JP2014506888A - アデニンヌクレオチドトランスケータ2mRNA発現を減少させて乳房癌を治療する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】乳房癌治療用組成物及び乳房癌幹細胞を治療する方法などを提供すること。
【解決手段】本発明は、ANT2 mRNA発現を減少させて乳房癌を治療する方法に関する。具体的に、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌治療用組成物であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする組成物を提供する。上記本発明の組成物は、TRAILの乳房癌治療効果を増加させることを特徴とする。また、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌幹細胞治療用組成物を提供する。窮極的に、本発明は、乳房癌細胞の転移抑制効果及び抗癌剤耐性を克服することができる優れた効能を有する乳房癌治療剤を提供することができ、ひいては、乳房癌幹細胞治療剤の開発に利用されることができるものと期待される。
【選択図】図14
【解決手段】本発明は、ANT2 mRNA発現を減少させて乳房癌を治療する方法に関する。具体的に、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌治療用組成物であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする組成物を提供する。上記本発明の組成物は、TRAILの乳房癌治療効果を増加させることを特徴とする。また、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌幹細胞治療用組成物を提供する。窮極的に、本発明は、乳房癌細胞の転移抑制効果及び抗癌剤耐性を克服することができる優れた効能を有する乳房癌治療剤を提供することができ、ひいては、乳房癌幹細胞治療剤の開発に利用されることができるものと期待される。
【選択図】図14
Description
本発明は、アデニンヌクレオチドトランスケータ2(adenine nucleotide translocator 2(ANT2))mRNA発現水準を減少させて乳房癌を治療する方法に関し、具体的には、ANT2 siRNA(低分子干渉RNA(small interfering RNA))またはANT2 shRNA(短ヘアピンRNA(short hairpin RNA))を利用して乳房癌を治療する方法などに関する。
腫瘍(tumor)は、非正常的な細胞の過剰によって発生する非正常的で、非制御的であり、無秩序な細胞増殖の産物であって、このような腫瘍が破壊的な増殖性、浸潤性及び転移性を有するようになれば、悪性腫瘍(malignant tumor)に分類される。特に、分子生物学的な観点から見れば、遺伝子の変異によって発生する遺伝的疾患(genetic disease)と言える。
現在まで悪性腫瘍である癌を治療する方法として、主に3つの治療法、すなわち外科的な手術、放射線治療及び化学療法があり、このうち1つまたはこれらの組合を通じて癌を治療している。具体的に、外科的手術は、疾病組職を大部分除去する方法で、このような外科的手術は、特定部位、例えば乳房、結腸及び皮膚に位置する腫瘍を除去するには非常に効果的であるが、脊椎のような一部の部位にある腫瘍を治療するか、または分散性腫瘍を治療するに適していない。
放射線治療は、急性炎症性疾患、陽性または悪性腫瘍、内分泌機能障害及びアレルギー性疾患などに使用され、一般的に急速に分裂する細胞で構成された悪性腫瘍に効果的に使用されている。このような放射線治療の短所としては、放射線の治療によって正常組職の機能弱化または喪失、治療後に治療部位に皮膚疾患が発生するおそれがあり、特に臓器の発育が進行される小児の場合、知能発達遅延または骨発育障害など深刻な副作用をもたらすことがある。
化学療法は、癌細胞の複製または代謝を撹乱させることによって、乳房、肺及び精巣の癌を治療するのに広く用いられているが、このような方法において最大の短所は、癌の治療に利用される全身性化学療法によって誘導される副作用である。化学療法による副作用は、患者の生命に重要な影響を及ぼし、治療に対する患者の不安感を増加させる。また、化学治療剤と関連した副作用としては、一般的にこのような薬物の投与時に注意すべき容量制限毒性(dose limiting toxicity、DLT)である。例えば、粘膜炎は、様々な抗癌剤(抗代謝物質細胞毒消剤である5−フルオロウラシル、メトトレキサート及び抗腫瘍抗生剤であるドキソルビシン)などに対する容量制限毒性(DLT)がある。このような化学療法の副作用のうち大部分はひどい場合、入院を要するか、痛症を治療するために、鎮痛剤を必要とする。このように、化学治療剤及び放射線治療による副作用は、癌患者の治療において重要な問題になっている。
一方、遺伝子治療(gene therapy)は、DNA組み換え方法を利用して治療用遺伝子を患者の細胞中に導入させて遺伝子欠陥を校正するか、細胞に新しい機能を追加し、人体細胞の遺伝的変形による各種遺伝疾患、癌、心血管疾患、感染性疾病及び自家免疫疾患などを治療するか予防する方法である。具体的には、治療遺伝子(therapeutic gene)を体内の所望の臓器に伝達することによって、細胞内で治療用または正常タンパク質が発現され得るように誘導し、上記疾病を治療する方法を遺伝子治療(gene therapy)と言う。このような遺伝子治療は、一般的な薬物による治療法に比べて優れた選択性を有することができ、他の治療法で調節しにくい疾病の治療を改善することによって、長期間適用することができる。このような遺伝子治療を効果的に行うためには、治療遺伝子を所望の標的細胞に伝達し、高い効率で発現することができるようにする遺伝子伝達技術が必要である。
遺伝子伝達体は、所望の治療遺伝子を対象細胞に導入するために必要な媒介体であって、理想的な遺伝子伝達体は、人体に無害であり、大量生産が容易であり、効率的に遺伝子を伝達及び持続的に遺伝子を発現することができなければならない。このような遺伝子伝達体技術は、遺伝子治療技術の核心要素であって、現在遺伝子治療に多く用いられる代表的遺伝子伝達体としては、アデノウイルス(adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(adeno−associated virus、AAV)、レトロウイルス(retrovirus)のようなウイルス性伝達体とリポソーム及びポリエチレンイミンのような非ウイルス性伝達体がある。
遺伝子治療の戦略のうち腫瘍細胞を制御する戦略としては、腫瘍抑制遺伝子を利用する方法、腫瘍選択的殺傷ウイルスを利用する方法、自殺遺伝子を利用する方法及び免疫調節遺伝子を導入する方法などがある。具体的に、腫瘍抑制遺伝子を利用する方法は、相当数の癌患者で遺伝子が欠乏または変形されているp53のような腫瘍抑制遺伝子を原型で人体に伝達し、癌を治療する方法であり、腫瘍選択的殺傷ウイルスを利用する方法は、癌組織で変形されている腫瘍抑制遺伝子の活性を利用して腫瘍細胞だけで選択的に増殖することができるウイルス遺伝者伝達体を人体に導入して治療する方法であって、両方が共に、腫瘍細胞を直接的に死滅させる戦略である。また、自殺遺伝子を利用する方法、例えば、HSK−TKのような感受性遺伝子を導入して腫瘍細胞の自殺を誘導する方法も、このような範疇に含まれる。一方、免疫調節遺伝子を導入する方法は、抗腫瘍免疫反応を増加させるインターロイキン12(IL−12)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン7(IL−7)、ガンマインターフェロン(γ−interferon)及び腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)などの遺伝子を人体に伝達することによって、T細胞を媒介として腫瘍を認識するように誘発するか、または腫瘍誘発タンパク質を遮断することによって、細胞自殺を誘導し、間接的に疾病を治療する戦略である。
上記のように、癌を治療する多様な方法のうち遺伝子治療において本発明者は、代表的遺伝子としてANT2(adenine nucleotide translocator 2)を選択し、効果的で且つ安全な抗癌治療剤の開発に重点を置いて来た。アデニンヌクレオチドトランスロケータ(ADP/ATP translocator、ANT)は、ミトコンドリア内膜(inner membrane、IM)に存在する酵素であって、外膜(outer membrane、OM)のVDAC(電位依存性陰イオンチャネル(voltage dependent anion channel))を通じて細胞質からミトコンドリア内部にADPを伝逹(import)し、電子伝達系(electron transfer chain system)を経て生成されるATPを細胞質に放出(export)する機能を行う酵素として知られている(HLA Vieira、et al.、Cell Death and Differentiation、7、1146−1154、2000)。
これに加えて、細胞のエネルギー代謝に必須な役目を行うANTは、3個のアイソフォーム(isoform)であるANT1、ANT2及びANT3が知られており、このうち、特にANT2は、正常細胞では発現が低いが、癌細胞または増殖能が高い細胞では、非常に高く発現される特徴を有しているが、これは、嫌気性状態(anaerobic condition)での解糖(glycolysis)反応と密接な関連があり、また、最近には、新しい癌治療の標的として提示されたことがある(Chevrollier、A、et al.、Med.Sci.、21(2)、156−161、2005)。
本発明者は、ANT2 mRNA発現水準を特異的に減少させることができるANT2 siRNAまたはANT2 shRNAが乳房癌細胞の転移を特異的に抑制するだけでなく、乳房癌幹細胞を治療することができることを知見し、本発明に至った。したがって、本発明の目的は、乳房癌治療用組成物及び乳房癌幹細胞を治療する方法などを提供することにある。具体的に、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌治療用組成物、及びANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌幹細胞治療用組成物などを提供する。
本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌治療用組成物であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする組成物を提供する。
本発明の一実施形態において、上記ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAは、配列番号3で記載したアンチセンス(anti−sense)配列が配列番号1で記載したセンス(sense)配列と結合し、ANT2 mRNAの分解を誘導することを特徴とする。
本発明の他の実施形態において、上記組成物は、HER2/neu(ヒト上皮成長因子受容体2(human epidermal growth factor receptor 2))の発現を低下させることを特徴とする。
本発明のさらに他の実施形態において、上記組成物は、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TNF−related apoptosis−inducing ligand))の乳房癌治療効果を増加させることを特徴とする。
本発明のさらに他の実施形態において、上記組成物は、乳房癌細胞表面のDR4(死受容体4(death receptor 4))及びDR5(死受容体5(death receptor 5))の発現を増加させ、DcR1(死デコイ受容体1(death decoy receptor 1))及びDcR2(死デコイ受容体2(death decoy receptor 2))の発現を減少させることを特徴とする。
本発明のさらに他の実施形態において、上記組成物は、p53タンパク質の発現及び活性を増加させることを特徴とする。
また、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌幹細胞治療用組成物を提供する。
本発明の一実施形態において、上記組成物は、ABCG2(ATP結合カセットサブファミリーGメンバー2(ATP−binding cassette sub−family G member 2))の発現及び活性を減少させることを特徴とする。
本発明の他の実施形態において、上記組成物は、抗癌剤と併用投与時に抗癌剤に対する癌細胞の反応性を増加させ、耐性を減少させて、乳房癌治療効果を増進させることを特徴とする。
上記抗癌剤は、ドキソルビシン(doxorubicin)を含む。
また、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを患者に投与し、乳房癌を治療する方法であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする方法を提供する。
また、本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを患者に投与し、乳房癌幹細胞を治療する方法を提供する。
本発明のANT2 siRNAまたはANT2 shRNAは、乳房癌細胞のANT2遺伝子発現を減少させて、効果的に細胞死滅を誘導するだけでなく、TRAIL耐性を克服することができる長所を有している。特に、本発明のANT2 siRNAまたはANT2 shRNAは、乳房癌細胞の転移を抑制する効果を示す。これに加えて、乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells)でも治療効果が確認され、これにより、乳房癌幹細胞治療剤としての可能性が期待される。窮極的に、本発明は、乳房癌細胞転移抑制効果及び抗癌剤耐性を克服することができる優れた効能を有する乳房癌治療剤を提供することができ、ひいては、乳房癌幹細胞治療剤の開発に利用されることができるものと期待される。
本発明は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌治療用組成物であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする組成物を提供する。具体的に、本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAが乳房癌細胞の他の組職への移動及び浸潤を抑制することを知見し、本発明を完成するに至った。
乳房癌細胞は、細胞表面に発現する上皮成長因子受容体(EGFR:Epidermal growth factor receptor)を通じて細胞内に特定の信号伝逹体系を活性化させて、細胞の増殖、生存、他の組職への移動と浸潤を可能にすると知られている。特に上皮成長因子受容体(EGFR)のうちHER2/neuの場合、乳房癌患者の30%程度が癌細胞の表面に過発現していると報告されており、HER2/neuが過発現されている場合、治療の予後が悪く、抗癌治療に対する強い耐性(multi−drug resistance)を示すと知られている。また、HER2/neuを通じて活性化される代表的な信号伝達体系としては、PI3K/Akt信号伝達体系が知られており、この信号伝達体系の活性が乳房癌細胞の増殖、生存、他の組職への移動と浸潤に関与すると報告されている。したがって、HER2/neuの発現を低減するか、またはHER2/neuを用いた信号伝達体系の活性を妨害する方法を利用して乳房癌を治療しようとする様々な試みが現在なされている。
本発明者は、乳房癌細胞で過発現し、乳房癌細胞のエネルギー生産(ATP production)に決定的な役目をすると知られたANT2遺伝子に対してANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを利用して発現を抑制させた場合、癌細胞が生きて行くのに必要なエネルギー供給が円滑ではないため、癌細胞の死滅をもたらすと共に、これに加えて癌細胞が他の組職に移動するかまたは浸潤することを防止し、転移を抑制させることができることを知見した。
一方、乳房癌細胞表面のHER2/neuの発現は、HSP90(熱ショックタンパク質90(Heat shock protein 90))というタンパク質によって維持されると報告されており、HSP90タンパク質は、ATPが結合するとき、その機能を行うことができると知られている。したがって、本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを利用して癌細胞内のATPを欠乏させるようになれば、HSP90に十分なATPが結合せず、すなわちHSP90が本来の機能を行わないので、HER2/neuの分解が促進されると予想し、HER2/neuの分解は、HER2/neuを用いたPI3K/Akt信号伝達体系の活性弱化につながって、結局、乳房癌細胞が他の組職に移動し浸潤することができる能力が減少するという仮説を立てた。これを検証するために、人間乳房癌細胞株のうちHER2/neuが高く発現していると知られたSK−BR3という人間乳房癌細胞株を対象としてANT2 shRNAを導入させて、ANT2発現を低下させた。その結果、細胞内ATP欠乏がHSP90タンパク質の活性を低下させて、HER2/neu発現を減少させることを観察し、これに加えて、HER2/neuを用いたPI3K/Akt信号伝達体系の活性が弱化され、乳房癌細胞の他の組職への移動と浸潤能力が抑制されるということを実験的に確認した。
本発明の他の局面は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌治療用組成物であって、TRAILの乳房癌治療効果を増加させることを特徴とする組成物を提供する。
腫瘍死滅因子であるTRAIL/apo2リガンドは、正常細胞は殺さず、癌細胞のみを選択的に殺すという長所を有している。しかし、TRAILを抗癌剤として使用するにあたって、癌細胞がこれに対して耐性を有するという限界を有していて、これを克服するための様々な研究が行われている。したがって、本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを利用してTRAILに対する耐性を克服する方案を模索しようとした。
本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを乳房癌細胞に導入する場合、TRAILによる癌細胞の死滅を増加させ、細胞培養条件(in vitro)と動物モデルで(in vivo)TRAILによる腫瘍成長抑制効果を増幅させるということを確認した。この際、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAがTRAILによる乳房癌細胞死滅効果を増幅させる機作でTRAIL受容体(TRAIL receptor)の発現を調節するということを明らかにした。TRAILの受容体には、DR4(TRAILR1:TRAIL receptor 1)とDR5(TRAILR2:TRAIL receptor 2)があり、DR4とDR5にTRAILが結合する場合、細胞内に細胞死滅の信号が伝達され、癌細胞が死に至るようになる。しかし、TRAILの受容体のうちDcR1(デコイ受容体1(decoy receptors 1):TRAILR3)とDcR2(デコイ受容体2(decoy receptors 2):TRAILR4)の場合、DR4とDR5による癌細胞死滅から癌細胞を保護する役目をするようになる。すなわちTRAILがDcR1とDcR2に結合する場合、癌細胞の内部に正常な細胞死滅信号が伝達されない。すなわち、癌細胞がTRAILに対して耐性を示す原因には、様々な理由があるが、癌細胞表面のDR4とDR5の発現が減少し、DcR1とDcR2の発現が増加することが重要な原因として作用すると知られている。本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAによる癌細胞内部の信号伝逹体系の変化が癌細胞表面のDR4とDR5の発現を増加させ、DcR1とDcR2の発現を減少させて、TRAILに対する反応性を高め、耐性を克服することができるということを糾明した。
結論的に、本発明者は、乳房癌細胞を治療するにあたって、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAがTRAILに対する治療効果を増幅させることができ、TRAILに対する耐性を克服することができるということを細胞培養実験(in vitro)と動物実験(in vivo)を通じて最初に糾明し、その機作は、TRAIL受容体の発現調節によるものであることを最初で実験的に証明した。
本発明のさらに他の局面は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを有効成分として含有する乳房癌幹細胞治療用組成物を提供する。
現在、乳房癌細胞を対象として抗癌治療と放射線治療が行われているが、最大の問題点は、治療以後に新しい腫瘍が生成される現象(癌の再発)が現われることである。これは、癌の塊を構成する癌細胞は効果的に殺すことができるが、癌の塊を構成する細胞のうち非常に少ない数字を占める乳房癌幹細胞(breast cancer stem cells)が生き残って新しい腫瘍を生成するようになるためと考えられる。したがって、乳房癌幹細胞を効果的に除去することができる治療法を開発することが非常に重要であり、本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAが乳房癌幹細胞治療剤として効果を有することを明らかにした。
本発明者は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAの乳房癌幹細胞治療剤としての可能性と効果を確認するために、乳房癌幹細胞で乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells)に該当するCD44+/CD24−細胞集団のみを分離し、実験を進行した。具体的に、乳房上皮細胞であるMCF10Aに発現するE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて、人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)への分化を誘導し、ANT2 shRNAの治療効果を確認した。これは、上皮細胞が間葉細胞(mesenchymal cell)に転換されるとき(epithelial−to−mesenchymal transition、EMT)、乳房癌幹細胞の特性を有すると知られたことに基礎したものである。そして、乳房癌幹細胞内にANT2 shRNAを効果的に伝達するために、アデノウイルスシステムを利用した。すなわちANT2 shRNAを発現するアデノウイルスを製作生産し、乳房癌幹細胞に感染させて使用した。その結果、乳房癌幹細胞の特徴を有する2つの細胞集団においていずれも効果的にANT2 shRNAによって細胞死滅が誘導され、乳房癌幹細胞の抗癌剤耐性を克服し、抗癌剤に対する効果を増幅させるという結果を得ることができた。
また、上記本発明の組成物は、既存の抗癌剤治療法(例えば、ドキソルビシン(doxorubicin))を並行する場合、抗癌剤に対する反応性を高め、耐性を減少させて、乳房癌治療効果を増進させることを特徴とする。
本発明のさらに他の局面は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを患者に投与し、乳房癌を治療する方法であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする方法を提供する。
本発明のさらに他の局面は、ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAを患者に投与し、乳房癌幹細胞を治療する方法を提供する。
上記投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与回数、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによってその範囲が多様に調節されることができることは当業者に明白である。
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより易しく理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
ANT2 shRNA発現ベクターの製作
米国国立生命工学情報センター(Nationanl Center for Biotechnology Information、NCBI、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手したANT2 mRNA塩基配列は、Genebank Accession No.NM_001152である。この塩基配列をsiRNA予測プログラム(http://www.ambion.com/technical、resources/siRNA target finder)に代入し、適合なANT2 siRNA候補塩基配列を確保し、様々な候補塩基配列のうち、ANT2 mRNAの二番目エクソンに該当する塩基配列である5'GCAGAUCACUGCAGAUAAG3'に結合するsiRNAを製作し、ANT2 siRNAによるANT2 mRNAの減少(silencing)効果を細胞水準(in vitro)で確認した[この際、ANT2 siRNA製作は、Bioneer(韓国)に依頼した]。
米国国立生命工学情報センター(Nationanl Center for Biotechnology Information、NCBI、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手したANT2 mRNA塩基配列は、Genebank Accession No.NM_001152である。この塩基配列をsiRNA予測プログラム(http://www.ambion.com/technical、resources/siRNA target finder)に代入し、適合なANT2 siRNA候補塩基配列を確保し、様々な候補塩基配列のうち、ANT2 mRNAの二番目エクソンに該当する塩基配列である5'GCAGAUCACUGCAGAUAAG3'に結合するsiRNAを製作し、ANT2 siRNAによるANT2 mRNAの減少(silencing)効果を細胞水準(in vitro)で確認した[この際、ANT2 siRNA製作は、Bioneer(韓国)に依頼した]。
この結果に基づいて、shRNAを製作するために、次のような塩基配列のオリゴマー二本を合成し[この際、ANT2 siRNA製作は、Bioneer(韓国)に依頼した]、
上記二本のオリゴマーを結合(annealing)させた後、pSilencer 3.1−H1 puroプラスミドベクター(Ambion社)のMCS(multi−cloning site)内のBamHIとHindIII部位にクローニングして製作した。この際、上記センス配列に引き続いて、siRNA発現誘導の効率を増加させるようにTTを添加した。また、ANT2 shRNAの効果を確認するために進行したすべての実験には、ANT2発現を遮断せず、細胞内の特定mRNAの発現には影響を及ぼさないスクランブル(scrambled)shRNAを陰性対照群として使用し、これは、同一の条件を提供する役目をするもので、Ambion社で購入して使用した。
上記ベクターから発現されるshRNAの塩基配列は、配列番号1〜3で配列目録に別に記載した。
実施例1.HER2/neuの発現に対するANT2 shRNAの効果
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3の表面に高く発現するHER2/neuがANT2 shRNAの導入によって減少することを流動細胞分析機(FACS:flow cytometry and cell sorting)を通じて確認した。
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3の表面に高く発現するHER2/neuがANT2 shRNAの導入によって減少することを流動細胞分析機(FACS:flow cytometry and cell sorting)を通じて確認した。
この際、ANT2 shRNAを乳房癌細胞株であるSK−BR3に導入するために使用された方法は、非ウイルス性伝達体であるLipofectamineTM2000(Invitrogen製品)という物質を使用し、細胞内にshRNAが入る原理は、LipofectamineTM2000の正電荷を呈する親水性部分とshRNAの負電化が互いに相互作用することにより結合体を作って、LipofectamineTM2000が細胞膜と融合し、shRNAが細胞内に入るようになる。
具体的に、流動細胞分析機を利用した実験は、細胞表面に発現するHER2/neuと結合する抗体を付着し[1次抗体:anti−human HER2/neu antibody(Santa Cruz biotechnology、Heidelberg、Germany)]、この抗体に結合する抗体である2次抗体(FITC−conjugated−anti−−rabbit−IgG:Santa Cruz biotechnology、Heidelberg、Germany)を付着した。2次抗体の場合、蛍光物質が結合されていて、流動細胞分析機がこれを認知するようになり、HER2/nenが発現されている細胞と発現されていない細胞を区分するようになる。その結果、SK−BR3は、HER2/neuを高く発現するようになるが(scshRNA)、ANT2 shRNAを導入する場合、HER2/neuの発現が減少することを確認した(図1参照)。
また、本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3にANT2 shRNAを導入させてANT2発現を減少させ、細胞からタンパク質を抽出し、HER2/neuとHSP90の相互作用(interaction)の変化を確認した。具体的に、まず、HER2/neuと結合する抗体[anti−human HER2/neu antibody:Santa Cruz biotechnology(Heidelberg、Germany)]で免疫沈降(immuno−precipitation)をさせ、HSP90に結合する抗体[anti−human HSP90 antibody:SantaCruz biotechnology(Heidelberg、Germany]でタンパク質発現程度(western−blot)を確認し、その結果を図2に示した。
図2に示されたように、ANT2 shRNAによってANT2発現が減少した場合、HER2/neuとHSP90の相互作用が減少し、細胞内でタンパク質が分解される前に現われる現象であるユビキチン化(ubiquitination)が増加していることを確認した。すなわちANT2 shRNAによってHER2/neuとHSP90との相互作用が減少し、そのため、HER2/neuのユビキチン化が増加し、HER2/neuの分解が増加するので、結果的に、HER2/neu発現が減少することを確認した。この際、陽性対照群(positive control)として17−AAGというHSP90抑制薬物[HSP inhibitor/17−AAG(17−allylamino−17−demethoxygeldanamycin):A.G.Scientific Inc.(San Diego、CA)]を使用し、実験に使用されたタンパク質の量が同一であることを示すために、細胞骨格を構成するタンパク質として細胞外部や内部の変化に影響を受けないbeta−actinタンパク質の量が同一であることを示す[anti−beta−actin antibody:Cell signaling Tech.(Beverly、MA)]。
実施例2.Akt活性変化に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌細胞株であるSK−BR3に高く発現されているHER2/neuは、Aktというタンパク質を活性化させ、活性化されたAktは、乳房癌細胞の生存を維持する機作だけでなく、他の組職への移動と浸潤に関与すると知られており、Aktの活性化は、特定アミノ酸のリン酸化(phosphorylation)程度を通じて確認することができる。
乳房癌細胞株であるSK−BR3に高く発現されているHER2/neuは、Aktというタンパク質を活性化させ、活性化されたAktは、乳房癌細胞の生存を維持する機作だけでなく、他の組職への移動と浸潤に関与すると知られており、Aktの活性化は、特定アミノ酸のリン酸化(phosphorylation)程度を通じて確認することができる。
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3にANT2 shRNAの導入させて活性化されたAktタンパク質の量(phosphorylated Akt)を確認した[Anti−Akt and anti−phospho−Akt antibodies:Cell signaling Tech.(Beverly、MA)]。その結果、普段高い活性度を示すAktがANT2 shRNAの導入によって減少することを確認することができ、陽性対照群としてHSP90抑制薬物である17−AAGを使用したが、これは、HSP90を抑制し、HER2/neuを用いたAktの活性を抑制させると知られている(図3A参照)。
また、ANT2 shRNAがAktの活性を低下させるということを再確認する実験を行った。ANT2 shRNAによってANT2発現が減少するとき、減少したリン酸化した−Akt(phospho−Akt)の量が、ANT2を過発現させるベクターを導入し、ANT2の発現を増加させるとき、さらに回復することを確認し、陽性対照群としてAktのリン酸化を誘導するタンパク質であるPI3Kの抑制薬物[LY294002:Calbiochem(San Diego、CA)]を使用した(図3B参照)。
これに加えて、本発明者は、ANT2 shRNAがAktの活性を低下させることと関連して、HSP90がAktとも相互作用をしているという報告に基づいてANT2 shRNAがHSP90の活性を低下させ、そのため、Aktとの相互作用が低下するかを確認する実験を行った。
まず、HSP90と結合する抗体[HSP inhibitor/17−AAG(17−allylamino−17−demethoxygeldanamycin):A.G.Scientific Inc.(San Diego、CA)]で免疫沈降(immuno−precipitation)をさせ、Aktと結合する抗体[Anti−Akt antibody:Cell signaling Tech.(Beverly、MA)]でタンパク質発現程度(western−blot)を確認した。その結果、ANT2 shRNAによってHSP90とAktとの相互作用が減少し、活性化されたAkt(phospho−Akt)の量が減少することを確認した(図3C参照)。上記結果は、ANT2 shRNAによるHSP90の活性度低下は、HSP90とAktとの相互作用を減少させるだけでなく、Aktの活性度を抑制させるということを意味する。
実施例3.VEGFの生産に対するANT2 shRNAの効果
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3にANT2 shRNAを導入させる場合、Akt活性が低下し(PI3K/Akt信号伝逹体系の弱化)、窮極的に、癌細胞周辺の新生血管形成(angiogenesis)に関与するVEGFタンパク質の生産を低下させることを確認した。
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3にANT2 shRNAを導入させる場合、Akt活性が低下し(PI3K/Akt信号伝逹体系の弱化)、窮極的に、癌細胞周辺の新生血管形成(angiogenesis)に関与するVEGFタンパク質の生産を低下させることを確認した。
具体的に、ANT2 shRNAを細胞に導入した後、一定時間(24h)培養し、全体RNAs(total RNAs)を抽出した後、mRNAのみをoligo−dTを利用して(mRNA3’末端にpoly Tがあることを利用する)逆転写反応を通じてcDNAを合成した後、VEGF(血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor))に特異的に結合するプライマーを利用してVEGFの発現を分析した。
図4Aに示されたように、ANT2 shRNAを乳房癌細胞株であるSK−BR3に導入させる場合、新生血管形成(angiogenesis)に関与するVEGF mRNAの発現が減少することを逆転写重合酵素増幅反応(RT−PCR)を通じて確認した。
また、VEGFの細胞内タンパク質の量が減少することを流動細胞分析機(FACS:flow cytometry and cell sorting)を通じて確認した。この際、VEGFは、細胞内で生産されてから、細胞外に分泌されるタンパク質なので、これを阻止するために、BFA(brefeldin A)という薬物を処理し、細胞内に蓄積させた後、VEGFタンパク質の量の差異を比較した。具体的に、BFAを処理して細胞内にVEGFを蓄積させた後、細胞膜に孔を形成し、VEGFと結合する1次抗体[anti−VEGF antibody:BD Pharmingen(San Diego、CA)]を細胞内に投入し、VEGFと結合させ、次に、蛍光物質が結合された2次抗体[FITC−conjugated−anti−mouse IgG antibody:BD Pharmingen(San Diego、CA)]を1次抗体と結合させた後、流動細胞分析機で分析した(図4B参照)。
これに加えて、ANT2 shRNAがVEGFのmRNA発現を低下させることを再確認する実験を行った。ANT2を過発現するベクター(pcDNA3.0−ANT2expression vector)を導入させてANT2の発現を増加させる場合、VEGF mRNAの発現が回復することを確認し、陽性対照群としてAktのリン酸化を誘導するタンパク質であるPI3Kの抑制薬物(LY294002)を使用した(図4C参照)。これは、PI3K/Akt信号伝逹体系の活性によってVEGFmRNA発現が誘導されるという事実に基づくものである。
実施例4.MMPs発現及び活性に対するANT2 shRNAの効果
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3にANT2 shRNAを導入させる場合、Akt活性が低下し(PI3K/Akt信号伝逹体系の弱化)、癌細胞周辺の組職(ECM:extracellular matrix)を分解し、癌細胞の移動と浸潤に関与するタンパク質であるMMPs(マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinases))の発現と活性を低下させることを確認した。
本発明者は、人間乳房癌細胞株であるSK−BR3にANT2 shRNAを導入させる場合、Akt活性が低下し(PI3K/Akt信号伝逹体系の弱化)、癌細胞周辺の組職(ECM:extracellular matrix)を分解し、癌細胞の移動と浸潤に関与するタンパク質であるMMPs(マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinases))の発現と活性を低下させることを確認した。
具体的に、MMPsのうちVEGFによって発現が調節されると報告されているMT1−MMPの発現変化を調査し、次に、MT1−MMPによって発現と活性が調節されると知られているMMP2とMMP9の発現と活性の変化を観察した。
まず、ANT2 shRNAを乳房癌細胞株であるSK−BR3に導入させる場合、癌細胞周辺組職の分解に関与するMT1−MMPのmRNAの発現が減少することを逆転写重合酵素増幅反応(RT−PCR)を通じて確認し(図5A参照)、且つ、MT1−MMPのタンパク質の量が減少することを確認した(Western−blot)(図5B参照)。
また、ANT2 shRNAがMT1−MMPのmRNA発現を低下させることを再確認するために、PI3Kを過発現するベクター[wild−type PI3K/p110 vectors(provided by Dr.Karin Reif)]を導入させて人為的にPI3K/Akt信号伝達体系を活性化させる場合、MT1−MMPmRNAの発現が回復することを逆転写重合酵素増幅反応(RT−PCR)で確認し(図6A参照)、且つ、MT1−MMPのタンパク質の量が回復することを確認した(Western−blot)(図6B参照)。
これに加えて、ANT2 shRNAを乳房癌細胞株であるSK−BR3に導入させる場合、MT1−MMPによって調節されるMMP2 mRNA及びMMP9 mRNAの発現が減少することを逆転写重合酵素増幅反応(RT−PCR)を通じて確認した(図7A参照)。この際、実験に使用されたmRNA量が同一であることを示すために細胞外部や内部の変化に影響を受けないGAPDH遺伝子のmRNAの量が同一であることを示した。且つ、ANT2 shRNAを乳房癌細胞株であるSK−BR3に導入させる場合、MT1−MMPによって調節されるMMP2とMMP9のタンパク質の活性が減少することをゼラチンザイモグラフィ(Gelatin Zymography)を通じて確認し、この際、MMP2とMMP9のゼラチン分解能力が大きいほど、白色バンドが強く現われ、活性化形態(active form)のMMP2とMMP9の量が増加することを観察した(図7B参照)。
実施例5.乳房癌細胞株の移動能力と他の組職への浸潤能力に対するANT2 shRNAの効果
上記実施例4から、ANT2 shRNAの導入で癌細胞の移動と浸潤に関与するタンパク質であるMMPs(Matrix metalloproteinases)の発現と活性が低下することを確認し、これに加えて、実際に癌細胞の移動能力と浸潤能力がどれほど低下したかを観察するために下記実験を行った。
上記実施例4から、ANT2 shRNAの導入で癌細胞の移動と浸潤に関与するタンパク質であるMMPs(Matrix metalloproteinases)の発現と活性が低下することを確認し、これに加えて、実際に癌細胞の移動能力と浸潤能力がどれほど低下したかを観察するために下記実験を行った。
ANT2 shRNAが癌細胞の浸潤と移動能力を低下させることができることを確認するために、マトリゲル浸潤アッセイ(matrigel invasion assay)及びトランスウェル遊走アッセイ(transwell migration assay)を実施した。マトリゲル浸潤アッセイは、マトリゲル(matrigel)を分解して移動した癌細胞を染色することによって、癌細胞の浸潤能力を分析する方法である。具体的に、ANT2 shRNAを導入した乳房癌細胞株(SK−BR3)を18時間培養し、これをマトリゲル浸潤チャンバー(materigel invasion chamber)(Becton Dickinson labware、USA)の上層に100μLの0.1%BSA、α−MEMに細胞(2×104細胞)が入っているようにして培養した。24時間後、上部の培地を除去し、PBSで3回洗浄した後、耳掻きで上部の細胞を除去した。Matrigelを通過してウェルの外側の底部に付いている細胞を10%ホルマリンで10分間固定し、0.1%クリスタルバイオレットで20分間染色した。染色された細胞の数を顕微鏡下で計測した。そして、癌細胞の移動能力を比較確認するために、トランスウェル遊走アッセイ方法を利用した。まず、細孔径8μmのtranswell insert(Corning)の下面をgelatin(Sigma)でコーティングした後、transwell insertの内部に細胞浮遊液をそれぞれ添加した。この際、外部容器には、10ng/mLのbFGF(Sigma)を添加した無血清培地を入れた。一定時間(18時間)培養が終了すれば、insertの内面を耳掻きで拭いて、移動しない内皮細胞を除去し、下方に移動した細胞の数はDiff−Quick溶液で染色し、200倍顕微鏡視野で計測した。
その結果、ANT2 shRNAを導入した場合、マトリゲルとトランスウェルを通過し、染色される細胞の数が減少することを確認し、これを通じて癌細胞の浸潤と移動能力が減少したことを確認することができた(図8参照)。
実施例6.TRAILに対する反応性に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌細胞株にANT2 shRNAを導入する場合、TRAILに対する反応性(癌細胞死滅)に対する効果を考察した。
乳房癌細胞株にANT2 shRNAを導入する場合、TRAILに対する反応性(癌細胞死滅)に対する効果を考察した。
この実験では、乳房癌細胞株としてTRAILに対して耐性を示すMCF7、及びTRAILに対して高い反応性を示すMDA−MB−231を使用した。MCF7及びMDA−MB−231を対象としてTRAILを濃度別に処理した後、細胞の死滅程度をCCK8試薬を利用して確認した。CCK8分析法は、生きている細胞を計測する方法である。具体的に、細胞培養液100μL(1x104細胞/ウェル)を各ウェルに分株し、TRAILを最終濃度が1μg/mLで0になるように10倍ずつ階段希釈して、処理した後、12時間培養し、CCK8試薬を10μL添加した後、適当時間(4時間)CO2インキュベータで培養し、450nmで吸光度を測定し、細胞の死滅程度を測定した。
その結果、MDA−MB−231の場合、TRAILによって効果的な死滅が誘導される一方で、MCF7細胞の場合、TRAILによる細胞死滅がほとんど誘導されないことを観察した(図9A参照)。この際、使用した実験方法は、培養する細胞にCCK8試薬を入れる場合、生きている細胞だけが色の変化が現われ、特定波長で吸光度を測定し、細胞の生存率を確認する方法だ。
乳房癌細胞株のうちTRAILに対して耐性を示すMCF7細胞は、100ng/mLで細胞死滅が誘導されない。しかし、MCF7細胞にANT2 shRNAを導入する場合、ANT2 shRNA単独によっても細胞死滅が誘導されるが(〜25%)、TRAILと同時処理する場合、細胞死滅が誘導されなかったTRAIL単独効果とは異なって、細胞死滅が強く誘導されることを(〜65%)CCK8試薬を通じて確認した(図9B参照)。この際、ANT2 shRNAの導入によって細胞内のANT2タンパク質発現が減少することをWestern−blotで確認した。TRAILに対する陰性対照群としては、PBSを使用し、ANT2 shRNAに対する陰性対照群としては、特定mRNAの発現に影響を及ぼさないsc shRNA(scrambled shRNA)を導入した。
次に、TRAILに対して耐性を示すMCF7細胞に対してTRAIL単独処理時に、ANT2 shRNA単独導入時に、ANT2 shRNAとTRAILを同時処理時に細胞死滅程度を顕微鏡で観察し、その結果を図9Cに示した。図9Cに示されたように、ANT2 shRNAとTRAILを同時処理時に細胞死滅が最も強く誘導されることが分かる。また、乳房癌細胞株のうち、TRAILに対して耐性を有すると報告されているT47DとBT474細胞株においても、同一の方法で上記実験を実施した結果、MCF7と同一の効果を示すことを観察した(図10A参照)。この際、CCK8試薬を通じて細胞死滅程度を定量化した。
これに加えて、TRAILに対する反応性が増加した理由は、ANT2 shRNAによるANT2発現減少によるものであることを再確認するために、ANT2遺伝子を発現するベクター(pcDNA−ANT2)を利用して人為的にANT2を過発現させて、TRAILによる細胞死滅が抑制されることを観察し、CCK8試薬を通じて細胞死滅程度を定量化した(図10B参照)。pcDNA−ANT2に対する陰性対照群としては、何らの遺伝子も発現しない空きのベクター(empty vector)であるpcDNAベクターを導入し、ANT2 shRNAによってTRAILに対する反応性が増加し、細胞死滅が誘導されるとき、細胞死滅によって隋伴される細胞内タンパク質の変化(PARPタンパク質の開裂(cleavage)、カスパーゼ−8/9/7タンパク質の開裂、Bidタンパク質の切断(truncation))をWestern−blotで確認した。
また、ANT2 shRNAとTRAILによる細胞死滅がミトコンドリアを媒介として行われるので、破壊されるとき、ミトコンドリアから細胞質に流出されるタンパク質であるシトクロムC量の変化を観察した。同一の量のミトコンドリアタンパク質が実験に使用されたことをミトコンドリアタンパク質であるCOX IVタンパク質の量に変化がないことから確認した。その結果、TRAIL単独によっては細胞死滅によって誘導されるタンパク質の変化が観察されなかったが、ANT2 shRNAとTRAILを同時に処理したとき、ANT2 shRNA単独よりもさらに大きい変化が観察されることを確認した(図10C参照)。すなわち、細胞内のタンパク質変化を通じてANT2 shRNAがTRAILによる細胞死滅を増加させたことをもう一度確認した。
実施例7.TRAIL受容体発現に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌細胞株のうちTRAILに対して互いに異なる反応性を示すMCF7とMDA−MB−231細胞株を対象としてTRAILと結合する受容体であるDR4、DR5、DcR1、およびDcR2の発現程度をWestern−blotで確認した。
乳房癌細胞株のうちTRAILに対して互いに異なる反応性を示すMCF7とMDA−MB−231細胞株を対象としてTRAILと結合する受容体であるDR4、DR5、DcR1、およびDcR2の発現程度をWestern−blotで確認した。
DR4とDR5の場合、TRAILが結合すれば、正常な細胞死滅信号を細胞内部に伝達するが、DcR1とDcR2の場合、TRAILが結合しても、細胞死滅信号を伝達しない。すなわちDR4とDR5の発現は高いほど、DcR1とDcR2の発現は低いほど、TRAILに対する反応性が高くなることができる。
図11Aに示されたように、TRAILに対する反応性が低いMCF7細胞の場合、DR4とDR5の発現は低く、DcR1とDcR2の発現は高く観察され、TRAILに対する反応性が高いMDA−MB−231細胞の場合、DR4とDR5の発現は高く、DcR1とDcR2の発現は低く観察された。
次に、ANT2 shRNAを導入時にTRAIL受容体発現の変化を調査し、その結果を図11Bに示した。図11Bに示されたように、ANT2 shRNAの導入がDR4とDR5の発現を増加させ、DcR1とDcR2の発現を減少させることが分かる。乳房癌細胞株のうち、TRAILに対して耐性を有すると報告されているT47DとBT474細胞株でもMCF7と同一の効果を観察した。すなわちANT2 shRNAの導入がDR4とDR5の発現を増加させ、DcR1とDcR2の発現を減少させることを観察した(図11C参照)。
実施例8.p53の活性に対するANT2 shRNAの効果
ANT2 shRNAの導入がDR4とDR5の発現を増加させる機作を糾明する実験を行った。腫瘍抑制因子であるp53は、DR4とDR5の発現を誘導すると報告されているので、これを根拠としてANT2 shRNAの導入がp53タンパク質の発現を増加させるか、そして、活性化されたp53タンパク質(phosphorylated−p53)の量が増加するかどうかを確認するために、ANT2 shRNAを導入させて活性化されたp53タンパク質の量(phosphorylated p53)とp53タンパク質の量を確認した[anti−Thr81 phospho−p53及びanti−p53 antibodies:Santa Cruz Biotechnology(Heidelberg、Germany)]。
ANT2 shRNAの導入がDR4とDR5の発現を増加させる機作を糾明する実験を行った。腫瘍抑制因子であるp53は、DR4とDR5の発現を誘導すると報告されているので、これを根拠としてANT2 shRNAの導入がp53タンパク質の発現を増加させるか、そして、活性化されたp53タンパク質(phosphorylated−p53)の量が増加するかどうかを確認するために、ANT2 shRNAを導入させて活性化されたp53タンパク質の量(phosphorylated p53)とp53タンパク質の量を確認した[anti−Thr81 phospho−p53及びanti−p53 antibodies:Santa Cruz Biotechnology(Heidelberg、Germany)]。
図12Aに示されたように、ANT2 shRNAの導入がp53タンパク質の発現と活性を増加させることが分かる。
次に、ANT2 shRNAの導入がp53タンパク質の活性を増加させ、実際にp53 DNAに結合し、遺伝子発現を誘導する能力が増加したことをレポーター遺伝子分析法(reporter gene assay)を通じて確認した。この分析法は、特定タンパク質がDNAに結合し、遺伝子発現を誘導する場合、レポーター役目をする遺伝子発現が誘導され、誘導された遺伝子の発現程度を吸光度を測定して定量化する方法である。具体的に、ANT2 shRNAとp53タンパク質が結合するプローモータ(promoter)を有するルシフェラーゼ(luciferase)を発現するベクター(pGL−p53 binding site−luciferase expression vector)を同時に導入させて、一定時間細胞を培養した後、発現されたルシフェラーゼと反応する基質を入れ、ルシフェラーゼの活性度をルミノメータ(luminometer)(FB12 luminometer;Berthold Detection Systems、Pforzheim、Germany)で測定した。
図12Bに示されたように、 ANT2 shRNAを導入する場合、p53によってレポーター遺伝子の発現が著しく増加されることが分かる。ANT2 shRNAに対する陰性対照群としては、特定mRNAの発現に影響を及ぼさないsc shRNA(scrambled shRNA)を導入した。上記結果は、ANT2 shRNAがp53タンパク質の遺伝子発現誘導能力を増加させることを意味する。
また、ANT2 shRNAの導入がp53タンパク質の発現と活性を誘導し、これを通じてTRAIL受容体であるDR4とDR5の発現が増加することを再確認する実験を行った。その結果、図12Cに示されたように、p53タンパク質の活性を抑制するp53抑制物質[p53 inhibitor(pifithrin−alpha):Biovision(Z、Switzerland)]を前処理する場合、ANT2 shRNAによるDR4とDR5の発現増加が抑制されることを確認した(Western−blot)。
これに加えて、ANT2 shRNAの導入がp53タンパク質の発現と活性を誘導し、これを通じてTRAILに対する反応性を増加させることを再確認するために、p53タンパク質の活性を抑制するp53抑制物質(p53 inhibitor:pifithrin−alpha)を処理した場合、ANT2 shRNAによるTRAILの細胞死滅増加効果が抑制されることを確認した。この際、CCK8試薬を通じて細胞死滅程度を定量化し、p53 抑制物質に対する陰性対照群としてPBSを使用した(図13参照)。
上記結果から、乳房癌細胞株にANT2 shRNAを導入する場合、p53の活性を増加させ、これにより、窮極的に癌細胞表面のDR4とDR5の発現が増加されることが分かる。
実施例9.ANT2 shRNAを導入時に動物モデル(in vivo)でTRAILに対する反応性増加を用いた腫瘍成長抑制効果
ANT2 shRNAがTRAILによる細胞死滅効果を増幅させて、腫瘍成長を抑制するかどうかを確認するために動物モデルで実験を実施した。
ANT2 shRNAがTRAILによる細胞死滅効果を増幅させて、腫瘍成長を抑制するかどうかを確認するために動物モデルで実験を実施した。
TRAILに対する耐性を示すMCF7乳房癌細胞株を免疫機能が欠乏されたマウスであるBalb/c ヌードマウスに移植し、100mm3程度サイズの腫瘍が生成されたとき、ANT2 shRNAとTRAILで治療を実施した。この際、TRAILは、腹腔注射(10mg/kg)を行い、ANT2 shRNAは、腫瘍に注射(100μg:200μL LipofectamineTM 2000を追加)を行い、注射を行うとき、ANT2 shRNAの癌細胞内への伝達を助けるためにLipofectamineTM 2000という物質とともに注射し、3回にわたって処置をした後、45日間腫瘍のサイズを測定した。この際、TRAILに対する陰性対照群として同一ボリュームのPBSを使用し、ANT2 shRNAの陰性対照群としてsc shRNAを使用した。
図14Aから明らかなように、細胞培養実験(in vitro)と同様に、TRAIL単独によっては腫瘍成長に大きい影響を及ぼさず、ANT2単独によっても腫瘍成長を抑制したが、ANT2 shRNAとTRAILを同時に処理した場合、最も効果的に腫瘍成長を抑制することが分かる。
次に、動物モデルでANT2 shRNAとTRAILを処理した後、一定期間腫瘍のサイズを測定し、45日目にマウスを安楽死させた後、腫瘍を摘出し、腫瘍細胞でTRAIL受容体の発現変化を逆転写重合酵素増幅反応(RT−PCR)を通じて確認し、その結果を図14Bに示した。
図14Bに示されたように、ANT2 shRNAの導入がDR4とDR5の発現を増加させ、DcR2の発現を減少させることが分かる。
上記結果は、ANT2 shRNAによるTRAILの腫瘍成長抑制効果は、TRAIL受容体の発現調節によるものであることを意味する。
ANT2 shRNAアデノウイルスの製作
腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells)にANT2 shRNAを効果的に移入するために、アデノウイルスシステムを使用した(ANT2をターゲットとするshRNAの塩基配列及びループシーケンスは、ANT2 shRNA発現ベクター製作時に使用したものと同一である)。
腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells)にANT2 shRNAを効果的に移入するために、アデノウイルスシステムを使用した(ANT2をターゲットとするshRNAの塩基配列及びループシーケンスは、ANT2 shRNA発現ベクター製作時に使用したものと同一である)。
組み換えアデノウイルス(recombinant adenovirus)を製作するために、pSilencer−ANT2 shRNA DNAでPca14 シャトルベクター(shuttle vector)のEcoRI/HindIII位置でサブクローニング(sub−cloning)を進行した。これは、アデノウイルスベクターにクローニングを容易にするために作られたベクターでまず行われるクローニング段階である。PvuI Enzyme mapping(酵素でDNAを切断し、電気泳動してみたとき、正確なサイズに現われるかを判別する実験法)でリアルクローン(real−clone)を捜し出し、BJ5183コンピテント細胞(competent cell)(アデノウイルスベクターとシャトルベクターDNAとの間にsequence−同種組み換えが可能にするE.colistrainc ell)内でPcaI酵素で切断され線形化されたPca14−mANT2 shRNA DNAとBstBI酵素で切断され線形化されたアデノウイルス−dl324(E1deleted:複製欠損ベクター(replication−defective vectors))ベクターDNAを一緒に同種組み換え8homologues recombination)を行った後、得たDNAをさらにDH5α細胞中で形質転換(transformation)過程を経てDNAを多量確保した。ここで、リアルクローン(real−clone)を確認した後、これを293aパッケージング細胞(packaging cell)(DNAを細胞内に流入することが容易な細胞であり、且つアデノウイルス複製遺伝子E1が含まれていて、この細胞内でのクローン化アデノウイルス(cloned−adenovirus)を大量確保することができるようにする細胞)に細胞内DNA流入(transfection)を行い、細胞内でアデノウイルス増殖を誘導した。多量増殖されたアデノウイルス−mANT2 shRNAは、PEG−CsCl(密度勾配層分離)方法で純粋分離した後、実験に適用した。
実施例10.乳房癌細胞株腫瘍母体細胞(progenitor cells)に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌細胞株は、腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells)とそうでない細胞(non−progenitor cells)で構成され、にANT2タンパク質は、この2つの細胞集団ですべて高く発現されている。本実験では、ANT2 shRNAを導入する場合、2つの種類の細胞に対する細胞死滅効果を観察した。
乳房癌細胞株は、腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells)とそうでない細胞(non−progenitor cells)で構成され、にANT2タンパク質は、この2つの細胞集団ですべて高く発現されている。本実験では、ANT2 shRNAを導入する場合、2つの種類の細胞に対する細胞死滅効果を観察した。
腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells)は、細胞表面にCD44分子陽性/CD24分子陰性(CD44+/CD24−)に分類され、乳房癌細胞株のうち、MDA−MB−231細胞株は、腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)が占めるパーセントが高く(80%以上)、MCF7細胞株の場合、低いと(10%未満)報告されている。
本実験では、2つの細胞株を対象として腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分類した場合と分類しない場合にANT2遺伝子の発現程度を逆転写重合酵素方法(RT−PCR)で確認し、これを再確認するために、リアルタイム重合酵素増幅方法(Real−time PCR)を実施した。2つの細胞株を対象としてCD44単一抗体[anti−PE−conjugated CD44 monoclonal antibody:BD−PharMingen、(SanDiego、California、USA)]とanti−PE microbeads[MiltenyiBiotec。(BergischGladbach、Germany]を処理した後、MACS(Magnetic Activating cell sortor)を使用して必要な細胞のみを分離した後、母体になる細胞のみを分離したものと分離しない細胞を対象として逆転写重合酵素方法(RT−PCR)とリアルタイム重合酵素増幅方法(Real−time PCR)を実施し、ANT2 mRNA発現程度を確認した。
図15に示されたように、2つの細胞株で腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分類した場合と分類しない場合、いずれもANT2発現が高いことが分かる。上記結果は、ANT2 shRNAを利用してANT2発現を減少させるとき、腫瘍の母体になる細胞とそうではない細胞がすべて死滅が誘導されることができ、治療可能性を有することを意味する。
これに加えて、ANT2 shRNAを利用して乳房癌細胞を構成する腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を治療することができることを確認する実験を行った。本実験のための細胞システムとしては、正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて、人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)に転換されるように誘導して使用した。間葉細胞(mesenchymal cell)は、乳房癌幹細胞の特性を有すると知られている。
図16Aの顕微鏡写真に示されたように、E−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させるために正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリンshRNAを導入した場合、互いに密集するように付着して成長した細胞が緩く離れて成長する模様(間葉細胞が有する特徴)を有することを観察することによって、正常上皮細胞が間葉細胞(mesenchymal cell)に転換されることが分かる。この際、E−カドヘリン発現が低下し、ANT2遺伝子発現が増加したことを逆転写重合酵素方法(RT−PCR)で確認した(図16B参照)。
また、乳房癌細胞株であるMDA−MB−231とMCF7細胞株で腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)のみを分類し、ANT2 shRNAを導入した場合、細胞死滅が誘導される程度をAnnexin V−FITCとPIで染色(staining)し、流動細胞分析機(FACS)で分析した。この方法は、細胞が死ぬようになれば、細胞膜の内側に位置するタンパク質が細胞膜の外に出るようになるが、このタンパク質にAnnexin V−FITCが結合するようになり、細胞内側のDNAが細胞の外に流出されれば、PIと結合をするようになり、Annexin V−FITCとPIで染色された程度を通じて細胞の死滅を定量的に分析する一般的な方法である。その結果を図17に示し、2つの細胞株でいずれも腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)のみを分類した場合にも、ANT2 shRNAによって効果的に細胞死滅が誘導されることが分かる。陰性対照群としては、sc shRNAを導入して比較した。
次に、正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリンshRNAを導入し、乳房癌幹細胞の特徴を有する細胞を対象としてANT2 shRNAを導入したときにも、効果的に細胞死滅が誘導されるかどうかを考察し、その結果を図18に示した。この際、使用した方法は、Annexin−V−FITCとPIを細胞に染色し、細胞の死滅程度を確認する方法であるが、Annexin Vは、細胞が細胞自殺時には初期段階で膜構造が壊れるようになり、細胞内部だけで露出していたホスファチジルセリンのようなリン脂質が細胞外に露出するが、これと結合し、細胞が今細胞自殺の初期段階にあることを示す方法である。また、PI(propium iodide)は、細胞が死ぬときに起きる細胞核のブレブ形成(nuclear blebing)や凝縮(condensation)を見るために、DNAの間に立ち入るpropium iodideを処理してから、これら自体の蛍光(fluorescence)を利用して細胞の死を判別する方法であり、この実験の陰性対照群としては、正常乳房上皮細胞株(MCF10A)を使用した。その結果、ANT2発現が低い正常乳房上皮細胞株(MCF10A)の場合、ANT2 shRNAを導入しても、細胞死滅がほとんど誘導されない一方(図18A)、MCF10AにE−cad shRNAを導入し、間葉細胞(mesenchymal cell)で誘導した場合、ANT2発現が増加し、この細胞(E−cad shRNA transfected−MCF10A)にANT2 shRNAを導入する場合、効果的に細胞死滅が誘導された(図18B)。
上記結果は、ANT2 shRNAが乳房癌幹細胞を効果的に殺すが、正常上皮細胞には影響を及ぼさないことを意味する。
実施例11.母体細胞(progenitor cells)の腫瘍成長能力に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells)の腫瘍成長能力に対するANT2 shRNAの効果を考察するための実験を行った。
乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells)の腫瘍成長能力に対するANT2 shRNAの効果を考察するための実験を行った。
具体的に、乳房癌細胞株であるMDA−MB−231とMCF7細胞株で腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)のみを分類した後(分類方法は、実施例10と同一)、MDA−MB−231とMCF7細胞株にANT2 shRNAを導入し、細胞がよく付着しない培養ディッシュ(細胞が培養ディッシュに付着することを最小化し、細胞塊の形成を促進させるための方法である)に細胞を培養し、細胞塊が形成される程度とサイズを観察した。
図19Aに示されたように、ANT2 shRNAを導入しない場合には、多い個数の細胞塊が生成される一方、ANT2 shRNAが導入された場合、細胞塊がほとんど生成されないことが分かり、図19Bに示されたように、ANT2 shRNAが導入された場合、細胞塊の個数だけでなく、サイズも非常に小さいことを観察した。
上記結果は、ANT2 shRNAが乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitorcells)の腫瘍成長能力を抑制させることを意味する。
実施例12.乳房癌母体細胞(progenitor cells)の抗癌剤耐性に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)は、抗癌剤に対して高い耐性を示すが、ANT2 shRNAを導入する場合、抗癌剤に対する反応性に及ぶ効果を考察した。
乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)は、抗癌剤に対して高い耐性を示すが、ANT2 shRNAを導入する場合、抗癌剤に対する反応性に及ぶ効果を考察した。
乳房癌細胞株のうち母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)が占めるパーセントが高いMDA−MB−231細胞株を対象として乳房癌治療に広く使用される抗癌剤であるドキソルビシンを10μMで10倍ずつ階段希釈し、処理した後、一定時間(24時間)培養した後、濃度別に細胞死滅程度をCCK8試薬を通じて定量的に分析し、その結果を図20に示した。この際、使用した実験方法は、実施例6と同一である。
図20から明らかなように、母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分離した細胞及び分離しない細胞がいずれもドキソルビシンによってほとんど反応性を示さない一方、ANT2 shRNAを導入した場合、濃度依存的に細胞死滅が誘導されることを確認した。
また、乳房癌細胞株のうち母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)が占めるパーセントが低いMCF7細胞株を対象として乳房癌治療に広く私用される抗癌剤であるドキソルビシンを濃度別に処理し、CCK8試薬を通じて細胞死滅程度を定量的に分析し、その結果を図21に示した。図21から明らかなように、母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分離した細胞の場合、分離しない細胞に比べてドキソルビシンに対してさらに低い反応性を示し、一方、ANT2 shRNAを導入する場合、2つの細胞集団がいずれも濃度依存的に細胞死滅が誘導されることを確認した。上記結果は、ANT2 shRNAの導入が抗癌剤であるドキソルビシンに対する反応性を増加させ、耐性を克服することができることを意味する。
実施例13.乳房癌母体細胞(progenitor cells)で抗癌剤耐性に関与する受容体ABCG2の発現に対するANT2 shRNAの効果
乳房癌を構成する細胞のうち母体になる細胞が抗癌剤薬物に対して低い反応性、すなわち高い耐性を示す代表的な原因として細胞膜に位置しながら、細胞内に入る薬物を細胞外に排出する受容体(MDR:multi−drug resistance receptor)が過発現されるからであると報告されており、このような受容体のうち乳房癌細胞に特に高く発現しているものがABCG2である。
乳房癌を構成する細胞のうち母体になる細胞が抗癌剤薬物に対して低い反応性、すなわち高い耐性を示す代表的な原因として細胞膜に位置しながら、細胞内に入る薬物を細胞外に排出する受容体(MDR:multi−drug resistance receptor)が過発現されるからであると報告されており、このような受容体のうち乳房癌細胞に特に高く発現しているものがABCG2である。
したがって、本発明者は、ANT2 shRNAによる抗癌剤に対する反応性の増加がABCG2の発現と反応性の調節によるものであるかを調査するために下記実験を行った。
乳房癌細胞株のうち母体になる細胞(progenitorcells:CD44+/CD24−)が占めるパーセントが高いMDA−MB−231細胞株及び母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)が占めるパーセントが低いMCF7細胞株を対象として、腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分類した場合、分類しない細胞、及び正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)で誘導した細胞を対象としてABCG遺伝子の発現程度を逆転写重合酵素方法(RT−PCR)で確認し、これに加えて、ABCGのタンパク質発現程度をanti−ABCG2 antibody(Santa Cruz Biotechnology、Inc.、SantaCruz、CA、USA)を使用してWestern−blotで確認した。
図22に示されたように、2つの細胞株で腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分類した場合と分類しない場合、そして、正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)で誘導した場合、ABCG2のmRNA発現が増加することを確認した。
また、図23に示されたように、2つの細胞株で腫瘍の母体になる細胞(progenitor cells:CD44+/CD24−)を分類した場合と分類しない場合、そして、正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)で誘導した場合、ABCG2タンパク質水準で発現が増加することを確認した。また、ANT2 shRNAを導入するとき、増加されたABCG2の発現を低下させることを観察した。上記結果は、高いABCG2発現を示す乳房癌母体になる細胞及び乳房癌幹細胞にANT2 shRNAを導入すれば、ABCG2発現を抑制させることを意味する。
これに加えて、本発明者は、乳房癌を構成する細胞のうち母体になる細胞で実際にABCG2の活性が増加しているかを測定してみた。具体的に、MDA−MB−231細胞株及びMCF7細胞株に対して、腫瘍の母体になる細胞を分類した場合、分類しない細胞、及び正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)で誘導した細胞を対象としてABCG2活性程度を考察した。この際、Hoechst 33342という薬物を利用してこの薬物が細胞内に蓄積される程度を通じてABCG2の活性度を定量的に分析し、その結果を図24に示した。
図24に示されたように、2つの細胞株で腫瘍の母体になる細胞を分類した場合及び正常乳房上皮細胞株(MCF10A)にE−カドヘリン遺伝子の発現を抑制させて人為的に間葉細胞(mesenchymal cell)で誘導した場合、いずれもABCG2の活性度が増加していることが分かる。
上記結果に基づいて、本発明者は、ANT2 shRNAの導入がABCG2の活性度に及ぶ効果を考察した。ABCG2の活性度を測定するために、Hoechst 33342(Sigma)という薬物を細胞に処理した後、蛍光励起細胞分離分析を実施し、ABCG2の活性度を定量的に分析し、その結果を図25に示した。図25に示されたように、ANT2 shRNAによってABCG2の活性度が効果的に減少することが分かる。
上記結果は、乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells)の場合、抗癌剤の耐性に関与する受容体であるABCG2が高い発現と高い活性を示すが、ANT2 shRNAの導入は、ABCG2の発現と活性を減少させることを示す。すなわち、ANT2 shRNAが乳房癌の母体になる細胞のABCG2の活性度を減少させて、抗癌剤に対する耐性を克服することができることを意味する。
実施例14.乳房癌母体細胞(progenitor cells)に対するANT2 shRNAの選択的伝達及び細胞死滅効果
ANT2 shRNAが乳房癌細胞の母体になる細胞を効果的に治療することができるか否かを確認する実験を行った。ANT2 shRNAを利用して癌患者を対象として治療する場合、ANT2 shRNAが効果的に所望の細胞によく伝達されるかが重要な問題なので、本発明者は、乳房癌の母体になる細胞表面に高く発現されているCD44を利用して、これを標的する運搬物質としてナノ粒子[PEI/ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)ナノ結合体(nano−complex)]を製作した。実際にCD44を高く発現する乳房癌細胞株であるMDA−MB−231と低く発現するT47Dを対象としてANT2 shRNAが効果的に伝達されるか否かを確認した。蛍光物質が付着しているナノ粒子[PEI/ヒアルロン酸(HA)ナノ結合体]にANT2 shRNAを入れ、結合体(complex)を形成した後、それぞれの細胞に処理し、一定時間後、細胞内に蛍光の強さを分析し、ナノ粒子によってANT2 shRNAが細胞内に流入された程度を測定した。
ANT2 shRNAが乳房癌細胞の母体になる細胞を効果的に治療することができるか否かを確認する実験を行った。ANT2 shRNAを利用して癌患者を対象として治療する場合、ANT2 shRNAが効果的に所望の細胞によく伝達されるかが重要な問題なので、本発明者は、乳房癌の母体になる細胞表面に高く発現されているCD44を利用して、これを標的する運搬物質としてナノ粒子[PEI/ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)ナノ結合体(nano−complex)]を製作した。実際にCD44を高く発現する乳房癌細胞株であるMDA−MB−231と低く発現するT47Dを対象としてANT2 shRNAが効果的に伝達されるか否かを確認した。蛍光物質が付着しているナノ粒子[PEI/ヒアルロン酸(HA)ナノ結合体]にANT2 shRNAを入れ、結合体(complex)を形成した後、それぞれの細胞に処理し、一定時間後、細胞内に蛍光の強さを分析し、ナノ粒子によってANT2 shRNAが細胞内に流入された程度を測定した。
図26に示されたように、CD44を高く発現する乳房癌細胞株であるMDA−MB−231に選択的によく伝達されることを確認した。
上記結果は、乳房癌細胞の母体になる細胞(progenitor cells)の表面に高く発現されているCD44を標的とする運搬物質であるナノ粒子[PEI/hyaluronic acid(HA)nano−complexes]を利用してANT2 shRNAを運搬する場合、乳房癌細胞の母体になる細胞にのみ選択的にANT2 shRNAを伝達させ、治療(細胞死滅を誘導)することができることを示す。
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
Claims (12)
- アデニンヌクレオチドトランスケータ2 低分子干渉RNA(ANT2 siRNA)またはANT2 短ヘアピンRNA(shRNA)を有効成分として含有する乳房癌治療用組成物であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする組成物。
- 前記ANT2 siRNAまたはANT2 shRNAは、配列番号3で記載されたアンチセンス配列が配列番号1で記載されたセンス配列と結合し、ANT2 mRNAの分解を誘導することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物は、HER2/neu(ヒト上皮成長因子受容体2)の発現を低下させることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物は、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)の乳房癌治療効果を増加させることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物は、乳房癌細胞表面のDR4(死受容体4)及びDR5(死受容体5)の発現を増加させ、DcR1(死デコイ受容体1)及びDcR2(死デコイ受容体2)の発現を減少させることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
- 前記組成物は、p53タンパク質の発現及び活性を増加させることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
- アデニンヌクレオチドトランスケータ2 低分子干渉RNA(ANT2 siRNA)またはANT2 短ヘアピンRNA(shRNA)を有効成分として含有する乳房癌幹細胞治療用組成物。
- 前記組成物は、ABCG2(ATP結合カセットサブファミリーGメンバー2)の発現及び活性を減少させることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
- 前記組成物は、抗癌剤と併用投与時に抗癌剤に対する癌細胞の反応性を増加させ、耐性を減少させて乳房癌治療効果を増進させることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
- 前記抗癌剤は、ドキソルビシンであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
- アデニンヌクレオチドトランスケータ2 低分子干渉RNA(ANT2 siRNA)またはANT2 短ヘアピンRNA(shRNA)を患者に投与し、乳房癌を治療する方法であって、乳房癌細胞の転移を抑制することを特徴とする方法。
- アデニンヌクレオチドトランスケータ2 低分子干渉RNA(ANT2 siRNA)またはANT2 短ヘアピンRNA(shRNA)を患者に投与し、乳房癌幹細胞を治療する方法。
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