本発明の好適な実施形態を、本明細書に示し記載したが、そのような実施形態が例としてのみ提供されているものであることは、当業者には明らかであろう。多数の変形、変更、置き換えが、これ以降、本発明から逸脱することなく当業者において生じるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替手段を、本発明を実施する際に適用してもよいことを理解すべきである。添付の請求項が本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲にある方法及び構造、並びにそれらの等価物が、それによって包含されることが意図されている。
I.定義
他に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の業者が一般に理解しているのと同一の意味を有する。
本明細書及び請求項において使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」には、文脈が明確に指示していない限り、複数への言及が含まれる。
本明細書で使用する場合、「薬剤」、又は「生物活性薬剤」は、生物学的、薬物的、若しくは化学的な化合物、又は他の部分を指す。非制限的例には、単純な又は複雑な有機若しくは無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミン誘導体、炭水化物、毒、又は化学療法化合物が挙げられる。様々な化合物を合成することができ、例えば、小さい分子及びオリゴマー(例えば、オリゴペプチド及びオリゴヌクレオチド)、並びに、様々なコア構造に基づく合成有機化合物が挙げられる。加えて、植物及び動物抽出物等の様々な天然物から、スクリーニングに向けた化合物が提供される。本発明の薬剤の構造的性質に関して制限が存在しないことは、当業者は容易に理解することができる。
本明細書で使用される「作動剤」という用語は、標的タンパク質の活性又は発現のどちらかを阻害することにより、標的タンパク質の生物学的機能を開始又は促進する能力を有する化合物を指す。従って、「作動剤」という用語は、標的ポリペプチドの生物学的役割の関連において定義される。本明細書における好適な作動剤は、標的と特異的に相互作用する(例えば標的に結合する)が、標的ポリペプチドが一要素をなすシグナル伝達経路の他の要素と相互作用することによって標的ポリペプチドの生物活性を開始又は促進する化合物もまた、具体的にこの定義に含まれる。
「拮抗剤」及び「阻害剤」という用語は、相互に交換可能に使用され、それらは、標的タンパク質の活性又は発現のどちらかを阻害することにより、標的タンパク質の生物学的機能を阻害する能力を有する化合物を指す。従って、「拮抗剤」及び「阻害剤」という用語は、標的タンパク質の生物学的役割の関連において定義される。本明細書の好適な拮抗剤は、具体的には、標的と相互作用する(例えば標的に結合する)が、他方、標的タンパク質が一要素をなすシグナル伝達経路の他の要素と相互作用することにより標的タンパク質の生物活性を阻害する化合物もまた、具体的にこの定義に含まれる。拮抗剤により阻害される好適な生物活性は、腫瘍の発現、成長、若しくは転移、又は自己免疫疾患において顕在化する望ましくない応答に関連している。
「抗癌剤」、「抗腫瘍剤」、又は「化学療法剤」は、腫瘍性の状態を治療する際に有用なあらゆる薬剤を指す。一つの種類の抗癌剤は、化学療法剤を含む。「化学治療」とは、一つ又は複数の化学治療薬物、及び/又は他の薬剤を、癌患者に様々な方法により投与することを意味し、それらの方法には、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮的、頬側、若しくは吸入、又は坐薬の形態が挙げられる。
「細胞増殖」という用語は、分裂の結果として細胞数が変化する現象を指す。この用語はまた、増殖シグナルと調和して細胞形態が変化した(例えば、サイズが大きくなった)細胞成長を包含する。
「共投与」、「〜と組み合わせて投与される」という用語、及びそれらの文法的同等表現は、本明細書で使用される場合には、二つ以上の薬剤を動物に、両薬剤及び/又はそれらの代謝物質がその動物内で同時に存在するように投与することを包含する。共投与は、別個の組成物を同時投与すること、別個の組成物を異なる時期に投与すること、又は、両薬剤とも存在する組成物を投与することを含む。
「有効量」、「薬剤有効量」という用語は、意図した用途に対して効果を及ぼすのに充分な、本明細書に記載される化合物の量を指し、その用途は、以下に定義される疾病治療を含むが、それらに限定されない。薬剤有効量は、意図とした用途(インビトロ又はインビボ)、又は治療されている対象及び疾病の状態、例えば、対象の体重及び年齢、病態の重篤度、投与様式等に応じて変化し得、通常の当業者によって容易に決定できる。この用語はまた、標的細胞における特定の応答、例えば血小板粘着及び/又は細胞遊走の低減を誘導する用量にも適用される。具体的な用量は、選択される特定の化合物、従うべき投与計画、他の化合物と組み合わせて投与するか否か、投与のタイミング、投与の対象となる組織、及び担体となる物理的送達系に応じて変化するであろう。
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」、「緩和すること」、及び[改善すること]は、本明細書において交換可能に使用される。これらの用語は、有効な又は所望の結果を得る方法を指し、その結果には、治療効果及び/又は予防効果が含まれるが、これらに制限されるものではない。治療効果は、治療されている根底にある障害の根絶又は改善を意味する。また、治療効果は、患者が根底にある障害を依然として患っているにも関わらずその患者に向上が観察されるように、根底にある障害に関連する一つ又は複数の身体的症状の根絶又は改善によって、達成される。予防効果のためには、組成物を、特定の病患を発症するリスクのある患者、又は病患の身体的症状の一つ又は複数が報告されている患者に、たとえこの疾患の診断がなされていない可能性があったとしても、投与してよい。
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、上に記載した治療効果及び/又は予防効果を包含する。予防効果は、病患若しくは状態の発現を遅延させる若しくは除去すること、病患若しくは状態の症状の開始を遅延させる若しくは除去すること、病患若しくは状態の進行を減速させる、停止させる、若しくは逆転させること、又は、それらの組み合わせを含む。
「薬剤的に許容できる塩」という用語は、当該技術分野で周知の多様な有機又は無機の対イオンから誘導される塩を指す。薬剤的に許容できる酸付加塩は、無機酸及び有機酸を用いて形成することができる。塩を誘導することができるもとの無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩を誘導することができるもとの有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。薬剤的に許容できる塩基付加塩は、無機塩基及び有機塩基を用いて形成することができる。塩を誘導することができるもとの無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が挙げられる。塩を誘導することができるもとの有機塩基には、例えば、一級、二級、及び三級アミン、天然物の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミン等が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬剤的に許容できる塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩から選択される。ビス塩(すなわち、二つの対イオン)、トリス塩、及びさらに多い対イオンを持つ塩が、薬剤的に許容できる塩の意味に包含される。
「薬剤的に許容できる担体」又は「薬剤的に許容できる賦形剤」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、剤皮、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤等が挙げられる。そうした媒質及び薬剤を、薬剤活性のある物質として使用することは、当該技術分野で周知である。いかなる従来の媒質及び薬剤も、活性成分と適合しないという場合を除き、本発明の薬剤組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性成分もまた、組成物に組み入れることができる。
「対象」とは、哺乳類等の動物、例えばヒトを指す。本明細書に記載の方法は、ヒト治療学と獣医学的適用の両方で有用であり得る。いくつかの実施形態では、患者は哺乳類であり、いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
「プロドラッグ」は、生理的条件の下で、又は加溶媒分解により、本明細書に記載の生理活性化合物へ転換され得る化合物を示すことを意図する。よって、「プロドラッグ」という用語は、薬剤的に許容できる生理活性化合物の前駆体を指す。プロドラッグは、対象に投与される際には不活性であり得るが、インビボで、例えば、加溶媒分解により活性化合物に転換される。プロドラッグ化合物からは、溶解度、組織適合性、又は哺乳類の器官への時限放出という利点が得られることがしばしばである(例えば、Bundgard, H., Design of Prodrugs (1985), pp. 7−9, 21−24 (Elsevier, Amsterdam)を参照されたい。プロドラッグに関する考察は、Higuchi, T., et al., “Pro−drugs as Novel Delivery Systems,” A.C.S. Symposium Series, Vol. 14、及びBioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987において提供されており、両文献とも、参照により完全に本明細書に組み込まれる。「プロドラッグ」という用語はまた、共有結合したあらゆる担体を含むことを意図し、これらの担体は、そうしたプロドラッグが哺乳類の対象に投与される際に、活性化合物をインビボで放出する。本明細書に記載の活性化合物のプロドラッグは、活性化合物に存在する官能基を修飾することにより調製されてもよく、その方法は、定型的な操作、又はインビボにおいて、修飾が開裂し、親の活性化合物になるようなものであってよい。プロドラッグに挙げられる化合物では、活性化合物のプロドラッグが哺乳類の対象に投与されると、ヒドロキシ、アミノ、又はメルカプト基が結合しているあらゆる基が開裂して、それぞれ遊離ヒドロキシ、遊離アミノ、又は遊離メルカプト基を形成する。プロドラッグの例には、アルコールの、酢酸塩、ギ酸塩、及び安息香酸塩誘導体、又は活性化合物中のアミン官能基の、アセトアミド、ホルムアミド及びベンズアミド誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
「インビボ」という用語は、対象の体内で生じる事象を指す。
「インビトロ」という用語は、対象の体外で生じる事象を指す。例えば、インビトロのアッセイは、対象アッセイの外で実行されるあらゆるアッセイを包含する。インビトロのアッセイは、生きた細胞または死んだ細胞を使用する細胞ベース(cell−based)のアッセイを包含する。インビトロのアッセイはまた、生細胞を用いない無細胞アッセイを包含する。
「単離する」という用語はまた、精製することを包含する。
他に言及のない限り、本明細書に示された構造はまた、同位体の濃縮された一つ又は複数の原子の存在という点においてのみ異なる化合物を含む。例えば、水素を重水素又は三重水素で置換すること、又は炭素を13C−、又は14C−の濃縮された炭素で置換したこと以外、本構造を有している化合物は、本発明の範囲内である。
本発明の化合物はまた、そうした化合物を構成する一つ又は複数の原子において、自然界にはない原子同位体比を含んでいてもよい。例えば、化合物は、三重水素(3H)、ヨウ素−125(125I)、又は炭素−14(14C)等の放射性同位元素で放射標識されていてもよい。本発明の化合物の全ての同位体変形が、それらが放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲内に包含される。
本明細書において、分子量等の物理的性質、又は化学式等の化学的性質に関して、範囲が使用される場合には、そこでは、範囲と具体的な実施形態とのあらゆる組み合わせ及び部分的組み合わせを含むことが意図される。数又は数値範囲を参照する場合の「約」という用語は、参照される数又は数値範囲が、実験での変動内(又は統計的な実験誤差の範囲内)に収まる近似であることを意味し、よって、数又は数値範囲は、言及される数又は数値範囲の、例えば、1%から15%の間で変動し得る。「含むこと(comprising)」という用語(及び「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」、又は「有すること(having)」、又は「含むこと(including)」等の関連用語)は、それらの実施形態、例えば、記載の特徴「からなる(consist of)」、又は記載の特徴「から実質的になる(consist essentially of)」、物質のあらゆる組成、組成物、方法、若しくは工程等の実施形態を含む。「から実質的になる(consist essentially of)」という表現は、主成分として及び/又は痕跡量で、物質又は組成物を物質的に変化させる、名前が挙げられていない構成要素を排除する。
「溶媒」、「有機溶媒」、又は「不活性溶媒」という用語はそれぞれ、それらとともに記載されている反応条件の下では不活性な溶媒であることを意味し、それらの溶媒には、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、メチレンクロリド(ジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、N−メチルピロリドン(「NMP」)、ピリジン等が挙げられる。反対の記述のない限り、本明細書に記載の反応で使用される溶媒は、不活性な有機溶媒である。反対の記述のない限り、各グラムの限定試薬、1cc(又はmL)の溶媒は、体積当量(volume equivalent)を構成する。
「溶媒和物」は、薬剤的に許容できる溶媒の一つ又は複数の分子と物理的に結びつく化合物(例えば、本明細書に記載の化合物、又は薬剤的に許容できるその塩)を指す。
「結晶形態」、「多形体」、及び「新規形態」は、本明細書において相互に交換可能に使用され得、化合物の、あらゆる結晶性及び非晶質の形態を含むことを意図し、それらの形態には、特定の結晶性又は非晶質の形態を指していない限り、例えば、多形体、擬多形体、溶媒和物、水和物、無水多形体(無水物を含む)、構造多形体、及び非晶質形態、並びにそれらの混合物を含む。本発明の化合物は、それらの化合物の結晶性及び非晶質の形態を含み、それらの形態には、例えば、化合物の、多形体、擬多形体、溶媒和物、水和物、無水多形体(無水物を含む)、構造多形体、及び非晶質の形態、並びにそれらの混合物が含まれる。
本明細書で列挙される化合物の薬剤的に許容できる形態には、薬剤的に許容できる塩、キレート、非共有結合型錯体、プロドラッグ、及びそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、薬剤的に許容できる塩の形態をとる。それゆえ、「化学的実体」、及び「化学的実体(複数)」という用語はまた、薬剤的に許容できる塩、キレート、非共有結合型錯体、プロドラッグ、及び混合物を包含する。
加えて、もし本発明化合物が酸付加塩として得られるなら、遊離塩基は、酸性塩の溶液を塩基性にすることによって得られる。逆に、もし生成物が遊離塩基であるなら、付加塩、特に、薬剤的に許容できる付加塩は、塩基性化合物から酸付加塩を調製する従来手順に準拠して、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解させ、溶液を酸で処理することによって得ることができる。当業者は、非毒性の薬剤的に許容できる付加塩を調製するのに使用してもよい様々な合成方法を認識するであろう。
II.組成物及び製造の方法
本明細書に記載の化学的実体は、一般に周知の合成方法の適切な組み合わせにより合成することが概して可能である。これらの化学的実体を合成する際に役立つ技術は、本開示に基づき、関連技術分野の業者にとっては、容易に見ることも使用することもできる。多くの随意に置換された出発化合物及び他の反応物質が、例えば、アルドリッチ社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から販売されており、又は一般に適用されている合成方法を用いて当業者が容易に調製することもできる。
本発明の方法に従って製造される多形体は、当技術分野のいかなる方法によっても特性評価され得る。例えば、本発明の方法に従って製造される多形体は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析分析(TGA)、ホットステージ顕微鏡、分光法(例えば、ラマン、固体相核磁気共鳴(ssNMR)、及び赤外(IR))により特性評価され得る。
XRPD
本発明の多形体は、X線粉末回折パターン(XRPD)により特性評価してもよい。XRPDピークの相対強度は、試料の調製技術、試料の取付け手順、及び使用する具体的な機器に応じて変化する可能性がある。更に、機器変動及び他の要因が、2−θ値に影響を及ぼす可能性がある。従って、XRPDピークの帰属は、プラスマイナス約0.2度だけ変化し得る。
DSC
本発明の多形体はまた、図に示すような、その特徴的な示差熱量走査(DSC)トレース(trace)によって特定することもできる。DSCに関しては、観測される温度が、温度変化率ならびに試料調製技術、及び使用する特定の機器に依存するであろうことが知られている。よって、DSCサーモグラム(thermogram)に関連して本明細書で報告される数値は、プラスマイナス約4℃だけ変動し得る。
TGA
本発明の多形形態はまた、非晶質の物質又は他の多形形態のものとは異なる熱的挙動を生じ得る。熱的挙動は、実験室において、熱重量分析(TGA)により測定してもよく、この分析を使って、いくつかの多形形態を他のものから識別することができる。一態様では、多形体を熱重量分析により特性評価してもよい。
本発明の多形形態は、医薬製剤の生成に有用であり、結晶性及び半結晶性の形態を生成する結晶化工程、又は非晶質の形態を得る凝固工程を用いて得ることができる。様々な実施形態では、結晶化を実行するには、反応混合物中で式Iの化合物を生成し、反応混合物から所望の多形体を単離するか、又は溶媒に原料化合物を、随意に加熱しながら溶解させた後、冷却(能動的な冷却を含む)する、及び/又はしばらく貧溶媒を加えることにより、生成物を結晶化/凝固させるかのどちらかを行う。結晶化又は凝固の後には、制御された条件下で、最終の多形形態が所望の含水量に達するまで乾燥させてもよい。
一態様では、本発明は、式I:
の化合物の一つ又は複数の多形体、又はその薬剤的に許容できる塩及び/若しくは溶媒和物を製造する方法を提供する。本発明の方法に従う多形体は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、非晶質形態、及び一つより多い形態の混合物から選択することができる。加えて、本発明に従って製造される多形体は、溶媒和物を含んでいてもよい。様々な実施形態では、本発明の多形体は、式Iの化合物の遊離塩基、HCl塩、又はビスHCl塩等の単塩、又はビス塩として調製される。
様々な実施形態では、式Iの合成のための中間体を、以下のスキームに従って製造する。
スキーム1
化合物1の化合物2への変換は、当技術分野のいかなる用法に従って実行してもよい。一実施形態では、化合物1を、無水DMF中、室温より高い温度で、イソプロピルブロミドと炭酸カリウムで処理する。
スキーム2
化合物3の化合物5への変換は、当技術分野のいかなる方法に従って実行してもよい。一実施形態では、化合物3を、メタノール中、臭化シアンで処理して化合物4を得る。化合物4を、ジボロン試薬との遷移金属触媒クロスカップリング反応を通じて、化合物5に変換してもよい。一実施形態では、化合物4を、1,4−ジオキサン中、110℃で、ビス(ピナコラート)ジボロン、酢酸カリウム、及びPdCl
2(dppf)で処理して、化合物5を得る。一実施形態では、化合物5をさらに、80℃等の高温で、酸、例えば6NのHClで処理して化合物5a、すなわちボロン酸誘導体を得る。
スキーム3
一実施形態では、式Iの化合物を以下のスキーム:
に従って直接カップリングさせることにより製造する。
化合物2と化合物5とのカップリングは、当該技術分野で既知の遷移金属触媒クロスカップリング反応の標準条件下で実行してもよい。一実施形態では、化合物2と5を、Pd(PPh3)4と炭酸ナトリウムの存在下、110℃で、1,4−ジオキサンと水の混合物中で加熱して、式Iの化合物を得てもよい。反応生成物の後処理は、MeOH中、例えば還流して、活性炭により処理し、パラジウムを除去することを含んでいてもよい。
代りに、以下のスキーム:
に従って、ボロン酸誘導体を使用してもよい。化合物2と化合物5aのカップリングは、当該技術分野で既知の遷移金属触媒クロスカップリング反応の標準条件下で実行してもよい。化合物5aは、HCl塩等の塩、若しくは分子内塩、又は塩でない形態であってもよい。一実施形態では、化合物2と5aを、Pd(PPh
3)
4と炭酸ナトリウムの存在下、110℃で、1,4−ジオキサンと水の混合物中で加熱して、式Iの化合物を得てもよい。反応生成物の後処理は、MeOH中、例えば還流において、活性炭により処理し、パラジウムを除去することを含んでいてもよい。
本発明の多形体は、式Iの化合物を生成するのに使用される出発物質によって制限されるものではない。
本明細書に記載の化学的実体と中間体の単離と精製は、所望であれば、あらゆる好適な分離又は精製の手順、例えば、ろ過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー若しくは厚層クロマトグラフィー、又はこれらの手順の組み合わせ等によって実現することができる。好適な分離及び単離は、以下の実施例を参照することにより、具体的に例示することができる。しかし、他の等価な分離及び単離の手順を使用することもできる。薬物生成物中の活性な薬剤成分としての処方に先立ち、式Iの化合物を、90%より高い純度、91%より高い純度、92%より高い純度、93%より高い純度、94%より高い純度、95%より高い純度、96%より高い純度、97%より高い純度、98%より高い純度、99%より高い純度、及び100%に達する純度で単離してもよい。
一態様では、本発明は、式I:
の化合物の多形体、又はその薬剤的に許容できる塩及び/若しくは溶媒和物を、式Iの化合物の合成後における第1の固体形態として所望の多形体を単離するか、又は代りに、式Iの化合物の事前の固体形態から転換したものとして所望の多形体を単離するかのどちらかによって、製造する方法を目的としている。一形態から他の形態への転換は、本発明の範囲内であり、その理由は、それらが、医薬製剤の生成に望まれる形態を得る代替の製造方法になりうるからである。
一実施形態では、所望の多形体は、形態Aであり、単離ステップは、単一溶媒系からの粗反応生成物の再結晶化を含む。様々な実施形態では、所望の多形体は形態Aであり、単離ステップは、まとめて多成分溶媒系として理解される、二成分、三成分、又はさらに多い成分の溶媒系からの粗生成物の再結晶化を含む。様々な実施形態では、所望の多形体は、形態Aであり、単離ステップは、単一、又は多成分溶媒系からの粗反応物質の再結晶化を含み、この場合には、結晶化は、溶解した式Iの化合物を含む溶液の能動的な冷却を含む。様々な実施形態では、所望の多形体は、形態Aであり、単離ステップは、単一、又は多成分溶媒系からの再結晶化を含み、この場合には、結晶化は、溶液から固体の形態Aを生じさせるための、能動的冷却ステップを伴うか否かのどちらかである、貧溶媒の添加を含む。
様々な実施形態では、所望の多形体は、形態Cであり、単離ステップは、単一溶媒系からの粗反応物質の再結晶化を含む。様々な実施形態では、所望の多形体は、形態Cであり、単離ステップは、二成分、三成分、又はさらに多い成分の溶媒系からの粗生成物の再結晶化を含み、この場合には、二成分、三成分、又はさらに多い成分の溶媒系は、まとめて多成分溶媒系として理解される。様々な実施形態では、所望の多形体は、形態Cであり、単離ステップは、単一、又は多成分溶媒系からの結晶化を含み、この場合には、溶解した式Iの化合物を含む溶液の能動的な冷却を含む。様々な実施形態では、所望の多形体は、形態Cであり、単離ステップは、単一、又は多成分溶媒系からの結晶化を含み、この場合には、結晶化は、溶液から固体の形態Cを生じさせるための、能動的冷却ステップを伴うか否かのどちらかである貧溶媒の添加を含む。様々な実施形態では、結晶化の状態は、非無水である。状態が非無水である場合、水が、痕跡量で、又は溶媒の1体積%未満の量で存在してもよい。様々な実施形態では、水は、約1%と約50%の間の量で、共溶媒(又は貧溶媒)として存在してもよい。例えば、水は、体積百分率で、溶媒の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、及び約50%で存在してもよい。様々な実施形態では、水は、体積百分率で、溶媒の約50%以上の量で存在してもよい。例えば、水は、体積百分率で、溶媒の約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、及び100%まで存在してもよい。様々な実施形態では、液体水は多成分溶媒系に、体積百分率で、溶媒系の約10%から約50%の間の量で存在する。様々な実施形態では、水は、水蒸気又は周囲湿度として存在してもよい。
様々な実施形態では、本発明は、式Iの化合物の多形体を製造する方法を対象としており、方法は、単離した多形体、又は多形体の混合物を、所望の多形体に変換することを含む。特定の実施形態では、方法は、一つ又は複数の多形体を含む組成物を、最初の多形体(複数可)の総量の少なくとも約50%を所望の多形体の少なくとも約50%に変換するのに充分な条件に曝露すること、及び、必要に応じて所望の多形体を単離することを含む。
様々な実施形態では、式Iの化合物の最初の固体形態は、形態Cでない多形体を、約50%より多く含み、所望の多形体は、形態Cである。形態Cへの変換は、多成分溶媒系を伴う条件下で、形態Cでない多形体の総量の少なくとも約50%を式Iの化合物の形態Cに変換するのに充分な時間にわたり実行してもよく、随意に必要に応じて、形態Cでないあらゆる多形体から形態Cを単離することを伴っていてもよい。多成分溶媒系は、水を含んでもよい。例えば、多成分溶媒系を用いることを含む条件は、最初の組成物を水/有機溶媒の混合物に25℃より高い温度で溶解させた後、得られた溶液を20℃以下に冷却することを含んでいてもよい。
様々な実施形態では、最初の組成物は、形態A、形態B、形態D、形態E、非晶質形態、及びそれらの混合物のうちの一つ以上を含む。様々な実施形態では、最初の組成物は、50重量%より多い多形形態Aである。
様々な実施形態では、本発明は、式Iの化合物の一つより多い多形体の混合物を含む組成物を対象としている。例えば,様々な実施形態では、組成物は、形態Cの、Cでない多形体に対する比を有し、この比は、1:1より大きい、又は9:1より大きい、又は99:1より大きい。様々な実施形態では、組成物は、形態C及び形態Aの両方を含む。
形態A
図1に、多形形態Aの高分解能XRPDディフラクトグラムを示す。図3に、形態Aについての熱重量分析(TGA)を示す。図4に、形態Aについての示差走査熱量測定(DSC)の吸熱分析を示す。図5に、形態AについてのGVSキネティックプロットを示す。
様々な実施形態では、形態Aは、式Iの化合物を生成する合成ステップの直接的な後処理から得てもよく、Aでない形態は得られない、又は、少量の構成成分として得られる。様々な実施形態では、形態Aは、メタノール及び酢酸エチルを含む単一溶媒系から、速やかに及びゆっくりと冷却する結晶化により得てもよい。様々な実施形態では、形態Aは、酢酸エチル及びメタノールを含む二成分溶媒系からの結晶化により、並びに、貧溶媒としてジクロロメタン又はヘキサンを伴う二成分溶媒系からの速やかな及びゆっくりした冷却により得てもよい。形態Aはまた、メタノール、酢酸エチル、DMF、DMSO、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、及びジメチルアセトアミド(DMA)中のスラリーから得てもよい。様々な実施形態では、形態Aは、無水溶媒中での、Aでない一つ又は複数の形態の再スラリー化により得られる。例えば、形態Aは、メタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、イソプロピルアルコール、エタノール、アセテート、エタノール/アセテート、又はそれらの混合物中での、Aでない一つ又は複数の形態(形態C等)の再スラリー化により得られる。
形態C
一実施形態では、本発明の多形体は、形態Cである。図12に、多形形態Cに関するXRPDを示す。図9に、形態Cに関する熱重量分析(TGA)を示す。図10に、形態Cに関するDSC吸熱分析を示す。記号「exo」は、発熱を示す。いくつかの実施形態では、形態Cは、約100℃でのピーク及び275℃でのピークを示すDSCトレースにより特徴づけられる。
様々な実施形態では、形態Cを、Cでない多形形態との混合物中に得てもよい。例えば、様々な実施形態では、形態Cは、Cでない一つ又は複数の多形形態をさらに含む組成物として存在してもよい。Cでない多形形態の量は変化してもよい。例えば、様々な実施形態では、多形形態Cの、Cでない一つ又は複数の多形体の総量に対する重量比は、約7:1より大きい、約8:1より大きい、約9:1より大きい、約9.5:1より大きい、又は約99:1より大きい。同様に、薬剤組成物に処方される場合、様々な量のCでない多形形態が存在してもよい。様々な実施形態では、薬剤組成物における、多形形態Cの、Cでない一つ又は複数の多形体の総量に対する重量比は、約7:1より大きくても、約8:1より大きくても、約9:1より大きくても、約9.5:1より大きくても、又は約99:1より大きくてもよい。
様々な実施形態では、形態Cを、水又は水を含む溶媒系に形態Aを入れることにより生成してもよい。この配合は、水又は水を含む溶媒系に曝露するとすぐに、スラリーを形成することもある。形態Aと水又は水を含む溶媒系とを配合したものを、随意に加熱しながら、形態Cの所望の量の変換が生じるまで攪拌してもよい。様々な実施形態では、溶媒系は、水を伴う水溶性アルコールである。様々な実施形態では、溶媒系は、水を伴う、非アルコールの水溶性溶媒である。様々な実施形態では、溶媒系は、水を伴う、THF、又は1,4−ジオキサンを含む一般的な有機溶媒である。様々な実施形態では、形態Cを、主要な溶媒としてテトラヒドロフラン、又は1,4−ジオキサン、及び貧溶媒として水を含む二成分溶媒系から、速やかな及びゆっくりした冷却により生成する。
水に加えて溶媒を使用する場合には、溶媒の、水に対する比は、約100/1から約1/100まで変化してもよい。例えば、溶媒の、水に対する比は、約100/1、約90/1、約80/1、約70/1、約60/1、約50/1、約40/1、約30/1、約20/1、約10/1、約9/1、約8/1、約7/1、約6/1、約5/1、約4/1、約3/1、約2/1、約1.5/1、約1/1、約1/1.5、約1/2、約1/3、約1/4、約1/5、約1/6、約1/7、約1/8、約1/9、約1/10、約1/20、約1/30、約1/40、約1/50、約1/60、約1/70、約1/80、約1/90、及び約1/100から選択されてもよい。溶媒、又は溶媒系の総量は、約0.1体積(例えば、リットル/kg)、約0.5体積、約1体積、約2体積、約3体積、4約体積、約5体積、約6体積、約7体積、約8体積、約9体積、約10体積、約11体積、約12体積、約13体積、約14体積、約15体積、約16体積、約17体積、約18体積、約19体積、約20体積、約30体積、約40体積、約50体積、又はそれ以上、から選択されてもよい。様々な実施形態では、溶媒系は、THF/水である。様々な実施形態では、溶媒系は、ジオキサン/水である。
様々な実施形態では、形態Cは、Cでない形態の再結晶化により得られ、再結晶化は、Cでない形態を完全に溶解させた後、ろ過して、不溶性のあらゆる粒子を除去し、続いて結晶化して形態Cを得ることを含む。様々な実施形態では、完全な溶解、及びろ過は実行されず、その場合には、スラリーが形成され、これが、Cでない一つ又は複数の形態の完全な溶解を伴わずに形態Cに転換する。様々な実施形態では、形態Cは、チャネル水和物である。
様々な実施形態では、方法は、式I:
の化合物の多形形態Aを製造する方法が開示され、前記方法は、
(i)化合物2と5:
を反応させること、又は化合物2と5a:
を反応させることによって、式Iの化合物を生成させること;及び(ii)多形形態Aをとる式Iの前記化合物を単離することを含み、前記単離は、パラジウムを除去する条件下で生じる。例えば、パラジウムは、式Iの化合物を活性炭で処理することにより除去される。様々な実施形態では、式Iの化合物の処理は、還流するメタノールを含む。パラジウムを除去する処理を行うと、単離した多形形態Aは、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.01重量%未満、約0.001重量%未満、及び約0.0001重量%未満から選択される量のパラジウムを含む。
塩の形態
様々な実施形態では、式Iの化合物は、薬剤的に許容できる塩である。薬剤的に許容できる酸付加塩は、無機酸及び有機酸を用いて形成することができる。塩を誘導することのできるもとの無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩を誘導することのできるもとの有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、1,2−エタンジスルホン酸等が挙げられる。薬剤的に許容できる塩基付加塩は、無機及び有機塩基を用いて形成することができる。塩を誘導することのできるもとの無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が挙げられる。塩を誘導することのできるもとの有機塩基には、例えば、一級、二級、及び三級アミン、自然界に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等が挙げられ、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミン等が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬剤的に許容できる塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩から選択される。ビス塩(すなわち、二つの対イオン)、及びさらに多くの対イオンを持つ塩が、薬剤的に許容できる塩の意味に包含される。
様々な実施形態では、式Iの塩を、硫酸、p−トルエンスルホン酸、D−グルカロン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、2−ナフタレンスルホン酸(NSA)、塩酸(HCl)(モノ及びビス)、臭化水素酸(HBr)、シュウ酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸(NDSA)、DL−マンデル酸、フマル酸、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、ベンゼンスルホン酸(BSA)、エタンスルホン酸(ESA)、L‐リンゴ酸、リン酸、及びアミノエタンスルホン酸(タウリン)を用いて形成してもよい。
重水素原子
様々な実施形態では、式Iの化合物を、一つ又は複数の水素原子を重水素原子で置換することにより修飾してもよい。様々な実施形態では、置換することになる一つ又は複数の水素原子は、炭素原子に結合する水素、例えば、以下の式中のH1〜H11で表されるものから選択される:
置換されることになる水素(複数可)は、上式に示す通り、H1〜H7のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。式Iの化合物に組み込まれることになる重水素原子の数は、重水素原子一つから、重水素原子による全水素原子の置換までの範囲であってもよい。例えば、様々な実施形態では、上式のH1〜H6で指定される一つから六つの水素が、一つから六つの重水素原子で、任意の組み合わせで置換される。したがって、式Iの化合物は、二つのCD3基、一つのCD3基及び一つのCHD2基、一つのCD3基及び一つのCH2D基、一つのCD3基及び一つのCH3基、二つのCHD2基、一つのCHD2基及び一つのCH2D基、一つのCHD2基及び一つのCH3基、二つのCH2D基、一つのCH2D基及び一つのCH3基等を有していてもよい。
様々な実施形態では、重水素標識された式Iの化合物は、非標識化合物と比較して、向上した代謝安定性を示す。あるいは、重水素標識された化合物は、NMR又は代謝経路分析等の化合物分析に有用である。
式II及びIII
様々な実施形態では、式II及びIII:
の化合物が合成され、式II中のXはハロゲンである。様々な実施形態では、Xは、ヨウ素及び臭素から選択される。
様々な実施形態では、式Iの化合物の合成はまた、結果として式II及び/又はIIIの化合物を生じる。例えば、本明細書において開示されるスキーム1及び3の合成を実行する際、式II及びIIIの化合物が合成されることもある。様々な実施形態では、式II又はIIIの化合物は、式Iの化合物又はその前駆体から除去又は分離される。例えば、上のスキーム1では、化合物2は式IIの化合物と共存しており、化合物2は、式IIの化合物の量が、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.1重量%、又は0.01重量%未満に減少するまで精製され、すべての量は約である。式Iの化合物に関しては、式Iの化合物が式IIIの化合物と共存している場合、式Iの化合物は、式IIIの化合物の量が、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.1重量%、又は0.01重量%未満に減少するまで精製され、すべての量は約である。
III.組成物
本発明は、本発明の一つ以上の多形体を含む組成物(医薬組成物を含む)を提供する。
種々の実施形態において、所望の多形体(形態A、形態C等)の、他のすべての多形体に対する比率は、約5:1超、6:1超、7:1超、8:1超、9:1超、又はそれ以上であり得る。
主題の医薬組成物は、典型的に、活性成分として、治療有効量の本発明の多形体、又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を提供するように製剤化される。所望される場合、医薬組成物は、薬剤的に許容できる塩及び/又はその配位錯体、並びに一つ以上の薬剤的な許容できる賦形剤、担体(不活性固体希釈剤及び充填剤を含む)、希釈剤(滅菌水溶液及び各種有機溶剤を含む)、透過促進剤、可溶化剤、及びアジュバントを含有する。
主題の医薬組成物は、単独で投与しても、一つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与してもよく、これらの他の薬剤も、通常は医薬組成物の形態で投与される。所望される場合、主題の多形体と他の薬剤(複数可)を混合して単一の調製物にしてよく、あるいは、両成分を個別の調製物に製剤化して、別々又は同時に組み合わせて使用してもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される多形体の一つ以上の濃度は、w/w、w/v、又はv/vで100%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満、又は0.0001%未満である。
いくつかの実施形態では、本発明の多形体の一つ以上の濃度は、w/w、w/v、又はv/vで90%超、80%超、70%超、60%超、50%超、40%超、30%超、20%超、19.75%超、19.50%超、19.25%超、19%超、18.75%超、18.50%超、18.25%超、18%超、17.75%超、17.50%超、17.25%超、17%超、16.75%超、16.50%超、16.25%超、16%超、15.75%超、15.50%超、15.25%超、15%超、14.75%超、14.50%超、14.25%超、14%超、13.75%超、13.50%超、13.25%超、13%超、12.75%超、12.50%超、12.25%超、12%超、11.75%超、11.50%超、11.25%超、11%超、10.75%超、10.50%超、10.25%超、10%超、9.75%超、9.50%超、9.25%超、9%超、8.75%超、8.50%超、8.25%超、8%超、7.75%超、7.50%超、7.25%超、7%超、6.75%超、6.50%超、6.25%超、6%超、5.75%超、5.50%超、5.25%超、5%超、4.75%超、4.50%超、4.25%超、4%超、3.75%超、3.50%超、3.25%超、3%超、2.75%超、2.50%超、2.25%超、2%超、1.75%超、1.50%超、125%超、1%超、0.5%超、0.4%超、0.3%超、0.2%超、0.1%超、0.09%超、0.08%超、0.07%超、0.06%超、0.05%超、0.04%超、0.03%超、0.02%超、0.01%超、0.009%超、0.008%超、0.007%超、0.006%超、0.005%超、0.004%超、0.003%超、0.002%超、0.001%超、0.0009%超、0.0008%超、0.0007%超、0.0006%超、0.0005%超、0.0004%超、0.0003%超、0.0002%超、又は0.0001%超である。
いくつかの実施形態では、本発明の多形体の一つ以上の濃度は、w/w、w/v、又はv/vで約0.0001%〜約50%、約0.001%〜約40%、約0.01%〜約30%、約0.02%〜約29%、約0.03%〜約28%、約0.04%〜約27%、約0.05%〜約26%、約0.06%〜約25%、約0.07%〜約24%、約0.08%〜約23%、約0.09%〜約22%、約0.1%〜約21%、約0.2%〜約20%、約0.3%〜約19%、約0.4%〜約18%、約0.5%〜約17%、約0.6%〜約16%、約0.7%〜約15%、約0.8%〜約14%、約0.9%〜約12%、約1%〜約10%の範囲にある。
いくつかの実施形態では、本発明の多形体の一つ以上の濃度は、約0.001%〜約10%、約0.01%〜約5%、約0.02%〜約4.5%、約0.03%〜約4%、約0.04%〜約3.5%、約0.05%〜約3%、約0.06%〜約2.5%、約0.07%〜約2%、約0.08%〜約1.5%、約0.09%〜約1%、約0.1%〜約0.9%の範囲にある。
いくつかの実施形態では、本発明の多形体の一つ以上の量は、10g以下、9.5g以下、9.0g以下、8.5g以下、8.0g以下、7.5g以下、7.0g以下、6.5g以下、6.0g以下、5.5g以下、5.0g以下、4.5g以下、4.0g以下、3.5g以下、3.0g以下、2.5g以下、2.0g以下、1.5g以下、1.0g以下、0.95g以下、0.9g以下、0.85g以下、0.8g以下、0.75g以下、0.7g以下、0.65g以下、0.6g以下、0.55g以下、0.5g以下、0.45g以下、0.4g以下、0.35g以下、0.3g以下、0.25g以下、0.2g以下、0.15g以下、0.1g以下、0.09g以下、0.08g以下、0.07g以下、0.06g以下、0.05g以下、0.04g以下、0.03g以下、0.02g以下、0.01g以下、0.009g以下、0.008g以下、0.007g以下、0.006g以下、0.005g以下、0.004g以下、0.003g以下、0.002g以下、0.001g以下、0.0009g以下、0.0008g以下、0.0007g以下、0.0006g以下、0.0005g以下、0.0004g以下、0.0003g以下、0.0002g以下、又は0.0001g以下である。
いくつかの実施形態では、本発明の多形体の一つ以上の量は、0.0001g超、0.0002g超、0.0003g超、0.0004g超、0.0005g超、0.0006g超、0.0007g超、0.0008g超、0.0009g超、0.001g超、0.0015g超、0.002g超、0.0025g超、0.003g超、0.0035g超、0.004g超、0.0045g超、0.005g超、0.0055g超、0.006g超、0.0065g超、0.007g超、0.0075g超、0.008g超、0.0085g超、0.009g超、0.0095g超、0.01g超、0.015g超、0.02g超、0.025g超、0.03g超、0.035g超、0.04g超、0.045g超、0.05g超、0.055g超、0.06g超、0.065g超、0.07g超、0.075g超、0.08g超、0.085g超、0.09g超、0.095g超、0.1g超、0.15g超、0.2g超、0.25g超、0.3g超、0.35g超、0.4g超、0.45g超、0.5g超、0.55g超、0.6g超、0.65g超、0.7g超、0.75g超、0.8g超、0.85g超、0.9g超、0.95g超、1g超、1.5g超、2g超、2.5超、3g超、3.5超、4g超、4.5g超、5g超、5.5g超、6g超、6.5g超、7g超、7.5g超、8g超、8.5g超、9g超、9.5g超、又は10g超である。
いくつかの実施形態では、本発明の多形体の一つ以上の量は、0.0001〜10g、0.0005〜9g、0.001〜8g、0.005〜7g、0.01〜6g、0.05〜5g、0.1〜4g、0.5〜4g、又は1〜3gの範囲にある。
本発明による多形体は、広い用量範囲で効果を有する。例えば、成人の治療において使用できる用量の例として、1日あたり0.01〜1000mg、0.5〜100mg、1〜50mg、及び5〜40mgが挙げられる。代表的な用量は、1日又は1週間あたり10〜30mgである。正確な用量は、投与経路、多形体の投与形態、治療対象、治療対象の体重、及び担当医の選択と経験によって異なる。
種々の実施形態において、式Iの医薬組成物は、式IIIのある量の化合物も含有する。例えば、式Iの組成物は、式IIIの検出可能な量の化合物を含み得る。種々の実施形態において、式IIIの化合物の量は、式Iの量に対して、約50重量%未満、約40重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満である。
以下、医薬組成物及びその調製方法の非限定的な代表例について述べる。
経口投与用の医薬組成物:いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の多形体と、経口投与に適した医薬賦形剤とを含有した、経口投与用の医薬組成物を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、(i)本発明の有効量の化合物と、(ii)任意で第2の有効量の薬剤と、(iii)経口投与に適した一つ以上の医薬賦形剤と、を含有した、経口投与用の固体医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、この組成物はさらに、(iv)第3の有効量の薬剤を含有する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口摂取に適した液体の医薬組成物であってよい。経口投与に適した本発明の医薬組成物は、分離した剤形(例えばカプセル、カシェ剤、錠剤)、粉末状若しくは顆粒状の所定量の活性成分を各々含有する液体若しくはエアロゾルスプレー、溶液、水溶性液体中若しくは非水溶性液体中の懸濁剤、水中油型乳剤、又は油中水滴型液体乳剤として呈示できる。このような剤形は、任意の調剤方法で調製できるが、いずれの方法も、一つ以上の必要成分を構成する担体を活性成分に付随させるステップを含む。一般に、組成物は、活性成分と、液体担体及び微粉化した固体担体の一方又は両方を均一かつ密接に混合してから、必要に応じて生成物を所望の呈示物に成形することにより調製する。例えば錠剤は、随意に一つ以上の補助成分を伴って、圧縮又は成形により調製することができる。圧縮錠剤は、粉末、顆粒といった自由流動形態の活性成分を適切な機械で圧縮し、かつ随意に賦形剤(例えば結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、及び/又は界面活性剤若しくは分散剤が挙げられるが、これらに限定されない)と混合することにより、調製できる。成形錠剤は、適切な機械で、不活性の液体希釈剤で浸潤した粉末化合物の混合物を成形することによって製造できる。
水は一部の化合物の分解を促進することがあるため、本発明は、活性成分を含む無水の医薬組成物及び剤形をさらに包含する。例えば、医薬分野においては、貯蔵寿命や製剤の経時的安定性等の特性を判定する目的で、長期貯蔵をシミュレートする手段として水を添加(例えば5%)する場合がある。無水又は低含水率の成分と、低水分又は低湿度条件を使用することにより、本発明の無水の医薬組成物及び剤形を調製することができる。製造、梱包、及び/又は保管時に水分及び/又は湿気との実質的接触が予想される場合は、ラクトースを含有する本発明の医薬組成物及び剤形を無水にすることができる。無水の医薬組成物は、その無水の性質を維持するように調製し貯蔵することができる。したがって、適切な処方キット(formulary kit)に含まれるように、水への曝露を防止することが公知である材料を用いて無水組成物を包装できる。適切な包装の例として、密封封止フォイル、プラスチック又は同種材料、単位用量容器、ブリスター包装、及びストリップ包装が挙げられるが、これらに限定されない。
従来の医薬調剤手法に従って、密に混合した混合物中で活性成分を医薬担体と組み合わせることができる。担体は、投与用として所望される調製形態に応じて、多種多様な形態をとることができる。経口投与剤形用の組成物を調製する際、通常の医薬媒体のいずれも担体として使用することができる。例えば、経口液体製剤(懸濁液、溶液、エリキシル剤等)の場合は、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤等を使用でき、経口固体製剤の場合は、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、及び崩壊剤を使用でき、いくつかの実施形態ではラクトースの使用を採用しない。例えば、適切な担体には、固体経口製剤では粉末、カプセル、錠剤が含まれる。所望される場合は、標準の含水手法又は非水手法により錠剤をコーティングしてよい。
医薬組成物及び剤形での使用に適した結合剤には、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、その他のデンプン、ゼラチン、アカシア等の天然及び合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、その他のアルギン酸塩、粉末トラガント、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、並びにこれらの混合物が含まれる。
本明細書に開示される医薬組成物及び剤形で使用するための適切な充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒又は粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の組成物に崩壊剤を使用して、水性環境への曝露時に崩壊する錠剤を提供することができる。崩壊剤の量が多すぎる場合、瓶内で崩壊する錠剤が作製され得る。少なすぎる場合は崩壊発生に不十分であり得るため、剤形から活性成分が放出する速度と程度が変化し得る。したがって、活性成分の放出を不利益に変化させるほど少なすぎず、かつ多すぎない、十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書に開示される多形体の剤形を形成できる。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類と投与方式に応じて変動し得るが、当業者には容易に認識可能であろう。医薬組成物中に約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤、又は約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を使用してよい。本発明の医薬組成物及び剤形の形成に使用できる崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、その他のデンプン、アルファ化デンプン、その他のデンプン、粘土、その他のアルギン類、その他のセルロース類、ゴム、又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物及び剤形の形成に使用できる滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽質鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えばラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル(ethylaureate)、又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。さらなる滑沢剤には、例えば、シロイド(syloid)シリカゲル、合成シリカの凝固エアロゾル、又はこれらの混合物が含まれる。随意に、医薬組成物の約1重量パーセント未満の量の滑沢剤を添加してよい。
いくつかの場合、コロイド粒子は、少なくとも一つのカチオン性薬剤及び少なくとも一つの非イオン性界面活性剤、例えばポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、又はステアリン酸ポリオキシルを含む。いくつかの場合、カチオン性薬剤は、アルキルアミン、第三級アルキルアミン、第四級アンモニウム化合物、カチオン性脂質、アミノアルコール、ビグアニジン塩、カチオン性化合物、又はこれらの混合物である。いくつかの場合、カチオン性薬剤は、クロルヘキシジン、ポリアミノプロピルビグアニジン、フェンホルミン、アルキルビグアニジン、又はこれらの混合物等のビグアニジン塩である。いくつかの場合、第四級アンモニウム化合物は、ハロゲン化ベンザルコニウム、ハロゲン化ラウラルコニウム、セトリミド、ハロゲン化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セトリモニウム、ハロゲン化ベンゼトニウム、ハロゲン化ベヘンアルコニウム、ハロゲン化セタルコニウム、ハロゲン化セテチルジモニウム、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化ベンゾドデシニウム、ハロゲン化クロラリルメテナミン、ハロゲン化ミリスチルアルコニウム、ハロゲン化ステアラルコニウム、又はこれらの二つ以上の混合物である。いくつかの場合、カチオン性薬剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ラウラルコニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化ベンゼテニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、又はこれらの二つ以上の混合物である。いくつかの場合、油相は、鉱油及び軽質鉱油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、ヤシ油;水素化綿実油、水素化パーム油、水素化ヒマシ油、又は水素化ダイズ油を含む水素化油;ポリオキシル−40水素化ヒマシ油、ポリオキシル−60水素化ヒマシ油、又はポリオキシル−100水素化ヒマシ油を含むポリオキシエチレン水素化ヒマシ油誘導体である。
経口投与にとって水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤が望ましい場合、その中の活性成分を、様々な甘味剤若しくは香味剤、着色物質、又は染料と組み合わせてよく、また所望される場合には、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、及びこれらの様々な組み合わせなどの希釈剤と一緒に、乳化剤及び/又は懸濁化剤と組み合わせてよい。
錠剤はコーティングされていなくてもよく、あるいは消化管における崩壊と吸収を遅延するための公知の手法によって錠剤をコーティングしてもよく、それにより、より長期にわたって持続作用を提供できる。例えば、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル等の時間遅延物質を使用することができる。経口使用のため製剤は、硬質ゼラチンカプセル剤としても提供でき、この場合、活性成分は、不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合され、あるいは軟質ゼラチンカプセル剤として提供でき、この場合、活性成分は水又は油性媒体、例えばラッカセイ油、液体パラフィン、又はオリーブ油と混合される。
本発明の医薬組成物及び剤形の形成に使用できる界面活性剤には、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。すなわち、親水性界面活性剤の混合物を使用してよく、親油性界面活性剤の混合物を使用してよく、又は少なくとも一種の親水性界面活性剤と少なくとも一種の親油性界面活性剤の混合物を使用してよい。
適切な親水性界面活性剤は、概して、少なくとも10のHLB値を有し得、適切な親油性界面活性剤は、概して約10以下のHLB値を有し得る。非イオン性両親媒性化合物の相対的な親水性と疎水性を特徴付けるために使用される経験的パラメーターは、親水−親油性バランス(「HLB」値)である。HLB値の低い界面活性剤は、親油性すなわち疎水性が高く、油での溶解度が高いのに対し、HLB値の高い界面活性剤は、親水性が高く、水溶液での溶解度が高い。親水性界面活性剤は一般に、約10を超えるHLB値を有する化合物であるとみなされ、加えて、HLB尺度が一般に適用できない陰イオン性、陽イオン性、又は双性イオン性化合物であるとみなされる。同様に、親油性(すなわち疎水性)の界面活性剤は、約10以下のHLB値を有する化合物である。ただし、界面活性剤のHLB値は、工業用、医薬用、及び化粧品用の乳剤の製剤化を可能にするために一般に使われる大まかな指針にすぎない。
親水性界面活性剤は、イオン性、非イオン性のどちらであってもよい。適切なイオン性界面活性剤には、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチン及び水素化レシチン;リゾレシチン及び水素化リゾレシチン;リン脂質及びその誘導体;リゾリン脂質及びその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;硫酸アルキルの塩;脂肪酸塩;ナトリウムドクセート;アシルアクチレート(acylactylates);モノ−及びジ−グリセリドのモノ−及びジ−アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ−及びジ−グリセリド;モノ−及びジ−グリセリドのクエン酸エステル;並びにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
上記グループの中で、イオン性界面活性剤の例として、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質及びその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ナトリウムドクセート;アシルアクチレート(acylactylates);モノ−及びジ−グリセリドのモノ−及びジ−アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ−及びジ−グリセリド;モノ−及びジ−グリセリドのクエン酸エステル;並びにこれらの混合物が挙げられる。
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG−ホスファチジルエタノールアミン、PVP−ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチル酸エステル、ステアロイル−2−ラクチレート、ラクチル酸ステアロイル、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン、カプロエート、カプリレート、カプレート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、オレエート、リシノレエート、リノレエート、リノレネート、ステアレート、硫酸ラウリル、硫酸テラセシル、ドクセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、並びにこれらの塩及び混合物のイオン化形態であってよい。
親水性の非イオン性界面活性剤には、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノール等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも一つのメンバーとポリオールとの親水性エステル転移反応生成物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体及び類似体;ポリオキシエチレン化ビタミン及びその誘導体;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;及びこれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、並びにトリグリセリド、植物油、及び水素化植物油からなる群の少なくとも一つのメンバーとポリオールとの親水性エステル転移反応生成物が含まれ得るが、これらに限定されない。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、又はサッカライドであってよい。
その他の親水性非イオン性界面活性剤には、ラウリン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、ラウリン酸PEG−20、ラウリン酸PEG−32、ジラウリン酸PEG−32、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、オレイン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−32、オレイン酸PEG−200、オレイン酸PEG−400、ステアリン酸PEG−15、ジステアリン酸PEG−32、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−100、ジラウリン酸PEG−20、トリオレイン酸PEG−25グリセリル、ジオレイン酸PEG−32、ラウリン酸PEG−20グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ステアリン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−40グリセリル、PEG−40パーム核油、PEG−50水素化ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40水素化ヒマシ油、PEG−60水素化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、カプリン酸/カプリル酸PEG−6グリセリド、カプリン酸/カプリル酸PEG−8グリセリド、ラウリン酸ポリグリセリル−10、PEG−30コレステロール、PEG−25フィトステロール、PEG−30ソイステロール、トリオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−40ソルビタン、ラウリン酸PEG−80ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリルエーテル、トコフェリルコハク酸PEG−100、PEG−24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル−10、Tween40、Tween60、モノステアリン酸スクロース、モノラウリル酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10−100ノニルフェノールシリーズ、PEG15−100オクチルフェノールシリーズ、及びポロキサマーが含まれるが、これらに限定されない。
適切な親油性界面活性剤の単なる例として、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロール及びステロール誘導体;ポリオキシエチレン化ステロール及びステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノ−及びジ−グリセリドの乳酸誘導体;グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも一つのメンバーとポリオールとの疎水性エステル転移反応生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。このグループのうちの好適な親油性界面活性剤として、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びこれらの混合物が挙げられ、あるいは、好適な親油性界面活性剤は、植物油、水素化植物油、及びトリグリセリドからなる群の少なくとも一つのメンバーとポリオールとの疎水性エステル転移反応生成物である。
一実施形態では、組成物は可溶化剤を含んでよく、これにより、本発明の化合物の十分な可溶化及び/又は溶解を確実にし、かつ本発明の化合物の沈殿を最小化できる。このことは、非経口使用のための組成物、例えば注射用組成物にとって特に重要であり得る。また、親水性薬物及び/又は他の成分(界面活性剤等)の溶解度を増加させ、あるいは組成物を安定又は均質な溶液又は分散液として維持する目的で、可溶化剤を添加してもよい。
適切な可溶化剤には以下が含まれるが、これらに限定されない:アルコール類及びポリオール類、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体;テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)、メトキシPEG等の、平均分子量が約200〜約6000のポリエチレングリコールのエーテル;アミドその他の窒素含有化合物、例えば2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、ポリビニルピロリドン等;エステル類、例えばプロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ブチル酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ε−カプロラクトン及びその異性体、δ−バレロラクトン及びその異性体、β−ブチロラクトン及びその異性体;並びに当技術分野で公知の他の可溶化剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及び水。種々の実施形態において、12−ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールモノエステル及びジエステル並びに約30%遊離ポリエチレングリコールを含む可溶化剤(Solutol HS 15として提供されている)を、可溶化剤として使用する。
可溶化剤の混合物を使用してもよい。例としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200−100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、及びジメチルイソソルビドが挙げられるが、これらに限定されない。特に好適な可溶化剤として、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG−400、グリコフロール、及びプロピレングリコールが挙げられる。
含めることのできる可溶化剤の量は特に限定されない。所与の可溶化剤の量は生物学的に許容される量に限定され得るが、この量は当業者により容易に決定され得る。いくつかの状況において、生物学的に許容される量をはるかに過える可溶化剤を入れて、例えば薬物濃度を最大化し、対象に組成物を提供する前に、蒸留や蒸発等の従来の手法を用いて過剰な可溶化剤を除去することが有利であり得る。したがって、可溶化剤が存在する場合、可溶化剤は、薬物及び他の賦形剤を合わせた重量に対して、10重量%、25重量%、50重量%、100重量%、又は最大約200重量%の重量比であってよい。所望される場合、例えば5%、2%、1%、又はさらに少量の非常に少量の可溶化剤を使用してもよい。典型的に、可溶化剤は、約1重量%〜約100%重量の量、より典型的には約5重量%〜約25重量%の量で存在し得る。
組成物は、一つ以上の薬剤的に許容できる添加剤及び賦形剤をさらに含むことができる。このような添加剤及び賦形剤には、脱粘着剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、保存剤、キレート剤、粘度調節剤、等張化剤、香味剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、滑沢剤、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
加えて、処理の促進、安定性の増強、又は他の理由で、酸又は塩基を組成物に組み込んでよい。薬剤的に許容できる塩基の例としては、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロカルサイト(hydrocalcite)、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)等が挙げられる。また、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等の薬剤的に許容できる酸の塩である塩基も、適切である。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の多塩基酸の塩も使用できる。塩基が塩である場合、陽イオンは、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属等、任意の好都合な薬剤的に許容できる陽イオンであってよい。例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、及びアンモニウムが含まれ得るが、これらに限定されない。
適切な酸は、薬剤的に許容できる有機酸又は無機酸である。適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等が挙げられる。適切な有機酸の例として、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等が挙げられる。
注射用の医薬組成物。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物と、注射に適した医薬賦形剤とを含有する、注射用の医薬組成物を提供する。組成物中の薬剤の成分及び量は、本明細書に記載の通りである。
注射による投与のために本発明の新規組成物を組み込むことのできる形態としては、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、又はラッカセイ油、及びエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、又は滅菌水溶液、及び類似の医薬ビヒクルを用いた、水性又は油性の懸濁剤又は乳剤が挙げられる。
食塩水中水溶液も、従来から注射に使用されている。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等(及びこれらの適切な混合物)、シクロデキストリン誘導体、及び植物油を使用してもよい。例えば、分散剤の場合には、必要な粒径を維持するために、レシチン等のコーティングを使用し、かつ界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を維持することができる。微生物作用を予防するには、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等を使用できる。
滅菌注射剤の調製は、必要量の本発明の化合物を、必要に応じて、上に列挙した他の様々な成分と共に適切な溶媒中に組み入れ、次いでろ過滅菌することにより行う。一般に、分散剤の調製は、滅菌した様々な活性成分を、基礎分散媒及び上で列挙した成分のうち必要な他の成分を含有する滅菌媒体中に組み入れることにより行う。滅菌注射剤の調製のための滅菌粉末の場合、ある特定の望ましい調製法は真空乾燥法及び凍結乾燥法であり、これらの手法では、有効成分に所望の成分を加えたものを事前に滅菌ろ過溶液とし、その溶液から粉末を得る。
局所(例えば経皮)送達用の医薬組成物。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物と、経皮送達に適した少なくとも一つの医薬賦形剤とを含有する、経皮送達用の医薬組成物を提供する。
本発明の組成物は、局所(local or topical)投与に適した固体、半固体、又は液体形態の調製物、例えばゲル剤、水溶性ゼリー剤、クリーム剤、ローション剤、懸濁剤、泡沫剤、粉末剤、スラリー剤、軟膏剤、溶液剤、油剤、ペースト剤、坐剤、スプレー剤、乳剤、生理食塩水液剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)系溶液等に製剤化することができる。一般に、高密度の担体は、ある領域に活性成分をより長時間曝露することができる。これに対して、溶液製剤は、選択領域に活性成分をより即時的に曝露できる。
本医薬組成物はまた、皮膚の角質層透過性障壁を通る治療用分子の浸透を増大させ、又はその送達を支援する化合物である、適切な固相又はゲル相の担体又は賦形剤を含んでもよい。こうした浸透促進分子の多くは、局所製剤分野において公知である。このような担体及び賦形剤の例としては、保湿剤(例えば尿素)、グリコール(例えばプロピレングリコール)、アルコール(例えばエタノール)、脂肪酸(例えばオレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル及びラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、モノラウリン酸グリセロール、スルホキシド、テルペン(例えばメントール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、水、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコール等のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法で使用する別の代表的な製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を用いる。このような経皮パッチを用いて、本発明の制御量の化合物を、別の薬剤を伴うか伴わずに、連続的又は非連続的に注入することができる。医薬品送達用の経皮パッチの構造及び使用は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、第4,992,445号及び第5,001,139号を参照のこと。このようなパッチを、医薬品の連続的若しくは拍動的送達、又は要求に応じた送達用に構築し得る。
吸入用の医薬組成物。吸入又は吹送用の組成物には、薬剤的に許容できる水性若しくは有機性の溶媒中の溶液及び懸濁剤、又はこれらの混合物、及び粉末剤が含まれる。液体又は固体の組成物は、前述の薬剤的に許容できる適切な賦形剤を含有してよい。好ましくは、局所性又は全身性作用をもたらすために、組成物を経口又は経鼻呼吸経路により投与する。好適に薬剤的に許容できる溶媒中の組成物を、不活性ガスを用いて噴霧してよい。噴霧液剤は、噴霧装置から直接吸入してよく、あるいは、噴霧装置をフェイスマスクテント又は間欠的陽圧呼吸機器に取り付けてもよい。溶液、懸濁剤、又は粉末の組成物を、製剤を適切な方法で送達する装置から、好ましくは経口的又は経鼻的に投与することができる。
いくつかの実施形態では、本発明は、眼科疾患を治療するための医薬組成物を提供する。この組成物は点眼用に製剤化され、本発明の有効量の一つ以上の多形体と、点眼に適した医薬賦形剤とを含有する。点眼に適した本発明の医薬組成物は、分離した剤形(例えば点滴薬)、溶液中に所定量の活性成分を各々含有するスプレー、水溶性液体若しくは非水溶性液体中の懸濁剤、水中油型乳剤、又は油中水滴型液体乳剤として呈示できる。点眼薬は、活性成分を無菌水溶液(例えば生理食塩水、緩衝液等)に溶解させるか、使用前に溶解される粉末組成物を組み合わせることにより調製できる。当技術分野で公知の他のビヒクルを選択してもよく、他のビヒクルの例として、平衡塩類溶液、食塩水、可溶性ポリエステル(例えばポリエチレングリコール)、ポリビニル(例えばポリビニルアルコール、ポビドン)、セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、石油派生物(例えば鉱油、白色ワセリン)、動物性脂肪(例えばラノリン)、アクリル酸のポリマー(例えばカルボキシポリメチレンゲル)、植物性脂肪(例えばラッカセイ油)、多糖類(例えばデキストラン)、及びグリコサミノグリカン(例えばヒアルロン酸ナトリウム)が挙げられるが、これらに限定されない。所望される場合は、点眼薬で通常使用される添加剤を添加してもよい。このような添加剤の例として、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム等)、緩衝剤(例えば、ホウ酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール等)、増粘剤(例えば、ラクトース、マンニトール、マルトース等のサッカライド;例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム等のヒアルロン酸又はその塩;例えば、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖;例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、架橋ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、その他当技術分野で公知の薬剤)が挙げられる。
他の医薬組成物。また、医薬組成物は、本明細書に記載の組成物と、舌下、経頬、直腸内、骨内、眼内、鼻腔内、硬膜外、又は脊髄内投与に適した一つ以上の薬剤的に許容できる賦形剤と、から調製することもできる。このような医薬組成物の調製は当技術分野で周知である。例えば、Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw−Hill, 2002; Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990; Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg; Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001; Remingtons Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000; Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty−Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999)(これらの全文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
本発明の多形体又は医薬組成物の投与は、多形体を作用部位に送達することを可能にする任意の方法で行うことができる。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内、又は注入を含む)、局所(例えば経皮適用)、直腸投与、カテーテル若しくはステントによる局所送達、又は吸入による方法が含まれる。多形体物を脂肪内(intraadiposally)又は髄腔内に投与することもできる。
投与する化合物の量は、治療対象の哺乳動物、障害又は状態の重症度、投与速度、化合物の性質、及び処方医師の裁量によって異なる。しかし、効果用量は、単回又は分割投与で、1日につき体重1kgあたり約0.001〜約100mgであり、好ましくは約1〜約35mg/kg/日である。70kgのヒトの場合、この量は約0.05〜7g/日、好ましくは約0.05〜約2.5g/日になるであろう。場合によっては、上記範囲の下限よりも低い投与量レベルで十分以上であり得る。他方、別の場合には、例えば1日全体で投与するために多用量をいくつかの少用量に分割することにより、上記範囲より多量の投与量を有害な副作用を全く生じずに使用し得る。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物を単回投与で投与する。通常、このような投与は、薬剤を迅速に導入するために、注射、例えば静脈内注射によって行う。しかし、必要に応じて他の経路を使用してもよい。急性状態の治療でも、本発明の化合物の単回投与を使用してよい。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物を複数回投与で投与する。投与は、1日あたり約1回、2回、3回、4回、5回、6回、又は6回超であり得る。投与は、およそ1ヶ月に1回、2週間ごとに1回、1週間に1回、又は1日おきに1回であり得る。別の実施形態では、1日あたり約1回〜1日あたり約6回、本発明の化合物と別の薬剤を一緒に投与する。別の実施形態では、本発明の化合物と別の薬剤の投与を約7日未満の間継続する。さらに別の実施形態では、この投与を約6日超、10日超、14日超、28日超、2ヶ月超、6ヶ月超、又は1年超の間継続する。いくつかの場合には、継続的投与を必要な期間だけ行い、維持する。種々の実施形態において、投与は1週間に1回行う。
本発明の薬剤の投与は、必要な期間だけ継続してよい。いくつかの実施形態では、本発明の薬剤を1日超、2日超、3日超、4日超、5日超、6日超、7日超、14日超、又は28日超の間投与する。いくつかの実施形態では、本発明の薬剤を28日未満、14日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、2日未満、又は1日未満の間投与する。いくつかの実施形態では、本発明の薬剤を、例えば慢性作用の治療のために、長期的に継続投与する。
有効量の本発明の化合物を、単回投与又は複数回投与で、直腸経路、経頬経路、鼻腔経路内、及び経皮経路を含む、類似の有用性を有する許容される薬剤投与方法のいずれかによって、動脈内注射によるか、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口的、局所的に、又は吸入剤として投与してよい。
本発明の組成物を、例えばステント等の含浸若しくはコーティング済みデバイス、又は動脈挿入型円筒ポリマーで送達してもよい。このような投与方法は、バルーン血管形成術等の手技の後の再狭窄の予防又は寛解に役立ち得る。理論に拘束されるものではないが、本発明の多形体は、再狭窄に寄与する動脈壁内平滑筋細胞の移動及び増殖を遅延又は阻害し得る。本発明の化合物は、例えばステントの支柱から、ステントグラフトから、グラフトから、又はステントのカバー若しくは外筒からの局所送達により投与してよい。いくつかの実施形態では、本発明の化合物をマトリックスと混合する。このようなマトリックスは、ポリマーマトリックスであってよく、化合物がステントと結合するのに役立ち得る。このような使用に適したポリマーマトリックスの例として、ポリラクチド、ポリカプロラクトングリコリド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリサッカライド、ポリホスファゼン、ポリ(エーテル−エステル)コポリマー(例えばPEO−PLLA)等のラクトン系ポリエステル又はコポリエステル;ポリジメチルシロキサン、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、アクリレート系ポリマー、又はコポリマー(例えばポリヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化ポリマー、及びセルロースエステルが挙げられる。適切なマトリックスは、非分解性であってよく、あるいは経時的に分解して、化合物(複数可)を放出してもよい。本発明の多形体を、浸漬/スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、及び/又ははけ塗り等の様々な方法によって、ステントの表面に塗布してよい。多形体を溶媒中に適用し、溶媒を蒸発させることによって、ステント上に化合物の層を形成してもよい。あるいは、化合物を、ステント又はグラフトの本体内、例えばマイクロチャネル又は微細孔内に置いてもよい。化合物を埋め込むと、化合物は、ステント本体から拡散して動脈壁と接触する。このようなステントの調製は、上記の微細孔又はマイクロチャネルを含有するように製造されたステントを、適切な溶媒中の本発明の化合物の溶液に浸漬し、続いて溶媒を蒸発させることにより行うことができる。ステント表面に余分な薬物がある場合は、追加の短時間の溶媒洗浄により除去できる。さらに他の実施形態では、本発明の多形体を、ステント又はグラフトと共有結合させてよい。インビボで分解する共有結合リンカーを使用して、本発明の化合物を放出させることができる。このような目的で、エステル結合、アミド結合、無水物結合等の生体不安定性の任意の結合を使用してよい。本発明の多形体を、さらに、血管形成術時に使用するバルーンから血管内に投与してもよい。本発明の製剤の心膜適用又は外膜適用により多形体の血管外投与を行って、再狭窄を減少させることもできる。
記載の通りに使用できる様々なステントデバイスが開示されており、例えば、以下の文献に開示されている:米国特許第5451233号;米国特許第5040548号;米国特許第5061273号;米国特許第5496346号;米国特許第5292331号;米国特許第5674278号;米国特許第3657744号;米国特許第4739762号;米国特許第5195984号;米国特許第5292331号;米国特許第5674278号;米国特許第5879382号;米国特許第6344053号(これらのすべてが、参照により本明細書に組み込まれる)。
本発明の多形体は、種々の用量で投与できる。対象間で化合物の薬物動態にばらつきがあるため、最適治療のためには投与計画の個別化が必要であることが、当技術分野で公知である。本開示を踏まえた日常的実験により、本発明の化合物の用量を見出すことができる。
本発明はキットも提供する。キットは、適切に包装された、本明細書に記載の本発明の化合物又は多形体と、使用に関する指示、臨床研究の考察、副作用の一覧等を含み得る文書資料と、を含む。このようなキットは、組成物の活性及び/若しくは利点を表示若しくは規定し、かつ/又は用量、投与、副作用、薬物相互作用、若しくは医療提供者にとって有用な他の情報を記載した、科学参考文献、添付文書資料、臨床試験の結果及び/若しくはこれらの概要等の情報が含まれていてもよい。このような情報は、様々な研究、例えば、インビボのモデルを伴う実験動物を用いた研究及びヒト臨床試験に基づく研究の結果に基づいたものであり得る。キットは、別の薬剤をさらに含有してよい。いくつかの実施形態では、本発明の化合物及び薬剤は、キット内の別個の容器に入れた別個の組成物として提供される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物及び薬剤は、キット内の一つの容器に入れた単一組成物として提供される。適切な包装容器類及び使用のための追加の物品(例えば、液体調製物用の計量カップ、空気への曝露を最小限に抑えるためのホイルラッピング等)は、当技術分野で公知であり、キットに含めてよい。本明細書に記載のキットは、医師、看護師、薬剤師、薬局職員等を含む医療提供者に対して提供、販売、及び/又は販促することができる。いくつかの実施形態では、キットを消費者に直接販売してもよい。
本明細書に記載の多形体は、治療対象の状態に応じて、本明細書に開示される薬剤又は他の適切な薬剤と組み合わせて使用できる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の多形体を、上記の他の薬剤と同時に投与する。併用療法で使用する場合、本明細書に記載の多形体を、第2の薬剤と同時に、又は分離して投与してよい。この併用投与は、二つの薬剤の同一剤形での同時投与、別々の剤形での同時投与、及び分離投与を含み得る。すなわち、本明細書に記載の化合物及び上記の任意の薬剤を一緒にし、同一剤形にして製剤化し、同時に投与することができる。あるいは、本発明の化合物及び上記の任意の薬剤を、両薬剤が別々の製剤中に存在した状態で同時に投与することもできる。あるいは、本発明の化合物の直後に上記の任意の薬剤を投与するか、その逆の順で投与することもできる。分離投与プロトコルでは、本発明の化合物及び上記の任意の薬剤を、数分間空けて、又は数時間空けて、又は数日間空けて投与してよい。
IV.治療方法
本発明はまた、疾患状態(mTOR又は一種以上のPI3キナーゼの機能低下に関連する疾患を含むが、これに限定されない)を治療するために本発明の化合物又は医薬組成物を使用する方法も提供する。
本明細書で提供する治療方法は、治療有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む。一実施形態では、本発明は、哺乳動物の自己免疫疾患を含む炎症性障害を治療する方法を提供する。この方法は、治療有効量の本発明の化合物、又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を上記哺乳動物に投与することを含む。自己免疫疾患の例として、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、糖尿病(1型)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オルド(Ord)甲状腺炎、天疱瘡、多発性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、ライター症候群、高安動脈炎、一時的動脈炎(「巨細胞性動脈炎」とも呼ばれる)、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、全身性脱毛症、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、汗腺膿瘍、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、白斑、及び外陰部痛が挙げられるが、これらに限定されない。他の障害の例として、骨吸収障害及び血栓症が挙げられる。
いくつかの実施形態では、炎症性疾患又は自己免疫疾患を治療する方法は、対象(例えば哺乳動物)に対し、他の種類のキナーゼと比べてmTORを選択的に阻害する本発明の一つ以上の化合物の治療有効量を投与することを含む。このような選択的阻害は、本明細書に記載の疾患又は状態のいずれかを治療する上で有利であり得る。例えば、選択的阻害により、炎症性疾患、自己免疫疾患、又は望ましくない免疫応答に関連する疾患(喘息、気腫、アレルギー、皮膚炎、関節リウマチ、乾癬、エリテマトーデス、移植片対宿主病が挙げられるが、これらに限定されない)に付随する炎症応答を阻害し得る。さらに、mTORの選択的阻害により、細菌性、ウイルス性、及び/又は真菌性の感染を低減する能力を同時に低下させることなく、炎症性免疫応答又は望ましくない免疫応答低減し得る。mTOR C1/C2の両方を選択的に阻害することは、mTOR C1又はmTOR C2を単独で選択的に阻害する場合と比べて、対象において阻害剤による炎症性応答阻害の程度を高める上で、有利であり得る。一態様において、インビボの抗原特異的抗体産生を約2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は約1000倍以上低減する上で、主題の方法のうちの一つ以上が有効である。別の態様において、インビボの抗原特異的IgG3及び/又はIgGMの産生を約2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は約1000倍以上低減する上で、主題の方法のうちの一つ以上が有効である。
一態様において、主題の方法の一つ以上は、関節リウマチに関連する症状の寛解(関節の腫脹の低減、血清抗コラーゲンレベルの低減、並びに/又は、骨吸収、軟骨損傷、パンヌス及び/若しくは炎症等の関節病態の低減を含むが、これらに限定されない)に有効である。別の態様において、主題の方法は、足首の炎症を少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%、又は約75%〜90%低減するのに有効である。別の態様において、主題の方法は、膝の炎症を少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%、又は約75%〜90%、又は90%超低減するのに有効である。さらに別の態様において、主題の方法は、血清抗II型コラーゲンレベルを少なくとも約10%、12%、15%、20%、24%、25%、30%、35%、50%、60%、75%、80%、86%、87%、又は約90%、又は90%超低減するのに有効である。別の態様において、主題の方法は、足首の組織病理スコアを約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は90%超低減するのに有効である。さらに別の態様において、主題の方法は、膝の組織病理スコアを約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は90%超低減するのに有効である。
他の実施形態では、本発明は、呼吸器疾患(肺葉、胸膜腔、気管支、気管、上気道、又は呼吸のための神経及び筋肉に影響する疾患を含むが、これに限定されない)を治療するために、化合物又は医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、閉塞性肺疾患を治療する方法を提供する。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気道閉塞又は気流制限を特徴とする気道疾患群の包括的用語である。この包括的用語に含まれる状態は、慢性気管支炎、肺気腫、及び気管支拡張症である。
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物を喘息の治療に使用する。また、本明細書に記載の化合物又は医薬組成物を、内毒血症及び敗血症の治療に使用することができる。一実施形態では、本明細書に記載の化合物又は医薬組成物を、関節リウマチ(RA)の治療に使用する。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の化合物又は医薬組成物を、接触性又はアトピー性皮膚炎の治療に使用する。接触性皮膚炎には、刺激性皮膚炎、光毒性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、光アレルギー性皮膚炎、接触じん麻疹、全身性接触性皮膚炎等が含まれる。刺激性皮膚炎は、皮膚に過剰量の物質が使用されたとき、又は皮膚が特定物質に敏感であるときに発生し得る。アトピー性皮膚炎は、湿疹と呼ばれることもあり、皮膚炎の一種であるアトピー性皮膚疾患である。
本発明はまた、哺乳動物の過剰増殖性障害を治療する方法に関し、この治療方法は、治療有効量の本発明の化合物又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、又は誘導体を当該哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、上記の方法は、癌、例えば、急性骨髄性白血病、胸腺、脳、肺、扁平上皮、皮膚、眼、網膜芽細胞腫、眼球内黒色腫、口腔・口咽頭、膀胱、胃(gastric)、胃(stomach)、膵臓、膀胱、乳房、子宮頸部、頭部、頸部、腎性、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科、甲状腺、CNS、PNS、AIDS関連(例えばリンパ腫、カポジ肉腫)、ウイルス誘導性の癌の治療に関する。いくつかの実施形態では、上記方法は、非癌性の過剰増殖性障害、例えば皮膚の良性過形成(例えば乾癬)、再狭窄、前立腺(例えば良性前立腺肥大(BPH))の治療に関する。
本発明はまた、哺乳動物の脈管形成又は血管新生に関連する疾患を治療する方法に関し、この方法は、治療有効量の本発明の化合物又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を当該哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、腫瘍血管新生、慢性炎症性疾患(関節リウマチ等)、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、皮膚疾患(乾癬、湿疹、強皮症等)、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫、卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌、及び扁平上皮癌からなる群から選択される疾患を治療するためのものである。
本発明の方法に従って、本発明の化合物又は当該化合物の薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を用いて治療できる患者には、例えば以下を有すると診断された患者が含まれる:乾癬;再狭窄;アテローム性動脈硬化症;BPH;乳腺の管組織の腺管癌、髄様癌、膠様癌、管状癌、及び炎症性乳癌等の乳癌;卵巣の腺癌及び卵巣から腹腔に転位した腺癌等の上皮卵巣腫瘍を含む卵巣癌;子宮癌;扁平上皮細胞癌及び腺癌を含む子宮頸部上皮における腺癌等の子宮頸部癌;腺癌又は骨に転位した腺癌から選ばれる前立腺癌等の前立腺癌;膵臓管組織の類上皮癌及び膵臓管の腺癌等の膵臓癌;膀胱の移行上皮癌、尿路上皮癌(移行上皮癌)、膀胱の内側を覆う尿路上皮細胞の腫瘍、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び小細胞癌等の膀胱癌;急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)、及び骨髄異形成症候群(MDS)等の白血病;骨癌;扁平上皮細胞癌、腺癌、及び未分化大細胞癌に分割される非小細胞肺癌(NSCLC)並びに小細胞肺癌等の肺癌;基底細胞癌、メラノーマ、扁平上皮細胞癌、及び時に扁平上皮細胞癌に進展する皮膚状態である日光角化症等の皮膚癌;目網膜芽細胞腫;皮膚又は眼内(目)黒色腫;原発性肝癌(肝臓から始まる癌);腎臓癌;乳頭、濾胞、髄質、及び未分化等の甲状腺癌;びまん性大型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽細胞リンパ腫、及び小型非切れ込み核細胞性リンパ腫等のAIDS関連リンパ腫;カポジ肉腫;肝炎Bウイルス(HBV)、肝炎Cウイルス(HCV)、及び幹細胞癌を含むウイルス誘発性癌;ヒト白血球ウイルス1型(HTLV−1)及び成人T細胞白血病/リンパ腫;並びにヒトパピローマウイルス(HPV)及び子宮頸癌;神経膠腫(星状細胞腫、未分化星状細胞腫、又は多形神経膠芽腫)、乏突起膠腫、上衣腫、髄膜腫、リンパ腫、シュワン腫、及び髄芽腫を含む、原発性脳腫瘍等の中枢神経系癌(CNS);聴神経腫瘍、並びに神経線維腫及びシュワン腫を含む悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、悪性線維性細胞腫、悪性線維性組織球腫、悪性髄膜腫、悪性中皮腫、並びに悪性ミューラー管混合腫瘍等の末梢神経系(PNS)癌;下咽頭癌、喉頭癌、上咽頭癌、及び中咽頭癌等の口腔癌及び口腔咽頭癌;リンパ腫、胃の間質腫瘍、及びカルチノイド腫瘍等の胃癌;精上皮腫及び非精巣上皮腫を含む胚細胞性腫瘍(GCT)、並びにライディッヒ細胞腫及びセルトリ細胞腫を含む性腺間質腫瘍等の精巣癌;胸腺腫、胸腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫カルチノイド、又はカルチノイド腫瘍等の胸腺癌;直腸癌;並びに結腸癌。
本発明の方法に従って、本発明の化合物又は当該化合物の薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を用いて治療できる患者には、例えば、以下に挙げられる状態(これらに限定されない)を有すると診断された患者が含まれる:聴神経腫瘍、腺癌、副腎癌、肛門癌、血管肉腫(例えばリンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、肉管肉腫)、良性単クローン性免疫グロブリン血症、胆道癌(例えば胆管癌)、膀胱癌、乳癌(例えば乳腺癌、乳頭癌、乳癌、乳腺髄様癌)、脳癌(例えば髄膜腫;神経膠腫、例えば星状細胞腫、乏突起膠腫;髄芽腫)、気管支癌、子宮頸癌(例えば子宮頸部腺癌)、絨毛癌、脊索腫、頭蓋咽頭腫、結腸直腸癌(例えば結腸癌、直腸癌、結腸直腸腺癌)、上皮癌、上衣腫、内皮肉腫(例えばカポジ肉腫、多発性特発性出血性肉腫)、子宮内膜癌、食道癌(例えば食道腺癌、バレット腺癌)、ユーイング肉腫、家族性過好酸球増加症、胃癌(例えば胃腺癌)、胃腸管間質腫瘍(GIST)、頭頚部癌(例えば頭頚部扁平上皮癌)、口腔癌(例えば口腔扁平上皮癌(OSCC))、重鎖病(例えばα鎖病、γ鎖病、μ鎖病)、血管芽細胞腫、炎症性筋繊維芽腫瘍、免疫球性アミロイドーシス、腎臓癌(例えば腎芽細胞腫、別名ウィルムス腫瘍、腎細胞癌)、肝臓癌(例えば肝細胞癌(HCC)、悪性肝細胞腫)、肺癌(例えば気管支原性肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺腺癌)、白血病(例えば急性リンパ性白血病(ALL)(B系列性ALL、T系列性ALlを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM);末梢T細胞性リンパ腫(PTCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病及びリードスタンバーグ病;急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL))、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL))、平滑筋肉腫(LMS)、肥満細胞症(例えば全身性肥満細胞症)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、中皮腫、骨髄増殖性疾患(MPD)(例えば真性赤血球増多症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、原発性骨髄線維症(AMM)別名骨髄線維症(MF)、慢性特発性骨髄線維症、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、好酸球増加症候群(HES))、神経芽細胞腫、神経線維腫(例えば神経線維腫症(NF)1型若しくは2型、シュワン細胞腫)、神経内分泌癌(例えば胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP−NET)、カルチノイド腫瘍)、骨肉腫、卵巣癌(例えば嚢胞腺癌、卵巣胎児性癌腫、卵巣腺癌)、外陰パジェット病、陰茎パジェット病、乳頭腺癌、膵臓癌(例えば膵臓腺癌、管内乳頭粘液性新生物(IPMN))、松果体腫、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNT)、前立腺癌(例えば前立腺腺癌)、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌(例えば扁平上皮癌(SCC)、ケラトアカントーマ(KA)、メラノーマ、基底細胞癌(BCC))、小腸癌(例えば虫垂癌)、軟部組織肉腫(例えば線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、軟骨肉腫、繊維肉腫、粘液肉腫)、皮脂腺癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌(例えば精上皮腫、精巣胎芽性癌)、甲状腺癌(例えば甲状腺乳頭状癌、甲状腺乳頭癌(PTC)、甲状腺髄様癌)、並びにワルデンストロームマクログロブリン血症。
本発明はまた、哺乳動物の糖尿病を治療する方法に関し、この方法は、治療有効量の本発明の化合物又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を当該哺乳動物に投与することを含む。
加えて、本明細書に記載の化合物を、座瘡の治療に使用することができる。
加えて、本明細書に記載の化合物を、アテローム性動脈硬化症を含む動脈硬化症の治療に使用することができる。動脈硬化症は、中動脈又は大動脈の硬化を表す一般用語である。アテローム性動脈硬化症は、特に粥状斑に起因する動脈硬化である。
さらに、本明細書に記載の化合物は、糸球体腎炎の治療に使用することができる。糸球体腎炎は、糸球体の炎症を特徴とする、原発性又は続発性の自己免疫腎臓疾患である。糸球体腎炎は、無症候性の場合もあれば、血尿及び/又はタンパク尿を発症することもある。多くの種類が認識されており、急性、亜急性、慢性の糸球体腎炎に類別される。原因は、感染(細菌、ウイルス、若しくは寄生性病原体)、自己免疫、又は腫瘍随伴である。
加えて、本明細書に記載の化合物を、滑液包炎、狼瘡、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、真性糖尿病(1型)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オルド甲状腺炎、骨関節症、網膜ブドウ膜炎、天疱瘡、多発性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、一時的動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、全身性脱毛症、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、汗腺膿瘍、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、白斑、外陰部痛、虫垂炎、動脈炎、関節炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、子宮頚管炎、胆管炎、胆嚢炎、絨毛羊膜炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚筋炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合織炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、肝炎、汗腺炎、回腸炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、腟炎、血管炎、又は外陰炎の治療に使用することができる。
さらに、本発明の化合物を、通年性アレルギー性鼻炎、腸間膜炎、腹膜炎、肢端皮膚炎、血管皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、多形紅斑、間擦疹、スティーブンスジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、皮膚アレルギー、重症アレルギー反応/アナフィラキシー、アレルギー性肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、アレルギー性結膜炎、脈絡網膜炎、結膜炎、伝染性角結膜炎、角結膜炎、新生児眼炎、トラコーマ、ぶどう膜炎、眼炎症、眼瞼結膜炎、乳腺炎、歯肉炎、歯冠周囲炎、咽頭炎、鼻咽頭炎、唾液腺炎、筋骨格系炎症、成人発症スチル病、ベーチェット病、滑液包炎、軟骨石灰化症、指炎、フェルティ症候群、痛風、感染性関節炎、ライム病、炎症性変形性関節症、関節周囲炎、ライター症候群、ロスリバーウイルス感染症、急性呼吸促迫症候群、急性気管支炎、急性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、喘息、重症難治性喘息、咽頭炎、胸膜炎、鼻咽頭炎、季節性アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息重積発作、気管気管支炎、鼻炎、漿膜炎、髄膜炎、視神経脊髄炎、ポリオウイルス感染症、アルポート症候群、亀頭炎、精巣上体炎、精巣・精巣上体炎、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎症(ベルジェ病)、精巣炎、子宮傍組織炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、腎盂炎、腎盂膀胱炎、腎盂腎炎、ウェゲナー肉芽腫症、高尿酸血症、大動脈炎、動脈炎、乳び心膜炎、ドレスラー症候群、動脈内膜炎、心内膜炎、頭蓋外側頭動脈炎、HIV関連動脈炎、頭蓋内側頭動脈炎、川崎病、リンパ管静脈炎、モンドール病、動脈周囲炎、又は心膜炎の治療に使用することができる。
他の態様では、本発明の化合物を、自己免疫性肝炎、空腸炎、腸間膜炎、粘膜炎、非アルコール性脂肪性肝炎、非ウイルス性肝炎、自己免疫性膵炎、肝周囲炎、腹膜炎、嚢炎、直腸炎、偽膜性大腸炎、S字結腸炎、卵管腹膜炎、S状結腸炎、脂肪性肝炎、潰瘍性大腸炎、チャーグストラウス症候群、潰瘍性直腸炎、過敏性腸症候群、胃腸炎、急性腸炎、肛門炎、バルサー壊死、胆嚢炎、大腸炎、クローン病、憩室炎、腸炎、全腸炎、腸肝炎、好酸球性食道炎、食道炎、胃炎、出血性腸炎、肝炎、肝炎ウイルス感染、肝胆管炎、肥厚性胃炎、回腸炎、回盲部炎(Ileocecitis)、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡(皮膚/全身性/腎炎)、エイズ、無γグロブリン血症、エイズ関連症候群、ブルトン病、チェディアック・東症候群、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、異常ガンマグロブリン血症、免疫グロブリン欠損症、ジョブ症候群、ネゼロフ症候群、貪食殺菌機能障害、ウィスコット・アルドリッチ症候群、無脾症、象皮病、脾機能亢進、川崎病、リンパ節症、リンパ浮腫、リンパ嚢腫、ノンネ・ミルロイ・メージュ症候群、脾臓疾患、脾腫、胸腺腫、胸腺疾患、血管周囲炎、静脈炎、胸膜心膜炎、結節性多発動脈炎、血管炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、血栓性血管炎、閉塞性血栓血管炎、血栓性心内膜炎、血栓性静脈炎、又はCOPDの治療に使用する。
本発明はまた、哺乳動物の心臓血管疾患を治療する方法に関し、この方法は、治療有効量の本発明の化合物又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を当該哺乳動物に投与することを含む。心血管病態の例として、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、血管閉塞、頸動脈閉塞性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
別の態様では、本発明は、白血球の機能を撹乱する、あるいは破骨細胞の機能を撹乱する方法を提供する。この方法は、白血球又は破骨細胞を、機能撹乱量の本発明の化合物と接触させることを含む。
本発明の別の態様では、主題の化合物又は医薬組成物の一つ以上を対象の眼に投与することにより眼疾患を治療する方法を提供する。
さらに、点眼剤、眼内注射、硝子体内注射により、局所に、又は薬物溶出デバイス、マイクロカプセル、移植片、若しくはマイクロ流体デバイスを用いて本発明の化合物を投与する方法を提供する。いくつかの場合、本発明の化合物を、界面膜で囲まれた油性核を有するコロイド粒子を含む油と水の乳剤等の、化合物の眼球内浸透度を増大させる担体又は賦形剤と共に投与する。
本発明はさらに、キナーゼ活性を調節する方法を提供する。この調節は、キナーゼを、キナーゼ活性を調節するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。調節は、キナーゼ活性を阻害又は活性化することであり得る。いくつかの実施形態では、本発明は、キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、キナーゼを、キナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、溶液中のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該溶液を、当該溶液中のキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該細胞を、当該細胞内のキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、組織内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該組織を、当該組織内のキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、生体内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該生体を、当該生体内のキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、動物内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該動物を、当該動物内のキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、哺乳動物内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該哺乳動物を、当該哺乳動物内のキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトにおけるキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。この阻害は、当該ヒトを、当該ヒトにおけるキナーゼ活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることにより行う。いくつかの実施形態では、キナーゼを本発明の化合物を接触させた後のキナーゼ活性(%)は、上記接触ステップが存在しない場合のキナーゼ活性の1%未満、5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、95%未満、又は99%未満である。
いくつかの実施形態では、本発明の一つ以上の化合物は、インビトロのキナーゼアッセイで確認した場合、約100nM、50nM、10nM、5nM、100pM、10pM、あるいは1pM、又はそれ以下のIC50値で、両方のmTor活性を選択的に阻害する。
いくつかの実施形態では、本発明の一つ以上の化合物又は多形体は、インビトロのキナーゼアッセイにおいて同等のモル濃度で試験した場合、ラパマイシンより効果的にAkt(S473)及びAkt(T308)のリン酸化を阻害する。
いくつかの実施形態では、本発明の一つ以上の多形体又は化合物は、mTorC1及び/又はmTorC2上のATP結合部位に結合しようとしてATPと競合する。
V.併用療法
本発明は、併用療法の方法も提供する。この併用療法では、他の経路、又は同一経路の他の構成要素、さらには標的酵素の重複するセットを調節することが知られている薬剤を、本発明の化合物、又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体と併用して使用する。一態様では、このような療法には、主題の化合物と、化学療法剤、治療用抗体、及び放射線治療とを組み合わせて、相乗的又は相加的な治療効果を得ることが含まれるが、これに限定されない。
一態様において、本発明の化合物又は医薬組成物は、IgE産生又はIgE活性を阻害する薬剤と組み合わせて投与された場合に、相乗的又は相加的な効力を呈し得る。このような組み合わせにより、このような効果が発生した場合、一つ以上の阻害剤の使用に付随する高レベルIgEの望ましくない影響を低減できる。このことは、特に、関節リウマチ等の自己免疫性炎症性疾患(AIID)の治療で有用である。加えて、本発明の阻害剤をPI3Kα、PI3Kδ、又はPI3Kδ/γの阻害剤と組み合わせて投与した場合も、PI3K経路の阻害の増強による相乗作用を示し得る。
IgE産生を阻害する薬剤は当技術分野で公知であり、例えば、TEI−9874、2−(4−(6−シクロヘキシルオキシ−2−ナフチルオキシ)フェニルアセトアミド)安息香酸、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(すなわちラパログ)、TORC1阻害剤、TORC2阻害剤、mTORC1とmTORC2を阻害する他の化合物のうちの一つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。IgE活性を阻害する薬剤の例としては、例えばオマリズマブ、TNX−901等の抗IgE抗体が挙げられる。
自己免疫疾患の治療では、主題の化合物又は医薬組成物を、一般に処方されている薬剤(Enbrel(登録商標)、Remicade(登録商標)、Humira(登録商標)、Avonex(登録商標)、Rebif(登録商標)を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて使用することができる。呼吸器疾患の治療では、主題の化合物又は医薬組成物を、一般に処方されている薬剤(Xolair(登録商標)、Advair(登録商標)、Singulair(登録商標)、Spiriva(登録商標)を含むが、これらに限定されない)と組み合わせて投与することができる。
本発明の化合物は、脳脊髄炎、喘息、及び本明細書に記載の他の疾患等の炎症症状の症候を軽減するように作用する他の薬剤と組み合わせて製剤化又は投与してよい。このような薬剤には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アセチルサリチル酸;イブプロフェン;ナプロキセン;インドメタシン;ナブメトン;トルメチン等が含まれる。炎症を減少させ免疫系の活性を抑制するために、副腎皮質ステロイドが使用される。この種の最も一般的に処方されている薬物は、プレドニゾンである。クロロキン(Aralen)やヒドロキシクロロキン(Plaquenil)も、狼瘡を有する一部の個体に非常に有用となり得る。これらは、狼瘡の皮膚及び関節症候に対して処方されることが最も多い。アザチオプリン(Imuran)とシクロホスファミド(Cytoxan)は、炎症を抑制し、また免疫系を抑制する傾向がある。狼瘡の症状を制御するために、他の薬剤、例えば、メトトレキサートやシクロスポリンが使用される。血液が急速に凝固するのを防ぐため、抗凝固剤が使用される。抗凝固剤は、血小板の付着を防ぐ非常に低用量のアスピリンから、ヘパリン/クマジンまで様々なものがある。狼瘡の治療に使われる他の化合物の例として、ベリムマブ(Benlysta(登録商標))が挙げられる。
別の一態様では、本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖を阻害するための医薬組成物にも関連し、この医薬組成物は、ある量の抗癌剤(例えば生物療法化学療法剤)と組み合わせた、ある量の本発明の化合物又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を含む。現在、多くの化学療法剤が当技術分野で公知であり、本発明の化合物と組み合わせて使用できる。他の癌治療も本発明の化合物と組み合わせて使用でき、こうした癌治療の例として、手術及び外科治療、放射線治療が挙げられる。
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質、抗ホルモン剤、血管新生阻害剤、及び抗アンドロゲン剤からなる群から選択される。非限定的な例は、化学療法剤、細胞毒性薬、及び非ペプチド小分子、例えばGleevec(メシル酸イマチニブ)、Velcade(ボルテゾミブ)、Casodex(ビカルタミド)、Iressa(ゲフィチニブ)、アドリアマイシン等、並びに多くの化学療法剤である。化学療法剤の非限定的な例として、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレスアミン、メクロレスアミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロソウレア類;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(商標)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質;メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)等の抗代謝物質;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎物質;フロリン酸等の葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.R(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、ブリストル・マイヤーズスクイブオンコロジー、ニュージャージー州プリンストン)及びドセタキセル(TAXOTERE(商標)、ローヌ・プーラン・ローラー、フランス国アントニー);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン、並びに上記の任意の薬剤の薬剤的に許容できる塩、酸、又は誘導体が挙げられる。また、適切な化学療法細胞調整剤として、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン剤;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン等の抗アンドロゲン剤;クロランブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;カンプトテシン(CPT−11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)が挙げられる。所望される場合、本発明の化合物又は医薬組成物を、一般に処方されている抗癌薬、例えばHerceptin(登録商標)、Avastin(登録商標)、Erbitux(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Taxol(登録商標)、Arimidex(登録商標)、Taxotere(登録商標)、Velcade(登録商標)等と組み合わせて使用することができる。
他の化学療法剤の例として、抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、メゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロリド)、抗アンドロゲン剤(例えばフルタミド、ビカルタミド)、光線力学的療法(例えばベルテポルフィン(BPD−MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシ−ヒポクレリンA(2BA−2−DMHA))、ナイトロジェンマスタード類(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン、メルファラン)、ニトロソウレア類(例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU))、スルホン酸アルキル類(例えばブスルファン、トレオスルファン)、トリアゼン類(例えばダカルバジン、テモゾロミド)、白金含有化合物(例えばシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド類(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、タキソイド類(例えばパクリタキセル、又は次のようなパクリタキセル等価物:ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(Abraxane)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA−パクリタキセル、Taxoprexin)、ポリグルタミン酸結合パクリタキセル(PG−パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、CT−2103、XYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(3分子のパクリタキセルに結合したAngiopep−2)、パクリタキセル−EC−1(erbB2認識ペプチドEC−1に結合したパクリタキセル)、グルコースを結合したパクリタキセル、例えば2’−パクリタキセルメチル2−グルコピラノシルスクシネート;ドセタキセル、タキソール)、エピポドフィロトキシン類(例えばエトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、マイトマイシンC)、抗代謝物質、DHFR阻害剤(例えばメトトレキセート、ジクロロメトトレキセート、トリメトレキセート、エダトレキセート)、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(例えばミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、EICAR)、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤(例えばヒドロキシウレア、デフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、テガフール−ウラシル、カペシタビン)、シトシン類似体(例えばシタラビン(ara C)、シトシンアラビノシド、フルダラビン)、プリン類似体(例えばメルカプトプリン、チオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えばEB1089、CB1093、KH1060)、イソプレニル化阻害剤(例えばロバスタチン)、ドパミン作用性神経毒(例えば1−メチル−4−フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えばスタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えばアクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えばブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えばベラパミル)、Ca2+ATPアーゼ阻害剤(例えばタプシガルジン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えばアキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI−606)、セジラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS−354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI−571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP−701)、ネラチニブ(HKI−272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマクサニブ(semaxinib、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXA(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD−2076、PCI−32765、AC220、乳酸ドビチニブ(TKI258、CHIR−258)、BIBW2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF−04217903、PF−02341066、PF−299804、BMS−777607、ABT−869、MP470、BIBF1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ−26483327、MGCD265、DCC−2036、BMS−690154、CEP−11981、チボザニブ(AV−951)、OSI−930、MM−121、XL−184、XL−647、及び/又はXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ(Velcade))、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン、テムシロリムス(CCI−779)、エベロリムス(RAD−001)、リダフォロリムス、AP23573(アリアド)、AZD8055(アストラゼネカ)、BEZ235(ノバルティス)、BGT226(ノバルティス)、XL765(サノフィアベンティス)、PF−4691502(ファイザー)、GDC0980(ジェネテック)、SF1126(Semafoe)、OSI−027(OSI))、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルビジン(procarbizine)、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン(campathecin)、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモライド、カルミノマイシン、アミノプテリン、及びヘキサメチルメラミンが挙げられるが、これらに限定されない。
代表的な生物療法剤の例として、インターフェロン、サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子、インターフェロンα、インターフェロンγ)、ワクチン、造血増殖因子、モノクローナル血清療法、免疫刺激剤及び/又は免疫調節剤(例えばIL−1、2、4、6、12)、免疫細胞増殖因子(例えばGM−CSF)並びに抗体(例えばHerceptin(トラスツズマブ)、T−DM1、AVASTIN(ベバシズマブ)、ERBITUX(セツキシマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Rituxan(リツキシマブ)、Bexxar(トシツモマブ))が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はさらに、哺乳動物における異常な細胞増殖を阻害する際又は過剰増殖性障害を治療する際に、放射線療法と組み合わせて化合物又は医薬組成物を使用する方法に関する。放射線療法を施すための各種手法は当技術分野で公知であり、これらの手法を、本明細書に記載の併用療法で使用することができる。この併用療法において、本明細書に記載の通りに本発明の化合物の投与を決定できる。
放射線療法は、いくつかの方法のいずれか一つ、又はその組み合わせを通じて施すことができ、これらの方法には、体外照射療法、体内照射療法、組織内照射、定位放射線手術、全身放射線療法、放射線療法、及び永久的又は一時的な間質近接照射療法が含まれる。本明細書で使用する「近接照射療法」という用語は、体内の腫瘍又は他の増殖性の組織疾患部位若しくはその近くに挿入される、空間的に閉じ込められた放射性物質により送達される放射線療法を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At−211、I−131、I−125、Y−90、Re−186、Re−188、Sm−153、Bi−212、P−32、及びLuの放射性同位体)への曝露を含むことが意図されるが、これに限定されない。本発明の細胞前処置剤として使用するのに適切な放射線源には、固体と液体の両方が含まれる。非限定的例として、放射線源は、固体源としてI−125、I−131、Yb−169、Ir−192、固体源としてI−125等の放射性核種であってよく、又は、光子、ベータ粒子、ガンマ線、その他の治療用放射線を放出する他の放射性核種であってもよい。放射性物質はまた、放射性核種(複数可)の任意の溶液、例えばI−125若しくはI−131の溶液から生成された流体であってもよく、あるいは、Au−198、Y−90等の固体放射性核種の小粒子を含有する適切な流体のスラリーを用いて放射性流体を生成してもよい。さらに、放射性核種(複数可)をゲル又は放射性ミクロスフェア中に組み込むこともできる。
いかなる理論にも制限されるものではないが、本発明の化合物は、異常細胞を死滅させ、かつ/又はその増殖を阻害する目的で、放射線を用いた治療に対する異常細胞の感受性を高めることができる。したがって、本発明はさらに、放射線を用いる治療に対して哺乳動物の異常細胞を感作する方法に関する。この方法は、放射線を用いる治療に対して異常細胞を感作するのに効果的な量の本発明の化合物、又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体を当該哺乳動物に投与することを含む。この方法における化合物、塩、又は溶媒和物の量は、本明細書に記載の当該化合物の有効量を確認する手段に従って決定することができる。
本発明の化合物又は医薬組成物を、抗血管新生薬剤、シグナル伝達阻害剤、及び抗増殖性薬剤から選ばれる、ある量の一つ以上の物質と組み合わせて使用することができる。
MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)阻害剤、COX−11(シクロオキシゲナーゼ11)阻害剤等の抗血管新生薬剤を、本発明の化合物及び本明細書に記載の医薬組成物と組み合わせて使用することができる。有用なCOX−II阻害剤の例として、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブ、及びロフェコキシブが挙げられる。有用なマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤の例は、国際公開第96/33172号(1996年10月24日公開)、国際公開第96/27583号(1996年3月7日公開)、欧州特許出願第97304971.1号(1997年7月8日出願)、欧州特許出願第99308617.2号(1999年10月29日出願)、国際公開第98/07697号(1998年2月26日公開)、国際公開第98/03516号(1998年1月29日公開)、国際公開第98/34918号(1998年8月13日公開)、国際公開第98/34915号(1998年8月13日公開)、国際公開第98/33768号(1998年8月6日公開)、国際公開第98/30566号(1998年7月16日公開)、欧州特許公開第606,046号(1994年7月13日公開)、欧州特許公開第931,788号(1999年7月28日公開)、国際公開第90/05719号(1990年5月31日公開)、国際公開第99/52910号(1999年10月21日公開)、国際公開第99/52889号(1999年10月21日公開)、国際公開第99/29667号(1999年6月17日公開)、PCT国際出願第PCT/IB98/01113号(1998年7月21日出願)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日出願)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日出願)、米国特許仮出願第60/148,464号(1999年8月12日出願)、米国特許第5,863,949号(1999年1月26日発行)、米国特許第5,861,510号(1999年1月19日発行)、及び欧州特許公開第780,386号(1997年6月25日公開)に記載されており、これらのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましいMMP−2及びMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性がほとんどないか、全くないものである。より好ましいものは、他のマトリックス−メタロプロテイナーゼ(すなわち、MAP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、及びMMP−13)と比べて、MMP−2及び/又はAMP−9を選択的に阻害する、MMP−2及びMMP−9阻害剤である。本発明において有用なMMP阻害薬のいくつか特定の例は、AG−3340、RO32−3555、及びRS13−0830である。
本発明はまた、哺乳動物の心血管疾患を治療する方法及び医薬組成物にも関する。この医薬組成物は、ある量の本発明の化合物、又はその薬剤的に許容できる塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、若しくは誘導体、又はその同位体標識された誘導体、及び心血管疾患の治療に使われるある量の一つ以上の治療剤を含む。
心血管疾患適用における使用の例としては、抗血栓剤、例えばプロスタサイクリン及びサリチル酸、血栓溶解剤、例えばストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)及びアニソイル化プラスミノーゲン−ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、抗血小板剤、例えばアセチルサリチル酸(ASA)及びクロピドグレル、血管拡張剤、例えば硝酸、カルシウムチャネル遮断薬、抗増殖剤、例えばコルヒチン及びアルキル化剤、挿入剤、増殖調節因子、例えばインターロイキン、トランスフォーメーション増殖因子β、及び血小板由来増殖因子の同類物、増殖因子に対するモノクローナル抗体、ステロイド性、非ステロイド性の抗炎症剤、その他、血管の緊張度、機能、動脈硬化及び介入後の血管又は器官損傷に対する治癒反応を調節し得る薬剤が挙げられる。抗生物質も、本発明に含まれる組み合わせ又はコーティングに含まれ得る。さらに、コーティングを用いて、血管壁内に局所的に治療剤を送達することができる。活性薬剤を膨潤性ポリマーに組み込むことにより、ポリマーの膨潤時に活性薬剤が放出される。
本明細書に記載の化合物を、滑沢剤とも呼ばれる液体又は固体の組織バリアと共に製剤化又は投与してよい。組織バリアの例としては、ポリサッカライド、ポリグリカン、セプラフィルム、インターシード、ヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の化合物と共に投与してよい薬剤の例としては、吸入により有用に送達される任意の適切な薬剤、例えば、鎮痛剤、例えばコデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル、又はモルヒネ;狭心症剤、例えばジルチアゼム;抗アレルギー剤、例えば、クロモグリク酸、ケトチフェン、又はネドクロミル;抗感染症剤、例えば、セファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、又はペンタミジン;抗ヒスタミン剤、例えばメタピリレン;抗炎症剤、例えば、ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン、トリアムシノロンアセトニド、又はフルチカゾン;鎮咳剤、例えばノスカピン;気管支拡張剤、例えば、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、イソエタリン、ツロブテロール、オルシプレナリン、又は(−)−4−アミノ−3,5−ジクロロ−α−[[[6−[2−(2−ピリジニル)エトキシ]ヘキシル]−アミノ]メチル]ベンゼンメタノール;利尿剤、例えばアミロライド;抗コリン剤、例えば、イプラトロピウム、アトロピン、又はオキシトロピウム;ホルモン剤、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、又はプレドニゾロン;キサンチン類、例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリネート、リジンテオフィリネート又はテオフィリン;並びに治療用タンパク質及びペプチド、例えばインスリン又はグルカゴンが挙げられる。薬剤を、適宜、塩の形態で(例えば、アルカリ金属塩若しくはアミン塩として、又は酸付加塩として)、又はエステル(例えば低級アルキルエステル)として、又は溶媒和物(例えば水和物)として用いることにより、薬剤の活性及び/又は安定性を最適化できることは、当業者には明らかであろう。
併用療法に有用な他の代表的な治療剤として、上記薬剤、放射線療法、ホルモンアンタゴニスト、ホルモン剤及びその放出因子、甲状腺剤及び抗甲状腺剤、エストロゲン及びプロゲスチン、アンドロゲン、副腎皮質刺激ホルモン;副腎皮質ステロイド及びその合成類似体;副腎皮質ホルモンの合成及び作用阻害剤、インスリン、経口血糖降下剤、及び膵内分泌部の薬品作用、石灰化と骨代謝回転に影響を及ぼす薬剤:カルシウム、リン酸、副甲状腺ホルモン、ビタミンD、カルシトニン、ビタミン類、例えば水溶性ビタミン、ビタミンB複合体、アスコルビン酸、脂溶性ビタミン、ビタミンA、K、及びE、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ムスカリン受容体アゴニスト及びアンタゴニスト;抗コリンエステラーゼ剤;神経筋接合部及び/又は自律神経節に作用する薬剤;カテコールアミン、交感神経刺激剤、及びアドレナリン作動性受容体アゴニスト又はアンタゴニスト;並びに5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT、セロトニン)受容体アゴニスト及びアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
治療剤はまた、疼痛及び炎症のための薬剤、例えばヒスタミン及びヒスタミンアンタゴニスト、ブラジキニン及びブラジキニンアンタゴニスト、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)、膜リン脂質の選択的加水分解産物の生体内変換により生じる脂質物質、エイコサノイド、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤、鎮痛解熱剤、プロスタグランジン及びトロンボキサンの合成を阻害する薬剤、誘導型シクロオキシゲナーゼの選択的阻害剤、誘導型シクロオキシゲナーゼ2の選択的阻害剤、オータコイド、パラクリンホルモン、ソマトスタチン、ガストリン、体液性及び細胞性免疫応答に関与する相互作用を媒介するサイトカイン、脂質由来オータコイド、エイコサノイド、β−アドレナリンアゴニスト、イプラトロピウム、糖質コルチコイド、メチルキサンチン、ナトリウムチャネルブロッカー、オピオイド受容体アゴニスト、カルシウムチャネルブロッカー、膜安定化剤、及びロイコトリエン阻害剤を含むことができる。
本明細書で企図されるさらなる治療剤としては、利尿剤、バソプレッシン、腎臓の水保持に影響を与える薬剤、レンニン、アンジオテンシン、心筋虚血の治療に有用な薬剤、降圧剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、高コレステロール血症治療のための薬剤、及び脂質代謝異常の治療のための薬剤が挙げられる。
企図される他の治療剤として、胃液酸性度の制御に使用される薬物、消化性潰瘍治療のための薬剤、胃食道逆流症治療のための薬剤、消化管運動促進剤、制吐剤、過敏性腸症候群で使用される薬剤、下痢に使用される薬剤、便秘症に使用される薬剤、炎症性腸疾患に使用される薬剤、胆道疾患に使用される薬剤、膵疾患に使用される薬剤、原虫感染症を治療するために使用される治療剤、マラリア、アメーバ症、ジアルジア症、トリコモナス症、トリパノソーマ症及び/若しくはリーシュマニア症を治療するために使用される薬物、並びに/又は蠕虫症の化学療法で使用される薬物が挙げられる。その他の薬剤としては、抗菌剤、スルホンアミド、トリメトプリム−スルファメトキサゾールキノロン、及び尿路感染症用の薬剤、ペニシリン、セファロスポリン、その他のβラクタム系抗生物質、アミノグリコシドを含む薬剤、タンパク質合成阻害剤、結核、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス疾患、及びハンセン病の化学療法で使用される薬物、抗真菌剤、抗ウイルス剤(非レトロウイルス剤及び抗レトロウイルス剤を含む)が挙げられる。
主題の化合物と併用できる治療用抗体の例として、抗受容体チロシンキナーゼ抗体(セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ)、抗CD20抗体(リツキシマブ、トシツモマブ)、及びアレムツズマブ、ベバシズマブ、ゲムツズマブ等の他の抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、免疫調節に使用される治療剤、例えば免疫調節剤、免疫抑制剤、寛容原、及び免疫刺激剤等が本明細書に記載の方法で企図されている。加えて、血液及び造血器官に作用する治療剤、造血剤、増殖因子、ミネラル、及びビタミン、抗凝固剤、血栓溶解剤、並びに抗血小板薬。
主題の化合物と併用できるさらなる治療剤は、Goodman及びGilmanの”The Pharmacological Basis of Therapeutics” Tenth Edition edited by Hardman, Limbird and Gilman又はPhysician’s Desk Referenceに見出すことができ、この両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載の化合物は、治療対象の状態に応じて、本明細書に開示される薬剤又は他の適切な薬剤と組み合わせて使用できる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の化合物を上記のような他の薬剤と同時に投与する。併用療法で使用する場合、本明細書に記載の化合物を、第2の薬剤と同時に、又は分離して投与してよい。この併用投与は、二つの薬剤の同一剤形での同時投与、別々の剤形での同時投与、及び分離投与を含み得る。すなわち、本明細書に記載の化合物及び上記の任意の薬剤を一緒にし、同一剤形にして製剤化し、同時に投与することができる。あるいは、本発明の化合物及び上記の任意の薬剤を、両薬剤が別々の製剤中に存在した状態で同時に投与することもできる。あるいは、本発明の化合物の直後に上記の任意の薬剤を投与するか、その逆の順で投与することもできる。分離投与プロトコルでは、本発明の化合物及び上記の任意の薬剤を、数分間空けて、又は数時間空けて、又は数日間空けて投与してよい。
以下に提供される実施例及び調製物によりさらに、本発明の化合物、及びそうした化合物の調製の方法を例示し実証する。本発明の範囲は、どんな形であれ、以下の実施例及び調製物の範囲によっては制限されないことを理解すべきである。以下の実施例では、単一のキラル中心をもつ分子は、他に指摘のない限り、ラセミ混合物として存在する。二つ以上のキラル中心をもつそれらの分子は、他に指摘のない限り、ジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一のエナンチオマー/ジアステレオマーは、当業者に既知の方法によって得てもよい。
3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(1)(21.4g、0.1mol)及び炭酸カリウム(27.64g、0.2mol、2当量)を無水DMF(110mL)に懸濁させ、60℃で0.5時間、攪拌した。この混合物に、イソプロピルブロミド(9.9mL、0.105mol、1.05当量)を、同じ温度で加えた。結果として得られた混合物を60℃でさらに2.5時間、攪拌した後、温度にまで放冷した。混合物をろ過し、固形物を少量の酢酸イソプロピルで洗浄し、ろ液を真空中で濃縮した。残渣を水と酢酸イソプロピル(100mL/400mL)の間で分割した。水層を、酢酸イソプロピル(100mL×2回)で抽出した。一つにまとめた有機層を、ブライン(100mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、酢酸イソプロピル(50mL×3回)でろ過、すすいだ。ろ液を真空中で濃縮して、粗生成物(23.4g、91.4%の収率)を黄色の固体として得た。得られた生成物を、メタノール(25mL)に懸濁させ、1時間、攪拌した。固体をろ過により集め、メタノール(4mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、所望の生成物2(18.8g、73.4%の収率)を黄色の固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6): δ 8.23 (s, 1H, ピリミジン), 5.00 (m, 1H, iPr), 1.44 (d, J = 6.8 Hz, 6H, iPr);
13C NMR (100 MHz, DMSO−d
6): δ 157.3, 156.4, 152.9, 116.6, 99.4, 48.7, 21.6
メタノール(600mL)中、2−アミノ−4−ブロモフェノール(3)(59.6g、0.317mol)を含む室温の攪拌溶液に、固体のシアン化臭素(40.3g、0.38mol、1.2当量)を、注意深く分割して加え、結果として得られた混合物を、35℃で6時間、攪拌した。(注意:シアン化臭素は、毒性が非常に強く、この試薬及び反応はドラフト中で注意深く扱うべきである)。反応混合物を飽和Na
2CO
3水溶液でクエンチし、pH値を7〜8に調節した。混合物をその後、真空中で濃縮してメタノールを除去した。残渣を酢酸エチル(600mL)に溶解させ、水(100mL×2回)、及びブライン(100mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥してろ過した。ろ液を真空中で濃縮して、所望の生成物4(65.2g、96.5%の収率)を黄色の固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6): δ 7.62 (s, 2H), 7.37 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.11 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H);
13C NMR (100 MHz, DMSO−d
6): δ 163.7, 147.1, 145.7, 122.2, 117.7, 115.4, 110.0
5−ブロモベンゾ[d]オキサゾール−2−アミン(4)(15.0g、70.4mmol)及びビス(ピナコラート)ジボロン(21.5g、84.5mmol、1.2当量)を、1,4−ジオキサン(150mL)に溶解させた。この混合物に、PdCl
2(dppf)(5.17g、6.3mmol、0.09当量)及び酢酸カリウム(20.71g、211mmol、3当量)を順に加えた。結果として得られた混合物を脱ガスして、アルゴンで3回、充填し戻した後、110℃で2時間、攪拌しつつ還流させた。混合物を室温まで放冷し、ろ過して、固形物を酢酸エチル(30mL×2回)すすいだ。ろ液をシリカゲル(50g)と混合した後、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲル(60g)のプラグに充填し、酢酸エチル/へプタン(1:1、1000mL)で溶出した。ろ液を真空中で濃縮し、残渣をへプタン(50mL)に懸濁させ、30分間、攪拌しつつ還流させた。懸濁液を室温に冷却した後、ろ過により固体を集め、少量のへプタンですすいで、所望の生成物5(15.66g、85.3%の収率)を黄色の固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6): δ 7.47 (s, 1H), 7.43 (s, 2H), 7.34 (s, 2H), 1.30 (s, 12H)
(実施例3a)
化合物4(6.9kg)を室温で、100リットルのガラス反応容器に入れた後、9.9kgのビス(ピナコラート)ジボロン及び69.0kgの1,4−ジオキサンを加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気中で攪拌した後、2.4kgの1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(ジクロロメタンとの1:1錯体)及び9.5kgの酢酸カリウムを加えた。反応混合物を100℃で3.5時間、アルゴン雰囲気中で加熱した後、インプロセスHPLC試験で反応が完了したこと確認した。反応混合物を25℃に冷却した後、それを20.6kgのシリカゲルのプラグに充填し、ろ過した。ろ過固形物を、230.0kgの酢酸エチルで洗浄した。一つにまとめたろ液を、真空下でおよそ15リットルにまで蒸留した。38.8kgの濃塩酸と32.5kgの水との混合物を加えた。反応混合物を80℃で2.5時間、インプロセスHPLC試験で反応が完了したこと確認するまで、加熱した。反応混合物を20℃に冷却してろ過した。固体生成物5aを、3.9kgの濃塩酸と36.0kgの水との混合物で、続いて44.2kgの酢酸エチルで洗浄した後、50℃で90時間、真空下で、わずかに窒素を流しつつ乾燥させた。
5−(4−アミノ−1−イソプロピル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)ベンゾ[d]オキサゾール−2−アミン(式I)の合成
3−ブロモ−1−イソプロピル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(2)(20g、78.1mmol)及び5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾ[d]オキサゾール−2−アミン(5)(26.4g、102mmol、1.3当量)を、1,4−ジオキサンと水(300mL/100mL)の混合物に溶解させた。この混合物に、Pd(PPh
3)
4(7.21g、6.25mmol、0.08当量)及び炭酸ナトリウム(41.4g、391mmol、5当量)を順に加えた。結果として得られた混合物を脱ガスしアルゴンで3回、充填し戻した後、110℃で3時間、攪拌しつつ還流させた。混合物を室温にまで放冷してろ過し、固形物を酢酸エチル(50mL×2回)で洗浄した。一つにまとめたろ液を真空中で濃縮した。残渣を、水と酢酸エチルの混合物(500mL/100mL)に懸濁させ、30分間、攪拌した。固体を、ろ過により集めて、水(50mL)と酢酸エチル(100mL)ですすいだ。このように得られた粗生成物を、酢酸エチル(100mL)に懸濁させ、30分間、攪拌した。固体をろ過により集めて、酢酸エチル(50mL)ですすぎ、真空中で乾燥させて、式Iの粗生成物(20g、83%の収率)を得た。上で得られた生成物(20g)を、還流メタノール(1600mL)中に溶解させ、活性炭(6g、30%W/W)を加えた。混合物を30分間、還流させた後、熱い混合物を、ブフナー漏斗を通してろ過した。固形物を、熱メタノール(100mL×3回)で洗浄した。一つにまとめたろ液を濃縮した。固体を酢酸エチル(300mL)中でスラリーにし、懸濁液を室温で30分間、攪拌した。固体をろ過により集め、酢酸エチル(50mL×2回)で洗浄し、真空中で乾燥させて、所望の式Iの生成物を多形形態A(16.27g、67.3%の収率)として得た。m.p.: 273.67 ℃ (開始温度);
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6): δ 8.26 (s, 1H, ピリミジン), 7.56 (s, 2H, オキサゾール−2−アミン), 7.48 (d, J = 8.1 Hz, 1H, Ph), 7.45 (d, J = 1.4 Hz, 1H, Ph), 7.27 (dd, J = 8.1, 1.6 Hz, 1H, Ph), 5.08 (m, 1H, iPr)及び1.52 (d, J = 6.7 Hz, 6H, iPr);
13C NMR (100 MHz, DMSO−d
6): δ 163.4, 158.1, 155.4, 153.2, 148.3, 144.4, 143.7, 128.8, 120.5, 115.0, 108.8, 97.5, 48.0及び21.8; 分析(%計算値, % C
15H
15N
7Oに対して見出された値): C (58.24, 58.04), H (4.87, 4.83), N (31.70, 31.49);LC−MS分析に基づき99%より高純度
(実施例4a)
5−(4−アミノ−1−イソプロピル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)ベンゾ[d]オキサゾール−2−アミン(式I)の合成
室温で100リットルのガラス反応容器に、化合物2(2.7kg)及び化合物5a(2.8kg)を入れた。反応混合物を窒素雰囲気下で攪拌した後、43.4kgの1,4−ジオキサン及び14.0kgの水を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で攪拌した後、1.0kgのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)及び5.7kgの炭酸ナトリウムを加えた。反応混合物を、還流下(88℃)で7.5時間、インプロセスHPLCで反応が完了したことを確認するまで、アルゴン雰囲気下で加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を真空下で、およそ10Lにまで蒸留した。この混合物に、60.0kgの水及び11.0kgの酢酸エチルを加えた。混合物を22℃で1時間、攪拌した後、ろ過した。湿った固形物を100リットルのガラス反応容器に移し、60.0kgの水及び11.0kgの酢酸エチルと混合し、22℃で30分間、攪拌した。混合物をろ過した。湿った固形物を8.0kgの水及び8.5kgの酢酸エチルで洗浄した。洗浄後、湿った固形物を100リットルのガラス反応容器に移し、12.6kgの酢酸エチルと混合し、22℃で30分間、攪拌した。混合物を再びろ過し5.7kgの酢酸エチルで洗浄した。粗生成物を、54℃で真空下、わずかに窒素を流しつつ乾燥させた後、それ(2.36kg)を200ガロンのGLCS蒸留器に入れた。蒸留器を窒素でパージし、200.0kgのメタノールを加えた。混合物を60℃に加熱した。この混合物に、14.5kgのメタノール中、1.0kgの活性炭の懸濁液を加えた。結果として得られた混合物を60℃で1時間、加熱した。熱い混合物を、予熱(60℃)したガラス製ヌッチェ(Nutsche)ろ過器を通してろ過した。固形物を70.0kgの熱メタノールで洗浄した。一つにまとめたろ液を、真空下でおよそ10Lにまで蒸留した。28.4kgの酢酸エチルを加えた。混合物を25℃で30分間、攪拌し、ろ過した。湿った固形物を12.7kgの酢酸エチルで洗浄した。所望の式Iの生成物を、50℃で真空下、わずかに窒素を流しつつ、乾燥減量が1.0%以内になるまで乾燥させた。
3−ブロモ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(1)(21.4g、0.1mol)及び炭酸カリウム(27.64g、0.2mol、2当量)を、無水DMF(210mL)に懸濁させ、80℃で0.5時間、攪拌した。この混合物に、イソプロピルブロミド(9.9mL、0.105mol、1.05当量)を、同一温度で加えた。結果として得られた混合物を、80℃でさらに2.5時間、攪拌した後、室温にまで放冷した。混合物を真空中で濃縮し、残渣を、シリカゲル(MeOH/DCM:1:80〜1:10)上、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、所望の生成物、3−ブロモ−2−イソプロピル−2H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(2a)(800mg、3.1%)を固体として得た。
3−ブロモ−2−イソプロピル−2H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン2a(500mg、1.95mmol、1.0当量)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾ[d]オキサゾール−2−アミン(1g、3.9mmol、2.0当量)、Pd(OAc)2(131mg、0.59mmol、0.3当量)、PPh3(308mg、1.17mmol、0.6当量)及びNa2CO3(1.03g、9.75mmol、5.0当量)を、DMF/EtOH/H2O(30mL/10mL/10mL)に溶解させた。結果として得られた混合物を脱ガスし、アルゴンで3回、充填し戻した後、アルゴン雰囲気下、80〜90℃で1.5時間、攪拌した。反応は、TLC分析に基づいて、完了した。混合物を真空中で濃縮し、残渣を、シリカゲル(MeOH/DCM1:100〜1:10)上、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、所望の生成物である5−(4−アミノ−2−イソプロピル−2H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)ベンゾ[d]オキサゾール−2−アミン(式III)(300mg、52%)を固体として得た。
形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを、CuKα放射(40kV、40mA)、θ−θゴニオメーター、V20の発散及び受光スリット、グラファイト二次モノクロメーター、及びシンチレーションカウンターを用いる、シーメンス(Siemens)D5000回折計上で収集した。この機器の性能を、認証されたコランダム標準試料(NIST 1976)を用いてチェックした。データ収集に使用したソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.3.1であり、データは、Diffrac Plus EVA v11.0.0.2又はv13.0.0.2を用いて分析し、表示した。
試料は、受け取ったままの粉末を使用して平坦な板状の試料として調製した。およそ35mgの試料を、研磨したゼロバックグラウンド(zero−background)(510)シリコンウェーハに切り込まれた空洞中に優しく押し固めた。試料は、分析の間、それ自体の面内で回転させた。データ収集の詳細は、以下の通りである。
・角度範囲:2〜42. 2θ
・ステップサイズ:0.05. 2θ
・収集時間:4秒・ステップ−1
他の形態のXRPDパターンは、CuKα放射(40kV、40mA)、自動化されたXYZステージ、試料の自動位置決め用レーザービデオ顕微鏡、及びHiStarニ次元面検出器を用いる、Bruker AXS C2 GADDS回折計上で収集した。X線光学系は、0.3mmのピンホールコリメーターと一体になった単一のGobel多層膜ミラーから成る。
ビームの発散、すなわち、サンプル上でのX線ビームの実効サイズは、およそ4mmであった。θ−θ連続掃引モードを適用し、試料−検出器間距離は、2θの実効範囲3.2°〜29.7°が得られる20cmであった。試料にX線ビームを120秒間当てるのが、典型的であろう。データ収集に使用したソフトウェアは、WNT4.1.16対応のGADDSであり、データを、Diffrac Plus EVA v9.0.0.2、又はv13.0.0.2を用いて解析、表示した。
試料は、粉砕せずに受け取ったままの粉末を使用し平坦な板状試料として調製した。およそ1〜2mgの試料をシリコンウェーハ上に優しく押圧し、平坦な表面を得た。
形態Aの研究
X線粉末回折
形態Aの高分解能XRPDディフラクトグラムを図1に示す。
40℃および75%の相対湿度での安定性試験
J00439の試料を40℃および75%の相対湿度で保存した。7日後、続いて21後、及び35日後でのXRPDによる再分析から、依然としてパターンA(図2)であることが示された。よって、この固体の形態(以下、形態Aとする)は、安定性に関する加速試験条件対して安定であった。XRPDピーク強度に、いくつかの変動が経時的に観測されたことに注意されたい。
示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)
形態AのTGAトレース(図3)は、25℃〜250℃の間でわずかな重量損失を示した。250℃〜350℃の間に見られる9.7%の重量損失は、幾分かの分解によるものである可能性が高い。形態AのDSCトレース(図4)は、274℃で立ち上がる鋭い融解吸熱を示した。
重量測定蒸気吸着(Gravimetric Vapour Sorption)(GVS)
形態AのGVS実験から得られたデータは、実験全体にわたり非常わずかな重量変化(0.1%)を示した。ヒステリシスは存在しなかった。この物質は、非吸湿性である。キネティックプロット(kinetic plot)(図5)は、すべての相対湿度で、速やかな平衡を示した。GVS実験後に回収した物質は、XRPDにより再分析され、依然としてパターンAであった。この形態は、従って、GVS条件に対して安定であった。
カール・フィッシャー(Karl Fischer)による水の定量
J00439の含水率は、カール・フィッシャー滴定により2.4%であった。
多形体スクリーニング
異なる多形体に関するスクリーニングの実験を行った。結果を、表1〜3にまとめる。具体的には、表1では、形態Aの溶液を貧溶媒で処理した。表2では、様々な単一溶媒中の形態Aの溶液を、5℃まで0.5℃/分で冷却した。表3では、様々な水/有機溶媒の混合物中の形態Aの溶液を、5℃まで0.5℃/分で冷却した。得られた固体をさらに、実施例6で説明したX線粉末回折(XRPD)法により解析した。表2及び3のすべての実験は、20mgの規模で実行した。
表3.水/有機溶媒混合物を用いた形態スクリーニング
多形体のスクリーニング及び特性評価に関する規模拡大実験
異なるXRPDパターンをもつ固体を生じた実験を、80〜100mgの規模で繰り返した。詳細を表4に示す。すべての固体をろ過し、数分間、フィルター上で風乾した後、真空オーブン(25℃)で1時間、乾燥してから、分析した。項番号38は、見かけ上混合物のパターンが得られた、表2(項番号9)における小規模実験の繰り返しである。しかし、このさらに大きな規模では、DMF溶液の冷却により、新たな形態Eが生成した。また、項番号40のAcOH/水では、形態Dの生成が期待されていたが、今回は出発物質の形態Aが得られた。他の実験では、期待された形態B及びCが得られた。
XRPD分析に加えて、得られた固体をさらなる分析に付した。結果を表5にまとめる。
熱分析
形態Eの固体(項番号38、表5)は、TGA(図13)において60℃周辺に鋭い段差を持ち、28%の質量を損失した。低温での複数の吸熱がDSCで観察された後、形態Aの鋭い融解特性が271℃に観察された。
形態Cの固体の試料の、80℃周辺のTGAの段差、及び低温でのDSCの吸熱(図9)の両方で、同様な熱的挙動が観察された。
形態Bの固体(項番号39、表5)もまた、TGA曲線に段差を示したが、ただしこれは、70℃と100℃周辺での二つの連続した段差で構成される。DSCトレースは、複雑に連続する低温での吸熱を含んだ。これらの低温での損失は、結合していない残渣溶媒に、部分的に対応した可能性がある。
TGA中の鋭い段差は、結合していない溶媒の脱溶媒和に典型的であり、DSCは、脱溶媒和により形態Aが生じることを示している。
1H NMR
表11に示すとおり、1H NMRは、形態B、C、及びEの固体中に溶媒の存在を示している。形態Cの固体中に見られるジオキサン又はTHFの量は、より小規模での実験に観察されるものと非常に類似していることが注目される。形態Eの固体は、約25.5重量%に対応するであろう1.5mol当量のDMFを含んでいた。これは、TGA段差の28%よりも幾分小さかったので、幾分かの水もまた、この質量損失の原因である可能性がある。形態Bの固体は、1.4mol当量のDMA(28.3重量%)を含んでいた。幾分かのDMAは、結合していない残渣溶媒である。
カール・フィッシャー水滴定
カール・フィッシャー滴定による固体の含水率を、表5に示す。すべての固体は、相当量の水を含んでいたので、従って水和物である可能性がある。特に、形態Cの固体(項番号41及び42、表5)は、約2.5mol当量(12.5重量%)に対応する、同程度の水を有していた。
固体の乾燥
各固体の試料を、真空中、40℃で一晩、乾燥させた後、試料をXRPD及び1H NMRで再解析した。結果を、以下の表6に示す。
形態Eは、乾燥により形態Aに脱溶媒和したが、形態Bは部分的にしか脱溶媒しなかったように見え、約0.4mol当量のDMAを損失して、新たなXRPDパターン(形態F)を示した。形態Cの両固体(項番号41及び42、表6)は、乾燥中に安定であり、いかなる溶媒も損失しなかった。これは、比較的低沸点のTHFの場合で特に特筆すべきことであり、有機溶媒が構造中に結合していることを示した。
表6.形態E、B、及びCの固体の40℃での乾燥及び再分析
GVS分析
形態Eは、第1の吸着サイクル(40〜90%の相対湿度)の間に28重量%を失った後、脱着及び第2の吸着サイクルの間にはさらにいかなる重量の損失又は利得も示さなかった。GVSの後のXRPDによる固体の再分析から、それが形態Aに変わっていたことが示された。これは、GVS実験における形態Eの形態Aへの脱溶媒和と整合する。
同様に、形態Bは、形態Aに脱溶媒和し、第1の吸着サイクルの間に様々なステップで総計28%重量を損失した。
形態Cは、GVSにおいて異なる挙動を有した。それは脱溶媒和せず、GVS後のXRPDにおいて依然として形態Cであった。試料は、非吸湿性であり、第1の吸着サイクルにおいて0.16%重量の利得しか伴わなかった。それは脱着中に脱水和/脱溶媒和のいずれも示さなかった(90〜0%の間の相対湿度で0.38%の損失)。ヒステリシスは観察されず、キネティックプロットは、すべての相対湿度において速やかな平衡を示した。
安定性試験
項番号38、39、41、及び42の試料を、40℃および75%の相対湿度で保存した。7日後でのXRPDによる再分析により、形態E及びBが形態Aに変わっていたが、形態Cの両固体が依然として形態Cであったことが示された。
形態Cの固体の一つ(項番号45、表6)もまた、1H NMRで再解析して、高湿度中に保存した後に残った溶媒(THF)のレベルをチェックした。0.37mol当量のTHFが、積分により測定され、これは溶媒レベルのわずかな減少に対応した。高湿度が溶媒除去においてしばしば役立つ(形態E及びBの溶媒和物に関して観察されているとおり)ので、再びこれは、THFが極めて強固に構造に結合していることを示唆している。
まとめれば、式Iの様々な溶媒和物を特定した。形態B及び形態Eはそれぞれ、DMF及びDMAの溶媒和物であるように見える。それらは、カール・フィッシャーによって高いレベルの水を有していた(しかし含水率だけは、TGA曲線に観察される段差を説明することはできなかった)ので、それらは、水和物/溶媒和物(水と有機溶媒をともに含む)が混合したものである可能性がある。形態B及び形態Eのどちらも、GVSにおいて、及び安定性に関する加速試験条件(40℃および75%の相対湿度)のもとで、形態Aに容易に脱溶媒和した。形態Eはまた、乾燥中に形態Aに変わったが、形態Bは、新しい形態Fに部分的に脱溶媒和するように見えた。
形態Cは、乾燥及び高湿度条件(GVS下、及び安定性試験下の両方)に対して安定であった。それは、約2.5mol当量の水を伴う水和物であるように見えた。それはまた、約0.4〜0.5mol当量のTHF又はジオキサンを含んでいるように見えた。従って、それは、水和物/溶媒和物の混合したものである可能性がある。形態Cが実際に、有機溶媒による格子の部分占有を伴う三水和物であった可能性もある。
塩のスクリーニング研究
形態Aの塩を、p−トルエンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸(EDSA)、塩酸(HCl)(モノ及びビス)、硫酸、マレイン酸、メタンスルホン酸(MSA)、ベンゼンスルホン酸(BSA)、エタンスルホン酸(ESA)、リン酸、イセチオン酸、及びシュウ酸を用いて形成した。様々な塩を、表7に示すとおり、結晶性固体の形成に関し、様々な溶媒に対して試験した。形態Aは、塩酸及びリン酸と結晶性のモノ塩を形成すること、及び硫酸、塩酸、1,2−エタンジ硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びマレイン酸と半結晶性から結晶性のビス塩を形成することが観察された。
さらなる溶媒和物のスクリーニング
およそ20mgの式Iの化合物(形態A)をバイアルに入れ秤量して、150マイクロリットルの溶媒系を加えた。バイアルを、50℃で、5℃で、又は室温と50℃の間の繰り返しで、4〜5日間、激しく攪拌した。固体をろ過して単離し、XRPD及び熱分析により特性評価した。5℃のアセトン/5%水から、水和物を単離した(図15及び16を参照のこと)。水和物は、真空乾燥、GVS分析、40℃/75%の相対湿度若しくは25℃/97%の相対湿度で8日間の保存、又は約100℃への加熱の後に、形態Aに転換した。室温と50℃の間の繰り返しを5日間行ったジメチルアセトアミド(DMA)から、溶媒和物を単離した(図17及び18を参照のこと)。DMA溶媒和物は、40℃/75%の相対湿度若しくは25℃/97%の相対湿度で8日間の保存、又は約100℃への加熱の後、形態Aに転換した。DMAに10%以上の水が含まれることにより、DMA溶媒和物の形成は阻止された。
本発明の好適な実施形態が、本明細書において示され記載されたが、そうした実施形態が例としてのみ提供されていることは、当業者には明らかである。多数の変形、変更、及び置き換えがこれ以後、本発明から逸脱することなく当業者において発生するであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替手段を、本発明の実施において適用してもよいことは理解されるべきである。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲にある方法及び構造、並びにそれらの等価物が、それによって包含されることが意図される。