JP2015009992A - 酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物、酸化スズ質不定形耐火物の製造方法、ガラス溶解炉および廃棄物溶融炉 - Google Patents

酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物、酸化スズ質不定形耐火物の製造方法、ガラス溶解炉および廃棄物溶融炉 Download PDF

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Abstract

【課題】スラグに対する高耐侵食性を保有する酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を提供する。【解決手段】耐火性配合物としてSnO2を必須成分とする含有する酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物であって、耐火性配合物中におけるSnO2の含有量が70質量%以上であり、SnO2の含有量に対して、15〜75μmの酸化スズ粒子の含有量が25質量%以下である酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。これによりSnO2の揮散を抑制し、スラグに対する耐侵食性に優れた酸化スズ質不定形耐火物が得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物、酸化スズ質不定形耐火物の製造方法、ガラス溶解炉および廃棄物溶融炉に係り、特に、必須成分である酸化スズの粒度配合を所定の範囲に調整することで、SnOの揮散を抑制し、耐食性を向上させた新規の酸化スズ質不定形耐火物が得られる紛体組成物ならびにそれを利用した不定形耐火物の製造方法、ガラス溶解炉および廃棄物溶融炉に関する。
ガラス溶解炉や廃棄物溶融炉に使用される耐火物は、定形耐火物と不定形耐火物に大別される。定形耐火物の施工はれんが積み作業であり、重労働でしかも高度な技術を要するため、近年は不定形耐火物による内張りが汎用されつつある。
溶融炉用の不定形耐火物として従来使用されている材質は、ガラス製造用においてはジルコニア質やクロミア質の不定形耐火物、廃棄物溶融炉ではアルミナ−酸化クロム質不定形耐火物である。しかし、これらの材質は、ジルコニア質不定形耐火物では耐食性が低く、クロムを含有する不定形耐火物では耐食性は高いが六価クロムを生成し、スラグおよび使用後耐火物の廃棄物が環境汚染を招く問題があった。
こうした背景の中、SnOを主成分とする耐火組成物を焼結してなる酸化スズ質耐火物は、一般に使用される耐火物と比較し、スラグに対する耐食性が非常に高く、ガラス溶解炉や廃棄物溶融炉用の耐火物としての使用が検討されている。
たとえば、特許文献1にはSnOを85〜99重量%含有する緻密質なガラス溶融炉用酸化スズ耐火物が提案されている。しかし、このような耐火物は、ガラス製造装置におけるガラス接触部の耐火物として実際に再利用されている例は知られていない。
その理由としては、基本的な特性として、SnOは高温場、特に1200℃以上の高温場においてはSnOとして揮散する性質がある。この揮散により、耐火物の組織が多孔質化して脆化し、耐火物が剥離したり、あるいはガラスの製造においては、揮散したSnO成分がガラス製造装置中の低温部において濃縮・凝固したりして、SnO成分がガラス中に異物として落下、混入し、ガラス成形体の製造における歩留まりを低下させるという問題が考えられる。また、SnOを不定形耐火物の耐火材料として使用した場合には、スラグが浸潤する前から酸化スズ粒子が揮散により脆化し、スラグに対する耐食性が大幅に低下する。
このようなSnOを不定形耐火物の耐火材料として使用した例としては、特許文献1には、SnOを0.5〜40重量%含有する廃棄物溶融炉用の不定形耐火物が提案されている。
特開2004−196637号公報
しかしながら、特許文献1においては、SnO含有量が40重量%を超えると酸化スズが耐火性原料あるいは結合剤成分と反応し、低融点物質を多量に生成して耐食性が低下すると報告されており、40重量%を超えるSnOを含有する不定形耐火物はこれまでに提案されていない。この原因として、発明者らは、特許文献1では酸化スズは主に75μm以下の粒子が使用されており、粒径が小さく酸化スズ粒子の表面積が大きいためにSnOの揮散速度が大きいことや、スラグとの反応性が高いことが要因と考えた。
そこで本発明は、上記した従来技術が抱える課題を解決して、高温場におけるSnOの揮散を抑制し、かつ、ガラスに対する高耐侵食性を併せて有し、ガラス溶解炉や廃棄物溶融炉用の耐火物として好適な酸化スズ質不定形耐火物が得られる紛体組成物の提供を目的とする。
[1]骨材および結合剤からなり、SnOを必須成分とする耐火性配合剤を含有する酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物であって、前記耐火性配合物中におけるSnOの含有量が70質量%以上であり、前記SnOの含有量に対して、15〜75μmの酸化スズ粒子の含有量が25質量%以下であることを特徴とする酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[2]前記SnOの含有量に対して、15〜75μmの酸化スズ粒子の含有量が15質量%以下である[1]に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[3]前記耐火性配合物中に、10μm以下の酸化スズ粒子を1〜10質量%含有する[1]または[2]に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[4]前記耐火性配合物中に、3μm以下の酸化スズ粒子を1〜10質量%含有する[3]に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[5]前記耐火性配合物中におけるSnOの含有量が90質量%以上である[1]乃至[4]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[6]前記耐火性配合物中に、CuO、ZnO、MnO、CoOおよびLiOの酸化物群から選ばれた少なくとも1つ以上の成分を含む[1]乃至[5]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[7]前記耐火性配合物に対し、分散剤を外掛けで0.01〜2質量%含有する[1]乃至[6]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[8]前記結合剤としてアルミナセメントおよびコロイダルアルミナから選ばれる1種以上を含有し、前記耐火性配合物中における前記結合剤の含有量が5質量%以下である[1]乃至[7]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
[9][1]乃至[8]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を、水と混合し、施工してなることを特徴とする酸化スズ質不定形耐火物の製造方法。
[10]前記施工後に、1200℃以上で熱処理することを特徴とする[9]に記載の酸化スズ質不定形耐火物の製造方法。
[11][1]乃至[8]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を施工して得られる不定形耐火物を具備してなるガラス溶解炉。
[12][1]乃至[8]のいずれかに記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を施工して得られる不定形耐火物を具備してなる廃棄物溶融炉。
本発明の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物および酸化スズ質不定形耐火物の製造方法によれば、スラグに対する耐侵食性の高いSnOを70質量%以上含有し、SnO中における15〜75μmの酸化スズ粒子の含有量を25質量%以下にすることで、SnOの揮散を抑制し、スラグに対する耐侵食性に優れた酸化スズ質不定形耐火物が得られる。
また、本発明のガラス溶解炉および廃棄物溶融炉によれば、上記酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を施工して得られる不定形耐火物を具備するため、炉壁等に隙間なく形成でき、優れた耐火性を発揮すると共に、SnOの揮散抑制効果を発揮させ、スラグに対する耐侵食性に優れ、炉の製品寿命を長くすることができる。
上記のとおり、本発明は、酸化スズ質不定形耐火物中の酸化スズ粒子の粒度を配合した点に特徴を有するものであり、以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物は、骨材および結合剤からなり、SnOを必須成分として含有する耐火性配合物を含有するものである。なお、上記化学成分は主に骨材として使用される。
本発明に用いられるSnOは、溶融スラグの侵食に対する抵抗力が強く、耐熱性が高いため耐火物の主要成分として含有される。
本発明に用いられる結合剤は、不定形耐火物の施工性向上のために用いられる結合剤成分である。この成分を含有していると施工後の成形体強度が向上するため、施工性が向上する。一方で、スラグに対する耐食性は低く、また、酸化スズ粒子同士のネックの形成を阻害する。本発明に用いられる結合剤としては、種類、添加量は従来の不定形耐火物に用いられるものと特に変わらない。例えば、アルミナセメント、コロイダルアルミナ、コロイダルシリカ、マグネシアセメント、リン酸塩、ケイ酸塩などが使用できる。これらの中でもアルミナセメント、コロイダルアルミナ、コロイダルシリカが好ましく、アルミナセメントがより好ましい。結合剤の使用量は耐火性配合物中に0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。ここで、コロイダルアルミナ、コロイダルシリカ等は水溶液であるが、本発明において使用量は固形物換算で表記した。
また、上記酸化スズ質耐火物用紛体組成物には、耐火性配合物に加え分散剤を含有することが好ましい。分散剤は不定形耐火物の施工時の流動性を付与する。具体例な種類は何ら限定されるものではなく、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダ、ポリメタリン酸塩などの無機塩、クエン酸ソーダ、酒石酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、ポリカルボン酸塩、β−ナフタレンスルホン酸塩類、ナフタリンスルフォン酸、カルボキシル基含有ポリエーテル系分散剤等である。添加量は耐火性配合物100質量%に対し、外掛けで好ましくは0.01〜2質量%、さらに好ましくは0.03〜1質量%である。
本発明においては、耐火物中に含有されるSnOの含有量を70質量%以上とする。これは、耐火物中に他の成分があまりに多量に含まれてしまうと、SnOの含有量が低下し、SnOが有しているスラグに対する優れた耐侵食性が損なわれてしまうためである。耐侵食性を良好なものとするには、SnOの含有量の合量は、85質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
耐火性配合物として用いる骨材の粒子径は、例えば最大粒子径を1〜3mmとし、粗粒、中粒、細粒、微粒に適宜調整する。また、不定形耐火物の耐スポーリング性の付与を目的として、前記の粗粒、中粒、細粒、微粒に加え、例えば粒径3〜50mmの粗大粒径の耐火骨材を組み合わせてもよい。ここで、例えば、粗粒は1700μm未満840μm以上、中粒は840μm未満250μm以上、細粒は250μm未満75μm以上、微粒は75μm未満15μm以上、とした場合、これら4種の骨材をそれぞれ調整して配合する。なお、本明細書において、粒度は、JIS R2552に準じて測定された値をいう。この耐火性原料は、耐火物使用後品、耐火物廃材等を粉砕し、粒径を調整したものを使用してもよい。
耐火性配合物に含有されるSnOとしては、上記のように様々な骨材の粒子径を調整して配合するが、そのSnO中に15〜75μmの酸化スズ粒子(微粒)の含有量を25質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下が特に好ましい。これは、粒径が小さい酸化スズ粒子は表面積が大きいため、前記粒径の酸化スズ粒子が多量に含まれてしまうと、SnOの揮散速度が大きく、スラグが浸潤する前から耐火物が脆化し、また、スラグとの反応性が高くなることにより、優れた耐侵食性が損なわれてしまうためである。また、耐火性配合物に含有されるSnOを100質量%としたとき、粗粒を21〜33質量%、中粒を15〜28質量%、細粒を30〜45質量%、微粒を5〜18質量%、の範囲となる含有割合が坏土の充填の点で好ましい。
さらに、骨材として、粒子径が15μm未満の酸化スズからなる粉末状の粒子を配合することが好ましい。ここで使用する粉末状粒子の粒子径としては、好ましくは10μm以下の微粉、より好ましくは3μm以下の微細粉である。このような粉末状の酸化スズ粒子を耐火性配合物中に1〜10質量%含有するように配合させることが好ましい。このように粉末状の酸化スズ粒子を所定の範囲で含有することにより、それよりも大きい酸化スズ粒子同士にネックが形成され、スラグに対する耐食性が向上させることができる。
上記のようにSnOの含有量を70質量%以上とし、このような粒度配合を行うことで、SnOの揮散を抑制し、スラグが浸潤する前から酸化スズ粒子が揮散により脆化することを抑制し、スラグに対する耐食性を向上させた酸化スズ質不定形耐火物が得られる。
本発明の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物は、このような所定量の成分を含有させる構成とすることで、施工して得られる不定形耐火物に対して、例えば、1300℃、5時間の熱処理をすることで、使用前の段階から酸化スズ粒子同士にネックを形成させることができ、スラグに対する耐食性を向上させることが可能となる。
なお、不定形耐火物に対して、その使用前に行う場合の熱処理の条件は上記条件によらず、一般に、1200〜1600℃で、3〜5時間の加熱処理で行われるため、実際に処理する熱処理条件によって、酸化スズの粒度および配合量を調整すればよい。
なお、上記の耐火性配合物には、本発明の耐火物としての特性を損なわない範囲で他の成分を含有させることができ、他の成分としては酸化スズ質不定形耐火物に使用される公知の成分が挙げられる。
この他の成分としては、例えば、CuO、ZnO、Mn、CoO、LiO、Al、TiO、Ta、CeO、CaO、Sb、Nb、Bi、UO、HfO、Cr、MgO、ZrO、SiOなどの酸化物が挙げられる。ただし、SnOに固溶する酸化物、例えばZrO、TiOなどを含有せしめる場合には、SnOへの固溶により粒子が縮小または消滅し耐火物を脆化させる可能性もあるため、耐火物としての特性を確認しながら粒子径および含有量を決めることが好ましい。
これら酸化物のなかでも、CuO、ZnO、Mn、CoO、およびLiOからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を含有することが好ましい。また、CuO、ZnO、Mn、CoO、LiOなどは、焼結助剤として有効に作用する。これら焼結助剤を含有させると、例えば1400℃、5時間の焼成で酸化スズ粒子同士にネックが形成され、耐火物の耐食性をより向上できる。したがって、CuO、ZnO、Mn、CoO、およびLiOからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を含有することがより好ましく、CuOを含有することが特に好ましい。
なお、本発明の好ましい酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物は、例えば、施工して得られた不定形耐火物が、1300℃、−700mmHg、100時間の熱処理後(使用開始後)において、SnO含有量99モル%以上の酸化スズ質不定形耐火物と比較したSnOの揮散速度が4/5以下となる耐火物が好ましい。なお、このとき、互いに開気孔率差を2%以下として比較する。ここで、開気孔率は、公知のアルキメデス法により算出する。
次に、本発明の酸化スズ質不定形耐火物の製造方法を説明する。まず、上記説明したように粒度配合された骨材および結合剤(粉末原料)を所要量秤取し均質に混合し、耐火性配合物を得る。次に、この耐火性配合物と分散剤とを混合し、さらに水分を添加混合して、再び均質に混合して坏土とする。次いで、得られた坏土を所望の形状に成形、塗布するなどし、これを乾燥させることで施工され、酸化スズ質不定形耐火物が得られる。所望の形状に成形するには、例えば、振動機を使用するなどして行えばよく、乾燥は40℃で24時間放置して行うことができる。また、酸化スズ粒子同士にネックを形成させ耐食性を高めるためには、1200℃以上、好ましくは1300〜1450℃となるような高温で熱処理すればよい。
原料は上記粉末の組み合わせに限定されるものではなく、CuOの原料としては、例えばCuの単体金属の粉末、Cuを含んだ金属塩化合物、炭酸銅(CuCO)、または水酸化銅(Cu(OH))などを使用できる。中でも、炭酸銅(CuCO)が好ましい。
本発明の不定形耐火物の製造方法は、上記の成形、塗布以外にも、流し込み、圧入、吹付け等によって施工することもできる吹付けでは、骨材、結合剤および分散剤の混合紛体組成物をノズルで気流搬送し、ノズル部で施工水を添加して壁面等に吹き付けて施工するのが一般的であるが、これは公知の施工法にアレンジできる。例えば、骨材、分散剤をノズルで気流搬送し、これらの搬送された粒子に対して、結合剤の一部または全部あるいは急結剤等をノズル部で添加して施工してもよい。施工水分は不定形耐火物全体に対して例えば2〜11質量%、さらに好ましくは3〜7質量%とする。また、この施工は炉壁等の新規な施工に限らず、補修のための継ぎ足し施工がある。なお、ここで急結剤とは、粉体組成物の凝結を著しく速めるための混和剤である。具体的な種類は何ら限定されるものではなく、例えば、亜硝酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩などが使用できる。添加量は耐火性配合物100質量%に対し、外掛けで好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜8質量%である。
流し込み施工では、耐火性配合物に分散剤、施工水を混合して坏土を得ておき、この坏土を型枠を使用して施工する。施工水分は不定形耐火物全体に対して例えば3〜7質量%が好ましい。施工時には振動を付与して充填化を促進させることが好ましい。施工後は養生および乾燥を行う。
施工はガラス溶融炉または廃棄物溶融炉に対し直接施工する他、予め施工して作製したプレキャスト品を使用してもよい。また、直接の施工とプレキャスト品の両者を組み合わせてもよい。このように、本発明により不定形耐火物を壁面または天井に施工して得られたガラス溶解炉または廃棄物溶融炉は、上記不定形耐火物の効果が得られる炉が得られ、好ましい。特に、溶融ガラスや溶融スラグと直接接触する炉の内壁に本発明の不定形耐火物を具備するものが好ましい。
ガラス溶融炉または廃棄物溶融炉において、内張りが不定形耐火物で施工される場合においても、部分的には耐火煉瓦が使用されることがある。また、不定形耐火物の種類もスラグと直接接触しない場所には断熱不定形耐火物等の異なる材質の不定形耐火物が使用されることもある。本発明により得られる不定形耐火物は、このようなゾーン毎に異なる材質の耐火物が使用される廃棄物溶融炉においては、最も使用条件の厳しい部位の内張りとしてその優れた耐食性の効果を発揮する。
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって何ら限定して解釈されるものではない。
(例1〜16)
まず、酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を製造するための原料として、表1に示した平均粒径、化学成分および純度を有する粉末原料を準備した。
Figure 2015009992
次に、酸化スズ、アルミナ、酸化銅、酸化亜鉛等の各粉末を、表2に示した割合で調合した。
Figure 2015009992
表2に示すように、耐火性配合物として用いる原料は、粗粒(840〜1700μm)、中粒(250〜840μm)、細粒(75〜250μm)、微粒(15〜75μm)、微粉(3〜10μm)、微細粉(0.1〜3μm)を組み合わせて用いた。
調合された各原料粉末を均質に混合した後、所定量の水分、分散剤を添加し、再び均質に混合し、振動機(シンフォニアテクノロジー株式会社製、商品名:バイブレートリパッカVP−40)を使用して成形体を作製した。得られた成形体を、大気雰囲気中40℃で24時間乾燥させた後、1400℃で5時間保持して焼成後、300℃/時間で降温して酸化スズ質不定形耐火物を得た。
得られた酸化スズ質不定形耐火物の一部からφ15mm、高さ5mmの試験片を切り取って、1300℃、−700mmHgの環境下で、100時間から120時間熱処理した後の質量減少量を、それぞれ測定し(エー・アンド・デイ社製、商品名:GH−252を使用)、揮散量(単位:mg)および揮散速度(単位:mg/hr)を算出した。
また、得られた酸化スズ質不定形耐火物から切り取った、15mm×25mm×50mm(縦×横×長さ)の試験片を、ソーダライムガラス(旭硝子社製、商品名:サングリーンVFL)に、大気雰囲気中1300℃で100時間浸漬処理し、その後、侵食量を測定し、耐侵食性を調べた。
上記で得られた揮散速度および侵食量のデータを表3にまとめて示した。
Figure 2015009992
表2、3において、例12〜16は本発明の比較例であり、例1〜11は実施例である。
実施例および比較例のそれぞれのガラスに対する耐侵食性は、1300℃の温度域において、ガラス製造装置に広く利用されているアルミナ質不定形耐火物の例13と比較し、アルミナ質不定形耐火物の侵食試験後の侵食部の最大侵食深さを100として、相対的な侵食量を示した。
また、例12〜16および例1〜11のそれぞれの揮散速度は、例15の試験片を1300℃、−700mmHgの環境下で、100時間熱処理した後の揮散速度を100とし、相対的な揮散速度を示した。ここで100時間熱処理した後のそれぞれの揮散速度は、熱処理時間100時間から120時間までの質量減少量から算出される単位表面積当たりの平均的な揮散速度を相対的に示した。
なお、各サンプルの開気孔率はアルキメデス法により測定し、いずれも開気孔率差が2.0%以下であるサンプルを用いた。
例12は、ジルコニア質不定形耐火物であり、揮散は起こらないがガラスに対する耐侵食性が例1〜11よりも低い。
例13は、アルミナ質不定形耐火物であり、揮散は起こらないがガラスに対する耐侵食性が例1〜11よりも低い。
例14は、Alをその他の成分として含有せしめた組成の酸化スズ質不定形耐火物であり、揮散速度は例1〜11とほぼ同等であるが、SnOの含有量が少ないために、ガラスに対する耐侵食性が例1〜11よりも低い。
例15および例16は、15〜75μmのSnOを増量した組成の酸化スズ質不定形耐火物であり、揮散速度は例1〜11よりも大きく、スラグが浸潤する前から酸化スズ粒子が揮散により脆化するため、ガラスに対する耐侵食性が例1〜11よりも低い。
一方、本発明の実施例である例1〜11は、例12〜16と比較し、揮散速度およびガラスに対する耐侵食性が全て良好な結果となっている。
例3〜11は、アルミナセメント及び/またはコロイダルアルミナの含有量を5重量%以下にした組成の酸化スズ質不定形耐火物であり、ガラスに対する耐侵食性が例1および例2よりも高い。
例7〜10は、10μm以下の酸化スズ粒子を使用した酸化スズ質不定形耐火物であり、酸化スズ粒子同士のネックが形成されやすいため、ガラスに対する耐侵食性が例1〜6よりも高い。
これらの評価結果から、本発明の実施例で得られる酸化スズ質不定形耐火物は、比較例の酸化スズ質不定形耐火物と比較し、いずれもSnOの揮散抑制効果およびガラスに対する耐侵食性が高く、両物性のバランスが取れた優れた酸化スズ質不定形耐火物であることが明らかとなった。
また、これらの結果から耐火性配合物の原料として、10μm以下の酸化スズ粒子を耐火性配合物中に1〜10質量%含有させることで、これらの微小粒子が酸化スズ粒子同士にネックが形成され、スラグに対する耐食性が向上できたことがわかった。さらに、酸化スズ粒子同士でのネックの形成は、不定形耐火物中の気体の流動性を低下させるため、揮散速度の抑制にも寄与すると考えられる。
本発明の酸化スズ質不定形耐火物は、スラグに対する耐侵食性に優れ、SnOの揮散を有効に防止できるため、ガラス溶解炉用および廃棄物溶融炉用の耐火物として好適である。

Claims (12)

  1. 骨材および結合剤からなり、SnOを必須成分とする耐火性配合剤を含有する酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物であって、前記耐火性配合物中におけるSnOの含有量が70質量%以上であり、前記SnOの含有量に対して、15〜75μmの酸化スズ粒子の含有量が25質量%以下であることを特徴とする酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  2. 前記SnOの含有量に対して、15〜75μmの酸化スズ粒子の含有量が15質量%以下である請求項1項記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  3. 前記耐火性配合物中に、10μm以下の酸化スズ粒子を1〜10質量%含有する請求項1又は2に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  4. 前記耐火性配合物中に、3μm以下の酸化スズ粒子を1〜10質量%含有する請求項3に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  5. 前記耐火性配合物中におけるSnOの含有量が90質量%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  6. 前記耐火性配合物中に、CuO、ZnO、MnO、CoOおよびLiOの酸化物群から選ばれた少なくとも1つ以上の成分を含む請求項1乃至5のいずれか1項記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  7. 前記耐火性配合物に対し、分散剤を外掛けで0.01〜2質量%含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  8. 前記結合剤としてアルミナセメントおよびコロイダルアルミナから選ばれる1種以上を含有し、前記耐火性配合物中における前記結合剤の含有量が5質量%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を、水と混合し、施工してなることを特徴とする酸化スズ質不定形耐火物の製造方法。
  10. 前記施工後に、1200℃以上で熱処理することを特徴とする請求項9に記載の酸化スズ質不定形耐火物の製造方法。
  11. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を施工して得られる不定形耐火物を具備してなるガラス溶解炉。
  12. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の酸化スズ質不定形耐火物用紛体組成物を施工して得られる不定形耐火物を具備してなる廃棄物溶融炉。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017075063A (ja) * 2015-10-13 2017-04-20 黒崎播磨株式会社 廃棄物溶融炉用ジルコニア質プレキャスト耐火物の製造方法

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