JP2015018759A - ポリマー電解質 - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性、低吸湿性に優れた固体ポリマー電解質及び当該固体ポリマー電解質を用いたリチウムイオン電池を提供する。【解決手段】特定の1,3−ジオキソラン化合物を原料として得られるポリジオキソラン及びリチウム塩を含有する固体ポリマー電解質で、前記ポリジオキソランの数平均分子量が20,000〜1000,000、前記リチウム塩がLiN(CF3SO2)2(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド:LiTFSI)である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエーテル系ポリマーを用いたポリマー電解質に関する。
近年のIT技術の目覚ましい発展に伴うモバイル文化・コードレス文化の発達は、そのキーデバイスであるリチウムイオン二次電池の高性能化への要求に拍車をかけ、新たな付加価値を有する高性能二次電池の開発が急務である。新しい付加価値としては、これまでに開発されたゲルポリマー電解質と比較して、より高い信頼性、薄型・フレキシブルなどのセル形状選択性の自由度などが挙げられる。更に近年の小型化、軽量化に伴い電解質は液体、ゲルポリマー電解質から固体への転換が望まれている。高分子材料からなるイオン伝導性材料として、これまでにポリエチレンオキサイド(PEO)及びその誘導体が種々検討されている(例えば非特許文献1参照)。PEOのようなエーテル酸素を持ち、イオン配位能を有する媒体は、これに塩を添加すると解離、溶解し、生成したイオンを保持することができる。この中でのイオン移動は、系の自由度、粘性に大きく影響を受ける。
ポリマー系電解質の場合にはガラス転移温度(Tg)以上の温度域ではゴム弾性領域と呼ばれる粘弾性体としての特徴を示し、この温度以上ではミクロ的には流動体的な性質を示すとともに、マクロ的には物理的、化学的な架橋点が存在し固体として形状を保持することができる。従って、ポリマー電解質を考えた場合、系中にエーテル基等のイオン配位能を有し、低Tgであれば広い範囲で高いイオン移動性を有することが期待できる。しかしながらPEOとリチウム塩の複合体は半結晶性なため、結晶相はイオン移動の阻害要因となる。このため、融点以上では高いイオン移動を示すが、融点以下では極端にイオン移動性が低下するという問題がある。これを改善するためにプロピレンカーボネートやエチレンカーボネートなどの可塑剤、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸、ポリプロピレンカーボネートなどの他樹脂の添加や、自由末端側鎖、架橋構造、更にはシロキサン、ホスファゼン、エチレンオキサイド以外のエーテル骨格を導入するなど、マトリクスをアモルファス化して分子運動性を向上させる事が多く試みられている。また酸化チタンや酸化ケイ素などの無機酸化物の添加による有機・無機コンポジットによる検討もなされている。しかしながら、主鎖変性などは靱性が低下して脆くなるなど、機械物性の低下が問題であった。
液体電解質としては、ポリジオキソランの原料である1,3−ジオキソランはそれ自身でも電解液の媒体となり得るが、沸点や比誘電率が低いため実用的ではなくエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートが一般的に用いられている。ポリマー電解質としては、エチレンカーボネートをポリマーとすることが開示されているが(例えば特許文献1参照)、1,3−ジオキソランをポリマー化し、ポリマー電解質として用いることは検討されていない。ポリエチレンオキサイド以外のポリエーテル系ポリマーとしては、例えばポリジオキソランが知られる。ポリジオキソランは一般的に1,3−ジオキソランをモノマーとしてカチオン重合を行うことで得られ、分子中にオキシメチレンユニットとオキシエチレンユニットを交互に1対1で有し、ポリエチレンオキサイドに比べて酸素含有率が高く、同様のイオン移動性を示すことが期待される。しかしながら、これまでポリジオキソランやその共重合体や誘導体の製造方法についていくつかの開示があるが、これをポリマー電解質に用いることに着目した検討は無かった(例えば特許文献2参照)。アクリル系ポリマー電解質に側鎖としてジオキソランユニットを導入することが開示されているが(例えば特許文献3参照)、これはイオン伝導度の向上というよりは、リチウム塩の分解により発生するフッ酸をトラップする目的として開示されている。更に特定のリチウム塩を含む電解液に1,3−ジオキソランを加えて重合し、ゲル電解質として用いることが開示されているが(例えば特許文献4参照)、固体電解質としての開示は無い。従って、PEOでは達成できなかった、固体電解質として、より高い信頼性、薄型・フレキシブルなどのセル形状選択性の自由度などが挙げられる材料が更に求められていた。
特開2010−287563号公報 特開平7−41532号公報 特開2005−235684号公報 特開平6−290794号公報
西村 直美,大野 弘幸,「イオン伝導性高分子の設計戦略」,高分子論文集,高分子学会,2011年,第68巻,第9号,P.595−607
本発明は、柔軟性、低吸湿性に優れたポリエーテル系固体ポリマー電解質を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の1,3−ジオキソラン化合物をモノマーとしたポリジオキソランを用い、これにリチウム塩を添加することにより高靱性、低吸湿率、高イオン伝導度を備えたポリマー電解質が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物をモノマーとしたポリジオキソラン及びリチウム塩を含有する固体ポリマー電解質に関する。
・・・式(1)
(式中、R1〜R6はそれぞれ独立に同一または異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アルキルオキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
本発明によれば、高靱性、低吸湿率、高イオン伝導度を備えた固体ポリマー電解質が提供される。
本発明は、特定の1,3−ジオキソラン化合物をモノマーとしたポリジオキソラン及びリチウム塩を含有する固体ポリマー電解質である。以下、本発明の固体ポリマー電解質について説明する。
本発明におけるポリジオキソランは、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物をモノマーとして用い、カチオン重合により得られる。
式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物は、無置換の1,3−ジオキソランを代表に、アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アルキルオキシ基又はアリールオキシ基などの有機基が置換した化合物であり、具体的には、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−ブチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−フェニル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−ブチルオキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−フェノキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−クロルメチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキカビシクロ[3,4,0]ノナン、が例示される。中でも1,3−ジオキソランが好ましく、重合したポリジオキソランの分子量が十分高く、柔軟性と低吸水率についてバランスが良いという利点が有る。式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物は2種以上をモノマーとして併用することが可能であるが、1,3−ジオキソランと、他の1,3−ジオキソラン化合物を組み合わせるのが好ましい。1,3−ジオキソラン以外の前記式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物は1,3−ジオキソラン100質量部に対して、100質量部未満が好ましく用いることができる。これよりも多く用いた場合にはポリジオキソランの分子量が低下したり、常温で液体となってしまったり、柔軟性の低下や吸水率の上昇、酸素含有率の低下によるイオン伝導度の低下が生じる場合がある。
更に得られるポリジオキソランの物性を低下させない範囲で、これ以外のモノマーとして、ホルムアルデヒドのみからなる環状三量体であるトリオキサンや環状四量体であるテトラオキソカンを少量用いて共重合しても良いし、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキシタン、オキセタン、1,3−ジオキセパン、1,3,6−トリオキソカン、テトラヒドロフラン、その他エポキシ化合物類、グリシジルエーテル類、環状シリコーン類などを共重合しても良い。その場合、1,3−ジオキソラン化合物以外のモノマーの割合は、1,3−ジオキソラン化合物100質量部に対して好ましくは100質量部未満、更に好ましくは20質量部未満である。これより多い場合には得られるポリジオキソランの分子量が低下したり、常温で液体となってしまったり、また逆に結晶性が高くなり、結果として高いイオン伝導度を維持できなくなる。
こうして1,3−ジオキソラン以外の化合物を用いることで得られるポリジオキソランに分岐構造や架橋構造を生成させることもでき、またポリジオキソラン有するブロックポリマーとすることもできる。
本発明に用いるポリジオキソランの原料モノマーである1,3−ジオキソラン化合物には、その保存安定性を得るために立体障害性フェノールを添加しておくことが好ましい。立体障害性フェノールとしては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等の立体障害性フェノール類の1種又は2種以上が挙げられる。中でもトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンが好適に使用され、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートが最も好適に使用され、その量は1,3−ジオキソラン100質量部に対して10〜1000ppmである。
1,3−ジオキソラン化合物の重合触媒としては、例えば硫酸、リン酸、塩酸などの鉱酸や、三塩化鉄、四塩化スズ、三塩化アルミニウム、フッ化ホウ素等のルイス酸又はこれらのエーテル等との複合体、有機アルミニウム及びその反応物等が知られているが、好ましくはヘテロポリ酸を重合触媒に使用する。ヘテロポリ酸は、骨格酸の中心原子がモリブデン、タングステン、バナジウム等から選ばれ、ヘテロ原子がケイ素、リン、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、砒素、コバルト等から選ばれた原子からなるケギン構造を有するポリ酸であり、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ホウタングステン酸、ホウモリブデン酸、コバルトモリブデン酸、コバルトタングステン酸、砒素タングステン酸、ゲルマニウムタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、ホウモリブドタングステン酸等が挙げられる。これらの中でも、リンタングステン酸が無着色性、溶解性及び重合開始能力の点で特に好ましく、使用前に高温及び/又は減圧で乾燥させてヘテロポリ酸の結晶水部分が、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは3〜8重量%になるように調製して重合に使用する。結晶水部分が1重量%未満の場合や15重量%を越える場合には得られるポリジオキソランの分子量が高くならない場合がある。このヘテロポリ酸は部分的に中和された塩でも使用でき、これらの部分中和塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、有機アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
本発明で用いられるポリジオキソランを得るための重合触媒としてヘテロポリ酸を用いる場合、使用量には特に制限はないが、1,3−ジオキソラン化合物100質量部あたり好ましくは10〜1000ppmであり、好ましくは20〜500ppmであり、更に好ましくは50〜300ppmである。10ppm以上であれば重合が開始され、1000ppm以下であれば重合の制御が容易となり、分子量の高いポリジオキソランが得られる。
本発明に用いられるポリジオキソランを得るための重合反応は、原料が十分混合でき、開環重合がおきる条件を実現できれば特段の制限は無く、バッチ反応、連続反応などが適用できる。連続反応の場合には少なくとも2本の水平回転軸を有し、それらの回転軸にはスクリュー又はパドルが組み込まれた翼を有する混練機や、スタティックミキサー内部で重合を行うことが好適である。
本発明に用いられるポリジオキソランを得るための重合反応は窒素のような不活性雰囲気下で行うことが好ましく、また溶媒の存在下に行う溶液重合も可能であるが、溶媒の回収コストが不要でな実質的に無溶媒下における塊状重合が好ましい。溶媒を使用する場合、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
本発明に用いられるポリジオキソランを得るための重合時間は、通常1〜120分であるが、好ましくは1〜60分であり、より好ましくは1〜30分である。重合時間がこれより長いと生産性の低下が大きく、短いと重合収率が低下する。
重合反応の停止は、重合停止剤を反応生成物と接触させることにより行う。重合停止剤はそのまま、あるいは溶液、懸濁液の形態で使用するが、接触方法は連続的に少量の重合停止剤、重合停止剤の溶液、懸濁液を反応系中に添加し、接触させることが望ましい。接触に際しては撹拌により接触効率を高めることが好ましい。
重合停止剤としては、三価の有機リン化合物、有機アミン系化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物などが使用できる。重合停止剤として用いられる有機アミン系化合物としては、一級、二級、三級の脂肪族アミンや芳香族アミン、ヘテロ環アミン等が使用でき、具体的には、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−n−ブチルアミン、ジ―n―ブチルアミン、トリプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、メラミン、メチロールメラミン、各種ヒンダードアミン類等が挙げられる。これら例示される重合停止剤の中でも3価の有機リン化合物および3級アミンが好ましい。3価の有機リン化合物の中で、特に好ましい化合物は熱的に安定でかつ熱による成形品の着色弊害を及ぼさないトリフェニルホスフィンである。3級アミンの中で、特に好ましい化合物はトリエチルアミンおよびN,N−ジメチルブチルアミンである。重合停止剤の使用量は、使用触媒のモル数に対して、通常0.01〜500倍、好ましくは0.05〜100倍である。重合停止剤を溶液、懸濁液の形態で使用する場合、使用される溶剤は特に限定されるものではない。例えば、水、アルコール類、原料モノマー、コモノマー、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等の脂肪族または芳香族の各種有機溶媒が挙げられる。これらは、混合して使用することも可能である。
本発明に用いるポリジオキソランの分子量は20,000〜1000,000が好ましい。20,000以上であれば使用温度が高くなっても溶融せず、固体ポリマー電解質として液体の漏れ出しといった安全性の低下を起こさない。1000,000以下であればリチウム塩の溶解度は十分で、系の粘性も高くならず、高いイオン伝導度を示す上、柔軟で吸水率の低い膜を得ることができる。一方、ポリジオキソランの結晶化はイオン伝導を阻害する要因となるため、分岐や架橋構造などを導入することにより、結晶化を抑制することが好ましい。
本発明に用いられるリチウム塩としては、例えば、LiBr、LiCl、LiI、LiSCN、LiBF、LiAsF、LiClO、CHCOOLi、CFCOOLi、LiCFSO、LiPF、LiN(CFSO、LiC(CFSO等が挙げられる。これらの中でも、LiN(CFSO(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド:LiTFSI)が好ましい。これらのリチウム塩は2種以上用いることもできる。また、上述のリチウム塩のアニオンと、リチウム以外のアルカリ金属、例えばカリウム、ナトリウム等との塩を併用することもできる。これらのアルカリ金属塩は、2種以上を併用することができる。リチウム塩及びアルカリ金属塩の使用量は、金属塩の種類等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、ポリジオキソラン中の酸素原子1モルに対して、0.01〜1モル、更に好ましくは0.05〜0.5モルの範囲になるように選択される。
本発明の固体ポリマー電解質は、本発明の本来の目的を損なわない範囲内で公知の添加剤及び/又は充填剤を含有することが可能で、その含有量は得られる固体ポリマー電解質のイオン伝導度、機械物性、吸湿率を始めとする諸物性を勘案して決定することができ、ポリジオキソラン100質量部に対して各々0〜30質量部が好ましい。添加剤としては、例えば酸化防止剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、熱安定剤、消臭剤、難燃剤、抗菌剤の他、他のイオン導電性ポリマー等が挙げられる。また、充填剤としては酸化チタンや酸化ケイ素などの無機酸化物等や、木粉、でんぷんをはじめとする天然由来の有機フィラーが挙げられる。さらに、顔料、染料を加えて所望の色目に仕上げることも可能である。
本発明の固体ポリマー電解質は、リチウム塩を均一に混合し、解離させることが重要であり、ポリマーの融点以上でリチウム塩を溶融混練し、フィルム状に製膜する方法が考えられるが、一般的には十分に脱水したアセトニトリルなど、ポリマーやリチウム塩が溶解度を示す有機溶媒中に均一に溶解させた後、キャストして製膜する方法が好適に用いられ、ロール・ツー・ロールによる連続製膜が更に好適である。ロール・ツー・ロールとは、ロール状に巻いた基材、電池の場合では正極材料及び負極材料を各々別々に送り出して表面にリチウム塩を溶解させた固体ポリマー電解質を液体の状態で成膜し、溶液の場合には溶媒を蒸発除去させる工程を経て正極材料側と負極材料側を固体ポリマー電解質を介して張り合わせて再び別のロールに巻き取る生産方法であり、一つの装置で連続生産できるため、製造コストを削減できる。本発明の固体ポリマー電解質もこれに好適に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す実施例に制限されるものではない。
(ポリジオキソラン(p−DOL)−Aの合成)
重合装置としてジャケットと2枚のZ型翼を有する内容積1Lの卓上型二軸混練機を用い、バッチ式の重合によりポリジオキソランの製造を実施した。ジャケットに50℃温水を循環させ、さらに内部を高温空気で加熱乾燥した後、蓋を取り付け系内を窒素置換した。原料投入口より1,3−ジオキソラン(東邦化学工業社製)300gを仕込み、Z型翼によって撹拌しながら、1,3−ジオキソランに対して0.0025質量部のリンタングステン酸(和光純薬工業社製試薬)を添加して20分間重合を実施した。その後、使用した触媒量の10倍モルに相当するトリエチルアミン(和光純薬工業社製試薬特級)をベンゼン溶液(溶液濃度:1.5mol/L)としてシリンジを用いて重合装置内に添加し、15分間混合して重合を停止し、40℃で真空乾燥を行うことでポリジオキソランを収得した。収率は65%であった。数平均分子量はポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したところ、約200,000であった。
(p−DOL−Bの合成)
p−DOL−Aの合成例において、リンタングステン酸の量を1,3−ジオキソランに対して0.05質量部とした以外は全く同じ方法でポリジオキソランを合成した。この時の収率は70%で、数平均分子量は約10,000であった。
(ポリエチレンオキサイド(PEO))
和光純薬工業社製、分子量200,000のポリエチレンオキサイドを用いた。
(塗膜の調製)
アセトニトリルに上記ポリマーを5wt%となるように溶解させ、リチウム塩としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI;森田化学工業社製)をポリマーに対して表1に示す量となるように添加した。これを不活性ガス雰囲気に調整されたグローブボックス内でテフロン(登録商標)製ペトリ皿に流し込んで塗膜し、室温にてゆっくりと溶媒を除去後に常温で24時間真空乾燥することにより、厚みが100−150ミクロンの膜を作成した。それぞれのイオン伝導度について、ソーラトロン社製インピーダンスアナライザ1260型を用い、周波数は0.1〜10MHzの範囲とし、25℃で測定した。結果を表1に示す。
いずれのサンプルも100℃に加熱した熱プレスにより厚み100ミクロンのフィルムを作成し、短冊状にカットした後、JIS K7127に従い、引張速度は20mm/分間で引張試験を行った。またJIS K7209に従って吸湿率についても測定を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、ポリジオキソラン及びリチウム塩を含有する固体ポリマー電解質はポリエチレンオキサイドと同等もしくはそれ以上のイオン伝導度、柔軟性、低吸水性を示す。

Claims (6)

  1. 式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物をモノマーとしたポリジオキソラン及びリチウム塩を含有する固体ポリマー電解質。
    ・・・式(1)
    (式中、R1〜R6はそれぞれ独立に同一または異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アルキルオキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
  2. 前記式(1)におけるR1〜R6がすべて水素原子である、請求項1記載の固体ポリマー電解質。
  3. 前記ポリジオキソランが、1,3−ジオキソラン及び1,3−ジオキソラン以外の前記式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物の1種以上を共重合したものであり、1,3−ジオキソラン以外の前記式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物が1,3−ジオキソラン100質量部に対して、100質量部未満である請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
  4. 前記リチウム塩がLiN(CFSO(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド:LiTFSI)である請求項1〜3のいずれかに記載の固体ポリマー電解質。
  5. 前記ポリジオキソランの数平均分子量が20,000〜1000,000である請求項1〜4のいずれかに記載の固体ポリマー電解質。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の固体ポリマー電解質を含むリチウムイオン電池。
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