他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記、および他の科学用語または術語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。ある場合には、一般に理解される意味を有する用語は、本明細書では、明確にするためにおよび/または参照を容易にするために定義されるものであり、本明細書でそのような定義を包含することは、必ずしも、この技術において一般に理解されるものに対し実質的な違いを表すものと解釈すべきではない。本明細書で記述されまたは参照される技法および手順の多くは、当業者により従来の方法を使用して十分理解されかつ一般に用いられる。必要に応じて、市販されているキットおよび試薬が使用される手順が、他に示されない限り、製造業者が定めるプロトコルおよび/またはパラメータに従って一般に実施される。いくつかの用語を以下に定義する。本明細書に挙げられる全ての文献は、引用された文献と併せて方法および/または材料が開示され記述されるよう、本願に引用して援用する。本願で引用した文献は、本出願の出願日に先立つそれらの開示について引用される。より早い優先日またはより早い発明日によって、本発明者らが文献に先行する権利を持たないことを認めたと解釈されるものは、本明細書にはない。さらに、実際の公開日は、示される日付と異なる可能性もあり、独立した検証が必要となる可能性もある。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形の「1つの(a)」、「および(and)」、および「その(the)」は、文脈が他に明示しない限り、複数対象を含むことに留意しなければならない。したがって例えば、「1つの層(a layer)」は、複数の層、および当業者に公知のその均等物などを含むことができる。整数以外の値により数値的に特徴付けることができる値(例えば、化合物の量)を指す、明細書および関連する特許請求の範囲に列挙された全ての数値は、「約」という用語によって修飾されることが理解される。
「酸化還元酵素」という用語は、その技術により受け入れられる意味に従い使用され、即ち、1つの分子(水素または電子供与体とも呼ばれる還元体)から別の分子(水素または電子受容体とも呼ばれる酸化体、)への電子の移動を触媒する酵素である。典型的な酸化還元酵素には、グルコースオキシダーゼおよびラクテートオキシダーゼが含まれる。「キャリアポリペプチド」または「キャリアタンパク質」という用語は、ポリペプチドの安定性、例えば、ある期間にわたり、ポリペプチドを含む組成物の物理的および化学的性質などのある定性的特徴(例えば、グルコースを酸化する能力)を維持するための酸化還元酵素ポリペプチドの能力、を維持するために含まれる添加剤の、その技術により受け入れられる意味に従い使用される。この技術で一般に使用される典型的なキャリアタンパク質は、アルブミンである。
本明細書で使用される「分析物」という用語は、広義の用語であり、その通常の意味で使用され、分析することができる生物流体(例えば、血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液、または尿)などの流体中の物質または化学構成成分を指すことを含むが、これらに限定するものではない。分析物は、天然に生ずる物質、人工物質、代謝物、および/または反応生成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、感知領域、デバイス、および方法による測定のための分析物は、グルコースである。しかし、ラクテートを含むがこれらに限定されない他の分析物も、同様に考えられる。血液または間質液中で天然に生じる塩、糖、タンパク質、脂肪、ビタミン、およびホルモンは、ある実施形態において分析物を構成することができる。分析物は、生物流体中に天然に存在しまたは内因的なものとすることができ;例えば、代謝産物、ホルモン、抗原、および抗体などである。あるいは分析物は、体内に導入することができまたは外因的なものとすることができ;例えば、撮像のための造影剤、放射性同位元素、化学薬品、フルオロカーボンをベースにした合成血液、またはインスリンを含むがこれに限定されない薬物もしくは医薬品組成物である。薬物および医薬品組成物の代謝産物も、考えられる分析物である。
「干渉」および「干渉種/化合物」という用語は、その通常の意味で使用され、センサ内で対象とする分析物の測定を干渉して、分析物測定値を正確に示さない信号を生成する、作用および/または化学種/化合物が含まれるが、これらに限定するものではない。電気化学センサの一実施例において、干渉種は、偽信号が生成されるように、測定される分析物の酸化電位に重なる酸化電位を有する化合物である。
本明細書で使用される「センサ」という用語は、広義の用語であり、通常の意味で使用され、分析物を検出する分析物モニタリングデバイスの1つ以上の部分を含むがそれらに限定するものではない。1つの実施形態では、センサは、センサ本体を通過しかつその内部に固定されることにより本体の1つの位置で電気化学的に反応性の表面を形成する、作用電極、参照電極、および任意選択で対電極を有する電気化学セルと、本体の別の位置にある電子接続と、本体に添着されかつ電気化学的に反応性の表面を覆う膜システムとを含む。センサの一般的な動作中、生体サンプル(例えば、血液または間質液)またはその一部が酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)に(直接、または1つもしくは複数の膜もしくはドメインを通過した後に)接触し;生体サンプル(またはその一部)の反応は、生体サンプル中の分析物レベルの決定を可能にする反応生成物を形成する。
以下に詳細に論じるように、本発明の実施形態は、単独で、スパッタリングされた白金作用電極組成物、電解質保持膜、および/または分析物感知層を含む要素の新規な組織的配置を示し、さらにこれらを組み合わせることによって、技術的に望ましい材料特性の独自の組を示す、電気化学センサの使用に関する。本発明の電気化学センサは、対象とする分析物(例えば、グルコース)の濃度または流体中の分析物の濃度もしくは存在を示す物質の濃度を測定するように設計される。いくつかの実施形態では、センサは連続デバイスであり、例えば、皮下、経皮、または血管内デバイスである。いくつかの実施形態では、デバイスは複数の断続的な血液サンプルを分析できる。本明細書に開示されるセンサの実施形態は、侵襲的、最小侵襲的、および非侵襲的な感知技術を含めた任意の公知の方法を使用することにより、対象とする分析物の濃度を示す出力信号を提供することができる。典型的にはセンサは、in vivoまたはin vitroでの分析物の尺度として、酸素の存在下での分析物と酵素との間の酵素反応の生成物または反応物を感知するタイプのものである。そのようなセンサは、典型的には、中を分析物が移動する酵素を取り囲んだ、1つ以上の膜を含む。次いで生成物は、電気化学的方法を使用して測定され、したがって電極システムの出力は、分析物の尺度として機能する。
本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、糖尿病患者の血糖値の皮下または経皮モニタリングで使用されるタイプのセンサを提供する。様々な埋め込み可能な電気化学バイオセンサが、糖尿病および他の生命を脅かす疾患の治療のために開発されている。多くの既存のセンサ設計は、それらの生物特異性を実現するために、いくつかの形態の固定化酵素を使用する。本明細書に記述される本発明の実施形態は、例えば、そのそれぞれの内容を本願に引用して援用する米国特許出願第20050115832号、米国特許第6,001,067号、同第6,702,857号、同第6,212,416号、同第6,119,028号、同第6,400,974号、同第6,595,919号、同第6,141,573号、同第6,122,536号、同第6,512,939号、同第5,605,152号、同第4,431,004号、同第4,703,756号、同第6,514,718号、同第5,985,129号、同第5,390,691号、同第5,391,250号、同第5,482,473号、同第5,299,571号、同第5,568,806号、同第5,494,562号、同第6,120,676号、同第6,542,765号、ならびにPCT国際公開第WO01/58348号、同第WO04/021877号、同第WO03/034902号、同第WO03/035117号、同第WO03/035891号、同第WO03/023388号、同第WO03/022128号、同第WO03/022352号、同第WO03/023708号、同第WO03/036255号、同第WO03/036310号、同第WO08/042625号、および同第WO03/074107号、および欧州特許出願第1153571号を含めた広く様々な公知の電気化学センサを用いて適合させかつ実施することができる。
以下に詳細に論じるように、本明細書に開示されている本発明の実施形態は、高められた材料特性および/または構築配置を有するセンサ要素、ならびにそのような要素を含むように構成されたセンサシステム(例えば、センサと、モニタおよびプロセッサなどの付随する電子構成要素を含むもの)を提供する。本開示はさらに、そのようなセンサおよび/または構築配置を作製および使用するための方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態は、グルコースおよび/またはラクテートセンサに関するが、本明細書に開示される様々な要素(例えば、作用電極組成物)は、当技術で既知の広く様々なセンサのいずれか1つと共に使用されるよう適合することができる。本明細書に開示される、分析物センサ要素、構築物、およびこれらの要素を作製および使用するための方法は、様々な層状センサ構造を確立するのに使用することができる。本発明のそのようなセンサは、驚くべき柔軟性および多角性の程度と、広く様々なセンサ構成で広く様々な分析物種を検査するよう設計することが可能な特性とを示す。
本発明の実施形態の特定の態様について、以下のセクションで詳細に論じる。
I.本発明の、典型的な要素、構成、および分析物センサの実施形態
グルコースなどの生体分析物を検出しかつ/または測定するのに使用される電流測定センサを含めた広く様々なセンサおよびセンサ要素が、当技術では公知である。多くのグルコースセンサは、酸素(クラーク型)電流測定トランスデューサを基にする(例えば、ヤンら、Electroanalysis 1997, 9, No.16: 1252-1256;クラークら、Ann.N.Y.Acad.Sci. 1962, 102, 29;アップダイクら、Nature 1967, 214, 986;およびウィルキンスら、Med.Engin.Physics, 1996, 18, 273.3-51を参照)。過酸化水素をベースにした電流測定トランスデューサは、製作するのが比較的容易であり、従来の技術を使用して容易に小型化することができるので、いくつかのin vivoグルコースセンサは、そのようなトランスデューサを利用する。
糖尿病患者の生理学的状態をモニタするのに使用される多くの商用グルコースセンサを含む電流測定センサは、異なる組成物から形成される複数の層状要素を含む。これらの層状電流測定センサは、典型的には、例えば1つ以上の電極層、分析物感知層、分析物調節層などを含む。理解できるように、そのようなセンサの様々な層を形成するのに使用される組成物は、これらのセンサの性能および機能パラメータに、かなりの効果を発揮することができる。そのようなセンサの例示的な一般的実施形態を、図2に示す。単層について典型的には論じられるが(センサの実施形態は、典型的には少なくとも1つの層を必要とするので)、多層(例えば、多数の分析物感知層)を有する実施形態も考えられる。以下の開示は、様々な要素と、これら要素の種々の組織的配置を有する例示的なセンサの実施形態とについて記述している。この状況において、当業者なら、本発明の他のセンサの実施形態を生成するために、本明細書に開示される第1の例示的なセンサの実施形態に示される1つ以上のセンサ要素を、本明細書に開示される第2の例示的なセンサの実施形態の要素に付加することができ、および/またはその要素の代わりに使用できることを理解するであろう。
スパッタリングされたPt組成物を含むセンサ
電流測定分析物センサの電極を形成するのに使用される金属組成物は、様々な形態の白金(Pt)を含むことができる。そのような電極を作製するのに使用されるPtの一般的な形態は、Ptワイヤなど、予め作られている原料から作製された、裸の形態のPtである。当技術は、裸のPt組成物が、その電位プロファイル、バックグラウンド電流、およびIsigレベルを含めたいくつかの望ましい電気化学特性を有することができることを教示する。電着などのプロセスを介して形成された白金黒は、電流測定分析物センサの電極を形成するのに使用される、別の白金組成物である。白金黒の利点には、高い電流信号を生成することができる、その広い3−D表面積が含まれる。
当技術で公知のように、「スパッタリング」は、高エネルギー粒子によるターゲットへの衝突により、固体ターゲット材料から原子がはじき出されるプロセスである。スパッタリングは、薄膜堆積、エッチング、および分析技法で一般に使用される。本明細書に開示されるように、スパッタリングされた白金材料は、糖尿病個体の低血糖状態をモニタするのに使用される埋め込み可能なグルコースセンサなど、あるセンサの実施形態で、作用電極を形成するのに優れた組成物になるように製作され観察されてきた。このスパッタリングされた白金(Pt)材料と、このPt組成物の特性が最適化されるように選択される材料の追加の層との組合せ(例えば、「電解質保持膜」)は、様々な状況においてセンサのin vivoおよびin vitro性能を最適化するように設計された要素の組織的配置を有するセンサを生成する。この要素の組織的配置を有するセンサは、低バックグラウンド電流ならびに比較的高い感度を含めたいくつかの非常に望ましい電気化学特性を有することが観察される。同時に、これらのセンサの実施形態は、比較的低い干渉応答およびシステムノイズレベルを示す。そのようなセンサは、例えば、その低いバックグラウンド電流および低いノイズレベルにより、低血糖患者の低グルコース範囲をより正確に測定するのに使用することができる。
スパッタリングされた白金組成物は、電着された白金黒組成物ならびに裸のPt組成物(例えば、Ptワイヤ、ディスク、または箔など)の両方とは異なる材料特性の組織的配置を示す。例えばスパッタリングされた白金組成物は、独自の表面構造および組織形態、そのような組成物の電気化学的性質に直接影響を及ぼす材料特性を示す(例えば、その内容を本願に引用して援用するスラブチェバら、Applied Surface Science 255 (2009) 6479-6486;およびマイレイら、Bioelectrochemistry 63 (2004) 359-364を参照)。スパッタリングされたPt被膜は、明確な配向(例えば[111])を有する白金粒子構造を保有するように形成することができる。スパッタリングされたPt組成物で観察されるそのような材料特性は、このプロセスにより形成された白金組成物に特有のものであり、裸のPt組成物または白金黒組成物(例えば、電着プロセスを介して形成された)では観察されない。
本明細書に開示されるように、電着させた白金黒組成物から形成した作用電極と比較すると、スパッタリングされたPt組成物から形成される作用電極は、非常に低いバックグラウンド電流をもたらしかつより高いIsigレベルを示すことが観察される。さらにIsigは、スパッタリングされたPt組成物から形成される電極の場合のほうが、裸のPtから形成される同じ幾何形状およびサイズの電極よりも高い。特定の科学理論または原理に拘泥するものではないが、スパッタリングされたPt組成物から形成される電極の表面は、単純な2−D平面(即ち、裸のPt組成物から形成される電極で生じるような)を示さないと考えられ、この現象は、なぜIsigが予想よりも高いかを説明している。以下に詳細に論じるように、関連付けられた電解質保持層/膜/マトリックスは、スパッタリングPt組成物から形成される作用電極のin vitroおよびin vivo性能を最適化するように、さらに開発されてきた(例えば、センサ内の電気信号の伝導を促進させることによって)。
本発明の実施形態は、例えば、スパッタリングされたPt組成物から形成される作用電極、干渉除去膜(IRM)および/または電解質保持膜、固定化グルコースオキシダーゼ(GOx)層/膜であってヒト血清アルブミン膜で被覆されているもの、ならびに拡散制御膜を含んだ要素の組織的配置を含む。グルコースセンサを含む本発明の1つの実施形態では、センサは、ゼロバックグラウンド電流、感度5〜10nA/100mg/dLグルコースレベルで、少なくとも400mg/dLまでの直線性範囲で、in vitroで機能する。この実施形態では、センサIsigレベルは、電極面積あるいはグルコース制限膜の透過率を調節することにより、同時に低バックグラウンド電流を維持することにより、20nA/100mg/dLまで上昇することができる。In vivoでは、このグルコースセンサの実施形態は、低ノイズ、良好なセンサごとの一貫性、迅速な起動時間、および良好な精度を示す。これらの特性を有するセンサの有意な利点は、低バックグラウンド電流および低ノイズレベルに起因する、より良好なグルコースレベルのモニタリングおよび制御のための低血糖患者のより低いグルコース範囲での高い精度である。他の利点には、より安定なIsigおよびより長いセンサ寿命が含まれる。
上述のように、スパッタリングされた白金(Pt)材料は、グルコースセンサなどの分析物センサの作用電極に優れた組成物を提供するように製作され適合されてきた。このスパッタリングされた白金材料と、そのようなPt組成物の特性を最適化するように選択される材料との組合せは、様々な状況におけるセンサのin vitroおよびin vivo性能を最適化する、組織的配置の要素を有するセンサの実施形態を提供する。この組織的配置の要素を有するセンサの実施形態は、低バックグラウンド電流および比較的高い感度を有することが観察される。さらに、このセンサの実施形態は、比較的低い干渉応答およびシステムノイズレベルを示す。本発明の実施形態は、例えば、低血糖患者の低グルコース範囲の測定を容易にするために、使用することができる。スパッタリングされた白金組成物は、様々な厚さ、例えば200、300、400、500、600、700、800、900、または1000オングストロームの間で形成することができる。さらに、本発明のある実施形態では、Pt粒度の物理的態様は、このプロセスによって生成されたスパッタリングされた白金の粗さが制御されるように、操作される(例えば、より低い温度およびより高いプロセスガス流量を、スパッタリングしながら)。
本明細書に開示される本発明は、いくつかの実施形態を有する。本発明の1つの例示的な実施形態は、ベース層と、このベース層上に配置されかつ作用電極を含む導電層であって、前記作用電極がスパッタリングされた白金組成物を含む、導電層とを含む、電流測定分析物センサ装置である。このセンサの実施形態はさらに、導電層上に、スパッタリングされたPt組成物に動作可能に接触している電解質保持層であって、10重量%から50重量%の水を吸収するように選択される組成物から形成される電解質保持層と、この導電層を覆うように配置された分析物感知層と、この分析物感知層を覆うように配置された分析物調節層とを含む。任意選択で、そのような実施形態では、スパッタリングされた白金組成物は、3ナノメートルよりも低い二乗平均粗さ値を示す。本発明のある実施形態では、(1つ以上の)分析物感知層は、グルコースオキシダーゼを含む(例えば、5から10μmの層は、10KUから55KU/mLの濃度レベルでGOxを含む)。任意選択でセンサは、スピンコーティング(例えば、200rpmのスピンコーティング)などのプロセスを介して適用された2〜3層の分析物感知層を含む。
当技術で公知のように、目立たない構築物(例えば、小さいまたは薄いセンサ設計)を有するセンサが、非常に望ましい。例えば、技術としてin vivo使用で用いられるように適合された小さいまたは薄いセンサ設計は、典型的にはより大きいセンサよりも挿入する痛みが少なく、より大きいセンサよりも目立たず使用するのが容易であり、またその小さい外形のためにより大きいセンサに比べて外れる可能性も少ないので、そのような流線型の設計は、より大きくおよび/または嵩高いセンサよりも、センサ使用者にとってより望ましい。以下に論じられるように、本発明の実施形態は、当技術で記述された等価なセンサ層よりも薄い、電解質保持層を含む(例えば、米国特許出願第2010/0145172号を参照)。
本発明の実施形態は、電解質保持層として様々な組成物を使用することができる。例えば本発明のある実施形態は、比較的薄い層、例えば1〜7μm以下の厚さの電解質保持層(例えば、スピンコーティングなどのプロセスによって適用された、厚さ1、2、3、4、5、6、または7μm以下の単層)として機能する組成物を使用する。典型的な実施形態では、電解質保持層が、3、4、5、6、または7μm以下の厚さである。そのような薄い層は、小さく目立たないセンサ外形がその使用を容易にする本発明の実施形態、例えば、小さいセンサが典型的には使用者にとってより快適であると共に外れる可能性が少ないin vivoグルコースセンサにおいて、望ましい。
本発明の特定の実施形態では、電解質保持層は、3〜7μmの厚さの単層を含むことができる(例えば、スピンコーティングプロセスを介してセンサ構造に適用されるもの)。あるセンサの実施形態では、この層は、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA)を、典型的には5〜10%の濃度で、親水性ポリマー、例えばメチルセルロース、高分子量ポリビニルピロリドンと組み合わせて含むことができ、この親水性ポリマー含量は、典型的には固体マトリックス重量の1%から15%、より典型的には5%から12%である。薄い電解質保持層として使用される1つの組成物は、血清アルブミン(例えば、1、5、10、または15%のBSAまたはHSA)のグルコースオキシダーゼなどのポリペプチドを、1つ以上の水溶性ポリマー、例えば、高分子量メチルセルロース(例えば、300,000ダルトンよりも高い)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはビニルピロリドンコモノマー、例えばビニルピロリドン−酢酸ビニルコモノマーと組み合わせて含む。この状況において、選択されたコモノマーをビニルピロリドンポリマー鎖に組み込むことにより、ホモポリマーの特定の生成物特性は、例えば酢酸ビニルなどのそれほど親水性ではないコモノマーを部分的に組み込むことによって、したがって、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル(PVP−VA)コモノマーを得ることによって、強化しまたは弱くすることができる。本発明の実施形態では、親水性ポリマー含量は、固体主要マトリックス重量の1から15%の間(例えば、5から12%の間)とすることができる。1つの例示的な組成物は、10%BSA 4gと、1%MC 0.2mLまたは5%PVPもしくはPVP−VA 0.1mLとを組み合わせることによって作製される。
電解質保持層として使用される別の組成物は、H2Oの吸収が30%未満であり線膨張が12%以下である非架橋親水性ポリウレタン(PU)を含む(例えば、Cadiotech International製のHydromed D7)。1つのそのような組成物は、1〜3%のPUを95%のアルコールおよび5%のH2Oと合わせることにより作製される。電解質保持層(例えば、厚さ1.0μmのもの)として使用される別の組成物は、本明細書に開示されるシラン架橋IRMをベースにするpHEMAを、Pluronic F68などの界面活性剤と組み合わせて含む。そのような1つの組成物は、20gまたは0.7%のpHEMA IRM組成物を、0.2gの1%Pluronic F68と組み合わせることによって作製される。電解質保持層として使用される別の組成物は、本明細書に開示される架橋ポリリジン組成物(例えば、10,000から400,000ダルトンの間の分子量を有するポリリジンポリマーを使用したもの)を、架橋され捕捉されたMC、PVP、またはPVP−VAと組み合わせて含む。そのような1つの組成物は、1%ポリリジン 4gと、1%MC 0.1g、5%PVPまたはPVP−VA 0.1gとを組み合わせることにより作製される。電解質保持層に有用な別の組成物は、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物(PVA−SbQ)、ポリマーを捕捉しかつ/またはカプセル封入するのに有用な水溶性の感光性ポリマー、およびグルコースオキシダーゼなどの酵素を含む。1つの例示的な組成物は、PVP、PVP−VA、またはMCなどの水溶性ポリマーを捕捉する、UV架橋PVA−SbQポリマーマトリックスを含む。1つのそのような組成物は、2%PVA−SbQ 5mLと、1%MC 0.2mL、5%PVPまたはPVP−VA 0.1mLとを組み合わせることによって作製される。
本発明のある実施形態では、水溶性の感光性ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム(PVA−SbQ)ポリマーを使用して、ポリペプチド(例えば、グルコースオキシダーゼ、ならびに/またはヒトおよび/またはウシ血清アルブミン)を、層状センサ構築物内の層の1つ以上(例えば、タンパク質層、電解質保持層、分析物感知層など)を含むマトリックス中に捕捉しまたはカプセル封入する。PVA−SbQは、N−メチル−4−(p−ホルミルスチリル)ピリジニウムメトスルフェート(SbQ)でアセタール化されたポリビニルアルコール(PVA)を含む親水性ポリマーである。当技術で公知のように、そのような分子上のSbQ基は、UV光に曝露されると架橋する(例えば、米国特許第7,252,912号および第6,379,883号を参照)。そのようなポリマーのUV架橋結合は、架橋ポリマーマトリックスにポリペプチド(例えば、グルコースオキシダーゼ)を捕捉するために、単純なプロセスを提供する。UV架橋結合は、架橋剤および反応開始剤などの他の化学薬品の使用を回避し、したがって、潜在的に毒性のある材料が分析物センサなどの埋め込み可能なデバイスに導入されるという問題が、回避される。その結果、化学架橋結合により引き起こされる潜在的な副反応について、それほど心配はない。さらにUV架橋反応は、選択された時間にわたり、ある領域に対するUV照射の量を制限することによって、粒子を選択的に架橋し得るので、空間的および時間的に制御することのできる単純なプロセスである。本発明の実施形態は、この材料から作製されたセンサ層を含み、この実施形態は、他の架橋剤(グルタルアルデヒドなど)をグルコースセンサ製作で使用する必要性をなくすことができる。本発明の実施形態では、GOxをこのマトリックスに結合して、センサの安定性、直線性、および低減するノイズレベルに関して高いIsig品質をもたらす分析物感知層を有するセンサを生成することができる。本発明のある実施形態では、このマトリックスは電解質保持層として機能する。
分子を捕捉しまたはカプセル封入するための、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム(PVA−SbQ)ポリマーの使用に関する様々な方法および材料は、当技術で公知である。例えば、その内容を引用して援用するモーゼルら、Biosensors and Bioelectronics 17 (2002) 297-302;チャンら、Biosensors and Bioelectronics 17 (2002) 1015-1023;ゾーンら、Sensors and Actuators, B, Vol.41, pp.7-11, 1997;ベーリングら、Analyst, 1998, Vol.123 (1605-1609);ポーシェルら、Sensor and Actuators B 94 (2003) 330-336;および米国特許公開第7,415,299号および同第20070023286号を参照されたい。本発明の分析物感知層および/または電解質保持層の、1つの例示的な実施形態では、PVA−SbQポリマーを、グルコースオキシダーゼを含有するリン酸緩衝生理食塩(PBS)溶液(例えば、0.01M、pH7.4)と混合することができる。次いでこの酵素−ポリマー混合物を、UV光(例えば、365nm、750mJ/cm2)の存在下、例えば、グルコースオキシダーゼ酵素が局所的に形成された層内に捕捉されるように、シャドーマスクを使用して、Pyrex(登録商標)カバーを通して選択的に重合することができる。本発明のある実施形態では、そのようなPVA−SbQの捕捉は、おそらくは固定化試薬としてグルタルアルデヒドを使用する従来の架橋方法で観察されるグルコースオキシダーゼ活性の低減が最小限に抑えられることにより、そのような従来の架橋方法よりも優れているように見える。
本発明の実施形態で使用されるPVA−SbQポリマーは、典型的には抗菌剤を含まず、中性pH範囲を有する。本発明の典型的な実施形態では、GOx溶液を、この感光性ポリマーに混合し、次いでUV光に短時間曝露して、PVA−SbQポリマーマトリックス中にGOxが捕捉されるようにPVA−SbQポリマーを架橋することができる。本発明のある実施形態では、これらの組成物を、別のプロセス(例えば、プラズマ堆積プロセス)または薬剤(例えば、グルタルアルデヒド)でさらに架橋して、例えば捕捉されたGOx分子をポリマーマトリックス中により強力に固定することができる。そのような組成物は、経時的に非常に安定したIsigを有すると共にセンサ応答のより良好な直線性を有するセンサを作製するのに使用することができる。そのような組成物は、結果的に得られるセンサ構造により、即ちセンサ電極に非常に近接してヒドロゲル(電解質保持層として機能することができるヒドロゲル)を有するものにより、in vivoでより良好なIsig品質を有するセンサを生成するのに使用することもできる。
本発明の典型的な実施形態では、PVAに結合されたSbQの量は、約0.5mol%から10mol%まで様々にすることができる。PVA−SbQの相対的感光性は、高分子量(例えば、mw 77kdから79kd)の場合は結合したSbQの量の増加と共に増加し、結合したSbQがほぼ一定量(1.3mol%)ではPVAの分子量の低下と共に低下した。例えば、PVAをベースにしたポリマー中のSbQ含量がより高い場合は、結果的に得られるポリマー膜の架橋密度を増加させるのに使用することができる。本発明の典型的な実施形態では、マトリックス構造は、水性媒体中で経時的にその完全性を維持するのに十分に稠密で安定している。所定の感知環境での最適なセンサ性能について考慮するとき、O2およびグルコースなどの化合物に対する透過率、温度効果、O2透過率などの一連のパラメータは、特定の適用に関して最適化された組成物を設計すると見なすことができる。例えば、異なるUV架橋時間、ならびに異なるPVA−SbQ濃度および/または分子量を有する組成物は、例えばポリマー捕捉能を最適化し、Isigレベルを上昇させ、ならびに温度効果および干渉除去を改善するのに使用することができる。そのような選択されたパラメータを有する本発明の1つの例示的な実施形態では、PVA−SbQのMWは、(MPPbioj−070)SbQが4.1%で約27kDであり;膜厚は3〜5μmであり、GOx負荷は、GOxおよびPVA−SbQの混合物溶液中で20から40ku/mLであり、UV曝露は1から3分である。
本発明のある実施形態では、電解質保持層が多機能性であり、例えば電解質保持層として機能すると共に分析物感知層(例えば、グルコースオキシダーゼを含むもの)としても機能する。典型的には、そのような層は、少なくとも5、6、7、8、9、または10μmの厚さである。例示的な実施形態では、この層は、BSA、HSA、およびGOxなどのタンパク質(例えば、10kuから45ku/mLの間のGOx濃度を使用して作製されたもの)、ならびにPVA−SbQおよびPVA−VAなどの親水性ポリマー(例えば、5%ポリマー濃度と、10kuから55ku/mLの間のGOx濃度を使用して作製されたもの)を含むことができる。以下に論じられるように、本発明の他の実施形態では、電解質保持層は、多数の機能を持たせるために様々な材料から作製することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、電解質保持層が干渉除去膜として機能する。本発明の他の実施形態は、140ダルトンよりも大きい分子量を有する化合物の、その中の拡散を阻止する、個別の干渉除去膜(例えば、電解質保持膜に加えて)を使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、電解質保持層および/または干渉除去膜は、100から1000キロダルトンの間の平均分子量を有する架橋したポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマーを含む。本発明の他の実施形態では、電解質保持層および/または干渉除去膜は、4から500キロダルトンの間の平均分子量を有する架橋した第一級アミンポリマーを含む。架橋した第一級アミンポリマーを含む本発明のいくつかの実施形態では、架橋した第一級アミンポリマーは、ポリリジンポリマー、ポリ(アリルアミン)ポリマー、アミン末端ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、ポリ(ビニルアミン)ポリマー、またはポリエチレンイミンポリマーを含む。本発明の実施形態で有用な干渉除去膜は、例えば、その内容を引用して援用する米国特許出願第12/572,087号に記載されている。
プラズマ堆積プロセスを組み込む本発明の実施形態は、ベース層と、このベース層上に配置されかつ作用電極を含む導電層と、この作用電極上に配置された分析物感知層とを含んだ電流測定分析物センサ装置を含む。この実施形態では、分析物感知層は、UV架橋がなされたポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウムポリマーマトリックスに捕捉されているグルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素を含む。本発明のある実施形態では、分析物感知層はさらに、例えばこの層の表面を架橋するために、プラズマ堆積プロセスによって修飾する(例えば、実施例3を参照)。そのようなプラズマ堆積プロセスは、例えばセンサの層同士の接着を増強するために使用することができる。接着を増強するのにこのプロセスを使用する本発明のいくつかの実施形態は、APTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)などの接着促進剤(AP)の層を利用しない。本発明のある実施形態で、分析物感知層(および任意選択で、センサ内の他の層)は、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンなどのキャリアタンパク質を含まない。本発明のある実施形態では、分析物感知層は、電解質保持層としても機能しかつ導電層に動作可能に接触しているUV架橋がなされたポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウムマトリックスに捕捉されたグルコースオキシダーゼを含む。典型的には、電解質保持層は、10重量%から50重量%の水を吸収するように選択される組成物から形成される。典型的にはセンサは、導電層および分析物感知層を覆うように配置された分析物調節層など、1つ以上の追加の層を含む。本発明の関連ある実施形態は、UV架橋がなされたポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウムポリマーマトリックス(例えば、金属電極を覆うように配置されたもの)に捕捉されたグルコースオキシダーゼを含む組成物であり、このポリマーマトリックスはさらに、プラズマ堆積プロセスによって架橋されたポリマー部分を有する表面を含む。
本発明の別の実施形態は、ベース層を用意するステップ、このベース層上に、作用電極を含む導電層を形成するステップを含む、哺乳動物への埋め込み用のセンサ装置を作製する方法である。そのような方法の実施形態では、後で導電層を覆うように配置された分析物感知層を形成することができ、この分析物感知層は、ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム化合物にUV架橋されたグルコースオキシダーゼを含むものである。この方法において、GOx−PVA−SbQ層は後に、プラズマ堆積プロセス(例えば、ヘリウムプラズマプロセス、アリルアミン/HDMSOパルスプラズマ堆積プロセス、またはHMDSO単独パルスプラズマ堆積など)によって修飾して、GOx−PVA−SbQ層の表面が架橋されるように、また例えば層同士の接着が容易になるようにすることができる。そのようなセンサの実施形態は、グルタルアルデヒド(および/またはこの化合物を使用した架橋プロセスからの副生成物)を持たずおよび/または血清アルブミンタンパク質を持たずおよび/または接着促進材料(例えば、APTES)を持たないものを含む。方法は、典型的にはさらに、分析物感知層を覆うように他の層状要素(例えば、分析物調節層)の1つ以上を形成するステップを含む。
様々な材料は、本発明の実施形態で様々な厚さを有する分析物調節層を作製するのに使用することができる。本発明の実施形態で有用な例示的な分析物調節層は、例えば、その内容を引用して援用する米国特許出願第12/643,790号に記載されている。任意選択でこの層に使用される材料は、ポリマーが、膜重量で40〜60%の水を吸収する水吸着プロファイルを示す。典型的にはこの層は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12μmの厚さである。本発明のある実施形態では、分析物調節層の厚さは、センサ層中のグルコースなどの分子の拡散を調節するために、例えば電極組成物が高グルコース流束下で最適に機能しない可能性のある状況で(例えば、薄膜プロセスから形成される、ある特定のスパッタリングされたPt電極組成物)制御される。例えば、本発明のある実施形態では、分析物調節層は、グルコースがセンサ内のグルコースオキシダーゼ(例えば、PVA−SbQポリマーマトリックスに捕捉されたグルコースオキシダーゼ)に接触し反応する能力を調節するために、他のセンサの実施形態で使用される厚さ3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12μmの層の厚さの2から3(例えば、2.5、2.6、2.7、2.8など)倍である。本発明のそのような実施形態は、例えば、経時的に観察されるセンサIsigの減衰を阻止するのに使用することができる。
典型的には、分析物調節層は、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーを含む。ある実施形態では、分析物調節層は、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーと分枝状アクリレートポリマーとを重量%で1:1から1:20の間の比で一緒にブレンドした、ブレンド混合物を含む。本発明の例示的な実施形態では、分析物調節層は、ジイソシアネートを含む混合物から形成されるポリウレタン/ポリ尿素ポリマーと、親水性ジオールまたは親水性ジアミンを含む親水性ポリマーと、末端にアミノ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基を有するシロキサンとのブレンド混合物を含み、このポリウレタン/ポリ尿素ポリマーは、ブチル、プロピル、エチルまたはメチル−アクリレート、アミノ−アクリレート、シロキサン−アクリレート、およびポリ(エチレンオキシド)−アクリレートを含む混合物から形成される分枝状アクリレートポリマーとブレンドされたものである。本発明のある実施形態では、分析物調節層は、摂氏22から40度の温度範囲にわたり摂氏1度当たり2%未満変化する、グルコースに対する透過率を示す。任意選択で分析物調節層は、膜重量の40〜60%の水吸着プロファイルを示す。典型的には分析物調節層は、5〜12μmの厚さである。
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される要素のある組合せは、低バックグラウンド電流、比較的高い感度、低い干渉応答、および低いシステムノイズレベルを含めた予期せぬ特性を有する電流測定センサを生成する。特に、スパッタリングされた白金電極組成物と、100から1000キロダルトンの間の平均分子量を有する架橋したポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマー、または4から500キロダルトンの間の平均分子量を有する架橋した第一級アミンポリマーを含む材料の層との組合せを有するセンサは、これらの非常に望ましい性質を示す。それに加え、これらの要素がさらに、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素および分枝状アクリレートポリマーが重量%で1:1から1:20の間の比で一緒にブレンドされたブレンド混合物を含む調節層と組み合わされた場合、センサはさらに望ましい品質を示し、例えば摂氏22から40度の温度範囲にわたって摂氏1度当たり2%未満変化する、グルコースに対する透過率を示す。
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される本発明の実施形態は、いくつかの他の層状要素を含むことができる。本発明のある実施形態では、センサ装置はさらに、分析物感知層を覆うように配置されたタンパク質層;この分析物感知層を覆うように配置され、かつ分析物感知層と隣接層との間の接着を促進させる接着促進層;またはこの分析物センサ装置を覆うように配置されたカバー層であって、哺乳動物に存在する分析物が分析物調節層に接触しその中を拡散し、かつ分析物感知層に接触するのが容易になるように、カバー層上に位置決めされた開口部を含むカバー層の、少なくとも1つを含む。本発明の典型的な実施形態では、分析物センサ装置は生体適合性材料から形成され、哺乳動物への埋め込みに適合可能な構築物を示す。
本発明の関連ある実施形態は、ベース層を用意するステップと、このベース層上に、スパッタリングされた白金組成物から形成される作用電極を含む導電層を形成するステップと、この導電層に動作可能に接触して、10重量%から50重量%の水を吸収するように選択される組成物から形成される、電解質保持層を形成するステップと、この導電層を覆うように配置された分析物感知層を形成するステップと、分析物感知層を覆うように配置された分析物調節層を形成するステップとを含む、哺乳動物に埋め込むためのセンサ装置を作製する方法である。本発明のいくつかの実施形態では、スパッタリングされた白金組成物は、3ナノメートル未満の二乗平均粗さ値を示すように形成される。任意選択でそのような方法では、電解質保持層は、140ダルトンよりも大きい分子量を有する化合物の、その中の拡散を阻止する干渉除去膜として機能するように形成される。
上述のように、これらの方法のある実施形態は、作用電極上に干渉除去膜を形成するステップをさらに含む。本発明の実施形態で有用な干渉除去膜は、例えば、その内容を引用して援用する米国特許出願第12/572,087号に記載されている。典型的には干渉除去膜は、架橋したメタクリレートポリマーまたは架橋した第一級アミンポリマーを含み、かつ/または酸化還元酵素を含むように分析物感知層を形成し、この分析物感知層上にタンパク質層を形成して、分析物感知層または任意選択のタンパク質層上に接着促進層を形成し、かつ/または分析物調節層の少なくとも一部の上に配置されたカバー層を形成し、このカバー層はさらに、分析物調節層の少なくとも一部を覆うように開口部を含む。本発明のある実施形態では、架橋したメタクリレートポリマーは、100から1000キロダルトンの間の平均分子量を有するポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)ポリマーを含む。典型的にはポリマーは、親水性架橋剤により架橋される。
本発明のいくつかの実施形態では、分析物調節層は、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素と、その内容を引用して援用する米国特許出願第12/643,790号に開示されたものなどの分枝状アクリレートポリマーとのブレンド混合物を含むように形成される。典型的にはこれらのポリマーは、重量%で1:1から1:20の間の比で一緒にブレンドされ、このポリウレタン/ポリ尿素ポリマーは、ジイソシアネート、親水性ジオールまたは親水性ジアミンを含む親水性ポリマー、およびアミノ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基を末端に有するシロキサンを含む混合物から形成され、分枝状アクリレートポリマーは、ブチル、プロピル、エチル、またはメチル−アクリレート、アミノ−アクリレート、シロキサン−アクリレート、およびポリ(エチレンオキシド)−アクリレートを含む混合物から形成される。典型的には分析物調節層は、摂氏22から40度の温度範囲にわたって摂氏1度当たり2%未満変化する、グルコースに対する透過率を示すように形成される。
本発明のセンサの実施形態の、特定の例示的な実施例は、全てがガラス板の上面に位置決めされている、ベースポリイミド、パターニングされた金属トレース、および絶縁ポリイミドを含む。この実施形態では、金属スパッタリングプロセスは、基材組立てプロセスのこの段階で、後続のステップである。金属をベースポリイミドの表面に適用して、プロセスの次のステップでセンサの導電体、電極、および接触パッドに形成することができる。1種以上の金属を供給源から基材に移動させるのに使用する方法は、典型的にはスパッタ堆積プロセスである。当技術で公知のように、スパッタ堆積は、供給源である「ターゲット」から材料をはじき出し次いでシリコンウエハなどの「基材」上に堆積するスパッタリングによって、薄膜を堆積する物理気相成長(PVD)法である。スパッタリングの供給源は、通常、ターゲットとして公知であるマグネトロンの表面近くの電子を捕獲するのに強電界および強磁界を利用する、マグネトロンである。電子は磁力線の周りの螺旋経路を辿り、通常生じ得るよりも多くの、ターゲット表面近くの気状中性子とのイオン化衝突を受ける。スパッタガスは不活性であり、典型的にはアルゴンである。当技術で公知の例示的なスパッタリングプロセスには、例えばイオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、イオン支援堆積、高ターゲット利用スパッタリング、およびガス流スパッタリングが含まれる。そのようなプロセスの例示的な方法および材料は、例えば、米国特許第5,282,946号、同第7,229,588号、同第4,253,931号、同第4,400,255号、およびHANDBOOK OF ION SOURCES バーナード・ウルフ編 (1995) CRC Pressに記載されている。
スパッタプロセスの例示的な実施形態では、接着またはシード層として働くように最初にクロムを適用する。次いでセンサの主要導電体として働くように、金を適用する。任意選択で、異なる適用に合わせて、Cr層をチタンに置き換え、Auを白金に置き換える。各層の厚さは、機械的性質および/または後続のプロセスステップの要件(例えば、エッチングおよび/または電気メッキ)などの因子により決定することができる。CrまたはTi(シード層)およびAu(1次導電体)の上面への、1kオングストローム未満の厚さのPtの適用は、例えば0.4kW、約6.0mTorr、および138オングストローム/分で行うことができる。
本発明のさらに別の実施形態は、スパッタリングされた白金組成物、および100から1000キロダルトンの間の平均分子量を有する架橋したポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマーを含んだ親水性ポリマー組成物、または4から500キロダルトンの間の平均分子量を有する架橋した第一級アミンポリマーを含む、組成物である。任意選択で、組成物はさらに、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーと分枝状アクリレートポリマーとが重量%で1:1から1:20の間の比で一緒にブレンドされた、ブレンド混合物を含む。
いくつかのセンサの実施形態では、接着促進層を付加することにより、拡散制御膜および酵素層などの様々な層の密接な結合を容易にする。1つのそのようなセンサの実施形態を、図2Aに示す。あるいは、いくつかのセンサの実施形態は、(1つ以上の)任意の接着促進層を含まない。本明細書に開示される本発明の典型的な実施形態は、アセトアミノフェン、尿酸、およびアスコルビン酸など、in vivo(例えば、間質液中)での内因的なまたは外因的な電気活性物質が、センサ電極に接触しかつ電極表面で酸化される(その結果、測定がなされる分析物によって発生した信号の測定を混乱させる可能性のある偽信号が生成される)のを阻止しかつ/または防止するように設計された、干渉除去膜を含む。干渉除去膜を有するセンサの1つの実施形態を、図2Bに示す。
本発明の実施形態で有用なIRMの1つの例は、100から1000キロダルトンの間の分子量を有するメタクリレートポリマーを含んだポリマー組成物を含み、このメタクリレートポリマーは、有機官能性ダイポーダルアルコキシシランなどの親水性架橋剤により架橋されたものである。本発明の別のIRMの実施形態は、4,000ダルトンから500キロダルトンの間の分子量を有する第一級アミンポリマーを含むポリマー組成物であり、この第一級アミンポリマーは、グルタルアルデヒドなどの親水性架橋剤により架橋されたものである。典型的には、これらの架橋したポリマーIRM組成物は、スパッタリングされた白金組成物をコーティングする。例示的な実施形態では、白金組成物は電極を含み、架橋したポリマー組成物は、0.1μmから1.0μmの間の厚さの層で電極にコーティングされる。本発明に関連した実施形態は、架橋したメタクリレートポリマーまたは架橋した第一級アミンポリマーの層でコーティングされかつこの層に直接接触している電気活性表面を有する電極(例えば、電流測定センサで使用される、スパッタリングされた白金電極)を含む組成物である。本発明のある実施形態では、IRMは機能する(即ち、干渉物質の拡散を阻止する)ように設計され、このときの干渉物質の分子量は少なくとも140ダルトンである。典型的にはIRMは、膜中の、アセトアミノフェン、アスコルビン酸、および/または尿酸の、分析物センサ内の電極の電気活性表面への拡散を阻止する。
本発明のある実施形態では、ポリマーのIRM層を、電流測定センサのスパッタリングされた白金作用電極上に配置し、層の水和を容易にする親水性架橋剤によって架橋する。メタクリレートポリマーまたはポリアミンポリマーを結合するのに有用ないくつかの異なる親水性架橋化合物が、当技術では公知である。例示的な架橋化合物は、例えば、グルタルアルデヒド、尿素、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、または有機官能性ダイポーダルアルコキシシランなど含む。典型的には、メタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマーは、アルコキシシラン架橋剤などのヒドロキシル部分と反応する親水性架橋剤で架橋される。典型的には、第一級アミン(例えば、ポリリジン)ポリマーは、グルタルアルデヒドなどの第一級アミン部分と反応する親水性架橋剤で架橋する。適切な第一級アミンポリマーには、ポリリジン、ポリ(アリルアミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ジアミン末端ポリ(ビニルアミン)、分枝状ポリエチレンイミン、およびJeffamineシリーズの第一級アミンをベースにしたオリゴマーまたはポリマーなど(およびそれらの塩)が含まれる。ポリアミンIRMを作製するのに使用される1つの典型的な化合物は、50kdから500kdのMWを有するポリリジンヒドロブロミドである
本発明の別の例示的な実施形態は、ベース層と、このベース層上に配置されかつスパッタリングされた白金作用電極を含む、導電層と、作用電極の電気活性表面上に配置された電解質維持層および/または干渉除去膜であって、親水性架橋剤により架橋されたポリマーを含む電解質維持層および/または干渉除去膜と、分析物感知層(例えば、干渉除去膜に直接接触しているもの)とを含む、電流測定分析物センサ装置(例えば、哺乳動物に埋め込むために設計されたもの)である。この実施形態における電解質維持層および/または干渉除去膜は、架橋した第一級アミンまたは架橋したメタクリレート(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ポリマー)を含むことができる。この膜の、架橋したメタクリレートポリマーは、典型的には親水性架橋剤(例えば、尿素;エチレングリコールジメタクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;または有機官能性アルコキシシランなど)により架橋されて、干渉除去膜の親水性が増大するようになる。望ましいメタクリレート架橋剤は、有機ポリマーと反応してトリアルコキシシリル基をポリマー骨格に結合する有機官能性アルコキシシランなどの化合物を含む。そのような反応では、次にシランを利用して水分と反応させることによりシランを架橋して、安定な3次元シラン構造にすることができる。そのようなメカニズムは、コーティングに耐久性、耐熱性を与えるために、可塑性樹脂、特にポリエチレン、および他の有機樹脂、例えばアクリルおよびウレタンを架橋するのに使用することができる。さらに、親水性ダイポーダルシランなどの架橋剤は、2倍強度の架橋能力を与えると同時に優れた親水性を提供する。
本明細書に開示された、ある架橋したポリマー組成物では、既存のセンサ構造の厚さを実質的に増加させない極めて薄い干渉除去膜を設計することが可能になる。典型的には、干渉除去膜は0.1から1.0μmの間の厚さ(例えば、0.1から0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0μmの間の厚さ)であり、この厚さでは、この追加の要素を順応させるためにこれらの設計を実質的に変化させることなく、様々な既存のセンサ設計で使用するよう容易に適合させることが可能になる。好ましい実施形態では、干渉除去膜は0.1〜0.2μmの間の厚さである。これらの薄い干渉除去膜は、例えば、センサの水和を容易にするために、ならびに埋め込まれたデバイスの嵩高さを実質的に増大させることなく(それによって、デバイスの埋め込みに伴い患者が経験する合併症の可能性を低下させる)アセトアミノフェン、アスコルビン酸、および尿酸などの化合物のその中の拡散速度を阻止するために、本発明の埋め込み可能なセンサの実施形態で使用することができる。任意選択で、干渉除去膜は、干渉除去膜を持たない対照分析物センサ装置に比べて少なくとも50%だけ、アセトアミノフェンの濃度から得られる分析物センサ装置の信号を減少させるように、アセトアミノフェンのその中の拡散を阻止する。
本発明の実施形態は、広く様々なセンサ要素と要素構成を含む。例えば本発明のある実施形態では、電解質維持層および/または干渉除去膜は、スパッタリングされた白金作用電極の電気化学的に活性な表面に直接接触しており;分析物感知層は、干渉除去膜上に配置される。本発明のいくつかの実施形態では、電解質維持層および/または干渉除去膜は、ポリマー材料の複数のコーティング(例えば、下記の実施例に開示されるスプレープロセスを介して、スパッタリングされた白金電極上に配置されたコーティング)を含む。典型的には、分析物感知層は、酸化還元酵素(例えば、グルコース)の基質に曝露されることによって過酸化水素を発生させる酸化還元酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)を含み、酸化還元酵素によって発生した過酸化水素の量は、酸化還元酵素に曝された基質の量に比例する。任意選択で、本発明のそのような実施形態はさらに、分析物感知層上に配置されたタンパク質層;この分析物感知層またはタンパク質層上に配置された分析物調節層であって、分析物調節層の中を拡散するグルコースなどの分析物の拡散を調節する組成物を含む分析物調節層;分析物感知層上に配置された任意選択の接着促進層であって、分析物感知層と分析物調節層との間の接着を促進させる接着促進層;または分析物センサ装置上に配置されたカバー層であって、哺乳動物に存在する分析物が分析物調節層に接触しその中を拡散し、かつ分析物感知層に接触するのが容易になるように、カバー層上に位置決めされた開口部を含むカバー層を含む。本発明のいくつかの実施形態では、導電層は、作用電極、対電極、および参照電極を含めた複数の電極を含む。任意選択で、層内の1種以上のタンパク質は、層内に捕捉されまたは架橋される。
任意選択で、導電層は、複数のスパッタリングされた白金作用電極、対電極、および参照電極を含み、これら複数の作用、対、および参照電極は、1つの単位として一緒にグループ分けされ、この単位の繰返しパターンとして導電層上に位置的に分布されている。本発明のいくつかの実施形態では、センサは、哺乳動物で感知された生理学的特性値に基づいたセンサからの信号を受信することが可能なセンサ入力と、このセンサ入力に結合されて、センサから受信した1つ以上の信号を特徴付けることが可能なプロセッサとに、動作可能に結合される。本発明のある実施形態では、電極から信号を得るのにパルス化電圧を使用する。
本発明の別の実施形態は、ベース層を用意するステップと、このベース層上に、スパッタリングされた白金作用電極を含む導電層を形成するステップと、作用電極上に、電解質維持層として機能しかつ架橋したメタクリレートポリマーまたは架橋した第一級アミンポリマーを含む干渉除去膜を形成するステップと、導電層上に、酸化還元酵素を含む分析物感知層を形成するステップと、任意選択で、分析物感知層上にタンパク質層を形成するステップと、任意選択で、接着促進層を、分析物感知層または任意選択のタンパク質層上に形成するステップと、接着促進層上に配置され、かつその中の分析物の拡散を調節する組成物を含む分析物調節層を形成するステップと、分析物調節層の少なくとも一部の上に配置され、この分析物調節層の少なくとも一部を覆うように開口部をさらに含むカバー層を形成するステップとを含む、哺乳動物に埋め込むためのセンサ装置を作製する方法である。本発明のさらに別の実施形態は、開示された要素の組織的配置を有しかつ/または開示された方法ステップにより作製されたセンサを使用して、分析物を感知する方法である。
上述のように、本発明の実施形態は、ブレンドされたポリマー組成物から作製された分析物調節層を含む。当技術で公知のように、ポリマーは、モノマーと呼ばれる多くの同一のまたは類似の分子を一緒に化学結合することにより形成された、多くの反復単位の鎖または網状構造からなる、長くまたはより大きい分子を含む。コポリマーまたはヘテロポリマーは、1種のモノマーしか使用されないホモポリマーとは対照的に、2種(またはそれ以上)のモノマー種から誘導されたポリマーである。コポリマーは、ポリマー構造の分枝の存在または配置構成に関して記述されてもよい。直鎖状コポリマーは単一の主鎖からなり、それに対して分枝状コポリマーは、1つ以上のポリマー側鎖を備えた単一の主鎖からなる。本明細書に開示されるブレンドされたポリマー組成物から作製されたセンサ膜は、センサ感度、安定性、および水和プロファイルも含めた分析物センサ機能を最適化することができる。さらに、センサ温度のある範囲にわたって反応物種の化学量論を最適化することにより、本明細書に開示される膜は、対象とする分析物(例えば、グルコース)のレベルに相関する極めて重要な測定可能な信号を生成する化学反応を、最適化することができる。以下のセクションは、本発明の、例示的なセンサ要素、センサ構成、および方法の実施形態について記述する。
本発明の分析物調節層の実施形態で使用される1種のポリマー組成物は、ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーである。本明細書で使用される「ポリウレタン/ポリ尿素ポリマー」という用語は、ウレタン結合、尿素結合、またはこれらの組合せを含有するポリマーを指す。当技術で公知のように、ポリウレタンは、ウレタン(カルバメート)結合により接合された有機単位の鎖からなるポリマーである。ポリウレタンポリマーは、少なくとも2個のイソシアネート官能基を含有するモノマーを、触媒の存在下で少なくとも2個のヒドロキシル(アルコール)基を含有する別のモノマーと反応させることによる逐次重合を経て、典型的には形成される。ポリ尿素ポリマーは、イソシアネート成分とジアミンとの反応生成物から誘導される。典型的には、そのようなポリマーは、ジイソシアネートとアルコールおよび/またはアミンとを組み合わせることによって形成される。例えば、イソホロンジイソシアネートとPEG600およびアミノプロピルポリシロキサンとを重合条件下で組み合わせることにより、ウレタン(カルバメート)結合および尿素結合を共に有するポリウレタン/ポリ尿素組成物が得られる。そのようなポリマーは、当技術で周知であり、例えば、そのそれぞれの内容を引用して援用する米国特許第5,777,060号、同第5,882,494号、および同第6,632,015号と、PCT公開第WO96/30431号;同第WO96/18115号;同第WO98/13685号;および同第WO98/17995号に記載されている。
本発明の別の実施形態は、ベース層と、このベース層上に配置されかつスパッタリングされた白金作用電極を含む、導電層と、この導電層上に配置された分析物感知層(例えば、グルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素を含むもの)と、この分析物感知層上に配置された分析物調節層と含む、電流測定分析物センサ装置である。本発明のこの実施形態では、分析物調節層は、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーおよび分枝状アクリレートポリマーのブレンド混合物を含み、これらのポリマーは、重量%で少なくとも1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、または1:20の比でブレンドされる。典型的にはそのような実施形態では、均質なブレンドポリマー組成物を作製するのに使用される直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーは、温度が摂氏22から40度に上昇するにつれ、摂氏1度当たり1%から8%の間で低下する、グルコースに対する透過率を示し;ブレンドされたポリマー組成物を作製するのに使用される分枝状アクリレートポリマーは、温度が摂氏22から40度に上昇するにつれ、摂氏1度当たり1%から8%の間で上昇する、グルコースに対する透過率を示す。典型的には、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素と分枝状アクリレートポリマーとをブレンドすることから得られるポリマー組成物は、摂氏22から40度の温度範囲にわたり、摂氏1度当たり2%未満変化する、グルコースに対する透過率を示す。
本発明の実施形態は、逆であるが相補的なグルコース拡散プロファイルを有するポリマーをブレンドして、安定したグルコース拡散プロファイルを有する分析物調節組成物を生成する。特に、あるポリ尿素および/またはポリウレタン分析物調節組成物(例えば、米国特許第5,777,060号、同第5,882,494号、および同第6,642,015号に開示されているもの)は、温度が上昇するにつれて低下するグルコース拡散プロファイルを有する。これらの直鎖状ポリ尿素およびポリウレタンポリマーは、摂氏22から40度まで、摂氏1度当たり約−3%のグルコース信号変化を示す可能性がある(即ち、所定の濃度のグルコースから観察された信号は、温度が摂氏22から40度まで上昇するにつれ、摂氏1度当たり約3%低下する)。対照的に、本明細書に開示される分枝状アクリレートポリマーは、温度が上昇するにつれて低下するグルコース拡散プロファイルを有する。これらの分枝状アクリレートポリマーは、摂氏22から40度まで、摂氏1度当たり約+3%のグルコース信号変化を示す(即ち、所定の濃度のグルコースから観察された信号は、温度が摂氏22から40度まで上昇するにつれ、摂氏1度当たり約3%上昇する)。しかし直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーおよび分枝状アクリレートポリマーが一緒にブレンドされた場合、逆の温度効果は打ち消され、その結果、ブレンドされた膜は、摂氏22から40度で本質的に非温度依存性のグルコース制限ポリマーになる。
ブレンド中の直鎖状ポリ尿素/ポリウレタンおよび分枝状アクリレートポリマーの相対量を調節することにより、あるポリマーマトリックスに関して観察される温度依存性のグルコース透過率プロファイルを改良することができる。2種の異なるポリマー間の相互作用に起因して、ブレンド比は、必ずしも1:1の理論比である必要はなく、実験的に、重量%で1:1から1:20の間であることが決定されてきた。この状況において、どちらかのポリマーが過剰になり「1:20」となる可能性があり、したがって、分枝状アクリレートが1/20の割合(0.05)で存在するブレンド、ならびに直鎖状ポリ尿素/ポリウレタンが1/20の割合で存在するブレンドを包含する。グルコースセンサが、グルコースに応答して比較的低い信号を発生させることが望ましい状況では、直鎖状ポリ尿素/ポリウレタンおよび分枝状アクリレートを、直鎖状ポリ尿素/ポリウレタンが過剰である比、例えば2:1の比で、一緒にブレンドすることができる。センサが、グルコースに応答して比較的高い信号を発生させることが望ましい状況では、直鎖状ポリ尿素/ポリウレタンおよび分枝状アクリレートを、分枝状アクリレートが過剰である比、例えば1:2の比で、一緒にブレンドすることができる。これらのポリマー比を変化させることも、他の状況では利益がある可能性がある。例えば、ポリマーブレンド中の分枝状アクリレートポリマーの相対量が高いと、ブレンドされたポリマー膜と、センサ内の近位材料または層(例えば、GOx層)との間の接着を増強することができる。
本発明の実施形態は、in vivoで埋め込み可能になるように、生体組織に適合するようになされた構築物ならびに生体適合性材料から作製された要素を有する分析物センサ装置を含む。本発明のそのような実施形態では、分析物調節層の、均質にブレンドされたポリマー組成物が、センサのin vivo水和を容易にし、したがってin vivoでの分析物のレベルは、センサをin vivo環境に埋め込んだ後、45分未満または30分未満(20分の初期化プロセスを含む)で感知できるようになる。さらに、本発明のある実施形態では、分析物調節層のブレンドされたポリマー組成物が、センサの層の接着を容易にし、センサの様々な層の間に接着促進材料の個別の層(例えば、分析物感知層と分析物調節層との間に配置されたもの)を必要としなくなる。任意選択で、本発明のセンサはさらに、分析物感知層上に配置されたタンパク質層;または分析物センサ装置上に配置されたカバー層であって、in vivo環境に存在する分析物が分析物調節層に接触しその中を拡散し;かつ分析物感知層に接触するのが容易になるように、カバー層上に位置決めされた開口部を含むカバー層の、少なくとも1つを含む。
本発明の実施形態は、材料(例えば、ブレンドされたポリマー組成物)ならびにセンサ性能が助長されるように設計された構築物の、両方を含む。例えば、本発明のある実施形態では、導電層は、例えば不十分なセンサの水和に関連した問題を回避しかつ/または十分な感知能力を提供するために、複数のスパッタリングされた白金作用電極および/または対電極および/または参照電極(例えば、3つの作用電極、1つの参照電極、および1つの対電極)を含む。任意選択で、複数の作用、対、および参照電極は、1つの単位として一緒に構成され、この単位が繰り返されるパターンとして導電層上に位置的に分布される。本発明のある実施形態では、ベース層は、in vivoで埋め込まれた場合にセンサが捩じれかつ曲がるのを可能にする柔軟な材料から作製され;電極は、in vivoで埋め込まれた場合に捩じれかつ曲がるので作用電極の少なくとも1つにin vivo流体が接触するのを容易にする構成にグループ分けされる。いくつかの実施形態では、電極は、1つ以上の電極を有するセンサの一部がin vivo環境から取り出されてex vivo環境に曝露される場合に、このセンサを機能させ続けることができる構成にグループ分けされる。典型的にはセンサは、感知された分析物に基づくセンサからの信号を受信することが可能なセンサ入力に動作可能に結合され;プロセッサはセンサ入力に結合されており、このプロセッサは、センサから受信された1つ以上の信号を特徴付けることが可能なものである。本発明のいくつかの実施形態では、パルス化電圧を使用して、センサの1つ以上の電極から信号を得る。
本明細書に開示するセンサは、当技術で公知の広く様々な材料から作製することができる。本発明の1つの例示的な実施形態では、分析物調節層は、ジイソシアネート、親水性ジオールまたは親水性ジアミンを含む親水性ポリマー、およびアミノ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基を末端に有するシロキサンを含む混合物から形成される、ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーを含み、次いでこのポリマーが、ブチル、プロピル、エチル、またはメチル−アクリレート、アミノ−アクリレート、シロキサン−アクリレート、およびポリ(エチレンオキシド)−アクリレートを含む混合物から形成される分枝状アクリレートポリマーとブレンドされる。任意選択で、追加の材料をこれらのポリマーブレンドに含めることができる。例えば、分枝状アクリレートポリマーの、ある実施形態は、ヒドロキシル−アクリレート化合物(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)を含む反応混合物から形成される。
本発明の特定の実施形態では、分析物調節層は、ジイソシアネート、親水性ジオールまたは親水性ジアミンを含む親水性ポリマー、およびアミノ、ヒドロキシル、またはカルボン酸官能基を末端に有するシロキサンを含む混合物から形成される、ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーを含み、このポリウレタン/ポリ尿素ポリマーは、メチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサンモノメタクリルオキシプロピル、ポリ(エチレンオキシド)メチルエーテルメタクリレート、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートを含む混合物から形成される、分枝状アクリレートポリマーとブレンドされる。典型的には、第1のポリマーは、ジイソシアネート化合物(典型的には、混合物中の反応物の約50mol%)、少なくとも1種の親水性ジオールまたは親水性ジアミン化合物(典型的には、混合物中の反応物の約17から45mol%)、およびシロキサン化合物を含む混合物から形成される。任意選択で、第1のポリウレタン/ポリ尿素ポリマーは、ジイソシアネート(例えば、4,4’−ジイソシアネート)を45〜55mol%(例えば、50mol%)、シロキサン(例えば、ポリメチルヒドロシロキサン、トリメチルシリル末端)を10〜20(例えば、12.5mol%)mol%、および親水性ジオールまたは親水性ジアミン化合物(例えば、平均分子量600ダルトンを有するポリプロピレングリコールジアミン、Jeffamine 600)を30〜45mol%(例えば、37.5mol%)含む。この第1のポリウレタン/ポリ尿素ポリマーは、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート化合物を5〜45重量%、メチルメタクリレート化合物を15〜55重量%、ポリジメチルシロキサンモノメタクリルオキシプロピル化合物を15〜55重量%、ポリ(エチレンオキシド)メチルエーテルメタクリレート化合物を5〜35重量%、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートを1〜20重量%含む混合物から形成される第2のポリマーとブレンドされ、この第1のポリマーと第2のポリマーは、重量%で1:1から1:20の間の比で一緒にブレンドされるものである。
多層の酸化還元酵素を含むセンサ
当技術で公知のように、典型的な電流測定グルコースセンサでは、グルコースオキシダーゼを使用してグルコースと酸素との反応を触媒することによりグルコン酸および過酸化水素(H2O2)が得られる。次いでH2O2を、センサの電気回路内で電極と電気化学的に反応させ、したがって結果的に得られる回路電流の変化を測定することができる(ポテンショスタットにより)。しかし同時に、このH2O2は、グルコースオキシダーゼ酵素と反応して損傷を与える可能性があり、センサ性能の側面を低減させ、および/またはセンサの寿命を短くする可能性がある。その結果、この技術では、酸化還元酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)をベースにしたセンサによって、関連あるグルコースレベルを定量するのに十分であると同時に酸化還元酵素に対するH2O2損傷を最小限に抑える電極でH2O2信号を発生させることが可能になる、方法および材料が求められている。種々の濃度のグルコースオキシダーゼを有する複数のグルコースオキシダーゼ含有層を有するグルコースセンサを含む、本発明の実施形態は、この技術におけるこのおよび他のニーズに対処する。
例えば図8A〜8Cのデータにより示されるように、濃度が様々なグルコースオキシダーゼの複数の層を有するグルコースセンサは、関連あるグルコースレベルを定量するのに十分であると同時に酸化還元酵素に対する潜在的な損傷を低減させることができるセンサ電極でH2O2信号を発生させることのできる組成物を形成することができる。例えば、図8Bおよび8Cに示すように、15KU−30KU−45KU層および45KU−45KU−45KU層は、たとえ15KU−30KU−45KU層が45KU−45KU−45KU層よりも著しく低いGOxを含むとしても、同等なセンサ特性を示す。同時に、15KU−30KU−45KU層は著しく少ないGOxを含むので、45KU−45KU−45KU層の場合よりも少ないH2O2(GOxに損傷を与える可能性のあるH2O2)を発生させる。このように、H2O2により媒介されるGOx酵素に対する損傷を低減させる。特定の現象または科学原理に拘泥するものではないが、この観察された作用は、濃度が様々なグルコースオキシダーゼの層(例えば、15KU−30KU−45KU)から得ることができ、センサ信号が最適化されるように(45KU−45KU−45KU層よりも著しく少ないGOxであるとしても)電極に移動するH2O2分子の流束に影響を及ぼす(例えば、流束角)と考えられる。
本明細書に開示されるセンサの実施形態は、(1つ以上の)グルコースオキシダーゼ(GOx)層、ヒト血清アルブミン(HSA)層、接着促進(AP)層、およびグルコース制限膜(GLM)層を含んだ膜層であって、その全てが典型的にはセンサ回路(例えば、3電極フレックス回路)の上面に適用される層を含む、皮下電流測定グルコースセンサを含む。このセンサの実施形態では、GOx反応で過酸化水素が生成され、アノード作用電極により酸化されて測定可能な信号を発生させるので、GLMは、GOx−グルコース反応がO2ではなくグルコースの濃度によって制限されることを確実にするために分析物調節層として働く。これらの層は、基質および生成物に対して異なる透過率を示し、(1つ以上の)GOx層内のグルコースおよび酵素の相対濃度は、酵素反応の効率に影響を及ぼす可能性がある。この多層膜グルコースセンサの数学的モデルは、COMSOL Multiphysics(登録商標)3.5aソフトウェアおよびその化学エンジニアリングモジュールを使用して開発した(このモデルにより生成されたデータを、図8A〜8Cに示す)。このモデルでは、センサ膜内の基質および生成物の拡散を、Fickの拡散法則によりモデル化した。GOx層での酵素反応は、ミカエリス−メンテンの酵素動態を使用してモデル化した。このモデルで使用することができる例示的な厚さパラメータには、下記のパラメータ:GLM層の厚さ=7E−6m;AP層の厚さ=5E−7m;HSA層の厚さ=3E−6m;GOxの厚さ=1つの層に関して1E−6m;および3重層に関して3E−6mが含まれる。このモデルで使用することができる例示的な拡散パラメータには、下記のパラメータ:GLM中のグルコースの拡散係数=4.5E−13m2/秒;GLM中の過酸化水素の拡散係数=2.6E−11m2/秒;AP中のグルコースの拡散係数=2.6E−14m2/秒;AP中の過酸化水素の拡散係数=1.56E−12m2/秒;HSA中のグルコースの拡散係数=1.65E−13m2/秒;HSA中の過酸化水素の拡散係数=4E−11m2/秒;GOx中のグルコースの拡散係数1.9E−13m2/秒;GOx中の過酸化水素の拡散係数=4.6E−11m2/秒;および酵素のミカエリス−メンテン定数Km=22mMが含まれる。これらのパラメータは、それぞれの膜層のサブドメイン設定に設定することができ、境界設定に関しては、GLM/バルク溶液界面でゼロに等しい過酸化水素の濃度、GLM/バルク溶液界面で5.5mol/m3(100mg/dlに等しい)に等しいグルコースの濃度、GOx/電極界面でゼロに等しいグルコースの流束、GOx/電極界面でゼロに等しい過酸化水素の濃度を設定することができる。当業者なら、当技術で公知の他のモデルおよび/またはモデルパラメータを、センサ層の評価に容易に適合できることが理解される。
グルコースオキシダーゼなど、多数の酸化還元酵素層を有する本発明の実施形態は、ベース層、ベース層上に配置されかつ作用電極を含む(任意選択で、前述のパラグラフで論じられた、スパッタリングされた白金組成物または1つ以上の他の要素を含む)導電層を含む、電流測定分析物センサ装置を含む。例示的な実施形態では、第1の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第1の分析物感知層は、導電層の上/一面に配置される(例えば、電極の電気活性表面に直接または間接的に接触する)。第2の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第2の分析物感知層は、この第1の分析物感知層を覆うように配置され、第3の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第3の分析物感知層は、第2の分析物感知層を覆うように配置される。典型的には、次いで分析物調節層をこれら第1、第2、および第3の分析物感知層を覆うように配置する。この配置構成の置換には、2層の分析物感知層を有するセンサ、ならびに4、5、6層またはそれ以上の分析物感知層を有するセンサが含まれる。
本発明の実施形態では、グルコースオキシダーゼの第1の濃度は、典型的にはグルコースオキシダーゼの第2の濃度よりも高い(例えば、隣接する層よりも少なくとも5〜20KU高い)。同様に、本発明の実施形態では、グルコースオキシダーゼの第2の濃度は、典型的にはグルコースオキシダーゼの第3の濃度よりも高い(例えば、隣接する層よりも少なくとも5〜20KU高い)。本発明の1つの例示的な実施形態では、グルコースオキシダーゼの第1の濃度は、35KU/mLから55KU/mLの間にあり、グルコースオキシダーゼの第2の濃度は、20KU/mLから40KU/mLの間にあり、および/またはグルコースオキシダーゼの第3の濃度は5KU/mLから25KU/mLの間にある。任意選択でこれらの層では、グルコースオキシダーゼが、UV架橋したポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム(PVA−SbQ)ポリマーのマトリックス中に捕捉される。これらの層の厚さは、変えることができる。任意選択で、第1の分析物感知層の厚さは0.5から1.5ミクロンの間であり、第2の分析物感知層の厚さは0.5から1.5ミクロンの間であり;かつ/または第3の分析物感知層の厚さは0.5から1.5ミクロンの間である。本発明のある実施形態は、分析物感知層の表面上にある化学的部分が架橋されるように、プラズマ堆積プロセス(例えば、HeまたはArプラズマ堆積プロセス)を使用して分析物感知層の表面を修飾するステップを含むことができる。
これらの分析物センサはさらに、1つ以上の追加の要素、例えば電解質保持層、タンパク質層、干渉除去膜、接着促進層;および/または分析物センサ装置を覆うように配置されたカバー層であって、哺乳動物に存在する分析物が分析物調節層に接触しその中を拡散し、かつ分析物感知層に接触するのが容易になるように、カバー層上に位置決めされた開口部を含むカバー層を含むことができる。ある実施形態では、作用電極は、スパッタリングされた白金組成物を含み、センサ装置はさらに、導電層に動作可能に接触している電解質保持層であって、水を10重量%から50重量%吸収するように選択される組成物から形成される電解質保持層を含む。任意選択で、分析物調節層は、直鎖状ポリウレタン/ポリ尿素ポリマーと分枝状アクリレートポリマーとが、重量%で1:1から1:20の間の比で一緒にブレンドされた、ブレンド混合物を含む。本発明のある実施形態では、分析物調節層は、摂氏22から40度の温度範囲にわたって摂氏1度当たり2%未満で変化する、グルコースに対する透過率を示す。
本発明の別の実施形態は、層状グルコースセンサ装置内の過酸化水素分子の流束を調節する方法であり、この方法は、ベース層と、このベース層上に配置されかつ作用電極を含む導電層と、この導電層上に配置されかつ第1の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第1の分析物感知層と、この第1の分析物感知層を覆うように配置されかつ第2の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第2の分析物感知層と、この第2の分析物感知層を覆うように配置されかつ第3の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第3の分析物感知層と、これら第1、第2、および第3の分析物感知層を覆うように配置された分析物調節層とを含むように、装置内で層を組織化するステップを含む。本発明のそのような実施形態では、第1、第2、および第3の分析物感知層内の第1、第2、および第3の濃度のグルコースオキシダーゼは、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼにより生成される第1、第2、および第3の層における過酸化水素分子の流束の角度を変化させて(例えば、単一の層または濃度のグルコースオキシダーゼと比較して)、層状グルコースセンサ装置内の過酸化水素分子の流束が調節されるように機能する。特定の科学理論または原理に拘泥するものではないが、そのような実施形態では、第1、第2、および第3の分析物感知層の種々のレベルのグルコースオキシダーゼは、グルコースの存在下でグルコースオキシダーゼにより生成される過酸化水素分子の流束の角度を変化させて、層状グルコースセンサ内の過酸化水素分子の流束が作用電極上の電気活性表面に最適に向かうように(例えば、単一の層または濃度のグルコースオキシダーゼと比較)なされると考えられる。
本発明のさらに別の実施形態は、金属電極と、この金属電極を覆うように配置されかつ第1の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第1の分析物感知層と、この第1の分析物感知層を覆うように配置されかつ第2の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第2の分析物感知層と、この第2の分析物感知層を覆うように配置されかつ第3の濃度のグルコースオキシダーゼを含む第3の分析物感知層と、これら第1、第2、および第3の分析物感知層を覆うように配置された分析物調節層とを含む、組成物である。
本発明の実施形態は、理解されるように、哺乳動物の体内の分析物を感知する方法を含み、この方法は、本明細書に開示される分析物センサの実施形態を哺乳動物に埋め込むステップ、次いで作用電極での電流の変化など、1つ以上の電気的変動を感知するステップ、および電流の変化を分析物の存在に相関させて、分析物が感知されるようにするステップを含む。そのような1つの方法において、分析物センサ装置は哺乳動物のグルコースを感知する。代替の方法では、分析物センサ装置は、哺乳動物におけるラクテート、カリウム、カルシウム、酸素、pH、および/または任意の生理学的に関連ある分析物を感知する。
A.本発明の実施形態に見出される典型的なセンサ構築物
図2Aは、本発明の典型的なセンサの実施形態100の、断面を示す。このセンサの実施形態は、当技術で受け入れられる方法および/または本明細書に開示される本発明の特定の方法により、典型的には互いの上に配置された様々な導電性および非導電性の構成成分の層の形態をとる、複数の構成要素から形成される。センサの構成要素は、典型的には本明細書では層として特徴付けられるが、それは例えば、図2に示されるセンサ構造の容易な特徴付けが可能になるからである。しかし当業者なら、本発明のある実施形態では、多数の構成成分が1つ以上の不均質な層を形成するようにセンサの構成成分を組み合わせることが理解されよう。この状況において当業者は、本発明の様々な実施形態において層状構成成分の順序を変更できることを理解する。
図2Aに示される実施形態は、センサ100を支持するベース層102を含む。ベース層102は、自立的に支持することができまたは当技術で公知の別の材料によってさらに支持されてもよい、金属および/またはセラミックおよび/またはポリマー基材などの材料で作製することができる。本発明の実施形態は、ベース層102上に配置されおよび/またはベース層102と組み合わされた導電層104を含む。典型的には導電層104は、1つ以上の電極を含む。作動センサ100は、典型的には、作用電極、対電極、および参照電極などの複数の電極を含む。他の実施形態は、複数の作用および/または対および/または参照電極、および/または多数の機能を発揮する、例えば参照電極としてかつ対電極としても作用する、1つ以上の電極を含んでいてもよい。
以下に詳細に論じるように、ベース層102および/または導電層104は、多くの公知の技法および材料を使用して生成することができる。本発明のある実施形態では、センサの電気回路は、配置された導電層104を所望のパターンの導電経路にエッチングすることにより画定される。センサ100の典型的な電気回路は、近位端に接触パッドを形成する領域と、遠位端にセンサ電極を形成する領域とを有する、2つ以上の隣接する導電経路を含む。ポリマーコーティングなどの電気絶縁カバー層106は、センサ100の部分上に配置することができる。絶縁保護カバー層106として使用するのに許容されるポリマーコーティングには、無毒性の生体適合性ポリマー、例えばシリコーン化合物、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、またはエポキシアクリレートコポリマーなどを含めることができるが、これらに限定するものではない。本発明のセンサにおいて、1つ以上の露出領域または開口部108を、カバー層106に作製して、導電層104を外部環境に開放することができ、例えばグルコースなどの分析物をセンサの層に透過させ、感知要素で感知させることが可能である。開口部108は、レーザアブレーション、テープマスキング、化学ミリングまたはエッチング、またはフォトリソグラフィ現像などを含めたいくつかの技法によって形成することができる。本発明のある実施形態では、製造中に、2次フォトレジストを保護層106に適用して、除去される保護層の領域を画定することにより、(1つ以上の)開口部108を形成することもできる。露出した電極および/または接触パッドは、追加のメッキ処理などの2次処理を受けることにより(例えば、開口部108を通して)、表面の調製および/または導電領域の強化を行うこともできる。
図2Aに示されるセンサ構成では、分析物感知層110(典型的にはセンサ化学層であり、この層の材料が化学反応して、導電層により感知することのできる信号を生成することを意味する)が、導電層104の露出電極の1つ以上の上に配置される。図2Bに示されるセンサ構成では、干渉除去膜120が、導電層104の露出電極の1つ以上の上に配置され、次いで分析物感知層110が、この干渉除去膜120上に配置される。典型的には、分析物感知層110は酵素層である。最も典型的には、分析物感知層110は、酸素および/または過酸化水素を生成および/または利用することが可能な酵素、例えば酵素グルコースオキシダーゼを含む。任意選択で、分析物感知層内の酵素を、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンなどの第2のキャリアタンパク質と組み合わせる。例示的な実施形態では、分析物感知層110内のグルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素がグルコースと反応して過酸化水素を生成し、これが後に電極の電流を調節する。この電流の調節は過酸化水素の濃度に依存し、かつ過酸化水素の濃度はグルコースの濃度に相関するので、グルコースの濃度は、この電流の調節をモニタすることにより決定することができる。過酸化水素濃度を変化させることによって引き起こされる、そのような電流の調節は、様々なセンサ検出器装置のいずれか1つ、例えばユニバーサルセンサ電流測定バイオセンサ検出器、または当技術で公知の他の様々な類似のデバイスの1つ、例えばMedtronic MiniMed製のグルコースモニタリングデバイスによって、モニタすることができる。
本発明の実施形態では、分析物感知層110は、導電層の一部を覆うようにまたは導電層の全領域を覆うように適用することができる。典型的な分析物感知層110は、アノードまたはカソードとすることができる作用電極上に配置される。任意選択で、分析物感知層110は、対および/または参照電極上にも配置される。分析物感知層110は、その厚さを最大約1000ミクロン(μm)にすることができるが、典型的には分析物感知層は、当技術で既に述べられたセンサで見られるものに比べて比較的薄く、例えば、典型的にはその厚さが1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。以下に詳細に論じるように、薄い分析物感知層110を生成するためのいくつかの方法は、基材(例えば、スパッタリングされた白金電極の反応性表面)上に層をブラッシングするステップ、ならびにスピンコーティングプロセス、浸漬および乾燥プロセス、低剪断スプレープロセス、インクジェット印刷プロセス、およびシルクスクリーンプロセスなどを含む。
典型的には、分析物感知層110は、1つ以上の追加の層にコーティングされ、かつ/または1つ以上の追加の層の隣りに配置される。任意選択で、1つ以上の追加の層は、分析物感知層110上に配置されたタンパク質層116を含む。典型的にはタンパク質層116は、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンなどのタンパク質を含む。典型的には、タンパク質層116は、ヒト血清アルブミンを含む。本発明のいくつかの実施形態では、追加の層は、分析物感知層110に対する分析物の接触を規制するため分析物感知層110を覆うように配置された、分析物調節層112を含む。例えば分析物調節膜層112は、グルコース制限膜を含むことができ、分析物感知層内に存在するグルコースオキシダーゼなどの酵素に接触するグルコースの量を規制する。そのようなグルコース制限膜は、そのような目的に適していることが知られている広く様々な材料から作製することができ、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物、ポリウレタン、ポリ尿素セルロースアセテート、NAFION、ポリエステルスルホン酸(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲル、または当業者に公知の任意の他の適切な親水性膜がある。
本発明のいくつかの実施形態では、図2に示されるように、接着促進層114が、分析物調節層112と分析物感知層110との間にそれらの接触および/または接着を容易にするために配置される。本発明の特定の実施形態では、接着促進層114は、図2に示されるように、分析物調節層112とタンパク質層116との間にそれらの接触および/または接着を容易にするために配置される。接着促進層114は、そのような層の間の結合を容易にするため当技術で公知の広く様々な材料のいずれか1つから作製することができる。典型的には、接着促進層114は、シラン化合物を含む。代替の実施形態では、分析物感知層110内のタンパク質または同様の分子を、十分に架橋しまたは他の方法で調製して、接着促進層114が存在しない状態で分析物調節膜層112を分析物感知層110に直接接触した状態で配置することが可能になる。
本明細書に開示されるセンサを作製するのに使用される典型的な要素の実施形態について、以下に論じる。
B.本発明の実施形態で使用される典型的な分析物センサ構成成分
以下の開示は、本発明のセンサの実施形態に使用される、典型的な要素/構成成分の実施例を提供する。これらの要素は個別の単位(例えば、層)として記述することができるが、当業者なら、センサは、以下に論じる要素/構成成分の材料特性および/または機能のいくつかまたは全ての組合せを有する要素を含有するように設計できることが理解される(例えば、支持ベース構成成分および/または導電性構成成分および/または分析物感知構成成分のマトリックスとして働き、さらにセンサの電極として機能する要素)。当業者なら、これらの薄膜分析物センサを、以下に記述されるようないくつかのセンサシステムで使用するよう適合できることが理解される。
ベース構成成分
本発明のセンサは、典型的には、ベース構成成分を含む(例えば、図2Aの要素102を参照)。「ベース構成成分」という用語は、本明細書では、当技術で許容される用語法に従い使用され、典型的には互いの上面に積層されかつ機能センサを含む複数の構成成分の支持マトリックスを提供する、装置内の構成成分を指す。一形態では、ベース構成成分は、絶縁(例えば、電気絶縁および/または水不透過性)材料の薄膜シートを含む。このベース構成成分は、誘電特性、水不透過性、および気密性などの所望の品質を有する、広く様々な材料で作製することができる。いくつかの材料には、金属、および/またはセラミック、および/またはポリマー物質などが含まれる。
ベース構成成分は、自立的に支持することができ、または当技術で公知の別の材料によってさらに支持されてもよい。図2Aに示されるセンサ構成の1つの実施形態では、ベース構成成分102がセラミックを含む。あるいはベース構成成分は、ポリイミドなどのポリマー材料を含む。例示的な実施形態では、セラミックベースは、主にAl2O3である(例えば、96%)組成物を含む。埋め込み可能なデバイスと共に使用される、絶縁ベース構成成分としてのアルミナの使用は、本願に引用して援用する米国特許第4,940,858号、同第4,678,868号、および同第6,472,122号に開示されている。本発明のベース構成成分はさらに、当技術で公知の他の要素、例えば気密性ビア(例えばWO03/023388を参照)を含むことができる。特定のセンサ設計に応じて、ベース構成成分は、比較的厚い構成成分(例えば、50、100、200、300、400、500、または1000ミクロンよりも厚い)とすることができる。あるいは、非導電性セラミック、例えばアルミナを、薄い構成成分で、例えば約30ミクロン未満で利用することができる。
導電性構成成分
本発明の電気化学センサは、典型的には、アッセイがなされる分析物またはその副生成物(例えば、酸素および/または過酸化水素)を測定するために少なくとも1つの電極を含むベース構成成分上に配置された導電性構成成分を含む(例えば図2Aの要素104を参照)。「導電性構成成分」という用語は、本明細書では、当技術に受け入れられる用語法に従い使用され、検出可能な信号を測定しこれを検出装置に伝達することが可能な、電極などの導電性センサ要素を指す。この例示的な例は、分析物、分析物が分析物感知構成成分110中に存在する組成物(例えば、酵素グルコースオキシダーゼ)と相互作用するときに使用される共反応物(例えば、酸素)、またはこの相互作用の反応生成物(例えば、過酸化水素)の濃度に変化を受けない参照電極と比較した、分析物またはその副生成物の濃度の変化など、刺激への曝露に応答して電流の増加または減少を測定することができる導電性構成成分である。そのような要素の例示的な例には、変動する濃度の過酸化水素または酸素などの分子の存在下、変動する検出可能な信号を生成することができる、スパッタリングされた白金電極が含まれる。典型的には、導電性構成成分中のこれらの電極の1つは、作用電極であり、非腐食性金属または炭素から作製することができる。炭素作用電極は、ガラス状または黒鉛状であってもよく、固体またはペーストから作製することができる。金属作用電極は、パラジウムまたは金を含めた白金族の金属、または非腐食性の金属導電性酸化物、例えば二酸化ルテニウムから作製されてもよい。あるいは電極は、銀/塩化銀電極組成物を含んでいてもよい。作用電極は、ワイヤ、または例えばコーティングもしくは印刷によって基材に適用された薄い導電性被膜であってもよい。典型的には、金属または炭素導電体の表面の一部だけが、分析物含有溶液と電解によって接触している。この部分を、電極の作用表面と呼ぶ。電極の残りの表面は、典型的には、電気絶縁カバー構成成分106により、溶液から隔離される。この保護カバー構成成分106を生成するのに有用な材料の例には、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、およびポリシロキサンなどのシリコーンなどのポリマーが含まれる。
作用電極に加え、本発明の分析物センサは、典型的には参照電極または参照電極と対電極とを組み合わせたもの(準参照電極または対/参照電極とも呼ばれる)を含む。センサが対/参照電極を持たない場合は、作用電極と同じまたは作用電極とは異なる材料から作製することのできる独立した対電極を含んでいてもよい。本発明の典型的なセンサは、1つ以上の作用電極と、1つ以上の対、参照、および/または対/参照電極とを有する。本発明のセンサの1つの実施形態は、2、3、または4つ以上の作用電極を有する。センサのこれらの作用電極は一体的に接続されていてもよく、または別々に保持されていてもよい。
干渉除去構成成分
本発明の電気化学センサは任意選択で、電極の表面と、アッセイがなされる環境との間に配置された、干渉除去構成成分を含む。特に、あるセンサの実施形態は、印加された定電位で、作用電極の表面で酵素反応により発生した、過酸化水素の酸化および/または還元を利用する。過酸化水素の直接酸化に基づく電流測定検出は、比較的高い酸化電位を必要とするので、この検出スキームを用いるセンサは、アスコルビン酸、尿酸、およびアセトアミノフェンなどの、生物流体中に存在する酸化性化学種により干渉を受ける可能性がある。この状況において、「干渉除去構成成分」という用語は、本明細書では、当技術により受け入れられる用語法に従い使用され、感知される分析物から発生した信号の検出に干渉するそのような酸化性化学種により発生した偽信号を阻止するように機能する、センサ内のコーティングまたは膜を指す。ある干渉除去構成成分は、サイズ排除を介して(例えば、特定サイズの干渉種を排除することによって)機能する。干渉除去構成成分の例には、本明細書に開示される親水性架橋pHEMAおよびポリリジンポリマーなどの化合物(例えば、以下の実施例を参照)、ならびにセルロースアセテート(ポリ(エチレングリコール)などの薬剤を組み込んだセルロースアセテートを含む)、ポリエーテルスルホン、ポリテトラ−フルオロエチレン、過フッ化イオノマーNAFION、ポリフェニレンジアミン、およびエポキシなどの、1つ以上の層またはコーティングが含まれる。そのような干渉除去構成成分の例示的な考察は、例えば、本願に引用して援用するワードら、Biosensors and Bioelectronics 17 (2002) 181-189、およびチョイら、Analytical Chimica Acta 461 (2002) 251-260に見出される。他の干渉除去構成成分には、例えば、その内容を引用して援用する米国特許第5,755,939号および米国特許出願第12/572,087号に開示されたものが例えば含まれる。図2Bは、干渉除去膜を含む本発明の実施形態を示す。
分析物感知構成成分
本発明の電気化学センサは、センサの電極上に配置された分析物感知構成成分を含む(例えば、図2Aの要素110を参照)。「分析物感知構成成分」という用語は、本明細書では、当技術で受け入れられる用語法に従い使用され、分析物センサ装置によってその存在が検出されることになる分析物を認識しまたは分析物と反応することが可能な材料を含む構成成分を指す。典型的には、分析物感知構成成分中のこの材料は、典型的には導電性構成成分の電極を介して、感知される分析物と相互作用した後に、検出可能な信号を生成する。これに関し、分析物感知構成成分と、導電性構成成分の電極とは、組み合わされて作用することにより電気信号を生成し、この信号は分析物センサに関連付けられた装置によって読み取られる。典型的には、分析物感知構成成分は、導電性構成成分の電極で電流の変化を測定することによりその濃度変化を測定することのできる分子(例えば、酸素および/または過酸化水素)との反応および/またはそのような分子の生成が可能な、酸化還元酵素、例えば酵素グルコースオキシダーゼを含む。過酸化水素などの分子を生成することが可能な酵素は、当技術で公知のいくつかのプロセスに従い電極上に配置することができる。分析物感知構成成分は、センサの様々な電極の全てまたは一部をコーティングすることができる。この状況において、分析物感知構成成分は、均等な程度にまで電極をコーティングしてもよい。あるいは分析物感知構成成分は、異なる電極を異なる程度にコーティングしてもよく、例えば作用電極のコーティング表面は、対および/または参照電極のコーティング表面よりも広い。
本発明のこの要素の典型的なセンサの実施形態は、固定比率(例えば、典型的にはグルコースオキシダーゼ安定化特性のために最適化されたもの)で第2のタンパク質(例えば、アルブミン)と組み合わされ、次いで薄い酵素構成成分が形成されるように1つ以上の層として電極の表面に適用された、酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)を利用する。典型的な実施形態では、分析物感知構成成分は、GOxおよびHSAの混合物を含む。GOxを有する分析物感知構成成分の典型的な実施形態では、GOxが、感知環境(例えば、哺乳動物の身体)内に存在するグルコースと反応し、図1に示される反応に従って過酸化水素を発生させ、そのように発生した過酸化水素は、導電性構成成分の作用電極で検出される。
上述のように、酵素および第2のタンパク質(例えば、アルブミン)を含む層は、架橋マトリックスが形成されるように処理することができる(例えば、UV架橋によってまたは架橋剤をタンパク質混合物に添加することによって)。当技術で公知のように、架橋条件は、酵素の保持される生物活性、その機械的および/または動作上の安定性などの因子を調節するように、操作することができる。例示的な架橋手順は、本願に引用して援用する米国特許出願第10/335,506号およびPCT公開第WO03/035891号に記載されている。例えば、グルタルアルデヒドなどであるがこれらに限定されないアミン架橋剤を、タンパク質混合物に添加することができる。
タンパク質構成成分
本発明の電気化学センサは、任意選択で、分析物感知構成成分と分析物調節構成成分との間に配置されたタンパク質構成成分を含む(例えば、図2Aの要素116を参照)。「タンパク質構成成分」という用語は、本明細書では、当技術で受け入れられる用語法に従い使用され、分析物感知構成成分および/または分析物調節構成成分との適合性を目的として選択されるキャリアタンパク質などを含有する構成成分を指す。典型的な実施形態では、タンパク質構成成分は、ヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含む。HSA濃度は、約0.5%〜30%(w/v)の間で様々であってもよい。典型的には、HSA濃度は約1〜10%w/v、最も典型的には約5%w/vである。本発明の代替の実施形態では、これらの状況で使用されるコラーゲンまたはBSAまたは他の構造タンパク質を、HSAの代わりにまたはHSAに加えて使用することができる。この構成成分は、典型的には当技術で受け入れられるプロトコルに従って分析物感知構成成分に架橋されている。
接着促進構成成分
本発明の電気化学センサは、1つ以上の接着促進(AP)構成成分を含むことができる(例えば、図2Aの要素114を参照)。「接着促進構成成分」という用語は、本明細書では、当技術で受け入れられる用語法に従い使用され、センサ内の隣接する構成成分の間の接着を促進させるその能力を目的として選択される材料を含む、構成成分を指す。典型的には、接着促進構成成分は、分析物感知構成成分と分析物調節構成成分との間に配置される。典型的には、接着促進構成成分は、任意選択のタンパク質構成成分と分析物調節構成成分との間に配置される。接着促進構成成分は、そのような構成成分同士の間の結合を容易にするために、当技術分野で公知の広く様々な材料のいずれか1つから作製することができ、当技術で公知の広く様々な方法のいずれか1つにより適用することができる。典型的には、接着促進構成成分は、3−アミノプロピルトリエトエキシシランなどのシラン化合物を含む。
接着を促進するための、シランカップリング試薬の使用、特に式R’Si(OR)3(式中、R’は典型的には末端アミンを有する脂肪族基であり、Rは低級アルキル基である)であるものの使用は、当技術で公知である(例えば、本願に引用して援用する米国特許第5,212,050号を参照)。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)およびグルコースオキシダーゼ(GOx)を電極表面に結合し共架橋するために3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランおよびグルタルアルデヒドが段階的プロセスで使用された、化学的に修飾された電極は、当技術で周知である(例えば、ヤオ,ティー、Analytica Chim.Acta 1983, 148, 27-33を参照)。
本発明のある実施形態では、接着促進構成成分はさらに、分析物調節構成成分内のグルコースなどの分析物の拡散を制限するように働くポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物など、隣接する構成成分中に存在することもできる1種以上の化合物を含む。例示的な実施形態では、配合物はPDMSを0.5〜20%、典型的にはPDMSを5〜15%、最も典型的にはPDMSを10%含む。本発明のある実施形態では、接着促進構成成分は層状センサシステム内で架橋し、それに対応して分析物調節構成成分などの近位構成成分中に存在する部分に架橋できるその能力を目的に選択される、薬剤を含む。本発明の例示的な実施形態では、接着促進構成成分は、分析物感知構成成分および/またはタンパク質構成成分などの近位構成成分中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分、および/または、分析物調節層などの近位層に配置された化合物中に存在するシロキサン部分と架橋するその能力を目的に選択される、薬剤を含む。
分析物調節構成成分
本発明の電気化学センサは、センサ上に配置された分析物調節構成成分を含む(例えば、図2Aの要素112を参照)。「分析物調節構成成分」という用語は、本明細書では、当技術で受け入れられる用語法に従い使用され、典型的には、構成成分中の、グルコースなどの1種以上の分析物の拡散を調節するように動作する膜をセンサ上に形成する構成成分を指す。本発明のある実施形態では、分析物調節構成成分は、構成成分中の、グルコースなどの1種以上の分析物の拡散を防止しまたは限定するように動作する分析物制限膜(例えば、グルコース制限膜)である。本発明の他の実施形態では、分析物調節構成成分は、構成成分中の1種以上の分析物の拡散が容易になるように動作する。任意選択で、そのような分析物調節構成成分は、構成成分中の1つのタイプの分子(例えば、グルコース)の拡散を防止しまたは限定するように、それと同時に構成成分中の他のタイプの分子(例えば、O2)の拡散を可能にしまたはさらに容易になるように、形成することができる。
グルコースセンサに関し、公知の酵素電極では、血液からのグルコースおよび酸素ならびにアスコルビン酸および尿酸などのいくらかの干渉物質が、センサの1次膜中を拡散する。グルコース、酸素、および干渉物質が分析物感知構成成分に到達するとき、グルコースオキシダーゼなどの酵素がグルコースから過酸化水素およびグルコノラクトンへの変換を触媒する。過酸化水素は、分析物調節構成成分中に戻って拡散する可能性があり、または電極に拡散する可能性があり、そこで反応して酸素およびプロトンを形成することによりグルコース濃度に比例する電流を生成する可能性がある。センサ膜アセンブリは、その中のグルコースの通過を選択的に可能にすることも含め、いくつかの機能を発揮する。この状況では、例示的な分析物調節構成成分は、水、酸素、および少なくとも1種の選択的分析物の通過を可能にし、かつ水を吸収する能力を有する半透過膜であり、この膜は、水溶性の親水性ポリマーを有している。
様々な例示的な分析物調節組成物が、当技術で公知であり、例えばそれぞれの開示を本願に引用して援用する米国特許第6,319,540号、同第5,882,494号、同第5,786,439号、同第5,777,060号、同第5,771,868号、同第5,391,250号、および米国特許出願第12/643,790号に記載されている。
カバー構成成分
本発明の電気化学センサは、典型的には電気絶縁保護構成成分である、1つ以上のカバー構成成分を含む(例えば、図2Aの要素106を参照)。典型的には、そのようなカバー構成成分は、コーティング、シース、またはチューブの形態をとることができ、分析物調節構成成分の少なくとも一部の上に配置される。絶縁保護カバー構成成分として使用するのに許容されるポリマーコーティングは、無毒性の生体的合成ポリマー、例えばシリコーン化合物、ポリイミド、生体的合成はんだマスク、またはエポキシアクリレートコポリマーなどを含むことができるが、これらに限定するものではない。さらに、これらのコーティングは、導電性構成成分へと通過する開口部のフォトリソグラフィ形成が容易になるように、光画像形成が可能とすることができる。典型的なカバー構成成分は、スピンオンシリコーンを含む。当技術で公知のように、この構成成分は、市販されているRTV(室温加硫化)シリコーン組成物とすることができる。この状況における典型的な化学物質は、ポリジメチルシロキサン(アセトキシをベースにする)である。
C.本発明の典型的な分析物センサシステムの実施形態
本明細書に開示されるセンサ要素およびセンサの実施形態は、例えば様々な状況(例えば、哺乳動物への埋め込み)で使用するのに適合させるため、典型的には分析物センサと共に使用される様々な他のシステム要素(例えば、穿孔膜および挿入セットなどの構造要素、ならびにプロセッサ、モニタ、および医療用輸液ポンプなどの電子構成要素)に動作可能に結合することができる。本発明の1つの実施形態は、使用者に関して感知された生理学的特性値に基づくセンサからの信号を受信することが可能な入力要素と、受信された信号を解析するためのプロセッサとを含む、本発明の実施形態を使用する使用者の生理学的特性をモニタする方法を含む。本発明の典型的な実施形態では、プロセッサは、生理学的特性値の動的挙動を決定し、そのように決定された生理学的特性値の動的挙動に基づく観察可能な指標を提供する。いくつかの実施形態では、生理学的特性値は、使用者の血中グルコースの濃度の尺度である。他の実施形態では、受信した信号を解析しかつ動的挙動を決定するプロセスは、例えばセンサ機能、分析物濃度測定値、および干渉物質の存在などに関する確認情報を提供するように設計された手法でセンサ装置に比較冗長性を組み込むために、一連の生理学的特性値が得られるよう、生理学的特性値を繰り返し測定するステップを含む。
本発明の実施形態は、デバイスの使用者がその特性の生理学的状態を容易にモニタできるようにかつ必要に応じて調節(例えば、インスリン投与を介した血中グルコース濃度の調節)できるように調整された手法およびフォーマットで、感知された生理学的特性(例えば、血中グルコース濃度)の測定からのデータを表示するデバイスを含む。本発明の例示的な実施形態は、センサからの信号を受信することが可能なセンサ入力であって、この信号が使用者に関して感知された生理学的特性に基づくものであるセンサ入力と;センサから受信された信号から、使用者に関して感知された生理学的特性値の複数の測定値を記憶するためのメモリと;感知された生理学的特性値の複数の測定値のテキストおよび/またはグラフィック表示(例えば、テキスト、線グラフなど、棒グラフなど、グリッドパターンなど、またはこれらの組合せ)を示すためのディスプレイとを含むデバイスである。典型的には、グラフィック表示は、感知された生理学的特性値の実時間測定値を表示する。そのようなデバイスは、様々な状況で使用することができ、例えば他の医療用装置と組み合わせて使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも1つの他の医療用デバイス(例えば、グルコースセンサ)と組み合わせて使用される。
例示的なシステムの実施形態は、グルコースセンサ、トランスミッタおよびポンプレシーバ、およびグルコースメータからなる。このシステムにおいて、トランスミッタからの無線信号をポンプレシーバに周期的(例えば5分ごと)に送信して、実時間センサグルコース(SG)値を提供することができる。値/グラフはポンプレシーバのモニタ上に表示され、したがって使用者は自分で血中グルコースをモニタしかつ使用者自身のインスリンポンプを使用してインスリンを送達することができるようになる。典型的には、本明細書に開示されるデバイスの実施形態は、有線または無線接続を介して第2の医療用デバイスと通信する。無線通信は、例えば、RFテレメトリー、赤外線伝送、光学伝送、音波および超音波伝送などを介した信号の伝送で生じたときに発せられた放射信号の受信を含むことができる。任意選択で、デバイスは、医療用輸液ポンプ(例えば、インスリンポンプ)と一体化した部品である。典型的には、そのようなデバイスにおいて、生理学的特性値は、血中グルコースの複数の測定値を含む。
D.本発明の実施形態および関連する特性
本明細書に開示される実施形態は、スパッタリングされた白金電極、電解質保持組成物(例えば、架橋ポリマーを含む干渉除去膜)、および/またはセンサのin vivoでの初期化および/または起動(例えば、センサをその水性環境に据え、in vivoで埋め込んだ後に意味のある情報の伝達を開始するのに要するならし時間)を容易にする要素の構成を含むように設計された、埋め込み可能な分析物センサおよびセンサシステムに焦点を当てる。特に、使用前のセンサの初期化および/または起動に必要とされる時間の長さが比較的長くなる可能性があることは(例えば、電流測定グルコースセンサでは、センサ起動初期化時間が2から10時間に及ぶ可能性がある)、当技術では公知であり、これはメディカルケアの投与でのそのようなセンサの使用を妨げる可能性がある因子である。例えば、病院での設定では、比較的長いセンサ初期化および/または起動時間により、患者の健康に関する重要な情報(例えば、糖尿病患者の高血糖症または低血糖症)の受信が遅くなる可能性があり、それによって、そのような情報の受信に基礎を置く治療(例えば、インスリンの投与)が遅くなる。さらに、病院での設定での比較的長いセンサ初期化および/または起動時間により、病院のスタッフが繰り返しモニタすることが必要になる可能性があり、これは、患者のケアのコストに関わる因子である。これらの理由で、病院の設定におけるin vivoでの初期化および/または起動時間が短縮されたセンサと、長いセンサ初期化および/または起動時間を減じた要素および/または要素の構成を含むように設計されたセンサおよびセンサシステムが、非常に望ましい。例えばグルコースセンサでは、センサの初期化および/または起動時間を15〜30分短縮することが非常に望ましく、それは例えば、そのようなより短い初期化時間によって、(1)そのような医療用デバイスの費用効果に寄与する因子である、病院スタッフによる患者のモニタリングの必要性を、削減することができ、かつ(2)患者の健康に関する重要な情報の受信の遅れを、低減させることができるからである。
病院での設定ではない分析物センサを使用する個人の場合(自身の疾患を管理するためにグルコースセンサを使用する糖尿病患者)、比較的長いセンサ初期化および/または起動時間は、使用者にとって不便であると共に使用者の健康に関する情報の受信が遅れるので、やはり問題である。糖尿病の管理の際のグルコースセンサおよびインスリン輸液ポンプなどの使用は、例えば、健康な個人の生理学的インスリン濃度の上昇および降下に密接に一致するように患者がインスリンを投与した場合、この慢性疾患に関連した罹患率および死亡率の問題が劇的に低下することを示す研究により、近年増加している。その結果、糖尿病などの慢性疾患に苦しむ患者は、患者の疾患の管理において積極的な役割を演じるように、特に血糖値の密接なモニタリングおよび調節をするように、医療従事者から指示される。この状況において、多くの糖尿病患者は医学訓練を受けないので、患者は、そのような管理に関連する複雑さ、例えば患者の積極的な毎日の作業という観点からは不都合となる可能性のある2時間の起動時間により、血糖値の最適なモニタリングおよび調節を控える可能性がある。これらの理由で、センサ初期化および/または起動時間を短縮することができる要素および/または要素の構成(例えば、本明細書に開示される親水性干渉除去膜)を含むように設計されたセンサおよびセンサシステムは、そのようなセンサを、医学訓練を受けていない糖尿病患者が作動させる状況において非常に望ましいが、それは、慢性糖尿病に罹患している個人に観察される、周知の罹患率および死亡率の問題を減少させることが示される挙動である、患者による自身の疾患の便利な管理を、これらのセンサが容易にするからである。
本明細書に開示される分析物センサおよびセンサシステムは、典型的には哺乳動物の体内に埋め込み可能に設計されるが、本明細書に開示される発明は、任意の特定の環境に限定されず、代わりに広く様々な状況、例えば、間質液、全血、リンパ液、血漿、血清、唾液、尿、糞便、汗、粘液、涙、脳脊髄液、鼻汁、頸管または膣内分泌物、精液、胸膜液、羊水、腹水、中耳液、滑液、または胃吸引物などの生体流体を含めたほとんどのin vivoおよびin vitro液体サンプルの分析で、使用することができる。さらに、固体または乾燥試料を適切な溶媒に溶解して、分析に適した液体混合物を提供してもよい。
本明細書に開示されるように、当業者なら、ベース層上に配置されかつスパッタリングされた白金作用電極と、対電極と、参照電極とを含む導電層は、この導電層がベース層の少なくとも一部の上に配置されかつベース層を必ずしも完全には覆ってはいない実施形態を含むことが理解される。当業者なら、これはセンサ内の他の層についても言え、例えば導電層上に配置された分析物感知層は、この分析物感知層が導電層の少なくとも一部の上に配置されているセンサの実施形態を包含し;分析物感知層上に配置された分析物調節層は、分析物感知層の少なくとも一部の上に配置された分析物調節層を包含することなどが理解されよう。任意選択で、電極を、センサ構造の単一の表面または側面上に配置することができる。あるいは電極を、センサ構造の複数の表面または側面上に配置することができる(例えば、(1種以上の)センサ材料内を通るビアにより、電極が配置されている表面に接続することができる)。本発明のある実施形態では、電極の反応表面は異なる相対面積/サイズのものであり、例えば、1×参照電極、1.75×作用電極、および3.6×対電極である。
本発明のある実施形態では、電極または開口部などの装置の要素は、センサの機能が助長されるように、特定の構成を有するよう設計しかつ/または特定の材料で作製されおよび/または他の要素に対して位置決めされる。例えば、特定の理論または動作メカニズムに拘泥するものではないが、センサの実施形態(例えば、単純な3つの電極の実施形態)は、単一の電極の周囲の局所的な環境変化をより受け易くなるように見える。例えば、参照電極または別の電極の上部またはこれらの電極の近くの気泡、および/または、参照電極または別の電極の上部またはこれらの電極の近くに停滞しておりまたは半ば停滞している流体プールは、結果的にセンサ性能を損なう可能性がある。このような状況では、電極領域を分散させることによって、センサは小さな局所面積の信号損失(例えば、水和不足、流体の停滞、または患者の免疫応答などによって生じる可能性がある)を補償できるため、分散型の電極構成は有利であると見られる。
いくつかの分析物センサ装置の実施形態は、複数の作用電極、対電極、および参照電極を含む。任意選択で、複数の作用、対、および参照電極は、1つの単位として一緒にグループ分けされ、この単位が繰り返されるパターンとして導電層上に位置的に分散される。あるいは、複数の作用、対、および参照電極は、一緒にグループ分けされ、この単位が繰り返されないパターンとして導電層上に位置的に分散される。本発明のある実施形態では、細長いベース層が、in vivoで埋め込まれた場合にセンサが捩じれかつ曲がる野を可能にする材料で作製され;電極は、in vivoで埋め込まれた場合にセンサ装置が捩じれかつ曲がるので作用電極の少なくとも1つにin vivo流体が接触するのを容易にする構成にグループ分けされる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極を有するセンサの一部がin vivo環境から出てex vivo環境に曝された場合に、センサが最適な機能を維持し続けられるような構成として、電極がグループ分けされる。
本発明の典型的な実施形態において、センサは、信号を送信および/または受信するように設計された要素、モニタ、ポンプ、およびプロセッサなどのさらなる要素(例えば、電子部品)に動作可能に結合される(例えば、その内容を本願に引用して援用する米国特許第6,558,351号、同第7,344,500号、および同第7,278,983号を参照)。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、センサは、哺乳動物で感知された生理学的特性値に基づくセンサからの信号を受信することが可能なセンサ入力と;このセンサ入力に結合されたプロセッサであって、センサから受信した1つ以上の信号を特徴付けることが可能なプロセッサとに、動作可能に結合される。本明細書に開示される広く様々なセンサ構成は、そのようなシステムで使用することができる。任意選択で、例えばセンサは、3つの作用電極と1つの対電極と1つの参照電極とを含む。
センサ挿入セット装置のいくつかの実施形態では、第1および第2(および/または、第3など)の電気化学センサは、1つの作用、対、および参照電極を含む。あるいは、複数の電気化学センサは、例えば、その内容を引用して援用する米国特許出願第11/633,254号に開示されているような分散型構成を有する、複数の作用、対、および参照電極を含む。本発明のある実施形態では、複数のセンサの少なくとも2つは、同じ生理学的特性、例えば血中グルコース濃度により生成される信号を測定するように、設計される。本発明の実施形態は、例えば、グルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素でコーティングされた作用電極を有する複数の電気化学センサを含むことができ、複数のin vivo挿入部位で観測されるグルコース濃度をサンプリングしかつ比較するように設計された方法で使用される。あるいは、センサ装置内の複数のセンサの少なくとも2つは、異なる特性、例えば血中グルコースとは関係のないバックグラウンドまたは干渉信号(例えば、「干渉ノイズ」)を含む第1の特性と、血中グルコース濃度を含む第2の特性とによって生成された信号を測定するように設計される。本発明の例示的な実施形態において、第1のセンサは、グルコースオキシダーゼを測定するように設計され、グルコースオキシダーゼでコーティングされた1つ以上の作用電極を含み、一方、第2の比較用センサは、血中グルコースとは関係のないバックグラウンドまたは干渉信号を測定するよう設計され、グルコースオキシダーゼでコーティングされた作用電極(または複数の電極)を有さない。
本発明のある実施形態において、本明細書に開示される電圧パルシングおよび/またはスイッチングを利用するセンサシステムは、センサ機能を損なうように電極の上部または電極付近に気泡または停滞する流体プールが形成および/または残留する可能性を阻止するよう、埋め込まれた構成要素の周囲を流体が流れる能力を高めることにより、水和不足(例えば、遅い起動初期化時間)および/または流体の停滞に起因した埋め込み型センサおよびセンサシステムで生じる可能性のある問題を克服するように、設計された方法で使用する。さらに、電圧パルシングおよび/またはスイッチングを利用する本発明の実施形態は、水和不足、流体の停滞、または患者の免疫応答などによって生じる問題をさらに克服するように、本明細書に開示されるある特定の相補的要素と組み合わせることができる(例えば、分散型電極構成、多数の電極センサ、多数の埋め込み部位を有する多数のセンサ装置など)。
本発明のいくつかの実施形態において、プロセッサは、第1の作用電位に応答して作用電極から受信した第1の信号と、第2の作用電位に応答して作用電極から受信した第2の信号とを比較することが可能であり、第1および第2の作用電位での第1および第2の信号の比較は、干渉化合物によって発生した信号を確認するのに使用することができる。本発明のそのような1つの実施形態では、1つの作用電極がグルコースオキシダーゼでコーティングされ、もう1つはコーティングされず、干渉化合物は、アセトアミノフェン、アスコルビン酸、ビリルビン、コレステロール、クレアチニン、ドーパミン、エフェドリン、イブプロフェン、L−ドーパ、メチルドーパ、サリチル酸塩、テトラサイクリン、トラザミド、トルブタミド、トリグリセリド、または尿酸である。任意選択で、パルス化および/または変動させた(例えば、切り換えられた)電圧を、作用電極から信号を得るのに使用する。典型的には、少なくとも1つの電圧は、280、535、または635ミリボルトである。関連する本発明の実施形態は、本発明の様々なセンサの実施形態で干渉化合物により生成される1つ以上の信号の同定および/または特徴付けのための方法(例えば、分析物感知化合物でコーティングされた電極からの信号と、分析物感知化合物でコーティングされていない比較用電極との比較による)を含む。任意選択で、そのような方法は、電極での信号を観察するのにパルス化および/または変動させた作用電位を使用する。
本発明のセンサは、当技術で公知の広く様々な医療システムに組み込むこともできる。本発明のセンサは、例えば、使用者の体内に薬剤を注入する速度を制御するよう設計された、閉ループ輸液システムで使用することができる。そのような閉ループ輸液システムは、センサと、これに付随する計器とを含むことができ、この計器は、コントローラへの入力を発生させ、ひいてはコントローラが送達システム(例えば、薬剤輸液ポンプが送達する用量を計算するもの)を操作するものである。そのような状況では、センサに付随する計器は、送達システムへの命令を伝達し、送達システムを遠隔操作するのに使用してもよい。典型的には、センサは、使用者の体内のグルコース濃度をモニタするために間質液に接触している皮下センサであり、送達システムにより使用者の体内に注入される液体にはインスリンが含まれる。例示的なシステムは、例えば、その全てを本願に引用して援用する米国特許第6,558,351号および同第6,551,276号;PCT出願第US99/21703号および同第US99/22993号、ならびに国際公開第2004/008956号および国際公開第2004/009161号に開示されている。
II.本発明の分析物センサ装置を作製するための例示的な方法および材料
いくつかの論文、米国特許、および特許出願は、本明細書に開示される一般的な方法および材料による現況技術について記述しており、本明細書に開示されるセンサ設計で使用することができる様々な要素(およびそれらを製造するための方法)についてさらに記述している。これらの文献には、例えば、そのそれぞれの内容を本願に引用し援用する米国特許第6,413,393号;同第6,368,274号;同第5,786,439号;同第5,777,060号;同第5,391,250号;同第5,390,671号;同第5,165,407号;同第4,890,620号;同第5,390,671号;同第5,390,691号;同第5,391,250号;同第5,482,473号;同第5,299,571号;同第5,568,806号;米国特許出願第20020090738号;ならびにPCT国際公開番号第WO01/58348号、同第WO03/034902号、同第WO03/035117号、同第WO03/035891号、同第WO03/023388号、同第WO03/022128号、同第WO03/022352号、同第WO03/023708号、同第WO03/036255号、同第WO03/036310号、および同第WO03/074107号が含まれる。
糖尿病患者のグルコース濃度をモニタするための典型的なセンサは、さらに、シチリら、:”In Vivo Characteristics of Needle-Type Glucose Sensor-Measurements of Subcutaneous Glucose Concentrations in Human Volunteers,” Horm.Metab.Res., Suppl.Ser.20: 17-20 (1988);ブルッケルら、”In Vivo Measurement of Subcutaneous Glucose Concentrations with an Enzymatic Glucose Sensor and a Wick Method,” Klin.Wochenschr. 67: 491-495 (1989);およびピックアップら、”In Vivo Molecular Sensing in Diabetes Mellitus: An Implantable Glucose Sensor with Direct Electron Transfer,”Diabetologia 32: 213-217 (1989)に記載されている。他のセンサは、例えば、本願に引用して援用するリーチら、ADVANCES IN IMPLANTABLE DEVICES,エー・ターナー(編), JAI Press, London, Chap.1, (1993)に記載されている。
A.分析物センサを作製するための概略的方法
本明細書に開示される発明の典型的な実施形態は、哺乳動物に埋め込むためのセンサ装置を作製する方法であり、この方法は、ベース層を用意するステップと、ベース層上に導電層を形成するステップであって、導電層が電極(典型的には、スパッタリングされた白金作用電極、参照電極、および対電極)を含んでいるステップと、導電層上に電解質維持層および/または干渉除去膜を形成するステップと、干渉除去膜上に分析物感知層を形成するステップであって、この分析物感知層が、分析物の存在下、導電層の電極で電流を変化させることができる組成物を含んでいるステップと、任意選択で、分析物感知層上にタンパク質層を形成するステップと、分析物感知層または任意選択のタンパク質層の上に接着促進層を形成するステップと、接着促進層上に配置された分析物調節層を形成するステップであって、分析物調節層が、その中の分析物の拡散を調節する組成物を含んでいるステップと、分析物調節層の少なくとも一部の上に配置されたカバー層を形成するステップであって、カバー層が、分析物調節層の少なくとも一部を覆うように開口部をさらに含んでいるステップとを含む。本発明のある実施形態では、分析物調節層は、中央鎖とこの中央鎖に結合された複数の側鎖とを有する、親水性の櫛状コポリマーを含み、少なくとも1つの側鎖はシリコーン部分を含んでいる。これらの方法のいくつかの実施形態では、分析物センサ装置が、平面的な幾何形状に形成される。
本明細書に開示されるように、センサの様々な層は、センサの特定の設計に従い操作することができる、様々な異なる特性を示すように製造することができる。例えば接着促進層は、センサ構造全体を安定化させるその能力を目的に選択される化合物、典型的にはシラン組成物を含む。本発明のいくつかの実施形態では、分析物感知層は、スピンコーティングプロセスにより形成され、その厚さは、1、0.5、0.25、および0.1ミクロン未満の高さからなる群から選択されるものである。
典型的には、センサの作製方法は、分析物感知層上にタンパク質層を形成するステップを含み、タンパク質層中のタンパク質は、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンである。典型的には、センサの作製方法は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクテートデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素組成物を含む分析物感知層を形成するステップを含む。そのような方法において、分析物感知層は、典型的には酵素と共に、実質的に固定された比率でキャリアタンパク質組成物を含み、酵素およびキャリアタンパク質は、分析物感知層全体にわたって実質的に均一に分散される。
B.分析物センサの製造に有用な典型的なプロトコルおよび材料
本明細書に提示される開示は、様々な周知の技法の組合せを使用して生成することができるセンサ材料およびセンサ設計を含む。例えば、この開示は、スパッタリングされた白金から形成される電極組成物と、そのようなプロセスを使用して生成されたセンサとについて記述する。この状況において、本発明のいくつかの実施形態は、当技術で受け入れられるプロセスに従って、基材上にそのようなセンサを作製するための方法を含む。ある実施形態では、基材は、フォトリソグラフィのマスクおよびエッチングプロセスで使用するのに適した、剛性で平らな構造を含む。これに関し、基材は、典型的には均一な高い平面度を有する上面を画定する。研磨したガラス板を、滑らかな上面を画定するのに使用してもよい。代替の基材材料には、例えばステンレス鋼、アルミニウム、デルリンなどのプラスチック材料などが含まれる。他の実施形態では、基材は剛性ではなく、基材として使用される被膜または絶縁材の別の層とすることができ、例えば、ポリイミドなどのプラスチックである。
本発明の方法の初期ステップは、典型的にはセンサのベース層の形成を含む。ベース層は、任意の所望の手段によって、例えば制御されたスピンコーティングによって、基材上に配置することができる。さらに、基材層とベース層との間の接着が十分でない場合は、接着剤を使用してもよい。絶縁材料のベース層は、典型的にはベース層の材料を液体の形態で基材上に適用し、その後、基材をスピンさせて薄く実質的に均一な厚さのベース層を得ることにより、基材上に形成される。これらのステップを、十分な厚さのベース層が構築されるまで繰り返し、その後、一連のフォトリソグラフィおよび/または化学マスクおよびエッチングステップを行って、以下に論じる導電体を形成する。例示的な形態では、ベース層は、セラミックまたはポリイミド基材などの絶縁材料の薄膜シートを含む。ベース層は、アルミナ基材、ポリイミド基材、ガラスシート、制御された多孔ガラス、または平坦化された可塑性液晶ポリマーを含むことができる。ベース層は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、サファイア、ダイアモンド、アルミニウム、銅、ガリウム、ヒ素、ランタン、ネオジム、ストロンチウム、チタン、イットリウム、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されない様々な元素の1種以上を含有する、任意の材料から誘導されてもよい。さらに基材は、物理気相成長、または、スピンガラス、カルコゲニド、黒鉛、二酸化ケイ素、および有機合成ポリマーなどの材料によるスピンコーティングを含めた当技術で周知の様々な方法により、固体支持体上にコーティングされてもよい。
本発明の方法はさらに、1つ以上の感知要素を有する導電層の生成を含む。典型的にはこれらの感知要素は、当技術で公知の様々な方法の1つによって形成される、1つ以上のスパッタリングされた白金電極を含む。次いで電解質維持層および/またはIRMおよび分析物感知酵素層などのさらなる層を、電気化学的堆積により、またはスピンコーティングなどの電気化学的堆積以外の方法により感知層上に配置し、その後、例えばジアルデヒド(グルタルアルデヒド)またはカルボジイミドを用いて蒸気架橋することができる。
本発明の電極は、当技術で公知の広く様々な材料から形成することができる。例えば電極は、後周期遷移貴金属で作製されてもよい。金、白金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、またはオスミウムなどの金属は、本発明の様々な実施形態に適切なものとすることができる。炭素または水銀などの他の組成物も、あるセンサの実施形態には有用なものとすることができる。これらの金属の中で、銀、金、または白金が、参照電極金属として典型的に使用される。後で塩素化される銀電極は、参照電極として典型的に使用される。これらの金属は、スパッタリングの方法を含めた当技術で公知の任意の手段により堆積することができる。そのような金属堆積プロセスは、金属間接着が良好であり表面の汚染が最小限に抑えられ、しかし妥当な数の活性部位を有する触媒金属電極表面を提供する構造をもたらすべきである。
本発明の例示的な実施形態では、初めにベース層が、電極堆積、表面スパッタリング、または他の適切なプロセスステップによって、薄膜導電層でコーティングされる。1つの実施形態では、この導電層は、ポリイミドベース層への化学接着に適切なクロムをベースにした最初の層と、その後に薄膜の金をベースにした層およびクロムをベースにした層を順次形成したような、複数の薄膜導電層として提供されてもよい。代替の実施形態では、他の電極層の構成または材料を使用することができる。次いで従来のフォトリソグラフ技術に従い、導電層を、選択されたフォトレジストコーティングで覆い、適切な光画像形成を行うために接触マスクをフォトレジストコーティング上に適用することができる。接触マスクは、典型的にはフォトレジストコーティングを適切に露光し次いでエッチングステップを行ってベース層上に複数の導電性センサトレースが残るように、1つ以上の導電体トレースパターンを含む。皮下グルコースセンサとして使用するよう設計された例示的なセンサ構造では、各センサトレースは、作用電極、対電極、および参照電極などの3つの個別の電極に該当する3つの平行なセンサ要素を含むことができる。
センサの部分は、典型的にはシリコンポリマーおよび/またはポリイミドなどの材料である絶縁性カバー層により典型的には覆われる。絶縁性カバー層は、任意の所望の方法で適用することができる。例示的な手順では、絶縁性カバー層を、センサトレース上に液体層として適用し、その後、基材をスピンさせて、液体材料を、センサトレースに重なりセンサトレースの周縁を超えて拡張する薄膜として、ベース層と密封接触させて、分散させる。次いでこの液体材料を、当技術で公知の1つ以上の適切な放射線および/または化学および/または熱硬化ステップに供することができる。代替の実施形態では、液体材料を、スプレー技法または任意の他の所望の適用手段を使用して適用することができる。光画像形成可能なエポキシアクリレートなど、様々な絶縁層材料を使用してもよく、その例示的な材料には、製品番号7020としてOCG,Inc. of West Paterson、N.J.から入手可能な光画像形成可能なポリイミドが含まれる。
グルコースセンサとして使用される例示的なセンサの実施形態では、酵素(典型的にはグルコースオキシダーゼ)は、作用電極を画定するように酵素コーティングで被覆される。他の電極の1つまたは両方には、作用電極と同じコーティングを設けることができる。あるいは、他の2つの電極には、他の酵素などの他の適切な化学物質を設けることができ、コーティングしないままとすることができ、または電気化学センサ用の参照電極および対電極を画定する化学物質を設けることができる。酵素コーティングを生成するための方法には、スピンコーティングプロセス、浸漬および乾燥プロセス、低剪断スプレープロセス、インクジェット印刷プロセス、およびシルクスクリーンプロセスなどが含まれる。任意選択で、そのようなコーティングは、その適用後に蒸気架橋される。驚くべきことに、これらのプロセスにより生成されるセンサは、長寿命、直線性、規則性、ならびに改善された信号対雑音比も含め、電着により生成されるコーティングを有するセンサの場合を凌いだ材料特性を有する。さらに、そのようなプロセスにより形成されたグルコースオキシダーゼコーティングを利用する本発明の実施形態は、過酸化水素をリサイクルしかつそのようなセンサの生体適合性プロファイルを改善するように設計される。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、カバー層(例えば、分析物調節膜層)と分析物検出層との間にそれらの接触を容易にするため接着促進層が配置され、この層は、センサ装置の安定性を増大させるその能力を目的に選択される。本明細書に記述されるように、接着促進層の組成物は、センサの安定性をもたらす能力に加え、いくつかの望ましい特性が提供されるように選択される。例えば接着促進層に使用されるいくつかの組成物は、干渉除去の役割を果たすと共に所望の分析物の物質移動を制御するように選択される。接着促進層は、そのような層の間の結合を容易にすることが当技術で知られている広く様々な材料のいずれか1種から作製することができ、当技術で公知の広く様々な方法のいずれか1つにより適用することができる。典型的には接着促進層は、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシラン化合物を含む。本発明のある実施形態では、接着促進層および/または分析物調節層は、近位に存在するシロキサン部分を架橋するその能力を目的に選択される薬剤を含む。本発明の他の実施形態では、接着促進層および/または分析物調節層は、近位層中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分を架橋するその能力を目的に選択される薬剤を含む。任意選択の実施形態では、AP層は、グルコース制限膜などの分析物調節層内に典型的に存在するポリマーであるポリジメチルシロキサン(PDMS)をさらに含む。例示的な実施形態において、この配合物は、PDMSを0.5〜20%、典型的にはPDMSを5〜15%、最も典型的にはPDMSを10%含む。AP層へのPDMSの添加は、センサを製造する際にAP層に孔または隙間が生じる可能性を減じるという意味で、有益とすることができる。
本発明の1つの例示的な実施形態は、電極として機能する、スパッタリングされた白金電気活性表面を用意するステップと、電気活性表面上に電解質維持層および/または干渉除去膜を形成するステップと、この層の上に酵素層をスピンコートするステップと、次いで電極上に分析物接触層(例えば、グルコース制限膜などの分析物調節層)を形成するステップであって、分析物接触層が、酵素層に接触することのできる分析物の量を規制するものであるステップによって、センサ電極を作製する方法である。いくつかの方法では、酵素層をセンサ層上で蒸気架橋する。本発明の典型的な実施形態では、センサは、少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対電極を含むように形成される。ある実施形態では、IRMは、作用電極の少なくとも一部および対電極の少なくとも一部の上に形成される。典型的には酵素層は、1種以上の酵素、例えばグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、もしくはラクテートデヒドロゲナーゼ、および/または同様の酵素を含む。特定の方法において、酵素層は、固定比率でキャリアタンパク質と組み合わせてセンサ層上にコーティングすることにより安定化させた、グルコースオキシダーゼを含む。典型的には、キャリアタンパク質はアルブミンである。典型的には、そのような方法は、グルコースオキシダーゼ層と分析物接触層との間に配置された接着促進層を形成するステップを含む。任意選択で、IRMおよび/または接着促進層などの層を、分析物接触層の形成前に硬化プロセスに供する。
そのようなプロセスにより生成される完成センサは、典型的には、例えば基材上の各センサを取り囲む線に沿って切断することにより、支持基材から迅速かつ容易に取り出される(1つを用いる場合)。切断ステップは、十分に相互接続されたベースおよびカバー層材料が完成センサの側縁を封止したままになるように、典型的には導電性要素から少なくとも僅かに外向きに間隔を空けた状態で、各センサを取り囲みまたはその周りに境界線を描いている線に沿って、ベースおよびカバー層と機能性コーティング層とを切り抜くのに使用される、UVレーザ切断デバイスを含めたものなど、当技術で典型的に使用される方法を使用することができる。さらに、セラミック基材を切断するのに典型的に使用されるダイシング技法は、適切なセンサの実施形態で使用することができる。ベース層は、典型的には下に在る支持基材に物理的に結合しておらずまたはごく最小限にしか直接接着していないので、他のかなりの処理ステップを行うことなく、または取着されたセンサを支持基材から物理的に引っ張りもしくは引き剥がすことにより生じる応力に起因した潜在的な損傷なしに、センサを支持基材から迅速にかつ容易に持ち上げることができる。支持基材はその後、清浄化され、再使用可能であり、またはそうでない場合には廃棄される。(1つ以上の)機能性コーティング層は、他のセンサ構成要素が支持基材から除去される(例えば、切断により)前または後のどちらかで適用することができる。
III.本発明のキットとセンサとのセット
本発明の別の実施形態では、前述のように分析物の感知に有用なキットおよび/またはセンサのセットが提供される。キットおよび/またはセンサのセットは、典型的には容器、ラベル、および上述の分析物センサを含む。適当な容器には、例えば金属箔などの材料から作製された材料で作った開け易いパッケージ、瓶、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。容器は、金属(例えば、箔)、紙製品、ガラス、プラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器の上または容器に関連付けられたラベルは、センサが、選択された分析物のアッセイを行うのに使用されることを示す。いくつかの実施形態では、容器は、グルコースオキシダーゼなどの酵素の層を含む電極マトリックス組成物を含む。キットおよび/またはセンサのセットは、センサを分析物環境に挿入するのが容易になるように設計された要素またはデバイス、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用のための指示が書かれた添付文書を含めた、商業的なおよび使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
様々な文献の引例が、本明細書全体を通して参照される。本明細書における全ての引例の開示を、特に本願に引用して援用する。これらの開示には、例えば、スラブチェバら、Applied Surface Science 255 (2009) 6479-6486;マイレーら、Bioelectrochemistry 63 (2004) 359-364;バンオーエスら、Analytica Chimica Acta 335 (1996) 209-216;プファイファーら、Biosensors & Bioelectronics Vol.12. No.6, pp.539-550, 1997;オーサカ,ティー、”Electrochemical formation and microstructure in the films for high functional devices,” Electrochimica Acta, vol.42, nos.20-22, pp.3015-3022, 1997;デハロ,シーら、”Electrochemical platinum coatings for improving performance of implantable microelectrode arrays,” Biomaterials 23 (2002) 4515-4521;ヤコブス,ピーら、”Nanometer size platinum particle arrays:catalytic and surface chemical properties,” Surface Science 372 (1997) L249-L253;ヤン,エムら、”Platinum nanowire nanoelectrode array for the fabrication of biosensors,” Biomaterials 27 (2006) 5944-5950;パク,エスら、”An ultrathin platinum film sensor to measure biomolecular binding,” Biosensors & Bioelectronics 16 (2001) 371-379;ラッシ,エスら、”Planar electrochemical sensors for biomedical applications,”Medical Engineering & Physics 28 (2006) 934-943;パテル,エヌら、”Fabrication and characterization of disposable type lactate oxidase sensors for dairy products and clinical analysis,”Sensors and Actuators B 67 (2000) 134-141;スベルベグリエリ,ジー、”Recent developments in semiconducting thin-film gas sensors,”Sensors and Actuators B 23 (1995) 103-109;リー,シーら、”Comparison of amperometric biosensors fabricated by palladium sputtering,palladium electrodeposition and Nafion/carbon nanotube casting on screen-printed carbon electrodes,” Biosensors and Bioelectronics 22 (2007) 877-884;チョウ,エヌら、”Differential type solid-state urea biosensors based on ion-selective electrodes,” Sensors and Actuators B 130 (2008) 359-366;マルティネス,シーら、”Electrochemical and geometrical characterization of iridium oxide electrodes in stainless steel substrate,” Sensors and Actuators B 133 (2008) 682-686;ウィルソン,ジーら、”Biosensors for real-time in vivo measurements,” Biosensors and Bioelectronics 20 (2005) 2388-2403;ゲス,アイら、”Thin-film IrOx pH microelectrode for microfluidic-based microsystems,” Biosensors and Bioelectronics 21 (2005) 248-256;フアン,アイら、”Fabrication and characterization of a new planar solid-state reference electrode for ISFET sensors,” Thin Solid Films 406 (2002) 255-261;マダラス,エムら、”Microfabricated amperometric creatine and creatinine biosensors,” Analytica Chimica Acta 319 (1996) 335-345;およびプファイファー,ディーら、”Amperometric lactate oxidase catheter for real-time lactate monitoring based on thin film technology,” Biosensors & Bioelectronics, vol.12, no.6, pp.539-550, 1997が含まれる。
実施例1
低Isigスパッタリング白金センサ
この実施例は、埋め込み可能な適用に向けた、作用電極としてスパッタリングPtを使用する低Isig約5nA/100mg/dLセンサの開発を示す。特にこの実施例は、スパッタリングされたPt作用電極の、様々な幾何形状または設計のレイアウトを有する、低Isigグルコースセンサの開発について記述する。この一部として、以下の開示は、in vitroおよびin vivoでの適用に適合させた機能性センサに有用な、膜の化学的性質を生成、修正、および/または最適化する例示的な方法を明らかにする。この技術の一般的な態様は、その内容を引用して援用する米国特許第5,837,446号、同第6,136,463号、および同第7,488,548号に記載されている。
本発明の態様は、電流測定グルコースセンサに関し、間隙信号(Interstitial SIGnal)の頭文字から得た「Isig」などの用語を使用する。Isig値は、血中グルコース値に比例する。isig値を得て、それに校正係数を乗じた場合、mg/dLを単位とした血中グルコースの読取りが得られることになる。Isig値は実際にnA(ナノアンペア)であり、したがって電気測定値であり、Isig値はグルコースレベルが降下し上昇するのに合わせて降下し上昇する。低Isigは、典型的には、体内でのそれほど強力ではない電気化学反応を意味し、安定した化学環境をより長く維持すると考えられる。
電流測定グルコースセンサの電極の特徴付けにおいて、スパッタリングされたPt組成物から形成される作用電極による実験結果は、白金黒センサの同じ幾何形状の作用電極でのIsig応答の約半分で、バックグラウンド電流がゼロに近くなることを示す。この特性は、より低いグルコース濃度範囲でより高い精度を示すことにより、即ち低血糖症患者のより安全なモニタリングが可能になるという特徴により、スパッタリングされたPt組成物は、グルコースセンサ内の作用電極を形成するのにより良好な材料になり得るという証拠を提供する。
典型的なグルコースセンサで観察されるIsigレベルは、このセンサが使用される適用に応じて、数ピコアンペアから数十ナノアンペアに及ぶ可能性がある。低Isigは、低い精度であることを意味しない。これに反して、バックグラウンド電流およびシステムノイズが十分低いものである限り、低Isigは、より長い期待寿命をセンサに提供することができる。この一部として本発明者らは、スパッタリングされたPt電極に関するin vitroおよびin vivoでの最良のセンサ性能を得るために、膜の化学的性質をどのように良くしかつ調整するかを実証する。
基本的な電気化学パラメータ
グルコースの決定は、下記の反応の集合体によって実現される。
グルコースが酵素に到達し、そこで酸素によりグルコン酸に酸化され、H2O2を残す。1分子のグルコースが、1分子の酸素を消費して1分子のH2O2を与える。
C6H12O6+H2O+O2→C5H11O5COOH+H2O2 (1)
作用電極ではH2O2が酸化され、酸素が再生される。
H2O2→O2+2H++2e− (2)
酵素によって発生したH2O2は、作用電極に到達し、酸素は完全に回収される。
対電極では、以下の3つの例などの還元プロセスが生じる。
2H2O+2e−→H2+2OH− (3)
H2O2+2e−→2OH− (4)
1/2O2+2H++2e−→H2O (5)
反応(3)は、センサが水を常に含有することになるので、そのような系で生じると考えられる。対電極上の3つの反応のいずれかは、反応(2)で発生したプロトンを中和するよう働くことになり、したがって酸性度の全体的な上昇は、グルコン酸のみによって引き起こされる。したがってセンサが作用するときの正味の反応は、グルコン酸およびH2を生成する(グルコースとH2Oとを消費して)。
作用電極(WE)の電位の選択
本発明の典型的な実施形態では、作用電極の電位は、H2O2の迅速な酸化を確実にするために十分高くなければならず、しかし水および溶液成分の酸化からのバックグラウンド電流が最小限に抑えられるよう、十分低くなければならない。さらに信号対雑音比は、妥当な範囲内にあるべきである。そのような系では、直線性は、必要に応じて分極電位を増加させることにより、改善することができる。本明細書に記述されるように、全体的なセンサ性能は、スパッタリングされたPt電極で使用される膜系を制御することによって、著しく改善される。
対電極(CE)の面積の決定
CE表面積は、典型的には、センサのこの部分からのいかなる制限電流も回避されるように十分大きい。この状況において、サイクリックボルタンメトリー実験を行って、CEの実際のサイズが十分大きいことを確認することができる。
参照電極(RE)の面積および特性の決定
典型的には、RE上のAg/AgCl層の要件は、AgClの高い容量、高い導電率、および高い耐アルコール性である。高い容量であることは、全てのAgClが溶解した場合に分極電位が変化することになるので、重要である。参照電極の安定性は、7日間の動作試験期間中に外部参照電極に対する電位を測定することによって、検査することができる。
基本的な膜の化学的性質
本発明の典型的な実施形態では、センサ膜構造は、IRMまたは/および電解質維持層、固定化酵素層、およびグルコース制限膜を含む(適切な直線性、pO2透過率、および生体適合性を得るため)。接着促進剤(AP)は、いくつかの実施形態に含めることができる。
電解質保持/維持層/膜
本発明のある実施形態では、例えば、適切なCl−イオン濃度、pH緩衝能、および全体的なイオン強度と共に、電解質のプールを含む層/膜を使用して、感知プロセス中に最適な電気化学および生化学パラメータを維持することができる。この層/膜は、電気化学および生化学反応、特に比較的より高い検出Isigを有するものでの、長い感知時間により、in vivoで非常に有意とすることができる。in vivoおよびin vitroでの同等のIsigレベル、さらに感知プロセス中の安定したIsigを維持することは、重要である。
この層に典型的な要件には、ある量の水分吸着が含まれ、典型的には、センサの電気化学的性質を、センサのin vivoでの寿命期間中維持し最適化するのに十分な、吸着が含まれる。Isigレベルおよび安定性は、層の機能を評価するのに使用される例示的なパラメータである。この層/膜は、スパッタリングされたPt組成物から作製した電極の難点を克服するのに使用できるが、そのような層の必要性は、白金黒構造の多孔性(電解質用の環境を提供する)のために、白金黒電極と同じではない。スパッタリングされたPt組成物から作製された電極の場合、必要な電解質環境を提供できる1つの材料は、分析物感知(例えば、GOx)層である。
スパッタリングされたPt組成物から作製された電極と共に使用される電解質維持層を形成するのに、様々な材料を使用することができる。例えば材料は、10から50重量%の水分吸着を有する親水性ポリマーから形成することができる。材料は、適切な水分吸着が得られるように、捕捉された親水性ポリマー成分を有する架橋ポリマーマトリックスから形成することができる。典型的な選択肢には、親水性ポリウレタン(PU)、メチルセルロース(MC)またはポリビニルピロリジオン(PVP)などの捕捉された親水性ポリマーを有する架橋BSA(ウシ血清アルブミン)が含まれ、干渉除去膜(IRM)および分析物感知層も水分吸着能を提供することができる。
架橋GOx層
標準的なグルタルアルデヒド架橋
グルタルアルデヒドを介した水不溶性担体への共有結合によるGOxの固定化は、酵素技術における簡単で穏やかな結合方法である。グルタルアルデヒドは、生理学的なpH、イオン強度、および温度に近い条件下、水性緩衝溶液中で反応が進むことから、酵素を固定化するための穏やかな架橋剤として広く使用された。不溶性ポリイミド担体に対する分子間架橋および結合の結果としての、3次元網状構造の形成が、安定な酵素層を構成する。
PVA−SQBマトリックス内への酵素の捕捉
GOxなどの酵素は、当技術で公知の他のプロセス、例えばPVA−SbQポリマーマトリックス架橋を介して、水不溶性担体内に固定化することもできる。PVA−SbQは、メチルピリジニウムメチルスルフェートで官能化されたポリビニルアルコールである。酵素は、異なる分子量またはグレードを有するPVA−SbQ感光性ポリマー(多数の供給業者から入手可能)の架橋ポリマーマトリックス内に固定化することができる。PVA−SbQポリマー架橋プロセスは、約365nmの波長でのUV曝露の下、数秒以内で行うことができる。このプロセスに従えば、得られたポリマーは、架橋前の状態に比べてそれほど親水性が高くないものになる。
分析物調節層
グルコース制限膜などの分析物調節層は、長い応答直線性を目的に、制御されたグルコース拡散能をセンサシステムに提供するのに使用することができる。グルコース拡散速度またはIsigレベルは、膜親水性および膜厚により調節することができる。膜のグルコース拡散能は、in vivoでのシステムノイズレベルおよび精度にも影響を及ぼす可能性がある。膜の水分吸着能は、in vivoでの長時間の使用中、Isigの安定性を制御するのに使用することもできる。一般に、膜の特性および厚さの最適化は、センサのin vivo性能に重要である。
例示的な配合物および実験方法
電解質保持層:10%BSA 4gをpH=7.4のリン酸緩衝液に溶かしたものに、1%MC 0.2mLまたは5%PVP 0.1mLを添加した。
スピンコーティングを定量吐出法として用いた:
ポリリジンIRM。ポリリジン溶液:1%のポリリジンをDI H2Oに溶かしたものであり、ポリリジンの分子量は10kdから80kdに及ぶ。
ポリHEMA IRM:0.7%のpHEMAを95%のC2H5OHおよび5%のH2Oに溶かしたものを、0.41%のビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル尿素]と混合した。
Biodotスプレー法を、IRMの定量吐出に適用した。
GOxは、標準的な5%BSAまたはHSAの配合物の調製から得られる。
グルコース制限膜(GLM)分析物調節層材料は、シリコン処理されたPEG修飾メタクリルコポリマーを含む。
本発明の実施形態で有用な例示的な配合物である分析物調節層は、例えば、その内容を引用して援用する米国特許出願第12/643,790号に開示される。
電解質保持層
BSAをベースにした層
BSAをベースにした電解質保持層を有するセンサについて試験をし、in vitroおよびin vivoで十分機能しかつ均等なIsigレベルにあることが示された。Isigの安定性は、図2Cおよび2Dに示されるように、センサ積層体に正確に配置された追加のBSA副層を付加した場合、特に素晴らしかった。GOx(20ku/mL)の単層を有するセンサであって、BSA副層が付加されたものも、十分機能した。その結果、電解質保持層の有益な作用には、Isigレベルおよび安定性の両方が含まれる。この電解質保持層がないと、in vivoでのIsigレベルは、in vitroでのIsigレベルよりも非常に低くなり、センサの埋め込みから間もなく低下する。
PVA−SbQをベースにした層
センサを、500rpmでコーティングされたGOx層で作製したが、Isigレベルは、必要なレベルで維持された。MCが添加された配合物は、PVPが添加されたものよりも良好に機能した。イヌにおいて最適化されたIsigレベルは、追加の層を付加することにより助長される。
IRMをベースにした層
図3中のデータは、ポリリジンの層を有する場合に著しく高いIsigレベルで機能するセンサを示す。図4は、初期起動を早める、ポリリジン層へのPVPの添加の作用を示した。14kdのポリリジンポリマーを有するIRMは、50kdのポリリジンポリマーを有するIRMよりも良好な起動プロファイルを示す。
架橋GOx層
グルタルアルデヒド架橋GOx
500rpmでスピンされた0.5μmの標準的な薄層は、通常、in vivoで完璧なIsigを生成し、残念ながらin vivoでのIsigレベルは、in vitroの場合よりもさらに低い。異なるGOxの厚さをいくらか調節することにより、有意な結果が得られた。
SCIENIONで定量吐出された、より厚いGOx層
Scienionは、ピコリットルレベルの液体定量吐出機器である。定量吐出されたGOxの層厚は、2.5μmであった。より厚いGOx層で作製されたセンサは、0.5μmのGOx層を有するセンサよりも非常に高い応答を生成した。
架橋した、PVA−SbQが捕捉されたGOx層
PVA−SbQ捕捉GOx層センサは、糖尿病に罹患していないイヌおよびin vitro試験で十分応答した。
GLMパラメータ
システムIsig/ノイズレベルは、必要なセンサIsigレベルを決定することができる。GLMコーティングは、システムノイズレベルに直接影響を及ぼす可能性がある。影響を及ぼす主な特性は、膜グルコース透過率(または、膜親水性/親水性)および膜厚である。
基本的な膜特性の課題:親水性対疎水性
高度にグルコースを透過せることが可能な、シリコン処理されたPEGを、ポリマー基で記述されたようにメタクリレートに結合させた。最も有意な利点は、APの必要性を排除する可能性のある、その副層に対する接着能である。明らかにより親水性のある膜は、それらが同じ厚さを使用していながら、in vivoでより高いIsigをもたらした。より多くの水分吸着は、in vitroの状況に近いIsigレベルでセンサが機能するのを助ける。GOx層の厚さは、センサのin vivoでのIsigレベルを決定する唯一の因子ではない。Isigは、GLMにより影響を受ける可能性もある。
GLM/アクリレートブレンド
必要とされる膜透過率およびそれ対応する厚さは、GLM/アクリレートの様々なブレンド比により容易に調節することができる。透過率が高い、薄い膜は、通常、in vivoで高ノイズのセンサを生成した。許容される混合比が何かは、センサのin vivo性能により決定しなければならない。
まとめると、新たなスパッタリングされたPt材料は、低バックグラウンド電流、妥当な高感度、比較的低い干渉応答、およびシステムノイズレベルなどの、その電気化学特性により、埋め込み可能なグルコースセンサの適用で優れた作用電極材料となるように製作されかつ発見された。
対応する膜の化学的性質およびプロセスは、より優れたin vitroおよびin vivo性能をもたらすように開発された。例示的な実施形態には、IRMおよび/または電解質保持膜、「HSA」膜で被覆された固定化GOx膜、および拡散制御膜としてのGLM/アクリルブレンドが含まれる。
センサは、ゼロのバックグラウンド電流で、感度5〜10nA/100mg/dLグルコースレベルで、少なくとも400mg/dLまでの直線性範囲で、in vitroで機能した。センサのIsigレベルは、低バックグラウンド電流を依然として維持できる状態で、電極面積またはGLM透過率を調節することにより、20nA/100mg/dLまで上昇させることができた。
in vivoでセンサは、低ノイズ、センサ間の良好な整合性、迅速な起動、および良好な精度により、満足のいく状態で機能した。有意な利点は、低バックグラウンド電流および低ノイズレベルによる、より良好なグルコースレベルのモニタリングおよび制御のための、低血糖患者でのより低いグルコース範囲での精度と考えられる。別の可能性ある利点は、制御された低Isigレベルセンサを考慮すれば、より安定なIsigおよびより長い寿命であると考えられる。
実施例2
スパッタリングされたPtセンサのさらなる特徴付け
この実施例は、グルコースセンサにおけるスパッタリングされたPt組成物から形成される作用電極の使用をさらに特徴付けるデータを提供する。この状況において、本発明者らの様々な適用の実現可能性を研究するためにサイクリックボルタンメトリーが開発された。
この実施例は、Cr/AuおよびTi/Auを含めた種々の基材上の、スパッタリングされたPt組成物の研究について記述する。さらにこの実施例は、種々の幾何形状、種々の厚さ、および種々の機械的レイアウトであって種々のサイズの電極(例えば2x3x)を含めたものにおける、スパッタリングされたPt組成物の研究について記述する。これらの研究は、そのようなセンサの電気化学特性について試験した。本発明の実施形態が作製されるように適合することができる、ある方法および材料は、例えば、その内容を引用して援用する米国特許第5,837,446号および日本国特許第JP63−101743号および同第JP62−261952号に記載されている。
薄膜技法に基づいて、グルコースセンサ内でのH2O2の電気化学的酸化のためのアノードの使用を試験するために、スパッタリングされたPt電極のいくつかの形態を、同等のi/v特性を得るためにサイクリックボルタンメトリーにより評価した。比較参照として、本発明者らは、純粋なPtワイヤならびにセンサ内で作用電極組成物として使用される標準的な電着された白金黒を比較して、種々の電極材料およびプロセスの利点を実証した。
サイクリックボルタンメトリー
ボルタンメトリーは、セル内の電流が印加電位の関数として記録される、測定技法と定義される。印加電位の波形に応じて、種々の技法を区別することができる。例えばサイクリックボルタンメトリーでは、三角電位波形が電気化学セルに印加される。矩形波ボルタンメトリーは、パルス法の良好な例である。電流測定は、この技法では電位が一定に保たれるので、ボルタンメトリーの特殊なケースである。
サイクリックボルタンメトリー(CV)では、印加電位が時間と共に直線的に変化し、電極反応が生じない電位から開始して、電極反応が生じない電位に移動し、さらに関係ある電気活性化学種の還元または酸化が生じる電位に移動する。電極反応が生じる電位領域を過ぎた後、スキャン方向が反転し、通常は中間体(即ち、順方向スキャン中に形成された生成物)の電極反応が検出される。
サイクリックボルタンモグラムの重要なパラメータは、カソードおよびアノードのピーク電位、カソードおよびアノードのピーク電流、カソードの半ピーク電位および半波長電位である。半波長電位は、通常、見掛け電位の数mV以内にあり、関係ある電気化学システムの価値ある定性情報を提供する。電位のピーク分離は、電極反応の可逆性に関する情報も与える。アノードとカソードのピーク電位の差は、可逆システム用に交換された電子当たり59mVに等しい。
サイクリックボルタンメトリーの基本的な適用
サイクリックボルタンメトリーは、溶液化学種の電気化学的性質を研究するのに、また後続の化学反応ステップを伴う電気化学反応の研究で使用される、電気化学的技法である。CV技法も、修正された電極の定性的および定量的な研究で広く適用されてきた。この技法は、分析の適用には使用されない。
センサの適用では、サイクリックボルタンメトリーは、電極の製作またはプロセスのための新しい電極材料または新しい技術の初期評価に使用することができる。サイクリックボルタンメトリーの実験では、電極の残留電流を容易に決定することができる。さらに、検出用パッケージによる漏れ電流を検出することができる。この技術は、吸着効果を調査するための強力なツールでもある。
実験方法
種々の製作プロセスの種々のロットからの試験がなされた例示的なセンサを、以下の表として列挙する。
センサの研究で使用したH2O2溶液およびアセトアミノフェンは、Sigma−Aldrichから購入した分析用試薬であった。0.1M H2O2をストック溶液として使用した。初期バックグラウンド電流のスキャンを、50mLの生理学的PBS緩衝溶液で行い、ストックH2O2 0.5mL、0.5mL、および1mLを使用して、1mM、2mM、および4mMのH2O2溶液を作製した。アセトアミノフェンストックは、4mMで使用した。0.06mMの実際の試験は、電極の全てから適度に高いレベルの干渉Isigが生成されるように、ストック溶液3mLを緩衝溶液50mLに添加することによって行った。このH2O2溶液は、毎日新しく作製する必要がある。この溶液に曝されたPtワイヤの表面積は2.46mm2であり、これはスパッタリングされたPt電極の標準的な2x3xサイズ(0.387mm2)の6.37倍である。
バックグラウンド電流およびH2O2応答のスキャンプロセス中、従来の当初の製作プロセスから作製された電極を使用した(例えば、作用電極には白金黒)。後に、より高いH2O2濃度のスキャン中、メッキされていないCEにより、いくらかの電流制限が示された。この場合、代わりに外部PtワイヤをCEとして使用した。アセトアミノフェンのスキャン中、外部CEおよび参照電極を使用して、干渉電位を公正に評価した。掃引速度は、全ての場合に10mv/秒であった。掃引の前に、電極を緩衝溶液中で3回サイクル動作させ、その後、実際のバックグラウンド電流のスキャンを記録した。
結果および考察
バックグラウンド電流
図5は、種々の白金組成物で観察されたバックグラウンド電流の比較を示す。図5に示すように、H2O2の作用電極酸化窓は、およそ500mvから800mvである。白金黒に関するその範囲でのバックグラウンド電流は、そのグループ内で著しく高い。より高く見える純粋なPtワイヤのバックグラウンド電流は、標準のスパッタリングされたPtの6倍であるより広い表面積のためである。白金黒の表面積も、スパッタリングされたWEより非常に大きく、それがより高いバックグラウンド電流の理由になると考えられる。スパッタリングされたWEの場合、バックグラウンド電流は、全てが著しく低く、基本的に同じ大きさの範囲内に包含される。
図6は、種々の白金組成物で観察された、1MM H2O2に応答した電気触媒の比較を示す。図6に示されるように、白金黒は、著しく高い電気触媒活性を示さなかったが、非常に高いバックグラウンド電流をもたらした。1.75WEは基本的に、標準の白金黒センサと同じIsigレベルと、より低いバックグラウンド電流を提供した。スパッタリングされたPtからのIsigレベルは、Ptワイヤよりも僅かに低く、性能は、過電圧が考えられる範囲で同等である。しかしIsigの安定性およびノイズレベルに関しては、白金ワイヤが、グループ内の残りのPtよりも優れている。
0.5から0.6Vの範囲を使用した場合、より高いH2O2濃度でいくらか問題が生じるので、典型的には0.7V程度の電圧を、試験がなされるPtの全てに関するH2O2センサとして選択すべきである。この電圧は、H2O2濃度が2mMレベルを超えない場合、良好な直線性が得られる限り、依然として作用する。50mMの極めて高いグルコースレベルを考慮すれば、H2O2レベルはWEの正面でちょうど1mMになると考えられる。したがって、より低い作用電位が、いくつかの適用で実現可能である。
アセトアミノフェンに対する干渉応答
図7は、干渉物質のアセトアミノフェンに対する、種々の白金組成物で観察された応答を示す。図7に示されるように、スパッタリングされたPtに関するアセトアミノフェンからの干渉は、全体的により低い。より高く見える純粋なPtワイヤは、より広い表面積のためである可能性がある。白金黒を別にすれば、干渉は、H2O2に対するIsigレベルに比べて著しく高い。
まとめると、スパッタリングされたPt電極の電気化学特性は、異なるプロセスから形成されるPt電極に勝る、より良好な性能プロファイルを示す。例えば、O2の発生が明らかに抑制されている間のバックグラウンド電流および干渉レベルに対するIsig、ならびに電極の電気触媒活性は、ノイズレベルおよび信号安定性は少しだけ悪化しているものの、同じ表面積の純粋なPtワイヤと同じレベルで保たれたままである。Isigレベルはロットごとに非常に一貫している。種々に設計されたどのパターンの間でも、著しい差はない。しかし全体的な掃引性能は、ロット753から現れるようであり、基材としてCr/Auを有する標準の2x3xが最も良く機能する。僅かに良好な性能は、バックグラウンド電流および干渉が考慮される限り、TI/Au基材よりもCr/Au基材から得られた。
実施例3
プラズマ堆積プロセスによる架橋SbQポリマー組成物の修飾
当技術で公知のように、水溶性の感光性ポリ(ビニルアルコール)−スチリルピリジニウム(PVA−SbQ)ポリマーのSbQ部分は、UV光に曝露されると架橋する(例えば、米国特許第7,252,912号および同第6,379,883号を参照)。上述のように、本発明のある実施形態では、これらのUV架橋したPVA−SbQポリマーを使用して、グルコースオキシダーゼを、層状センサ構築物内の層(例えば、タンパク質層、電解質保持層、電解質感知層など)の1つ以上に捕捉する。本発明の実施形態は、この材料から作製されたセンサ層を含み、その実施形態は、センサ製作の際に他の架橋剤(グルタルアルデヒドなど)を使用する必要性をなくすことができる。例えばグルタルアルデヒドは、タンパク質または酵素に最も一般的に使用される架橋剤である。しかし、この化合物の使用に関する問題には、グルコースオキシダーゼとのその相互作用およびセンサ膜マトリックス中の残留架橋剤の存在により、継続するグルタルアルデヒド架橋に応答してセンサ信号が低下する傾向にあるという観察内容が含まれる。
本明細書に開示されるように、GOxなどのポリペプチドを固定するのにUV架橋ポリマーマトリックスを使用し、それと併せてプラズマ架橋および堆積方法を使用することを含む新しいプロセスが、グルコースセンサ製作の際のグルタルアルデヒドなどの化学架橋剤の必要性をなくすために開発されてきた。このように作製されたセンサの性能は、標準的なグルタルアルデヒド架橋プロセスで作製されたセンサにより得られたものと同等である。本発明の実施形態では、GOxを、このポリマーマトリックス中に捕捉することができ、これはセンサの安定性、直線性、および低いノイズレベルに関して高いIsig品質をもたらす分析物感知層を有するセンサをもたらすセンサ構築物である。本発明のある実施形態では、このマトリックスは、電解質保持層として機能する(例えば、スパッタリングされたPt組成物を含む電極と組み合わせて)。
乾式および清浄なプロセスとして、プラズマ法は、適切なポリマーマトリックスが加工される湿式架橋プロセスに勝る利点を提供する。例えばプラズマ堆積プロセスは、センサ層間により良好な接着をもたらすため、PVA−SbQ架橋法で使用することができる。さらにプラズマプロセスは、GOx組成物マトリックスの上部スキン層の限られた厚みを通り抜けることに焦点を当てることができる。そのような薄いプラズマ架橋層はさらに、GOxを包封することができ、PVA−SbQ GOx捕捉マトリックスの制限による可能性あるランアウト(run out)を防止することができる。本発明の例示的な実施形態では、HeおよびArプラズマプロセスを使用して、いくつかのマトリックスを架橋することができ、HMDSOまたはHMDSO/アリルアミンのプラズマ増速化学気相成長プラズマプロセスを使用して、接着機能を有するピンホールのない被膜を生成することができる。当技術で公知のように、プラズマ層は、プラズマ重合させたヒドロシクロシロキサンモノマー、アミン提供基、例えばN−トリメチルシリル−アリルアミン(アリルアミン)、ポリオキシアルキレンテザー、および生物活性化合物も含めたいくつかのプロセスを介して適用してもよい(例えば、米国特許第6,613,432号;同第6,765,069号;同第7,217,769号を参照)。
本発明の実施形態で有用なプラズマプロセスは、とりわけ高周波プラズマ(例えば、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、ヘリコンプラズマなど)およびマイクロ波プラズマ(例えば、電子サイクロトロン共鳴プラズマなど)などの様々な方法を含むことができる。様々なエネルギー種は、イオン、電子、および光子(UV光子を含む)も含めて、プラズマに関連付けられる。プラズマからのエネルギー移動の大きさが、ポリマー中のある軌道電子の結合エネルギーよりも高い場合、ポリマー表面は活性化されると共に前駆体がイオン化されることになり、フリーラジカルを含有する小さな断片への分子の断片化が生じる。一方、プラズマからのエネルギー移動の大きさが結合エネルギーよりも低い場合、ポリマー中のある電子は励起した上の軌道に上昇し、その後、解離して、ポリマー表面にラジカルを生成する(例えば、エヌ.イナガキ博士、Plasma Surface Modification and Plasma Polymerizationを参照)。プラズマ表面修飾を含む例示的なプロセスは、エヌ.イナガキ、Plasma Surface Modification and Plasma Polymerization, Technomic Publishing Company, Inc. 1996;およびエル.ハンレイら、”The growth and modification of materials via ion-surface processing,” Surface Science 500, 2002に記載されている。気相成長を含む例示的なプロセスは、スミス,ドナルド(1995): Thin-Film Deposition: Principles and Practice. MacGraw-Hill;およびブンシャー,ロイタン エフ.(編) Handbook of Deposition Technologies for Films and Coatings: Science, Technology and Applications, second edition. Materials science and process technology series. Park Ridge, N.J.: Noyes Publications, 1994に記載されている。
例示的なプラズマプロセスの概要
基本的なプロセスは、UV架橋したGOx層を固定するために、かつ現行の湿式化学接着促進剤(AP)プロセスと置き換えるために、乾式および清浄なプラズマ/プラズマ堆積を使用する。例示的なプロセスを、下記の例示的なステップとして以下にまとめる:
UV架橋したGOx層を、穏やかなヘリウムプラズマプロセス(例えば、50W、300mT、20秒)で固定する。そのような微細に調整されたヘリウムプラズマプロセスは、ポリマー表面架橋作用を示す。
アリルアミン/HMDSOパルスプラズマ堆積(例えば、アリルアミン/HMDSO(1/1)、200W、350mT、2分、およびパルスデューティサイクル30%)によりプラズマ処理したGOxの上面に、非常に薄い被膜を生成する。種々の要件に従い、アリルアミンとHMDSOとの比が調節可能である。例えばある場合には、HMDSOを100%とすることができる。化学前駆体は、現行の接着促進剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)が提供することのできるシロキサン基およびアミノ官能基を提供することができるが、低蒸気圧であり空気中の水分に対して非常に感受性があるなどの現行のAPTESに関連した問題はない。事実、これら2種のモノマー(前駆体)の液相ではなく、その蒸気が使用され、各蒸気は、固有の表面特性をもたらす固有のプラズマ組成物を生成する。パルスプラズマ堆積プロセス中、アリルアミンおよびHMDSOモノマーの蒸気は断片化され、基材およびさらに蒸気それ自体と反応して、合わせてピンホールのない被膜になる。HMDSOパルスプラズマ堆積は、粘着性シリカ状の薄膜を生成して基材に結合し、それが障壁をもたらして、その下にGOx層を固定しかつさらに上面のグルコース制限膜(GLM)層からのグルコース透過を制限することができる。アリルアミン前駆体は、親水性膜を形成することができ、GLMカバー層を化学結合させるアミノ官能基も提供する。
これらのステップ、約2分のプラズマパルス堆積の後、より強力なヘリウムプラズマ(例えば、200W、350mTorr、70秒)を使用して、新たに堆積した層を架橋することができる。このプロセスは、堆積の安定性を増大させる。O2プラズマ酸化は、いくつかの場合において、プラズマ堆積処理後の別の選択肢である。
これらのステップ後、プラズマ処理されたプレートを5分間、洗浄ステーション内でDI水で洗浄し、そのプレートをスピン乾燥機器で乾燥することができる。このステップの目的は、化学残留物を除去することである。
洗浄/乾燥ステップ後、GLMカバー層を、処理されたプレート上に直接コーティングすることができる。
プラズマ/プラズマ堆積技法を、埋め込み可能なグルコースセンサの製作に適用することが、本発明独自の特徴である。
例示的なプラズマプロセスパラメータ
A.例示的なプロセスA:50wで20秒のHe架橋、200wで2分のアリルアミン/HMDSO(50/50sccm)プラズマ堆積、その後、200wで70秒のHe架橋、濯ぎおよび乾燥。
B.例示的なプロセスB:50wで20秒のHe架橋、200wで3分のHMDSO(80sccm)プラズマ堆積、その後、10wで10秒のO2プラズマ。
C.例示的なプロセスC:4分 HMDSO 80sccm、350mtorr 200wのパルス、その後、10wで、25sccm 100mtorrでの、10秒のO2。
上記にて論じたプロセスに従えば、実験は、SbQ−UV架橋したGOx層が、高い応答性、少ないノイズ、およびより安定なIsigを含めたいくつかの所望の特徴を有するセンサをもたらすことを示す。さらに、そのようなプロセスは、干渉除去膜を含むセンサの性能を高めるのに使用することができる。
この開示に引用される全ての特許および非特許文献は、それら特許および非特許文献のそれぞれが全体として本願に引用して援用されたかのような程度まで、引用し援用する。さらに、本明細書において本発明について特定の実施例および実施形態を参照しながら記述してきたが、これらの実施例および実施形態は、本発明の原理および適用の単なる例示であることが理解されるべきである。したがって、以下の特許請求の範囲により定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の変形を例示的な実施形態に行ってもよく、かつ他の配置構成を考え出すことができることが理解されるべきである。