JP2015009510A - 多層熱回復物品、ワイヤスプライス及びワイヤハーネス - Google Patents

多層熱回復物品、ワイヤスプライス及びワイヤハーネス Download PDF

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智 山崎
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安隆 江本
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Ryuhei Fujita
竜平 藤田
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Abstract

【課題】絶縁電線等の被着体に劣化等の悪影響を与えず、長寿命化、及び使用できる被着体の種類の多様化が可能な多層熱回復物品、この多層熱回復物品を使用したワイヤスプライス及びワイヤハーネスを提供する。【解決手段】本発明は、基材層と、この基材層に積層される接着剤層とを備える多層熱回復物品であって、接着剤層が、[A]190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレートが15g/10分以上1,000g/10分以下の熱可塑性樹脂、及び[B]平均粒径が90nm以下の炭酸カルシウムを含み、接着剤層の150℃での剪断粘度が、剪断速度0.1s−1で300Pa・s以上、剪断速度100s−1で200Pa・s以下であることを特徴とする。[B]炭酸カルシウムの含有量としては[A]熱可塑性樹脂100質量部に対し2質量部以上25質量部以下が好ましい。接着剤層の110℃での貯蔵弾性率としては0.1MPa以下が好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、多層熱回復物品、ワイヤスプライス及びワイヤハーネスに関する。
熱収縮チューブ、熱収縮キャップ等の熱回復物品は、絶縁電線同士の接続部分、配線の端末、金属管等の保護、絶縁、防水、防食等のための被覆に使用されている。例えば、熱収縮チューブは、絶縁電線同士の接続部分に被覆して加熱すると、接続部分の形状に沿って収縮して密着することで接続部分を保護できる。
かかる熱回復物品としては、熱収縮性基材層の内面に接着剤層を設けた多層熱回復物品がある(特開2000−129042号公報参照)。この接着剤層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、ポリアミド樹脂等のホットメルト接着剤が用いられている。また、接着剤層は、二層の熱可塑性樹脂層として形成されることもある(特開平8−230037号公報及び特許第4019524号公報参照)。
一方、多層熱回復物品は、熱収縮性基材層と接着剤層とをそれぞれチューブ状に押出成形した後に加熱下で径方向に膨張(拡径)させ、冷却してその形状を固定することで製造される。多層熱回復物品は、耐熱性を向上させる目的で、拡径前に電離性放射線を照射することによって熱収縮性基材層が架橋されることもある。
絶縁電線等の被着体に対する多層熱回復物品の被着は、例えば被着体を多層熱回復物品で被覆した状態として加熱することで行われる。多層熱回復物品を加熱すると、熱収縮性基材層が熱収縮すると同時に接着剤層が流動化する。このとき、流動化した接着剤層が被着体と熱収縮性基材層との間を埋めるため、その後の冷却によって接着剤層を固化させることで、多層熱回復物品が被着体に密着させられる。
特開2000−129042号公報 特開平8−230037号公報 特許第4019524号公報
ここで、被着体の一例である絶縁電線に多層熱回復物品を被着した場合、絶縁電線が導体を絶縁樹脂層で被覆したものであるため、この絶縁樹脂層と多層熱回復物品の接着剤層とが接触する。絶縁樹脂層と接着剤層とが接触する場合、絶縁樹脂層及び接着剤層に使用する樹脂及び添加剤の種類によっては、上記絶縁樹脂層を劣化させ、寿命が短くなる等の悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、絶縁樹脂層の劣化等を回避するためには、絶縁樹脂層と接着剤層との組み合わせを選択しなければならず、使用できる多層熱回復物品の種類に制限が生じる。その結果、ユーザは、絶縁電線等の被着体の種類に応じて、被着体の劣化、短寿命化等の悪影響を及ぼし難い多層熱回復物品を選択しなければならず、不便さを強いられることがある。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、絶縁電線等の被着体に劣化等の悪影響を与えず、長寿命化、及び使用できる被着体の種類の多様化が可能な多層熱回復物品、この多層熱回復物品を使用したワイヤスプライス及びワイヤハーネスを提供することを目的としている。
上記課題を解決するためになされた発明は、
基材層と、この基材層に積層される接着剤層とを備える多層熱回復物品であって、
上記接着剤層が、[A]190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレートが15g/10分以上1,000g/10分以下の熱可塑性樹脂、及び[B]平均粒径が90nm以下の炭酸カルシウムを含み、
上記接着剤層の150℃での剪断粘度が、剪断速度0.1s−1で300Pa・s以上であり、剪断速度100s−1で200Pa・s以下であることを特徴とする。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、
導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、
上記複数本のワイヤの導体同士が接続された部分に被着された当該多層熱回復物品と
を備えるワイヤスプライスである。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、
導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、
上記複数本のワイヤに被着された当該多層熱回復物品と
を備えるワイヤハーネスである。
本発明の多層熱回復物品、この多層熱回復物品を使用したワイヤスプライス及びワイヤハーネスは、絶縁電線等の被着体の劣化等の悪影響を抑制でき、その結果、長寿命化、及び使用できる被着体の多様化を図ることができる。
本発明の一実施形態に係る多層熱回復物品を示す模式的斜視図である。 図1のX1−X1線に沿う模式的断面図である。 図1のX2−X2線に沿う模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るワイヤスプライスを示す図2に対応する模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るワイヤハーネスを示す図2に対応する模式的断面図である。 図5に示したワイヤハーネスの図3に対応する模式的断面図である。 本発明の他の実施形態に係る多層熱回復物品を示す図2に相当する模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明は、
基材層と、この基材層に積層される接着剤層とを備える多層熱回復物品であって、
上記接着剤層が、[A]190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(以下「MFR」ともいう)が15g/10分以上1,000g/10分以下の熱可塑性樹脂、及び[B]平均粒径が90nm以下の炭酸カルシウムを含み、
上記接着剤層の150℃での剪断粘度が、剪断速度0.1s−1で300Pa・s以上であり、剪断速度100s−1で200Pa・s以下であることを特徴とする。
当該多層熱回復物品は、接着剤層に[A]メルトフローレートが上記範囲である熱可塑性樹脂及び[B]平均粒径が90nm以下の炭酸カルシウムを含んでいる。そのため、メカニズムは明確ではないが、当該多層熱回復物品を絶縁電線等の被着体に被着したときの被着体の劣化を抑制することができる。その結果、被着体に劣化等の悪影響を与えず、長寿命化及び使用できる被着体の種類の多様化を図ることができる。
ここで、接着剤層は、例えば押出成形により形成できる。この場合、接着剤層を形成するためにダイスに接着剤組成物を通過させた際、接着剤組成物には高い剪断応力が作用する。そのため、高い剪断力が作用するときの接着剤組成物の流動性が低過ぎる(粘度が高過ぎる)と適切に押出成形を行うことができない。その一方で、ダイスを通過した後の接着剤組成物は、作用する剪断応力が低減する。そのため、作用する剪断力が小さいときの接着剤組成物の流動性が高過ぎる(粘度が低過ぎる)と、ダイスを通過した後に形成される接着剤層が押し出されたときの形状を維持できずに変形し厚みにばらつきが生じる。そこで、ダイスの通過時及びダイスの通過後を想定した異なる剪断速度における剪断粘度がそれぞれ上記範囲であることで、押出形成性を適切に確保しつつ、接着剤層に厚みのばらつきが生じることを抑制できる。
また、接着剤層に[A]メルトフローレートが上記範囲である熱可塑性樹脂を含むことで、当該多層熱回復物品を被着体に被着するときの加熱により接着剤層が適度に流動化する。そのため、基材層と被着体との間の接着剤層の埋まり性が向上し、被着体に対する当該多層熱回復物品の密着性が向上する。
上記[B]炭酸カルシウムの含有量としては、[A]熱可塑性樹脂100質量部に対し2質量部以上25質量部以下が好ましい。このように[B]炭酸カルシウムの含有量を上記範囲とすることで、150℃での剪断粘度が、剪断速度0.1s−1において小さくなり過ぎるおそれがなく、剪断速度100s−1において大きくなり過ぎるおそれもない。そのため、接着剤層の剪断粘度を適正化することで、押出形成性を適切に確保しつつ、接着剤層の厚みにばらつきが生じることを適切に抑制できる。
上記接着剤層の110℃での貯蔵弾性率としては0.1MPa以下が好ましい。このように貯蔵弾性率を上記範囲とすることで、当該多層熱回復物品を被着するときの基材層の加熱収縮時に、接着剤層が容易に変形することができる。その結果、当該多層熱回復物品を被着体に被着するときの基材層と被着体との間の接着剤層の埋まり性が向上するため、被着体に対する当該多層熱回復物品の密着性が向上する。
当該多層熱回復物品としては、導体及びその外周に積層されるポリビニルクロライド層を有する絶縁電線(以下「PVC電線」ともいう)に被覆した場合、150℃、200時間の加熱条件下で上記ポリビニルクロライド層に割れが発生しないものが好ましい。このような加熱条件でポリビニルクロライド層に割れが発生しないものにすれば、絶縁電線等の劣化をより適切に抑制できる。その結果、長寿命化、及び使用できる被着体の種類の多様化をより適切に図ることができる。
[A]熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミドのうちの少なくとも1種であるとよい。このような[A]熱可塑性樹脂を接着剤層に含ませることで、[A]熱可塑性樹脂への[B]炭酸カルシウムの分散性を良好なものとすることができる。その結果、当該多層熱回復物品を被着体に被着するときの基材層と被着体との間の接着剤層の埋まり性が向上するため、被着体に対する当該多層熱回復物品の密着性が向上する。
上記基材層が、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有するとよい。これらの樹脂は、基材層に熱収縮性を適切に付与することができ、また安価に入手できるため製造コストを抑制できる。
別の本発明は、
導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、
上記複数本のワイヤの導体同士が接続された部分に被着された当該多層熱回復物品と
を備えるワイヤスプライスである。
当該ワイヤスプライスは、当該多層熱回復物品を備えているため、当該多層熱回復物品がワイヤ及びその導体同士の接続部分に劣化等の悪影響を与えることを抑制できる。そのため、当該ワイヤスプライスは、長寿命化が図られ、ワイヤ及びその接続部分の保護、絶縁、防水、防食等の保護状態を長期間維持することが可能となる。
上記絶縁層は、ポリビニルクロライドが主成分であるとよい。このようなポリビニルクロライドを主成分とする絶縁層は劣化しやすいが、当該多層熱回復物品は劣化しやすい絶縁層を備えたワイヤに対しても長寿命化を図ることができる。その結果、当該ワイヤスプライスについても同様に長寿命化が図られる。
さらに別の本発明は、
導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、
上記複数本のワイヤに被着された当該多層熱回復物品と
を備えるワイヤハーネスである。
当該ワイヤハーネスは、当該多層熱回復物品を備えているため当該多層熱回復物品がワイヤに劣化等の悪影響を与えることを抑制できる。そのため、当該ワイヤスプライスは、長寿命化が図られ、ワイヤの保護、絶縁、防水、防食等の保護状態を長期間維持することが可能となる。
上記絶縁層は、ポリビニルクロライドが主成分であるとよい。このようなポリビニルクロライドを主成分とする絶縁層は劣化しやすいが、当該多層熱回復物品は劣化しやすい絶縁層を備えたワイヤに対しても長寿命化を図ることができる。その結果、当該ワイヤスプライスについても同様に長寿命化が図られる。
ここで、「メルトフローレート(MFR)」は、JIS K6760:1997で規定された押出し形プラストメータを用い、JIS K7210:1997に準拠して温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。「平均粒径」は、炭酸カルシウムとして市販品をそのまま使用する場合にはメーカーの公称値であり、炭酸カルシウムとして市販品でないもの又は市販品に処理を施したもの使用する場合には、JIS Z8901:2006「試験用粉体及び試験用粒子」に準拠して光散乱法により測定した球相当径である。「剪断粘度」は、回転式レオメーターによって150℃で測定した値である。「貯蔵弾性率」は、回転式レオメーターの振動測定において、歪を0.001%から10%まで変化させて測定し、0.1%歪時の貯蔵弾性率の値である。「ポリビニルクロライド層に割れが発生しない」とは、複数(例えば4本)のPVC電線を束ねて多層熱回復物品を被着させたワイヤハーネスにおいて、150℃で200時間加熱した後に目視によって確認したときに、ポリビニルクロライド層に導体が見える割れが発生しないことをいう。「主成分」とは、ワイヤの絶縁層を構成する成分のうち最も含有量の多い成分である。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る多層熱回復物品、ワイヤスプライス及びワイヤハーネスを説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
[多層熱回復物品]
図1〜図3の多層熱回復物品1は、例えば絶縁電線同士の接続部分、配線の端末、金属管等の保護、絶縁、防水、防食等のための被覆として使用される。この多層熱回復物品1は、基材層10と、この基材層10の内側に積層される接着剤層11とを備える。
〔基材層〕
基材層10は、加熱されることで縮径するチューブとして形成される。基材層10は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド又はフッ素樹脂を含有するとよい。これらの樹脂は、単独で使用しても、複数を併用してもよい。基材層10は、例示した樹脂を含有することで、基材層10に熱収縮性を適切に付与することができ、また例示した樹脂が安価に入手できるため製造コストを抑制できる。
基材層10は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば難燃剤、酸化防止剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
〔接着剤層〕
接着剤層11は、被着部分と基材層10との密着性を高め、防水性等を向上させるためのものである。接着剤層11は、[A]熱可塑性樹脂及び[B]炭酸カルシウムを含有する。接着剤層11は、[A]熱可塑性樹脂及び[B]炭酸カルシウム以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、[C]その他の成分を含有していてもよい。
<[A]熱可塑性樹脂>
[A]熱可塑性樹脂は、メルトフローレート(MFR)が15g/10分以上1,000g/10分以下である。[A]熱可塑性樹脂のMFRの上限としては、500g/10分が好ましく、300g/10分がより好ましい。[A]熱可塑性樹脂のMFRの下限としては、50g/10分が好ましく、100g/10分がより好ましい。ここで、MFRは、樹脂の流動性を表す指標である。
[A]熱可塑性樹脂のMFRが上記上限を超えると、流動性が大き過ぎるために安定して接着剤層11を押出成形するのが困難となる。[A]熱可塑性樹脂のMFRが上記下限未満であると、多層熱回復物品1を使用するときの基材層10の熱収縮時に、接着剤層11の流動性を十分に確保できない。そのため、MFRが上記範囲内の[A]熱可塑性樹脂を用いることにより、押出成形性に優れ、熱収縮時の流動性が良好な接着剤層11が得られる。また、接着剤層11の熱収縮時の流動性が良好であることで、多層熱回復物品1の被着体への密着性が向上する。
[A]熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミドが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミドは、それぞれ単独で使用しても良いし両者を混合して使用しても良いが、エチレン−酢酸ビニル共重合体を単独又はポリアミドと併用して使用するのがより好ましい。このような[A]熱可塑性樹脂を接着剤層11に使用することにより、[A]熱可塑性樹脂への[B]炭酸カルシウムの分散性を良好なものとすることができる。その結果、多層熱回復物品1を絶縁電線等の被着体に被着するときに接着剤層11の埋まり性が向上するため、被着体に対する多層熱回復物品1の密着性が向上する。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量としては、12質量%以上46質量%以下が好ましい。酢酸ビニルの含有量の上限としては、35質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。酢酸ビニルの含有量の下限としては、15質量%がより好ましく、19質量%がさらに好ましい。酢酸ビニルの含有量が上記下限未満であると、[A]熱可塑性樹脂への[B]炭酸カルシウムの分散性が低下するおそれがある。一方、酢酸ビニルの含有量が上記上限を超えると、接着剤層11の押出成形時に、接着剤層11を形成するための接着剤組成物がダイス、金型等に固着し、取扱いが困難となるおそれがある。
<[B]炭酸カルシウム>
[B]炭酸カルシウムは、主として剪断粘度を改良する役割を果たすものである。この[B]炭酸カルシウムの平均粒径の上限は、90nmであり、70nmが好ましい。[B]炭酸カルシウムの平均粒径が上記上限を超えると、150℃における剪断速度0.1s−1での剪断粘度が小さくなって押出成形性が悪化する。上記平均粒径の下限としては、20nmが好ましい。
[B]炭酸カルシウムとしては、ホウカイ石、ヒョウシュウ石、アラレ石、石灰石、大理石、ホワイチング等の鉱石を粉砕した重質炭酸カルシウム、合成石である沈降性炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等を挙げることができる。これらの中で、押出加工性や物性の点からは、粒度分布が均一な合成品の炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、表面処理を施したもの、表面処理を施していないもののいずれも使用することもできるが、表面処理を施した炭酸カルシウムが好ましい。表面処理を施した炭酸カルシウムを用いることで、接着剤層11を形成するための接着剤組成物を調製するときの[A]熱可塑性樹脂と[B]炭酸カルシウムとの混練性が向上する。さらに、接着剤組成物を用いて接着剤層11を押出成形するときの押出成形性が向上する。
炭酸カルシウムの表面処理は、例えば表面処理剤等を用いて行うことができる。表面処理剤としては、例えば脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス、カップリング剤が挙げられる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミニウム系カップリング剤、カルボン酸カップリング剤、リン酸カップリング剤等が挙げられる。
[B]炭酸カルシウムの含有量としては、[A]熱可塑性樹脂100質量部に対し2質量部以上25質量部以下が好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。上記含有量の下限としては、5質量部がより好ましい。[B]炭酸カルシウムの含有量を上記範囲とすることで、150℃での剪断粘度が、剪断速度0.1s−1において小さくなり過ぎるおそれがなく、剪断速度100s−1において大きくなり過ぎるおそれもない。そのため、接着剤層11の剪断粘度を適正化することで、押出形成性を適切に確保しつつ接着剤層11の厚みにばらつきが生じることを適切に抑制できる。
(剪断粘度)
接着剤層11の150℃における剪断速度0.1s−1での剪断粘度は、300Pa・s以上である。上記剪断粘度が300Pa・s未満であると、例えば接着剤層11を押出成形により形成する場合、ダイスの通過後の剪断粘度が小さ過ぎて接着剤層11が押し出された形状を維持できずに変形し厚みにばらつきが生じるおそれがある。上記剪断速度0.1s−1での剪断粘度の上限としては、1,000Pa・sが好ましく、500Pa・sがより好ましい。上記剪断粘度が上記上限より大きいと、却って押出成型性が悪化するおそれがある。
一方、接着剤層11の150℃における剪断速度100s−1での剪断粘度は、200Pa・s以下である。上記剪断粘度が200Pa・sよりも大きいと、例えば接着剤層11を押出成形により形成する場合、ダイスを通過させるときの流動性が低過ぎて押出成形を適切に行えないおそれがある。上記剪断速度0.1s−1での剪断粘度の下限としては、押出成型性の観点から、50Pa・sが好ましく、100Pa・sがより好ましい。
(貯蔵弾性率)
接着剤層11の110℃での貯蔵弾性率は、0.1MPa以下が好ましく、0.05MPa以下がより好ましく、0.03MPa以下がさらに好ましい。接着剤層11は、貯蔵弾性率が高くなると、応力を加えても接着剤層11が形状を維持する傾向が強くなる。そのため、接着剤層11の110℃での貯蔵弾性率を上記値以下とすることで、多層熱回復物品1を被着するときの基材層10の加熱収縮時に、接着剤層11が形状を維持する傾向を弱め、接着剤層11を容易に変形させることができる。その結果、多層熱回復物品1を被着体に被着するときに、基材層10と被着体との間の接着剤層11の埋まり性が向上するため、被着体に対する多層熱回復物品1の密着性が向上する。上記貯蔵弾性率の下限としては、被着体に対する多層熱回復物品1の密着性の観点から、0.001MPaが好ましく、0.005MPaがより好ましい。
<[C]その他の成分>
[C]その他の成分としては、例えば粘度特性改良剤、劣化抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、粘着剤等が挙げられる。
(劣化抑制剤)
劣化抑制剤は、多層熱回復物品1が被着される被着体の劣化を抑制するためのものである。典型的には、劣化抑制剤は、絶縁電線の被覆層あるいは多層熱回復物品1の接着剤層11に含まれる塩基性成分に起因する絶縁層の割れの発生を抑制するためのものである。この劣化抑制剤は、粘度特性改良剤としての役割をも果たしうる。劣化抑制剤としては、被着体が劣化する要因に応じて選択すればよいが、例えば塩基性成分に起因する被着体の劣化を抑制する場合、塩基性成分による脱塩酸反応が生じることを抑制する化合物、又は塩酸反応により生成した塩化水素、塩化物イオン等を捕捉若しくは中和することができる化合物を使用することができる。このような劣化抑制剤としては、例えば、活性白土、ハイドロタルサイト、リンを有する酸化防止剤(酸価10mgKOH/g以上)等を挙げることができる。これらの劣化抑制剤を接着剤層11に含有させることで、例えば窒素含有化合物を吸着し、アニオンを取り込み、脱塩酸反応により生じた塩化水素を捕捉する等して接着剤層11の塩基性成分に起因する被着体の劣化を抑制できる。
<多層熱回復物品の製造方法>
多層熱回復物品1は、例えば以下の工程により製造することができる。
(1)基材層10のための基材層樹脂組成物、及び接着剤層11のための接着剤組成物を調製する工程
(2)基材層樹脂組成物及び接着剤組成物を溶融押出成機を用いて押出成形することで多層押出成形品を形成する工程
(3)多層押出成形品を拡径させて多層熱回復物品1とする工程
(1)組成物の調製工程
基材層樹脂組成物は、樹脂成分、必要に応じて添加剤を、溶融混合機を用いて混合することにより調製できる。溶融混合機としては、公知のもの、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸混合機、多軸混合機等を使用できる。
接着剤組成物は、[A]熱可塑性樹脂に、[B]炭酸カルシウム、必要に応じて[C]その他の成分を、溶融混合機を用いて混合することにより調製できる。溶融混合機としては、基材層樹脂組成物を調製する場合と同様のものを使用できる。
(2)多層押出成形品形成工程
多層押出成形品は、基材層樹脂組成物と接着剤組成物とを公知の溶融押出成形機を用いて、基材層樹脂組成物及び接着剤組成物を同時に押出成形することで、基材層10に対応する外層の内側に接着剤層11に対応する内層が積層されたものとして形成される。多層押出成形品は、外層の構成材料を架橋することにより、耐熱性を向上させてもよい。架橋方法としては、例えば電離性放射線の照射による架橋、化学架橋、熱架橋等の方法が挙げられる。
多層押出成形品の寸法は、用途等に応じて設計することができる。多層押出成形品の基材層10に対応する層の寸法は、一例において、内径及び肉厚のそれぞれが、1.0mm〜30mm及び0.1mm〜10mmとされる。多層押出成形品の接着剤層11に対応する層の寸法は、一例において、内径及び肉厚のそれぞれが、0.1mm〜10mm及び0.1mm〜8.5mmとされる。ここで、上記接着剤組成物は、[A]熱可塑性樹脂及び[B]炭酸カルシウムを含有することで押出成形性に優れているため、接着剤層11に対応する層の内径を1.0mm以下と小さくした場合でも良好に押出成形可能である。
(3)多層押出成形品の拡径工程
多層押出成形品の拡径は、多層押出成形品を融点以上の温度に加熱した状態で内部に圧縮空気を導入する等の方法により所定の内径となるように膨張させた後、冷却して形状を固定させることで行われる。このような多層押出成形品の拡径は、例えば多層押出成形品の内径が2倍〜4倍程度となるように行われる。このようにして多層押出成形品を拡径させて形状固定したものが多層熱回復物品1となる。
<利点>
多層熱回復物品1は、接着剤層11に[A]MFRが上記範囲である熱可塑性樹脂及び[B]平均粒径が90nm以下の炭酸カルシウムを含んでいる。そのため、多層熱回復物品1を絶縁電線等の被着体に被着したときの被着体の劣化を抑制することができる。その結果、被着体に劣化等の悪影響を与えず、長寿命化、及び使用できる被着体の種類の多様化を図ることができる。
多層熱回復物品1は、被着体の劣化を抑制できるため、例えば導体及びその外周に積層されるポリビニルクロライド層を有する絶縁電線に被覆した場合、150℃、200時間の加熱条件下でポリビニルクロライド層に割れが発生しないものとすることができる。このような加熱条件でポリビニルクロライド層に割れが発生しないものにすれば、絶縁電線等の劣化をより適切に抑制でき、その結果長寿命化、及び使用できる被着体の種類の多様化をより適切に図ることができる。
接着剤層11は、上述のように押出成形により形成できる。この場合、接着剤層11を形成するためにダイスに接着剤組成物を通過させた際、接着剤組成物には高い剪断応力が作用する。そのため、高い剪断力が作用するときの接着剤組成物の流動性が低過ぎる(粘度が高過ぎる)と適切に押出成形を行うことができない。その一方で、ダイスを通過した後の接着剤組成物は、作用する剪断応力が低減する。そのため、作用する剪断力が小さいときの接着剤組成物の流動性が高過ぎる(粘度が低過ぎる)と、ダイスを通過した後に形成される接着剤層11が押し出されたときの形状を維持できずに変形し厚みにばらつきが生じる。そこで、ダイスの通過時及びダイスの通過後を想定した異なる剪断速度における剪断粘度がそれぞれ上記範囲であることで、押出形成性を適切に確保しつつ、接着剤層11に厚みのばらつきが生じることを抑制できる。
また、接着剤層11に[A]メルトフローレートが上記範囲である熱可塑性樹脂を含むことで、多層熱回復物品1を被着体に被着するときの加熱により接着剤層11が適度に流動化する。そのため、基材層10と被着体との間の接着剤層11の埋まり性が向上し、被着体に対する多層熱回復物品1の密着性が向上する。
〔ワイヤスプライス及びワイヤハーネス〕
本発明の多層熱回復物品1は、例えば導体を被覆する絶縁層がポリエチレン(PE)であるPE電線又はPEケーブル、絶縁層がポリビニルクロライド(PVC)であるPVC電線又はPVCケーブル等のワイヤの保護、絶縁、防水、防食等のために使用することができる。具体的には、多層熱回復物品1は、ワイヤスプライス及びワイヤハーネスに適用することができる。
図4は多層熱回復物品1をワイヤスプライス2に適用した例を、図5及び図6は多層熱回復物品1をワイヤハーネス3に適用した例を示している。
図4のワイヤスプライス2は、一対のワイヤ20の導体線21同士を撚って接続し、この接続部分に多層熱回復物品1を被着したものである。ワイヤ20は、PE電線若しくはPVC電線等の絶縁電線又はケーブルである。ワイヤ20としては、例えば最外層に位置する絶縁層が、ポリビニルクロライドを主成分とするものが使用される。絶縁層におけるポリビニルクロライドの含有量は、例えば50質量%以上95質量%以下である。このようなワイヤスプライス2において、多層熱回復物品1は、接続部分の保護、絶縁、防水、防食等に寄与することができる。
図5及び図6のワイヤハーネス3は、複数本のワイヤ30を多層熱回復物品1により結束し、複数本のワイヤ30の端部に多ピンコネクタ31を設けたものである。ワイヤ30は、図4に示したワイヤスプライス2のワイヤ20と同様のものである。このワイヤハーネス3において、多層熱回復物品1は、単に各ワイヤ30を結束する役割を果たすだけでなく、個々のワイヤ30を保護する等の役割を果たす。
なお、本発明のワイヤスプライスとワイヤハーネスとは、厳格に区別できない場合があり、ワイヤスプライスであって、なおかつワイヤハーネスであるという場合もあり得る。
<他の実施の形態>
本発明の多層熱回復物品は、図1〜図3に示したチューブ状に基材層10が形成された多層熱回復物品1に限らず、例えば図7に示したキャップ状に基材層10Aが形成された多層熱回復物品1Aであってもよい。この多層熱回復物品1Aは、多層熱回復物品1の一端部を加熱収縮させて一端部を閉じることで、キャップ状の基材層10Aの内側に接着剤層11Aを配置させたものである。この多層熱回復物品1Aは、例えば配線の端末処理に好適に使用することができる。
本発明の多層熱回復物品は、チューブ状及びキャップ状の形態の他に、シート状に形成することもできる。シート状に形成された多層熱回復物品は、基材層の片面に接着剤層を積層したものであり、例えば被着体に巻き付けた状態で基材層を熱収縮させることにより使用される。即ち、シート状の多層熱回復物品においては、基材層を被着体に巻き付けた状態において、基材層の内側に接着剤層が積層されたものとなる。
本発明の多層熱回復物品は、基材層と接着剤層とを個別に押出成形することで形成してもよい。この場合の多層熱回復物品は、押出成形後に膨張させた基材層の内部に接着剤層をセットし、これを被着体に被着させた上で基材層を収縮させることにより使用される。
本発明のワイヤスプライスは、ワイヤ同士の接続部分に多層熱回復物品が被着されたものであればよく、1本のワイヤを複数本のワイヤに接続したもの、複数本のワイヤ同士を接続したもの又は配線の端末処理のように複数本のワイヤの端部をまとめて接続したものであってもよく、その他の形態とすることもできる。
本発明のワイヤハーネスは、複数本のワイヤを平面状に束ねた、いわゆるフラットハーネスとして構成することもでき、その他の形態とすることもできる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1〜12及び比較例1〜7]
≪二層押出成形品の作製及び評価≫
<二層押出成形品の作製>
二層押出成形品は、多層熱回復物品とする前の非膨張・非架橋の中間製造物である。
この二層押出成形品は、接着剤組成物を材料とする接着剤層と、融点125℃のポリエチレンを材料とする基材層とを同時に押出成形することで作製した。
接着剤組成物は、[A]熱可塑性樹脂に、[B]炭酸カルシウム、[C]粘度特性改質剤を表1又は表2に示す配合割合で溶融混合して調製した。
基材層は、外径が4.6mm、内径が2.8mm及び厚みが0.9mmを目標値として形成した。接着剤層は、外径が2.8mm、内径が0.6mm及び厚みが1.1mmを目標値として形成した。
<二層押出成形品の評価(押出成形性試験)>
二層押出成形品の評価は、押出成形性試験により行った。この押出成形性試験は、適当な長さに切断した多層押出成形品の一方の端から空気を入れ、逆側の端から空気が出てくる否かを確認することで行った。
二層押出成形品は、接着剤層の厚みのばらつきが大きいと、内部が接着剤組成物で埋まって閉じてしまい、空気が通り抜けることができないことがある。そのため、押出成形性試験によって接着剤層の厚みのばらつきを評価できる。
押出成形性試験の評価基準は、表3に示す通り、逆側の端から空気が出てくることを確認できた場合を「A」、確認できなかった場合を「C」とした。
≪多層熱回復物品の作成及び評価≫
<多層熱回復物品の作製>
多層熱回復物品は、二層押出成形品に電離放射線を照射して基材層を架橋した後、さらに基材層の外径が7.5mmとなるように膨張させた後に冷却して形状を固定することで作製した。
<多層熱回復物品の評価>
多層熱回復物品の評価は、PVC電線の劣化試験及び防水性試験により行った。
(PVC電線の劣化試験)
PVC電線の劣化試験は多層熱回復物品を使用したワイヤハーネスにおいて評価した。
ワイヤハーネスは、4本のPVC電線を多層熱回復物品に通した状態で、150℃の恒温槽の床面に水平に置き、120秒加熱して基材層を収縮させることで作製した。
PVC電線としては、導体線をポリビニルクロライド層により被覆した後に照射架橋した外径1.5mmのものを使用した。ポリビニルクロライド層としては、PVCを100質量部、可塑剤としてトリメリット酸エステルを50質量部、滑剤及び安定剤をそれぞれ10質量部含有するものを使用した。
劣化試験は、作成したワイヤハーネスについて、150℃の恒温槽の床面に水平に置いて200時間加熱した後、ポリビニルクロライド層にクラックが発生しているか否かを目視により確認することで行った。
押出成形不良の多層熱回復物品(接着剤層に詰まりのあるもの(比較例1−3,5,7))については、多層熱回復物品から剥離した接着剤層を用いて2本のPVC電線の端部同士を接着して1本の電線を作製し、この電線を用いて評価した。
PVC電線の劣化試験の評価基準は、表3に示す通り、PVC電線のポリビニルクロライド層にクラックが発生しなかった場合を「A」、クラックが発生して導体線が見えた場合を「C」とした。
(防水性試験)
防水性試験は、多層熱回復物品を使用したワイヤスプライスにおいて評価した。
ワイヤスプライスは、絶縁電線1本と絶縁電線4本とを、それぞれの導体線同士を溶接し、この溶接部分に多層熱回復物品を被覆した状態で180℃の恒温槽の床面に水平に置いて90秒加熱して基材層を収縮させることで作製した。このようにして作製したワイヤスプライスでは、多層熱回復物品の一方の端から絶縁電線が1本延出し、他方の端から絶縁電線が4本延出している。
防水性試験は、ワイヤスプライスを水中に入れ、多層熱回復物品における絶縁電線1本が延出する一方の端から200kPaの空気を30秒間吹き込み、絶縁電線が4本延出する他方の端からバブルが発生するかを確認することで行った。
防水性試験の評価基準は、表3に示す通り、バブルが発生しなかった場合を「A」、バブルが発生した場合を「C」とした。
<接着剤層の評価>
本実施例においてはさらに、多層熱回復物品から基材層を剥離して得られた接着剤層(接着剤組成物)について、剪断粘度及び貯蔵弾性率の測定を行った。
(剪断粘度測定)
剪断粘度は、回転式レオメーター(「MCR302」:アントンパール株式会社製)を用いて温度150℃で測定した。剪断粘度は、剪断速度0.1s−1とした場合(剪断粘度1)、及び剪断速度100s−1とした場合(剪断粘度2)のそれぞれについて測定した。
(貯蔵弾性率測定)
貯蔵弾性率は、回転式レオメーター(「RCM302」:アントンパール株式会社製)を用いて、歪を0.001%から10%まで変化させて振動測定を行い、0.1%歪時の弾性率として測定した。
Figure 2015009510
Figure 2015009510

なお、表1及び表2における「−」は、接着剤層の配合に関しては該当成分を含有していないことを示し、防水性試験の項目においては試験を行わなかったことを示している。また、表1,2における各成分の詳細は以下の通りである。
EVA1:酢酸ビニル含量28wt%のエチレン−酢酸ビニル共重合体
EVA2:酢酸ビニル含量28wt%のエチレン−酢酸ビニル共重合体
EVA3:酢酸ビニル含量19wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体
PA:ジカルボン酸としてダイマー酸を有するポリアミド
炭酸カルシウム1:「白艶華CC」(白石工業製)
炭酸カルシウム2:「白艶華O」(白石工業製)
炭酸カルシウム3:「ACTIFORT700」(白石工業製)
炭酸カルシウム4:「白艶華U」(白石工業製)
炭酸カルシウム5:「白艶華CCR」(白石工業製)
炭酸カルシウム6:「白艶華IGV」(白石工業製)
有機化処理層状珪酸塩:層状珪酸塩(「オスモスN」(比表面積9m/g):白石工業製)に塩化ジメチルジステアリルアンモニウムで処理
タルク:「MICRO ACE SG95」(日本タルク製)
Figure 2015009510
[評価]
実施例1〜12及び比較例1〜7の二層押出成形品、多層熱回復物品及び接着剤層(接着剤組成物)について、押出成形試験、PVC電線の劣化試験、防水性試験、剪断粘度1,2及び貯蔵弾性率を評価した。その結果を、実施例1〜12については表1に、比較例1〜7について表2にそれぞれ示す。
実施例1〜12の多層熱回復物品は、接着剤層の作製に使用した接着剤組成物の押出成形性が優れており(評価A)、またPVC電線の劣化試験及び防水性試験の結果も良好(評価A)であった。
実施例1〜12の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)に含有される[B]炭酸カルシウムの平均粒径が90nm以下であり、このような範囲に平均粒径を有する[B]炭酸カルシウムを含有させることで、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性が向上し、実用に耐え得る埋まり性(防水性)及び耐劣化性が得られるものと考えられる。従って、接着剤層(接着剤組成物)に含有させる[B]炭酸カルシウムとしては、平均粒径が90nm以下がよいと考えられる。
また、実施例1〜12の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)が、[A]熱可塑性樹脂100質量部に対して2質量%以上25質量%以下の[B]炭酸カルシウムを含んでいる。このことも、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性の向上及び埋まり性(防水性)の向上に寄与しているものと考えられる。従って、接着剤層(接着剤組成物)の[B]炭酸カルシウムの含有量としては、[A]熱可塑性樹脂100質量部に対して2質量%以上25質量%以下が好ましいと考えられる。
実施例1〜12の多層熱回復物品はさらに、接着剤層(接着剤組成物)の剪断粘度が、剪断速度0.1s−1のときに300Pa・s以上、剪断速度100s−1のときに200Pa・s以下であった。このような粘度特性は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性の向上、並びに実用に耐え得る埋まり性(防水性)及び耐劣化性の向上に寄与しているものと考えられる。
比較例1の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性試験の結果が悪く(評価C)、防水性試験を行えなかった。これは、接着剤層(接着剤組成物)に[B]炭酸カルシウムを含んでいないため、剪断速度100s−1のときの剪断粘度1が小さくなり過ぎたからであると考えられる。
比較例2,3の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性試験の結果が悪く(評価C)、防水性試験を行えなかった。これは、接着剤層(接着剤組成物)に含まれる[B]炭酸カルシウムの平均粒径が120nm又は130nmと大き過ぎるため、剪断速度100s−1のときの剪断粘度1が低くなり過ぎたからであると考えられる。
比較例4の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性試験の結果が良好であったが(評価A)、防水性試験の結果が悪かった(評価C)。これは、接着剤層(接着剤組成物)の[B]炭酸カルシウムの含有量が[A]熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部と多過ぎるため、剪断速度100s−1のときの剪断粘度1が比較的高く、剪断速度0.1s−1のときの剪断粘度2が高くなり過ぎたからであると考えられる。
比較例5の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性試験の結果が悪く(評価C)、防水性試験を行えなかった。これは、接着剤層(接着剤組成物)の[B]炭酸カルシウムの含有量が[A]熱可塑性樹脂100質量部に対して1質量部と少な過ぎるため、剪断速度100s−1のときの剪断粘度1が低くなり過ぎたからであると考えられる。
比較例6の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性試験の結果が良好であったが(評価A)、PVC電線の劣化試験の結果が悪かった(評価C)。これは、接着剤層(接着剤組成物)に[B]炭酸カルシウムを含んでおらず、[C]粘度特性改質剤としての有機酸処理層状珪酸塩を含んでいるため、有機化処理層状珪酸塩により粘度特性は改質され、剪断速度1が高くなり押出性は良好となったものの、有機処理剤がPVCの劣化を促進させたため、PVC劣化試験には不合格となった。
比較例7の多層熱回復物品は、接着剤層(接着剤組成物)の押出成形性試験の結果が悪く(評価C)、防水性試験を行えなかった。これは、接着剤層(接着剤組成物)に[B]炭酸カルシウムを含んでおらず、[C]粘度特性改質剤としてのタルクを含んでいるため、剪断速度100s−1のときの剪断粘度1が低くなり過ぎたからであると考えられる。
本発明の多層熱回復物品、この多層熱回復物品を使用したワイヤスプライス及びワイヤハーネスは、絶縁電線等の被着体の劣化等の悪影響を抑制でき、その結果、長寿命化、及び使用できる被着体の多様化を図ることができる。
1,1A 多層熱回復物品
10,10A 基材層
11,11A 接着剤層
2 ワイヤスプライス
20 ワイヤ
21 導体線
3 ワイヤハーネス
30 ワイヤ
31 多ピンコネクタ

Claims (10)

  1. 基材層と、この基材層に積層される接着剤層とを備える多層熱回復物品であって、
    上記接着剤層が、[A]190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレートが15g/10分以上1,000g/10分以下の熱可塑性樹脂、及び[B]平均粒径が90nm以下の炭酸カルシウムを含み、
    上記接着剤層の150℃での剪断粘度が、剪断速度0.1s−1で300Pa・s以上であり、剪断速度100s−1で200Pa・s以下であることを特徴とする多層熱回復物品。
  2. 上記[B]炭酸カルシウムの含有量が、[A]熱可塑性樹脂100質量部に対し2質量部以上25質量部以下である請求項1に記載の多層熱回復物品。
  3. 上記接着剤層の110℃での貯蔵弾性率が、0.1MPa以下である請求項1又は請求項2に記載の多層熱回復物品。
  4. 導体及びその外周に積層されるポリビニルクロライド層を有する絶縁電線に被覆した場合、150℃、200時間の加熱条件下で、上記ポリビニルクロライド層に割れが発生しない請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多層熱回復物品。
  5. [A]熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミドのうちの少なくとも1種である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多層熱回復物品。
  6. 上記基材層が、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド及びフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多層熱回復物品。
  7. 導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、
    上記複数本のワイヤの導体同士が接続された部分に被着された請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多層熱回復物品と
    を備えるワイヤスプライス。
  8. 上記絶縁層が、ポリビニルクロライドを主成分とする請求項7に記載のワイヤスプライス。
  9. 導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、
    上記複数本のワイヤに被着された請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多層熱回復物品と
    を備えるワイヤハーネス。
  10. 上記絶縁層がポリビニルクロライドを主成分とする請求項9に記載のワイヤハーネス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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