JP2015020977A - 歯科用接着性組成物、表面処理剤および歯科用レジン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記歯科用接着性組成物は、重合性基を有するシランカップリング剤と、チオプロピオン酸誘導体またはチオグリコール酸誘導体と、揮発性有機溶剤とからなるものであり、揮発性有機溶剤と混合し表面処理剤とする、または、歯科用レジンと混合し歯科用レジンとする。
【選択図】図1
Description
しかしながら、特許文献1では接着対象がステンレススチールやコバルトクロムなどの非貴金属およびセラミックスに対して使用することで歯科用レジンとの接着効果が報告されているが、貴金属(金)についての効果は報告されていない。また、接着効果を高めるために酸触媒(酢酸)が使用されているが、一般的に酸触媒を添加するとシランカップリング剤同士が徐々に縮合して長期間保管すると接着強度が低下することが知られているため、実際にプライマーとして使用するには酸触媒は塗布する直前に混合する必要がある。
歯科用貴金属、歯科用非貴金属、前記金属の歯科用合金、歯科用セラミックスの全てに対して歯科用レジンとの接着力を向上させる歯科用接着性組成物であって、前記歯科用接着性組成物は、重合性基を有するシランカップリング剤と、チオプロピオン酸誘導体またはチオグリコール酸誘導体と、揮発性有機溶剤からなり、前記シランカップリング剤は、〔化1〕の化学式で表される化合物であり、
前記チオプロピオン酸誘導体またはチオグリコール酸誘導体は、〔化2〕の化学式で表される化合物であること
を特徴とする。
(請求項2記載の発明)
請求項1記載の歯科用接着性組成物を用いた表面処理剤であって、前記表面処理剤は、前記歯科用接着性組成物と揮発性有機溶剤を混合したものであり、前記表面処理剤の総重量100%に対して、シランカップリング剤の重量を1.0〜30.0%とし、チオプロピオン酸誘導体またはチオグリコール酸誘導体の重量を0.1〜1.0%とし、揮発性有機溶剤の重量を69.0〜98.9%としたことを特徴とする。
(請求項3記載の発明)
請求項1記載の歯科用接着性組成物を用いた歯科用レジンであって、前記歯科用レジンは、前記歯科用接着性組成物と歯科用硬質レジンとを混合したものであり、前記重合性レジンの総重量100%に対して、シランカップリング剤の重量を1.0〜10.0%とし、チオプロピオン酸誘導体あるいはチオグリコール酸誘導体の重量を0.5〜4.0%とし、歯科用硬質レジンの重量を86.0〜98.5%としたことを特徴とする。
シランカップリング剤とチオプロピオン酸誘導体およびチオグリコール酸誘導体を同時に用いたところ、相乗効果によって歯科用貴金属、歯科用非貴金属、歯科用セラミックスの全てにおいて接着性を向上させる歯科用接着性組成物となった。
(請求項2記載の発明の効果)
請求項1記載の歯科用接着性組成物は、揮発性有機溶剤で溶かし、表面処理剤として用いることができる。
(請求項3記載の発明の効果)
また、歯科用接着性組成物を重合性レジンに混合することで、通常のプライマー処理なしでも優れた接着強度を示す歯科用レジンを得ることができた。
代表的な歯科治療の例として治療歯1を例示する。治療歯1は、前装冠10とフレーム部11とを用いて治療を行ったものである。治療歯1は、図1に示すように、前装冠10とフレーム部11が一体化したものである。前装冠10には硬質レジンが用いられ、フレーム部11には歯科用貴金属、歯科用非貴金属や歯科用セラミックスが用いられている。
そして、図2、3が示すフレーム部11上に、図4、5が示すような形状に硬質レジンを築盛し硬化させ前装冠10とした後に患者の口腔内に装着される。
硬質レジンである前装冠10は審美性が良いので、歯科用貴金属、歯科用非貴金属や歯科用セラミックスであるフレーム部11の上部構造として配置することにより、自然な外観を保つ歯科治療が可能になる。
鋳造成型可能な金属を用いたフレーム部11においては、図2、3のような、レジン築盛面に対してリテンションビーズ12を付与し、面積を増やし、金属とレジンの接着を強固にすることもできる。
歯科用貴金属、歯科用非貴金属およびこれらの合金や歯科用セラミックスと歯科用レジンまたは硬質レジンとの接着力の向上に関し、本発明は如何なる場合においても利用することができ、図1〜5の例示内容に限定されないものである。可能な限り接着を強固にする場合、本発明を以下のように利用することを例示する。
歯科用貴金属、歯科用非貴金属およびこれらの合金や歯科用セラミックスと、歯科用レジンとの接着力を向上させるために、歯科用接着性組成物を有機溶媒で希釈し、表面処理剤として用いることができる。すなわち、シランカップリング剤とイオウ化合物と揮発性有機溶剤とを混合し、歯科用貴金属、歯科用非貴金属およびこれらの合金や歯科用セラミックスの表面に塗布して用いるものである。
歯科用貴金属、歯科用非貴金属およびこれらの合金や歯科用セラミックスと、歯科用レジンとの接着力を向上させるために、シランカップリング剤とイオウ化合物(歯科用接着性組成物)をレジンに直接混合したものを用いることができる。混合された歯科用レジンは歯科用貴金属、歯科用非貴金属およびこれらの合金や歯科用セラミックスの表面に直接塗布し、接着することができる。
本発明の目的は、歯科用レジンを築盛する土台(例えば、前述のフレーム部11)となる補綴物と、歯科用レジンを強固に接着する歯科用接着性組成物であり、土台となる補綴物は、歯科用貴金属、歯科用非貴金属およびこれらの合金あるいは歯科用セラミックスであり、一液のみで、歯科用レジンを築盛する土台となる種々の補綴物の全ての表面処理が可能である。歯科用貴金属として金合金、銀合金および金銀パラジウム合金などが例示され、歯科用非貴金属合金としてチタン、チタン合金、ニッケルクロム合金、コバルトクロム合金などが例示され、歯科用セラミックスとしてポーセレン、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムなどが例示される。
シランカップリング剤として、例えば3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(γ−MPTS)、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランおよびビニルトリクロロシランなどを例示することができる。特に好ましくは、γ−MPTSを挙げることができる。
イオウ化合物であるチオプロピオン酸誘導体あるいはチオグリコール酸誘導体として、例えばペンタエリスリトールテトラキス−3−チオプロピオネート(PETP)、ペンタエリスリトールテトラキス−3−チオグリコラートなどを例示できる。特に好ましくは、PETPを挙げることができる。
揮発性有機溶剤としては、エタノール、アセトン、メタノール、イソプロパノールなど揮発性があり、混合物の溶解が可能であれば限定することなく使用することができる。特に好ましくは、エタノールを挙げることができる。
歯科用レジンとしては、一般的に硬質レジン、充填用コンポジットレジンおよびレジンセメントが用いられている。本発明に用いる歯科用レジンは、歯科用硬質レジンのオペークレジンとして使用される組成物であり重合性単量体、ガラス微粉末、乳濁剤、重合開始剤、重合促進剤などから構成される。
上記重合性単量体として具体的には、一般的に歯科用レジンに使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜10)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(炭素数2〜20)、エチレングリコールオリゴマージ(メタ)アクリレート(2〜10量体)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の1官能性、多官能性の(メタ)アクリル酸エステル類や、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート2モルとジイソシアネート1モルとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、具体的にはメチルメタクリレート,エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル)プロパンがあり、特にUDMAおよびTEGDMAを用いることが好ましい。
これらのモノマーは単独で用いることもあるが、2種類以上のモノマーを混合して使用してもよい。無機フィラーとして具体的には、一般的に歯科用レジンに用いられるシリカ微粒子、ジルコニア微粒子、Baガラス微粒子あるいはアルミナ微粒子を使用することができる。
重合開始剤として具体的には、一般的に歯科用レジンに用いられるカンファーキノン(CQ)、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等を使用することができる。特に好ましくは、CQを挙げることができる。
上記レジンには重合促進剤として、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)、着色顔料、乳濁剤、その他従来公知の各種添加剤を適宜配合できる。
本発明の反応機構をシランカップリング剤としてγ−MPTS〔化3〕とチオプロピオン酸誘導体としてPETP〔化4〕を例に説明する。
〔化4〕に示すように、PETPは一個の炭素原子を中心に末端がチオール基となる炭素鎖が配置される構造になっている。
実施態様1は、歯科用接着性組成物を有機溶媒で希釈し、表面処理剤として用いる使用方法である。
図1のようなフレームのレジン築盛面に、シランカップリング剤およびイオウ化合物を含有する表面処理剤を塗布する。表面処理剤を塗布したレジン築盛面に図2のような歯冠形態となるよう、レジンを築盛し硬化させる態様である。
表面処理剤の塗布は筆などで行なわれるものである。
実施態様2は、シランカップリング剤およびイオウ化合物を含有するレジンであり、レジン築盛面に直接築盛し、硬化させる態様である。
上述の実施態様1として用いる実施品1〜4を実施例1とし、実施態様2として用いる実施品5〜9を実施例2として以下に述べる。
歯科用接着性組成物を表面処理剤として用いたものを実施例1とし、実施品1〜4を準備した。
前記実施品1〜4の接着力測定試験の結果を記載する。
(1−1.接着試験の概要)
接着試験を行う為に、接着試験片4を準備した。接着試験片4は、図6に示すように、歯科用レジンセメント40と、ステンレスボルト41と、ボルト受け42と、歯科用レジン2と、接着対象3と接着面30とを備えるものである。この試験は歯科用レジン2(図1〜5の前装冠10に対応する)と接着対象3(図1〜5のフレーム部11となる歯科用補綴物)との接着力を測定するものである。
したがって、歯科用レジン2と接着対象3とを接着させ、前記接着試験片4の両端を引張り、剥がれるまでに必要な力を測定するものである。接着試験片4は、図3に示すように歯科用レジン2と接着対象3とが直径3mmの円面積となる接着面30で接着されたものである。
歯科用レジン2とステンレスボルト41とは、歯科用レジンセメント40によって強固に接着されているものであり、今回の試験で外れることはなかった。ステンレスボルト41のもう一端にはボルト受け42にネジ止めすることができる。この試験は、このボルト受け42と接着対象3とを小型万能試験機(Ez-Graph:島津製作所製)を用いて引き剥がすものである。
図7は、試験の概要を示すと共に実験手順を説明するものである。
接着対象3として、チタン(JIS規格4種、神鋼商事製)、金合金(ワイピーゴールド タイプ1−n;山本貴金属地金製)を使用した。接着面30は、耐水研磨紙(#600:理研コランダム製)で平滑な面に研磨した後、サンドブラスター(ジェットミル3:モリタ製作所製)により0.3MPaの圧力で2秒間、粒径50μmのアルミナ粒子でサンドブラスト処理を行った(図7−1)。
実施品1〜4となる試料を以下の配合比で混合した。γ−MPTSの添加量は、特許文献5の組成を参考にし、γ−MPTS濃度6wt%とした。また、PETPを添加していない比較品1と、γ−MPTSを添加していない比較品2、特許文献1の実施品1を参考に比較品3となる試料を作成した。
実施品1は、エタノール93.75wt%、γ−MPTS6wt%、PETP0.25wt%としたものである。
実施品2は、エタノール93.5wt%、γ−MPTS6wt%、PETP0.5wt%としたものである。
実施品3は、エタノール93.25wt%、γ−MPTS6wt%、PETP0.75wt%としたものである。
実施品4は、エタノール93wt%、γ−MPTS6wt%、PETP1wt%としたものである。
上述の実施品1〜4は、本件発明の歯科用接着性組成物を用いた表面処理剤である。
比較品1は、エタノール94wt%、γ−MPTS6wt%としたものである。
比較品2は、非特許文献1の組成を参考にした組成であり、エタノール99.25wt%、PETP0.75wt%としたものである。
γ−MPTSは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製を使用した。PETPは淀化学製を用いた。エタノールはナカライテスク製を用いた。
表面処理剤(実施品1〜4、比較品1〜2)上に接着する歯科用レジン2として、ハイブリッド型硬質レジン「ツイニー(山本貴金属地金製)」のオペークレジンであるインビジブルオペーク(以降IvO、成分:重合性単量体(UDMA、TEGDMA)、無機フィラー(シリカフィラー)、重合開始剤(CQ)、重合促進剤(DMAEMA)などを用いた。
前述のサンドブラスト処理を行った接着対象3を、水で10分間超音波洗浄を行い、ソルミックスAP−7(日本アルコール販売製)で充分にすすいだ(図7−1)。
その後、乾燥させ、接着試験片4それぞれの接着面30へ実施品1〜4、比較品1、2の表面処理剤を1μl滴下した(図7−2)。φ3mmの穴を開けた耐水テープを貼り付けマスキングを行い(図7−3)、IvOを筆で薄く塗布(図7−4)後、歯科用光照射機(アルファライト2:モリタ製)で3分間光照射を行い硬化させ接着した(図7−5)。
IvO硬化後、測定機器と接続するために、IvO硬化面に対し、歯科用レジンセメント40として「パナビア F2.0(クラレノリタケデンタル製)」を塗布後、上から10Nの力を加えながら表面をサンドブラスト処理したステンレスボルト41(φ5mm、長さ15mm)を垂直にのせた。歯科用光照射機「ペンキュアー(モリタ製)」で40秒間光照射を行い、ステンレスボルト41を接着させ接着試験片4を完成させた(図7−6)。
このIvOと歯科用レジンセメント40とステンレスボルト41の接着は、接着面積が大きいため、IvOと接着対象3とが剥離する前には、剥離するものではない。
接着を完了させて完成した試験片4を、37℃の水中に入れ、24時間浸漬(図7−7)後に接着強度を測定した(図7−8)。
測定条件として、クロスヘッドスピード0.5mm/minで引張接着強度(接着力)を測定した。引張接着強度は試験片4の測定を5回行い、その平均値とした。接着強度は、「大きい、小さい」または「高い、低い」と表現することが可能である。本件では「高強度」という言葉に基づき、「接着強度が大きい」を「接着強度が高い」と表現する。
測定結果を表1に示す。実施品および比較品1については、チタンに対して高い接着強度を示している。実施品は、チタンだけでなく金合金に対する接着強度も高く、特に実施品2の配合で、金合金に対する接着強度が最も高い値となった。
接着力を向上した接着性組成物として、シランおよびイオウ化合物含有組成物をレジンに混合したものを実施例2とし、実施品5〜9を準備した。前記実施品5〜9の接着力測定試験の結果を記載する。
(2−1.接着試験の概要)
実施例1の(1−1.接着試験の概要)と同様である。
(2−2.使用する歯科用金属について)
実施例1の(1−2.使用する歯科用金属について)と同様である。
実施例2においては、実施例1の(1−3.使用する表面処理剤について)のように接着性組成物を表面処理剤として用いることなく、シランカップリング剤およびイオウ化合物と歯科用レジン2とを直接混合したものとしている。
歯科用レジン2として、実施例1と同様に、ハイブリッド型硬質レジン「ツイニー(山本貴金属地金製)」のオペークレジンであるインビジブルオペーク(以降IvO、成分:重合性単量体(ウレタンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート))を用いた。
すなわち、図7−2の工程を省略し図8とし、図8−4の工程においてシランカップリング剤、イオウ化合物およびIvOの混合物である歯科用レジンを塗布している。
IvOに接着性成分としてγ−MPTSとPETPを以下の配合比で混合した。γ−MPTSの添加量は、特許文献5の組成を参考にした。
実施品5は、γ−MPTS3wt%、PETP0.5wt%と、IvO96.5wt%としたものである。
実施品6は、γ−MPTS3wt%、PETP1wt%、IvO96wt%としたものである。
実施品7は、γ−MPTS3wt%、PETP2wt%、IvO95wt%としたものである。
実施品8は、γ−MPTS3wt%、PETP3wt%、IvO94wt%としたものである。
実施品9は、γ−MPTS3wt%、PETP5wt%、IvO92wt%としたものである。
比較品3は、特許文献5の実施例を参考にした組成物であり、γ−MPTS3wt%、IvO97wt%としたものである。
比較品4は、ツイニーのオペークレジンであるIvOに接着性組成物を加えずにそのまま使用したものである。γ−MPTS、PETPとIvOの混合は、「あわとり練太郎」(シンキー製)で混合して行なった。
前述した(1−2.使用する歯科用金属について)のサンドブラスト処理を行った接着対象3を、水で10分間超音波洗浄を行い、ソルミックスAP−7(日本アルコール販売製)で充分にすすいだ。
その後、接着対象3の表面を乾燥させ、3mmφの穴を開けた耐水テープを貼り付けマスキングを行い、上記実施品5〜9および比較品3、4の歯科用レジン2を筆で薄く塗布後、歯科用光照射機(アルファライト2:モリタ製)で3分間光照射を行い硬化させた。
実施例1の(1−6.IvO上に設けるレジンについて)と同様である。
(2−7.測定)
実施例1の(1−7.測定)と同様である。
測定の結果を表2に示す。実施例1と同様に、全ての実施品が比較品に比べ、金合金に対する接着強度が高い値となり、PETP添加による金合金への接着強度向上の効果が認められた。実施品の中では、実施品7がチタンと金合金の両方の接着強度が高い値であった。
実施例1および実施例2の中で、良好な結果であった実施品2と実施品7については更に接着対象として金銀パラジウム合金(パラゼット12−n:山本貴金属地金製)、Ni−Cr合金〔Wiron(登録商標) 99:BEGO製〕、Co−Cr合金〔Wirobon(登録商標)C:BEGO製〕、およびジルコニア〔Aadva(登録商標):GC製〕を追加して接着強度を測定した。また、同様に比較品1、3、4についても測定し、表3を得た。
測定結果を表3に示す。実施品2および実施品7は、全ての接着対象(チタン、金合金、金銀パラジウム合金、Ni−Cr合金、Co−Cr合金、ジルコニア)への接着強度が高い値であった。比較品4は、貴金属および非貴金属どちらの接着成分も含まないため接着強度が低い。比較品1、3のようにシランカップリング剤を含む組成物ではチタン、Ni−Cr合金およびCo−Cr合金のような非貴金属には高い接着強度が認められたが、金合金に対しての接着強度は著しく低い。また、ジルコニアに対しての接着性について、比較品1、3よりも実施品2、7の接着強度が高いことから、金合金に対してだけでなくセラミックスにおいてもシランカップリグ剤とイオウ化合物を好適な配合比で組み合わせることによって単体で使用する場合よりも、接着効果が高まることが分かった。
このように、本発明は歯科用の貴金属、非貴金属およびこれらの合金、セラミックスの全てにプライマーとして使用すると歯科用レジンとの接着性を著しく向上するほか、同じ接着成分を歯科用レジンと混合することでプライマー処理なしでも優れた接着効果がある大変有用な接着性組成物を得ることができる。
10 前装冠
11 フレーム部
12 リテンションビーズ
2 歯科用レジン
3 接着対象
30 接着面
4 試験片
40 歯科用レジンセメント
41 ステンレスボルト
42 ボルト受け
Claims (3)
- 請求項1記載の歯科用接着性組成物を用いた表面処理剤であって、
前記表面処理剤は、
前記歯科用接着性組成物と揮発性有機溶剤とを混合したものであり、
前記表面処理剤の総重量100%に対して、
シランカップリング剤の重量を1.0〜30.0%とし、
チオプロピオン酸誘導体またはチオグリコール酸誘導体の重量を0.1〜1.0%とし、揮発性有機溶剤の重量を69.0〜98.9%としたこと
を特徴とする表面処理剤。
- 請求項1記載の歯科用接着性組成物を用いた歯科用レジンであって、
前記歯科用レジンは、
前記歯科用接着性組成物と歯科用硬質レジンとを混合したものであり、
前記重合性レジンの総重量100%に対して、
シランカップリング剤の重量を1.0〜10.0%とし、
チオプロピオン酸誘導体あるいはチオグリコール酸誘導体の重量を0.5〜4.0%とし、歯科用硬質レジンの重量を86.0〜98.5%としたこと
を特徴とする歯科用レジン。
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