以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図2A〜図2C及び図3A〜図3Fは、本実施の形態に係る被処理体の微細パタン形成方法を説明するための工程図である。図2Aに示すように、モールド10は、その主面上に凹凸構造11が形成されている。凹凸構造11は、複数の凹部11aと凸部11bで構成されている。モールド10は、例えば、フィルム状又はシート状の樹脂モールドである。
まず、図2Bに示すように、モールド10の凹凸構造11の凹部11aの内部に、後述の第1のマスク層に対する加工マスクとして機能する第2のマスク層12を充填する。第2のマスク層12は、例えば、金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料を含む。ここで、モールド10、及び第2のマスク層12を備えた積層体を、第1の微細パタン形成用積層体1、又は単に第1の積層体1と呼ぶ。
次に、図2Cに示すように、第1の積層体1の第2のマスク層12を含む凹凸構造11の上に、第1のマスク層13を形成する。この第1のマスク層13は、後述する被処理体の加工の加工マスクに用いられる。第1のマスク層13は、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる。特に、第1のマスク層13は環状部位を有すオリゴマ或いはポリマである樹脂を含む。これにより、以下に説明する中間体の精度及び微細パタンの精度が向上する。中でも、更にモノマを含むこと、そして該モノマが硬化性物質であることがより好ましい。
更に、図2Cに示すように、第1のマスク層13の上側には、保護層14を設けることができる。保護層14は、第1のマスク層13を保護するものであり、必須ではない。ここで、モールド10、第2のマスク層12及び第1のマスク層13からなる積層体を、第2の微細パタン形成用積層体2、又は、単に第2の積層体2と呼ぶ。この第2の積層体2は、第1のマスク層13を被処理体に当接させることにより、被処理体の微細加工に用いることができる。この当接は、特に、貼合(ラミネーション)により行われる。また、以下の説明においては、第1のマスク層13と第2のマスク層12を合わせて、単にマスク層とも記載する。
ここで、第2の積層体2の第1のマスク層13の表面粗さRaは500nm以下である。500nm以下であることにより、上述した被処理体への対する貼合性が面内に渡り向上するため、以下に説明する被処理体20上に設けられる高いアスペクト比を有する微細マスクパタン16aの面内均等性が向上する。このため、加工された被処理体の微細パタンの面内均等性を良好に保つことが可能となる。
次に、図3Aに示すような被処理体20を用意する。被処理体20は、例えば、サファイアウェハ、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)ウェハ、シリコンウェハ、LED用エピタキシャルウェハ、又は窒化ガリウム系ウェハである。まず、図3Bに示すように、被処理体20の主面上に、第2の積層体2の第1のマスク層13の露出面を、被処理体20の主面に対面させてラミネートする。このラミネートは例えば熱を加えながら貼り合わせる熱ラミネーションである。
次に、図3Cに示すように、モールド10を、マスク層から除去する。この除去は、主にモールド10をマスク層より引き離す剥離により行われる。この結果、被処理体20、第1のマスク層13及び第2のマスク層12からなる中間体21が得られる。ここで、中間体21を得るプロセスがラミネーションであり簡便であると共に、第2の積層体2は予め第1のマスク層13を具備していることから、4インチφ、6インチφ、又は8インチφといった大口径のウェハ(被処理体20)を使用した場合であっても、面内に渡り均等な中間体21を得ることができるため、後述する微細パタン22を大口径のウェハ(被処理体20)に均等に形成することが可能となる。
なお、上述した当接と剥離の間において、第2の積層体2に対してエネルギ線を照射して第1のマスク層13を安定化させてもよい。また、当接時に加える熱により、第1のマスク層13を安定化させてもよい。また、第2の積層体2に対してエネルギ線を照射して第1のマスク層13を安定化させた後に、第2の積層体2/被処理体20からなる積層体を加熱し、第2のマスク層12及び第1のマスク層13を更に安定化させてもよい。更に、剥離後のエネルギ線照射或いは加熱処理により、第1のマスク層13を安定化させてもよい。ここでの安定化は、例えば、硬化或は固化である。
ここで、第1のマスク層13が、環状部位を有すオリゴマ又はポリマである樹脂を含むことで、第2の積層体2の安定性が向上すると共に、モールドを剥離する際の剥離力を小さくできる。更には、以下に説明する被処理体20の加工精度、即ち微細パタン22の形状精度が向上する。また、第1のマスク層13が、更にモノマを含むことで、第2の積層体2を被処理体20に貼合する際の、第1のマスク層13の被処理体20への追従性及び密着性を向上できる。これにより、被処理体20の面内に対する転写精度(率)を向上させることができる。更に、少なくともモノマが硬化性物質、特に光硬化性物質であることで、第1のマスク層13の体積収縮が大きくなることから、転写性が良好になる。
また、第2の積層体2の第2のマスク層12のモールド10の凹部11aへの配置精度、及び第1のマスク層13の膜厚の均等性を向上させる観点、また、中間体21を得る際のマスク層の破壊、第1のマスク層13と第2のマスク層12との剥がれ、及び第1のマスク層13と被処理体20との剥がれを抑制し精度の高い中間体21を得る観点から、第2の積層体2(第1の積層体1)のモールド10は、以下に説明する凹凸構造Aを有すモールドであることが好ましい。
即ち、モールド10は、表面の一部又は全面に凹凸構造A(図2中、11)を具備するモールドであって、前記凹凸構造Aは、凸部頂部幅(Mcv)と凹部開口幅(Mcc)との比率(Mcv/Mcc)と、前記凹凸構造Aの単位面積(Scm)の領域下に存在する開口部面積(Sh)と前記単位面積(Scm)との比率(Sh/Scm)と、が下記式(4)を満たすと共に、前記比率(Sh/Scm)は下記式(5)を満たし、前記比率(Mcv/Mcc)は下記式(6)を満たし、且つ前記凹凸構造Aの深さ(H)は下記式(7)を満たすことが好ましい。
式(4)
式(5)
0.23<(Sh/Scm)≦0.99
式(6)
0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0
式(7)
50nm≦H≦1500nm
上記式(4)〜(7)を同時に満たす凹凸構造Aを含むモールド10を使用することで、第2のマスク層12のモールド10の凹凸構造11の凹部11a内部への充填配置精度と第1のマスク層13の膜厚均等性が向上するため、精度高い第2の積層体2を得ることができる。更に、モールド10を除去する際のマスク層の破損を抑制する効果が大きくなり中間体21を得る際の転写精度がより向上することから、被処理体20に設けられる微細パタン22の精度を良好に保つことができる。更には、被処理体20の大きさを、4インチφ以上に容易に大きくすることができる。
次に、第2のマスク層12をマスクとして、第1のマスク層13を、例えば酸素ガスを使用したプラズマエッチングにより、図3Dに示すようにパターニングする。この結果、第1のマスク層13及び第2のマスク層12により構成された高いアスペクト比を有する微細マスクパタン16aが設けられた微細パタン構造体16を得る。更に、微細マスクパタン16aを加工マスクとして、被処理体20に、例えば、反応性イオンエッチングを施して、図3Eに示すように、被処理体20の主面に微細パタン22を形成する。最後に、図3Fに示すように、被処理体20の主面に残った第1のマスク層13を除去して、微細パタン22を有する被処理体20を得る。
ここで第1のマスク層13を構成する樹脂が、環状部位を有すことで、被処理体20の加工精度、特に微細パタン22の形状精度を向上できる。この効果は、環状部位が炭素数30以下の環状部位であること、そして4員環、5員環及び6員環からなる群から選ばれる少なくとも1以上の要素を含み構成されることで、より顕著になる。また、第1のマスク層13に、このような環状部位が含まれることで、環状部位同士の分子間又は分子内相互作用により第1のマスク層13のエネルギ的な安定化を図ることができる。即ち、モールド10の凹凸構造11と第1のマスク層13との接着強度を低下させることができることから、中間体21を得る精度が向上する。
更に、第1のマスク層13を構成する樹脂が、ホモポリマ又はホモオリゴマを含むことで、被処理体20に設けられる微細パタン22の形状の歪が小さくなる。また、第1のマスク層13を構成する樹脂が、少なくとも1以上の繰り返し単位を有すと共に、前記繰り返し単位は、前記繰り返し単位を構成する全原子数Naと、前記繰り返し単位中の炭素原子数Nc及び前記繰り返し単位中の酸素原子数Noとの差分と、の比率(Na/(Nc−No))が5.5以下の繰り返し単位を含む樹脂である場合、特に、被処理体20に設けられる微細パタン22の形状制御範囲を大きく向上できる。
本実施の形態では、図2A〜図2Cに示すモールド10から第2の積層体2を得るところまでを一つのライン(以下、第1のラインという)で行う。それ以降の、図3A〜図3Fまでを別のライン(以下、第2のラインという)で行う。より好ましい態様においては、第1のラインと、第2のラインとは、別の施設で行われる。このため、第2の積層体2は、例えば、巻物状(ロール状)にして梱包され、又は積み重ねて梱包され、保管又は運搬される。
本発明の更に好ましい態様においては、第1のラインは、第2の積層体2のサプライヤのラインであり、第2のラインは、第2の積層体2のユーザのラインである。このように、サプライヤにおいて第2の積層体2を予め量産し、ユーザに提供することで、以下ような利点がある。
(1)第2の積層体2の状態において、予めマスク層の厚み及び構造精度を決定し担保することができる。この精度をを反映させ、被処理体20に微細加工を行うことができる。即ち、サプライヤの提供する第2の積層体2により、ユーザの作製する微細パタン22の精度を担保することができる。具体的には、第2の積層体2を構成するモールド10の凹凸構造11の精度を第2のマスク層12が担保することとなる。更に、第1のマスク層13の膜厚精度を第2の積層体2において担保することが可能となる。即ち、第2の積層体2を使用することで、被処理体20面内に第2のマスク層12及び第1のマスク層13を、第1のマスク層13の膜厚分布精度高く、且つ凹凸構造11の転写精度高く転写形成することが可能となる。このため、被処理体20面内にモールド10のパタン精度(パタン配列精度)を反映させ、且つ、膜厚分布精度高く微細マスクパタン16aを形成することが可能となる。精度の高い微細パタン構造体16を使用することで、被処理体20を精度高く加工することが可能となり、被処理体面内にモールド10の微細パタン精度(パタン配列精度)を反映させた微細パタン22を作製することができる。
(2)微細パタンの精度を第2の積層体2にて担保することが可能となるため、煩雑なプロセスや装置を使用することなく、被処理体20を加工するのに最適な施設において被処理体20を微細加工することができる。特に、一般的なナノインプリントリソグラフィ法において、ナノスケールの微細パタン22を面内均等に形成することが困難な4インチφ以上の大きな被処理体20(ウェハ)を使用した場合であっても、容易に、微細パタン22を作製することができる。
(3)微細パタンの精度を第2の積層体2にて担保することが可能となるため、加工された被処理体20を使用してデバイスを製造するのに最適な場所において第2の積層体2を使用することができる。即ち、安定的な機能を有すデバイスを製造できる。
上述したように、第1のラインを第2の積層体2のサプライヤのラインに、第2のラインを第2の積層体2のユーザのラインにすることで、サプライヤの提供する第2の積層体2において、第1のマスク層13及び第2のマスク層12の精度を予め決定し担保できる。ユーザは、第2の積層体2を使用することで、予め決定されている第1のマスク層13及び第2のマスク層12の精度を反映させた中間体21を、容易に得ることができる。よって、被処理体20の加工に最適な環境にて微細パタン22を加工し、デバイスを製造できる。
ところで、第2の積層体2の第1のマスク層13の表面平坦性が悪い場合、第2の積層体2を被処理体20に貼合する際に貼合不良部位を生じるという問題がある。ここで貼合不良部位とは、第2の積層体2と被処理体20と、の界面に生成するマイクロスケールのマイクロバブル、ミリメートルスケールのエアボイド、或いは、ミリメートルからセンチメートルスケールの第1のマスク層13の添着していない部位のことをいう。
本発明者らは、第1のマスク層13の表面粗さRaを所定の値以下にすることで、上述した貼合不良を抑制できることを見出した。
即ち、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体は、表面に凹凸構造を有するモールドと、前記第1のマスク層の加工時にマスクとして機能する第2のマスク層と、前記モールドの凹凸構造及び前記第2のマスク層を覆うように設けられた前記第1のマスク層と、を具備し、前記第2のマスク層は、少なくとも前記凹凸構造の凹部内に設けられると共に、前記第1のマスク層の表面粗さRaは500nm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、第1のマスク層13の表面粗さRaが所定の値以下であることから、図3Aに示すように、被処理体20に第2の積層体2を貼り合わる際の貼合性を、被処理体面内において向上できる。このため、モールド10の凹凸構造11の精度を反映した第2のマスク層12を、第1のマスク層13の厚み精度を反映させた状態にて、被処理体20上に転写付与することが可能となる。即ち、被処理体面内に高精度に配列した第2のマスク層12を、高精度な膜厚分布を維持し設けることが可能となる。よって、図3Cに示す中間体21をエッチング加工することにより、被処理体面内に精度高く図3Dに示す微細マスクパタン16aを設けることが可能となり、更にエッチング加工を行うことで、図3E及び図3Fに示す微細パタン22を被処理体20の面内に渡り精度高く形成することができる。
本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体は、前記凸部頂部位置(S)と前記第1のマスク層の表面との間の距離(lor)、前記凹凸構造の平均ピッチ(Pav)、及び前記距離lcvが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3)
lcv<lor≦10Pav
この構成によれば、第2の積層体2を被処理体20に貼合する際の、第1のマスク層13の表層の流動性が大きくなる傾向にあることから、貼合性を向上できる。更に、被処理体20に転写付与される第1のマスク層13の過度な流動を抑制できるため、膜厚精度のより高い微細マスクパタン16aを得ることができる。また、第1のマスク層13の膜厚を凹凸構造11の分解能に応じ予め決定できることから、微細パスクパタン16aを加工マスクとした被処理体20のエッチング加工精度を、より高めることが可能となる。
ところで、第2の積層体2における第1のマスク層13の物理的安定性が低い場合、第2の積層体2における第1のマスク層13の膜厚精度を担保するという効果が低下するという問題がある。また、モールド10と第1のマスク層13と、の密着力が大きな場合、中間体21を得る際にモールド10の剥離不良が生じ、中間体21の精度が低下するという問題がある。これらの問題に伴い、微細パタン22の被処理体20の面内に渡る均等性が低下する。更に、第1のマスク層13の被処理体20に対するエッチングマスク特性が低い場合、被処理体20に加工し設けられる微細パタン22の形状精度が大きく低下するという問題がある。特に、被処理体20が、サファイアウェハ、シリコンカーバイドウェハ、或いはLED用エピタキシャルウェハに代表される加工難基材であるほど、微細パタン22の精度低下が著しくなるという問題がある。
本発明者らは、更に、第1のマスク層13に環状部位を有するオリゴマ或いはポリマである樹脂が含まれることで、第1のマスク層13の物理的安定性を向上できること、第1のマスク層13とモールド10との密着力を低減できること、そして被処理体20の加工精度を大きく向上できることを見出した。
即ち、第1のマスク層13を構成する樹脂が、環状部位を有するポリマ又はオリゴマである樹脂を含むことで、第2の積層体2の安定性が向上すると共に、モールドを剥離する際の剥離力が低下する。更には、以下に説明する被処理体20の加工精度が向上する。
更に、第1のマスク層13を構成する樹脂が、更にモノマを含むことで、第2の積層体2を被処理体20に貼合する際の、第1のマスク層13の被処理体20への追従性及び密着性を向上できる。これにより、被処理体20の面内に対する転写精度(率)を向上させることができる。
更に、少なくともモノマが硬化性物質、特に光硬化性物質であることで、第1のマスク層13の体積収縮が大きくなることから、モールド10と第1のマスク層13との密着力が低下し、転写性が良好になる。
上述した第1のラインによって製造される微細パタン形成用積層体の構成について詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る第2の微細パタン形成用積層体の断面模式図である。図4に示すように、第2の積層体2は、表面に凹凸構造101aを有するモールド101と、このモールド101の凹凸構造101a上に設けられ、第1のマスク層103の加工マスクとして機能する第2のマスク層102と、凹凸構造101a上及び第2のマスク層102上を覆うように設けられた第1のマスク層103とを具備する。この第1のマスク層103は、被処理体20と第2のマスク層102を接着する接着層として機能すると共に、被処理体20を加工する際の加工マスクとしても機能する。なお、モールド101は、以下に説明する凹凸構造Aを含むモールドであることが好ましい。この場合、第2のマスク層102の配置精度を向上させると共に、第1のマスク層103の膜厚の均等性を向上できる。更には、中間体21を得る際の、マスク層の破壊、第1のマスク層103と第2のマスク層102との界面剥離、及び第1のマスク層103と被処理体20との界面剥離を抑制できることから、中間体21の精度が向上し、結果、被処理体20に設けられる微細パタン22の精度を向上できる。
(第1のマスク層の表面の表面粗さ)
第2のマスク層102及び第1のマスク層103の配置状態によらず、第1のマスク層103の露出する表面の表面粗さRaは、被処理体20への貼合性を良好に保つ観点から、500nm以下である。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層103の接着層としての機能を良好に発現することが可能となる。特に、第1のマスク層103の表層の流動性を向上させ、第2の積層体2と被処理体20と、の界面に生成するマイクロスケールのマイクロバブル、ミリメートルスケールのエアボイド、或いは、ミリメートルからセンチメートルスケールの第1のマスク層103の添着していない部位である貼合不良部位を排除する観点から、表面粗さRaは300nm以下であることが好ましい。また、第1のマスク層103の層全体の流動を抑制し、膜厚精度を第2の積層体2として担保する効果を大きくする観点から、表面粗さRaは、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。更に、第2の積層体2を被処理体20に貼り合わせる際の速度を、貼合不良部位を抑制した状態で向上させる観点から、50nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましい。更に、貼合不良部位の中でも、マイクロスケールマイクロバブルを抑制し、第1のマスク層103の加工精度、及び被処理体20の加工精度を向上させる観点から、25nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。なお、表面粗さRaは、小さい程好ましいため、下限値は特に限定されないが、連続的に第2の積層体2を製造する工業性の観点から、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが最も好ましい。
表面粗さRaは、第2の積層体2の第1のマスク層103の表面の算術平均粗さであり、本明細書においては、そのディメンジョンはナノメートルである。表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope/AFM)を使用し測定された値として定義する。特に本明細書においては、下記装置及び下記条件にて測定した場合の表面粗さを採用する。
・株式会社キーエンス社製 Nanoscale Hybrid Microscope VN−8000
・測定範囲: 200μm(比率1:1)
・サンプリング周波数: 0.51Hz
なお、表面粗さRaは、第2の積層体2に保護層14のある場合は、保護層14を剥離した後の第1のマスク層103の露出する表面に対して測定される。
また、第1のマスク層103の表面に異物が付着していた場合であって、該異物ごとAFMにより走査した場合、表面粗さRaは大きくなる。このため、測定する環境は、クラス1000以下のクリーンルームである。また、上記装置VN−8000は光学顕微鏡を付帯している。このため、光学顕微鏡観察により異物や傷の観察された場合、該異物や傷を避けるようにプローブの下降位置を設定する。また、測定前にはイオナイザ等による除電環境下におけるエアブロー洗浄をする。更に、静電気によるプローブの跳ね上がりを抑制するために、測定環境の湿度は、40%〜50%の範囲である。
なお、第1のマスク層103の表層の流動性による貼合不良部位抑制の観点から考えると、第2の積層体2の第1のマスク層103の表面の表面粗さをRaf、そして被処理体20の表面粗さをRatとした時に、合成自乗平均平方根粗さRa´を(Raf2+Rat2)1/2として定義すれば、Ra´が上記第1のマスク層103に対する表面粗さRaの範囲を満たすことが好ましい。なお、被処理体20の表面粗さRatは、既に説明した第1のマスク層103の表面に対する表面粗さRafと同様の手法により測定される。
(距離(lor)と平均ピッチ(Pav))
第2の積層体2においては、図4に示す距離(lor)は、モールド101の凸部頂部101eの位置と第1のマスク層103の表面との間の距離を意味する。
距離(lor)と平均ピッチ(Pav)は、微細パタン構造体16の微細マスクパタン16aの物理的安定性の観点から、上記式(3)で示すようにlor≦10Pavを満たすことが好ましく、lor≦5Pavであることがより好ましい。特に、微細マスクパタン16aを加工マスクとした被処理体20のエッチング加工精度の観点から、lor≦2.5Pavであることが好ましい。これは、微細マスクパタン16aを加工マスクとして微細パタン22をドライエッチング加工する際の、シャドー効果やローディング効果の影響を小さくし、微細パタン22の高さ及び径に対する分布を抑制することができるためである。一方で、第1のマスク層103の接着層としての機能を良好に発揮し、貼合及び転写精度を高める観点から、距離(lor)と以下に説明する距離(lcv)とは、上記式(3)で示すようにlor>lcvを満たすことが好ましい。特に、第1のマスク層103の凹凸構造101aに対する配置及び成膜精度を向上させる観点から、lor>0.05Pavであることがより好ましい。また、既に説明した表面粗さRaの効果を良好に発現させると共に、モールド101を剥離する際の第1のマスク層103の破壊を抑制する観点から、lor>0.1Pavを満たすことが最も好ましい。
距離(lor)は、転写精度の観点から距離lcv超であることが好ましく、微細マスクパタン16aの物理的安定性の観点から5000nm以下であることが好ましく、微細パタン22の加工精度の観点から3000nm以下であることがより好ましい。以下に説明する凸部上マスク層102bが存在しない場合、距離lcvは0nmである。この場合、距離(lor)は、0nm超であることが好ましい。また、第2の積層体2に適用可能な保護層14の選択肢を広げる観点から、距離(lor)は50nm以上であることが好ましい。また、モールド101の凹凸構造101aの自由エネルギの分布や構造の分布に対する第1のマスク層103の成膜マージンを大きくする観点から、距離(lor)は100nm以上であることが好ましい。特に、第1のマスク層103の表面に生成することのあるサブマイクロオーダのヴォイドに関し、その密度を小さい方向に飽和させることが可能であることから、距離(lor)は150nm以上であることがより好ましい。なお、最も好ましくは、距離(lor)は200nm以上である。距離(lor)の分布は、微細マスクパタン16aの幹の太さのバラつきを小さくする観点から、概ね±30%以下であることが好ましく、±25%以下がより好ましく、±10%以下が最も好ましい。
以上のような観点から、距離(lor)、凹凸構造101aの平均ピッチ(Pav)及び凸部上マスク層102bの厚み(lcv)が、下記式(3)を満たすことが好ましい。この場合には、図18Aに示す被処理体200への第2の積層体2の貼合及び図18Cに示すモールド101の剥離精度が良好となるので、図18Cに示す中間体201の精度が向上する。更に、第2のマスク層102を加工マスクとした第1のマスク層103のドライエッチング性が良好となり、微細パタン構造体202の微細マスクパタン202aの精度が向上する。よって、図18Fに示すように、被処理体200の微細パタン220の精度が面内に渡り向上する。
式(3)
lcv<lor≦10Pav
距離(lcv)は、モールド101の凸部頂部101eの位置と、モールド101の凹凸構造101aの凸部101bの頂部上に設けられた凸部上マスク層102bの頂部位置と、の間の距離(lcv)である。
(距離(lor)と第1のマスク層の表面の表面粗さRa)
更に、第1のマスク層103の表面粗さRaと距離(lor)との比率(Ra/lor)は1以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、第1のマスク層103の表層のナノスケール特有の束縛を開放し、第1のマスク層103の表層の流動性を良好に保つことができるため、第2の積層体2を被処理体20へと貼合する際の貼合不良部位を良好に抑制することが可能となる。同様の効果から、比率(Ra/lor)は、0.8以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましく、0.45以下であることがも最も好ましい。なお、0.25以下であれば、第1のマスク層103の表層の流動性が特に良好になり、第1のマスク層103と被処理体20との真実接着面積が大きくなり、これに伴い接着強度が向上するため好ましい。更に、比率(Ra/lor)が、0.2以下であることにより、第1のマスク層103をナノスケールに薄くすると共に、貼合精度を大きく向上させることが可能となる。同様の効果から、0.15以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。なお下限値は特に限定されず、比率(Ra/lor)は小さい程好ましいが、連続的にロール・ツー・ロール法により第2の積層体2を製造する工業製の観点から0.002以上であることが好ましく、0.004以上であることがより好ましい。
モールド101の凸部頂部101eの位置と第1のマスク層103の露出する表面位置との距離(lor)は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope/SEM)により測定される。SEMによる観察は、第2の積層体2の断面に対して行う。なお、下記方法により距離(lor)を求めるに当たり、観察される像の鮮明度が足りず、距離(lor)を定義出来ない場合がある。このような場合は、第2の積層体2を所定の被処理体に転写し中間体21を作製した後に、中間体21の断面に対してSEM観察を行う。距離(lor)を測定するための中間体21の作製方法は以下の通りである。また、第1のマスク層103と第2のマスク層102と、の界面や、第2のマスク層102とモールド101と、の界面を鮮明にする必要のある場合、上記SEMによる観察とは別に、透過型電子顕微鏡による観察を行う。特に、エネルギー分散型X線分光法を併用することで、より鮮明に第2のマスク層102の配置を認識出来る。
(距離(lor)を測定するための中間体21の作製方法)
1.単結晶サファイア基板を、ホットプレート上に配置し、単結晶サファイア基板の主面の温度が115〜125℃の範囲になるように加温する。単結晶サファイア基板は、下記仕様のものを使用する。
・面方位:c面(0001)、θ1:0°±0.2°、θ2:0°±0.2°
・サイズ:φ50mm、t0.37±0.05mm
・仕上げ:両面鏡面仕上げ(Ra≦1nm)
・TIR≦10μm、BOW≦0±10μm
2.第2の積層体2に保護層14のある場合は、取り除く。
3.第2の積層体2の第1のマスク層103の露出する面を、1.の単結晶サファイア基板に対して貼り合わせる。この時、貼り合わせは、ラミネートロールを使用して行う。ラミネート条件は、ラミネートロールの表面温度が110〜118℃の範囲にあること、単結晶サファイア基板の直径部分に加わる線圧が7〜9kN/mの範囲内にあること、そしてラミネート速度が10mm/秒であることである。また、ラミネートロールは、その表面をタイプAのデュロメータにて測定した際のゴム硬度が28〜32であるものを使用する。なお、ラミネートロールを使用する以上当然であるが、第2の積層体2と単結晶サファイア基板と、の界面への空気の巻き込みを抑制するために、ラミネートロールにより第2の積層体2が単結晶サファイア基板に徐々に貼り合わせられるようにする。
4.単結晶サファイア基板側より紫外線を照射する。紫外線は、波長365nmのUV−LED光源より照射する。照射する紫外線の照度は80mW/cm2、そして照射時間は25秒である。
5.4.の紫外線照射後、30秒以内に、第2の積層体2及び単結晶サファイア基板から成る積層体を加温する。加温は、120℃〜125℃に加温された2枚の平板にて挟み込み行う。加温時間は、30秒である。
6.第2の積層体2及び単結晶サファイア基板から成る積層体を冷却する。冷却は、エアーブローにより行い、第2の積層体2の第1のマスク層103とは反対側の面の温度及び、単結晶サファイア基板の温度が共に30℃以下になるまで行う。
7.第2の積層体2のキャリア10を、第2のマスク層102及び第1のマスク層103より剥離する。剥離は、単結晶サファイア基板の一端部より、他の端部に向けて徐々に剥離する。剥離速度は、10mm/秒〜25mm/秒である。
8.得られた中間体21の断面に対して、SEM観察を行うことで、距離(lor)を容易に測定可能である。
SEMを使用した測定においては、凹凸構造101aの複数の凸部101b又は複数の凹部101cが、観察像内に鮮明に10以上20以下観察される倍率にて測定し、同観察像より距離(lor)を求める。測定は、上記表面粗さRaを求めるのために、AFMにて測定した位置と略同じ位置を測定する。なお、SEMとしては、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8010(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用する。なお、測定における加速電圧は、サンプルへのチャージアップやサンプルの焼けから適宜一般的に設定できるが1.0kVが推奨である。
また、20μm間隔毎に撮像を行い、5つの観察像を得る。各観察像に対してまず、凹凸構造101aの凸部頂部101eを決定し、次に、距離(lor)を任意に5つ測定する。即ち、計25点の距離(lor)をデータとして得る。この計25点の距離(lor)の相加平均値を本明細書の距離(lor)と定義する。凹凸構造101aの凸部頂部101eは、撮像内に観察される全ての凸部101bの頂部の頂点の平均位置として決定される。また、距離(lor)は、凸部頂部101eと第1のマスク層103の露出する表面との最短距離の相加平均値であり、既に説明したように最終的に25点の相加平均値として計算される。なお、中間体21に対して測定する場合、距離(lor)は、中間体21の凹凸構造の凹部底部と、単結晶サファイア基板と第1のマスク層103との界面と、の最短距離である。
また、モールドの凹凸構造101aの深さhは、凹凸構造101aの凹部101cの底部頂点と凸部頂部101eと、の最短距離として定義される。測定方法、測定点数、相加平均点数、測定サンプルについては、文言の定義を除いて、上記説明した距離(lor)の測定定義と同様であり、距離(lor)を深さhと読み替えればよい。
また、以下に説明する距離(lcc)及び距離(lcv)についても、その測定方法、測定点数、相加平均点数、測定サンプルについては、文言の定義を除いて、上記説明した距離(lor)の測定定義と同様であり、距離(lor)を距離(lcc)或いは距離(lcv)と読み替えればよい。
平均ピッチ(Pav)は、上記距離(lor)の測定に使用したSEMを使用して測定される。SEMによる観察は、第2の積層体2のモールド101の凹凸構造101aの表面に対して行う。このため、凹凸構造101aの平均ピッチ(Pav)の測定は、少なくとも第1のマスク層103を除去したモールド101、或いは、第2の積層体2を製造する前のモールド101に対して行う。第1のマスク層103の除去は、第1のマスク層103を被処理体20に転写すること、或いは第1のマスク層103を溶解により除去することで行う。SEMを使用した測定においては、凹凸構造101aの複数の凸部101b又は複数の凹部101cが、SEMの観察像内に鮮明に100以上200以下観察される倍率にて測定し、同観察像より平均ピッチ(Pav)を求める。測定位置は、上記表面粗さRaを求めるために、AFMにて測定した位置と略同じ位置を測定する。
また、20μm間隔毎に撮像を行い、5つの観察像を得る。各観察像に対してピッチを任意に10ずつ測定する。即ち、計50点のピッチをデータとして得る。この計50点のピッチの相加平均値を本明細書の平均ピッチ(Pav)と定義する。ピッチとは、撮像内に複数の独立した凸部101bが観察される場合は、凸部101bの頂部の中央部同士の最短距離として定義する。一方で、撮像内に複数の独立した凹部101cが観察される場合は、凹部101cの開口部の中央部同士の最短距離として定義する。換言すれば、モールド101の凹凸構造101aがドット状であれば、最近接するドット間の凸部頂部の中央部同士の距離がピッチであり、ホール状であれば、最近接するホール間の凹部開口部の中央部同士の距離がピッチであり、ラインアンドスペース状であれば、最近接するライン或いはスペースの凸部頂部の中央部或いは凹部開口部の中央部同士の距離がピッチである。なお、ラインアンドスペース状の場合、ラインの幅方向の中央部が頂部中央部であり、スペースの幅方向の中央部が開口部の中央部である。なお、格子状のようにライン或いはスペースとドット状凸部或いはホール状凹部が混在している場合、ドット凸部或いはホール状凹部に対してピッチを測定する。
(第2のマスク層のモールドに対する配置)
第2のマスク層102は、少なくとも凹凸構造101aの凹部101c内に充填されるように設けられる。ここで、充填されるように、とは、第2のマスク層102が、少なくとも凹凸構造101aの凹部101cの底部頂点に配置されることと定義する。即ち、第2のマスク層102の、モールド101の凹部101cの側壁に対する配置は特に限定されない。また、第2のマスク層102は、凹凸構造101aの凸部101b上に設けられてもよい。即ち、第2のマスク層102は、少なくとも凹凸構造101aの凹部101c内に充填配置された第2のマスク層102a(以下、「凹部内マスク層102a」ともいう)を有し、凸部101b上に形成された第2のマスク層102b(以下、「凸部上マスク層102b」ともいう)を有すこともできる。ここで、凹部内マスク層102aと凸部上マスク層102bとは互いに連続していても、独立していても、部分的に連続していてもよい。また、凹部内マスク層102aは、凹部101cの側面に対して、部分的に付着していてもよい。或いは、凹部101c内において、部分的に第2のマスク層102の欠けている凹部内マスク層102aであってもよい。また、凹部内マスク層102aが凹部101cの内壁を被膜するように設けられてもよい。
図4に示す距離(lcc)は、凹部内マスク層102aの凹凸構造101aに対する充填性を示す指標であり、既に説明した深さ(h)から、凹部内マスク層102aの厚さを減じた値を意味する。なお、凹部内マスク層102aの厚さは、深さ(h)と同じ方向に対する、凹凸構造101aの凹部101cの底部を基準にした厚みである。
図5及び図6は、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体におけるモールドの断面模式図である。図5に示すように、凹凸構造101aの凹部101cの側面がモールド101の主面に対して垂直な方向に延在している場合、距離(lcc)のバラつきにかかわらず、形成される凹部内マスク層102aの幅Wは常に一定で分布を持たない。このため、凹部内マスク層102aには、微細パタン構造体16を形成するために、耐ドライエッチング性が求められる。距離(lcc)は、凹部内マスク層102aのドライエッチング耐性及び転写の容易性の観点から、lcc<1.0hであることが好ましく、lcc≦0.9hであることがより好ましく、lcc≦0.7hであることが更に好ましく、lcc≦0.6hであることが特に好ましい。
一方、図6に示すように、凹凸構造101aの凹部101cの側面がモールド101の主面に対して傾斜している場合、凹部内マスク層102a内における距離(lcc)のバラつきは、凹部内マスク層102aの幅Wのばらつきとなる。このため、微細マスクパタン16aの幅のバラつきへと影響を与える。微細マスクパタン16aの幅Wのバラつきは、被処理体20に形成される微細パタン22のバラつきへと繋がる。
また、距離(lcc)<0となる場合は、モールド101の凹凸構造101aの凹部101cが凹部内マスク層102aにより完全に充填され、凹凸構造101a上に第2のマスク層102の薄膜が形成されることを意味する。この場合、第2のマスク層102の成膜性が低下し、膜厚分布が大きくなる。これに基づき、微細マスクパタン16aの精度が低下する。以上の観点から、距離(lcc)は、0<lccを満たす範囲にあるのが好ましく、0.02h≦lccがなお好ましい。更に好ましくは、0.05h≦lccであり、特に0.1h≦lccが好ましい。
図4に示す距離(lcv)は、モールド101の凸部頂部101eの位置と凸部上マスク層102bの頂部位置との間の距離(lcv)である。即ち、距離(lcv)は、凸部上マスク層102bの厚さを意味する。なお、凸部上マスク層102bの厚さは、凹凸構造101aの深さhと同じ方向に対する、凹凸構造101aの凸部101bの頂点を基準にした厚みである。
また、距離(lcv)としては、微細マスクパタン16aを得る際の凸部上マスク層102bの除去をいっそう容易にし、微細マスクパタン16aの加工精度を向上させる観点から、lcv≦(h−lcc)/2であることが好ましく、lcv≦(h−lcc)/3であることがより好ましく、lcv≦(h−lcc)/5であることが最も好ましい。また、距離lcvを限りなく薄くし、微細マスクパタン16aを得る際の凹部内マスク層102aの過剰な変形を抑制する観点から、lcv≦0.05hであることが好ましく、lcv≦0.02hであることがより好ましく、lcv≦0.01hであることが最も好ましい。特に、凸部上マスク層102bがない場合、即ち、距離(lcv)=0の場合には、微細マスクパタン16aの加工精度が特に良好になると共に、微細マスクパタン16aの幹の太さのバラつきが限りなく小さくなるため好ましい。
以上のような観点から、第2の積層体2においては、距離(lcc)と凹凸構造101aの深さ(h)とが下記式(1)を満たし、且つ距離(lcc)及び深さ(h)が、下記式(2)を満たす。これにより、第2の積層体2にて予め決定した第2のマスク層102の構造精度を、微細マスクパタン16aに反映させることができるため、高精度な微細パタン構造体16を得ることができる。このため、後で図18Fを参照して説明するように、微細パタン構造体202を使用し加工される被処理体上の微細パタン220の精度を高くすることができる。
式(1)
0<lcc<1.0h
式(2)
0≦lcv≦(h−lcc)/2
また、距離(lcc)及び深さ(h)が、0.02h≦lcc≦0.9hを満たすことが好ましい。この場合には、第2の積層体2を使用し、被処理体上にマスク層を転写形成する際の転写精度がより向上する。また、凹部内マスク層102aの充填分布精度がより向上する。このため、第2の積層体2にて予め決定した第2のマスク層102の構造精度を、微細マスクパタン16aに反映させることができるため、高精度な微細パタン構造体16を得ることができる。よって、被処理体上に加工付与される微細パタン22を精度高く容易に得ることが可能となる。
更に、距離(lcv)及び深さ(h)が、lcv≦(h−lcc)/3を満たすことが好ましく、lcv≦(h−lcc)/5を満たすことがより好ましい。この場合には、凸部上マスク層102bの凹部内マスク層102aに対する体積比率をいっそう小さくすることができるため、微細マスクパタン16aを得る際の凹部内マスク層102aの過剰な形状変化を抑制することができる。特に、0≦lcv≦0.01hを満たすことが好ましく、距離(lcv)がlcv=0を満たすことがより好ましい。この場合には、凸部上マスク層102bの厚みを限りなく小さくできるため、微細マスクパタン16aに対する第2の積層体2にて予め決定した第2のマスク層102の構造精度の反映率が最も大きくなる。とりわけ、凸部上マスク層102bがない場合、即ちlcv=0の場合、モールド101の凹凸構造101aの配列精度の、被処理体上に設けられる微細パタン22に対する反映性がより大きくなるため最も好ましい。
(第1のマスク層の配置)
第2の積層体2において、第1のマスク層103は、モールド101の凹凸構造101a及び第2のマスク層102の上部を覆うように配置される。ここで、上部を覆うように、とは、凸部上マスク層102bがない場合には、凹部内マスク層102a上及び凹凸構造101aの凸部101b上に第1のマスク層103が設けられることを意味する。また、凸部上マスク層102bが存在する場合は、凹部内マスク層102a及び凸部上マスク層102b上に第1のマスク層103が設けられることを意味する。
(第2のマスク層と第1のマスク層と、の界面)
第2の積層体2においては、第2のマスク層102と第1のマスク層103との界面の形状は、特に限定されず、平坦でもよく湾曲していても、互いに入り組んでいてもよい。
(凹凸構造)
モールド101には、特定方向に延在する単数(例えば、ライン状)又は複数(例えば、ドット状、ホール状、格子状)の凹部101cが設けられており、凹部101c間には凸部101bが形成されている。また、凹部101cは、第2の積層体2の主面に略直交する厚み方向に沿った断面視(直交方向に垂直な断面で観たとき)において、モールド101の表面からモールドの表面に対して垂直な方向に陥没している。この凸部101b及び凹部101cで、凹凸構造101aを構成している。
第2の積層体2におけるモールド101が有する凹凸構造101aの形状は、特に限定されないが、例えば、非回転対称な配列或いは回転対称な配列を採用できる。非回転対称な配列とは、規則性の低い配列や、規則性の高い集合が散在している配列である。回転対称な配列としては、例えば2回対称であれば、互いに平行なラインが複数配置される配列(ラインアンドスペース配列)、正四方配列や正六方配列を一軸方向に延伸した配列、正四方配列や正六方配列を一軸方向に周期的に(例えば、サイン波に乗じて)変調を加えた配列、複数のラインの間隔が周期的に(例えば、サイン波に乗じて)変調された配列、正四方配列や正六方配列を互いに垂直な二軸方向にそれぞれの軸方向に異なる延伸倍率にて延伸した配列、正四方配列や正六方配列を互いに垂直な二軸方向にそれぞれの軸方向に異なる変調周期にて変調した配列等が挙げられる。また、4回以上の対称性を有す配列としては、正四方配列や正六方配列、正四方配列や正六方配列を互いに垂直な二軸方向に同様の周期にて(例えば、サイン波に乗じて)変調した配列、正四方配列や正六方配列をある軸に対して60°刻みの軸方向に同様の周期にて(例えば、サイン波に乗じて)変調した配列等が挙げられる。なお、上記変調とは、凹凸構造101aのピッチが一定ではなく、所定の周期にて変化することを意味する。即ち、ある周期にて凹凸構造101aのピッチが増減を繰り返すような配列である。凹凸構造101aの凸部或いは凹部の形状としては、例えば、ライン状、スペース状、円錐、円柱、四角錐、四角柱、二重リング状、及び多重リング状の構造が挙げられる。なお、これらの形状は底面の外径が歪んだ形状や、側面が湾曲した形状を含む。
凹凸構造101aの形状がドット状であると、ドット間の連続的な隙間を第2のマスク層材料の希釈溶液の塗工に利用でき、第2のマスク層102の配置精度が向上する。一方、第2の積層体2の使用に関し、転写形成された第2のマスク層102をマスクとして機能させる場合は、凹凸構造101aの形状はホール形状であることが好ましい。更に、凹凸構造101aの形状がホール形状であることで、第2のマスク層材料の希釈溶液を、凹凸構造101aに直接塗工する際の、凹凸構造101aの物理的破壊に対する耐性が向上する。
なお、凹凸構造101aがドット形状の場合、隣接するドットが滑らかな凹部を通じつながっていると上記効果をより発揮するため好ましい。また、凹凸構造101aがホール形状の場合、隣接するホールが滑らかな凸部を通じつながっていると、上記効果をより発揮するため好ましい。
図7は、本実施の形態に係る微細パタン形成用積層体の凹凸構造の一例を示す図である。ここで、「ドット形状」とは、「柱状体(錐状体)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。即ち、ドット形状とは、図7Aに示すように、複数の凸部101b(柱状体(錐状体))が配置された形状であり、凸部101b間の凹部101cは連続性のある状態である。一方、ホール形状とは、図7Bに示すように、複数の凹部101c(柱状(錐状)の穴)が配置された形状であり、隣接する凹部101c同士は凸部101bにより隔離されている状態である。
(平均ピッチ)
凹凸構造101aの平均ピッチ(Pav)は、被処理体20の用途により適宜選択できる事項であるため特に限定されない。特に、下記式(9)を満たすことが好ましい。この範囲を満たすことにより、第2の積層体2を製造する際の、凹部内マスク層102aの配置精度を向上させ、且つ、第2の積層体2を使用しモールド101を除去する際のマスク層の破壊を抑制できる。更に、2erg/cm2〜18erg/cm2程度に表面自由エネルギを低下させたモールド101を使用し転写精度を向上させた場合であっても、第2のマスク層102の配置精度及び第1のマスク層103の膜厚精度を向上させることができるため、150nm以上1300nm以下であることがより好ましく、200nm以上1200nm以下であることが更に好ましい。更に、モールド101を剥離する際に加わるマスク層に対する集中応力を小さくし転写精度を向上させる観点から、250nm以上950nm以下であることがより好ましく、300nm以上750nm以下であることが最も好ましい。
式(9)
50nm≦Pav≦1500nm
(アスペクト)
次に、モールド101の凹凸構造101aの立体方向の好ましい範囲について、アスペクトに注目して説明する。アスペクトとは、モールド101の凹凸構造101aの凸部101bの底部の径或いは凹部101cの開口部の径を深さhにて除した値である。凸部101bの底部の径或いは凹部101cの開口部の径は、平均ピッチ(Pav)を求める際の観察から同時に計測できる。
凸部底部の径は、平均ピッチ(Pav)を求める際の観察像に観察される、複数の独立した凸部101bの輪郭に対する外接円の直径として定義する。一方で、凹部開口部の径は、平均ピッチ(Pav)を求める際の観察像に観察される、複数の独立した凹部101cの開口部の外接円の直径として定義する。なお、ラインアンドスペースの場合は、ラインの幅が上記凸部底部の径に相当し、スペースが上記凹部開口部の径に相当する。また、格子状のように、ライン或いはスペースとドット状凸部或いはホール状凹部が混在している場合、ドット凸部或いはホール状凹部に対して凸部底部の或いは凹部開口部の径を測定する。凸部底部の径及び凹部開口部の径の測定方法、測定点数、相加平均点数、測定サンプルについては、文言の定義を除いて、既に説明した平均ピッチ(Pav)の測定定義と同様であり、ピッチを凸部底部の径及び凹部開口部の径と読み替えればよい。
アスペクトは、凸部底部の径/高さ、或いは凹部開口部の径/深さである。アスペクトは、モールド101を剥離する際の剥離エネルギ、より具体的には剥離エネルギを構成する一要素であるモーメントエネルギに影響を与える。被処理体20に転写付与されるマスク層の凸部の破損を抑制するために、アスペクトは5以下が好ましい。また、モールド101の剥離速度を大きくできる観点から、3.0以下であることが好ましい。特に、被処理体20の形状が平板状だけでなく、凸レンズ状、凹レンズ状といった場合であっても、転写精度を良好に維持できる観点から、2.5以下であることがより好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。一方で、微細マスクパタン16aを被処理体20上に形成する際の、加工精度の観点から、アスペクトは、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが最も好ましい。
(凹凸構造のばらつき)
凹凸構造101aの形状は、凹部深さ、凹部底部の幅、凸部頂部の幅、凹部側面の角度、凹部側面の変曲点の数といった変数により記載することができる。一方、配列はピッチを変数とすることで記載可能である。ここで、変数をxとした時に、xに対する標準偏差と相加平均との比率(標準偏差/相加平均)が0.025以上であることにより、第2のマスク層102の配列や形状に乱れを加えることができる。これに伴い、微細マスクパタン16aや、更に被処理体20の微細パタン22に乱れを加えることができる。このような乱れは、被処理体20の用途により、より優れた機能を発現できる。例えば、LEDやOLEDの光学用途に使用する場合、ナノスケールの微細パタンであったとしても光学的散乱性を強く付加することができる。これにより、例えば、LEDやOLEDに対する光取り出し効率がより一層向上する。ここで、比率(標準偏差/相加平均)は、凹凸構造101aを構成する要素に対する値である。例えば、凹凸構造101aが要素A,B,Cの3つから構成される場合、要素Aに対する標準偏差/要素Aに対する相加平均といったように、同一の要素に対する標準偏差と相加平均に対する比率として定義する。
(相加平均)
相加平均値は、ある要素(変量)XのN個の測定値をx1,x2…,xnとした場合に、次式にて定義される。
(標準偏差)
要素(変量)XのN個の測定値をx1,x2…,xnとした場合に、上記定義された相加平均値を使用し、次式にて定義される。
モールド101の凹凸構造101aの表面に対するSEM観察より判断する場合は、既に説明した平均ピッチ(Pav)と同様に、5つの観察像に対してそれぞれ10点の測定を行う。即ち、サンプル点数Nは50である。例えば、モールド101の凹凸構造101aのピッチ、凹部開口部の径、凸部頂部の径、凹部開口部に対する外接円と内接円と、の比率等は、凹凸構造101aの表面に対するSEM観察により測定される。
一方で、モールド101の凹凸構造101aの断面に対するSEM観察より判断する場合は、既に説明した距離(lor)と同様に、5つの観察像に対してそれぞれ5点の測定を行う。即ち、サンプル点数Nは25である。例えば、モールド101の凹凸構造101aの深さや凹部側面の傾斜角度は、凹凸構造101aの断面に対するSEM観察により測定される。
上述したように、比率(標準偏差/相加平均)が0.025以上であればナノスケールの微細パタンであっても光学的散乱性を強く発現することが可能となる。この光学的散乱性は、用途により最適値が異なるが、例えばLEDに対する内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEとの両立の観点からは、0.03以上であると好ましい。一方、上限値は、第2のマスク層102の配置精度の観点から、0.5以下であると好ましい。また、微細マスクパタン16aの精度、特に部分的に微細マスクパタン16aが破損することを抑制する観点から0.35以下が好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。この乱れのもととなる要素は多くあるが、特に、少なくとも凹凸構造101aの深さh或いはピッチにより加えられることが好ましく、少なくともピッチにより加えられることが最も好ましい。
モールド101の凹凸構造101aの凹部101cの径がその底部から開口部に向かうに従い大きくなることで、第2の積層体2を製造する際の、凹部内マスク層102aの充填配置精度が特に向上する。更には、離型工程時における中間体21のマスク層に加わる剥離エネルギを小さくできるため、マスク層の破損を抑制でき、転写精度が向上する。
更に、凹凸構造101aの凹部101cの底部の平坦面は小さい程好ましく、凹部101cの底部に平坦面が存在しないとより好ましい。より具体的には、凹部101cの断面に対する形状は、砲弾状、楕円を短編に沿って割断した形状又は、放物線状であることが好ましく、二次関数に対してR2が0.85以上の精度で近似可能な形状であることが最も好ましい。また、凹部101cの底部は、曲率半径が0超の角部であることが好ましい。これらの条件を満たす場合、凹部101cの開口縁部(以下、凹部開口縁部ともいう)と凹部底部とをつなぐ凹部101cの側面の傾斜により、第2の積層体2を製造する際の、マスク層塗工液の凹部開口縁部におけるピン止め効果をより効果的に抑制できるため、凹部内マスク層102aの充填量分布及び第1のマスク層103の膜厚分布をより小さくすることができる。更に離型工程時におけるモールド101の凹部開口縁部よりマスク層にむけて生じる集中応力を小さくできるため、中間体21の転写精度が向上する。
更に、モールド101の凹部開口縁部と凹部側面とは、連続的に滑らかにつながっていると、上記効果をよりいっそう発揮できるため好ましい。即ち、モールド101の凸部101bの頂部と凹部101cの側面部とから構成される角部は、曲率半径が0超の角部であることが好ましい。
例えば、LEDに使用されるサファイアウェハ(被処理体20)表面の加工を行う場合、LEDの内部量子効率IQEを向上させるために、モールド101の凹凸構造101aは、平均ピッチ(Pav)が200nm〜500nm、高さが50nm〜500nmであることが好ましい。特に、光取り出し効率LEEも同時に向上させるために、上記説明した乱れを加えることが好ましい。例えば、凹凸構造101aは、ナノスケールで正規配列をなし、且つマイクロスケールの大きな周期性を有し、ピッチにマイクロスケールの周期を有する変調を加えた配列により、上記乱れを加えることが好ましい。
(凹凸構造A)
中でも、モールド101は、表面の一部又は全面に以下に説明するの凹凸構造Aを含むことが好ましい。以下に説明する凹凸構造Aを含むモールド101を使用することで、第2の積層体2に対するマスク層の配置精度が向上すると共に、第2の積層体2を使用し形成される中間体21の転写精度が向上するためである。なお、詳細は追って説明するが、記号(Mcc)はモールド101の凹凸構造101aの凹部開口幅を、記号(Mcv)はモールド101の凹凸構造101aの凸部頂部幅を、比率(Sh/Scm)はモールド101の凹凸構造101aの開口率を意味する。
第2の積層体2を良好に機能させる骨子は、第2の積層体2としての精度を高くすることと、第2の積層体2を使用し得られる中間体21の精度を向上させることである。
以下の説明においては、第2のマスク層102を配置する際に使用する塗工液を第2の塗工液と、第1のマスク層103を成膜する際に使用する塗工液を第1の塗工液と、第1の塗工液と第2の塗工液を同時に表現する場合を単に、塗工液として表現する。
下記式(4)〜(7)を同時に満たすことで、塗工液の流れの、モールド101の凹凸構造101aの凸部頂部外縁部における乱れを抑制することができるため、マスク層の配置精度が向上する。より具体的に説明する。塗工液を凹凸構造101aに塗工し、マスク層を凹凸構造101aに対して精度高く配置する骨子は、マクロに観た塗工性を向上させることと、ミクロに観た塗工性を向上させることである。ここで、マクロに観た塗工性とは、凹凸構造101aの凸部101b及び凹部101cが数百以上の集合をなす状態として塗工現象を論じることである。換言すれば、塗工液は、凹凸構造101aの凸部101b及び凹部101cを1つ1つ認識することはなく、凹凸構造101aの集合による表面自由エネルギを認識する状態である。一方で、ミクロに観た塗工性とは、凹凸構造101aの凸部101b及び凹部101cが1つから数十集まった状態として塗工現象を論じることである。換言すれば、塗工液は、凹凸構造101aを構成する1つの凸部101b或いは1つの凹部101cを認識することができる。
マクロに観た塗工性を向上させるためには、凹凸構造101aの集合により作られる塗工液より観た表面自由エネルギの均等性を向上させる必要がある。下記式(4)は、凹凸構造101aの配列、特に対称性を制限する式である。より具体的には、塗工液から観る凹凸構造101aの配列の一次元情報を表すのが比率(Mcv/Mcc)であり、二次元情報を表すのが比率(Sh/Scm)である。即ち、塗工液から見た一次元情報の広がりが二次元情報であり、この一次元情報と二次元情報が所定の関係を満たす、即ち配列の限定されることを意味している。式(4)を満たすことで、凹凸構造101aの対称性が向上し、塗工液から見た凹凸構造101aの表面自由エネルギの均等性が向上する。
ミクロに観た塗工性を向上させるためには、凹凸構造101aの1つの凸部101bと1つの凹部101cに対する塗工液の塗工性を向上させる必要がある。下記式(5)〜(7)を同時に満たすことで、凹凸構造101aの凸部101bの頂部外縁部における塗工液の流が乱れることを抑制できる。より具体的には、塗工液と凹凸構造101aとの界面自由エネルギ、塗工液の粘度、及び凹凸構造101aの凸部101bの頂部の外縁部における塗工液の流動性によりミクロな塗工性が決定される。ここで、マスク層の凹凸構造101aに対する配置は、塗工液と凹凸構造101aとの界面自由エネルギ、及び塗工液の粘度により制御できる。即ち、該界面自由エネルギと該粘度とが任意の範囲で変わった場合であっても、凹凸構造101aの凸部101bの頂部の外縁部における塗工液の流動性を向上させることができる。式(5)〜(7)を同時に満たすことで、特に、凹凸構造101aの凸部101bの頂部の外縁部における塗工液に対するアンカー効果やピン止め効果を効果的に抑制することができるため、該流動性が担保され、マスク層の配置精度が向上する。
以上より、下記式(5)〜(7)を同時に満たすことで、マクロに観た塗工性とミクロに観た塗工性の双方を同時に向上できるため、塗工液の成膜性が向上し、マスク層の凹凸構造101aに対する配置精度及び膜厚精度が向上する。
中間体21を得るためには、モールド101をマスク層より除去する必要がある。特に、剥離除去することが、第2の積層体2のユーザビリティ及びタクトの観点から好ましい。ここで、モールド101をマスク層より剥離する、という物理現象を経ることから、必ずマスク層に対して剥離応力が働く。即ち、中間体21を高精度に得るためには、この剥離応力によりマスク層が破壊されることを抑制する必要がある。マスク層の破壊は、マスク層の凹凸構造が破壊される局所的破壊、マスク層の膜が破壊される全体破壊、そしてマスク層と被処理体20との界面が破壊される界面剥離がある。以下に説明する式(4)〜(7)を同時に満たすことで、特に、局所的破壊及び全体破壊をより効果的に抑制できる。なお、これらの破壊はマスク層の凝集破壊であることが多いため、以下の説明においては凝集破壊という文言を代表して使用する。
マスク層の凝集破壊を抑制するためには、マスク層に加わる剥離応力の絶対値を小さくすることと、マスク層に加わる剥離応力を均等化することが重要である。下記式(5)〜(7)を同時に満たすことで、剥離応力の絶対値を小さくすることができる。これは、モールド101の凹凸構造101aの凸部頂部外縁部よりマスク層に加えられる応力を低減できるためである。一方で、下記式(4)を満たすことで、マスク層に対する剥離応力の均等性を向上させることができる。即ち、局所的に観た集中応力を抑制できる。これは、下記式(4)を満たす凹凸構造101aの配列は、その表面自由エネルギの均等性が高い配列であることから、モールド101を剥離する際にマスク層に加わる応力も均等化するためである。
以上から、下記式(4)〜(7)を同時に満たすことで、マスク層に加わる剥離応力の絶対値を小さくすると共に、マスク層に加わる剥離応力を均等化することができ、転写性が向上する。
即ち、下記式(4)〜(7)を同時に満たす凹凸構造Aを含むモールド101を使用することで、第2のマスク層102の配置精度が高く、且つ第1のマスク層103の膜厚均等性の高い第2の積層体2を製造することができる。更に、第2の積層体2を使用し中間体21を得る際の、転写精度を向上できる。換言すれば、下記式(4)〜(7)を同時に満たす凹凸構造Aを含むモールド101を使用することで、第2のマスク層102の配置精度が高く、且つ、第1のマスク層103の膜厚均等性の高い中間体21を得ることができる。よって、被処理体20に設けられる微細パタン22の精度を向上させることができる。
式(4)
式(5)
0.23<(Sh/Scm)≦0.99
式(6)
0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0
式(7)
50nm≦h≦1500nm
式(7)に示す高さhについては、既に説明した通りである。
図8〜図14は上記式(4)〜(7)にて制限されるモールド101の凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。図8中、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとっている。図8に示す曲線aは、(Mcv/Mcc)=√(1.1/(Sh/Scm))−1であり、曲線bは、(Mcv/Mcc)=√(0.5/(Sh/Scm))−1である。即ち、曲線b以上曲線a以下の領域が式(4)である。また、直線cは、(Sh/Scm)=0.23であり、直線dは(Sh/Scm)=0.99である。即ち、横軸方向に直線c超直線d以下の領域が式(5)である。直線fは、(Mcv/Mcc)=1.0であり、直線gは、(Mcv/Mcc)=0.01である。即ち、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上が式(6)である。よって、図8中斜線領域eにて示される領域、且つ、上記式(7)を満たす凹凸構造Aを一部又は全面に具備するモールド101を使用した第2の積層体2が、本発明に係る第2の積層体2のより好ましい範囲である。
特に、凹凸構造101aの集合により作られる塗工液より観た表面自由エネルギの均等性を向上させ、マクロに観た塗工性を向上させる観点から、比率(Mcv/Mcc)は、√(0.6/(Sh/Scm))−1以上であることが好ましく、√(0.7/(Sh/Scm))−1以上であることがより好ましく、√(0.76/(Sh/Scm))−1以上であることが更に好ましく、√(0.78/(Sh/Scm))−1以上であることが最も好ましい。即ち、図9に示す曲線b1,b2,b3,b4及びb5以上の順により好ましい。図9は、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合に、図9に示す曲線b1はα=0.5を、曲線b2はα=0.6を、曲線b3はα=0.7を、曲線b4はα=0.76を、曲線b5はα=0.78を示す。
また、曲線a、直線c、直線d、直線f、及び直線gは図8のそれと同様である。即ち、縦軸方向に曲線a以下の領域であり、横軸方向に直線c超且つ直線d以下であり、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上であり、且つ、縦軸方向に曲線b1,b2,b3,b4又はb5以上の領域が本発明に係るモールド101のより好ましい凹凸構造Aである。特に、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが大きくなる程、換言すれば曲線bがb1から順番にb5へと上方へシフトする程、曲線a以下、直線c超且つ直線d以下、直線f未満且つ直線g以上、及び曲線b以上の領域は狭まり、このより狭くなる領域を満たす凹凸構造Aであるほど、塗工液の流れに対するアンカーやピン止め効果を抑制できるため、マスク層のモールド101の凹凸構造101aに対する配置精度及び成膜精度をより向上できる。
また、マスク層に対する剥離応力の均等性を向上させ、マスク層の凝集破壊をより効果的に抑制する観点から、比率(Mcv/Mcc)は、√(1.0/(Sh/Scm))−1以下を満たすことが好ましく、√(0.95/(Sh/Scm))−1以下を満たすことが好ましく、√(0.93/(Sh/Scm))−1以下を満たすことがより好ましく、√(0.91/(Sh/Scm))−1以下を満たすことが最も好ましい。即ち、図10に示す曲線a1,a2,a3,a4及びa5以下の順に好ましい。図10は、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合に、図10に示す曲線a1はα=1.1を、曲線a2はα=1.0を、曲線a3はα=0.95を、曲線a4はα=0.93を、曲線a5はα=0.91を示す。
また、曲線b、直線c、直線d、直線f、及び直線gは図8のそれと同様である。即ち、縦軸方向に直線b以上の領域であり、横軸方向に直線c超且つ直線d以下であり、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上の領域であり、且つ、縦軸方向に直線a1,a2,a3,a4,又はa5以下の領域が本発明に係るより好ましい凹凸構造Aである。特に、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが小さくなる程、換言すれば曲線aがa1から順番にa5へと下方へシフトする程、曲線b以上、直線c超且つ直線d以下、直線f未満且つ直線g以上、及び曲線a以上の領域は狭まり、このより狭くなる領域を満たす凹凸構造Aであるほど、特に、マスク層の凸部の底部外縁部に加わる集中応力を小さくし、即ち、マスク層に加わる剥離応力を均等化し、マスク層の凝集破壊をより効果的に抑制できる。
以上説明したように、本実施の形態に係るモールド101においては、凹凸構造Aは、マスク層のモールド101に対する塗工性を向上させ、マスク層の配置精度及び厚み精度を向上させると共に、モールド101を除去する際のマスク層の凝集破壊をより効果的に抑制する観点から、下記式(10)を満たすことが好ましい。
式(10)
更に、下記式(11)を満たすことで、上記効果をよりいっそう発現できると共に、マスク層をモールド101の凹凸構造101a上に成膜する際の、成膜速度を向上した場合であっても、安定的にマスク層を精度高く凹凸構造101aに対して配置できる。更に、モールド101を剥離する際の速度を向上させた場合であっても、マスク層に対する剥離応力の集中を抑制できるため、転写性を良好に保つことができる。
式(11)
凹部開口幅(Mcc)と凸部頂部幅(Mcv)との和(Mcc+Mcv)は、平均ピッチ(Pav)の3倍以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、凹凸構造101aの凸部101bの頂部の外縁部における塗工液の流の乱れを小さくできる。このため、マスク層の成膜性と膜厚精度が向上する。更に、モールド101をマスク層より剥離する際の、モールド101の凹凸構造101aの凸部101bの頂部の外縁部より加えられるマスク層の凸部の底部外縁部への応力の分布が小さくなる。換言すれば、中間体201の凸部の底部外縁部において応力の極度に集中するポイントが発生することを抑制できる。このためマスク層の凝集破壊をより効果的に抑制できる。上記効果をより発揮する観点から、和(Mcc+Mcv)は平均ピッチ(Pav)の2√2倍以下であることがより好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1倍以下であることが最も好ましい。
凹凸構造101aの凸部の頂部外縁部における塗工液の流の整流性を向上させ、ミクロに観た塗工性をいっそう向上させる観点から、比率(Sh/Scm)は、0.4以上であることがより好ましい。特に、塗工液の塗工速度を大きくした場合であっても、局所的な塗工液の流の乱れを抑制する観点から、0.45以上であることがより好ましく、0.6以上であると最も好ましい。これは、凹凸構造101aの凹部101cの内部に形成される塗工液の仮想液滴の曲率半径が極大化するように、塗工液が凹凸構造内部へと濡れ広がるためである。なお、仮想液滴とは、凹凸構造Aの凹部101cの内部に存在すると仮定した、該塗工液の液滴を意味する。更に、モールド101をマスク層より剥離する際の、モールド101の凹凸構造101aの凸部頂部外縁部よりマスク層に加えられる応力を低減し、マスク層に加わる剥離応力の絶対値を小さくする観点から、比率(Sh/Scm)は0.6以上、より好ましくは0.65以上の範囲を満たすことが好ましい。更にこの場合、上記効果に加え、モールド101の凹凸構造101aの凸部101b上から凹部101cの内部方向へのポテンシャルを作用させることができるため、第2のマスク層102の充填配置精度を向上できる。更に、モールド101の凹凸構造101aの表面自由エネルギが非常に小さい、例えば、モールド101のナノ構造がフッ素やメチル基を含むような場合や、モールド101の表面自由エネルギが2erg/cm2〜18erg/cm2の範囲にある場合等であっても、塗工液のミクロな塗工性を向上させ、マクロな塗工性を担保する点から、比率(Sh/Scm)は0.7以上であることが望ましい。特に、このような場合であっても、塗工速度を大きくできる観点から、(Sh/Scm)は、0.75以上であることがより好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。
即ち、図11に示す直線c1,c2,c3,c4,c5,c6及びc7以上の順により好ましい。図11は、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。図11に示す直線c1は(Sh/Scm)=0.23を、直線c2は(Sh/Scm)=0.4を、直線c3は(Sh/Scm)=0.45を、直線c4は(Sh/Scm)=0.6を、直線c5は(Sh/Scm)=0.65を、直線c6は(Sh/Scm)=0.7を、直線c7は(Sh/Scm)=0.8を示す。また、曲線a4及び曲線b4は、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが、それぞれ0.93と0.76の場合である。
また、直線d、直線f、及び直線gは、図8のそれと同様である。即ち、縦軸方向に曲線a4以下曲線b4以上の領域であり、横軸方向に直線d以下であり、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上であり、且つ、横軸方向に直線c1超、c2、c3、c4、c5、c6又はc7以上の領域が本発明に係るより好ましい凹凸構造Aである。特に、比率(Sh/Scm)が大きくなる程、換言すれば直線cがc1から順番にc7へと右方へシフトする程、該領域は狭まり、このより狭くなる領域を満たす凹凸構造Aであるほど、ミクロに観た塗工性がより向上しマスク層の配置及び厚み精度が向上すると共に、モールド101を剥離する際のマスク層に加わる剥離応力の絶対値を減少させ、転写性を向上させることができる。なお、図11においては、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが0.93と0.76の曲線a4及びb4を図示したが、これらの曲線a及びbは、上記説明した式(4)及び式(4)内のより好ましい範囲を採用することができる。
また、比率(Sh/Scm)は、0.95以下であることが好ましい。0.95以下であることにより、モールド101の凹凸構造101aの凸部101bの力学的強度を向上できるため、第2の積層体2の製造時及び第2の積層体2の使用時の、モールド101の破損を抑制することができる。特に、0.93以下、より好ましくは0.91以下であれば、第2の積層体2のモールド101を再利用する際の、再利用回数が大きくなるため好ましい。
以上説明したように、本実施の形態に係るモールド101は、下記式(8)を満たしてもよい。
式(8)
0.4≦(Sh/Scm)≦0.95
この場合、特に塗工液のモールド101の凹凸構造101aの凹部101cへの流入性が向上すると共に、中間体201の凸部への剥離応力をより小さくできる。
更に、本実施の形態に係るモールド101は、下記式(12)を満たしてもよい。
式(12)
0.6≦(Sh/Scm)≦0.95
この構成によれば、モールド101の凹凸構造101aに対して塗工液を塗工する際の、凹凸構造101aの凸部101bの頂部外縁部における該塗工液に対するアンカーやピン止め効果をより抑制できる。このため、第2のマスク層102の充填配置精度及び第1のマスク層103の表面平坦性を向上できる。更に、モールド101を中間体201より剥離する際に生じる中間体201の凸部の底部外縁部に加わる集中応力を緩和できるため、マスク層の破壊、第1のマスク層103と第2のマスク層102との界面剥離、及び第1のマスク層103と被処理体20との界面剥離を抑制できる。
特に比率(Mcv/Mcc)が、0.02以上を満たすことで、第2のマスク層102の形状安定性が向上することから、微細マスクパタン16aの精度が向上する。更には、第2の積層体2を第1のラインから第2のラインへと、搬送した場合の、第2の積層体2のマスク層の精度の維持性向上する。
また、比率(Mcv/Mcc)が、0.85以下を満たすことで、モールド101の凹凸構造101aによる、塗工液に対するアンカーやピン止め効果を抑制できることから、該塗工液の凹部101cへの流入性が促進される。このため、第2のマスク層102の充填配置精度が向上すると共に、第1のマスク層103の露出する面の平坦性が向上する。同様の効果から、比率(Mcv/Mcc)は、0.65以下を満たすことがより好ましく、0.50以下を満たすことが最も好ましい。
ここで、離型工程におけるモールド101の剥離を容易にするために、モールド101の凹凸構造101aの表面自由エネルギを減少させた場合、中間体201の転写精度を向上できる一方、第2の積層体2を製造する際のマスク層の成膜精度が低下する場合がある。特に、凹部内マスク層102aの充填配置精度が低下し、上記説明した距離(lcc)及び距離(lcv)が共に大きくなる場合がある。なお、モールド101の表面自由エネルギが、2erg/cm2以上18erg/cm2以下であることで、マスク層の組成によらず、モールド101とマスク層と、の密着力を低減できるため、転写精度が向上する。
このような場合であっても、塗工液が、CBモードからWモードに転位する際の圧力、凹部101cからの凸部101bの方向に加わるポテンシャルに起因したWモードからCBモードへの逆転移、該塗工液の安定化サイズとモールド101の凹凸構造101aとの大小関係、及び該塗工液の振る舞いが最終的に必ずWモードになる条件を考慮すると、上述した最も広い範囲(0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0)において比率(Mcv/Mcc)が以下の範囲を満たすことで、上記説明した距離(lcv)及び距離(lcc)を適度に満たすように配置すると共に、第1のマスク層103を膜厚精度高く成膜することができる。即ち、(Mcv/Mcc)≦0.42を満たすことが好ましい。なお、CBモードはCassie−Baxterモード、WモードはWenzelモードである。
以上の効果をよりいっそう発現する観点から(Mcv/Mcc)≦0.35であることが好ましく、(Mcv/Mcc)≦0.28であることがより好ましい。また、モールド101の凹凸構造101aの凸部101bに接し、ピン止め効果により準安定化する塗工液の体積を小さくし、凹部内マスク層102aの充填配置精度をより向上させる観点から、(Mcv/Mcc)≦0.18であることが好ましく、(Mcv/Mcc)≦0.14であることがより好ましく、(Mcv/Mcc)≦0.10であることが特に好ましい。更に、(Mcv/Mcc)≦0.06であれば、既に説明した距離(lcv)を効果的に小さくすると共に、距離(lcv)を任意に変更できるため、被処理体20の加工マージンを大きくすることができる。
上記説明した所定の範囲を満たす凹凸構造Aを含むモールド101を使用することで、第2の積層体2を製造する際の第2のマスク層102の配置精度及び第1のマスク層103の膜厚精度が向上し、第2の積層体2を使用する際の、中間体16を得る精度が向上するため、これに伴い被処理体20の加工精度が向上する。
上記説明した効果を効果的に発揮する凹凸構造Aの範囲を図12及び図13に示した。図12に示す領域eは、(Mcv/Mcc)≧√(0.76/(Sh/Scm))−1(曲線b4以上)、(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1(曲線a4以下)、(Mcv/Mcc)≧0.01(直線g以上)、(Mcv/Mcc)≦0.50(直線f以下)、(Sh/Scm)≧0.40(横軸方向に直線c2以上)、且つ(Sh/Scm)≦0.95以下(横軸方向に直線d以下)を同時に満たす領域である。図13に示す領域eは、(Mcv/Mcc)≧√(0.76/(Sh/Scm))−1(曲線b4以上)、(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1(曲線a4以下)、(Mcv/Mcc)≧0.01(直線g以上)、(Mcv/Mcc)≦0.28(直線f以下)、(Sh/Scm)≧0.60(横軸方向に直線c4以上)、且つ(Sh/Scm)≦0.95以下(横軸方向に直線d以下)を同時に満たす領域である。
上記説明した凹凸構造Aを含むモールド101を使用した第2の積層体2を使用することで、容易に被処理体200を加工できる。
(凹凸構造AとLED)
特に、凹凸構造Aを含むモールド101を使用した第2の積層体2を使用し、LED用ウェハ表面の加工を行い製造された微細パタン22を具備したLED用パタンウェハを使用することで、発光ダイオード特性の良好なLED用エピタキシャルウェハを製造可能となり、これに伴い高効率なLEDチップを製造できる。例えば、被処理体20としてサファイアウェハ、シリコンカーバイドウェハ、シリコンウェハ、LED用エピタキシャルウェハ、又は窒化ガリウム系ウェハを選定し加工した場合、微細パタン22を有す被処理体20に対して発光ダイオード構造を成膜し、続いてチップ化工程を経ることで、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、が同時に向上したLEDチップを製造できる。
既に説明した図8に斜線にて示す領域eを満たす凹凸構造Aを含むモールド101を使用することで、微細パタン22を有する被処理体20の、微細パタン22の凸部の大きさと、凹部底部の平坦面の割合を適度にすることが可能となる。このため、微細パタン22上に半導体結晶層を成膜し発光ダイオード構造を作製する際に、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となり、半導体結晶層内に生じる転位の密度を低減することができ、内部量子効率IQEを向上できる。図8については、既に説明した通りである。
更に、LEDの内部量子効率IQEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEをより改善する観点から、特に、既に説明した図12に示す領域eを満たす凹凸構造Aを含むモールド101を使用することが好ましい。この場合、微細パタン22の凸部の大きさを大きくできるため、LEDの発光光に対する光回折のモード数を増加させることが可能となり、光取り出し効率LEEが向上する。図12については既に説明した通りである。
前記効果をより発現する観点から、モールド101の凹凸構造Aは、既に説明した図13に示す領域eを含むことが好ましい。図13については、既に説明した通りである。この場合、微細パタン22の配列の対称性が大きくなると共に、凸部の大きさと凹部底部の平坦面の大きさとを適度にできることから、内部量子効率IQEの改善効果を発現しつつ、光取り出し効率LEEを強い光回折により向上できる。
更に、微細パタン22の凸部の体積を大きくし光回折強度を増加させると共に、凹部平坦面の大きさを一定上に大きくし半導体結晶層の成長性を向上させて、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時により向上させる観点から、図14に示す領域eを満たす凹凸構造Aを含むモールド101を使用することが好ましい。図14は横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。領域eは、(Mcv/Mcc)≧√(0.76/(Sh/Scm))−1(図14中曲線b4以上)、(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1(図1425中曲線a4以下)、(Mcv/Mcc)≧0.01(図14中直線g以上)、(Mcv/Mcc)≦0.20(図14中直線f以下)、(Sh/Scm)≧0.65(図14中横軸方向に直線c5以上)、且つ(Sh/Scm)≦0.93以下(図14中横軸方向に直線d以下)を同時に満たす領域である。
例えば、第2の積層体2を使用し、微細パタン22を具備したサファイアウェハを製造し、該サファイアウェハを使用してLED用エピタキシャルウェハを製造することで、LEDチップの効率を大きく改善することができる。この場合、LEDチップの効率向上メカニズムから、モールド101の凹凸構造101aは、上記説明した比率(Mcv/Mcc)と比率(Sh/Scm)と、の関係、比率(Mcv/Mcc)の範囲、比率(Sh/Scm)の範囲、及び高さhの範囲を満たすことが好ましい。この範囲の中で、モールド101の凹凸構造101aを決定できる。LEDチップの効率(外部量子効率)は、主に電子注入効率、光取り出し効率及び内部量子効率の積により決定され、特に、光取り出し効率と内部量子効率を向上させることが、高効率なLEDチップを製造するために重要である。微細パタン22を有す被処理体20に対して発光ダイオード構造を作製することで、光取り出し効率及び内部量子効率を制御できる。被処理体20を製造する時間を短縮し且つ、半導体結晶層の使用量を低下させると共に、光取り出し効率を向上させる場合、凹凸構造101aの形状は、ピッチが200nm以上1200nm以下、及びアスペクト比が0.3以上1.5以下であると好ましい。特に、ピッチが300nm以上950nm以下であり、アスペクト比が0.5以上1.3以下であることで、上記効果をより発現できる。配列は光回折による光取り出し効率向上を実現する観点から、六方配列や四方配列を採用できる。ここで、配列に乱れを加えた準六方配列や準四方配列、或いは六方配列から四方配列へと変化する配列等を採用することにより、光回折性と光散乱性の双方の効果をえることができるため、光取り出し効率をより向上できる。一方、内部量子効率を光取り出し効率の双方を同時に向上させる場合、ピッチは200nm以上350nm以下であり、アスペクト比が0.3以上1.5以下であると好ましい。この場合、被処理体20の微細パタン22の密度が向上するため、半導体結晶層内に発生する転位を分散化し、局所的及び巨視的な転位密度を低減できるため、内部量子効率が向上する。しかしながら、高密度な凹凸構造の場合、光取り出し効率の向上程度が小さくなることがあるが、配列に乱れを加えることで、光取り出し効率を向上できる。配列の乱れは、準六方配列や準四方配列、或いは六方配列から四方配列へと変化する配列等により達成できる。より具体的には、ピッチが150nm〜350nmである六方配列であり、且つ、ピッチが±5%〜±25%の範囲内にてサイン波に乗じ変動し、該変動が1000nm〜5000nmの長周期を有すホール形状であることが好ましい。
上記使用した記号(Mcc)は、モールド101における凹凸構造101aの凹部101cの開口幅と定義する。なお、記号(Mcc)は、既に説明した平均ピッチ(Pav)と同様のサンプルから同じ解析手法により、測定され、同様の平均点数より定義される。
まず、モールド101の凹凸構造101aがホール構造の場合、即ち隣接する凹部101cが連続する凸部101bにより隔てられる場合について説明する。凹凸構造101aの開口部の形状がn角形(n≧3)の場合、凹凸構造101aの開口部はn個の辺により構成される。この時、n個の辺の中で最も長い辺の長さを凹部開口幅(Mcc)として定義する。なお、n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、又は、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状が挙げられる。一方、凹凸構造101aが、凹部開口部が非n角形の場合、凹部開口部の外縁部の所定の一点から他の一点までの距離が最長となる時の長さを、凹部開口幅(Mcc)として定義する。ここで、非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、上記説明したn角形の角が丸みを帯びた形状、又は丸みを帯びた角を含む上記説明したn角形(n≧3)である。
なお、上記説明したホールの形状がn角形のホールと、非n角形のホールを混在させて設けることができる。
次に、モールド101の凹凸構造101aがドット構造、即ち隣接する凸部101bが連続する凹部101cにより隔てられる場合について説明する。複数の凸部101bから任意に1つの凸部(A)を選択し、この凸部(A)の外縁部の一点と、凸部(A)の周囲を囲む他の凸部(B)の外縁部との距離が最短になる時の、該距離を凹部開口幅(Mcc)として定義する。なお、モールド101を凹凸構造101aの表面から観察した際の凸部101bの輪郭形状は、上記説明した凹凸構造101aがホール構造の場合の、ホールの形状を採用できる。
ラインアンドスペース構造の場合、隣り合う凸状ライン間の最短距離を凹部開口幅(Mcc)とする。
なお、上記説明したホール構造とラインアンドスペース構造、或いはドット構造とラインアンドスペース構造とは混在して設けることができる。
記号(Mcv)は、モールド101における凹凸構造101aの凸部11bの頂部幅と定義する。なお、記号(Mcv)は、既に説明した平均ピッチと同様のサンプルから同じ解析手法により、測定され、同様の平均点数より定義される。
モールド101の凹凸構造101aがホール構造の場合、即ち隣接する凹部101cが連続する凸部101bにより隔てられる場合について説明する。複数の凹部101cから任意に1つの凹部(A)を選択し、この凹部(A)の外縁部の一点と、凹部(A)の周囲を囲む他の凹部(B)の外縁部との距離が最短になる時の該距離を凸部頂部幅(Mcv)として定義する。
次に、モールド101の凹凸構造101aがドット構造の場合、即ち隣接する凸部101bが連続する凹部101cにより隔てられる場合について説明する。凸部101bの形状がn角形(n≧3)の場合、凹凸構造101aの凸部101bはn個の辺により構成される。この時、n個の辺の中で最も長い辺の長さを凸部頂部幅(Mcv)として定義する。なお、n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、又は、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状が挙げられる。
一方、凹凸構造101aの凸部101bが非n角形の場合、凹凸構造101aの凸部101bの頂部の外縁部の所定の一点Aから他の一点Bまでの距離が最長となる時の長さを、凸部頂部幅(lcc)として定義する。ここで、非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、上記説明したn角形の角が丸みを帯びた形状、又は丸みを帯びた角を含む上記説明したn角形(n≧3)である。
ラインアンドスペース構造の場合、凸ライン幅を凸部頂部幅(Mcv)と定義する。
記号(Scm)は、単位面積である。単位面積とは、凹凸構造101aの一主面に平行な面内における凹凸構造101aの上部に配置され、且つ、凹凸構造101aの一主面と平行な面の面積である。単位面積(Scm)の大きさは、平均ピッチ(Pav)の10倍角の正方形の領域として定義する。なお、記号(Scm)は、既に説明した平均ピッチ(Pav)と同様のサンプルの、平均ピッチ(Pav)を求める際の解析手法により撮像される画像内に設定される。
比率(Sh/Scm)は、モールド101における凹凸構造101aの開口率である。モールド101の凹凸構造101aがホール構造の場合は、凹凸構造101aの主面と平行な面内において、凹凸構造101a上の単位面積(Scm)下に含まれる、凹部101cの面積の和(Sh)の比率が開口率である。例えば、単位面積(Scm)内に凹部101cがN個含まれているとする。このN個の凹部101cの開口部面積(Sh1〜ShN)の和がShとして与えられ、開口率は、(Sh/Scm)で与えられる。一方で、凹凸構造101aがドット状の場合は、凹凸構造101aの主面と平行な面内において、凹凸構造101a上の単位面積(Scm)下に含まれる、凹部101cの面積が開口率である。例えば、単位面積(Scm)内に凸部101bがM個含まれているとする。このM個の凸部101bの頂部面積(Sh’1〜Sh’M)の和がSh’として与えられ、開口部の面積ShはScm−Sh’として与えられ、開口率は、(Sh/Scm)で与えられる。開口率を100倍すればパーセントとして表記できる。
本発明の第2の積層体2は、モールド101の凹凸構造101aに対するマスク層の配置、第1のマスク層103の表面の表面粗さRaが上記説明した範囲を満たす部位を含む。即ち、既に説明した定義に沿い、各要件を求めた時に、第2の積層体2の要件を同時に満たす部位が含まれれば、本発明の第2の積層体2である。即ち、要件を満たさない部分が散在していても、要件を満たす部分が局所的に設けられていてもよい。要件を満たす部分と満たさない部分との配置関係は特に限定されず、一方が他方に挟まれていても、一方が他方に囲まれていても、或いは、互いに周期的に配置されてもよい。また、要件を満たす部分と満たさない部分との界面形状は直線状であっても、曲線状であっても、角のある形状であってもよい。また、要件を満たす部分或いは満たさない部分の集合の形状は、不定形、n角形(n≧3)、非n角形(n≧3)や、格子状、ライン状等を採用できる。n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、n角形としては、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、又は、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状を含む。更に、星状のような形状も含む。非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、n角形の角が丸みを帯びた形状(n角形の角の曲率半径が0超の形状)、又は丸みを帯びた角(曲率半径が0超の角部)を含むn角形(n≧3)である。
本発明の第2の積層体2は、上記式(4)〜(7)を同時に満たす凹凸構造Aを含むことが好ましい。既に説明した定義に沿い、モールド101の凹凸構造101aに対する式(4)〜式(7)を求めた時に、式(4)〜式(7)を同時に満たす部位が含まれれば、本発明のより好ましい第2の積層体2である。即ち、式(4)〜式(7)を満たさない部分が散在していても、式(4)〜式(7)を満たす部分が局所的に設けられていてもよい。式(4)〜式(7)を満たす部分と満たさない部分と、の配置関係は特に限定されず、一方が他方に挟まれていても、一方が他方に囲まれていても、或いは、互いに周期的に配置されてもよい。また、式(4)〜式(7)を満たす部分と満たさない部分と、の界面形状は直線状であっても、曲線状であっても、角のある形状であってもよい。また、式(4)〜式(7)を満たす部分或いは満たさない部分の集合の形状は、不定形、n角形(n≧3)、非n角形(n≧3)や、格子状、ライン状等を採用できる。n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、n角形としては、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、又は、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状を含む。更に、星状のような形状も含む。非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、n角形の角が丸みを帯びた形状(n角形の角の曲率半径が0超の形状)、又は丸みを帯びた角(曲率半径が0超の角部)を含むn角形(n≧3)である。
次に、第2の積層体2のモールド101についてより詳細に説明する。
(モールド)
モールド101の形状は、表面に凹凸構造101aが形成されていれば特に限定されないが、平板状、フィルム状又はリール状であることが好ましい。また、モールド101は、図15Aに示すように、支持基材100を用いずに形成されていてもよく、図15Bに示すように、支持基材100上に形成されていてもよい。
モールド101の凹凸構造101aの表面上への水滴の接触角は、第2の積層体2を製造する際の、マスク層の成膜性の観点から、90度よりも小さいことが好ましい。特に、塗工液のレべリング性を向上させる観点から、70度以下であることがより好ましい。一方、該接触角は、モールド101を剥離して中間体21を得る際の、中間体21に加わる剥離エネルギの観点から、90度より大きいことが好ましく、95度以上であることがより好ましく、この効果をよりいっそう発揮する観点から、100度以上であることが最も好ましい。同様の効果から、凹凸構造101aの表面に対する水滴の転落角は、90度未満であることが好ましく、65度以下であることがより好ましく、35度以下であることが最も好ましい。なお、モールド101の凹凸構造101aの表面自由エネルギは、凹凸構造101aとマスク層との接着力が第1のマスク層103と第2のマスク層102及び第1のマスク層103と被処理体20との接着力よりも小さくなる範囲であればよい。
なお、モールド101の凹凸構造101aの表面自由エネルギは、凹凸構造101aに対する水の接触角に相関する。この接触角が大きい程、表面自由エネルギは小さくなる。上述した表面自由エネルギの低い凹凸構造101aとは、接触角が85度以上の状態として定義する。なお、接触角は、『基板ガラス表面のぬれ性試験方法』として、JISR3257(1999)に制定された接触角測定方法を用いて測定する。この場合、接触角測定対象となる基材としては、本実施の形態に係るモールド101の凹凸構造101aが形成された表面を使用するものとする。
モールド101の凹凸構造101aの表面の自由エネルギを減少させることが好ましい。即ち、凹凸構造101aとマスク層との物理的及び化学的接着力を低減することで、転写性を大きく向上させることができる。自由エネルギを低減させる手法としては、凹凸構造101aに対して離型処理を行うか、自由エネルギの低い材質を選定するか、表面の自由エネルギを低下させる成分を仕込む手法等を採用できる。凹凸構造101aに対する離型処理は、公知一般に知られる離型処理を採用でき、一般的な防汚剤、レべリング材、撥水剤或いは指紋付着防止剤等を使用できる。また、離型処理を行う前に、凹凸構造101aの表面を金属や金属酸化物にて被覆してもよい。この場合、離型処理の均等性と凹凸構造101aの強度を向上させることができる。自由エネルギの低い材質としては、フッ素含有樹脂やシリコーン樹脂などを使用できる。表面の自由エネルギを低下させる成分を仕込む手法としては、偏析やブリードアウトなどを利用することができる。例えば、フッ素成分やメリル基成分の偏析、シリコーン成分のブリードアウトを利用できる。なお、表面の自由エネルギを低減させる成分を仕込む手法は、マスク層に対して行うこともできる。例えば、フッ素成分やシリコーン成分をマスク層に仕込むことで、フッ素成分の偏析やシリコーン成分のブリードアウトを利用することができるため、マスク層と凹凸構造101aとの接着強度を大きく低減できる。特に、マスク層の種類によらず、マスク層とモールド101と、の密着力を低減する観点から、モールド101の凹凸構造101aの表面の自由エネルギは、3erg/cm2以上18erg/cm2以下であることが好ましい。特に、モールド101を剥離除去する際の摩擦力を低減する観点から、3erg/cm2以上15erg/cm2以下であることが最も好ましい。
上記説明したフッ素成分は、ポリフルオロアルキレンやペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖、又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖等を具備するモノマや樹脂により導入できる。特に、表面自由エネルギの低減効果を大きくする点から、ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基であることが好ましい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位又は(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、凹凸構造101aの物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、凹凸構造101aの表面自由エネルギの低減と硬度の向上の観点から、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
また、上記自由エネルギを達成するために、以下の1.及び2.の要件を満たすモノマや樹脂を使用できる。
1.ポリフルオロアルキレン鎖、ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖、パーフルオロポリエーテル鎖、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されている。
2.トリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖、或いは直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖等を具備する。
特に、フッ素成分の偏析性が優れる観点から、ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基であることが好ましい。また、ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位及び(CF2O)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、モールド101の繰り返し使用性が向上する観点から、(CF2CF2O)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、ナノ構造S11の表面自由エネルギの低減と硬度の向上の観点から、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
また、フッ素含有ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素含有アクリル樹脂等を使用することも出来る。ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく繰り返し単位とエチレン(E)に基づく繰り返し単位とのモル比率(TFE/E)が、70/30〜30/70のものが好ましく、65/35〜40/60のものがより好ましい。また、ETFEは、他のコモノマーに基づく繰り返し単位を含むことが出来る。他のコモノマーとしては、例えば、CF2=CFClに代表されるTFEを除いたフルオロエチレン類、CF2=CFCF3やCF2=CHCF3に代表されるフルオロプロピレン類、CF3CF2CF2CF2CH=CH2やCF3CF2CF2CF2CF=CH2に代表される炭素数が2〜12のパーフルオロアルキル基を有するフルオロエチレン類、Rf(OCFXCF2)kOCF=CF2(ただし、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、kは0〜5の整数である)に代表されるパーフルオロビニルエーテル類、Eを除いたオレフィン類、プロピレンに代表されるC3オレフィン、及び、ブチレンやイソブチレンに代表されるC4オレフィン等が挙げられる。中でも、CF3CF2CF2CF2CH=CH2が特に好ましい。また、上記他のコモノマーに基づく繰り返し単位の割合は、ETFEを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、30モル%以下が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、0.2〜10モル%が特に好ましい。
また、モールド101の凹凸構造101aは、含フッ素環状重合体を含むことが出来る。ここで、含フッ素環状重合体とは、主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体であり、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が該含フッ素重合体の主鎖を構成する炭素原子であるものと定義する。含フッ素脂肪族環を構成する原子としては、炭素原子以外に酸素原子、窒素原子等を含んでもよい。含フッ素脂肪族環としては、1〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する原子の数は4〜7個が好ましい。主鎖を構成する炭素原子は、含フッ素環状重合体が環状単量体を重合させて得た重合体である場合には、該含フッ素重合体を構成する単量体の重合性二重結合の2個の炭素原子に由来する。また、ジエン系単量体を環化重合させて得た重合体である場合には、2個の重合性二重結合の4個の炭素原子に由来する。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が好ましい。
含フッ素環状重合体としては、環状単量体の単独重合体又は共重合体、ジエン系単量体を環化重合させた単独重合体又は共重合体等が挙げられる。環状単量体とは、含フッ素脂肪族環を有し、且つ含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子−炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、又は、含フッ素脂肪族環を有し、且つ含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。ジエン系単量体とは、2個の重合性二重結合を有する単量体である。環状単量体及びジエン系単量体は、フッ素原子を有する単量体であり、炭素原子に結合した水素原子と炭素原子に結合したフッ素原子の合計数に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合が80%以上の単量体が好ましく、パーフルオロ単量体(該割合が100%の単量体)がより好ましい。環状単量体及びジエン系単量体は、パーフルオロ単量体のフッ素原子の一部(1〜4個が好ましい)が塩素原子に置換された単量体(以下、パーハロポリフルオロ単量体)であってもよい。環状単量体及びジエン系単量体と共重合させる単量体も、パーフルオロ単量体又はパーハロポリフルオロ単量体が好ましい。環状単量体と共重合させる単量体としては、例えば、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CFOCF3等が挙げられる。また、ジエン系単量体としては、CF2=CF−Q−CF=CF2(Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。Qがエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基である場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。)等が挙げられる。ジエン系単量体の具体例としては、CF2=CFOCF2CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、CF2=CFOCF2OCF=CF2、CF2=CFOC(CF3)2OCF=CF2、CF2=CFCF2CF=CF2、CF2=CFCF2CF2CF=CF2等が挙げられる。
また、凹凸構造101aの表層のフッ素元素濃度を調整するために、ノアソルブ GS BP85(グリーン・ノア株式会社製)、ゼオローラH(日本ゼオン株式会社製)、ゾニールTCコート(デュポン社製)、旭硝子社製「サイトップ」(例えば、CTL−107M、CTL−107A)、「アサヒクリン」(例えば、AE−3000、AE−3100E、AK−225、AC−6000、AC−2000)、ノベックEGC−1720(住友スリーエム社製)、ダイキン工業社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES)、「デュラサーフ」(例えば、HD−2101Z、HD2100、HD−1101Z)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ;フタージェント710FL;FTX−710HL、等)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SF、等)、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ」等を使用することも出来る。
また、フッ素含有シランカップリング材を含むことが出来る。フッ素含有シランカップリング材を含むことで、モールドの繰り返し使用性が向上すると共に、凹凸構造101aと第2のマスク層102及び第1のマスク層103と、の密着性をより低減できる。フッ素含有シランカップリング剤としては、例えば、一般式F3C−(CF2)n−(CH2)m−Si(O−R)3(ただし、nは1〜11の整数であり、mは1〜4の整数であり、そしてRは炭素数1〜3のアルキル基である。)で表される化合物であることができ、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含んでいてもよい。直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され、且つ、トリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、(CF2CF2CF2O)単位、及び(CF2O)単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CF2CF2O)単位、(CF2CF(CF3)O)単位、又は(CF2CF2CF2O)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、表面への偏析性が優れるという観点から、(CF2CF2O)単位から構成されることが特に好ましい。
また、本実施の形態に係る第2の積層体2において、モールド101は、フッ素元素、メチル基、又は、シリコン元素の群から選ばれる少なくとも一つの要素を含有することが好ましい。特に、シリコン元素はシロキサン結合により導入されることが好ましい。このような要素を含むことにより、モールド101の凹凸構造101aとマスク層との物理的及び化学的接着力を小さくすることができる。即ち、マスク層と被処理体200との接着力を、凹凸構造101aとマスク層との接着力に比べ相対的に大きくすることが容易となる。
また、シロキサン結合を含む添加剤、フッ素を含む添加剤又はメチル基を含む添加剤を凹凸構造101aの原料に添加し、モールド101の凹凸構造101aの表面自由エネルギを減少させることもできる。添加量としては、凹凸構造101aの原料全体に対して、概ね0.1重量%以上30重量%以下であると、凹凸構造101aの物理安定性が向上すると共に、マスク層への該添加剤の転写が抑制されるため好ましい。
シロキサン結合の導入は、一般式−[−Si−O−]−nにおいて、nが50以上の部位を含む樹脂であると表面自由エネルギの低下が促進されるため好ましい。特に、nが100以上であると好ましく、300以上であるとより好ましく、1000以上であると最も好ましい。このような樹脂は、公知一般のシリコーンを使用することができる。
また、凹凸構造101aがフッ素含有樹脂より構成される場合、凹凸構造101aを構成する樹脂全体に対するフッ素元素濃度が25atm.%以上であると、凹凸構造101aの表面の自由エネルギの低下が大きくなるため好ましく、35atm.%以上であるとより好ましい。
本実施の形態に係る第2の積層体2において、モールド101の凹凸構造101aのマスク層面側の表層フッ素元素濃度(Es)とモールド101の平均フッ素元素濃度(Eb)と、の比率(Es/Eb)は、1超30000以下であることが好ましい。なお、平均フッ素元素濃度(Eb)は、モールド101が、支持基材100と凹凸構造101aより構成される場合は、凹凸構造101aに対して測定される。
比率(Es/Eb)を1超にすることにより、モールド101の、支持基材100と凹凸構造101aとの接着力を大きくすると共に、凹凸構造101aの物理強度を向上させることができる。一方、該比率(Es/Eb)を30000以下することで、モールド101の凹凸構造101aに対するマスク層の配置精度が向上すると共に、凹凸構造101a表面の自由表面自由エネルギを効果的に減少させることができるため、マスク層と凹凸構造101aとの接着力を低減できる。即ち、比率(Es/Eb)が上記範囲を満たすことで、第2の積層体2の物理的安定性が向上すると共に、転写精度を高めることができる。また、モールド101の再利用性が向上する。
比率(Es/Eb)が3≦Es/Eb≦1500、10≦Es/Eb≦100の範囲となるにしたがって、よりマスク層の転写精度が向上すると共に、モールド101の再利用性が向上するため好ましい。なお、上記する最も広い範囲(1<Es/Eb≦30000)の中にあって、20≦Es/Eb≦200の範囲であれば、表層フッ素元素濃度(Es)が、平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、モールド101の凹凸構造101aの表面の自由エネルギが効果的に減少するので、マスク層と物理的及び化学的接着力が低下する。また、凹凸構造101aと支持基材100との接着力が大きくなると共に、凹凸構造101a内部のフッ素元素濃度の勾配が適度となることから、凹凸構造101aの機械強度が大きくなる。これにより、支持基材100との密着性に優れ、マスク層との離型性に優れ、しかも、再利用性に優れるモールド101を得ることができるので特に好ましい。この効果をより発現する観点から、26≦Es/Eb≦189、30≦Es/Eb≦160、31≦Es/Eb≦155の順に好ましい。更に、46≦Es/Eb≦155であれば、モールド101を複製する効果とモールド101を再利用する効果がより大きくなるため好ましい。
なお、モールド101の凹凸構造表層とは、例えば、凹凸構造101aの表面側からモールド101の裏面(支持基材面)側に向かって、略1〜10%厚み方向に侵入した部分、又は厚み方向に2nm〜20nm侵入した部分を意味する。なお、表層フッ素元素濃度(Es)は、X線光電子分光法(XPS法)により定量できる。XPS法のX線の浸入長は数nmと浅いため、Es値を定量する上で適している。また、モールド101の平均フッ素濃度(Eb)は、仕込み量から計算することができる。又は、モールド101切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることでも、モールド101の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
このような比率(Es/Eb)を満たすモールド101を構成するための原料としては、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート又は光重合開始剤の混合物を使用することができる。これらの混合物を、表面自由エネルギの低い疎水性界面等に接触させた状態で光硬化させると、モールド101の凹凸構造101aの表層部のフッ素元素濃度(Es)を、モールド101の平均フッ素元素濃度(Eb)より大きくでき、更にはモールド101の平均フッ素元素濃度(Eb)をより小さくするように調整することができる。例えば、疎水性界面の表面自由エネルギが、3erg/cm2以上18erg/cm2以下であると、モールド101の表層フッ素元素濃度(Es)が良好に高まり、表面自由エネルギの低いモールド101を製造できる。
なお、非フッ素含有(メタ)アクリレートは、公知一般の光重合性モノマや光重合性オリゴマを使用することができる。また、光重合開始剤についても同様に公知一般の光重合開始剤を使用できる。フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子中にフッ素元素を含む光重合性(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、例えば、下記化学式(1)〜(3)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートであると、効果的に平均フッ素元素濃度(Eb)を低く且つ、表層フッ素元素濃度(Es)を高くできるため、より好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDAC」を用いることができる。
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(2)を表し、R2は、下記化学式(3)を表す。)
(化学式(2)中、nは、1以上6以下の整数である。)
(化学式(3)中、Rは、H又はCH
3である。)
モールド101を構成する支持基材100と凹凸構造101aとは、任意に組み合わせることができる。例えば、支持基材100としては、ガラス、石英、シリコン、SUS、アルミ板等の無機材料であっても、スポンジやゴム(シリコーンゴム等)に代表される柔弾性体で構成されても、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルム、PEフィルム、PPフィルムといった樹脂フィルムで構成されてもよい。また、これらはフレキシブルであっても、非フレキシブルであってもよい。一方で、凹凸構造101aを構成する材料としては、公知一般の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化樹脂や無機物を採用できる。その他にも、以下に説明する第1のマスク層の材料及び第2のマスク層の材料を使用することも、それらをブレンドすることもできる。凹凸構造101aを構成する無機物としては、金属や金属酸化物等を使用できる。例えば、シリコン、石英、ニッケル、クロム、サファイア、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又はフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、スピンオングラスの無機材等を使用できる。特に、凹凸構造101aと支持基材100と、の密着力を良好に高める観点から、支持基材100の表面自由エネルギと凹凸構造101aを構成する材料の原料の表面張力と、の差の絶対値は、30erg/cm2以下であることが好ましく、15erg/cm2以下であることが最も好ましい。
特に、凹凸構造101aは弾性体であると、マスク層の転写精度がより一層向上するため好ましい。これは、第2の積層体2を使用する際の環境雰囲気の巻き込みを抑制できることと、モールド101を除去する際の、マスク層に加わる剥離応力の絶対値を減少できることによる。このような観点から、モールド101の凹凸構造101aは、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、フッ素含有アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、フッ素含有ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、シリコーン樹脂、又はポリジメチルシロキサンの樹脂より構成されると好ましい。特に、光硬化性樹脂の硬化物より構成される場合、原料となる光硬化性樹脂の平均官能基数は6以下であると転写精度が一層向上するため好ましく、4以下であるとより好ましく、3以下であると最も好ましい。凹凸構造101aの弾性率を減少させ、被処理体20に転写付与されるマスク層の選択幅を拡大する観点から、2.5以下であると好ましく、1.5以下であるとより好ましい。
モールド101の凹凸構造101aが弾性体である場合、ガラス転移温度Tgが100度以下である弾性体であってもよく、公知市販のゴム板や樹脂板、フィルム等を使用することができるが、特に、60℃以下であることで、弾性変形の程度が大きくなることから、転写性が向上するため好ましい。最も好ましくは、同様の観点から30℃以下である。更に、該ガラス転移温度が30℃以下であることで、第2の積層体2の被処理体200に対する貼り合わせの容易性が大きくなる。同様の観点から、該ガラス転移温度Tgは、0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることが最も好ましい。このようなTgの低い弾性体としては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ポリイソプレン(天然ゴム)、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、又ポリスチレンが挙げられる。
モールド101の曲げ弾性率は、5Mpa以上10Gpa以下であると、マスク層の配置精度及び膜厚精度を向上できる。更に、モールド101を剥離除去する際の中間体201の凸部への応力の勾配を緩やかにすることができるため、中間体201のマスク層の破損を抑制できる。
ここで、モールド101の曲げ弾性率は、支持基材のある場合とない場合とに分類できる。
支持基材100のない場合、即ち、モールド101が凹凸構造101aのみより構成される場合、上記効果をより発揮する観点から、モールド101の曲げ弾性率は、100Mpa以上5Gpa以下であることがより好ましく、400Mpa以上3.0Gpa以下であることが最も好ましい。特に、凹部内マスク層102aの精度と第1のマスク層103の膜厚精度をより向上させる観点からは、400Mpa以上2Gpa以下を満たすことが好ましく、450Mpa以上1.5Gpa以下を満たすことがより好ましい。更に、中間体201の破損を抑制する観点から、2Gpa超3Gpa以下を満たすことがより好ましい。
一方で、支持基材100のある場合、即ち、モールド101が凹凸構造101a及び支持基材より構成される場合、モールド101の曲げ弾性率は、750Mpa以上10Gpa以下を満たすことが好ましく、1.3Gpa以上10Gpa以下を満たすことがより好ましく、2.3Gpa以上10Gpa以下を満たすことが最も好ましい。中でも、5Gpa以上10Gpa以下であることで、モールド101の操作性が向上すると共に、凹部内マスク層102aの精度と第1のマスク層103の膜厚精度が向上する。同様の効果から、7.5Gpa以上10Gpa以下であることがより好ましい。
また、上記曲げ弾性率は、JIS K 7171、ISO 178に準拠し測定される値とする。
また、モールド101の凹凸構造101aは、上記支持基材100のない場合にて説明した曲げ弾性率値を満たす材料により構成されると好ましく、モールド101の支持基材100は、上記支持基材100のある場合にて説明した曲げ弾性率値を満たす材料であると好ましい。
モールド101の支持基材100は、透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、モールド101を製造する際にロール・ツー・ロール法(光ナノインプリント法)を適用することが容易となるため、モールド101の精度及び製造パフォーマンスが向上する。更に、第2の積層体2を被処理体200に貼り合わせた後にエネルギ線を照射する場合に、支持基材100越しにエネルギ線を照射することが可能となる。また、支持基材100が透明であることにより、第2の積層体2を被処理体20に貼り合わせた後に、遮光マスクを支持基材100の上方に配置すると共に、エネルギー線を照射することで、中間体21の凹凸構造をパターニングして形成することもできる。一方、着色されている場合、第2の積層体2の保存性を向上できる。特に、第2の積層体2に光重合性物質が含まれる場合、光重合性物質の光重合適用波長を着色により抑制することが可能となる。同様に、凹凸構造101aも透明であっても、着色されていてもよい。
また、透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備した支持基材100や凹凸構造101aの場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上できる。
一方、着色されている場合、第2の積層体2に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、金属や金属酸化物の膜を具備した支持基材100や凹凸構造101aの場合、該感光波長(λ)の光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上できる。
また、保護層106を設けない場合であって、第2の積層体2をロール・ツー・ロール法により連続的に製造する場合、支持基材100のモールド101とは反対側の表面(裏面)の表面粗さRabは、既に説明した第2の積層体2の第1のマスク層103の表面粗さであるRaの1.5倍以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、第2の積層体2の巻き取りに対するハンドリングや制御性が向上し、連続的にロール・ツー・ロール法にて第2の積層体2を製造できる。更に、第1のマスク層103の表面状態を良好に保つことができる。なお、表面粗さRabのより好ましい範囲は、第2の積層体2の第1のマスク層103の表面粗さRaのより好ましい範囲の1.5倍以下である。なお、表面粗さRabは、既に説明した第1のマスク層103の表面粗さRaと同様の手法にて測定される値である。また、比率(Rab/lor)が、既に説明した比率(Ra/lor)の1.5倍以下であっても、上記同様の効果を奏すため好ましい。より具体的には、第2の積層体2を安定的に製造すると共に、第2の積層体2を搬送する際に不意に加わる力による第1のマスク層103の表面精度の悪化を抑制する観点から、表面粗さRabは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。特に、第2の積層体2を製造する際の、製造速度を向上させる観点から、60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。
モールド101としてフレキシブルなものを採用する場合、支持基材100もフレキシブルな材質となる。この場合、支持基材100は、ASTM規格のD638に定められる引張強さが、15MPa〜90MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2を使用する際の、被処理体200に対する貼り合わせ精度が向上する。特に、ラミネートロールを使用した貼り合わせに関し、速度と精度を共に向上させる観点から、該引張強さは、20Mpa〜80Mpaであることがより好ましく、30Mpa〜80Mpaであることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材100は、ASTM規格のD638に定められる破断時伸びが10%〜1500%の範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2を使用する際の、被処理体200に対する貼り合わせ精度が向上する。特に、ラミネートロールを使用した貼り合わせに関し、速度と精度を共に向上させる観点から、該破断時伸びは、150%〜500%であることがより好ましく、25%〜400%であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材100は、ASTM規格のD638に定められる引張弾性率が500MPa〜5000MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2の第1のマスク層103を被処理体200に対して貼り合わせる際の、皺を抑制することが出来る。同様の観点から、該引張弾性率は、1500MPa〜4900MPaであることがより好ましく、2300MPa〜4800MPaであることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材100は、ASTM規格のD638に定められる圧縮強さが10MPa〜150MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2を巻き取る際の空気の同伴を抑制できる。巻き取りをよりスムーズにする観点から、該圧縮強さは、50MPa〜115MPaであることがより好ましい。
フレキシブルな支持基材100は、ASTM規格のD638に定められる曲げ強さが50MPa以上200MPa以下であることが好ましい。これにより、第2の積層体2を製造する際のパスラインの選択肢が大きくなる。特に、第2の積層体2を製造する装置をコンパクトに仕上げる観点から、該曲げ強さは、60MPa以上160MPa以下であることがより好ましい。更に、中間体21を得る際のモールド101の剥離性を良好にする観点から、65MPa以上125MPa以下であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材100は、ASTM規格のD696に定められる線膨張率が3×10−5/℃〜15×10−5/℃の範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2を製造する際、使用する際、或いは搬送する際の温度変化に対する耐久性が向上する。本効果をより一層発揮する観点から、該線膨張率は、4×10−5/℃〜9×10−5/℃であることがより好ましく、5×10−5/℃〜7×10−5/℃であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材100は、ASTM規格のD570に定められる吸水率(24時間)0.3重量%以下であることが好ましい。これにより、第2の積層体2を製造する際の季節の影響を抑制できる。季節の影響は、主に第2のマスク層102の成膜性、より具体的には、第2のマスク層102の配置精度を左右する問題である。また、第2の積層体2を輸送する際の湿度変化に対する耐性を向上させる観点から、該吸水率は0.25重量%以下であることがより好ましい。更に、第1のマスク層103と保護層106と、の強固な密着を抑制する観点から、該吸水率は、0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材100としては、具体的に、例えば、フェノール・フォルムアルデヒド樹脂(PF)、ユリアフォルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン・フォルムアルデヒド樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリビニルクロライド樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロ二トリル・スチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、超高分子量ポリエチレン樹脂(U−PE)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリサルフォン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、セルローストリアセテート樹脂(TAC)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等を使用することができる。またこれらの樹脂の積層フィルムや、表面を親水処理或は疎水処理を施したものも使用可能である。また、これらの樹脂の表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、クロム、酸化クロム、タングステン、酸化タングステン、銅、酸化銅、銀、酸化銀、酸化インジウムスズ等を成膜したものを使用することも出来る。
[保護層]
図16に示すように、第1のマスク層103の凹凸構造101aとは反対側の面側に保護層106を設けることができる。保護層106としては、保護層106を除去する際に第1のマスク層103がモールド101より引きはがされたり、或いは破損したり、また保護層106の成分が第1のマスク層103を汚染しないものであれば特に限定されず、公知一般の、例えば、感光性樹脂フィルムやドライフィルムレジストに使用されている保護層(保護フィルム)を使用できる。
保護層106の第1のマスク層103に貼り合わせる面の表面自由エネルギと、第1のマスク層103の保護層106と接する面の表面自由エネルギと、の差の絶対値は、2erg/cm2以上50erg/cm2以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、保護層106と第1のマスク層103と、の密着性が良好となり、連続的に第2の積層体2を製造し巻き取ることができると共に、第2の積層体2を使用に際し保護層106を剥離した際の、第1のマスク層103の破損を抑制できる。本効果をより発揮する観点から、該表面自由エネルギの差の絶対値は、5erg/cm2以上30erg/cm2であることが最も好ましい。
保護層106の表面粗さRaPは、既に説明した第2の積層体2の第1のマスク層103の表面粗さであるRaの1.5倍以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、第2の積層体2に対して、例えば皺を効果的に抑制し、良好に保護層106を貼り合わせることができる。このため、連続的にロール・ツー・ロール法にて第2の積層体2を製造できる。更に、第1のマスク層103の表面状態を良好に保つことができる。なお、表面粗さRaPのより好ましい範囲は、第2の積層体2の第1のマスク層103の表面粗さRaのより好ましい範囲の1.5倍以下である。なお、表面粗さRaPは、既に説明した第1のマスク層103の表面粗さRaと同様の手法にて測定される値である。また、比率(RaP/lor)が、既に説明した比率(Ra/lor)の1.5倍以下であっても、上記同様の効果を奏すため好ましい。より具体的には、第2の積層体2を安定的に製造すると共に、第2の積層体2を搬送する際に不意に加わる力による第1のマスク層103の表面精度の悪化を抑制する観点から、保護層106の表面粗さRaPは1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。特に、第2の積層体2を製造する際の、製造速度を向上させる観点から、60nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが最も好ましい。
また、保護層106は、着色されていてもよい。これにより、第2の積層体2の保存性を向上できる。特に、第2の積層体2に光重合性物質が含まれる場合、光重合性物質の光重合適用波長を着色により抑制することが可能となる。
また、保護層106が透明である場合、紫外光(UV)に対する透過率が50%以下の保護層106であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、保護層106に対する紫外光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、紫外光吸収材や金属膜を具備した保護層106の場合、紫外光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上できる。
一方、保護層106が着色されている場合、第2の積層体2に含まれる成分の感光波長(λ)の光に対する透過率が60%以下の保護層106であると第2の積層体2の保存性が向上するため好ましい。特に、第2の積層体2の第1のマスク層103の光劣化を抑制する観点から、保護層106に対する該感光波長(λ)の光の透過率は35%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。なお、金属膜を具備した保護層106の場合、該感光波長(λ)の光の透過率をほぼ0%にすることができる。この場合、第2の積層体2の性能保存性をより向上できる。
なお、上記説明した、紫外光又は感光波長(λ)に対する透過率範囲を満たす保護層106或いは支持基材100の少なくともいずれか一方を採用することで、第2の積層体2の性能劣化を抑制することができる。特に、支持基材100及び保護層106のいずれも上記説明した透過率範囲を満たすことにより、第2の積層体2の性能劣化抑制効果が大きくなるため好ましい。
保護層106としての保護フィルムのJIS B 0601に準拠し測定される表面粗さは、小さい程好ましい。例えば、中心線平均粗さ0.003μm〜0.05μmであることで、第1のマスク層103の保護層106と接する面の表面粗さRaを、良好に保つことができる。特に、0.005μm〜0.03μmであることが好ましい。また、保護層106の第1のマスク層103と接触しない面のJIS B 0601に準拠し測定される中心線平均粗さが0.1μm〜0.8μm、及び最大高さが1μm〜5μmであると、保護層106を除去した後に、保護層106を巻き取り回収する際のハンドリング性が大きく向上する。前記効果をいっそう発揮する観点から、中心線平均粗さ0.15μm〜0.4μm、及び最大高さが1.5μm〜3.0μmであるとより好ましい。上記中心線平均粗さ及び最大高さは、接触型表面粗さ計を用いて測定する。また、保護層106を配置しない場合は、モールド101の凹凸構造101aとは反対側の面の中心線平均粗さ及び最大高さが、上記第1のマスク層103と接触しない保護層106の中心線平均粗さ及び最大高さの範囲を満たすことが好ましい。
保護層に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイが、500個/m2以上存在していてもよい。これは、フィッシュアイの数が多い保護層(保護フィルム)106を使用した場合であっても、凹凸構造101aとマスク層との界面への影響は殆どない、と考えられるためである。また、マスク層に光硬化性物質が含まれる場合、保護層106を貼りあわせる際に発生する気泡を利用して、マスク層の寿命を伸ばすこともできると考えられるためである。
マスク層に保護層106のフィッシュアイが転写形成されることによる、第2の積層体2を被処理体20に貼合する際に生じるエアボイドの発生をより抑制するという観点から、保護層106(保護フィルム)中に含まれる直径が80μm以上のフィッシュアイは5個/m2以下であると好ましい。保護層106の膜厚は、1μm〜100μmであると保護層106の貼合性、ロール・ツー・ロールとしてのウェブハンドリング性、及び環境負荷低減の観点から好ましく、5μm〜50μmであるとより好ましく、15μm〜50μmであると最も好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD638に定められる引張強さが、15MPa〜90MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、保護層106を第1のマスク層103に対して貼り合わせる際の、保護層106の破断を抑制できる。保護層106のラミネーション性の観点から、該引張強さは、20Mpa〜40Mpaであることがより好ましく、20Mpa〜30Mpaであることが最も好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD638に定められる破断時伸びが10%〜1500%の範囲にあることが好ましい。これにより、保護層106を第1のマスク層103に対して貼り合わせる際の、皺を抑制することが出来る。皺の抑制と、保護層106のラミネーション性の観点から、該破断時伸びは、50%〜900%であることがより好ましく、90%〜800%であることが最も好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD638に定められる引張弾性率が500MPa〜5000MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、保護層106を第1のマスク層103に対して貼り合わせる際の、皺を抑制することが出来る。皺の抑制と、保護層106のラミネーション性の観点から、該引張弾性率は、750MPa〜2500MPaであることがより好ましく、900MPa〜1500MPaであることが最も好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD638に定められる圧縮強さが10MPa〜150MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2を巻き取る際の空気の同伴を抑制できる。巻取りをよりスムーズにする観点から、該圧縮強さは、15MPa〜60MPaであることがより好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD638に定められる曲げ強さが150MPa以下であることが好ましい。これにより、第2の積層体2を製造する際の、保護層106のパスラインの選択肢が大きくなる。特に、第2の積層体2を製造する装置をコンパクトに仕上げる観点から、該曲げ強さは、100MPa以下であることがより好ましく、50MPa以下であることが最も好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD696に定められる線膨張率が3×10−5/℃〜15×10−5/℃の範囲にあることが好ましい。これにより、第2の積層体2を製造する際、使用する際、或は搬送する際の温度変化に対する耐久性が向上する。本効果をより一層発揮する観点から、該線膨張率は、4×10−5/℃〜9×10−5/℃であることがより好ましく、5×10−5/℃〜7×10−5/℃であることが最も好ましい。
保護層106は、ASTM規格のD570に定められる吸水率(24時間)0.3重量%以下であることが好ましい。これにより、第2の積層体2を製造する際の季節の影響を抑制できる。また、第2の積層体2を輸送する際の湿度変化に対する耐性を向上させる観点から、該吸水率は0.2重量%以下であることがより好ましい。更に、第1のマスク層103と保護層106と、の強固な密着を抑制する観点から、該吸水率は、0.1重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以下であることが最も好ましい。
保護層106としては、具体的に、例えば、フェノール・フォルムアルデヒド樹脂(PF)、ユリアフォルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン・フォルムアルデヒド樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリビニルクロライド樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロ二トリル・スチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、超高分子量ポリエチレン樹脂(U−PE)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリサルフォン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、セルローストリアセテート樹脂(TAC)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等を使用することができる。またこれらの樹脂の積層フィルムや、表面を親水処理或は疎水処理を施したものも使用可能である。また、これらの樹脂の表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、クロム、酸化クロム、タングステン、酸化タングステン、銅、酸化銅、銀、参加銀、酸化インジウムスズ等を成膜したものを使用することも出来る。EVA樹脂の場合、酢酸ビニル含有量は、0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。これは、第1のマスク層103に対する接着性と剥離性を担保するためである。同様の効果から、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、1.3重量%以上16重量%以下であることが最も好ましい。
(第2のマスク層)
次に、第2の積層体2の第2のマスク層102の組成について説明する。図18に示すように、第2の積層体2を被処理体200に貼り合わせ(図18A)、その後モールド101を剥離し形成された中間体201(図18C)に対して、第2のマスク層102を加工マスクとして第1のマスク層103をドライエッチング加工することで、微細マスクパタン202aを具備した微細パタン構造体202を得ることができる。即ち、第2のマスク層102は、微細パタン構造体202を得る際のドライエッチング加工に対する耐性が高いことが好ましい。なお、ドライエッチングに対する耐性については、選択比として後述する。第2のマスク層102の材料は、有機物、無機物或いは有機無機複合体であってもよい。また、モノマ、オリゴマ、或いはポリマのみから構成されても、これらを複数含んでもよい。このため、例えば、有機粒子、有機フィラー、無機粒子、無機フィラー、有機無機ハイブリッド粒子、有機無機ハイブリッドフィラー、ゾルゲル反応を誘発する分子、有機ポリマ、有機オリゴマ、無機ポリマ、無機オリゴマ、有機無機ハイブリッドポリマ、有機無機ハイブリッドオリゴマ、重合性樹脂、重合性モノマ、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、スピンオングラス、又は、金属或いは金属酸化物等を使用することができる。
第2の積層体2を使用し中間体201を得る際の転写速度、そして精度を向上させる観点から、第2のマスク層102を構成する材料は、硬化性物質を含むことが好ましい。ここで、硬化性物質とは、光重合又は熱重合、そしてこれらの複合重合を起こす材料である。よって、光重合可能な光重合性基と熱重合可能な重合性基の両方、又はいずれか一方を含むと特に好ましい。また、第1のマスク層103の加工精度を向上させることができるため金属元素を含むことが好ましい。
第2のマスク層102を構成する材料は、以下の[第1のマスク層]にて説明する材料に、下記金属元素を加えた材料を使用することができる。特に、その中でも、樹脂及びモノマを含み、少なくともモノマによって金属元素を導入することが好ましい。例えば、モノマとして金属アルコキシドを使用できる。更にこの場合、樹脂が無機樹脂、例えば、シリコーンであることが好ましい。更にこの場合、少なくともモノマが硬化性物質を含むことが好ましく、特に光硬化性物質であるとより好ましい。この場合、硬化開始材を含むことができる。なお、第1のマスク層103と第2のマスク層102の双方に金属元素を含むとき、第2のマスク層102に含まれうる金属元素の方が、原子番号が大きい、或いは、最大の原子番号が同じ場合は、該最大の原子番号の金属元素の濃度が、第2のマスク層102の方が、1.5倍以上、より好ましくは5倍以上、最も好ましくは10倍以上大きくなるようにすればよい。
金属元素としては、特に限定されないが、例えば、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルビジウム(Rb)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、セシウム(Cs)、オスミウム(Os)、プラチナ(Pt)、金(Au)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ランタン(La)、アンチモン(Sb)、バナジウム(V)、イットリウム(Y)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)、錫(Sn)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)かなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましい。これは、第2のマスク層102の配置精度、第2のマスク層102の物理的及び化学的安定性の観点から選定している。微細マスクパタン202aの加工精度の観点から、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びゲルマニウム(Ge)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、シリコン(Si)又は亜鉛(Zn)であることが好ましく、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、シリコン(Si)又は亜鉛(Zn)であることが最も好ましい。
また、特に、化学的安定性を向上させる観点から、第2のマスク層102は、メタロキサン結合(―O−Me1−O−Me2−O−)を含むことが好ましい。ここで、Me1及びMe2は共に金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。Me1又はMe2としては、上記説明した金属元素を採用するこができる。例えば、単一金属元素の場合、―O−Ti−O−Ti−O−や、―O−Zr−O−Zr−O−、そして―O−Si−O−Si−O−が挙げられる。異種金属元素の場合、―O−Ti−O−Si−O−、―O−Zr−O−Si−O−、―O−Zn−O−Si−O−等が挙げられる。なお、メタロキサン結合中の金属元素種は、3種類以上含まれてもよい。特に、2種類以上含まれる場合、転写精度の観点から、少なくともSiを含むことが好ましい。
特に、前記金属元素は、Si元素とSi以外の金属元素を含むことが好ましい。この場合、Si元素濃度(CpSi)と、Si以外の金属元素の合計濃度(CpM1)と、の比率(CpM1/CpSi)が、0.02以上24未満であると、転写精度及び、微細マスクパタン202aの加工精度がより向上するため好ましい。特に、0.05以上20以下であるとより好ましく、0.1以上15以下であると最も好ましい。
この様な金属元素を含むことで、特に金属元素を少なくとも金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料により導入することで、第1のマスク層103をドライエッチングする際の、縦方向のドライエッチングレート(Vr⊥)と、横方向のドライエッチングレート(Vr//)との比率(Vr⊥/Vr//)を大きくすることができる。これは、第1のマスク層103をドライエッチングする際の、加工される第1のマスク層103の側壁保護効果が向上するためである。即ち、第2のマスク層102は、第1のマスク層103の側壁へ、と移動することができる。
第2のマスク層102を構成する材料には、極性基が含まれることが好ましい。この極性基は、以下に[第1のマスク層]にて説明するものと同様のものを使用できる。これにより、第2のマスク層102とモールド101の凹凸構造101aとの接着力を低減することができると共に、第2のマスク層102の力学的強度を向上させることができるため、転写精度が向上する。特に、[第1のマスク層]にて説明する重合性基を含むことで、第2のマスク層102の体積収縮により第2のマスク層102とモールド101の凹凸構造101aと、の接着力がより低下すると共に、第1のマスク層103と第2のマスク層102と、の界面接着強度が向上することから、転写性がより向上する。
いずれにしても、第2のマスク層102の材料は、以下に説明する選択比を満たす範囲において、設計される。
更に、第2のマスク層102は、透明であっても着色されていてもよい。透明であることにより、第2の積層体2を被処理体200に貼り合わせた積層体に対しエネルギ線を照射する際に、第2のマスク層102越しにエネルギ線を照射することが可能となる。一方、着色されている場合、モールド101を剥離した後に、転写性を目視或いは光学検査により容易に確認することができる。なお、着色は以下の[第1のマスク層]にて説明する染料、顔料等の着色物質を使用できる。
更に、第2のマスク層102の安定性を向上させるために、酸化防止剤を含むことができる。また、可塑剤等の添加剤を含めることもできる。この酸化防止剤や可塑剤等の添加剤は、以下の[第1のマスク層]にて説明するものを使用できる。
(第1のマスク層)
次に、第2の積層体2の第1のマスク層103の組成について説明する。第1のマスク層103は、被処理体200を加工する際の加工マスクとして機能することが好ましいため、以下の選択比を満たすことが好ましい。例えば、有機物、無機物或いは有機無機複合体であってもよい。また、モノマ、オリゴマ、或いはポリマのみから構成されても、これらを複数含んでもよい。このため、例えば、有機粒子、有機フィラー、無機粒子、無機フィラー、有機無機ハイブリッド粒子、有機無機ハイブリッドフィラー、ゾルゲル反応を誘発する分子、有機ポリマ、有機オリゴマ、無機ポリマ、無機オリゴマ、有機無機ハイブリッドポリマ、有機無機ハイブリッドオリゴマ、重合性樹脂、重合性モノマ、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、スピンオングラス、又は、金属或いは金属酸化物等を使用することができる。
第1のマスク層103は、既に説明したように、上記[第2のマスク層]で説明した金属元素を含むことができる。なお、第1のマスク層103と第2のマスク層102の双方に金属元素を含む場合、第2のマスク層102に含まれる金属元素の方が、原子番号が大きい、或いは、最大の原子番号が同じ場合は、該最大の原子番号の金属元素の濃度が、第2のマスク層102の方が、1.5倍以上、より好ましくは5倍以上、最も好ましくは10倍以上大きくなるようにすればよい。これにより、第2のマスク層102を加工マスクとして、第1のマスク層103を容易にエッチングし、微細マスクパタン202aを得ることができる。
特に、第1のマスク層103が樹脂を含むことで、第1のマスク層103の硬度を減少させることができると共に、第1のマスク層103の配置安定性を向上させることができる。本明細書における樹脂は、分子量が1000以上のオリゴマ或いはポリマとして定義する。樹脂の構成としては、有機樹脂、無機樹脂又は有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。これらは1種のみ含んでも、複数含んでもよい。この様な樹脂を含むことで、第1のマスク層103の硬度が減少するため、第1のマスク層103の表層の流動性の束縛が解放されやすくなり、第1のマスク層103と被処理体20との間に発生するエアボイドを良好に抑制できる。また、第1のマスク層103に樹脂を含むことで、モールド101の凹凸構造101aに配置された第1のマスク層103の物理的安定性が向上することから、第2の積層体2の搬送やハンドリングにより、第1のマスク層103の膜厚精度が低下することを抑制できる。これらの樹脂は、公知一般のオリゴマ或いはポリマを採用できる。例えば、一般的に、フォトレジスト用樹脂、ナノインプリント用樹脂、接着剤用樹脂、粘着剤用樹脂、ドライフィルムレジスト用樹脂、エンプラ、封止材用樹脂、ゴム、プラスチック、繊維、医療用プラスチック、医薬用樹脂等を使用できる。また、天然高分子も使用できる。
また、樹脂が、「#−C=C−#」部位及び/又は「#−C=O」部位を含むことで、第1のマスク層103と第2のマスク層102との界面強度及び第1のマスク層103と被処理体200との界面強度が向上するため、中間体201の精度が向上する。なお、本明細書における化学式において使用される「#−A」という表記は、Aという元素或いはAという部位、又は骨格が、「#」を介して他の元素に化学結合することを意味する。また、「#」は、酸素元素(O)、窒素元素(N)、炭素元素(C)、水素元素(H)又は硫黄元素(S)のいずれかである。なお、結合手の不足した部分は、水素元素、炭素元素或いは酸素元素により、該不足が補われているものとする。
樹脂の重量平均分子量は、第1のマスク層103の成膜性及び膜厚精度の観点から、1000〜1000000であることが好ましい。下限値の1000は、第1のマスク層103の硬度の減少から決定された。一方で、上限値の1000000は、第1のマスク層103の凹凸構造101aに対する配置精度から決定された。特に、第1のマスク層103の配置精度をより高める観点から、重量平均分子量は、500000以下であることが好ましく、100000であることがより好ましく、更に好ましくは60000である。
樹脂の分散度は概ね1〜6のものが用いられ、1〜4であることが好ましい。分散度は、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量)/(数平均分子量)である。なお、分子量は、日本分光社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工社製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶剤:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
特に、第1のマスク層103に含まれる樹脂は、極性基を有すことが好ましい。この場合、第1のマスク層103内における分子間相互作用を強くすることができるため、第1のマスク層103とモールド101の凹凸構造101aとの密着力を小さくすることができる。更に、第1のマスク層103と被処理体20との界面に対する静電相互作用や水素結合作用等が強くなる傾向にあるため、第1のマスク層103と被処理体20との接着強度が向上する。以上から、極性基を含むことで、転写性を向上させることができる。極性基の種類は特に限定されないが、エポキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アリル基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基及びチオールからなる群の少なくとも1以上の極性基を含むことで、モールド101の凹凸構造101aと第1のマスク層103との界面接着力を分子スケールの隙間により弱めることができるためである。特に、モールド101の凹凸構造101aと第1のマスク層103との物理的接着力及び化学的接着力を共に低減する観点から、エポキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群の少なくとも1以上の極性基を含むことが好ましい。更に、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基及びカルボニル基から成る群から選ばれる少なくとも1以上の極性基を含むと、光重合による体積収縮、熱重合による体積収縮、或いは水素結合による高密度化の1以上の現象を発現できるため、モールド101の凹凸構造101aと第1のマスク層103との界面接着力がより低下し、転写性がいっそう向上するため好ましい。中でも、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、又は、カルボキシル基の少なくとも1以上を含むことで、前記効果がより大きくなる。
樹脂が硬化性樹脂である場合、第2の積層体2の第1のマスク層103の体積よりも、モールド101を除去する際の第1のマスク層103の体積は小さくなる傾向がある。即ち、モールド101を第1のマスク層103より除去する段階において、モールド101の凹凸構造101aと第1のマスク層103との界面に分子スケール以上の隙間を作ることができる。これは、凹凸構造101aとマスク層との密着力を大きく低減することを意味するため、モールド101の剥離速度を十分に大きくすることができる。硬化性樹脂は、熱、光、或いは熱及び光により硬化する樹脂である。例えば、熱硬化性樹脂であれば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はケイ素樹脂が挙げられる。また、例えば、光硬化性樹脂であれば、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又は、ビニル基等を有する樹脂が挙げられる。
なお、硬化性樹脂を含む場合、その硬化原理に見合った硬化開始剤を含むことが好ましい。光硬化性樹脂に対しては、光重合開始材を適用できる。光重合開始材としては、公知一般のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、又はアニオン重合開始剤を使用できる。これらは組み合わせて使用することもできる。熱重合樹脂に対しては、熱重合開始剤を適用できる。熱重合開始剤としては、公知一般の例えば、アゾ化合物を使用できる。なお、光硬化性樹脂に対して、熱重合開始剤を使用することもできる。なお、重合開始剤の他に、光増感材を添加することもできる。
特に、第1のマスク層103の体積収縮を効果的に発現させ、第1のマスク層103と凹凸構造101aとの接着強度を弱める観点から、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。
また、樹脂は、少なくとも1以上の繰り返し単位を含む樹脂を含むことが好ましい。更に、この繰り返し単位は、繰り返し単位を構成する全原子数をNa、繰り返し単位中の炭素原子数をNc、及び繰り返し単位中の酸素原子数をNoとした時の比率(Na/(Nc−No))である比率Kが5.5以下の繰り返し単位であることが好ましい。即ち、繰り返し単位が3つある状態を代表させた場合、−(A)x−(B)y−(C)z−で表現される一般式において、A、B或いはCの少なくとも1以上の繰り返し単位は該比率K≦5.5を満たす。このような範囲を満たす場合、樹脂の分子間の相互作用が強まる傾向にあるため、第1のマスク層103と凹凸構造101aとの界面の分子スケールの隙間が大きくなると考えらえる。即ち、転写性が向上する。特に、樹脂の分子間相互作用と分子内相互作用を共に強め、該隙間を凹凸構造101aの表面に渡り形成させ、転写性を向上させる観点、及び、第1のマスク層103をマスクとして被処理体200をドライエッチング加工する際の加工精度の観点から、比率Kは、4.0以下を満たすことがより好ましく、3.5以下を満たすことが最も好ましい。ここでの加工精度とは、被処理体200上に加工され設けられた微細パタン220の形状精度である。これは、比率Kが上記範囲を満たすことにより、第1のマスク層103をマスクとして被処理体200をドライエッチング加工する過程における、第1のマスク層103の形状の歪を小さくできるためである。特に比率Kが3.0以下である場合、樹脂内の炭素密度が大きくなるため、第1のマスク層103と凹凸構造101aとの化学的作用を低減でき、第1のマスク層103と凹凸構造101aとの密着力をより低下させることができる。更に、ドライエッチング時にイオンやラジカルから観た樹脂のエネルギ障壁及び物理強度が大きくなることから、被処理体200の加工マージンを大きくできるため好ましい。このように、比率Kの値が小さくなる程、高精度な中間体201を得ることが可能となり、更に、第1のマスク層103をマスクとして被処理体200をドライエッチング加工する際の、第1のマスク層103の形状安定性が向上するため、被処理体200の加工精度を向上できる。特に、該比率Kが小さい程、エネルギの高いドライエッチング条件も採用することが可能となるため、被処理体200の微細パタン220の形状精度を担保しながら、加工速度を大きく改善することができる。
上記説明においては、−(A)x−(B)y−(C)z−で表記できる繰り返し単位が3つある状態を代表させたが、繰り返し単位の構成数は3に限らず、ホモポリマ或いはホモオリゴマである1の状態から3超の状態であってもよい。特に、繰り返し単位間のドライエッチング特性差を小さくする観点から、繰り返し単位の数は5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが最も好ましい。なお、繰り返し単位が1であるホモポリマ或いはホモオリゴマの場合、第1のマスク層103のドライエッチング過程における形状の歪をよりいっそう低減できるため、被処理体200に設けられる微細パタン220の精度をいっそう向上できる。
また、繰り返し単位数が2以上の場合、少なくとも1以上の繰り返し単位は上記比率Kを満たす。この場合、比率Kを満たす繰り返し単位Gと比率Kを満たさない繰り返し単位Bとの繰り返し数は、以下の範囲を満たすことが好ましい。繰り返し単位Gの繰り返し数の合計値をα、繰り返し単位Bの繰り返し単位数の合計値をβとする。例えば、−(A)x−(B)y−において、繰り返し単位Aが上記比率Kを満たし、繰り返し単位Bが上記比率Kを満たさない場合、x=α、y=βである。また、例えば、−(A)x−(B)y−(C)z−において、繰り返し単位Aが上記説明した比率Kを満たし、繰り返し単位B及びCが上記説明した比率Kを満たさない場合、x=α、(y+z)=βである。なお、繰り返し単位の数が4以上の場合も同様である。
この時、α/β≧1を満たすことで、分子内相互作用の効果が大きくなり、転写性が向上するため好ましい。更に、樹脂分子内におけるドライエッチング特性差を小さくすることができるため、被処理体200の加工精度を向上できる。特に、α/β≧1.5を満たすことで、分子間相互作用も利用でき、転写性がより向上すると共に、ドライエッチング過程における第1のマスク層103の形状の歪をより小さくできるため好ましい。α/βが2.3以上であることで、第1のマスク層103と凹凸構造101aとの界面の化学的相互作用を抑制する効果が大きくなると共に、ドライエッチング時のパワーを強くできるため、被処理体200の加工速度を向上できる。更に、α/βが4以上であれば、第1のマスク層103を加工マスクにし、被処理体200をドライエッチング加工する際のオーバーエッチング時間を短縮できる。これらの効果をいっそう発揮する観点から、α/βが9以上であることが最も好ましい。
なお、ホモポリマ又はホモオリゴマの場合、α/βはβが0であることから無限に漸近する。また、繰り返し単位を2以上含む場合であって、全ての繰り返し単位が上記比率Kの範囲を満たす場合も、α/βはβが0であることから無限に漸近する。このようなα/βが無限に漸近する場合、樹脂分子内のエネルギの均等性が向上することから、モールド101を第1のマスク層103より除去する際の、凝集破壊に対する耐性が大きくなるため、最も好ましい。なお、これらの範囲を満たすことで、被処理体200をナノ加工する場合の、加工精度も大きく向上する。
更に、繰り返し単位間の上記比率Kの差の最大値、即ちΔKmaxは、3.5以下であることが好ましい。これにより、効果的に分子間相互作用を発現できる。更に、樹脂分子内におけるドライエッチングレート差を小さくすることができるため、ドライエッチング過程における第1のマスク層103の形状歪を抑制する効果が大きくなる。特に、3.0以下であることで、分子内相互作用が大きくなると共に、比率Kの大きな繰り返し単位の集合が優先的にドライエッチング除去されることを抑制する効果が高まるため好ましい。2.5以下であれば、樹脂の安定性が向上し、第1のマスク層103と凹凸構造101aとの界面の化学的作用を抑制する効果が高まる。また、ドライエッチング過程における第1のマスク層103の側面部のラフネスを抑制できるため好ましい。更に、樹脂分子内のエネルギの均等化の向上に伴う第1のマスク層103の凝集破壊耐性の向上効果をより顕著にすると共に、被処理体200に設けられる微細パタン220の形状精度を向上させる観点から、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが最も好ましい。なお、これらの範囲を満たすことで、被処理体200をナノ加工する場合の、加工精度も大きく向上する。なお、ΔKmaxが0.5以下であれば、ドライエッチングにおけるラジカルやイオンから見た第1のマスク層の103均等性が大きく向上する。このため、第1のマスク層103の側面部を含む表面の形状安定性が向上するため、被処理体200の加工精度を向上できる。
第1のマスク層103は、環状部位を有する材料を含むことが好ましい。特に、環状部位を有する樹脂を含むことが好ましい。環状部位を有する材料を含むことにより、環状部位同士のパッキングや配列により、マスク層の硬度の上昇や、マスク層の体積収縮を誘発する傾向にあるためである。即ち、モールド101をマスク層より除去する際のマスク層の凝集破壊の抑制や、モールド101の凹凸構造101aとマスク層との密着力低減の効果がある。更に、被処理体200をドライエッチング加工する際の第1のマスク層103の形状歪を低減できることから、被処理体200の加工精度を向上できる。
特に、環状部位が、炭素数30以下の環状部位であることで、既に説明した比率Kを満たすことが容易となり、これにより第1のマスク層103の炭素密度が向上すると共に、第1のマスク層103の熱振動やボンバードメント耐性、またラジカルやイオンに対する耐性が向上するため、被処理体200の加工精度を向上できる。
更に、環状部位が4員環、5員環及び6員環からなる群から選ばれる少なくとも1以上の要素を含み構成されることで、パッキング性が良好となることからマスク層のエネルギが低下する傾向にある。即ち、モールド101の凹凸構造101aとマスク層との化学的作用を低減できるため、転写性が向上すると共に、第1のマスク層103のドライエッチング耐性が大きく向上する。このため、被処理体200の加工精度が向上し、精度の高い微細パタン220を形成できる。ここで、環状部位は、上記説明した樹脂に含まれても、それ以外の成分、例えば以下に説明するモノマに含まれてもよい。特に、第1のマスク層103が樹脂及びモノマを含む場合、少なくとも樹脂に該環状部位を含むことが好ましい。環状部位としては、例えば、下記化学式群Aから選ばれる少なくとも1以上の環状部位が挙げられる。これらは、1種類のみを含んでも、2種類以上含まれてもよい。
本明細書においては、化学式中に表記される「*」は、「*」を介して他の元素に結合すると共に、「*」は酸素元素(O)、窒素元素(N)、硫黄元素(S)或いは炭素元素(C)のいずれかである。また、結合手の不足している部分は、水素元素(H)、メチル基(CH3)、或いは水酸基(OH)へと結合する。
例えば、上記環状部位を含む樹脂として、ポリスチレン、ポリp−ヒドロキシスチレン、ポリ9−ビニルカルバゾール、カルバゾール骨格を有す樹脂、側鎖にカルバゾール骨格を有す樹脂、クレゾールノボラック骨格を有す樹脂、フェノールノボラック骨格を有す樹脂、ビスフェノールA骨格を有す樹脂、フルオレン骨格を有す樹脂、側鎖にアダマンタン骨格を有す樹脂、側鎖にアダマンチル骨格を有す樹脂、又は、側鎖にノルボルナン骨格を有す樹脂等が挙げられる。これらの環状部位を具備する樹脂に、既に説明した極性基を更に付帯させることで、転写性及び加工マスクとしての性能がより一層向上する。
また、樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であってもよい。アルカリ可溶性の樹脂であることで、中間体201のマスク層を容易に現像し、パターニングすることができる。樹脂がアルカリ可溶性樹脂の場合、樹脂にカルボキシル基が含まれることが好ましい。カルボキシル基の量は、酸当量で100〜600が好ましく、より好ましくは300〜450である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する線状重合体の質量を示す。なお、酸当量の測定は、平沼産業社製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により行われる。
また、下記の2種類の単量体の中より、各々1種又はそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる樹脂を使用することもできる。第1の単量体は、分子中に重合性不飽和基(例えば、アクリレート或いはメタクリレート)を1個有するカルボン酸又は酸無水物である。第2の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を1個有する化合物であり硬化膜の可撓性、耐ドライエッチング性等の種々の特性を保持するように選ばれる。第1の単量体及び第2の単量体の選定により、既に説明した極性基を任意に樹脂に含ませることができる。
特に、第1のマスク層103は、上記説明した樹脂の他に、モノマを含むことが好ましい。即ち、樹脂及びモノマを含むことが好ましい。ここで、モノマは本明細書により定義される樹脂以外の物質、且つ、固体微粒子や固体フィラー以外の物質として定義する。即ち、有機物、無機物又は有機無機複合体のいずれも採用できる。この場合、樹脂により運動性を阻害されたモノマが、第2の積層体2を被処理体20に当接する際に、その運動性を開放され、第1のマスク層103の表層の流動性をより向上させることができる。このため、マスク層と被処理体20との接着面積の増加をより促進することができる。
樹脂とモノマとの組み合わせは、(樹脂/モノマ)と記載すれば、(有機物/有機物)、(有機物/無機物)、(無機物/無機物)、又は(無機物/有機物)のいずれであってもよい。例えば、(有機物/無機物)であれば、上記説明した樹脂要件を満たす有機樹脂に対して金属アルコキシドを加えることができる。(無機物/無機物)であれば、上記要件を満たす樹脂要件を満たす無機樹脂、例えば、金属ポリマや金属酸化物ポリマに対して、金属アルコキシドを加えることができる。また、例えば(無機物/有機物)であれば、上記要件を満たす樹脂要件を満たす無機樹脂、例えば、金属ポリマや金属酸化物ポリマに対して、有機モノマを加えることができる。なお、金属アルコキシドは単量体として使用しても、縮合した数量体、或いはオリゴマ体を使用してもよい。なお、金属ポリマや金属酸化物ポリマとは、チタンポリマ、チタニアポリマ、チタニアオリゴマやシリコーン等であり、金属元素が連なった分子や金属元素が酸素元素を介して連なった分子の総称である。
特に、この場合、樹脂或いはモノマの少なくとも一方は硬化性物質であることが好ましいく、少なくともモノマが硬化性物質であることが好ましい。硬化性物質は、上述の樹脂が硬化性樹脂である場合についての説明において、硬化性樹脂の樹脂を物質に置き換えればよい。この場合、第1のマスク層103の収縮作用が大きくなるため、凹凸構造101aとマスク層との界面接着強度が低下し、転写性が向上する。更に、以下に説明する第1のマスク層103の軟化点が高くなることから、微細パタン220の精度が向上する。特に、樹脂及びモノマが共に硬化性物質であると、該効果はより大きくなる。なお、硬化性物質を含む場合、樹脂が硬化性樹脂である場合について上記説明したように、硬化開始剤を含むことが好ましい。
樹脂及びモノマを含む場合、モノマの粘度は25℃において概ね5cP以上5000cP以下であると好ましく、8cP以上2500cP以下であるとより好ましく、10cP以上1500cP以下であると最も好ましい。なお、ここでの粘度は、使用するモノマ全てを混合した時の混合物に対する粘度を意味する。また、第1のマスク層103と被処理体200との界面の接着強度の固定化及びマスク層の物理安定性の向上、そして第1のマスク層103の軟化点の観点から、モノマの平均官能基数は、概ね1以上6以下が好ましく、1以上4以下が好ましく、1.5以上3以下が最も好ましい。
なお、モノマは、上記化学式群(A)から選ばれる環状部位を含むモノマであると、環状部位による物理的安定性の効果と、凹凸構造101aの表面と、の化学的相互作用の低減の効果が大きくなる傾向にあるため、転写性が向上する。更に、環状部位によるエネルギの安定化の効果に伴い、加工マスクとしての性能が大きくなる。
上記説明したように少なくとも樹脂を含むことで、第1のマスク層103の露出面を、非液体状態にすることができる。ここで、非液体状態とは、液体及び気体ではないこと、として定義する。即ち、本実施の形態に係る第2の積層体2の第1のマスク層103の表面は、気体のように無形体ではなく、液体のようにその形状を自ら保持できない状態ではないことを意味する。例えば、半固体状、ゲル状、粘着状又は固体状といった表現を使用することができる。特に、第2の積層体2を平面Aに置いた状態から、第2の積層体2を平面Aに対してその底面を含む平面Bが60度をなすように、第2の積層体2を傾けて10分間静置したときに、傾ける前後における第1のマスク層103の膜厚変動が実質的にない状態として定義することもできる。この時の測定点は傾ける前後において同様の位置とする。ここで、膜厚変動が実質的にないとは、測定機器が持つ誤差等の様々な測定状況に応じて生じる測定誤差があっても変動がないことを意味する。
第2の積層体2の第1のマスク層103の露出面がこのような非液体状態を満たすことにより、第2の積層体2のマスク層の配置及び膜厚精度の維持性が高くなる。なお、最も好ましくは、第2の積層体2の第1のマスク層103の表面のタック性が抑制されている状態である。特に、温度20℃且つ遮光下にて非液体状態であることが好ましい。
更に、第1のマスク層103は、温度20℃且つ遮光下にて非液体状態であると共に、20℃超300℃以下の温度範囲の中でタック性を示すか、又は、タック性が増加することが好ましい。これにより、第2の積層体2を被処理体20に直接当接する際に、所定の温度を加えることで、第1のマスク層103の表層の接着性が発現され、又は接着性が増加する。これにより、第1のマスク層103全体の流動性を抑制しつつ、第1のマスク層103と被処理体20の界面の流動性を向上させることができるため、第1のマスク層103と被処理体20と、第2の積層体2として予め決定したマスク層の精度を反映させた中間体201を得ることができる。例えば、樹脂の幹ポリマが、熱により運動を開始しタック性を発現することとなる。中でも、温度20℃且つ遮光下にてタック性を抑制された非液体状態である第1のマスク層103が、上記温度範囲の中でタック性を発現することが最も好ましい。特に、上記説明した極性基を含む樹脂を含むことで、タック性を容易に発現することができる。
樹脂の総量とモノマの総量とは、重量部にて25:75〜100:0であると、第2の積層体2としてはタック性がないか又は極めて小さい状態であり、第2の積層体2を使用する際に初めてタック性を発現することができる。この観点から、40:60〜100:0がより好ましく、55:45〜100:0が最も好ましい。なお、上記説明したように、低分子量のモノマと、高分子量のオリゴマ或いはポリマである樹脂とを混合する場合、高分子量のオリゴマ又はポリマである樹脂は、一般的にバインダ樹脂と称される。また、バインダ樹脂及びモノマが共に硬化性物質、例えば光硬化性物質の場合、モノマは一般的にクロスリンカと称される。
更に、第1のマスク層103に染料、顔料等の着色物質を含有させることもできる。着色物を含有することで、第1のマスク層103を被処理体20に転写形成した際に、凹凸構造101aの大きさが可視光の波長より十分小さい場合にも、転写が良好に行われているかを、目視及び光学式検知手段により判断することができる。更に、モールド101の凹凸構造101a上に成膜された第1のマスク層103の品質管理に、着色物質の吸収を利用することができる。着色物質は、第1のマスク層103の凹凸構造101a由来の機能に支障をきたさぬように適宜選定できる。
用いられる着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学社製アイゼン(登録商標)MALACHITEGREEN)、ベイシックブルー20、及び、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学社製アイゼン(登録商標)DIAMONDGREENGH)が挙げられる。
光照射により発色する発色系染料としては、例えば、ロイコ染料又はフルオラン染料と、ハロゲン化合物の組み合わせがある。
ロイコ染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、及び、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物等が挙げられる。該トリアジン化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。このような発色系染料の中でも、トリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。
第1のマスク層103は、酸化防止剤を含むことができる。ここで、酸化防止剤は光安定剤であることが好ましい。光安定剤は、ラジカル連鎖開始阻止剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤に分類でき、いずれも採用できる。ラジカル連鎖開始阻止剤は、更に、重金属不活性化剤と紫外線吸収剤に分類でき、重金属不活性化剤には主にヒドラジド系とアミド系があり、紫外線吸収剤には主にベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、そしてトリアジン系と、がある。これらの中では紫外線吸収剤がより好ましい。紫外線吸収剤を含ませることにより、第1のマスク層103を光学的に安定化できるため、第2の積層体2を使用に好適な場所にて使用できる。また、ラジカル捕捉剤は、HALS及びフェノール系酸化防止剤に分類できる。
ラジカル捕捉剤は、ラジカル重合禁止剤とも称される。例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及び、ジフェニルニトロソアミンが挙げられる。また、ヒンダードアミン系光安定化剤であるHALSは特に酸化防止効果が大きいため好ましい。HALSの場合、ニトロキシラジカルの酸化体がラジカルを捕捉すると考えらえる。この場合、ニトロキシラジカルがアルコキシアミン体を経由し、再生されると考えらえる。即ち、長期に渡り酸化防止機能を発現できることから、第2の積層体2の安定性を向上できる。特にリン系の酸化防止剤と併用することで、HALS再生効果が大きくなるため好ましい。また、過酸化物分解剤は主に、リン系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤に分類できるが、これはいずれを採用することもできる。特にリン系酸化防止剤が好ましい。これは、リン系酸化防止剤を使用することで、第2の積層体2の安定性が向上するばかりか、被処理体200をドライエッチング加工する際の第1のマスク層103の安定性が向上するためである。この観点から、リン系の難燃剤を併用することもできる。以上説明した酸化防止剤は、公知市販のものを使用できる。また、リン系の酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスフィンを採用できる。
また、マスク層中に、必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させることもできる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、pートルエンスルホンアミド、ポリプロピレングリコール、及び、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
また、第1のマスク層103の中に、反応促進剤を添加することが出来る。反応促進剤としては、光酸発生剤、光塩基発生剤又は、多官能チオール等を添加出来る。これらの添加量は、反応率と硬度と、から適宜最適化することが出来るが、概ね、第1のマスク層103全体に対して、0.05重量%〜30重量%の間である。光酸発生剤は、紫外線等の活性エネルギを受けることにより、酸を発生する化合物であればよく、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩といった芳香族オニウム塩が挙げられる。光酸発生剤により発生した酸により反応を促進する。スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシスルホニウム等が挙げられる。ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウム等が挙げられる。光酸発生剤として、公知慣用の光酸発生剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。上記の芳香族オニウム塩の対アニオンの例としては、テトラフルオロボレード、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルオン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸イオン等が挙げられる。更に、増感剤を添加することも出来る。使用出来る増感剤としては、例えば、アントラセン、1,9−ジブトキシアントラセン、1,9−ジプロポキシアントラセン、カルバゾール、フェノチアジン、ペリレン、キサントン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン、2−4−ジエチル−9H−チオキサンテン−1−オンが挙げられ、公知慣用の増感剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
なお、第1のマスク層103は、多層構造であっても、多相構造であってもよい。これらの層数や相数は、微細マスクパタン202aや微細パタン220の観点から、適宜設計できる事項である。
安定化後の第1のマスク層103のTg(ガラス転位温度)は、30℃〜250℃であることが好ましく、60℃〜200℃であるとより好ましい。なお、安定化とは、第1のマスク層103に硬化性物質が含まれる場合、該硬化性物質を硬化した状態である。
特に、第2の積層体2に対して高圧水銀灯光源を使用し積算光量が1500mJ/cm2になるまで、N2雰囲気下にて光を照射し、第1のマスク層103を硬化させ、硬化した第1のマスク層103に対して以下に説明する押し込み試験を行い求められる軟化点が、45℃以上であることが好ましい。この場合、第1のマスク層103を加工マスクとして被処理体200をドライエッチング加工する際の、第1のマスク層103の物理的安定性が向上することから、被処理体200の加工精度を向上できる。同様の観点から、該軟化点は60℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、105℃以上であると更に好ましい。また、該軟化点が110℃以上である場合、被処理体200の加工速度を向上させた場合であっても、第1のマスク層103の物理的安定性を向上できる。即ち、加工速度高く、且つ、加工精度高く、被処理体200をドライエッチング加工できる。同様の観点から、該軟化点は135℃以上であることが好ましく、185℃以上であることが最も好ましい。
なお、上限値は特に限定されないが、第2の積層体2を被処理体200に貼合する際の密着性の観点から、300℃以下であることが好ましい。また、ここでの軟化点は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用い測定される軟化点のことを指す。プローブを押し付ける押圧力を一定に制御し、プローブの温度を変化させることで測定することができる。特に、株式会社日立ハイテクサイエンス社製のナノサーマル顕微鏡(nano−TA)を使用できる。
また、マスク層の内部に残存する溶剤の濃度は、以下の基準に従い測定した際に、2100(g/ml)/m3以下であると好ましい。この範囲を満たすことにより、第2の積層体2の被処理体200に対する貼合精度、第2のマスク層102による第1のマスク層103の加工精度、第1のマスク層103による被処理体200の加工精度を向上できる。前記効果をより発揮する観点から、1200(g/ml)/m3以下であることが好ましく、600(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、250(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。更に、中間体201を得る際の転写精度をよりいっそう向上させる観点から、170(g/ml)/m3以下であることが好ましく、150(g/ml)/m3以下であることがより好ましく、130(g/ml)/m3以下であることが最も好ましい。
1.第2の積層体2を20mm×20mmにカットし、10mLのアセトンにてメスアップし、溶液を採取する。
2.採取した溶液を、GC/MS装置を使用しSIM法により分析を行い、溶剤量を「g/ml」のディメンジョンにて求める。
3.第2の積層体2の第1のマスク層103及び第2のマスク層102の平均総厚みhave[m]を求める。
4.2.の結果を、第1のマスク層103及び第2のマスク層102の体積(0.02m×0.02m×have)にて除した値。
[選択比]
微細マスクパタン202aを被処理体200上に形成する観点から、第2のマスク層102をマスクとして用いた第1のマスク層103の加工は、ドライエッチングであることが好ましい。このドライエッチングによる第2のマスク層102のエッチングレート(Rm2)と、第1のマスク層103のエッチングレート(Rm1)と、の比率である選択比(Rm1/Rm2)は、微細マスクパタン202aの精度に影響を与える。選択比(Rm1/Rm2)>1は、第2のマスク層102が第1のマスク層103よりもエッチングされにくいことを意味するため、大きいほど好ましい。また、凹部内マスク層102aの配置性の観点から、選択比(Rm1/Rm2)は1000以下であることが好ましく、150以下がより好ましく、100以下が最も好ましい。
以上のような観点から、選択比(Rm1/Rm2)が、下記式(i)を満たすが好ましい。これにより、第2のマスク層102の耐エッチング性が向上し、第2のマスク層102のエッチング量が低減されるので、微細パタン構造体202の微細マスクパタン202aの精度が向上する。
式(i)
3≦Rm1/Rm2
また、選択比(Rm1/Rm2)は、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましい。選択比(Rm1/Rm2)が上記範囲を満たすことにより、厚みのある第1のマスク層103を用いた場合であっても、微細マスクパタン202aを、被処理体200上に形成することができる。このような、微細マスクパタン202aを用いることで、被処理体200を容易にドライエッチング加工することや、被処理体200上に超撥水性や超親水性、粘着性、センサといった機能を付与することができる。例えば、センサの場合、第2のマスク層102に金や銀に代表される金属を選定することでセンサを作製できる。このような金属表面に微量物質(所定の病気の進行度又は感染度等をはかる指標となる分子等)が付着した場合、金属表面の表面プラズモン(表面プラズモンポラリトン)を利用し、測定困難なppmやppbといった微量濃度であっても、光学系により感度を倍増させ検知することが可能となる。
一方、微細マスクパタン202aを得る際の第1のマスク層103のエッチング時の横方向のエッチングレート(Vo//)と、縦方向のエッチングレート(Vo⊥)、との比率である異方性(Vo⊥/Vo//)は、1超であることが好ましく、より大きいほど好ましい。なお、縦方向とは、第1のマスク層103の膜厚方向を意味し、横方向とは、第1のマスク層103の面内方向を意味する。また異方性(Vo⊥/Vo//)は、微細マスクパタン202aの高さを高くする観点から、2以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。得られる微細マスクパタン202aを用い、被処理体200を加工する場合は、ピッチがサブミクロン以下の領域においては、シャドー効果やローディング効果の影響が大きくなることから、微細マスクパタン202aの高さを高く且つ幹の太さを太くする必要がある。上記範囲を満たすことで、微細マスクパタン202aの幹の太さをを大きく保つことができるため、好ましい。
また、被処理体200のエッチングレート(Ri2)と第1のマスク層103のエッチングレート(Ri1)との比率である選択比(Ri1/Ri2)は、小さいほど好ましい。選択比(Ri1/Ri2)が1未満であれば、第1のマスク層103のエッチングレートの方が、被処理体200のエッチングレートよりも小さいため、被処理体200を容易に加工することができる。
選択比(Ri1/Ri2)が、下記式(ii)を満たすことが好ましい。これにより、エッチング精度が向上するので、微細パタン220を形成することが可能となる。また、選択比が2.5以下であることがより好ましく、第1のマスク層103を薄くできる観点から、2以下であることが更好ましく、1以下を満たすことが最も好ましい。選択比(Ri1/Ri2)が1以下を満たすことで、微細パタン構造体202の微細マスクパタン202aを加工マスクとして、被処理体200を加工する際の、加工精度がいっそう向上する。更に微細パタン220の形状制御性が向上する。更に、選択比(Ri1/Ri2)が0.8以下を満たすことで、被処理体200に設けられる微細パタン220の高さを高くできるため好ましい。なお、下限値は0.05以上であると好ましい。この範囲を満たすことにより、微細マスクパタン202aの側面が荒れた場合であっても、被処理体200に設けられる微細パタン220表面の平滑性を向上できる。同様の観点から、選択比は0.1以上を満たすことが好ましく、0.2以上を満たすことがより好ましく、0.4以上を満たすことが最も好ましい。
式(ii)
Ri1/Ri2≦3
なお、ドライエッチングレートは、各種材料のフラット膜(ベタ膜)に対し測定される値である。
例えば、選択比(Rx/Ry)を求める場合、フラットな表面を有す物質Xに対してエッチングを行い、エッチングレートRxを求める。次に、エッチングレートRxと同じ条件のエッチング条件を適用して、フラットな表面を有す物質Yに対するエッチングレートRyを求め、選択比(Rx/Ry)を算出する。
(被処理体)
図17A及び図17Bに示すように、第1のマスク層103の凹凸構造101aとは反対側の面側に被処理体200を予め設けてもよい。この場合には、図17Aに示すように、第1のマスク層103の表面上に被処理体200を設けるか、又は、図17Bに示すように、被処理体200の一主面上にハードマスク層109を設け、このハードマスク層109上に第1のマスク層103の表面を設ける構成となる。
図17A及び図17Bに示すように、被処理体200を予め設けた積層体300を第1のラインにて製造し、積層体300を第2のラインへと搬送することができる。この場合、被処理体200と第1のマスク層103との界面に異物が侵入することを抑制できる。また、第1のラインにて、積層体300のモールド101の精度、第2のマスク層102の膜厚精度、第1のマスク層103の配置精度、そして第1のマスク層103と被処理体200の貼合精度を担保することが可能となる。このため、図18Dに示すように、微細マスクパタン202aを得るのに最適な施設にて、積層体300を使用できる。このため、図18Fに示すように被処理体200を加工し微細パタン220を設ける際の、加工精度も向上できるため、微細パタン220を具備した被処理体200を使用し製造されるデバイス(特にLEDチップ)の製造安定性や歩留りを向上できる。
図17Bに示すように、被処理体200上に予めハードマスク層109を設けることにより、第2の積層体2を使用し、該ハードマスク層109を容易に精度高く加工し、ハードマスクパタンを得ることができる。被処理体200上に形成されたハードマスクパタンを加工マスクとすることで、被処理体200をエッチング加工することができる。特に、ハードマスク層109を適用することで、被処理体200を加工する際の、ウェットエッチングに対する適用性が大きく向上する。なお、ウェットエッチングを使用することで、微細パタン220の凸部の側面の結晶方位面を制御することができる。
ハードマスク層109は、被処理体200との選択比により決定されれば、その材質は特に限定されない。当該選択比は、加工性の観点から1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。加工される被処理体200のアスペクト比を高くする観点からは、選択比は5以上であることが好ましく、10以上であるとより好ましい。ハードマスク層109を薄くできるため、当該選択比は15以上であるとなお好ましい。ハードマスク層109の材質は被処理体200に適したものを、選択でき、例えば、金属や金属酸化物を使用できる。なお、選択比とは、被処理体200のエッチングレート(Rt)をハードマスク層109のエッチングレート(Rh)にて除した値(Rt/Rh)である。選択比は、被処理体200とハードマスク層109に対して同条件のエッチングを行い、算出する。
なお、ハードマスク層109は多層構造であってもよい。
被処理体200の形状は特に限定されず、平板状、円盤状、凸レンズ状、凹レンズ状、フィルム状、円柱状、球形状、又は、角錐状の被処理体200を使用できる。特に、第2の積層体2を使用することで、3インチφ以上の大型のウェハに対しても、容易に微細パタン220を設けることができる。特に、4インチφ以上であるウェハ(被処理体200)であることで、第2の積層体2を使用する際の簡便性がより向上するため、被処理体200に設けられる微細パタン220の精度が面内に渡り向上するため好ましい。被処理体200の材質は、用途により適宜選択すればよく特に限定されず、無機物も有機物も使用できる。例えば、高効率なLEDを製造するために被処理体200を使用する場合、サファイアウェハ、スピネルウェハ、シリコンウェハ、シリコンカーバイドウェハ、LED用エピタキシャルウェハ及び、窒化ガリウム系ウェハ等を挙げることができる。その他にも、金属アルミニウム、アモルファス酸化アルミニウム、多結晶酸化アルミニウム、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnO、ITO等から構成される基材を使用することもできる。また、例えば、反射防止ガラスを作製する目的であれば、ガラス板やガラスフィルム等を選択できる。太陽電池用途等で、光の吸収効率や変換効率等を向上させるために、Si基板を採用することもできる。また、超撥水性のフィルム、超親水性のフィルムを作製する場合は、フィルム基材を使用することができる。また、完全黒体を目的とすれば、カーボンブラックが練りこまれた、又は表面に塗布された基材等を採用することができる。また、第2のマスク層102に金属を採用した場合、被処理体表面に転写形成されたマスク層自体が機能を発現し、センサ(光学式センサ)として応用できる。この場合、基材はセンサの使用環境の観点で適宜選択すればよい。特に、第2の積層体2がフィルム状(リール状)の場合、裁断やパンチング加工により第2の積層体2の形状を容易に変えることができる。これにより、所定形状の微細マスクパタン202aを被処理体200の表面に任意に形成することができる。このため、例えば、被処理体200が円筒状やレンズ状である場合であっても、被処理体の表面の全て、又は部分的に微細マスクパタン202aを形成することが可能となる。
中でも、被処理体200の表面に対する水の接触角が110度以下の被処理体200を使用することで、第1のマスク層103の、第1のマスク層103と被処理体200との界面における流動性が向上するため好ましい。同様の効果から、90度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましく、45度以下であることが最も好ましい。また、被処理体200の表面の表面粗さRatは、既に説明した範囲を満たすことで、第2の積層体2の使用性が向上するため好ましい。
次に、第2の積層体2を用いた微細パタン形成方法の概略について簡単に説明する。図18Aに示すように、第2の積層体2の第1のマスク層103と被処理体200とを当接する。ここでは、特に、熱ラミネーションにより当接すると、第1のマスク層103の表層の流動性を向上させることができ、上記説明した表面粗さRaの効果が発現されるため好ましい。第2の積層体2を被処理体200に貼り合わせる際に、下記条件を満たすことで、第1のマスク層103と被処理体200と、の間に混入する外気や、第2の積層体2のスリップ、第2の積層体2の破損等を抑制できるため好ましい。まず、貼合時の、被処理体200の表面の温度は、40℃以上250℃以下であると、第2の積層体2の破損を抑制出来、且つ、第1のマスク層103と被処理体200と、の密着性が向上する。同様の観点から、60℃以上200℃以下であることがより好ましく、80℃以上150℃以下であることが最も好ましい。次に、貼り合わせる際の加温は、被処理体200自体と、ラミネートロールの双方であることが好ましい。即ち、加温されたラミネートロールを使用して、加温された被処理体200に、第2の積層体2を貼り合わせることが望ましい。この場合、ラミネートロールの表面の温度は、35℃以上150℃以下であることが好ましく、60℃以上140℃以下であることがより好ましい。第2の積層体2を被処理体200に貼り合わせる際の圧力は、線圧として1kN/m以上100kN/m以下であることが好ましい。これにより、第1のマスク層103と被処理体200と、の間のマクロバブルの密度が大きく減少すると共に、第2の積層体2の破損を抑制できる。この観点から、3kN/m以上50kN/m以下であることがより好ましく、5kN/m以上15kN/m以下であることが最も好ましい。なお、線圧は、貼り合わせられる第2の積層体2と被処理体200の、ラミネートロールの長軸方向における最大接触長さの位置における圧力である。また、貼り合わせる際の速度は、1mm/秒以上500mm/秒以下であることが好ましい。これにより、生産性と上記マイクロバブルを改善できる。同様の観点から、10mm/秒以上250mm/秒以下であることがより好ましく、10mm/秒以上100mm/秒以下であることが最も好ましい。更に、ラミネートロールの表面はタイプAのデュロメータにて測定した際のゴム硬度が、10以上150以下であることが好ましい。これにより、上記説明した温度、圧力及び時間に関わる効果を、効果的に発現可能となる。この観点から、15以上55以下であることがより好ましく、20以上35以下であることが最も好ましい。
次に、図18Cに示すように、マスク層からモールド101を除去することで、第2のマスク層102/第1のマスク層103/被処理体200から構成される中間体201を得ることができる。なお、モールド101の除去は、モールド101を物理的に剥がす剥離手法の他、モールド101の膨潤溶解や化学的溶解を採用することもできる。ここで、マスク層に硬化性物質が含有される場合、第2の積層体2と被処理体200とを貼合した状態及び/又は中間体201の状態にて硬化を促進させることが好ましい。硬化が光硬化の場合は、少なくともエネルギ線を照射すると好ましい。光硬化性物質が含有される場合は、特に、図18Bに示すように、第2の積層体2と被処理体200とを貼合した後に、モールド側或いは被処理体側の少なくとも一方からエネルギ線を照射すると好ましく、エネルギ線を照射した後に、モールド101を除去する前段階の状態において加熱処理を行うことがより好ましい。一方、硬化が熱硬化の場合は、少なくとも加熱を行うと好ましい。このように第2の積層体2に硬化性物質が含まれる場合、微細マスクパタン202aを加工マスクとして被処理体200を加工する前に、硬化を促進させると、被処理体200の加工精度が向上し、精度の高い微細パタン220を得ることができる。特に、第1のマスク層103に含まれる樹脂にガラス転移温度が存在する場合、第1のマスク層103の硬化を促進することで、該ガラス転移温度が高くなるため、被処理体200の加工精度を向上できる。
次に、図18Dに示すように、中間体201の第2のマスク層102を加工マスクとして第1のマスク層103をエッチングすることにより、被処理体200上に微細マスクパタン202aが設けられた微細パタン構造体202が得られる。この微細マスクパタン202aを加工マスクとして、被処理体200をエッチングすることで、図18Eに示すように、被処理体200が難加工基材である場合であっても、容易に加工することが可能となる。最後に、図18Fに示すように、被処理体200上の残渣を除去することにより、微細パタン220が形成された被処理体200を得ることができる。なお、該残渣の除去は、図18Eに示すエッチングを過剰に行うことで、省くこともできる。
このように、所定の表面粗さRaを有する第1のマスク層103を具備する第2の積層体2を、直接、被処理体200上に貼合することで、中間体201を転写形成できる。これにより、ナノインプリントにおける第1のマスク層103の充填や膜厚の均等化といったノウハウを排除でき、且つ、一般的な方法であるラミネートを用いて転写を行うことができるので、より簡便に中間体201を得ることが可能となる。更に、第2の積層体2を使用することで、第1のマスク層103の膜厚分布を、第1のマスク層103の凹凸構造101aに対する塗工精度にて担保できる。即ち、ナノインプリント法と比較すると、中間体201の第1のマスク層103の膜厚分布が面内に渡りより小さくなる。よって、微細マスクパタン202aの幹の太さの分布精度が向上する。このため、第2の積層体2を使用することで、微細マスクパタン202aを加工マスクとして作成される微細パタン220は、被処理体面内において高い精度を有することとなる。
次に、微細パタン構造体202の微細マスクパタン202aの好適な形状について説明する。微細マスクパタン202aを加工マスクにすることで、被処理体200を容易に加工し、微細パタン220を製造出来る。ここで、被処理体200を加工する際に、微細マスクパタン202aが倒れ、隣接するピラー同士が互いに支え合うような構造をとる場合、微細パタン220の形状は大きく歪む。即ち、物理的に安定な微細マスクパタン202aを把握する必要がある。微細マスクパタン202aの倒壊は、外力と引力により生じる。外力としては、例えば、微細パタン構造体202を搬送する際に加わる力である。引力は、微細マスクパタン202aのピラー間に生成した水による引力であり、ラプラス圧により計算できる。ここで、非常に強い圧力が加わるのは後者である。微細マスクパタン202aを構成する物質の弾性率、微細マスクパタン202aを構成するピラー間の最短距離、そして、微細マスクパタン202aを構成するピラーのアスペクト比をパラメーターにし、計算と実証を行った結果を以下に記載する。
まず、微細マスクパタン202aを構成する物質の弾性率は、中間体201の第2のマスク層102の凸部の頂部に対して、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のプローブを押し込むことで模擬的に測定した。ここで、SPMとしては、Bruker AXS製のDimension Iconを使用し、プローブとしてRTESPAを使用した。そして、押し込み時のForce Curveを、Hertzian(球状圧子モデル)で解析することで、弾性率を算出した。
ピラー間の最短距離は、微細マスクパタン構造体202の微細マスクパタン202aを走査型電子顕微鏡により、表面から観察した像より算出した。観察像内に観察される複数のピラーから、任意にあるピラーAを選択した。次に、ピラーAに最近隣するピラーBを選択した。ピラーAの輪郭とピラーBの輪郭と、の最短距離が、ピラー間の最短距離である。なお、この値は20点の相加平均値とした。
微細マスクパタン202aを構成するピラーのアスペクト比は、微細マスクパタン構造体202の微細マスクパタン202aを走査型電子顕微鏡により、断面から観察した像より算出した高さを使用し計算した。高さは、被処理体と第1のマスク層103と、の界面から、微細マスクパタン202aの凸部頂点までの最短距離である。なお、高さは10点の相加平均値とした。次に、微細マスクパタン202aの径を求めた。径は、ピラー間の最短距離を求める際の観察像から同時に求めた。表面観察像内に観察されるピラーの輪郭に対する外接円の径を、模擬的に、微細マスクパタン202aの径とした。なお、この値は20点の相加平均値とした。そして、高さを微細マスクパタン202aの径にて割ることで、アスペクト比を求めた。
計算は、微細マスクパタン202aのピラー間に形成された水による引力と、ピラーの湾曲度合を数値化することから始め、隣接するピラーが湾曲して接触した場合を倒壊として判定した。この結果、ピラー間の最短距離が狭い程、そして、アスペクト比が高い程、倒壊しやすいことが分かった。即ち、好適な微細マスクパタン202aを設計できることがわかった。計算結果から、アスペクト比が1.8以上の場合に関し、X軸にアスペクト比を、Y軸にピラー間の最短距離をとった場合に、Y=18.2X−32.7よりも上の領域に位置するXおよびYの関係を満たす微細マスクパタン202であることで、倒壊を効果的に抑制できることがわかった。特に、弾性率の小さな第1のマスク層103の場合であっても、倒壊を抑制する観点から、アスペクト比が1.8以上の場合に関しては、Y=36.4X−65.5よりも大きな領域に位置するX及びYの関係を満たす微細マスクパタン202aであることがより好ましく、Y=90.9X−163.6よりも大きな領域に位置するX及びYの関係を満たす微細マスクパタン202aであることが最も好ましいことがわかった。
次に、上記計算結果と実験との対応をとるために、第1のマスク層103の弾性率をパラメーターにとった。ここで、弾性率としては、0.3GPa、0.5GPa、1.6GPa、3.1GPa、4.4GPa、そして8.7GPaまで変化させた。この弾性率の変化と、上記計算結果から推測される倒壊と、の相関をとったところR2=0.912の相関性がとれた。以上から、上記考察した計算結果による好ましい範囲は妥当な範囲であると考えられる。更に、弾性率が0.3GPaの場合、倒壊を抑制可能な、且つアスペクト比が1.8以上の範囲は狭くなり、これに伴い微細パタン220の選択マージンが狭まることがわかった。なお、微細パタン220の選択マージンとは、微細パタン220の径、高さ、断面形状、及び間隔を設計する際の設計自由度を意味する。以上から、弾性率としては0.5GPa以上が好ましい。また、微細パタン220の選択マージンを十分に大きくする点から、1.6GPa以上がより好ましく、3.1GPa以上が最も好ましい。
次に、第2の積層体2の製造方法について詳細に説明する。
[製造方法]
第2の積層体2は、モールド101を製造し、モールド101に対してマスク層を配置することで製造される。
(モールド101の製造)
モールド101は、支持基材100の表面、或いは、支持基材100に成膜し設けられた被ナノ加工層の表面を、転写法や、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法や、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等によりナノ加工することで製造されてもよい。また、支持基材100の表面に、マクロ相分離、ミクロ相分離、交互積層法、ナノ粒子の自己配列法、ナノ粒子を有機バインダにより配列させる方法等により凹凸構造101aを設け製造されてもよい。中でも凹凸構造101aの精度及び製造速度の観点から、転写法を採用すると好ましい。転写法とは、一般的にナノインプリント法と称される方法であり、光ナノインプリント法、熱硬化性樹脂を使用した熱ナノインプリント法、熱可塑性樹脂を使用した熱ナノインプリント法、又は、室温ナノインプリント法等があり、いずれも採用できるが、特に、凹凸構造101aの精度及び製造速度の観点から、光ナノインプリント法を採用することが好ましい。この場合、凹凸構造101aの鋳型となるマスターは円筒状マスターであることが、最も好ましい。
(マスク層の配置)
マスク層は少なくとも2回成膜される。即ち、第2のマスク層102を成膜し、第1の積層体1を製造し、該第1の積層体1に対して第2の積層体2を成膜することで、第2の積層体2を製造できる。
マスク層のモールド101の凹凸構造101aに対する配置方法は、ドライプロセス及びウェットプロセスに分類できる。なお、例えば、第2のマスク層102をドライプロセスにより成膜し、第1のマスク層103をウェットプロセスにより成膜することもできる。
ドライプロセスとしては、例えば蒸着法やスパッタ法を採用できる。この時、蒸着やスパッタの凹凸構造101aに対する角度を変えることで、マスク層の配置箇所を制御することもできる。ウェットプロセスとしては、例えば、マスク層の原料を溶剤にて希釈した塗工液を凹凸構造101aに対して塗工し、その後、溶剤を除去する方法を採用できる。その他にも、マスク層の原料を希釈せずに直接塗工する方法や、塗工液或いはマスク層の原料を塗工した後に、余剰な塗工液を、気流や物理的切片により除去する方法を、採用することもできる。特に、第1のマスク層103も第2のマスク層102も、共に、溶剤にて希釈した塗工液を使用して成膜されることが、マスク層の配置精度及び膜厚精度の観点から好ましい。
塗工方法は特に限定されないが、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、マイクログラビア法、バーコート法、ローラーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、フローコート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。
また、マスク層の成膜に際しては、凹凸構造101aに対して、非接触式の方法を採用することが好ましい。これは、凹凸構造101aに対する傷を抑制し、マスク層の精度をより高めるためである。
次に、モールド101の製造方法についてより詳細に説明する。モールド101は、工業性と凹凸構造101aの精度の観点から、円筒の表面に微細パタンが具備されたロールを、円筒状マスターモールド(鋳型)とした転写法により製造されることが好ましい。ここで、転写法は光ナノインプリント法であることが好ましい。これにより、連続的に、生産性高く、且つ精度の高い凹凸構造101aを具備したモールド101を得ることができる。
なお、円筒状マスターモールドからモールドAを製造し、モールドAを鋳型として、樹脂モールドBを製造し、モールドBを使用して第2の積層体2を製造することができる。この場合、円筒状マスターモールドの嵩張るコストを大きく吸収できると共に、円筒状マスターモールドの微細パタンの選択肢が大きくなるため、好ましい。この場合、モールドA及びモールドBは、上述した比率(Es/Eb)を満たすモールドであることが最も好ましい。なお、比率(Es/Eb)を満たすモールドを使用することで、1つの円筒状マスターモールドから、N枚のモールドAを製造し、1枚のモールドAから、M枚のモールドBを製造することができる。即ち、1つの円筒状マスターモールドから、N×M枚のモールドBを製造できる。
次に、第2のマスク層102の成膜方法について、より詳細に説明する。第2のマスク層材料の希釈溶液(以下、第2の塗工液、と呼ぶ)を、モールド101の凹凸構造101a上に成膜し、その後、余剰な溶剤を除去することで、第2のマスク層102を配置することができる。この時、第2の塗工液の濃度は、単位体積当たりの第2のマスク層材料の固形分量が、単位面積下に存在する凹凸構造101aの体積より小さくなる。即ち、モールド101の一主面に平行な面内における単位面積をS2とし、第2の塗工液の塗工膜厚(ウェット膜厚)をh2とし、第2の塗工液の体積濃度をC2とし、且つ、単位面積S2の領域下に存在する凹凸構造の101a凹部体積をV2としたときに、下記式(13)を満たすように凹凸構造101a上に第2の塗工液を塗工する。下記式(13)を満たすことにより、凹部内マスク層102aの充填配置することができる。
式(13)
S2・h2・C2<V2
なお、単位面積(S2)とは、モールド101の凹凸構造101aの上部に配置され、モールド101(支持基材100)の一主面と平行な面の面積である。
また、凹部体積(V2)とは、単位面積(S2)の領域下に存在する凹凸構造101aの凹部の体積の合計値である。即ち、単位面積(S2)をモールド101(支持基材(100))の主面方向に垂直に降下させたときに、単位面積(S2)が、凹凸構造101aの頂部と交わってから底部と交わり終えるまでに通過した、凹凸構造101aの空隙部(凹部101c)体積が凹部体積(V2)である。
塗工膜厚(h2)は、第2の塗工液の塗工膜厚(ウェット膜厚)として定義されるが、凹凸構造101aに塗工した状態での塗工膜厚の測定は困難であるため、凹凸構造101aと概ね同等の材質で作製したフラット膜面上での膜厚を塗工膜厚(h2)として定義する。即ち、凹凸構造101aを構成する材質と略同等又は同等の材質によるフラット膜に対し、凹凸構造101a上の成膜条件と同様の条件にて塗工した膜の膜厚を、塗工膜厚(h2)として採用する。
体積濃度(C2)は、第2の塗工液の体積濃度として定義される。
上記式(13)を満たすことにより、凹凸構造101aの凹部101c内部に凹部内マスク層102aを配置可能となる。凹部内マスク層102aを、凹凸構造101aの凹部101c内部に配置する配置精度の観点から、S2・h2・C2≦0.9V2がより好ましく、S2・h2・C2≦0.8V2を満たすとなお好ましい。
第2の塗工液を塗工する際の、圧力は、1kPa以上であると、塗工性が向上するため好ましい。特に、凹部内マスク層102aの充填配置精度を向上させる観点から、塗工に係る圧力は10kPa以上であることが好ましく、20kPa以上であることが好ましく、100kPa以上であることが最も好ましい。
第2の塗工液に使用する溶剤は、特に限定されず、親水性溶剤も疎水性溶剤も、モールド101の凹凸構造101aを破損しない範囲内において、使用できる。特に、極性溶剤であることで、第2のマスク層102の充填配置性が向上するため好ましい。極性溶剤としては、例えば、アルコール、エーテル、エステル及びケトンが挙げられる。
第2の塗工液に使用する溶剤は、少なくとも2種類以上含まれることが好ましい。特に、モールド101の凹凸構造101aに対する接触角が90度以上の溶剤Aと、該接触角が90度未満の溶剤Bを混合することで、凹部内マスク層102aの配置精度が向上すると共に、凸部上マスク層102bを小さくすることができる。更に、該溶剤Aの蒸気圧を、該溶剤Bの蒸気圧に比べて小さくすることで、前記効果が最大限に発現されるため好ましい。
第2の塗工液を塗工した後に、溶剤の除去は、室温乾燥も含めた公知一般の乾燥方法を採用できる。特に、上記説明した残存溶剤量を満たすことが好ましい。
また、第2の塗工液を塗工する前のモールド101の前処理は、除電処理やクリーニング、親水化処理、疎水化処理等の公知一般の手法を適宜導入できる。
第1の塗工液の濃度は、単位体積当たりの第1のマスク層材料の固形分量が、単位面積下に存在する凹凸構造101aの体積より大きくなるように設定する。また、ここでの単位面積下に存在する凹凸構造101aの体積は、第1の積層体1に対するそれであるため、モールド101に対する凹部体積Vcより小さくなっている。即ち、第1の塗工液の塗工膜厚(ウェット膜厚)をh1、第1の塗工液の体積濃度をC1とした場合に、下記式(14)を満たしていれば、特に限定されない。
式(14)
S1・h1・C1≧V1
なお、単位面積(S1)とは、第1の積層体1の凹凸構造101aの上部に配置され、モールド101(支持基材100)の一主面と平行な面の面積である。
また、凹部体積(V1)とは、単位面積(S1)の領域下に存在する凹凸構造101aの凹部の体積の合計値である。即ち、単位面積(S1)をモールド101(支持基材(100))の主面方向に垂直に降下させたときに、単位面積(S1)が、凸部上マスク層102bの頂部と交わってから凹部内マスク層102aの表面と交わり終えるまでに通過した、凹凸構造101aの空隙部(凹部101c)体積が凹部体積(V1)である。なお、凸部上マスク層102bのない場合、即ち距離(lcv)が0の場合、凹凸構造101aの凸部頂部と交わってから凹部内マスク層102aの表面と混じり終えるまでに通過した、凹凸構造101aの空隙部の体積が凹部体積(V1)である。
塗工膜厚(h1)は、第1の塗工液の塗工膜厚(ウェット膜厚)として定義されるが、第1の積層体1に塗工した状態での塗工膜厚の測定は困難であるため、凹凸構造101aと概ね同等の材質で作製したフラット膜面上での膜厚を塗工膜厚(h1)として定義する。即ち、凹凸構造101aを構成する材質と略同等又は同等の材質によるフラット膜に対し、凹凸構造101a上の成膜条件と同様の条件にて塗工した膜の膜厚を、塗工膜厚(h1)として採用する。
体積濃度(C1)は、第1の塗工液の体積濃度として定義される。
塗工膜厚(h1)の範囲は、S1・h1・C1≧V1を満たすように適宜設定できるため、特に限定されないが、第1のマスク層103の成膜性と、使用時の貼合性の観点から、S1・h1・C1≧1.5V1であることが好ましく、S1・h1・C1≧2V1であるとより好ましい。
第1の塗工液を塗工する際の、圧力は、1kPa以上であると、塗工性が向上するため好ましい。特に、第1のマスク層103の膜厚精度を向上させる観点から、塗工に係る圧力は10kPa以上であることが好ましく、20kPa以上であることが好ましく、100kPa以上であることが最も好ましい。
第1の塗工液に使用する溶剤は、特に限定されず、親水性溶剤も疎水性溶剤も、モールド101の凹凸構造101aを破損しない範囲内において、使用できる。特に、極性溶剤であることで、第1のマスク層103の膜厚精度が高くなるため好ましい。極性溶剤としては、例えば、アルコール、エーテル、エステル及びケトンが挙げられる。
第1の塗工液に使用する溶剤は、少なくとも2種類以上含まれることが好ましい。特に、モールド101の凹凸構造101aに対する接触角が90度以上の溶剤Aと、該接触角が90度未満の溶剤Bを混合することで、第1のマスク層103の膜厚の分布を小さくできる。更に、該溶剤Aの蒸気圧を、該溶剤Bの蒸気圧に比べて小さくすることで、前記効果が最大限に発現されるため好ましい。
第1の塗工液を塗工した後に、溶剤の除去は、室温乾燥も含めた公知一般の乾燥方法を採用できる。特に、上記説明した残存溶剤量を満たすことが好ましい。
また、第1の塗工液を塗工する前の第1の積層体1の前処理は、除電処理やクリーニング、親水化処理、疎水化処理等の公知一般の手法を適宜導入できる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1においては、第2の積層体2の第1のマスク層の表面粗さRaの転写性への影響を簡便に調査した。第2の積層体2を次のように作製した。まず(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、モールドを作製した。(3)その後、モールドに対し第2のマスク層及び第1のマスク層をそれぞれ成膜し、第2の積層体を作製した。続いて、(4)第2の積層体を使用し、中間体を作製した。その後、(5)微細パタン構造体を経由して、被処理体に微細パタンを作製した。その後、(6)半導体発光素子を作製した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により円筒状石英ガラスの表面に、凹凸構造を形成した。まず石英ガラス表面を十二分に洗浄し、パーティクルを除去した。続いて、円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用い、レジスト層表面を一度露光した。続いて、一度露光されたレジスト層に対し、波長405nmのレーザ光を照射した。この時、露光パタンにより、ナノ構造の配列を制御した。次に、露光後のレジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240秒間処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa及び処理電力300Wの条件で実施した。処理時間を変化させることで凹凸構造の開口部の大きさ及び凹凸構造の深さを調整した。最後に、表面に凹凸構造が付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスの凹凸構造に対し、フッ素系表面処理剤(デュラサーフHD−1101Z、ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、洗浄剤(デュラサーフHD−ZV、ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にモールドG1を作製した。続いて、モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的にモールドG2を得た。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように以下に示す材料1を塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状樹脂モールドG1(長さ200m、幅300mm)を得た。
次に、モールドG1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、モールドG2を作製した。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、材料1を塗布膜厚2μmになるように塗布した。次いで、モールドG1の凹凸構造面に対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状樹脂モールドG2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料1…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)):トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(M350(東亞合成社製)):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure(登録商標)184(BASF社製 )):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369(BASF社製))=17.5g:100g:5.5g:2.0gにて混合した材料
モールドG2を切り出し、走査型電子顕微鏡により観察を行った。モールドG2の凹凸構造は、三角格子の交点位置に複数の凹部設けられた、ホール状構造であった。また、平均ピッチ(Pav)は300nmであり、平均開口径は280nm、平均開口率は79%、平均凹部深さhは300nmであった。また、凹部の開口径は、凹部底部の径よりも大きく、凹部側面は傾斜を有していた。更に、凸部頂部と凹部側面部とは連続的に滑らかにつながった構造であった。走査型電子顕微鏡観察は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8010(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用し、1.0kVの加速電圧にて行った。なお、以下の実施例にて表記する走査型電子顕微鏡は全て、本走査型電子顕微鏡である。
(3)微細パタン形成用積層体(第2の積層体)の作製
モールドG2の凹凸構造面に対して、下記第2の塗工液1を塗工し、第1の積層体を作製した。続いて、第1の積層体の凹凸構造面上に、第1の塗工液1を塗工し、第2の積層体を得た。
第2の塗工液1…チタニウムテトラブトキシド,モノマ(和光純薬工業社製):3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製):フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製):1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure184、BASF社製):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure369、BASF社製)=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7gにて調合し、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて希釈した塗工液
第1の塗工液1…材料(3)…バインダ樹脂:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833、SARTOMER社製):トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR368、SARTOMER社製):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure(登録商標)184(BASF社製)):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369(BASF社製))=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53gにて混合した組成物をプロピレングリコール及びメチルエチルケトンの混合溶剤にて希釈した材料。なお、バインダ樹脂は、ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量430、分散度2.7)を使用した。
第2の塗工液1を、モールドの製造に使用した装置と同様の装置を使用し、モールドG2の凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの固形分量が、単位面積当たりの凹凸構造の体積よりも20%以上小さくなるように設定した。塗工後、85℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、第2のマスク層を凹凸構造内部に内包する第1の積層体を巻き取り回収した。
第1の積層体を切り出し、走査型電子顕微鏡を用い断面観察を行ったところ、モールドG2の凹部内部に凹部内マスク層が充填されていることが観察された。また、透過型電子顕微鏡とエネルギ分散型X線分光法を併用することで、モールドG2の凸部頂上に、凸部上マスク層が配置されていないことが確認された。ここで、透過型電子顕微鏡とエネルギ分散型X線分光法の分解能は数nm以下であることから、距離(lcv)は数nm以下となる。また、凹部内マスク層の平均充填量は、深さ換算にて80nmであったことから、距離(lcc)は220nm(=0.73h)であることが確認された。
続いて、第1の積層体を巻き出すと共に、ダイコータを使用し、第1の塗工液1を、凹凸構造面上に直接塗工した。塗工後、95℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、第1のマスク層の表面にカバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。ここで、カバーフィルムの種類及びカバーフィルムを貼合する際の圧力及び温度を制御することで、第2の積層体の第1のマスク層表面の表面粗さを制御した。
第2の積層体を切断し、第1のマスク層の表面の表面粗さRaを求めた。表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(株式会社キーエンス社製のNanoscale Hybrid Microscope VN−8000)を使用し、測定範囲を200μm(比率1:1)に設定し、サンプリング周波数0.51Hzにて操作し測定した。原子間力顕微鏡の観察は、湿度が40%〜50%のクラス1000のクリーンルームで行い、上記装置VN−8000に付帯される光学顕微鏡により異物の観察された箇所を避けて行った。また、サンプル測定前に、サンプルをイオナイザにより除電し、更にエアブローにて洗浄した。
また、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用い断面観察を行い、距離(lor)を求めたところ、150nmであった。距離(lor)は、原子間力顕微鏡にて使用したサンプルと略同じ位置の断面を、上記走査型電子顕微鏡を使用し、加速電圧1.0kVにて解析し測定した。距離(lor)を求めるに当たり、20μm間隔毎に撮像を行い、5つの観察像を得た。各観察像から、距離(lor)を任意に5つ測定し、計25点の距離(lor)の相加平均値を距離(lor)とした。また、観察倍率は、鮮明に観察されるモールドG2の凹凸構造の複数の凹部が10〜20個、観察像内に収まる倍率とした。
なお、以下の実施例において評価した第2の積層体の第1のマスク層の表面粗さRa及び距離(lor)は、上記装置と条件により測定した値である。
解析結果を表1にまとめた。表1に記載のNo.1のサンプルは、第2の積層体2を製造する際に、カバーフィルムを使用せずに作製した場合である。即ち、支持基材であるPETフィルムの凹凸構造とは反対側の面が、第1のマスク層の保護層として機能している場合である。
No.2のサンプルは、COPフィルムをカバーフィルムとして使用した場合である。
No.3のサンプルは、LDPE(低密度ポリエチレン)フィルムをカバーフィルムとして選択した場合である。
No.4のサンプルは、平均ピッチが300nmの凹凸構造を具備するカバーフィルムを作製し、当該カバーフィルムを使用した場合である。
(4)中間体の作製
作製した第2の積層体を使用し中間体を作製した。この時の貼合及び転写性を確認した。
被処理体として4インチφのサファイア基材(c面、オフ角0.2度)を選択した。サファイア基材に対してUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、第2の積層体を、サファイア基材に対して貼合した。この時、サファイア基材を105℃に加温した状態で貼合した。続いて、サファイア基材を23℃まで自然冷却した。
続いて、積算光量が1200mJ/cm2になるように高圧水銀灯を使用しUV光を照射し、モールドG2を剥離した。剥離後に、サファイア基材上に転写された第2のマスク層及び第1のマスク層に対し、原子間力顕微鏡に付帯される光学顕微鏡を使用し、転写性を判断した。結果を表2にまとめた。なお、本試験は表2中の「転写」に記載した。
表2に記載した評価は以下の指針に従った。なお、下記評価指針は、貼合雰囲気中の異物により生成するエアボイドも含んでいる。
◎+… 直径が10μm以上100μm以下のエアボイドの数が5個以下であった場合。
◎… 該エアボイドの数が6個以上12個以下であった場合。
〇… 該エアボイドの数が13個以上25個以下であった場合。
△… 該エアボイドの数が26個以上50個以下であった場合。
×… 該エアボイドの数が51個以上であった場合。
表1及び表2より、第1のマスク層の表面のRaが小さい程、転写性が良好になることがわかる。これは、第1のマスク層の表層の流動性により、第1のマスク層とサファイア基材との界面のエアボイドに代表される界面不陸を良好に吸収できたためである。
(5)微細パタンの作製
最後に、中間体から出発して、微細パタン構造体を経由して、被処理体を加工し、微細パタンを得た。
中間体の第2のマスク層側から、酸素ガスを使用したエッチングを行い、第1のマスク層を加工して、微細マスクパタンを得た。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa、電力300Wの条件にて行った。続いて、BCl3ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイア基材を加工した。反応性イオンエッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、微細パタンを表面に具備するサファイア基材を得た。
サファイアの表面に作製された微細パタンの形状は、円筒状マスターモールドに作製した凹凸構造の形状、モールドを製造する際のニップ圧条件、ドライエッチングの処理条件により適宜制御できた。
走査型電子顕微鏡観察より、微細パタンは、複数のほぼ円錐状凸部が互いに離間し配列していることが観察された。また、凹部底部には平坦面が設けられていた。また、凸部の底部の輪郭形状は真円ではなくわずかに歪んでいることが確認された。更に、ほぼ円錐状凸部の凸部側面の傾斜角度は二段階に変化していた。
第2の積層体を使用しサファイア基材上に第2のマスク層及び第1のマスク層が転写付与された箇所における、ドライエッチング後のサファイア基材に対する走査型電子顕微鏡観察から、サファイア基材上に、凹凸構造が表1の記載の第2の積層体の種類によらず、形成されていることが確認された。結果を表2に記載した。なお、表2中、「加工」が、本観察結果に相当する。
以上から、第2の積層体を使用することで、第2のマスク層及び第1のマスク層を転写付与できた箇所においては、サファイアを良好に加工することが可能であることがわかる。
(6)半導体発光素子の作製
得られたサファイア基材上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファ層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。サファイア基材上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。最後に、チップ化し、チップに対する出力性能を評価した。
評価は、横軸にLEDチップの性能、縦軸にLEDチップの個数を記録した図より行った。結果を表2に記載した。なお、本試験結果は表2中の「分布」に記載した。
構造を有さない、即ち平坦なサファイア基板を使用した場合のLEDチップ分布を基準として、該基準分布よりも分布が2%〜4%右にシフトした場合を△、5%〜7%右にシフトした場合を〇、8%〜9%右にシフトした場合を◎、10%以上右にシフトした場合を◎+とした。また、×は分布のシフトが2%未満であった場合である。
以上から、第2の積層体を使用することで、LEDの性能分布を改善できることがわかる。この理由は以下のように考えることができる。
第2の積層体を使用することで、サファイア基材の表面の一部に、或いは全面にナノパタンを形成することができる。サファイア基材上にナノパタンが設けられた場合、半導体結晶層の成長に際し、化学蒸着の成長モードを乱すことが可能となる。即ち、LEDの半導体層内に存在する転位を低減できるため、内部量子効率を向上させることが可能となる。このため、高効率なLEDチップの個数が転写精度に伴い増加したと考えられる。
(実施例2)
実施例1より、第1のマスク層の表面の粗さRaにより、転写性が大きく左右されることが確認された。実施例2においては、第1のマスク層の表面粗さRaの影響をより詳細に調査した。
実施例1と同様に、第1の積層体を製造した。続いて、第1の積層体を裁断し、凹凸構造上に第1の塗工液1を、バーコータ法により塗工した。塗工線速は25mm/sec.とした。その後、95℃の乾燥炉内に10分間静置させ、第2の積層体を得た。第2の積層体に対して走査型電子顕微鏡観察を行い、距離(lor)が800nmであることを確認した。次に、第2の積層体の第1のマスク層に対して、カバーフィルムを、ラミネータにて貼り合わせた。ラミネータの条件は、温度を60℃にし、圧力を0.01MPa、0.05MPa及び0.1MPaとした。カバーフィルムとしては、モールドG1を使用した。カバーフィルムとして使用したモールドG1の平均ピッチ(Pav)は、100nm、300nm、500nm、700nm、900nm又は1200nmのいずれかである。即ち、カバーフィルムとして6種類、カバーフィルムの貼り合わせ条件として3条件の合計18条件の検討を行った。ここでは、カバーフィルム表面の物理的性状を、第1のマスク層に転写することで、表面粗さRaを制御していることになる。
実施例1と同様に中間体を製造し、転写性及び減少率を評価した。転写性の評価指標は実施例1と同様である。結果を表3及び表4に記載した。
表3より、第1のマスク層の表面の表面粗さRaが470nm以下になることで、転写性が大きく向上していることがわかる。これは、第1のマスク層の表層の流動性が向上したためと考えられる。
表4より、第2の積層体をサファイア基材に貼り合わせる際の速度を、10mm/sec.〜100mm/sec.の範囲にて、10mm/sec.毎に変化させたところ、速度が速くなる程、表面粗さRaが580nm以上の領域においては、エアボイドの数が増加するだけでなく、第1のマスク層とサファイア基材とが密着しない部分の割合が特に増加することが確認された。より具体的には、表面粗さRaが580nm以上の領域においては、第2の積層体をサファイア基材に貼り合わせる際の速度が10mm/sec.の場合を基準として、50mm/sec.に増加させた時の、第1のマスク層のサファイア基材に対して転写された割合の減少率が50%を超えていることが確認された。一方で、表面粗さRaが470nm以下の領域においては、該減少率は20%未満であった。
減少率の評価指標は以下の通りである。
◎+…第2の積層体をサファイア基材に貼りあわせる際の速度が10mm/sec.の場合を基準として、50mm/secに増加させた時に、第1のマスク層のサファイア基材に対して転写された割合の減少率が5%未満の場合。
◎… 該減少率が、6%超10%未満の場合。
〇… 該減少率が、11%超15%未満の場合。
△… 該減少率が、16%超20%未満の場合。
×… 該減少率が、20%超の場合。
以上から、表面粗さRaが小さい程、第1のマスク層の表層の流動性が良好となり、第1のマスク層とサファイア基材との界面不陸を吸収する効果が大きくなるため、転写性が良好に保たれると考えることができる。特に、表面粗さRaが500nm以下であることが好ましいことが分かった。更に、表面粗さRaが290nm以下の範囲の場合、エアボイドの発生率がより低減することが確認された。特にこの場合、別の検討から、第2の積層体を被処理体に貼り合わせる際の圧力を低く保つことができることがわかった。この観点から300nm以下がより好ましいと考えられる。更に、表面粗さRaが150nm以下であれば、転写性がより良好になることがわかった。また、エアボイドの大きさが小さくなることが確認された。この場合、別の検討から、第2の積層体をサファイア基材に貼りあわせる際の、ラミネート圧力の分布(斑)に対する許容度が大きいこともわかった。この観点から、150nm以下であることがより好ましい。更に、50nm以下であれば、4インチのサファイア基板上のエアボイドの数が減少すると共に、その大きさが非常に小さくなることが確認された。即ち、第1のマスク層のサファイア基材に対する転写率を考えた場合、非常に大きくなることがわかった。
一方で、別途第1のマスク層の表面粗さRaの最低値を調査した。表面粗さRaを限りなく小さくするために、カバーフィルムの代わりにフッ素系シランカップリング材にて単層表面処理をしたシリコンウェハを使用し、真空下にて第1のマスク層に貼り合わせた。この時、40℃に加温した状態にて貼り合わせを行った。また、24℃まで冷却し除去した。このようにして、表面粗さRaを非常に小さくしたサンプルを作製した。ここで、表面粗さRaは、1nm程度まで減少させることができた。このような表面粗さRaが非常に小さな場合であっても、上記説明した結果に特異的な変化は見られなかった。しかしながら、第2の積層体の量産性及び制御性は劣ることがわかる。よって、第1のマスク層の表面の粗さRaは、1nm以上であることが好ましい。特に、2nm以上であれば、第2の積層体を量産する際の、第1のマスク層の破損を抑制しやすいことがわかった。
更に、上記検討において、モールドG2の表面自由エネルギを変化させた。表面自由エネルギは、モールドを製造する際に使用した材料1のフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製))の添加量を変化させることで行った。具体的には、材料1のトリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(M350(東亞合成社製))に対する添加量を1重量%〜30重量%の間にて変化させた。作製したモールドG2に対して、水滴の接触角を測定した。モールドG2としては、接触角表記にて、91度、101度、114度、125度、139度及び148度の6種類を作製した。この6種類のモールドG2を使用した場合であっても、上記説明した表面粗さRaの傾向は同様に観察された。即ち、モールドの表面自由エネルギの影響によらず、転写性を良好に保つことができることがわかった。
また、上記検討において、被処理体の表面自由エネルギを変化させた。表面自由エネルギは、サファイア基材に対する表面処理を行い変化させた。より具体的には、無水トルエン溶剤の中にサファイア基材を浸漬し、105〜110℃の温度にて30分間加温した。次に、無水トルエンにメチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランの混合物を10重量%の濃度にて溶解させた。得られた溶液の中に、浸漬加温処理を施したサファイア基材を浸漬した。この時、24℃にて8時間保持した。その後、サファイア基材を取り出し、無水トルエンにて十分に洗浄した後に、アセトンにて洗浄し、最後にエタノールにて洗浄した。洗浄後、サファイア基板を120℃にて15分間乾燥させ、処理を完了した。ここで、メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを、モル比を1:99〜92:8の間にて変化させた。得られたサファイア基材に対して水滴の接触角を測定した。サファイア基材としては、接触角表記にて、25度、61度、69度、81度、91度、109度及び117度の7種類を作製した。この7種類のサファイア基材を使用した場合であっても、上記説明した表面粗さRaの傾向は同様に観察された。即ち、サファイア基材の表面自由エネルギの影響によらず、転写性を良好に保つことができることがわかった。
(実施例3)
実施例1及び実施例2より、第2の積層体の第1のマスク層の表面粗さRaが所定の範囲であれば、モールドの表面自由エネルギ及び被処理体の表面自由エネルギによらず、転写性を良好に保てることがわかった。実施例3においては、被処理体の加工に注目し、第1のマスク層の好ましい物性を調査した。
実施例1と同様に、モールドG2を作製した。但し、円筒状マスターモールドの凹凸構造の平均ピッチを700nmに変更した。これに伴い、モールドG2の平均ピッチも700nmに変更した。続いて、実施例1と同様に第1の積層体を製造した。
続いて、第1の積層体1の凹凸構造面上に、下記組成物3−1〜3−12を塗工した。なお、塗工方法は、実施例2と同様にし、バーコータ法を採用した。また、第1の塗工液に使用した溶剤は、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びメチルイソブチルケトンの混合溶剤とした。また、乾燥温度は105度とした。また、いずれの組成物を使用した場合も、実施例1の表1のNo.1に記載のサンプルと同様に第2の積層体を回収した。
・組成物3−1
下記環状部位(A)を含むバインダ樹脂:下記繰り返し単位(a)と下記繰り返し単位(b)とから構成される共重合ポリマ。分子量は2900。繰り返し単位bの繰り返し数Nbと繰り返し単位aの繰り返し数Naとの比率(Nb/Na)は9。なお、環状部位(A)の構成炭素数は、10であり、環状部(A)には、6員環が含まれる。
なお、Xは環状部位(A)であり、環状部位(A)の「*」とXとが一致する。
・組成物3−2
下記環状部位(B)を含むバインダ樹脂:分子量580のポリ(N−ビニルカルバゾール)ポリマ。なお、環状部位(B)の構成炭素数は、12であり、環状部(B)には、6員環が含まれる。なお、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure184、BASF社製)をバインダ樹脂に対して3.8重量%添加した。
・組成物3−3
上記環状部位(B)を含むバインダ樹脂:分子量が25000〜50000のポリ(N−ビニルカルバゾール)。
・組成物3−4
下記環状部位(C)を含むバインダ樹脂:クレゾールノボラック系エポキシアクリレートであり、アクリレート置換率は略100%。下記環状部位(C)を繰り返し単位としており、繰り返し単位数nが0〜6まで含まれるホモオリゴマ。なお、繰り返しは、CH2の炭素元素に結合する「*」及び6員環に結合する「*」にて繰り返される。なお、環状部位(C)の構成炭素数は、14であり、環状部(C)には、6員環が含まれる。また、光重合開始剤としてαアミノアルキルフェノン系の2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure379EG、BASF社製)を3.17重量%添加した。
・組成物3−5
組成物3−1に対して、下記環状部位(D)を有すモノマを添加した。モノマの分子量は546であり、2官能の光重合性モノマである。光重合性基はアクリロイル基である。なお、環状部位(D)の構成炭素数は、25であり、環状部(D)には、6員環及び5員環が含まれる。バインダ樹脂とモノマと、の混合比率は重量部にて3.6:6.4とした。
・組成物3−6
組成物3−2に対して、組成物3−5に使用したモノマを添加した。バインダ樹脂とモノマと、の混合比率は重量部にて7.1:2.9とした。なお、光重合開始剤の添加量は、バインダ樹脂とモノマの総量に対して3.48重量%になるように調整した。
・組成物3−7
組成物3−3に対して、組成物3−5に使用したモノマを添加した。バインダ樹脂とモノマと、の混合比率は重量部にて6.2:3.8とした。
・組成物3−8
組成物3−4に対して、組成物3−5に使用したモノマを添加した。バインダ樹脂とモノマと、の混合比率は重量部にて4.8:5.2とした。なお、光重合開始剤の添加量は、バインダ樹脂とモノマの総量に対して3.49重量%になるように調整した。
・組成物3−9
下記繰り返し単位(c)と繰り返し単位(d)と、から構成される共重合ポリマからなるバインダ樹脂:平均分子量は5500であり、繰り返し単位(c)と繰り返し単位(d)との比率は6:4。なお、バインダ樹脂に対して、4.2重量%のオキシムエステル系のエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム) (IrgacureOXE02、BASF社製)を添加した。
・組成物3−10
上記繰り返し単位(c)と上記繰り返し単位(d)とから構成される共重合ポリマからなるバインダ樹脂:平均分子量は100000であり、繰り返し単位(c)とり返し単位(d)との比率は4:6。なお、バインダ樹脂に対して、3.12重量%のαアミノアルキルフェノン系の2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure379EG、BASF社製)を添加した。
・組成物3−11
組成物3−9に対して、組成物3−5に使用したモノマを添加した。バインダ樹脂とモノマと、の混合比率は重量部にて4.3:5.7とした。なお、光重合開始剤の添加量は、バインダ樹脂とモノマの総量に対して3.48重量%になるように調整した。
・組成物3−12
組成物3−10に対して、組成物3−5に使用したモノマを添加した。バインダ樹脂とモノマと、の混合比率は重量部にて4.8:5.2とした。なお、光重合開始剤の添加量は、バインダ樹脂とモノマの総量に対して3.48重量%になるように調整した。
実施例1と同様に、但し第2の積層体をサファイア基板に貼り合わせる際の温度を85℃〜90℃に変更し、中間体を得た。
実施例1と同様に、中間体に対して酸素ガスを使用したエッチングを行い、微細パタン構造体を得た。次に、微細パタン構造体の微細マスクパタンを加工マスクとしてBCl3ガス及びCl2ガスの混合ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイアをナノ加工した。エッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、実施例1と同様に洗浄し、微細パタンを表面に具備するサファイア基材を得た。
表面に微細パタンの設けられたサファイアの微細パタンを、走査型電子顕微鏡を用い、観察した。観察された像から、微細パタンは複数の凸部が互いに独立して配置されていた。ここで、凹部底部の平均面に垂直な方向を方向Xとした。凸部の頂点を通り、且つ方向Xに平行な線分を線分Yとした。次に、凸部底部中央部を通り、且つ方向Xに平行な線分をZとした。この時、線分Yと線分Zは平行である。線分Yと線分Zと、の距離を距離YZとした。この距離YZは、凸部頂点のズレ量を表す指標であり、汎用的に平均ピッチ(Pav)と、の比率として(YZ/Pav)と表現できる。この比率(YZ/Pav)が小さい程、即ち0に近づくほど第1のマスク層即ち上記組成物3−1〜組成物3−12の、エッチング加工用マスクとしての性能が高いことを意味する。
結果を表5に記載した。表5中の記載の意味は以下のとおりである。
・組成物…第1のマスク層の使用した組成物
・YZ/Pav…エッチング加工用マスクとしての性能を示す指標。0.004という値の記載されたものは、距離YZが0或いは略0であることを意味する。走査型電子顕微鏡観察より、正確に0nmを判断することは困難であるため、分解能を超えた段階で、距離YZに略0である3nmの値を代入している。
・環状部位…第1のマスク層に含まれる組成物。実施例3の第1のマスク層は、重合開始剤を除いて、樹脂、モノマ、或いは樹脂とモノマの混合物により構成される。炭素数は、環状部位の構成炭素数を、環は、環状部位に含まれるX員環のXを意味する。なお、環の欄にいて、「α,β」のように、「,」を介し複数の数字が並んでいる場合は、α員環とβ員環が共に含まれることを意味する。即ち、例えば、組成物3−1であれば、樹脂が環状部位を有し、該環状部位が構成炭素数10であり、6員環を有すことを意味する。また、例えば、組成物3−8であれば、樹脂及びモノマが環状部位を有し、樹脂の具備する環状部位が構成炭素数14であり、6員環を有すと共に、モノマの有す環状部位が、構成炭素数25であり、6員環及び5員環を有すことを意味する。
表5より、以下のことがわかる。なお、表5において、まず、環状部位を有すバインダ樹脂或いはモノマを使用することで、比率(YZ/Pav)が小さくなる。即ち、ドライエッチングとしてのマスク性能が向上している。これは、まず分子間における環状部位同士のパッキングが生じやすく、第1のマスク層の密度が向上していることと、環状部位に存在するπ電子により、ドライエッチング中の塩素ラジカルをトラップできるためと考えることができる。中でも、バインダ樹脂に環状部位が含まれることで、比率(YZ/Pav)はより小さくなり、微細パタンの精度が向上していた。これは、バインダ樹脂は分子量が大きいことから、運動モビリティが高い。しかしながら、環状部位を含むことで、環状部位の平面性や環状部位同士のパッキング等を利用でき、これにより運動性が低下するためと推定される。更には、バインダ樹脂は主に繰り返し単位を含み、この繰り返し単位ごとに環状部位が配置されることから、第1のマスク層に含まれる環状部位密度が大きくなり、前述したような塩素ラジカルのとラッピング効果が大きくなるためと推定される。中でも、バインダ樹脂及びモノマの双方に環状部位が含まれることで、比率(YZ/Pav)がより低下している。これは既に説明してきた環状部位の効果が大きくなるためと考えられる。
また、ドライエッチング加工時にステージに熱を加え、過激なドライエッチングを別途行ったところ、少なくとも第1のマスク層を構成するモノマに光反応性部位が含まれる場合、上記YZ/Pavが小さくなることが確認された。これは、光反応(光ラジカル反応)により、バインダ樹脂の運動性が束縛され、熱振動に対する耐性が向上したためと推定される。最も効果の大きかったものは、バインダ樹脂及びモノマの双方に光重合性基が含まれる場合であった。
また、第2の積層体を使用し中間体を製造する際の、モールドG2の剥離強度を別途評価したところ、少なくとも樹脂に環状部位が含まれることで剥離強度が低下することが確認された。これは、樹脂に含まれる環状部位によるパッキングや安定化により、第1のマスク層とモールドG2の凹凸構造と、の密着力が低下したためと考えられる。特に、この傾向は、少なくとも樹脂に環状部位が含まれ、少なくともモノマが重合性モノマである場合に顕著であった。これは、上記効果に加え、モノマの重合による体積収縮が生じ、モールドG2の凹凸構造と第1のマスク層と、の間に分子スケールの隙間が発生したためと考えられる。なお、樹脂に環状部位が含まれ、樹脂及びモノマが重合性の場合がより、樹脂及びモノマが共に環状部位を含み共に重合性の場合が更に上記効果が発現されることが確認された。
(実施例4)
実施例1〜実施例3より、第2の積層体は、第1のマスク層の表面粗さが所定の範囲内であり、且つ、第1のマスク層内に環状部位を有す樹脂を含むことで、被処理体への貼合性とモールドの剥離性が良好となることから、中間体の製造精度が向上し、更に、第1のマスク層の被処理体に対する加工マスク性能が向上するため、良好な微細パタンを製造できることがわかった。実施例4においては、好適なモールドの凹凸構造の範囲を、第2の積層体の製造性及び使用性の観点から調査した。パラメーターはモールドの凹凸構造のみである。なお、被処理体として、4インチφのc面サファイアウェハを使用した。
実施例1と同様に第2の積層体を製造した。ここで、第1の積層体に対して塗工する第1の塗工液の使用する溶剤を、アセトン、2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びメチルイソブチルケトンからなる混合溶剤に変更した。
実施例1と同様に、中間体を得た。得られた中間体を割断し、断面に対してエネルギ分散型X線分光法と走査型電子顕微鏡観察を行った。観察サンプルを5片用意し、各サンプルに対して10点の観察を行った。凸部が破損している割合、凸部頂部の第2のマスク層の厚みの分布、及び第1のマスク層の厚みの分布が0%以上15%以下の場合を良評価、それ以外の場合を悪評価とした。また、離型工程において、第1のマスク層が被処理体より剥離した部分の面積が、被処理体に対して15%超存在した場合も悪評価とした。
結果を図19に記載した。図19は、実施例4の中間体の評価結果を示すグラフである。図19中、横軸がモールドの凹凸構造に対する比率(Sh/Scm)であり、縦軸がモールドの凹凸構造に対する比率(Mcv/Mcc)を示す。図19中の丸印及び三角印は、上記評価結果が良評価の場合であり、三角印よりも丸印が、破線よりも実線が、実線よりも塗りつぶしがより高評価であることを示している。また、図19中、バツ印は上記評価結果が悪評価だった場合を示している。なお、悪評価であっても、凸部が破損している割合、凸部頂部の第2のマスク層の厚みの分布、或いは第1のマスク層の厚みの分布は、18%〜26%の間に収まっていた。
<三角印>
・破線の三角印
…凸部が破損している割合、凸部頂部の第2のマスク層の厚みの分布、及び第1のマスク層の厚みの分布が10%超15%以下の場合。
・実線の三角印
…該割合及び分布が8%超10%以下の場合。
<丸印>
・白抜き破線の丸印
該割合及び分布が5%超8%以下の場合。
・白抜き実線の丸印
該割合及び分布が3%超5%以下の場合。
・斜線を付した丸印
該割合及び分布が0%以上3%以下の場合。
曲線A1は(Mcv/Mcc)=√(1.1/(Sh/Scm))−1を、曲線A2は(Mcv/Mcc)=√(0.93/(Sh/Scm))−1を、曲線B1は(Mcv/Mcc)=√(0.5/(Sh/Scm))−1を、曲線B2は(Mcv/Mcc)=√(0.76/(Sh/Scm))−1を、直線C1は(Sh/Scm)=0.23を、直線C2は(Sh/Scm)=0.4を、直線C3は(Sh/Scm)=0.6を、直線D1は(Sh/Scm)=0.99を、直線F1はMcv/Mcc=1を、そして直線G1はMcv/Mcc=0.01を示している。
以上の結果より、√(0.5/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(1.1/(Sh/Scm))−1、0.23<(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、第2のマスク層の厚み精度及び第1のマスク層の厚み精度の高い中間体を精度高く転写形成できていることがわかる。これは、まず、モールドの凹凸構造上に塗工される塗工液のマクロに観た塗工性とミクロに観た塗工性が同時に向上したためと考えられる。より具体的には、上記範囲を満たすことで、塗工液から見たモールドの凹凸構造のエネルギが均等化するため、マクロな塗工性が向上し、凹凸構造の凸部の頂部外縁部におけるアンカーやピン止めを抑制できることから、ミクロな塗工性が向上したと推定される。続いて、上記範囲を満たす場合、モールドを第2のマスク層及び第1のマスク層より剥離する際の、第1のマスク層の凹凸構造の凸部の底部外縁部に加わる剥離応力を小さくできるため、転写性が向上したためと考えられる。
更に、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.23<(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、第2のマスク層の厚み精度及び第1のマスク層の厚み精度の高い中間体を精度高く転写形成できていることがわかる。これは、上記範囲を満たす場合、モールドの凹凸構造1つ1つといったスケールで観た場合の第1の塗工液及び第2の塗工液を、モールドの凹凸構造が数千から数万といったマクロなスケールで見て平均化した場合の、該塗工液内のエネルギ勾配を小さくできるためと考えられる。即ち、モールドの凹凸構造上に塗工される第1の塗工液及び第2の塗工液の、モールドの凹凸構造よりも十分に大きなスケールでの均等性が向上し、塗工性が向上したためと考えられる。
更に、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.4≦(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、第2のマスク層の厚み精度及び第1のマスク層の厚み精度のより高い中間体を精度高く転写形成できていることがわかる。これは、上記範囲を満たす場合、モールドの凹凸構造に塗工される塗工液において、凹凸構造の凹部上に位置する該塗工液のエネルギが不安定化し、このエネルギの不安定性を解消するために、モールドの凹凸構造の凹部内部へと該塗工液が流入しやすいためと考えられる。更に、モールドを剥離する際のモールドの凹凸構造の凸部の底部外縁部に加わる剥離応力が、モーメントエネルギが小さくなることから、抑制される。これにより転写精度が向上したためと推定される。更に、これらの効果は、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.6≦(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、より顕著になることがわかる。
なお、上記使用したモールドのモールドの凹凸構造は、凹部が連続した凸部により隔てられたホール構造であり、ホール開口部の面積がホール底部の面積に比べ大きいことが観察されている。
なお、モールドの再利用性を確認したところ、Sh/Scm≦0.99以下の領域において、Sh/Scmが0.95、0.93、0.91と減少するにつれ、再利用性がより良好になることを確認した。ここでの再利用性とは、第2の積層体を製造し使用済みとなった第2の積層体を、溶剤にて洗浄し、使用済みモールドを得、該使用済みのモールドを使用して再び第2の積層体を製造し、再度使用する、といった行為を繰り返すことを意味する。より詳細には、Sh/Scm=0.99の場合、再利用回数は3回であったが、Sh/Scmが0.95、0,93、0.91と減少するにつれ、再利用回数が5回、10回、20回と増加した。これは、モールドの凹凸構造の凹部を囲む凸部の物理強度が増加したためと推定される。以上から、Sh/Scmが0.95以下であることで、1つのモールドで何度も第2の積層体を製造できることがわかる。特に、Sh/Scmが0.93、更にはSh/Scmが0.91になることで、前記効果がより顕著になる。
上記結果の一部を表6に記載した。表6においては、モールド構成要件の欄にモールドの凹凸構造の素性を記載した。αmin./αmaxは、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαの範囲(下限上限値)を意味し、√(αmin./(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(αmax/(Sh/Scm))−1の範囲に凹凸構造が含まれることを意味する。また、αmax>数値は、(Mcv/Mcc)≧√(αmax/(Sh/Scm))−1を意味し、αmin<数値は、(Mcv/Mcc)≦√(αmin/(Sh/Scm))−1を意味する。モールド構成要件中の「h」は、モールドの深さを意味する。ディメンジョンは「nm」である。また、総合欄の記号は、上記評価結果と同様である。
次に、上記実施例4の図19の結果を得た中間体を用いて、実施例1と同様に酸素を用いたエッチングを行い、微細パタン構造体を作製し、続いて実施例1と同様に塩素ガスを使用したエッチングを行い、微細パタンを作製した。
以上、得られた微細パタン構造体、該微細パタン構造体を得る前身である微細マスクパタンについて評価した。評価指標は以下の通りである。
微細マスクパタンの幹の太さに対する分布を、走査型電子顕微鏡観察より算出した。幹の太さに対する分布が、10%超の場合を悪評価とし、10%以下の場合を良評価とした。
被処理体の微細パタンの凸部の高さ及び凸部底部径の分布が、10%超の場合を悪評価とし、10%以下の場合を良評価とした。
結果を図20に記載した。図20は、実施例4の微細パタン構造体の評価結果を示すグラフである。図20においては、図19に対して、上述のように評価したサンプルを矢印にて指示している。
図20中、矢印にて指示されていない記号は、図19のそれらと同様であり、矢印にて指示された記号は以下の評価結果を意味する。矢印にて指示された丸印及び三角印は、上記評価結果が全て良評価の場合であり、三角印よりも丸印が、破線よりも実線が、実線よりも塗りつぶしがより高評価であることを示している。また、矢印にて指示されたバツ印は上記評価において、一つでも悪評価のあった場合である。
<三角印>
・破線の三角印
…微細マスクパタンの幹の太さに対する分布及び、微細パタンの凸部の高さと凸部底部径の分布が、共に10%以下9%以上の場合。
・実線の三角印
……該分布が、共に9%未満8%以上の場合。
<丸印>
・白抜き破線の丸印
…該分布が、共に8%未満6%以上の場合。
・白抜き実線の丸印
…該分布が、共に6%未満4%以上の場合。
・斜線を付した丸印
…該分布が、共に4%未満の場合。
曲線A1、曲線B1、曲線B2、直線C1、直線C2、直線C3、直線D1、直線F1、そして直線G1は図19のそれと同じである。
以上の結果より、√(0.5/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(1.1/(Sh/Scm))−1、0.23<(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、第2のマスク層をマスクとして第1のマスク層をドライエッチング加工し得られる微細マスクパタンの精度及び、微細マスクパタンをマスクとしてエッチング加工し得られる微細パタンの精度が向上していることがわかる。これは、既に説明した原理から、モールドの凹凸構造が所定の範囲を満たすことで、第2のマスク層のモールドの凹凸構造の凹部への充填配置精度及び第1のマスク層の膜厚均等性が向上することから、中間体における第2のマスク層の分布及び第1のマスク層の膜厚分布を小さくたもつことができ、この精度の高い中間体の精度を反映させて、微細マスクパタン及び微細パタンを加工できたためである。即ち、第2のマスク層の凹凸構造の凹部内部への充填配置精度そして第1のマスク層の膜厚均等性が向上する程、微細パタン構造体の精度が向上する。よって、図19にて考察したように、以下の範囲を満たすことで微細パタン構造体の精度はより向上すると考えられ、実際に検討により確認された。
√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.23<(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、微細パタン構造体の精度がより向上した。更に、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.4≦(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、微細パタン構造体の精度がいっそう向上した。更に、これらの効果は、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.6≦(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、より顕著になることが確認された。
続いて、得られた微細パタン構造体、即ち微細パタンを具備した4インチφのサファイアウェハに対して、実施例1と同様に半導体結晶層を成膜してLED用エピタキシャルウェハを作製した。その後、チップ化を行い、LEDチップを作製し、発光特性を評価した。
評価は以下の2つを行った。第1に、微細パタンを具備しないサファイアウェハを使用し、上記方法によりLEDチップを作製した。このLEDチップの発光出力を1として、微細パタン構造体を使用し作製したLEDチップの発光出力を評価した。第2に、LEDチップの発光出力の分布を評価した。
結果を図21に記載した。図21は、実施例4のLEDチップの評価結果を示すグラフである。図21においては、図19に対して、上述のように評価したサンプルを矢印にて指示している。
図21中、矢印にて指示されていない記号は、図19のそれらと同様であり、矢印にて指示された記号は以下の評価結果を意味する。矢印にて指示された丸印及び三角印は、上記半導体発光素子の出力分布の評価結果が良好であった場合であり、三角印よりも丸印が、破線よりも実線が、実線よりも塗りつぶしがより高評価であることを示している。また、矢印にて指示されたバツ印は上記半導体発光素子の出力分布の評価結果が好ましくなかった場合である。また、図21中の数値は、発光出力比を意味する。
<バツ印>
…発光出力の分布が±15%超であった場合。
<三角印>
・破線の三角印
…発光出力の分布が±15%以下であった場合。
・実線の三角印
…発光出力の分布が±11%以下であった場合。
<丸印>
・白抜き破線の丸印
…発光出力の分布が±8%以下であった場合。
・白抜き実線の丸印
…発光出力の分布が±6%以下であった場合。
・斜線を付した丸印
…発光出力の分布が±4%以下であった場合。
曲線A1、曲線B1、曲線B2、直線C1、直線C2、直線C3、直線D1、直線F1、そして直線G1は図19のそれと同じである。
以上の結果より、√(0.5/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(1.1/(Sh/Scm))−1、0.23<(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、発光強度が高く、且つ発光出力分布の小さい半導体発光素子を製造できることがわかる。これは、上記説明したように、これらの範囲を満たすことで、第2のマスク層の配置精度及び第1のマスク層の膜厚精度の高い第2の積層体を製造できることから、中間体の第2のマスク層の第1のマスク層に対する配置精度及び第1のマスク層の膜厚均等性が向上し、これにより微細マスクパタンの精度が高くなり、最終的に微細パタンの精度が向上したためである。このような微細パタンを具備したサファイア基板を使用することで、まず、面内における半導体結晶層の成長モードを乱す効果の分布が小さくなり、内部量子効率が面内において向上すると推定される。更に、微細パタンによる光回折性の効果により、光取り出し効率が向上する。以上から、半導体発光祖素子の外部量子効率が向上するため、発光出力が大きくなり、更に分布が小さくなったと推定される。
更に、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.23<(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、発光出力及び発光出力の分布が共に向上することが確認された。これは、既に説明したメカニズムから精度の高い微細パタン構造体を製造できることと、上記範囲を満たすことで、微細パタン構造体の凹部底部の平坦面の精度が向上することから内部量子効率がより向上したためと推定される。
更に、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.4≦(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0を同時に満たすことで、発光出力及び発光出力の分布が共により向上することが確認された。これは、既に説明したメカニズムから精度の高い微細パタン構造体202を製造できることと、微細パタン構造体の凸部の体積を大きくできることに起因した光取り出し効率向上の結果と考えられる。更に、これらの効果は、√(0.76/(Sh/Scm))−1≦(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1、0.6≦(Sh/Scm)≦0.99、且つ0.01≦Mcv/Mcc<1.0を同時に満たすことで、より顕著になることが確認された。
Sh/Scmが0.85近辺において、わずかに発光出力が低下しているが、これは、微細パタン構造体202の凹部底部の面積が小さくなりすぎたためと考えられる。これについては、微細マスクパタンを形成する際のエッチング及び微細パタンを形成する際のエッチングにおいて、オーバーエッチングを加えることで解決できることを確認した。即ち、エッチングの条件により微細パタンの凸部の底部の径、高さ、テーブルトップの大きさ、そして側面の傾斜角を容易に制御できた。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。