以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
また、この実施の形態において、「バラスト水」とは、バラストタンクに貯留される海水を意味する。したがってこの明細書では、バラスト水が海水であることを明示するために「バラスト水(海水)」と表記することがある。
また、この実施の形態において、「被処理水」とは、本実施の形態に係るバラスト水処理装置によって処理される海水を意味する。以下に説明するように、この実施の形態では、「被処理水」は、海域からバラスト水処理装置に取り込まれた海水だけでなく、「バラスト水」も含む。また、バラスト水および被処理水を特に区別する必要がない場合には「海水」との用語を用いることがある。
<バラスト水管理システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るバラスト水管理システムの全体図である。図1を参照して、本発明の実施の形態に係るバラスト水管理システム100は、図示しない船舶に設置される。バラスト水管理システム100は、船舶の出港時に、その船舶の周囲の海域から海水を取水して、その海水をバラスト水としてバラストタンク5に貯留する。一方、バラスト水管理システム100は、その船舶の寄港地において、バラストタンク5に貯留されたバラスト水を船外の海域に排出する。バラストタンク5は複数の区画に分けられていてもよい。
バラスト水管理システム100は、バラスト水処理装置101と、バイパスシステム102と、制御装置111,112とを備える。バラスト水処理装置101は、船舶の周囲の海域から海水を取水する際に、その海水を浄化する処理を行なう。さらにバラスト水処理装置101は、バラストタンク5からバラスト水(海水)を排出する際に、バラストタンクに貯留されたバラスト水を浄化する処理を行なうことができる。この実施の形態において「浄化」とは、海水に含まれる微生物の除去、殺滅および不活性化を含む。
一方、バイパスシステム102は、船舶の周囲の海域から海水を取水する際に、バラスト水処理装置101を迂回して、その取水した海水をバラストタンク5に積み込むことができる。さらに、バイパスシステム102は、バラストタンク5からバラスト水(海水)を排出する際に、バラスト水処理装置101を迂回して、そのバラスト水を海に排出することができる。すなわち、バイパスシステム102は、バラスト水処理装置101を迂回してバラストタンク5に対してバラスト水を出し入れするための経路を形成する。バイパスシステム102によって、バラスト水処理装置101によって海水を処理することが必要とされない場合、あるいは、バラスト水処理装置101によって海水を処理することができない場合などにおいても、バラストタンク5に対して海水を出し入れすることができる。
バラスト水処理装置101と、バイパスシステム102とは、一部の要素を共通に有していてもよい。船舶がバイパスシステム102を既に搭載している場合には、バラスト水処理装置101を追加することによって、本発明の実施の形態に係るバラスト水管理システム100を実現することができる。したがって既存の設備を大幅に変更することなく本発明の実施の形態に係るバラスト水管理システム100を船舶に設置することができる。
バラスト水処理装置101は、濾過装置2と、逆洗浄装置2Aと、紫外線照射装置3と、海水を通すためのライン20〜27と、バルブW1〜W7と、流量計FM1,FM2と、圧力計P1〜P4とを備える。
バイパスシステム102は、シーチェスト1と、バラストポンプBPと、ライン11〜16と、バルブW8,41〜44と、バラストタンク5と、オーバーボード6とを備える。
上記の各ラインは配管によって実現される。バルブW1〜W8は、たとえば比例制御弁によって実現される。バルブW1〜W8の開度は、そのバルブに入力される信号によって制御される。一方、バルブ41〜44は、たとえば開閉弁によって実現される。バルブ41〜44の各々に入力される信号に応じて、各バルブは、その状態を開状態と閉状態との間で切り換える。
シーチェスト1は、たとえば船舶の船底から海水を取水するために船舶に設けられる。シーチェスト1にはライン10が繋がっている。ライン11は、バラストポンプBPに流入する海水を通すためのラインである。ライン12は、バラストポンプBPから流出する海水を通すためのラインである。
バルブ41は開状態と閉状態との間で切換わる。バルブ41の開状態において、バラストポンプBPは、シーチェスト1およびライン10,11を介して海水を吸入して、ライン12に海水を排出する。一方、後に詳細に説明するように、バルブ41の閉状態において、バラストポンプBPは、バラスト水管理システム100の内部において海水を循環させる。
ライン12は、ライン13とライン20とに分岐される。バイパスシステム102の使用時においては、ライン13に海水が送られる。一方、バラスト水処理装置101の使用時においては、ライン20に海水が送られる。バルブW8が開き、かつバルブW1,W4が閉じている場合には、海水は、ライン12からライン13へと送られる。一方、バルブW8,W4が閉じており、かつバルブW1が開いている場合には、海水は、ライン12からライン20へと送られ、次にライン21へと送られる。なお、バルブW8,W1が閉じており、かつバルブW4が開いている場合には、海水は、ライン12からライン20へと送られ、次にライン27へと送られる。
次に、バラスト水処理装置101について説明する。ライン20およびライン21を流れる海水は、被処理水として濾過装置2に導入される。
濾過装置2は、フィルタ61と、モータ90とを含む。フィルタ61は、ライン21を通じて流入した海水を濾過する。フィルタ61によって濾過された海水は、ライン22を通じて濾過装置2から流出される。モータ90は、海水を濾過する際、および、フィルタ61を洗浄する際に、フィルタ61を回転させる。
圧力計P1は、濾過装置2の入口側における海水の圧力を計測する。一方、圧力計P2は、濾過装置2の出口側における海水の圧力を計測する。
ライン22は、濾過装置2によって濾過された海水を紫外線照射装置3に供給するための第1の経路を形成する。ライン22には、バルブW2が設けられる。
一方、濾過装置2によって濾過されなかった海水は、ライン23を通じて濾過装置2から排出される。ライン23はライン24,25に分岐される。
ライン24は、オーバーボード6に繋がっている。ライン24を通る海水はオーバーボード6を介して海へと排出される。ライン25は、ライン24と合流する。したがって、ライン23〜25は、濾過装置2に残留する海水を排出するための排水経路を形成する。
流量計FM2は、ライン23を流れる海水の流量を計測する。バルブW3は、ライン24を流れる海水の流量を制御する。バルブW7は、ライン25を流れる海水の流量を制御する。
紫外線照射装置3は、UV(紫外線)ランプ142を含む。ライン22を流れる海水は紫外線照射装置3を通される。UVランプ142は、紫外線照射装置3を通る海水に紫外線を照射する。被処理水は、フィルタ61で濾過された上で、紫外線照射装置3において紫外線を受ける。このために小型のUVランプを使用しても、濾過された海水中に生息する微生物を殺滅する効果を得ることができる。小型のUVランプを紫外線照射装置3に用いることによって、装置の小型化、消費電流の節約等の利点を得ることができる。
ライン26は、紫外線照射装置3から流出する海水を通すためのラインである。ライン26は、ライン13に合流する。ライン26は、紫外線照射装置3のケースを通過した被処理水をバラストタンク5に供給するための第2の経路を形成する。
バルブW5は、ライン26に設けられる。バルブW5が開いている場合には、海水は、ライン26からライン13へと送られる。したがって紫外線照射装置3を海水が通過する。
圧力計P3,P4は、それぞれ、ライン22およびライン26に設けられる。圧力計P3は、紫外線照射装置3の入口側における水圧を計測する。圧力計P4は、紫外線照射装置3の出口側における水圧を計測する。
ライン27は、濾過装置2を迂回してライン22に合流する経路を形成する。バラストタンク5に貯留した被処理水を排出する際に、ライン27は、バラストタンク5からの被処理水を、濾過装置2を迂回して紫外線照射装置3に供給する第3の経路を実現する。上記のように、バルブW1が閉じており、かつバルブW4が開いている場合に、海水はライン20からライン27を経由してライン22へと送られる。
逆洗浄装置2Aは、洗浄水タンク68と、バルブW6,W9〜W11と、ライン28〜31とを含む。
ライン28は、圧縮空気供給部32と洗浄水タンク68とに繋がっている。ライン28にはバルブW9および圧力計PSが設けられる。バルブW9が開状態となることで、ライン28は圧縮空気を洗浄水タンク68に導入する。
ライン29は、洗浄水タンク68から空気を抜くためのラインである。ライン29には圧力開放のためのバルブW11が設けられる。洗浄水タンク68から空気を抜く際には、バルブW11が開状態とされる。
ライン30は、清水供給部33から洗浄水タンク68に清水を供給するためのラインである。ライン30にはバルブW10が設けられる。清水供給部33から洗浄水タンク68に清水を供給する際には、バルブW10が開状態とされる。
ライン31は、ライン22における濾過装置2とバルブW2との間の位置から分岐する。ライン31にはバルブW6が設けられる。洗浄水タンク68から濾過装置2に洗浄水を供給する際には、バルブW6が開状態とされる。一方、濾過装置2のフィルタ61によって海水が濾過されるときには、バルブW6が閉状態とされる。
次に、バイパスシステム102について説明する。ライン13は、ライン14とライン15とに分岐する。ライン14は、バラストタンク5に繋がっている。ライン14には、バルブ42が設けられている。
ライン15は、オーバーボード6に繋がっている。ライン15には、バルブ43が設けられている。
ライン16は、ライン14とライン11とを繋ぐ。ライン16には、バルブ44が設けられている。
バルブ42を開状態として、バルブ43,44を閉状態とする。これにより、ライン13を通じてライン14に送られた海水は、バラストタンク5に供給される。バルブ42を閉状態としてバルブ43を開状態とした場合には、海水はライン13からライン15およびオーバーボード6へと送られて、海に排出される。バルブ42,44を開状態としてバルブ43を閉状態とした場合には、海水はライン11、ライン12、ライン13、ライン14およびライン16を通り、バイパスシステム102の内部を循環する。
バラスト水管理システム100は、さらに、制御装置111,112を備える。制御装置111,112は、操作者(図示せず)によって操作可能である。操作者による制御装置の操作は、その制御装置に対して操作者の指示を入力することに相当する。
制御装置111,112は、操作者からの指示を受け付けて、その指示に従ってバラスト水管理システム100を制御する。すなわち制御装置111,112は、バラスト水管理システム100の動作モードを設定するための設定装置でもある。具体的には、制御装置111,112は、バラストポンプBPの駆動および停止を制御する。さらに制御装置111,112は、図1に示された各バルブの開/閉あるいは開度を制御する。さらに、制御装置111,112は、紫外線照射装置3に含まれるUVランプ142の点灯および消灯を制御する。
制御装置111,112は、通信機能を有する。制御装置111は、自身に対する設定を把握するとともに、その設定に関する情報を制御装置112に送信することができる。同様に、制御装置112は、自身に対する設定を把握するとともに、その設定に関する情報を制御装置111に把握することができる。したがって制御装置111,112を互いに離れた場所に設置することができる。
たとえば制御装置111は、バラスト水処理装置101のそばに設置される。一方、制御装置112は、たとえばブリッジ(船橋)に設置される。このような制御装置111,112の配置に従うと、操作者は、制御装置112によってバラスト水処理装置101およびバイパスシステム102を遠隔制御することができる。
操作者は、制御装置111,112のいずれか一方を操作することによって、バラスト水管理システム100の動作および停止を制御することができる。さらに、操作者は、制御装置111,112のいずれか一方を操作することによって、バラスト水管理システム100の動作モードを、バラスト水処理モード(この実施の形態では「BWMS」モードと呼ぶ)と、「BYPASS」(バイパス)モードとの間で切り換えることができる。バラスト水処理モードとは、バラスト水処理装置101を動作させるモードである。バイパスモードとは、バラスト水処理装置101を停止させる一方で、バイパスシステム102を動作させるモードである。
さらに、操作者は、制御装置111,112のいずれか一方を操作することによって、BWMSモードあるいはBYPASSモードにおけるバラスト水管理システム100の処理を切り換えることができる。この実施の形態では、処理モードは、「マニュアルモード」と、「Ballastingモード」と、「De−Ballastingモード」とを含む。
「マニュアルモード」とは、操作者が制御装置111,112のいずれかに対して特定のバルブを指定するとともに、そのバルブの開/閉あるいは開度を指定するモードである。「Ballastingモード」は、バラスト水管理システム100が海から海水を取り込んでバラストタンク5に注入する処理を行なうモードである。「De−Ballastingモード」は、バラスト水管理システム100がバラストタンク5に貯留するバラスト水(海水)を海に排出する処理を行なうモードである。
「Ballastingモード」および「De−Ballastingモード」では、各バルブは、制御装置111または112によって自動的に制御される。
なお、この実施の形態では、バラスト水管理システム100は、動作モードがBWMSモードおよびBYPASSモードのいずれであっても、「Ballastingモード」および「De−Ballastingモード」での処理を実現可能なように構成される。ただし、バラスト水管理システム100は、動作モードがBWMSモードである場合にのみ「Ballastingモード」および「De−Ballastingモード」での処理を実現可能であってもよい。
1つの実施形態では、制御装置111,112は制御盤として実現される。図2は、バラスト水処理装置本体側の制御盤の1つの構成例を概略的に示した図である。図2を参照して、制御装置111(制御盤)は、ランプ群120と、プッシュボタン122,126〜130と、セレクトスイッチ123〜125とを有する。
セレクトスイッチ123は、バラスト水処理装置101を制御装置111(ローカル)で制御するか、または、制御装置112(リモート)で制御するかを切換えるためのスイッチである。セレクトスイッチ123によって「ローカル(Local)」が選択された場合、制御装置111のプッシュボタンあるいはセレクトスイッチによって、バラスト水処理装置101の動作および停止を制御することができる。一方、制御装置112からの指令は無効となる。一方でセレクトスイッチ123によって「リモート(Remote)」が選択された場合、制御装置111のプッシュボタンあるいはセレクトスイッチの操作は無効となり、制御装置112からの指令が有効となる。
制御装置112からの指令は、制御装置111を経由してバラスト水処理装置101に送られる。制御装置111は、セレクトスイッチ123の設定に基づいて、制御装置112からの指令を有効にするか無効にするかを判断する。
セレクトスイッチ124は、操作者がバラスト水管理システム100の動作モードを制御装置111に指示するためのスイッチである。具体的には、セレクトスイッチ124は、バラスト水管理システム100の動作モードを、バイパスモードと、BWMSモードと、マニュアル(Manual)モードとの間で切り換えることができるように構成される。
セレクトスイッチ125は、BWMSモードが選択された場合に、操作者がバラスト水処理装置101の処理モードを制御装置111に指示するためのスイッチである。具体的には、セレクトスイッチ125は、バラスト水処理装置101の処理モードを、Ballastingモードと、De−Ballastingモードとの間で切り換えることができるように構成される。
プッシュボタン122は、BallastingモードまたはDe−Ballastingモードでバラスト水処理装置101を動作させるためのボタンである。一方、プッシュボタン126は、BallastingモードまたはDe−Ballastingモードでのバラスト水処理装置101の動作を停止させるためのボタンである。操作者がプッシュボタン122を押すことによって、制御装置111は、海水を浄化する処理の開始の指示を受け付ける。操作者がプッシュボタン126を押すことによって、制御装置111は、海水を浄化する処理の停止の指示を受け付ける。
プッシュボタン127〜129は、それぞれ、ブザーを停止させるためのボタン、アラームをリセットするためのボタン、ランプをチェックするためのボタンである。プッシュボタン130は、バラスト水処理装置101を非常停止させるためのボタンである。
ランプ群120は、バラスト水管理システム100の状態を示すための複数のランプによって構成される。バラスト水処理装置101が海水を処理可能な状態になると、ランプ120aが点灯する。また、プッシュボタン122が押されるとランプ120bが点灯する。
Ballastingモードでバラスト水処理装置101が動作する場合、ランプ120cが点灯する。一方、De−Ballastingモードでバラスト水処理装置101が動作する場合、ランプ120dが点灯する。また、バラスト水処理装置101の非常停止時には、ランプ120eが点灯する。なお、ランプの個数、配置および役割は上記のように限定されるものではない。
また、制御装置112は、たとえば図2に示す構成と同様の構成を採用することができる。制御装置111,112の一方の故障時に他方によってバラスト水管理システム100を制御することができる。すなわち制御装置が二重化される。したがって、バラスト水管理システム100の信頼性を高めることができる。あるいは制御装置112は、図2に示す構成からセレクトスイッチ123を省略した構成を有してもよい。このような構成によって、制御装置112からの指令を有効とするか無効とするかを制御装置111において一元的に制御することができる。
なお、図2には示されていないが、制御装置111,112の一方または両方は表示パネルを備えることができる。さらにその表示パネルは、タッチパネルの機能を有していてもよい。
図3は、図1に示した濾過装置2の構成例を説明する図である。図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図3および図4を参照して、被処理水である海水は、図1のライン21に対応する被処理水流路66を通り、ケース63の内部へ供給される。ケース63の内部には、円筒形状のフィルタ61が設けられている。軸線Cはフィルタ61(円筒)の中心軸を示す。言い換えると、フィルタ61は、軸線Cを囲むように配置されている。
モータ90は、フィルタ61の中心軸と接続される。モータ90は、駆動装置(図示せず)から電力が供給されることによって、軸線Cを中心としてフィルタ61を回転させる。モータ90は、モータカバー91で覆われている。なお、モータ90は、たとえば図1に示す制御装置111によって制御される。
フィルタ61の円筒上下面は水密に塞がれている。回転自在な取り付け構造は、同じく水密構造とする必要があるが、特に限定されることなく既知の構造が用いられる。
ケース63は、フィルタ61の全体を覆う。ケース63は、外筒部71と、蓋部72と、底部73とを有する。底部73には、図1のライン23に対応する排出流路65が設けられる。ケース63の内部には、被処理水としての海水を導入するために、被処理水流路66と、被処理水ノズル62とが設けられる。また、ケース63の蓋部には、薬液注入口70が設けられている。ただしケース63に薬液注入口を設けることは必須ではない。
被処理水ノズル62は、被処理水流路66から延設されるように構成される。被処理水ノズル62の先端にノズル口67が形成される。ノズル口67は、ケース63の外筒部71の中に配置される。被処理水がノズル口67からフィルタ61の外周面に向けて流出するように、ノズル口67が形成される。
中心配管80は、軸線C上に配置される。中心配管80は、図1のライン15に相当する濾過水流路64に接続される。なお、中心配管80は回転しない。
図5は、図3に示されたフィルタ61の代表的な構成を説明する斜視模式図である。図4および図5を参照して、フィルタ61はプリーツフィルタである。平面帯状の基材を山谷交互に折りたたむことによって、いわゆるプリーツ形状が形成される。プリーツ状に形成された基材の両端をつなぎ合わせることで、円筒状のプリーツフィルタが形成される。
フィルタの基材には多孔質樹脂シートが用いられる。多孔質樹脂シートの材質として例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等からなる延伸多孔質体、相分離多孔体、不織布等の多孔質構造物が利用される。高流量での濾過処理を行なうために、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる不織布が特に好適に用いられる。
再び図3を参照して、被処理水は被処理水流路66を通り、被処理水ノズル62のノズル口67から噴出する。ノズル口67から噴出した被処理水は、フィルタ61の円筒外部から円筒内部へと透過される。これによって被処理水が濾過される。フィルタ61を透過して濾過された被処理水は、中心配管80に設けられた取水穴81を通して濾過水流路64に導かれて、濾過装置2の外部に流出される。
一方、フィルタ61によって濾過されなかった被処理水および、ケース63の底部73に沈殿した濁質分は、排出流路65を通じて濾過装置2の外部に排出される。このように濁質分、あるいは残った被処理水が連続的に排出されつつ濾過が行われる。これにより、バラスト水の処理量として要求される処理量(たとえば10〜20ton/時間、さらには100ton/時間)を確保することができる。
以上の動作において、フィルタ61の外周面には濁質が付着する。図3に示す構成によれば、モータ90がフィルタ61を回転させる。ノズル口67から噴出した被処理水は、回転するフィルタ61の外周面に当たる。被処理水の圧力および回転する水流によって、フィルタ61の外周面には常に水流が生じる。これによってフィルタ61に付着した濁質分が除去されやすい。すなわち、この実施の形態によれば、被処理水を濾過する効果に加えて、一定の洗浄効果も得ることができる。
図6は、図1に示した紫外線照射装置3の構成例を示した図である。図6を参照して、紫外線照射装置3は、ケース141と、UVランプ142と、ランプ電源143と、照度センサ144a,144b,144cとを備える。
ケース141は、ライン22とライン23との間に配置される。ケース141はUVランプ142を収容する。ライン22,23により、紫外線照射装置3の内部を被処理水が通過する。
UVランプ142は、ケース141の内部を通過する被処理水に紫外線を照射する。UVランプ142の点灯および消灯は、制御装置111または制御装置112によって制御される。
照度センサ144a〜144cは、UVランプ142から発せられて被処理水を透過した紫外線の照度を計測する。各照度センサによって検出された照度は、その照度センサから制御装置111へと送られる。制御装置111は、照度センサ144a〜144cの検出結果に基づいて、UVランプ142の最大電力に対する割合を、ランプ電源143に対して指示する。ランプ電源143は、指示された割合に従う電力をUVランプ142に供給する。
<バラスト水管理システムの制御>
1.動作モードの設定
上記のように、バラスト水管理システム100の動作モードを設定する目的において、バラスト水管理システム100の操作者は、制御装置111と制御装置112とのいずれも操作可能である。バラスト水管理システム100の設定(および監視)を行なうための装置が1つしかない場合、操作者は、その制御装置の設置場所に移動しなければならない。船舶のような大きな建造物の場合、操作者が制御装置の設置場所に移動するための労力が大きくなる可能性がある。
この実施の形態によれば、バラスト水管理システム100は、操作者がバラスト水管理システム100の動作モードの設定(および監視)を行なうための複数の制御装置を有する。この複数の制御装置を船舶に分散して配置することができる。これにより、操作者は、自身の近くに配置された制御装置を利用することができる。したがって操作者の利便性を高めることができる。
一方、バラスト水管理システム100の動作モードの設定が制御装置111,112のどちらでも可能である。このために、制御装置111のセレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切換えた場合、動作モードの設定が変更されてしまう可能性がある。この実施の形態では、上記の問題を解決することができる。
図7は、ローカルおよびリモートを選択するセレクトスイッチを操作した場合におけるバラスト水管理システムの状態を説明するための第1の図である。図7を参照して、ローカル側の制御装置(制御装置111)とリモート側の制御装置(制御装置112)との各々において動作モードがBWMSモードおよびBYPASSモードのいずれかに設定される。制御装置111において、セレクトスイッチ123が「ローカル」から「リモート」へと切り換えられる。あるいは、セレクトスイッチ123が「リモート」から「ローカル」へと切り換えられる。
制御装置111および制御装置112ともに動作モードが「BWMSモード」あるいは「BYPASS」モードに設定されているとする。セレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えた場合、後述するように、制御装置111と制御装置112とで処理モードの設定が一致している場合には、バラスト水管理システム100の動作が継続される。
一方、制御装置111および制御装置112のいずれか一方ではバラスト水管理システム100の動作モードが「BWMSモード」に設定され、他方ではバラスト水管理システム100の動作モードが「BYPASS」モードに設定されているとする。セレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えた場合、バラスト水管理システム100が停止する。
図8は、ローカルおよびリモートを選択するセレクトスイッチを操作した場合におけるバラスト水管理システムの状態を説明するための第2の図である。前提として、ローカル側の制御装置(制御装置111)とリモート側の制御装置(制御装置112)の両方において動作モードがBWMSモードまたはBYPASSモードに設定されている。
図8を参照して、制御装置111および制御装置112ともに処理モードが「Ballastingモード」あるいは「De−Ballastingモード」に設定されているとする。セレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えた場合には、バラスト水管理システム100の動作が継続される。すなわち、設定された処理モード(「Ballastingモード」あるいは「De−Ballastingモード」)での処理が実行される。
一方、制御装置111と制御装置112との間で処理モードの設定が異なっていたとする。このような場合、セレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えると、バラスト水管理システム100が停止する。
このような例の場合、制御装置111と制御装置112とでバラスト水処理装置101の動作モードの設定が異なっている。したがって制御装置111のセレクトスイッチ123を「ローカル」から「リモート」へと切り換えると、バラスト水処理装置101の動作モードが変更されることが考えられる。
そこで、この実施の形態では、制御装置111のセレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えた場合、制御装置111と制御装置112との間でバラスト水管理システム100の動作モードの設定が同じであれば、その動作モードでのバラスト水管理システム100の動作が継続される。一方、制御装置111と制御装置112との間でバラスト水管理システム100の動作モードの設定が異なっている場合、制御装置111のセレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えると、現在の処理が停止する。
また、制御装置111と制御装置112とで、セレクトスイッチ124の設定が異なる場合にも、制御装置111のセレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えた際に、現在の処理が停止される。すなわち制御装置111と制御装置112とのうちの一方ではセレクトスイッチ124が「BWMSモード」に設定され、他方ではセレクトスイッチ124が「BYPASSモード」に設定される。このような場合に、制御装置111のセレクトスイッチ123を「ローカル」と「リモート」との間で切り換えると、現在の処理が停止される。
図9は、図8に示された制御の流れを示したフローチャートである。図9に示す処理は、たとえば所定の周期ごとに制御装置111によってメインルーチンから呼び出される。図9を参照して、ステップS1において、制御装置111は、「ローカル」と「リモート」との間でのセレクトスイッチ123の切換えが発生したかどうかを判定する。
ステップS1において、セレクトスイッチ123の設定の切換えが発生した場合(ステップS1においてYES)、処理はステップS2に進む。一方、セレクトスイッチ123の設定の切換えが発生していない場合(ステップS1においてNO)、処理はメインルーチンに戻される。
ステップS2において、制御装置111は、ローカル側(制御装置111)およびリモート側(制御装置112)ともにバラスト水管理システム100の動作モードの設定が「BWMSモード」であるか否かを判定する。たとえば、制御装置111は、制御装置111における、バラスト水管理システム100の動作モードの設定を確認する。さらに制御装置111は、制御装置112から、制御装置112における、バラスト水管理システム100の動作モードの設定に関する情報を取得する。
ローカル側およびリモート側の少なくとも一方におけるバラスト水管理システム100の動作モードの設定が「BWMSモード」ではない場合(ステップS2においてNO)、処理は、ステップS3に進む。ステップS3において、制御装置111は、ローカル側およびリモート側ともにバラスト水管理システム100の動作モードの設定が「BYPASSモード」であるか否かを判定する。
ローカル側およびリモート側の両方ともにバラスト水管理システム100の動作モードの設定が「BYPASSモード」である場合(ステップS3においてYES)、処理は、ステップS4に進む。また、ローカル側およびリモート側の両方ともにバラスト水管理システム100の動作モードの設定が「BWMSモード」である場合(ステップS2においてYES)にも、処理はステップS4に進む。一方、ローカル側(制御装置111)およびリモート側(制御装置112)の一方におけるバラスト水管理システム100の動作モードの設定が「BYPASSモード」ではない場合(ステップS3においてNO)、処理は後述するステップS8へと進む。
ステップS4において、制御装置111は、ローカル側およびリモート側ともにバラスト水管理システム100の処理モードの設定が「Ballastingモード」であるか否かを判定する。ローカル側およびリモート側ともにバラスト水管理システム100の処理モードの設定が「Ballastingモード」である場合(ステップS4においてYES)、処理はステップS5に進む。ステップS5において、制御装置111は、バラスト水管理システム100の処理を継続させる。すなわち、バラスト水管理システム100はBallastingモードで動作する。
一方、ローカル側およびリモート側の一方におけるバラスト水管理システム100の処理モードの設定が「Ballastingモード」とは異なる場合(ステップS4においてNO)、処理はステップS6に進む。ステップS6において、制御装置111は、ローカル側およびリモート側ともにバラスト水管理システム100の処理モードの設定が「De−Ballastingモード」であるか否かを判定する。
ローカル側およびリモート側ともにバラスト水管理システム100の処理モードの設定が「De−Ballastingモード」である場合(ステップS6においてYES)、処理はステップS7に進む。ステップS7において、制御装置111は、バラスト水管理システム100の処理を継続させる。すなわち、バラスト水管理システム100はDe−Ballastingモードで動作する。
ステップS3においてNOの場合、および、ステップS6においてNOの場合、処理はステップS8に進む。ステップS3においてNOの場合とは、バラスト水管理システム100の動作モードの設定が、ローカル側およびリモート側の一方において「BWMSモード」であり、他方において「BYPASSモード」である場合に対応する。また、ステップS6においてNOの場合とは、バラスト水管理システム100の処理モードの設定が、ローカル側およびリモート側の一方において「Ballastingモード」であり、他方において「De−Ballastingモード」である場合に対応する。ステップS8において、制御装置111は、バラスト水管理システム100の処理を停止させる。
上記の制御によって、バラスト水管理システム100を正しいモードで動作させることができる。「正しいモード」とは、操作者の意図する動作モードおよび処理モードである。したがって、バラスト水管理システム100のモードが操作者の意図しないモードへと変更されることを防ぐことができる。
図10は、バラスト水処理装置101の動作の流れを説明するためのフローチャートである。図10を参照して、ステップS11において、バラスト水処理装置101は起動指示を受付ける。具体的には、操作者は、制御装置111または制御装置112を操作する。これにより、制御装置111は、操作者からの起動指示を直接に、あるいは制御装置112を介して受付ける。
ステップS12において、制御装置111は、セレクトスイッチ123の設定を確認して、ローカル(制御装置111)およびリモート(制御装置112)のいずれの指令が有効であるかを判断する。
ステップS13において、制御装置111は、バラスト水処理装置101の処理モードの設定がBallastingモードおよびDe−Ballastingモードのいずれであるかを判断する。セレクトスイッチ123の設定がローカルである場合には、制御装置111は、セレクトスイッチ125の設定に基づいて処理モードを判断する。セレクトスイッチ123の設定がリモートである場合には、制御装置111は、制御装置112からの指令に基づいて処理モードを判断する。
バラスト水処理装置101の処理モードの設定がBallastingモードである場合、処理はステップS14に進む。ステップS14において、制御装置111は、バラスト水処理装置101に漲水処理、すなわち海域から海水を取得して、バラストタンク5に海水を供給する処理を実行させる。一方、バラスト水処理装置101の処理モードの設定がDe−Ballastingモードである場合、処理はステップS15に進む。ステップS15において、制御装置111は、バラスト水処理装置101に対して排水処理、すなわちバラストタンク5に貯留された海水を海域に排出する処理を実行させる。
なお、バラスト水処理装置101が漲水処理を実行しているとき(ステップS14)、または、バラスト水処理装置101が排水処理を実行しているときに(ステップS15)、セレクトスイッチ124または125の設定が切り換えられた場合には、制御装置111は、現在の処理を停止させる。
2.Ballastingモード
図11は、本発明の実施の形態に係る、バラスト水の取水時の処理を説明するフローチャートである。図1および図11を参照して、ステップS101において、バラスト水処理装置101は、濾過装置2に設けられたモータ90を駆動する。これによってフィルタ61が回転する。
ステップS102において、制御装置111は、紫外線照射装置3のUVランプ142を点灯させる。この実施の形態では、後に詳細に説明するように、UVランプ142の立上げ時(点灯開始時)には、紫外線照射装置3に海水が通されない。また、ライン22における被処理水の流れも停止している。なお、紫外線照射装置3の内部は、既に浄化された海水あるいは清水(たとえば水道水)で満たされている。さらに、UVランプ142の立上げ時に、UVランプの表面を清掃する処理が実行されてもよい。
ステップS103において、制御装置111は、バラストポンプBPを作動させる。これによって、濾過装置2に海水が導入される。さらに、濾過装置2のフィルタが、濾過装置2に導入される海水によって洗浄される。この洗浄はフィルタによる濾過とは異なるため、本明細書では「無濾過洗浄」と呼ぶ。洗浄後の海水は、ライン23,24およびオーバーボード6を通じて海に排出される。
ステップS104において、UVランプ142の立上げ(点灯処理)が完了するとバラストタンク5への注水が行なわれる。この場合、被処理水は、濾過装置2によって濾過され、さらに、紫外線照射装置3からの紫外線を受けて、バラストタンク5へと送られる。
ステップS105において、バラストタンク5へのバラスト水の供給が停止される。たとえば操作者が制御装置111のプッシュボタン126を押すことによってバラストタンク5へのバラスト水の供給が停止される。バラストタンク5へのバラスト水の供給が停止されると、紫外線照射装置3においてUVランプ142が立下げられる(消灯される)。さらに、濾過装置2において、上記の無濾過洗浄が行なわれる。
ステップS106において、逆洗浄装置2Aによって、フィルタ61を逆洗浄する。ステップS106の処理が終了すると、全体の処理が終了する。
図12は、図11のステップS101〜S103の処理を説明するための図である。図12を参照して、バルブW1〜W11およびバルブ41〜44が閉じた状態にある。まず、制御装置111は、バルブ41,42を開状態にする。次に、制御装置111は、濾過装置2のモータ90の駆動を開始してフィルタ61を回転させる。
さらに、制御装置111は、紫外線照射装置3のUVランプ142の点灯を開始する。制御装置111は、バルブW2,W5をともに閉状態に設定する。したがって、紫外線照射装置3の中は清水で満たされている。また、バラストポンプBPが停止しているため、ライン22には被処理水が流れない。したがって、紫外線照射装置3には被処理水が通過しない。すなわち、この実施の形態では、紫外線照射装置3のケース141の内部に水が滞留した状態でUVランプ142の点灯が開始される。
UVランプ142の点灯時にUVランプ142が発熱する。UVランプ142の過熱を防ぐために、紫外線照射装置3のケース141の内部に水を通過させてUVランプ142を冷却することが考えられる。UVランプ142を冷却するための水を循環させる経路を形成した場合には、バラスト水処理装置101の構成が複雑化する。この実施の形態によれば、紫外線照射装置3のケース141の内部に水が滞留した状態でUVランプ142の点灯が開始される。したがって、UVランプ142を冷却するための水を循環させるための経路が不要となる。この結果、バラスト水処理装置101の構成を簡素化することができる。
UVランプ142が水中に存在するように、ケース141の内部には十分な量の水が蓄えられる。UVランプ142の点灯時に発生する熱は、紫外線照射装置3のケース141の内部の水に伝達される。これによってUVランプ142の過熱を防ぐことができる。したがって、ケース141の内部に蓄えられた水が少ない場合には、UVランプ142において発生する熱をUVランプ142から奪う効果を十分に得ることができない。
このような問題を防ぐために、圧力計P3,P4によって水圧が計測される。制御装置111は、圧力計P3,P4によって計測される水圧を監視する。圧力計P3,P4によって計測される圧力は、紫外線照射装置3(ケース141)の内部に蓄えられた水の量を反映する。すなわち、紫外線照射装置3の内部に蓄えられた水の量が小さくなるにつれて、圧力計P3によって計測される水圧よりも、圧力計P4によって計測される水圧が低くなる。
制御装置111は、圧力計P3,P4によって計測された水圧の差を演算し、その演算値が予め規定された正常範囲内にある場合に、UVランプ142の点灯を開始する。一方、制御装置111は、圧力計P3,P4によって計測された水圧の差の演算値が上記の正常範囲を外れた場合(正常範囲の下限を下回る場合)には、アラームを発生させる。アラームを発生させる方法は特に限定されるものではない。たとえば、制御装置111は、ランプを点灯させる、あるいはブザーを鳴らすという方法を用いて、アラームを発生させることができる。
また、圧力計P3,P4によって計測された水圧に基づく演算値は、圧力計P3,P4によって計測された水圧の差に限定されるものではなく、たとえば、圧力計P3によって計測された水圧に対する圧力計P4によって計測された水圧の比率であってもよい。このようにして制御装置111は、圧力計P3,P4によって計測される水圧に基づく演算値について予め正常範囲を規定しておき、演算値と正常範囲との比較結果に基づいてUVランプ142を点灯させる。
続いて制御装置111は、バルブW1を開くとともにバラストポンプBPを始動する。1つの実施形態では、バラストポンプBPの始動方法として、公知のスターデルタ始動法が採用される。スターデルタ始動法によれば、ポンプを駆動する三相モータの各相の固定子巻線が、三相モータの始動時にスター結線される。一方、三相モータが回転加速すると、各相の固定子巻線の結線が、スター結線からデルタ結線に変更される。
さらに制御装置111は、バルブW3を開く。制御装置111は、流量計FM2によって計測される流量を監視して、バルブW3の開度を制御する。たとえばライン24を流れる海水の流量が300m3/hとなるように、バルブW3の開度が制御される。
濾過装置2では、ライン20,21を通じて海水が導入されて、フィルタ61の無濾過洗浄が行なわれる。フィルタ61を洗浄した後の海水は、ライン23,24およびオーバーボード6を通じて海に排出される。
このように本実施の形態では、UVランプ142の立ち上げ中に、濾過装置2に導入される海水(被処理水)を用いてフィルタ61を洗浄する。バラストタンク5にバラスト水を供給するのに先立って、フィルタ61が洗浄されるので、バラスト水の処理能力が低下するという問題を防ぐことができる。また、UVランプ142の立ち上げの完了後に直ちにバラストタンク5にバラスト水を供給することができる。なお、フィルタ61の円筒上下面が水密に塞がれていることを確保する(濾過装置2の空運転を防ぐ)ために、圧力計P1,P2によって濾過装置2の水圧が計測される。さらに制御装置111は、圧力計P1,P2によって計測される水圧を監視する。
図13は、図11のステップS104の処理を説明するための図である。図13を参照して、制御装置111は、UVランプ142の立上げが完了したことを判断する。1つの実施形態では、制御装置111は照度センサ144a〜144c(図6を参照)によって計測された照度を監視する。計測された照度が最大値に達すると、制御装置111はUVランプ142の立上げが完了したと判断するとともに、バルブW2を開く。図3を参照して既に説明したように、濾過装置2に導入された海水(被処理水)は、フィルタ61の外周面からフィルタ61の内周面へ透過することで濾過される。濾過された被処理水は、中心配管80に設けられた取水穴81を通して濾過水流路64に導かれて、ライン22を通じて紫外線照射装置3へと送られる。
制御装置111は、バルブW2を開くとともにバルブW5を開く。これにより、濾過装置2からの被処理水は、ライン22を通じて、紫外線照射装置3のケース141に導入される。紫外線照射装置3では、UVランプ142が被処理水に紫外線を照射する。紫外線が照射された後の被処理水は、ライン26、ライン13およびライン14を流れて、バラストタンク5に供給される。
UVランプ142の照度が最大値に達した直後に、紫外線照射装置3による被処理水の処理を開始することができる。したがって、バラスト水処理装置101の起動時間を短縮することができる。
制御装置111は、バルブW5,W3の開度を制御することにより、濾過装置2、第1の経路(ライン22)、紫外線照射装置3および第2の経路(ライン26)を流れる被処理水の流量と、濾過装置2からの排水経路(ライン23)を流れる被処理水の流量とを制御する。具体例を挙げて説明すると、バルブW5を開く前において、ライン24を流れる海水の流量が300m3/hである。制御装置111は、ライン26を流れる海水の流量が250m3/hとなり、ライン24を流れる海水の流量が50m3/hとなるようにバルブW5,W3の開度を設定する。なお、これらの数値は一例であって、本実施の形態はこれらの数値によって限定されない。
すなわち、本発明の実施の形態では、濾過装置2から排出される被処理水の流量が、第2の経路(ライン26)に設けられたバルブW5の開度によって制御される。バラストポンプBPから送り出された海水は、漲水経路、すなわち濾過装置2から第1の経路(ライン22)、紫外線照射装置3、および第2の経路(ライン26)を通る。海水の流量を制御するためのバルブは、紫外線照射装置3の出口側(ライン26)に設けられている。このため、漲水経路を海水が通る間の、海水の圧力の低下量を小さくすることができる。さらに、ライン23に排水ポンプを設置しなくても、濾過装置2からライン23を通じて排水することができる。これによって、ライン23に排水ポンプを設置しなくてもよくなる。
図14は、図11のステップS105の処理を説明するための図である。図14を参照して、バラストタンク5へのバラスト水の供給が完了すると、制御装置111は、濾過装置2のフィルタ61の逆洗浄のための処理を開始する。具体的には、制御装置111は、バルブW11およびバルブW6を開く。濾過装置2によって濾過された海水の一部がライン22からライン31を通り、逆洗浄装置2Aの洗浄水タンク68に導入される。濾過された海水が洗浄水タンク68に導入された後(たとえばバルブW6が開いてから一定の時間が経過した後)、制御装置111は、バルブW6を閉じ、さらにバルブW11を閉じる。なお、洗浄水タンク68の水位が既に所定のレベルに達している場合には、濾過された海水を洗浄水タンク68に導入するための処理を省略することができる。
次に、UVランプ142が立下げられる(消灯する)とともに、濾過装置2のフィルタ61の無濾過洗浄が行なわれる。制御装置111は、バルブW2,W5を閉じるとともに、バルブW3の開度を制御する。たとえばライン24を流れる海水の流量が50m3/hから300m3/hとなるように、バルブW3の開度が制御される。一方、ライン26を流れる海水の流量が250m3/hから0m3/hとなるようにバルブW5の開度が制御される。
濁質がフィルタ61に付着したままの状態で船舶が移動すると、船舶の寄港地においてフィルタ61に付着した濁質が洗浄されて、船舶の寄港地の海域に排出されることが起こり得る。その濁質の中に含まれる微生物が、船舶の寄港地の海域の生態系に影響を及ぼすことも考えられる。バラストタンク5にバラスト水を供給した後にフィルタ61を洗浄することによって、濁質がフィルタ61に付着したままの状態で船舶が移動することを防ぐことができる。
UVランプ142の立上げ時と同じく、UVランプ142の立下げ時には、紫外線照射装置3のケース141の内部を水が通過しない。すなわち、ケース141の内部に水が滞留している。UVランプ142の立下げ時にもUVランプ142を冷却するための水を循環させないので、UVランプ142を冷却するための水を循環させる経路が不要となる。したがってバラスト水処理装置101の構成を簡素化することができる。
図15は、図11のステップS106の処理(逆洗浄)を説明するための第1の図である。図15を参照して、制御装置111は、バルブW9,W6を開状態に設定し、他のバルブを閉状態に設定する。濾過装置2のケース63(図3を参照)と、洗浄水タンク68とがライン22で連結され、かつ他の流路の全てが閉じられた状態となる。圧縮空気供給部32からライン28を通じて洗浄水タンク68に圧縮空気を供給する。たとえば0.4MPa〜0.5MPa程度に洗浄水が加圧される。これにより濾過装置2のケース63、ライン22および洗浄水タンク68の全体の内部が加圧された状態に保持される。
図16は、図11のステップS106の処理(逆洗浄)を説明するための第2の図である。図16を参照して、制御装置111は、バルブW7を開放する。すると、洗浄水が洗浄水タンク68からライン22を通り、フィルタ61を透過する。この先浄水は、濾過装置2のケース63(図3を参照)から濾過装置2の外部へと一気に排出される。すなわちフィルタ61に対して、濾過するときの水の流れの向きとは逆の向きに、洗浄水が短時間に流れる。洗浄水は、濾過水流路64を流れて、中心配管80の取水穴81から噴出する。この洗浄水は、フィルタ61の内周面からフィルタ61の外周面に向けてフィルタ61を通過する。これにより、フィルタ61の外周面に付着等していた物質がフィルタ61の外周面から剥がされてフィルタ61が洗浄される。その後、洗浄水は、ライン23,25,24を通り、オーバーボード6から海へと排出される。
図17は、図11のステップS106の処理(逆洗浄)を説明するための第3の図である。図17を参照して、制御装置111は、バルブW10,W11をともに開状態に設定する。洗浄水タンク68の水位が所定レベルに達するまで、清水供給部33からライン30を介して、洗浄水タンク68に清水が供給される。
なお、図15〜図17によって説明される逆洗浄処理は1回のみ実行されてもよく、繰り返して実行されてもよい。繰り返しの回数は特に限定されるものではない。
また、洗浄動作においてモータ90は停止してもよい。ただしフィルタ61を回転させた状態でフィルタ61の逆洗浄を行なうことで、より高い洗浄効果が得られるため好ましい。これは円筒状かつプリーツ状のフィルタ61の外周面に付着した物質に、円筒内部からの洗浄水の圧力に加えて、円筒の回転による遠心力が印加されるため、濾過物が一層除去されやすくなるためである。このように、回転状態でフィルタ61の逆洗浄を行なうことで、フィルタ61を効果的に洗浄することができる。さらには、回転にフィルタ61全体の振動が加わっても、フィルタ61の洗浄効果が高まることが期待できる。
3.BWMSモードでの処理(De−Ballastingモード)
図18は、本発明の実施の形態に係る、バラスト水の排水時の処理を説明するフローチャートである。図1および図18を参照して、ステップS201において、バラスト水処理装置101は、紫外線照射装置3のUVランプ142を点灯させる。すなわちバラストタンク5から被処理水を取出して紫外線照射装置3に供給するのに先立ってUVランプ142が点灯される。
Ballastingモードでの処理と同様に、UVランプ142の立上げ時には紫外線照射装置3に海水が通されない。具体的には、制御装置111は、バルブW4とバルブW5とを閉状態に設定する。さらに、制御装置111はバラストポンプBPを停止させる。これによりライン27には被処理水の流れが発生しない。この方法によれば、UVランプ142を冷却するための水を循環させる経路が不要となる。したがって、バラスト水処理装置の構成をより簡素にすることができる。
ステップS202において、バラストポンプBPの作動が開始される。ステップS203において、バラストタンク5からの排水が実行される。
上記のように、バラスト水の取水時に、微生物の殺滅のためにバラスト水に紫外線が照射される。しかし、バラスト水の取水時に、水中の微生物を完全に殺滅できていない可能性も考えられる。この実施の形態では、一旦、バラスト水に紫外線を照射してからバラスト水を海に排出する。これにより、海に排出されるバラスト水が海域の生態系に影響を与えることを防ぐ効果がより高められる。
なお、取水時に、被処理水に濾過処理が施されることで、被処理水から大きな異物は取り除かれている。したがってこの実施の形態では、バラスト水の排水時には濾過処理は省略される。
ステップS204において、バラスト水処理装置101は、立下げ処理を実行する。ステップS205において、バラスト水処理装置101が停止する。これにより処理が終了する。
図19は、図18のステップS202〜S204の処理を説明するための図である。図19を参照して、紫外線照射装置3においてUVランプ142の立上げが完了する。制御装置111は、バルブ43,44およびバルブW4,W5を開状態に設定して、バラストポンプBPの駆動を開始する(ステップS202)。
バラストタンク5に貯留されたバラスト水は、ライン16、ライン11、ライン12、ライン20、ライン27、ライン22、ライン26、ライン13およびライン15を通り、オーバーボード6から海へと排出される。
バラストポンプBPの駆動開始から所定の期間(たとえば数秒間)は、排出されるバラスト水の流量が第1の流量に制御される。その所定の期間が経過すると、排出されるバラスト水の流量が第2の流量に制御される。第2の流量は第1の流量よりも大きい。バラスト水の流量は、バルブW5の開度によって制御される(バルブW4は完全に開いている)。代わりに、バラスト水の流量は、バルブW4の開度によって制御されてもよい(バルブW5は完全に開いている)。あるいは、バラスト水の流量は、バルブW4,W5の両方の開度によって制御されてもよい。いずれの場合にしても、制御装置111は、バルブW4,W5の開度を制御して、紫外線照射装置3のケース141を通過する被処理水の流量が第1の流量となるようにバルブW4,W5を開く。次に、制御装置111は、紫外線照射装置3のケース141を通過する被処理水の流量が、その第1の流量よりも大きい第2の流量となるようにバルブW4,W5を制御する。
バラストポンプBPの駆動開始時の排水量が大きすぎると、ウォーターハンマー(水撃作用)が発生する可能性がある。ウォーターハンマーによって、たとえばUVランプ142が損傷する可能性が考えられる。
上述のように、バラストポンプBPは、たとえばスターデルタ始動法に従って始動される。スターデルタ始動法においては、たとえばバラストポンプBPの始動開始直後は、バラストポンプBPの吐出量は小さい(たとえばバラストポンプBPの能力の30%)ものの、ある時点において、吐出量がバラストポンプBPの能力の100%へと急激に変化する。したがって、バラスト水の流量が急激に変化しやすい。
この実施の形態では、バラストタンク5からの排水時には海水が濾過装置2のフィルタ61を通らずに、バラストポンプBPから紫外線照射装置3へと送られる。紫外線照射装置3は、バラストポンプBPの吐出量の急激な上昇にともなう海水の流量の変化の影響を受けやすい。すなわち紫外線照射装置3は、ウォーターハンマーの影響を受けやすい。この実施の形態では、バラストポンプBPの駆動開始から所定の期間(たとえば数秒間)に排出されるバラスト水の流量を低く設定することによって、ウォータハンマーの可能性を小さくすることができる。
上述のように、制御装置111は、たとえばバルブW5の開度を制御することでライン26におけるバラスト水の流量を制限する。たとえば、バラストポンプBPの能力の100%に対応する吐出量が300m3/hである場合、ライン26におけるバラスト水の流量が100m3/hとなるようにバルブW5の開度が制御される。なお、これらの数値は一例であって、本発明はこれらの数値によって限定されるものではない。
次に、制御装置111は、バルブW5の開度を大きくする。たとえばステップS203において、制御装置111は、ライン26におけるバラスト水の流量を250m3/hに設定する。
続いて、UVランプ142の立下げ処理について説明する。制御装置111は、ライン26に低流量でバラスト水が流れるようにバルブW5の開度を制御する。したがって、ステップS204においては、バルブW5は完全には閉じられていない。たとえばライン26におけるバラスト水の流量が250m3/hから100m3/hへと減少するようにバルブW5の開度が制御される。
バラスト水の流れを急に停止させる(流量を250m3/hから0m3/hへと不連続に変化させる)と、上述のウォーターハンマーの問題が生じる可能性が高くなる。したがって、制御装置111は、一旦、バラスト水の流量を低くし、その後にバルブW5を停止させる、および/またはバラストポンプBPを停止させる。さらに、制御装置111は、紫外線照射装置3のUVランプ142を消灯させる。これにより、バラスト水処理装置101が完全に停止する(ステップS206)。
なお、その後に濾過装置2および紫外線照射装置3の各々の内部に貯留されているバラスト水を清水に置換する。この置換処理は自動で行なわれてもよく、手動で行なわれてもよい。
上記の実施の形態では、ライン26の流量について、0m3/hと最大流量(250m3/h)との間に1段階の流量(100m3/h)が設定されている。しかし、ライン26の流量の変化量を小さくするために、0と最大流量(250m3/h)との間に複数段階の流量が設定されてもよい。ライン26の流量の変化量を小さくすることによって、ウォーターハンマーの問題が生じる可能性をより小さくすることができる。
さらに、バラストポンプBPの始動法はスターデルタ始動法に限定されない。図20に示すように、バラストポンプBPをインバータ51によって駆動してもよい。この場合には、バルブW5を完全に開いていても、バラストポンプBPの吐出量を連続的に変化させることで、ライン26におけるバラスト水の流量を連続的に変化させることができる。また、ライン26におけるバラスト水の流量を変化させるために、バラストポンプBPの吐出量の変化とバルブW5の開度の変化とを組み合わせてもよい。これらの方法によっても、ウォーターハンマーの問題が生じる可能性をより小さくすることができる。したがってUVランプ142の保護にとって有利となる。
4.バイパスモードでの処理(バラスト水の取水)
バイパスモードでは、バラスト水処理装置101を経由せずにバラスト水の取水および排出が行なわれる。図21は、バイパスモードでのバラスト水の取水を説明するための図である。図21を参照して、制御装置111は、バルブ41、バルブW8およびバルブ42を開状態に設定し、他のバルブを閉状態に設定する。さらに制御装置111はバラストポンプBPを駆動させる。
海水はライン10,11を通り、バラストポンプBPによって汲み上げられる。バラストポンプBPから吐出された海水は、ライン12,13,14を通り、バラストタンク5に送られる。
5.バイパスモードでの処理(バラスト水の排水)
図22は、バイパスモードでのバラスト水の排水を説明するための図である。図22を参照して、制御装置111は、バルブ43,44を開状態に設定し、他のバルブを閉状態に設定する。さらに制御装置111はバラストポンプBPを駆動させる。
海水はバラストタンク5からライン14、ライン16、ライン11、ライン12、ライン13およびライン15をこの順に通り、オーバーボード6から海へと排出される。
なお、上記の実施の形態では、濾過装置2のフィルタ61の洗浄方法として、無濾過洗浄および逆洗浄装置2Aによる逆洗浄を開示した。これらの方法に加えて、薬液を用いてフィルタ61の洗浄を行なう方法を採用してもよい。図3に示されるように、ケース63の蓋部には、薬液注入口70が設けられている。フィルタ61の逆洗浄を行なうことで、濾過装置2を長期間にわたり運転することができる。しかしながら、このような機械的な洗浄では落とすことができずにフィルタ61の表面に徐々に堆積してゆく物質があり得る。薬液による洗浄を併用することで、フィルタ61の寿命を延ばすことができる。
このような薬液注入口を用いて、次の手順で薬液洗浄を行うことができる。まず、濾過運転および逆洗浄の動作を停止する。なお、フィルタ61は停止してもよく、回転状態でもよい。ケース63の内部を、被処理水または濾過水が残留し、フィルタ61が水に浸漬された状態に保持する。この状態で、薬液注入口70から洗浄用の薬液を注入する。
フィルタ61が既に回転状態にある場合はそのまま回転状態を維持する。一方、フィルタ61が停止状態にある場合は、モータ90を回転させることで、フィルタ61を回転状態とする。回転するフィルタ61の全体に薬液が拡がり、フィルタ61の外周面が十分洗浄されるまで、この状態を一定時間保持する。その後、バルブW3を開いて、ケース63の内部の水(薬液を含む)を排水する。なお、使用する薬液に応じて、排水の前に中和液をさらに注入したり、排水後に中和等の処理を行なったりしてもよい。
また、上記の実施の形態では、バラスト水処理装置101は、逆洗浄装置2Aを備える。しかし、逆洗浄装置2Aがバラスト水処理装置101に必須の構成である必要はない。上記の実施の形態に示された構成から逆洗浄装置2Aを省略してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。