JP2015018231A - 複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置 - Google Patents

複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2015018231A
JP2015018231A JP2014123838A JP2014123838A JP2015018231A JP 2015018231 A JP2015018231 A JP 2015018231A JP 2014123838 A JP2014123838 A JP 2014123838A JP 2014123838 A JP2014123838 A JP 2014123838A JP 2015018231 A JP2015018231 A JP 2015018231A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lenticular lens
film
lens film
birefringent
refractive index
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014123838A
Other languages
English (en)
Inventor
石橋 邦昭
Kuniaki Ishibashi
邦昭 石橋
武本 博之
Hiroyuki Takemoto
博之 武本
亀山 忠幸
Tadayuki Kameyama
忠幸 亀山
裕宗 春田
Hiromune Haruta
裕宗 春田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP2014123838A priority Critical patent/JP2015018231A/ja
Publication of JP2015018231A publication Critical patent/JP2015018231A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】 低コストで生産性に優れ、しかも3D表示性能の代表的な指標であるクロストーク値が低い複屈折レンチキュラーレンズフィルムを提供する。【解決手段】 本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルム11は、その少なくとも一方の面に、線状の凸部11aと線状の凹部11bとが交互に並列する複屈折レンチキュラーレンズ要素を有し、かつ、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置に用いられる複屈折レンチキュラーレンズフィルムであって、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素が、非液晶性有機材料により形成されることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置に関する。
画像表示装置において、立体表示(三次元表示または3D表示ともいう。)を可能とするための部材として、複屈折レンチキュラーレンズフィルムがある。複屈折レンチキュラーレンズフィルムは、表面に凹凸を有している。複屈折レンチキュラーレンズフィルムを用いると、例えば、立体視用眼鏡等を用いずに、裸眼で立体視可能な立体表示をすることができる。また、複屈折レンチキュラーレンズフィルムを用いた画像表示装置には、立体表示と平面表示(二次元表示または2D表示ともいう。)とを切り替える機能を有するものがある(特許文献1〜5等)。
特許第4244321号明細書 特開2007−213081号公報 国際公開第2012/090785号パンフレット 特開2008−233469号公報 特表2009−501355号公報
ところで、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの材料としては、特許文献1〜5に記載のように、液晶性材料を用いることが一般的であった。
しかしながら、液晶性材料を用いた複屈折レンチキュラーレンズフィルムは、以下の問題がある。まず、液晶性材料が非常に高価であるためコストの制約がある。つぎに、液晶性モノマーの重合反応時の結晶化により配向欠陥が生じることで、光学性能に問題が生じる恐れがある。さらに、液晶性材料を湿式塗工した後に、100度以下の比較的低い温度で一定時間の乾燥を行い溶媒を完全に揮発させる必要があるため、生産性に劣る課題がある。
そこで、本発明は、低コストで生産性に優れ、しかも3D表示性能の代表的な指標であるクロストーク値が低い複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルムは、前記複屈折レンチキュラーレンズフィルムの少なくとも一方の面に、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する複屈折レンチキュラーレンズ要素を有し、かつ、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置に用いられる複屈折レンチキュラーレンズフィルムであって、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素が、非液晶性有機材料により形成されることを特徴とする。
本発明による複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法は、前記本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法であって、樹脂フィルムに、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸が形成された樹脂フィルムを延伸して屈折率異方性を付与する延伸工程とを含むことを特徴とする。
本発明のレンズフィルム付き偏光板は、偏光板と、前記偏光板に積層された複屈折レンチキュラーレンズフィルムとを有し、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置に用いられる複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板であって、前記複屈折レンチキュラーレンズフィルムが、前記本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルムであることを特徴とする。
本発明の画像表示装置は、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置であって、前記本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルム、画像表示パネル、および、表示切り替え手段を有し、前記表示切り替え手段は、前記画像表示パネルから出射されて前記複屈折レンチキュラーレンズフィルムに入射する偏光の振動方向を切り替えることにより、立体表示および平面表示を相互に切り換え可能であることを特徴とする。
本発明によれば、低コストで生産性に優れ、しかも3D表示性能の代表的な指標であるクロストーク値が低い複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置を提供することができる。
図1は、本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルムの一例を模式的に示す斜視図である。 図2は、本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルムの別の一例を模式的に示す斜視図である。 図3は、本発明の画像表示装置の構造および立体表示のメカニズムの一例を示す模式図である。 図4は、図3の画像表示装置における平面表示および立体表示の相互切り替えのメカニズムの一例を示す模式図である。 図5は、実施例の画像表示装置の構造を模式的に示す斜視図である。 図6は、実施例の複屈折レンチキュラーレンズフィルム(レンチキュラーレンズ)における凸部と画素との配置関係を示す模式図である。 図7は、実施例、比較例および参考例の各レンズフィルムの輝度プロファイルを示す図である。
以下、本発明について、例を挙げて、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定および制限されない。
[1.複屈折レンチキュラーレンズフィルム]
本発明の複屈折レンチキュラーレンズフィルム(以下、単に「本発明のレンズフィルム」ということがある。)は、前述のとおり、前記本発明のレンズフィルムの少なくとも一方の面に、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する複屈折レンチキュラーレンズ要素を有し、かつ、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置に用いられる複屈折レンチキュラーレンズフィルムであって、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素が、非液晶性有機材料により形成されることを特徴とする。
なお、本発明において、以下、フィルムの面と平行な方向を「面内方向」または単に「面内」ということがある。また、フィルムの面と平行な方向の屈折率を「面内屈折率」と言うことがあり、フィルムの面と平行な方向の屈折率異方性を「面内の屈折率異方性」ということがあり、フィルムの面と平行な方向の配向性を「面内配向性」ということがある。
本発明のレンズフィルムにおいては、少なくとも前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の部分が、前記本発明のレンズフィルムの面内方向に屈折率異方性(複屈折)を有する。
視野角の拡大等を目的とする光学補償フィルムにおいて、面内方向に屈折率異方性を持たせることは、広く行われている。また、レンチキュラーレンズには、立体表示ではなく視野角の拡大を目的とするものがある。そのようなレンチキュラーレンズにおいて、視野角拡大のために、面内方向に屈折率異方性を持たせることがあった。しかし、立体表示のためのレンズフィルムにおいて、非液晶性有機材料により形成され、かつ屈折率異方性(光学異方性)を持たせたものはなかった。
本発明者らは、鋭意研究の結果、レンズフィルムを非液晶性有機材料により形成し、かつ、前記レンズフィルムの面と平行な方向に屈折率異方性を持たせると、低コストで生産性に優れ、しかも3D表示性能の代表的な指標であるクロストーク値が低い複屈折レンチキュラーレンズフィルムとなることを見出した。なお、本発明のレンズフィルムを用いた本発明の画像表示装置、および本発明のレンズフィルムを用いた表示切り替え方法については、後述する。
なお、特許文献5には、レンズ材は引き伸ばされたプラスチックであってもよいとの記載がある(同文献[0024])。しかし、同文献における前記「レンズ材」は、フィルムと分離した部材であり、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの一部として形成された部材ではない。これに対し、本発明のレンズフィルムにおいて、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)は、本発明のレンズフィルムの一部である。
本発明のレンズフィルムにおいては、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)が、それ以外の部分と一体に形成されていることが好ましい。また、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素以外の部分が、前記本発明のレンズフィルムの面内方向に屈折率異方性(複屈折)を有することが好ましい。これらにより、画像表示パネルから本発明のレンズフィルムに入射した偏光が、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)以外の部分(樹脂基材部)で偏光解消されることなく、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)に到達し良好なクロストーク値が得られる。このような本発明のレンズフィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムの延伸工程を含む製造方法により製造することができる。前記樹脂フィルムは、正の固有複屈折を有する樹脂(非液晶性有機材料)により形成され、かつ、少なくとも一方の面に、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する凹凸が、それ以外の部分と一体に形成された樹脂フィルムであることが好ましい。また、前記延伸工程において、前記樹脂フィルムを、少なくとも前記凹凸の線状方向に延伸して製造することが好ましい。
本発明のレンズフィルムは、例えば、裸眼で立体視可能な画像を表示する画像表示装置に用いられ、前記画像表示装置の画像表示パネルが表示する画像を、立体視可能な画像に変換するレンズフィルムであっても良い。また、本発明のレンズフィルムは、例えば、右目用画素と左目用画素とを有する画像表示装置において、前記右目用画素から発せられる光と、前記左目用画素から発せられる光とを、異なる角度で屈折させて出射させるレンズフィルムであっても良い。また、本発明のレンズフィルムは、例えば、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凸部頂点から、隣接する凸部の頂点までの間隔が、50〜5000μmの範囲であり、かつ、前記凹部の底から前記凸部頂点までの高さが、10〜500μmの範囲であっても良い。
[1−1.レンズフィルムの形状]
本発明のレンズフィルムは、前述のとおり、複屈折レンチキュラーレンズ要素を有する。本発明のレンズフィルムにおいて、前記「複屈折レンチキュラーレンズ要素」とは、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する凹凸が複数繰り返して形成された凹凸形状をいう。
図1の斜視図に、本発明のレンズフィルムの一例を示す。図示のとおり、このレンズフィルム11は、一方の面に凹凸が形成されている。前記凹凸は、線状の凸部11aと線状の凹部11bとが交互に並列する凹凸が複数繰り返して形成された凹凸形状である。すなわち、このレンズフィルム11は、前記一方の面に、線状の凸部11aと線状の凹部11bとから形成された複屈折レンチキュラーレンズ要素を有する。このレンズフィルム11は、その面内方向に屈折率異方性を有する。また、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面には、図示のとおり、非複屈折材料層11cが積層されている。非複屈折材料層11cは、図示の便宜上、二点鎖線で示すとともに、その背後に存在する線状の凸部11aと線状の凹部11bを透過させて描いている。非複屈折材料層11cの屈折率は、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の常光屈折率nとほぼ等しい。前記常光屈折率nは、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の、レンズフィルム11面内方向において前記線状方向に垂直な方向の屈折率である。なお、図1のレンズフィルム11では、凸部がレンズであるが、本発明のレンズフィルムは、これに限定されず、凹部がレンズであっても良い。すなわち、本発明のレンズフィルムは、前記凹部および前記凸部のいずれがレンズであっても良い。
本発明のレンズフィルムにおいて、前記凹凸形状(複屈折レンチキュラーレンズ要素)は、例えば、図1のレンズフィルム11のように、凸部11aが、略半円柱形(かまぼこ形状)であり、互いに隣り合う凸部11aどうしの接する部分が凹部11bを形成していてもよい。また、例えば、図2に示すレンズフィルム21のように、凸部21aが、切妻屋根形状(断面が三角形の形状)であり、互いに隣り合う凸部21aどうしの接する部分が凹部21bを形成していてもよい。なお、図2のレンズフィルム21は、図示のとおり、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面に、非複屈折材料層21cが積層されている。非複屈折材料層21cは、図示の便宜上、二点鎖線で示すとともに、その背後に存在する線状の凸部21aと線状の凹部21bを透過させて描いている。非複屈折材料層21cの屈折率は、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の常光屈折率nとほぼ等しい。前記常光屈折率nは、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の、レンズフィルム21面内方向において前記線状方向に垂直な方向の屈折率である。また、本発明のレンズフィルムにおいて、前記非複屈折性材料層の形状は、特に限定されないが、良好な画像表示の観点から、図1の11cまたは図2の21cのように、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面を埋め込んで平坦にするような形状であることが好ましい。
本発明のレンズフィルムは、低コストに製造可能であるために、前記凹凸形状部分とそれ以外の部分とが一体に形成されていることが好ましい。例えば、一体形成されたレンズフィルムをレンズ部分の線状方向に延伸することで、前記凹凸形状部分とそれ以外とで同等の面内屈折率異方性を付与することができる。これにより、例えば、前述のとおり、画像表示パネルから本発明のレンズフィルムに入射した偏光が、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素以外の部分(樹脂基材部)で偏光解消されることなく、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素に到達し良好なクロストーク値が得られる。
前記凸部頂点から、隣接する凸部の頂点までの間隔(ピッチ、図1および2では、符号dで示す距離)は、特に限定されないが、例えば50〜5000μm、好ましくは100〜2000μm、より好ましくは200〜1000μmである。前記凸部の高さ(前記凹部の底から前記凸部頂点までの高さ、図1および2では、符号hで示す距離)も、特に限定されないが、例えば10〜500μm、好ましくは20〜400μm、より好ましくは30〜300μmである。また、本発明のレンズフィルムの厚さ(前記凸部の高さを含む)も特に限定されないが、例えば10〜1000μm、好ましくは20〜700μm、より好ましくは30〜500μmである。
本発明のレンズフィルムにおいて、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面には、例えば図1および2のように、前記非複屈折材料層(等方性レンズ層)が積層されていることが好ましい。前記非複屈折材料層の屈折率は、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の常光屈折率nとほぼ等しい。前記非複屈折材料層があることにより、本発明のレンズフィルムの異常光屈折率n(前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の線状方向における屈折率)の方向に振動する直線偏光は、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素によるレンズ作用(レンズの凹凸界面の作用)を受け、三次元画像を構成する。一方、前記常光屈折率nの方向に振動する直線偏光は、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素によるレンズ作用を受けず、直進するため、二次元画像を構成する。前記非複屈折材料層の屈折率と、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の常光屈折率nとの差は、例えば、±0.1以下、好ましくは±0.05以下、より好ましくは±0.02以下であり、理想的には0である。なお、前記非複屈折材料層の形成材料および形成方法については、特に限定されないが、例えば、後述するとおりである。
[1−2.レンズフィルムの屈折率異方性]
本発明のレンズフィルムは、前述のとおり、前記レンズフィルムの面内方向に屈折率異方性を有する。
本発明のレンズフィルムにおいて、前記凹凸形状が、線状の凸部と線状の凹部とが並列する凹凸が複数繰り返して形成された凹凸形状であり、前記レンズフィルムの屈折率が、前記凹凸形状の並列方向と、前記凹凸形状の線状方向とで異なることが好ましい。例えば、図1のレンズフィルム11は、前述のとおり、線状の凸部11aおよび線状の凹部11bとが並列する凹凸が複数繰り返して形成された凹凸形状を有する。このレンズ11の屈折率が、前記凹凸形状の並列方向と、前記凹凸形状の線状方向とで異なることが好ましい。図2のレンズ21においても同様である。
また、本発明のレンズフィルムにおいて、良好な3D表示の観点から、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の線状方向における屈折率(異常光屈折率n)が、前記複屈折レンチキュラーレンズフィルム面内方向において前記線状方向に垂直な方向における屈折率(常光屈折率n)よりも大きいことが好ましい。すなわち、本発明のレンズフィルムが、下記数式(1)を満たすことが好ましい。

>n (1)
より良好な3D表示の観点から、前記異常光屈折率nと前記常光屈折率nとの差Δnが、0.05以上であることが好ましい。また、単一材料の透明樹脂でも前記レンズフィルムを作製しやすい観点から、前記異常光屈折率nと前記常光屈折率nとの差が、0.20以下であることが好ましい。なお、さらに、前記異常光屈折率nと前記常光屈折率nとの差Δnが、前記下限値および上限値の両方を満たすこと、すなわち、下記数式(3)を満たすことが好ましい。

Δn=n−n (2)

0.05≦Δn≦0.20 (3)
[1−3.レンズフィルムのクロストーク値]
つぎに、本発明のレンズフィルムのクロストーク値について説明する。
クロストーク値とは、3D視認性を評価するための特性である。より具体的には、前記クロストーク値は、レンズフィルムを画像表示装置に適用した場合の、右目用画像と左目用画像の重なりの度合いを表す数値である。前記クロストーク値が小さいほど、3D表示が、鮮明(良好)であることになる。言い換えれば、前記クロストーク値は、右目用画像と左目用画像のコントラスト(滲み具合)であるとも言える。なお、前記クロストーク値が100%である場合は、右目用画像と左目用画像の重なりの度合いが100%、すなわち、右目用画像と左目用画像が完全に同一であるから、3D表示ではないということになる。
本発明のレンズフィルムにおいて、前記クロストーク値は、例えば、以下の測定方法により測定できる。ただし、この測定方法は、例示であり、本発明を限定しない。
まず、液晶ディスプレイ(ソニー株式会社製、商品名VAIO_L24149CJB)から、既設のレンズフィルム(液晶層を含むレンチキュラーフィルム)を取り外す。つぎに、前記既設のレンズフィルムに代えて、測定対象のレンズフィルムを、その凹凸形状の並列方向(凹凸形状が線状の場合は、凹凸形状の線状方向に対し垂直な方向)が画面の左右方向と同方向となるように配置する。つぎに、前記液晶ディスプレイの画素を、前記レンズフィルム凹凸形状の並列方向(すなわち、画面の左右方向)に白画素1列と黒画素5列が交互に並ぶように表示させる。このとき、前記凹凸形状の並列方向に対し垂直な方向(すなわち、画面の上下方向)には、前記白画素および前記黒画素が連続するように表示させる。そして、前記液晶ディスプレイの液晶変換セル(偏光変換パネル)が3D表示モードになっている状態で、コノスコープ(AUTRONIC社製、商品名CONOSCOPE80)により輝度を測定する。前記輝度測定は、方位角90度(前記液晶ディスプレイの画面右方向)から、極角0度(ディスプレイ正面)±50度の範囲で測定する。そして、下記式(4)に基づいてクロストーク値を算出する。下記式(4)において、Imaxは、極角0度±50度(すなわち、ディスプレイ正面から水平方向に±50度)の範囲での最大輝度である。また、Iminは、極角0度±50度(すなわち、ディスプレイ正面から水平方向に±50度)の範囲での最小輝度である。

クロストーク値=Imin/Imax×100(%) (4)
本発明のレンズフィルムにおいて、前記クロストーク値は、好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは11%以下である。前記クロストーク値の下限値は、特に限定されないが、例えば、0%または0%を超える数値である。
[1−4.レンズフィルムの形成材料]
つぎに、本発明のレンズフィルムの形成材料について説明する。
本発明のレンズフィルムの形成材料は、非液晶性有機材料であれば特に限定されないが、例えば、ガラス、透明樹脂等の透明材料である。これらの形成材料の中で、成形しやすく、屈折率異方性を付与しやすく、かつ取扱い易いという理由により、透明樹脂が好ましい。前記透明樹脂は、例えば、正の複屈折性を有する樹脂でもよいし、負の複屈折性を有する樹脂でもよい。ここで、「正の複屈折性」は、延伸後において、延伸方向の屈折率が、延伸方向と垂直方向の屈折率よりも大きくなる性質をいう。また、「負の複屈折性」は、延伸後において、延伸方向の屈折率が、延伸方向と垂直方向の屈折率よりも小さくなる性質をいう。なお、前記透明樹脂は、延伸により大きい屈折率異方性を得やすいという観点から、なるべく固有複屈折率の大きい透明樹脂が好ましい。一般的に、負の複屈折性を有する樹脂よりも、正の複屈折性を有する樹脂の方が、固有複屈折率が大きい傾向があることから、前記透明樹脂は、正の複屈折性を有する樹脂が好ましい。また、前記透明樹脂は、1種類でもよいし、複数種類併用してもよい。複数種類の透明樹脂を併用する方法としては、例えば、前記複数種類の透明樹脂を混合して用いる方法、積層して用いる方法等がある。
(正の複屈折性を有する樹脂)
前記正の複屈折性を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリオレフィン、ノルボルネン系ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル系ポリマー、セルロース系樹脂、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アセテート系ポリマー等があげられる。前記ポリエステルとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PETとPENの混合物、PET−PENコポリマー等の共重合体等があげられる。前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等があげられる。前記アセテート系ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール系ポリマー等があげられる。これらの中で、延伸により、大きな屈折率異方性を発現しやすいという理由により、前記ポリエステルおよびポリカーボネートが好ましい。前記ポリエステルの中では、高い透明性の観点、および、延伸により特に大きな屈折率異方性を発現しやすいという理由により、特に、PETが好ましい。なお、PETにも様々な種類があり、例えば、結晶性PET、非晶性PET、結晶性PETと非晶性PETの混合(ブレンド)物、および共重合PET等が挙げられるが、どのようなPETでも良い。前述のとおり、延伸によって大きな屈折率異方性が得られることが好ましい。
(ポリカーボネート)
前記ポリカーボネートは、特に限定されず、任意の適切なポリカーボネートを用いることができる。特に、芳香族2価フェノール成分とカーボネート成分とから形成された芳香族ポリカーボネートが好ましい。前記芳香族ポリカーボネートは、好ましくは、芳香族2価フェノール化合物とカーボネート前駆物質との反応によって得ることができる。具体的には、例えば、芳香族2価フェノール化合物を苛性アルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、芳香族2価フェノール化合物とビスアリールカーボネートとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法によって得ることができる。
前記芳香族2価フェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記カーボネート前駆物質としては、特に限定されないが、例えば、ホスゲン、上記2価フェノール化合物のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられ、中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。これらは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記ポリカーボネートは、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が、好ましくは25000〜250000、さらに好ましくは30000〜200000、特に好ましくは40000〜100000の範囲である。重量平均分子量が上記範囲にあれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性などが良好なものとなる。
前記ポリカーボネートとしては、例えば、下記一般式(A)で表される繰り返し単位(A)と、フルオレン構造を含む下記一般式(B)で表される繰り返し単位(B)とを含むものが、波長分散特性に優れ、位相差値が発現しやすい点で好ましい。
前記一般式(A)および(B)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1〜5個の炭素原子を有するアルキルカルボニルオキシ基、またはそれらの置換誘導体であり、nおよびmは1以上の整数である。好ましくは、R1およびR2はいずれも1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であり、より好ましくは、R1およびR2はいずれもメチル基である。
前記一般式(A)で表される繰り返し単位(A)と前記一般式(B)で表される繰り返し単位(B)とを含むポリカーボネートにおいて、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との比率(A:B)は、好ましくは2:8〜4:6である。この範囲とすることによって、例えば、レンズフィルムに成形した場合に、可視光の広い領域で位相差が一定になるため、液晶表示装置に用いた場合に黒表示における斜め方向のカラーシフトを改善することができる。なお、これらの比率は、各モノマー(芳香族2価フェノール化合物)の仕込み比率によって、適宜調整できる。
(ポリビニルアセタール系樹脂)
前記ポリビニルアセタール系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、特許第3984277号公報の段落[0026]に記載されている、下記一般式(C)で表される重合体を含有する樹脂を用いることができる。前記重合体は、分子構造中にナフチル基を有することによって、透明性、耐熱性、および加工性に優れる。
前記重合体は、例えば、少なくとも2種類のアルデヒド化合物およびケトン化合物の少なくとも一方と、ポリビニルアルコール系樹脂とを縮合反応させることで得ることができる。前記一般式(C)に示す重合体において、l、m、nの各基本単位の配列順序は、特に制限されず、交互、ランダムまたはブロックのいずれであってもよい。前記重合体は、基本単位l、m、およびnの重合度の合計が20以上であり、重量平均分子量が大きい重合体(いわゆる、高重合体)を包含し、さらに、基本単位l、m、およびnの重合度の合計が、2以上20未満であり、重量平均分子量が数千程度の低重合体(いわゆる、オリゴマー)を包含する。
前記一般式(C)中、RおよびRは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、または置換若しくは非置換のフェニル基であり、前記RおよびRは、同一でも異なっていてもよい。
前記一般式(C)中、R、AおよびBは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基または水酸基であり、前記R、AおよびBは、同一でも異なっていてもよい。ただし、前記Rは、水素原子ではない。
前記一般式(C)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数5〜10の置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、または置換若しくは非置換のヘテロ環基である。
前記一般式(C)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ベンジル基、シリル基、リン酸基、アシル基、ベンゾイル基、またはスルホニル基である。
前記ポリビニルアセタール系樹脂は、例えば、前記ポリビニルアセタール系樹脂を、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、ソルベントキャスティング法等によって、フィルム状に形成したものでもよい。
(ポリイミド)
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000-511296号公報に開示された、9,9-ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC110アルキル基で置換されたフェニル基、およびC110アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC110アルキル基で置換されたフェニル基、およびC110アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(1)中、Zは、例えば、C620の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R72基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C252基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R93である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC620アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C110のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマー、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH32基、C(CF32基、C(CX32基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH32基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6-ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6-ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6-ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロ-ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’-ジブロモ-4,4’,5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ジクロロ-4,4’,5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’,5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6-トリフルオロ-3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2,2-ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4’-[4,4’-イソプロピリデン-ジ(p-フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N-(3,4-ジカルボキシフェニル)-N-メチルアミン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’-ビス(トリハロメチル)-4,4’,5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’,5,5’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o-、m-およびp-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノ-2-メトキシベンゼン、1,4-ジアミノ-2-フェニルベンゼンおよび1,3-ジアミノ-4-クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’-ジアミノベンゾフェノン、および3,3’-ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8-ジアミノナフタレン、および1,5-ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリジン、および2,4-ジアミノ-S-トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジアニリン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’-テトラクロロベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
(ポリエーテルケトン)
前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C16の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC14の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C16の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC14の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
(ポリアミドまたはポリエステル)
また、前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドおよびポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX32基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1-3アルキル基およびC1-3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、前記(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1-9アルコキシカルボニル基、C1-9アルキルカルボニルオキシ基、C1-12アリールオキシカルボニル基、C1-12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1-12アリールカルバモイル基、ならびに、C1-12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
つぎに、前記負の複屈折性を有する樹脂としては、例えば、芳香環、カルボニル基等の、分極異方性の大きい化学結合および/または置換基が側鎖に導入されたポリマーがあげられる。前記負の複屈折性を有する樹脂は、より具体的には、メタクリレート系ポリマー、スチレン系ポリマー、マレイミド系ポリマー等があげられる。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
(メタクリレート系ポリマー)
前記メタクリレート系ポリマーは、例えば、メタクリレート系モノマーを付加重合させることにより得られる。メタクリレート系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等があげられる。
(スチレン系ポリマー)
前記スチレン系ポリマーは、例えば、スチレン系モノマーを付加重合させることにより得られる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレン、2,5−ジクロロスチレン、p−t−ブチルスチレン等があげられる。
(マレイミド系ポリマー)
前記マレイミド系ポリマーは、例えば、マレイミド系モノマーを付加重合させることにより得られる。マレイミド系モノマーとしては、例えば、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−n−プロピルフェニル)マレイミド、N−(2−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2−メチル−6−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジブロモフェニル)マレイミド、N−(2−ビフェニル)マレイミド、N−(2−シアノフェニル)マレイミド等があげられる。前記マレイミド系モノマーは、例えば、東京化成工業株式会社等で販売されているものを入手して用いてもよい。
(ノルボルネン系ポリマー)
前記ノルボルネン系ポリマーは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。前記「(共)重合体」は、ホモポリマーまたは共重合体(コポリマー)を表す。前記ノルボルネン系ポリマーは、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーが用いられる。前記ノルボルネン系ポリマーは、(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系樹脂は、例えば、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で、構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂は、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。前記開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等があげられる。前記ノルボルネン系ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に限定されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
前記ノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(a)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に水素添加した樹脂、(b)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂等があげられる。前記ノルボルネン系モノマーの開環共重合体に水素添加した樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および非共役ジエン類の少なくとも一つとの開環共重合体に水素添加した樹脂を包含する。前記ノルボルネン系モノマーを付加共重合させた樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および非共役ジエン類の少なくとも一つとを付
加共重合させた樹脂を包含する。
前記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体に水素添加した樹脂は、例えば、ノルボルネン系モノマー等をメタセシス反応させて、開環(共)重合体を得、さらに、前記開環(共)重合体に水素添加して得ることができる。具体的には、例えば、特開平11−116780号公報の段落[0059]〜[0060]に記載の方法、特開2001−350017号公報の段落[0035]〜[0037]に記載の方法等が挙げられる。前記ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂は、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
前記ノルボルネン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)で測定した値が、好ましくは、20000〜500000の範囲である。前記ノルボルネン系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、120〜170℃の範囲である。前記の樹脂であれば、より一層、優れた熱安定性を有し、より一層、延伸性に優れた位相差フィルムを得ることができる。前記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、JIS K 7121に準じた示差走査熱量(DSC)法により算出される値である。
前記ノルボルネン系ポリマーは、例えば、ノルボルネン系ポリマーを含む市販のフィルム等であってもよい。前記市販のフィルムとしては、例えば、JSR(株)製の商品名「アートンシリーズ(ARTON F、ARTON FX、ARTON D)、(株)オプテス製の商品名「ゼオノアシリーズ(ZEONOR ZF14、ZEONOR ZF15、ZEONOR ZF16)等があげられる。
(セルロース系樹脂)
前記セルロース系樹脂は、特に限定されないが、セルロースの水酸基の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基およびブチル基の少なくとも一つの基で置換された、セルロース有機酸エステルまたはセルロース混合有機酸エステルであることが好ましい。前記セルロース有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等があげられる。前記セルロース混合有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等があげられる。前記セルロース系樹脂は、例えば、特開2001−188128号公報段落[0040]〜[0041]に記載の方法により得ることができる。
前記セルロース系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)で測定した値が、好ましくは、20000〜1000000の範囲である。前記セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、110〜185℃の範囲である。前記ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じたDSC法により求めることができる。前記の樹脂であれば、より一層、優れた熱安定性を有し、より一層、機械的強度に優れた位相差フィルムを得ることができる。
前記セルロース系樹脂は、例えば、セルロース系樹脂を含有する市販の高分子フィルムを用いてもよい。前記市販のフィルムとしては、例えば、富士写真フイルム(株)製の商品名「フジタックシリーズ(ZRF80S、TD80UF、TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製の商品名「KC8UX2M」等が挙げられる。
また、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面に積層される前記非複屈折材料層(例えば、図1の11cまたは図2の21c)の形成材料は、特に限定されない。前記非複屈折材料層の形成材料としては、例えば、一般的な光学フィルムにおいて、ハードコート層形成材料、粘着層形成材料、またはマッチングオイル層形成材料として用いられる形成材料等が挙げられる。前記ハードコート層形成材料としては、例えば、アクリルポリマー架橋層等が挙げられる。前記粘着層形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とする粘着剤組成物等が挙げられる。前記マッチングオイル層形成材料としては、例えば、シリコーン系オイル、ピーナッツ油成分等が挙げられる。
[2.レンズフィルムの製造方法]
本発明のレンズフィルムの製造方法は、特に限定されないが、樹脂フィルムに凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記樹脂フィルムを延伸して屈折率異方性を付与する延伸工程とを含む前記本発明の製造方法で製造することが好ましい。延伸により、前記樹脂フィルムに屈折率異方性を容易に付与することができる。また、延伸によれば、大面積のレンズフィルムを製造しやすく、レンズフィルムの薄型化も実現しやすい。また、例えば、延伸が有するこれらの特性等により、高性能なレンズフィルムを低コストに製造できる。
前記本発明の製造方法によるレンズフィルムの製造は、例えば、以下のようにして行うことができる。
[2−1.樹脂フィルムの形成および樹脂フィルムの凹凸の形成]
まず、前記樹脂フィルムを形成するとともに、前記樹脂フィルムに凹凸を形成する。前記凹凸の形成は、樹脂フィルムの形成と同時に行ってもよいし、樹脂フィルムを形成した後に、前記樹脂フィルムに凹凸を形成してもよい。
樹脂フィルムの形成と同時に凹凸を形成する場合は、例えば、凹凸形成型に前記樹脂フィルムの形成材料を充填することにより、前記樹脂フィルムを形成するとともに前記凹凸を形成してもよい。具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、溶融押出法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、ソルベントキャスティング法等があげられる。また、この工程は、前記凹凸形成型を加熱しながら行うことが好ましい。加熱温度は、前記樹脂フィルムの材質等により異なり、特に限定されないが、例えば100〜300℃である。弾性率の高い樹脂フィルムにおいて所望の凹凸を形成する観点からは、前記加熱温度が低すぎないことが好ましい。また、所望の凹凸を形成した後の冷却時に凹凸形状が崩れないようにする観点からは、前記加熱温度が高すぎないことが好ましい。
また、樹脂フィルムを形成した後に、前記樹脂フィルムに凹凸を形成する場合は、まず前記樹脂フィルムを形成する。形成方法は、前記と同じ方法を適用できる。また、前記樹脂フィルムを形成することに代えて、市販の樹脂フィルムをそのまま用いてもよい。つぎに、前記樹脂フィルムに凹凸を形成する。この凹凸形成方法は、特に限定されないが、例えば、前記樹脂フィルムに凹凸形成型を押し当て、前記凹凸形成型の凹凸を転写することにより、前記樹脂フィルムに凹凸を形成してもよい。この工程は、前記樹脂フィルムを加熱しながら行ってもよい。加熱温度は、前記樹脂フィルムの材質等により異なり、特に限定されないが、PETの場合は、例えば80〜400℃、好ましくは90〜350℃、より好ましくは100〜300℃である。弾性率の高い樹脂フィルムにおいて所望の凹凸を形成する観点からは、前記加熱温度が低すぎないことが好ましい。また、所望の凹凸を形成した後の冷却時に凹凸形状が崩れないようにする観点からは、前記加熱温度が高すぎないことが好ましい。加熱方法も特に限定されないが、例えば、前記凹凸形成型を加熱する方法等があげられる。
なお、前記樹脂フィルムへの凹凸形成に先立ち、または前記凹凸形成工程と同時に、前記レンズフィルムを延伸して後述する屈折率異方性を付与する延伸工程を行ってもよい。
[2−2.延伸工程(面内の屈折率異方性の付与)]
つぎに、前記樹脂フィルムを延伸して屈折率異方性を付与する延伸工程について説明する。前記延伸工程は、前記前記樹脂フィルムに凹凸を形成する前記凹凸工程の後に行ってもよいし、前述のとおり、前記凹凸工程に先立ち、または前記凹凸形成工程と同時に行ってもよい。
前記延伸工程における延伸方法は、特に限定されないが、例えば、フィルムの長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの幅方向を固定した状態で長手方向に一軸延伸する固定端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸、および斜め延伸等があげられる。また、前記延伸方法としては、例えば、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法等の各種ポリマーフィルム延伸法等を用いることができる。さらに、前記延伸方法は、例えば、湿潤式延伸方法および乾式延伸方法のいずれでもよい。また、例えば、延伸後に、必要に応じて収縮処理等を行ってもよいし、行わなくてもよい。
前記延伸工程における延伸倍率も特に限定されないが、前記樹脂フィルムが、正の複屈折性を有する樹脂により形成されている場合は、延伸後のフィルムの遅相軸方向(前記樹脂フィルムの面内屈折率が最大となる方向)に、例えば1.5〜10倍、好ましくは2〜9倍、より好ましくは3〜8倍である。この場合、延伸後のフィルムの進相軸方向(前記樹脂フィルム面内において、前記遅相軸方向と垂直な方向)には、延伸してもしなくてもよいが、延伸する場合の倍率は、例えば1.5〜10倍、好ましくは2〜9倍、より好ましくは3〜8倍である。前記延伸倍率は、所望の屈折率異方性を得る観点からは、低すぎないことが好ましく、樹脂フィルムの破断を防止する観点からは、高すぎないことが好ましい。正の複屈折性を有する樹脂は、特に限定されないが、例えば前述のとおりである。
前記延伸工程は、例えば、前記樹脂フィルムを加熱しながら行ってもよい。加熱温度は、前記樹脂フィルムの材質等(特に、前記樹脂フィルムのガラス転移温度Tg等)により異なり、特に限定されないが、Tgが80℃のPETの場合は、例えば50℃(Tg−30℃)〜180℃(Tg+100℃)、好ましくは60℃(Tg−20℃)〜160℃(Tg+80℃)、より好ましくは70℃(Tg−10℃)〜150℃(Tg+70℃)である。延伸をスムーズに行うためには、前記Tgに対し前記加熱温度が低すぎないことが好ましい。また、延伸配向による屈折率異方性を緩和させずに所望の屈折率異方性を得る観点からは、前記Tgに対し前記加熱温度が高すぎないことが好ましい。加熱方法も特に限定されないが、例えば、加熱炉内で熱風を吹き付ける方法、延伸に用いるロール等を直接加熱する方法等があげられる。
[2−3.その他の工程]
前記本発明の製造方法は、前記凹凸形成工程および前記延伸工程以外の工程を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。例えば、前記本発明の製造方法は、前記凹凸形成工程および前記延伸工程を行った後に、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面に、前記非複屈折材料層(等方性レンズ層)を形成する(積層させる)、非複屈折材料層形成工程を含むことが好ましい。前記非複屈折材料層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、光学フィルムの製造において一般的に用いられる非複屈折材料層の形成方法と同様またはそれに準じても良い。前記非複屈折材料層の形成方法としては、具体的には、例えば、樹脂を含む溶液をスピンコートやコーティング等で湿式塗布し、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素に気泡の発生等なく包埋させてから、熱風乾燥や紫外線照射等により架橋反応を起こし硬化させる方法が挙げられる。
[3.レンズフィルム付き偏光板]
本発明のレンズフィルム付き偏光板は、前述のとおり、立体表示と平面表示とを相互に切り換え可能な画像表示装置に用いる、偏光板にレンズフィルムが積層されたレンズフィルム付き偏光板であって、前記レンズフィルムが、前記本発明のレンズフィルムであることを特徴とする。前記偏光板は、特に限定されず、例えば、偏光子の片面または両面に保護層が積層されたものでもよい。また、例えば、前記本発明のレンズフィルムが積層された側において、前記本発明のレンズフィルムが偏光子の保護層を兼ねていてもよい。
前記偏光子としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの、金属線を微細に並べたワイヤーグリッド型偏光板、屈折率の異なる層を積層した反射型の偏光板、反射防止(円偏光板)OLED等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記保護層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸方向とは、前記保護層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸方向は、前記面内において前記X軸方向に対して垂直な軸方向であり、Z軸方向は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。また、dは、前記保護層の膜厚を示す。

Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である。前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
本発明において、各構成物同士(レンズフィルム、偏光子、透明保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。具体的には、例えば、一般的な粘着剤または接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。また、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率、偏光度等にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤または粘着剤から構成されたテープまたはシート等の層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤(例えば酸等の触媒など)も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
[4.画像表示装置および表示切り替え方法]
つぎに、本発明の画像表示装置および表示切り替え方法について説明する。
[4−1.画像表示装置の構造]
本発明の画像表示装置は、前述のとおり、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置であって、前記本発明のレンズフィルム、画像表示パネル、および、表示切り替え手段を有し、前記表示切り替え手段は、前記レンズフィルムに入射する偏光の振動方向を切り替えることにより、立体表示および平面表示を相互に切り換え可能であることを特徴とする。
図3に、本発明の画像表示装置の構造および立体表示のメカニズムの一例を示す。図示のとおり、この画像表示装置は、偏光板13を含む画像表示パネル14の視認側に、偏光変換パネル12およびレンズフィルム11が、前記順序で積層されて構成されている。偏光板13は、画像表示パネル14の構成要素であり、画像表示パネル14の視認側に配置されている。レンズフィルム11は、図1のレンズフィルム11と同じであり、その視認側の面に、凸部11aと凹部11bとからなる凹凸形状が形成されている。画像表示パネル14内は、右目用画素141および左目用画素142を含み、これらの画素が左右方向に交互に並列されている。右目用画素141および左目用画素142は、それぞれ、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)表示用のサブ画素を含む。図示のとおり、右目用画素141から発せられる光は、レンズフィルム11により屈折させられて視認側から出射され、右目15により視認可能である。左目用画素142から発せられる光は、レンズフィルム11により、右目用画素141から発せられる光とは異なる角度で屈折させられて視認側から出射され、左目16により視認可能である。これにより、立体視が可能である。また、図3の装置において、後述するように、偏光変換パネル12により、画像表示パネル14(偏光板13)から出射された偏光の振動方向を切り替えることで、立体(3D)表示と平面(2D)表示とを切り替えることが可能である。すなわち、偏光変換パネル12は、本発明の画像表示装置における前記「表示切り替え手段」に該当する。
本発明の画像表示装置において、前記レンズフィルムが、前記画像表示パネルの視認側に配置されていることが好ましい。また、例えば、図3に示した画像表示装置のように、前記画像表示パネル14の一部である偏光板13の視認側に、本発明のレンズフィルム11が積層されていることが好ましく、前記画像表示パネル14を構成する画像セル(液晶セル等)の視認側に、偏光板13と本発明のレンズフィルム11とが一体化された本発明のレンズフィルム付き偏光板が積層されていることが好ましい。また、本発明のレンズフィルムが、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面に、前記非複屈折材料層(例えば、図1の11cまたは図2の21c)を有する場合、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)は、画像表示パネルと反対側を向いていても良いし、画像表示パネル側を向いていても良い。すなわち、例えば図3のように、凸部11aを含む複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)が、画像表示パネルと反対側(同図では視認側)を向いており、その凹凸表面(画像表示パネルと反対側、同図では視認側)に前記非複屈折材料層(図3では、図示せず)が積層されていても良い。または、本発明のレンズフィルム11が図3と逆向きであり、すなわち、凸部11aを含む複屈折レンチキュラーレンズ要素(凹凸部分)が、画像表示パネル側(同図では視認側と反対側)を向いており、その凹凸表面(画像表示パネル側、同図では視認側と反対側)に前記非複屈折材料層(図3では、図示せず)が積層されていても良い。
本発明において、画像表示パネルは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display、液晶表示)パネル、OLED(Organic light−Emitting Diode、有機発光ダイオード)パネルまたはPDP(Plasma Display Panel、プラズマディスプレイ)パネル等であってもよい。前記画像表示パネルの構造等は特に限定されず、一般的な画像表示パネルを用いることができる。前記画像表示パネルにおいて、例えば、図3に示した画像表示パネル14のように、右目用画素および左目用画素が画面横方向に並列されていることが好ましい。また、本発明の画像表示装置において、前記本発明の画像表示用レンズフィルムの凹凸形状の並列方向を画面横(左右)方向に、凹凸形状の線状方向を画面縦(上下)方向に、それぞれ一致させて配置することが好ましい。また、本発明の画像表示装置において、例えば、前記凹凸形状の線状方向を、画面縦(上下)方向から若干傾斜させても良い。前記凹凸形状の線状方向を、画面縦(上下)方向から若干傾斜させると、明るさのムラが上下ラインで解消され、均一な明るさが得られやすい場合がある。ただし、前記傾斜角度が大き過ぎると、右斜め方向と左斜め方向との解像度がアンバランスとなり、色にじみの原因となるおそれがある。前記傾斜角度は任意であるが、例えば、約10°以下である。前記傾斜角度は、視認者の場所、および前記画像表示装置と視認者との距離を考慮して適宜設定しても良い。
[4−2.表示切り替え方法(偏光の振動方向の切り替え方法)]
本発明の表示切り替え方法は、前述のとおり、画像表示パネル、偏光板およびレンズフィルムを用いて表示される画像の平面表示および立体表示を相互に切り替える表示切り替え方法であって、前記レンズフィルムは、前記本発明のレンズフィルムであり、前記画像は、前記画像表示パネルから発せられた光が前記偏光板を透過して偏光に変換され、さらに前記偏光が前記レンズフィルムを透過することにより表示される画像であり、前記レンズフィルムに入射する前記偏光の振動方向を切り替えることにより前記平面表示および前記立体表示を相互に切り替えることを特徴とする。
本発明の表示切り替え方法の一例について、図3の画像表示装置を用いて説明する。図4に、図3の画像表示装置における図3の画像表示装置における平面表示および立体表示の相互切り替えのメカニズムの一例を模式的に示す。図4において、説明の便宜のために、レンズフィルム11のみを画像表示装置から分離して斜視図で示しているが、実際の装置の構造は、図3と同一である。図4に示すとおり、レンズフィルム11は、偏光の振動方向が、凹凸形状の並列方向である入射光410が入射した場合は、単一の出射光410aとして出射し、この場合は、平面(2D)表示となる。一方、偏光の振動方向が、凹凸形状の線状方向である入射光420が入射した場合は、複数の異なる方向に屈折させ、出射光420aおよび420bとして出射し、この場合は、立体(3D)表示となる。このように、偏光の振動方向を切り替えることによって、平面表示と立体表示とを容易に切り換えることができる。
本発明の表示切り替え方法においては、例えば、偏光変換パネル12により、画像表示パネル14(偏光板13)から出射された偏光の振動方向を切り替えることで、立体(3D)表示と平面(2D)表示とを切り替えることが可能である。
[4−3.画像表示装置における他の構成要素]
本発明の画像表示装置は、前記本発明のレンズフィルムまたは前記本発明のレンズフィルム付き偏光板、および画像表示パネル以外の他の構成要素を含んでいてもよい。前記他の構成要素としては、例えば、前記本発明のレンズフィルムまたは前記本発明のレンズフィルム付き偏光板以外の他の光学層があげられる。前記他の光学層としては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等の、従来公知の各種光学層があげられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。例えば、前記本発明のレンズフィルム付き偏光板に、前記他の光学層を積層させて用いてもよい。以下、前記他の光学層または前記他の光学層を積層させた偏光板の例について説明する。
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
前記反射型偏光板は、通常、画像表示パネル(例えば、液晶セル等)の裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
また、偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
前記半透過型偏光板は、通常、画像表示パネルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
また、例えば、本発明のレンズフィルム付き偏光板に、前記他の光学層として、さらに輝度向上フィルムが積層されていてもよい。前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
本発明において、二層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、画像表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できる。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
[実施例]
本実施例では、以下のようにしてレンズフィルム(異方性レンチキュラーフィルム)を製造し、光学特性を評価した。
まず、TP(テレフタル酸)、IP(イソプレン)、EG(エチレングリコール)、およびDEG(ジエチレングリコール)を、TP:IP:EG:DEG:=43:7:48:2(mol%)で共重合させた共重合PET樹脂(Tg=75℃)を用いて、溶融押出法で未延伸凹凸フィルムを製造した。すなわち、前記共重合PET樹脂を280℃で溶融させ、ダイから押し出し、凹凸ロールとタッチロールとの間で圧力をかけて成形し、未延伸凹凸フィルムとした。なお、前記凹凸ロール表面には、ピッチ400μm、高さ125μmの凹凸が付与されている。また、前記成形は、前記凹凸ロールおよび前記タッチロール内部にそれぞれ水を流し、前記凹凸ロールおよび前記タッチロールの表面温度を約40℃に冷却しながら行った。製造された前記未延伸凹凸フィルムは、厚さ(凸部の高さを含む)が250μmであった。また、前記凹凸フィルムは、図1に示すように、略半円柱形(かまぼこ形状)の線状の凸部が複数並列し、互いに隣り合う凸部どうしの接する部分が凹部を形成する凹凸形状が、その片面に形成されていた。
つぎに、前記未延伸凹凸フィルムを12cm×12cmにカットし、ブルックナー社製テーブル式二軸延伸機(型番KAROIV)を用いて、予熱75℃×120s、延伸温度75℃、ひずみ速度10%/sで固定端縦一軸延伸した。このとき、前記未延伸フィルムの凹凸の線状方向と、延伸方向を一致させ、前記未延伸凹凸フィルムを、前記凹凸形状の並列方向の幅が変化しないように固定しながら前記凹凸形状の線状方向に延伸した。延伸倍率は、4倍とした。このようにして、レンチキュラーフィルム(前記未延伸フィルム)の延伸を行った結果、レンズピッチは400μmを維持しつつ、レンズ高さ(前記凹凸形状の凸部の高さ)が約40μmまで減少した。以上により、本実施例のレンズフィルム(レンチキュラーレンズ)を製造した。本実施例のレンズフィルム(レンチキュラーレンズ)は、図1に模式的に示したように、線状の凸部11aと線状の凹部11bとが並列する凹凸が複数繰り返して形成されていた。凸部11aは、図示のように略半円柱形(かまぼこ形状)であり、互いに隣り合う凸部11aどうしの接する部分が凹部11bを形成していた。なお、本実施例のレンズフィルムにおいて、前記「レンズピッチ」は、凸部11aの頂点から隣接する凸部11aの頂点までの間隔をいう。また、本実施例の場合、前記レンズピッチは、凸部11aの幅、すなわち、凹部11bの底部から隣接する凹部11bの底部までの間隔に等しい。後述する比較例および参考例における「レンズピッチ」も、本実施例と同様である。
さらに、本実施例のレンズフィルムに対し、下記(1)輝度測定およびクロストーク値(3D表示)評価、(2)屈折率評価(面内屈折率差Δn(=異常光屈折率n−常光屈折率n)の測定)、ならびに(3)光学フィルム表面形状(表面の凹凸形状)の測定、を行った。
(1)輝度測定およびクロストーク値(3D表示)評価
本実施例のレンズフィルムを用い、以下のようにして画像表示装置を製造し、輝度を測定するとともに、3D視認性の特性としてのクロストーク値評価を行った。
すなわち、まず、3D表示(立体表示)と2D表示(平面表示)を相互に切り替え可能な液晶ディスプレイ(ソニー株式会社製、商品名VAIO_L24149CJB)から、既設のレンズフィルム(液相層を含むレンチキュラーフィルム)を取り外した。つぎに、前記既設のレンズフィルムに代えて本実施例のレンズフィルムを配置し、画像表示装置を製造した。図5の斜視図に、前記画像表示装置の構造を模式的に示す。すなわち、まず、前記液晶ディスプレイは、画像表示パネル14(偏光板13)の視認側に、偏光変換パネル12が積層されている。そして、偏光変換パネル12の視認側に、図示のとおり、前記既設のレンズフィルムに代えて本実施例のレンズフィルム11を配置し、本実施例の画像表示装置とした。図示のとおり、本実施例のレンズフィルム11は、その凹凸形状の並列方向(凹凸形状の線状方向に対し垂直な方向)が画面の左右方向と同方向となるように配置した。なお、図5では、見やすさを考慮して、レンズフィルム11のみを分離して描いているが、実際には、レンズフィルム11が偏光変換パネル12に接触するように重ねた。なお、前記既設のレンズフィルムは、モアレ対策として、画素の並んでいる配列方向に対してレンズフィルムの稜線方向(線状方向)を数度傾けて付設してあった。このため、本実施例のレンズフィルム11も、前記既設のレンズフィルムと同じ角度だけ傾けて付設をし評価を行った。また、本実施例のレンズフィルム11に対しては、図4の点線部に示すように、凹凸形状を包埋する目的でマッチングオイルを使用した。具体的には、レンズフィルム11の凹凸形状の並列方向の屈折率(常光屈折率n)と同じ屈折率のマッチングオイルをスピンコート法により湿式塗布することで、包埋層を簡易的に付与した。
つぎに、前記液晶ディスプレイにおける画像表示パネル14の画素を、前記レンズフィルム凹凸形状の並列方向(すなわち、画面の左右方向)には、白画素1列と黒画素5列が交互に並ぶように表示させた。このとき、前記凹凸形状の並列方向に対し垂直な方向(すなわち、画面の上下方向)には、前記白画素および前記黒画素が連続するように表示させた。図6に、前記画素と前記レンズフィルム凹凸形状との関係を、模式的に示す。図示のとおり、レンズフィルムの凸部11a1つ分の幅に、「W」で示す白画素1411の1列と、「B」で示す黒画素1412の5列とが含まれており、これらが一組となって右目用画素141または左目用画素142を形成している。そして、前述のとおり、前記レンズフィルム凹凸形状の並列方向(すなわち、画面の左右方向)には、白画素1411の1列と黒画素1412の5列とが交互に並んでいる。さらに、前記凹凸形状の並列方向に対し垂直な方向(すなわち、画面の上下方向)には、前述のとおり、白画素1411および黒画素1412が連続している。
そして、前記液晶ディスプレイの液晶変換セル(偏光変換パネル)12が3D表示モードになっている状態で、コノスコープ(AUTRONIC社製、商品名CONOSCOPE80)により輝度を測定した。前記輝度測定は、極角0度(ディスプレイ正面)〜80度および方位角0度〜360度の範囲について行った。
クロストーク値は、方位角90度(前記液晶ディスプレイの画面右方向)から、極角0度±80度(すなわち、ディスプレイ正面から水平方向に±80度)の範囲で測定した輝度に基づき、前記式(4)に従って算出した。なお、以下に、前記式(4)を再掲する。前述のとおり、Imaxは、極角0度±50度(すなわち、ディスプレイ正面から水平方向に±50度)の範囲での最大輝度である。また、Iminは、極角0度±50度(すなわち、ディスプレイ正面から水平方向に±50度)の範囲での最小輝度である。

クロストーク値=Imin/Imax×100(%) (4)
(2)屈折率評価(面内屈折率差Δnの測定)
Axometrics社製ポラリメータAxoscan(商品名)を使用して本実施例の光学フィルムの面内位相差(異常光屈折率n−常光屈折率n)を測定し、その面内位相差から面内屈折率差Δnを算出した。前記面内位相差は、光学フィルムの遅層軸方向と進相軸方向の屈折率差(すなわち面内屈折率差Δn)に、当該光学フィルムの厚みを掛け算した積で表される。測定方法として、より具体的には、Multi Order Retardance Measurementソフトを用いて波長600〜800nm,ステップ5nm、Scan to Average10回で測定を行い,波長590nmの面内位相差値Re(nm)を算出した。さらに、前記各光学フィルムの厚み(凸部の高さを含む)をダイヤルゲージで測定し、この厚みd(μm)と前記面内位相差値Re(nm)とから、下記数式(I)を用いて面内屈折率差(Δn)を算出した。

Δn=Re(nm)÷(d(μm)×10) (I)
(3)光学フィルム表面形状(表面の凹凸形状)の測定
本実施例の各光学フィルムの表面形状(表面の凹凸形状)を、触針式の微細形状測定器(小坂研究所製、商品名サーフコーダーET4000、送り速度0.1mm/s)で測定した。
[比較例]
実施例で用いた未延伸凹凸フィルムをそのまま本比較例のレンズフィルム(レンチキュラーレンズ)として用いた。なお、本比較例のレンズフィルム(レンチキュラーレンズ)製造に用いた前記凹凸ロール表面には、実施例で説明したとおり、ピッチ400μm、高さ125μmの凹凸が付与されていた。また、本比較例のレンズフィルム(未延伸凹凸フィルム)は、実施例で説明したとおり、厚さ(凸部の高さを含む)が250μmであった。
本比較例のレンズフィルムに対し、実施例と同様にして(1)輝度測定およびクロストーク値(3D表示)評価、(2)屈折率評価(面内屈折率差Δnの測定)、ならびに(3)光学フィルム表面形状(表面の凹凸形状)の測定、を行った。なお、本発明のレンズフィルム(未延伸凹凸フィルム)のレンズピッチは、実施例と同じく、400μmであった。
[参考例]
実施例および比較例で用いた前記液晶ディスプレイ(ソニー株式会社製、商品名VAIO_L24149CJB)から既設のレンズフィルム(液相層を含むレンチキュラーフィルム)を取り外さずに、そのまま画像表示装置として用いた。この画像表示装置および前記既設のレンズフィルム(液相層を含む)を用いて、実施例および比較例と同様に(1)輝度測定およびクロストーク値(3D表示)評価、(2)屈折率評価(面内屈折率差Δnの測定)、ならびに(3)光学フィルム表面形状(表面の凹凸形状)の測定、を行った。なお、前記既設のレンズフィルム(液相層を含む)のレンズピッチは、実施例および比較例と同じく、400μmであった。
[評価結果]
以下に、実施例、比較例および参考例のレンズフィルムに対する(1)輝度測定およびクロストーク値(3D表示)評価、(2)屈折率評価(面内屈折率差Δnの測定)、ならびに(3)光学フィルム表面形状(表面の凹凸形状)の測定、の結果を示す。
下記表1に、実施例、比較例および参考例の各レンズフィルムのレンズピッチ、凸部高さ、面内屈折率差(Δn)、およびクロストーク値(%)を示す。表1に示すとおり、固定端縦一軸延伸を用いた実施例では、延伸の前後でフィルム幅およびレンズピッチが変化せずに面内屈折率差(Δn)を発現できた。また、これにより参考例の既設品と同等のクロストーク値を発現できる点を確認した。一方、未延伸のため面内屈折率差を有しない(Δnが0である)比較例のレンズフィルムは、クロストーク値が高く3D表示が綺麗に見えない点を確認した。
さらに、図7に、実施例、比較例および参考例の各レンズフィルムの輝度プロファイルを示す。図示のとおり、実施例と参考例のレンズフィルムは、輝度ピーク幅が狭いことから、良好な3D画像表示が得られたことがわかる。これに対し、比較例のレンズフィルムは、輝度ピーク幅が広いために左右の画像どうしで滲みが発生し、良好な3D画像表示が得られなかった。また、参考例のレンズフィルム(既製品)を用いれば、3D表示と2D表示を相互に切り替えることが可能であるが、実施例のレンズフィルムでも、同様に3D表示と2D表示を相互に切り替え可能であることを確認した。
なお、参考例のレンズフィルム(既製品)は、重合性液晶を配向させて面内屈折率差を発現させており、表1および図7に示したとおり性能は良いが、非常にコストが高く、かつ、生産効率の問題がある。これに対し、実施例のレンズフィルムは、非液晶性有機材料を延伸するのみで、きわめて低コストに効率よく製造可能であった。しかも、実施例のレンズフィルムは、延伸により製造するため、レンズピッチおよび面内屈折率差を最適な範囲に制御することが容易であった。かつ、実施例のレンズフィルムによれば、前述のとおり、参考例のレンズフィルムと同等の性能が得られた。このように、本実施例では、低コストで生産性に優れ、しかも3D表示性能の代表的な指標であるクロストーク値が低い複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置を得ることができた。
以上、説明したとおり、本発明によれば、低コストで生産性に優れ、しかも3D表示性能の代表的な指標であるクロストーク値が低い複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置を提供することができる。
11、21 レンズフィルム
11a、21a 凸部
11b、21b 凹部
11c、21c 非複屈折材料層
12 偏光変換パネル
13 偏光板
14 画像表示パネル
141 右目用画素
142 左目用画素
15 右目
16 左目
410、420 入射光
410a、420a、420b 出射光

Claims (12)

  1. 複屈折レンチキュラーレンズフィルムの少なくとも一方の面に、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する複屈折レンチキュラーレンズ要素を有し、かつ、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置に用いられる複屈折レンチキュラーレンズフィルムであって、
    前記複屈折レンチキュラーレンズ要素が、非液晶性有機材料により形成されることを特徴とする複屈折レンチキュラーレンズフィルム。
  2. 樹脂フィルムの延伸工程を含む製造方法により製造され、
    前記樹脂フィルムは、正の固有複屈折を有する樹脂により形成され、かつ、少なくとも一方の面に、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する凹凸が、それ以外の部分と一体に形成された樹脂フィルムであり、
    前記延伸工程において、前記樹脂フィルムを、少なくとも前記凹凸の線状方向に延伸して製造された請求項1記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルム。
  3. 前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の線状方向における屈折率(異常光屈折率n)が、前記複屈折レンチキュラーレンズフィルム面内方向において前記線状方向に垂直な方向における屈折率(常光屈折率n)よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルム。
  4. 前記異常光屈折率nと前記常光屈折率nとの差が0.05〜0.20の範囲である請求項3記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルム。
  5. 前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の前記凹凸表面に、非複屈折材料層が積層され、
    前記非複屈折材料層の屈折率は、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の常光屈折率nとほぼ等しく、
    前記常光屈折率nは、前記複屈折レンチキュラーレンズ要素の、前記複屈折レンチキュラーレンズフィルム面内方向において前記線状方向に垂直な方向の屈折率である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルム。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法であって、
    樹脂フィルムに、線状の凸部と線状の凹部とが交互に並列する凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸が形成された樹脂フィルムを延伸して屈折率異方性を付与する延伸工程とを含むことを特徴とする製造方法。
  7. 前記凹凸形成工程において、凹凸形成型に前記樹脂フィルムの形成材料を充填することにより、前記樹脂フィルムを形成するとともに前記凹凸を形成する請求項6記載の製造方法。
  8. 前記凹凸形成工程において、前記樹脂フィルムに凹凸形成型を押し当て、前記凹凸形成型の凹凸を転写することにより、前記樹脂フィルムに凹凸を形成する請求項6記載の製造方法。
  9. 偏光板と、前記偏光板に積層された複屈折レンチキュラーレンズフィルムとを有し、立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置に用いられる複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板であって、
    前記複屈折レンチキュラーレンズフィルムが、請求項1から5のいずれか一項に記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルムであることを特徴とする複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板。
  10. 立体表示および平面表示を相互に切り替え可能な画像表示装置であって、
    請求項1から5のいずれか一項に記載の複屈折レンチキュラーレンズフィルム、画像表示パネル、および、表示切り替え手段を有し、
    前記表示切り替え手段は、前記画像表示パネルから出射されて前記複屈折レンチキュラーレンズフィルムに入射する偏光の振動方向を切り替えることにより、立体表示および平面表示を相互に切り換え可能であることを特徴とする画像表示装置。
  11. 前記複屈折レンチキュラーレンズフィルムが、前記画像表示パネルの視認側に配置されている請求項10記載の画像表示装置。
  12. 液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、またはプラズマディスプレイ表示装置である請求項10または11記載の画像表示装置。
JP2014123838A 2013-06-14 2014-06-16 複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置 Pending JP2015018231A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014123838A JP2015018231A (ja) 2013-06-14 2014-06-16 複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013126175 2013-06-14
JP2013126175 2013-06-14
JP2014123838A JP2015018231A (ja) 2013-06-14 2014-06-16 複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015018231A true JP2015018231A (ja) 2015-01-29

Family

ID=52439232

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014123838A Pending JP2015018231A (ja) 2013-06-14 2014-06-16 複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015018231A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108356489A (zh) * 2018-03-13 2018-08-03 浙江易锋机械有限公司 一种涡轮压缩机str动盘锻件加工方法
CN108436391A (zh) * 2018-03-13 2018-08-24 浙江易锋机械有限公司 一种涡轮压缩机str静盘锻件加工方法
WO2021110028A1 (zh) * 2019-12-05 2021-06-10 北京芯海视界三维科技有限公司 柱镜光学复合膜及其制备方法、3d显示器
US11360354B2 (en) * 2018-10-30 2022-06-14 HKC Corporation Limited Optical composite film, display panel and display device

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108356489A (zh) * 2018-03-13 2018-08-03 浙江易锋机械有限公司 一种涡轮压缩机str动盘锻件加工方法
CN108436391A (zh) * 2018-03-13 2018-08-24 浙江易锋机械有限公司 一种涡轮压缩机str静盘锻件加工方法
CN108356489B (zh) * 2018-03-13 2020-02-21 浙江易锋机械有限公司 一种涡轮压缩机str动盘锻件加工方法
CN108436391B (zh) * 2018-03-13 2020-02-21 浙江易锋机械有限公司 一种涡轮压缩机str静盘锻件加工方法
US11360354B2 (en) * 2018-10-30 2022-06-14 HKC Corporation Limited Optical composite film, display panel and display device
WO2021110028A1 (zh) * 2019-12-05 2021-06-10 北京芯海视界三维科技有限公司 柱镜光学复合膜及其制备方法、3d显示器

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100814307B1 (ko) 액정 표시 장치
JP3851918B2 (ja) 液晶パネルおよび液晶表示装置
TWI401478B (zh) Liquid crystal display device
JP5273775B2 (ja) 積層光学フィルム、積層光学フィルムを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置
TWI670528B (zh) 偏光板、偏光板之製造方法、影像顯示裝置、影像顯示裝置之製造方法及偏光板之透光率改善方法
KR100904124B1 (ko) 액정 패널 및 액정 표시 장치
JP7056152B2 (ja) 液晶表示装置
JP2009192611A (ja) 積層光学フィルム、積層光学フィルムを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置
WO2014002929A1 (ja) 偏光板および有機elパネル
JP2015018231A (ja) 複屈折レンチキュラーレンズフィルム、複屈折レンチキュラーレンズフィルムの製造方法、複屈折レンチキュラーレンズフィルム付き偏光板、および画像表示装置
JP2004004474A (ja) 光学補償偏光板及び表示装置
JP5271476B2 (ja) 液晶パネルおよび液晶表示装置
JP3917089B2 (ja) 傾斜光学補償フィルムの製造方法
JP3929046B2 (ja) 複屈折性フィルムの製造方法、複屈折フィルム、それを用いた光学補償層付き偏光板、垂直配向モード液晶表示装置用液晶パネル、および垂直配向モード液晶表示装置
JP2009163210A (ja) 光学フィルム、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置
US20200341316A1 (en) Polarizing plate and display device
JP3746050B2 (ja) 光学補償フィルム、それを用いた光学補償層付偏光板、および、それらを用いた液晶表示装置
KR102574840B1 (ko) 액정 표시 장치
JP2008171007A (ja) 複屈折フィルムの製造方法
JP5084029B2 (ja) 積層光学フィルム、積層光学フィルムを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置
JP2018036585A (ja) 光学部材
JP2015228001A (ja) 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、バックライトユニットおよび画像表示装置
JP2015228000A (ja) 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、バックライトユニット、画像表示装置、未延伸凹凸フィルムの製造方法および未延伸凹凸フィルム
WO2023176692A1 (ja) 表示システム、表示方法、表示体および表示体の製造方法
WO2023176691A1 (ja) 表示システム、表示方法、表示体および表示体の製造方法