以下、記録装置の一例である流体噴射装置としてのインクジェット式のプリンター(以下、単に「プリンター」と言う場合もある)の一実施形態について、図を参照しながら説明する。この実施形態のプリンターは、媒体の一例である用紙Pに流体の一例であるインクを噴射して画像等を形成することによって用紙Pに印刷(記録)を行う。
図1および図2に示すように、本実施形態のプリンター11は複数の筐体部材によって構成され、その外形が略直方体形状を呈する本体ケース12を有している。この本体ケース12において、その鉛直方向における反重力方向Z側となる上面側には、スキャナーユニットなどの画像読取部15が配設されている。また、本体ケース12内には、用紙Pに対してインクを噴射して画像を印刷(記録)する記録部の一例としての印刷部20が、画像読取部15の下側において上方矢視で重なるように配設されて備えられている。
本体ケース12において、印刷部20によって印刷された用紙Pの排出方向側となる前側には、印刷部20などを操作するための操作パネル13が配置されている。操作パネル13はメニュー画面等を表示するための表示部(例えば液晶ディスプレイ)や操作部(例えば操作ボタン)などを備えている。また、操作パネル13は、その上方側に設けられた不図示のヒンジなどの回転機構によって下方側が前方に持ち上げられて開く構成とされ、本体ケース12に開閉可能に取り付けられている。
操作パネル13に対して操作部等が設けられた前側とは反対側の後側には、印刷された用紙Pを本体ケース12外へ排出する排紙口が本体ケース12に配設され、操作パネル13が開くことによって露出する排紙口(不図示)から、用紙Pは図1において白抜き矢印で示すように前方へ排出される。
本実施形態のプリンター11には、印刷部20に対して用紙Pを供給する用紙給紙部としての給紙カセット30が備えられている。給紙カセット30は、用紙Pを積層状態で収容可能であり、操作パネル13の下方において本体ケース12に対して挿抜可能に配設されている。収容された用紙Pは、給送ローラー31によって、挿入方向奥側(後側)に配設された用紙Pの供給路に送り出されて搬送されることによって、印刷部20に一枚ずつ供給される。
さらに、プリンター11には、給紙カセット30から印刷部20へ用紙Pを供給する以外に、本体ケース12において操作パネル13が設けられた前側とは反対側の後側の上方部位に、用紙Pを手差しで一枚ずつ供給する手差給紙部14が備えられている。手差給紙部14は、用紙Pが差し込まれる差込口32を開閉する開閉蓋14aが、本体ケース12に揺動自在に備えられている。従って、使用者は、図1において矢印Rで示すように開閉蓋14aを後方へ揺動させることによって露出する差込口32に用紙Pを差し込むことによって、用紙Pを印刷部20へ供給することも可能である。
図2に示すように、本実施形態のプリンター11では、このように給紙カセット30および手差給紙部14の双方から供給される用紙Pを印刷部20へ搬送する用紙搬送路が供給路として設けられている。すなわち、用紙搬送路は、本体ケース12を構成する複数の筐体部材によって形成されている。そして、この用紙搬送路に沿って第1ローラーR1、第2ローラーR2、第3ローラーR3、および第4ローラーR4が回転自在に配設されている。このうち第1ローラーR1は駆動源によって駆動されるローラーであり、他の第2ローラーR2、第3ローラーR3、第4ローラーR4は第1ローラーR1の回転によって従動するローラーである。
これらのローラーによって、図2に示すように、搬送方向上流側である給紙カセット30側から搬送方向下流側である印刷部20側に向かって順に、給紙カセット30の用紙Pを搬送する第1搬送路35、第2搬送路36、第3搬送路37がそれぞれ形成される。これらの搬送路を介して、第1ローラーR1が図2において矢印で示すように回転することによって、用紙Pが、図2において破線矢印K1および破線矢印K3で示すように搬送され、印刷部20へ供給される。
また、手差給紙部14から供給される手差しの用紙Pの搬送路は、差込口32を一端に有する手差搬送路33を有している。そして、この手差搬送路33は、図2において二点鎖線で示すように、本体ケース12の構成部材の一部が変位した状態になることによって、第2搬送路36と連通する。この連通によって、差込口32から差し込まれた用紙Pは、図2において破線矢印K2および破線矢印K3で示すように印刷部20へ給送される。
供給された用紙Pは、本体ケース12に回転可能に軸支された一対のローラーからなる紙送りローラー対16によって挟持されて副走査方向Yへ搬送され、印刷部20と対向配置される用紙Pを支持する支持部としての支持台26の上面、すなわち支持台26が有する支持面26a上を搬送される。
印刷部20はキャリッジ23と液体噴射ヘッド25とを有し、支持面26a上を搬送される用紙Pに対して相対移動して印刷を行う。すなわち、本体ケース12内には、支持面26a上を搬送される用紙Pの搬送方向と交差する幅方向に沿って延在する第1レール部材21と第2レール部材22とが、用紙Pの搬送方向において所定の間隔を空けて本体ケース12内に配設されている。なお、幅方向を主走査方向Xとも呼ぶとともに、さらに説明の都合上、プリンター11の前方から見て左方向をX方向、右方向を−X方向と呼ぶ場合もある。
この2つの第1レール部材21および第2レール部材22に沿って主走査方向Xに移動可能な状態でキャリッジ23が支持されている。すなわち、キャリッジ23は、図示しないキャリッジモーターの駆動に伴って第1レール部材21および第2レール部材22に沿って主走査方向Xに沿って往復移動する。なお、図1では、キャリッジ23、第1レール部材21、および第2レール部材22の形状は簡略化されて図示されている。
その後、印刷部20によって支持台26(支持面26a)上を移動する用紙Pの表面(印刷面)に対して印刷が完了した用紙Pは、図2において二点鎖線矢印K4で示すように、本体ケース12に回転可能に軸支された一対のローラーからなる排紙ローラー対17によって挟持されて副走査方向Yへ搬送され、排出口から排出される。
さらに、本実施形態のプリンター11では、用紙Pの両面に印刷を行うことが可能である。すなわち、印刷部20において用紙Pへの片面(表面)の印刷が終了した後、排紙ローラー対17が逆転駆動される。この逆転によって、用紙Pは搬送方向(副走査方向Y)と逆方向となる後方に戻されるとともに、第1ローラーR1と第4ローラーR4とのローラー対によって挟持されることによって第3搬送路37の後方に設けられた第5搬送路38に搬送される。用紙Pは、この第5搬送路38に搬送された時点で表裏が反転された状態となり、その後再び第1搬送路35から第2搬送路36および第3搬送路37へ移動して印刷部20へ供給されることによって、裏面への印刷が行われる。
本実施形態では、印刷部20による印刷に際して液体噴射ヘッド25に供給するインクを収容した複数のインクカートリッジEK(図4参照)が、キャリッジ23に装着されて配設されている。そして、インクカートリッジEKを覆うカバー部材24が、キャリッジ23の最上部に位置するとともに、キャリッジ23に回転自在に軸支された回転軸24aを中心に揺動可能に備えられている。
図2に示すように、カバー部材24は、キャリッジ23の主走査方向Xへの移動に伴って画像読取部15の下側を移動する際に、画像読取部15の下面と干渉しない形状とされている。すなわち、カバー部材24は、画像読取部15の下面に形成された凸形状部位15aに対して隙間を設けて倣うように凹形状部位24bが設けられている。そして、この凹形状部位24bは、カバー部材24の一部を切り欠いて形成され、切り欠かれることによって形成される開口部24cから、装着されたインクカートリッジEKが露出する(図4参照)。
したがって、このように凹形状部位24bが設けられたカバー部材24は、画像読取部15の下面(凸形状部位15a)と干渉しない形状としつつ、インクカートリッジEKが、キャリッジ23から抜け出ないように抑制するとともに、キャリッジ23に装着されているか否かを容易に視認することができる。
次に、図3を参照して印刷部20について詳しく説明する。
図3に示すように、キャリッジ23の重力方向側となる下面側(−Z方向)には、インクを噴射する液体噴射ヘッド25が用紙Pの搬送方向における2つの第1レール部材21と第2レール部材22との間に支持されている。そして、キャリッジ23を移動させることで液体噴射ヘッド25を移動させるとともに、移動する液体噴射ヘッド25から、図3において太い二点鎖線で示す用紙Pに対してインクを噴射させる。
用紙Pは、支持部の一例としての支持台26が有する支持面26aによって下方から支持されつつ、キャリッジ23の移動に際して、図示しない駆動源(モーター)によって回転駆動される搬送部である紙送りローラー対16および排出部である排紙ローラー対17により、この支持台26上を主走査方向Xと交差する副走査方向Yに沿って搬送される。本実施形態では、支持面26aは、支持台26の上面であって部分的に存在する複数の平面によって構成される一つの面とされている。従って、支持面26a上を移動する用紙Pは、これらの複数の平面によって支持されながら、一つの面上を搬送されることになる。なお、本実施形態では、支持台26が有する支持面26aは、鉛直方向と交差する水平方向に延在する水平面とされている。
紙送りローラー対16は、紙送り従動ローラー16aと紙送り駆動ローラー16bとによって構成されている。ここで、紙送りローラー対16は、搬送される用紙Pを下方へ送り出し、支持面26aに用紙Pを押し付けるようにして搬送する。そのため、紙送り従動ローラー16aは紙送り駆動ローラー16bよりも回転中心が用紙Pの搬送方向の下流側にずれて設けられるとともに、紙送りローラー対16の用紙Pを挟むニップ点は、支持面26aよりも上方に位置する構成である。このような構成により、用紙Pは安定的に支持面26aに対して押し付けられながら搬送され、液体噴射ヘッド25から噴射されるインクを精度よく着弾させることが可能である。
一方、排紙ローラー対17は、排紙従動ローラー17aと排紙駆動ローラー17bとによって構成されている。ここで、排紙ローラー対17は、液体噴射ヘッド25から噴射されたインクを用紙Pに精度よく着弾させるために、紙送りローラー対16とともに用紙Pを支持面26aに対して押し付ける。すなわち、排紙従動ローラー17aは排紙駆動ローラー17bよりも回転中心が用紙Pの搬送方向の上流側にずれて設けられるとともに、排紙ローラー対17の用紙Pを挟むニップ点は、支持面26aよりも上方に位置している。このような構成により、用紙Pを安定的に支持面26aに押し付けて接触させることができ、液体噴射ヘッド25から突出されるインクを精度よく用紙Pに着弾させることが可能である。
なお、支持面26aに対して紙送りローラー対16のニップ点と、排紙ローラー対17のニップ点とがともに上方に位置する構成が望ましい。もとより、紙送りローラー対16のニップ点あるいは排紙ローラー対17のニップ点のいずれかが支持面26aよりも上方に位置する構成であってもよい。この場合においても、用紙Pを支持面26aに対して押し付ける効果があり、液体噴射ヘッド25から噴射されるインクを精度よく用紙Pに着弾させることが可能である。
このキャリッジ23の主走査方向Xへの移動と用紙Pの支持面26a上の副走査方向Yへの移動との双方の移動に際して、用紙Pの鉛直方向における反重力方向Z側に位置する液体噴射ヘッド25から用紙Pの表面(印刷面)に対してインクが噴射されることによって印刷が行われる。また、両面印刷が行われる場合は、表面に印刷が行われた用紙Pは、排紙ローラー対17の逆転駆動などによって副走査方向Yとは反対方向へ搬送され、表裏が反転された状態で再び支持台26上を主走査方向Xと交差する副走査方向Yに沿って搬送されることによって裏面(印刷面)への印刷が行われる。こうして印刷面に印刷された用紙Pは、副走査方向Yへ搬送されることによって印刷部20から排出されたのち、排紙口から本体ケース12外に排出される。したがって、本実施形態では排紙ローラー対17は搬送部として機能する。
本実施形態のプリンター11では、排紙ローラー対17は、印刷部20と対向配置される支持台26の支持面26aに対して、当該支持面26aの延面方向であって搬送方向下流側へ離れるとともに支持面26aの面位置よりも印刷部20が位置する上方向へ離れるように用紙Pを搬送する。さらに、排紙ローラー対17と支持面26aとの間に位置し、搬送される用紙Pに対して支持面26aとは反対側から接触するとともに、用紙Pの搬送に従動して回動可能な従動ローラーとしての紙押えローラー18が備えられる。
紙押えローラー18は、主走査方向Xに沿って複数備えられ、それぞれの軸部18jが、本体ケース12に固定されたホルダー部80に設けられた軸受81に対して、主走査方向Xを軸線方向として回転可能に軸支されている。したがって、紙押えローラー18は用紙Pが搬送時において支持面26aから浮き上がらないように用紙Pを抑える機能を有する。なお、支持面26aよりも、搬送部である紙送りローラー対16のニップ点と排出部である排紙ローラー対17のニップ点が上方に位置することにより発生する課題に対しては後述する。
さらに本実施形態のプリンター11には、キャリッジ23の高さ位置の調節により、液体噴射ヘッド25と支持台26上の用紙Pとの距離、すなわち液体噴射ヘッド25と支持台26(支持面26a)とのギャップPGが調節される位置調節機構PAJが備えられている。この位置調節機構PAJについて、以下図を参照して説明する。
図3および図4に示すように、キャリッジ23は、第1レール部材21、および第2レール部材22によって、副走査方向Yの上流側と下流側とがそれぞれ支持されている。詳しくは、キャリッジ23は、筐体23Aと、第1レール部材21の上面である第1レール面21aに対して摺動する第1摺動部材41と、第2レール部材22の上面である第2レール面22aに対して摺動する第2摺動部材51と、を備えている。この第1摺動部材41と第2摺動部材51とが、第1レール面21aと第2レール面22aとによってそれぞれ支持されることによって、液体噴射ヘッド25と支持台26上の用紙Pとの距離が定まる。
そして、第1摺動部材41と第2摺動部材51のそれぞれには、キャリッジ23の筐体23Aとの間に第1カム機構40および第2カム機構50が位置調節機構PAJとして設けられ、これらのカム機構の動作によって、キャリッジ23の筐体23Aが第1摺動部材41および第2摺動部材51に対して相対的に上下方向へ変位する。第1カム機構40および第2カム機構50は、キャリッジ23の主走査方向Xに沿う移動に際して、第1レール面21aから上方へ突出する突出部19に対して第1カム機構40が有する係合部材45(図5参照)が係合することによって双方が動作し、キャリッジ23の上下方向への変位具合を調節する。この結果、第1レール部材21と第2レール部材22の双方においてキャリッジ23は変位し、液体噴射ヘッド25と支持台26(支持面26a)との間のギャップPGが調節される。すなわち、キャリッジ23には、第1カム機構40と第2カム機構50との間においてカム動作を連動させるカム連動機構60が設けられている。
図5を参照して第1カム機構40、第2カム機構50、カム連動機構60を説明する。
図5に示すように、キャリッジ23には、その副走査方向Yの上流側に第1カム機構40が、その下流側に第2カム機構50が、それぞれ配置されている。そして、第1カム機構40と第2カム機構50とを連動させるカム連動機構60が、筐体23Aに対して回転可能に取り付けられた複数のギヤ(歯車)を用いて構成されている。
第1カム機構40は、主走査方向Xに沿って延びるとともに主走査方向Xに変位可能な第1ラック43aが設けられた第1カム部材43を有する一方、第2カム機構50にも主走査方向Xに沿って延びるとともに主走査方向Xに変位可能な第2ラック53aが設けられた第2カム部材53を有している。
カム連動機構60は、第1ラック43aと係合する第1伝達ギヤ61、第1伝達ギヤ61に係合する第2伝達ギヤ62、第2伝達ギヤ62と係合するピニオン65a、ピニオン65bと係合する第3伝達ギヤ63、第3伝達ギヤ63及び第2ラック53aと係合する第4伝達ギヤ64を備える。ピニオン65aとピニオン65bとは第1カム機構40と第2カム機構50との間に延びるギヤ軸65cによって連結され、ピニオンギヤ軸65とされている。
カム連動機構60の一方は第1カム機構40と係合し、他方は第2カム機構50と係合している。すなわち、カム連動機構60は、第1ラック43aが主走査方向Xに変位する際、第1ラック43aの直線運動を第1伝達ギヤ61により回転運動に変換し、変換した回転運動を第2伝達ギヤ62、ピニオンギヤ軸65、第3伝達ギヤ63を介して第4伝達ギヤ64に伝達する。第4伝達ギヤ64は伝達された回転運動を第2ラック53aに対して直線運動にして伝達する。この伝達によって、カム連動機構60は、第1ラック43aが移動する方向と同じ方向に、第2ラック53aを第1ラック43aと連動して移動させる。
このように、カム連動機構60は、第1カム機構40と第2カム機構50との間を複数のギヤ等の機構で繋げる構成としている。そして、カム連動機構60は、第1カム機構40がギャップPGを変化させる上下方向においてキャリッジ23(筐体23A)を変位させるのと連動して、第1カム機構40のキャリッジ23を変位させる動力を第2カム機構50に伝達させ、第2カム機構50がギャップPGを変化させる上下方向においてキャリッジ23(筐体23A)を変位させる。
次に、図5、図6(a)〜(d)、および図7(a),(b)を参照して、キャリッジ23(筐体23A)を上下方向に変位させる第1カム機構40、および第2カム機構50の構成について説明する。
図5に示すように、第1カム機構40は、第1レール面21aと当接しながら摺動する第1摺動部材41と、該第1摺動部材41と係合する第1カム部材43と、該第1カム部材43と係合する係合部材45とを備えて構成されている。
図6(a)に示すように、第1摺動部材41は、主走査方向Xを長手方向として延在するとともに、その長手方向の延在部分下面側(−Z方向側)が第1レール面21aを摺動する摺動面とされている。また、第1摺動部材41の長手方向の両端部41a,41bは、キャリッジ23の筐体23Aと当接する当接部とされ、第1摺動部材41が筐体23Aと主走査方向Xにおいて相対的に移動しないように規制されるとともに、筐体23Aが第1摺動部材41に対して相対的に上下移動可能とされている。
また、第1摺動部材41の上面には、第1カム部材43の第1カム部44(図6(c)参照)と接触する接触部41cが複数(ここでは2つ)設けられている。更に第1摺動部材41の上面の長手方向両端部には、第1ばね部材42を掛止するフック部41fが設けられている。すなわち、第1摺動部材41はフック部41fに掛止された第1ばね部材42によって筐体23Aに対して付勢されるように構成されている。また第1摺動部材41には、係合部材45の移動を案内するガイドピン41pが副走査方向Yと反対方向に突出して設けられている。
図6(b),(c)に示すように、第1カム部材43は、その上面に、第1ラック43aが形成されるとともに、筐体23Aと当接して筐体23Aを下方から支持する第1当接面43bが形成されている。また、第1カム部材43の副走査方向Yと反対方向側の面には、係合部材45と係合する係合ピン43pが形成され、更に、筐体23Aに対する第1カム部材43の相対的なスライド移動を案内する案内部位43cが形成されている。
一方、第1カム部材43の係合ピン43pが形成された面の背面側となる副走査方向Y側の面には、階段状の第1カム部44が設けられている。なお、本実施形態では、第1カム部44は、4つの段部44aが互いに傾斜部44bを介して設けられている。この4つの段部44aのいずれかが第1摺動部材41の接触部41cと係合することによって、第1摺動部材41に対して第1カム部材43が相対的に上下方向へ変位し、第1当接面43bに支持された筐体23Aを一緒に上下方向へ変位させる。このキャリッジ23の筐体23Aの変位によって、液体噴射ヘッド25と支持面26aとの間のギャップPGが規定される。また、第1摺動部材41に対して第1カム部材43がスライド移動する際に、接触部41cが傾斜部44bを移動することによってギャップPGが変化する。
図6(d)に示すように、係合部材45は主走査方向Xを長手方向として延びる板状部材として形成されている。係合部材45には、副走査方向Y側とは反対側の下端部に突部46が設けられている。この突部46が、第1レール面21aから上方へ突出する突出部19に対して係合することによって、係合部材45は筐体23A(キャリッジ23)の移動に伴って第1摺動部材41に対して相対的に主走査方向Xに沿ってスライド移動する。さらに、係合部材45には、第1カム部材43の係合ピン43pが遊挿される長穴45hが設けられている。この長穴45hに係合ピン43pが遊挿されることによって、第1カム部材43は係合部材45と一緒にスライド移動する。
従って、第1カム機構40では、係合部材45が第1レール面21aから上方へ突出する突出部19に係合してスライド移動することによって、第1カム部材43が第1摺動部材41に対して相対的にスライド移動する。この第1カム部材43のスライド移動に伴って第1摺動部材41の接触部41cが第1カム部44において接触する位置が移動し、移動した第1カム部44の接触位置に応じてキャリッジ23の筐体23Aを第1摺動部材41に対して上下方向に変位させる。なお、係合部材45には、第1摺動部材41のガイドピン41pが遊挿される長手方向に延びるガイド溝45aが設けられている。このガイド溝45aに第1摺動部材41のガイドピン41pが遊挿されることにより、係合部材45は、第1摺動部材41に対してスライドする際、主走査方向Xにおいてスライドし、上下方向にはスライドしないように構成されている。
次に、図5に示すように、第2カム機構50は、第2レール面22aと当接しながら摺動する第2摺動部材51と、該第2摺動部材51と係合するとともに第2カム部材53と、を備えて構成されている。そして第2カム機構50では、第1カム部材43のスライド移動がカム連動機構60により伝達され、第4伝達ギヤ64と噛み合う第2ラック53aを有する第2カム部材53が第1カム部材43の移動に連動して主走査方向Xに沿ってスライド移動する。
図7(a)に示すように、第2カム部材53は、その上面に第2ラック53aが形成されるとともに、キャリッジ23の筐体23Aと当接して筐体23Aを下方から支持する第2当接面53bが形成されている。また、第2カム部材53の副走査方向Y側と反対側の面には、階段状の第2カム部54が設けられている。なお、本実施形態では、第2カム部54は、第1カム部44と同様に4つの段部54aが互いに傾斜部54bを介して設けられている。
図7(b)に示すように、第2摺動部材51は、主走査方向Xを長手方向として延在するとともに、その長手方向の延在部分の上面には第2カム部材53の第2カム部54と接触する接触部51cが複数(ここでは2つ)設けられている。また、延在部分の下面側(−Z方向側)は第2レール面22aを摺動する摺動面とされている。さらに、第2摺動部材51の副走査方向Y側とは反対側の面には、第2摺動部材51に対するキャリッジ23の筐体23Aの上下方向への相対変位を許容しつつ、第2摺動部材51のキャリッジ23の筐体23Aに対する主走査方向Xに沿う相対変位を規制する規制ピン51pが設けられている。
従って、第2カム機構50では、カム連動機構60によって第2カム部材53がスライド移動することによって、第2摺動部材51の接触部51cが第2カム部54において接触する位置が移動し、移動した第2カム部54の接触位置に応じて第2摺動部材51に対して第2カム部材53が相対的に上下方向へ変位する。そして、第2カム部材53の第2当接面53bに支持されたキャリッジ23の筐体23Aが、第2カム部材53の変位に伴って一緒に上下方向へ変位することによって、液体噴射ヘッド25と支持面26aとの間のギャップPGが規定される。また、第2摺動部材51に対して第2カム部材53がスライド移動する際に、接触部51cが傾斜部54bを移動することによってギャップPGが変化する。
このギャップPGの変化において、カム連動機構60は、第1カム機構40によるキャリッジ23(筐体23A)の上下方向の変位と、第2カム機構50によるキャリッジ23(筐体23A)の上下方向の変位とが同期するように、第1カム部材43のスライド移動を第2カム部材53のスライド移動に伝達する。こうすることによって、第1カム部材43と第2カム部材53が連動して移動するので、キャリッジ23(筐体23A)は支持面26aに対して傾きが抑制された状態で変位しながらギャップPGを変化させる。
ところで、プリンター11において、液体噴射ヘッド25からのインクの噴射特性を維持するために、キャリッジ23に設けられた液体噴射ヘッド25をキャップ部材で覆うことが行われる場合がある。このような場合、キャップ部材が液体噴射ヘッド25を覆うために、該液体噴射ヘッド25に対して下方から当接することによって、キャリッジ23を押し上げることが起こり得る。このような場合、例えば第2カム機構50において、第2カム部材53の第2当接面53bに支持されたキャリッジ23の筐体23Aが、第2当接面53bすなわち第2カム部材53の上面から離れるように上方へ移動した状態になるため、第2ラック53aと第4伝達ギヤ64との間の噛み合いが外れることが起こり得る。
その結果、カム連動機構60において、例えば、互いに噛み合う歯車間に存在するバックラッシュに起因して第4伝達ギヤ64が回転し、第4伝達ギヤ64と第2ラック53aとの間の噛み合いにおいて、1歯分ずれるなど、噛み合い位置がずれてしまうことが生ずる。そうすると、第2カム部材53は、第2摺動部材51との間の相対位置が噛み合い位置のずれが生じる前とは異なる位置に変化し、第1カム部材43のスライド移動に伴って移動したときの主走査方向Xにおける位置が異なることになる。この結果、キャリッジ23の筐体23Aの上下方向への変位が同期しないことになり、上下方向への変位に差異が生じることになる。
なお、第1カム機構40においても同様に、第1カム部材43の第1当接面43bに支持されたキャリッジ23の筐体23Aが第1カム部材43の上面から離れるように上方へ移動することが起こり得る。このとき、第1摺動部材41がフック部41fに掛止された第1ばね部材42によって筐体23Aに対して付勢されるため、第1カム機構40においては、第1ラック43aと第1伝達ギヤ61との間の噛み合いが外れることが抑制される。
そこで、本実施形態のプリンター11では、キャリッジ23の筐体23Aが第2カム部材53の第2当接面53bから離れた際に、第2ラック53aとの噛み合いが外れた第4伝達ギヤ64が回転しないように回転トルクを発生させることによって抑制する回転抑制構造がカム連動機構60に備えられている。
図8に示すように、第4伝達ギヤ64に対する回転抑制構造は、圧縮コイルばね66とワッシャー67、および筐体23Aに固定されるギヤカバー23Bを備えて構成されている。すなわち、キャリッジ23の筐体23Aに設けられたギヤ回転軸23jに対して、ワッシャー67と圧縮コイルばね66が挿入されたのち、第4伝達ギヤ64が回転自在に挿入される。そして、キャリッジ23の筐体23Aに設けられた固定用ボス23pに対してギヤカバー23Bが固定ねじ69によって固定される。なお、ワッシャー67は、ギャップPGを変化させる際に回転する第4伝達ギヤ64とともに圧縮コイルばね66が回転した場合、圧縮コイルばね66が円滑に回転するように挿入される。
このような構成によって、ギヤ回転軸23jに挿入された第4伝達ギヤ64は、ギヤ回転軸23jから抜け出ないように、ギヤカバー23Bによって圧縮コイルばね66とは反対側から抑えられる。この結果、第4伝達ギヤ64が圧縮コイルばね66の圧縮力によってギヤカバー23Bに対して付勢された状態となることにより、第4伝達ギヤ64に対してギヤカバー23Bとの間に回転トルクを発生させる。
従って、キャリッジ23の筐体23Aが第2カム部材53の上面から離れるように上方へ移動した状態となることによって第2ラック53aと第4伝達ギヤ64との間の噛み合いが外れた状態となっても、このように回転トルクを発生させる回転抑制構造を備えたカム連動機構60によって、第4伝達ギヤ64の回転を抑制する。この結果、第4伝達ギヤ64と第2ラック53aとの噛み合いずれを回避することができる。なお、圧縮コイルばね66の圧縮力は、第2カム機構50を第1カム機構40と連動させる際にカム連動機構60において回転負荷となるため、第4伝達ギヤ64が第2ラック53aとの噛み合いが外れた際の回転が抑制できる範囲で出来るだけ小さいことが好ましい。
図3に示すように、このような位置調節機構PAJによって液体噴射ヘッド25とのギャップPGが調節された支持面26a上を搬送される用紙Pは、液体噴射ヘッド25に対して副走査方向Yの下流側に設けられた紙押えローラー18によって、支持面26aから浮き上がらないように抑えられる。
次に図9(a),(b)を参照して、この紙押えローラー18の構成について説明する。
図9(a)に示すように、紙押えローラー18は、その軸部18jがホルダー部80に設けられた軸受81に対して下方から挿入されて軸受81内に保持される。すなわち、ホルダー部80に設けられた係止部89が、軸部18jの軸受81への挿入に際して図9(a)において二点鎖線で示すように変位することによって軸部18jを軸受81内に進入させたのち、その変位が戻って進入した軸部18jを軸受81内に保持する。軸受81は、いずれも略鉛直方向に延在する上流側内壁面83と下流側内壁面82とが副走査方向Yにおいて所定の間隔を有して設けられている。そして、上流側内壁面83と下流側内壁面82との間の軸受幅Jwは、軸受81内に保持された軸部18jが副走査方向Yにおいて隙間Gyを有する寸法で設けられている。また、軸部18jは、副走査方向Yと交差する鉛直方向においても軸受81内において隙間Gzが設けられている。そして、軸受81において、鉛直方向における反重力方向Z側の内天面84には、軸受幅Jwの領域の少なくとも一部領域に、支持面26a(不図示)に対して傾いた傾斜面85が設けられている。
図9(b)に示すように、本実施形態の紙押えローラー18は、外周に歯部18aが形成された回転体18bと、回転体18bを従動回転可能に軸支するための軸部18jと、が弾性を有する合成樹脂で一体成形されている。そして、紙押えローラー18は、軸部18jの弾性力によって、排紙ローラー対17によって搬送される用紙Pに歯部18aが押圧力を有して接触する。このため、紙押えローラー18は、プリンター11に組み付けた状態で、搬送される用紙Pに所望の押圧力をもって接触するように、その形成材料や形状(特に軸部18jの長さ、太さ等)が設定される。
次に、図10〜図12を参照して、本実施形態のプリンター11の作用を説明する。なお、図10は、軸受81の内天面84において傾斜面85が設けられていない場合を図示している。もとより、本実施形態では、このように軸受81の内天面84において傾斜面85が設けられていない構成を採用してもよい。
図10に示すように、支持面26a(不図示)上を移動した用紙Pは搬送部としての排紙ローラー対17に挟持されて副走査方向Yへ搬送される。このとき、排紙ローラー対17は支持面26aの延面方向であって副走査方向Y下流側へ離れるとともに支持面26aの面位置よりも上方へ離れた位置に設けられている。一方、紙押えローラー18は回転体18b(歯部18a)が用紙Pを支持面26aに対して押し付けるように支持面26aとは反対側の上方から接触する。従って、図10において実線矢印で示すように用紙Pが排紙ローラー対17によって副走査方向Yへ搬送される状態では、紙押えローラー18は、排紙ローラー対17に挟持されて搬送される用紙Pに接触することによって用紙Pを押圧する。この結果、紙押えローラー18は用紙Pに対して押圧力を発生させる一方、この押圧力の反力である押力Fを用紙Pの接触部分から受けることによって図10において二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に持ち上がる。このように、紙押えローラー18が搬送される用紙Pに接触する接触状態は、用紙Pよって紙押えローラー18が持ち上げられた状態となる。
紙押えローラー18は、この接触状態において持ち上げられた軸部18jが軸受81の内天面84に当接した状態になるとともに、用紙Pが支持面26aから浮き上がることなく支持面26aを擦動する状態を維持するように、支持面26aから所定の高さ位置で用紙Pを上方から押さえる。換言すれば、軸受81は、紙押えローラー18の軸部18jが内天面84に当接した状態で、回転体18bが用紙Pを支持面26aから離れない状態とする位置に配設されている。さらに、本実施形態では、この接触状態において、紙押えローラー18の軸部18jと軸受81との間に設けられた副走査方向Yにおける隙間Gyや鉛直方向の隙間Gzによって、紙押えローラー18は、用紙Pの搬送に従動して円滑に回動が可能とされる。より詳しくは、軸受81は、紙押えローラー18が接触する用紙Pの接触部分における当該用紙Pの搬送方向に沿う方向において隙間が形成される軸受幅Jwで設けられている。
さて、このような軸受幅Jwで設けられた軸受81において、その内天面84が支持面26aと同様に略水平面とされている場合は、紙押えローラー18が用紙Pを押さえる押圧力に抗する押力Fは、排紙ローラー対17によって副走査方向Yの下流側へ向かって斜め上方へ搬送される用紙Pの搬送方向と略直交する方向へ作用する。この結果、図10において実線矢印で示すように押力Fは軸部18jに対して軸受81の内天面84に対して傾いた方向へ作用し、軸部18jと内天面84とが当接する当接点Tpを支点にして軸部18jを用紙Pの搬送方向とは逆方向へ移動させる逆進力Fbが発生する。一方、用紙Pに接触する回転体18bが用紙Pの搬送方向へ回転することによって、図10において白抜き矢印で示すように、軸部18jと内天面84と当接する当接点Tpを支点にして軸部18jを用紙Pの搬送方向と同じ順方向へ移動させる順進力FAが発生する。この順進力FAと逆進力Fbとの双方が軸部18jに対して作用することによって、軸部18jが軸受幅Jwの範囲を搬送方向に繰り返し移動する所謂ばたつき現象を引き起こすことがある。このようなばたつき現象が引き起こされた軸部18jは軸受81内の上流側内壁面83と下流側内壁面82とに衝突することによって、好ましくない異音(衝突音)を発生させる虞がある。
そこで、図11に示すように、本実施形態では、軸受81の内天面84に設けた傾斜面85によって軸部18jのばたつき現象を抑制する。すなわち、軸受81に設けられた傾斜面85の傾斜角を、紙押えローラー18が用紙Pと接触する接触部分における紙押えローラー18(回転体18b)の接線L1の支持面26aに対する傾斜角αと等しい角度で設ける。すなわち、図11において示す傾斜面85の延長線L2と接線L1とが平行になるように設ける。なお、紙押えローラー18は歯部18aが用紙Pと接触するため、接触部分が1つであったり複数であったりする。このため、本実施形態では、紙押えローラー18が用紙Pと接触する接触部分は、回転体18bの外周円が用紙Pと接触する部分としている。
このように傾斜面85を設けることによって、用紙Pが支持面26aから離れるように副走査方向Yへ搬送される場合、傾斜面85は、搬送される用紙Pの搬送方向と略同じ傾きを有する。この結果、排紙ローラー対17によって副走査方向Yの下流側へ向かって斜め上方へ搬送される用紙Pからの押力Fは、軸部18jを内天面84に設けられた傾斜面85に対して略直交する方向へ作用する。
従って、軸部18jと傾斜面85(内天面84)とが当接する当接点Tpは押力Fの作用線上に位置することになるため、当接点Tpを支点にして軸部18jを搬送方向と逆方向へ移動させる逆進力Fbの発生が抑制される。これにより、軸部18jには、用紙Pに接触する回転体18bが用紙Pの搬送方向へ回転することによって、軸部18jと内天面84と当接する当接点Tpを支点にして軸部18jを用紙Pの搬送方向と同じ順方向へ移動させる順進力FAが作用する。この結果、軸部18jは、図11において実線で示すように、軸受81の軸受幅Jwにおける搬送方向下流側(副走査方向Yの下流側)に留まるように位置することになり、ばたつき現象の発生が抑制される。
さらに、図12に示すように、本実施形態では、例えば両面印刷のために用紙Pが支持面26aに近づくように副走査方向Yとは反対方向へ搬送される場合においても、軸受81の内天面84に設けた傾斜面85によって軸部18jのばたつき現象を抑制する。すなわち、図12において破線矢印で示すように、用紙Pが副走査方向Yとは逆方向へ搬送される場合も同様に、排紙ローラー対17によって副走査方向Yの上流側へ向かって斜め下方へ搬送される用紙Pからの押力Fによって、軸部18jは内天面84に設けられた傾斜面85に押し付けられる。従って、この場合は、排紙ローラー対17は、搬送部として機能する。
このとき、傾斜面85は搬送される用紙Pの搬送方向と略同じ傾きを有し、用紙Pからの押力Fは傾斜面85に対して略直交する方向へ作用する。この結果、軸部18jと傾斜面85(内天面84)とが当接する当接点Tpは押力Fの作用線上に位置するため、当接点Tpを支点にして軸部18jを搬送方向と逆方向(ここでは副走査方向Y)へ移動させる逆進力Fbの発生が抑制される。従って、軸部18jには、用紙Pに接触する回転体18bが用紙Pの搬送方向へ回転することによって、軸部18jと内天面84と当接する当接点Tpを支点にして軸部18jを用紙Pの搬送方向と同じ順方向(ここでは副走査方向Yとは逆方向)へ移動させる順進力FAが作用する。この結果、軸部18jは、図12において実線で示すように、軸受81の軸受幅Jwにおける搬送方向下流側(副走査方向Yの上流側)に留まるように位置することになり、ばたつき現象の発生が抑制される。
以上説明した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)排紙ローラー対17による用紙Pの搬送に従動して回転する紙押えローラー18が、用紙Pの接触部分から押力を受けて移動した際、その軸部18jは傾斜面85に当接することよって傾斜面85に沿って軸受81内の一方向へ移動するので、軸受81内において軸部18jが搬送方向に繰り返し移動するばたつき現象が抑制される。従って、軸部18jは軸受81内において安定して回転するので、ばたつき現象による異音の発生が抑制される。
(2)排紙ローラー対17による用紙Pの搬送に従動して回転する紙押えローラー18が用紙Pから受ける押力による搬送方向側とは逆方向への分力の発生を抑制することができる。従って、軸部18jは軸受81内の一方向側(搬送方向側)において安定して回転するので、ばたつき現象による異音の発生が抑制される。
(3)用紙Pが搬送方向の正逆双方向に搬送される場合、用紙Pの搬送に従動して回転する紙押えローラー18が用紙Pから受ける押力は、いずれの方向への搬送においても、軸部18jを傾斜面85に対して略直交する方向へ押し付ける。従って、いずれの搬送方向においても、用紙Pから受ける押力によって傾斜面85に当接する軸部18jに対して搬送方向とは逆方向の分力の発生が抑制される。この結果、用紙Pの双方向への搬送時に際して、軸部18jは、軸受81内において用紙Pの搬送方向側へ移動することによって、軸受81内の一方向側(搬送方向側)において安定して回転するので、ばたつきによる異音の発生が抑制される。
(4)軸部18jは、軸受幅Jwの領域内を移動する際に傾斜面85と当接する。そして、傾斜面85との当接によって、搬送方向とは逆方向への移動が抑制されつつ回転するので、ばたつきによる異音の発生が抑制される。
(5)用紙Pの支持面26aが水平面である支持台26を有する記録装置において、支持面26aから排出される用紙Pの搬送に際して紙押えローラー18を安定して回転させる。この結果、ばたつきによる異音の発生が抑制されたプリンター11が得られる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、軸受81に設けられた傾斜面85は、紙押えローラー18が用紙Pと接触する接触部分における紙押えローラー18の接線の支持面26aに対する傾斜角αよりも大きな傾斜角で設けられてもよい。
図13に示すように、本変形例では、軸受81において、その内天面84は、用紙Pの搬送方向となる副走査方向Yの下流側に向かって、搬送される用紙Pの搬送方向よりもさらに先上がりになるように支持面26aに対して大きな傾斜角で形成された傾斜面85とされている。このように内天面84が大きな傾斜角の傾斜面85とされている場合は、紙押えローラー18が用紙Pから受ける押力Fは、紙押えローラー18が用紙Pと接触する接触部分における回転体18bの接線方向と略直交する方向へ作用するので、図13に示すように、軸部18jを傾斜面85に対して傾いた方向へ押し付けるように作用する。この結果、押力Fは、軸部18jと内天面84(傾斜面85)とが当接する当接点Tpを支点にして軸部18jを用紙Pの搬送方向へ移動させる順進力Faを発生させる。一方、用紙Pに接触する回転体18bが用紙Pの搬送方向へ回転することによって、軸部18jと内天面84(傾斜面85)と当接する当接点Tpを支点にして軸部18jを用紙Pの搬送方向と同じ順方向へ移動させる順進力FAが発生する。従ってこの2つの順進力Faと順進力FAが軸部18jに対して作用することによって、軸部18jは軸受81内において用紙Pの搬送方向側に安定して位置する。
この変形例によれば、上記実施形態での効果(3)に替えて次の効果を得る。
(6)傾斜面85は、紙押えローラー18が用紙Pと接触する接触部分における回転体18bの接線の支持面26aに対する傾斜角αよりも大きな傾斜角で設けられているので、紙押えローラー18が用紙Pから受ける押力Fによって、軸部18jを傾斜面85において搬送方向側へ移動させる分力を高い確率で発生させることができる。従って、搬送方向側とは逆方向への分力の発生を抑制することによって、軸部18jは軸受81内の一方向側(搬送方向側)において安定して回転するので、ばたつき現象による異音の発生が抑制される。
・上記実施形態において、ホルダー部80には、軸受81の傾斜面85が支持面26aとなす傾斜角を調節可能な角度調節機構KAJが設けられていてもよい。この変形例の一例について、図を参照して説明する。
図14に示すように、本変形例の軸受81はホルダー部80において回動可能に取り付けられた軸受体88に設けられている。すなわち、軸受体88は下方側に開口部が設けられた略円筒形状を有し、この開口部を軸受幅Jwとする軸受81が円筒形状の略中心部分に形成されている。そして、円筒外周部から外側へ一部の部材が突出して形成されたレバー部88aを移動させることによって、軸受81は主走査方向Xに沿う軸線を中心として回転する。
従って、例えばプリンター11の使用者がレバー部88aを移動操作して軸受体88を回転させることによって、軸受81の内天面84に設けられた傾斜面85の支持面26aに対する傾斜角を調節することが可能である。すなわち、ホルダー部80と軸受体88が角度調節機構KAJとして機能する。もとより、図示しない駆動源による駆動力を用いて、レバー部88aを移動させ、軸受体88を回転させるようにしてもよい。
この変形例によれば、上記実施形態での効果(1)〜(5)および上記変形例での効果(6)に加えて次の効果を得る。
(7)角度調節機構KAJによって、例えば、紙押えローラー18が用紙Pと接触する接触点における回転体18bの接線が支持面26aとなす傾斜角αが、排紙ローラー対17によって搬送される用紙Pに応じて変動する場合、この変動した角度に合わせるように、軸受81の傾斜面85の傾斜角を調節することが可能である。従って、軸部18jは軸受81内において安定して回転するので、ばたつきによる異音の発生が抑制される。
・上記実施形態において、軸受81の内天面84に形成する傾斜面85の形状は、他の形状であっても勿論よい。本変形例について、図を参照して説明する。なお、ここでは軸部18jが搬送される用紙Pから受ける押力Fや、その作用方向についての説明は省略する。
図15(a)に示すように、軸受81の内天面84を、副走査方向Y下流側が副走査方向Yに向かって先下がりの第1傾斜面85aであって、副走査方向Y上流側が副走査方向Yに向かって先上がりの第2傾斜面85bである屈曲面としてもよい。従って、内天面84において第1傾斜面85aと第2傾斜面85bとの接続部には、谷形状となる屈曲部86が形成される。
このような屈曲面とされた軸受81において、用紙Pが副走査方向Yに搬送される場合は、軸部18jは第1傾斜面85aと当接することによって生ずる逆進力によって第2傾斜面85b側に移動する。そして、軸部18jが第2傾斜面85bに当接すると、今度は順進力が発生して軸部18jは第1傾斜面85a側に移動する。従って、軸部18jは図15(a)において二点鎖線で示すように屈曲部86の近傍に位置する。この結果、ばたつき幅が抑制されて搬送方向における軸受81(下流側内壁面82および上流側内壁面83)との衝突が抑制されることになる。なお、用紙Pが副走査方向Yとは反対方向に搬送される場合も同様であり、ここでは説明を省略する。
あるいは、図15(b)に示すように、軸受81の内天面84を、副走査方向Y下流側が副走査方向Yに向かって先上がりの第1傾斜面85aであって、副走査方向Y上流側が副走査方向Yに向かって先下がりの第2傾斜面85bである屈曲面としてもよい。従って、内天面84において第1傾斜面85aと第2傾斜面85bとの接続部には、山形状となる屈曲部87が形成される。
このような屈曲面とされた軸受81において、用紙Pが副走査方向Yに搬送される場合は、軸部18jは第1傾斜面85aと当接することによって生ずる順進力によって第1傾斜面85aに沿って副走査方向Y側に移動して下流側内壁面82に当接する。そして、軸部18jが下流側内壁面82に当接した状態が維持される。逆に用紙Pが副走査方向Yと反対方向に搬送される場合は、軸部18jは最初に搬送方向に移動することによって第2傾斜面85bに当接する。すると、軸部18jは、この第2傾斜面85bとの当接によって生ずる順進力によって第2傾斜面85bに沿って副走査方向Yとは反対側の搬送方向に移動して上流側内壁面83に当接する。そして、軸部18jが上流側内壁面83に当接した状態が維持される。
従って、軸部18jは図15(b)において実線と二点鎖線とで示すように、搬送方向に応じて屈曲部87を乗り越えた2つの位置のいずれかの位置に安定して維持される。この結果、ばたつきが抑制されて搬送方向における軸受81との頻繁な衝突が抑制されることになる。
・上記実施形態において、支持台26が有する支持面26aは、必ずしも鉛直方向と交差する水平方向に延在する水平面でなくてもよい。軸受81において、紙押えローラー18が用紙Pから受ける押力Fによって、軸部18jが内天面84に向かって持ち上げられる構成とされる範囲であれば、支持面26aは水平から傾いた状態であっても勿論よい。
・上記実施形態において、プリンター11は、用紙Pと液体噴射ヘッド25との間の距離を調節するべくキャリッジ23の位置を調節する位置調節機構PAJを、必ずしも備えなくてもよい。例えば、常に一定の厚さの用紙Pに対して印刷が行われる場合などでは、位置調節機構は不要である。
・上記実施形態においては、キャリッジ23(筐体23A)は、第1カム機構40および第2カム機構50において高さ位置が2段階、3段階、あるいは5段階以上で調節可能に構成してもよい。あるいは、上記実施形態の第1カム機構40や第2カム機構50とは異なる構成のカム機構によってキャリッジ23(筐体23A)の高さを調整するようにしてもよい。
・上記実施形態において、液体噴射ヘッド25は、用紙Pの搬送方向と交差する方向にキャリッジ23と共に往復移動して液体を噴射する所謂シリアルヘッドタイプのものに限らない。すなわち、長さサイズが用紙Pの幅サイズに対応した全体形状をなし、その長手方向が用紙Pの搬送方向と交差する幅方向に沿うように固定配置された状態で、その長手方向の略全体に亘るように設けられた多数のノズルから媒体に向けて液体を噴射する所謂ラインヘッドタイプのものであってもよい。
・上記実施形態において、液体噴射ヘッド25から噴射する液体であるインクの供給元は、キャリッジ23に装着される所謂オンキャリタイプのインクカートリッジEK以外であってもよい。例えば、プリンター11の本体ケース12の内部であってキャリッジ23以外の箇所に設けられる所謂オフキャリタイプのインク収容体であってもよい。あるいは、本体ケース12の外部に設けられる所謂外付けタイプのインク収容体であってもよい。このようにすれば、キャリッジ23に装着するタイプであるためにインクの容量に制約があるインクカートリッジEKの場合に比べて、キャリッジ23の外部に設けられるインク収容体を用いた場合はインクの容量を大きくできるので、より多くのインクの噴射を行うことが可能である。
なお、本体ケース12の外部に設けられたインク収容体から本体ケース12の内部の液体噴射ヘッド25にインクを供給する場合には、インクを供給するためのインク供給チューブを本体ケース12の外部から内部へ引き回す必要がある。よって、この場合には、本体ケース12にインク供給チューブを挿通可能な孔や切り欠きを設けることが好ましい。あるいは本体ケース12に開閉可能に設けられた画像読取部(スキャナーユニット)15や操作パネル13などの開閉体が本体ケース12に対して完全に閉じないようにするボスなどの規制部材を本体ケース12に設け、この規制部材で形成される隙間を通してインク供給チューブを本体ケース12の外部から内部へ引き回しても良い。このようにすれば、インク供給チューブのインク流路を用いた液体噴射ヘッド25に対するインクの供給を容易に行うことができる。
・上記実施形態において、用紙Pの代わりに、プラスチックフィルムや布、あるいは金属箔などをターゲットとして用いてもよい。
・上記実施形態において、記録装置は、プリンター11に限らず、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)を噴射したり吐出したりして記録を行う流体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う液状体噴射装置であってもよい。また、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を噴射する粉粒体噴射装置(例えばトナージェット式記録装置)であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。