JP2015010126A - 二軸延伸ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

二軸延伸ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルム Download PDF

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佳那 田名部
Kana Tanabe
佳那 田名部
鈴木 健太郎
Kentaro Suzuki
健太郎 鈴木
真一郎 岡田
Shinichiro Okada
真一郎 岡田
晃 亀岡
Akira Kameoka
晃 亀岡
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Abstract

【課題】耐加水分解性、耐熱性に優れ、かつ気泡が少なくフィルム外観にも優れており、長時間使用しても良好な保護機能を維持する裏面保護膜に適した二軸延伸ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルムの提供。【解決手段】下記式(1)で表される、平均重合度が1〜8で、かつアルキル基を少なくとも一方の末端に有するものの割合が2%以上であるシュウ酸グリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマーを0.1mol%以上5.0mol%添加して得られるポリエチレンテレフタレートをポリマー成分とするポリエステルフィルムであり、X1O−[C(O)C(O)ORO]n−C(O)C(O)OX2(1)(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、X1,X2は夫々炭素数4以下のアルキル基または−ROH基、nは0以上の整数(但し、X1,X2が共にアルキル基の場合にはnは1以上)を表わす。)該ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基当量数が11eq/t以下、かつ固有粘度が0.40dl/g以上0.55dl/g未満である太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は二軸延伸ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは耐加水分解性、耐熱性およびフィルム外観に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
近年、太陽電池モジュールを用いる太陽光発電システムは、クリーンエネルギーを利用する発電手段の一つとして普及が進んでいる。太陽電池の裏面保護膜は、主として太陽電池モジュールの保護機能を有し、機械的特性に優れ、かつ耐光性、耐熱性および耐加水分解性等の諸特性を備えていることが必要とされている。
一般に太陽電池裏面保護膜として含フッ素系フィルムとポリエステルフィルムを貼り合わせたものが使用されているが、フッ素系フィルムは非常に高価であるため、安価かつ性能面でフッ素系と遜色ないようなフィルムが切望されていた。
太陽電池裏面保護膜に用いられる比較的安価かつ耐熱性に優れる材料の1つとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの使用が提案されている。しかしながら、汎用的なポリエチレンテレフタレートフィルムでは耐熱性や耐加水分解性は十分とはいえず、これまでにも種々の提案がなされてきた。
耐加水分解性を改善する手法の1つとして、例えば特許文献1ではポリエステルフィルムの固有粘度および面配向度に着目した太陽電池用ポリエステルフィルムが提案されているが、重縮合プロセスが長くなる傾向にある。また、フィルム製造時に溶融押出する際に溶融粘度が高いことから、樹脂温度の上昇に伴い樹脂分解が生じやすく、吐出の際に制約が生じることがあった。
特許文献2には耐加水分解性向上剤としてエポキシ化脂肪酸アルキルエステルやエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルを添加したポリエステルフィルムが開示されているが、溶融工程で架橋反応による異物などが生じることがある。
また特許文献3では耐加水分解剤の1つとしてカルボジイミド系化合物の単量体または重合体、もしくはオキサゾリン化合物を添加したポリエステルフィルムが開示されている。しかしながら、これらの耐加水分解剤はフィルム製造工程や加工工程において分解物によるガスが生じることがある。また、これら一般に知られている末端封止タイプの耐加水分解剤は耐UV変色性が十分でないことがあり、長時間屋外で使用すると裏面保護膜に着色や変色が生じることがあった。
一方で、ポリエステル末端カルボキシル基の封止技術の1つとして、ポリエステル重合中にシュウ酸のグリコールエステル及び/又はシュウ酸系のシュウ酸ポリエステルを添加する方法が知られている(特許文献4など)。しかしながら、これらシュウ酸ポリエステルを用いた方法は、末端カルボキシル基の低減に一定の効果は見られるものの、ポリマー中に気泡が存在することが多く、二軸延伸フィルムに使用しようとするとフィルム中の気泡が表面外観に影響するため、かかる末端カルボキシル基封止技術を用いた二軸延伸フィルム化の検討はこれまで十分に試みられていなかった。
特開2007−70430号公報 特開2007−302878号公報 特開2002−187965号公報 特公昭48−35953号公報
本発明は上記の問題点に注目してなされたものであり、耐加水分解性、耐熱性に優れ、かつ気泡が少なくフィルム外観にも優れており、長時間使用しても良好な保護機能を維持する裏面保護膜に適した二軸延伸ポリエステルフィルムおよびそれからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者等は、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、アルキルエステル末端基を特定割合で含有するシュウ酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマーをポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基封止剤として用いることにより、末端カルボキシル基当量数を低減しつつ、従来のシュウ酸のグリコールエステル等を従来の方法で用いたポリエステルに較べてポリエステル中の気泡含有数が少ないこと、さらに本発明のフィルムは末端カルボキシル基量が少ないにも係らず固有粘度が低いため、製造工程で気泡が発生しても効果的にフィルム系外に取り除くことができるため、気泡がより低減され、フィルム外観に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記式(1)で表される、平均重合度が1〜8で、かつアルキル基を少なくとも一方の末端に有するものの割合が2%以上であるシュウ酸グリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマー(以下、シュウ酸化合物成分と称す)を、ポリエチレンテレフタレートの全酸成分に対して該シュウ酸化合物成分が0.1mol%以上5.0mol%以下となる割合で添加して得られるポリエチレンテレフタレートをポリマー成分とする組成物からなるポリエステルフィルムであり、
O−[C(O)C(O)ORO]n−C(O)C(O)OX (1)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、X,Xは夫々炭素数4以下のアルキル基
または−ROH基、nは0以上の整数(但し、X,Xが共にアルキル基の場合にはn
は1以上)を表わす)
該ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基当量数が11eq/t以下、かつ固有粘度が0.40dl/g以上0.55dl/g未満である二軸延伸ポリエステルフィルムが提供される。
さらに本発明によれば、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの好ましい態様として、該シュウ酸化合物成分の式(1)中のXおよびXが、それぞれメチル基またはエチル基であること、該組成物は下記一般式(2)または(3)で表されるリン酸化合物
Figure 2015010126
(一般式(2)、式(3)中のR、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であるアルキル基、アリール基またはベンジル基のいずれか一つを表わす)
を含有すること、該リン酸化合物がフェニルホスホン酸であること、該ポリエステルフィルムの温度121℃、湿度100%RHの環境下における破断伸度半減時間が96時間以上であること、該シュウ酸化合物成分がポリエチレンテレフタレートの重縮合反応工程においてポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.15dl/g以上0.40dl/g以下の段階で、かつ減圧下において液体状で添加されること、該シュウ酸化合物成分がシュウ酸アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル交換反応率70〜92%の範囲でエステル交換反応させ、さらに重合反応させて得られるものであること、太陽電池裏面保護用途に用いられることの少なくともいずれか1つを具備する二軸延伸ポリエステルフィルムも提供される。
本発明によれば、高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下が十分抑制され、優れた耐加水分解性を有しており、同時にフィルム外観に優れており、長時間使用しても良好な外観・保護機能を維持する太陽電池の裏面保護膜に適したポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリエステル]
本発明におけるポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエチレンテレフタレートである。かかるポリエチレンテレフタレートは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。かかるポリエチレンテレフタレートは、全グリコール成分の80mol%以上がエチレングリコールであるホモポリマーや共重合体が好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレートは、表面平坦性、乾熱劣化性を損なわない程度であれば、全酸成分の20mol%以下の範囲内で、主たるジカルボン酸以外のジカルボン酸成分、あるいはエチレングリコール以外のグリコール成分を用いることができ、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸成分、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどのアルキレングリコール成分、またアジピン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シクロヘキサングリコールなどの脂環族ジオール成分、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールが例示される。
また本発明におけるポリエチレンテレフタレートには本発明の効果を損なわないかぎり、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸,ω−ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分及びオキシカルボン酸成分の総量に対し20mol%以下、さらには10mol%以下の範囲で共重合したものであってもよい。
さらに本発明におけるポリエチレンテレフタレートには実質的に線状である範囲の量であり、かつ、本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2mol%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸,ペンタエルスリトール等を共重合してもよい。
[シュウ酸化合物成分]
本発明のポリエステルフィルムは、下記式(1)で表される、平均重合度が1〜8で、かつアルキル基を少なくとも一方の末端に有するものの割合が2%以上であるシュウ酸グリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマー(以下、シュウ酸化合物成分、あるいはPAOと称す)を、ポリエチレンテレフタレートの全酸成分に対して該シュウ酸化合物成分が0.1mol%以上5.0mol%以下となる割合で添加して得られるポリエチレンテレフタレートをポリマー成分とする組成物からなる。
O−[C(O)C(O)ORO]n−C(O)C(O)OX (1)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、X,Xは夫々炭素数4以下のアルキル基
または−ROH基、nは0以上の整数(但し、X,Xが共にアルキル基の場合にはn
は1以上)を表わす)
かかるシュウ酸化合物成分の平均重合度は、好ましくは1.1〜3.6、さらに好ましくは1.2〜2.0である。また、アルキル基を少なくとも一方の末端に有するものの割合が好ましくは2〜50%の範囲であり、アルキル基としてメチル基またはエチル基が好ましく例示される。また、アルキル基を少なくとも一方の末端に有するものの割合の下限はさらに10%が好ましく、より好ましくは20%、特に好ましくは30%である。
また、平均重合度は、分子中に含まれる[−C(O)C(O)ORO−]で表される結合単位数の数平均を表わす。
かかるシュウ酸化合物成分は、一般的によく知られている重合反応(好ましくは溶融重合)により、シュウ酸ジアルキルエステルとアルキレングリコールから製造される。例えば、シュウ酸ジアルキルエステルと炭素数2〜4のアルキレングリコール(モル比1:2)を触媒と共に反応器に充填してエステル交換反応および重合反応することにより製造できる。この際、エステル交換反応率は、70〜95%の範囲とすることが好ましく、さらに70〜92%の範囲とすることが好ましい。
この反応率が下限に満たないと、得られるシュウ酸化合物成分中の未反応シュウ酸ジアルキルエステルの割合が多くなり、ポリエステルに添加した後の重合反応が不良となりやすく、逆に上限を超えるとアルキル基を少なくとも一方の末端に有するシュウ酸グリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマーの割合が2%以上のものを得ることが難しくなりやすい。触媒としては、P、Ti、Ge、Zn、Fe、Sn、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Ce、Li、Ca、Hfなどの化合物が好ましい。なお、重合反応においては、熱劣化防止のため、必要であれば耐熱剤を添加しておいてもよい。また、反応終了後にリン酸エステル化合物(リン酸エステル等)のような触媒失活剤を添加することもできる。
本発明のシュウ酸化合物成分において、少なくとも一方の末端にアルキル基を有するものの割合が下限に満たない場合には、その詳細な理由は不明であるが、得られたポリエステルをフィルムに溶融成形する際のカルボキシル基量の増加が大きくなるので好ましくない。なお、少なくとも一方の末端にアルキル基を有するものの割合は、シュウ酸グリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマーをジメチルスルホキシドに溶解後、液体クロマトグラフィー質量分析法にてUV210nmにおけるピーク面積割合から求めた。
本発明において、シュウ酸化合物成分による末端カルボキシル基の低濃度化の機構は、ポリエステルの末端カルボキシル基とアルキレンオクサレートとの反応によるものであり、上記式中のRで表されるアルキレン基はポリエステル主鎖中に取り込まれる。そのため、ポリエステルを構成する主たるグリコール成分と同じアルキレン基であることが、融点の低下や結晶性の低下を抑制する上で好ましい。
また、本発明で用いるシュウ酸化合物成分は、平均重合度が1〜8の単量体もしくは低重合体である必要がある。平均重合度が上限を超えるとPAO自体の融点が高くなって取り扱いが難しくなる。
本発明で用いるシュウ酸化合物成分は、ポリエチレンテレフタレートを形成する全酸成分を基準として0.1mol%以上5.0mol%以下の範囲で添加され、また好ましくは0.5mol%以上3.0mol%以下の範囲で添加される。なお、本発明で用いるPAOが前記式の繰返し単位が複数連結したものである場合も、繰返し単位のモル数を基準とする。
シュウ酸化合物成分の添加量が下限に満たないと末端カルボキシル基当量数の十分に低いポリエチレンテレフタレートを得ることが難しく、一方添加量が上限を超えるとシュウ酸化合物成分添加後の固有粘度の低下が大きい上、著しい発泡を生じ、工程上のトラブルを招いたり、フィルム製膜時に気泡によるフィルム切断やフィルム表面外観性の低下が発生しやすくなる。
[他添加剤]
本発明におけるポリエステル組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、さらに例えば滑剤,顔料,染料,脱泡剤、酸化防止剤,光安定剤,遮光剤(例えばカーボンブラック,酸化チタン等)などの添加剤を必要に応じて含有させることもできる。
[ポリエチレンテレフタレートポリマーの製造方法]
本発明におけるポリエチレンテレフタレートポリマーは、前述のテレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とし、それらを反応させてポリエステル前躯体とし、さらに重縮合反応によって所望の固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートポリマーを製造することができる。
そして、本発明のポリエチレンテレフタレートポリマーの製造方法は以下の工程を含む。
まず、ポリエチレンテレフタレートポリマーの製造に際し、重縮合反応時に前記式で示されるシュウ酸化合物成分を添加する。
本発明ではシュウ酸化合物成分を加熱溶融し、液体状態として添加する。液体状態とすることで添加作業が容易になると共に、ポリエステルに添加した際の拡散性がよくなるためか、得られたポリエステルチップ中の気泡が少なくなる。シュウ酸化合物成分を加熱溶融させる温度は100℃以上であることが好ましい。またシュウ酸化合物成分の液体状態の粘度は0.1〜10ポイズの範囲、さらに1〜10ポイズの範囲が好ましい。
シュウ酸化合物成分の添加に際して添加する直前の重縮合反応の系内を減圧に保つ必要があり、具体的には0.15kPa以下の減圧に保つことが好ましい。従来の手法ではシュウ酸化合物成分及びその類似物を添加する場合、一度、窒素で重縮合反応の系内を常圧に戻して添加後、再び減圧作業を実施しており、かかる手法では時間を要し無駄なポリエステルの分解を発生させるばかりか、系内の脱気が遅くなりポリエステル中の気泡が残りやすくなっていた。
本発明はシュウ酸化合物成分を液体状態とすることにより減圧下の状態での添加を容易にしている。例えば加熱および真空保持の可能な容器(例えば真空ホッパー)を用いて溶融保持したシュウ酸化合物成分を系内に添加する。この際、シュウ酸化合物成分を添加した直後より炭酸ガスが発生するため真空度は低下するが、その際の系内の真空度を80kPa以下とすることが好ましく、さらに50kPa以下とすることが好ましい。この真空度が80kPa以上となるとポリエステル中に気泡が残りやすくなる。
また、シュウ酸化合物成分の添加時期は、前記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.15dl/g以上に到達した以降である。固有粘度が0.15dl/g未満ではポリエチレンテレフタレート中のカルボキシル基自体が少ないため、末端カルボキシル基量を低下させる効果が小さい。さらにシュウ酸化合物成分の添加は2回以上に分割して添加することも有効である。例えば固有粘度が0.15〜0.30dl/gの段階でシュウ酸化合物成分全投入量の50〜90%を添加し、さらに固有粘度が0.40dl/gとなるまでに残りの10〜50%を添加する。シュウ酸化合物成分の添加によりポリエチレンテレフタレート中の末端カルボキシル基量は低下するが、添加後の重縮合反応の際に多少なりとも末端カルボキシル基の量がまた増加をはじめる。シュウ酸化合物成分を分割投入することで再発生する末端カルボキシル基量を抑制することが可能である。
一方でシュウ酸化合物成分の添加時期が遅すぎるとポリエチレンテレフタレートの固有粘度が高いため、ポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基とポリオキザレートの反応により生じる二酸化炭素等に起因する気泡が抜けづらく、気泡を取り除くのに時間を有し、フィルム中に気泡が含まれた状態で製膜されてフィルム外観が低下しやすい。
かかる工程に続き、本発明のフィルムの固有粘度特性を満たす範囲内であれば重縮合反応を継続してポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.60dl/gとなる範囲内でさらに溶融重合させてもよい。
また重縮合反応の温度は、得られるポリエチレンテレフタレートの融点〜(融点+20)℃の範囲、さらには融点〜(融点+10)℃の範囲で行うことが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートは通常280〜300℃で重縮合反応が行われるが、シュウ酸化合物成分添加ポリエチレンテレフタレートは重縮合反応を促進する効果を有することから、低い温度でも重縮合反応速度を維持しつつ、末端カルボキシル基当量数を低減させることができる。具体的には、重縮合反応は268〜275℃の範囲が好ましく、さらには270〜273℃の範囲が好ましい。
ポリエチレンテレフタレートポリマーの重縮合に際し、その他の部分は公知のポリエステル重縮合方法を用いることができる。具体的には、重縮合反応を行う前にエステル化反応もしくはエステル交換反応を行う。エステル交換反応を経由する場合に用いるエステル交換反応触媒としては、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、マンガン化合物、チタン化合物などが好適に挙げられる。また、本発明の製造方法ではエステル化反応もしくはエステル交換反応開始前から反応初期の間に、得られるポリエステルの末端カルボキシル基当量数をさらに低減するために、微量の水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物を添加してもよい。
このようにしてエステル化反応もしくはエステル交換反応を経由して得られた前駆体を溶融状態で重縮合反応させればよい。
また、本発明のポリエチレンテレフタレートポリマーの製造にあたり、重縮合反応の初期段階までに、好ましくはエステル化反応もしくはエステル交換反応終了後から固有粘度0.3dl/gになるまでの重縮合反応中にリン化合物を添加することが好ましい。リン化合物としては特に限定はされないが、下記一般式(2)または(3)で表されるリン酸化合物が好ましく例示される。
Figure 2015010126
(一般式(2)、式(3)中のR、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であるアルキル基、アリール基またはベンジル基のいずれか一つを表わす)
かかるリン酸化合物の含有量は、本発明のポリエステルフィルムを形成する組成物中のポリエチレンテレフタレートを構成する全カルボン酸成分のモル数を基準として10ミリモル%以上80ミリモル%以下の範囲が好ましい。
本発明のシュウ酸化合物成分とともに、エステル交換抑制剤として特定構造のリン酸化合物を用いることにより、結晶化促進による耐加水分解向上効果も発現するため、さらに耐加水分解性を高めることができる。
該リン酸化合物として、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸が挙げられ、特にフェニルホスホン酸が好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレートポリマーの製造法で得られるポリエステルの末端カルボキシル基当量数は10eq/t以下であることが好ましく、さらに6eq/t以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが生産性などの点から2eq/t以上である。
得られたポリエチレンテレフタレートはチップ形状に裁断され、チップ形状に裁断する方法は、それ自体公知のものを採用できる。
[ポリマー末端の構造]
本発明において、末端封止剤として使用するシュウ酸化合物成分は、ポリエチレンテレフタレートポリマーの製造において、シュウ酸化合物成分とポリエチレンテレフタレートのカルボキシル末端基が主な成分として炭酸ガスを発生しながら反応し、シュウ酸化合物成分のほとんどは消失すると考えられ、末端基の一部にのみシュウ酸化合物成分が残存していると考えられる。そのため、フィルムにおけるシュウ酸化合物成分の構造を定性分析するためには極微量の分析を行う必要がある。分析方法として、フィルムまたはチップの核磁気共鳴スペクトル測定によって確認する方法が挙げられる他、ポリエステル低分子量成分を溶解できる溶媒を用い、該ポリエステル低分子量成分に着目し、核磁気共鳴スペクトル測定によって確認する方法を用いてもよい。
[フィルムCOOHおよびIV]
本発明のポリエステルフィルムは、末端カルボキシル基当量数が11eq/t以下であり、好ましくは10eq/t以下である。
ポリエステルフィルムの状態での末端カルボキシル基当量数がかかる範囲であることにより、太陽電池裏面保護膜として用いた場合に、高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下が抑制され、長時間使用しても良好な保護機能を維持することができる。
また本発明の太陽電池裏面保護用ポリエステルフィルムは、固有粘度が0.40dl/g以上0.55dl/g未満であり、また下限は0.50dl/g以上であることが好ましい。
本発明において、ポリエステルフィルムが上述の末端カルボキシル基当量数を有しつつ、同時に固有粘度も通常より低い点に特徴がある。すなわち、ポリエステルの重縮合に際し、特定のシュウ酸化合物成分をポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基封止剤として用い、ポリエステル重縮合の一定段階において特定条件下で添加することにより、末端カルボキシル基量の極めて少ないポリエチレンテレフタレートポリマーを製造することができる。同時に、従来であれば本発明の末端カルボキシル基量のポリエステルを得るためには固有粘度も必然的に高くなっていたところ、本発明のポリエチレンテレフタレートは通常よりも低い固有粘度の範囲で末端カルボキシル基量を低減できる。
すなわち、重縮合時のポリエチレンテレフタレートの溶融粘度が低いことにより、重縮合時に添加するポリオキザレートとポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基との反応により生じる二酸化炭素等に起因する気泡をより抜けやすくし、フィルム中に残存する気泡数をより低減させることができる。
そして、ポリエステルフィルムの製造工程においては固有粘度が高い方が一般的に延伸安定性に優れ、高強度のフィルムを得ることができる一方、高すぎると溶融粘度の上昇により溶融押出の際に剪断発熱が大きくなり、樹脂温度の上昇による分解が無視できなくなる。そのため、従来の高固有粘度で末端カルボキシル基量の少ないポリエチレンテレフタレートポリマーを用いてフィルム製膜を行うと、ポリマー段階では末端カルボキシル基量が少ないにも係らず、フィルムの末端カルボキシル基量が増加する傾向にあった。
かかる従来技術に対し、本発明で用いるシュウ酸化合物成分は重縮合反応を加速する効果があり、低温での重合を実現できるのみならず、重合時間を短縮することによる重合度の過剰な上昇を防ぐことができる。その結果、末端カルボキシル基当量数を低減しつつ、剪断発熱による樹脂劣化が問題とならない程度にまで固有粘度を低減することができ、フィルムの耐加水分解性を大きく向上させることができる。すなわち、本発明のポリエステルフィルムはフィルム製造工程において生じる剪断発熱が非常に小さく、ポリエチレンテレフタレートの劣化を抑制できるため、原料のポリエチレンテレフタレートポリマーと同程度の極めて少ない末端カルボキシル基当量数を維持することができ、フィルムの耐加水分解性が向上するものである。
ポリエステルフィルムの固有粘度を上限未満とすることにより、よりフィルム中に残存する気泡量を低減でき、またフィルム製造工程において生じる剪断発熱を抑制でき、原料のポリエチレンテレフタレートポリマーと同程度の末端カルボキシル基当量数を維持することができる。一方でポリエステルフィルムの固有粘度が下限に満たないと、太陽電池の裏面保護膜としての機械的性質や保護機能の経時劣化が大きくなりやすい。
[耐加水分解性]
本発明のポリエステルフィルムは、温度121℃、湿度100%RHの環境におけるエージング前後での破断伸度の保持率(以下、破断伸度保持率と称することがある)が50%となる時間(以下、破断伸度半減時間)が96時間以上であることが好ましく、さらに好ましくは104時間以上である。
かかる破断伸度保持率特性を有することにより、本発明のフィルムを屋外で長期使用しても優れた耐加水分解性により、長期に渡り劣化を引き起こすことなく、良好な機械強度を維持することができる。本発明においては、上述のように特定のシュウ酸化合物成分を用い、特定方法で得たポリエチレンテレフタレートポリマーを用いて製膜された特定範囲の固有粘度かつ末端カルボキシル基当量数の小さいフィルムを用いることで、かかる破断伸度保持率を達成することができる。
[フィルム表面外観性]
本発明のポリエステルフィルムは、シュウ酸化合物成分を末端封止剤として使用するにも係らずフィルムの表面外観性に優れる効果を有する。具体的には、フィルム125cmにおける直径1mm以上の大きさの気泡数が1個以下であることが好ましい。シュウ酸グリコールエステルを用いつつ、かかる良好な表面外観性を具備することにより、高い耐加水分解性と高い表面外観性を具備する二軸延伸フィルムが得られる。
かかるフィルム表面外観性は、ポリエステルの重縮合反応工程においてポリエステルの固有粘度が0.15dl/g以上になった段階で、かつ減圧下において、上述した特定のシュウ酸化合物成分を0.1mol%以上5.0mol%以下の範囲内で100℃以上に加熱溶融して液体状で添加し、さらにフィルム製膜後に所定範囲の固有粘度となるよう重縮合反応後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度を調整することで達成される。
[ポリエステルフィルムの製造方法]
本発明のポリエステルフィルムは、従来公知の製膜法に準拠して製造することができる。以下にその一例として、ベースとなるポリマーがポリエチレンテレフタレートで構成され、特定のシュウ酸化合物成分を用いて上述のポリマー製造方法により得られたポリエステル組成物を用いた単層ポリエステルフィルムの場合について示す。
まず、上記の方法で製造したポリエチレンテレフタレートチップを乾燥し、押出機で275〜300℃の温度で溶融し、スリットダイに樹脂を導入し、押し出すことにより、未延伸シートを製造する。溶融する温度が275℃未満では樹脂の溶融粘度が高いため押出機への負荷が大きくなる。他方、300℃を越えると樹脂の劣化が促進され、得られるフィルムの耐熱性、耐加水分解性が低下することがある。
次に、得られた未延伸シートを縦方向(以下、長手方向、MD方向と称することがある)および縦方向と直交する方向(以下、横方向、幅方向、TD方向と称することがある)の二軸方向に延伸する。延伸は逐次二軸延伸でもよく、同時二軸延伸でもよい。例えば逐次二軸延伸法を用いる場合について説明すると、スリットダイより押出された溶融ポリマーは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸シートとなる。この未延伸シートを、ロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエチレンテレフタレートのガラス転移点(Tg)以上の温度、さらには(Tg)℃〜(Tg+70)℃とするのが好ましい。縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、さらに必要に応じて熱弛緩処理を順次施して二軸延伸フィルム(二軸配向フィルム)とするが、これらの処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸はポリエチレンテレフタレートのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そして(Tg+5)℃〜(Tg+70)℃まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常、逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
延伸倍率は、縦方向、横方向ともに、好ましくは2.8〜4.5倍、さらに好ましくは3.0〜4.0倍である。延伸倍率が下限に満たないとフィルムの厚み斑が低下したり、配向に起因する耐加水分解性向上効果が得られないことがある。他方、延伸倍率が上限を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
横延伸後のフィルムは、両端を把持した状態で(Tm−55)℃〜(Tm−15)℃の範囲で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理を行うことが好ましい。
さらに弛緩処理を行う場合、公知の弛緩処理方法を用いることができ、例えば熱固定後にフィルム温度を常温に戻す過程で、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させる方法(特開昭57−57628号公報)が挙げられる。その際の弛緩させる割合(弛緩率)として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは1.0〜4.0%、さらに好ましくは1.2〜3.5%の割合で弛緩させることが好ましい。かかる縦弛緩処理により、縦方向の熱収縮率をより小さくすることができる。また横方向の寸法安定性をより高める方法としては、フィルム両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
[太陽電池裏面保護膜]
本発明のポリエステルフィルムは太陽電池裏面保護用途、具体的には太陽電池モジュールの太陽電池保護膜として好適に用いることができ、EVA(エチレンビニルアセテート)をはじめとした太陽電池モジュール用充填剤と貼り合わせて使用される。本発明の太陽電池裏面保護用ポリエステルフィルムで構成される太陽電池裏面保護膜は、温度121℃、湿度100%RHの環境におけるエージング前後での破断伸度保持率の半減時間が96時間以上の高い耐久性を有するため、太陽電池裏面保護膜としての保護機能を長期間維持することができ、太陽電池の発電効率を長期に渡り維持することができる。また耐UV変色性およびフィルム外観性に優れるため、長期間使用しても良好な外観を維持することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。測定および評価の方法を以下に示す。
(1)PAO合成時のエステル交換反応率
エステル交換反応で発生する留出液を計量し、理論発生量との比率で求めた。
(2)PAOの少なくとも一方の末端がアルキル基であるPAOの割合、平均重合度
得られたPAOのサンプル約1mgを1mlのアセトニトリルに溶解し、LC(LC20A、島津製作所製)で次の条件で質量分析し(カラム:Develosil C30−UG−3、流量:0.2ml/min、検出波長:210nm、カラム温度:40℃)、次にMS(LCMS−IT−TOF、島津製作所製)でイオン源:ESI(正イオン、負イオン同時測定)、プローブ電圧:正イオン:+4.5kV、負イオン:−3.5kVネブライズ(窒素)ガス流量:1.5L/min、CDL温度:200℃、乾燥(窒素)ガス流量:100kPa、検出器電圧:1.68kV、質量範囲:m/z 80〜2000で分析を行なって各成分を特定し、UV210nm検出におけるピーク面積割合から夫々算出した。
(3)フィルムの厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ株式会社製 K−402B)にて10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
(4)固有粘度(IV)
得られたポリエステルチップまたはフィルムを用い、重量比が6:4のフェノール:トリクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度で測定した溶液粘度をもとに、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス定数である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gで示す。
(5)末端カルボキシル基当量数
得られたポリエステルチップまたはフィルムを用い、窒素雰囲気下、200℃でベンジルアルコールに溶解させた後、滴定法により、ポリエステル重量1t当りの当量数として、末端カルボキシル基当量数(eq/t)を測定した。
(6)耐加水分解性評価
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を用い、温度121℃、湿度100%RHに設定した環境試験機内に放置し、72、96、104時間の3条件でエージングを行ったサンプルを5枚ずつ作成し、それぞれの条件について試料の縦方向の破断伸度をn=5で測定し、その平均値を求めた。引張試験は東洋ボールドウィン社製(商品名「テンシロン」)を用いて行い、初期チャック間距離50mm、引張速度50mm/minにて実施した。同様に、環境試験機内に放置する前の試料片について破断伸度を5点測定し、それらの平均値より初期破断伸度の平均値を求めた。各エージング条件の5点の平均値を、初期破断伸度の平均値で割った値を破断伸度保持率[%]とした。得られた値をもとに破断伸度劣化曲線を作成し、下記基準にて耐加水分解性を評価した。
A:破断伸度保持率半減時間が96時間以上
B:破断伸度保持率半減時間が72時間以上96時間未満
C:破断伸度保持率半減時間が72時間未満
(7)フィルム中の気泡数
フィルム125cmを万能スコープ(倍率4倍)で目視観察し、直径1mm以上の大きさの気泡の数をカウントした。以下の基準でフィルム中の気泡数を評価した。
A:気泡0個
B:気泡1個
C:気泡2個以上3個未満
D:3個以上
[合成例1]
エチレングリコール1862部に酢酸マンガン4水塩1.839部を溶かし、シュウ酸ジエチル2192部を加え、160℃まで加熱してエステル交換反応を進め、エチルアルコールを1200部留出させた(エステル交換反応時の理論留出量の比からエステル交換反応率は86.8%)。次に亜燐酸0.615部を加え、その後、窒素雰囲気のもとで徐々に減圧にし、2.7kpaのもとでエチレングリコール留出させ約130分間加熱反応させた。得られたPAO中、末端の一部がエチル基であるPAO含有割合は37.9%、平均重合度は1.2であった。
[合成例2]
エチレングリコール1241部に酢酸マンガン4水塩1.226部を溶かし、シュウ酸ジメチル1181部を加え、160℃まで加熱してエステル交換反応を進め、メチルアルコールを505部留出させた(エステル交換反応時の理論留出量の比からエステル交換反応率は78.8%)。次に亜燐酸0.410部を加え、その後、窒素雰囲気のもとで徐々に減圧にし、2.7kpaのもとでエチレングリコール留出させ約130分間加熱反応させた。得られたPAO中、末端の一部がメチル基であるPAO含有割合は48.1%、平均重合度は1.4であった。
[合成例3(比較例)]
エチレングリコール1862部に酢酸マンガン4水塩1.839部を溶かし、シュウ酸ジエチル2192部を加え、160℃まで加熱してエステル交換反応を進め、エチルアルコールを1319部留出させた(エステル交換反応時の理論留出量の比からエステル交換反応率は95.5%)。次に亜燐酸0.615部を加え、その後、窒素雰囲気のもとで徐々に減圧にし、2.7kpaのもとでエチレングリコール留出させ約130分間加熱反応させた。得られたPAO中、末端の一部がエチル基であるPAO含有割合率は1.8%、平均重合度は1.5であった。
[参考例1]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−a)
エステル交換反応容器にテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを60重量部、酢酸マンガン四水塩を0.019重量部仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらフェニルホスホン酸0.014重量部(テレフタル酸ジメチルに対し17mmol%)を添加し、エステル交換反応を終了させた。続いて5分後に重縮合触媒として、三酸化アンチモン0.038部およびテトラブトキシチタネート0.005部を添加し、240℃まで加熱して一部のエチレングリコールを留出させた後、反応物を内部に撹拌翼を有する重縮合装置に移行した。
次に徐々に真空度を高めながら35分間を要して、反応温度を270℃に到達せしめた。この温度を保持して真空度を0.15kPa以下に保ち、重縮合反応を10分間行った。この時点でのポリエステル固有粘度は0.18dl/gであった。ここで真空ポンプと重縮合反応釜をむすぶ真空バルブを一旦閉じ、攪拌翼は回転させたままの状態で直ちに真空ホッパー内で加熱し液状とした合成例1のシュウ酸化合物成分1.3部(ポリエステルを構成する全酸成分に対し1.5mol%)を添加した後、直ちに真空バルブを開いて減圧処理を再開し、所定の攪拌トルク値に達した時点で反応を停止した。
重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、溶融樹脂をストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによりチップ化した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/gで、末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−aと称する。
[参考例2]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−b)
シュウ酸グリコールエステル化合物を添加する際のポリエステルの固有粘度を0.39dl/gとする以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/gで、末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−bと称する。
[参考例3]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−c)
シュウ酸グリコールエステル化合物を添加する際のポリエステルの極限粘度を0.15[dl/g]とする以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの極限粘度数は0.58dl/gで、末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−cと称する。
[参考例4]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−d)
シュウ酸グリコールエステル化合物の添加量を0.2mol%とする以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/g、末端カルボキシル基当量数は8eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−dと称する。
[参考例5]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−e)
シュウ酸グリコールエステル化合物の添加量を4.8mol%とする以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/g、末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−eと称する。
[参考例6]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−f)
ポリマーの固有粘度は0.65dl/gとなるように反応停止の撹拌トルクを調整する以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの末端カルボキシル基当量数は8eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−fと称する。
[参考例7]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−g)
シュウ酸グリコールエステル化合物を添加する際のポリエステルの極限粘度を0.52dl/gとする以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの極限粘度数は0.58dl/gで、末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−gと称する。
[参考例8]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−h)
シュウ酸化合物成分を添加せず、真空バルブを途中で開閉する操作を行わなかった以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/gで、末端カルボキシル基当量数は11eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−hと称する。
[参考例9]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−i)
シュウ酸グリコールエステル化合物の添加量を5.5mol%とし、ポリマーの固有粘度は0.56dl/gとなるように反応停止の撹拌トルクを調整する以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−iと称する。
[参考例10]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−j)
合成例2のシュウ酸化合物成分を用いる以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/g、末端カルボキシル基当量数は7eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−jと称する。
[参考例11]ポリエチレンテレフタレートの製造(ポリエステル−k)
合成例3のシュウ酸化合物成分を用いる以外は参考例1と同様の操作を繰り返した。得られたポリマーの固有粘度は0.58dl/g、末端カルボキシル基当量数は8eq/tであった。本参考例で得られたポリエステルをポリエステル−kと称する。
[実施例1]
ポリエステル−aを乾燥機にて170℃で3時間乾燥した後、押出機に供給し280℃で溶融押出し、スリットダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて縦方向に3.4倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、125℃に加熱された雰囲気中で横方向に3.6倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、室温まで冷却して50μm厚みのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。耐加水分解性、表面外観性に優れていた。
[実施例2〜6]
原料ポリエステルを表1に記載する種類に変更する他は実施例1と同様の操作を行い、50μm厚みのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りであり、耐加水分解性、表面外観性に優れていた。
[比較例1]
原料ポリエステルをポリエステル−fとする他は実施例1と同様の操作を行い、50μm厚みのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。末端カルボキシル基当量数は少なく、耐加水分解性には優れるものの、フィルムでの固有粘度が実施例よりも高いためフィルム中の気泡残存量が実施例よりも多く、外観性が低下した。
[比較例2]
原料ポリエステルをポリエステル−gとする他は実施例1と同様の操作を行い、50μm厚みのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。末端カルボキシル基当量数は少なく、耐加水分解性には優れるものの、フィルムでの固有粘度が実施例よりも高いためフィルム中の気泡残存量が実施例よりも多く、外観性が低下した。
[比較例3]
原料ポリエステルをポリエステル−hとする他は実施例1と同様の操作を行い、50μm厚みのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。末端カルボキシル基当量数が多いため十分な耐加水分解性が得られず、長期耐久性に乏しかった。
[比較例4]
原料ポリエステルポリエステル−iとする他は実施例1と同様にして行い、50[μm]のポリエステルフィルムを得ようとしたが、製膜中の多量の気泡発生により、切断が多発し安定製膜ができなかった。
[比較例5]
原料ポリエステルをポリエステル−kとする他は実施例1と同様の操作を行い、50μm厚みのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。フィルム製膜後の末端カルボキシル基当量数が実施例に較べて増加し、長期耐久性が低下した。
Figure 2015010126
本発明のポリエステルフィルムは、高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下が十分抑制され、優れた耐加水分解性を有しており、同時にフィルム外観に優れており、長時間使用しても良好な外観・保護機能を維持する太陽電池の裏面保護膜に適したポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表される、平均重合度が1〜8で、かつアルキル基を少なくとも一方の末端に有するものの割合が2%以上であるシュウ酸グリコールエステルおよび/またはその低重合度オリゴマー(以下、シュウ酸化合物成分と称す)を、ポリエチレンテレフタレートの全酸成分に対して該シュウ酸化合物成分が0.1mol%以上5.0mol%以下となる割合で添加して得られるポリエチレンテレフタレートをポリマー成分とする組成物からなるポリエステルフィルムであり、
    O−[C(O)C(O)ORO]n−C(O)C(O)OX (1)
    (式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、X,Xは夫々炭素数4以下のアルキル基
    または−ROH基、nは0以上の整数(但し、X,Xが共にアルキル基の場合にはn
    は1以上)を表わす)
    該ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基当量数が11eq/t以下、かつ固有粘度が0.40dl/g以上0.55dl/g未満であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。
  2. 該シュウ酸化合物成分の式(1)中のXおよびXが、それぞれメチル基またはエチル基である、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. 該組成物は下記一般式(2)または(3)で表されるリン酸化合物
    Figure 2015010126
    (一般式(2)、式(3)中のR、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であるアルキル基、アリール基またはベンジル基のいずれか一つを表わす)
    を含有する、請求項1または2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  4. 該リン酸化合物がフェニルホスホン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  5. 該ポリエステルフィルムの温度121℃、湿度100%RHの環境下における破断伸度半減時間が96時間以上である請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  6. 該シュウ酸化合物成分がポリエチレンテレフタレートの重縮合反応工程においてポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.15dl/g以上0.40dl/g以下の段階で、かつ減圧下において液体状で添加される、請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  7. 該シュウ酸化合物成分がシュウ酸アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル交換反応率70〜92%の範囲でエステル交換反応させ、さらに重合反応させて得られるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムからなる太陽電池裏面保護用二軸延伸ポリエステルフィルム。
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