JP2015008672A - 発酵食品とその製造方法、および新規乳酸菌 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、リパーゼ阻害活性を有し脂質吸収を抑制することができる植物性の発酵食品とその製造方法、およびリパーゼ阻害活性を有し且つ植物由来の食品原料を発酵させることができる新規乳酸菌を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る発酵食品の製造方法は、Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明に係る発酵食品の製造方法は、Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、脂質吸収を抑制することができる発酵食品とその製造方法、および当該製造方法で用いることができる新規乳酸菌に関するものである。
近年、食の欧米化や運動不足などに伴って、我国でも生活習慣病が非常に大きな問題となっている。即ち、高カロリー食や高脂肪食の恒常的な摂取などによりエネルギーの消費量に比べて摂取量が過多となっており、このようなエネルギー過多状態は肥満や脂質異常症の原因となるばかりでなく、最終的には糖尿病、脳卒中、心臓病、高血圧症、動脈硬化症の発症の増加につながっている。
ヒトは、糖質に加えて脂質からもエネルギーを摂取する。摂取された脂質は、胆管から分泌される胆汁酸により小腸においてミセル化された後、膵臓から分泌されるリパーゼによりモノアシルグリセロールと脂肪酸に分解され、吸収される。吸収された脂肪酸は再び脂質(トリグリセライド)に変換され、主に脂肪組織へ蓄えられる。よって、リパーゼの阻害は脂質の吸収量を低減するための重要なターゲットの一つであり、リパーゼ阻害薬は生活習慣病の予防薬や抑制薬となる可能性がある。
また、生活習慣病の原因の一つとしては、恒常的なエネルギー摂取量の過多を原因とする脂肪組織の慢性的な炎症があることが明らかにされてきている。よって、リパーゼ阻害薬により生活習慣病を予防したり抑制したりする場合には、リパーゼ阻害薬は恒常的に摂取できる安全なものであることが好ましい。
そこで、合成医薬品などではなく、より安全な天然物質などからリパーゼ阻害能を有するものの探索が進められている。
例えば特許文献1には、リパーゼ阻害活性を有する化合物として茶由来のポリフェノール化合物が開示されており、特許文献2には栃の実由来のサポニン類が開示されている。また、非特許文献1,2には、同じくリパーゼ阻害活性を有するポリフェノール化合物やサポニン化合物であって植物由来や微生物由来のものが種々記載されている。さらに特許文献3と非特許文献3,4には、Lactobacillus gasseri(以下、「L.gasseri」と略記する)種乳酸菌が、リパーゼ阻害活性を示すことが開示されている。
Ana Laura de la Garzaら,Planta Med,77,pp.773-785(2011)
Rahul B.Birari,Kamlesh K.Bhutani,Drug Discovery Today,Volume 12,Numbers 19,pp.879-889(2007)
松村敦,腸内細菌学雑誌,24,pp.287〜292(2010年)
東幸雄ら,第65回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2E−07p(2011年)
上述したように、L.gasseri種乳酸菌がリパーゼ阻害活性を示すことは知られている。
しかし、乳酸菌は古くから発酵食品の製造に使われてきているが、L.gasseri種乳酸菌はヒトの腸管や乳製品などから分離されることが多い動物由来の乳酸菌であるので、植物由来の食品原料を発酵して得られる食品の製造には不向きであるといえる。例えば、特許文献3には当該乳酸菌を含む食品が記載されているが、実際に例示されている食品は発酵乳や乳酸菌飲料など、動物由来の食品原料から得られる発酵食品のみである。
そこで本発明は、リパーゼ阻害活性を有し脂質吸収を抑制することができる植物性の発酵食品とその製造方法、およびリパーゼ阻害活性を有し且つ植物由来の食品原料を発酵させることができる新規乳酸菌を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、乳酸菌の中でもLactobacillus acidipiscis種菌が、それ自体リパーゼ阻害活性を有する上に、植物由来の食品原料を有効に発酵させ得ることを見出して、本発明を完成した。
本発明に係る発酵食品の製造方法は、Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る発酵食品は、Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌を含むことを特徴とする。
上記Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌としてはLactobacillus acidipiscis TK12408株(受託番号:NITE P−01627)を挙げることができ、また、上記発酵食品としては特にキムチを挙げることができる。
本発明に係る乳酸菌は、リパーゼ阻害活性を有することから、腸管における膵リパーゼの作用を阻害して脂質吸収を低減し、脂質の摂取にかかわらず血中脂質濃度の過剰な上昇を抑制することができる。また、本発明に係る乳酸菌は植物由来の食品原料に対する発酵能を有することから、植物由来原料の発酵スターターとして有用であり、植物由来原料の発酵食品の製造に用いることができる。さらに、本発明に係る乳酸菌を含む発酵食品は、上記と同様にリパーゼ阻害活性を有するので、高カロリーや高脂肪の食品とともに摂取することにより、血中脂質濃度の過度な上昇を抑制することが可能になる。よって本発明は、高カロリー食や高脂肪食による生活習慣病の発症や進行を抑制できる健康的な食品に関する技術として非常に有用である。
本発明に係る発酵食品の製造方法は、Lactobacillus acidipiscis(以下、Lactobacillusを「L.」と略記する)種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る発酵食品は、本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌の作用により植物由来の食品原料の少なくとも一部が嫌気的または微好気的に分解されているものであれば特に制限されない。例えば、本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌により米糠を発酵させて得た糠床も本発明に係る発酵食品の一つであり、かかる米糠を用いたものであれば、植物由来の食品原料のみならず、肉類や魚類などの動物由来の食品原料を漬けた糠漬も本発明に係る発酵食品に含まれるものとする。
本発明に係る発酵食品としては、例えば、キムチ、浅漬、沢庵漬、ザーサイ、スヮンツァイ、ザウアークラウト、奈良漬、野沢菜漬、すぐき、いぶりがっこなど、発酵を伴う漬物類;野菜の糠漬、へしこ、糠イワシ、糠サンマ、糠ホッケ、河豚の卵巣の糠漬などの糠漬類;米味噌、麦味噌、豆味噌などの味噌類;醤油、甜麺醤、コチュジャン、豆板醤などの醤油類;日本酒、ビール、ワイン、シードル、乳酒などの醸造酒類などを挙げることができる。
本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌は、16S rRNA遺伝子の塩基配列情報から作成される系統樹において、L.salivarius subsp.salicinius、L.aviarius、L.ruminis、L.agilis、L.murinus、L.animalisおよびL.maliと単一系統群に属するグラム陽性桿状乳酸菌である。その他、L.acidipiscisは、10%NaClを含む培地でも生育する。この点で他の一般的な乳酸菌と異なり、また、漬物などの製造に適しているといえる。また、L.faciminisも10%NaClの培地で生育可能であるが、L.acidipiscisの多くはD−リボースから酸を生成する点でL.faciminisと異なる。
本発明に係る主なL.acidipiscis種乳酸菌の形態的特徴や生化学的性状などは、以下のとおりである(International Journal of Systematic and Evalutionary Microbiology,50,pp.1479-1485(2000)を参照)。なお、表1中、「+(w)」は弱い陽性を示す。
但し、L.acidipiscis種乳酸菌の中にも上記とは一部で性質が異なるものがあったり、また、培地組成などの培養条件が異なると、不生育条件とされている条件でも生育したり逆に生育条件とされている条件で生育しないこともあり得る。
L.acidipiscis種乳酸菌としては、例えば、TK12408株やJCM1131T株(基準株)を挙げることができる。
本発明に係る新規乳酸菌であるL.acidipiscis TK12408株は、下記の通り寄託機関に寄託されている。
(i) 寄託機関の名称およびあて名
名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
あて名: 日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8
(ii) 受託日: 2013年5月17日
(iii) 受託番号: NITE P−01627
(i) 寄託機関の名称およびあて名
名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
あて名: 日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8
(ii) 受託日: 2013年5月17日
(iii) 受託番号: NITE P−01627
本発明に係る発酵食品の原料である植物由来の食品原料は、植物由来のものであって且つ発酵食品の原料となり得るものであれば特に制限されない。例えば、キュウリ、ゴーヤ、ズッキーニ、冬瓜などのウリ科果菜類;トウガラシ、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科果菜類;ニンニク、ネギ、ラッキョウなどのユリ科茎菜類;空心菜などのヒルガオ科茎菜類;ショウガなどのショウガ科茎菜類;タケノコなどのイネ科茎菜類;カブ、ザーサイ、大根などのアブラナ科根菜類;ニンジンなどのセリ科根菜類;ミョウガなどのショウガ科花菜類;青菜、キャベツ、小松菜、山東菜、ターサイ、高菜、チンゲンサイ、野沢菜、白菜、ホウレンソウ、水菜、壬生菜などのアブラナ科葉菜類;ニラなどのユリ科葉菜類;レタスなどのキク科葉菜類;米、豆、小麦、大麦などの穀物類;ブドウなどの果実類;米糠などを挙げることができる。
また、本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌で米糠を発酵させて糠床とした場合には、上記の植物由来の食品原料に加え、動物由来の食品原料を糠床に漬けて糠漬を製造してもよいものとする。かかる動物由来の食品としては、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉などの肉類;イワシ、サンマ、ホッケ、アジ、河豚の卵巣などの魚肉類;イカ、タコ、貝などの軟体動物類を挙げることができる。
本発明方法は、L.acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する工程を含むことを特徴とする。より具体的には、本発明方法では、以下の工程を実施してもよいものとする。
(1) 食品原料の細断工程
本発明方法においては、食品原料を適度な大きさに細断してもよい。例えば、食品原料を水洗いし、皮や芯など食品に適さない部分があればこれを除去し、適度な大きさに細断すればよい。但し、本工程の実施は任意であり、食品原料が摂食に適する大きさを元来有するものであれば、細断する必要は無い。また、本工程の実施順序も特に問われず、例えば最初に食品原料を細断してもよいし、或いは細断せずに発酵を進めた後に細断してもよい。
本発明方法においては、食品原料を適度な大きさに細断してもよい。例えば、食品原料を水洗いし、皮や芯など食品に適さない部分があればこれを除去し、適度な大きさに細断すればよい。但し、本工程の実施は任意であり、食品原料が摂食に適する大きさを元来有するものであれば、細断する必要は無い。また、本工程の実施順序も特に問われず、例えば最初に食品原料を細断してもよいし、或いは細断せずに発酵を進めた後に細断してもよい。
(2) 殺菌工程
食品原料に変敗菌などが付着していると製品品質を貶める原因にもなるので、食品原料は殺菌してもよい。但し、本発明乳酸菌が優勢となる条件で発酵を行えば、他の菌の生育は相対的に抑制されるため、本工程の実施は任意であり、また、食品原料が変性するような程度まで完全に殺菌する必要もない場合があり得る。さらに、本工程は発酵工程の前に実施することが好ましいが、上記の細断工程の前に実施しても後に実施してもよい。
食品原料に変敗菌などが付着していると製品品質を貶める原因にもなるので、食品原料は殺菌してもよい。但し、本発明乳酸菌が優勢となる条件で発酵を行えば、他の菌の生育は相対的に抑制されるため、本工程の実施は任意であり、また、食品原料が変性するような程度まで完全に殺菌する必要もない場合があり得る。さらに、本工程は発酵工程の前に実施することが好ましいが、上記の細断工程の前に実施しても後に実施してもよい。
殺菌手段は特に限定されず、例えば、次亜塩素酸などの殺菌剤を用いたり、加熱したりすればよい。
(3) 下漬工程
食品原料は、発酵工程の前に下漬してもよい。当該工程は任意であるが、下漬処理により食品原料の細胞が脱水されて組織が柔軟になり、発酵が進行し易くなって発酵時間を短縮できる可能性がある。また、調味液を使用する場合、調味液の成分が浸透し易くなるという効果もある。
食品原料は、発酵工程の前に下漬してもよい。当該工程は任意であるが、下漬処理により食品原料の細胞が脱水されて組織が柔軟になり、発酵が進行し易くなって発酵時間を短縮できる可能性がある。また、調味液を使用する場合、調味液の成分が浸透し易くなるという効果もある。
下漬は、食品原料に食塩をまぶしたり食塩水に浸漬すればよい。その際、荷重は負荷しても負荷しなくてもよい。下漬の時間は適宜調整すればよいが、通常、30分間以上、72時間以下程度とすればよい。
下漬を行った場合には、過剰な塩分のために本発明乳酸菌の生育が阻害される可能性があり得る。そこで、下漬後には使用した食塩水から食品原料を分離したり、付着した塩分を水洗いするなどすることが好ましい。
(4) 発酵工程
本工程では、L.acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する。より具体的には、植物由来の食品原料にL.acidipiscis種乳酸菌を添加した上で、当該乳酸菌の生育に適した条件で維持すればよい。
本工程では、L.acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する。より具体的には、植物由来の食品原料にL.acidipiscis種乳酸菌を添加した上で、当該乳酸菌の生育に適した条件で維持すればよい。
L.acidipiscis種乳酸菌の添加量は、食品原料の種類などに応じて発酵が適切に進む程度に適宜調整すればよいが、例えば、発酵時の混合物全体に対する濃度で103CFU/g以上、106CFU/g以下程度とすることができる。
本工程は、L.acidipiscis種乳酸菌を使用すれば、風味付けなどを目的とする調味剤の存在下で行ってもよい。調味剤は本工程後に添加してもよいが、食品原料への風味の浸透を十分なものとするために、L.acidipiscis種乳酸菌と共に食品原料へ添加して発酵を行うことが好ましい。
発酵の具体的な条件は、使用するL.acidipiscis種乳酸菌などに応じて適宜設定すればよい。例えば、乳酸菌は一般的に嫌気性であるか微好気性であるため、空気部分を窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性気体で置換した密閉容器内で発酵を行ったり、或いは、食品原料を敷き詰めた上で荷重を負荷するなどして密な状態で発酵を行う。
発酵温度は、例えば10℃以上、40℃以下程度とすることができる。なお、本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌の中には、TK12408株のように、培養条件によっては15℃という比較的低温度でも生育可能なものがある。このような菌を用いる場合には、発酵時間はかかるが、他の菌の生育を抑制しつつ発酵を進めるために、発酵温度を10℃以上、20℃以下程度に設定することが可能になる。
発酵時間は、例えば、1日以上、20日以下程度とすることができる。
具体的な発酵条件は、予備実験などにより決定したり、或いは、発酵が適度に進行し、美味な発酵食品が得られるよう決定すればよい。また、流通に要する時間や流通時の温度などを考慮して、本発明乳酸菌を添加してから未発酵の状態または発酵が十分進行しない段階で出荷し、流通段階で発酵が進行したり熟成するよう調整してもよい。
さらに、発酵工程後、エタノールなど殺菌剤や菌の生育を抑制する薬剤、または加熱などにより、殺菌したり菌の生育を抑制する処理を行う態様も本発明の範囲に含まれるものとする。なお、本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌の生菌がリパーゼ阻害活性を有することは本発明者らによる実験的知見により証明されているのに対して、かかる活性が得られるメカニズムは解明されていないが、生菌自体がリパーゼ阻害活性を示す可能性のほか、例えば菌体外に分泌された物質によりリパーゼの作用が阻害されているなど、殺菌後などでも本発明に係る発酵食品のリパーゼ阻害活性が維持されている可能性がある。
本発明に係る発酵食品は、L.acidipiscis種乳酸菌を含むことを特徴とする。
本発明に係る発酵食品に含まれるL.acidipiscis種乳酸菌は、生菌でも、或いは生育が抑制された状態や殺菌された状態でもよいものとする。上記のとおり、生菌の状態におけるL.acidipiscis種乳酸菌のリパーゼ阻害活性は実証されているが、生育抑制状態や殺菌後でも当該活性が維持されている可能性がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1:in vitroリパーゼ阻害活性試験
東海漬物株式会社漬物機能研究所で凍結乾燥保存されていたL.acidipiscis TK11103株とTK12408株(受託番号:NITE P−01627)について、特許文献1の実施例を参照し、in vitroリパーゼ阻害活性試験を行った。また、比較のために、キムチ試作品から単離されたL.plantarum TK61401株についても、同様に試験した。具体的には、各乳酸菌を解凍し、MRS液体培地(Difco社製)と混合して、300mg/mL、1000mg/mL、3000mg/mLおよび10000mg/mLの菌液を調製した。各菌液(100μL)、基質液として8.9mg/mL(0.5質量%)トリオレイン/アラビアゴム水溶液(100μL)、およびブタ膵臓リパーゼ(200U/mL,50μL)を混合した後、37℃で30分間反応させた。反応後、クロロホルム:n−ヘプタン:メタノール=49:49:2(容量比)の混合溶液(3mL)を添加し、遠心分離し、水層を除去した。得られた有機層に銅試薬(0.121g/mL Cu(NO3)2,100mmolトリエタノールアミン,60mmol NaOH,0.33g/mL NaCl)1mLを添加混合し、遠心分離した。上層である有機層(0.5mL)に発色試薬(0.1%バソクプロイン,0.05%BHA/クロロホルム)0.5mLを添加し、492nmの波長光の吸光度を測定した。別途、オレイン酸で作成した検量線から、リパーゼの作用により遊離した脂肪酸(オレイン酸)の濃度を求めた。得られた脂肪酸濃度より、下記式に従ってリパーゼ阻害活性を求めた。
東海漬物株式会社漬物機能研究所で凍結乾燥保存されていたL.acidipiscis TK11103株とTK12408株(受託番号:NITE P−01627)について、特許文献1の実施例を参照し、in vitroリパーゼ阻害活性試験を行った。また、比較のために、キムチ試作品から単離されたL.plantarum TK61401株についても、同様に試験した。具体的には、各乳酸菌を解凍し、MRS液体培地(Difco社製)と混合して、300mg/mL、1000mg/mL、3000mg/mLおよび10000mg/mLの菌液を調製した。各菌液(100μL)、基質液として8.9mg/mL(0.5質量%)トリオレイン/アラビアゴム水溶液(100μL)、およびブタ膵臓リパーゼ(200U/mL,50μL)を混合した後、37℃で30分間反応させた。反応後、クロロホルム:n−ヘプタン:メタノール=49:49:2(容量比)の混合溶液(3mL)を添加し、遠心分離し、水層を除去した。得られた有機層に銅試薬(0.121g/mL Cu(NO3)2,100mmolトリエタノールアミン,60mmol NaOH,0.33g/mL NaCl)1mLを添加混合し、遠心分離した。上層である有機層(0.5mL)に発色試薬(0.1%バソクプロイン,0.05%BHA/クロロホルム)0.5mLを添加し、492nmの波長光の吸光度を測定した。別途、オレイン酸で作成した検量線から、リパーゼの作用により遊離した脂肪酸(オレイン酸)の濃度を求めた。得られた脂肪酸濃度より、下記式に従ってリパーゼ阻害活性を求めた。
リパーゼ阻害活性(%)=[1−{(T−B)/(C−B)}]×100
式中、T:リパーゼ添加・被検試料添加区の遊離脂肪酸濃度
C:リパーゼ添加・被検試料無添加区の遊離脂肪酸濃度
B:リパーゼ無添加・被検試料無添加区の遊離脂肪酸濃度
得られたリパーゼ阻害活性より、各乳酸菌のリパーゼに対する50%阻害濃度(IC50)を求めた。結果を表2に示す。
式中、T:リパーゼ添加・被検試料添加区の遊離脂肪酸濃度
C:リパーゼ添加・被検試料無添加区の遊離脂肪酸濃度
B:リパーゼ無添加・被検試料無添加区の遊離脂肪酸濃度
得られたリパーゼ阻害活性より、各乳酸菌のリパーゼに対する50%阻害濃度(IC50)を求めた。結果を表2に示す。
表2に示す結果のとおり、L.acidipiscis種乳酸菌は、良好なリパーゼ阻害活性を有することが明らかとなった。
実施例2:in vivo血中脂質濃度試験
9週齢の雄性SDラット30匹を任意に10匹ずつ、コントロール群、本発明乳酸菌投与群、陽性対照群の3群に分けた。コントロール群には精製大豆油(大塚製薬社製,製品名「イントラリポス」)を7mL/kg体重の割合で強制経口投与した。本発明乳酸菌投与群には、L.acidipiscis TK12408株を同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、TK12408株を1g/kg体重の割合で強制経口投与した。陽性対照群には、合成膵リパーゼ阻害薬であるオーリスタットを同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、オーリスタットを5mg/kg体重の割合で強制経口投与した。投与から6時間後まで90分間毎に尾部静脈から採血し、トリグリセライド E−テストワコー(和光純薬工業社製)により血漿トリグリセライド濃度を測定した。血漿トリグリセライド濃度の経時的変化を図1に、同グラフのAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を図2に示す。なお、図1,2中の「*」はDunnet法による多重比較検定においてp<0.05で有意差があることを示し、「**」はp<0.01で有意差があることを示す。
9週齢の雄性SDラット30匹を任意に10匹ずつ、コントロール群、本発明乳酸菌投与群、陽性対照群の3群に分けた。コントロール群には精製大豆油(大塚製薬社製,製品名「イントラリポス」)を7mL/kg体重の割合で強制経口投与した。本発明乳酸菌投与群には、L.acidipiscis TK12408株を同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、TK12408株を1g/kg体重の割合で強制経口投与した。陽性対照群には、合成膵リパーゼ阻害薬であるオーリスタットを同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、オーリスタットを5mg/kg体重の割合で強制経口投与した。投与から6時間後まで90分間毎に尾部静脈から採血し、トリグリセライド E−テストワコー(和光純薬工業社製)により血漿トリグリセライド濃度を測定した。血漿トリグリセライド濃度の経時的変化を図1に、同グラフのAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を図2に示す。なお、図1,2中の「*」はDunnet法による多重比較検定においてp<0.05で有意差があることを示し、「**」はp<0.01で有意差があることを示す。
図1,2のとおり、本発明に係る乳酸菌は、生体中においても、合成膵リパーゼ阻害薬であるオーリスタットと同程度の有意なリパーゼ阻害活性を示し、血中脂質を低減できることが実験的に証明された。
実施例3:本発明乳酸菌のリパーゼ阻害活性の濃度依存性試験
11週齢の雄性SDラット50匹を任意に10匹ずつ5群に分けた。コントロール群には精製大豆油(大塚製薬社製,製品名「イントラリポス」)を7mL/kg体重の割合で強制経口投与した。本発明乳酸菌投与群には、L.acidipiscis TK12408株を同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、TK12408株を0.1g/kg体重、0.5g/kg体重または1.0g/kg体重の割合で強制経口投与した。陽性対照群には、合成膵リパーゼ阻害薬であるオーリスタットを同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、オーリスタットを5mg/kg体重の割合で強制経口投与した。投与から6時間後まで90分間毎に尾部静脈から採血し、トリグリセライド E−テストワコー(和光純薬工業社製)により血漿トリグリセライド濃度を測定した。血漿トリグリセライド濃度の経時的変化を図3に、同グラフのAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を図4に示す。なお、図3,4中の「*」はDunnet法による多重比較検定においてp<0.05で有意差があることを示し、「**」はp<0.01で有意差があることを示す。
11週齢の雄性SDラット50匹を任意に10匹ずつ5群に分けた。コントロール群には精製大豆油(大塚製薬社製,製品名「イントラリポス」)を7mL/kg体重の割合で強制経口投与した。本発明乳酸菌投与群には、L.acidipiscis TK12408株を同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、TK12408株を0.1g/kg体重、0.5g/kg体重または1.0g/kg体重の割合で強制経口投与した。陽性対照群には、合成膵リパーゼ阻害薬であるオーリスタットを同精製大豆油に懸濁し、精製大豆油を7mL/kg体重の割合で、オーリスタットを5mg/kg体重の割合で強制経口投与した。投与から6時間後まで90分間毎に尾部静脈から採血し、トリグリセライド E−テストワコー(和光純薬工業社製)により血漿トリグリセライド濃度を測定した。血漿トリグリセライド濃度の経時的変化を図3に、同グラフのAUC(血漿中濃度−時間曲線下面積)を図4に示す。なお、図3,4中の「*」はDunnet法による多重比較検定においてp<0.05で有意差があることを示し、「**」はp<0.01で有意差があることを示す。
図3,4のとおり、本発明に係る乳酸菌は、1.0g/kg体重の投与量で、合成膵リパーゼ阻害薬であるオーリスタットと同程度のリパーゼ阻害活性を示し、血中脂質を低減できることが実証された。
実施例4:発酵スターター能試験
各乳酸菌の、漬物(キムチ)製造における発酵スターターとしての能力を試験した。
各乳酸菌の、漬物(キムチ)製造における発酵スターターとしての能力を試験した。
4分の1にカットした白菜に5w/w%の食塩をまぶし、白菜の同重量の重石を載せ、4℃で一晩漬け込んだ。次いで、水洗いしてから水切りした。別途、全鎮植ら著「朝鮮料理全集 3 キムチと保存食」柴田書店発行を参照し、表3の組成でヤンニョム(朝鮮料理における合わせ調味料)を調製した。
また、L.gasseri JCM1131T株(基準株)、L.acidipiscis NBRC102163T株(基準株)、またはL.acidipiscis TK12408株を10mLのMRS液体培地にて30℃で24時間培養した後、遠心分離により上清を除去し、滅菌水を10mL添加することにより、108CFU/mLの菌液を調製した。上記ヤンニョム45g当たり0.195mLの割合で菌液を添加し、混合した後、常温で1時間静置した。
上記浅漬白菜(150g)に各乳酸菌を含むヤンニョム(45g)を添加し、45gずつに分けた。その内の一つは微細粉砕した後、搾汁液のpHを測定し、また、生菌数を計数した。残りの二つはそれぞれ小容器に入れて、気相を窒素80%−二酸化炭素20%の混合ガスで置換し、密閉した。15℃で保存し、それぞれ6日後と12日後に開封し、上記と同様に搾汁液のpHを測定した。6日後では、生菌数も計数した。また、比較のために、乳酸菌を添加しない場合についても同様に測定を行った。pHの変化を表4と図5に、生菌数の変化を表4に示す。
表4と図5に示された結果のとおり、乳酸菌を添加していない場合は当然として、L.gasseriの基準株を添加した場合もpHは変化せず、発酵は進行していなかった。一方、本発明に係るL.acidipiscis種乳酸菌を添加した場合には、基準株およびTK12408株のいずれを添加した場合も15℃、12日間の保存でpHが低下し、発酵が進行した。以上の結果から、本発明に係るL.acidipiscis乳酸菌は、植物由来の食品原料の発酵スターターとして有用であることが明らかとなった。
Claims (7)
- Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌を用いて植物由来の食品原料を発酵する工程を含むことを特徴とする発酵食品の製造方法。
- Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌として、Lactobacillus acidipiscis TK12408株(受託番号:NITE P−01627)を用いる請求項1に記載の発酵食品の製造方法。
- キムチを製造するためのものである請求項1または2に記載の発酵食品の製造方法。
- Lactobacillus acidipiscis種乳酸菌を含むことを特徴とする発酵食品。
- Lactobacillus acidipiscis TK12408株(受託番号:NITE P−01627)を含む請求項4に記載の発酵食品。
- キムチである請求項4または5に記載の発酵食品。
- Lactobacillus acidipiscis TK12408株(受託番号:NITE P−01627)。
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JP2018153182A (ja) * | 2017-03-20 | 2018-10-04 | 大江生醫股▲ふん▼有限公司TCI Co.Ltd | ラクトバチルスプランタルムtci378、およびそれを用いた脂肪の減少および胃腸機能の改善における使用 |
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2013
- 2013-06-28 JP JP2013136267A patent/JP2015008672A/ja active Pending
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