JP2014515408A - 行動及び精神障害の治療のためのシロ−イノシトール - Google Patents

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Abstract

本発明は、対象に有効量のシロ−イノシトールを投与することによる、脳中の上昇したミオ−イノシトールレベルに関連した障害、特に行動障害及び精神神経障害、例えば認知症、軽度のアルツハイマー病、軽度の認知障害又は双極性障害の治療に関する。

Description

発明の分野
本発明は、脳の上昇したミオ−イノシトールレベルに関連した疾患、特に行動及び精神神経障害を治療するための方法に関する。
「認知症の行動・心理症状」(BPSD)なる用語は、認知症として臨床的に知られているものをもたらす、長期の進行性の神経変性プロセスの重要な兆候である、行動障害又は神経精神症状(NPS)の範囲を表す用語である。包括的用語であるBPSDは、アパシー又は無関心、情動性及び精神的症状、脱抑制及び多動性、易刺激性、興奮/攻撃性、食欲の変化、並びに夜間混乱又は睡眠障害を含む、NPSの幅広い範囲を含む。BPSDの症状(サブ症候群)の様々な組み合わせは、多くの認知症で生じる。これらの認知症としては、アルツハイマー病型認知症(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、レビー小体病(LBD)、及びダウン症型認知症が挙げられる。もっとも、BPSDは、疾患特異的ではないが、特定の疾患の特徴である精神神経障害の特定のプロファイルは存在する。
例えば、ADでは、アパシー及び情動性症状(情動とは、感覚又は感情の体験を意味し、アパシー及び抑うつにおいて、しばしば鈍い又は平坦と称される)は、疾患の早期に一般的であるのに対して、精神症状、異常運動行動、及び脱抑制は、認知症の経過の後期に生じる。FTDでは、アパシー/無関心、社会的脱抑制、及び人格変化は、大変早期に生じ、呈する兆候でありさえする(例えば、行動バリアントFTD(bv−FTD))。LBDは、認知変動、錐体外路運動症状、日周リズム障害、幻覚、夜間興奮、及び抑うつにより特徴付けられる。血管性認知症は、目立ったアパシー、自発性の欠如、易刺激性、及び抑うつにより特徴付けられる。
ADにおける記憶、論理的思考、及び言語能力の進行的な低下とは異なり、いくつかのNPS(例えば、抑うつ及び不安)は、疾患の異なるステージにおけるいくつかの症状の軽減及び他の症状の出現を含む、変動する経過を有する。しかしながら、疾患が進行するにつれて、前記アパシー、興奮、及び多動性症状は、一層持続し、そして進行し、精神病理は重くなる。いくつかのNPS、例えば興奮/攻撃性、幻覚又は妄想、異常運動行動、及び脱抑制は、管理することが特に困難であり、介護者の苦痛の大きな要因である。前記精神症状及び興奮/攻撃性は、中等度〜重度のADにおいて、介護施設に置かれることの原因となる。アルツハイマー病に関連するBPSDは、これらの神経精神症状群のなかで最もよく研究されている。
BPSD症状クラスター又はサブ症候群
BPSDの神経生物学的な研究及び治療的試みを容易にするために、NPSは、症状クラスターに分類された。これらのクラスターは、認知症集団における潜在的なクラス又は因子分析のいずれかに基づく。サンプルサイズ、及び集団に基づく又は病因に基づくサンプルの使用を含む方法論の違いにも関わらず、これらの研究は、3若しくは4つのクラスター又はサブ症候群のいずれかで一貫して同定される。最も一貫しているクラスターは、i)情動性、ii)精神病、及びiii)多動性サブ症候群である。情動性サブ症候群についての中核の症状は、抑うつ及び不安であるが、いくつかの研究では、このクラスターに易刺激性及び興奮を含む。精神病クラスターは、一貫して妄想及び幻覚を含む一方で;多動性クラスターは、通常、異常運動行動、発揚、及び脱抑制を含む、前頭葉又は「遂行機能障害症候群」が考慮される。アパシーが情動性クラスターの一部であるか、別の症候群であるかは、議論が残る問題である。食欲及び睡眠変化(又は夜間行動)は、しばしば情動性症状に関連するが、患者の合併性の健康状態にも関し得る。クラスター手法の利用は、一般的な神経化学基礎を共有し得、薬剤の同様のクラスに潜在的に応答し得る臨床的症候群を定義することを助ける。BPSDに対するこの症候群的の手法はまた、認知症に現れるこれらのサブ症候群の認識及び正確な診断を容易にし、そして医療専門家にこれらの適切な管理を知らせることができる。
BPSDの疫学
アルツハイマー病(AD)集団におけるBPSDの有病率は、60〜90%と見積もられ、研究方法によるが、生涯リスクは100%に近い。ADにおけるNPSの有病率及び数は、疾患の重症度及び持続期間に伴って増加することが知られている。NPSの有病率の増加は、軽度の認知障害(MCI)からADへの進行に関連する。
ADの進行において生じる2つの早期のNPSは、通常、アパシー又は抑うつであり、これらのいずれかは、軽度の認知障害(MCI)ステージ又は早期のADステージにおいて、明白であり得る。アパシーは、疾患の経過を通して非常に広く認められ、典型的に進行的な経過が続く。これに対して、抑うつ又は神経不安の重症度は、特に疾患の早期において変動する傾向がある。抑うつは、軽度及び中等度のADにおいて高い有病率を有するが、重度のADにおいてはあまり広く見られなくなる。不安は、抑うつよりも幾分低い有病率を有するが、ADにおいて、抑うつと同様の経過を辿る傾向があり、抑うつとしばしば関連する。軽度又は中等度の疾患において、中等度〜高い有病率で生ずる他の症状は、易刺激性、興奮/攻撃性、及び食欲変化である(Aalten et al 2007, Neuropsychiatric syndromes in dementia. Results from the European Alzheimer Disease Consortium: Part I. Dement Geriatr Cogn Disord 2007;24:457-63 and, Steinberg et al 2008, Point and 5-year period prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia: The Cache County Study. International Journal of Geriatric Psychiatry, 23(2): 170-177)。発揚又は多幸感は、少なくとも一般的なNPSであるが、前頭葉又は遂行機能障害症候群の一部として、脱抑制及び異常運動行動に関連して見られ得る。多動性症状(異常運動行動、夜間行動、及び脱抑制)は、中等度〜重度のADにおいて、比較的一般的になる。早期及び軽度のステージにおいて一般的ではない妄想及び幻覚は、ADの重度のステージにおいて、より広く認められるようになる。進行するADに伴う行動機能障害の累積的負担は、ADにおいて、著しくなり、そして最終的に重大な管理課題を課す。
BPSD症候群の神経生物学的基盤
認知症における様々なNPSは、各認知症に特異的である局所的な退行性変化の表われとしてみることができる。脳領域は、様々なミスフォールドタンパク質病理に対する選択的な脆弱性を示すので、認知症障害において生じる早期のNPSは、選択的な脆弱性の部位に依存する。アパシー、抑うつ、興奮、及び精神症状の神経化学的な基盤は、ますます洗練された方法を用いて明らかにされている。これらは、受容体結合、機能的/容量的イメージング、ゲノム関連づけ、及び剖検調査を含む。
ADでは、アミロイド病理は、通常、内嗅皮質及び頭頂葉皮質において開始するが、前頭葉病理も見られ、そしてアパシー又は減少した自発性として表われ、減少した基底前脳コリン作用を反映し得る。アパシーはまた、剖検調査において、神経原線維変化(NFTとも称される高リン酸化されたタウタンパク質の凝集)の量と関連することを示している。情動性症状の早期の出現は、青斑核及び背側縫線核それぞれにおけるノルアドレナリン及びセロトニンレベルの著しい減少、及び減少した黒質ドーパミンレベルとともに、様々なモノアミン作動性ネットワークの機能障害を反映すると考えられる。機能的イメージング研究は、前帯状皮質、及び上側頭回、及び上前頭葉において、両側での代謝低下を示す。
進行したADで目を引くようになる興奮及び異常運動行動は、眼窩前頭皮質におけるNFT負荷に関連していることが示されている。精神症状の出現は、悪い認知的及び機能的結果に関係している。妄想及び幻覚は、それぞれ眼窩前頭皮質及び中側頭皮質におけるムスカリン性受容体密度である、M2サブタイプと関連するが、M1とは関連しないことが判明している。興奮とともに、精神症状は、特定のドーパミン受容体遺伝子変形にも関連している。加えて、セロトニントランスポーターの多形及び5−HT2A受容体の多形は、興奮/攻撃性及び精神病にそれぞれ関連している。
皮質下虚血性血管性疾患により引き起される血管性認知症では、基底前脳における求心路遮断(求心性神経インパルスの排除又は妨害)及びコリン作動性喪失を引き起す、前頭の白質の早期の関与が存在する。中央前頭前ネットワークの早期の途絶及びその皮質下結合は、アパシー及び駆動喪失を導く一方で、背面の前頭前ネットワークの途絶は、実行機能不全として表われ;これらの双方の症状は、血管性認知症の早期の出現である。前面の眼窩前頭ネットワークの後期の関与は、社会的に不適切及び/又は抑制された行動の出現をもたらす。
行動バリアントFTD(bv−FTD)は、早期の前頭及び前側頭萎縮に特徴付けられる。bv−FTDのBPSD症状は、感情の鈍化、共感の欠如及び脱抑制の出現とともに、前頭葉におけるコリン作動性喪失、及び「セイリアント(salient)ネットワーク」における機能障害を反映する。LBDは、皮質に広く影響を与える、幅広いドーパミン作動性及び/又はコリン作動性喪失を示すことが記載される。LBDにおけるBPSDは、これらの患者の抗コリン作用、特に精神安定薬に対する目立った感受性のために、ユニークな治療課題を持ち出す。
現在の治療法の選択肢及び満たされていない医療の需要
BPSDの長期管理のための承認された薬は、現在存在しない。非定型抗精神病薬であるリスペリドン(リスペリダール(Risperidal)(登録商標))は、重度の興奮の短期管理のために承認された唯一の薬である。この承認は、いくつかの欧州諸国に限定され、短期の2つの肯定的な対照試験に基づくが、全ての試験が一貫して肯定的ではなかった。BPSDにおいて研究されている主な薬の種類は、リスペリドン、クエチアピン(セロクエル(登録商標))及びジプラシドン(ジオドン(登録商標))を含む非定型抗精神病薬;ADにおける認識低下の症状を治療する薬剤(コリンエステラーゼ阻害剤及びメマンチン);並びに抗鬱薬(例えば、セロトニン選択的再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI))である。非定型抗精神病薬の研究は、精神病又は興奮/攻撃性症状を有するAD患者に焦点を合わせる。これらの研究の結果は、一貫して肯定的ではなく、低い耐容性を示した3つの薬剤対プラセボの比較試験は、限定的であった。加えて、AD患者におけるこれらの薬剤の使用は、死亡リスクの増加に関連する。これは、米国のFDAに全ての非定型抗精神病の高齢の認知症患者についての安全警告を発行させ、そして薬のラベルに、死亡リスクの増加、及びこれらの薬が認知症を有する高齢の成人において行動問題の治療のために、食品医薬品局(FDA)に承認されていないことを記す「枠組み警告」を付させた。行動性症状が主要な結果として測定されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)に関するいくつかの研究は存在し、そしてChEI試験のメタ分析はNPSに関する一貫した効果を示さなかった。いくつかの研究は、アパシーに関する効果を示す一方で、他の研究では示されず、いくつかは、情動性症状に関するいくらかの恩恵を示す。ChEIの効果は僅かであり、臨床的関連は限定的であると考えられている。抗鬱薬及び気分安定薬の研究は、非抑うつ関連NPSに関する試験にわたり、一貫した利益を示さず;シタロプラム(セレクサ(登録商標))に関する1つの研究は、興奮及び情緒不安定にのみ見込みのある利益を示した。ADにおける抑うつを標的とする研究のメタ分析は、第二世代の抗鬱薬(SSRI/SNRI)に伴う僅かな利益を示し、そして該研究は、この年齢の患者集団における有害事象のために、これらは、高い中断率に関連することを見出した。BPSDに対する医薬療法の選択肢は、それ故、かなり限定され、行動性及び精神病症状に関する有益な臨床効果を有する、安全で、より耐容性の高い薬についての満たされていない要求が残る。
気分安定剤であるリチウム(炭酸リチウムとして投与され、本明細書でLi又はLIと略記される)は、脳のミオ−イノシトールレベルを減少させることが知られている。注目すべきは、リチウム処置は、双極性患者において(数日以内に)、約30%までミオイノシトールレベルの早期の減少を引き起し、その2週間後、情動性症状が改善したことが知られている。ミオ−イノシトール減少及び改善された情動の間の観察される遅延は、早期のLiに誘導されるホスホイノシチド信号伝達の改変(ホスホイノシチドは、アルコール官能基を介して1又は複数のリン酸基と結合したミオ−イノシトール分子を含み、他の細胞プロセスを調節する、所謂セカンドメッセンジャーである)が、気分に関するその臨床効果を媒介する遺伝子発現及びタンパク質合成に関する下流効果を導き得ることを暗示する。
ここ10年にわたり、医学界及び健康機関は、BPSDの重要性、及びその影響を最小化するための管理戦略及び有効的な治療の開発の必要性を認識するようになった。米国FDAは、2000年3月の米国老年精神医学会議と協力した諮問会議を組織し、この議題を議論し、この分野における研究及び薬物開発努力の必要性に着目した(T. Laughren, 2001 , Am J Geriatr Psychiatry, 9(4):340-5)。FDAは、認知症の様々な行動的兆候を含む広い概念として「BPSD」を認めた。該機関は、一般的な神経化学的な基盤を共有する、より特定されたサブ症候群(又は症状のクラスター)を同定する必要性を強調した。かかるサブ症候群は、従って、行動の適切な機構とともに、薬物により具体的に標的とされ得る。同時に、該機関は、コンセンサス会議の少し前に発行された基準に基づく、「ADの精神病」の診断有効性を承認した(Jeste and Finkel, 2000 Am J Geriatr Psychiatry, 8(1 ):29-34)。その後、「ADにおける抑うつ」(Olin et al 2002, Geriatric Psychiatry, 10, 125 -128)及びスタンドアローン(stand-alone)症候群としてのアパシー(Robert et al 2009, Eur Psychiatry, 24(2):98-104)についての暫定的な診断基準が発効された。しかしながら、これらの特定の指標について承認されている薬物はない。
いくつかの尺度は、BPSDの評価について用いられている。これらは、認知症を有する患者におけるNPSを研究するために特別に設計された尺度、例えば「AD行動病理学尺度」(BEHAVE-AD, Reisberg et al. BEHAVE-AD: A clinical rating scale for the assessment of pharmacologically remediable behavioral symptomatology in Alzheimer's disease. In: Altman HJ, editor. Alzheimer's Disease: Problems, prospects, and perspectives. Plenum; New York: 1987. pp. 1-161996)、認知症のためのCERAD行動尺度(BRSD, Tariot 1996, International Psychogeriatrics, 8 (Suppl. 3) : 317-320)、及び神経精神症状評価(NPI, Cummings et al. 1994, Neurology. 1994;44:2308-14)を含む。認知症患者において進行し得る行動性症状の広い範囲を評価するために設計されたNPIは、よく検証された手段であり、BPSD研究及びAD治療試験において広く用いられている。オリジナルのバージョンでは、妄想、幻覚、興奮/攻撃性、抑うつ/神経不安、不安、アパシー、易刺激性、多幸感/発揚、脱抑制、及び異常運動行動を含む10個の症状又は項目を評価し;その後、食欲変化及び夜間行動(睡眠障害)を含むように更新された。NPIは、患者の介護者への構造的なインタビューとして、訓練された個人により行なわれる。各項目は、台本に記載されたスクリーニング質問により評価され、各項目の頻度及び重症度は、0〜4(0:なし、1:週に1回あるか、それよりも少ない〜4:少なくとも毎日起こる)、及び1〜3(1:軽度、又は患者において少し苦痛を生じる;2:中等度、又は患者にとってより不快であるが、介護者により変えることができる;及び3:重度、又は患者にとって大変に不快であり、介護者により変えることが困難である)で採点される。合計項目スコアは、従って、重症度スコアを乗じた頻度に由来し;そして合計NPIスコア(NPI−T)は、全ての項目の和に由来し、0(全くNPSがない)〜144(全ての12NPSが、日常において最大の重症度を表す)のスコアの範囲を有する。軽度/中等度のADにおける薬剤試験の大部分では、平均合計NPIスコアは、ベースラインにおいて約10〜12であった。以下の実施例に記載される第二相試験は、NPI−12項目評価を用い;そして平均合計NPIスコアは、ベースラインにおいて8〜10であった。このベースライン重症度は、文献において報告されている多くの軽度〜中等度のADにおいて報告される範囲よりも僅かに低い。
前述の一般的な記載及び以下の詳細な記載の双方は、典型例でのみあり、請求項に記載されるように本開示を限定しない。
発明の概要
患者へのシロ−イノシトールの投与が、かかる患者の脳中のミオ−イノシトールのレベルを下方制御し(即ち、減少させ)、そして神経精神症状(NPS)の出現を遅延させ、そして神経精神症状(NPS)の程度を軽減することは、予測できない発見である。従って、本発明の1つの態様では、対象の脳中のミオ−イノシトールのレベルを減少させる方法であって、有効量のシロ−イノシトールを前記対象に投与することを含む方法、を提供する。態様によれば、本発明は、対象の脳中のミオ−イノシトールのレベルの減少又は下方制御に、あるいは対象の脳中のミオ−イノシトールのレベルの減少又は下方制御のための医薬の調製に、使用するための、シロ−イノシトール、又はシロ−イノシトールを含む医薬組成物を提供する。
本発明の方法は、認知症、軽度のAD、MCI、又は双極性障害に罹患している患者において、ミオ−イノシトールのレベルを減少させ又は下方制御するために使用されてもよい。それ故、本発明の1つの態様では、認知症、軽度のAD、MCI、又は双極性障害に罹患している患者の脳において、ミオ−イノシトールのレベルを減少させ又は下方制御する方法であって、治療的に有効な治療期間、有効量のシロ−イノシトール又はシロ−イノシトールを含む医薬組成物を投与することを含み、前記シロ−イノシトール又は組成物の投与が、患者の脳中のレベルを、投与前のベースライン測定値から減少させる、方法が提供される。
本発明の実施形態では、前記ミオ−イノシトールのレベルは、約60%未満減少する。本発明の実施形態では、前記ミオ−イノシトールのレベルは、約20〜約55%減少する。本発明の実施形態では、前記ミオ−イノシトールのレベルは、約20〜約50%減少する。本発明の他の実施形態では、前記ミオ−イノシトールのレベルは、約25%〜約45%減少する。本発明の更なる実施形態では、前記ミオ−イノシトールのレベルは、約25%〜約35%減少する。
本発明の別の態様では、対象の神経精神症状を治療する方法であって、前記対象に有効量のシロ−イノシトールを投与することを含む、方法を提供する。他の態様では、本発明は、対象の神経精神症状の治療に、あるいは対象の神経精神症状を治療するための医薬の調製に、使用のためのシロ−イノシトール又はシロ−イノシトールを含む組成物に関する。
1つの態様では、本発明は、患者において、神経精神症状又は神経精神症状クラスターの出現を遅延させ、そして/あるいは重症度を低減する方法であって、有効量のシロ−イノシトール又は有効量のシロ−イノシトールを含む医薬組成物を前記患者に投与する、方法を提供する。本発明の実施形態では、前記神経精神症状は、情動性、行動性、前頭の、又はアパシーの症状である。本発明の実施形態では、前記神経精神症状は、少なくとも2つの情動性、行動性、前頭の、又はアパシーの症状を含む。特定の実施形態では、前記神経精神症状は、抑うつ、不安、食欲変化、興奮、夜間行動、妄想、幻覚、アパシー、易刺激性、異常運動行動、脱抑制、睡眠障害及び発揚からなる群から選択される、あるいは選ばれる。特定の実施形態では、前記神経精神症状は、抑うつ、不安、食欲変化、興奮、夜間行動、妄想、幻覚、アパシー、脱抑制、睡眠障害及び発揚からなる群から選択される、あるいは選ばれる。特定の実施形態では、前記神経精神症状は、抑うつ、不安、食欲変化、興奮及びアパシーからなる群から選択される、あるいは選ばれる。特定の実施形態では、前記神経精神症状は、脱抑制、睡眠障害、アパシー及び発揚からなる群から選択される、あるいは選ばれる。本発明の実施形態では、前記神経精神症状クラスターは、情動性クラスター、精神病クラスター、アパシー、前頭葉発揚及び脱抑制クラスター、行動性クラスター並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、あるいは選ばれる。
1つの態様では、本発明は、患者において、少なくとも2つの新規の神経精神症状の出現を遅延させる方法であって、治療的に有効な治療期間にわたり、有効量のシロ−イノシトール又は有効量のシロ−イノシトールを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、ここで前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値と比べて、少なくとも2つの新規の神経精神症状の出現を遅延させる、方法を提供する。前記患者は、認知症、特にアルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン型認知症に罹患していてもよい。本発明の実施形態では、前記患者は、アルツハイマー病型認知症に罹患しており、そして軽度の又は中等度のアルツハイマー病を有している。
1つの態様では、本発明は、認知症を有する患者において、少なくとも1つの神経精神症状クラスターの出現を遅延させる方法であって、治療的に有効な治療期間にわたり、有効量のシロ−イノシトール又は有効量のシロ−イノシトールを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、ここで前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値と比べて、少なくとも1つの神経精神症状クラスターの出現を遅延させる、方法を提供する。1つの実施形態では、前記神経精神症状クラスターは、情動性クラスター、精神病クラスター、アパシー、前頭葉発揚及び脱抑制クラスター、行動性クラスター並びにこれらの任意の組み合わせから選択される。1つの実施形態では、前記認知症は、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン症型認知症からなる群から選ばれる、あるいは選択される。特定の実施形態では、前記認知症は、中等度のアルツハイマー病であり、そして少なくとも1つのクラスターは、行動性である。
1つの態様では、本発明は、認知症を有する患者において、少なくとも1つの神経精神症状の重症度を低減する方法であって、治療的に有効な治療期間にわたり、有効量のシロ−イノシトール又は有効量のシロ−イノシトールを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、ここで前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値と比べて、少なくとも1つの神経精神症状の重症度を低減する、方法を提供する。1つの実施形態では、前記少なくとも1つの神経精神症状は、抑うつ、不安、食欲変化、興奮、アパシー、脱抑制、睡眠障害、アパシー及び発揚からなる群から選択される、あるいは選ばれる。1つの実施形態では、前記認知症は、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン症型認知症からなる群から選ばれる、あるいは選択される。
本発明の態様では、前記治療期間は、少なくとも約12週、少なくとも約24週、少なくとも約48週、又は少なくとも約78週である。本発明の実施形態では、前記治療期間は、少なくとも約48週である。本発明の別の実施形態では、前記治療期間は、少なくとも約78週である。
1つの態様では、本発明は、認知症を有する患者において、少なくとも1つの存在する神経精神症状の進行を遅延させる方法であって、少なくとも78週の治療期間にわたり、有効量のシロ−イノシトール又は有効量のシロ−イノシトールを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含み、ここで前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値と比べて、少なくとも1つの存在する神経精神症状の進行を遅延させる、方法を提供する。1つの実施形態では、前記認知症は、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン型認知症から選択され、あるいは、からなる群から選ばれる。特定の実施形態では、前記認知症は、中等度の又は重度のアルツハイマー病である。
本発明の特定の実施形態では、前記シロ−イノシトールの有効量は、約250mgである。本発明の特定の実施形態では、シロ−イノシトール又はシロ−イノシトールを含む医薬組成物は、1日2回投与される。
図1は、軽度のm−ITT集団(MMSE:22〜26)について示される、78週の研究にわたり新規にNPSを発症した患者の集団のグラフである。
図2A及びBは、ベースライン及び78週における様々なNPI症状の有病率のプロットである:プラセボ(図2A)及び250mg群(図2B)。 同上
図3は、プラセボ群における、有病率の減少の順に示される、試験の間の任意の時間において新規に出現したNPI症状の有病率のプロットである(軽度のMMSE:22〜26)。
図4は、中等度のm−ITT集団(MMSE:16〜21)について示される、78週の研究にわたり、新規にNPSを発症した患者の集団のグラフである。
図5は、プラセボ群において、有病率の減少の順に示される、試験の間の任意の時間において、新規に出現した、試験の間の任意の時間において新規に出現したNPI症状の有病率のプロットである(中等度のMMSE:16〜21)。
図6は、MR分光法によりミオ−イノシトール及びシロ−イノシトール脳レベルに関するシロ−イノシトールの効果のグラフである(左にミオ−イノシトール。右にシロ−イノシトール)。
図7は、血漿、脳及びCSF中の最高薬物濃度(Cmax)と、CSF Aβ42/40比の相関関係のプロットである。低い比(即ち、より原線維を形成する形態(fibrillogenic form)であるAβ42が優性でない)は、臨床的に有利であると仮定される。
図8A及び8Bは、シロ−イノシトール血漿曝露(血漿AUCの四分位数)及び情動性症状の出現の可能性の関係性のグラフである。 図8A及び8Bは、シロ−イノシトール血漿曝露(血漿AUCの四分位数)及び情動性症状の出現の可能性の関係性のグラフである。
図9は、ベースライン(標識されたスクリーニング)、250mg bid、及び1000mg bidで24週における、シロ−イノシトール及びミオ−イノシトールのレベルを示すMRS脳スキャンの4つのプロットである。
発明の詳細な説明
本開示の特定の態様を、より詳細に下記に記載する。本願に用いられ、本明細書で明確化、又は指定される用語、定義、及び略語は、本開示内の意味を表すことを意図する。本明細書で言及される特許及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる用語及び/又は定義と矛盾する場合、本明細書で提供される用語及び定義が支配する。
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が他に指示しない限り、複数の基準を含む。
用語「おおよそ」及び「約」とは、言及される数字又は値とほぼ同一であることを意味する。本明細書で用いられるように、用語「おおよそ」及び「約」は、特定された量、頻度、又は値の±10%を含むものと一般的に理解されるべきである。特定の値に関して、対象集団について本明細書で記載される特定の値(例えば、記載される臨床試験の対象)は、他に示されない限り、平均値を表すことは、理解されるべきである。従って、対象における特定の値を要求する本開示の態様は、関連値が対象集団の意味のある限界に関連する集団データにより、本明細書で実質的に支持される。
臨床試験又は臨床試験の設計に関連して用いられる「群」又は「試験群」とは、臨床試験において評価される特定の治療計画を意味し、用量範囲決定臨床試験において、予め決められた患者の組により行なわれる様々な投与量及び/又は投与頻度により通常特徴付けられる。
「Aベータ」又は「AB」又は「Aβ」とは、AD患者の脳中にプラークを形成するベータアミロイドペプチドを意味し;「Aベータ」、「AB」又は「Aβ」に続く40又は42の数字は、ABペプチドを含むアミノ酸の数を意味する。AB42は、プラーク形成に最も関連するとみられており、それ故、推論により脳病理に関連する。
「BID」又は「bid」とは、1日2回の投与を意味し、量に先行する場合、これは、1日の異なる時間において、量が2回投与されることを意味する。
「ベースライン」とは、試験薬物の投与が開始される前の患者の健康状態及び/又は精神状態、並びにこれに関する測定値を意味する。
「CSF」とは、脳脊髄液を意味する。
「LTP」とは、長期の症状効果を意味し、記憶形成の実験モデルとして用いられる。Bliss TV, et al., (1993). "A synaptic model of memory: long-term potentiation in the hippocampus". Nature 361 (6407): 31-39。
「m−ITT」とは、最大の解析対象集団(FAS)としても称される改変された包括解析集団として定義され、初期治療目的(又は研究設計)に基づくが、最終的に投与される治療に基づかない、これらの患者である。
「PPS」とは、パー・プロトコル・セット(Per Protocol Set)として定義され、第二相試験を完了し、これらの投与量レベル(50、1000、又は2000mg BID)に割り当てられる薬物用量の少なくとも80%を受けた対象の数である。
「MMSE」とは、認知障害についてスクリーニングするために用いられる30点の簡易質問試験である、ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination)である。これは、認知症についてスクリーニングするための治療に一般的に用いられる。これはまた、所望の時点、及び別々の時間おける認知変化の経過に従って、認知障害の重症度を見積もるために用いられ、従って、治療に対する個別の認知応答を表す有効な方法である(例えば、Folstein MF et al, 1975, Journal of Psychiatric Research 12 (3): 189-98.を参照のこと)。
「MRS」とは、脳のイメージのスキャニング、及び脳中の化合物の測定に適用される磁気共鳴分光法である。
「プラセボ」とは、活性医薬成分を欠く、対照群患者、即ち試験される治療を受けない患者に、二重盲検臨床試験において投与される丸薬又は他の投与形態を意味する。
シロ−イノシトールは、イノシトールのいくつかの内在する立体異性体の1つである。より多く内在するイノシトールであるミオ−イノシトール(MI)は、浸透圧調節、及びホスファチジル−イノシトール(PI)セカンドメッセンジャーシグナル伝達に重要な役割を果たしている。ミオ−イノシトールは、成人の脳中で約4〜5mMの細胞内濃度で発見される一方で、シロ−イノシトール濃度は、通常<1mMである。ミオ−イノシトールとは異なり、シロ−イノシトールは、リン酸化されず、あるいはPIシグナル伝達に直接関与していないと考えられる。
ADの前臨床試験は、動物モデルにおいて測定され得る程度の記憶及び論理的思考に、並びにより直接的に測定可能な結果、例えば動物及び細胞の長期の増強の及びプラークバーデンの維持又は改善に関するシロ−イノシトールの有益な効果に注目した。ADのトランスジェニックマウスに対して経口で与えた場合、シロ−イノシトールは、脳中のアミロイドβペプチドの凝集を阻害し、いくつかのAD様表現型を改善する。トランスジェニックマウスでは、シロ−イノシトールは、脳Aβ濃度、及びプラークバーデンを減少させ、シナプス密度を保護し、そして学習障害を改善した。シロ−イノシトールはまた、オリゴマー誘導シナプス喪失、及び樹状密度、LTP阻害、及び記憶/学習障害の改善を含む、Aβオリゴマーの毒性効果を中和するように見える。
シロ−イノシトールは、アルツハイマー病の認知症状の治療のための第二相臨床試験を完了している。該試験は、NPI−12項目尺度を用いた神経心理学的評価及び磁気共鳴分光法(MRS)を用いたシロ−イノシトール(SI)及びミオ−イノシトール(MI)脳レベルの評価を含んだ。MRSデータは、シロ−イノシトールの用量依存的な増加、及びミオ−イノシトールレベルの予期しない対応する用量依存的な減少を示し(図6及び9);これらの変化は、著しいが、24週において準最大であり、約48〜約78週において最大のレベルに達する。3つの試験された用量において測定されたミオ−イノシトール最大の減少は、250mg、1000mg、及び2000mg bid用量において、それぞれ44%、66%、及び60%であった。任意の特定の理論に拘束されないが、シロ−イノシトールは、そのトランスポーターによる活性なミオ−イノシトール再取り込みを競合的に阻害すると考えられる(Sodium-Sensitive myo-inositol transporter, Wiesinger, 1991, J Neurochem, 56(5): 1698-704)。神経精神病指標結果に関するシロ−イノシトールの有益な効果は、少なくとも部分的には、ミオ−イノシトール脳レベルの下方制御に基づくようにみえる。ミオ−イノシトール減少の最適な範囲は、ベースラインから、約20〜約55%、又は約25%〜約45%、又は約25%〜約35%であるようにみえる一方で、約60%以上のミオ−イノシトール減少は、臨床的利益の喪失、及び恐らくは有害なCNS事象に関連するように見える。
脳機能障害における、増加した脳中のミオ−イノシトールの重要な役割は、標準的な年齢のMCI及びADにおけるMRS測定によりさらに支持される。上昇したミオ−イノシトールレベルは、認知低下により測定される疾患のステージと強い相関性を示した(ミオ−イノシトールレベルは、MCIよりもADにおいて、そして標準的な年齢の対象よりもMCIにおいて、著しく高い)。従って、本明細書に記載されるシロ−イノシトールの使用により、ミオ−イノシトールの脳レベルを低下させる方法は、患者、例えばミオ−イノシトールが上昇する認知症患者、又はダウン症候群患者において、そしてミオ−イノシトール減少が気分を安定化する治療的効果を有することが示されている双極性障害において、ミオ−イノシトールの脳レベルをより標準的な脳レベル(即ち、非認知症、非−MCI、又は非−軽度のアルツハイマー病の対象において臨床的に観察される範囲)に下方制御、及び維持するのに有用である。
シロ−イノシトールの患者への投与が、かかる患者の脳中のミオ−イノシトールのレベルを下方制御し(即ち、減少させ)、そして神経精神症状(NPS)の出現を遅延させ、そして神経精神症状(NPS)の程度を低減するという予期しない発見に基づいて、本発明は、一態様において、対象の脳中のミオ−イノシトールのレベルを減少させる方法であって、有効量のシロ−イノシトールを対象に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、前記対象は、ヒトの患者である。特定の実施形態では、前記患者は、認知症を有する。特定の実施形態では、前記患者は、アルツハイマー病を有する。特定の実施形態では、前記患者は、22〜26のMMSEを有する軽度のアルツハイマー病を有する。特定の実施形態では、前記患者は、16〜21のMMSEを有する中等度のアルツハイマー病を有する。特定の実施形態では、前記患者は、軽度の認知障害を有する。特定の実施形態では、前記患者は、認知症を有しない。特定の実施形態では、前記患者は、アルツハイマー病を有しない。特定の実施形態では、前記患者は、軽度の認知障害を有しない。
本発明の別の態様では、患者において、疾患又は症状を治療する方法であって、前記疾患又は症状は、高いミオ−イノシトールレベルにより媒介され、有効量のシロ−イノシトールを前記対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態では、前記対象は、ヒトの患者である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、双極性障害である。別の特定の実施形態では、前記疾患又は症状は、双極性疾患又は障害のサブタイプである。特定の実施形態では、前記疾患又は症状は、I型双極性障害である。特定の実施形態では、前記疾患又は症状はII型双極性障害である。特定の実施形態では、前記疾患又は症状は、混合性双極性障害、急速交代型双極性障害、軽躁病、気分循環症、急性躁病、薬物誘発性躁病、又は薬物誘発性軽躁病である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、片頭痛である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、総合失調症である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、アルツハイマー病に関連した興奮である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、アルツハイマー病に関連しない興奮である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、ダウン症候群である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、患者がAβ関連神経変性に罹患していない、ダウン症候群である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、片頭痛である。特定の実施形態では、患者における片頭痛を予防する方法であって、有効量のシロ−イノシトールを対象に投与することを含む方法を提供する。
本発明の1つの態様では、双極性状態疾患又は障害を治療する方法であって、対象の脳中のミオ−イノシトールレベルを減少させるのに有効的なシロ−イノシトールの量を、これらの必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。本発明の実施形態では、ミオ−イノシトールの量は、投与前のベースライン測定値から、少なくとも約20%、30%、40%、50%又は60%、特に約20%〜約50%まで減少する。
本発明の別の態様では、対象において、神経精神症状(NPS)を治療する方法であって、前記対象に有効量のシロ−イノシトールを投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、前記NPSは、双極性障害である。特定の実施形態では、前記疾患又は症状は、勃起不全である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、重度の気分調節不全である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、慢性疼痛症候群である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、アパシーである。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、異常運動行動である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、食欲不振である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、幻覚である。別の実施形態では、前記疾患又は症状は、発揚である。
シロ−イノシトールの「有効量」又は「治療的有効量」とは、患者における所望の治療又は予防効果、例えば、本明細書に記載の疾患又は障害の重症度又は出現頻度の低減を提供するシロ−イノシトールの量又は用量を意味する。1つの実施形態では、有効量のシロ−イノシトールは、患者の脳中のミオ−イノシトールのレベルを減少させるのに要求される量である。特定の実施形態では、有効量のシロ−イノシトールは、患者の脳中のミオ−イノシトールのレベルを、投与前のベースライン測定値から60%未満減少させるのに要求される量である。特定の実施形態では、有効量のシロ−イノシトールは、患者の脳中のミオ−イノシトールのレベルを、投与前のベースライン測定値から約20%〜約55%、約20%〜約50%、約25%〜約45%、又は約25%〜約35%まで減少させるのに要求される量である。好ましい実施形態では、有効量のシロ−イノシトールは、患者の脳中のミオ−イノシトールのレベルを、投与前のベースライン測定値から約20%〜約50%まで減少させるのに要求される量である。有効量のシロ−イノシトールは、例えば特定の疾患又は障害、患者の年齢、性別、及び体重等の因子に従って、変更することができる。投与計画は、最適な治療反応を提供するために調節されてもよい。例えば、いくつかの分けられた用量が、毎日投与されてもよく、前記用量は、治療状況の緊急性により、示されるように、比例的に減少させてもよい。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、約1mg〜約5000mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、約10mg〜約2000mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約100mg〜約1500mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約150mg〜約1300mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約200mg〜約1200mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約250mg〜約1100mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約300mg〜約1000mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約500mg〜約1500mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約600mg〜約1300mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約700mg〜約1200mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約800mg〜約1100mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約900mg〜約1100mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約1000mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、1000mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、1000mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、約500mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日あたり、500mgである。特定の実施形態では、シロ−イノシトールの前記量は、1日1回投与される。特定の実施形態では、シロ−イノシトールの前記量は、1日2回投与される。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日2回、約250mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日2回、250mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日2回、約500mgである。特定の実施形態では、投与されるシロ−イノシトールの量は、1日2回、500mgである。特定の実施形態では、シロ−イノシトールの前記量は、1日3回投与される。
本発明の方法は、シロ−イノシトールの投与の前、後、又は同時に、他の医薬的に活性な化合物を共投与することも含む。特定の実施形態では、シロ−イノシトールは、神経精神障害を治療するための治療剤と共投与される。特定の実施形態では、シロ−イノシトールは、限定しないが、β−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼ阻害剤、ε−セクレターゼ阻害剤、β−シート凝集/原線維形成/ADDL形成の他の阻害剤(例えば、アルツヘメド)、NMDAアンタゴニスト(例えば、メマンチン)、非ステロイド性抗炎症性化合物(例えば、イブプロフェン、セレブレックス)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、栄養及び食品補助剤(例えば、イチョウ(Gingko biloba))、スタチン及び他のコレステロール低下薬(例えば、ロバスタチン及びシンバスタチン)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル(donezepil))、ムスカリンアゴニスト(例えば、AFI 02B(セビメリン、EVOXAC)、AFI 50(S)、及びAF267B)、統合失調症治療薬(例えば、ハロペリドール、クロザピン、オランザピン)、三環系及びセロトニン再取り込み阻害剤を含む抗鬱薬(例えば、SSRI及びSNRS、例えばセルトラリン及びシタロプラムHBr)、スタチン及び他のコレステロール低下薬(例えば、ロバスタチン及びシンバスタチン)、Aβに対する免疫療法及び抗体(例えば、バピネオズマブ)、ワクチン、TAUタンパク質をリン酸化するキナーゼ(CDK5、GSK3−α、GSK3−β)の阻害剤(例えば、塩化リチウム)、Aβ産生を調節するキナーゼ(GSK3−α、GSK3−β、Rho/ROCKキナーゼ)の阻害剤(例えば、塩化リチウム及びイブプロフェン)、ネプリリシン(Aβを分解する酵素)を上方制御する薬物;インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)を上方制御する薬剤;疾患に起因する、又は関連する合併症の治療のために用いられる薬剤、又は副作用を治療又は予防する一般的な医薬を含む更なる治療剤と共投与されてもよい。特定の実施形態では、シロ−イノシトールは、気分安定薬と共投与される。特定の実施形態では、シロ−イノシトールは、リチウム、例えば塩化リチウムと共投与される。特定の実施形態では、シロ−イノシトールは、限定することなく、リスペリドン(例えば、リスペリダール(登録商標))、クエチアピン(例えば、セロクエル(登録商標))及びジプラシドン(例えば、ジオドン(登録商標))を含む抗精神病薬と共投与される。1つの実施形態では、シロ−イノシトールは、フェノチアジン、チオキサンテン、及び特に、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、オランザピン、クロザピン、ジプラシドン、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオロペラジン、チオチキセン(thiothixine)、モリンドン、ロキサピン、リスペリドン、アリピプラゾール(aripirazole)、及びアミスルピリドから選択される抗精神病薬と共投与される。1つの実施形態では、シロ−イノシトールは、アリピプラゾール(abripiprazole)、アミスルプリド(arisulpride)、クロザピン、フマル酸クエチアピン、ハロペリドール、コハク酸ロキサピン(ロキサパック、ロキシタン)、クロチアピン、メチアピン、ゾテピン、塩酸モリンドン、オランザピン、パリペリドン、ピモジド、プロクロルペラジン(コンパジン、ブッカステム、ステメチル又はフェノチル)リスペリドン、トリフルオペラジン、ズクロペンチキソール(クロピクゾール)、及びこれらの組み合わせから選択される抗精神病薬と共投与される。1つの実施形態では、シロ−イノシトールは、リチウム、バルプロ酸ナトリウム/バルプロ酸/ジバルプロエクス、カルバマゼピン、ラモトリギン、ガバペンチン、トピラマート及びチアガビンから選択される気分安定薬抗精神病薬と共投与される。
1つの実施形態では、シロ−イノシトールは、前述の治療剤を含む組成物として投与される。1つの実施形態では、本発明は、シロ−イノシトール、及び1又は複数の第二の治療剤を含む医薬組成物を提供する。実施形態によっては、前記組成物は、前記組成物は、準治療的用量(例えば、全用量の約25%、20%、15%、10%、5%、2%、1%以下である用量)で1又は双方の活性剤を含む。組成物は、対象による消費のための形態、例えば丸薬、錠剤、カプレット、軟及び硬ゼラチンカプセル、トローチ剤(lozenge)、サシェ剤(sachet)、カシェ剤(cachet)、ベジキャップ(vegicap)、液滴、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体又は液体媒体として)、座薬、滅菌注射溶液、及び/又は滅菌包装粉末でもよい。
シロ−イノシトールを含む医薬組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤、又はビヒクルを含んでもよい。医薬的に許容される担体、賦形剤、又はビヒクルとは、一般的に、活性成分の有効性又は活性に干渉せず、そしてそれが投与される宿主に対する毒性がない、媒体を意味する。担体、賦形剤、又はビヒクルとしては、希釈剤、結合剤、接着剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、湿潤剤、又は乳化剤、pH緩衝剤、及び種々の材料、例えば特定の組成物を調製するために必要とされ得る吸収剤が挙げられる。担体等の例としては、限定しないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。活性物質のための係る媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野においてよく知られている。本発明に用いるための組成物及び製剤は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2005;Martindale: The Complete Drug Reference, Sweetman, 2005, London: Pharmaceutical Press;Niazi, Handbook of Pharmaceutical Manufacturing Formulations, 2004, CRC Press;及びGibson, Pharmaceutical Preformulation and Formulation: A Practical Guide from Candidate Drug Selection to Commercial Dosage Form, 2001 , Interpharm Pressに見出されてもよく、これらは、参照により、本明細書に組み込まれる。
シロ−イノシトールは、様々な従来の合成又は半合成技術により調製されてもよく、ココヤシから天然物として単離されてもよい。特定の実施形態では、シロ−イノシトールは、国際公開第2005035774号及び国際公開第2011100670号に記載の方法により調製され、この全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
実施例
軽度〜中等度のAD(MMSE 16〜26)を有する患者における、第2相の、2群間の、用量範囲探索の、プラセボ対照の、二重盲検の、多施設治験において、シロ−イノシトールを、即時放出錠剤で各試験群について準備された投与量レベルで1日2回、試験対象に投与し、あるいは同一に見えるプラセボ錠剤を対照群に投与した。前記試験は、全体的な軽度及び中等度の集団において、共主要認知及び機能評価項目である心理テストバッテリー及びアルツハイマー病共同研究−日常生活動作尺度(それぞれNTB及びADCS−ADL)において、統計学的に有意な恩恵を示さなかったが、軽度のAD患者の予め特定された群において、励みとなる傾向が存在した。前記試験は、NPI−12項目尺度を用いた神経心理評価、及び磁気共鳴分光法(MRS)を用いたシロ−イノシトール(SI)及びミオ−イノシトール(MI)脳レベルの評価を含んだ。
試験薬物は、プラセボ、又は3つの用量のシロ−イノシトール(SI):250mg、1000mg及び2000mgのうち1つを投与し、各用量は、250mg又は1000mgのいずれかのカプセルとして、1日2回(bid)与えられた。
MRSデータは、シロ−イノシトールの用量依存的な増加、及びミオ−イノシトールレベルの予測されない対応する用量依存的な減少を示し(図6及び9)、これらの変化は、著しく、24週において準最大となり、約48〜約78週において、最高レベルに達する。3つの試験された用量において測定された最大のミオイノシトール減少は、250mg、1000mg、及び2000mg bid用量において、それぞれ、44%、66%、及び60%であった。
この試験では、250mg bid用量のシロ−イノシトールは、プラセボ、及び2つの高い用量と比べて、いくつかの臨床評価項目に関して、最も大きな(肯定的な)治療効果を示した(データは下記の欄で示される)。脳脊髄液(CSF)Aβ42減少(ベースラインと比べて約27%)に関する250mg用量の効果は、統計学的に有意であったが、高い用量は、更なるAβ42減少を提供するように見えた。CSF Aβに関するシロ−イノシトールの用量依存的な効果にも関わらず、2つの高い用量は、臨床的主要評価項目に関して、250mg用量と同様の効果を生じた。CSF Aβ42に関する用量依存的な効果と臨床的に測定されるNPIの結果のこの観察された解離は、シロ−イノシトールの臨床的効果が、2つの異なる機構により媒介されているという概念を支持する。これらの機構は、1.脳のアミロイド負荷及び先に開示されているその結果生じるシナプス毒性の減少は、記憶及び論理的思考/問題解決に影響を与えるが、NPSには影響を与えないこと、並びに2.第二の有益な効果を有する脳のミオ−イノシトールレベルの下方制御が、ニューロン機能に影響すること(Machado-Vieira et al. 2009)を含む。シロ−イノシトール投与後のミオ−イノシトール及びシロ−イノシトールのインビボでの脳レベルを測定する他のMRS研究は、トランスジェニックマウスにおいてのみである(Choi, et al. 2010, Neuropharmacology, 59(4-5): 353-357)。Choiの研究は、処置されたマウスの前頭皮質及び海馬において、統計学的に有意に異なるシロ−イノシトールのレベルを示し、海馬においてより高いレベルが見出され、そして、前頭皮質及び海馬において、むしろ控えめな、有意でないミオ−イノシトールの減少を示したが、もっとも、マウスに投与されるシロ−イノシトール用量を、本明細書で報告されるヒト用量と、意味深く比較することは可能ではない。第二相試験のデータの詳細を以下に記載する。
第二相臨床データの概要
本研究は、軽度及び中等度のAD患者(16〜26のMMSEスコア有するとして定義される)における用量決定試験であり、bidで与えられる3つの用量(250mg、1000mg、及び2000mg)のシロ−イノシトール及びプラセボを含んだ。前記研究は、78週の継続期間であり、及び合計で353人の患者が登録され、351人が試験薬物を受けた(安全集団)。2つの高い用量群における安全性の発見に起因して、これらの2つの群は中断され、該研究の最終的な有効性分析は、250mg及びプラセボ群にのみ基づく。第一の有効性分析は、主要有効性分析は、集団(軽度及び中等度)全体に基づいたが、統計解析計画書(SAP)は、疾患重症度によるサブ群分析を含み、MMSE 23〜26を含む軽度の患者、及び16〜22を含む中等度の患者を定義した。全体の試験集団において、合計を全て4つの用量群=353にランダム化し、試験薬物を受ける合計=351(任意の用量において安全集団)であった。プラセボ及び250mg群について、全体のm−ITT(改変された包括解析)=166であり、PPS(パー・プロトコル・セット)=96であった。それぞれの予め特定されたサブ群における患者の数を、表1に示す。
表1.プラセボ及び250mg群における対象の区分:軽度(MMSE 23〜26)及び中等度(MMSE 23〜26)を含む。
Figure 2014515408
m−ITT集団全体における2つの共主要評価項目は、試験の終了時(78週)に統計学的有意性を達成しなかった。しかしながら、試験を終了し、そして試験薬剤に少なくとも80%適合した患者(パー・プロトコル対象)において;NTB(神経心理検査バッテリー−認知評価項目)は、250mg群(図2)に選択的に、数値的な有用性を示した(図2)。250mgの程度は、NTBに作用し、統計学的に有意でないが、臨床的に重要であった(プラセボと比べて0.15又は40%有益)。中等度のサブ群において、認知又は機能的臨床評価項目に関する一貫した否定的又は肯定的な傾向は見られなかった。
予め定義された軽度のサブ群(MMSE:23〜26)は、臨床的に関連する薬物に選択的にNTB差異を示し、パー・プロトコル解析において、統計学的有意性に達した(表1を参照のこと)。2つの機能的結果指標である、アルツハイマー病共同研究―日常生活動作尺度(ADCS−ADL)(共主要評価項目)及び臨床的認知症判定尺度−項目合計(CDR−SB)(第二の評価項目)はまた、臨床的に有益な薬物に選択的に数値的な差異を示した(表2)。全ての臨床的な結果指標についての値は、ベースラインからの正の変化が改善を示し、そしてプラセボからの正の差異が薬物の有益性を示すように計算された。
表2.250mg 軽度の群(MMSE:23〜26を含む)における臨床的結果指標の概要
Figure 2014515408
感受性分析を、大きいサンプルサイズを有する軽度のサブ群(MMSE:22〜26を含む)の広い定義を用いて、事後に行った。感受性分析では、NTBスコアに関する250mgの肯定的な効果は、m−ITT解析において有意(p<0.1)な傾向に近づき(表3)、PP解析において、有意(p<0.05)であった(社内資料)。この250mg群は、ADCS−ADLに関して数値的に大きい利益を示し;そしてCDR−SB効果はまた、大きく、有意な傾向に近づいた(p=0.1、表3)。これに基づいて、本明細書に示される全ての更なる解析は、軽度及び中等度のサブ群において、22〜26(軽度)及び16〜21(中等度)を含むMMSEスコアを有する患者として、定義される。
表3.MMSE:22〜26対23〜26により定義されるm−ITT 250mg軽度の群における臨床的結果指標の概要
Figure 2014515408
特に、この試験における患者の大部分(全ての用量群の約90%)は、コリンエステラーゼ阻害剤、メマンチン、又は双方を含む、対症的なAD薬物で既に治療されていた。加えて、全ての患者の約50%は、恐らくはBPSDについて向精神薬で治療されており、治療された対象の集団は、プラセボと250mg群の間で同様であった(社内資料)。AD及び向精神薬は、NPSに関してともに幾らか効果を有し得るので、シロ−イノシトールの効果は、バックグラウンド処置にも関わらず、表われた。NPSのプロファイルは疾患の重症度により変わるので、NPSに関するシロ−イノシトールの効果は、軽度及び中等度のサブ群において、別々に記載される。
軽度のAD(MMSE:22〜26)における神経精神病プロファイルに関するシロ−イノシトールの効果
ベースラインにおける軽度のサブ群についての平均の神経精神症状評価(NPI)合計スコアは、プラセボ及び250mg群それぞれについて、7.1及び10.7であった(中央値:3.0及び4.0)。プラセボ群では、生NPIスコアは、78週にわたり、4.5ポイント増加(悪化)した。m−ITT分析において、250mg群は、プラセボと数値的な差異のみ示したが(プラセボと比べて、約2ポイント又は44%有益)、PP分析における治療効果の方向性は、反対の方向であった(そして、いずれも統計学的に有意でない)。ベースラインにおける低いNPIスコアは、NPI尺度に関する「床面効果」に起因して、軽度の患者における潜在的な治療利益の例証を困難にする。軽度のAD患者において、時間とともに新たなNPSが進行的に現れることは知られているので、より適切な分析は、新たなNPSの出現に関する治療効果を評価することである。
潜在的な疾患修飾薬は、局所的なニューロン機能障害を改変することにより、NPI結果により定量されるように、異常行動の出現の予防又は遅延し得る。NPI症状は、ベースラインにおけるそのスコアが0であり、その後の通院において>0になる場合、新たに生じたと考えられる。新たなNPSの出現に関する(78週にわたる、少なくとも1、2、3、又は4つの新たなNPSについて)250mg用量の効果を、図1に示す。78週にわたり少なくとも2つの新たな症状を発症した患者の集団は、プラセボに対する250mg群において、21.5%低かった(p<0.05)。
治療の前、及び終了時において、軽度の患者に現れる最も一般的なNPSの性質を理解するために、各NPI項目の有病率を、ベースライン及び試験の終了時において示す(図2A)。アパシー、易刺激性、不安、興奮、食欲及び睡眠変化(夜間行動)の有病率は、試験の終了時にプラセボ群において増加した。250mg群では、これらの症状の有病率は、10%の増加を示した易刺激性を除いて、安定していた(図2B)。この軽度の群において、同様の数のシロ−イノシトール及びプラセボ対象が、有害事象として、易刺激性を報告し;そしてこれらの対象のうち、易刺激性により試験を中止した対象はなかった(社内資料)。これは、250mg群において、易刺激性の有病率の小さな増加が、臨床的に有意な発見をもたらさなかったことを示す。
いくつかのNPSは、特にADの軽度のステージにおいて、経過は変動することが知られており、それ故、78週の研究において、出現しても消失してもよい。それ故、試験の間の任意の時点において、新たなNPSの出現の評価はまた、因子である(図3)。
図3に示すように、抑うつ及び不安、並びに食欲変化及び興奮は、中でも最も一般的に出現する症状であり;250mgのシロ−イノシトールは、これらの症状及びアパシーの出現を減少させる。患者は、しばしば、同一の基礎をなす皮質性機能障害の発現である様々な症状(症状クラスター)を発症するので、これらのクラスターは、特定の行動性症候群を構成する。
症状クラスターに関する効果:NPI症状クラスターの出現までの時間に関するシロ−イノシトールの効果を、カプラン・マイヤーの生存分析を用いて行なった。加えて、症状の重症度の低減に関するシロ−イノシトールの効果(クラスタースコアのベースラインからの変化)を、行なった。両分析の結果を表4に示す。
各クラスタースコアは、ベースライン差異について調節する反復測定混合モデルにより分析された、その個別の項目スコアの和である。この分析のために、該クラスター及びこれらの中核症状は、情動性クラスター(抑うつ及び不安)、精神病クラスター(妄想及び幻覚)、実行機能不全又は前頭クラスター(脱抑制及び発揚)、多動性クラスター(中核症状:異常運動及び異常夜間行動)、並びに第二のクラスターとしてアパシーとして定義された。
表4.軽度のADにおけるNPS症候群の出現までの時間(カプラン・マイヤー解析)及びクラスタースコア(混合効果反復測定解析)に関するシロ−イノシトールの効果
Figure 2014515408
表4に示すように、この軽度の集団において最も一般的に出現するクラスターは、情動性症状群である。情動性クラスターのこの基本的な定義を用いて、シロ−イノシトール250mg用量は、この症候群の出現を遅延させる傾向を示した(p<0.1)。このクラスターについてのスコアはまた、プラセボ群と比べて、治療により改善した(0.65改善)。
ADにおいて、症状クラスターを調査した公開された研究は、可変の方法を用い、そして該サンプル集団は、参照の起源(臨床対象に対して公衆)、疾患重症度、及び(AD及び向精神薬の双方の)投薬使用の程度により異なった。結果として、これらのデータは、臨床試験集団により関係し得るので、本試験集団に基づく因子分析を行なった。本試験の因子分析は、ベースラインNPIデータ(n=351)を含む全ての患者を含んだ。因子解析において、バリマックス手順は、最も一般的に用いられる方法であり;約300〜500のサンプルサイズは、優れた信頼性を提供すると考えられる(Comrey and Lee, 1992, A first course in factor analysis, Hillsdale, New Jersey: Erlbaum)。バリマックス回転手順は、以下の因子が、0.4以上の値を有し、従って、クラスターにおける重要な因子であると考えることができることを明らかにした(社内資料)。
情動性:抑うつ、不安、興奮、夜間行動、食欲変化、及びアパシー。
精神病:妄想及び幻覚。
前頭葉又は遂行機能障害:発揚/多幸及び脱抑制。
本研究の因子解析は、それ故、「情動性症状群」を除いて、(先に述べた)公開された研究と同様の結果を生じた。本結果と先の研究との主な差異は、食欲及び睡眠変化が、情動性症状群に分類される一方で、易刺激性は分類されない点である。これは、いくつかの研究が、食欲及び睡眠変化を含まない10−項目NPIを用いた事実を部分的に反映し得る(概要について:Aalten et al. 2007, The Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neurosciences, 19:50-56, Garre-Olmo et al. 2010, Quality of Life Research 19(3):445-53)。「易刺激性」を情動性症状に分類しないことは、2つの要因:1.試験AD201集団における、易刺激性と抑うつ/不安間の関係を変化させ得る、高い程度の向精神薬使用、及び2.この研究における「軽度の」ADの定義が、多くの先の研究よりもより軽度の患者群を同定したこと(通常、20〜26のMMSEを軽度として定義する)に関し得る。後者の可能性は、REAL−FR研究からのBenoitらの結果により支持され(Benoit et al. 2003, Revue de Medecine Interne 24: 319s-324s)、これは、21における低いMMSEを軽度について定め、本発見と同様に、易刺激性の情動性症状への分類を示さなかった。因子解析では、アパシーは、情動性クラスターを含む境界負荷因子を有する(0.4)。最も近年の研究では、アパシーは、独立した存在であると考えられているが、先の研究の1つ(Aalten et al. 2003, Dement Geriatr Cogn Disord 15: 99-105)では、アパシーを見出し、気分/情動性症状に分類した。
「情動性症状群」スコア及びこの症候群の出現までの時間に関するシロ−イノシトール250mgの効果を表5に示す。情動性症状群スコアは、混合効果反復測定解析(MMRM)及び要約統計の双方により示す。薬物及びプラセボ間(又はベースラインからの変化)の正の差異は、薬物の有用性を示す。
表5.軽度のAD(MMSE:22〜26)を有する患者における、「情動性症状群」の出現及びスコアに関するシロ−イノシトールの効果。この情動性症状群は、研究AD201因子解析に基づく。
Figure 2014515408
MMRM及び要約統計による、スコア変化に関するシロ−イノシトールの効果は、プラセボ群と比べて、それぞれ35%及び91%の改善を表す。MMRMによるスコア変化の解析は、それが2群間のベースライン不均衡を調節するので、より内輪の見積もりである。より包括的なこの情動性症状群の出現までの時間は、小さいサンプルサイズ(プラセボ n=31、250mg n=32)を除いて、有意な傾向に近づく。
様々な解析は、軽度のAD患者の精神病理の負担の減少において、シロ−イノシトール(250mg bid)の有効性を全体として支持する。これらの効果は、7つの一般的に出現する症状の内の6つの出現及び重症度の低減を含む。
これまで、AD対症薬又は抗鬱薬/抗精神病薬の何れも、かかる広い範囲の情動性症状の出現及び重症度の双方に肯定的な効果を示していなかった。軽度のAD患者における肯定的なの認知効果及び優れた安全性/耐容性とともに、行動的利益のこのプロファイルは、この患者集団にとって、シロ−イノシトールが治療となる。
中等度のAD(MMSE:16〜21)における神経精神病プロファイルに関するシロ−イノシトールの効果。
ベースラインにおける中等度のサブ群についての平均NPI合計スコアは、250mg及びプラセボ群それぞれについて、10.0及び9.2である(中央値:双方の群について7)。プラセボ群においてNPIスコアは、78週にわたり約8ポイント進行的に悪化した。中等度のAD患者は、ベースラインにおいて軽度の患者よりも精神病理の著しく高い負荷を有したが、中等度のプラセボ群は、軽度のプラセボ群よりもより悪化した(軽度の患者の速度の二倍より僅かに低い)。中等度の患者において、250mg群は、m−ITT解析においてプラセボと有意な差異を示さなかった。しかしながら、試験を完了した遵守した対象において(PP解析)、250mg群は、約4ポイントプラセボよりも優れた(約50%の改善を示す)。この程度の利益は、統計学的に有意ではないが、臨床的に関連する。
250mg bidにおけるシロ−イノシトールは、中等度のAD患者において、PSの全体的な頻度及び重症度を改善するように見える。どのNPSがこの薬物効果による寄与を最も受けるかを理解するために、いくつかの分析を行なった。これらの分析は、個別の項目スコア、クラスタースコア、及び新規のNPSの出現に関するシロ−イノシトールの効果を調査した。
中等度の群におけるベースラインにおいて最も広く見られるNPSは、最もよく広く見られる上位6つのNPSにおいて、易刺激性が夜間行動に置き換えられることを除いて、軽度のサブ群と同様であった。中等度のAD群では、易刺激性は、僅かに一般的ではなく、異常運動行動及び妄想は、軽度の群よりも、より一般的であった(表6)。
表6.中等度の(MMSE:16〜21)のベースラインにおける上位6つ及び下位6つのNPSの有病率、及び軽度の患者(22〜26)との比較。
Figure 2014515408
中等度の群における新たなNPS(少なくとも1、2、3又は4つの新たな症状)の出現を図4に示す。
図4から、78週にわたり少なくとも2又は少なくとも4つの新たな症状が発病した患者の集団は、250mg群対プラセボにおいて、それぞれ12.4%及び12.1%低かったが、恐らく小さいサンプルサイズのために、統計学的な有意性は得られなかった(p=0.33及び0.34)。
各NPI項目の出現の評価を行い、図5に示す。
図5は、中等度のADを有する患者において多くのNPSの出現が減少したことを例証する。この効果は、疾患のこのステージにおいてより顕著である脱抑制及び睡眠障害について特に強い。疾患進行に伴って悪化することが知られているアパシーの出現は、シロ−イノシトールにより減少するように見える。その低い有病率にも関わらず、脱抑制とともに前頭機能障害の中核の症状である発揚の出現も減少した。しかしながら、易刺激性は、治療とともにより広く見られるようにみえる。易刺激性が有害事象として報告される全ての症例の評価は、気分障害及び/又は不眠症の前病歴にしばしば関連することを明らかにした。易刺激性の症例のいずれも試験中断をもたらさず、これらは、臨床的に関連がないことを示す。
症状クラスターに関する効果:NPI症状クラスターの出現までの時間に関するシロ−イノシトールの効果を、カプラン・マイヤーの生存分析を用いて行なった。治療により出現が遅延する傾向を示す症状クラスターは、PP解析における行動性クラスターであった(異常運動及び夜間行動、p=0.051)。前頭症状(脱抑制及び発揚)の出現までの時間は、恐らく発揚の低い有病率に起因して、起こりうる弱い傾向を示した(p=0.182)。症状の重症度の低減に関するシロ−イノシトールの効果も、MMRM及び要約統計の双方を用いて分析した(クラスタースコアのベースラインからの変化)(表7)。
表7.中等度のADにおけるクラスタースコアに関する(混合効果反復測定解析及び要約統計による)シロ−イノシトールの効果。
Figure 2014515408
表7は、中等度のAD群におけるシロ−イノシトールの効果が、多くのNPS症状の改善により引き起されることを示す。前記効果は、異常な行動性クラスター、情動性クラスター、及びアパシーに関して最も一貫している。
中等度及び軽度のAD群におけるシロ−イノシトールの効果は、各疾患のステージにおいてNPS進行の異なるプロファイルを反映し得るいくつかの差異を示し、ここで軽度の患者は、新たなNPSを多く累積する一方で、中等度の患者は、存在するNPSの更なる悪化を有する。軽度の患者におけるシロ−イノシトールの最も有望な効果は、情動性症状群が広く定義される場合でさえ、新たな情動性症状の出現を遅延させることに関する。中等度の患者では、シロ−イノシトールの効果は、情動性、行動、前頭、及びアパシーの症状を含む様々な症状の悪化を減少させることにより明らかにされる。
本研究は、最も重度の認知症(16未満のMMSE)を有する患者を含まないので、該効果は、中等度〜重度ステージにより特徴的であるNPS、例えば妄想及び幻覚、並びに興奮及び攻撃性の精神症状に関してより有望であり得るとはいえ、これらの患者において、シロ−イノシトールがNPSの重症度を低減する利益を示すことを予測するのは、合理的である。これは、中等度が16〜19のMMSEの丸括弧により定義され、それ故上記の分析された16〜21群よりやや重度のステージに近い、中等度のサブ群に関する感受性分析により支持される。中等度のAD患者の「豊富な」群(MMSE 16〜19)では、精神病クラスター、アパシー、及び異常な行動に関するシロ−イノシトールの効果は、より有望となる。
図6から、1000mg bid及び2000mg bidにおけるシロ−イノシトールの効果は、脳シロ−イノシトールレベルを最大限に飽和し、そして約60〜66%のミオ−イノシトールレベルの最大限の減少を引き起すようにみえる一方で、250mg bid用量は、ミオ−イノシトールレベルの準最大の44%の減少を導き、これは双極性疾患を有する患者に用いられる場合、リチウムの治療用量に関連する約30%の減少と同様である。本研究は、ダウン症候群患者を含まないが、ミオイノシトールの変化の結果として、シロ−イノシトールが、NPSの重症度を低減する利益を示すことを予測することは、合理的である。高いミオ−イノシトールレベルは、ダウン症候群において存在することが知られている(Shetty et al. 1996, Biochem J., 1; 313 (Pt 1):31 -3; Shonk et al., 1995, Magnetic Resonance in Medicine, 33(6): 858-861; Beacher et al., 2005, Arch Gen Psychiatry. 62(12):1360-1365)。
図7に示されるように、≧1000mg bid用量に対応するシロ−イノシトール曝露によるCSF Aβ42の著しい減少を除いて、これらの曝露は、症状クラスターにおけるNPSに関する一貫した利益を示さなかった。これは、ミオ−イノシトール脳レベルの制御が、シロ−イノシトールの治療的利益の媒介において重要な役割を担うという概念を支持する。
図8A及びBに照らして、250mg bid用量(第二の四分値)に対応する血漿AUCは、抑うつ及び/又は不安の出現の著しい減少に関連する一方で、高い曝露は、有意な利益を示さなかった。試験された用量の中でも、250mg bid用量は、Aβ42 CSFレベルの27%の減少、及び/又はミオ−イノシトール脳レベルの44%の減少を導いた。これは、NPIに関する臨床的利益を媒介する効果の最適な範囲であるようにみえる。
要約すると、≧1000mg bidのシロ−イノシトール曝露は、250mg bid用量よりも、乏しい認知及び機能的利益を提供する。これらの高い曝露は、神経精神病の有害事象の増加に関連し得る。250mg bid用量はまた、高齢の試験集団において許容される安全性及び優れたCNS耐容性を例証した。250mg bid曝露の観察は、肯定的な臨床的利益/リスクプロファイルを提供し、そして250mg bid投与(1日合計500mg)は、NPIの遅延、予防、又は減少により例証されるように、治療的に有用なレベルにおいて、CSF Aβ42βを減少させ、かつミオ−イノシトール脳レベルを実質的に下方制御する。
これらのデータは、アルツハイマー病及び他の認知症の治療において、シロ−イノシトールの最適な治療計画を定義することを集合的に助ける。これらのデータは、脳ミオ−イノシトール減少の測定が、様々な認知症集団においてシロ−イノシトールの最適な治療用量を予測又は決定する方法を提供し得ることを提案する。本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に記載される本発明の実施から当業者に明らかである。本明細書及び実施例は、添付の特許請求の範囲により示される本発明の真の範囲及び趣旨を含み、典型例としてのみ考慮されることを意図する。

Claims (30)

  1. 対象の脳中のミオ−イノシトールレベルを減少させる方法であって、前記対象に有効量のシロ−イノシトールを投与することを含む、前記方法。
  2. 認知症、軽度のAD、MCI又は双極性障害の患者の脳中のミオ−イノシトールレベルを下方制御する方法であって、
    治療的に有効な治療期間、前記患者に治療的有効量のシロ−イノシトールを投与することを含み、前記シロ−イノシトールの投与が、患者の脳中のミオ−イノシトールレベルを投与前のベースライン測定値から減少させる、前記方法。
  3. 前記治療的有効量のシロ−イノシトールが、1日あたり約125mg〜約900mgである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記シロ−イノシトールが、1日に2回投与される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記投与が、前記シロ−イノシトールの投与が、前記患者の脳中のミオ−イノシトールレベルを、投与前のベースライン測定値から約20%〜約50%減少させる、請求項1に記載の方法。
  6. 患者において、少なくとも2つの新規の神経精神症状の出現を遅延させる方法であって、
    治療的に有効な治療期間にわたり、前記患者に治療的有効量のシロ−イノシトールを投与することを含み、前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値と比べて、少なくとも2つの新規の神経精神症状の出現を遅延させる、前記方法。
  7. 前記患者が、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、又はダウン症候群型認知症に罹患している、請求項6に記載の方法。
  8. 前記アルツハイマー病型認知症が、軽度又は中等度のアルツハイマー病である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記治療的有効量のシロ−イノシトールが、約250mgである、請求項6に記載の方法。
  10. 前記シロ−イノシトールが、1日に2回投与される、請求項9に記載の方法。
  11. 認知症を有する患者において、少なくとも1つの神経精神症状クラスターの出現を遅延させる方法であって、
    治療的に有効な治療期間にわたり、前記患者に治療的有効量のシロ−イノシトールを含む医薬組成物を投与することを含み、前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値と比べて、少なくとも1つの神経精神症状クラスターの出現を遅延させる、前記方法。
  12. 前記神経精神症状クラスターが、情動性クラスター、精神病クラスター、アパシー、前頭葉発揚及び脱抑制クラスター、行動性クラスター、及びこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記治療的有効量のシロ−イノシトールが、約250mgである、請求項11に記載の方法。
  14. 前記シロ−イノシトールが、1日に2回投与される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記認知症が、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン症候群型認知症から選択される、請求項11に記載の方法。
  16. 前記認知症が、中等度のアルツハイマー病であり、そして前記の少なくとも1つのクラスターが、行動性である、請求項11に記載の方法。
  17. 認知症を有する患者において、少なくとも1つの神経精神症状の重症度を低減する方法であって、
    治療的に有効な治療期間にわたり、前記患者に治療的有効量のシロ−イノシトールを投与することを含み、前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値から、少なくとも1つの神経精神症状の重症度を低減する、前記方法。
  18. 前記少なくとも1つの神経精神症状が、抑うつ、不安、食欲変化、興奮、夜間行動、妄想、幻覚、アパシー、脱抑制、睡眠障害及び発揚から選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記認知症が、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン症候群型認知症から選択される、請求項17に記載の方法。
  20. 前記治療的有効量のシロ−イノシトールが、約250mgである、請求項17に記載の方法。
  21. 前記シロ−イノシトールが、1日に2回投与される、請求項20に記載の方法。
  22. 認知症を有する患者において、少なくとも1つの存在する神経精神症状の進行を遅延させる方法であって、
    少なくとも78週の治療期間にわたり、前記患者に治療的有効量のシロ−イノシトールを投与することを含み、前記治療期間にわたり、前記シロ−イノシトールの投与が、投与前のベースライン測定値から、少なくとも1つの存在する神経精神症状の進行を遅延させる、前記方法。
  23. 前記認知症が、アルツハイマー病型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、及びダウン症候群型認知症から選択される、請求項22に記載の方法。
  24. 前記認知症が、中等度又は重度のアルツハイマー病である、請求項23に記載の方法。
  25. 前記シロ−イノシトールの有効量が、約250mgである、請求項22に記載の方法。
  26. 前記シロ−イノシトールが、1日に2回投与される、請求項25に記載の方法。
  27. 対象の脳中のミオ−イノシトールレベルの減少又は下方制御に、あるいは対象の脳中のミオ−イノシトールレベルを減少又は下方制御するための医薬の調製に、使用のためのシロ−イノシトール。
  28. 対象における神経精神症状の治療に、あるいは対象における神経精神症状の治療のための医薬の調製に、使用のためのシロ−イノシトール。
  29. 認知症、軽度のAD、MCI又は双極性障害に罹患する対象において、神経精神症状の出現の遅延又は重症度の低減に使用のためのシロ−イノシトール。
  30. 前記神経精神症状が、抑うつ、不安、食欲変化、興奮、夜間行動、妄想、幻覚、アパシー、脱抑制、睡眠障害及び発揚から選択される、請求項29に記載のシロ−イノシトール。
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