JP2014521337A - 幹細胞由来の組織細胞中の代謝成熟 - Google Patents

幹細胞由来の組織細胞中の代謝成熟 Download PDF

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Abstract

本発明は、例えば、酸化的リン酸化、TCA回路、脂肪酸酸化、およびピルビン酸脱カルボキシル化を含む、解糖から好気的呼吸およびその関連経路への幹細胞またはそれに由来する細胞中の変換を促進するための方法および組成物に関する。特定の実施形態において、例えば、ヒト胚幹細胞およびヒト誘導多能性幹細胞を含む、特定の幹細胞由来の細胞の代謝成熟を改善するために、ある特定の培地が採用される。特定の培地は、例えば、グルコースを有しない、または随意にピルビン酸塩を有しない、脂肪酸を有する、L−カルニチンを有する、タウリン、クレアチン、非必須アミノ酸、L−グルタミンを有する、および抗酸化物質またはフリーラジカル捕捉剤を有する、培地を含む。

Description

本願は、2011年7月29日出願の米国仮特許出願第61/513,164号の利益を主張し、それは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
(発明の背景)
1.技術分野
本発明は概して、細胞生物学および分子生物学の分野に関する。具体的には、本発明は、幹細胞生物学の分野、ならびに例えば、心筋細胞および肝細胞を含む、幹細胞由来の細胞の成熟に関する。
2.背景技術
胎児期の間、組織は、代謝のための一次エネルギー源として解糖を主に利用する(非特許文献1)。心臓および肝臓を含む多くの組織の周産期発生の間、代謝の基本的形態は、脂肪酸酸化(FAO)に切り替わり、それは次いで、クエン酸回路(TCA回路)の中間体を提供する。培地のほとんどは、一般に好気的呼吸またはミトコンドリアに依存することがほとんどなく、急速に成長し、主に解糖を通してエネルギーを生成するように代謝的に適合される、不死化した腫瘍由来の細胞株に対して設計される。したがって、ヒト胚幹細胞(hESC)およびヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)由来の細胞型の代謝成熟状態を改善するために、例えば、解糖とは対照的に、好気的呼吸およびその関連流入経路を促進することが必要である。
Lehman and Kelly,2002、Lopaschuk et al.,2010
本発明は、例えば、幹細胞に由来する細胞を含む、ある特定の細胞型の代謝成熟度の増加に関する方法および組成物に関する。本発明の態様において、方法は、解糖から好気的呼吸へ、代謝のそれらの基本的形態を変換するように、細胞に影響を与えることに関する。本発明の特定の実施形態において、本発明の方法に曝露される幹細胞から分化した細胞は、改善された機能的属性を有する成熟細胞をもたらす。本発明の特定の場合において、ヒト胚幹細胞またはヒト誘導多能性幹細胞に由来する細胞の代謝成熟度は強化される。
本発明の態様は、hESCまたはヒト誘導多能性幹細胞hiPSCに由来する細胞型中の好気的呼吸およびその関連経路(例えば、酸化的リン酸化(OXPHOS)、TCA回路、FAO、およびピルビン酸脱カルボキシル化を含む)を強化するための細胞培養系を提供する。これらの経路のいずれかまたは全てを介した好気的呼吸を強化することは、幹細胞(SC)由来の細胞型の成熟状態を改善し、それにより、それらの機能的属性を改善する。心筋細胞に対して、これは、NPPA(ANP)およびNPPB(BNP)誘導性を含む。
本発明の特定の態様において、幹細胞に由来する細胞の代謝成熟度は、幹細胞由来の細胞を特定の培養条件に曝露することによって改善される。本発明の特定の実施形態において、細胞は、解糖から好気的呼吸へ代謝の基本的形態を変換する、特定の培地に曝露される。培地は、かかる変化をもたらす任意の種類のものであってもよいが、特定の実施形態において、培地は、少なくとも血清およびグルコースを欠き、随意にピルビン酸塩を欠き、1つ以上の脂肪酸を含み、かつL−カルニチンを含有してもよい。例えば、ある場合には、培地は、オレイン酸以外の1つ以上の脂肪酸を含む。特定の場合において、例えば、1mg/mL未満の微量のグルコースが存在してもよい。ある特定の場合において、培地はまた、L−カルニチン、クレアチン、タウリン、非必須アミノ酸、L−グルタミン、β−メルカプトエタノール、ITS−A、またはそれらの組み合わせも含む。ある特定の態様において、アスコルビン酸が培地中に含まれてもよい。ある場合には、細胞は、例えば、酸化的リン酸化、クエン酸回路、脂肪酸酸化、および/またはピルビン酸脱カルボキシル化等、好気的呼吸経路において直接的または間接的に機能する代謝酵素の発現を促進する調節遺伝子を発現させるように、遺伝子組み換えが行われている。ある場合には、細胞は、好気的呼吸経路において利用される基質を輸送するタンパク質(脂肪酸輸送体等)をコードする遺伝子を発現させるように、遺伝子組み換えが行われている。ある特定の場合において、輸送体としては、脂肪酸トランスロカーゼ(Cd36)、原形質膜関連脂肪酸結合タンパク質、および/または脂肪酸輸送タンパク質(FATP1−FATP6)が挙げられるがこれらに限定されない。また、細胞は、抗酸化物質および/もしくはフリーラジカル捕捉剤を発現させるように、遺伝子組み換えが行われてもよく、ならびに/または細胞培地は、抗酸化物質およびフリーラジカル捕捉剤を含んでもよい。
本発明のさらなる態様において、本発明の方法は、細胞が特定の培地に曝露されていない場合よりも、細胞を分化後期に発展させるために特定の培地を利用する。特定の実施形態において、幹細胞由来の細胞は、例えば、心筋細胞分化後期を含む分化後期にそれらを促進するための、ある特定の培地中で培養される。特定の場合において、心筋細胞は、例えば、胚幹細胞または誘導多能性幹細胞に由来する。特定の実施形態において、心筋細胞は、特定の培地中のインキュベーション中に、細胞の脂肪酸酸化を増加させることによって、誘導多能性幹細胞、ヒト胚幹細胞、またはヒト誘導多能性幹細胞から成長する。少なくともある場合には、得られる心筋細胞は、NPPA、NPPB、平滑筋アクチン、および骨格アクチン等の「胎児性」遺伝子の発現を減少させ、ミオシン軽鎖2V、カルセクエストリン、およびリアノジン受容体等の成人遺伝子/タンパク質を増加させることによって成熟する。
本発明の態様において、好気的呼吸およびその関連経路を促進するいくつかの方法がある。例えば、好気的呼吸は、L−カルニチン(サイトゾルからミトコンドリアへの脂肪酸の輸送に必要とされる)の添加、脂肪酸の添加、グルコースの除去、及びピルビン酸塩の任意の添加によって促進され得る。遺伝子工学もまた、上記の代謝経路と関連する代謝酵素の発現を促進する調節遺伝子を発現させるために採用され得る。細胞中の好気的呼吸および酸化的リン酸化の促進のパラドックスは、フリーラジカルの形成であり、それは、細胞生存性に悪影響を及ぼし得る。このため、本発明の実施形態は、細胞生存性および機能的属性を促進するために、アスコルビン酸等の抗酸化物質を提供する方法を含む。遺伝子工学による分化した細胞内のフリーラジカル捕捉剤の過剰発現は、かかる細胞培養系中のフリーラジカル毒性の有害作用を制限し得る。
本発明の実施形態において、細胞は、例えば、1つ以上の好気的呼吸酵素の発現を強化するように、1つ以上の好気的呼吸基質の利用可能性を強化するように、および/または1つ以上の好気的呼吸酵素の機能もしくは発現を調節又は増強するタンパク質の発現を強化するように、遺伝子組み換えが行われている。遺伝子組み換えは、例えば、構成的、組織特異的、または化学的に誘発したプロモータの下で、遺伝子を発現させることによって、遺伝子改変された細胞を利用してもよい。遺伝子は、エピソーム、リポソーム、プラスミド、またはウイルスベクターを含む、種々のベクターによって、細胞に提供されてもよい。遺伝子はまた、Cre−loxもしくは同様のシステム等、相同的組み換え、トランスポゾン、または所望の時間に導入遺伝子の除去を可能にするシステムによって提供されてもよい。
本発明の態様において、代謝成熟度を有することを必要としている幹細胞由来の細胞の分化状態を試験するための方法が提供されてもよく、a)以下の特性のうちの1つ以上:(i)本質的に血清を含まない、(ii)本質的にグルコースを含まず、随意に本質的にピルビン酸塩を含まない、(iii)1つ以上の脂肪酸を含む、(iv)L−カルニチンを含む、(v)クレアチンを含む、(vi)タウリンを含む、(vii)非必須アミノ酸を含む、(viii)L−グルタミンを含む、(ix)β−メルカプトエタノールを含む、を有する、培地と幹細胞由来の細胞を接触させることと、b)細胞の代謝状態を測定することと、を含む。細胞の代謝状態は、少なくともある場合において、遺伝子発現または機能アッセイによって同定されてもよい。幹細胞由来の心筋細胞に対する特定の実施形態において、それらの乳酸脱水素酵素活性が分析される。幹細胞由来の心筋細胞に対する特定の実施形態において、BNP発現によって測定されるそれらのエンドセリン(ET−1)に対する反応が分析される。
本発明のさらなる態様において、代謝成熟度を必要としている細胞(例えば、幹細胞またはそれに由来する細胞)および以下の特性のうちの1つ以上:(i)本質的に血清を含まない、(ii)本質的にグルコースを含まず、随意に本質的にピルビン酸塩を含まない、(iii)1つ以上の脂肪酸を含む、(iv)L−カルニチンを含む、(v)クレアチンを含む、(vi)タウリンを含む、(vii)非必須アミノ酸を含む、(viii)L−グルタミンを含む、(ix)β−メルカプトエタノールを含む、(x)ITS−Aを含む、を含む、培地を含む、組成物がある。
特定の実施形態において、代謝成熟度を有する幹細胞由来の細胞は、心臓幹細胞もしくは非心臓系幹細胞または前駆細胞等、多能性幹細胞または組織幹細胞であり得る幹細胞から分化してもよい。ある特定の態様において、細胞は、肝臓からの卵形/肝芽細胞である。多能性幹細胞は、例えば、体細胞核移植によって得られる誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、または多能性幹細胞を含んでもよい。
他の態様において、培地は、本質的にグルコースを含まなくてもよい。グルコース以外のエネルギー源を提供するために、培地は、高エネルギーリン酸結合、アシル基担体分子、または心筋細胞カルシウムチャネル調節因子を形成することが可能な化合物を含んでもよい。例えば、培地は、クレアチン、カルニチン、タウリン、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。炭素および/またはグルコース以外のエネルギー源を提供するために、培地は、ガラクトース、フルクトース、マンノース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ツラノース、ピルビン酸塩、ピルビン酸、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸塩、アスパラギン酸、乳酸塩、乳酸、グリセロール、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。特定の態様において、培地は、ガラクトースを含んでもよい。培地中のガラクトースは、少なくとも、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50mM、またはその中で導き出せる任意の範囲であってもよい。培地はまた、ピルビン酸塩またはピルビン酸を含んでもよい。培地中のピルビン酸塩またはピルビン酸は、少なくとも、または約0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mM、またはその中で導き出せる任意の範囲であってもよい。
本発明のある特定の場合において、幹細胞は、心筋細胞に分化する。特定の実施形態において、心筋細胞は、例えば、細胞中の好気的呼吸を促進する本発明のある特定の培地を使用して、hESCまたはhiPSCから生成される。例えば、心臓毒性アッセイおよび/または肥大アッセイに役立つように、少なくとも「胎児」または基礎の「ストレス」または「肥大」状態を低減するために、かつミトコンドリアへの依存を促進するために、代謝成熟度を有する心筋細胞を有することは有益である。
本発明のさらなる他の態様において、幹細胞は、肝細胞に分化する。特定の実施形態において、肝細胞は、例えば、細胞中の好気的呼吸を促進する本発明のある特定の培地を使用して、hESCまたはhiPSCから生成される。例えば、幹細胞由来の肝細胞が、酸化的リン酸化が可能な、十分な数のATPが豊富なミトコンドリアを有する場合、代謝成熟度を有する肝細胞を有することは有益である。かかる代謝の状態は、肝細胞のある特定の薬物への曝露による毒性中間体に起因し得る、低減された酸化的リン酸化またはATPレベルの可能性を低減する。
本発明のある特定の実施形態において、本質的にグルコースを含まず、本質的に血清を含まず、1つ以上の脂肪酸を含む、定義された培地がある。いくつかの態様において、定義された培地は、以下の特性のうちの1つ以上:例えば、a)クレアチン、b)随意に、ピルビン酸塩、c)L−カルニチン、d)タウリン、e)L−グルタミン、f)β−メルカプトエタノール、g)ITS−A、およびh)非必須アミノ酸、を有する。
本発明の培地または1つ以上のその成分を収納するキットが、本発明に包含される。
本発明のいくつかの実施形態において、幹細胞由来の細胞の代謝成熟度状態を改善する方法があり、解糖から好気的呼吸へ細胞の代謝を変換する条件に幹細胞由来の細胞を曝露し、それにより細胞の代謝成熟度状態を改善するステップを含む。少なくともある場合には、暴露するステップはさらに、本質的にグルコースを含まず、本質的に血清を含まず、1つ以上の脂肪酸を含む、定義された培地中で、細胞を培養するものとして定義される。特定の実施形態において、定義された培地は、以下の特性のうちの1つ以上:a)クレアチン;b)随意に、ピルビン酸塩;c)L−カルニチン;d)タウリン;e)L−グルタミン;f)β−メルカプトエタノール;g)ITS−A、およびh)非必須アミノ酸、を有する。
いくつかの実施形態において、培地はさらに、ビタミンA(β−カロテン等)、ビタミンC(アスコルビン酸等)およびE、セレン、メラトニン、カルノシン、ロディオラ、ルテオリン、小麦発芽酵素、補酵素Q、ならびにリノール酸からなる群から選択される1つ等、1つ以上の抗酸化物質を含む。いくつかの態様において、培地はさらに、アスコルビン酸、ビタミンE、およびβ−カロテンからなる群から選択される1つ等、1つ以上のフリーラジカル捕捉剤を含む。
ある特定の態様において、幹細胞由来の細胞は、肝細胞または心筋細胞であり、場合によっては、細胞は、遺伝子組み換えが行われている。細胞の遺伝子組み換えは、1つ以上の好気的呼吸酵素の発現を強化するための、1つ以上の好気的呼吸基質の利用可能性を強化するための、および/または1つ以上の好気的呼吸酵素の機能もしくは発現を調節もしくは増強させるタンパク質の発現を強化するための組み換えを含む。例示的な好気的呼吸関連酵素としては、脂肪酸トランスロカーゼ(Cd36)、原形質膜関連脂肪酸結合タンパク質、脂肪酸輸送タンパク質(FATP1、FATP2、FATP3、FATP4、FATP5、および/またはFATP6)、アシル‐CoAシンテターゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、PPARβ、ならびにPARδからなる群から選択される1つ以上が挙げられる。
ある場合には、細胞は、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ペルオキシダーゼ、メチオニンレダクターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素を発現させるように、遺伝子組み換えが行われている。特定の場合において、曝露するステップはさらに、1つ以上の好気的呼吸酵素、1つ以上の好気的呼吸基質の発現を強化させるように、および/または1つ以上の好気的呼吸酵素の機能もしくは発現を調節もしくは増強させるタンパク質の発現を強化するように等、幹細胞由来の細胞の遺伝子組み換えを行うものとして定義される。
幹細胞由来の細胞は、代謝成熟度を可能にする任意の好適な期間にわたって培地中で培養されてもよいが、特定の実施形態において、タイミングは、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8,9、10日間またはそれ以上である。
少なくともいくつかの実施形態において、曝露するステップに続いて、方法はさらに、1つ以上の遺伝子の発現(例えば、CPT1、PPARa、NPPA、およびNPPB)または細胞機能アッセイにおける反応等、1つ以上の特性に対して、幹細胞由来の細胞を分析することを含む。
特定の実施形態において、培地は、解糖の代わりに好気的呼吸の利用によって、幹細胞由来の細胞を成熟させるが、ある特定の実施形態において、幹細胞由来の幹細胞の成熟は、他または追加の機構によって生じる。本発明のある特定の実施形態において、幹細胞由来の細胞の代謝成熟度状態を改善する方法があり、本質的にグルコースを含まず、本質的に血清を含まず、1つ以上の脂肪酸を含む、定義された培地に、幹細胞由来の細胞を曝露し、それにより細胞の代謝成熟度状態を改善するステップを含む。特定の実施形態において、定義された培地は、以下の特性のうちの1つ以上:a)クレアチン、b)随意に、ピルビン酸塩、c)L−カルニチン、d)タウリン、e)L−グルタミン、f)β−メルカプトエタノール、g)ITS−A、およびh)非必須アミノ酸、を有する。
上記は、後に続く発明を実施するための形態がよりよく理解され得るように、本発明の特徴および技術的利点をかなり大まかに概説してきた。本発明のさらなる特徴および利点が以下に記載され、本発明の特許請求の範囲の主題を形成する。開示される概念および特定の実施形態が、本発明の同一の目的を成し遂げるために、他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用されることが、当業者によって理解される。また、かかる同等の構造が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲から逸脱しないことも、当業者によって理解される。さらなる目的および利点とともに、その組織および操作方法の両方に関して本発明の特徴であると考えらえる新規の特徴は、添付図面と関連して考慮されるとき、以下の説明からよりよく理解される。しかしながら、図面のそれぞれは、例示および説明目的のみで提供され、本発明の制限の定義として意図されないことが、明白に理解されるものとする。
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに説明するために含まれる。本発明は、本明細書に示される発明を実施するための形態と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。
(a)iPSC由来の心筋細胞を用いた細胞培養研究のフローチャート図(以下の実験1を参照されたい)、(b)SF8中で培養されるiPSC由来のCMがCPT−1を上方制御し、NPPBを下方制御した。 (a)iPSC由来の心筋細胞を用いた細胞培養研究のフローチャート図(以下の実験1を参照されたい)、(b)SF8中で培養されるiPSC由来のCMがCPT−1を上方制御し、NPPBを下方制御した。 細胞数、純度、および生存性が、SF8培地中で維持される。 (a)iPSC由来の心筋細胞を用いた細胞培養研究のフローチャート図(以下の実験2、3、および4を参照されたい)、(b)本発明の例示的な方法を使用したフローサイトメトリーデータの例 (a)iPSC由来の心筋細胞を用いた細胞培養研究のフローチャート図(以下の実験2、3、および4を参照されたい)、(b)本発明の例示的な方法を使用したフローサイトメトリーデータの例 SF8培地中の細胞培養およびエンドセリン(ET−1)の誘導は、CMの機能的反応を改善する。 iPSC由来の心筋細胞が(a)iCMMまたは(b)SF8培地中で培養されるときの、乳酸脱水素酵素活性プロファイル
本明細書で使用されるように、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。特許請求の範囲で使用されるように、用語「含む」と併せて使用されるとき、用語「a」または「an」は、1つまたは2つ以上を意味し得る。本明細書で使用されるように、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。特定の実施形態において、本発明の態様は、例えば、本発明の1つ以上の配列から「本質的になる」または「なる」可能性がある。本発明のいくつかの実施形態は、本発明の1つ以上の要素、方法ステップ、および/または方法からなるか、または本質的になる可能性がある。本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に対して実施され得ることが考慮される。本発明の方法および/または組成物との関連で考察される実施形態は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に対して採用されてもよい。したがって、一方法または組成物に関する一実施形態は、本発明の他の方法および組成物にも同様に適用され得る。
本願全体を通して、用語「約」は、値が、装置の固有の誤差の変動を含むことを示すために使用され、この方法は、値を決定するため、または研究対象の間に存在する変動を決定するために用いられる。
「心筋細胞」は概して、任意の心筋細胞系細胞を指し、特別の定めのない限り、任意の制限なく、心筋細胞発生の任意の段階で細胞に適用するものと解釈され得る。例えば、心筋細胞は、心筋細胞の前駆細胞および成熟した心筋細胞の両方を含んでもよい。
用語「細胞成熟」は、その完全に機能的な状態を達成するために細胞に必要とされる発達過程である。ESCおよびiPSC由来の分化した細胞はしばしば、発達の「胎児」状態を示す。したがって、ESCおよびiPSC由来の組織の成熟は、胎児遺伝子/タンパク質発現および関連した機能特性の損失、ならびに成人または成熟細胞と関連した遺伝子発現および機能特性の取得を必要とする。
「胚幹(ES)細胞」は、初期胚由来の多能性幹細胞である。
本明細書で使用されるように、用語「本質的に含まない」は、わずかに微量に存在している培地中の成分、例えば、1mg/mL以下のグルコースを指す。
iPS細胞またはiPSCと一般的に略される「誘導多能性幹細胞」は、細胞に導入するか、または別様に細胞を再プログラム化因子と接触させることによって、非多能性細胞、典型的には、成人体細胞、または線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、ニューロン、表皮細胞等の最終分化細胞から人工的に調製される、ある種の多能性幹細胞を指す。
本明細書で使用されるように、用語「代謝成熟度」または「代謝成熟」は、解糖とは対照的に、主として細胞中の代謝に対して脂肪酸酸化、クエン酸回路、および/または酸化的リン酸化を利用する細胞中の促進が挙げられるがこれらに限定されない、代謝過程の成熟を指す。例えば、脂肪酸酸化は、成人心臓組織によって容易に利用されるが、発達中、解糖は、この組織によって容易に使用される。iPSおよびES細胞由来の心筋細胞等、幹細胞由来の細胞を「成熟させる」過程は、本発明の実施形態において、これらの「成人」代謝経路の使用を促進する。
本明細書で使用されるように、用語「代謝の基本的形態」は、代謝の一次源としての参照された代謝経路を指す。例えば、脂肪酸酸化は、細胞代謝エネルギーの80%が脂肪酸酸化によって、19%が解糖によって、1%が乳酸酸化によって生成された場合、代謝の基本的形態である。
「多能性」は、1つ以上の組織または臓器を構成する全ての細胞に分化する可能性を有する幹細胞、例えば、3つの胚葉:内胚葉(胃の内壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、または外胚葉(表皮組織および神経系)のうちのいずれかを指す。本明細書で使用される「多能性幹細胞」は、3つの胚葉のうちのいずれかに由来する細胞に分化し得る細胞、例えば、全能細胞または誘導多能性幹細胞の子孫を指す。
本明細書で使用されるように、用語「幹細胞由来の細胞」は、分化の過程によって多能性幹細胞から生成される任意の細胞型を指す。
特定タンパク質を「コードする」「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「コード領域」、「配列」、「セグメント」、または「フラグメント」は、適切な調節配列の制御下に配置される場合、インビトロまたはインビボで、転写され、また遺伝子生成物、例えば、ポリペプチドに随意に翻訳される核酸分子である。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA形態のいずれかで存在し得る。DNA形態で存在する場合、核酸分子は、一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であり得る。コード領域の境界は、5′(アミノ)末端の開始コドン、および3′(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンにより決定される。遺伝子としては、原核または真核mRNAのcDNA、原核または真核DNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列を挙げることができるが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常、遺伝子配列に対して3′に位置する。
用語「導入遺伝子」または「外来」は、人工的または自然な手段により細胞または有機体に導入された遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチド、例えば、外因性核酸を指す。外因性核酸は、異なる有機体または細胞に由来し得るか、または有機体もしくは細胞内で自然発生する核酸の1つ以上の追加の複製であり得る。非限定的な例として、外因性核酸は、天然細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にあるか、またはそうでなければ自然界に見られるものとは異なる核酸配列が両脇に並ぶ。
「プロモータ」という用語は、本明細書において、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指すように、その通常の意味で使用され、調節配列は、RNAポリメラーゼを結合し、下流(3′方向)コード領域の転写を開始することができる遺伝子に由来する。
I.本発明の例示的な培地およびその使用
本発明の実施形態において、細胞は、細胞の成熟状態を促進する培地中で培養される。特定の実施形態において、細胞は、幹細胞またはそれに由来する細胞であり、培地は、幹細胞由来の組織型が細胞に対する改善された成熟状態および改善された機能的属性を有するように、好気的呼吸を促進する。特定の場合において、例えば、酸化的リン酸化、脂肪酸酸化、ピルビン酸脱カルボキシル化、クエン酸回路、およびそれらの関連した流入経路を含む、細胞中の特定の経路は、かかる成熟状態を誘発するように影響を受ける。少なくともある特定の場合において、培地は、解糖の使用の減少までを含む、代謝の基本的形態としての脂肪酸代謝の利用を促進する。少なくともいくつかの実施形態において、解糖は、もはや検出できない。
本発明の態様は、以下の特性のうちの1つ以上:(i)本質的に血清を含まない、(ii)本質的にグルコースを含まず、随意に本質的にピルビン酸塩を含まない、(iii)1つ以上の脂肪酸を含む、(iv)L−カルニチンを含む、(v)クレアチンを含む、(vi)タウリンを含む、(vii)非必須アミノ酸を含む、(viii)L−グルタミンを含む、(ix)β−メルカプトエタノールを含む、または(x)ITS−Aを含む、を含む培地を含む。
本発明の態様において、培地は、1つ以上の脂肪酸を含む。脂肪酸は、必須脂肪酸(リノール酸またはα−リノレン酸等)、条件付き必須脂肪酸、または両方の混合物であってもよい。脂肪酸は、飽和または不飽和であってもよい(シスまたはトランス構成を含む)。いくつかの実施形態において、脂肪酸は、例えば、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、または28を含む、偶数の炭素原子の鎖を有する。脂肪酸は、6個未満の炭素の尾部を有する、短鎖脂肪酸(SCFA)(すなわち、酪酸)、6〜12個の炭素を有する中鎖脂肪酸(MCFA)、12個の炭素よりも長い尾部を有する長鎖脂肪酸(LCFA)、22個の炭素よりも長い尾部を有する超長鎖脂肪酸(VLCFA)、またはそれらの混合物であってもよい。不飽和脂肪酸の例としては、ミリストオレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エデト酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸が挙げられる。飽和脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、およびセロチン酸が挙げられる。脂肪酸の濃度は、それが解糖を選択して好気的呼吸を促進する限り、任意のレベルであってもよいが、特定の実施形態において、脂肪酸は、例えば、0.25x、0.5x、0.75x、1x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、または10xである。特定の態様において、脂肪酸は、例えば、0.25x〜2.5xの間、または0.5x〜1.5xの間、または0.75x〜1.25xの間を含む、0.25x〜5xの間のレベルである(0.01モルのアルブミンあたりそれぞれ1x=.02モルのリノール酸およびオレイン酸)。
特定の場合において、培地中にL−カルニチンがあり、濃度は、培地が、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進することが可能である限り、任意の種類であってもよい。L−カルニチン濃度は、特定の場合において、2mMであってもよいが、場合によっては、濃度は、例えば、少なくとも0.25mM、0.5mM、0.75mM、1.0mM、1.25mM、1.5mM、1.75mM、2.25mM、2.5mM、2.75mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、7.5mM、10mM、12mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mMである。L−カルニチン濃度は、例えば、0.25mM〜50mMの間、0.25mM〜30mMの間、0.25mM〜25mMの間、1mM〜50mMの間、1mM〜30mMの間、5mM〜50mMの間、5mM〜30mMの間、10mM〜50mMの間、10mM〜30mMの間、15mM〜50mMの間、15mM〜30mMの間、20mM〜50mMの間、20mM〜30mMの間、25mM〜50mMの間、25mM〜30mM、0.25mM〜10mMの間、0.5〜7.5mMの間、0.75〜5mMの間、または1〜3mMの間の範囲であってもよい。
ある特定の態様において、培地中にクレアチンがあり、濃度は、培地が、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進することが可能である限り、任意の種類であってもよい。クレアチン濃度は、特定の場合において、5mMであってもよいが、場合によっては、濃度は、例えば、0.25mM、0.5mM、0.75mM、1.0mM、1.25mM、1.5mM、1.75mM、2.25mM、2.5mM、2.75mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、6mM、6.5mM、7mM、7.5mM、8mM、8.5mM、9mM、9.5mM、または10mMである。クレアチン濃度は、例えば、0.25mM〜10mMの間、0.5〜7.5mMの間、2.5〜7.5mMの間、または3〜6mMの間の範囲であってもよい。
さらなる態様において、培地中にタウリンがあり、濃度は、培地が、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進することが可能である限り、任意の種類であってもよい。いくつかの態様において、タウリンは、心筋細胞アポトーシスを予防するために利用される。タウリン濃度は、特定の場合において、5mMであってもよいが、場合によっては、濃度は、例えば、0.25mM、0.5mM、0.75mM、10mM、1.25mM、1.5mM、1.75mM、2.25mM、2.5mM、2.75m、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、6mM、6.5mM、7mM、7.5mM、8mM、8.5mM、9mM、9.5mM、または10mMである。クレアチン濃度は、例えば、0.25mM〜10mMの間、0.5〜7.5mMの間、2.5〜7.5mMの間、または3〜6mMの間の範囲であってもよい。
特定の場合において、培地中に非必須アミノ酸があり、濃度は、培地が、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進することが可能である限り、任意の種類であってもよい。非必須アミノ酸濃度は、特定の場合において、1mMであってもよいが、場合によっては、濃度は、例えば、0.1mM、0.2mM、0.25mM、0.5mM、0.75mM、1.0mM、1.25mM、1.5mM、1.75mM、2.25mM、2.5mM、2.75mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、6mM、6.5mM、7mM、7.5mM、8mM、8.5mM、9mM、9.5mM、または10mMである。非必須アミノ酸濃度は、例えば、0.1mM〜10mMの間、0.1〜7.5mMの間、0.5〜5mMの間、0.5〜2.5mMの間、0.5mM〜1mMの間、または0.75〜1.25mMの範囲であってもよい。
特定の場合において、培地中にL−グルタミンがあり、濃度は、培地が、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進することが可能である限り、任意の種類であってもよい。L−グルタミン濃度は、特定の場合において、2mMであってもよいが、場合によっては、濃度は、例えば、0.25mM、0.5mM、0.75mM、1.0mM、1.25mM、1.5mM、1.75mM、2.25mM、2.5mM、2.75mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、7.5mM、または10mMである。L−グルタミン濃度は、例えば、0.25mM〜10mMの間、0.5〜7.5mMの間、0.75〜5mMの間、または1〜3mMの間の範囲であってもよい。
特定の場合において、培地中にβ−メルカプトエタノールがあり、濃度は、培地が、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進することが可能である限り、任意の種類であってもよい。β−メルカプトエタノール濃度は、特定の場合において、2mMであってもよいが、場合によっては、濃度は、例えば、0.25mM、0.5mM、0.75mM、1.0mM、1.25mM、1.5mM、1.75mM、2.25mM、2.5mM、2.75mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、5mM、7.5mM、または10mMである。β−メルカプトエタノール濃度は、例えば、0.25mM〜10mMの間、0.5〜7.5mMの間、0.75〜5mMの間、または1〜3mMの間の範囲であってもよい。
ITS−A(Gibco cat#:51300−044:100xの原料中11g/Lのピルビン酸塩も含有する、リン酸緩衝生理食塩溶液中のインスリン、トランスフェリン、およびセレンの組み合わせ)の濃度は、それが解糖を選択して好気的呼吸を促進する限り、任意のレベルであってもよいが、特定の実施形態において、脂肪酸は、例えば、0.25x、0.5x、0.75x、1x、2x、3x、4、5x、6x、7x、8x、9x、または10xである。特定の態様において、脂肪酸は、例えば、0.25x〜2.5xの間、または0.5x〜1.5xの間、または0.75x〜1.25xの間を含む、0.25x〜5xの間のレベルである。
いくつかの実施形態において、培地は、好気的呼吸および酸化的リン酸化の促進によって産生されるようなフリーラジカルを阻止する成分を含む。したがって、特定の実施形態において、培地は、抗酸化物質を含み、および/または細胞は、抗酸化物質を発現するように改変され、または抗酸化物質は、別の遺伝子の発現によって間接的に増加させられる。例示的な抗酸化物質としては、少なくともアスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンE、リポ酸、尿酸、カロテン、ユビキノール、およびα−トコフェロールが挙げられる。例示的な遺伝子としては、抗酸化物質をコードし、細胞が産生するように遺伝子組み換えが行われる遺伝子としては、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、および/またはペルオキシダーゼが挙げられる。
ある特定の態様において、培地は、フリーラジカル捕捉剤を含み、および/または細胞は、直接的にフリーラジカル捕捉剤を発現するように改変され、またはフリーラジカル捕捉剤は、別の遺伝子の発現によって間接的に増加させられる。例示的なフリーラジカル捕捉剤としては、少なくともアスコルビン酸、ビタミンE、およびβ−カロテンが挙げられる。
いくつかの実施形態において、細胞は、酸化的リン酸化、脂肪酸酸化、ピルビン酸脱カルボキシル化、およびクエン酸回路のような代謝経路と関連した外因性代謝酵素を含むように操作される。例示的な脂肪酸酸化酵素としては、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、L−β−ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、およびβ−ケトチオラーゼが挙げられ、例示的な補因子としては、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)が挙げられる。例示的なクエン酸回路酵素としては、例えば、クエン酸シンターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、スクシニル−CoAシンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、およびリンゴ酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。例示的な酸化的リン酸化酵素としては、例えば、NADHデヒドロゲナーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、電子伝達フラビンタンパク質−ユビキノン酸化還元酵素、Q−シトクロムcオキシドレダクターゼ、またはシトクロムcオキシダーゼが挙げられる。例示的なピルビン酸脱カルボキシル化酵素としては、例えば、ピルビン酸塩デヒドロゲナーゼ、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ、およびジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼが挙げられる。細胞中の脂肪酸の濃度を上昇させるか、または脂肪酸のミトコンドリアへの輸送を促進するタンパク質または分子としては、脂肪酸トランスロカーゼ(Cd36)、原形質膜関連脂肪酸結合タンパク質、脂肪酸輸送タンパク質(FATP1−FATP6)、アシル‐CoAシンテターゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)、および/またはL−カルニチンが挙げられる。代謝成熟に関わる遺伝子を活性化する転写因子としては、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARs)α、β/δが挙げられる。
本発明の特定の態様において、培地は、以下の構成成分または特性のうちの1つ以上を含み、ある場合には、全部を含む:血清なし、グルコースなし、随意にピルビン酸塩なし、L−カルニチン、クレアチン、タウリン、非必須アミノ酸、L−グルタミン、BME、ITS−A、リノール酸、オレイン酸、およびアスコルビン酸等の抗酸化物質。
本発明で利用され得る例示的な特定の培地としては、以下を含む、以下からなる、以下から本質的になるものが挙げられる:グルコースを有さず、ピルビン酸塩を有さず、L−カルニチン(2mM)、クレアチン(5mM)、タウリン(5mM)、非必須アミノ酸(1mM)(例えば、Invitrogenから)、L−グルタミン+BME(2mM)、ITS−A(1x)、およびリノール−オレイン酸(1モルのアルブミンあたりそれぞれ1x:0.02モルのリノール酸およびオレイン酸)を有する、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen,Carlsbad,CA)。あるいは、L−グルタミンなしで使用されてもよく、オレイン酸は、完全に除外されてもよい。
例示的な非必須アミノ酸は市販されており、例えば、以下のうちの一部または全部が挙げられ得る:アラニン、アルギニン、アスパラギン酸塩、システイン、グルタミン酸塩、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、タウリン、ヒスチジン、グルタチオントレオニン、およびアスパラギン。
本発明の実施形態において、培地は、脂質、アミノ酸(非必須アミノ酸を含む)、ビタミン、成長因子、サイトカイン、抗酸化剤、2−メルカプトエタノール、ピルビン酸、緩衝剤、および無機塩を含む。2−メルカプトエタノールの濃度は、例えば、約0.05〜1.0mM、特に約0.1〜0.5mMであってもよいが、濃度は、それが細胞を培養するのに適切である限り、特にそれに限定されない。
培地中で細胞を培養するために使用される培養容器としては、細胞をその中で培養することが可能である限り、以下が挙げられ得るが、特にこれらに限定されない:フラスコ、組織培養用フラスコ、皿、ペトリ皿、組織培養用皿、マルチ皿、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバスライド、管、トレー、CellSTACK(登録商標)チャンバ、培養バッグ、およびローラーボトル。細胞は、培養の必要性に応じて、少なくとも、または約0.2、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50mL、100mL、150mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、450mL、500mL、550mL、600mL、800mL、1000mL、1500mL、2000mL、またはその中で導き出せる任意の範囲の体積で培養され得る。ある特定の実施形態において、培養容器は、バイオリアクターであり得、生物学的に活性な環境を支持する任意の装置またはシステムを指し得る。バイオリアクターは、少なくとも、または約2、4、5、6、8、10、15、20、25、50、75、100、150、200、500リットル、1、2、4、6、8、10、15立方メートル、あるいはその中で導き出せる任意の範囲の体積を有し得る。
培養容器は、細胞接着性または非接着性であってもよく、目的に応じて選択され得る。細胞接着性培養容器は、細胞外マトリックス(ECM)等の細胞付着のための任意の基質で被覆され、細胞に対する容器表面の付着性を向上させることができる。細胞付着に使用される基質は、幹細胞または支持細胞(使用される場合)を付着することが意図される任意の材料であり得る。細胞付着のための基質としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ−L−リシン、ポリ−D−リシン、ラミニン、およびフィブロネクチン、ならびにそれらの混合物、Matrigel(商標)、および溶解細胞膜調製物が挙げられる(Klimanskaya et al.,2005)。
他の培養条件は、適切に定義され得る。例えば、培養温度は、約30〜40℃、例えば、少なくとも、または約31、32、33、34、35、36、37、38、39℃であり得るが、特にそれらに限定されない。CO濃度は、約1〜10%、例えば、約2〜5%、またはその中で導き出せる任意の範囲であり得る。酸素圧は、少なくとも、または約1、5、8、10、20%、またはその中で導き出せる任意の範囲であり得る。
幹細胞由来の細胞のインキュベーションの長さは、解糖から好気的呼吸へ、細胞の代謝の基本的形態を変換するのに十分である限り、任意の長さであってもよい。特定の実施形態において、インキュベーションは、例えば、約4日間以上生じる。特定の実施形態において、培地は、一度または定期的に新鮮培地に交換される。
II.幹細胞由来の組織型
本発明の実施形態は、解糖ではなく好気的呼吸が代謝のための一次エネルギー源であるように、細胞中の好気的呼吸の増強を含む。培地に曝露される細胞は、別の培地中で細胞を成長させることと比較して、より成熟した細胞に成長することが可能な任意の種類であってもよいが、特定の実施形態において、細胞は、例えば、幹細胞由来の心筋細胞、肝細胞、および膵島細胞を含む、幹細胞由来の細胞および組織である。例示的な細胞としては、ヒト胚幹細胞(hESC)、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)、ならびにhES細胞またはhiPS細胞由来の心筋細胞、肝細胞、および膵島細胞が挙げられる。
III.代謝成熟度を特徴付けるための方法
本発明の実施形態において、特に、代謝の基本的形態として解糖の代わりに好気的呼吸を促進する本発明の培養方法に従い、細胞の代謝成熟度を決定することができる。
本発明の態様において、代謝成熟度は、細胞の遺伝子型、表現型、形態、遺伝子発現、代謝マーカー、細胞表面マーカー、および/または細胞機能アッセイを同定する当該技術分野の1つ以上の方法によって確認される。本発明のいくつかの実施形態において、1つ以上の特定の遺伝子の遺伝子発現は、本発明の特定の培地で培養すること等、特定の条件に細胞を曝露することにより同定される。遺伝子および/またはタンパク質レベルおよび/または機能は、例えば、ノーザン、ウエスタン、フローサイトメトリー、ELISA、qPCR等を使用して確認され得る。特定の実施形態において、遺伝子は、酸化的リン酸化、クエン酸回路(TCA)、脂肪酸酸化、ピルビン酸脱カルボキシル化等を含む、好気的呼吸およびその関連経路と関連した特定の経路に関与するタンパク質をコードする。特定の実施形態において、遺伝子は、CPT1またはPPARα(脂肪酸酸化と関連した遺伝子)を含んでもよい。ある場合には、遺伝子は、ホルモン発現等、成熟型の細胞の発達を示すタンパク質(NPPA/ANPおよびNPPB/BNPの発現の減少等)、ならびに成熟と関連した構造タンパク質(ミオシン軽鎖2V発現を得るが、平滑筋アクチンおよび骨格アクチン発現を失う等)をコードする。成熟したまたは成熟する心筋細胞に関する特定の態様において、例えば、NPPA(BNA)およびNPPB(BNP)等、「胎児」状態または心臓肥大状態と関連した遺伝子の発現の減少を決定することができる。
心筋細胞の特性化
細胞成熟は、その完全に機能的な状態を達成するために細胞に必要とされる発達過程である。ESCおよびiPSC由来の分化した細胞はしばしば、発達の「胎児」状態を示す。したがって、ESCおよびiPSC由来の組織の成熟は、胎児遺伝子/タンパク質発現および関連した機能特性の損失、ならびに成人または成熟細胞と関連した遺伝子発現および機能特性の取得を必要とする。細胞の多くの属性は、代謝、心臓ホルモン、構造/収縮特性、および電気生理学を含み、胎児状態から成人状態へ成熟することができる。代謝成熟は特に、代謝過程の成熟を指す。
心筋細胞に対して、成熟度は、NPPA、NPPB、平滑筋アクチン、および骨格アクチン等、胎児状態と関連した遺伝子の減少した発現の存在、ならびにミオシン軽鎖2V、カルセクエストリン、およびリアノジン受容体等、成人遺伝子/タンパク質の発現の増加によって評価され得る。成熟細胞は、エンドセリン1等、肥大誘導アゴニストの制御添加による胎児遺伝子プログラムの再導入によって、心臓肥大を研究するための基準状態として有用であり得る。例えば、心臓ホルモンNPPA(ANP)およびNPPB(BNP)の再発現(または誘導性発現)は、肥大反応の特徴である。したがって、心臓肥大アッセイで有用であるESCおよびiPSC由来の細胞に対して、それらは、「胎児」状態により似ている肥大状態に制御条件下で変換され得るように、これらの心臓ホルモンに関して、最初、発達上成熟した状態である必要がある。肥大アゴニスト(エンドセリン1等)の添加による肥大状態の誘導性の度合いの測定は、心臓肥大に効果的な治療剤の創薬に対する、または心臓肥大のオフターゲット誘導を評価するための薬物の毒性試験に対するスクリーニングアッセイとして、特に有用である。
心筋細胞は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0097799号に記載されるように産生および特性化され得る。心筋細胞は、精製または単離され得るか、あるいは、培養中の心筋細胞の純度は、培養中の心筋細胞の検出に基づき決定され得る。誘導多能性幹細胞等の幹細胞に由来する心筋細胞は、他の源からの心筋細胞の形態学的特性を有する。それらは、紡錘状、円形、三角形、または多角形であってもよく、それらは、免疫染色によって検出可能なサルコメア構造の横紋特徴を示し得る。それらは、細胞の扁平なシート、または基質に付着したままか、もしくは懸濁液中に浮遊する集合体を形成し得、電子顕微鏡によって検査されるとき、典型的なサルコメアおよび心房顆粒を示す。
例えば、心筋細胞の純度は、心筋細胞特異的マーカーのプロモータの制御下で外因性マーカー遺伝子を発現するか、または内因性心筋細胞特異的マーカーを発現する、心筋細胞を検出することによって、決定され得る。さらなる態様において、かかる検出は、本発明のある特定の態様に記載される培地中の長期間の貯蔵のために、心筋細胞を単離または精製するために使用され得る。
例えば、心筋細胞特異的マーカーは、心臓トロポニンI(cTnI)、横紋筋収縮の調節のためにカルシウム感受性分子スイッチを提供するトロポニン複合体のサブユニット;
心臓トロポニンT(cTnT);Nkx2.5、発達中の心臓中で持続する、初期マウス胚発達中の心臓中胚葉で発現する心臓転写因子;心房性ナトリウム利尿因子(ANF、発達中の心臓および胎児心筋細胞で発現させられるが、成人において下方制御される、ホルモン。それは、骨格筋細胞ではなく、心臓細胞において高度に特異的な方法で発現させられるため、心筋細胞に対する良好なマーカーと見なされる);ミオシン重鎖(MHC)、特に、心臓特異的であるβ鎖;チチン;トロポミオシン;α−サルコメアアクチニン;デスミン;GATA−4(心臓中胚葉で高度に発現させられ、発達中の心臓中で持続する転写因子。それは、多くの心臓遺伝子を調節し、心臓発生に関与する);MEF−2A、MEF−2B、MEF−2C、および/もしくはMEF−2D(心臓中胚葉で発現させられ、発達中の心臓中で持続する転写因子);心臓細胞間の付着を仲介する、N−カドヘリン;心筋細胞間のギャップ結合を形成する、コネキシン43;β1−アドレナリン受容体(β1−AR);心筋梗塞の後に血清中で上昇する、クレアチンキナーゼMB(CK−MB)および/またはミオグロビン;α−心臓アクチン、初期成長反応−I;ならびに/またはサイクリンD2を含んでもよい。
心筋細胞特異的マーカーは、細胞表面マーカーに対するフローイムノサイトメトリーもしくは親和性吸着;細胞内もしくは細胞表面マーカーに対する免疫細胞化学(例えば、固定細胞もしくは組織切片の);細胞抽出物のウエスタンブロット分析;および/または細胞抽出物もしくは培地中に分泌される生成物に対する酵素結合免疫測定法等、任意の好適な免疫学的技術を使用して検出され得る。cTnIおよびcTnT等の心臓マーカーを他のイソ型から区別する抗体は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)およびSpectral Diagnostics(Toronto,Ontario)のようなサプライヤから市販されている。細胞による抗原の発現は、有意に検出可能な量の抗体が標準的な免疫細胞化学またはフローサイトメトリーアッセイにおいて抗原に結合する場合、随意に、細胞の固定後、および随意に標識二次抗体を使用して、抗体検出可能であると言われている。
心筋細胞特異的遺伝子生成物の発現もまた、ノーザンブロット分析、ドットブロットハイブリダイゼーション分析によって、または公的に入手可能な配列データ(GenBank(登録商標))を使用した標準的な増幅法で配列特異的プライマーを使用した、逆転写酵素開始のポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって、mRNAレベルで検出され得る。タンパク質またはmRNAレベルで検出される組織特異的マーカーの発現は、未分化多能性幹細胞または他の無関係の細胞型または未成熟もしくは前駆細胞型等の対照細胞のものよりもレベルが少なくとも、または約2、3、4、5、6、7、8、または9倍、およびより具体的には、10、20、30、40、または50倍超である場合、陽性であると見なされる。
いったんマーカーが、成熟度状態を含む所望の表現型の細胞の表面上で同定されると、それらは、イムノパニングまたは抗体媒介蛍光活性化細胞分類(FACS)等の技術によって、集団をさらに増加させるために、免疫選択に使用され得る。
適切な状況下で、多能性幹細胞由来の心筋細胞はしばしば、自発的な周期的収縮活性を示す。これは、それらが適切なCa2+濃度および電解質バランスを有する好適な組織培養環境において培養されるとき、培養培地に任意の追加の構成成分を添加する必要なく、細胞が細胞の1つの軸にわたって収縮し、次いで、収縮から解放されることが観察され得ることを意味する。収縮は、周期的であり、それは、それらが1分あたり約6〜200回の間の収縮、およびしばしば通常の緩衝液中で1分あたり約20〜約90回の収縮の頻度で、定期的または不定期に反復することを意味する。個々の細胞は、単独で自発的な周期的収縮活性を示し得るか、またはそれらは、組織、細胞集合体、または培養された細胞塊中の隣接する細胞と合わせて自発的な周期的収縮活性を示し得る。
細胞の収縮活性は、収縮の本質および頻度への培養条件の影響に従って特性化され得る。利用可能なCa2+濃度を低下させるか、または別様にCa2+の膜貫通輸送を妨げる化合物はしばしば、収縮活性に影響を及ぼす。例えば、L型カルシウムチャネル遮断薬ジルチアゼムは、用量依存的な方法で収縮活性を阻害する。一方で、イソプレナリンおよびフェニレフリンのようなアドレナリン受容体アゴニストは、陽性変時作用を有する。細胞の機能特性のさらなる特性化は、Na、KおよびCa2+のチャネルの特性化を伴い得る。電気生理学は、活動電位のような心筋細胞のパッチクランプ分析によって研究され得る。
機能的属性は、インビトロで細胞およびそれらの前駆体を特性化する方法を提供するが、本明細書で言及される使用のいつくかには必要のない場合がある。例えば、上記に列挙されるマーカーのいくつかを有するが、機能または電気生理学特性の全部は有しない細胞に対して増加させられる混合細胞集団は、本発明のある特定の実施形態において、それらが障害のある心臓組織に移植することが可能であり、インビボで心臓機能を補うために必要とされる機能特性を取得することが可能である場合、治療的に有効であると見なされ得る。
IV.実施例
本発明のある特定の実施形態において、心筋細胞、肝細胞、および他の細胞は、インビトロで多能性幹細胞から得られてもよい。
用語「多能性幹細胞」は、3つの胚層、すなわち、内胚葉、中胚葉、および外胚葉の全ての細胞を生じさせることが可能な細胞を指す。理論上は、多能性幹細胞は、身体の任意の細胞に分化することができるが、多能性の実験的決定は、典型的には、各胚層のいくつかの細胞型への多能性細胞の分化に基づく。本発明のいくつかの実施形態において、多能性幹細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚幹(ES)細胞である。他の実施形態では、多能性幹細胞は、体細胞を再プログラム化することによって得られる誘導多能性幹細胞である。ある特定の実施形態において、多能性幹細胞は、体細胞核移植によって得られる胚幹細胞である。
A.胚幹細胞
胚幹(ES)細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性細胞である。ES細胞は、発生中の胚の外部栄養外胚葉層を除去し、次いで、非増殖細胞のフィーダー層上で内部細胞塊を培養することによって単離され得る。適切な条件下で、増殖性の未分化ES細胞のコロニーが産生される。コロニーは除去され、個々の細胞に解離され、次いで新鮮フィーダー層上に再播種され得る。再播種された細胞は増殖し続け、未分化ES細胞の新しいコロニーを産生することができる。新しいコロニーは次いで、除去され、解離され、再び再播種され、成長することができる。未分化ES細胞を「二次培養する」または「継代培養する」この過程は、未分化ES細胞を含有する細胞株を産生するために、何度も反復され得る(米国特許第5,843,780号、同第6,200,806号、同第7,029,913号)。「初代細胞培養」は、胚盤胞の内部細胞塊等、組織から直接得られる細胞の培養である。「二次培養」は、初代細胞培養から得られる任意の培養である。
マウスES細胞を取得するための方法はよく知られている。一方法において、マウスの129株からの着床前の胚盤胞は、栄養外胚葉を除去するためにマウス抗血清で処理され、内部細胞塊は、ウシ胎仔血清を含有する培地中の化学的に不活性化されたマウス胚線維芽細胞の支持細胞層上で培養される。発達する未分化ES細胞のコロニーは、ES細胞の集団を産生するために、ウシ胎仔血清の存在下で、マウス胚線維芽細胞フィーダー層上で二次培養される。いくつかの方法において、マウスES細胞は、サイトカイン白血病抑制因子(LIF)を血清含有培養培地に添加することによって、フィーダー層の非存在下で成長させることができる(Smith,2000)。他の方法において、マウスES細胞は、骨形成タンパク質およびLIFの存在下で、無血清培地中で成長させることができる(Ying et al.,2003)。
ヒトES細胞は、すでに記載された方法を使用して、胚盤胞から得られ得る(Thomson et al.,1995、Thomson and Marshall,1998、Reubinoff et al.,2000)。一方法において、5日目のヒト胚盤胞は、ウサギ抗ヒト脾臓細胞抗血清に曝露され、次いで、栄養外胚葉細胞を溶解するためのモルモット補体の1:5の希釈に曝露される。無傷内部細胞塊から溶解した栄養外胚葉細胞を除去した後、内部細胞塊は、ガンマ不活性化マウス胚線維芽細胞のフィーダー層上で、かつウシ胎仔血清の存在下で培養される。9〜15日後、内部細胞塊に由来する細胞の塊は、化学的(すなわち、トリプシンに曝露される)または機械的に解離され、ウシ胎仔血清およびマウス胚線維芽細胞のフィーダー層を含有する新鮮培地に再播種され得る。さらなる増殖後、未分化形態を有するコロニーは、マイクロピペットによって選択され、機械的に塊に解離され、再播種される(米国特許第6,833,269号を参照されたい)。ES様形態は、明らかに高い核細胞質比および顕著な核小体を有する小型のコロニーとして特性化される。得られるES細胞は、短時間のトリプシン処理によって、またはマイクロピペットによる個々のコロニーの選択によって、定期的に継代され得る。いくつかの方法において、ヒトES細胞は、塩基性線維芽細胞成長因子の存在下で、線維芽細胞のフィーダー層上でES細胞を培養することによって、血清なしで成長させることができる(Amit et al.,2000)。他の方法において、ヒトES細胞は、塩基性線維芽細胞成長因子を含有する「馴化」培地の存在下で、Matrigel(商標)またはラミニン等のタンパク質マトリクスで細胞を培養することによって、支持細胞層なしで成長させることができる(Xu et al.,2001)。培地は、線維芽細胞と共培養することによって、すでに馴化されている。
赤毛猿および一般的なマーモセットES細胞の単離のための方法もまた既知である(Thomson,and Marshall,1998、Thomson et al.,1995、Thomson and Odorico,2000)。
ES細胞の別の源は、樹立されたES細胞株である。種々のマウス細胞株およびヒトES細胞株が既知であり、それらの成長および繁殖のための条件は定義されている。例えば、マウスCGR8細胞株は、マウス株129胚の内部細胞塊から樹立され、CGR8細胞の培養は、フィーダー層なしで、LIFの存在下で成長させることができる。さらなる実施例として、ヒトES細胞株H1、H7、H9、H13、およびH14は、Thompson et alによって樹立された。さらに、H9株のH9.1およびH9.2のサブクローンが開発されている。当該技術分野で既知の実質的に任意のESまたは幹細胞株、例えば、参照により本明細書に組み込まれるYu and Thompson,2008に記載されるもの等が本発明で使用され得ることが予想される。
本発明と関連して使用するためのES細胞の源は、胚盤胞、胚盤胞の内部細胞塊を培養することから得られる細胞、または樹立細胞株の培養から得られる細胞であってもよい。したがって、ここで使用されるように、用語「ES細胞」は、胚盤胞の内部細胞塊の細胞、内部細胞塊の培養から得られるES細胞、およびES細胞株の培養から得られるES細胞を指し得る。
B.誘導多能性幹細胞
誘導多能性幹(iPS)細胞は、ES細胞の特性を有するが、分化体細胞の再プログラム化によって得られる細胞である。誘導多能性幹細胞は、種々の方法によって得られてきた。一方法において、成人ヒト真皮線維芽細胞は、レトロウイルス導入を使用して、転写因子Oct4、Sox2、c−Myc、およびKlf4でトランスフェクトされる(Takahashi et al.,2007)。トランスフェクトされた細胞は、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)が添加された培地中で、SNL支持細胞(LIFを産生するマウス細胞の線維芽細胞株)上に播種される。約25日後、ヒトES細胞コロニーに似たコロニーが培養中に現れる。ES細胞様コロニーは採取され、bFGFの存在下で、支持細胞上で増殖される。
細胞特性に基づき、ES細胞様コロニーの細胞は、誘導多能性幹細胞である。誘導多能性幹細胞は、ヒトES細胞と形態学的に同様であり、種々のヒトES細胞マーカーを発現する。また、ヒトES細胞の分化をもたらすことが既知である条件下で成長させられるとき、誘導多能性幹細胞は、結果的に分化する。例えば、誘導多能性幹細胞は、ニューロン構造およびニューロンマーカーを有する細胞に分化することができる。例えば、Yu and Thompson,2008に記載されるもの等を含む、実質的に任意のiPS細胞または細胞株が本発明で使用され得ることが予想される。
別の方法において、ヒト胎児または新生児線維芽細胞は、レンチウイルス形質導入を使用して、4つの遺伝子、Oct4、Sox2、Nanog、およびLin28でトランスフェクトされる(Yu et al.,2007)。感染後12〜20日で、ヒトES細胞形態を有するコロニーが目に見えるようになる。コロニーは採取および増殖される。コロニーを構成する誘導多能性幹細胞は、ヒトES細胞と形態学的に同様であり、種々のヒトES細胞マーカーを発現し、マウスへの注入後、神経組織、軟骨、および腸上皮を有する奇形腫を形成する。
マウスから誘導多能性幹細胞を調製する方法もまた既知である(Takahashi and Yamanaka,2006)。iPS細胞の誘導は典型的には、Soxファミリーの少なくとも1メンバーおよびOctファミリーの少なくとも1メンバーの発現またはそれらへの曝露を必要とする。SoxおよびOctは、ES細胞同一性を特定する転写調節階層の中心となると考えられる。例えば、Soxは、Sox−1、Sox−2、Sox−3、Sox−15、またはSox−18であってもよく、Octは、Oct−4であってもよい。Nanog、Lin28、Klf4、またはc−Myc等、さらなる因子が再プログラム化効率性を増加させ得る。再プログラム化因子の特定のセットは、Sox−2、Oct−4、Nanog、および随意に、Lin−28を含むか、またはSox−2、Oct4、Klf、および随意に、c−Mycを含むセットであってもよい。
ES細胞のようなIPS細胞は、SSEA−1、SSEA−3、およびSSEA−4(Developmental Studies Hybridoma Bank,National Institute of Child Health and Human Development,Bethesda Md.)、ならびにTRA−1−60およびTRA−1−81(Andrews et al.,1987)に対する抗体を使用して、免疫組織化学またはフローサイトメトリーによって同定または確認され得る特徴的な抗原を有する。胚幹細胞の多能性は、8〜12週齢の雄のSCIDマウスの後肢筋に約0.5−10×10の細胞を注入することによって確認され得る。3つの胚葉のそれぞれの少なくとも1つの細胞型を示す奇形腫が発生する。
本発明のある特定の実施形態において、iPS細胞は、上記のKlfまたはNanogと組み合わせて、Oct4およびSox2等のOctファミリーメンバーおよびSoxファミリーメンバーを含む再プログラム化因子を使用して、体細胞を再プログラム化することから作製される。本発明における体細胞は、線維芽細胞、ケラチン生成細胞、造血細胞、間葉細胞、肝細胞、胃細胞、またはβ細胞等、多能性に誘導され得る任意の体細胞であってもよい。ある特定の態様において、T細胞もまた、再プログラム化のための体細胞の源として使用され得る(参照により本明細書に組み込まれる米国出願第61/184,546号を参照されたい)。
再プログラム化因子は、EBV要素をベースとしたシステム等、組込ベクターまたはエピソームベクター等の1つ以上のベクターに含まれる発現カセットから発現してもよい(参照により本明細書に組み込まれる米国出願第12/478,154号、Yu et al.,2009を参照されたい)。さらなる態様において、タンパク質の再プログラム化は、タンパク質形質導入(参照により本明細書に組み込まれる米国出願第12/723,063号を参照されたい)またはRNAトランスフェクション(米国出願第12/735,060号を参照されたい)によって、体細胞に直接導入され得る。
C.誘導多能性幹細胞
多能性幹細胞は、体細胞核移植によって調製され得、ドナー核が紡錘体のない卵母細胞に移植される。核移植によって産生される幹細胞は、ドナー核と遺伝的に同一である。一方法において、アカゲザルの皮膚線維芽細胞からのドナー線維芽細胞核は、電気融合によって、紡錘体のない成熟中期IIアカゲザル卵母細胞の細胞質に導入される(Byrne et al.,2007)。融合卵母細胞は、イオノマイシンへの曝露によって活性化され、次いで胞胚期までインキュベートされる。選択された胚盤胞の内部細胞塊は次いで、胚幹細胞株を産生するように培養される。胚幹細胞株は、正常なES細胞形態を示し、種々のES細胞マーカーを発現し、インビトロおよびインビボの両方で、複数の細胞型に分化する。ここで使用されるように、用語「ES細胞」は、受精核を含有する胚に由来する胚幹細胞を指す。ES細胞は、核移植によって産生される胚幹細胞とは区別され、それは、「体細胞核移植によって得られる胚幹細胞」と称される。
V.細胞の遺伝子組み換え
ある特定の態様において、本発明の細胞は、分化の前あるいは後の細胞の遺伝子工学によって、1つ以上の遺伝子組み換えを含有するように作られ得る(米国特許出願公開第2002/0168766号)。細胞は、ポリヌクレオチドが、任意の好適な人為的操作手段によって細胞に移植されているとき、または細胞が、ポリヌクレオチドを受け継いだ、もともと改変された細胞の子孫である場合、「遺伝子組み換えが行われている」または「トランスジェニック」と言われる。いくつかの実施形態において、遺伝子組み換えが行われている細胞はまた、本発明の培地方法に供されるが、他の実施形態において、遺伝子組み換えが行われている細胞は、特定の培地に曝露されない。
いくつかの実施形態において、細胞中でトランスジェニック発現する遺伝子は、経路中に存在する酵素、および所望の経路の機能を調節または増強させる酵素のうちの1つまたは組み合わせであってもよい。好気的呼吸の増加は、それらの経路で使用される基質を増加させること、および/または好気的呼吸において直接機能するか、もしくはそれを支持する酵素をコードする遺伝子を上方制御することによって達成され得る。いくつかの実施形態において、遺伝子組み換えが行われた細胞は、本発明の特定の培地中で培養される。
本発明の特定の実施形態では、細胞は、1)好気的呼吸経路から代謝酵素の発現を促進する調節遺伝子、2)経路酵素もしくは補因子をコードする遺伝子、および/または3)好気的呼吸経路に利用される基質を輸送するタンパク質をコードする遺伝子(脂肪酸輸送体等)を発現するように遺伝子組み換えが行われる。細胞はまた、抗酸化物質および/もしくはフリーラジカル捕捉剤を発現するように遺伝子組み換えが行われてもよく、ならびに/または細胞培地は、抗酸化物質およびフリーラジカル捕捉剤を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、細胞は、酸化的リン酸化、脂肪酸酸化、ピルビン酸脱カルボキシル化、およびクエン酸回路のような代謝経路と関連した代謝酵素を含むように操作される。例示的な脂肪酸酸化酵素としては、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、L−β−ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、およびβ−ケトチオラーゼが挙げられ、例示的な補因子としては、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)が挙げられる。例示的なクエン酸回路酵素としては、例えば、クエン酸シンターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、スクシニル−CoAシンテターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、およびリンゴ酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。例示的な酸化的リン酸化酵素としては、例えば、NADHデヒドロゲナーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、電子伝達フラビンタンパク質−ユビキノン酸化還元酵素、Q−シトクロムcオキシドレダクターゼ、またはシトクロムcオキシダーゼが挙げられる。例示的なピルビン酸脱カルボキシル化酵素としては、例えば、ピルビン酸塩デヒドロゲナーゼ、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ、およびジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼが挙げられる。
本発明の特定の実施形態において、細胞は、以下のうちの1つ以上を発現するように遺伝子組み換えが行われている:脂肪酸トランスロカーゼ(Cd36);原形質膜関連脂肪酸結合タンパク質;脂肪酸輸送タンパク質(FATP1、FATP2、FATP3、FATP4、FATP5、および/もしくはFATP6);アシル−CoAシンテターゼ;カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1);カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、β/δ;ならびに/またはL−カルニチン。
遺伝子は、種々の方法によってトランスジェニックアプローチで利用され得る。特定の実施形態において、それらは、例えば、構成的プロモータ、組織特異的プロモータ、もしくは化学的誘導性プロモータ(市販のデキサメタゾン誘導性プロモータ系等)、または天然デキサメタゾン誘導性プロモータ、例えば、NR1I2(PXR)、またはCYP3Aの制御下で発現され得る。遺伝子は、プラスミド、エピソーム、リポソーム、またはウイルスベクター(アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴等)、相同的組み換え(基本的な、ならびに例えば、Znフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼによって強化される)、トランスポゾン(例えば、piggyBac、眠れる森の美女等)、およびカセット交換にためのcre−lox利用方法を含む、当該技術分野で既知の種々の方法によって、細胞に提供され得る。
幹細胞由来の細胞中で活性を有する細胞中の遺伝的構造に対するプロモータは、本発明で有用である。iPSまたはES細胞由来の心筋細胞中で活性の例示的なプロモータとしては、例えば、cTNT、cTNI、αミオシン重鎖、βミオシン重鎖、ミオシン軽鎖2V、およびミオシン軽鎖2Aが挙げられる。iPSまたはES細胞由来の肝細胞中で活性の例示的なプロモータとしては、例えば、AFP、ALB、SERPINA1、TTR、CPS1、および/またはHNF4Aが挙げられる。
いくつかの態様において、細胞は、それらが拘束性発生系細胞または最終分化細胞に進行する前あるいは後に、テロメラーゼ逆転写酵素を発現するように、細胞を遺伝子改変することによって、それらの複製可能性を増加させるように処理され得る(米国特許出願公開第2003/0022367号)。
本発明の細胞はまた、組織再生に関与するそれらの能力を強化するか、または投与部位に治療遺伝子を送達するために、遺伝子改変されてもよい。ベクターは、分化細胞型においてpan特異的であるか、あるいは特に活性であるプロモータに機能的に結合される、所望の遺伝子に対する既知のコード配列を使用して設計される。特に興味深いのは、FGF、心房性ナトリウム利尿因子等の向心臓因子、クリプト、ならびにGATA−4、Nkx2.5、およびMEF2−C等の心臓転写調節因子等の種々の種類の1つ以上の成長因子を発現するように遺伝子改変される細胞である。投与部位におけるこれらの因子の産生は、機能表現型の採用を促進する、投与された細胞の有益な効果を強化する、または治療部位に隣接した宿主細胞の増殖もしくは活性を増加させ得る。
本発明のある特定の実施形態において、本発明の核酸構築物を含有する細胞は、選択可能およびスクリーニング可能マーカー等、発現ベクター中にマーカーを含むことによって、インビトロまたはインビボで同定され得る。かかるマーカーは、発現ベクターを含有する細胞の容易な同定を可能にする細胞への同定可能な変化を与えるか、または心臓トロポニンI(cTnI)、心臓トロポニンT(cTnT)、α−ミオシン重鎖(MYH6)、ミオシン軽鎖−2v(MLC−2v)、GATA−4、Nkx2.5、N−カドヘリン、β1−アドレナリン受容体、転写因子のMEF−2ファミリー、クレアチンキナーゼMB(CK−MB)、ミオグロビン、もしくは心房性ナトリウム利尿因子(ANF)のプロモータ等の心筋細胞特異的プロモータを使用することによって、分化した心臓細胞を強化もしくは同定するのに役立つ。
概して、選択可能マーカーは、選択を可能にする特性を与えるマーカーである。陽性選択可能マーカーは、マーカーの存在がその選択を可能にするものであり、一方で、陰性選択可能マーカーは、その存在がその選択を阻止するものである。陽性選択可能マーカーの一例は、薬剤耐性マーカーである。
通常、薬剤選択マーカーの含有は、形質転換体のクローニングおよび同定に役立ち、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を与える遺伝子は、有用な選択可能マーカーである。
条件の実施に基づき、形質転換体の識別を可能にする表現型を与えるマーカーに加えて、基準が比色分析である、GFP等のスクリーニング可能マーカーを含む他の種類のマーカーも考慮される。
かかるスクリーニング可能の実施例としては、細胞表面タンパク質(例えば、CD4、HAエピトープ)、蛍光タンパク質、抗原決定基、および酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ)をコードする遺伝子が挙げられる。細胞を含有するベクターは、例えば、ベクターにコードされた酵素によって蛍光生成物に変換され得る、細胞表面タンパク質または基質への蛍光タグ付き抗体を使用して、FACSによって単離されてもよい。
特定の実施形態において、スクリーニング可能マーカーは、蛍光タンパク質をコードする。ほぼ全体の可視光スペクトルに及ぶ蛍光発光スペクトルプロファイルを特徴とする、幅広い蛍光タンパク質遺伝子変異体が開発されてきた。元のオワンクラゲ緑色蛍光タンパク質における突然変異の試みは、色が青色から黄色に及ぶ新しい蛍光プローブをもたらし、生物学的研究において最も広く使用されるインビボのレポーター分子の一部である。橙色および赤色スペクトル領域で発光する、より長い波長の蛍光タンパク質が、イソギンチャク、ディスコソマ・ストリアタ、および花虫綱に属する珊瑚礁から開発されてきた。
あるいは、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)等のスクリーニング可能酵素が利用されてもよい。当業者はまた、場合によってはFACS分析と併せて、免疫学的マーカーを採用する方法も既知である。使用されるマーカーは、それを遺伝子生成物をコードする核酸と同時に発現させることが可能である限り、重要であるとは考えられていない。選択可能およびスクリーニング可能マーカーのさらなる実施例は、当業者によく知られている。
VI.培養された心筋細胞の使用
本発明のある特定の態様は、それらの代謝の基本的形態が解糖ではないように、心筋細胞系の細胞を培養するための方法を提供する。
本発明のある特定の態様は、心臓肥大アッセイを開発するための手段を提供する。心臓肥大は、少なくとも部分的に、成人組織中の胎児遺伝子プログラムの再導入を特徴とする。例えば、心臓ホルモン(NPPAおよびNPPB)の再発現は、肥大反応の特性である。したがって、ESCおよびiPSC由来の細胞が心臓肥大アッセイにおいて機能するために、それらは、心臓ホルモンに関して発達上成熟する必要がある。本発明の脂肪酸を含有する低グルコースおよび低/無血清培地中でiPSC由来の心筋細胞を培養することは、これらの心臓ホルモンの発現の減少をもたらし、次いで、それは、エンドセリン1等の肥大誘導アゴニストの使用によって、制御された条件下で再発現するように誘発され得る。
心筋細胞、ならびにその任意の発達、成熟、または分化段階の強化または選択された心筋細胞を含む心筋細胞の集団は、スクリーニングのために、または心臓作用薬を同定するために使用され得る。種々の限定されない実施形態において、スクリーニングまたは同定方法で使用される心筋細胞集団としては、結節、心室、洞房、もしくはペースメーカー細胞、成熟収縮心筋細胞、未成熟心筋細胞(心臓芽)、またはそれらの混合した集団が挙げられる。
細胞機能の効果は、細胞培養あるいはインビボで、マーカー発現、受容体結合、収縮活性、または電気生理学等、心筋細胞の表現型または活性を観察するための任意の標準的なアッセイを使用して評価され得る。医薬品候補もまた、それらが収縮の程度または頻度を増加または減少させるかどうか等、収縮活性に対するそれらの効果に対して試験され得る。効果が観察される場合、化合物の濃度は、50%有効量(ED50)を決定するために滴定される。
ある特定の態様において、本発明のある特定の態様に従って培地中で培養される心筋細胞は、心筋細胞の機能特性、特に拍動周波数または電場電位等の心臓特異的電気活性を測定するために使用され得る。
本発明の細胞および組織の心臓特異的電気活性の検出は、多電極アレイを介してその電気活性を監視することによって達成され得る。好適な多電極アレイは、Multi Channel Systems,Reutlingen,Germanyから得られ得る。例えば、多電極アレイは、100μm以下離れて位置付けられる、60以上の電極を含む、二次元直交配列であってもよい。ある特定の態様において、多電極アレイは、1〜25kHzから選択される範囲よりも大きい頻度を有する心臓特異的電気活性を特性化するデータを得るように構成される。
本発明の細胞および組織中の電気活性を監視することは、本発明の細胞および組織の電気活性に関する、多くの異なる種類の重要かつ新規の情報を提供するために使用され得る。例えば、かかる監視は、各電極において個々に電気活性を監視するために使用され得るか、またはより有利に、かかる監視は、例えば、色分けされた勾配の形態で、各電極における局所的活性化時間の関数として電気活性を図示する、本明細書で「活性化マップ」とも呼ばれる、電気活性伝搬マップを生成するために使用され得る。かかる活性化マップは、好ましくは、微小電極アレイの範囲にわたって電気活性伝搬の伝導速度ベクトルの形態で、伝播する電気活性の伝導速度および伝導方向性を図示するために使用される。
本発明のある特定の態様に従って、心臓作用薬をスクリーニングおよび同定する方法も提供される。一実施形態において、方法は、心筋細胞を検査薬と接触させることと、検査薬が集団内の心筋細胞の活性または機能を調節するかどうかを決定することとを含む。集団内の心筋細胞の活性または機能を調節する検査薬は、検査薬を心臓作用薬と同定する。調節され得る例示的な活性または機能は、収縮もしくは拍動、もしくは代謝生成物の産生(例えば、尿素、クレアチン、もしくはCO2のうちの1つ以上の産生)、もしくは細胞内酵素(例えば、乳酸脱水素酵素、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、クレアチンキナーゼ(CK)、もしくはトロポニンのうちの1つ以上)、もしくは細胞アポトーシス、壊死、死;または脱分化、成熟、もしくは分裂を含む。
心臓作用薬をスクリーニングおよび同定する方法としては、随意に所定の位置または場所に位置付けられるか、または配置される、心筋細胞のアレイ(例えば、マイクロアレイ)を含む、ハイスループットスクリーニングに好適なものが挙げられる。ハイスループットロボットまたは手動操作方法は、短期間で化学的相互作用を探査し、多くの遺伝子の発現レベルを決定することができる。分子シグナル(例えば、フルオロフォア)および非常に高速で情報を処理する自動分析を利用する技術が開発されてきた(例えば、Pinhasov et al.,2004を参照されたい)。例えば、マイクロアレイ技術は、一度に何千もの遺伝子の相互作用を探査すると同時に、特定の遺伝子の情報を提供するために広く利用されてきた(例えば、Mocellin and Rossi,2007を参照されたい)。
かかるハイスループットスクリーニング法は、心臓作用薬を同定することができる。例えば、心筋細胞(例えば、心筋芽細胞、心筋細胞、または洞房結節細胞)は、潜在的に治療的な分子の同定のために、随意に画定された位置で、培養皿、管、フラスコ、ローラーボトル、またはプレート(例えば、8、16、32、64、96、384、および1536マルチウェルプレートまたは皿等、単一マルチウェルプレートまたは皿)上に位置付けられるか、または配置(予め播種)され得る。スクリーニングされ得るライブラリとしては、例えば、低分子ライブラリ、siRNAライブラリ、およびアデノウイルストランスフェクションベクターが挙げられる。
したがって、かかるハイスループット法はまた、予測中毒学にも適用できる。低分子ライブラリ、siRNAライブラリ、アデノウイルストランスフェクションベクター、および遺伝子に基づくマイクロアレイアプローチを使用した、ハイスループットまたはハイコンテントスクリーニングに対して、随意に画定された位置で、培養皿、管、フラスコ、ローラーボトル、またはプレート(例えば、8、16、32、64、96、384、および1536マルチウェルプレートまたは皿等、単一マルチウェルプレートまたは皿)上に位置付けられるか、または配置(予め播種)される、心筋細胞(例えば、心筋芽細胞、心筋細胞、または洞房結節細胞)の使用は、種々の治療および心臓障害標的を同定することができる。かかる技術はまた、細胞の健康および形態学的表現型に対する蛍光レポーター染料およびバイオマーカー、蛍光レポータータンパク質の発現、種々のFRETアプローチ、ならびに生細胞中の電気生理学的電流の直接測定を用いて、心臓介入戦略の直接ハイスループット測定を可能にする。
ある特定の実施形態において、本発明の少なくともある特定の方法によって調製される心筋細胞は、拍動周波数または拍動数振動等、かかる細胞およびそれらの種々の子孫の特性に影響を及ぼす因子(溶媒、低分子薬物、ペプチド、オリゴヌクレオチド等)または環境条件(培養条件または操作等)をスクリーニングするために商業的に使用され得る。上記の培養培地は、拍動周波数を増加させ、拍動数振動の発生率を減少させ、それにより拍動周波数記録の安定性を増加させ得る。
ある特定の態様において、心筋細胞は、a)心筋細胞の正常な拍動周波数、b)拍動している心筋細胞の正常な電場電位持続時間、c)拍動周波数に影響を及ぼし得る化合物で処理される、心筋細胞の拍動周波数、またはd)電場電位持続時間に影響を及ぼし得る化合物で処理される、心筋細胞の電場電位持続時間を促進するために、上記の培地中で培養され得る。
心筋細胞の拍動(収縮)周波数は、培養培地のpH、温度、またはモジュレーター薬物によって調節され得る。例示的な限定されないモジュレーター薬物としては、カテコールアミン、カルシウムチャネル遮断薬、またはカリウムが挙げられる。
VII.本発明のキット
例えば、1つ以上の培地試薬、代謝成熟を必要としている細胞(幹細胞を含む)、ポリヌクレオチド、ペプチド、トランスフェクション試薬または媒体、それらの組み合わせ等を含む、本明細書に記載される組成物のいずれも、キットに含まれ得る。
キットは、本発明の好適にアリコートされた組成物を含んでもよい。キットの構成成分は、適切な場合、水性培地中あるいは凍結乾燥状態で梱包され得る。キットの容器手段は概して、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段を含み、その中に構成成分が配置されてもよく、好ましくは、好適にアリコートされてもよい。キットに2つ以上の構成成分がある場合、キットは概して、第2、第3、または他のさらなる容器も含有し、その中に更なる構成成分が別々に配置され得る。しかしながら、構成成分の種々の組み合わせは、バイアル中に含まれ得る。本発明のキットはまた、典型的には、市販のために厳重な管理下でキット構成成分を含有する手段も含む。かかる容器は、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
しかしながら、キットの構成成分は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬および/または構成成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、好適な溶媒の添加によって再構成され得る。溶媒もまた別の容器手段中に提供されてもよいことが想定される。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下に続く実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、したがって、その実施の好ましい様式を構成すると見なされ得ることが、当業者によって理解されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、開示されている特定の実施形態に多くの変更が行われ得ることを理解するはずであり、それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られる。
実施例1
SF8培地は、IPSC由来の心筋細胞のET−1 BNP反応を改善した
心臓肥大の細胞アッセイは、FAOを利用する等して、hESCおよびhiPSC由来の心筋細胞が代謝的に成熟する必要がある。心臓肥大を含む心臓ストレス反応中、好ましいエネルギー源は、「胎児プログラム」と呼ばれる解糖に切り替わって戻る。さらに、FAO代謝経路の主要調節因子の心筋細胞特異的条件付きノックアウトを有するマウスは、慢性肥大状態を示す(Cheng et al.,2004)。ヒトES細胞およびiPS細胞由来の心筋細胞は、発達の「胎児」または「未成熟」期を表すと考えられる(He et al.,2003)。心筋細胞の「胎児」遺伝子プログラムに含まれるのは、NPPAおよびNPPB等、肥大反応とも関連する遺伝子である。したがって、本発明の態様において、これらの細胞は、代謝のために解糖を利用する。本発明のある特定の態様に対して、培養された幹細胞由来の心筋細胞の基礎的な「ストレス」または「肥大」状態を低減するために、主に解糖から主にFAOへ、代謝を適合させることが有用である。
本発明の実施形態において、iPSC由来の心筋細胞(CM)のエンドセリン誘発BNP反応は、CMの成熟状態の増加を必要とする。成熟状態の増加の一兆候は、BNPを含む心臓ホルモンの非誘導性発現の減少である。本発明者らは、CMの代謝成熟状態を増加させるために、脂肪酸を有し、血清を含まず、グルコースを含まない培地(SF8と呼ばれる)を生成した。実験1において、脂肪酸酸化と関連した遺伝子(CPT1およびPPARa)を上方制御し、胎児心臓細胞および心臓肥大と関連したある特定の心臓ホルモン遺伝子(NPPAおよびNPPB等)を減少させるその能力に関して、SF8培地を評価した。本実験において、細胞数、純度(cTNT)、および生存性を、標準維持培地(iCMM:グルコースを含まない/ピルビン酸塩を含まないDMEM、10mMのガラクトース,1mMのNaピルビン酸塩、10%透析血清)中で培養される細胞と比較した。実験2、3、および4において、SF8培地中で培養される細胞を、ET−1に反応してBNPを上方制御するそれらの能力に関して、典型的な肥大培養条件(DMEM:M199)と比較した。
実験計画
研究のための例示的な培地:
DMEM:M199(対照)
SF8
注:ITS−Aは、1xの原料中に0.11g/Lのピルビン酸ナトリウムを含有し、Life Technologiesから得られる(カタログ番号51300)。脂肪酸もまた、1xの原料中に1mg/mLのBSAを含有する。リノール−オレイン酸は、Sigma−Aldrich(L9655)から得られ、1xにおいてそれぞれ9.4ug/mLの濃度で存在する。リノール酸のみは、Sigma−Aldrich(L9530)から得、1xにおいて9.4ug/mLの濃度で存在する。
プロトコル:
実験1
図1aは、実験1の細胞培養研究のフローチャート図である。図1bは、SF8中で培養されるiPSC由来のCMがCPT−1を上方制御し、NPPBを下方制御したことを示す。細胞培養の7日目および14日目の両方で、iPSC由来のCMは、CPT−1発現の有意な増加を示したが、PPARαの発現において効果は検出されなかった。培養の7日目、NPPA発現は、iCMMよりもSF8中で低かったが、レベルは、14日目までには同様であった。NPPB発現は、7日目および14日目の両方で、iCMMと比較してSF8中でより低かった。
図2:細胞数、純度、および生存性は、SF8培地中で維持される。7日目および14日目に測定されるとき、細胞数、純度(cTNT%)、および生存性は、iCMMとSF8との間で同程度である。
実験2、3、4:
図3aは、実験で使用される細胞培養研究のフローチャート図である。図3bは、上記に図示されるように、プロトコルAまたはプロトコルBを使用したフローサイトメトリーデータの実施例を提供する。全てのウェルを採取し、次いで、生/死生存性アッセイで染色した(Invitrogen)。次いで、細胞を固定し、サポニンで透過処理した。各ウェルからの少量の細胞試料をアイソタイプ対照のために混合した。細胞を、サポニンの存在下で、マウス−α−プロ−BNP(クローン15F11)(Abeam)またはマウスIgG2bアイソタイプ対照を使用して染色した。次いで、細胞を洗浄し、サポニンの存在下で、dnk−a−マウスIgG−Alexa−647(H+L)(Invitrogen)とインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、Acuriフローサイトメーターで分析した。生細胞をゲートし、全ての生細胞のAlexa−647の蛍光強度中央値(MFI)を計算した。
図4は、SF8培地中の細胞培養およびET−1誘導が、CMの機能的反応を改善したことを示す。CMを解凍し、培養し、3つの独立した実験(A、B、C)で分析した。細胞ロットAを各実験の内部対照として使用した。誘導倍率を、各細胞ロットに対する非誘導性MFIで割った最大MFIとして計算した。細胞ロット#A、B、C、D、およびEに対して、SF8培地での培養は、CMの機能的反応を明らかに改善した。ロット#FおよびGは、おそらく、それらの機能的反応がDMEM:M199培養中でほぼ最大であったという事実によって、それらの誘導倍率において中程度しか改善しなかった。第3の実験(C)に対する全てのSF8誘導倍率は、非誘導性BNP発現がその日にわずかに高かったため、第1および第2の実験よりも低い可能性が高い(D)。非誘導性MFIの増加は、全体の誘導倍率を減少させる。しかしながら、ロットAはそれでもなお、SF8培地中で培養されたとき、反応の有意な改善を示した。
脂肪酸を含有し、グルコースを含まないSF培地中で培養されるiPSC由来のCMは、CPT1発現の増加および心臓ホルモン発現(NPPAおよびNPPB)の減少を含む、CM成熟の兆候を示した。PPARa発現は、いずれの培養においても変化しなかった。これは、脂肪酸の添加なしでの、この遺伝子の強固な発現の結果であり得る。SF8培地中の培養は、細胞数、生存性、または純度の変化をもたらさなかった。
iPSC由来のCMの異なるロットは、典型的な「肥大SF培地」(DMEM:M199)で培養されるとき、BNP発現によって測定されるように、ET−1へのそれらの反応の変動を示す。いくつかのロット番号は、非誘導性細胞の5倍を超す反応を生成できない。SF8培地中の培養は、試験された全てのCMロット中で、ET−1への反応性の増加をもたらした。この増加した反応性は、少なくとも部分的に、典型的な培養と比較して減少したBNPの非誘導性発現による。
実施例2
心筋細胞および肝細胞機能アッセイの実施例は、細胞の代謝成熟によって決まる
解糖から好気的呼吸への利用等、未成熟状態から代謝的に成熟した状態への幹細胞由来の細胞の変換によって、得られる細胞は、代謝の変化した形態の効果を得る種々の目的で利用され得る。実施例1において、SF8培地で成熟されるiPSC由来の心筋細胞を心臓肥大アッセイで使用した実施例が提供された。他の例示的な場合を以下に記載する。
心筋細胞において、ミトコンドリア機能は、ATP合成、イオン恒常性、ならびにアポトーシスおよび壊死の調節を通した生存性に重要である(Gustafsson and Gottlieb,2008)。これらの理由により、ミトコンドリアは明らかに有用な毒物学的標的である。ミトコンドリア毒性は、FDAから警告文を受け取る薬物の多くと関係があり、少なくとも3つの薬物は、ミトコンドリア膜電位の崩壊に直接関係する臓器毒性のため、市場から回収されている(Dykens and Will,2007)。したがって、ミトコンドリア毒性をスクリーニングするために、hESCまたはhiPSC由来の心筋細胞を利用するために、ミトコンドリアおよび好気的呼吸への依存を促進することが有用である。
肝脂肪変性の細胞アッセイ:
脂肪変性の細胞アッセイは、hESCおよびhiPSC由来の肝細胞がOXPHOSを利用することを必要とする。ミトコンドリアOXPHOS中の欠陥は、脂肪変性を引き起こし得ることが既知である。今までのところ、ES由来の肝細胞は、OXPHOSの代わりに解糖を主に利用し、それらの未成熟または「肝細胞様」性質を促進することが示されている(Sharma et al.,2008)。例えば、OXPHOSの主要調節因子である、COX10の肝細胞特異的条件付きノックアウトを有するマウスは、脂肪表現型を示す(Diaz et al.,2008)。したがって、薬物誘導性肝脂肪変性の標的を同定するために、幹細胞由来の肝細胞が、OXPHOSが可能であることが有用である。
hESCまたはhiPSC由来の肝毒性アッセイ:
ミトコンドリア発生は、肝細胞成熟の重要な一部である。肝細胞分化および成熟中のミトコンドリアの質量の増加は、解糖からOXPHOSへの切り替えに関係する可能性が高い。市場から回収される薬物は多くの場合、OXPHOSおよびATPレベルの低下をもたらす毒性中間体の産生によって引き起こされる肝毒性が理由である。したがって、幹細胞由来の肝細胞の成熟度状態を増加させるための手段は、OXPHOSが可能なミトコンドリアの増殖を促進する培地中でそれらを培養することである。全ミトコンドリアおよび極性の変化はそれぞれ、Mitotracker(赤)と組み合わせたフローベースアッセイMitotracker(緑)を使用して評価され得る。
したがって、hESおよびiPS細胞由来の細胞等、幹細胞由来の細胞を用いたこれらの例示的な課題を成し遂げるために、解糖を減少させ、好気的代謝に適合する条件に、細胞を曝露する。幹細胞由来の細胞型は、以下のうちの1つ以上を含む条件下で培養される:1)高濃度の遊離脂肪酸を含有する、2)低いグルコースまたは(随意に)ピルビン酸塩を含有するか、それらを含有しない、3) FAO代謝経路と関連した遺伝子の発現を誘導する分子を含有する(Cheng et al.,2004)、4)L−カルニチンを含有する、5)抗酸化物質(アスコルビン酸等)の添加、6)それらの条件のいずれかの組み合わせ。FAO代謝の誘導、および「胎児」状態と関連した遺伝子の発現の減少の後、細胞は次いで、全て本明細書に詳述されるように、機能アッセイを使用して、かつ成熟細胞と関連した遺伝子発現を評価することによって、代謝成熟度の強化に関して評価される。
乳酸脱水素酵素活性アッセイ:
iPSC由来の心筋細胞等の幹細胞由来の組織は、成人組織と比較して胎児または未成熟特性を示すことが十分に立証されている。心臓の生後成熟は、エネルギー代謝の有意な変化と関連している。胎児心臓が主に嫌気的解糖を利用する一方で、成人心臓は主に、主な基質として遊離脂肪酸を有する好気的代謝を利用する。
乳酸脱水素酵素(LDH)は、乳酸塩およびピルビン酸塩の相互変換を触媒する酵素である。それは、5つの異なるアイソザイムを形成するように混合する4つのサブユニットからなる。アイソザイムLDH4およびLDH5の酵素活性が嫌気的代謝を示す一方で、アイソザイムLDH1およびLDH2の酵素活性は、好気的代謝を示す。発達中の代謝経路の成熟のこれらの活性レベルと一致して、LDH4およびLDH5活性が胎児心臓において重要である一方で、LDH1およびLDH2活性は、成人心臓において重要である(Fischer et al.,2010)。
iPSC由来の心筋細胞(iCell心筋細胞)を、以下の修正を加えて、図1中の細胞を培養するために使用されるプロトコルに従って、iCMMまたはSF8中で培養したa)96ウェルフォーマット、b)1ウェルあたり20,000個の付着可能細胞、およびc)リノール−オレイン酸とは対照的に、SF8培地中でリノール酸のみを使用した。CelLytic試薬(Sigma C2978)での細胞溶解後に、氷上で15分間、細胞をインキュベートし、Helena Laboratories QuickGelシステム(1284)およびQuickGel LD Isoenzyme Kit(3538T)を使用して、メーカーの使用説明書通り、2uLの溶解物を分析した。Image Jソフトウェアを使用して、全LDH活性の割合を計算した。細胞の各ロットから合計で3つのウェルを、それらのLDH1〜5活性プロファイルに対して、播種の14日後に分析した(図5)。胎児または未成熟発達状態と一致して、iCMM中で培養される細胞は、主にLDH4およびLDH5活性を示し、LDH1およびLDH2活性は低かった。対照的に、SF8培地中で培養される細胞は、主にLDH1およびLDH2活性を示し、LDH4およびLDH5活性は低かった。図5は、以下の修正を加えた、図1中のプロトコルに従ってiCMMまたはSF8培地中で培養されるときの心筋細胞のLDH活性レベルを示す:a)96ウェルフォーマット、b)1ウェルあたり20,000個の付着可能細胞、およびc)リノール−オレイン酸とは対照的に、SF8培地中でリノール酸を使用した。氷上で15分間のCelLytic試薬(Sigma C2978)での細胞溶解後に、Helena Laboratories QuickGelシステム(1284)およびQuickGel LD Isoenzyme Kit(3538T)を使用して、メーカーの使用説明書通り、2uLの溶解物を分析した。Image Jソフトウェアを使用して、全LDH活性の割合を計算した。培養の14日後に、各ロットから合計で3つのウェルを分析した。
参考文献
本明細書で言及される全ての特許および出版物は、本発明が関係する当業者のレベルを示す。個々の出版物のそれぞれが、参照によって組み込まれることを明確かつ個々に示された場合と同程度に、全ての特許および出版物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特許および特許出願
米国出願第12/478,154号
米国出願第12/723,063号
米国出願第12/735,060号
米国出願第61/184,546号
米国特許第5,843,780号
米国特許第6,200,806号
米国特許第6,833,269号
米国特許第7,029,913号
米国特許出願公開第2002/0168766号
米国特許出願公開第2003/0022367号
米国特許出願公開第2011/0097799号
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本発明およびその利点が詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更、置き換え、および修正が行われ得ることが理解される。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載される工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを目的としていない。当業者が本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載される、対応する実施形態と実質的に同一の機能を果たすか、または実質的に同一の結果をもたらす、現在存在するか、または後に開発される工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップが、本発明に従って利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップをそれらの範囲内に含むよう意図される。

Claims (24)

  1. 幹細胞由来の細胞の代謝成熟度状態を改善する方法であって、本質的にグルコースを含まず、本質的に血清を含まず、1つ以上の脂肪酸を含む、定義された培地に、前記幹細胞由来の細胞を曝露し、それにより前記細胞の前記代謝成熟度状態を改善するステップを含む、方法。
  2. 前記定義された培地は、以下の成分のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
    a)クレアチン、
    b)L−カルニチン、
    c)タウリン、
    d)L−グルタミン、
    e)ITS−A、および
    f)非必須アミノ酸。
  3. 前記定義された培地は、ピルビン酸塩、β−メルカプトエタノール、またはオレイン酸のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記培地はさらに、1つ以上の抗酸化物質を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記抗酸化物質は、ビタミンA、β−カロテン、ビタミンCおよびE、セレン、ならびにメラトニンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記培地はさらに、1つ以上のフリーラジカル捕捉剤を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記フリーラジカル捕捉剤は、アスコルビン酸、ビタミンE、およびβ−カロテンからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記幹細胞由来の細胞は、肝細胞または心筋細胞である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記細胞は、遺伝子組み換えが行われている、請求項1に記載の方法。
  10. 前記細胞は、1つ以上の好気的呼吸酵素の発現を強化するように、1つ以上の好気的呼吸基質の利用可能性を強化するように、および/または1つ以上の好気的呼吸酵素の機能もしくは発現を調節もしくは増強させるタンパク質の発現を強化するように、遺伝子組み換えが行われている、請求項9に記載の方法。
  11. 前記細胞は、脂肪酸トランスロカーゼ(Cd36)、原形質膜関連脂肪酸結合タンパク質、脂肪酸輸送タンパク質(FATP1、FATP2、FATP3、FATP4、FATP5、および/またはFATP6)、アシル‐CoAシンテターゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、PPARβ、ならびにPPARδからなる群から選択される、1つ以上のタンパク質の発現を増加させるように、遺伝子組み換えが行われている、請求項10に記載の方法。
  12. 前記細胞は、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ペルオキシダーゼ、メチオニンレダクターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素を発現させるように、遺伝子組み換えが行われている、請求項9に記載の方法。
  13. 前記曝露するステップはさらに、前記幹細胞由来の細胞の遺伝子組み換えを行うものとして定義される、請求項1に記載の方法。
  14. 前記細胞は、1つ以上の好気的呼吸酵素、1つ以上の好気的呼吸基質の発現を強化するように、および/または1つ以上の好気的呼吸酵素の機能もしくは発現を調節もしくは増強させるタンパク質の発現を強化するように、遺伝子組み換えが行われている、請求項13に記載の方法。
  15. 前記1つ以上の好気的呼吸酵素は、脂肪酸トランスロカーゼ(Cd36)、原形質膜関連脂肪酸結合タンパク質、脂肪酸輸送タンパク質(FATP1、FATP2、FATP3、FATP4、FATP5、および/またはFATP6)、アシル‐CoAシンテターゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、PPARβ、ならびにPPARδからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
  16. 前記細胞は、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ペルオキシダーゼ、メチオニンレダクターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素を発現させるように、遺伝子組み換えが行われている、請求項13に記載の方法。
  17. 前記幹細胞由来の細胞は、少なくとも4日間、前記培地中で培養される、請求項1に記載の方法。
  18. 前記曝露するステップに続いて、前記方法はさらに、1つ以上の特性に対して、前記幹細胞由来の細胞を分析するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  19. 測定されている前記1つ以上の特性は、前記細胞の代謝成熟度状態を必要とするか、またはそれによって強化される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記1つ以上の特性は、1つ以上の遺伝子の発現又は細胞機能アッセイにおける反応を含む、請求項18に記載の方法。
  21. 前記遺伝子は、CPT1、PPARa、NPPA、およびNPPbからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 幹細胞由来の細胞の代謝成熟度状態を改善する方法であって、解糖から好気的呼吸へ前記細胞の前記代謝を変換する条件に前記幹細胞由来の細胞を曝露し、それにより、前記細胞の前記代謝成熟度状態を改善するステップを含む、方法。
  23. 前記曝露するステップはさらに、本質的にグルコースを含まず、本質的に血清を含まず、1つ以上の脂肪酸を含む、定義された培地中で、前記細胞を培養するものとして定義される、請求項22に記載の方法。
  24. 前記定義された培地は、以下の特性のうちの1つ以上を有する、請求項23に記載の方法。
    a)クレアチン、
    b)L−カルニチン、
    c)タウリン、
    d)L−グルタミン、
    e)ITS−A、及び
    f)非必須アミノ酸
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