JP2014534328A - 不飽和脂肪酸を富化したパーム油 - Google Patents

不飽和脂肪酸を富化したパーム油 Download PDF

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Abstract

【課題】パーム油由来の、1価不飽和脂肪酸を少なくとも50%含む食用油を製造するための方法を開示する。【解決手段】脂肪酸は、脂肪分解等によりパーム油グリセリドから放出されたものである。遊離脂肪酸(FFA)を分離して、不飽和パーム油脂肪酸で富化された画分を得る。この画分をグリセロールとの縮合反応に付すことにより、主としてトリグリセリド(トリアシルグリセロール)を含む油を生成する。縮合反応は酵素によって触媒される。【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、不飽和脂肪酸を富化したパーム油代替物を製造するための方法およびこの方法により製造されるパーム油代替物に関する。
発明の背景
パーム油は熱帯地方の広い地域で豊富に採取される。熱帯諸国の住民にとってパーム油は加熱調理やフライ調理(frying)に用いられる身近な存在である。ところが問題なことに、パーム油には飽和脂肪、特にパルミチン酸が多く含まれている。パルミチン酸はコレステロール値に悪影響を及ぼすと言われている飽和脂肪の1種である。その上、世界保健機関(World Health Organization)によると、パーム油に含まれるパルミチン酸は心疾患にも関与している。米国糖尿病学会(American Diabetes Association)は飽和脂肪の摂取量を減らすことを推奨しており、これにはパーム油も含まれている。ところが熱帯諸国の多くは、飽和脂肪の含有量がより少なく、したがってパーム油よりも不飽和油を多く含む油糧種子を生産することに消極的である。アブラヤシ(palm oil tree)は他のほとんどの食用油糧作物(food oil crop)と比較してヘクタール当たりの油の生産量が高いので、パーム油の生産は他の油糧種子よりも土地面積を効率的に利用して必要な熱量を供給することができるのである。不飽和油は、輸送中に、熱、輸送容器に含まれる金属および水といった酸化ストレスに曝される可能性がある。残念なことに、不飽和油は飽和脂肪よりも酸化を受けやすいため、輸送中の酸化により不飽和油の品質が低下してしまう。そして今度はこの酸化が原因となって変敗が進行、異臭が発生するなどし、極端な場合は油が消費に適さないものとなってしまう。これらの理由から、熱帯地方の食事は体に良い不飽和油が不足し、どちらかと言うと望ましくない飽和脂肪が供給過多になっている場合が多い。
この問題に対処するために、本発明者らは、パーム油自体を不飽和脂肪酸の供給源として使用する新規な方法を開発した。パーム油をその構成要素である脂肪酸に分解する。ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸等の飽和脂肪酸を取り除いた後、油を組み立て直す。ヤシのみを原料とする油が得られ、この油はパーム油に由来する所望の不飽和脂肪酸が富化されている。この油はフライ調理用としても食品添加用としても適している。
フライ調理は食品の調理に世界中で広く用いられている。食品をフライ調理することによって、食品の味、色調および日持ちが改善される。食品のフライ調理に使用される油脂は、熱輸送媒体として作用すると同時に、食品に吸収されることによって風味および食感を向上させる。フライ油は食品の外面と密接に接触するので、食品の質の変化さえも促進する。
フライ油の最も重要な特徴の1つは、フライ調理に必要とされる高温下で油が機能できることにある。他の重要な要素としては、泡立ち、褐変、発煙およびガム質生成の起こりにくさならびに遊離脂肪酸の生成しにくさが挙げられる。フライ調理は通常160〜190℃で行われる。
食品産業においては、油の酸化安定性を改善するための1つの手法として水素添加(硬化としても知られる)を行ってきた。水素添加を行うと、不飽和結合の一部または全部が化学的に還元されて飽和結合となり、油の一部または全部が飽和脂肪に変換される。ところが、これを行うことによって特定の不利益が生じる。飽和脂肪酸の融点は対応する元の不飽和脂肪酸の融点よりも高く、かつ対応する元の多価不飽和脂肪酸の融点よりも実質的に高い。ほとんどの硬化脂肪の融点は口内温度よりも高く、食品と調和しないロウのような食感が生じるため、食品のフライ調理には適していない。代替策として部分的な水素添加を行うと、融点はそこまで上昇しないものの、トランス不飽和脂肪酸が生成してしまう。トランス脂肪酸は健康を損なうという理由から表示義務が課せられていることは広く認識されている。さらに、トランス脂肪を含む食品や、表示に「水素添加」という単語を含む食品の購入を嫌がる消費者が増えている。
飽和脂肪酸含有量がより少なく、オレイン酸が富化された食用油が長年にわたって渇望されており、その解決策が、油糧種子の生殖質(germ plasm)の遺伝子組換えであり、高オレイン酸油を製造するために油糧種子を遺伝子組換えによって形質転換することに膨大な労力が費やされてきた。高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸大豆油に加えて、高オレイン酸パーム油さえも作出されてきたが、遺伝子組換えされた供給源に由来する油を使用することを嫌悪する地域もある。
水素添加および遺伝子組換えの代替策として、食品産業においては、油脂のトリアシルグリセロールの脂肪酸成分を置き換えることによって油脂の化学構造を変化させる手法が開発された。この方法は、触媒を用いてエステルの交換(ester-exchange)すなわちエステル交換(interesterification)反応を実施することによりいわゆる「構造脂質」を作り出すものである。構造脂質は、分析上は同一である油を単にブレンドしたものとは区別することができ、通常、構造脂質の物理特性は、同じ油の単純なブレンド物の物理特性とは異なっている。
工業規模の反応器で構造脂質を生成する場合は、水酸化ナトリウムやナトリウムメトキシド等の化学触媒が使用されてきたという経緯がある。しかし、これらの触媒の使用には油の酸化および副生成物(石鹸および遊離脂肪酸)の生成が付随し、生成物である油の収量が大幅に低下する上に、副生成物を除去するためにさらなる手間と費用が発生する。化学触媒の性質は制御することができないので、油脂のグリセロール主鎖全体にわたる脂肪酸の分布はランダムになってしまい、生成物の特性が損なわれる可能性もある。このような欠点を克服するために酵素触媒が採用されている。酵素は通常、化学触媒よりも低温で作用するので、油脂を処理する場合は酸化のおそれが少なくなるため有利である。酵素触媒が選択性を示す性質を有することにより、酵素および運転条件を適切に選択することによって副生成物による損失を減らすことができ、また、脂肪酸がランダムでない所望の分布を有する油脂を得ることができる。
グリセロールおよび遊離脂肪酸を縮合させてトリアシルグリセロール(TAG)を形成する際には、反応中間体であるジアシルグリセロール(DAG)およびモノアシルグリセロール(MAG)が生成する。これらの反応中間体(DAGおよびMAG)は「部分グリセリド」と呼ばれる。実際に使用する際は、このトリアシルグリセロール油に含まれるモノアシルグリセロールの量が約1重量パーセントを超えると、精製工程である物理精製または脱臭において、および特に産業用フライヤーを用いたフライ調理において問題が発生しやすくなる可能性がある。モノアシルグリセロールが存在することで油の印火点や発煙点が低下し、それによって発煙が起こる可能性もある。これに加えて、多くの場合、トリアシルグリセロール油中に含まれる副生成物であるジアシルグリセロールには遊離ヒドロキシル基が存在し、油の安定性を失わせるため望ましくない。
遊離脂肪酸は酸化しやすいだけでなく、フライ温度に加熱した場合は発煙にも関与するため、制限すべきである。
酸およびアルコールからエステルを生成する縮合反応は、幅広い種類の触媒と、熱、酸、アルカリ等の触媒作用とによって加速することができる。このような触媒および触媒作用を利用すると望ましくない副生成物の生成が付随する場合があり、それによって、費用がかかる上に場合によっては煩雑な精製工程が必要となる。リパーゼ(トリアシルグリセロールアシルヒドロラーゼ EC 3.1.1.3)等の生物学的触媒を使用すれば、温和な条件下で処理を行い、非生物学的触媒よりも副生成物を減らすことが可能になる。
フライ油は使用中に酸化分解を受けやすい。酸化分解による生成物は油の使用可能な期間を短くしてしまう。パーム油は、熱および被フライ調理物が放出する水分に曝された場合の耐酸化性に優れる好ましいフライ油である。パーム油は、レストラン、ファストフード店、大規模な半揚げ調理(par-frying)、スナック食品の調理およびインスタント麺の製造におけるフライ油として世界中で使用されている。パーム油は濾すのが容易で、トコール類(トコフェロールおよびトコトリエノール)、ステロール類、脂肪族トリテルペン類(スクワレン)、ユビキノンおよびカロチノイド等が非常に複雑に組み合わさった酸化防止剤群を含んでいる。パーム油に含まれる幅広い種類の酸化防止剤が耐酸化性を高めている。
パーム油は主としてパルミチン酸(分子鎖構造内に16個の炭素を有する飽和脂肪酸、約44%)およびオレイン酸(分子鎖構造内に18個の炭素を有する1価不飽和脂肪酸、約39%)を含んでいる。オレイン酸の不飽和部位は1ヶ所であり、したがって、非熱帯産の油に多く含まれる多価不飽和脂肪酸よりも熱安定性が高い。しかし、パーム油は低温安定性に劣ることが良く知られている。つまり、飽和脂肪酸含有率が高いため、冷却または冷蔵するとパーム油は結晶化および硬化により固まってしまう。こうなるとパーム油は一層使い難いものになってしまう。さらに、パーム油は結晶化に要する時間が長いため、パーム油からマーガリンを製造するのは難しい。
食用油を得るための出発物質としての粗パーム油は、国立油糧種子製品研究所(National Institute of Oilseed Products)が定めた取引規約の下で取引されており、ここには、粗パーム油の遊離脂肪酸含有率は5%以下であり、水分および不純物の含有率は1%以下でなくてはならないと規定されている。これに加えて、粗パーム油は、通常、数パーセント程度のジアシルグリセロール(DAG)および遊離脂肪酸(FFA)を含んでいる(表A)。
Figure 2014534328
さらなる処理工程を経ることなく、不飽和脂肪酸含有率が70重量%を超え、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸の含有率が平均的な流通粗パーム油に類似している、酵素を用いて縮合すなわちエステル交換されたパーム油を製造すると有利であろう。
食品業界においては、酸化安定性に優れているだけでなく、水素添加油も遺伝子組換え植物由来の油も含まないフライ油が長年にわたって渇望されている。本発明は、安定なフライ油と、パーム油由来の脂肪酸からこれらを製造する手法とを提供する。
発明の概要
本開示の非限定的な態様は、パーム油の代替物である1価不飽和脂肪酸で富化したトリアシルグリセロール生成物を製造するための方法であって、飽和および1価不飽和脂肪酸を含むパーム油遊離脂肪酸供給原料を提供する工程と、この供給原料を、遊離1価不飽和脂肪酸富化画分と飽和脂肪酸富化画分とを得るための分離に供する工程と、パーム油代替物である1価不飽和脂肪酸で富化されたトリアシルグリセロール生成物を含む縮合トリアシルグリセロール油を生成するために、グリセロールと遊離1価不飽和脂肪酸富化画分とをエステル化する工程とを含み、このエステル化する工程が、縮合反応で生成した水が反応混合物から除去されることと、少なくとも70℃の温度とを含む条件下において、グリセロールと遊離1価不飽和脂肪酸富化画分とを1種以上の酵素と接触させることにより実施される、方法を対象とする。本方法の特定の非限定的な態様においては、エステル化工程は、水分含有率を700ppm以下、650ppm、600ppm以下、550ppm以下または500ppm以下とすることを含む条件下で実施される。さらなる他の非限定的な態様においては、エステル化工程は、圧力を40kPa未満、30kPa未満、20kPa未満、15kPa未満、10kPa未満、5kPa未満、4kPa未満、3kPa未満、2kPa未満または1kPa未満とすることを含む条件下で実施される。本方法のさらなる非限定的な態様においては、エステル化工程は、温度を少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも81℃または少なくとも82℃とすることを含む条件下で実施される。本方法のさらなる他の非限定的な態様においては、遊離脂肪酸供給原料は、パーム油、パーム核油、粗パーム油、精製パーム油、物理精製パーム油、脱臭パーム油、分別パーム油(palm fraction)、パームオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の油に由来する。本方法の代替的な非限定的な態様においては、脂肪酸供給原料は、パーム搾油粕(palm sludge oil)、パーム油工場廃液(palm mill effluent)、パーム油脂肪酸留出物およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の油を含む。本方法のさらなる他の非限定的な態様においては、遊離脂肪酸供給原料は、1種以上のアシルグリセロールの脂肪分解に由来する。他の非限定的な態様においては、遊離脂肪酸供給原料は、1種以上のトリアシルグリセロールの酵素的加水分解に由来する。代替的な非限定的な態様においては、パーム油遊離脂肪酸供給原料の分離は、蒸留、晶析、遠心分離、尿素沈殿(urea precipitation)、膜濾過;分子ふるい、ダイレクトエステル交換(directed interesterification)およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される方法を用いて行われる。さらなる非限定的な態様においては、遊離1価不飽和脂肪酸富化画分は、1価不飽和脂肪酸を少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%または少なくとも90重量%含む。本方法のさらなる他の非限定的な態様においては、工程c)におけるエステル化は、固定化リパーゼ、好ましくは、国際特許出願第2008065060号の配列番号1に示されている配列との配列同一性が少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であるリパーゼによって触媒される。本方法のさらなる他の非限定的な態様においては、飽和脂肪画分富化画分は、飽和脂肪酸を少なくとも65重量%含み、パルミチン酸を少なくとも60重量%含む。
本方法のさらなる非限定的な態様においては、エステル化工程後に得られるパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、モノアシルグリセロール含有率が3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下である。本方法のさらなる非限定的な態様においては、エステル化する工程後に得られるパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、ジアシルグリセロール含有率が8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下または1重量%以下である。本方法のさらなる特定の非限定的な態様においては、エステル化工程後に得られるパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、遊離脂肪酸含有率が3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下である。本方法のさらなる非限定的な態様においては、パーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、トリアシルグリセロールを少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%または少なくとも98重量%含む。本方法の特定の非限定的な態様においては、パーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、不飽和脂肪酸を少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%または少なくとも95重量%含む。本方法のさらなる非限定的な態様においては、パーム油代替トリアシルグリセロール生成物は脱臭に付される。本方法のさらなる非限定的な態様においては、1価不飽和脂肪酸に富むパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、トリアシルグリセロールを90〜98重量%と、ジアシルグリセロールを4〜8重量%と、モノアシルグリセロールを最大0.2重量%と、遊離脂肪酸を最大5重量%とを含む。本方法のさらなる非限定的態様においては、上記方法のいずれかによって生成する組成物を開示する。
発明の詳細な説明
本明細書において用いられる「縮合」、「エステル化」または「エステル合成」は、アルコールと酸、特に遊離脂肪酸とが反応し、エステルが生成することを意味する。本明細書に記載する縮合反応において、出発物質中に存在する遊離脂肪酸は、グリセロールやモノアシルグリセロール等の多価アルコールまたはジアシルグリセロール等の1価アルコールと反応することができる。本明細書において用いられる「エステル交換」反応とは次の反応を意味する:Formo, M., J. Amer. Oil Chem. Soc. 31, 548-559 (1954)に述べられている、アシドリシス、トランスエステル化(transesterification)、エステルの交換およびアルコリシス。
本明細書において用いられる「リパーゼ触媒反応」「油を酵素と接触させる」および「油を酵素と一緒にインキュベートする」は、いずれも次の反応を意味する:加水分解、エステル化、トランスエステル化、アシドリシス、エステル交換およびアルコリシス。本明細書において用いられる「アシルグリセロール」は、一般的な油中に含まれる、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロール等のグリセロールエステルを意味する。
本明細書において用いられる「リパーゼ」は、トリアシルグリセロールアシルヒドロラーゼ(EC 3.1.1.3)を意味し、縮合(エステル合成)反応、アルコリシス反応、アシドリシス反応およびエステル交換(エステルの交換すなわちトランスエステル化)反応を促進する酵素を包含する。
本明細書において用いられる「平均的な流通(average traded)粗パーム油」とは、本明細書の表Aに記載されている、遊離脂肪酸を約3.5重量%かつ遊離脂肪酸を最大5重量%と、モノアシルグリセロールを最大0.2重量%と、ジアシルグリセロールを4〜8重量%と、トリアシルグリセロールを98重量%未満とを含むパーム油を意味する(Bailey’s Industrial Oil and Fat Products, Fifth Edition, Y. H. Hui, Ed., 2005,Volume 2, Chapter 8, Palm Oil, Y. Basiron, Table 37. Crude Palm Oil Quality, p. 382)。一実施形態においては、平均的な流通粗パーム油は、トリアシルグリセロールを少なくとも90重量%含む。
本明細書において用いられる「1価不飽和脂肪酸で富化したパーム油代替物」とは、主としてトリアシルグリセロールを含む油であって、油の脂肪酸成分がパーム油を起源とし、該パーム油代替物の不飽和脂肪酸含有率が、その原料であるパーム油の不飽和脂肪酸含有率よりも高い油を意味する。遊離1価不飽和脂肪酸で富化したパーム油代替物は、流通粗パーム油の用途と実質的に同じ用途に適している。しかしながら、該パーム油代替物は、1価不飽和脂肪酸が富化されており、平均的な流通粗パーム油よりもパルミチン酸含有率が低い。
本明細書において用いられる「遊離1価不飽和脂肪酸富化画分」とは、パーム油、パーム油アシルグリセロール、パーム油遊離脂肪酸またはこれらの任意の組合せを不飽和度に基づき2または3以上の画分に分離する方法により得られる画分を意味する。遊離1価不飽和脂肪酸富化画分の不飽和脂肪酸含有率は、パーム油遊離脂肪酸供給原料中の不飽和脂肪酸含有率よりも高い。
本明細書において用いられる「フライ安定性油(frying stable oil)」とは、本明細書に記載された方法により製造される、通常のフライ調理作業に適した油を意味する。一実施形態においては、安定なフライ油は、初期のオメガ−3脂肪酸が2重量%未満、遊離脂肪酸含有率が0.05重量%未満、過酸化物価が<1meq O2/kgであり、十分な呈味および保存安定性を有するフライ調理品を提供するのに十分な酸化安定性を有する。110℃で測定したOSIによる酸化安定性が20時間を超える油を得るために油に酸化防止剤を補充することができる。発煙点が高いことも望ましい。
本明細書において用いられる「パーム油遊離脂肪酸供給原料(palm free fatty acid feed stock)」とは、ギニアアブラヤシ(Elaies guineensis)やアメリカアブラヤシ(Elaies oleifera)等のヤシの木の果実を起源とする脂肪酸を含む供給原料を意味する。パーム油遊離脂肪酸供給原料としては、パーム油、粗パーム油、精製パーム油、物理精製パーム油、脱臭パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクション、パーム搾油粕、パーム油工場廃液およびパーム油脂肪酸留出物(PFAD)に由来する脂肪酸が挙げられる。パーム油遊離脂肪酸供給原料の組合せも使用することができる。遊離脂肪酸は、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール等のパーム油アシルグリセロールに、およびロウ等のエステルに由来することができる。別法として、脂肪酸は、遊離脂肪酸流(free fatty acid stream)に由来する。遊離脂肪酸流は自然界からは容易に入手することができないが、アシルグリセロールの加水分解(分解(splitting))、主としてトリアシルグリセロールの加水分解により得られる。例えば、パーム油は、多くの場合、パーム油アシルグリセロールの加水分解により生じる相当量の遊離脂肪酸(3.5重量%)を含む。遊離脂肪酸は油から除去され、パーム油脂肪酸留出物内に濃縮される。これらを組み合わせて用いることができ、これに加えてパーム油脂肪酸供給原料および他の植物起源の脂肪酸供給原料の組合せも使用することができる。本明細書において用いられる「飽和脂肪酸および1価不飽和脂肪酸を含む」とは、パーム油遊離脂肪酸供給原料がパルミチン酸やステアリン酸等の飽和脂肪酸およびオレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸の両方を含むことを意味する。
「パーム油遊離脂肪酸供給原料」は、アブラヤシを起源とする脂肪酸に加えて、他の植物起源の脂肪酸も含む場合がある。この種の他の植物起源の酸としては、パーム油に類似した、すなわち飽和脂肪酸含有率が高く、かつ1価不飽和脂肪酸含有率が低い植物を供給源とする油、例えば、米糠油、乳脂肪等の動物性脂肪、ヤシ油、パーム核油、カカオ脂、アボカド油、堅果油(ピリナッツ等)および綿実油等を起源とする脂肪酸が挙げられる。
パーム油遊離脂肪酸供給原料は、広く実施されている任意の手法またはその改良法によりアシルグリセロールを脂肪分解することにより得ることができる。触媒の存在下に脂肪を高温で加圧しながら水と撹拌するのが、遊離脂肪酸を製造する一般的な手法である。加水分解にアルカリ性物質が関与する場合は鹸化が起こり、遊離脂肪酸がアルカリ性物質と石鹸すなわち塩を形成する。この石鹸から遊離脂肪酸を放出させるには、酸で処理すれば十分である。従来の脂肪分解方法としては、トイッチェル法、オートクレーブ法、コルゲート・エモリー(Colgate-Emory)法、パーム油脂肪酸供給原料の鹸化および酵素的脱エステル化(加水分解)が挙げられる。パーム油脂肪酸供給原料の酵素的脱エステル化はリパーゼ(EC 3.1.1.3)を用いて行うことができる。別法として、触媒の非存在下に、最高温度250℃で加圧下に脂肪を水で撹拌することにより、遊離脂肪酸を得ることができる。この手法によりトランス脂肪酸の生成が最小限に抑えられる。
本発明によれば、遊離1価不飽和脂肪酸富化画分を得るために、パーム油遊離脂肪酸供給原料が分離に付される。好適な手法としては蒸留が挙げられ、パルミチン酸が留出物として除去され、蒸留残渣(缶出液)が不飽和脂肪酸で富化される。クロマトグラフィーは、銀イオンクロマトグラフィーその他の錯形成クロマトグラフィー(complexation chromatography)等が適している。一態様においては、乾式分別や溶剤分別等の晶析を選択することができる。飽和脂肪酸が包接錯体を形成し、沈殿として分離される尿素錯形成(urea complexation)も好適である。他の態様においては、遠心分離を実施することができ、これを晶析または尿素錯形成と組み合わせることもできる。さらに、膜濾過も分離に好適な可能性がある。膜濾過は晶析または尿素錯形成と併用することができる。一態様においては、シリカ/アルミナのモル比が≧12である結晶性シリカ等の分子ふるいで分離を行うによって遊離1価不飽和脂肪酸富化画分を得ることができる。他の態様においては、飽和脂肪酸のエステルを形成して反応液から析出させるダイレクトエステル交換を実施することができる。飽和脂肪酸で富化されたエステル供給原料を富化した後、所望の画分を遊離脂肪酸に変換することができる。他の態様においては、パーム油遊離脂肪酸供給原料をメチルエステル等のエステルに変換し、上述した手法のいずれかを用いて分離することができる。不飽和脂肪酸で富化されたエステル供給原料を富化した後、所望の画分を遊離脂肪酸に変換することができる。上述の手法の任意の組合せを用いることができる。
遊離1価不飽和脂肪酸富化画分の1価不飽和脂肪酸の含有率は、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、さらには少なくとも90重量%でさえある。
本発明によれば、グリセロールを、遊離1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油遊離脂肪酸画分でエステル化することにより、TAG、DAG、MAGおよびFFA含有率が平均的な流通粗パーム油に類似しており、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を含む縮合トリアシルグリセロール油が得られる。エステル化は、グリセロールと遊離1価不飽和脂肪酸富化画分とを1種以上のリパーゼ酵素と一緒に接触させることにより実施される。
縮合反応において、物質移動によって速度が制限されることが確実に起こらないようにするために、十分にかき混ぜ(agitation)を行う必要があり、これは撹拌(stirring)、旋回流(swirling)、ガスバブリング、超音波および流速等の一般に実施されている任意の手法により実施することができる。
エステル化を行いながら、縮合反応により生成した水を反応混合物から除去する。こうすることにより、反応の平衡がエステル化方向に移動する。さらに、縮合反応時に生成した水を反応混合物から除去することを含む条件下でエステル化を行い、温度を少なくとも70℃に維持することにより、モノ−およびジアシルグリセロールだけでなくFFAの含有率も非常に低く抑えることができる。
好ましくは、パーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、トリアシルグリセロールを、少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%または少なくとも98重量%含む。
パーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、縮合反応において適用される遊離1価不飽和脂肪酸富化画分の組成を反映して、不飽和脂肪酸を、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%または少なくとも95重量%含んでいてもよい。
好ましくは、工程(c)を経た後のパーム油代替トリアシルグリセロール生成物の遊離脂肪酸含有率は、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下である。
好ましくは、工程(c)を経た後のパーム油代替トリアシルグリセロール生成物のモノアシルグリセロール含有率は、3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下である。
好ましくは、工程(c)を経た後のパーム油代替トリアシルグリセロール生成物のジアシルグリセロール含有率は、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下または1重量%以下である。
好ましくは、反応混合物の水分含有率は、700ppm以下、650ppm、600ppm以下、550ppm以下または500ppm以下である。
反応混合物からの水の除去は:完全また部分的減圧下でエステル化反応を操作すること;反応混合物または反応混合物のヘッドスペースを、分子ふるいのような乾燥吸着剤と接触させること;反応混合物または反応混合物のヘッドスペースを、窒素または二酸化炭素のような乾燥ガスと接触させること;反応混合物のヘッドスペースを、反応の水が氷として凝結するような冷却表面と接触させること;および反応混合物を、減圧下で容器内に噴霧すること;を含む、複数の手法に達成することができる。これらの手法の組み合わせを用いることもできる。
エステル化は、減圧下、例えば、40kPa以下、30kPa以下、20kPa以下、15kPa以下、10kPa以下、5kPa以下、4kPa以下、3kPa以下、2kPa以下、1kPa以下の圧力を含む条件下で実施することができる。
エステル化は、少なくとも70℃の温度、例えば、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも81℃または少なくとも82℃の温度を含む条件下で実施される。
一実施形態において、処理工程b)は、遊離飽和脂肪酸富化画分を得るために供給原料を分離に供することをさらに含む。飽和脂肪画分富化画分の飽和脂肪酸含有率は、好ましくは少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、さらには少なくとも90重量%でさえある。この画分とアルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールとを1種以上のリパーゼ酵素と接触させて脂肪酸アルキルエステルを生成することを含むエステル化を行うことができる。脂肪酸アルキルエステルはバイオディーゼルとして使用することができる。別法として、遊離飽和脂肪酸富化画分をエステル化に付すことにより飽和度の高いトリアシルグリセロール油を得ることができる。
本発明に使用するのに好適なリパーゼ酵素としては、EC 3.1.1.3に属するリパーゼを用いることができ、これは例えば、国際公開第88/02775号に開示されているカンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来リパーゼA(CALA)、国際公開第88/02775号に記載されており、国際公開第2008065060号に配列番号1として示されているC.アンタークティカ(C. antarctica)由来リパーゼB(CALB)、欧州特許出願第258068号に開示されているサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)(異名フミコラ・ラヌギノサス(Humicola lanuginosus))由来リパーゼ、国際公開第2000/60063号または国際公開第1995/22615号に開示されているサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来変異体、特に国際公開第95/22615号の配列番号2の1〜269位に示されているリパーゼ、ハイホジーマ属(Hyphozyma sp.)微生物由来リパーゼ(国際公開第98/018912号)およびリゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)由来リパーゼ (国際公開第2004/099400号の配列番号5)、P.アルカリゲネス(P. alcaligenes)またはP.シュードアルカリゲネス(P. pseudoalcaligenes)(欧州特許第218272号)、P.セパシア(P. cepacia)(欧州特許第331376号)、P.グルマエ(P. glumae)、P.スタッツェリ(P. stutzeri)(英国特許出願第1,372,034号)、P.フルオレセンス(P. fluorescens)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)菌株D705 (国際公開第95/06720号および国際公開第96/27002号)、P.ウィスコンシネンシス(P. wisconsinensis)(国際公開第96/12012号)由来リパーゼ;バチルス属(Bacillus)菌、例えば、B.サブティリス(B. subtilis)(Dartois et al. (1993), Biochemica et Biophysica Acta, 1131, 253-360)、B.ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)(特開昭64−744992号)またはB.プミラス(B. pumilus)(国際公開第91/16422号) 由来リパーゼからなる群から選択される。同じく、次に示す微生物のいずれかに由来するリパーゼも好適である:フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、アブシディア・レフレクサ(Absidia reflexa)、アブシディア コリンビフェラ(Absidia corymbefera)、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)(オリゼ(oryzae))、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger)、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubingensis)、フザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicilium camembertii)、アスペルギルス・フォティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)および サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)、国際公開第2004/099400号に記載の配列番号1〜15。
本発明に好ましいリパーゼ酵素は、国際公開第88/02775号に開示されており、国際公開第2008065060号の配列番号1に示されている配列を有する、C.アンタークティカ(C. antarctica)由来リパーゼB(CALB)である。同じく、国際公開第2008065060号の配列番号1に示されている配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、さらには少なくとも99%の配列同一性を有するリパーゼ酵素も好ましい。
本発明の方法に使用されるリパーゼ酵素は、本明細書に述べた任意の供給源から由来することができるかまたは得ることができる。本文脈における「由来する(derived)」という語は、当該酵素が生物から単離できるものであり、天然に存在するものであること、すなわち当該酵素が天然酵素のアミノ酸配列と同一であることを意味する。「由来する」という語はまた、当該酵素が宿主生物内で組換え的に産生できるものであり、この組換え的に産生された酵素が、天然酵素と同一性を有するかまたは修飾されたアミノ酸配列を有する、例えば、1個または2個以上のアミノ酸が欠失、挿入および/もしくは置換されている、すなわち天然のアミノ酸配列の変異導入体および/もしくは断片である、組換え的に産生された酵素であることを意味する。天然酵素という意味の範囲には天然変異体も包含される。さらに、「由来する」という語は、例えば、ペプチド合成により合成的に産生された酵素も包含する。「由来する」という語は、例えば、グリコシル化やリン酸化等により(in vivoまたはin vitroのどちらでも)修飾された酵素も包含する。本文脈における「得ることができる(obtainable)」という語は、当該酵素のアミノ酸配列が天然酵素と同一であることを意味する。この語は、生物から単離された天然に存在する酵素または同種もしくは異種の生物内で組換え的に発現させた酵素または合成的に(例えばペプチド合成により)産生された酵素を包含する。組換え的に産生された酵素に関する「得ることができる」および「由来する」という語は、酵素は同一性を有するが、それを組換え的に産生する宿主生物が同一でないことを指す。
したがって、リパーゼ酵素は任意の好適な技法を用いて微生物から得ることができる。例えば、酵素調製物は、当該技術分野において周知の手法により、好適な微生物を発酵させた後、得られた発酵液または微生物から酵素調製物を単離することにより得ることができる。酵素はまた、組換えDNA技法を用いて得ることもできる。通常、この種の手法は、対象の酵素をコードするDNA配列および適切な発現シグナルと機能的に連結するDNA配列を含む組換えDNAベクターを導入することにより宿主細胞を形質転換し、この宿主細胞を、酵素発現が可能な条件下にある培地で酵素を発現させることと、培地からの酵素の回収とが可能になるように培養することを含む。DNA配列を宿主細胞のゲノムに組み込むこともできる。DNA配列は、ゲノム由来、cDNA由来もしくは合成由来またはこれらの任意の組合せとすることもできるし、あるいは当該技術分野において周知の手法に従い単離または合成することもできる。
酵素活性に関する最適なパラメータは使用する酵素に応じて異なるであろう。酵素の分解速度は、酵素濃度、基質濃度、温度、阻害剤の有無、水の存在等の当該技術分野において周知の要素に依存する。これらのパラメータを、エステル化反応を最適化するために調整することができる。
本発明においては、酵素組成物を疎水性担体に固定化することが好ましい。油の処理における固定化酵素の使用は、新規技術の開発により費用効率の高い手法が可能になったことで大きな成長を遂げた。固定化酵素の基本的な利点は、単純な濾過により回分処理から回収して再利用できること、あるいは連続使用の場合はカラムに固定できることにある。
リパーゼ酵素を固定化するための様々な手法が当該技術分野においてよく知られている。リパーゼの固定化に関する概説は“Immobilized lipase reactors for modification of fats and oils - a review” Malcata, FX., et al. (1990) J. Amer. Oil Chem. Soc. Vol.67 p.890-910に記載されており、珪藻土、シリカ、多孔質ガラス等の無機担体;様々な合成樹脂および合成樹脂イオン交換体;ならびにセルロース等の天然多糖担体およびイオン交換基を導入した架橋デキストリンを含む代表的なリパーゼ固定用担体が例示されている。
幾つかの実施形態においては、本発明は、ゾルゲル、アルギン酸塩およびカラギーナン等の天然もしくは合成マトリックスによって包括するか;架橋化酵素結晶(CLEC)および架橋化酵素凝集体(cross-linked enzyme aggregate:CLEA)等に用いられる架橋法を実施するか;またはタンパク質被覆微結晶(protein coated microcrystal:PCMC)のように塩の結晶上に析出させることによってリパーゼ酵素を担体に固定化する手法に関する。
幾つかの実施形態においては、本発明は、担体が、アルミナ、シリカまたはケイ酸塩(多孔質ガラス、ゼオライト、珪藻土、ベントナイト、バーミキュライト、ハイドロタルサイト等)から構成される多孔質無機粒子;およびアガロースやセルロース等の高分子炭水化物から構成される多孔質有機粒子からなる群から選択される親水性担体である手法に関する。
幾つかの実施形態においては、本発明は、担体が、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸エステルまたはポリスチレン等の合成ポリマー;および活性炭からなる群から選択される疎水性担体である手法に関する。好適な市販の担体は、例えば、LEWATIT(商標)、ACCUREL(商標)、PUROLITE(商標)、DUOLITE(商標)およびAMBERLITE(商標)である。
好適な市販の酵素組成物としては、LIPOZYME RM IM(商標)(リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)由来の固定化リパーゼを含む)ならびにLIPOZYME(登録商標)435およびNOVOZYM(登録商標)435(いずれもカンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来の固定化リパーゼBを含む)が挙げられる。
典型的には、酵素は、1PLU/g脂肪酸供給原料〜1000PLU/g脂肪酸供給原料に相当する濃度で使用される。好ましくは、酵素は、5PLU/g脂肪酸供給原料〜500PLU/g脂肪酸供給原料、より好ましくは10PLU/g脂肪酸供給原料〜100PLU/g脂肪酸供給原料の濃度で使用される。PLUについては後に定義する。
エステル化の実施に適用される方法設計は、回分処理、連続撹拌槽型反応器、充填床反応器、充填移動床反応器(moving packed bed reactor)および膨張床反応器からなる群から選択することができる。
配列の同一性。酵素の同一性は、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のいずれかに基づき算出することができる。2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の関連性は「同一性」というパラメータで表される。本発明における2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends in Genetics 16: 276-277)のNeedleプログラム(好ましくはバージョン3.0.0以降)によって実行されるニードルマン−ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)を用いて求められる。オプションパラメータとして、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸張ペナルティ0.5、EBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換行列を指定する。Needle標識された「最長同一性(longest identity)」(−nobriefオプションを用いて得られる)の出力結果を同一性(パーセント)と称する。これは次式を用いて算出される:
同一性(パーセント)=(同一残基×100)/(アライメント長−アライメントにおけるギャップの総数)
好ましい実施形態においては、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、脱臭に付される。脱臭は、トリアシルグリセロール油を蒸留(任意に水蒸気散布を行う)を行うことによって、油中に含まれる遊離脂肪酸および任意の揮発性物質(香気物質、臭気物質および酸化物等)を除去することを含む。油を真空中で加熱(多くの場合は100℃超まで)しながら、水または水蒸気を油中に導入する。不要な揮発性物質は油から放出され、脱臭装置の留出画分と一緒に運び去られる。パーム油は、多くの場合、いわゆる「物理精製」によって処理されるが、これは脱臭に似ており、トリアシルグリセロールを全体として変化させないように維持したまま、ほとんどの遊離脂肪酸が除去される条件下で油を高温で蒸留することを含むものである。脱臭は、好ましくは、脂肪酸および油脂の成分がトランス異性体へ異性化することを最小限に抑える条件下で実施される。
ここに開示する方法は、脂肪酸組成がパーム油に類似している、すなわち飽和脂肪酸が多く1価不飽和脂肪酸が少ない米糠油や綿実油等の他の油にも同様に適用可能である。
以下の実施例においては、本発明による、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を得るための手法ならびにTAG、DAG、MAGおよびFFA含有率が平均的な流通粗パーム油に類似している油の組成を例示する。次に示す実施例は例示のみを目的とし、特許請求項の範囲に定義される本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
手法および材料
固定化リパーゼの活性は、ラウリン酸プロピル単位(PLU/g)として算出することができる。固定化リパーゼは、ラウリン酸を1−プロパノールでエステル化し、ラウリン酸プロピルを生成する。活性(μmol/g/分)は生成したラウリン酸プロピルおよび消費されたラウリン酸をGCで定量化することにより求められる。反応温度は60℃とし、反応時間は20分間とする。1PLU単位が1μmol/g/分、例えば、酵素産生物1g当たり1分間に生成するラウリン酸プロピルが1μmolであることに相当する。
酵素LIPOZYME(登録商標)435はNovozymes A/Sから市販されている酵素製品であり、国際公開第2008065060号の配列番号1に示されている配列を有するカンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来の固定化リパーゼBを含むものである。本製品は活性が10000PLU/gである。LIPOZYME(登録商標)435はNovozymes A/Sより入手可能である。Novozymes NS-40083リパーゼは、国際公開第2008065060号の配列番号1に示されている配列を有するカンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来の固定化リパーゼBである。
試薬はすべて工業用以上の品質を有するものを使用した。トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸の定量化は、誘導体化後にガスクロマトグラフィーで行うかまたは高速液体クロマトグラフィー−サイズ排除クロマトグラフィー(HPLC−SEC)で行った。
実施例1
グリセロールおよび遊離脂肪酸のエステル化によるトリアシルグリセロールの製造
遊離脂肪酸およびグリセロールのエステル化反応を行った。エステル化(縮合)反応において、化学量論量のグリセロールおよび遊離脂肪酸をリパーゼと一緒にインキュベートした。リノール酸(118グラム)をLIPOZYME(登録商標)435リパーゼ(18.8グラムs)と一緒に50℃で10分間撹拌した後、グリセロール(20.4グラム)を加えて、縮合反応で生成した水を反応混合物から除去するために反応混合物を減圧(0.66kPa)しながら70℃で22時間、450rpmで撹拌した。結果を表1に示す。
Figure 2014534328
70℃で22時間運転したところ、TAGの量が多くDAGおよびMAGの量が少ない縮合トリアシルグリセロール油が得られた。生成物の混合物のFFAおよびTAGの含有率は平均的な流通粗パーム油に類似しており、DAGおよびMAGの量は非常に少なかった。MAGの量が非常に少ないため、縮合トリアシルグリセロール油の分子蒸留が不要になり、したがって、さらなる加熱処理を行うことなくそのまま使用できる生成物が生成する。
実施例2
80℃におけるオレイン酸およびグリセロールの縮合
遊離脂肪酸およびグリセロール(モル比3.1:1)をリパーゼ酵素と一緒にインキュベートした。オレイン酸50グラムを、LIPOZYME(登録商標)435を2、6または10重量%と一緒に80℃で撹拌した。次いで、グリセロール5.3グラムを10分間かけて滴下し、減圧下(0.8〜2.13kPa)に反応混合物を80℃で48時間、200rpmで撹拌した。HPLC−SECを用いてトリアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびモノアシルグリセロールならびに遊離脂肪酸の定量化を行った。結果を表2に示す。
Figure 2014534328
8〜14時間反応させた後、モノアシルグリセロールが少なく(0.4重量%未満)、トリアシルグリセロールが非常に多く(86〜93重量%)、未反応の遊離脂肪酸が最大で7.7重量%の縮合トリアシルグリセロール油が得られた。
実施例3
縮合トリアシルグリセロール油の脱臭
飽和および1価不飽和脂肪酸を含む例示的なパーム油遊離脂肪酸供給原料の脂肪酸組成を反映する(不飽和脂肪酸80.6重量%を含む)遊離脂肪酸の混合物を調製した。パルミチン酸(120グラム)、ステアリン酸(50グラム)、オレイン酸(710グラム)およびリノール酸(130グラム)を混合した。この脂肪酸混合物(376グラム)を50℃に加熱し、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼ(37.6グラム)を加えた。これらを50℃で10分間、200rpmで撹拌した。450rpmで撹拌しながらグリセロール(40.8グラム)を加えて、縮合反応で生成した水を反応混合物から除去するために減圧(0.66kPa)を行いながら、縮合反応を50℃で22時間行った。反応混合物中のFFA含有率を測定することによって反応の進行を監視した。反応終了後、縮合トリアシルグリセロール油から酵素を濾過によって分離した。縮合トリアシルグリセロール油(200グラム)を真空中(0.3kPa)で265℃に加熱し、高温の油中に水を引き込むことによって水蒸気を散布しながら45分間脱臭を行った。散布した水蒸気の総量は油の重量の5重量%であり、脱臭方法全体を通して供給を行った。結果を表3に示す。
Figure 2014534328
不飽和脂肪酸80.6重量%を含む例示的なパーム油トリアシルグリセロール生成物の脂肪酸組成を反映する、1価不飽和脂肪酸で富化されたトリアシルグリセロール生成物を得た。
実施例4
縮合物の混合物の脱臭
実施例3の飽和および1価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸供給原料(376グラム)を50℃に加熱し、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼ(37.6グラム)を加えて、50℃で10分間、200rpmで撹拌した。450rpmで撹拌しながらグリセロール(40.8グラム)を加えて、縮合反応で生成した水を反応混合物から除去するために減圧(0.66kPa)を行いながら縮合反応を50℃で22時間行うことにより、FFAを7.2重量%含む生成物を得た。反応混合物中のFFA含有率を測定することにより反応の進行を監視した。反応終了後、縮合トリアシルグリセロール油から酵素を濾過により分離した。この生成物の半量を取り分けた。回収した酵素を、脂肪酸混合物の第2アリコート(376グラム)およびグリセロール(40.8グラム)と混合し、縮合反応を再び22時間行った。FFAを7.2重量%を含む生成物の第2ロットを得た。分取しておいた1回目の生成物を2回目の生成物と合一し、真空中(0.3kPar)で265℃に加熱して、高温の油中に水を引き込むことによって水蒸気を散布することにより、75分間脱臭を行った。散布した水蒸気の供給は脱臭方法全体を通して行い、その総量は油の重量の5%とした。広く普及しているAOCS(米国油化学会(American Oil Chemists’ Society))の標準法を用いて性状を測定した。脱臭途中の縮合トリアシルグリセロール油混合物の遊離脂肪酸含有率および脱臭後の縮合トリアシルグリセロール油の性状を表4に示す。
Figure 2014534328
縮合トリアシルグリセロール油中に存在するFFA量の初期値がより高いため、縮合トリアシルグリセロール油の脱臭には典型的な植物油よりも高い温度および長い時間が必要であった。不飽和脂肪酸80.6重量%を含む例示的なパーム油トリアシルグリセロール生成物の脂肪酸組成を反映する、1価不飽和脂肪酸で富化されたトリアシルグリセロール生成物を得た。脱臭後の縮合トリアシルグリセロール油中のFFAおよびMAG量は低く、風味、色調、滴点および固形脂肪分に関する性状は良好であった。
実施例5
80℃、0.66kPaの真空中でグリセロールおよび遊離脂肪酸を縮合することによるトリアシルグリセロールの製造
縮合反応で生成した水を反応混合物から除去するために減圧(0.66kPa)を行いながら、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼ(9.3グラム)を用いてリノール酸(93.3グラム)とグリセロール(10.2グラム)との縮合を行った。反応終了後、酵素を濾過により回収し、未使用の基質溶液と接触させた。反応混合物中に含まれるFFA含有率を測定することにより反応の進行を監視した。結果を表5に示す。
Figure 2014534328
80℃で3回使用した酵素を用いて縮合トリアシルグリセロール油を製造した後も、検出できるほどの失活は起こらなかった。
実施例6
グリセロールおよびパーム油脂肪酸留出物の縮合によるトリアシルグリセロールの製造
パーム油の物理精製により得られた飽和および1価不飽和脂肪酸を含むパーム油遊離脂肪酸供給原料(パーム油脂肪酸留出物、PFAD)を、短行程蒸留装置(VTA-USA、Rock Hill, SC, USA)を用いて、パルミチン酸を留出物として留出させるような分留に適した条件下で蒸留した。リパーゼ活性を低下させる可能性のある化合物も一緒に留出物として除去されることが期待された。パーム油脂肪酸留出物(700グラム)を110℃の真空中(0.028kPa)で短行程蒸留に付した。供給速度を5mL/分とした。PFADの蒸留残渣(577グラム)は、FFAを77.5重量%、MAGを3.3重量%、DAGを8.4重量%、グリセロールを2.6重量%およびTAGを4.7重量%を含有していた。次いでPFADの第2バッチを同様にして短行程蒸留に付すことにより、より多くのPFAD由来蒸留残渣を得た。第2バッチの残渣は、PFADに由来する蒸留残渣を522グラムを含有していた。
この蒸留方法により、オレイン酸が富化され、パルミチン酸含有率が低下した、PFAD由来の蒸留残渣を得た(表6A)。
Figure 2014534328

縮合反応で生成した水を反応混合物から除去するために減圧(0.66kPa)を行いながら、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼ(18グラム)を用いてPFAD残渣(94グラム)を82.5℃で5時間縮合させた。酵素を50℃で10分間PFAD残渣と接触させた後、グリセロール(10.2グラム)を加えて反応を5時間実施した。反応終了後、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼを回収して計6回の反応で再使用した(回収5回)。反応混合物中のFFA含有率を測定することにより反応の進行を監視した。結果を表6Bに示す。
Figure 2014534328
縮合トリアシルグリセロール油の製造中における酵素の失活はPFADを短行路蒸留に付したことにより軽減され、4回目の使用までは失活は認められなかった。5回目の反応では、例え温度を約100℃まで超過させて約10分間運転を行ってもほとんど失活は認められなかった。酵素を5回使用した後も、遊離脂肪酸含有率が低いトリアシルグリセロール油を製造することが依然として可能であった。
実施例7
FFAをグリセロールと縮合して縮合トリアシルグリセロール油を製造するために設計された実験
脂肪酸を用いたTAG縮合反応を最適化するために設計された実験を、温度(60℃〜90℃)および減圧(0.66〜13.33kPa)を変数として用いて設定し、縮合反応において生成した水を反応混合物から除去した。工業用オレイン酸をパルミチン酸およびステアリン酸と混合することにより、不飽和脂肪酸を約85重量%および飽和脂肪酸を15重量%を含むFFA混合物を生成した。遊離脂肪酸基質(94グラム)をLIPOZYME(登録商標)435リパーゼ(9.4グラム)と一緒にインキュベートした後、グリセロール(10.2グラム)と一緒に5時間インキュベートした。結果を表7に示す。
Figure 2014534328
縮合トリアシルグリセロール油を生成するためのFFAの縮合は真空度および温度に依存していた。高温下における真空度の効果は低温ほど大きくなかった。反応は、温度が高く(90℃まで)真空度が高い方が有利であった。生成物混合物中のDAG量をより低くするためにはより高い真空度(0.66kPa)が必要であった。このモデルから、82.5℃で反応時間を5〜8時間とするとDAGおよびFFA量が粗パーム油に類似した縮合トリアシルグリセロール油が生成すると予想することができ、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物が得られることが予想された。こうして確立されたモデルにより、異なる反応条件における反応混合物の組成を予測することが可能になる。
実施例8
FFAおよびグリセロールの縮合によるトリアシルグリセロールの製造に関し計画された最適な縮合条件の確認
実施例3で使用した、飽和および1価不飽和脂肪酸を含む例示的なパーム油遊離脂肪酸供給原料の脂肪酸組成を反映する脂肪酸混合物(94グラム)をLIPOZYME(登録商標)435(9.4グラム)と一緒に撹拌しながら10分間50℃でインキュベートした後、ほぼ化学量論量のグリセロール(10.2グラム)を加えた。反応混合物を82.5℃で減圧下(0.66kPa)に撹拌することにより、縮合反応で生成した水を反応混合物から7時間除去し、5、6および7時間経過後の試料を採取した。結果を表8に示す。
Figure 2014534328

6時間後、TAG、DAG、MAGおよびFFA含有率が平均的な流通粗パーム油に類似した、酵素的に縮合させたパーム油を含む、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物が1段階の処理工程で生成した。7時間後、TAG含有率は一層高くなり、DAG、MAGおよびFFA量は非常に低くなった。MAG量が非常に低くなったことにより、縮合トリアシルグリセロール油の分子蒸留が不要になり、したがって、さらなる加熱処理が不要な、そのまま使用可能な生成物が生成する。
実施例9
パームオレイン遊離脂肪酸由来不飽和脂肪酸の富化および飽和脂肪酸が少ないパーム油由来油の製造
飽和および1価不飽和脂肪酸を含むパームオレイン遊離脂肪酸供給原料(PFA)(分別パームオレイン脂肪酸、1041リットル、PMC Biogenix, Memphis, TN, USA)を225℃で蒸留し、標的の還流比を3として分離することにより、パルミチン酸含有率が低下し、オレイン酸およびリノール酸が富化された第1運転残渣画分(約790リットル)を得た。得られた留出物は約189リットルであった。2回目の運転においては、PFA供給原料を同じ手法で蒸留することにより、パルミチン酸含有率が低下し、オレイン酸およびリノール酸が富化された第2運転残渣画分約1020リットルならびに留出物約720リットルを得た。PFA原料および2種類の蒸留残渣の組成を表9Aに示す。
Figure 2014534328
遊離1価不飽和脂肪酸(オレイン酸)で富化された残渣が得られた。この遊離1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油由来の残渣画分は、パーム油由来の脂肪酸を縮合に使用してグリセロールをエステル化することにより、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよび遊離脂肪酸含有率が平均的な流通粗パーム油に類似している縮合トリアシルグリセロールを得るのに適していた。パーム油由来の遊離脂肪酸をより徹底的に蒸留すると、さらにパルミチン酸含有率が低下し、オレイン酸が富化された(オレイン酸80重量%)残渣が得られるであろう。
225℃で蒸留したPFAから得られた遊離1価不飽和脂肪酸で富化された第1運転残渣(133kg)を槽内でグリセロール(14.5kg)と混合することにより反応混合物を生成し、槽の内容物の温度が82.5℃に維持されるように加熱しながら、グリセロールがFFA中で分散を維持するように十分に撹拌した。Novozymes NS-40083リパーゼ(18kg)を加熱された反応カラム(直径23cm;床高さ61cm)に充填することによりリパーゼのカラムを準備した後、遊離1価不飽和脂肪酸で富化された第1運転残渣(残渣)をカラムに充填して50℃に予備加熱した。カラムを加熱することによりカラム内容物の温度を80℃に維持し、第1運転残渣およびグリセロールの混合物をリパーゼカラムに113.6リットル/分で送液することにより、グリセロールと遊離1価不飽和脂肪酸で富化された第1運転残渣とをエステル化した。カラムから流出した反応混合物を真空に維持された槽内に噴霧することによって反応混合物を真空中(0.66kPa)に曝露することにより、縮合反応で生成した水を反応混合物から除去し、脱水された反応混合物を得た。脱水された反応混合物をリパーゼカラムに戻して循環させた。一部反応した基質の循環を、TAGを87.22重量%、DAGを2.56重量%、MAGを0.13重量%およびFFAを6.53重量%を含む1価不飽和脂肪酸で富化された縮合トリアシルグリセロール生成物が得られるまで22時間継続した。この1価不飽和脂肪酸で富化された縮合トリアシルグリセロール生成物を220〜240℃で脱臭することにより、TAGを94.8重量%、DAGを5.02重量%、MAGを0.05重量%およびFFAを0.105重量%を含む1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を得た。パーム油代替トリアシルグリセロール生成物はオレイン酸を55.3%含んでいた。
PFAを225℃で蒸留することにより得られた遊離1価不飽和脂肪酸で富化された第2運転残渣をグリセロールとエステル化し、1回目の運転と実質的に同じように脱臭した。脱臭後、TAGを95.3重量%、DAGを4.61重量%、MAGを0.02重量%およびFFAを0.05重量%を含む1価不飽和脂肪酸で富化された第2パーム油代替トリアシルグリセロール生成物を得た。この1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物はオレイン酸を62.9%を含んでいた。
3回目および4回目の運転においては、遊離パームオレイン脂肪酸原料(1220kg、PMC Biogenix, Memphis, TN)を蒸留することにより第3運転残渣および第4運転残渣を得た。PFA原料および2種類の蒸留残渣の組成を表9Bに示す。
Figure 2014534328

類似の容量を有する第2のリパーゼカラムを追加して第1酵素反応器と平行に設置したことを除いて、1回目および2回目の運転と実質的に同様にして3回目および4回目の運転残渣を別々にグリセロールと合一し、別々にグリセロールとエステル化した。得られた1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を脱臭することにより、3回目の運転による、TAGを95.3重量%、DAGを4.41重量%、MAGを0.01重量%未満およびFFAを0.024重量%を含み、オレイン酸52.3重量%を含む、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を得た。4回目の運転による、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、TAGを89.3重量%、DAGを6.2重量%、MAGを0.01重量%およびFFAを0.07重量%およびオレイン酸を64.0重量%を含んでいた。
実施例10
パームオレイン遊離脂肪酸由来の不飽和脂肪酸の富化および飽和脂肪酸の少ないパーム油由来油の製造
飽和および1価不飽和脂肪酸を含むパーム油遊離脂肪酸供給原料(PFA)(分別パーム油脂肪酸、Wilmar, Shanghai, China)を、実施例9に記載した概要と実質的に同じようにして蒸留することにより、パルミチン酸含有率が低下し、オレイン酸およびリノール酸が富化された5回目の運転残渣画分を得た。5回目の運転残渣を分割して第1ロット(135kg)および第2ロット(116kg)とした。各ロットを化学量論量のグリセロールと混合した。Novozymes 435リパーゼ(3.2KG)を充填することによりリパーゼの単一カラムを準備し、実施例9に記載した概要と実質的に同様にして各ロットの縮合反応を実施した。1価不飽和脂肪酸で富化された縮合トリアシルグリセロール生成物のロットを混合し、220〜240℃で脱臭することにより、TAGを96.0重量%、DAGを3.9重量%、MAGを0.02重量%およびFFAを0.08重量%を含む1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を得た。このパーム油代替トリアシルグリセロール生成物は、飽和脂肪酸を17.1%、オレイン酸を66.0%、リノール酸を12.2%およびリノレン酸を0.15%を含んでいた。このパーム油代替トリアシルグリセロール生成物のOSI値(110℃)は4時間であり、過酸化物価は0であった。この1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物にクエン酸15ppmおよび混合トコフェロール800ppmを補充したところ、OSI時間は20.1時間となった。
クエン酸15ppmおよび混合トコフェロール800ppmを含む1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を用いて、6.8kgの卓上フライヤーによるフライ試験を行った。油を188℃(370°F)、8時間/日で10日間加熱した。毎日、角切りにしたジャガイモ試料のバッチを20バッチ(230グラム/バッチ、冷凍品、12mm(1/2インチ)Hash Brown Cube, Simplot, Boise, ID, USA)をフライ調理した。逸失分を補うために毎朝パーム油代替トリアシルグリセロール生成物800グラムをフライヤーに追加した。10日間フライ調理を行った後のパーム油代替トリアシルグリセロール生成物のOSI値は26.1時間であった。1、3、5、6、8および10日目の朝に、訓練を受けた油品質検査員が角切りフライドポテトの盲検試験を行った。パーム油代替トリアシルグリセロール生成物の風味およびフライ性能はいずれもパームオレインに匹敵していた。
実施例11
市販のパーム油脂肪酸蒸留物からのパーム油由来油の製造
飽和および1価不飽和脂肪酸蒸留物を含むパーム油遊離脂肪酸供給原料をグリセロールとエステル化した。供給業者(YiHai (Lianyungang) Oleochemical Ind. Co., Ltd)によるパーム油脂肪酸蒸留物(品番DP−1601)の組成および性状を表11に示す。
Figure 2014534328
飽和および1価不飽和脂肪酸を含むこのパーム油遊離脂肪酸供給原料(300グラム)とグリセロール(30.6グラム)とを、実施例7に記載したように、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼ9.3グラムを用いて、減圧下(0.66kPa)に450rpmで撹拌しながら82.5℃で6時間縮合させた。縮合完了後、縮合トリアシルグリセロール生成物を実施例3と同様にして260℃で30分間脱臭することにより、TAGを96.17重量%、DAGを1.27重量%、MAGを0重量%およびFFAを0.19重量%を含むパーム油に類似した縮合トリアシルグリセロール油を得た。
使用済みのLIPOZYME(登録商標)435リパーゼを回収し、再びパーム油脂肪酸蒸留物(品番DP−1601)およびグリセロールと一緒に、減圧下(0.66kPa)に450rpmで撹拌しながら82.5℃で6時間インキュベートした。縮合完了後、縮合トリアシルグリセロール生成物を実施例3に記載した概要と同様にして260℃で30分間脱臭することにより、表11に示す脂肪酸分布を有し、TAGを94.23重量%、DAGを3.19重量%、MAGを0重量%およびFFAを0.02重量%を含む、パーム油に類似した縮合トリアシルグリセロール油を得た。
実施例12
市販のパルミチン酸からのパーム油由来油の製造
YiHai (Lianyungang) Oleochemical Ind. Co., Ltd.からパルミチン酸蒸留物(98重量%)を入手した。遊離パルミチン酸蒸留物は、実施例6に概要を記載した留出物から得ることができる種類の留出画分に相当する。供給業者によれば、このパルミチン酸留出物は表12に示す組成および性状を有していた。
Figure 2014534328
パルミチン酸蒸留物(300グラム)とグリセロール(30.6グラム)とを、LIPOZYME(登録商標)435リパーゼ9.3グラムと一緒に、実施例7に記載したように、減圧下(0.66kPa)、450rpmで撹拌しながら82.5℃で6時間縮合させた。縮合完了後、縮合トリアシルグリセロール生成物を、実施例3に記載したように260℃で30分間脱臭することにより、TAGを95.43重量%、DAGを2.22重量%、MAGを0重量%およびFFAを0.06重量%含む縮合トリアシルグリセロール油を得た。
実施例13
縮合反応において生成した水を除去するための窒素吹き込みおよび減圧の試験
遊離脂肪酸およびグリセロール(モル比3.1:1)を、回分方式で、減圧下に、または反応器底部から窒素を散気するかのいずれかで、リパーゼ酵素と一緒にインキュベートした。
オレイン酸(50グラム)を80℃でLIPOZYME(登録商標)435リパーゼ2.5gと混合した。次いで、グリセロール5.3グラムを10分間かけて滴下し、反応混合物を24時間撹拌した。減圧処理は、三角フラスコ内で行い、減圧下(0.45〜1.2kPa)、200rpmで24時間撹拌した。N吹き込み処理は、ガラスカラム(25mm×218mm)内で行い、ガラスカラム底部からNを24時間散気(20〜25L/時)した。生成物の組成をHPLC−SECにより測定した。カールフィッシャー電量滴定により水分含有率を測定した。結果を表13に示す。
Figure 2014534328
6時間後に主としてDAGおよびTAGを含む縮合トリアシルグリセロール油を得た。どちらの処理(減圧およびN通気)も放出された水を除去することが可能であり、反応中に非常に限られた量の水(最大635ppm)が蓄積した。速やかな水分除去には減圧が最も効果的であり、トリアシルグリセロール生成量が増加する方向に反応が移行した。減圧下に24時間後、1価不飽和脂肪酸で富化されたパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を得た。
実施例14
回分式N吹き込み系におけるLIPOZYME(商標)435の寿命
吹き込み系において、遊離脂肪酸およびグリセロール(モル比3.1:1)をリパーゼと一緒にインキュベートすることにより縮合(エステル化)反応を行った。ガラスカラム(25mm×218mm)内でオレイン酸(50グラム)をLIPOZYME(登録商標)435リパーゼ1重量%(0.5グラム)と一緒に混合し、80℃でインキュベートしながらN(約20L/h)をガラスカラム底部から散気した。次いでグリセロール(5.3グラム)を10分間かけて滴下し、Nを連続的に吹き込みながら22時間反応させることにより十分な混合を確保し、生成した水の除去を促進した。反応開始から22時間後、「使用済み油/生成物混合物」をデカンテーションにより取り出し、新鮮な油+グリセロールの追加分を次のサイクル用に追加した。酵素を26回再使用した。これは、酵素1kg当たり2.6トンのオレイン酸を処理したことに相当する。結果を表14に示すが、これらは同じ試験を2回行った平均値に基づく値である。
Figure 2014534328
26回使用した後の酵素は初期の酵素活性の57%を維持していた。

Claims (21)

  1. 1価不飽和脂肪酸で富化したパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を製造するための方法であって:
    a)飽和および1価不飽和脂肪酸を含むパーム油遊離脂肪酸供給原料を提供する工程と、
    b)前記供給原料を、遊離1価不飽和脂肪酸富化画分および飽和脂肪酸富化画分を得るための分離に供する工程と、
    c)1価不飽和脂肪酸で富化したパーム油代替トリアシルグリセロール生成物を含む縮合トリアシルグリセロール油を生成するために、グリセロールと前記遊離1価不飽和脂肪酸富化画分とをエステル化する工程と
    を含み、前記エステル化工程c)が、前記縮合反応で生成した水が反応混合物から除去されることと、少なくとも70℃の温度を含む条件下、前記グリセロールおよび前記遊離1価不飽和脂肪酸富化画分を1種以上のリパーゼ酵素と接触させることにより実施される、方法。
  2. 前記エステル化工程c)が、水分含有率を700ppm以下、650ppm、600ppm以下、550ppm以下または500ppm以下にすることを含む条件下で実施される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記エステル化工程c)が、圧力を40kPa以下、30kPa以下、20kPa以下、15kPa以下、10kPa以下、5kPa以下、4kPa以下、3kPa以下、2kPa以下、1kPa以下にすることを含む条件下で実施される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記エステル化工程c)が、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも81℃または少なくとも82℃の温度を含む条件下で実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記遊離脂肪酸供給原料が、パーム油、パーム核油、粗パーム油、精製パーム油、物理精製パーム油、脱臭パーム油、分別パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の油に由来する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記遊離脂肪酸供給原料が、パーム搾油粕、パーム油工場廃液、パーム油脂肪酸留出物およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の油である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記遊離脂肪酸供給原料が、1種以上のアシルグリセロールの脂肪分解に由来する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記遊離脂肪酸供給原料が、1種以上のトリアシルグリセロールの酵素的加水分解に由来する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記パーム油遊離脂肪酸原料の分離が、蒸留、晶析、遠心分離、尿素沈殿、膜濾過、分子ふるい、ダイレクトエステル交換およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される手法で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記遊離1価不飽和脂肪酸富化画分が、1価不飽和脂肪酸を少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%または少なくとも90重量%含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 工程c)における前記エステル化が、固定化リパーゼ、好ましくは、国際特許出願第2008065060号の配列番号1に示されている配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するリパーゼにより触媒される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記飽和脂肪富化画分が、少なくとも65重量%の飽和脂肪酸および少なくとも60重量%のパルミチン酸を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 工程(c)を経た後の前記パーム油代替トリアシルグリセロール生成物のモノアシルグリセロール含有率が、3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 工程(c)を経た後の前記パーム油代替トリアシルグリセロール生成物のジアシルグリセロール含有率が、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下または1重量%以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 工程(c)を経た後の前記パーム油代替トリアシルグリセロールの遊離脂肪酸含有率が、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記パーム油代替トリアシルグリセロール生成物が、トリアシルグリセロールを、少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%または少なくとも98重量%含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記パーム油代替トリアシルグリセロール生成物が、不飽和脂肪酸を、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%または少なくとも95重量%含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記パーム油代替トリアシルグリセロール生成物を脱臭することを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記飽和脂肪エステル画分がトリアシルグリセロールを得るためにエステル化される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記1価不飽和脂肪酸で富化したパーム油代替トリアシルグリセロール生成物が、トリアシルグリセロールを90〜98重量%、ジアシルグリセロールを4〜8重量%、モノアシルグリセロールを最大0.2重量%、および遊離脂肪酸を最大5重量%含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 請求項1〜20のいずれか一項により製造される組成物。
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