位置と収納位置との間を、本体210に対して円滑に移動する。また、摺動部材212、262は、本体210およびフード260が擦過により傷つくことを防止する。
三脚座300は、環状部310および脚部320を有する。環状部310は、標準対物ユニット200の本体210に設けられた周溝213に嵌まり込み、本体210にねじ込まれた押え環215により後方側から押えられる。これにより、三脚座300の、本体210からの脱落が防止される。
脚部320は、環状部310から本体210の径方向に延在する。脚部320の図中下面には、三脚ねじ330が設けられる。これにより、標準対物ユニット200を、三脚等に固定できる。なる、三脚ねじ330を複数設けてもよい。複数の三脚ねじ330は、同時に用いてもよいし、選択的に一方を用いてもよい。
上記のように、本体210は、三脚座300の環状部310に支持される。これにより、三脚座300が三脚等に固定された状態であっても、光軸X1のまわりに本体210を回転させることができる。よって、例えば、標準対物ユニット200をカメラボディ900と組み合わせて使用する場合に、三脚座300を固定したまま、縦位置撮影および横位置撮影を切り替えることができる。なお、本体210を三脚座300に対して回転させる場合に配慮して、環状部310を収容した周溝213の内面に摺動部材214を設けてもよい。
標準対物ユニット200において、三脚座300の後方には、合焦機構240が配される。次に、図3を参照して合焦機構240について説明する。
図3は、標準対物ユニット200における合焦機構240の拡大断面図である。合焦機構240は、本体210の外周に配された操作リング250を有する。
操作リング250の外周面には、操作部材251が装着され、ユーザの操作を容易にしている。操作部材251は、エラストマ、革等の柔軟な材料の他、表面をローレット加工した金属、プラチスチック等の硬質な材料によっても形成できる。操作リング250は、ユーザが操作部材251を操作することにより、本体210の外側で光軸X1まわりを回転する。
操作リング250の内側には、操作リング250と同軸に、粗動カムリング248、微動カムリング244が順次配される。粗動カムリング248は、操作リング250に対してねじ止めされて、操作リング250と一体的に、光軸X1の周りを回転する。操作リング250および粗動カムリング248は、本体210に対して後方からねじ込まれた押え環216により、光軸X1方向の移動を規制される。
粗動カムリング248は、光軸X1と直交する面に対して傾斜して形成された粗動カム溝249を有する。粗動カム溝249は、微動カムリング244に対して固定された粗動カムピン246と係合する。これにより、操作リング250の回転により生じた駆動力が、粗動カムリング248から微動カムリング244に伝達される。
微動カムリング244は、粗動カムピン246と共に、光軸X1と直交する面に対して傾斜して形成された微動カム溝245を有する。微動カム溝245には、微動カムピン241に装着された微動カラー242が係合する。微動カムピン241は、フォーカスレンズ224を保持する移動枠223に対して固定されているので、微動カムリング244が光軸X1の周りを回転した場合に生じる駆動力は、移動枠223に伝達される。
微動カムピン241に装着された微動カラー242は、標準対物ユニット200の本体210に形成された直進穴243とも係合する。直進穴243は、光軸X1と平行な方向に延在するので、微動カラー242は、本体210の周方向への移動を規制される。よって、微動カムリング244から微動カラー242に駆動力が伝達された場合、移動枠223は光軸X1方向に限って移動する。
これにより、フォーカスレンズ224が光軸X1方向に移動して、標準対物ユニット200の光学系の焦点位置を移動させる。よって、操作リング250を回転させることにより、標準対物ユニット200を用いて形成したフィールドスコープのピントを調節することができる。
なお、粗動カムリング248に設けられた粗動カム溝249の回転方向の長さは、微動カムリング244に設けられた微動カム溝245の回転方向の長さよりも長い。また、粗動カムリング248と微動カムリング244の同じ回転量について比較した場合、光軸X1と平行な方向の駆動量は、粗動カム溝249による粗動カムピン246の駆動量の方が、微動カム溝245による微動カムピン241の駆動量よりも長い。よって、移動枠223に対して固定された微動カムピン241が、微動カム溝245により駆動されている場合は、操作リング250の回転量に対するフォーカスレンズ224の移動量の割合が小さく、フォーカスレンズ224の微妙な位置を調節できる。
また、操作リング250をひとつの回転方向に回転し続けた場合、微動カム溝245の終端に微動カラー242が当接した状態で、粗動カム溝249を有する粗動カムリング248が更に回転する。このため、微動カムリング244に植設された粗動カムピン246に係合する粗動カラー247は、粗動カムリング248の粗動カム溝249に駆動される。これにより、微動カムリング244、微動カラー242、微動カムピン241が一体となって、光軸X1と平行な方向に移動する。この移動は、微動カム溝245よりも駆動量が多く設定された粗動カム溝249によるので、フォーカスレンズ224は高速に移動する。
このように、微動カム溝245の終端に微動カラー242が当接しない範囲で操作リング250を回転すると、フォーカスレンズ224の動きが遅くなり、より高い精度でピントを合わせることができる。また、微動カム溝245の終端に微動カラー242が当接した状態で操作リング250を回転すると、フォーカスレンズ224を高速に移動させることができる。これにより、例えば、移動する観察対象を迅速に追跡できる。
なお、合焦機構240は、操作リング250と粗動カムリング248との間に一部が挟まれた変形調整リング252を有する。変形調整リング252の前端は、操作リング250に対してねじ固定され、操作リング250に植設されたセットビス253により、操作リング250に対して回転方向の相対位置を固定される。
更に、合焦機構240は、上記変形調整リング252と押え環216との間に挟まれた、防水リング217を有する。防水リング217は、円周状に繋がった環状の突起部を有し、当該突起部を変形調整リング252および押え環216の双方に押し付けて弾性変形することにより、操作リング250および押え環216の間隙を気密に封止して、操作リング250の回転を妨げることなく、当該間隙が浸水経路となることを防止する。
更に、合焦機構240においては、操作リング250と変形調整リング252との間にはOリング254が挟まれる。これにより、操作リング250と変形調整リング252との間が気密に封止され、浸水経路となることが防止される。
このように、操作リング250の前端および後端は防水構造を有し、操作リング250の端部に沿って、本体210の内部に浸水することが防止される。なお、セットビス253を弛めた場合、変形調整リング252は操作リング250に対して回すことができる状態になる。
変形調整リング252を操作リング250に対して回転させた場合、変形調整リング252は、光軸X1と平行な方向に移動する。これにより、変形調整リング252の側面が、防水リング217を変形させる力の強さが変化する。よって、防水リング217による防水が破れない範囲で変形調整リング252を回転させることにより、操作リング250を回転させる場合の操作トルクを調整することができ、フィールドスコープにおける合焦操作の操作性を向上させることができる。
ここで、再び図2を参照すると、標準対物ユニット200において、合焦機構240の更に後方、即ち、本体210の略後端には、連結機構230が配される。次に、図4を参照して、連結機構230について説明する。
図4は、標準対物ユニット200における連結機構230の拡大断面図である。標準対物ユニット200は、操作部232および嵌合部材234を含む。
操作部232は、全体として環状の形状を有し、本体210を内側に挿通される。操作部232の後端側は、嵌合部材234の周面から離れた位置に、光軸X1に面して形成された連結ねじ231を有する。
嵌合部材234は、本体210の後方から本体210の後端を覆って装着され、押え環216との間に操作部232を光軸X1方向に挟む。嵌合部材234は、前端側内面に形成されたねじ山233を、本体210の外周面に形成されたねじ山219にねじ込むことにより、本体210に対してねじ固定される。これにより、操作部232は、本体210の外周において、光軸X1の周りを回転できる状態で、光軸X1と平行な方向について本体210に対して位置決めされる。
また、嵌合部材234の外周面は、光軸X1を中心軸とする円筒形の形状を有し、傾斜型プリズムユニット400、直視型プリズムユニット700、カメラマウントユニット800の連結部430の一部と相補的な形状を有する嵌合面235を形成する。
更に、嵌合部材234の後端面には、リレーレンズ226の周囲を包囲する防水リング217が配される。防水リング217は抜け止め溝218を内側に有し、リレーレンズ226の周囲において嵌合部材234に形成された抜け止め部236に嵌めることにより固定される。これにより、後方から平坦な面を押し付けられた場合に、リレーレンズ226の周囲を気密に封止することができる。なお、嵌合部材234の後端面において、防水リング217よりも外側の領域は、光軸X1に対して直交する平坦な平面をなす。
また更に、嵌合部材234の後端面には、嵌合部材234の内外を連通させる封入口237が設けられる。封入口237は、嵌合部材234の後端面側から、光軸X1と平行な方向にねじ込まれた封止ねじ238と、封止ねじ238のねじ頭および嵌合部材234の間に挟まれたワッシャ239とにより気密に封止される。
ここで、再び図2を参照すると、標準対物ユニット200は、防水、防曇構造を有する。既に説明した通り、標準対物ユニット200において、対物レンズ222と本体210との間、リレーレンズ226および嵌合部材234と押え環225との間、封入口237と封止ねじ238との間は、それぞれ気密に封止されている。よって、本体210の内部に、水等の液体の他、塵芥類のような個体が侵入することが防止される。
更に、標準対物ユニット200は、本体210の封入口237から注入した乾燥空気、窒素ガス等により本体210内部を充填して、対物レンズ222、フォーカスレンズ224、リレーレンズ226の曇りを防止することができる。本体にガスを充填した場合は、封止ねじ238により封入口237を封止することにより、光学系の曇りを防止した状態を長期にわたって維持できる。
図5は、フィールドスコープシステム100に含まれる傾斜型プリズムユニット400の断面図である。傾斜型プリズムユニット400は、一対の外枠412、414により形成された外殻410に光学系を収容する。外枠412、414は、防水リング416を挟んで、ビス418により互いにねじ固定される。これにより、気密な外殻410が形成される。
傾斜型プリズムユニット400の光学系は、対物光学系が形成した像を正像にするプリズム422を含む。また、傾斜型プリズムユニット400の光学系は、プリズム422の入射面および射出面の直前および直後に配されたレンズ424、426を含む。
プリズム422は、入射光軸X2に対して傾斜した射出光軸X3を有する。なお、一般にプリズムには予め定められた光軸はない。しかしながら、傾斜型プリズムユニット400におけるプリズム422は、入射光軸X2と射出光軸X3とを設定することにより、前方に連結される標準対物ユニット200等の射出光軸と、後方に保持される接眼ユニット500等の入射光軸とを合わせている。
また、傾斜型プリズムユニット400は、連結部430および保持部440を備える。連結部430は、傾斜型プリズムユニット400の前側に配され、標準対物ユニット200、大口径対物ユニット600等の連結機構230に連結される。保持部440は、傾斜型プリズムユニット400の後側に配され、接眼ユニット500の差し込み部540を保持する。
連結部430は、傾斜型プリズムユニット400において前側に位置する一方の外枠412に一部が収容される。連結部430において外枠412から前方に突き出した部分の外面には、連結ねじ431が設けられる。連結ねじ431は、標準対物ユニット200等の連結機構230の操作部232に形成された連結ねじ231と螺合する。
連結部430において外枠412から前方に突き出した部分の内面には、嵌合面432が形成される。嵌合面432は、標準対物ユニット200等の連結機構230における嵌合面235と相補的な形状を有する。また、連結部430において嵌合面432により形成された凹部の奥には、入射光軸X2と直交する平坦な当接面433が形成される。
当接面433の一部は、入射光軸X2の方向に陥没して、レンズ室434および封入口437を形成する。レンズ室434には、防水リング425を挟んた押え環423により、レンズ424が固定される。また、封入口437は、ワッシャ438およびOリング439を挟んでねじ込まれた封止ねじ436により気密に封止される。これにより、連結部430の底部は、気密に封止される。
傾斜型プリズムユニット400において、プリズム422は、後方側の外枠414に収容されたプリズム保持部421に保持される。プリズム保持部421に保持されたプリズム422の入射面は、連結部430のレンズ室434に固定されたレンズ424と平行になる。
後方の外枠414の後側には、保持部440が配される。保持部440は、全体として筒状の形状を有し、保持筒442、操作筒444および締めつけリング447を有する。保持筒442の内面は、接眼ユニット500の差し込み部540と略相補的な内面形状を有する。
保持筒442の先端には、防水リング429を挟んで取り付けられた押え環427により、プリズム422の射出面と平行に、レンズ426が固定される。これにより、保持筒442の底部は気密に封止される。
保持筒442自体は、後側の外枠414に差し込まれて、押え環449により固定される。保持筒442と、プリズム保持部421との間隙は、Oリング448により気密に封止されるので、保持筒442が取り付けられた部分においても、外殻410の内側は、外部に対して気密に封止される。
なお、傾斜型プリズムユニット400は、連結部430に設けた封入口437から乾燥空気、窒素ガス等を外殻410の内部に充填して、レンズ424、426およびプリズム422の曇りを防止できる。外殻410にガスを充填した場合は、封止ねじ436により封入口437を封止して、光学系の曇りを防止した状態を長期にわたって維持できる。
保持部440において、保持筒442の外面に形成されたねじ山441には、操作筒444の内面に形成されたねじ山443がねじ込まれる。これにより、操作筒444を回転操作した場合に、操作筒444は、保持筒442の中心軸に沿って進退する。
ただし、保持部440は、操作筒444に対して先側に、操作筒444に隣接して配された抜け止めリング451を有する。抜け止めリング451は、セットビス452により固定される。よって、操作筒444を廻し過ぎた場合は抜け止めリング451に当接するので、操作筒444が保持筒442から脱落することは防止される。
操作筒444の外周面には、操作リング453が装着される。操作リング453は、エラストマ、革等の滑り難い材料により形成され、ユーザによる操作筒444の操作を容易にしている。操作リング453は、表面をローレット加工した金属、プラチスチック等の硬質な材料でも形成できる。
保持部440において、保持筒442の内部には、締めつけリング447が収容される。締めつけリング447は、保持筒442の内面に形成されたテーパ部446と、操作筒444の後端に設けられた段差454との間に挟まれる。また、締めつけリング447自体も、保持筒442のテーパ部446に対向する端面にテーパ部445を有する。
締めつけリング447は、リングの一部を取り除いたC型の形状を有する。よって、操作筒444が射出光軸X3と平行に前方に移動した場合、締めつけリング447は、操作筒444の段差454に押されて前方に移動し、更に、テーパ部446の内面に沿って内側に撓んで内径を縮小する。よって、予め締めつけリング447の内側に、接眼ユニット500の差し込み部540が差し込まれていた場合、締めつけリング447は差し込み部540を外側から締めつける。これにより、接眼ユニット500は、保持部440から抜けにくくなる。
図6は、標準対物ユニット200と傾斜型プリズムユニット400とを結合した状態を示す断面図である。他の図と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、図面が煩雑になることを避ける目的で、一部参照番号の記載を省略している。
標準対物ユニット200と傾斜型プリズムユニット400とを結合する場合は、まず、標準対物ユニット200の連結機構230における嵌合部材234を、傾斜型プリズムユニット400の連結部430における嵌合面432の内側にさし込む。これにより、嵌合部材234と嵌合面432とが互いに嵌合する。
続いて、連結部430の先端に位置する連結ねじ431が、操作部232の後端に位置する連結ねじ231に接するので、操作部232を回転させることにより、連結ねじ231、431を相互にねじ込むことができる。連結ねじ231、431をねじ込むにつれて、傾斜型プリズムユニット400の連結部430は、標準対物ユニット200の前方に向かって移動する。
連結ねじ231、431のねじ込みにより嵌合部材234と嵌合面432とを更に深く嵌合すると、やがて、嵌合部材234の後側端面が、連結部430の当接面433に当接する。これにより、嵌合部材234と連結部430は、嵌合面235、432を互いに接すると共に、嵌合部材234の後側端面が当接面433に押し付けられる。こうして、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400とは、互いに位置決めされる。
このように、フィールドスコープシステム100においては、互いに相補的な形状を有する嵌合面235、432を含む嵌合部を介して連結機構230と連結部430とを連結することにより、標準対物ユニット200と傾斜型プリズムユニット400とが分離できる構造でありながら光学的な性能が低下することを防止している。また、嵌合面235、432の嵌合に加えて、連結ねじ231、431のねじ込みにより、嵌合部材234の後端面を当接面433に押し付けて、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400の相互の位置決め精度を更に高く保っている。
ここで、嵌合面235、432が光軸X1と平行な方向について互いに接する長さである嵌合長さLと、互いに連結された標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400の全長Tとの比L/Tは0.1以下であることが好ましい。同比L/Tが0.1を超えた場合は、嵌合長が長くなるので、傾斜型プリズムユニット400等を標準対物ユニット200に対して円滑に連結または分離することが難くなる場合がある。
なお、標準対物ユニット200の封入口237と、それを封止する封止ねじ238は、嵌合部材234の後側端面に配されている。また、傾斜型プリズムユニット400においても、封入口437と、それを封止する封止ねじ436は、当接面433に配されている。よって、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400が連結されている場合、標準対物ユニット200の封入口237および封止ねじ238は傾斜型プリズムユニット400により覆い隠される。また、傾斜型プリズムユニット400の封入口437および封止ねじ436は、標準対物ユニット200により覆い隠される。
これにより、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400を互いに連結した組立体においては、封入口237、437および封止ねじ238、436が本体210および外殻410の表面に現れない。従って、フィールドスコープシステム100においては、他の部材を付け加えることなく、封入口237、437および封止ねじ238、436を保護することができる。また、製造コストおよび部品コストを上昇させることなく、フィールドスコープの外観を向上させることができる。
なお、上記の例では、嵌合部材234の嵌合面235と、連結部430の嵌合面432とは、それぞれ平滑な円筒面をなす。よって、傾斜型プリズムユニット400を標準対物ユニット200に取り付ける場合に、光軸X1を中心とする回転位置について、傾斜型プリズムユニット400を任意の位置に固定することができる。よって、観察対象の位置に応じて観察しやすい向きに傾斜型プリズムユニット400を固定できる。更に、上記嵌合面235、432にキー等を設けて、垂直、水平等の位置に傾斜型プリズムユニット400を案内してもよい。
図7は、互いに結合された標準対物ユニット200と傾斜型プリズムユニット400における連結機構230および連結部430を拡大して示す断面図である。図6と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図6を参照して既に説明したように、連結機構230により標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400が連結されている場合、連結機構230における嵌合部材234の嵌合面235と、連結部430における嵌合面432とは、互いに嵌合して標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400を相互に位置決めする。また、嵌合部材234の後端面も、連結部430の当接面433に当接して、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400の位置決めをいっそう確実にしている。
ここで、嵌合面235、432が光軸X1と平行な方向について互いに接する長さである嵌合長さLと、嵌合面235、432の共通の内径Dとの比L/Dは、0.1以上、且つ、2.0以下であることが好ましい。同比L/Dが0.1未満の場合、嵌合面235、432の間に生じた間隙により、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400相互の位置決めが不十分になり、標準対物ユニット200の光軸X1に対する傾斜型プリズムユニット400の入射光軸X2の傾きが無視できない大きさになる場合がある。ここで、「無視できない大きさ」とは、例えば、標準対物ユニット200における光軸X1と、プリズム422の入射面における法線とがなす角度が0.2°を超える場合を意味する。
また、比L/Dが2.0を超える場合は、嵌合長さLが長くなりすぎ、連結機構230および連結部430の連結または分離が円滑ではなくなる場合がある。更に、上記のような観点から、比L/Dは、0.3以上、且つ、1.3以下とすることがより好ましい。
なお、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400が連結されている場合、連結機構230の後側端面と連結部430の当接面433との間では、防水リング217が当接面433に押し付けられて弾性変形し、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400の間隙を気密に封止する。これにより、標準対物ユニット200から傾斜型プリズムユニット400へ伝播する光束の光路上に水滴、塵芥等が入り込むことが防止される。
ただし、防水リング217は、嵌合部材234の後側端面と連結部430の当接面433との間隔が狭くなるまで、当接面433に当接しない。よって、傾斜型プリズムユニット400を標準対物ユニット200に連結する場合、嵌合部材234を嵌合面432にさし込み始めた当初は、防水リング217の存在は、嵌合部材234の妨げにはならない。
更に、嵌合部材234が深くさし込まれて防水リング217が当接面433に接する段階になると、連結ねじ231、431が互いに噛み合う。よって、嵌合部材234の後端面は、操作部232を回転させることにより当接面433に接近する。この場合は、連結ねじ231、431の作用により防水リング217が当接面433に押し付けられるので、防水リング217を弾性変形させる力が、操作部232を回転させる妨げとなることはない。
このように、フィールドスコープシステム100においては、連結機構230と連結部430との嵌合長を直径Dに対して長くとることにより、標準対物ユニット200と傾斜型プリズムユニット400とが分離できる構造でありながら、光学的な性能と防水性能の低下を防止している。
また、フィールドスコープシステム100においては、操作部232を回転させることにより連結機構230および連結部430を連結させる構造により、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400を円滑且つ容易に連結できる。更に、連結および分離が容易な構造でありながら、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400の間が気密に封止され、フィールドスコープとしての防水性能の低下も防止されている。
なお、上記の連結機構230においては、操作部232を回転させることにより、連結部430を保持する。このため、標準対物ユニット200と傾斜型プリズムユニット400とを相互に回転させることなく両者を連結できる。よって、標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400において相互に当接する面に、例えば、電気接点、光信号コネクタ等を配して、両者を連結する場合に同時に結合させることができる。また同様に、当接する面にギア、クラッチ等による動力伝達機構を設けて、機械的に結合させることもできる。
また、上記の例では、互いに結合する標準対物ユニット200および傾斜型プリズムユニット400のうち、標準対物ユニット200に、回転する操作部232を有する連結機構230を配置した。しかしながら、傾斜型プリズムユニット400側に連結機構230を設け、標準対物ユニット200の連結部430と結合させる構造にすることもできる。
図8は、接眼ユニット500の断面図である。接眼ユニット500は、本体510および接眼レンズ520を備える。
本体510は円筒形の形状を有し、光軸X4を有する接眼レンズ520を収容する。また、本体510の前端は、他の部分に対して相対的に径が細い差し込み部540を有する。差し込み部540は、外周面の長手方向の一部に、差し込み部540の外周面に対して凹部をなす周溝542を有する。周溝542には、Oリング530が収容される。差し込み部540は、傾斜型プリズムユニット400および直視型プリズムユニット700の保持部440に差し込むことができる。
なお、接眼ユニット500の差し込み部540の形状および寸法は、天体望遠鏡の接眼レンズに対して定められた規格に合わせてもよい。これにより、製造コストを抑制できると共に、天体望遠鏡とフィールドスコープとで接眼レンズを共用することができる。更に、接眼レンズに対して適用できる部品、アダプタ、アクセサリ等を流用することもできる。
図9は、接眼ユニット500を保持する傾斜型プリズムユニット400の断面図である。他の図と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、図面が煩雑になることを避ける目的で、一部参照番号の記載を省略している。
接眼ユニット500を傾斜型プリズムユニット400に保持させる場合は、まず、接眼ユニット500の差し込み部540を、傾斜型プリズムユニット400の保持部440における保持筒442に差し込む。これにより、差し込み部540は、保持筒442に収容される。
続いて、操作リング453を介して、保持部440の操作筒444を回転操作する。これにより、図5を参照して説明したように、締めつけリング447の内径が縮小されて、接眼ユニット500の差し込み部540を締めつける。こうして、接眼ユニット500は、保持部440によって保持され、傾斜型プリズムユニット400に対して位置決めされると共に、傾斜型プリズムユニット400から脱落することが防止される。
なお、締めつけリング447は、差し込み部540を周囲から等方的に締めつける。よって、締めつけリング447により締めつけた場合も、接眼ユニット500の光軸X4が、当該光軸X4と交差する方向に変位することが防止される。
また、差し込み部540が保持部440に差し込まれた場合、接眼ユニット500のOリング530は、操作筒444の内面と差し込み部540との間隙を気密に封止する。これにより、保持部440と差し込み部540との間隙から液体、塵芥等が侵入することが防止される。
なお、Oリング530は、締めつけリング447が差し込み部540を締めつける前の段階から弾性変形する太さを有してもよい。これにより、差し込み部540を保持部440に差し込んだ場合に、締めつけリング447が差し込み部を締めつける前に、Oリング530の弾性変形により接眼ユニット500を保持部440に差し込んだ状態を保持できる。よって、締めつけリング447が差し込み部540を締めつける前に保持部440の傾きが変化したような場合であっても、接眼ユニット500が脱落することが防止される。
こうして、接眼ユニット500を装着された傾斜型プリズムユニット400を標準対物ユニット200等に連結することにより、接眼ユニット500に設定された倍率で拡大された像を観察できる。接眼ユニット500を、他の接眼ユニット500、例えば倍率、明るさ等の異なる接眼ユニット500と交換できることはもちろんである。
図10は、フィールドスコープシステム100において、互いに結合された大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700の断面図である。大口径対物ユニット600において、連結機構230、合焦機構240、フード260および三脚座300は、標準対物ユニット200と共通の機械的構造を有する。また、直視型プリズムユニット700において、連結部430および保持部440は、図9に示した傾斜型プリズムユニット400と共通の機械的構造を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
大口径対物ユニット600は、対物光学系を収容する本体610を備える。また、本体610は、後端側から順に、連結機構230、合焦機構240、三脚座300およびフード260を備える。
大口径対物ユニット600の対物光学系は、共通の光軸X11に沿って配置された対物レンズ622、フォーカスレンズ624およびリレーレンズ626を含む。大口径対物ユニット600における対物光学系は、標準対物ユニット200の対物光学系よりも径の大きなレンズを用いて形成される。このため、標準対物ユニット200よりも明るい像が得られる。ただし、大口径対物ユニット600は、標準対物ユニット200に比較すると、寸法も重量も大きい。
観察対象の像を導く対物レンズ622は、鏡筒である本体610の前端近傍の内側に、押え環621により固定される。対物レンズ622と本体610との間には、Oリング628が挟まれ、外部に対して気密に封止される。
リレーレンズ626は、本体210の後端に取り付けられた嵌合部材234に対して、防水リング629を挟んだ押え環625により固定される。嵌合部材234およびリレーレンズ226と押え環225との間には、弾性を有する防水リング229が挟まれる。これにより、リレーレンズ626に対して本体610の内側は、外部に対して気密に封止される。上記のような構造により、大口径対物ユニット600は、標準対物ユニット200と同様に、防水性を有する。
更に、大口径対物ユニット600も、連結機構230内の後側端面に設けた封入口237から乾燥空気、窒素ガス等を本体610の内部に充填して、光学系の曇りを防止できる。本体610にガスを充填した場合は、封止ねじ238により封入口237を封止して、光学系の曇りを防止した状態を長期にわたって維持できる。
フォーカスレンズ624は、合焦機構240により光軸X11方向に駆動される移動枠223に支持される。合焦機構240の機械的構造は、図2および図3に示した標準対物ユニット200と共通であり、操作部材251を回転操作することによりフォーカスレンズ624を光軸X11方向に移動させて、大口径対物ユニット600における対物光学系を合焦させることができる。
大口径対物ユニット600における連結機構230の機械的構造は、図2および図4に示した標準対物ユニット200の連結機構230と共通である。また、少なくとも、操作部232における連結ねじ231および嵌合部材234の外周に形成された嵌合面235の寸法は、標準対物ユニット200における連結機構230と同じである。よって、大口径対物ユニット600の連結機構230は、図5に示した傾斜型プリズムユニット400の連結部430に結合することもできる。
大口径対物ユニット600におけるフード260も、図2に示した標準対物ユニット200の場合と同様に、本体610の先端近傍に装着され、光軸X11方向に移動させることができる。フード260を前方に引き出した場合は、光軸X11に対して大きく傾いた光束が対物光学系に入射することを防止できる。フード260と本体610との摺動部に摺動部材212、262を設けて擦過を軽減できることも、標準対物ユニット200の場合と同様である。
大口径対物ユニット600における三脚座300も、環状部310が、本体610に設けられた周溝613に嵌まり込み、本体610にねじ込まれた押え環615により後方側から押えられる。三脚座300自体の構造と機能は、標準対物ユニット200に装着された三脚座300と同じである。
図10に示す直視型プリズムユニット700は、一対の外枠712、714により形成された外殻710に光学系を収容する。外枠712、714は、防水リング716を挟んで、ビス718により互いにねじ固定される。これにより、気密な外殻710が形成される。
外殻710に収容された直視型プリズムユニット700の光学系は、対物光学系が形成した倒立像を正立正像にするプリズム722を含む。プリズム722は、入射光軸X12に対して平行な射出光軸X13を有する。ただし、射出光軸X13は、入射光軸X12とは異なる位置にある。
なお、一般にプリズムには予め定められた光軸はない。しかしながら、直視型プリズムユニット700においては、プリズム722に対する入射光軸X12および射出光軸X13を設定することにより、前方に連結される大口径対物ユニット600等の射出光軸と、後方に保持される接眼ユニット500等の入射光軸とを合わせている。
また、直視型プリズムユニット700の光学系は、プリズム722の入射面および射出面の直前および直後に配されたレンズ724、726を含む。一方のレンズ724は、防水リング725を挟んで押え環723により、連結部430に対して気密に固定される。他方のレンズ726は、防水リング729を挟んだ押え環727により、保持筒442に対して気密に固定される。
直視型プリズムユニット700は、外殻710の前面に連結部430を備える。連結部430において、前側の外枠712から前方に突出した部分は、傾斜型プリズムユニット400の連結部430と同じ形状と寸法を有する。よって、直視型プリズムユニット700の連結部430は、連結機構230を通じて、大口径対物ユニット600に連結できる。連結部430は、一方のレンズ724を気密に保持する。
また、直視型プリズムユニット700は、外殻710の後面に保持部440を備える。保持部440は、傾斜型プリズムユニット400に取り付けられた保持部440と同じ機械的構造を有し、レンズ726を気密に保持する。これにより、外殻710は外部に対して気密に封止されるので、直視型プリズムユニット700も防水性を有する。
更に、直視型プリズムユニット700も、連結部430内に設けた封入口437から乾燥空気、窒素ガス等を外殻710の内部に充填して、プリズム722およびレンズ724、726の曇りを防止できる。外殻710の内部にガスを充填した場合は、封止ねじ436により封入口437を封止して、光学系の曇りを防止した状態を長期にわたって維持できる。
直視型プリズムユニット700の保持部440には、入射光軸X12および射出光軸X13と平行に、即ち、図中水平に接眼ユニット500を装着できる。よって、直視型プリズムユニット700が大口径対物ユニット600と連結されている場合、保持部440に保持された接眼ユニット500の光軸X4は、対物ユニットの光軸と平行になる。これにより、対物レンズ222、622の光軸の方向と、接眼レンズ520の光軸X4の方向とが平行になるので、観察対象を視野内に補足しやすくなる。
なお、大口径対物ユニット600の連結機構230と、直視型プリズムユニット700の連結部430とを結合した場合も、連結機構230における嵌合部材234の嵌合面235と、連結部430における嵌合面432とが、互いに嵌合して大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700を相互に位置決めする。また、嵌合部材234の後端面も、連結部430の当接面433に当接して、大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700の位置決めをいっそう確実にしている。
ここで、連結機構230および連結部430の嵌合長さLと、互いに連結された大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700の全長Tとの比L/Tは、0.1以下であることが好ましい。その理由は、図6を参照して既に説明した通りである。
また、嵌合面235、432の嵌合長さLと、嵌合面235、432の共通の内径Dとの比L/Dは、0.1以上、且つ、2.0以下であることが好ましく、更に、0.3以上、且つ、1.3以下とすることがより好ましい。その理由は、図7を参照して既に説明した通りである。
このように、フィールドスコープシステム100においては、大口径対物ユニット600と直視型プリズムユニット700を用いる場合も、連結機構230と連結部430との嵌合長を直径Dに対して長くとることにより、大口径対物ユニット600と直視型プリズムユニット700とが分離できる構造でありながら、光学的な性能と防水性能の低下を防止している。
大口径対物ユニット600の連結機構230は、標準対物ユニット200の連結機構230と同じ仕様を有する。また、直視型プリズムユニット700の連結部430は、傾斜型プリズムユニット400の連結部430と同じ仕様を有する。よって、大口径対物ユニット600に直視型プリズムユニット700を連結することもできるし、標準対物ユニット200に直視型プリズムユニット700を連結することもできる。
なお、大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700が連結されている場合、連結機構230の後側端面と連結部430の当接面433との間では、防水リング217が当接面433に押し付けられて弾性変形し、大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700の間隙を気密に封止する。これにより、大口径対物ユニット600から直視型プリズムユニット700へ伝播する光束の光路上に水滴、塵芥等が入り込むことが防止される。
上記のような大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700を連結し、更に、直視型プリズムユニット700の保持部440に接眼ユニット500を保持させることにより、大口径のフィールドスコープを形成できる。このようなフィールドスコープを用いていて、例えば、観察現場において観察対象が高い位置にあることが判った場合、直視型プリズムユニット700を連結した大口径対物ユニット600では、対物レンズ622を上方に向け、且つ、直視型プリズムユニット700の接眼ユニット500が下方を向くので、観察者は、接眼レンズ520を下方から見上げなければならない。
ここで、フィールドスコープシステム100では、直視型プリズムユニット700を傾斜型プリズムユニット400に交換することができる。更に、接眼ユニット500を直視型プリズムユニット700から傾斜型プリズムユニット400に移設することにより、光学的な条件を変えることなく、楽な姿勢で観察対象を観察できるフィールドスコープを形成できる。
このような場合に、直視型のフィールドスコープと傾斜型フィールドスコープとをそれぞれ用意して交換することと比較すると、プリズムユニットを2種類用意するだけで、大口径対物ユニット600と接眼ユニット500とを兼用できるので、機材の総量を大幅に削減できる。また、そのような機材をそろえる費用も節約できる。
図11は、フィールドスコープシステム100において、標準対物ユニット200およびカメラマウントユニット800を連結した状態を示す断面図である。標準対物ユニット200については既に詳述したので重複する説明は省く。カメラマウントユニット800は、本体810、レンズ820、連結部430およびカメラマウント部840を備える。
本体810は、全体として円筒形の形状を有し、レンズ820を収容する。レンズ820は、光学系の収差を補正するために設けられる。また、レンズ820は、カメラマウント部840に結合されるカメラボディ900側から見た場合に、対物光学系の焦点距離を短くして、F値を小さくする光学的機能を有する。これにより、カメラボディ900から標準対物ユニット200の光学系を通じて撮像できる画像の視野角を拡げ、像を明るく鮮明にすることができる。
なお、レンズ820は、例えば、対物光学系の焦点距離を長くするレンズを用いることで、望遠レンズとして用いても良いし、対物光学系の焦点距離を保つレンズ(対物光学系の焦点距離が変わらないレンズ)を用いて、カメラの撮像素子に結像できるように用いても良い。レンズ820は、用途に合わせて様々な種類のレンズを用いることができる。
連結部430は、本体810の前端に固定される。連結部430の機械的な構造は、傾斜型プリズムユニット400および直視型プリズムユニット700の連結部430と共通である。よって、カメラマウントユニット800は、連結部430を通じて、連結機構230を備える標準対物ユニット200および大口径対物ユニット600に連結できる。
カメラマウント部840は、本体810の後端に固定される。また、カメラマウント部840は、マウント爪842を有する。マウント爪842は、カメラボディ900のレンズマウント部940と嵌合して、カメラボディ900をカメラマウントユニット800に対して固定する。
また、カメラマウント部840は、接点、配線および電子回路を更に有してもよい。接点は、マウント爪の近傍に配される。これにより、カメラボディ900がレンズマウント部940に取り付けられた場合に、カメラボディ900のレンズマウント部940に設けられた接点と接して、カメラマウントユニット800とカメラボディ900との間の電気信号を結合する。
また、接点は、配線を介してカメラマウント部840側の電子回路にも接続される。これにより、カメラボディ900がレンズマウント部940に取り付けられた場合に、カメラボディ900はに設けられた電子回路と、カメラマウントユニット800の電子回路とが接続される。よって、例えば、カメラボディ900は、カメラマウントユニット800の電子回路848からフィールドスコープに関する情報を取得できる。
なお、既に説明した通り、カメラマウントユニット800に設けられた連結部430は、連結機構230を備える標準対物ユニット200に対して、光軸X1の周りに回転させることなく連結できる。よって、標準対物ユニット200およびカメラマウントユニット800の間にも、連結した場合に接続される接点を設けて信号および電力を標準対物ユニット200まで伝達することもできる。これにより、例えば、カメラボディ900に対して、標準対物ユニット200の情報も伝えることができる。また、標準対物ユニット200が防振機構等を備える場合に、カメラボディ900から電力供給を受けることができる。
カメラマウントユニット800において、連結部430は、傾斜型プリズムユニット400および直視型プリズムユニット700の連結部430と同じ機械的構造を有する。よって、連結機構230を介して、カメラマウントユニット800を標準対物ユニット200に連結できる。
標準対物ユニット200の連結機構230と、カメラマウントユニット800の連結部430とを結合した場合も、連結機構230における嵌合部材234の嵌合面235と、連結部430における嵌合面432とが、互いに嵌合して標準対物ユニット200およびカメラマウントユニット800を相互に位置決めする。また、嵌合部材234の後端面も、連結部430の当接面433に当接して、標準対物ユニット200およびカメラマウントユニット800の位置決めをいっそう確実にしている。
ここで、標準対物ユニット200およびカメラマウントユニット800を連結した場合、連結機構230および連結部430の嵌合長さLと、互いに連結された大口径対物ユニット600および直視型プリズムユニット700の全長Tとの比L/Tは、0.1以下であることが好ましい。その理由は、図6を参照して既に説明した通りである。
また、嵌合面235、432の嵌合長さLと、嵌合面235、432の共通の内径Dとの比L/Dは、0.1以上、且つ、2.0以下であることが好ましく、更に、0.3以上、且つ、1.3以下とすることがより好ましい。その理由は、図7を参照して既に説明した通りである。
このように、フィールドスコープシステム100においては、標準対物ユニット200とカメラマウントユニット800とを連結して用いる場合も、連結機構230と連結部430との嵌合長を直径Dに対して長くとることにより、標準対物ユニット200とカメラマウントユニット800とが分離できる構造でありながら、光学的な性能の低下を防止している。
よって、標準対物ユニット200等を、恰も望遠レンズとして使用することができる。また、傾斜型プリズムユニット400および直視型プリズムユニット700に換えてカメラマウントユニット800を連結することにより、カメラボディ900に至る光路からプリズムを除いて、色収差の少ない撮像ができる。
ただし、フィールドスコープシステム100においては、標準対物ユニット200または大口径対物ユニット600に、傾斜型プリズムユニット400または直視型プリズムユニット700を連結したまま、更に、撮影レンズを備えたカメラボディ900を傾斜型プリズムユニット400または直視型プリズムユニット700の後段に連結するアダプタを用意してもよい。これにより、レンズ交換のできないカメラを用いることができると共に、カメラのオートフォーカス機構を利用できる。
なお、フィールドスコープシステム100の構成要素は、図1に示したものに限られない。連結機構230および保持部440との互換性さえあれば、ビデオカメラ、放射温度計等の他の機材をシステムに加えることができる。また、連結機構230および保持部440における結合を解いた場合に露出するレンズ等を保護する保護キャップ等もフィールドスコープシステム100の一部となり得る。
以上、本発明の態様を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。