以下のいくつかの実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部をなす添付図面を参照し、及び例として、本発明を実施し得る特定の好ましい実施形態を示す。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分な程度、詳細に説明し、及び、本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、他の実施形態を使用し得ること、及び論理的な構造上の、機械的な、電気的な、及び化学的な変更がなされ得ることが理解される。当業者が、本明細書で説明する実施形態を実施できるようにするのに必要ではない詳細を避けるために、以下の説明では、当業者に公知の特定の情報を省略し得る。それゆえ、以下の詳細な説明は限定ととられるべきではなく、説明に役立つ実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。他に指定のない限り、本明細書では、「または」は、相互排他性である必要はない。
本明細書では、用語「減圧」は、一般的に、治療が施されている組織部位における周囲圧力を下回る圧力を指す。殆どの場合、この減圧は、患者がいる場所の気圧を下回る。或いは、減圧は、組織部位にある組織に関連した静水圧を下回り得る。用語「真空」及び「負圧」は、組織部位に適用される圧力を説明するために使用し得るが、組織部位で行われる実際の減圧は、通常完全な真空と連想される減圧を著しく下回り得る。減圧は、初めに、組織部位の領域に流体の流れを生成し得る。組織部位の周りの静水圧が所望の減圧に達すると、流れは弱まることがあるため、減圧が維持される。他に指定のない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。同様に、減圧の上昇への言及は一般に絶対圧の低下を指す一方、減圧の低下は一般に絶対圧の上昇を指す。
本明細書では、用語「正圧」は、一般的に、治療を施されている組織部位における周囲圧力を上回る圧力を指す。場合によっては、この正圧は、患者がいる場所の気圧を上回る。或いは、正圧は、組織部位にある組織に関連した静水圧を上回り得る。
本出願で説明する組織治療システム及び方法は、肉芽組織の発達を加速化または改善することによって組織部位の治療を改善するため、伝統的な治療法では治癒し得なかった創傷を治癒できるか、または場合によっては、創傷の治癒率を高めることができる。肉芽形成は、組織部位を微小な機械的応力及び歪みに曝すことによって促進され得る。組織部位に隣接する密閉空間に減圧を行うことによって、組織部位での微小な機械的応力及び歪みの生成がもたらされ得るが、本明細書で説明するシステム及び方法は、正圧または正の力の使用を用いて、そのような応力及び歪みを生成する。正圧または正の力を使用することによって、組織部位から流体及び滲出液を除去するために組織部位に適用される減圧量が減少し得る。場合によっては、特に、吸収材料またはその他の流体除去材料または機構が用いられる場合、正圧または正の力の使用は、減圧の必要性を完全に排除し得る。
図1を参照して説明すると、患者の組織部位101を治療する組織治療システム100の説明に役立つ実施形態は、組織部位101に近接して配置されたドレッシング102と、ドレッシング102に流体的に結合された治療ユニット104とを含む。本明細書では、用語「組織部位」は、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、または靭帯を含むがこれらに限定されない何れかの組織にあるまたはその内部の、創傷105などの創傷または欠損を指し得る。用語「組織部位」は、更に、必ずしも傷ついたり欠損していたりするとは限らない、何れかの組織領域であるが、代わりに、追加的な組織の成長を押し上げるまたは促すことが望ましい領域を指し得る。例えば、特定の組織領域に減圧組織治療を使用して追加的な組織を成長させ、その組織を採取して別の組織の個所に移植してもよい。
ドレッシング102は、組織部位101における新しい組織の成長を促すように構成され、かつ組織部位101に隣接して、または一部の実施形態ではそれらに接触して位置決めされた創傷治癒装置106を含む。ドレッシング102は、創傷治癒装置106を覆って位置決めされたカバーまたはドレープ110を更に含んでもよく、このカバーまたはドレープは、創傷治癒装置106を組織部位101に固定し、かつカバーの真下に配置されかつ創傷治癒装置106によって少なくとも部分的に占められる空間を封止する。一実施形態では、ドレープ110は、組織部位101の外周を越えて延在し、かつ患者の表皮113と接触してまたはそうでなければそれに近接して配置されて、ドレープ110と表皮113との間に流体シールを形成する。ドレープ110は、接着剤115または接合剤を含み、ドレープ110を表皮113に固定し得る。一実施形態では、接着剤115を使用してドレープ110と表皮113との間にシールを形成し、組織部位101から減圧が漏れないようにし得る。別の実施形態では、シール層(図示せず)、例えば、ヒドロゲルまたはその他の材料などをドレープ110と表皮113との間に配置して、接着剤115のシール性を高めたり、またはその代わりとなったりし得る。本明細書では、「流体シール」は、関係のある特定の減圧源によって与えられた減圧及び望まれる特定の治療を所望の部位に維持するのに適切なシールを意味する。一実施形態では、ドレープ110及びドレープ110の接合特性は、125mmHgの減圧で0.5L/分を上回る漏れを防止するのに十分なシーリングをもたらす。
創傷治癒装置106は、マニホールド121及び充填部材125を含み得る。本明細書では、用語「マニホールド」は、一般的に、組織部位101に減圧を行うこと、その組織部位に流体を供給すること、またはその組織部位から流体を除去することを支援するために設けられる物体または構造体を指す。マニホールドは、一般に、マニホールド周囲の組織部位に提供されるまたはそこから除去される流体を分配する複数の流路または流れ経路を含む。説明に役立つ一実施形態では、流路または流れ経路は相互に接続されて、組織部位101に提供されるまたはそこから除去される流体の分配を改善し得る。マニホールドの例としては、例えば、限定はされないが、流路を形成するように配置された構造要素を有する装置、例えば、気泡質の発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、及び流路を含むまたは硬化して流路を含む発泡体を含み得る。一実施形態では、創傷治癒装置106は、流路の機能を果たす複数の連続気泡や細孔を有する多孔質発泡体を含む。多孔質発泡体は、ポリウレタン製の連続気泡の網状発泡体、例えばKinetic Concepts,Incorporated(San Antonio、Texas)製のGranuFoam(登録商標)材とし得る。
減圧装置106の充填部材125は、組織部位101とカバー110との間の追加的な空間または体積部を占有するように設けられ、かつまた、肉芽形成及び新しい組織の増殖を促進させるために組織部位106に正の力を加えることをより容易にするように設けられ得る。一部の実施形態では、充填部材125は、流体注入時にまたは他の方法で流体によって満たされると拡張可能である膨張可能な空気袋またはバルーンとし得る。他の実施形態では、充填部材125は、組織部位106とカバー110との間に位置決めされる、事前に充填された空気袋または他の容器とし得る。本明細書において、充填部材125のいくつかの例が提供される。
マニホールド121及び充填部材125は、正の力または正圧の存在下で組織増殖を促進するように共に働き得る。一実施形態では、マニホールド121は、組織部位101と接触できる少なくとも1つの肉芽形成促進面127を含み得る。肉芽形成促進面127は、肉芽形成促進面127が組織部位101に接触しているとき、組織部位101における微小応力及び微小歪みを誘発することができる。例えば、マニホールド121が、ストラットまたは気泡壁によって形成された複数の連続気泡を含む網状の多孔質発泡体である場合、網状発泡体のストラットは、ストラットが組織に押し付けられるまたは押し込まれるときに、微小応力及び微小歪みを誘発することができてもよい。組織部位101に近接したマニホールド121及び充填部材125をカバー110によってシールすることによって、カバー110の真下の密閉空間内にある充填部材125が拡張する際、マニホールド121に加わる力を少なくとも組織部位101の方向に向ける。この力は、組織が肉芽形成促進面127に接触する個所において必要な微小応力及び微小歪みを生成することができる。
図1では、充填部材125はマニホールド内に埋め込まれ、マニホールドは完全に充填部材125を取り囲んでいる。下記で更に詳細に説明するように、マニホールド及び充填部材の他の配置を使用してもよく、及びマニホールド及び充填部材双方に多くの変形例が可能である。一実施形態では、マニホールドを省略して、充填部材のみをカバーの真下の密閉空間内に位置決めしてもよい。この実施形態では、充填部材は、組織部位と接触して配置される肉芽形成促進面を含み得る。肉芽形成促進面は、組織部位に微小応力及び微小歪みを誘発するように、突起、隆起、または実質的に凸凹したプロファイルを含み得る。更に他の実施形態では、充填部材を省略して、単にマニホールドまたはその他の肉芽形成誘発基材をカバーの真下に配置し得る。この実施形態では、マニホールドまたは肉芽形成誘発基材に加えられる力は所望の微小歪みを生じ、組織部位に肉芽形成を誘発し得る。
続けて図1を参照して説明すると、ドレッシング102は、更に、創傷治癒装置106及びカバー110に流体的に結合された圧力インターフェース133を含み得る。一実施形態では、インターフェース133は、カバー110に隣接してまたはそれに結合されて位置決めされ、創傷治癒装置106への流体通路を提供し得る。ドレープ110は、インターフェース133への流体通路を提供するためのアパーチャ135を含む。導管137が治療ユニット104とインターフェース133を流体的に結合する。インターフェース133は、減圧の影響下で組織部位101から流体を除去することが望ましいときに、減圧を組織部位101に供給できる。インターフェース133は、また、充填材用導管141によって充填部材125に流体的に結合され得る。インターフェース133と充填部材125との間の流体接続によって、正圧下で流体(即ち気体や液体)を充填部材125に供給でき、充填部材125が膨張または拡張し得る。
一実施形態では、治療ユニット104は、減圧源151と流体連通する流体貯蔵部材145を含む。図1に示す実施形態では、流体貯蔵部材145は、組織部位101からの流体を収集するためのチャンバーを含む収集キャニスターである。或いは、流体貯蔵部材145は、流体を収集できる吸収材料または任意の他の容器、装置、または材料とし得る。
治療ユニット104内に別個の正圧源153が収容され得る。或いは、単一の真空ポンプが治療ユニット104内に配置されて、真空ポンプの入口が減圧源151の機能を果たし、かつ真空ポンプの出口が正圧源153の機能を果たす。導管137は、減圧をドレッシング102に供給する1つ以上の導管と、正圧をドレッシング102に供給する1つ以上の導管とを提供できるマルチルーメン管とし得る。創傷治癒装置106から導管137を通って伝えられた液体や滲出液は、導管137から除去されて、収集キャニスター145内に保持される。ドレッシングと治療ユニットとの間の流体の輸送に関する追加的な情報は、図2を参照して下記で提供される。
続けて図1を参照して説明すると、減圧源151及び正圧源153は、1つ以上の電動式真空ポンプとし得る。別の実装例では、減圧源及び正圧源151、153は、その代わりに、電力を必要としない、手動によって作動されるまたは手動で充電される1つ以上のポンプとし得る。一実施形態では、減圧源及び正圧源151、153は、ドレッシング102から離れて、またはカバー110の真下のまたはそれに隣接したドレッシングに位置決めされ得る1つ以上の圧電駆動マイクロポンプとし得る。減圧源及び正圧源151、153は、その代わりに、任意の他のタイプのポンプ、または代替的には、病院及び他の医療施設で利用可能なものなどの壁面吸い込みポートまたは空気供給ポートとし得る。減圧源及び正圧源151、153は、治療ユニット104内に収容されてもよいし、またはそれと併用されてもよく、また、組織部位101に減圧治療を行うのを更に容易にするセンサー、処理装置、アラームインジケータ、メモリー、データベース、ソフトウェア、表示装置、及びユーザインターフェース161を含み得る。一例では、圧力検出センサー(図示せず)が減圧源及び正圧源151、153にまたはその近くに配置され得る。圧力検出センサーは、圧力検出センサーに減圧データを届けること専用の導管137のルーメンを介して、インターフェース133から圧力データを受信し得る。圧力検出センサーは、減圧源及び正圧源151、153によって供給された減圧及び正圧を監視して制御する処理装置と通信し得る。
図2を参照すると、組織治療システム100の実施形態に関する流体の流れの概略図を示す。図2のシステムの構成要素間の破線は、それら構成要素間の流体の流れを表す。実線は、構成要素間に存在し得る物理的な接続またはそれに近い手段を表す。図2に示すように、正圧源153は、気体や液体などの流体を充填部材125にもたらす。流体の流れは、正圧源153から充填部材125への方向である。正圧源153は、導管137(図1参照)などの導管によって充填部材125に物理的に(及び流体的に)接続され得るか、またはその代わりに、正圧源153は、充填部材125に直接結合された出口を含み得る。一実施形態では、正圧源153は、充填部材125に隣接して配置される圧電駆動ポンプなどのマイクロポンプとし得る。充填部材125は、組織部位101に隣接してまたはそれと接触して配置され得る肉芽形成促進部材165と動作可能に関連付けられている。肉芽形成促進部材は、マニホールド121などのマニホールド、充填部材125の肉芽形成促進面、または肉芽組織の増殖を促進できる任意の他のタイプの材料または基材とし得る。
減圧源151は、気体や液体などの流体を減圧源151の方へ近づけるまたは引き寄せることによって、減圧をもたらす。一実施形態では、減圧源151は、流体貯蔵部材145に物理的に(及び流体的に)接続されており、かつ流体貯蔵部材145から流体を引き出す。減圧源151及び流体貯蔵部材145において生成された減圧は、組織部位101に隣接した流体用空間171から流体を引き出すことができる。流体用空間171は、流体用空間171内及び組織部位101において減圧をよりよく分配するためにマニホールド121によって占有され、それにより、流体をより効果的に除去することを理解されたい。
図3A及び図3Bを参照して説明すると、患者の組織部位301を治療する組織治療システム300の説明に役立つ実施形態は、組織部位301に近接して配置されたドレッシング302と、ドレッシング302に流体的に結合された治療ユニット104とを含む。組織治療システム300は組織治療システム100と同様であり、かつ組織治療システム100にあるものと同じまたは同様の多くの構成要素を含む。組織治療システム300は、流体で完全に膨張している充填部材325を示す。充填部材125はマニホールド321に埋め込まれており、このマニホールドは、充填部材325が膨張することにより組織部位301と接触する少なくとも1つの肉芽形成促進面327を含む。充填部材325及びマニホールド321は、患者の表皮313に固定されたカバー310によって拘束され、肉芽形成促進面327によって組織部位301に付勢力が加えられ得るようにする。カバー310が実質的に剛体の拘束体の機能を果たすように、カバー310は実質的に非弾性とし得るが、カバー310はその代わりに弾性としてもよく、それにより、患者の表皮313の上方へ、組織部位301を取り囲むドレッシングがある程度拡張できるようにする(図3A及び図3Bに示すように)。カバー310は、カバー310の真下に密閉空間328を形成し、そこにマニホールド321及び充填部材325が存在する。
一実施形態では、充填部材325の内側空間は、正圧源353に流体的に結合されている一方、減圧源351はマニホールド321に流体結合されている。図3Aに示す実施形態では、正圧源353及び減圧源351は、それぞれ別個のポンプである。図3Bでは、正圧源353及び減圧源351は同じポンプであり、ポンプは、ポンプの入口を通してマニホールド321に減圧を、及びポンプの出口を通して充填部材325に正圧をもたらす。図3A及び図3Bでは、ポンプを正圧源353及び減圧源351として示すが、正圧源及び減圧源353、351は、正圧源153及び減圧源151に関して既に説明したような任意の正または負の流体流源とし得ることに留意されたい。
図3A及び図3Bに示す実施形態では、流体は、導管383、385を通してマニホールド323及び充填部材325とやりとりされる。導管383は、減圧の適用を可能にするため、マニホールド323からのまたは充填部材325周囲の空間328からの流体の除去を可能にする。導管385は、正圧の適用を可能にするため、充填部材325への流体の供給を可能にする。導管383、385は、任意のタイプの管またはその他の流体輸送装置とし得る。図3A及び図3Bに示すように、導管383、385は、カバー310を通して位置決めし得る。この実施形態では、カバー310にある、各導管が配置されるアパーチャが、密封材またはその他の接着剤の使用、またはカバー310及び導管の双方に付着し得るドレープ材の使用の何れかによって、導管の周りで封止されることが好ましい。或いは、導管383、385は、カバーが患者の表皮313に付着するカバー310の縁部付近で、カバー310の真下に挿入され得る。更に、カバー310が充填部材325及びマニホールド323を組織部位301に固定する能力を維持すること、及びカバー310が、マニホールド323に、または充填部材325と組織部位301との間の空間328内に減圧を維持できるようにすることの双方のために、導管入口点の周りでのカバー310のシーリングは重要である。同様に、導管385が充填部材325に適切に封止されていることが重要である。導管385が適切に封止されていることによって、導管385から正圧流体がマニホールド325に、または充填部材325と組織部位301との間の空間328に漏れないようにする。導管383、385を、カバー310を通るまたはその下を通るとして説明したが、その代わりに、導管383、385は、図1に関連するインターフェース133と同様のインターフェースに接続できる。インターフェースは、導管383、385によって運ばれる流体がカバー310を封止式に通過できるようにする。
キャニスター345は、ドレッシング302と減圧源351との間に流体的に結合され得る。キャニスター345は、減圧源351によって組織部位301から引き出された流体(特に液体)を収集できる。
図4を参照して説明すると、患者の組織部位401を治療する組織治療システム400の説明に役立つ実施形態は、組織部位401に近接して配置されたドレッシング402と、ドレッシング402に流体的に結合された治療ユニット404とを含む。組織治療システム400は、組織治療システム100、300と同様であり、かつ組織治療システム100、300のものと同じまたは同様の多くの構成要素を含む。
組織治療システム400は、流体によって膨張する充填部材425を含む。充填部材425の真下にはマニホールド421が位置決めされ、このマニホールドは、充填部材425の膨張によって組織部位401と接触する少なくとも1つの肉芽形成促進面427を含む。充填部材425の上方には吸収層429が位置決めされ、この吸収層はマニホールド421と流体連通している。吸収層429、充填部材425、及びマニホールド421は、患者の表皮413に固定されたカバー410によって拘束される。ドレッシング402の層を覆ってカバー410を取り付けることにより、肉芽形成促進面427によって組織部位401に付勢力を加えることができる。カバー410が実質的に剛体の拘束体の機能を果たすように、カバー410を実質的に非弾性としてもよいが、その代わりにカバー410を弾性として、それにより、組織部位401を取り囲む患者の表皮413の上方へまたは下方で、ドレッシングがある程度拡張できるようにしてもよい。
一実施形態では、充填部材425の内側空間は、正圧源453に流体的に結合されている一方、減圧源451は吸収層429及びマニホールド421に流体結合されている。図4に示す実施形態では、正圧源453及び減圧源451の機能は単一のポンプによってもたらされる。減圧は、ポンプの入口454によってもたらされ、かつ調整弁456によって調整される。正圧は、ポンプの出口458によってもたらされ、かつ調整弁460によって調整される。単一のポンプを、正圧及び負圧の双方をもたらすとして示すが、正圧及び減圧は、別個のポンプによってまたは任意の他の正または負の流体流源によって供給されてもよいことに留意されたい。
減圧源451と吸収層429との間の流体接続は、液体をマニホールド421から吸収層429に取り込んで貯蔵するのを助ける。吸収層451は、吸収材、吸着材、乾燥材、または組織部位401からの流体を捕捉または貯蔵できる任意の他のタイプの材料から形成し得る。吸収層を構成し得る材料の例には、限定はされないが、BASFのLuquafleece材、Technical Absorbentsが提供するものなどの超吸収繊維ベースの不織布材料、Foam Partners HMEが提供するものなどの親水性発泡体、Filtronaが提供するものなどの高ウィッキング繊維(high−wicking fibre)ベースの材料、及びPoryairが提供するものなどの親水性高分子焼結体が含まれる。
図4に示すように、吸収層429及びマニホールド421を通して減圧を適用することによって、ドレッシング402の圧縮を生じることがあり、カバー410が、組織部位401を取り囲む患者の表皮413のレベルよりも下方へ引っ張られるようになる。このドレッシング402の圧縮は、矢印472によって示す付勢力を組織部位401に加えるのを助けるが、付勢力は、カバー410の真下に充填部材425が存在することによって増大し得る。カバー410の真下の充填部材425が膨張することによって、肉芽形成を促すのに必要な減圧が小さくされる。その代わり、減圧は、主に、組織部位401から流体を除去するためにもたらされ得る。
図5を参照して説明すると、患者の組織部位501を治療する組織治療システム500の説明に役立つ実施形態は、組織部位501に近接して配置されたドレッシング502と、ドレッシング502に流体的に結合された治療ユニット504とを含む。組織治療システム500は、組織治療システム100、300、400と同様であり、かつ組織治療システム100、300、400のものと同じまたは同様の多くの構成要素を含む。
組織治療システム500は、流体によって膨張する充填部材525を含む。充填部材525はマニホールド521内に埋め込まれ、このマニホールドは、充填部材525の膨張によって組織部位501と接触する少なくとも1つの肉芽形成促進面527を含む。充填部材525及びマニホールド521は、患者の表皮513に固定されたカバー510によって拘束され、肉芽形成促進面527によって組織部位501に付勢力が加えられ得る。カバー510は、カバー510の真下に密閉空間528を形成し、そこにマニホールド521及び充填部材525が存在する。カバー510が実質的に剛体の拘束体の機能を果たすように、カバー510を実質的に非弾性としてもよいが、その代わりにカバー510を弾性として、それにより、組織部位501を取り囲む患者の表皮513の上方へまたは下方でドレッシングがある程度拡張できるようにしてもよい。
流体貯蔵部材545が、カバー510の真下のマニホールド521及び空間528と流体連通して位置決めされる。一実施形態では、流体貯蔵部材545は流体パウチであり、本明細書で説明する他の吸収材と同様の吸収材529を含む。流体貯蔵部材545は、密閉空間528の外側のカバー510の上方に位置決めされ得る。或いは、流体貯蔵部材545はカバーの真下に位置決めされてもよいし、及び一実施形態では、流体貯蔵部材545またはその内部にある吸収材529は、マニホールド521に直接接触していてもよい。
図5に示す実施形態では、充填部材525の内側空間は、正圧源553に流体的に結合される。正圧源553によってもたらされた流体の圧力は、調整弁560によって調整される。図5に示す実施形態では減圧源は設けられていない。その代わり、組織部位501からの流体除去は、流体貯蔵部材545によって行われる。マニホールド521が流体で満たされると、流体貯蔵部材545の吸収材529が、マニホールド521から流体貯蔵部材545へ流体を取り込んで貯蔵するのを助ける。流体の動きは、更に、マニホールド521それゆえ流体によって占有される空間528の体積を小さくさせる、充填部材525の膨張によって促される。
図5には減圧源を示さないが、減圧源は流体貯蔵部材545に流体的に接続されて、空間528及び組織部位501をアクティブにドレナージすることに留意しておくことが大切である。そのような減圧源は、本明細書で説明する他の減圧源と同様とし得る。
図5では、流体貯蔵部材545は、カバー510に隣接して位置決めされたまたはそれに結合された圧力インターフェース533によってマニホールド521に流体的に接続される。カバー510はアパーチャ535を含み、そこを圧力インターフェース533が通る。導管537が治療ユニット504(及び正圧源553)をインターフェース533に流体的に結合する。インターフェース533と充填部材525との間の流体接続によって、充填部材525が膨張または拡張し得るように正圧下で流体(即ち気体や液体)を充填部材525に供給することができる。
図5に示すように、減圧がないときに空間528に充填部材525を入れることによって、組織部位501を取り囲む患者の表皮513の上方へのドレッシング502の拡張を生じ得る。ドレッシング502のこの拡張は、矢印572によって示す付勢力を組織部位501に加えることを助ける。カバー510の真下での充填部材525の膨張は、肉芽形成を促すのに必要な減圧を生じさせない。この特定の実施形態では、減圧がなくてもドレッシング502から流体が除去される。
図6を参照して説明すると、患者の組織部位601を治療する組織治療システム600の説明に役立つ実施形態は、組織部位601に近接して配置されたドレッシング602と、ドレッシング602に流体的に結合された治療ユニット604とを含む。組織治療システム600は、組織治療システム100、300、400、500と同様であり、かつ組織治療システム100、300、400、500のものと同じまたは同様の多くの構成要素を含む。
組織治療システム600は、流体によって膨張する充填部材625を含む。充填部材625の真下にはマニホールド621が位置決めされ、このマニホールドは、充填部材625の膨張によって組織部位601と接触する少なくとも1つの肉芽形成促進面627を含む。充填部材625及びマニホールド621は、患者の表皮613に固定されたカバー610によって拘束され、肉芽形成促進面627によって組織部位601に付勢力が加えられ得るようにする。カバーは、カバーの真下に密閉空間628を形成し、そこにマニホールド621及び充填部材625が存在する。カバー610が実質的に剛体の拘束体としての機能を果たすように、カバー610を実質的に非弾性としてもよいが、その代わりにカバー610を弾性として、それにより、組織部位601を取り囲む患者の表皮613の上方へまたは下方でドレッシングがある程度拡張できるようにしてもよい。
流体貯蔵部材645は、カバー610の真下のマニホールド621及び空間628と流体連通するように位置決めされる。一実施形態では、流体貯蔵部材645は、本明細書で説明する他の吸収材と同様の吸収材629を含む流体パウチである。流体貯蔵部材645は、密閉空間628の外側でカバー610の上方に位置決めされ得る。或いは、流体貯蔵部材645はカバーの真下に位置決めされてもよいし、及び一実施形態では流体貯蔵部材645、またはその内部にある吸収材629は、マニホールド621と直接接触していてもよい。
図6に示す実施形態では、充填部材625の内側空間は、正圧源653に流体的に結合される。正圧源653によってもたらされる流体の圧力は、調整弁660によって調整される。図6に示す実施形態では減圧源は設けられていない。その代わりに、組織部位601からの流体除去は、流体貯蔵部材645によって行われる。マニホールド621が流体で満たされると、流体貯蔵部材645の吸収材629が、マニホールド621から流体貯蔵部材645へ流体を取り込んで貯蔵するのを助ける。流体の動きは、更に、マニホールド621それゆえ流体によって占有される空間628の体積を小さくさせる、充填部材625の膨張によって促される。
図6には減圧源を示さないが、減圧源は、流体貯蔵部材645に流体的に接続されて、空間628及び組織部位601をアクティブにドレナージし得ることに留意しておくことが大切である。そのような減圧源は、本明細書で説明する他の減圧源と同様とし得る。
図6では、流体貯蔵部材645は、カバー610に隣接して位置決めされるまたはそれに結合される圧力インターフェース633によって、マニホールド621に流体的に接続される。カバー610はアパーチャ635を含み、そこを圧力インターフェース633は通る。導管637は、治療ユニット604(及び正圧源653)をインターフェース633に流体的に結合する。インターフェース633と充填部材625との間の流体接続は、充填部材625が膨張または拡張され得るように正圧下で流体(即ち気体や液体)を充填部材625に供給できるようにする。
図6に示すように、減圧がないときに空間628に充填部材625を入れることは、組織部位601を取り囲む患者の表皮613の上方へのドレッシング602の拡張を生じ得る。ドレッシング602のこの拡張は、矢印672で示す付勢力を組織部位601に加えるのを助ける。カバー610の真下での充填部材625の膨張は、肉芽形成を促すのに必要な減圧を生じない。この特定の実施形態では、減圧がなくてもドレッシング602から流体が除去される。
図7を参照して説明すると、患者の組織部位701を治療する組織治療システム700の説明に役立つ実施形態は、組織部位701に近接して配置されたドレッシング702と、ドレッシング702に流体的に結合された治療ユニット704とを含む。組織治療システム700は、組織治療システム100、300、400、500、600と同様であり、かつと組織治療システム100、300、400、500、600のものと同じまたは同様の多くの構成要素を含む。
組織治療システム700は、流体によって膨張する充填部材725を含む。いくつかの先に示した実施形態とは違って、図7に示す実施形態はマニホールドを含まない。その代わりに、充填部材725が、充填部材725の膨張時に組織部位701と接触する少なくとも1つの肉芽形成促進面727を含む。充填部材725は、患者の表皮713に固定されたカバー710によって拘束され、肉芽形成促進面727によって組織部位701に付勢力が加えられ得るようにする。カバーは、カバーの真下に密閉空間728を形成し、そこに充填部材725が存在する。カバー710が実質的に剛体の拘束体としての機能を果たすように、カバー710を実質的に非弾性としてもよいが、その代わりにカバー710を弾性として、それにより、組織部位701を取り囲む患者の表皮713の上方へまたは下方でドレッシングがある程度拡張できるようにしてもよい。
流体貯蔵部材745が、カバー710の真下にある空間728と流体連通するように位置決めされる。一実施形態では、流体貯蔵部材745は、本明細書で説明する他の吸収材と同様の吸収材729を含む流体パウチである。流体貯蔵部材745は、密閉空間728の外側のカバー710の上方に位置決めされ得る。或いは、流体貯蔵部材745はカバーの真下に位置決めされてもよいし、及び一実施形態では、流体貯蔵部材745、またはその内部にある吸収材729は、充填部材725と直接接触していてもよい。
図7に示す実施形態では、充填部材725の内側空間は、正圧源753に流体的に結合される。正圧源753によってもたらされた流体の圧力は、調整弁770によって調整される。図7に示す実施形態では減圧源は設けられていない。その代わりに、組織部位701からの流体除去は、流体貯蔵部材745によって行われる。空間728が流体で満たされると、流体貯蔵部材745の吸収材729が、空間728から流体貯蔵部材745へ流体を取り込んで貯蔵するのを助ける。流体の動きは、更に、空間728の体積を小さくさせる、充填部材725の膨張によって促される。
図7には減圧源を示さないが、減圧源は、流体貯蔵部材745に流体的に接続されて、空間728及び組織部位701をアクティブにドレナージし得ることに留意しておくことが大切である。そのような減圧源は、本明細書で説明する他の減圧源と同様とし得る。
図7では、流体貯蔵部材745は、カバー710に隣接して位置決めされるまたはそれに結合される圧力インターフェース733によって、空間728に流体的に接続される。カバー710はアパーチャ735を含み、そこを、圧力インターフェース733が通る。導管737は、治療ユニット704(及び正圧源753)をインターフェース733に流体的に結合する。インターフェース733と充填部材725との間の流体接続によって、充填部材725が膨張または拡張され得るように正圧下で流体(即ち気体や液体)を充填部材725に供給できる。
図7に示すように、減圧がないときに空間728に充填部材725を入れることによって、組織部位701を取り囲む患者の表皮713の上方へのドレッシング702の拡張を生じ得る。ドレッシング702のこの拡張は、矢印772で示す付勢力を組織部位701に加えることを助ける。カバー710の真下での充填部材725の膨張は、肉芽形成を促すのに必要な減圧を生じない。この特定の実施形態では、減圧がなくても流体はドレッシング702から除去され得る。
図8〜10を参照して説明すると、患者の組織部位801を治療する組織治療システム800の説明に役立つ実施形態は、組織部位801に近接して配置されたドレッシング802と、ドレッシング802に流体的に結合された治療ユニット804とを含む。ドレッシング802は、組織部位801における新しい組織の成長を促すように構成され、かつ組織部位801に隣接して、または一部の実施形態ではそれに接触して位置決めされた創傷治癒装置806を含む。ドレッシング802は、更に、創傷治癒装置806を覆って位置決めされたカバーまたはドレープ810を含んで、創傷治癒装置806を組織部位801に固定し、かつカバーの真下にありかつ創傷治癒装置806によって少なくとも部分的に占有される空間を密閉し得る。一実施形態では、ドレープ810は、組織部位801の外周を越えて延在し、かつ患者の表皮813と接触してまたはそうでなければ近接しての何れかで配置され、ドレープ810と表皮813との間に流体シールを形成する。ドレープ810は接着剤815または接合剤を含んで、ドレープ810を表皮813に固定し得る。一実施形態では、接着剤815を使用してドレープ810と表皮813との間にシールを形成して、組織部位801から減圧が漏れないようにし得る。別の実施形態では、シール層(図示せず)、例えば、ヒドロゲル、親水コロイド(例えばAveryまたは3Mによって供給されるような)、シリコーンゲル(例えばDowcorning、Wacker、またはNuSilによって供給されるような)、ホットメルト糊(例えばPlasto、Adhesive Research、またはAveryによって供給されるような)、またはその他の材料などが、ドレープ810と表皮813との間に配置されて、接着剤815のシール性を増強するかまたはその代わりとなる。
創傷治癒装置806は、マニホールド821及び充填部材825を含み得る。一実施形態では、創傷治癒装置806は、流路の機能を果たす複数の連続気泡または細孔を有する多孔質発泡体を含む。多孔質発泡体は、ポリウレタン製の連続気泡の網状発泡体、例えばKinetic Concepts,Incorporated(San Antonio、Texas)製のGranuFoam(登録商標)材とし得る。
減圧装置806の充填部材825は、組織部位801とカバー810との間の追加的な空間または体積部を占有するように設けられ、かつまた組織部位801に正の力を加えるのをより容易にするように設けられて、肉芽形成及び新しい組織の増殖を促すようにし得る。図8〜10に示す実施形態では、充填部材825は、組織部位801とカバー810との間に位置決めされる、事前に充填された空気袋または他の容器である。充填部材825は、チャンバー壁826によって密閉式に囲まれる少なくとも1つのチャンバー824を含む。チャンバー824は流体を保持し、この流体は、一実施形態では、空気などの気体とし得る。チャンバー824内の流体の圧力は、周囲圧力を上回り得るかまたはそれと等しいとし得る。チャンバー壁826が弾性的に変形する場合、流体は、十中八九、周囲圧力をわずかに上回る圧力にある。チャンバー壁826が弾性的に変形しない場合、流体の圧力は周囲とほぼ同じとし得る。
図9及び図10に示す実施形態では、充填部材825のチャンバー壁826は、チャンバー824を形成するために第2の壁830に接合された第1の壁828を含む。この実施形態では、充填部材825は複数のチャンバー824を含み、各チャンバー824は、シーリング接合部832において、隣接するチャンバーに接続されている。シーリング接合部832は、第1及び第2の壁が一緒にシールされる個所であり、及びこのシーリング処理は、熱接着、接着結合、超音波溶接、または2つの壁を一緒に接続できる任意の他の処理によって達成され得る。壁をボンディングするために選択される処理は、壁の材料特性に応じて変更し得る。シーリング接合部832は、隣接するチャンバー824間のヒンジの機能を果たし、それにより、1つのチャンバー824が別のチャンバーに対して回転運動できるようにする。隣接するチャンバー824間のヒンジ接続を形成するシーリング接合部832の代替例として、複数のチャンバー824を、可撓性膜または基材に接着してまたは他の方法で取り付けて、隣接するチャンバー824間にヒンジ構成を設けてもよい。
充填部材825を、第1の壁828及び第2の壁830を含むとして説明したが、各チャンバー825は、隣接するチャンバーを形成する壁とは別個の、個々の壁から構成し得ることに留意されたい。更に、充填部材825または各チャンバーに関連した壁の数は、各チャンバーまたは充填部材の所望の形状に応じて変化し得る。例えば、八面体形状に形成されたチャンバーは、8個の壁を含み得る。或いは、球状チャンバーは、単一の壁のみを含み得る。
充填部材825の壁828、830は、実質的に密閉されたチャンバーを維持できる任意の可撓性材料から作製し得る。好適な材料の例は、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、シリコーンエラストマー及び他の弾性重合体、例えばポリエピクロロヒドリン、ブチル(ハロゲン化形態(halogenated forms)を含む)、またはポリエーテルブロックアミン共重合体(PEBAX)、及び可撓性薄膜、例えばポリオレフィン、コポリエステル、及びポリアミドを含み得る。
マニホールド821及び充填部材825は、正の力または正圧の存在下で組織増殖を促進させるように共に働き得る。一実施形態では、マニホールド821は、組織部位801に接触できる少なくとも1つの肉芽形成促進面827を含み得る。肉芽形成促進面827は、肉芽形成促進面827が組織部位801に接触するときに組織部位801に微小応力及び微小歪みを誘発することができる。例えば、マニホールド821が、ストラットまたは気泡壁によって形成された複数の連続気泡を含む網状の多孔質発泡体である場合、網状発泡体のストラットは、ストラットが組織に押し付けられるまたは押込まれるときに、微小応力及び微小歪み誘発することができてもよい。組織部位801に近接したマニホールド821及び充填部材825をカバー810によって密閉することによって、カバー810の真下の密閉空間内に充填部材825が存在することにより、マニホールド821に加えられる力を、少なくとも組織部位801の方向に向けるのを助ける。この力は、組織が肉芽形成促進面827に接触する個所において、必要な微小応力及び微小歪みを生成できる。
一実施形態では、カバー810は、マニホールド821及び充填部材825を覆って配置されて、カバー810が患者に取り付けられると充填部材825がいくらか圧縮されるようにし得る。充填部材825のこの圧縮は、マニホールド821、それゆえ組織部位801に加えられる力を増幅させるのを助ける。カバー810は、カバー810に力が加えられると弾性的に変形する材料から形成され得るが、これは必須ではない。好適なカバー材料の例は、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、シリコーンエラストマー及び他の弾性重合体、例えばポリエピクロロヒドリン、ブチル(ハロゲン化形態を含む)、またはポリエーテルブロックアミン共重合体(PEBAX)、及び可撓性薄膜、例えばポリオレフィン、コポリエステル、及びポリアミドを含み得る。
図8では、充填部材825は、マニホールド821の第1の部分834と第2の部分836との間に位置決めされる。圧力インターフェース833は、創傷治癒装置806及びカバー810に流体的に結合される。一実施形態では、インターフェース833は、カバー810に隣接して位置決めされるかまたはそれに結合されて、創傷治癒装置806への流体通路を提供し得る。カバー810は、インターフェース833への流体通路を提供するアパーチャ835を含む。導管837は、治療ユニット804とインターフェース833を流体的に結合する。インターフェース833は、減圧の影響下で組織部位801から流体を除去することが望まれるときに、減圧を組織部位801に供給できるようにする。
一実施形態では、治療ユニット804は、減圧源851と流体連通する流体貯蔵部材845を含む。創傷治癒装置806から導管837を通って伝えられる液体または滲出液は、導管837から除去されて、貯蔵部材845内に保持される。図8に示す実施形態では、流体貯蔵部材845は、組織部位801からの流体を収集するチャンバーを含む収集キャニスターである。或いは、流体貯蔵部材845は、吸収材料、または流体を収集できる任意の他の容器、装置、または材料とし得る。
続けて図8を参照して説明すると、減圧源851は1つ以上の電動式真空ポンプとし得る。別の実装例では、その代わりに、減圧源851は、電力を必要としない、手動によって作動されるまたは手動によって充電される1つ以上のポンプとし得る。その代わりに、減圧源851は、任意の他のタイプのポンプ、または、代替的に、病院及び他の医療施設で利用可能なものなどの壁面吸い込みポートまたは空気供給ポートとし得る。減圧源851は、治療ユニット804内に収容されても、またはそれと併用されてもよく、また、組織部位801に減圧治療を行うことを更に容易にするセンサー、処理装置、アラームインジケータ、メモリー、データベース、ソフトウェア、表示装置、及びユーザインターフェース861を含み得る。一例では、圧力検出センサー(図示せず)は、減圧源851にまたはその付近に配置され得る。圧力検出センサーは、減圧データを圧力検出センサーに届けること専用の導管837のルーメンを経由して、インターフェース833から圧力データを受信し得る。圧力検出センサーは、減圧源851によって供給される減圧を監視して制御する処理装置と通信し得る。
組織治療システム800を使用するために、介護者は、マニホールド821の第1の部分834を組織部位801に接触させて配置し、肉芽形成促進面827が組織部位801と接触するようにする。次いで、充填部材825を第1の部分834の上方に位置決めし、及び好ましくは、充填部材825の量を、カバー810の真下にある空間を実質的に満たすように調整する。充填部材825は、シーリング接合部832の周りでまたはチャンバー824を通ってトリミングされて、充填部材825のサイズを適切なサイズに変更し得る。図8に示す実施形態では、単体の充填部材825が半分に折り畳まれ、空間をより適切に満たすようにしている。或いは、複数部片の充填部材825を、空間を実質的に満たすように位置決めしてもよい。一実施形態では、充填部材825を十分に追加して、充填部材825を、組織部位801を取り囲む表皮813と実質的に同じ高さにできる。充填部材825の配置後、マニホールド821の第2の部分836を、充填部材825の上方に位置決めし、その後第2の部分836を覆ってカバー810を配置する。カバー810は、組織部位801を取り囲む表皮813に固定し、及び圧力インターフェース833は、カバー810と接触しかつアパーチャ835と連通するように位置決めす。減圧源851は、圧力インターフェース833に流体的に接続される。
カバー810の真下の空間に減圧を行うと、空間から除去された空気及びその他の流体によって、カバー810が組織部位801の方へ圧縮する。この圧縮により、肉芽形成促進面827によって組織部位801にかけられる力を強め、かつ肉芽組織の形成を支援する。滲出液及びその他の流体が組織部位801によって生成されると、充填部材825の上下に存在するマニホールド821が、充填部材825の周りへ及び流体貯蔵部材845へ流体を運ぶのを支援する。
図8の組織治療システム800を、充填部材を取り囲む2部片のマニホールドシステムを有するとして説明するが、マニホールドは、充填部材を包み込む単体のマニホールドとすることができる。或いは、図7に関連して先に説明したように、マニホールドを省略して、肉芽形成促進面を含む充填部材を使用してもよい。同様に、組織治療システム800に対し多くの流体操作及び貯蔵の代替例が可能である。その代わりに、本明細書で先に説明したそれらのシステムと同様に、組織部位から離れて配置された収集キャニスターは吸収材料とし得る。吸収材料は、図4に示すようにドレッシングの層として設けられても、または図5〜7に示すようにドレッシングの外部に配置されてもよい。
本明細書で説明する多チャンバー型の充填部材825は、予め膨張されて封止されて、各チャンバー内の流体が閉じ込められるようにする。図8に示す実施形態では、予め膨張された充填部材を使用することが好ましいとし得るが、本明細書で説明しかつ図1〜7に示す、充填可能な及び拡張可能な充填部材も、充填部材810と同様の多チャンバー型とし得ることに留意されたい。換言すると、組織部位に近接して充填部材を配置後に、正圧下でのチャンバーへの流体の供給を制御し得るように、多チャンバー型の充填部材を正圧源に接続することが考慮される。
本明細書で説明する組織治療システムは、伝統的なプロトコルよりも小さな減圧(即ちより高い絶対圧)を使用する減圧治療プロトコルを使用できるようにする。正の力及び正圧を使用して、肉芽形成を誘発する微小歪み及び微小応力を大きくすることによって、治療に必要な減圧の量を著しく低減させる。実際、テストでは、膨張可能なまたは予め膨張した空気袋の何れかによってもたらされた正圧と相まって、−75mm Hgの圧力が、−125mm Hgの境界面−圧力等価(肉芽形成促進面と組織部位の境界面で測定された圧力)を達成することを示した。
本明細書で説明するシステムは、流体及び界面圧力を独立して管理する能力を有する。これは、組織部位に微小歪みを交互に適用する間に介護者が一定の流体管理(例えば除去)を維持できる間欠モードでは、特に有用である。これはまた、正圧及び負圧の独立した適用の管理によって一時歪みの効果が減少され得る点で、疼痛管理により有益とし得る。最後に、これらの方法は、エネルギー必要量が少ない、より単純なシステムをもたらす。
流体除去と微小歪み誘発の分離はまた、創傷または組織部位の外周を引き寄せることが望ましくないときに有益とし得る。伝統的な減圧治療では、ドレッシングへより多い減圧量を適用することによって、創傷の縁部または外周を引き寄せることによる一次治癒による閉鎖が促される。しかしながら、これは常に、特に創傷が関節または関節点であるときに、好都合であるわけではない。これらの関節領域では、組織の収縮が衝突運動を引き起こす可能性があり、これは、患者に二次的な問題を生じることがあるか、または動きを元に戻すために、これらの組織形成を停止させる痛みを伴う理学療法の必要性を生じることがある。このような状況においては、再建手術で通常使用されるように、二次または三次(遅延一次)治癒によって創傷を治癒することを有益とし得る。本明細書で説明する組織治療システムは、減圧治療の利点を創傷に適用できるようにするが、膨張可能なまたは予め膨張された空気袋は、創傷の外周が内向きに潰れないようにするため、周囲組織が収縮しないようにする。
本明細書で説明するシステムの多くを、患者の表皮にまたはその付近にある組織部位または創傷との使用において示したが、システム及び方法は、同様に、皮下組織部位、トンネル創(tunnel wound)、または他の弱った組織領域の治療に使用し得る。これらのタイプの創傷または組織部位の場合、アクセス性は限定され、それにより、伝統的な発泡体及びマニホールドの配置及び除去をより困難にし得る。本明細書で説明する空気袋を設置時及び除去時に収縮させる能力は、これらのアクセスが困難な創傷及び組織部位へ治療を行うプロセスを容易にする。
本明細書で説明する組織治療システムの多くは、正圧または正の力の適用と併用して負圧の使用を含むが、受動的な流体除去のための吸収材料の使用は、減圧の必要性を完全になくすのを助け得る。そのようなシステムでは、正圧または正の力を使用して組織部位に微小歪みを形成している間に、流体は創傷から受動的に除去されて、吸収層に貯蔵され得る。
本明細書で説明する組織治療システムの多くは、別個のカバー部材またはドレープを含んで、充填部材及び任意の肉芽形成促進面または材料を組織部位に固定及び封止し得るが、カバー部材またはドレープは充填部材と一体的に組み合わされて、これらの構成要素を組織部位に固定または封止してもよい。例えば、一実施形態では、カバー部材は、患者の表皮に固定されることができる充填部材の一体部分としてもよく、充填部材の内部チャンバー及び任意の肉芽形成促進材料が、組織部位において、カバー部材の真下の空間内で封止される。
上記から、重要な利点を有する発明が提供されたことが明白である。本発明を、その数例の形態でのみ示したが、それらには限定されず、本発明の趣旨から逸脱せずに、様々に変更及び修正される。