JP2015019472A - ステータの製造方法及びステータの製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステータの製造過程でステータの真円度及び円筒度が悪化する可能性がある。
【解決手段】ステータコア2にコイル3を組付けたステータ中間体1が、内周面10aに真円矯正治具7を装着した状態でかつその外径部5を回転部材12に取付けられる。回転部材を回転しつつ、ノズル22a、22bからワニスをコイルエンド部3aに滴下し、ワニスを加熱硬化した後冷却する。所定真円度の真円矯正治具7を装着したステータ中間体は、加熱硬化で膨張し、冷却により収縮して、真円度が矯正される。
【選択図】図5
【解決手段】ステータコア2にコイル3を組付けたステータ中間体1が、内周面10aに真円矯正治具7を装着した状態でかつその外径部5を回転部材12に取付けられる。回転部材を回転しつつ、ノズル22a、22bからワニスをコイルエンド部3aに滴下し、ワニスを加熱硬化した後冷却する。所定真円度の真円矯正治具7を装着したステータ中間体は、加熱硬化で膨張し、冷却により収縮して、真円度が矯正される。
【選択図】図5
Description
本発明は、ステータコアにコイルを組付けたステータの製造方法及びステータの製造装置に係り、詳しくはステータにワニスを含浸させる工程に関する。
一般に、電気モータ(ジェネレータも含む)は、ステータとロータとからなり、例えばハイブリッド車両、電気自動車の駆動源として用いられる。上記ステータは、ステータコアにコイルが組付けられ、かつステータコアの外周にリングフランジが嵌着された後、コイル部にワニスを含浸してコイルを固着している(例えば特許文献1及び2参照)。
従来、上記ステータは、特に限られた大きさにより高い出力が要求される上記自動車用電気モータに適用される場合、コイルに平角線が用いられて高占積化すると共に、ロータとの間に微小ギャップを保つための高い真円精度が要求されている。
上記ステータコアは、多数のコアピースからなり、これらコアピースを円環状に束ねて、その外周をリングフランジによりかしめることにより形成される。この際、内周面を治具に嵌合して真円度矯正されるが、その後のコイルエンド部のコイルの接合工程等の多数の工程を経ている過程で真円度及び円筒度が悪化する可能性がある。このため、従来、ワニス含浸処理後の最終工程において、加熱してワニスを軟化した状態で、再度ステータの真円度及び円筒度を矯正していた。
また、上記ワニスの含浸処理として、ステータコアを回転させながら、ノズルからコイルにワニスを滴下させる方法が提案されている(特許文献1)。具体的には、ワーク回転軸にステータの内周面がチャックにより装着され、上記ワーク回転軸を回転することによりステータを回転した状態で、複数のノズルからコイルの内径側及び外径側にワニスを滴下する。
上述したワニス含浸処理後に再度の真円度矯正を行うことは、ワニスを再加熱してワニスによる固着を解放する等の面倒で時間の要する作業となり、ステータの生産性を低下してしまう。また、該再度の真円度矯正を行わないと、ステータの真円度及び円筒度の精度に安定が保てなくなる。
また、ステータの内周面をチャックで掴んで回転しつつワニスを滴下する方法では、ステータ内周面にチャックの圧接力及びワーク回転軸からのトルクが作用し、多数のコアピース同士がずれてしまいステータ内周面の真円度及び円筒度の精度に安定を保つことができず、結局、上述した再度の真円度矯正工程が必要になる。
そこで、本発明は、ワニスの含浸工程においてステータの真円度矯正も同時に行い、もって上述した課題を解決したステータの製造方法並びにステータの製造装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、多数のコアピースを円環状に束ねたステータコアにコイルを組付け、前記ステータコアの外周にリングフランジを締嵌めしてステータ中間体(1)を形成するステータ中間体の組立て工程(S1,S2)(図2参照)と、
前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に、縮径した状態の真円矯正治具(7)を嵌入して、該真円矯正治具の外周面(10b)を所定真円度及び円筒度に拡径する真円矯正治具取付け工程(S11)(図3参照)と、
前記ステータ中間体(1)に回転部材(12)を取付ける回転部材取付け工程(S12)(図4参照)と、
前記回転部材(12)を回転することにより前記ステータ中間体(1)を回転すると共に、前記ステータコア(2)の両側部から突出したコイルエンド部(3a)にワニスを滴下して、前記コイルにワニスを浸透するワニス供給工程(S15,S16)(図5参照)と、
前記ワニスを加熱硬化した後、冷却するワニス定着工程と(S17,S18)、
前記ワニスが冷却した後、前記ステータ中間体の内周面(2a)から、前記真円矯正治具(7)を縮径して取外す工程(S19)と、を備えた、
ことを特徴とするステータの製造方法にある。
前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に、縮径した状態の真円矯正治具(7)を嵌入して、該真円矯正治具の外周面(10b)を所定真円度及び円筒度に拡径する真円矯正治具取付け工程(S11)(図3参照)と、
前記ステータ中間体(1)に回転部材(12)を取付ける回転部材取付け工程(S12)(図4参照)と、
前記回転部材(12)を回転することにより前記ステータ中間体(1)を回転すると共に、前記ステータコア(2)の両側部から突出したコイルエンド部(3a)にワニスを滴下して、前記コイルにワニスを浸透するワニス供給工程(S15,S16)(図5参照)と、
前記ワニスを加熱硬化した後、冷却するワニス定着工程と(S17,S18)、
前記ワニスが冷却した後、前記ステータ中間体の内周面(2a)から、前記真円矯正治具(7)を縮径して取外す工程(S19)と、を備えた、
ことを特徴とするステータの製造方法にある。
前記ワニス定着工程(S17,S18)における加熱硬化の加熱により前記ステータ中間体(1)を膨張し、冷却により前記ステータ中間体を収縮し、
前記所定真円度及び円筒度に拡径した前記真円矯正治具(7)を前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に装着した状態における前記ステータ中間体の前記加熱による膨張及び前記冷却による収縮により、前記ステータ中間体の真円度及び円筒度を矯正し、
前記ワニス定着工程(S17,S18)におけるワニスの固着により、前記矯正された状態に前記ステータ中間体を保持してなる。
前記所定真円度及び円筒度に拡径した前記真円矯正治具(7)を前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に装着した状態における前記ステータ中間体の前記加熱による膨張及び前記冷却による収縮により、前記ステータ中間体の真円度及び円筒度を矯正し、
前記ワニス定着工程(S17,S18)におけるワニスの固着により、前記矯正された状態に前記ステータ中間体を保持してなる。
例えば、図4、図5を参照して、前記回転部材(12)は、前記ステータ中間体(1)より大径であって、かつワニス滴下用のノズル(22a,22b)を入れる開口部(13a)を有し、
前記回転部材取付け工程(S12)は、前記ステータ中間体の外径部(5a)に前記回転部材(12)を固定してなる。
前記回転部材取付け工程(S12)は、前記ステータ中間体の外径部(5a)に前記回転部材(12)を固定してなる。
例えば、図4を参照して、前記回転部材取付け工程は、前記リングフランジ(5a)に前記回転部材(12)を固定してなる。
前記ステータ中間体の組立て工程は、前記コイルが平角線からなり、
該コイルを所定形状のコイルユニットに成形し(S1)、これらコイルユニットを前記多数のコアピースに組付けた後、前記ステータコアの外周に前記リングフランジ(5)を締嵌めし(S2,S3)、
その後に多数の前記コイルユニットの端面同士を接合してなる(S4)。
該コイルを所定形状のコイルユニットに成形し(S1)、これらコイルユニットを前記多数のコアピースに組付けた後、前記ステータコアの外周に前記リングフランジ(5)を締嵌めし(S2,S3)、
その後に多数の前記コイルユニットの端面同士を接合してなる(S4)。
例えば図3を参照して、前記真円矯正治具(7)は、外周にテーパ面(9a)を有する円筒部材(9)と、内周面(10a)が前記円筒部材(9)のテーパ面(9a)に摺接しかつ外周面が円筒面(10b)からなる多数に分割されたコレット(10)と、を有し、
前記円筒部材(9)を軸方向に移動することにより前記コレット(10)が縮径及び拡径してなり、
前記コレット(10)の分割数が、前記ステータコア(2)の分割数より少ない。
前記円筒部材(9)を軸方向に移動することにより前記コレット(10)が縮径及び拡径してなり、
前記コレット(10)の分割数が、前記ステータコア(2)の分割数より少ない。
真円矯正治具は、円筒部材と多数に分割されたコレットとを有し、コレットの分割数が、ステータコアの分割数より少ないので、ステータは、コレットにより所定真円度及び円筒度に正確に位置決めすることができる。
例えば図6、図7を参照して、多数のコアピースを円環状に束ねたステータコアにコイルを組付け、前記ステータコアの外周にリングフランジを締嵌めしたステータ中間体(1)と、
前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に、装着及び取外し自在な真円矯正治具(7)と、
前記ステータ中間体(1)の外径部(5,5a)に取付け、取外し自在な回転部材(12)と、
前記回転部材を回転する回転装置(21)と、
前記ステータコア(2)の両側部から突出したコイルエンド部(3a)にワニスを滴下するワニス供給装置(22)と、
前記ステータ中間体(1)を加熱する加熱装置(32,33)と、を備え、
前記真円矯正治具(7)を前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に装着した状態で所定真円度及び円筒度に拡径し、該ステータ中間体を前記回転部材(12)に取付けて、該回転部材を前記回転装置(21)にて回転すると共に、前記ワニス供給装置(22)からワニスを滴下し、前記ステータ中間体(1)を前記加熱装置(32,33)で加熱してワニスを硬化した後、冷却してなる、
ことを特徴とするステータの製造装置にある。
前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に、装着及び取外し自在な真円矯正治具(7)と、
前記ステータ中間体(1)の外径部(5,5a)に取付け、取外し自在な回転部材(12)と、
前記回転部材を回転する回転装置(21)と、
前記ステータコア(2)の両側部から突出したコイルエンド部(3a)にワニスを滴下するワニス供給装置(22)と、
前記ステータ中間体(1)を加熱する加熱装置(32,33)と、を備え、
前記真円矯正治具(7)を前記ステータ中間体(1)の内周面(2a)に装着した状態で所定真円度及び円筒度に拡径し、該ステータ中間体を前記回転部材(12)に取付けて、該回転部材を前記回転装置(21)にて回転すると共に、前記ワニス供給装置(22)からワニスを滴下し、前記ステータ中間体(1)を前記加熱装置(32,33)で加熱してワニスを硬化した後、冷却してなる、
ことを特徴とするステータの製造装置にある。
前記回転部材(12)は、前記ステータ中間体(1)より大径で、ワニス供給装置(22)のノズル(22a,22b)を入れる開口部(13a)を有する2個のリング部材(13,13)と、前記ステータ中間体(1)の外径部(5,5a)を前記リング部材(13)に固定する取付け部(17)と、を有し、前記リング部材(13)を前記回転装置(21,21a)にて回転し、
前記真円矯正治具(7)は、外周にテーパ面(9a)を有する円筒部材(9)と、内周面(10a)が前記円筒部材(9)のテーパ面(9a)に摺接しかつ外周面が円筒面(10b)を形成する多数に分割されたコレット(10)と、を有し、前記円筒部材(9)を軸方向に移動することにより前記コレット(10)の外周面が縮径及び拡径してなり、
前記加熱装置は、炉(32)を有し、前記回転装置(21)は、前記炉内に配置されてなる。
前記真円矯正治具(7)は、外周にテーパ面(9a)を有する円筒部材(9)と、内周面(10a)が前記円筒部材(9)のテーパ面(9a)に摺接しかつ外周面が円筒面(10b)を形成する多数に分割されたコレット(10)と、を有し、前記円筒部材(9)を軸方向に移動することにより前記コレット(10)の外周面が縮径及び拡径してなり、
前記加熱装置は、炉(32)を有し、前記回転装置(21)は、前記炉内に配置されてなる。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、ステータ中間体は、多数のコアピースを円環状に束ねたステータコアにコイルを組付け、ステータコアの外周にリングフランジを締嵌めしてステータ中間体が形成されるので、ステータ中間体の真円度及び円筒度が製造過程で狂いを生じ易いが、ステータの製造の最終段階であるワニス含浸工程にステータの真円度矯正を兼用させたので、特別な真円度矯正工程を必要とせず、ステータの生産性を低下することがなく、かつステータの真円度及び円筒度を高い精度に安定して保持することができる。
請求項2に係る本発明によると、真円矯正治具が、所定真円度及び円筒度に拡径した状態でステータ中間体の内周面に装着されて、この状態でワニスを加熱硬化する際にステータ中間体を膨張して、ステータ中間体の歪みを全周に亘って均らし、その後の冷却によりステータ中間体を収縮して、ステータ中間体を上記状態の真円矯正治具に密着して、ステータ中間体を高い精度で真円度及び円筒度を修正し、この状態でワニスにより固着するので、容易かつ確実にステータの真円度矯正を行うことができる。
請求項3に係る本発明によると、ステータ中間体を回転しながらワニスを滴下してコイルに浸透し、ステータ中間体の全周に亘って均等にワニスを含浸することができるものでありながら、ステータ中間体の外径部に回転部材を固定して回転するので、真円矯正治具を容易かつ確実にステータ中間体の内周面に装着することができ、かつ高い精度が要求されるステータの内周面には、上記真円矯正治具の矯正力以外の力、例えばステータを掴る力(チャック力)、回転するためのトルクが作用せず、ステータを高い精度で真円度矯正することができる。
請求項4に係る本発明によると、ステータ中間体のリングフランジを回転部材に固定して回転するので、ステータ内周面に真円矯正治具を装着した状態で、容易にステータの外径部に回転部材を固定することができる。更に、回転部材をコアピースに直接固定して回転しないので、ステータコアの内周面に真円度矯正治具の矯正力以外の力が作用しないので、ステータを高い精度で真円度矯正することができる。
請求項5に係る本発明によると、コイルに平角線を用いて、高い占積化を可能とする共に、高い真円度及び円筒度を得ることができ、高い効率の電気モータ用のステータを得ることができる。また、ステータコアの精度が悪い状態でコイルを接合すると、接合部の位置がずれて接合時に互いの接合部同士が引張り合い、ステータコアの精度が更に悪化するが、所定形状に成形したコイルユニットにコアピースを組付けてリングフランジを締嵌めた後に、コイルユニットの端面同士を接合するので、ステータ中間体の精度を維持することができ、該ステータ中間体に上述した真円度矯正及びワニスにより保持が行われるので、高い精度のステータを得ることができる。
請求項6に係る本発明によると、精度の高い真円度及び円筒度を有するステータを安定して製造することができるステータの製造装置を提供し得る。
請求項7に係る本発明によると、回転装置を炉内に配置して、予熱、ワニス滴下、ワニス浸透、ワニス硬化、冷却の各工程を、ステータを回転可能にかつ温度管理して容易に行うことができる。
以下、図面に沿って本発明による実施の形態について説明する。ステータは、ロータと組合せて電気モータを構成し、特にハイブリッド車両及び電気自動車に適用される永久磁石式交流同期(ブラシレスDC)モータに用いて好適である。ステータ1は、図3(b)に示すように、ステータコア2とコイル3とリングフランジ5とを有し、ステータコア2は、円環状のヨークと、ヨークの内側に配置され、中心へ向って突出しかつ等間隔に配置される多数のティースからなり、これらティースの間でスロットが形成される。上記コイル3は、上記スロットに挿入されて組付けられる。なお、図3は、ステータ中間体1を示すが、ステータ中間体は、ステータ1と構成要素が同じであり、ステータが真円矯正されると共にワニスが含浸されている点で相違するが、図面上区別できないので、同一符号を付す。
図1に、ステータの製造工程を示す。コイル3は、銅を材料として樹脂により皮膜された断面矩形状の平角線からなり、予め所定回数環状(6角形状)に巻線されたコイルユニットが多数個成形される(S1)。上記ステータコアは、多数個に分割されたコアピースからなり、これらコアピースに上記コイルユニットが組付けられ、分割コアピースが組立てられる(S2)。そして、多数のコアピースを円環状に束ねて、その外周にリングフランジ5が締嵌め(例えば焼嵌め)され、ステータ中間体1が組立てられる(S3)。この際、多数のコアピースは、縮径自在の円筒形状治具に嵌合した状態で上記リングフランジ5が締嵌めされて、ステータ中間体1は、所定の真円度及び円筒度になる。
組付けられた上記多数のコイルユニットの端面は、皮膜が剥されて銅が露出されており、該端面同士がレーザ溶接等により接合される(S4)。上記ステータ中間体の組立て工程S1〜S4は、上述した集中巻きに限らず(例えば特開2012−125043号公報参照)、分布巻き(例えば特開2007−166791号公報参照)でもよく、要は、平角線を用いたコイルを所定形状のコイルユニットに成形し、これらコイルユニットを多数のコアピースに組付けた後、ステータコアの外周にリングフランジを締嵌めし、その後に多数のコイルユニットの端面同士を接合すればよい。更に、上記組付け、接合されたコイル3に通電して、絶縁部分の検査等の電気検査が行われる(S5)。
そして、本発明に係るワニスの含浸処理が行われる(S6)。ステータ1は、その外周部分がモータケースに取付けられ、またその内周面部分に、ロータが微小隙間をもって配置されたため、外周部分及び内周面部分は、ワニスが付着してはならない部分であるが、該部分等に付着しているワニスを除去するトリミング作業が行われる(S7)。そして、外観検査が行われ(S8)、出荷される(S9)。
ステップS3のリング焼嵌め作業時に、ステータ中間体1の内周面に治具が嵌合され、所定の真円度及び円筒度に成形されるが、その後の搬送、接合、検査、ワニス含浸等の各作業を経過するうちに、ステータの真円度及び円筒度に狂いが生じる場合がある。
本発明は、ステータ製造工程の最後の段階であるワニス含浸処理(S6)において、ステータの真円度(及び円筒度)の矯正(修正)を兼ねて行うものである。図2は、本発明によるワニス含浸工程の各作業経過を示すフロー図である。
まず、図2のステップS11で示すように、真円度矯正治具をステータ中間体の内周面に装着される。真円矯正治具7は、図3(a)に示すように、外周にテーパ面9aを有する円筒部材9と、内周面が前記円筒部材9のテーパ面9aに摺接するテーパ面10aからなり、かつ外周面が円周面10bからなる多数に分割されたコレット10とを有し、円筒部材9を軸方向に移動することによりコレット10が均等に縮径及び拡径する。
なお、コレット10の分割数(例えば8分割)は、ステータコア2の分割数(コアピースの数)より少なく、各ステータコア(コアピース)が均等に保持される。
ステータ中間体1は、図3(b),(d)に示すように、ステータコア2の両側面からコイルが突出してコイルエンド部3aとなっており、ステータコア2の外周面に焼嵌め固着されたリングフランジ5は、その一端側で外径側に突出した複数(3個)の耳部5aを有している。これら耳部5aにてステータ中間体1にモータケースが取付けられる。
上記真円矯正治具7は、図3(a),(b)に示すように、縮径した状態で上記ステータ中間体1のステータコア2の内周面2aに嵌入される。この状態で、図3(c)に示すように、円筒部材9を軸方向に移動し、両テーパ面9a,10aの摺接により、多数のコレット10が外径方向Aに移動して各コレット10の外周面が均等に拡径する。この状態で、コレット10の外周面10bは、規定された寸法による所定真円度及び円筒度になり、ステータコア2の内周面2aは、上記コレット外周面10bに接するが、歪みがある場合、ステータコア内周面は、必ずしも均等に上記コレット外周面10bに接触しない。
ついで、外径チャック治具(回転部材)がステータ中間体1の外径部に取付けられる(S12)。即ち、図4(a),(b)に示すように、上記真円矯正治具7を装着されたステータ中間体1が外径チャック治具(回転部材)12に取付けられる。外径チャック治具(回転部材)12は、外径がステータ外径より大径の2個のリング部材13,13を有し、これらリング部材13は、ステータの幅より大きい間隔を隔てて、同芯状でかつ平行になるように複数の連結部材15により固定される。上記各リング部材13の開口部13aは、ワニス滴下用のノズル22a,22b(図5、図6参照)を貫通し得るようにコイルエンド部3aより大径からなる。一方のリング部材13には、複数(3)個の取付け部17が固定されており、該取付け部17は先端がステータ中間体1の上記耳部5aに対応するように延びている。
これら取付け部17の先端に、ボルト19により上記耳部5aが固定され、外径チャック治具12にステータ中間体1が取付けられる(チャックされる)。該外径チャック治具12に取付けられた状態のステータ中間体1は、図4(c),(d)に示すように、両リング部材13,13の内径側でかつ幅内に同芯状に保持される。上記外径チャック治具12は、ステータ中間体1をモータケースに取付けるための耳部5aに固定されるので、取付けが容易であると共に、ステータ中間体1の内周面2aに真円矯正治具7を取付ける際に支障となることはなく、かつ外径チャック治具12からの回転力は、ステータ1の外径部5から伝達されるので、ステータ内周面に、上記真円矯正治具7からの矯正力以外の力、例えばチャックによる掴り力及び回転トルクが作用せず、ステータ内周面を高い精度の真円度及び円筒度に保つことができる。
ついで、上記内周面に真円矯正治具7が装着され、かつ外径側に外径チャック治具12が取付けられた状態で、ステータ中間体1のワニスが付着されてはいけない部分にマスキングが施される(S13)。ステータ中間体1の上記耳部5aは、モータケースに該ステータが取付けられるが、ステータコアの端面外周部分にワニスが付着していると、モータケースを正確に取付けることができないため、この部分がマスキングされる部分である。また、ステータコア2の内周面もロータと微小間隙で対面するため、ワニスが付着することは好ましくないが、上述したように内周面2aには真円矯正治具7が装着されるため、ワニスが付着する可能性は小さく、マスキングする必要がない。
ついで、ステータ中間体1の予熱が行われる(S14)。該予熱は、コイル3の被覆樹脂のストレス除去及びスロット絶縁紙等からの水分除去を行うためのものであり、約180℃に所定時間保持される。更に、冷却用の空気を通風してステータが80〜110℃になるまで放熱される。
この状態でステータ中間体1のコイルエンド部3aにワニスを滴下する(S15)。図5は、該ワニス滴下工程を示す図で、上記外径チャック治具(回転部材)12を回転する回転装置21及びワニス供給装置22を有する。回転装置21は、ローラ21aを有し、該ローラ21aは、外径チャック治具のリング部材13を支えつつ該リング部材に回転を伝達して、ステータ中間体1を回転する。ワニス供給装置22は、ワニスをコイルエンド部3aに滴下するノズル22a,22a,22b,22bを有し、これらノズルは、リング部材13の開口部13aを通って、それぞれ左右のコイルエンド部3aの外径側及び内径側に導かれる。
これにより、内周面に真円矯正治具7を装着したステータ中間体1は、その外径部である耳部5aを外径チャック治具12に掴まされて回転しつつ、左右のコイルエンド部3aの外径側及び内径側にワニスが滴下される。この状態では、ワニス及びステータは常温以上でかつ硬化温度(ゲル化温度)以下であって、ワニスは稠度の高い(流動性のよい)状態にあり、コイルエンド部3aに滴下されたワニスは、毛細管現象によりステータコア2のスロット部内に浸透する(S16)。また、ステータ中間体1は回転状態にあり、ワニスはコイルエンド部3aの全周に亘って均等に供給され、巻線コイルの全体に含浸する。
ついで、上記ステータ中間体1は加熱されてワニスが硬化する(S17)。ワニスを滴下、浸透されたステータ中間体1は、ワニス中の触媒が反応する温度(例えば約120℃又は110〜130℃)に加熱され、ワニス粘度が高くなり流動性がなくなる(ゲル化)。更に温度(例えば約165℃)を上げてワニスを完全に硬化する。これにより、ワニスは硬化、固形化されて、コイル3はステータ中間体1に固着(定着)される。そして、ステータ中間体1に送風した空気を当てるか又は放置して、ステータ中間体1を冷却する(例えば約40℃以下)(S18)。上記ステップS14〜S18までは、炉内により行われ、ステータ中間体1を回転しつつ行うことが好ましい。
上記ワニスの加熱硬化(S17)におけるステータ中間体への加熱によりステータは膨張し、その後の冷却(S18)によりステータ中間体は収縮する。該ステータ中間体の膨張、収縮は、ステータ中間体1の内周面に、真円矯正治具7が所定真円度及び円筒度に拡径した状態で行われる。これにより、ステータ中間体1の膨張により、ステータ中間体に歪みがある場合、全周に亘って該歪みが均され、それに次ぐステータ中間体の収縮により、ステータ中間体の内周面は、所定真円度及び円筒度にある真円矯正治具に全周に亘って密着し、ステータ中間体は、所定真円度及び円筒度に矯正(修正)される。この状態で、ワニスは、ステータに固着されて、ステータ中間体は、上記矯正された状態に保持される。
ついで、冷却されて取扱える温度になったステータ中間体1から、真円矯正治具7を収縮して取外される(S19)。また、外径チャック治具12もステータ中間体1から取外されて、ステータとなる。
図6は、上記ステータの製造方法(ワニスの含浸方法)に用いられる製造装置を示す。ステータ製造装置25は、上述した円筒部材9及び分割されたコレット10を有する真円矯正治具7と、2個のリング部材13,13及びステータの外径部をリング部材に固定する取付け部17を有する外径チャック治具(回転部材)12と、上記外径チャック治具12を回転駆動する回転装置21と、コイルエンド部3aにワニスを供給するワニス供給装置22と、備える。
回転装置21は、外径チャック治具12のリング部材13を支える少なくとも2個のローラ21aを有し、その内の1個のローラは電気モータ26により駆動される。ワニス供給装置22は、ワニス収納容器27内のワニスを吸い上げて吐出するポンプ29と、ポンプから吐出されたワニスをノズル22a,22bに導く配管30と、を有する。配管30は、上記リング部材13の開口部13aを通って各ノズルに導かれる。ノズル22a,22a,22b,22bは、外径チャック治具12に取付けられた状態のステータ中間体1の左右のコイルエンド部3a,3aの外径側及び内径側に向けて配置される。
上記回転装置21等のステータ製造装置25は、図7に示すように炉32内に配置される。該炉32には、熱風ヒータ33からの熱風が供給され、また室温空気等からなる冷却用空気が供給され、これら熱風及び冷却用空気の供給は切換えられる。また、熱風の温度を制御して、炉内の温度を適宜調節し得る。
上述したステータ製造(ワニスの含浸)方法にあっては、ステップS14〜S18まで、上記炉32内に入れられて温度管理され、かつステータ中間体1が適宜回転される。なお、これに限らず、回転装置21及びワニス供給装置22を炉内に設置せずに、予熱(S14)、ワニス硬化(S17)の各工程のみを炉内で処理するようにしてもよい。また、炉32は、熱風ヒータ33により加熱したが、これに限らず、コイル3に加熱用の通電手段を連結して、コイル3の自己発熱とステータコア2の誘導加熱により温度管理してもよい。
1 ステータ中間体、ステータ
2 ステータコア
2a 内周面
3 コイル
3a コイルエンド部
5 リングフランジ、外径部
5a 耳部、外径部
7 真円矯正治具
9 円筒部材
9a テーパ面、外周面
10 コレット
10a テーパ面、内周面
10b 円筒面、外周面
12 回転部材(外径チャック治具)
13 リング部材
13a 開口部
17 取付け部
21 回転装置
21a ローラ
22 ワニス供給装置
22a,22b ノズル
32,33 加熱装置(炉、熱風ヒータ)
2 ステータコア
2a 内周面
3 コイル
3a コイルエンド部
5 リングフランジ、外径部
5a 耳部、外径部
7 真円矯正治具
9 円筒部材
9a テーパ面、外周面
10 コレット
10a テーパ面、内周面
10b 円筒面、外周面
12 回転部材(外径チャック治具)
13 リング部材
13a 開口部
17 取付け部
21 回転装置
21a ローラ
22 ワニス供給装置
22a,22b ノズル
32,33 加熱装置(炉、熱風ヒータ)
Claims (7)
- 多数のコアピースを円環状に束ねたステータコアにコイルを組付け、前記ステータコアの外周にリングフランジを締嵌めしてステータ中間体を形成するステータ中間体の組立て工程と、
前記ステータ中間体の内周面に、縮径した状態の真円矯正治具を嵌入して、該真円矯正治具の外周面を所定真円度及び円筒度に拡径する真円矯正治具取付け工程と、
前記ステータ中間体に回転部材を取付ける回転部材取付け工程と、
前記回転部材を回転することにより前記ステータ中間体を回転すると共に、前記ステータコアの両側部から突出したコイルエンド部にワニスを滴下して、前記コイルにワニスを浸透するワニス供給工程と、
前記ワニスを加熱硬化した後、冷却するワニス定着工程と、
前記ワニスが冷却した後、前記ステータ中間体の内周面から、前記真円矯正治具を縮径して取外す工程と、を備えた、
ことを特徴とするステータの製造方法。 - 前記ワニス定着工程における加熱硬化の加熱により前記ステータ中間体を膨張し、冷却により前記ステータ中間体を収縮し、
前記所定真円度及び円筒度に拡径した前記真円矯正治具を前記ステータ中間体の内周面に装着した状態における前記ステータ中間体の前記加熱による膨張及び前記冷却による収縮により、前記ステータ中間体の真円度及び円筒度を矯正し、
前記ワニス定着工程におけるワニスの固着により、前記矯正された状態に前記ステータ中間体を保持してなる、
請求項1記載のステータの製造方法。 - 前記回転部材は、前記ステータ中間体より大径であって、かつワニス滴下用のノズルを入れる開口部を有し、
前記回転部材取付け工程は、前記ステータ中間体の外径部に前記回転部材を固定してなる、
請求項1又は2に記載のステータの製造方法。 - 前記回転部材取付け工程は、前記リングフランジに前記回転部材を固定してなる、
請求項3記載のステータの製造方法。 - 前記ステータ中間体の組立て工程は、前記コイルが平角線からなり、
該コイルを所定形状のコイルユニットに成形し、これらコイルユニットを前記多数のコアピースに組付けた後、前記ステータコアの外周に前記リングフランジを締嵌めし、
その後に多数の前記コイルユニットの端面同士を接合してなる、
請求項1ないし4のいずれか記載のステータの製造方法。 - 多数のコアピースを円環状に束ねたステータコアにコイルを組付け、前記ステータコアの外周にリングフランジを締嵌めしたステータ中間体と、
前記ステータ中間体の内周面に、装着及び取外し自在な真円矯正治具と、
前記ステータ中間体の外径部に取付け、取外し自在な回転部材と、
前記回転部材を回転する回転装置と、
前記ステータコアの両側部から突出したコイルエンド部にワニスを滴下するワニス供給装置と、
前記ステータ中間体を加熱する加熱装置と、を備え、
前記真円矯正治具を前記ステータ中間体の内周面に装着した状態で所定真円度及び円筒度に拡径し、該ステータ中間体を前記回転部材に取付けて、該回転部材を前記回転装置にて回転すると共に、前記ワニス供給装置からワニスを滴下し、前記ステータ中間体を前記加熱装置で加熱してワニスを硬化した後、冷却してなる、
ことを特徴とするステータの製造装置。 - 前記回転部材は、前記ステータ中間体より大径で、ワニス供給装置のノズルを入れる開口部を有する2個のリング部材と、前記ステータ中間体の外径部を前記リング部材に固定する取付け部と、を有し、前記リング部材を前記回転装置にて回転し、
前記真円矯正治具は、外周にテーパ面を有する円筒部材と、内周面が前記円筒部材のテーパ面に摺接しかつ外周面が円筒面を形成する多数に分割されたコレットと、を有し、前記円筒部材を軸方向に移動することにより前記コレットの外周面が縮径及び拡径してなり、
前記加熱装置は、炉を有し、前記回転装置は、前記炉内に配置されてなる、
請求項6記載のステータの製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013143984A JP2015019472A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | ステータの製造方法及びステータの製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013143984A JP2015019472A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | ステータの製造方法及びステータの製造装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015019472A true JP2015019472A (ja) | 2015-01-29 |
Family
ID=52439980
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2013143984A Pending JP2015019472A (ja) | 2013-07-09 | 2013-07-09 | ステータの製造方法及びステータの製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015019472A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110657822A (zh) * | 2019-10-16 | 2020-01-07 | 陕西航天时代导航设备有限公司 | 一种轴向磁悬浮定子元件测试的柔顺自锁结构工装 |
CN113119025A (zh) * | 2021-05-18 | 2021-07-16 | 深圳市凯昇科技有限公司 | 一种固定旋转座 |
-
2013
- 2013-07-09 JP JP2013143984A patent/JP2015019472A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110657822A (zh) * | 2019-10-16 | 2020-01-07 | 陕西航天时代导航设备有限公司 | 一种轴向磁悬浮定子元件测试的柔顺自锁结构工装 |
CN110657822B (zh) * | 2019-10-16 | 2023-07-14 | 陕西航天时代导航设备有限公司 | 一种轴向磁悬浮定子元件测试的柔顺自锁结构工装 |
CN113119025A (zh) * | 2021-05-18 | 2021-07-16 | 深圳市凯昇科技有限公司 | 一种固定旋转座 |
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