JP2015017003A - セシウムとストロンチウムの両方の吸着能力に優れた人工ゼオライトとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
因みに、本願で使用されている「セシウム」及び「ストロンチウム」という用語には、安定同位体だけでなく、それらの放射性同位体も含まれる。
特許文献1には、放射性セシウムやストロンチウムを除去するために、モルデナイトからなる天然ゼオライトそのものを利用した方法が開示されている。この方法では、天然ゼオライトを微細化し、更にスラリー状態で利用している。
特許文献2には、有害有機物除去用の合成ゼオライトを合成する方法が開示されている。この方法では、脱アルミニウム処理を施して疎水性ハイシリカゼオライトという有害有機物除去用の合成ゼオライトを合成している。
特許文献3には、有害物質等の除去用の人工ゼオライトの製造方法が開示されている。この方法では、原料となる石炭灰としてフライアッシュを用いている。
例えば、プルシアンブルーは、吸着能力は高いが、価格や青酸ガス(シアン化水素)の発生という危険性等に課題があると一般的に言われている。
活性炭は、大部分が炭素質の炭であることから、原材料にもよるが、価格が比較的安価で大量な供給が可能である。しかしながら、活性炭は、表面が非極性の性質を持つため、無機イオンの吸着には不向きであると一般的に言われており、そのため、例えば、海水や地下水等に含まれる放射性元素の除染等を考えた場合、その吸着性能は不十分である。
また、天然ゼオライトは、価格が安価で大量な供給が可能であるが、例えば、海水や地下水等に含まれる放射性元素の除染等を考えた場合、吸着性能が不十分であり、特にストロンチウムに対する吸着能力が極めて低い。他方、海水中に含まれるストロンチウムは、除染元素の吸着を阻害する元素(以下、「吸着阻害元素」と称する)になる。また、原子力発電所から海水に放出されたストロンチウムには、Sr90のような有害な放射性物質も含まれている。そのため、ストロンチウムに対する高い吸着能力は極めて重要な課題である。また、天然ゼオライトを用いて放射性セシウムを除去する場合、大量の天然ゼオライトを用いることにより、放射性セシウムの吸着量の増加を図ることも可能であるが、大量の天然ゼオライトを用いることは、吸着後の廃棄物の減容化という観点から有効なことではない。特許文献1の方法は、天然ゼオライトを用いて放射性セシウムやストロンチウムを除去することを目的とするものであるが、天然ゼオライトを微細化し、更にスラリー状態で利用しなければならないため、利用できる範囲が限られるという課題がある。また、適用対象も、その実施例に記載されている通り、セシウム濃度が20ppm以下の比較的低濃度の原水になってしまう。
合成ゼオライトは、一般的に、吸着能力は高いが、価格および供給量に課題がある。また、特許文献2に開示されている合成ゼオライトの製法は、有害有機物を除去するために用いる疎水性の高い合成ゼオライトの製造を対象としており、陽イオン交換量の増加や親水性の向上を目的とするものではない。そのため、この合成ゼオライトは、例えば、放射性元素を含む海水や地下水等の汚染水に含まれているセシウムやストロンチウムを除去する場合には、適したものとはいえない。
人工ゼオライトは、出発原料として石炭灰のような従来ゴミと考えられてきた安価で大量に供給できる物質を用いて合成される点で、合成ゼオライトと区別される。人工ゼオライトは、一般的に、費用面、機能面、生産面等の点で、天然ゼオライトと合成ゼオライトの中間に位置するものと考えられる。しかしながら、従来の人工ゼオライトでは、例えば、海水や地下水等に含まれる放射性元素の除染等を考えた場合、その吸着能力は不十分である。また、特許文献3に開示されている人工ゼオライトの製法は、出発原料として石炭焼却灰フライアッシュを使用するものであるが、オートクレーブという高耐圧性の容器を使用して水熱合成を行う必要があるため、簡素な製造設備で製造することは困難である。
また、天然ゼオライトの表面改質により吸着能力を向上させる技術は数多く研究されているが、出発原料に天然ゼオライトを用いた人工ゼオライトやその利用については知らない。
このような現状に鑑みて、本発明の課題は、費用面、機能面、生産面等のバランスに優れた吸着剤(特に除染用吸着剤)とその製造方法、並びにその利用(例えば、加工品や装置等への利用)を提供することである。特に、放射性元素や鉛等の有害性のある物質の吸着に優れた吸着剤とその製造方法、並びにその利用を提供することである。
特に、海水や地下水等の汚染水等に含まれるセシウムとストロンチウムの両方の元素に対する吸着能力に優れた吸着剤とその製造方法、並びにその利用を低コストで安定して大量に提供することである。また、従来の天然ゼオライトや合成ゼオライトを用いる吸着剤と比較して、放射性廃棄物の減容化が図れる吸着剤を提供することである。そして、放射性セシウムやストロンチウムの極めて高い吸着性能が要求される水質改善、土壌改善などの除染用吸着剤として利用した場合に十分な吸着能力を発現する吸着剤およびその吸着剤を低コストでかつ安定して大量に製造できる製造方法を提供することである。
更には、除染のような技術分野のみならず、様々な技術分野での利用や応用が期待できるような新規な吸着剤を提供することである。
本発明は、陽イオン交換量の増加や親水性向上を目的としてアルミニウムをシリカと置換することによってローシリカゼオライトを合成し、このようにして合成された所定のSi/Al組成比を有する人工ゼオライトを用いて高効率な汚染水の処理を提供するものである。
(1) 出発原料として天然ゼオライトを用いる、Si/Al組成比が1.5以上2.5以下の人工ゼオライト。
(2) 前記Si/Al組成比が1.7以上2.3以下である、(1)に記載の人工ゼオライト。
(3) 前記天然ゼオライトが、モルデナイト又はクリノプチロライトである、(1)又は(2)に記載の人工ゼオライト。
(4) (1)〜(3)のいずれか一に記載の人工ゼオライトを含んでなる吸着剤。
(5) (1)〜(3)のいずれか一に記載の人工ゼオライトから作られる加工品。
(6) (4)に記載の吸着剤又は(5)に記載の加工品を含んでなる吸着設備。
(7) (1)〜(3)のいずれか一に記載の人工ゼオライトにセシウム及び/又はストロンチウムを吸着させて前記セシウム及び/又はストロンチウムを除染する方法。
(8) (1)〜(3)のいずれか一に記載の人工ゼオライトに鉛及び/又はアンモニアガスを吸着させて前記鉛及び/又はアンモニアガスを除染する方法。
(9) (1)〜(3)のいずれか一に記載の人工ゼオライトに放射性元素を吸着させて前記人工ゼオライトを除染する方法。
(10) Si/Al組成比を調整するために用いられるアルミニウム源を含むアルカリ性水溶液中で、出発原料である天然ゼオライトを前記アルミニウム源からのアルミニウムイオンと常圧下で反応させることによって、(1)〜(3)のいずれか一に記載の人工ゼオライトを製造する方法。
また、一般の人工ゼオライトでは、出発原料としてフライアッシュ等を用いるため、出発原料として使用されたフライアッシュ等の表層部をゼオライト化したゼオライト部とそれ以外の非ゼオライト部(例えば、未燃焼炭素やゼオライトに至るまでの中間生成物等)の混合物として共存することになる。しかしながら、本発明では、出発原料として天然ゼオライトを用いるため、非ゼオライト部が存在しないという大きな利点がある。そのため、本発明の所定のSi/Al組成比を有する人工ゼオライトでは、セシウムの吸着性能が比較的高いという天然ゼオライトの特性を活かすことが可能になる。一方で、本発明のゼオライトは所定のSi/Al組成比を有する人工ゼオライトなので、天然ゼオライトではストロンチウムに対する吸着性能が極めて低いという短所も改良可能である。
このように、本発明によれば、セシウムとストロンチウムの両方の元素に対して極めて高い吸着能力を持つ吸着剤を低コストかつ安定して大量に提供することが可能になる。そのため、例えば、従来の天然ゼオライトや合成ゼオライトを用いる吸着剤に比べて、海水や地下水等の汚染水に含まれる放射性セシウムとストロンチウムの低コストでの除染や放射性セシウムとストロンチウムを含む放射性廃棄物の減容化が可能になる。
本発明によれば、吸着阻害物質であるストロンチウムを多く含んだ海水や地下水等の汚染水からも放射性元素を効率的に除染することが可能になる。特に、本発明によれば、放射性セシウムとストロンチウムの両方に対する高い吸着能力を有する人工ゼオライトを吸着剤として用いることにより、吸着阻害物質であるストロンチウムを多く含んだ海水や地下水等の汚染水からも放射性セシウムの効率的な吸着が実現可能な吸着剤を提供できる。
本発明によれば、セシウム濃度が1ppmから100ppmという広い濃度範囲の原水に対しても高い吸着性能を発現することが可能である。
本発明によれば、セシウムと化学的性質が類似すると考えられているアルカリ金属や、ストロンチウムと化学的性質が類似すると考えられているアルカリ土類金属の放射性同位体元素の吸着への応用も可能であると考えられる。
本発明によれば、放射性元素に限らず、有害性のある元素の鉛に対する吸着能力やアンモニアガスに対する吸着能力にも優れる吸着剤を提供することが可能である。
本発明によれば、安価で大量の供給が可能な天然ゼオライトが利用できるだけでなく、天然ゼオライトを出発原料とするため合成も容易であり、また、オートクレーブ等の圧力容器を使用しない簡素な製造設備での製造が可能になる。そのため、費用面、機能面、生産面等のバランスに優れた吸着剤及びその利用(例えば、加工品や装置等への利用)を提供することが可能になる。そして、本発明によれば、新規な吸着剤として、除染のような技術分野のみならず、様々な技術分野での利用や応用も期待できる。
本発明の人工ゼオライトの形状は、特に限定されることはなく、例えば、粉状や粒状でもよい。
本発明の人工ゼオライトでは、3価のAlの比率を向上させることにより、イオン交換可能な金属陽イオン量の増加を図るとともに海水等の液体からの吸着という観点から親水性の向上も図っている。また、本発明の人工ゼオライトにおいては、セシウムのみならず、ストロンチウムに対する吸着性能の向上を目的の一つとしている。セシウムとストロンチウムの両方の元素の除去等の観点から、本発明の人工ゼオライトのSi/Alの組成比は、1.5以上2.5以下が好ましく、1.7以上2.3以下がより好ましい。
但し、本発明の人工ゼオライトにおけるSi/Alの組成比が1.5未満や2.5超の範囲であっても、天然ゼオライトに比べれば、ストロンチウムの吸着性能を向上させることが可能である。
ここで、アルミニウム源とは、アルミニウムイオンの供給源であって、本発明の人工ゼオライトを合成するにあたり、そのSi/Alの組成比を調整するために用いられる物質のことである。添加するアルミニウム源の形態は、本発明の目的を達成できる限りにおいて、酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩等のいずれであってもよい。添加するアルミニウム源は、置換後のSi/Alが、好ましくは1.5以上2.5以下、より好ましくは1.7以上2.3以下の組成比になるように調整する。
苛性ソーダ溶液中に水酸化アルミニウムを天然ゼオライトのモルデナイトに添加したときにSi/Alの組成比が化学式から2/1となるように添加し、80℃で1時間撹拌して溶解させた。この溶液に天然ゼオライトのモルデナイト(福島県産の天然鉱物)を添加して4時間撹拌した。この懸濁液をpH12.5以下までろ過による水洗を行い、120℃で乾燥してハンマーミルで粉状に粉砕し、人工ゼオライトを得た。
実施例1の手法でSi/Alの組成比が化学式から1.5/1となるように調整した人工ゼオライトを得た。
実施例1の手法でSi/Alの組成比が化学式から2.5/1となるように調整した人工ゼオライトを得た。
天然ゼオライトにクリノプチロライト(島根県産の天然鉱物)を使用したこと以外は、実施例1と同じ手法で人工ゼオライトを得た。この際、得られた人工ゼオライトの組成比は化学式から2/1となるように調整した。
実施例1の手法でSi/Alの組成比が化学式から1/1となるように調整した人工ゼオライトを得た。
実施例1の手法でSi/Alの組成比が化学式から3/1となるように調整した人工ゼオライトを得た。
天然ゼオライトには、モルデナイト(福島県産の天然鉱物)をそのまま用いた。これは、実施例1〜3の人工ゼオライトの合成時の出発原料と同じものである。
天然ゼオライトには、クリノプチロライト(島根県産の天然鉱物)をそのまま用いた。これは、実施例4の人工ゼオライトの合成時の出発原料と同じものである。
市販の合成モルデナイトとして、和光純薬合成モルデナイト(合成ゼオライト、HS−642、粉末、ナトリウム モルデナイト)を用いた。
Sr標準液(1000ppm、和光純薬)を用いて、100ppmの溶液を作成し、ビーカーに上記実施例、参考例及び比較例に記載の各種ゼオライトを0.10g秤量し、ストロンチウム100ppm溶液を100ml加えた。撹拌機を用いて10分間撹拌した後、10分間放置した。これらの溶液を、5Bの濾紙を用いて濾過した。濾液をICP−AES(島津製作所製ICPS7500)で測定を行った。処理前の溶液を基準として除去率を以下の計算式で評価し、それをその吸着能(吸着率)とした。
計算式
除去率(%)=吸着能(%)=(処理前溶液のSr濃度<ppm>−濾液のSr濃度<ppm>)/処理前溶液のSr濃度<ppm>×100
その結果は表1に示す。
また、実施例1と比較例1に関しては、各種ゼオライトを0.50g及び1.00g秤量したものも作製した。そして、ストロンチウム100ppm溶液を100ml加えた時のそれらの吸着能も評価した。その結果は表2に示す。
また、Si/Al組成比が、分析値で1.4/1、2.6/1、4.1/1になるように調整した以外は、実施例1と同様にして人工ゼオライトを作製し、作製した各人工ゼオライトについても、ストロンチウム濃度が10ppmの原水に対するSr吸着能試験を行った。その結果は表4に示す。
Cs標準液(1000ppm)を用いて、ストロンチウムと同様の溶液を作製した。吸着操作はストロンチウムと同じやり方で行った。但し、分析機器は、ICP-MS(アジレント・テクノロジー・インターナショナル株式会社製 Agilent 7700x)を使用した。その結果は表1及び2に示す。
また、Si/Al組成比が、分析値で1.4/1、2.6/1、4.1/1になるように調整した以外は、実施例1と同様にして人工ゼオライトを作製し、作製した各人工ゼオライトについても、セシウム濃度が1ppmの原水に対するCs吸着能試験を行った。その結果は表3に示す。
Pb標準液(1000ppm)を用いて、ストロンチウムやセシウムの吸着能評価と同じような操作を行って、10ppmの溶液を作成した。吸着操作および分析機器はストロンチウムと同じやり方で行った。
初期アンモニア濃度1000ppmのガスを調整した。テドラーバッグ中に1gの吸着剤を入れ、濃度調整されたアンモニアガスを3L(3×10−3m3)充填した。時間経過毎にガス検知管を用いて濃度を測定し、吸着能力を評価した。
上記実施例、参考例、及び比較例に記載の各種ゼオライトをRIGAKU製粉末X線回折装置(RINT 2000)で評価して、結晶構造を確認した。
その一例として、図1には、実施例1で得られた人工ゼオライトとその出発原料である天然ゼオライト(比較例1)の粉末X線回折パターンが示されている。
上記実施例、参考例及び比較例に記載の各種ゼオライトを日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−5600で組織観察を実施した。
その一例として、図2には、実施例1で得られた人工ゼオライトとその出発原料である天然ゼオライト(比較例1)の電子顕微鏡写真が示される。
上記実施例、参考例、及び比較例に記載の各種ゼオライトを、RIGAKU製走査型蛍光X線分析装置(ZSX)を用いて測定を実施した。
表中のSi/Al(化学式)は、吸着剤のゼオライトの化学式から理論的に算出したSi/Al比であり、Si/Al(分析値)は、RIGAKU製走査型蛍光X線分析装置(ZSX)を用いて実際に測定したときの実測値である。因みに、実施例2のSi/Al(化学式)とSi/Al(分析値)との差異については、測定誤差と理解している。そのため、表1の結果から、本願の上記実施例及び参考例におけるSi/Al(化学式)とSi/Al(分析値)は、実質的に一致していると判断した。
また、表1の比較例2と3におけるSi/Al(分析値)は、Si/Al(化学式)を大きく上回る値を示した。この点に関しては、比較例2では天然鉱物のゼオライトを使用しているため、また、比較例3では、市販の合成ゼオライトを使用しているため、それらの中に含まれる不純物等の影響により、このような差異が生じたと推察している。
実施例1〜4及び参考例1〜2において、上記天然ゼオライトを出発原料として用いて作成された所定のSi/Al比を有する各種人工ゼオライトは、その出発原料として用いた天然ゼオライトの結晶構造とは異なるP型ゼオライト構造であることを確認した。また、上記実施例及び参考例における、P型ゼオライト構造の結晶構造を有する人工ゼオライトは、非ゼオライト部が存在しない。
比較例2の天然ゼオライト(天然鉱物のクリノプチロライト)を使用した実施例4と比較例2を比較しても、実施例4におけるセシウムとストロンチウムの吸着能力は、比較例2に対してそれぞれ約1.4倍と約7.8倍の向上が認められる。
これらの結果から、天然ゼオライトの鉱物種によらず、本手法を用いることにより、天然ゼオライトをそのまま用いた場合に比べて、セシウムとストロンチウムの吸着性能を著しく向上させることが出来ることが確認できる。
また、Si/Al比が、1.5以上2.5以下の範囲内にある実施例1〜3は、出発原料として同じ天然ゼオライト(モルデナイト)を用いた、Si/Al比が1/1の参考例1や3/1の参考例2に比べて、セシウムとストロンチウムの両方の吸着能力に優れている。
しかしながら、参考例1や2の人工ゼオライトでも、ストロンチウムの吸着能力に関する限り、その出発原料であった比較例1の天然ゼオライト(モルデナイト)の吸着能力と比較すれば、吸着性能の向上が認められる。
また、比較例3における合成ゼオライトにおいてはセシウム吸着性能が極めて高いが、ストロンチウム吸着性能がいずれの実施例よりも低いため、非常に高価であるという欠点を補うだけの吸着性能とは言い難いことが確認できる。
なお、実施例1で得られた人工ゼオライトと、その出発原料である天然ゼオライト(比較例1)と、市販の合成ゼオライト(比較例3)によるセシウムおよびストロンチウムに対する吸着能力の比較図を図3に示す。
この図より、Si/Alの組成比が1.5以上2.5以下である本発明の人工ゼオライトを用いると、セシウムとストロンチウムの両方の元素に対して少なくとも60%以上の優れた除去率を得ることが可能であり、Si/Alの組成比が1.7以上2.3以下である本発明の人工ゼオライトを用いると、セシウムとストロンチウムの両方の元素に対して約80%以上の更に優れた除去率を得ることが可能であることが確認できる。
なお、実施例1および比較例1において、Pb吸着能の数値に幅がある理由は、3種の天然鉱物を試験したことによる。
表5の結果から、比較例1のように構造がモルデナイトであっても産地が異なれば吸着能に差が生じるものの、これを本発明の手法を用いると一様に高い吸着能が発現することが確認できる。
実施例1によって得られた人工ゼオライトはアンモニアガスに対しても短時間でかつ高い吸着能を有することが認められる。
また、本発明の人工ゼオライトは、鉛やアンモニアガスのような有害性のある物質に対しても高い吸着能力を有しているので、そのような物質を含む土壌や水質の改善並びに大気汚染浄化や脱臭等にも利用可能である。
本発明の人工ゼオライトは、低コストで安定して大量に製造可能であるので、費用面、機能面、生産面等のバランスに優れた新規な吸着剤として利用可能であり、除染のような技術分野のみならず、様々な技術分野での利用や応用も期待できる。
Claims (10)
- 出発原料として天然ゼオライトを用いる、Si/Al組成比が1.5以上2.5以下の人工ゼオライト。
- 前記Si/Al組成比が1.7以上2.3以下である、請求項1に記載の人工ゼオライト。
- 前記天然ゼオライトが、モルデナイト又はクリノプチロライトである、請求項1又は2に記載の人工ゼオライト。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工ゼオライトを含んでなる吸着剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工ゼオライトから作られる加工品。
- 請求項4に記載の吸着剤又は請求項5に記載の加工品を含んでなる吸着設備。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工ゼオライトにセシウム及び/又はストロンチウムを吸着させて前記セシウム及び/又はストロンチウムを除染する方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工ゼオライトに鉛及び/又はアンモニアガスを吸着させて前記鉛及び/又はアンモニアガスを除染する方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工ゼオライトに放射性元素を吸着させて前記放射性元素を除染する方法。
- Si/Al組成比を調整するために用いられるアルミニウム源を含むアルカリ性水溶液中で、出発原料である天然ゼオライトを前記アルミニウム源からのアルミニウムイオンと常圧下で反応させることによって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工ゼオライトを製造する方法。
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