JP2014510166A - 短行程蒸留を使用する微生物源からのトリグリセリド油の精製 - Google Patents

短行程蒸留を使用する微生物源からのトリグリセリド油の精製 Download PDF

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Abstract

ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量を低減させる方法であって、短行程蒸留下で、ステロール含有微生物油を蒸留することを含み、前記蒸留は、ステロールを含む蒸留物画分および短行程蒸留に供されていないステロール含有微生物油組成物中のステロールの量と比較して低減した量のステロールを有するトリアシルグリセロール含有画分を生成する方法が開示される。

Description

本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる2011年2月11日に出願された米国仮特許出願第61/441,842号明細書の利益を主張する。
本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含有する脂質の精製を対象とする。短行程蒸留(SPD)を使用して、特に、トリアシルグリセロールが濃縮され、少なくとも1つのPUFAを含む微生物油組成物から不所望なステロール(例えば、エルゴステロール)の量を低減させる方法が提供される。
微生物、例えば糸状菌、酵母および藻類は、脂肪酸、グリセロ脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、ステロール脂質およびプレノール脂質を含む種々の脂質を生成する。これらの脂質の一部を、脂質が生成される微生物細胞から抽出することが有利であり、したがって種々の方法が実施されている。
微生物から一般に抽出される脂質の1つのクラスは、グリセロールの脂肪酸エステル(「トリアシルグリセロール」または「TAG」)を含むグリセロ脂質である。TAGは、脂肪酸についての一次貯蔵単位であり、したがって長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ならびに短鎖飽和および不飽和脂肪酸および長鎖飽和脂肪酸を含有し得る。PUFA、例えばエイコサペンタエン酸[「EPA」;ω−3]およびドコサヘキサエン酸[「DHA」;ω−3]を医薬品および食品に含めることへの関心が高まっている。したがって、PUFAを含む脂質組成物を効率的におよびコスト効率的に抽出、リファインおよび精製する手段が、特に望まれる。
多くの典型的な脂質単離手順は、微生物細胞の破砕(例えば、機械的、酵素的または化学的手段を介する)、後続の有機または低公害溶媒を使用する油抽出を含む。破砕プロセスは微生物細胞から細胞内脂質を放出させ、それらを抽出の間に溶媒に容易に接近可能とする。抽出後、溶媒を典型的には除去する(例えば、蒸発により、例えば、真空の適用、温度または圧力の変化などによる)。
得られる抽出油は、脂肪体中に蓄積する親油性構成成分が濃縮される。一般に、脂肪体の主要な構成要素は、TAG、エルゴステロールエステル、他のステロールエステル、遊離エルゴステロールおよびリン脂質からなる。脂肪体中に存在するPUFAは、主にTAG、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールおよびリン脂質の構成成分としてであるが、遊離脂肪酸の形態でもあり得る。続いて、抽出油をリファインして高度に精製されたPUFA濃縮TAG画分を生成することができる。精製TAG画分に関する最終規格は、用途依存的であり得、例えば、油を添加剤または補助品(例えば、食料組成物、特殊調製粉乳、動物飼料などにおけるもの)として、化粧または医薬組成物などにおいて使用すべきか否かに依存する。許容可能な汚染物質基準は、自ら課す(特定の汚染物質は、不所望な特性、例えばかすみ/混濁、臭気をもたらす)かまたは外部栄養物審議会(例えば、A Voluntary Monograph Of The Council for Responsible Nutrition(Washington,D.C.),March 2006は、ω−3EPA、ω−3DHAおよびそれらの混合物についての最大の酸、ペルオキシド、アニシジン、TOTOX、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩化ジベンゾフランの値を規定する)により決定される。
特許文献1(GIST−Brocades)は、PUFAを含む微生物油(例えば、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)からのもの)を極性溶媒により処理して溶媒中に可溶性である少なくとも1つのステロール(例えば、デスモステロール)を抽出し、次いでステロールを含有する溶媒の少なくとも一部を油から分離し、油は、1.5%未満のステロール含有率を有する方法を記載している。
特許文献2(Martek)は、微生物バイオマス(例えば、シゾキトリウム(Schizochytrium))からPUFAを含む中性脂肪を回収する方法であって、バイオマスを非極性溶媒と接触させて抽出プロセスにおいて脂質を回収する工程、脂質組成物をリファインおよび/または漂白および/または脱臭する工程、極性溶媒を脂質組成物に添加する工程、混合物を冷却して少なくとも1つの他の化合物(例えば、三飽和グリセリド、リン含有材料、ワックスエステル、飽和脂肪酸含有ステロールエステル、ステロール、スクアレン、炭化水素)を選択的に沈殿させ、次いで脂質組成物からこの不所望な化合物の量を低減させる工程を含む方法を記載している。
米国特許第6,166,230号明細書 米国特許第7,695,626号明細書
従来の方法は、PUFA、具体的には高度不飽和脂肪酸の高温への曝露を回避し、微生物油からエルゴステロール(エルゴスタ−5,7,22−トリエン−3β−オール;CAS登録番号57−87−4))汚染物質の量を低減させる有効な手段として短行程蒸留の技術を利用しなかった。
第1の実施形態において、本発明は、ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量を低減させる方法であって、
a)短行程蒸留条件下で、ステロール含有微生物油を少なくとも1回蒸留すること(前記油は、
(i)1つ以上の多価不飽和脂肪酸を含むトリアシルグリセロール;および、
(ii)少なくとも300mg/油100gのステロール画分;
を含み、
前記蒸留は、ステロールを含む蒸留物画分および短行程蒸留に供されていないステロール含有微生物油組成物中のステロールの量と比較して低減した量のステロールを有するトリアシルグリセロール含有画分を生成する);および
b)場合により、トリアシルグリセロール含有画分を回収すること
を含む方法に関する。
第2の実施形態において、短行程蒸留条件は、30mTorr以下の真空レベルおよび300℃以下の温度におけるステロール含有微生物油の少なくとも1回の通過を含む。
第3の実施形態において、ステロール画分は、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、β−シトステロールおよびデスモステロールからなる群から選択される1つ以上のステロールを含む。
第4の実施形態において、トリアシルグリセロール含有画分中のステロールの量の低減は、ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量と比較して少なくとも40%である。好ましくは、トリアシルグリセロール含有画分中のステロールの量の低減は、ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量と比較して少なくとも70%であり、より好ましくは、少なくとも80%である。
第5の実施形態において、低減したステロール画分を有するトリアシルグリセロール含有画分は、短行程蒸留に供されていないステロール含有微生物油組成物と比較して改善された澄明性を有する。
第6の実施形態において、ステロール含有微生物油組成物は、酵母、藻類、ユーグレナ類、ストラメノパイル、菌類、またはそれらの混合物から得る。好ましくは、ステロール含有微生物油組成物は、モルティエレラ(Mortierella)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)からなる群から選択される属からの油性微生物から得、より好ましくは、ステロール含有微生物油組成物は、多価不飽和脂肪酸の生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア(Yarrowia)細胞の微生物バイオマスから得る。
第7の実施形態において、蒸留工程は、微生物油組成物の2回以上の連続短行程蒸留を含み得る。それぞれの連続短行程蒸留は、直前の短行程蒸留の温度よりも高い温度におけるものであり得る。
生物寄託
以下の生物材料は、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209に寄託され、以下の名称、受託番号および寄託日を有する。
Figure 2014510166
上記列挙した生物学的材料は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に従って寄託された。列挙された寄託株は、指定の国際寄託機関で少なくとも30年間維持され、それを開示する特許の付与に際して公的に入手可能となる。寄託株の利用可能性は、政府の行為により付与された特許権を失墜させて主題発明を実施する認可とはみなされない。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載の方法論に従ってY・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8412から誘導した。同様に、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載の方法論に従ってY・リポリティカ(Y.lipolytica)Y8259から誘導した。
本発明の方法の概要をフローチャートの形態で提供する。具体的には、微生物発酵手順は未処理微生物バイオマスを生成し、それを場合により機械的に加工することができる。未処理微生物バイオマスの油抽出は、残留バイオマスおよび抽出油をもたらす。次いで、短行程蒸留(SPD)条件を使用する抽出油の蒸留が、精製トリアシルグリセリド(TAG)画分(すなわち、SPD精製微生物油)中のステロールの量を低減させる。 以下の(A)pZKUM;および(B)pZKL3−9DP9Nについてのプラスミドマップを提供する。
以下の配列は、37C.F.R.§1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)(WIPO)標準ST.25(1998)ならびにEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、ならびに実施細則第208号および付属書C)と一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データについて使用される記号および形式は、37C.F.R.§1.822に記載の規則に従う。
配列番号1〜8は、表1に指定するとおり、遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム、タンパク質(またはその一部)、またはプラスミドである。
Figure 2014510166
本明細書に引用される全ての特許および非特許文献の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲、好ましい範囲、または好ましい上方値および好ましい下方値の列挙として挙げられる場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の範囲上限または好ましい上方値と、任意の範囲下限または好ましい下方値との任意のペアから形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。本明細書において数値の範囲が引用されている場合、特に記載のない限り、この範囲は、その終点、および範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。本発明の範囲が、範囲を定義する場合において規定の値に限定されることは意図されない。
本明細書において使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」もしくは「含有する(containing)」、またはその任意の他の変形は、非排他的包含をカバーするものと意図される。例えば、要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されるものではなく、表現的に列挙されていないかまたはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、表現的に逆の記載がない限り、「または」は、包含的なまたはを指すかまたは排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つにより充足される:Aは真であり(または存在し)、Bは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在せず)、Bは真である(または存在する)、ならびにAおよびBは真である(または存在する)。
また、本発明の要素または構成成分に先行する不定冠詞「a」および「an」は、要素または構成成分の例の数(すなわち、出現率)に関して非限定的であると意図される。したがって、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、要素または構成成分の単数形の単語形態は、数字が明らかに単数を意味しない限り複数形も含む。
本明細書において使用される用語「発明」または「本発明」は、特許請求の範囲および本明細書に記載の本発明の全ての態様および実施形態を指すことが意図され、いかなる特定の実施形態または態様にも限定されるものと読まれるべきではない。
以下の定義を本開示において使用する:
「二酸化炭素」は「CO」と略す。
「American Type Culture Collection」は、「ATCC」と略す。
「多価不飽和脂肪酸」は、「PUFA」と略す。
「リン脂質」は、「PL」と略す。
「トリアシルグリセロール」は、「TAG」と略す。本明細書において、用語「トリアシルグリセロール」(TAG)は、用語「トリアシルグリセリド」と同義であり、グリセロール分子にエステル化された3つの脂肪酸アシル残基から構成される中性脂肪を指す。TAGは、長鎖PUFAおよび飽和脂肪酸、ならびに短鎖飽和および不飽和脂肪酸を含有し得る。
「遊離脂肪酸」は、「FFA」と略す。
「総脂肪酸」は、「TFA」と略す。
「脂肪酸メチルエステル」は、「FAME」と略す。
「乾燥セル重量」は、「DCW」と略す。
「ミリtorr」は、「mTorr」として略す。
「低減した」という用語は、より小さい量、例えば、元の量よりもほんのわずかに少ない量を有し、または例えば量が規定材料中で完全に欠落すること、および中間の全ての量を含むことを意味する。
本明細書において使用される用語「微生物バイオマス」は、PUFAを含むTAGを含む微生物発酵からの微生物細胞材料を指す。バイオマスは、全細胞、全細胞溶解物、ホモジナイズされた細胞、部分加水分解された細胞材料、および/または破砕細胞の形態であり得る。
用語「未処理微生物バイオマス」は、溶媒による抽出前の微生物バイオマスを指す。場合により、未処理微生物バイオマスは、溶媒による抽出前に少なくとも1つの機械的プロセス(例えば、バイオマスの乾燥、バイオマスの破砕、またはそれらの組合せによる)に供することができる。
本明細書において使用される用語「残留バイオマス」は、溶媒により少なくとも1回抽出された、PUFAを含むTAGを含む微生物発酵からの微生物細胞材料を指す。
用語「脂質」は、任意の脂溶性(すなわち親油性)天然分子を指す。脂質は、多くの重要な生物学的機能を有する多様な群の化合物、例えば細胞膜の構造的構成成分、エネルギー保存源、およびシグナル伝達経路中間体である。脂質はケトアシルまたはイソプレン基のいずれかに、完全にまたは部分的に由来する、疎水性または両親媒性の小分子として広く定義することができる。Lipid Metabolites and Pathways Strategy(LIPID MAPS)分類体系(National Institute of General Medical Sciences,Bethesda,MD)に基づく脂質の一般的概要を以下の表2に示す。
Figure 2014510166
用語「ステロール含有微生物油組成物」は、25℃において液体であり、(i)少なくとも1つのステロール;および(ii)1つ以上のPUFAを含むトリアシルグリセリド(TAG)を含む脂質物質を指す。より具体的には、微生物バイオマスに由来するステロール含有微生物油組成物は、1つ以上のステロールを含む、少なくとも300mg/油100gのステロール画分を有する。
細胞の膜透過性において機能するステロールは、全ての主要な群の生物から単離されているが、単離される優勢なステロールの多様性が存在する。高等動物における優勢なステロールは、コレステロールである一方、β−シトステロールは一般に高等植物において優勢なステロールである(しかし、カンペステロールおよびスチグマステロールを伴うことも多い)。微生物に見出される優勢なステロールに関する一般化は、より困難である。それというのも、組成が特定の微生物種に依存するためである。例えば、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、主に、エルゴステロールを含み、モルティエレラ(Morteriella)属の菌類は、主に、コレステロールおよびデスモステロールを含み、シゾキトリウム(Schizochytrium)属のストラメノパイルは、主に、ブラシカステロールおよびスチグマステロールを含む。ステロール含有微生物油中に見出されることが多いステロールのまとめを以下の表3に示し;対照的に、それらのステロールは、典型的には、魚油中に見出されない。表3のステロールは、ステロール含有微生物油中に存在する場合、高融点およびより低い貯蔵温度において低減した溶解度に起因して微生物油から沈殿する傾向があり、混濁油をもたらす。これらのステロールの濃度を低減させることにより微生物油の不所望な混濁性を最小化することが極めて望ましい。
Figure 2014510166
好ましいステロール含有微生物油は、1つ以上のステロールを含む、少なくとも300mg/油100gのステロール画分を有する。
ステロール含有微生物油組成物は、好ましくは、総脂質中約25%のPUFA、好ましくは、総脂質中少なくとも約30%のPUFA、より好ましくは、総脂質中少なくとも約35%のPUFA、より好ましくは、総脂質中少なくとも約40%のPUFA、より好ましくは、総脂質中少なくとも約40〜45%のPUFA、より好ましくは、総脂質中少なくとも約45〜50%のPUFA、より好ましくは、少なくとも約50〜60%のPUFA、最も好ましくは、総脂質中少なくとも約60〜70%のPUFAまたはそれ以上も含む。
ステロール含有微生物油組成物は、典型的には微生物発酵により提供される微生物バイオマスに由来する。したがって、本発明において有用なステロール含有微生物油組成物は、水を含み得る。好ましくは、油は、10重量パーセント未満の含水率、より好ましくは、5重量パーセント未満の含水率、最も好ましくは、3重量パーセント以下の含水率を有する。
油性生物において、油は総脂質の大部分を構成する。「油」は主としてトリアシルグリセロール(TAG)から構成されるが、他の中性脂肪、リン脂質(PL)および遊離脂肪酸(FFA)も含有し得る。油中の脂肪酸組成および総脂質の脂肪酸組成は、一般に類似しており;したがって総脂質中のPUFA濃度の増加または減少は、油中のPUFA濃度の増加または減少に対応し、逆もまた然りである。
「中性脂肪」は、脂肪体の細胞中に貯蔵脂肪として一般に見出される脂質を指し、細胞のpHにおいて脂質は荷電基を担持しないため、そのように称される。一般にこれらは完全に非極性であり、水についての親和性を有さない。中性脂肪は、一般に脂肪酸とのグリセロールのモノ−、ジ−、および/またはトリエステルを指し、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールもしくはトリアシルグリセロール(TAG)とも称され、または集合的にアシルグリセロールとも称される。アシルグリセロールからFFAを放出するためには、加水分解反応が起きなくてはならない。
用語「抽出油」は、油が合成される細胞材料、例えば微生物から分離された油を指す。抽出油は、広範な方法を介して得られ、最も単純なものは物理的手段のみを伴う。例えば、種々のプレス構造(例えばスクリュー、エキスペラー、ピストン、ビードビーターなど)を使用する機械的圧潰が、細胞材料から油を分離し得る。あるいは、油抽出は種々の有機溶媒(例えばヘキサン、イソヘキサン)による処理、酵素的抽出、浸透圧衝撃、超音波抽出、超臨界流体抽出(例えばCO抽出)、鹸化およびそれらの方法の組合せを介して行うことができる。抽出油のさらなる精製または濃縮は、任意選択である。
「リファインド脂質組成物」という用語は、米国特許出願公開第2011−0263709−A1号明細書に開示される超臨界二酸化炭素(CO)抽出の生成物である微生物油組成物を指す。リファインド脂質組成物は、中性脂肪および/または遊離脂肪酸を含み得る一方、リン脂質を実質的に含まない。リファインド脂質組成物は、American Oil Chemists’Society(AOCS)Official Method Ca 20−99、標題「Analysis for Phosphorus in Oil by Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy」(Official Methods and Recommended Practices of the AOCS,6thed.,Urbana,IL,AOCS Press,2009、参照により本明細書に組み込まれる)により測定して好ましくは、30ppm未満のリン、より好ましくは、20ppm未満のリンを有する。リファインド脂質組成物は、微生物バイオマスの油組成物に対してTAGが濃縮されていてよい。リファインド脂質組成物は、例えば本明細書に記載の短行程蒸留を介するさらなる精製に付して「精製油」を生成することができる。
したがって、本明細書に記載の方法に好ましいステロール含有微生物油組成物は、超臨界CO抽出に由来するリファインド脂質組成物であり、リファインド脂質組成物は、少なくとも1つのPUFAを含むTAGを含み、少なくとも1つのステロールを含む。
「蒸留」という用語は、混合物を沸騰液体混合物中でのそれらの揮発性の差異に基づき分離する方法を指す。蒸留は、単位操作、または物理的分離プロセスであり、化学反応ではない。
「短行程蒸留」(「SPD」と略す)という用語は、極端に高い真空下で操作し、蒸発後に蒸留すべき材料からの揮発性化合物が凝縮表面に短距離のみ移動するようにSPD装置が蒸発器に近接した内部凝縮器を備える分離法を指す。結果として、この分離法からの熱分解は最小である。
「SPD精製油」という用語は、1つ以上のPUFAを含むトリアシルグリセロール画分を含有する微生物油であって、短行程蒸留条件下での少なくとも1回の蒸留のプロセスに付した微生物油を指す。蒸留プロセスは、短行程蒸留前の油のステロール含有量と比較してSPD精製油中のステロールの量を低減させる。
本明細書において用語「総脂肪酸(TFA)」は、例えば微生物バイオマスまたは油であり得る所与の試料中において、(当技術分野において公知の)塩基エステル交換法により脂肪酸メチルエステル(FAME)に誘導体化することができる全ての細胞脂肪酸の総和を指す。したがって、総脂肪酸は、(ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、およびTAGを含む)中性脂肪画分からの、および(ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン画分を含む)極性脂質画分からの脂肪酸を含むが、FFAは含まない。
細胞の「総脂質含有率」という用語は、乾燥細胞重量(DCW)のパーセントとしてのTFAの尺度であるが、総脂質含有率は、DCWのパーセントとしてのFAME(FAME%DCW)の尺度として近似させることができる。したがって総脂質含有率(TFA%DCW)は、例えばDCW100ミリグラム当たりの総脂肪酸のミリグラムに等しい。
総脂質中の脂肪酸濃度は、本明細書においてTFAの重量パーセント(%TFA)、例えばTFA100ミリグラム当たりの所与の脂肪酸のミリグラムとして表現される。本開示において、特に具体的な記載のない限り、総脂質に対する所与の脂肪酸のパーセントへの言及は、%TFAとしての脂肪酸濃度に等しい(例えば総脂質の%EPAは、EPA%TFAに等しい)。
場合によっては、細胞中の所与の脂肪酸含有率をその乾燥細胞重量の重量パーセント(%DCW)として表現することが有用である。したがって例えばエイコサペンタエン酸%DCWは、以下の式に従って求められる:(エイコサペンタエン酸%TFA)(TFA%DCW)]/100。しかしながら、乾燥細胞重量の重量パーセント(%DCW)としての細胞中の所与の脂肪酸含有率は、以下のとおり近似させることができる:
(エイコサペンタエン酸%TFA)(FAME%DCW)]/100。
「脂質プロファイル」および「脂質組成」という用語は同義であり、特定の脂質画分、例えば総脂質中または油中などに含有される個々の脂肪酸の量を指し、その量はTFAの重量パーセントとして表現される。混合物中に存在する個々の脂肪酸の総和は、100になるべきである。
用語「脂肪酸」は、変動する約C12からC22の鎖長の長鎖脂肪酸(アルカン酸)を指すが、鎖長のより長い酸およびより短い酸の両方も公知である。優勢な鎖長は、C16からC22の間である。脂肪酸の構造は「X:Y」(式中、Xは特定の脂肪酸中の炭素[「C」]原子の総数であり、Yは二重結合の数である)の簡易表記体系により表される。「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」(PUFA)、および「ω−6脂肪酸」(「ω−6」または「n−6」)と「ω−3脂肪酸」(「ω−3」または「n−3」)の区別に関する追加的詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,482号明細書に提供されている。
本明細書でPUFAを記載するために使用される命名法を表4に示す。「略記法」と題された欄ではω−基準系を使用して、炭素数、二重結合数、この目的で1番目であるω炭素から数えたω炭素に最も近い二重結合の位置を示す。表の残りは、ω−3およびω−6脂肪酸ならびにそれらの前駆体の一般名、明細書全体を通じて使用される略語、ならびにそれぞれの化合物の化学名をまとめる。
Figure 2014510166
「高レベルPUFA生成」という用語は、微生物宿主の総脂質の少なくとも約25%のPUFA、好ましくは、総脂質の少なくとも約30%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約35%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約40%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約40〜45%のPUFA、より好ましくは、総脂質の少なくとも約45〜50%のPUFA、より好ましくは、少なくとも約50〜60%のPUFA、最も好ましくは、総脂質の少なくとも約60〜70%のPUFAの生成を指す。PUFAの構造形態は限定的でなく;したがって例えばPUFAは、FFAとして、またはエステル化形態、例えばアシルグリセロール、リン脂質、硫脂質または糖脂質で総脂質中に存在し得る。
「油性」という用語は、それらのエネルギー源を油の形態で貯蔵する傾向がある生物を指す(Weete,In:Fungal Lipid Biochemistry,2ndEd.,Plenum,1980)。一般に、油性微生物の細胞油はS字形曲線に従い、脂質の濃度は対数後期または初期静止期においてそれが最大に達するまで増加し、次に後期静止期および死滅期中に徐々に減少する(Yongmanitchai and Ward,Appl.Environ.Microbiol.,57:419−25(1991))。油性微生物がそれらの乾燥細胞重量の約25%を超えて、油として蓄積することは珍しくない。
ステロール含有微生物油組成物は、酵母、藻類、ユーグレナ類、ストラメノパイル、菌類、およびそれらの混合物からなる群から選択される微生物宿主細胞に由来し得る。好ましくは、微生物宿主細胞は油性であり、モルティエレラ(Mortierella)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)からなる群から選択される属のメンバーであり得る。「油性酵母」という用語は、油を生成し得る酵母に分類される微生物を指す。油性酵母の例には、決して限定されるものではないが、以下の属:ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)およびリポマイセス(Lipomyces)が含まれる。
一般に、油性微生物中の脂質蓄積は、成長培地内に存在する全炭素対窒素比に応答して誘発される。油性微生物中で遊離パルミテート(16:0)のデノボ合成をもたらすこのプロセスについては、米国特許第7,238,482号明細書において詳述されている。パルミテートは、エロンガーゼおよびデサチュラーゼの作用を介して形成される、鎖長のより長い飽和および不飽和脂肪酸誘導体の前駆体である。
幅広い脂肪酸(飽和および不飽和脂肪酸、ならびに短鎖および長鎖脂肪酸を含む)を、脂肪酸の主要貯蔵単位であるTAG中に取り込むことができる。本明細書に記載の方法および宿主細胞において、長鎖PUFAのTAG中への取り込みが最も望ましいが、PUFAの構造的形態は限定的でない(したがって、例えば、EPAは、総脂質中にFFAとして、またはエステル化形態、例えばアシルグリセロール、リン脂質、スルホ脂質または糖脂質で存在し得る)。より具体的には、本方法の一実施形態において、少なくとも1つのPUFAは、LA、GLA、EDA、DGLA、ARA、DTA、DPAn−6、ALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPAn−3、DHAおよびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つのPUFAは、EDA、DGLA、ARA、DTA、DPAn−6、ETrA、ETA、EPA、DPAn−3、DHA、およびそれらの混合物からなる群から選択されるPUFAのように、少なくともC20鎖長を有する。一実施形態において、少なくとも1つのPUFAは、ARA、EPA、DPAn−6、DPAn−3、DHA、およびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、少なくとも1つのPUFAは、EPAおよびDHAからなる群から選択される。
ほとんどのPUFAは中性脂肪としてTAG中に取り込まれて脂肪体中に貯蔵される。しかしながら、油性生物中の総PUFAの計測は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびTAG画分中に局在するPUFAを最低限含むべきであることに留意することが重要である。
少なくとも1つのPUFA、例えばEPA(またはその誘導体)を含み、(本明細書に記載の蒸留に供されていない組成物に対して)低減した量のステロールを有するSPD精製油は、周知の臨床的および薬学的価値を有する。例えば、米国特許出願公開第2009−0093543A1号明細書参照。例えば、PUFAを含む脂質組成物を、静脈内栄養補給を受ける患者のために、または栄養失調を防止もしくは治療するために食事代用品または補助品、特に特殊調製粉乳として使用することができる。あるいは、精製PUFA(またはその誘導体)を、通常使用において受容者が食事補給について所望量を受容するように配合された調理油、脂肪またはマーガリン中に取り込むことができる。PUFAは、特殊調製粉乳、栄養補助品または他の食品中にも取り込むこともでき、抗炎症またはコレステロール低下剤として使用することができる。場合により、組成物は、ヒトまたは動物のいずれかの薬学的使用に使用することができる。
ヒトまたは動物のPUFAの補給は、添加PUFA、およびそれらの代謝結果のレベルの増加をもたらし得る。例えば、EPAによる治療は、EPAのレベルの増加だけでなく、EPAの下流生成物、例えばエイコサノイド(すなわち、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン)、DPAn−3およびDHAのレベルの増加ももたらし得る。複雑な調節機序は、種々のPUFAを組み合わせ、またはPUFAの異なるコンジュゲートを添加してそのような機序を防止、制御または克服して個体における所望レベルの規定のPUFAを達成することを望ましくし得る。
あるいは、PUFA、またはその誘導体は、動物および水産飼料、例えば乾燥飼料、半湿潤および湿潤飼料の合成において利用することができる。それというのも、これらの配合物は、一般に、栄養組成物の少なくとも1〜2%がω−3および/またはω−6PUFAであることを要求するためである。
本発明は、短行程蒸留条件を使用するステロール含有微生物油組成物の蒸留を介して、低減した量のステロールを有するTAG含有画分を含むSPD精製油を生成する方法に関するが、ステロール含有微生物油組成物自体を得るために有用であり得る関連方法の概要が認識される。図1にフローチャートの形態で図示されるとおり、ほとんどのプロセスは、微生物発酵から開始し、特定の微生物を、成長およびPUFAの生成を可能とする条件下で培養する。適切な時間において、微生物細胞を発酵容器から回収する。この未処理微生物バイオマスは、種々の手段、例えば、乾燥、破砕、ペレット化などを使用して機械的に加工することができる。次いで、未処理微生物バイオマスの油抽出を実施し、残留バイオマス(例えば、細胞デブリス)および抽出油を生成する。次いで、短行程蒸留条件を使用する抽出油(ステロールおよびPUFAを含むトリアシルグリセリド[TAG]を含有する)の蒸留は、精製TAG画分(すなわち、SPD精製微生物油)中のステロールの量を低減させる。図1のそれらの態様のそれぞれを以下にさらに詳述する。
本発明において有用なステロール含有微生物油は、典型的には微生物発酵により提供される微生物バイオマスに由来する。微生物バイオマスは、天然か組換えかにかかわらず、所望のPUFAを含有する脂質を生成し得る、任意の微生物からのものであり得る。好ましくは、微生物は高レベルPUFA生成が可能であり得る。
例としてARA油の商業的供給源は、典型的には、モルティエラ(Mortierella)属(糸状菌)、ハエカビ(Entomophthora)属、ピシウム(Pythium)属およびチノリモ(Porphyridium)属(紅藻)の微生物から生成される。最も注目すべきことに、Martek Biosciences Corporation(Columbia,MD)はARA含有真菌油(ARASCO(登録商標);米国特許第5,658,767号明細書)を生成し、これは実質的にEPAを含まず、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)またはピシウム・インシジオスム(Pythium insidiuosum)のいずれかに由来する。
同様に、EPAは、利用される規定の微生物の天然能力に基づく多数の異なる方法を介して、微生物を利用して生成することができる[例えば、従属栄養珪藻キクロテラ(Cyclotella)種およびニッチア(Nitzschia)種(米国特許第5,244,921号明細書);シュードモナス(Pseudomonas)種、アルテロモナス(Alteromonas)種またはシュワネラ(Shewanella)種(米国特許第5,246,841号明細書);ピシウム(Pythium)属の糸状菌(米国特許第5,246,842号明細書);またはモルティエラ・エロンガータ(Mortierella elongata)、M.エクシグア(M.exigua)、またはM.ハイグロフィラ(M.hygrophila)(米国特許第5,401,646号明細書);およびナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の真正眼点藻(Krienitz,L.and M.Wirth,Limnologica,36:204−210(2006))]。
DHAも、天然微生物の天然能力に基づく方法を使用して生成することができる。例えばシゾキトリウム(Schizochytrium)種(米国特許第5,340,742号明細書;米国特許第6,582,941号明細書);ウルケニア(Ulkenia)(米国特許第6,509,178号明細書);シュードモナス(Pseudomonas)種YS−180(米国特許第6,207,441号明細書);スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属LFF1株(米国特許出願公開第2004/0161831A1号明細書);クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)(米国特許出願公開第2004/0072330A1号明細書;deSwaaf,M.E.et al.BiotechnolBioeng.,81(6):666−72(2003)およびAppl Microbiol Biotechnol.,61(1):40−3(2003));エミリアニア(Emiliania)種(特開平5−308978号公報(1993));およびジャポノキトリウム(Japonochytrium)種(ATCC#28207;特開199588/1989号公報]について開発された方法参照。さらに以下の微生物がDHA生成能を有することが公知である:ビブリオ・マリヌス(Vibrio marinus)(深海から単離された細菌;ATCC#15381);微小藻類キクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)およびイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana);ならびに鞭毛菌類、例えばスラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)(ATCC#34304;Kendrick,Lipids,27:15(1992))およびATCC#28211、ATCC#20890、およびATCC#20891と称されるスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種。現在、DHAを商業生成する少なくとも3つの異なる発酵法が存在する:DHASCO(商標)を生成するためのC.コーニイ(C.cohnii)の発酵(Martek Biosciences Corporation,Columbia,MD);以前にDHAGoldとして公知の油を生成するためのシゾキトリウム(Schizochytrium)種の発酵(Martek Biosciences Corporation);およびDHActive(商標)を生成するためのウルケニア(Ulkenia)種の発酵(Nutrinova,Frankfurt,Germany)。
組換え手段を使用するPUFAの微生物生成は、天然微生物源からの生成と比べて、いくつかの利点を有することが予期される。例えば、宿主中への新しい生合成経路の導入により、および/また不所望な経路の抑制により宿主の天然の微生物脂肪酸プロファイルを変えることができ、それにより所望のPUFA(またはそのコンジュゲート形態)の生成レベルの増加および不所望なPUFAの生成の減少がもたらされるため、油生成に好ましい特徴を有する組換え微生物を使用し得る。第2に組換え微生物は、規定の用途を有し得る特定形態でPUFAを提供し得る。さらに培養条件を制御することにより、とりわけ微生物により発現される酵素のための特定基質源を提供することにより、または化合物/遺伝子操作を付加して不所望な生化学的経路を抑制することにより、微生物油生成を操作することができる。したがって、例えば、こうして生成されるω−3脂肪酸とω−6脂肪酸との比を改変し、または他のPUFAの下流もしくは上流生成物の顕著な蓄積なしに、規定のPUFA(例えばEPA)の生成を遺伝子操作することが可能である。
したがって、例えば、適切なPUFA生合成経路遺伝子、例えばδ−4デサチュラーゼ、δ−5デサチュラーゼ、δ−6デサチュラーゼ、δ−12デサチュラーゼ、δ−15デサチュラーゼ、δ−17デサチュラーゼ、δ−9デサチュラーゼ、δ−8デサチュラーゼ、δ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼおよびC20/22エロンガーゼの規定の組合せを導入することにより、EPAを生成する天然能力を欠く微生物を遺伝子操作してPUFA生合成経路を発現
させることができるが、導入される規定の酵素(およびそれらの酵素をコードする遺伝子)は、本発明を決して限定するものではないと認識されるべきである。
いくつかの酵母が、少なくとも1つのPUFAを生成するように組換え遺伝子操作されている。例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Dyer,J.M.et al.,Appl.Envi.Microbiol.,59:224−230(2002);Domergue,F.et al.,Eur.J.Biochem.,269:4105−4113(2002);米国特許第6,136,574号明細書;米国特許出願公開第2006−0051847−A1号明細書)および油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(米国特許第7,238,482号明細書;米国特許第7,465,564号明細書;米国特許第7,588,931号明細書;米国特許第7,932,077号明細書;米国特許第7,550,286号明細書;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書;および米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書)における研究参照。
一部の実施形態において、微生物宿主細胞が油性である場合に利点が認識される。油性酵母は天然で油合成および蓄積が可能であり、総油含有率は、細胞乾燥重量の約25%を超えて、より好ましくは、細胞乾燥重量の約30%を超えて、最も好ましくは、細胞乾燥重量の約40%を超えて構成し得る。代替実施形態において、例えば酵母、例えばサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの非油性酵母を、細胞乾燥重量の25%を超える油を生成し得るように、それを遺伝子操作して油性にすることができる(国際公開第2006/102342号パンフレット)。
典型的に油性酵母として同定される属には、限定されるものではないが、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)およびリポマイセス(Lipomyces)が含まれる。より具体的には、例証的な油合成酵母には、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プリケリーマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルチヌス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)に分類された)が含まれる。
最も好ましいのは、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であり;さらなる実施形態において、最も好ましいのはATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944、ATCC#76982および/またはLGAMS(7)1と称されるY.リポリティカ(Y.lipolytica)株である(Papanikolaou S.,and Aggelis G.,Bioresour.Technol.82(1):43−9(2002))。
一部の実施形態において、油性酵母は「高レベル生成」が可能であることが望ましいことがあり、生物は総脂質の少なくとも約5〜10%の所望のPUFA(すなわち、LA、ALA、EDA、GLA、STA、ETrA、DGLA、ETA、ARA、DPAn−6、EPA、DPAn−3および/またはDHA)を生成し得る。より好ましくは、油性酵母は、総脂質の少なくとも約10〜70%の所望のPUFAを生成する。PUFAの構造形態は限定的でないが、好ましくは、TAGはPUFAを含む。
したがって、本明細書に記載のPUFA生合成経路遺伝子、および遺伝子産物は、異種微生物宿主細胞中、特に油性酵母細胞(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))中で生成することができる。組換え微生物宿主中における発現は、種々のPUFA経路中間体を生成するのに、または従来は宿主を使用して可能でなかった新しい生成物を合成するために宿主中に既存のPUFA経路をモジュレートするのに、有用であり得る。
上記に提供される引用教示に基づき、好ましいω−3/ω−6PUFA生成のために多数の油性酵母を遺伝子操作することができるが、油性酵母の代表的PUFA生成株であるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)について表5に記載する。これらの株は、以下のPUFA生合成経路遺伝子:δ−4デサチュラーゼ、δ−5デサチュラーゼ、δ−6デサチュラーゼ、δ−12デサチュラーゼ、δ−15デサチュラーゼ、δ−17デサチュラーゼ、δ−9デサチュラーゼ、δ−8デサチュラーゼ、δ−9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼの種々の組合せを有するが、導入される規定の酵素(およびそれらの酵素をコードする遺伝子)および生成される規定のPUFAは、決して本発明を限定するものではないことが認識されるべきである。
Figure 2014510166
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PUFA生合成経路を油性酵母中に導入する手段は周知であるため、当業者は、本発明の方法論が、上記のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株にも、本発明が実証される種(すなわちヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))または属(すなわちヤロウィア(Yarrowia))にも限定されないことを認識する。それよりむしろ、PUFAを生成し得る、任意の油性酵母または任意の他の好適な微生物が、本方法論において使用するのに同等に好適である。
所望のPUFAを含有する脂質を生成する微生物種は、PUFAが微生物により生成される条件下で発酵培地中で培養し、成長させることができる。典型的には、微生物に炭素および窒素源を、微生物の成長および/またはPUFAの生成を可能とする多数の追加の化学物質または物質とともにフィードする。発酵条件は、上記引用において記載されるとおり使用される微生物に依存し、得られるバイオマス中のPUFAの高い含有率について最適化することができる。
一般に、炭素源のタイプおよび量、窒素源のタイプおよび量、炭素対窒素比、異なる無機イオンの量、酸素レベル、成長温度、pH、バイオマス生成期の長さ、油蓄積相の長さ、ならびに細胞回収時期および方法を改変することにより、培地条件を最適化することができる。例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、一般に、複合培地、例えば酵母抽出物−ペプトン−デキストロースブロス(YPD)中で、または限定最小培地(例えば成長に必要な構成成分を欠き、それによりPUFAの生成を可能にする所望の組換え発現カセットの選択を強制する、酵母窒素原礎培地(DIFCO Laboratories,Detroit,IM))中で成長させる。
所望量のPUFAが微生物により生成された場合、発酵培地を処理してPUFAを含む微生物バイオマスを得ることができる。例えば、発酵培地を濾過し、または別の方法により処理して水性構成成分の少なくとも一部を除去することができる。発酵培地および/または微生物バイオマスを低温殺菌し、または他の手段により処理して、微生物油および/またはPUFA生成物を損ない得る、内在微生物酵素の活性を低減させることができる。
微生物バイオマスは、例えば、バイオマスの乾燥、バイオマスの破砕(例えば、細胞溶解を介する)、バイオマスのペレット化、またはそれらの組合せにより機械的に加工することができる。未処理微生物バイオマスは、例えば、所望の含水率に乾燥させ、容易な取扱のために造粒もしくはペレット化し、および/または例えば物理的手段、例えばビードビーター、スクリュー押出などを介して機械的に破砕して細胞内容物へのより大きい接近可能性を提供することができる。微生物バイオマスは、油抽出を依然として行っていないため、いかなる機械的加工の後であっても未処理バイオマスと称する。
米国仮特許出願第61/441,836号明細書(代理人整理番号CL5053USPRV、2011年2月11日に出願)および米国特許出願第XX/XXX,XXX号明細書(代理人整理番号CL5053USNA(本願と同時出願)(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおり、機械的加工の好ましい方法は、吸油し得る粉砕剤(例えば、シリカ、ケイ酸塩)を用いる乾燥酵母の2軸スクリュー押出を行って破砕バイオマス混合物を提供し、次いで結合剤(例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、可溶性デンプン)を前記破砕バイオマス混合物とブレンドして固体ペレットを形成し得る固定可能な混合物を提供し、続いて固定可能な混合物から固体ペレット(例えば、約1mm直径×6〜10mm長さのもの)を形成することを含む。
任意選択の機械的加工後、微生物油を、油を生成した微生物中に存在し得る他の細胞材料から抽出を介して分離する。未処理バイオマスから微生物油を抽出するための手段は、当技術分野において周知である。これらの方法は、残留バイオマス(すなわち、細胞デブリスなど)および抽出油をもたらし;好ましい方法は、溶媒抽出に依拠する。
より好ましい実施形態において、超臨界CO抽出を、米国特許出願公開第2011−0263709−A1号明細書に開示されるとおり実施する。この特定の方法論は、未処理微生物バイオマスを溶媒抽出に供してリン脂質および残留バイオマスを除去し、次いで得られた抽出物を分別して少なくとも1つのPUFAを有するリファインド脂質組成物を有する抽出油を生成し、リファインド脂質組成物は未処理微生物バイオマスの油組成物に対してTAGが濃縮されている。
一部の実施形態において、抽出油は、さらなる加工工程、例えば脱ガム処理(例えば、リン酸を使用)、漂白(例えば、シリカまたはクレーを用いる)、および/または脱臭に付してリファインド脂質組成物をもたらすことができる。
本発明によれば、次いで、抽出油またはリファインド脂質組成物を、短行程蒸留条件下で蒸留に供する。具体的には、蒸留工程は、短行程蒸留(SPD)蒸留器を介するステロール含有微生物油の少なくとも1回の通過を含む。市販のSPD蒸留器は、化学エンジニアリングの技術分野において周知である。好適な蒸留器は、例えば、Pope Scientific(Saukville,WI)から入手可能である。SPD蒸留器は、蒸発器および凝縮器を含む。典型的な蒸留は、蒸発器の温度、凝縮器の温度、蒸留器中への油のフィード速度および蒸発器の真空レベルにより制御する。
当業者が認識するとおり、SPD蒸留器を介する通過の数は、ステロール含有微生物油の水分のレベルに依存する。含水率が低ければ、SPD蒸留器を介する単一の通過で十分であり得る。
しかしながら、好ましくは、蒸留は、SPD蒸発器を介するステロール含有微生物油の2回以上の連続通過を含む複数回通過プロセスである。第1の通過は、典型的には、約1から50torr圧、好ましくは、約5から30torr圧下で、蒸発器の比較的低い表面温度、例えば、約100から150℃で実施する。このことは、残留水および低分子量有機材料が蒸留されるため、脱水油をもたらす。次いで、脱水油を蒸発器のより高温およびより低圧において蒸留器を介して通過させてステロールが濃縮された蒸留物画分および短行程蒸留に供されていない油と比較して低減した量のステロールを有するTAG含有画分を提供する。TAG含有画分の追加の通過は、蒸留器を介して行ってさらなるステロールを除去することができる。それぞれの追加の通過について、蒸留温度は、直前の蒸留の温度に対して増加させることができる。好ましくは、ステロール画分の量の低減が、ステロール含有微生物油のステロール画分と比較して少なくとも約40%〜70%、好ましくは、少なくとも約70%〜80%、より好ましくは、約80%超になるように十分な通過を実施する。
好ましくは、SPD条件は、30mTorr以下、好ましくは、5mTorr以下の真空レベルにおけるステロール含有微生物油の少なくとも1回の通過を含む。好ましくは、SPD条件は、約220から300℃、好ましくは、約240から280℃における少なくとも1回の通過を含む。
SPDプロセスは、SPDに供されなかったステロール含有微生物油組成物と比較して改善された澄明性を有する低減したステロール画分を有するTAG含有画分(すなわち、SPD精製油)をもたらす。改善された澄明性は、油の混濁性または不透明性の欠落を指す。ステロール含有微生物油は、約10℃未満の温度における貯蔵時に、低温における油中のステロールの低減した溶解度に起因して混濁する。蒸発プロセスは、得られるTAG含有画分が低減した量の存在するステロールを有し、したがって約10℃における貯蔵時に澄明なままであるか、または実質的に澄明であるようにステロール画分の実質的部分を除去するように作用する。油の澄明性を評価するために使用することができる試験法は、American Oil Chemists’Society(AOCS)Official Method Cc 11−53(“Cold Test”,Official Methods and Recommended Practices of the AOCS,6thed.,Urbana,IL,AOCS Press,2009、参照により本明細書に組み込まれる)である。
驚くべきことに、蒸留プロセスにおけるステロールの量の低減は、高度不飽和脂肪酸、例えばEPAが濃縮された油の顕著な分解なしで達成することができる。油の分解は、PUFA含有率およびクロマトグラフィープロファイリング(以下実施例3に実証)に基づき評価することができる。
TAG含有画分の回収は、蒸発器を介する通過の完了後に画分を好適な容器に迂回させることにより達成することができる。
本発明を以下の実施例でさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示しながら、例証としてのみ挙げられるものと理解すべきである。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確認してその趣旨および範囲を逸脱することなく本発明の種々の変更および改変を行い、それを種々の使用および条件に適応させることができる。
以下の略語を使用する:「C」は摂氏であり、「mm」はミリメートルであり、「μm」はマイクロメートルであり、「μL」はマイクロリットルであり、「mL」はミリリットルであり、「L」はリットルであり、「min」は分であり、「mM」はミリモル濃度であり、「mTorr」はミリTorrであり、「cm」はセンチメートルであり、「g」はグラムであり、「wt」は重量であり、「h」または「hr」は時間であり、「temp」または「T」は温度であり、「i.d.」は内径である。
実施例1A
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株からのEPAを含む未処理微生物バイオマスの調製
本実施例は、EPAの生成について遺伝子操作された組換えヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株および2段階流加プロセスを使用するこの株を培養するために使用された手段を記載する。微生物バイオマスを前処理して56.1EPA%TFAを有する乾燥未処理微生物バイオマスをもたらした。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株の遺伝子型
Y9502株の作製は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載されている。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来するY9502株は、δ−9エロンガーゼ/δ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して、総脂質に対して約57.0%のEPAを生成し得た。
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対するY9502株の最終遺伝子型は、Ura+、Pex3−、unknown1−、unknown2−、unknown3−、unknown4−、unknown5−、unknown6−、unknown7−、unknown8−、unknown9−、unknown10−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YICPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16であった。上記発現カセットの構造は、簡易表記体系「X::Y::Z」により表され、Xはプロモーター断片を記載し、Yは遺伝子断片を記載し、Zはターミネーター断片を記載し、それらは全て互いに作動的に連結する。略語は、以下のとおりである:FmD12は、フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)δ−12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;FmD12Sは、フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)[米国特許第7,504,259号明細書]に由来するコドン最適化δ−12デサチュラーゼ遺伝子であり;ME3Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)[米国特許第7,470,532号明細書]に由来するコドン最適化C16/18エロンガーゼ遺伝子であり;EgD9eは、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)δ−9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD9eSは、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)[米国特許第7,645,604号明細書]に由来するコドン最適化δ−9エロンガーゼ遺伝子であり;EgD8Mは、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]に由来する合成突然変異体δ−8デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,709,239号明細書]であり;EaD8Sは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena Anabaena)[米国特許第7,790,156号明細書]に由来するコドン最適化δ−8デサチュラーゼ遺伝子であり;E389D9eS/EgD8Mは、ユートレプチエラ(Eutreptiella)種CCMP389δ−9エロンガーゼ(米国特許第7,645,604号明細書)に由来するコドン最適化δ−9エロンガーゼ遺伝子(「E389D9eS」)と、δ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作出されたDGLAシンターゼであり;EgD9eS/EgD8Mは、δ−9エロンガーゼ「EgD9eS」(前出)とδ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作出されたDGLAシンターゼであり;EaD9eS/EgD8Mは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)δ−9エロンガーゼ[米国特許第7,794,701号明細書]に由来するコドン最適化δ−9エロンガーゼ遺伝子(「EaD9eS」)とδ−8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作出されたDGLAシンターゼであり;EgD5MおよびEgD5SMは、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)[米国特許第7,678,560号明細書]に由来する合成突然変異体δ−5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]であり;EaD5SMは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena Anabaena)[米国特許第7,943,365号明細書]に由来する合成突然変異体Δ5デサチュラーゼ遺伝子であり[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書];PaD17は、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)δ−17デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,556,949号明細書]であり;PaD17Sは、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)[米国特許第7,556,949号明細書]に由来するコドン最適化δ−17デサチュラーゼ遺伝子であり;YlCPT1は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子[米国特許第7,932,077号明細書]であり;MCSは、ヘアリーベッチ根粒菌(Rhizobium leguminosarum bv.viciae)3841[米国特許出願公開第2010−0159558−A1号明細書]に由来するコドン最適化マロニル−CoAシンセターゼ遺伝子であり;MaLPAAT1Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)米国特許第7,879,591号明細書]に由来するコドン最適化リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ遺伝子である。
Y9502株の総脂質含有率および組成の詳述な分析のために、細胞を2段階で合計7日間成長させるフラスコアッセイを実施した。分析に基づいて、Y9502株は3.8g/Lの乾燥細胞重量[「DCW」]を生成し、細胞の総脂質含有率は37.1[「TFA%DCW」]であり、乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]は21.3であり、それぞれの脂肪酸濃度をTFAの重量パーセント[「%TFA」]とする脂質プロファイルは以下のとおりであった:16:0(パルミテート)は2.5、16:1(パルミトレイン酸)は0.5、18:0(ステアリン酸)は2.9、18:1(オレイン酸)は5.0、18:2(LA)は12.7、ALAは0.9、EDAは3.5、DGLAは3.3、ARAは0.8、ETrAは0.7、ETAは2.4、EPAは57.0、その他は7.5。
Y9502株からのヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の作製
株からのZ1978株の開発は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/218591号明細書(代理人整理番号CL4783USNA、2011年8月26日出願)および同第13/218708号明細書(代理人整理番号CL5411USNA、2011年8月26日出願)に記載されている。
具体的には、Y9502株のUra3遺伝子を破壊するため、構築物pZKUM(図2A;配列番号1;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載)を使用してUra3突然変異体遺伝子をY9502株のUra3遺伝子中に統合した。形質転換は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の方法論に従って実施した。合計27個の形質転換体(8つの形質転換体を含む第1の群、8つの形質転換体を含む第2の群、および11個の形質転換体を含む第3の群から選択)を、5−フルオロオロチン酸[「FOA」]プレート(FOAプレートは、1リットル当たり以下を含む:20gのグルコース、6.7gの酵母窒素原礎培地、75mgのウラシル、75mgのウリジンおよび100mg/Lから1000mg/Lの濃度の範囲に対するFOA活性試験に基づく適切量のFOA(Zymo Research Corp.,Orange,CA)(それというのも、供給業者から受容したそれぞれのバッチ内で変動が生じるためである))上で成長させた。さらなる実験は、形質転換体の第3の群のみが実際のUra−表現型を有することを決定した。
脂肪酸[「FA」]分析のため、細胞を遠心分離により回収し、脂質をBligh,E.G.& Dyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))に記載のとおり抽出した。脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を、ナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル交換により調製し(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))、続いて30−mX0.25mm(i.d.)HP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを備えたHewlett−Packard 6890 GCにより分析した。オーブン温度は3.5℃/minにおいて170℃(25min保持)から185℃であった。
直接的な塩基エステル交換のため、ヤロウィア(Yarrowia)細胞(0.5mL培養物)を回収し、蒸留水中で1回洗浄し、Speed−Vac中で真空下で5〜10分間乾燥させた。ナトリウムメトキシド(100μlの1%)および既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0TAG;カタログ番号T−145,Nu−Check Prep,Elysian,MN)を試料に添加し、次いで試料をボルテックスに付し、50℃において30分間ロックした。3滴の1MのNaClおよび400μlのヘキサンの添加後、試料をボルテックスに付し、回転させた。上層を取り出し、GCにより分析した(前出)。
あるいは、Lipid Analysis,William W.Christie,2003に記載の塩基触媒エステル交換法の改変を、発酵またはフレーク試料からのブロス試料の定型分析に使用した。具体的には、ブロス試料を室温水中で急速解凍し、次いで0.22μmのCorning(登録商標)Costar(登録商標)Spin−X(登録商標)遠心チューブフィルター(カタログ番号8161)を有するタール塗布2mL微小遠心チューブ中に(0.1mgに)秤量した。予め測定されたDCWに応じて、試料(75〜800μl)を使用した。Eppendorf 5430遠心分離機を使用して、試料を14000rpmにおいて5〜7分間または必要な限り遠心分離してブロスを取り出した。フィルターを取り出し、液体を抜き、約500μlの脱イオン水をフィルターに添加して試料を洗浄した。遠心分離して水を除去した後、フィルターを再度取り出し、液体を抜き、フィルターを再挿入した。次いで、チューブを遠心分離機中に再挿入し、このときは頂部を開放し、約3〜5分間乾燥させた。次いで、フィルターをチューブの約1/2の箇所で切断し、新たな2mL丸底Eppendorfチューブ(カタログ番号2236335−2)中に挿入した。
切断フィルター容器の周縁に接触するにすぎないが、試料またはフィルター材料に接触しない適切なツールによりフィルターをチューブの底部に押圧した。トルエン中の既知量のC15:0TAG(前出)を添加し、500μlの新たに作製された1%のナトリウムメトキシドのメタノール中溶液を添加した。試料ペレットを適切なツールにより完全に崩壊させ、チューブを密閉し、50℃加熱ブロック(VWRカタログ番号12621−088)中に30分間装入した。次いで、チューブを少なくとも5分間冷却させた。次いで、400μlのヘキサンおよび500μlの1MのNaClの水中溶液を添加し、チューブを2回6秒間ボルテックスに付し、1分間遠心分離した。約150μlの頂部(有機)層をインサートを有するGCバイアル中に装入し、GCにより分析した。
GC分析を介して記録されたFAMEピークを、既知の脂肪酸と比較したその滞留時間により特定し、FAMEピーク面積を既知量の内部標準(C15:0TAG)と比較することにより定量した。したがって、任意の脂肪酸FAMEの近似量(μg)[「μgFAME」]は式:(規定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)(標準C15:0TAGのμg)に従って算出する一方、C15:0TAGの1μgは0.9503μgの脂肪酸に等しいため、任意の脂肪酸の量(μg)[「μgFA」]は式:(特定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)(標準C15:0TAGのμg)0.9503に従って算出する。0.9503の変換係数は、0.95から0.96の範囲であるほとんどの脂肪酸について決定される値の近似であることに留意されたい。
それぞれの個々の脂肪酸の量をTFAの重量パーセントとしてまとめる脂質プロファイルを、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の総和により割って100を掛けることにより決定した。
このように、GC分析は、第3群のpZKUM−形質転換体#1、#3、#6、#7、#8、#10および#11にそれぞれ28.5%、28.5%、27.4%、28.6%、29.2%、30.3%および29.6%のEPAのTFAが存在することを示した。これらの7つの株を、Y9502U12、Y9502U14、Y9502U17、Y9502U18、Y9502U19、Y9502U21およびY9502U22株(集合的にY9502U)株とそれぞれ命名した。
次いで、構築物pZKL3−9DP9N(図2B;配列番号2)を作製して1つのδ−9デサチュラーゼ遺伝子、1つのコリンリン酸シチジリルトランスフェラーゼ遺伝子、および1つのδ−9エロンガーゼ突然変異体遺伝子をY9502U株のヤロウィア(Yarrowia)YALI0F32131p遺伝子座(GenBank受託番号XM_506121)に統合した。pZKL3−9DP9Nプラスミドは、以下の構成成分を含有した:
Figure 2014510166
pZKL3−9DP9NプラスミドをAscI/SphIにより消化し、次いでY9502U17株の形質転換に使用した。形質転換体細胞を最小培地[「MM」]プレート上にプレーティングし、30℃に3〜4日間維持した(最小培地は、1リットル当たり:20gのグルコース、1.7gのアミノ酸を有さない酵母窒素原礎培地、1.0gのプロリン、およびpH6.1(調整不要)を含む)。単一コロニーをMMプレート上に再度画線し、次いで液体MM中に30℃において接種し、250rpm/minにおいて2日間振とうさせた。細胞を遠心分離により回収し、高グルコース培地[「HGM」]中で再懸濁し、次いで250rpm/minにおいて5日間振とうさせた(高グルコース培地は、1リットル当たり:80gのグルコース、2.58gのKHPOおよび5.36gのKHPO、pH7.5(調整不要)を含む)。細胞を上記の脂肪酸分析に供した。
GC分析は、選択された96個のpZKL3−9DP9Nを有するY9502U17の株のほとんどが50〜56%のEPAのTFAを生成することを示した。59.0%、56.6%、58.9%、56.5%、および57.6%のEPAのTFAを生成した5つの株(すなわち、#31、#32、#35、#70および#80)を、それぞれZ1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981と命名した。
野性型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対するこれらのpZKL3−9DP9N形質転換体株の最終遺伝子型は、Ura+、Pex3−、unknown1−、unknown2−、unknown3−、unknown4−、unknown5−、unknown6−、unknown7−、unknown8−、unknown9−、unknown10−、unknown11−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、YAT::EgD9eS−L35G::Pex20、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPDIN::YlD9::Lip1、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16、EXP1::YlPCT::Pex16であった。
Z1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981株のYALI0F32131p遺伝子座(GenBank受託番号XM_50612)のノックアウトは、pZKL3−9DP9Nによる形質転換により生成されたこれらのEPA株のいずれにおいても確認されなかった。
Z1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981株のYPDプレートからの細胞を、成長させ、以下の方法論に従って総脂質含有率および組成について分析した。
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の特定株の総脂質含有率および組成の詳細な分析のため、フラスコアッセイを以下のとおり実施した。具体的には、新たに画線された細胞の1つのループを3mLの発酵培地[「FM」]培地中に接種し、250rpmおよび30℃において一晩成長させた(発酵培地は、1リットル当たり:6.70g/Lの酵母窒素原礎培地、6.00gのKHPO、2.00gのKHPO、1.50gのMgSO 7HO、20gのグルコースおよび5.00gの酵母抽出物(BBL)を含む)。OD600nmを計測し、細胞のアリコートを125mLフラスコ中の25mLのFM培地で0.3の最終OD600nmまで添加した。250rpmおよび30℃におけるシェーカーインキュベーターにおける2日後、6mLの培養物を遠心分離により回収し、125mLフラスコ中の25mLのHGM中で再懸濁した。250rpmおよび30℃におけるシェーカーインキュベーターにおける5日後、1mLのアリコートを脂肪酸分析(前出)に使用し、乾燥細胞重量[「DCW」]測定のために10mLを乾燥させた。
DCW測定のため、10mLの培養物を、Beckman GS−6R遠心分離機中のBeckman GH−3.8ローター中で4000rpmにおける5分間の遠心分離により回収した。ペレットを25mLの水中で再懸濁し、上記のとおり再回収した。洗浄したペレットを20mLの水中で再懸濁し、事前に秤量したアルミニウムパンに移した。細胞懸濁液を真空オーブン中で80℃において一晩乾燥させた。細胞の重量を測定した。
細胞の総脂質含有率[「TFA%DCW」]を算出し、TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの脂肪酸の濃度[「%TFA」]および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]をまとめるデータとともに考察した。
したがって、以下の表7は、フラスコアッセイにより測定されたZ1977、Z1978、Z1979、Z1980およびZ1981株の総脂質含有率および組成をまとめる。具体的には、この表は、細胞の総乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の総脂質含有率[「TFA%DCW」]、TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの脂肪酸の濃度[「%TFA」]および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]をまとめる。
Figure 2014510166
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の発酵:振とうフラスコ中で、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の凍結培養物から接種材料を調製した。インキュベーション期間後、培養物を使用して種発酵槽に接種した。種培養物が適切な標的細胞密度に達したとき、次いでそれを使用してより大きな発酵槽に接種した。発酵は、2段階流加法であった。第1の段階において、高細胞密度への急速成長を促進する条件下で酵母を培養し;培養培地は、グルコース、種々の窒素源、微量金属、およびビタミンを含むものであった。第2の段階において、酵母を窒素飢餓状態にし、グルコースを連続的にフィードして脂質およびPUFAの蓄積を促進した。標準操作条件につき温度(30〜32℃に制御)、pH(5〜7に制御)、溶解酸素濃度およびグルコース濃度を含むプロセス可変要素をモニタリングおよび制御して一貫したプロセス性能および最終PUFA油の品質を確保した。
発酵当業者は、発酵ラン自体、培地条件、プロセスパラメーター、スケールアップなど、ならびに培養物をサンプリングする特定の時点に応じて規定のヤロウィア(Yarrowia)株の油プロファイルに変動が起きることを把握する(例えば米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書参照)。
発酵後、酵母バイオマスを脱水および洗浄して塩および残留培地を除去し、リパーゼ活性を最小化した。次いで、ドラム乾燥させて水分を5%未満に低減させて短期貯蔵および輸送の間の油安定性を確保した。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株のバイオマスの特性決定
乾燥未処理酵母バイオマスの脂肪酸組成を、以下のガスクロマトグラフィー[「GC」]法を使用して分析した。具体的には、トリグリセリドを、メタノール中のナトリウムメトキシドを使用するエステル交換により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に変換した。得られたFAMEを、トルエン/ヘキサン(2:3)中での希釈後に30−mX0.25mm(i.d.)OMEGAWAX(Supelco)カラムを備えたAgilent 7890 GCを使用して分析した。オーブン温度を5℃/minにおいて160℃から200℃、次いで10℃/minにおいて200℃から250℃(10分間保持)増加させた。
GC分析を介して記録されたFAMEピークは、既知のメチルエステル[「ME」]と比較してそれらの保持時間により同定し、FAMEピーク面積を既知量の内部標準(C15:0トリグリセリド、試料についてエステル交換手順を介して採取)と比較することにより定量した。したがって、任意の脂肪酸FAMEの近似量(mg)[「mgFAME」]は、式:(規定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/15:0FAMEピーク面積)(内部標準C15:0FAMEのmg)に従って算出する。次いで、FAME結果を、1.042〜1.052の適切な分子量変換係数により割ることにより対応する脂肪酸のmgに補正することができる。
TFAの重量パーセントとしてのそれぞれの個々の脂肪酸の量をまとめる脂質プロファイルは、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の総和により割り、100を掛けることにより(±0.1重量%以内に)近似させた。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株からの乾燥未処理酵母バイオマスは、表8に示すとおり、56.1EPA%TFAを含有した。
Figure 2014510166
実施例1B
未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株バイオマスからの低減したステロール含有率を有するSPD精製微生物油の調製
本実施例は、実施例1Aの乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株バイオマスを、押出およびペレット化を介して破砕し、超臨界流体抽出[「SCFE」]を使用して油を抽出し、短行程蒸留条件を使用する蒸留により油のステロール含有率を低減させるために使用された手段を記載する。
乾燥未処理酵母バイオマスの押出を介する破砕およびペレット化
実施例1Aの乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株バイオマスを、2軸スクリュー押出機にフィードした。具体的には、84重量パーセントの酵母(約39%の総微生物油を含有)および16%の珪藻土(Celatom MN−4;EP Minerals,LLC,Reno,NV)の混合物を、40mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−40mm MC,Stuttgart,Germany)に23kg/hrの速度においてフィードした。26.5%のスクロースから作製された水/スクロース溶液を、押出機の破砕帯域後に70mL/minの流速において注入した。押出機は、37kWモ−ターおよび高トルクシャフトにより、140rpmにおいて稼働させた。%トルク範囲は17〜22であった。得られた破砕酵母粉末を、最終水冷バレル中で35℃に冷却した。湿潤押出粉末を、1mm穴径×1mm厚スクリーンから組み立てられ、80PRMに設定されたLCI Multi−Granulatorモデル番号MG−55(LCI Corporation,Charlotte,NC)中にフィードした。押出物を、27kg/hr、定常2.2アンペア電流の流れにおいて形成し、慣用の乾燥装置を使用して乾燥させた。約1mmの直径×6から10mmの長さの乾燥ペレットは、Sartorius MA35水分分析装置(Sartorius AG,Goettingen,Germany)により計測して1.7%の最終含水率を有した。
押出酵母バイオマスの抽出
押出酵母ペレットを、抽出溶媒としての超臨界流体相二酸化炭素(CO)を使用して抽出してEPAを含有するトリグリセリド濃縮抽出油を生成した。具体的には、酵母ペレットを320Lステンレス鋼抽出容器に装填し、ポリエステルフォーム濾過マット(Aero−Flo Industries,Kingsbury,IN)のプラグ間に充填した。容器を密封し、次いでCOを市販の圧縮器(Pressure Products Industries)により熱交換器(予熱器)を介して計量供給し、垂直抽出容器中にフィードして破砕酵母のペレットからトリグリセリド濃縮油を抽出した。抽出温度は予熱器により制御し、抽出圧力は抽出容器と分別器容器との間に位置する自動制御弁(Kammer)により維持した。COおよび油抽出物は、この制御弁を介して低圧に膨張させた。抽出油を膨張溶液から沈殿物として分別器中で回収した。分別器中の膨張CO相の温度は、分別器の上流に位置する追加の熱交換器の使用により制御した。この低圧CO流は、分別器容器の頂部を流出し、フィルター、凝縮器、および質量流量計を介して圧縮器に再循環させて戻した。抽出油を分別器から周期的に抜き、生成物として回収した。
抽出容器に、最初に150kgの抽出酵母ペレットを装填した。次いで、トリグリセリド濃縮油をペレットから超臨界流体COにより5000psig(345bar)、55℃、および出発酵母ペレット1kg当たり32kgのCOの溶媒フィード比において抽出した。合計39.6kgの抽出油を分別器容器から回収し、それに約1000ppmの2つの酸化防止剤のそれぞれ:Covi−ox T70(Cognis,Ontario,Canada)およびDadex RM(Nealanders,Ontario,Canada)を添加した。抽出油は、GC分析(下記)により測定して661mgのエルゴステロール/油100gを含有した。
具体的には、エルゴステロール含有率は、紫外線(UV)検出を有する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。抽出油試料(100mg)を、14mLの9:10の2−プロパノール:1−ヘプタノールにより希釈し、十分に混合した。96%純度エルゴステロール(Alfa Aesar,Inc.,Ward Hill,MA)の較正スタンダードを、2−プロパノール中の10から300μg/mLの範囲で調製した。試料およびスタンダードを、12.5分間における水中0.02%の炭酸アンモニウム−65%から100%のアセトニトリルのアセトニトリル勾配を使用するXDB−C8 HPLCカラム(4.6mmのid.、150mmの長さ、5μmの粒子サイズ、Agilent Technologies,Inc.,Wilmington,DE)上でのクロマトグラフィーにかけた。注入容積は5μLであり、流速は1.2mL/minであり、カラム温度は50℃であった。エルゴステロールピークのUV(282nm)応答を、同一条件下で分析した較正スタンダードと比較した。
SPD条件下での蒸留
抽出油を脱ガスし、次いで6インチのステンレス鋼分子蒸留器(POPE Scientific,Saukville,WI)を介して12kg/hrのフィード速度を使用して通過させた。残留水を除去した。蒸発器および凝縮器の表面温度は、それぞれ140℃および15℃に設定した。真空は15torrに維持した。約3重量%の抽出油を蒸留物中の水として取り出した。脱水抽出油は、リン脂質を実質的に含まず、0.5ppmのリンを含有した。視覚調査時、脱水抽出油は室温において混濁していた。
脱水抽出油を6インチの分子蒸留器を介して12kg/hrのフィード速度において2回目として通過させた。真空を1mtorrに低下させ、蒸発器および凝縮器の表面温度をそれぞれ240℃および50℃に維持した。約7重量%の脱水抽出油を蒸留物として取り出し;この画分は主として遊離脂肪酸およびエルゴステロールを含有した。284mgのエルゴステロール/油100g(抽出油のエルゴステロール含有率と比較してエルゴステロール含有率の約57%低減)を含有するトリアシルグリセロール含有画分(すなわち、SPD精製油)も得た。SPD精製油は、数日間の10℃における貯蔵後に澄明であった。
実施例2
未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスからの低減したステロール含有率を有するSPD精製微生物油の調製
本実施例は、乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスを、押出を介して破砕し、超臨界流体抽出[「SCFE」]を使用して油を抽出し、短行程蒸留条件を使用する蒸留により油のステロール含有率を低減させるために使用された手段を記載する。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスの調製
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株(実施例1A)を、2段階流加プロセスにおいて培養し、得られた微生物バイオマスを実施例1Aに記載の方法論に従って脱水し、洗浄し、乾燥させた。
乾燥未処理酵母バイオマスの押出を介する破砕
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株バイオマスを、2軸スクリュー押出機にフィードした。具体的には、酵母バイオマス(約37%の総微生物油を含有)を、70mm2軸スクリュー押出機(Coperion Werner Pfleiderer ZSK−70mm SCD,Stuttgart,Germany)に、270kg/hrの速度において珪藻土の不存在下でフィードした。
押出機は、150kWのモーターおよび高トルクシャフトにより、150rpmおよび総アンペア範囲の33パーセントにおいて稼働させた。得られた破砕酵母バイオマスを最終水冷バレル中で81℃に冷却した。破砕バイオマスの含水率は、Sartorius MA35水分分析装置(Sartorius AG,Goettingen,Germany)により計測して2.8重量%であった。
押出酵母バイオマスの抽出
押出酵母バイオマスを珪藻土と混合して床の圧密を防止し、抽出溶媒としての超臨界流体相二酸化炭素(CO)を使用して抽出してEPAを含有する粗製トリグリセリド油(すなわち、「抽出油」)を生成した。具体的には、合計82.7kgの押出酵母バイオマスを、41kgの珪藻土(Celatom MN−4;EP Minerals,LLC,Reno,NV)と混合し、実施例1Bに記載のものと同一の様式で構成された320Lのステンレス鋼抽出容器に装填したが、以下を除いた:(i)抽出温度を予熱器により40℃に制御し;(ii)抽出圧力を4500psig(310bar)に維持し;(iii)抽出に出発酵母1kg当たり44kgのCOの溶媒フィード比を使用した。このようにして、23.2kgの油を破砕酵母から抽出した。抽出油は、実施例1Bの方法論によるGC分析により測定して774mgのエルゴステロール/油100gを含有した。
SPD条件下での蒸留
抽出油を、2インチのガラス分子蒸留器を介して通過させて脱水抽出油を提供した。流速は、約480g/hrに維持した。真空、蒸発器および凝縮器温度は、それぞれ0.2mmHg、130℃および60℃であった。次いで、以下の表に示すとおり脱水抽出油を蒸留器を介して1mtorrの真空において異なる温度において3回通過させ、それぞれの通過後、トリアシルグリセロール含有画分(すなわち、SPD精製油)のエルゴステロールレベル、EPA含有率(TFAの重量%として)および総ω−3含有率(TFAの重量%として)を上記のとおり測定した。
Figure 2014510166
したがって、210℃において、SPD精製油のエルゴステロールレベルは、110mg/油100gであり、それは240℃において約53mg/油100gに低減された。エルゴステロールは、温度を270℃にさらに増加させた場合に1mg/油100gにほぼ完全に除去された。このことは、抽出油のエルゴステロール含有率と比較して1回目の通過、2回目の通過および3回目の通過それぞれにおけるエルゴステロール含有率の約57%、約86%および約99.8%の低減に対応する。
SPD精製油のPUFA含有率に関して、表9のデータは、油を270℃におけるSPD蒸留器を介して通過させた場合であっても、EPAも総ω−3含有物も顕著な分解が生じなかったことを実証する。
3回目の通過のSPD精製油を、クロマトグラフィープロファイリングを使用して予想外の構成成分および汚染物質の出現についてさらに分析した。具体的には、試験は、(i)火炎イオン化検出を有するガスクロマトグラフィー(GC/FID);(ii)薄層クロマトグラフィー(TLC);および(iii)質量分析、光散乱および紫外線検出を有する液体クロマトグラフィーにより行った(HPLC/MS/ELSD/UV)。GC/FIDプロファイルは、SPD精製油試料のメチルエステルについてランした。TLCおよびHPLC/MS/ELSD/UVプロファイルは、SPD精製油について直接ランした。全ての場合において、SPD精製油プロファイルを、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305株バイオマスを用いて調製された参照油と比較した。
具体的には、参照油は、実施例1Aに記載の方法論に従って乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y4305株バイオマスから生成した。55.6EPA%TFAを生成し得るY4305株は、米国特許出願公開第2009−0093543A1号明細書に記載されている。乾燥未処理バイオマスを、油とイソヘキサン溶媒との比を1:7として媒体ミルを使用して機械的に破砕した。残留バイオマス(すなわち、細胞デブリス)を、デカンター遠心分離機を使用して除去し、溶媒を蒸発させてトリグリセリドを含有する抽出油を得た。抽出油を、低温アセトンを使用して、抽出油と溶媒との比を1:1.5として脱ガム処理し、次いで50%の水性クエン酸により酸脱ガム処理した。次いで、脱ガム処理油を酸活性化クレーにより漂白し、210℃において30分間脱臭して参照油試料を得た。
3回目の通過のSPD精製油のクロマトグラフィープロファイルは、参照試料のプロファイル中に見られないいかなるピークも含有しなかった。両方の試料を同日に同一条件下でランした。さらに、参照試料のプロファイルの対応するピークよりも顕著に高い応答を有するSPD精製油の未同定ピークは存在しなかった。また、3回目の通過のSPD精製油のピークは、低温(すなわち、それぞれ210℃および240℃)において生成された1回目の通過または2回目の通過のSPD精製油の対応するピークよりも高い応答を有さなかった。これらの分析は、SPDを使用する高温におけるエルゴステロールの除去が、油中に分解生成物の出現をもたらさないことを示し;したがって、この加工技術の適用によってはPUFAの顕著な分解が生じないことが仮定される。
実施例3
未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスからの低減したステロール含有率を有するSPD精製微生物油の調製
本実施例は、乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスを、媒体ミルを使用する機械的破砕を介して破砕し、イソヘキサン溶媒を使用して粗製油を抽出し、短行程蒸留条件を使用する蒸留によりアセトン脱ガム処理油のステロール含有率を低減させるために使用された手段を記載する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株の遺伝子型
米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載のY8672株の作製 ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来するY8672株は、δ−9エロンガーゼ/δ−8デサチュラーゼ経路の発現を介して、総脂質に対して約61.8%のEPAを生成し得た。
野性型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に対するY8672株の最終遺伝子型は、Ura+、Pex3−、unknown1−、unknown2−、unknown3−、unknown4−、unknown5−、unknown6−、unknown7−、unknown8−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::ACO、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1、EXP1::EgD8M::Pex16、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9ES/EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5SM::Pex20、YAT1::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5M::Pex16、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、GPD::YlCPT1::Aco、およびYAT1::MCS::Lip1であった。略語は実施例1Aに定義されるとおりである。
Y8672株の総脂質含有率および組成の詳細な分析のため、細胞を2段階で合計7日間成長させるフラスコアッセイを実施した。分析に基づいて、Y8672株は3.3g/Lの乾燥細胞重量[「DCW」]を生成し、細胞の総脂質含有率は26.5[「TFA%DCW」]であり、乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含有率[「EPA%DCW」]は16.4であり、それぞれの脂肪酸濃度をTFAの重量パーセント[「%TFA」]とする脂質プロファイルは以下のとおりであった:16:0(パルミテート)は2.3、16:1(パルミトレイン酸)は0.4、18:0(ステアリン酸)は2.0、18:1(オレイン酸)は4.0、18:2(LA)は16.1、ALAは1.4、EDAは1.8、DGLAは1.6、ARAは0.7、ETrAは0.4、ETAは1.1、EPAは61.8、その他は6.4。
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスの調製
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株を、実施例1Aに記載の方法論に従って、2段階流加プロセスにおいて培養し、得られた微生物バイオマスを脱水し、洗浄し、乾燥させた。
抽出油を生成するための乾燥未処理酵母バイオマスの媒体ミルおよびイソヘキサン溶媒を介する破砕および抽出
乾燥未処理ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株バイオマスを、イソヘキサン溶媒を用いて媒体ミルを使用して機械的に破砕した。残留バイオマス(すなわち、細胞デブリス)を、デカンター遠心分離機を使用して除去し、溶媒を蒸発させてトリグリセリドを含有する抽出油を得た。
抽出油を実施例1Bの方法論を使用して分析した。表10に示すとおり、微生物油は58.1EPA%TFAを含有した。
Figure 2014510166
抽出油の一部を、低温アセトンを使用して抽出油と溶媒との比を1:1.5として脱ガム処理した。アセトン脱ガム処理油は、880mgのエルゴステロール/油100gおよび74.5ppmのリンを含有した。
SPD条件下での蒸留
アセトン脱ガム処理油を、実施例1Bの方法論に従って短行程蒸留に供した(但し、蒸発器温度を255℃に設定した)。第1の通過の間に蒸留物はほぼ回収されなかった。それというのも、アセトン脱ガム処理油中にほとんど水が存在しなかったためである。第2の通過の間、約12重量%の蒸留物が回収された。トリアシルグリセロール含有画分(すなわち、SPD精製油)の最終エルゴステロールレベルは、106mg/100g(アセトン脱ガム処理油のエルゴステロール含有率と比較してエルゴステロール含有率の約88%の低減)であり;SPD精製油は、66ppmのリンを含有した。

Claims (14)

  1. ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量を低減させる方法であって、
    a)短行程蒸留条件下で、ステロール含有微生物油を少なくとも1回蒸留することであって、前記油は、
    (i)1つ以上の多価不飽和脂肪酸を含むトリアシルグリセロール;および、
    (ii)少なくとも300mg/油100gのステロール画分;
    を含み、
    前記蒸留は、前記ステロールを含む蒸留物画分および短行程蒸留に供されていない前記ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量と比較して低減した量のステロールを有するトリアシルグリセロール含有画分を生成すること;および
    b)場合により、前記トリアシルグリセロール含有画分を回収すること
    を含む方法。
  2. 前記短行程蒸留条件が、30mTorr以下の真空レベルおよび300℃以下の温度におけるステロール含有微生物油の少なくとも1回の通過を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ステロール画分が、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、β−シトステロールおよびデスモステロールからなる群から選択される1つ以上のステロールを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ステロール画分が、エルゴステロールを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記トリアシルグリセロール含有画分中のステロールの量の低減が、前記ステロール含有微生物油組成物中のステロールの量と比較して少なくとも40%である、請求項1に記載の方法。
  6. 低減したステロール画分を有する前記トリアシルグリセロール含有画分が、短行程蒸留に供されていない前記ステロール含有微生物油組成物と比較して改善された澄明性を有する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記温度が、280℃以下である、請求項2に記載の方法。
  8. 前記ステロール含有微生物油組成物が、誘導結合プラズマ発光分光法により測定して20ppm未満のリンを有するリファインド脂質組成物である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記ステロール含有微生物油組成物を、酵母、藻類、ユーグレナ類、ストラメノパイル菌類、またはそれらの混合物から得る、請求項1に記載の方法。
  10. 前記ステロール含有微生物油組成物を、モルティエレラ(Mortierella)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)からなる群から選択される属からの油性微生物から得る、請求項9に記載の方法。
  11. 前記ステロール含有微生物油組成物を、組換えヤロウィア(Yarrowia)細胞の微生物バイオマスから得る、請求項10に記載の方法。
  12. 前記組換えヤロウィア(Yarrowia)細胞が、リノール酸、γ−リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ω−6ドコサペンタエン酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、ω−3ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸の生成について遺伝子操作されている、請求項11に記載の方法。
  13. 前記蒸留が、前記微生物油組成物の2回以上の連続短行程蒸留を含む、請求項1に記載の方法。
  14. それぞれの連続短行程蒸留が、直前の短行程蒸留よりも高い温度におけるものである、請求項13に記載の方法。
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