上記手段への入力として、通常ではエンジン試験台で算出される非常に多くの測定値が必要であり、当該測定値においては、回転数及び負荷という基本影響値の他に、カム軸の角度位置(吸気及び吐出カム軸)、排気再循環率、吸入管切り替え、負荷移動フラップ位置等のような既存の充填箇所に対応する更なる別の影響値が変更される必要がある。先行技術は、実験計画法(DoE:Design of Experiments)であり、この方法は、変更される全ての影響値の網羅的な測定の代わりに、回転数及び負荷により定められる、動作点ごとの必要な測定の特定の選択を提案しており、これに基づいて、例えば多項式モデル(Cornerstone)のような局所的な動作点モデルが調整される。これらのモデルは、動作点でのみ照会を行うことが可能であり、動作点間で照会を行うことが出来ない。
例えば、充填検出のような機能のラベルのためのデータ付与のためには、全動作範囲に渡る十分な精度による測定が必要となる。それにも関わらず測定の数を小さく保つために、試験台での測定と最適化ツールとの間に、いわゆるデータに基づく大域的なモデルが挿入される。このモデル上で、影響値を任意に変更して仮想的な測定が実行される。
国際公開第2006/051039号明細書では、動的なシステムのための出力変数の大域的なモデルを展開する方法が開示されている。これは、例えば内燃機関の動作パラメータであってもよい。この方法は、全ての状態について出力変数を計算するために少数の測定点で済ますことを可能にするということである。大域的なモデルの展開の際には、多項式による入力変数の展開、及び、当該展開の係数の計算が行われる。上記公報にはさらに、反復測定により測定ポイントの分散量を定めることが記載されている。この分散量から、データのモデルと平行して、分散量についての第2のモデルが作成される。このようにして、どの範囲内で測定がより正確であり、どの範囲で測定がより不正確なのかが記述される。
このような背景から、請求項1に記載の制御装置の機能のためにデータ付与する方法と、請求項10の特徴を備えた、本方法を実行するための構成が提示される。
データに基づく大局的なモデルの作成には、全ての影響値についての網羅的な測定よりも基本的に少ない測定によって、必要とされる精度でエンジンの挙動が表せるという利点がある。さらに、大局的なモデルは、隣接する動作点の測定からも同様に「習得する」ことが可能なため、複数の局所的な動作点モデルのために必要なよりも少ない測定が必要となる。測定数の低減により、特に、影響値の数が増大する将来的なアプリケーションタスクは、測定時間の短縮によって初めて実現可能であり、遂行可能である。
その際に、データに基づく大局的なモデルは、各所望の回転数及び負荷位置について、目標変数のための値を提供するが、測定される動作点でのみ当該値を提供するわけではない。次の最適化のステップに進む前に、モデルの不確実性に基づいて、データに基づく大域的なモデルのモデル品質を検査し、評価することが可能である。その際に、測定の数、及び、アクチュエータの位置の分散が十分であったのか確認される。同様に、測定異常値も容易に識別されうる。
データに基づく大局的なモデルは、例えば充填、消費量、又は排出量のような目標変数の予測の他に、影響値の各設定された分散について、モデルの不確実性(Sigma、シグマ)を計算出来る能力を必要とする。モデルの不確実性を示すデータに基づくモデルの一例は、クリギング(D.G.Krige著「A statistical approach to some mine valuations and allied problems at the Witwatersrand」1951年、G.Matheron著「The intrinsic random functions、and their applications」、Adv.Appl.Prob.、5、439〜468ページ、1973年)、ガウス過程モデル(Rasmussen/Williams著「Gaussian Processes For Machine Learning」、MIT Press、2006年)、スパースガウス過程(E.Snelson/Z Ghahramani著「Sparse Gaussian processes using pseudo−inputs」、Advances in Neural Information Processing Systems 18、1259〜1266ページ、2006年)、及び、複数の他の過程モデルのような、いわゆるベイズ回帰の方法である。モデル不確実性を有する、データに基づくモデルの他の可能性は、神経回路網委員会(Komitees von Neuronalen Netzen)である(D.Lowe/K.Zapart著「Validation of Neural Networks in Automotive Engine Calibration」、1997年)。
さらに、データに基づく大域的なモデルは、試験台での測定の測定ノイズに対応出来なければならならず、即ち、実施形態において、各測定値による補間ではなく、例えば、測定点間の滑らかな回帰が実行される。
さらに、データに基づくモデルによって、入力変数の分散を介して、測定されるシステムの挙動を可視化することが可能であり、このことが、システムに対するより大きな理解に繋がり、従って、データ付与の質の改善に繋がることに注意されたい。
データに基づく大域的なモデルが必要な品質を提供する場合には、最適化のために必要なポイントで、仮想的な測定を行うために、このモデルを利用することが可能である。この仮想的な測定の数は、エンジン試験台がもはや必要でないため、モデル構築のために必要な測定の数をはるかに上回ってもよい。
モデルの不確実性シグマの表示によって、各仮想的な測定点において、後続の最適化のために当該仮想的な測定点を利用すべきか否かを決定することが可能である。従って、識別されない測定異常値と比較可能な無効なデータを調整しようと、最適化プログラムが不必要に試みることが回避される。
さらに、仮想的な測定には、測定雑音が無く、後続の最適化のタスクのために、基本的により良好に適しているという利点がある。回帰平面が滑らかである場合に、最適化方法は、補間された平面の場合にむしろ該当するように、いわゆる局所最小にとどまらない。
データ付与される制御装置機能において、ラベルの節点の位置及び数が変更される場合には、更なる別の測定点での測定が必要である。例えば、3×3個の節点を有する特性マップが、5×5個の節点を有する特性マップに拡大される場合には、より大きな特性マップの25個の特性値を、より小さな特性マップから直線補間により計算することが可能である。しかしながら、この特性マップの可変性を最大限に利用するために、エンジンの目標変数の更なる別の情報が必要である。提示される方法の利点は、試験台でコストを掛けてではなく、データに基づく大域的なモデルによって、即時に、追加的な測定点を仮想的に測定しうることである。
様々な車両バリエーション内に特定のエンジンが組み込まれる場合に、各車両バリエーションについて、制御装置機能が様々な動作範囲で最適化される必要がある。このために、他の各測定点が、制御装置機能の最適化のために必要である。記載される方法では、データに基づく大域的なモデルを作成するために、エンジンを一回包括的に測定することが可能である。様々な車両バリエーションの様々な動作範囲についての仮想的な測定点の集合が、データに基づく大域的なモデル上で測定されうる。
提示される方法の枠組みにおいて、一方では、データに基づく大域的なモデルの品質を、検査点を用いて検査し、又は、仮想的な測定結果の不確実性又は分散を用いて、モデルの品質が、全体で又は或る範囲内で十分ではないことを確認することが可能である。データに基づく大域的なモデルの品質が少なくとも、測定点の1つの範囲内で不十分である場合には、試験台での補足的な測定からの補足的な測定値に基づいて、データに基づくモデルの改善を行うことが可能である。他方では、制御装置機能のためのデータ付与及び制御装置機能の作成の際に、個々の仮想的な測定点の不確実性を考慮することが可能である。このために、各測定値について不確実性を定めることが構想されうる。仮想的な測定値の不確実性を用いて、その際に少なくとも1つの測定値が利用可能であるが、当該測定値が機能のためのデータ付与のために利用されるかどうかを決定することが可能である。
本発明の更なる別の利点及び発展形態は、以下の明細書の記載、及び添付の図面から明らかとなろう。
先に記載した特徴及び以下で更に解説する特徴は、各示される組み合わせにおいてのみならず、他の組み合わせにおいて、又は単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく利用可能である。
本発明が、実施形態を用いて図面に概略的に示され、以下では、図面を参照しながら詳細に記載される。
図1では、制御装置機能のためにデータ付与する際の従来のやり方が概略的に示されている。DoE法による実験計画10が行われる。その際に、試験台での測定14のための入力変数(矢印12)を獲得するために、変更される全ての影響値の網羅的な測定が行われる。試験台での測定14から、測定雑音がある測定値が得られ、この測定値は、ツール18に入力され(矢印16)、ツール18内では、機能のラベルの最適化が実行される。機能のラベルが最適化されることによって(矢印20)、データ付与された制御機能22が獲得される。
従って、データ付与される制御装置機能のために、従来技術によれば、測定のための適切な実験計画が設定される。この測定は、エンジンの試験台で可能な限り正確に設定され、充填、消費量、又は排気のような目標変数が測定される。この測定値は、機能のラベル値の最適化のために利用される。その結果が、エンジン制御装置内で利用可能なデータ付与された機能である。
図2には、制御装置の機能のためにデータ付与するための、データに基づく大域的なモデルの利用が示されているが、ここでは、試験台での測定と最適化との間に、データに基づく大域的なモデルが挿入されている。DoE法による実験計画30が行われる。入力変数の変更によって、試験台での測定34のための入力変数(矢印32)が定められる。試験台での測定34では、測定雑音がある測定値が獲得され、この測定値を用いて(矢印36)、データに基づく大域的なモデル38が作成され、又はトレーニングされる。
このデータに基づく大域的なモデル38上で又は当該モデル38によって、試験台で実際の測定をシミュレーションする仮想的な測定が実行される。これに基づいて、雑音の無い測定値が獲得され(矢印40)、この測定値はツール42に入力され、ツール42内で、機能のラベルの最適化が実行される。機能のラベルが最適化されることにより(矢印44)、データ付与された制御装置機能46が獲得される。
本明細書で提示される図2の方法では、試験台での測定34の後に、データに基づく大域的なモデル38が挿入される。このモデルは、試験台での測定を用いてトレーニング点によってトレーニングされ、その品質が検査点を用いて検証される。このためにモデルの種類としては、ASCモデルをモデル化ツール内で利用することが可能である。神経回路網又はサポートベクター回帰(Support Vector Regression)のような他の種類のモデルが、他の選択肢として考えられるが、追加的に、モデルの不確実性シグマ(Sigma)を適切に計算する必要がある。このようなモデルによって、試験台の測定異常値も識別することが可能であり、当該測定異常値は無視されず又は測定し直されない。データに基づく大域的なモデルが適用のために必要な品質を有する場合には、モデル構築の工程が終了する。
データに基づく大域的なモデルを用いて、ラベルの最適化のためにより良好に適した仮想的な測定がシミュレーションされる。このことは、ツール内でも実現することが可能であり、その際に、予め設定された測定点で、データに基づくモデルに対して照会が行われる。ここで、この仮想的な測定には測定雑音がもはや伴わない。というのは、同じポイントで照会を繰り返しても同じ測定値が得られるからである。モデルの不確実性を用いて、要求された仮想的な測定点から、大きなシグマを有するものを選別することが可能である。
図3は、様々な車両バリエーションのためのデータ付与のためのモデル利用を示している。その際に、DoE法による実験計画50が行われる。影響値の変更によって、試験台での測定54のための入力値(矢印52)が定められる。試験台での測定の際には、測定雑音がある測定値が獲得され、この測定値を用いて(矢印56)、データに基づく大域的なモデル58が作成される。このデータに基づく大域的なモデル58は、第1の車両バリエーション60、第2の車両バリエーション62、及び、第3の車両バリエーション64のために利用される。第1の車両バリエーション60については、第1の動作範囲内の仮想的な測定値が獲得され(矢印66)、この仮想的な測定値は、機能のラベルを最適化するためのツール68に入力される。対応して、第2の車両バリエーション62について、第2の動作範囲内の仮想的な測定値が獲得され(矢印70)、機能のラベルの最適化のためのツール72に入力される。最後に、第3の車両バリエーション64のために、第3の動作範囲の仮想的な測定値が獲得され(矢印74)、この仮想的な測定値は、機能のラベルを最適化するためのツール76に入力される。
従って、図3では、様々な車両バリエーションの制御装置機能のためにデータ付与するための、データに基づく大域的なモデル58の利用が示されている。全ての車両バリエーションの動作範囲をカバーするために、試験台での測定に対するニーズが非本質的に高まることが明らかになる。
図4は、使用されるモデル化方法をグラフで示しており、その際に、横軸100に測定ポイント、すなわち測定点Xが刻まれ、縦軸102に測定値の高さが刻まれている。グラフでは、記録された測定値又はデータ104、データの多項式106、データのシグマ108、データのシグマの多項式110、データのベイズ回帰モデル112、ベイズ回帰モデルのシグマ114、及び、ベイズ回帰モデルの有効性116が記録されている。
図4では、4つの測定点でそれぞれ10回の測定(x=3の場合、測定は5回のみ)が行われている(データ)。出力変数のモデルとして、その係数が決定された簡単な3次多項式モデルが選択される(データの多項式)。4つの測定点で、反復測定により測定の分散が決定され(データのシグマ)、これに基づいて、3次多項式モデルが作成される(データのシグマの多項式)。測定データの分散が、中央よりも左側で大きいことが分かる。右側では、反復測定がかなり正確である。
記載される方法によれば、ベイズ回帰方法のバリエーション、例えば、ガウス過程モデルが利用される(データのガウス過程モデル)。2つのモデルが測定点において、比較可能なモデル値を算出するということが分かる。ベイズ回帰モデルのモデル予測に加えて、さらにモデル不確実性が出力される(ベイズ回帰モデルのシグマ)。このモデル不確実性は、モデルが、特定の入力位置でのその予測において如何に確実であるかを表している。4つの測定ポイントでのモデルシグマが小さいことが分かる。というのは、この4つの測定ポイントでは、モデルに情報が提供されるからである。(例えば5から8までの)測定ポイントの間では、モデルはモデル予測を与えるが、シグマが比較的大きいため不確実である。
従って、このモデル不確実性は、測定点の位置に依存し、測定点での測定データの分散には依存しない。x=1の場合に、モデルのシグマは、反復測定の分散が非常に異なっているにも関わらず、x=9の場合と同じ大きさである。それにも関わらず、モデルは、測定の平均値についての非常に正確な言明を行うことが可能である。x=3の場合には、より少ない反復測定が実行されている。従って、モデルシグマは、x=4に対して少し高くなっている。このモデルシグマを用いて、モデル品質が、測定される範囲全体において十分であるかを検査することが可能である(ベイズ回帰モデルの有効性)。
従って、従来技術で公知のような、測定値の分散を介した多項式モデルは基本的に、ベイズ回帰モデルのモデルシグマを用いたモデル品質の判定とは区別される。
提示される方法では、モデル品質を判断するためのモデルシグマの利用が1回行われることが確認される。
仮想的な測定とは単に、(例えばx=6のための)所望の入力位置での、データに基づくモデルの照会である。最適化タスクが必要な場合には、モデルの作成のための測定がx’=[1 3 4 9]でのみ行われたにも関わらず、例えば、ポイントx=[0 2 4 6 8 10]でモデルを照会することが可能である。データに基づくモデルの照会は、仮想的な測定として行われ、特に、モデル予測がx=[6 8]については不正確過ぎるという判断は、これまで記載されていない。
節点群による他の特性曲線又は特性マップとの結合の際などに、例えば、節点のグリッドが荒すぎる場合は、制御装置機能内で、個々の特性曲線又は特性マップの節点が変更されることもある。ここで、x=[1 3 5 6 7 9]のための出力変数が必要である場合に、このことが、モデルを作成するための測定ポイントに依存せずに、モデル上で行われる。この特性曲線又は特性マップは、データに基づく大域的なモデルと混同してはならず、入力変数の、最適化された目標値を提示するものである。
データに基づくモデル、例えば、ベイズ回帰モデルの作成又はトレーニングの際には基本的に、実験計画(DoE:Design of Experiment)に従った測定が必要である。しかしながら、この実験計画は、多項式の係数を推定するための実験計画とは異なる特性を有するべきであろう。図4で分かるように、ベイズ回帰がどこでも有効であるように、空間全体に測定が分散されるべきであろう。このために、個々の測定ポイントでの反復測定は必要ではない。
動作点「回転数」、更なる別の入力変数「噴射量」、及び出力変数「消費量」についての簡単な大域的なモデルの一例は、必要な測定の削減という事態を明らかにするものである。
大域的なモデルとして、[6x5]の節点のグリッドを有する特性マップが選択される場合に、回転数及び噴射量の変更の際には、「消費量」のための特性値を獲得するために、少なくとも30回の測定が必要である。
入力変数噴射量に沿って二次式の振る舞いを推測したことにより、測定に対する第1の削減が達成された。従って、各動作点(6個の節点)について多項式モデルが作成され、このために、動作点ごとに少なくとも3回の測定が必要である。これにより、6個の動作点モデルを作成するために、最小で18回の測定となる(Cornerstone参照)。このモデルの場合、回転数が節点間で必要とされる場合には、消費量について言明を行うことは可能ではなかった。
回転数及び噴射量を介して消費量についての大域的なガウス過程モデルを作成するために、消費量の平面が滑らかである場合には、空間全体を使った約15個の測定が必要である。
国際公開第2006/051039号明細書には、2−3−3−10次の大域的なチェビシェフ多項式の係数を計算するための、厳密に位置づけされた528個の測定ポイントが挙げられている。比較可能なガウス過程モデルを作成するためには、約300個の空間全体を使った測定で十分であろう。
図4では、測定の原則又は測定装置により条件付けられて、測定点での測定に測定雑音を伴うとことが分かる。実際の測定を、データに基づく大域的なモデルを使用した仮想的な測定により置換した場合には、この測定には測定雑音が無い。なぜならば、ポイントxでの関数値は常に同じ値yを返すからである。
提示される方法は、例えばエンジンの、最適な駆動のための制御装置機能のパラメータ化のための適用方法である。制御装置機能の1つ以上のラベルの節点の位置又は数の変更の際に、及び、エンジンが同じである様々な車両バリエーションの制御装置機能のためにデータ付与する際に、実際のシステムでの更なる測定が必要ではなく、この場合、エンジン試験台での測定が必要である。