JP2015012003A - 光電変換素子及びその製造方法、並びに該光電変換素子を有する太陽電池 - Google Patents

光電変換素子及びその製造方法、並びに該光電変換素子を有する太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性に優れた光電変換素子の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】基材上に、少なくとも、下部電極と、活性層と、上部バッファ層と、上部電極とを、この順に有する光電変換素子の製造方法であって、前記上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜し、前記活性層と前記上部バッファ層の膜厚の和が、300nm以上、2500nm以下となるように成膜することを特徴とする光電変換素子の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子、該光電変換素子の製造方法、並びに該光電変換素子を有する太陽電池に関する。
フレキシブルな基板を用いた有機薄膜太陽電池の製造方法において、ロール・ツー・ロール方式が知られている(例えば特許文献1、2、非特許文献1、2)。このようなロール・ツー・ロール方式は、例えば、真空蒸着を用いた枚葉式の生産方式に比べ、製造コストを削減でき、大面積化が容易といったメリットがある。なお、ロール・ツー・ロール方式を用いた有機薄膜太陽電池を構成する各層は塗布法により成膜されるのが一般的である。
米国公開2007/0295400号公報 特表2009−502028号公報
J.Mater.Chem.,2010,20,8994−9001. Nanoscale,2010,2,873−886.
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1、2、非特許文献1、2に提案されるロール・ツー・ロール方式で、基材上に有機薄膜太陽電池を構成する光電変換素子の各層を成膜した場合、ロールと成膜表面とが接触してしまい、埃や異物、或いはフィルム裏面の易滑材を起点として、膜が剥離してしまったり、膜が傷付く可能性があることが判明した。特に、上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜する場合、上部バッファ層の成膜後に基材の搬送工程や巻き取り工程が必要となるが、その際に、成膜面が、ロールや基材の裏面と接触することにより、上部バッファ層、及び活性層が剥離する場合がある。活性層の剥離が起こると、上部バッファ層上に形成される上部電極の形成時に、上下の電極間が短絡してしまう可能性が高くなる。そのため、この方法により、光電変換素子を製造しようとすると、歩留まりが低下し、優れた特性を有する光電変換素子を得ることが難しくなる。本発明は、上記問題を解決するものであり、生産性に優れた光電変換素子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は上記実情に鑑み、鋭意検討を行った結果、活性層と上部バッファ層との膜厚の和を従来よりも厚くすることで、成膜された活性層及び上部バッファ層の膜硬度が向上するため、ロール・ツー・ロール方式で上部バッファ層を成膜した場合に、成膜面が基材の裏面やロール等と接触しても、活性層の剥離が発生しないことを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1]基材上に、少なくとも、下部電極と、活性層と、上部バッファ層と、上部電極とを、この順に有する光電変換素子の製造方法であって、前記上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜し、前記活性層と前記上部バッファ層の膜厚の和が、300nm以上、2500nm以下となるように成膜することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
[2]前記上部バッファ層の膜厚が、前記活性層の膜厚よりも大きいことを特徴とする[
1]に記載の光電変換素子の製造方法。
[3]前記上部バッファ層の導電率が1×10-2S/m以上であることを特徴とする[
1]又は[2]に記載の光電変換素子の製造方法。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法により得られる光電変換素子。
[5][4]に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
本発明により、ロール・ツー・ロール方式において、光電変換素子の短絡の原因となる活性層の剥離を防ぐことができ、生産性の高い光電変換素子の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる光電変換素子の断面図である。 本発明の一実施形態に係る薄膜太陽電池の断面図である。 本発明の一実施形態に係る薄膜太陽電池モジュールの断面図である。
以下、本発明について、詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨、及びその範囲から逸脱することなく、その形態、及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分、又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
本発明の一実施形態は、基材上に、少なくとも、下部電極と、活性層と、上部バッファ層と、上部電極とを、この順に有する光電変換素子の製造方法であって、該上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜する製造方法である。なお、本発明において、必須ではないが、下部電極と、活性層との間に、下部バッファ層をさらに設けてもよい。以下、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法について、図1を参照して説明する。図1においては、基材106が各層の最上面に配置されている状態を示しているが、実際には、以下に説明するように、基材106上に、順次、下部電極101、下部バッファ層102、活性層103、上部バッファ層104及び上部電極105を形成し、光電変換素子107を製造する。
<1.ロール・ツー・ロール方式>
本発明において、少なくとも上部バッファ層はロール・ツー・ロール方式により成膜される。ロール・ツー・ロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、簡易に量産が可能である。
ロール・ツー・ロール方式は、これまでシート・ツー・シート(枚葉)方式によって生産されてきた電子デバイスを効率よく量産する方法として注目されており、近年では様々な用途に展開されつつある。ロール・ツー・ロール方式は、シート・ツー・シートプロセスに比較して低コスト化、さらには、高生産性を実現可能にする製造技術面の利点が挙げられる。具体的には、ロール・ツー・ロール方式では、フレキシブルな基材が装置の間を連続的に流れることになるため、製造プロセスのエネルギー、人員、工場スペース、物流、等々の大幅コストダウンが期待でき、環境とエネルギーにも配慮した、より汎用性のある生産技術である。
ロール・ツー・ロール方式による機能付与の方法や処理、材料等は目的によって多種多様な方法が存在する。機能付与には表面処理(機械的処理)、レーザー加工(パターニング)、ラミネート(機能フィルムラミネート)、コーティング(ウェット・ドライ)、印刷(フレキソ、グラビア、凸版、インクジェット、インクプリント)などである。このうち、コーティングにはウェットコートとドライコートがあり、特にウェットコートは、モノマーやポリマー(高分子)の溶液を基材上に塗布して乾燥・硬化させる製造方法であり、反射防止膜や、耐薬品性・耐熱性・低摩擦性といった機能を発現するためのフッ素系コーティング、導電性・IRカット・帯電防止などを目的とした導電膜のコーティングが既に実用化されている。これらは機能を基材全面に均一に塗布する必要があるため、ロール・ツー・ロール方式に最も適したプロセスである。
ロール・ツー・ロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロール・ツー・ロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径は、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下であり、通常10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径は、通常4m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下であり、通常1cm以上、好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、更に好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると、以下の各工程で成膜される層が、曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅は、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上であり、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると光電変換素子の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
なお、本発明においては、少なくとも上部バッファ層104はロール・ツー・ロール方式で成膜することにより形成されるが、下部バッファ層102、活性層103等の、光電変換素子を構成する他の層もロール・ツー・ロール方式で成膜して形成することが好ましい。これらの層もロール・ツー・ロール方式で成膜することで、光電変換素子の生産性をより向上させることができる。
<2.基材106>
基材106は、光電変換素子を支持するための母材である。本発明においては、少なくとも上部バッファ層104をロール・ツー・ロール方式で成膜するために、基材106もロール・ツー・ロール方式に耐えうるように、ある程度の柔軟性が要求される。好ましくは、フィルム状の基材やシート状の基材を使用することができる。基材106に使用できる材料としては、ロール・ツー・ロール方式に耐えうる材料であれば、特段の制限はないが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂等の有機材料;紙、合成紙等の紙材料等;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートした複合材料等が挙げられる。これらの材料でも、耐熱性の観点から、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、フッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、又は、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートした複合材料等が特に好ましい。
また、基材106の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材106の膜厚が5
μm以上であることは、光電変換素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材106の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ質量が重くならないために好ましい。
また、基材106は単層であっても、積層であってもよい。また、基材106は遮光性の高いものでもよいし、低いもの(いわゆる透け感のあるもの)でも良い。
<3.下部電極101の形成工程>
最初に、基材106上に下部電極101を形成する。なお、本発明において、下部電極101とは、上部電極105よりも、基材106に近い位置に配置されている電極を意味し、上部電極105とは、基材106から下部電極101よりも遠い位置に配置された電極を意味する。
なお、通常、下部電極101及び上部電極105の一対の電極のうち、一方の電極がアノードであり、他方の電極がカソードである。本発明において、下部電極101は、カソードであってもアノードであってもよいが、下部電極101がカソードである場合、上部電極105はアノードであり、下部電極101がアノードの場合、上部電極105はカソードである。下部電極101及び上部電極105は、少なくとも一方の電極が透光性を有していればよいが、両方が透光性を有していてもよい。本発明において、透光性を有するとは、太陽光が40%以上透過することを意味するが、後述する活性層103に十分に光を到達させるためには、透過率が70%以上であることが好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。下部電極101をアノードとする場合と、カソードとする場合では使用材料等が異なるが、具体的に、以下に説明するような材料や形成方法により形成することができる。
アノードとは、一般には仕事関数がカソードよりも高い導電性材料で構成され、活性層103で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノードの材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム、コバルト等の金属又はその合金が挙げられる。これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。アノードが透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛、酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
アノードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
アノードのシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノードの形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ
粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法が挙げられる。
カソードは、一般には仕事関数が低い値を有する導電性材料で構成され、活性層103で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。カソードの材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム等の金属又はその合金;フッ化リチウム、フッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化セシウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料であるため、好ましい。カソードについてもアノードと同様に、電子取り出し層としてチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、高い仕事関数を有する材料を用いることもできる。電極保護の観点から、カソードの材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム、インジウム等の金属、又は酸化インジウムスズ等の該金属を用いた合金である。
カソードの膜厚に特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
カソードのシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソードの形成方法としては、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等がある。
また、アノード及びカソードは、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、アノード及びカソードに対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
<4.下部バッファ層102の形成工程>
次に、下部電極101上に下部バッファ層102を形成する。下部バッファ層102とは、光電変換素子107において、下部電極101と活性層103との間に形成される層であり、正孔取り出し層又は電子取り出し層である。通常、下部電極101がアノードの場合は、下部バッファ層102は正孔取り出し層であり、下部電極101がカソードの場合は、下部バッファ層102は電子取り出し層である。下部バッファ層102が電子取り出し層である場合と、正孔取り出し層である場合とでは、使用できる材料等は異なるが具体的には、以下の材料や方法により下部バッファ層102を形成することができる。
電子取り出し層は、活性層103からカソードへ電子の取り出し効率を向上させる機能を有する。このような機能を有してさえいれば、電子取り出し層に使用できる材料に、特段の制限はないが、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料の例としては、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソードと組み合わされた際にカソードの仕事関数を小さくし、光電変換素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
電子取り出し層の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、電荷移動が促進されうる点で好ましい。電子取り出し層の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることは、n型半導体材料への逆電子移動が防がれうる点で好ましい。
電子取り出し層の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層の材料のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔が移動してくることを阻止しうる点で好ましい。
電子取り出し層の材料のLUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法を参考にして実施することができる。
電子取り出し層の材料が有機化合物である場合、DSC法により測定した場合のガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)に特段の制限はないが、ガラス転移温度が観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によりガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
また、DSC法により測定した場合のガラス転移温度が55℃以上である化合物の中でも、ガラス転移温度が、好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。
また、電子取り出し層の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55℃未満に観測されないものであることが好ましい。
なお、本明細書におけるガラス転移温度とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知
文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法により、測定を実施することができる。
電子取り出し層に用いられる化合物のガラス転移温度が55℃以上である場合、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、グラビアコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。
塗布法により電子取り出し層を形成する場合は、塗布液にさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程での塗布むら等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えばアルカリ金属塩を電子取り出し層の材料として用いる場合、真空蒸着、スパッタ等の真空成膜方法を用いて電子取り出し層を成膜することが可能である。なかでも、抵抗加熱による真空蒸着によって、電子取り出し層を形成するのが望ましい。真空蒸着を用いることにより、活性層等の他の層へのダメージを小さくすることができる。
一方、n型半導体の金属酸化物については、例えば、酸化亜鉛ZnOを電子取り出し層の材料として用いる場合には、スパッタ法等の真空成膜方法を用いることもできるが、塗布法を用いて電子取り出し層を成膜することが望ましい。例えば、Sol−Gel Science、C.J.Brinker,G.W.Scherer著、Academic Press(1990)に記載のゾルゲル法に従って、酸化亜鉛で構成される電子取り出し層を形成できる。
正孔取り出し層は、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させる機能を有する。このような機能さえ有していれば、正孔取り出し層に使用できる材料に特段の制限はないが、具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物、ナフィオン、後述のp型半導体等が挙げられる。その中でも好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、グラビアコート法やインクジェット法等の湿式塗布法等により形成することができ
る。正孔取り出し層に半導体材料を用いる場合は、後述の有機活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
なかでも、正孔取り出し層の材料としてPEDOT:PSSを用いる場合、分散液を塗布する方法によって正孔取り出し層を形成することが好ましい。PEDOT:PSSの分散液としては、ヘレウス社製のCLEVIOSTMシリーズや、アグファ社製のORGACONTMシリーズ等が挙げられる。
塗布法により正孔取り出し層を形成する場合は、塗布液にさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程での塗布むら等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<5.活性層103の形成工程>
次に、下部バッファ層102上に活性層103を形成する。なお、下部バッファ層102を設けない場合は、下部電極101上に活性層103を形成する。
活性層103は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む。p型半導体化合物とは、p型半導体材料として働く化合物であり、n型半導体化合物とは、n型半導体材料として働く化合物である。具体的には、光電変換素子が光を受けると、光が活性層103に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気を電極から取り出すことにより光電変換素子として機能する。なお、通常、活性層103は有機化合物、又は無機化合物が挙げられるが、本発明においては、上部バッファ層104がロール・ツーロール方式により成膜されるために、活性層103は有機化合物により形成されることが好ましい。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
活性層103の層構成は、p型半導体化合物層とn型半導体化合物層とが積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層(i層)を薄膜積層型の中間層として有する構造等が挙げられる。なかでも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型の活性層が好ましい。
活性層103を形成する膜の成膜方法としては、特段の制限はなく、例えば湿式成膜法(以下、塗布法と称す場合がある。)又は真空成膜法を用いることができる。なかでも、本発明においては、半導体化合物を含有する塗布液を塗布することにより層を形成する塗布法を用いることが好ましい。一般的に、有機化合物を用いて、塗布法により成膜すると、生産性は向上するものの、得られる膜の硬度が低い傾向がある。そのため、ロール・ツー・ロール方式でこのような膜を塗布法により成膜すると、成膜面と基材裏面、成膜面とロール等の接触により、膜剥がれが発生しやすくなる。しかしながら、本発明においては、後述するように活性層103、及び上部バッファ層104を特定の膜厚にして成膜することで、膜硬度が高くなるために、成膜面が基材裏面等と接触しても活性層103等の剥離が発生しにくくなる。そのため、活性層103を塗布法により成膜することは、本発明において特に有効である。なお、p型半導体化合物層はp型半導体化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成することができ、n型半導体化合物層はn型半導体化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成することができ、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層はp型半導体化合物とn型半導体化合物とを含有する塗布液を塗布
することにより形成することができる。
また、p型半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布した後にp型半導体化合物前駆体をp型半導体化合物へと変換してもよいし、n型半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布した後にn型半導体化合物前駆体をn型半導体化合物へと変換してもよい。ここで、半導体化合物前駆体とは、熱又は光等の外部刺激を加えることにより、半導体化合物へと変換される化合物のことを指す。
具体的な湿式成膜法の方法は任意であり、例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、バーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられるが、ロール・ツー・ロール方式に適用可能な方法であればこの限りではない。
p型半導体化合物とn型半導体化合物としては、それぞれ、1種の化合物を用いてもよいし、2種以上の化合物を任意の比率で併用してもよい。
[5.1 p型半導体化合物]
活性層103が含有するp型半導体化合物に、特に限定はないが、低分子有機半導体化合物と高分子有機半導体化合物とが挙げられる。
[5.1.1 低分子有機半導体化合物]
低分子有機半導体化合物の分子量は、上限、下限ともに特に制限されないが、通常5000以下、好ましくは2000以下であり、一方、通常100以上、好ましくは200以上である。
また、低分子有機半導体化合物は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有するp型半導体化合物は強い分子間相互作用を有し、活性層103においてp型半導体化合物とn型半導体化合物の混合物層界面で生成した正孔(ホール)を効率よくアノード105へ輸送できることが期待されるためである。
本明細書において結晶性とは、分子間相互作用等によって配向の揃った3次元周期配列をとる化合物の性質のことを指す。結晶性の測定方法としては、X線回折法(XRD)又は電界効果移動度測定等が挙げられる。特に電界効果移動度測定において、正孔移動度が1.0×10−5cm/Vs以上である結晶性化合物が好ましく、1.0×10−4cm/Vs以上である結晶性化合物がより好ましい。一方、正孔移動度が通常1.0×10cm/Vs以下である結晶性化合物が好ましく、1.0×10cm/Vs以下である結晶性化合物がより好ましく、1.0×10cm/Vs以下である結晶性化合物がさらに好ましい。
低分子有機半導体化合物は、上記の性能を満たせば特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
p型半導体化合物として用いられるポルフィリン化合物及びその金属錯体(下記式中のZがCH)、フタロシアニン化合物及びその金属錯体(下記式中のZがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
Figure 2015012003
Figure 2015012003
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl、AlCl、InCl又はSi(OH)等も挙げられる。
11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上24以下のアルキル基である。炭素数1以上24以下のアルキル基とは、炭素数が1以上24以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3以上24以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましくは炭素数1以上12以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3以上12以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体又は銅4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体であり、より好ましくは、29H,31H−フタロシアニン又は銅フタロシアニン錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。
上述のように、低分子半導体化合物を含む層は、湿式成膜法により形成することが好ましい。なかでも、低分子半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布し、後に低分子半導体化合物前駆体を低分子半導体化合物に変換することのより、低分子半導体化合物を含む層を形成することが、成膜が容易である点で好ましい。具体的な方法としては、特に制限はないが、特開2007−324587号公報及び特開2011−119648号公報に記載の方法が挙げられる。
[5.1.2 高分子有機半導体化合物]
高分子有機半導体化合物として、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基で置換されたオリゴチオフェン等のポリマー半導体;等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体ポリマーも挙げられる。共役ポリマーとしては、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の文献に記載されたポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るポリマーを用いることができる。
ポリマーのモノマー骨格やモノマーの置換基は、溶解性、結晶性、成膜性、HOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位及びLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位等を制御するために選択することができる。また、高分子有機半導体化合物が有機溶媒に可溶なものであることは、湿式成膜法により高分子有機半導体化合物を含む層を形成しうる点で好ましい。高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、以下のものに限定されるわけではない。
Figure 2015012003
Figure 2015012003
p型半導体化合物としてその中でも好ましくは、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体であり、高分子有機半導体化合物としては、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体である。
低分子有機半導体化合物及び/又は高分子有機半導体化合物は、成膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有していてよいし、アモルファス状態であってもよい。
p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができるが、特にフラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上であり、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることによりp型半導体化合物の安定性が向上するとともに、開放電圧(Voc)が向上しうる。
また、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特にフラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上であり、一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整されて長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度(Jsc)が向上しうる。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起
こりやすくなり、短絡電流密度(Jsc)が向上しうる。
HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位の算出方法としては、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法とが挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法、サイクリックボルタモグラム測定法があげられる。その中でも好ましくは、サイクリックボルタモグラム測定法である。本明細書においてHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位は、サイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値を指す。
[5.2 n型半導体化合物]
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物;8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ等が挙げられる。
その中でも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体又はN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドがより好ましい。
また、n型半導体化合物としては、n型高分子半導体化合物も挙げられる。具体的には、特段の制限は無いが、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド若しくはペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物が挙げられる。その中でも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物がより好ましい。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定はされないが、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。p型半導体からn型半導体へと効率良く電子を移動させるためには、p型半導体化合物とn型半導体化合物とのLUMOエネルギー準位の相対関係が重要である。具体的には、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位より所定のエネルギーだけ上にあること、言い換えると、n型半導体化合物の電子親和力がp型半導体化合物の電子親和力
より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)はp型半導体化合物のHOMOエネルギー準位とn型半導体化合物のLUMOエネルギー準位との差に依存するため、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位を高くすると、開放電圧(Voc)が高くなる傾向がある。
一方、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、さらに好ましくは−3.3eV以下である。n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位を低くすることにより、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−7.0eV以上であることは、n型半導体化合物による光吸収も発電に利用しうる点で好ましい。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることには、正孔の逆移動を阻止しうる点で好ましい。
n型半導体化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10−6cm/Vs以上であり、1.0×10−5cm/Vs以上が好ましく、5.0×10−5cm/Vs以上がより好ましく、1.0×10−4cm/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常1.0×10cm/Vs以下であり、1.0×10cm/Vs以下が好ましく、1.0×10cm/Vs以下がより好ましい。n型半導体化合物の電子移動度が1.0×10−6cm/Vs以上であることは、光電変換素子の電子拡散速度向上、短絡電流向上、変換効率向上等の効果が大きくなる傾向にある傾向にあるため、好ましい。
電子移動度の測定方法としては電界効果トランジスタ(FET)測定が挙げられ、具体的には公知文献(特開2010−045186)に記載の方法により実施することができる。
n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.5質量%以上であり、0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましい。一方、通常90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。n型半導体化合物の溶解度が0.5質量%以上であることは、n型半導体化合物を含有する溶液において、n型半導体材料の分散安定性が向上し、凝集、沈降、分離等を起こしにくくなるため、湿式成膜法による成膜が容易となる点で好ましい。
以下、これらの好ましいn型半導体化合物についてさらに説明する。
[5.2.1 フラーレン化合物]
フラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有するものが好ましい。
Figure 2015012003
式(n1)〜(n4)中、FLNとは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表わす。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であれば何でもよい。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。その中でも、C60又はC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素−炭素結合が切れていてもよい。又、一部の炭素原子が、他の原子に置き換えられていてもよい。さらに、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団が、フラーレンケージ内に内包されていてもよい。
a、b、c及びdは整数であり、a、b、c及びdの合計は通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造は、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環に付加される。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−R21と−(CHとがそれぞれ付加している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R25)(R26)−N(R27)−C(R28)(R29)−が付加して5員環を形成している。一般式(n3)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R30)(R31)−C−C−C(R32)(R33)−が付加して6員環を形成している。一般式(n4)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R34)(R35)−が付加して3員環を形成している。Lは1以上8以下の整数である。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(n1)において、R21は、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、メチル基、エチル基、
n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、炭素数1以上6以下のものがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。
アルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
一般式(n1)において、R22〜R24は各々独立して置換基を表し、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は炭素数2以上10以下の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基がさらに好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n2)において、R25〜R29は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基
がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定は無いが、好ましくはフッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1以上14以下のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)において、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。
有していてもよい置換基として特に限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基、炭素数1以上14以下のアルキルカルボニル基、炭素数1以上14以下のアルキルチオ基、炭素数2以上14以下のアルケニル基、炭素数2以上14以下のアルキニル基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基、炭素数2以上20以下のアリールチオ基、炭素数2以上20以下のアリールオキシ基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基又は炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1以上14以下のアルキル基は1以上のフッ素原子で置換されていてもよい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
炭素数1以上14以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシル基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。炭素数2以上14以下のエステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。
一般式(n3)において、R30〜R33は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルチオ基である。R30又はR31は、R32又はR33と結合して環を形成していてもよい。R30又はR31は、R32又はR33と結合して環を形成している場合の一例として、芳香族基が縮合したビシクロ構造である一般式(n5)の構造が挙げられる。
Figure 2015012003
一般式(n5)においてfはcと同様の整数であり、Zは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、アルキレン基又はアリーレン基である。
アルキレン基としては炭素数1以上2以下のものが好ましく、メチレン基又はエチレン器が挙げられる。アリーレン基としては炭素数5以上12以下のものが好ましく、例えばフェニレン基が挙げられる。アミノ基は、メチル基又はエチル基等の炭素数1以上6以下のアルキル基で置換されていてもよい。アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
式(n5)に表される構造は、下記式(n6)又は式(n7)で表される構造であることが特に好ましい。
Figure 2015012003
一般式(n4)において、R34〜R35は各々独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上12以下のア
ルコキシ基又は炭素数1以上12以下のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上12以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1以上8以下の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。
一般式(n4)で表される構造の好ましい例としては、R34及びR35が共にアルコキシカルボニル基であるもの、R34及びR35が共に芳香族基であるもの並びにR34が芳香族基でありかつR35が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基であるものが挙げられる。
湿式成膜法を用いてフラーレン化合物を含む層を形成するためには、フラーレン化合物自体が液状で塗布可能であるか、又はフラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。用いられるフラーレン化合物の、25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上である。フラーレン化合物の溶解度が0.1質量%以上であることは、フラーレン化合物を含有する溶液におけるフラーレン化合物の分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等が起こりにくくなるために、湿式成膜法による成膜が容易となる点で好ましい。
湿式成膜法を用いてフラーレン化合物を含む層を形成する場合における、フラーレン化合物を含有する溶液の溶媒は、非極性有機溶媒であれば特段に制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒を用いることも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等である。
(フラーレン化合物の製造方法)
フラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、部分構造(n1)を有するフラーレンの合成は、国際公開第2008/059771号又はJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436のような公知文献
の記載に従って、実施可能である。
部分構造(n2)を有するフラーレンの合成は、J.Am.Chem.Soc.1993,115,9798−9799、Chem.Mater.2007,19,5363−5372又はChem.Mater.2007,19,5194−5199のような公知文献の記載に従って、実施可能である。
部分構造(n3)を有するフラーレンの合成は、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,78−80、Tetrahedron Lett.1997,38,285−288、国際公開第2008/018931号又は国際公開第2009/086210号のような公知文献の記載に従って、実施可能である。
部分構造(n4)を有するフラーレンの合成は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1997,1595、Thin Solid Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987又はJ.Org.Chem.1995,60,532−538のような公知文献の記載に従って、実施可能である。
[5.2.2 N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体]
N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体としては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2009/115553号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2009/000756号及び国際公開第2009/091670号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は、電子移動度が高く、可視領域の光を吸収するため、電荷輸送と発電との両方に寄与しうる点から好ましい。
[5.2.3 ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド]
ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドとしては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2007/146250号及び国際公開第2009/000756号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は、電子移動度が高く、溶解性が高く塗布性に優れている点から好ましい。
[5.2.4 n型高分子半導体化合物]
n型高分子半導体化合物としては、特段の制限はないが、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド若しくはペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物等が挙げられる。
その中でも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物がより好ましい。
n型高分子半導体化合物の具体例としては、国際公開第2009/098253号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2010/012710号及び国際公開
第2009/098250号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は、可視領域の光を吸収するために発電に寄与しうる点、及び粘度が高く塗布性に優れている点から好ましい。
なお、本発明において、特に制限はないが、活性層103は、光電変換素子の生産性を向上させるために、ロール・ツー・ロール方式で形成することが好ましい。
<6.上部バッファ層104の形成工程>
次に、上部バッファ層104を活性層103上に形成する。なお、上部バッファ層104は、光電変換素子107において、活性層103と上部電極105との間に形成される層であり、正孔取り出し層又は電子取り出し層を意味する。通常、上部電極105がアノードの場合は、上部バッファ層104は正孔取り出し層であり、上部電極105がカソードの場合は、上部バッファ層104は電子取り出し層である。なお、上部バッファ層104を正孔取り出し層とする場合と、電子取り出し層にする場合とで、使用できる材料等は異なるが、いずれの場合も、上述した<4.下部バッファ層102の形成工程>で挙げた材料や形成方法を用いて、上部バッファ層104を成膜し形成することができる。また、本発明において、上部バッファ層104は、ロール・ツー・ロール方式で成膜される。
なお、上述した<4.下部バッファ層102の形成工程>で挙げた材料及び形成方法のなかでも、活性層103と同様に、上部バッファ層104は、有機化合物を用いて、塗布法により成膜することが好ましい。理由としては、活性層103で挙げた理由と同様である。
<7.活性層103及び上部バッファ層104の膜厚、導電率及び鉛筆硬度>
ロール・ツー・ロール方式で基材上に光電変換素子の各構成部材を形成した場合、タッチロールと成膜表面の接触のために埃や異物等を起点にとして、或いは基材の巻き取り時に基材の裏面の易滑材や埃、異物等を起点として、形成した膜が剥がれてしまうという問題が発生しうる。特に、上部バッファ層104をロール・ツー・ロール方式で成膜する場合、成膜面とロールとの接触により、活性層103が剥離してしまう。活性層103が剥離すると、上下電極間が短絡してしまい、光電変換素子として機能しなくなる。そのため、上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜しようとすると、製造歩留まりが低下する可能性がある。上記の問題を解決するためには、埃や塵を減らすことが1つの手段として考えられるが、追加工程が必要となり、生産性が低下してしまう。さらには、これらの追加工程によっても、埃や塵を完全に取り除くことは極めて困難である。また、膜の剥離を防ぐ目的でバインダー樹脂等を活性層に添加すると、光電変換効率が低下する傾向がある。一方、本発明においては、活性層103及び上部バッファ層104を特定の膜厚で成膜することにより、膜の硬度を適度に強くすることができる。そのため、上部バッファ層をロール・ツー・ロールで成膜して形成する際に、成膜表面とロール、又は成膜表面と基材裏面が接触しても、活性層が剥がれにくくなる。そのため、追加プロセスを必要とすることなく、特性の優れた光電変換素子を、歩留まり良く製造することができる。
具体的に、本発明においては、活性層103と上部バッファ層104が、その膜厚の和が300nm以上となるように成膜することが好ましい。活性層103と上部バッファ層104の膜厚の和が300nm以上となるように成膜することで、上述の通り、膜の硬度が向上し、成膜面がロールや基材裏面等と物理的な接触を受けても、活性層103が剥離しにくくなる。これは、活性層103及び上部バッファ層104の膜厚の和がある程度、大きくなるように成膜することで、膜の表面に掛る負荷による応力や歪みが活性層103と、活性層103の下に設けられる下部バッファ層102等の層との界面に到達しにくくなるためであると考えられる。なお、膜硬度をより高めるためには、活性層103と上部バッファ層104の膜厚の和が、400nm以上であることが好ましく、500nm以上であることが特に好ましい。一方で、活性層103及び上部バッファ層104の膜厚の和
が大きすぎると電荷輸送時の損失が増え、光電変換効率が大幅に低下してしまう。そのため、活性層103及び上部バッファ層104の膜厚の和は、2500nm以下であることが好ましく、2000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることが特に好ましい。特に、活性層103の膜厚が大きすぎると、上部バッファ層104の膜厚を大きくした場合と比較して、変換効率が低下する傾向にある。そのため、活性層103の膜厚は80nm以上であることが好ましく、120nm以上であることがさらに好ましく、160nm以上であることが特に好ましく、一方で、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。
また、活性層103と比較して、上部バッファ層104の膜厚を大きくしても、変換効率には影響しにくい。さらに、通常、上部バッファ層104に用いる材料コストは、活性層103を成膜するための材料コストよりも低い傾向がある。これらの観点から、上部バッファ層104の膜厚を活性層103の膜厚よりも大きくすれば、変換効率の低下を防ぐことができ、低コスト化につながるために好ましい。
また、変換効率の低下を、より防ぐためには、上部バッファ層104には導電性の高い材料を用いることが望ましい。具体的に、上部バッファ層104の導電率は1×10-2
S/m以上であることが好ましく、1×10S/m以上であることがさらに好ましく、8×10S/m以上であることが特に好ましく、通常、1×10S/m以下である。このような導電率を有する上部バッファ層104を用いることで、変換効率を悪化させることなく、上部バッファ層104の膜厚を大きくすることができるために、変換効率の高い光電変換素子を生産性良く製造することができる。
また、本発明において、上部バッファ層104を成膜した後の成膜面における鉛筆硬度が基材の裏面(易滑面)の鉛筆硬度よりも高いことが好ましい。上述の通り、上部バッファ層104をロール・ツー・ロール方式で成膜し、基材を巻き取る際に、成膜面が基材の裏面(易滑面)に接触してしまうことにより、活性層103が剥離する傾向がある。活性層が剥離してしまう原因としては、成膜後の膜硬度が低いために、膜硬度の高い部材と接触した際に、膜硬度の低い成膜面、すなわち活性層103や上部バッファ層104が剥離してしまうものと考えられる。そのため、上記のように、上部バッファ層104を成膜した後の成膜面の鉛筆硬度が基材の裏面の鉛筆硬度よりも高ければ、活性層103の剥離が発生しにくくなると考えられる。なお、活性層103単体の鉛筆硬度が基材106の裏面の鉛筆硬度よりも高いことが好ましい。同様に、上部バッファ層104単体の鉛筆硬度が、基材106の裏面の鉛筆硬度よりも高いことが好ましい。なお、鉛筆硬度は、JIS K−5600−5−4に従って測定することができる。
<8.上部電極105の形成工程>
次に、上部バッファ層104上に上部電極105を形成する。上部電極105は上述した通り、下部電極101よりも基材106から離れた場所に位置する電極であり、下部電極101がカソードの場合、上部電極105はアノードであり、下部電極101がアノードであれば、上部電極105はカソードである。なお、上部電極105がアノードである場合と、カソードである場合とでは、上部電極105に使用できる材料等は異なるが、上述した<3.下部電極101の形成工程>に記載した材料や形成方法を用いて上部電極105を形成することができる。
なお、上部電極105を形成した後に、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、光電変換素子を構成
する各層間の密着性、例えば電子取り出し層とカソード、又は電子取り出し層と活性層との密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、製造される光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、活性層内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源に基材を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に基材を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
以上のようにして、光電変換素子を構成する各層を形成し、光電変換素子を製造することができる。なお、図1では、下部電極101、下部バッファ層102、活性層103、上部バッファ層104、及び上部電極105から構成される一つの光電変換素子の例を示しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、各層の形成工程の途中に、レーザースクライブ等によりパターニングを行い、基材105上に複数の光電変換素子を形成してもよい。
<9.太陽電池>
本発明に係る光電変換素子に、さらに他の構成部材を追加して、薄膜太陽電池としてもよい。図2は本発明の一実施形態として薄膜太陽電池14の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、光電変換素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、光電変換素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなどの防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
これらの封止材5、バックシート10及び各種フィルムの材料、形状、性能及び積層方法等については、いずれも国際公開第2011/016430号又は特開2012−191194号公報等に記載の通りである。
<10.用途>
上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく任意である。例えば、図3に模式的に示すように、何らかの基材12上に薄膜太陽電池14を設けて、これを使用場所に設置して用いればよい。具定例を挙げると、基材12として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けて、太陽電池パネルを作製し、建物の外壁などに設置して使用してもよい。
本発明の薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、例えば、国際公開第2011/016430号又は特開2012−191194号公報にあるように、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用
太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池などに用いて好適である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計を変更することができる。
(合成例1:コポリマーAの合成)
Figure 2015012003
モノマーとして、公知文献(J.Am.Chem.Soc.2011,133,10062)に記載の方法を参考にして得られた1,3−ジブロモ−5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6−(5H)−ジオン(化合物E1,86mg,0.204mmol)、公知文献(J.Am.Chem.Soc.2011,133,10062)に記載の方法を参考にして得られた4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−ビス(トリメチルスズ)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール(化合物E2,80mg,0.108mmol)、及び公知文献(Chem.Commun.,2011,47,4920−4922)に記載の方法を参考にして得られた4,4−ジ−n−オクチル−2,6−ビス(トリメチルスズ)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール(化合物E3,80mg,0.108mmol)を用いて、公知文献(J.Am.Chem.Soc.2011,133,10062)に記載の方法を参考にしてコポリマーAを合成した。
なお、コポリマーAの重量平均分子量Mw及びPDIを、以下の測定法に基づいて測定したところ、それぞれ、3.69×10及び9.4であった。
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。分子量分布(PDI)は、Mw/Mnを表す。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は以下の条件で行った。
カラム:PolymerLaboratories GPC用カラム(PLgel MIXED−B 10μm,内径7.5mm,長さ30cm)を2本直列に接続して使用
ポンプ:LC−10AT(島津製作所社製)
オーブン:CTO−10A(島津製作所社製)
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製,RID−10A)及びUV−vis検出器(島津製作所社製,SPD−10A)
サンプル:試料1mgをクロロホルム(200mg)に溶解させた液1μL
移動相:クロロホルム
流速:1.0mL/min
解析:LC−Solution(島津製作所社製)
(活性層塗布液インク1の作製)
p型半導体化合物として合成例1で得られたコポリマーA、及びn型半導体化合物としてフラーレン混合物(フロンティアカーボン社製 NS−E124)を、質量比が1:2.5となるように混合し、混合物が4.55質量%の濃度となるように窒素雰囲気中でオルトキシレンとテトラリンとの混合溶媒(質量比9:1)に溶解させた。この溶液をホットスターラー上で80℃の温度にて1時間攪拌混合した。攪拌混合後の溶液を孔径5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過することにより、活性層塗布液であるインク1を得た。
<実施例1:サンプル1及び光電変換素子1の作製>
酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(カソード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄、ついでイソプロピルアルコールによる超音波洗浄の後、窒素ブローで乾燥させた。
次に、洗浄後の基板を紫外線オゾン処理装置(フィルジェン社製)を用いて10分間紫外線オゾン処理した。その後、酢酸亜鉛(II)二水和物(和光純薬社製)を、濃度が105mg/mLとなるように2−メトキシエタノール(Aldrich社製)とエタノールアミン(Aldrich社製)との混合溶媒(体積比100:3)に溶解した溶液(約0.1mL)を、基板上に3000rpmにてスピンコートにより成膜し、200℃のオーブンで10分間加熱することで、下部バッファ層(電子取り出し層)を形成した。形成された下部バッファ層の膜厚は30nmであった。
下部バッファ層を形成した基板をグローブボックスに持ち込み、上述の通り作製したインク1(0.2mL)をスピンコートすることにより、190nmの膜厚の活性層を成膜した。さらに同じグローブボックス中で、ホットプレートを用いて140℃で10分間熱処理をし、活性層の成膜を完了させた。
次に、活性層上に上部バッファ層(正孔取り出し層)を成膜するために、以下の方法により上部バッファ層塗布液を作製した。まず、大気下、PEDOT:PSS水溶液(Clevios PH、ヘレウス社製、導電率1×10S/m)にアセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンEXP.4036(日信化学社製,アセチレングリコール系化合物を75%含有)を2質量%加えた。得られた液に対してさらに10分間超音波をかけることで分散処理を行い、孔径0.45μmのフィルターでろ過することにより、上部バッファ層塗布液を作製した。この塗布液(500μL)を大気下で、活性層上にスピンコートにより、上部バッファ層を成膜し、基板端部を拭いたのち、窒素雰囲気のグローブボックスに移した。ついでグローブボックス中にて、ホットプレートを用い、140℃の温度で10分間の熱処理を行い、サンプル1を作製した。なお、目視により、上部バッファ層が良好に形成されていることを確認した。また、以下に説明する方法によりサンプル1の膜の硬度試験を行った。その結果を表1に示す。
また、サンプル1と同様の積層体を作製し、さらに、上部バッファ層上に、銀を真空蒸着法により、100nm蒸着して、上部電極を形成し、光電変換素子1を作製した。このようにして作製した光電変換素子の変換効率を以下に説明する方法により測定した。その結果を表1に示す。
(サンプルの評価方法)
以上のように作製したサンプル1に対して、連続加重式引掻強度試験機(新東科学社製)
を用いて耐傷性の試験を行った。750gの荷重を乗せた試験機に45°の角度で設置された鉛筆を約7mm引掻き、活性層の剥離の有無を観察した。三菱鉛筆製の鉛筆硬度Bから2Hまでを使用し、それぞれの硬度で5回試験を行った。鉛筆硬度Bから2Hの5段階の硬度にそれぞれ1点から5点を割当て、活性層の剥離が見られなかった場合に、その硬度を点数として割り当て、点数の合計を硬さスコアとして評価した。具体的に、鉛筆硬度Bの場合を1点、鉛筆硬度HBの場合を2点、鉛筆硬度Fの場合を3点、鉛筆硬度Hの場合を4点、鉛筆硬度2Hの場合を5点となるように点数を割り当てた。
(光電変換素子の評価方法)
光電変換素子に6mm角のメタルマスクを付け、照射光源としてエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用い、ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)により、ITO電極とアルミニウム電極との間における電流−電圧特性を測定した。この測定結果から、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、形状因子FF、及び光電変換効率PCE(%)を算出した。
ここで、開放電圧Vocとは電流値=0(mA/cm)の際の電圧値であり、短絡電流密度Jscとは電圧値=0(V)の際の電流密度である。形状因子FFとは内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = (Pmax/Pin)×100
= (Voc×Jsc×FF/Pin)×100
<実施例2:サンプル2及び光電変換素子2の作製>
活性層の膜厚を190nm、上部バッファ層の膜厚を240nmに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、サンプル2及び光電変換素子2を作製し、それぞれ実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例1:サンプル3及び光電変換素子3の作製>
活性層の膜厚を190nm、上部バッファ層の膜厚を50nmに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、サンプル3及び光電変換素子3を作製し、それぞれ実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表1に示す。
<比較例2:サンプル4及び光電変換素子4の作製>
活性層の膜厚を190nm、上部バッファ層の膜厚を3700nmに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、サンプル4及び光電変換素子4を作製し、それぞれ実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表1に示す。
<実施例3:サンプル5及び光電変換素子5の作製>
活性層の膜厚を190nm、上部バッファ層の形成にPEDOT:PSS水溶液にClevios P VP AI4083(ヘレウス社製、導電率2×10-2〜2×10-1S/m)にアセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンEXP.4200(日信化学社製,アセチレングリコール系化合物を75%含有)を2質量%加えた塗布液を使用し、上部バッファ層の膜厚を200nmに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、サンプル4、及び光電変換素子4を作製し、それぞれ、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<比較例3:サンプル6及び光電変換素子6の作製>
活性層の膜厚を160nm、上部バッファ層の膜厚を110nmに変更した以外は、実施例3と同様の方法により、サンプル6及び光電変換素子6を作製し、それぞれ実施例1
と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
<比較例4:サンプル7及び光電変換素子7の作製>
活性層の膜厚を190nm、上部バッファ層の膜厚を3200nmに変更した以外は、実施例3と同様の方法により、サンプル7及び光電変換素子7を作製し、それぞれ実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2015012003
Figure 2015012003
表1に示すように、実施例1及び2において作製したサンプルの膜硬度は非常に高く、一般的に用いられる基材の易滑面(裏面)の鉛筆硬度よりも高い。そのため、上部バッファ層をロール・ツー・ロールで成膜する際に、成膜面が基材の裏面と物理的に接触しても活性層が剥離しにくいことが予想される。また、実施例1及び2において、作製した光電変換素子は、いずれも高い変換効率が得られ、太陽電池として使用することができる。一方で、比較例1では、光電変換素子の変換効率は良好なものの、サンプルの膜硬度は低いものとなった。これは、活性層と上部バッファ層の膜厚の和が小さすぎるためであると考えられる。このため、上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜すると、成膜面と基材裏面との接触により、下部バッファ層から剥離してしまう可能性が高まるといえる。また、比較例2では、サンプルの膜硬度こそ高いものの、光電変換素子の変換効率は非常に小さく、太陽電池として使用するに、十分な特性が得られていない。これは、活性層と上部バッファ層の膜厚の和が大きすぎるためであると考えられる。
また、実施例3、比較例3及び比較例4は、実施例1、2、比較例1及び2とは異なる導電率を有するPEDOT:PSS水溶液を用いて成膜しているが、これらの評価結果も表2に示すように、表1と同様の傾向が得られた。
すなわち、実施例3により作製したサンプルは膜硬度が高く、また、作製した光電変換素子の変換効率も高いことが確認できる。一方で、比較例3により作製した光電変換素子は高い変換効率を示したものの、サンプルの膜硬度は非常に低いために、ロール・ツー・ロールで上部バッファ層を形成する際は、活性層の剥離が起きやすくなるといえる。さらに、比較例4により作製されたサンプルは、膜硬度こそ高いものの、光電変換素子の変換効率は非常に低く、太陽電池として使用するには、不十分である。以上の点を考慮すると
、本発明のように、活性層及び上部バッファ層を、特定の膜厚で成膜することで、活性層の剥離が起きにくく、変換効率に優れた光電変換素子を歩留まり高く、製造することができる。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 光電変換素子
10 バックシート
12 基材
14 薄膜太陽電池
101 下部電極
102 下部バッファ層
103 活性層
104 上部バッファ層
105 上部電極
106 基材
107 光電変換素子

Claims (5)

  1. 基材上に、少なくとも、下部電極と、活性層と、上部バッファ層と、上部電極とを、この順に有する光電変換素子の製造方法であって、
    前記上部バッファ層をロール・ツー・ロール方式で成膜し、
    前記活性層と前記上部バッファ層の膜厚の和が、300nm以上、2500nm以下となるように成膜することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  2. 前記上部バッファ層の膜厚が、前記活性層の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
  3. 前記上部バッファ層の導電率が1×10-2S/m以上であることを特徴とする請求項
    1又は2に記載の光電変換素子の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる光電変換素子。
  5. 請求項4に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
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